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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】建物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20240612BHJP
   E04B 1/35 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
E04G21/14
E04B1/35 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020068945
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021165479
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】深沢 茂臣
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 智行
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115495(JP,A)
【文献】特開平09-273311(JP,A)
【文献】特開2001-311312(JP,A)
【文献】特開平08-113981(JP,A)
【文献】特開2010-265596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
E04B 1/00- 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を複数の工区に分割して施工するための施工方法であって、
第1の工区において、前記建物を構成する第1の躯体を施工する第1施工工程と、
前記第1施工工程の後又は途中に、前記第1の工区に隣接する第2の工区において、前記建物を構成する第2の躯体における少なくとも屋根部を含む一部分の水平力を前記第1の躯体に直接支持させながら、当該一部分を施工する第2先行施工工程と、
前記第2先行施工工程の後に、前記第2の躯体における他の一部分の水平力を前記第1の躯体に直接支持させながら、当該他の一部分を施工する第2後行施工工程と、を含み、
前記第2先行施工工程においては、前記第2の躯体の前記一部分に含まれる梁部を当該一部分に含まれる柱部に対して仮固定し、且つ前記第1の躯体に含まれる梁部又は柱部に対して仮固定し、
前記第2後行施工工程においては、前記第2の躯体の前記一部分に含まれる梁部を当該一部分に含まれる柱部に対して本固定し、且つ前記第1の躯体に含まれる梁部又は柱部に対して本固定する、
建物の施工方法。
【請求項2】
建物を複数の工区に分割して施工するための施工方法であって、
第1の工区において、前記建物を構成する第1の躯体を施工する第1施工工程と、
前記第1施工工程の後又は途中に、前記第1の工区に隣接する第2の工区において、前記建物を構成する第2の躯体における少なくとも屋根部を含む一部分の水平力を前記第1の躯体に直接支持させながら、当該一部分を施工する第2先行施工工程と、
前記第2先行施工工程の後に、前記第2の躯体における他の一部分の水平力を前記第1の躯体に直接支持させながら、当該他の一部分を施工する第2後行施工工程と、を含み、
前記複数の工区のうち、車両が前記建物内を出入りするための通行設備と隣接する工区を最先に施工する、
建物の施工方法。
【請求項3】
前記第2先行施工工程時において、
前記第1の躯体は、当該第1の躯体の水平力及び前記第2の躯体の水平力を支持可能に構成されていると共に、当該第1の躯体の鉛直力を支持可能に構成されており、
前記第2の躯体における前記一部分は、当該一部分の水平力を支持不能に構成されていると共に、当該一部分の鉛直力を支持可能に構成されている、
請求項1又は2に記載の建物の施工方法。
【請求項4】
前記第2先行施工工程の前に、前記第1の躯体を補強するための補強材を当該第1の躯体に設ける補強工程を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の建物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物を複数の工区に分割して施工するための技術の一つとして、2つの工区に2つの躯体のフレーム部を先行して施工し、これら2つのフレーム部同士の間に別途設けたレール体を介して他の躯体の屋根部を掛け渡し、その後屋根部の下で他の躯体の残り部分を施工する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-273311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、上述したように、他の躯体の屋根部を設置する際にレール体を別途設ける必要があるので、建物が比較的大きい場合には、レール体の設置数が増えることでレール体の製造コスト及び設置作業の手間が増大してしまうおそれがあることから、施工性の観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、建物の施工性を高めることが可能となる、建物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の建物の施工方法は、建物を複数の工区に分割して施工するための施工方法であって、第1の工区において、前記建物を構成する第1の躯体を施工する第1施工工程と、前記第1施工工程の後又は途中に、前記第1の工区に隣接する第2の工区において、前記建物を構成する第2の躯体における少なくとも屋根部を含む一部分の水平力を前記第1の躯体に直接支持させながら、当該一部分を施工する第2先行施工工程と、前記第2先行施工工程の後に、前記第2の躯体における他の一部分の水平力を前記第1の躯体に直接支持させながら、当該他の一部分を施工する第2後行施工工程と、を含み、前記第2先行施工工程においては、前記第2の躯体の前記一部分に含まれる梁部を当該一部分に含まれる柱部に対して仮固定し、且つ前記第1の躯体に含まれる梁部又は柱部に対して仮固定し、前記第2後行施工工程においては、前記第2の躯体の前記一部分に含まれる梁部を当該一部分に含まれる柱部に対して本固定し、且つ前記第1の躯体に含まれる梁部又は柱部に対して本固定する。
【0007】
請求項2に記載の建物の施工方法は、建物を複数の工区に分割して施工するための施工方法であって、第1の工区において、前記建物を構成する第1の躯体を施工する第1施工工程と、前記第1施工工程の後又は途中に、前記第1の工区に隣接する第2の工区において、前記建物を構成する第2の躯体における少なくとも屋根部を含む一部分の水平力を前記第1の躯体に直接支持させながら、当該一部分を施工する第2先行施工工程と、前記第2先行施工工程の後に、前記第2の躯体における他の一部分の水平力を前記第1の躯体に直接支持させながら、当該他の一部分を施工する第2後行施工工程と、を含み、前記複数の工区のうち、車両が前記建物内を出入りするための通行設備と隣接する工区を最先に施工する。
【0008】
請求項3に記載の建物の施工方法は、請求項1又は2に記載の建物の施工方法において、前記第2先行施工工程時において、前記第1の躯体は、当該第1の躯体の水平力及び前記第2の躯体の水平力を支持可能に構成されていると共に、当該第1の躯体の鉛直力を支持可能に構成されており、前記第2の躯体における前記一部分は、当該一部分の水平力を支持不能に構成されていると共に、当該一部分の鉛直力を支持可能に構成されている。
請求項4に記載の建物の施工方法は、請求項1から3のいずれか一項に記載の建物の施工方法において、前記第2先行施工工程の前に、前記第1の躯体を補強するための補強材を当該第1の躯体に設ける補強工程を含む。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の建物の施工方法によれば、第1の工区において、第1の躯体を施工する第1施工工程と、第1施工工程の後又は途中に、第1の工区に隣接する第2の工区において、第2の躯体における少なくとも屋根部を含む一部分の水平力を第1の躯体に直接支持させながら、当該一部分を施工する第2先行施工工程と、第2先行施工工程の後に、第2の躯体における他の一部分の水平力を第1の躯体に直接支持させながら、当該他の一部分を施工する第2後行施工工程と、を含むので、第1の躯体を施工した後に第2の躯体を施工する際に、第2の躯体の水平力を一方の躯体に直接支持でき、仮設部材を設ける必要がないことから、建物の施工性を高めることができる。また、第2の躯体における屋根部を含む一部分を先行施工することで、全天候において第2の躯体における他の一部分を施工でき、建物の施工性を一層高めることができる。
【0010】
請求項2に記載の建物の施工方法によれば、第1の工区において、第1の躯体を施工する第1施工工程と、第1施工工程の後又は途中に、第1の工区に隣接する第2の工区において、第2の躯体における少なくとも屋根部を含む一部分の水平力を第1の躯体に直接支持させながら、当該一部分を施工する第2先行施工工程と、第2先行施工工程の後に、第2の躯体における他の一部分の水平力を第1の躯体に直接支持させながら、当該他の一部分を施工する第2後行施工工程と、を含むので、第1の躯体を施工した後に第2の躯体を施工する際に、第2の躯体の水平力を一方の躯体に直接支持でき、仮設部材を設ける必要がないことから、建物の施工性を高めることができる。また、第2の躯体における屋根部を含む一部分を先行施工することで、全天候において第2の躯体における他の一部分を施工でき、建物の施工性を一層高めることができる。
【0011】
請求項3に記載の建物の施工方法によれば、第2先行施工工程時において、第1の躯体は、当該第1の躯体の水平力及び第2の躯体の水平力を支持可能に構成されていると共に、当該第1の躯体の鉛直力を支持可能に構成されており、第2の躯体における一部分は、当該一部分の水平力を支持不能に構成されていると共に、当該一部分の鉛直力を支持可能に構成されているので、第2の躯体の一部分を施工する際に、第1の躯体が第2の躯体の一部分の水平力を確実に支持でき、第2の躯体の一部分を安定して施工することができる。また、第2の躯体の一部分の強度を過大に設定することを回避でき、第2の躯体の一部分の製造性を維持できる。
請求項4に記載の建物の施工方法によれば、第2先行施工工程の前に、第1の躯体を補強するための補強材を当該第1の躯体に設ける補強工程を含むので、第1の躯体を補強することができ、第2の躯体を施工する際に第2の躯体を安定して支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る建物の概要を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図2】第1工区施工工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図3】第2工区施工工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図4】第2工区第4工区間施工工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図5】第3工区第4工区間施工工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図6】第4工区施工工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る建物の施工方法の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
〔I〕実施の形態の基本的概念
最初に、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、建物を複数の工区に分割して施工するための施工方法に関する。
【0015】
ここで、「建物」の具体的な構造や種類は任意であり、例えば、物流施設、商業施設、工場施設、アパートやマンションの如き集合住宅、オフィスビル等の建物等を含む概念であるが、実施の形態では、物流施設として説明する。また、「工区」とは、建物が施工される現場の領域を区分けした領域を意味する。
【0016】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0017】
(構成)
最初に、実施の形態に係る施工方法が適用される建物の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る建物の概要を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。ここで、図1のX方向を建物の左右方向(-X方向を建物の左方向、+X方向を建物の右方向)、図2のY方向を建物の前後方向(+Y方向を建物の前方向、-Y方向を建物の後方向)、図1のZ方向を建物の上下方向(+Z方向を建物の上方向、-Z方向を建物の下方向)と称する。なお、図1から後述する図6においては、後述する床部22が施工されている階層21をハッチングで示し、後述する床部22が施工されていない階層21をハッチングで示さないものする。
【0018】
建物1は、図1に示すように、所定の敷地内において、車両が建物1内を出入りするための通行設備10(例えば、ランプウェイ等)に隣接して設けられ、複数の躯体20及び補強材30を備えている。
【0019】
ここで、実施の形態では、図1に示すように、敷地における建物1が施工される施工領域2は、通行設備10と隣接する第1工区2aと、第1工区2aよりも右側に位置する第2工区2bと、第2工区2bよりも右側に位置する第3工区2cと、及び第3工区2cよりも右側に位置する第4工区2dとに区分け(分割)されている。
【0020】
また、第1工区2a、第2工区2b、第3工区2c、及び第4工区2dの各々は、最も後側に位置するA工区3aと、A工区3aよりも前側に位置するB工区3bと、B工区3bよりも前側に位置するC工区3cと、C工区3cよりも前側に位置するD工区3dと、D工区3dよりも前側に位置するE工区3eとにさらに区分けされている。
【0021】
なお、以下では、必要に応じて、複数の躯体20のうち、第1工区2aの躯体20aを「第1躯体20a」と称し、第2工区2bの躯体20bを「第2躯体20b」と称し、第3工区2cの躯体20cを「第3躯体20c」と称し、第4工区2dの躯体20dを「第4躯体20d」と称する。
【0022】
(構成-躯体)
複数の躯体20の各々は、複数の階層21からなるものであり、床部22、屋根部23、柱部24、梁部25、及び壁部26をそれぞれ備えている。なお、以下では、必要に応じて、複数の階層21のうち、地上に位置する最下層の階層21aを「第1階層21a」と称し、第1階層21aより上側の階層21bを「第2階層21b」と称し、第2階層21bより上側の階層21cを「第3階層21c」と称し、第3階層21cより上側の階層21dを「第4階層21d」と称する。
【0023】
床部22は、建物1の階層21を区分けするための部材であり、例えば公知のコンクリート製の床材(一例として、フェローデッキを含むRC製の床材)等で構成されており、相互に間隔を隔てて上下方向に向けて複数並設されている。なお、以下では、必要に応じて、床部22のうち、第1階層21aの床部22aを「第1床部22a」と称し、第2階層21bの床部22bを「第2床部22b」と称し、第3階層21cの床部22cを「第3床部22c」と称し、第4階層21dの床部22dを「第4床部22d」と称する。
【0024】
屋根部23は、建物1の最上方に位置する部材であり、例えば公知の鋼製(一例として、スチール製、ステンレス製)の屋根材等で構成されており、最上階(第4階層21d)の上端において複数並設されている。
【0025】
柱部24は、床部22又は屋根部23を支持する部材であり、例えば公知のコンクリート製の柱材(一例として、RC製のPC柱材)等で構成されており、床部22同士の相互間又は屋根部23と床部22との相互間に複数設けられ、当該床部22、当該屋根部23、又は地表に対して固定具等によって固定されていると共に、当該床部22と柱部24との相互間の隙間にグラウト材を充填することにより固定されている。なお、以下では、必要に応じて、柱部24のうち、第1階層21aの柱部24aを「第1柱部24a」と称し、第2階層21bの柱部24bを「第2柱部24b」と称し、第3階層21cの柱部24cを「第3柱部24c」と称し、第4階層21dの柱部24dを「第4柱部24d」と称する。
【0026】
梁部25は、床部22又は屋根部23を支持する部材であり、例えば公知の鋼製の梁材等で構成されており、床部22の下面又は屋根部23の下面と当接するように複数設けられ、当該床部22又は当該屋根部23に対して固定具等によって固定されている。なお、以下では、必要に応じて、梁部25のうち、第1階層21aの梁部25aを「第1梁部25a」と称し、第2階層21bの梁部25bを「第2梁部25b」と称し、第3階層21cの梁部25cを「第3梁部25c」と称し、第4階層21dの梁部25dを「第4梁部25d」と称する。
【0027】
壁部26は、各階層21の内部空間を仕切るための壁であり、例えば公知の壁材等で構成されており、床部22同士の相互間に複数設けられ、床部22、屋根部23、柱部24、又は梁部25に対して固定具又は嵌合構造等によって固定されている。なお、以下では、必要に応じて、壁部26のうち、第1階層21aの壁部26aを「第1壁部26a」と称し、第2階層21bの壁部26bを「第2壁部26b」と称し、第3階層21cの壁部26cを「第3壁部26c」と称し、第4階層21dの壁部26dを「第4壁部26d」と称する。
【0028】
(構成-補強材)
補強材30は、躯体20を補強するための部材である。この補強材30は、例えば公知の建物用補強材(一例として、建物用ブレース材)を用いて構成され、図1に示すように、複数の躯体20の少なくとも1つ以上に設けられている。具体的には、第2躯体20b、第3躯体20c、及び第4躯体20dの各々におけるB工区3b及びC工区3cの部分の隣接する階層21のうち、少なくとも1組以上の隣接する階層21の床部22同士の相互間にわたって配置され、当該床部22に対して固定具等によって接続されている。
【0029】
(建物の施工方法)
次に、建物1の施工方法について説明する。図2は、第1工区施工工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図3は、第2工区施工工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図4は、第2工区第4工区間施工工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図5は、第3工区第4工区間施工工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図6は、第4工区施工工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0030】
この建物1の施工方法は、建物1を複数の工区に分割して施工するための方法であり、実施の形態では、図2から図6に示すように、第1工区施工工程、第2工区施工工程、第2工区第4工区間施工工程、第3工区第4工区間施工工程、第4工区施工工程、及び仕上工程を含んでいる。
【0031】
(建物の施工方法-第1工区施工工程)
最初に、第1工区施工工程について説明する。第1工区施工工程は、通行設備10の設置後(あるいは、通行設備10の設置前又は設置の途中に)、第1工区2aにおいて第1躯体20aを施工する工程である。
【0032】
実施の形態では、図2に示すように、公知の施工手法(例えば、積層工法)及び図示しない建設重機(例えば、クレーン等)を用いて、第1躯体20aを第1階層21aから第4階層21dの順に施工する(すなわち、最下方の階層21から最上方の階層21に至るように順次施工する)。
【0033】
(建物の施工方法-第1工区施工工程-第1階層について)
具体的には、第1躯体20aの第1階層21aの施工については、まず、第1躯体20aの第1床部22a用の型枠(例えば、フェローデッキ等を含む型枠)を地表に設置し、当該型枠にコンクリートを流し込んで打設した後、当該コンクリートを所定期間固化させることにより、第1床部22aを当該地表に設置する。そして、第1柱部24aを第1床部22aに対して本固定した後に、第1梁部25a及び第1壁部26aを第1床部22a又は第1柱部24aに対して本固定する。
【0034】
ここで、「本固定」とは、部材を固定対象から取り外れないように強固に固定することを意味し、例えば、ボルトを用いて本固定する場合には、ボルトのトルクが閾値以上となるように締め付けること等が該当する。一方、「仮固定」とは、部材を固定対象から容易に取り外すことができるものの、振動等の外力によっては固定対象から脱落しない程度に固定することを意味し、例えば、ボルトを用いて仮固定する場合には、ボルトのトルクが閾値未満となるように締め付けること等が該当する。
【0035】
(建物の施工方法-第1工区施工工程-第2階層について)
また、第1躯体20aの第2階層21bの施工については、まず、第1躯体20aの第2床部22b用の型枠を第1柱部24a及び第1梁部25aの上部に設置し、当該型枠にコンクリートを流し込んで打設した後、当該コンクリートを所定期間固化させることにより、第2床部22bを第1柱部24a及び第1梁部25aに設置する。そして、第2柱部24bを第2床部22bに対して本固定した後に、第2梁部25b及び第2壁部26bを第2床部22b又は第2柱部24bに対して本固定する。
【0036】
(建物の施工方法-第1工区施工工程-第3階層について)
また、第1躯体20aの第3階層21cの施工については、上述した第1躯体20aの第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0037】
(建物の施工方法-第1工区施工工程-第4階層について)
また、第1躯体20aの第4階層21dの施工については、上述した第1躯体20aの第2階層21bの施工と略同様に施工した後に、屋根部23を第4梁部25d又は第4柱部24dに対して本固定する。
【0038】
なお、各階層21の壁部26の設置方法については任意であるが、実施の形態では、設置すべき数よりも少ない数だけ設置することにより、第2工区施工工程以降の工程の作業性を確保している。ただし、これに限らず、例えば、設置すべき数のすべてを設置してもよい(なお、他の工程(ただし、仕上工程を除く)の壁部26の設置方法についても略同様とする)。
【0039】
このような第1工区施工工程により、最先に施工される工区が、端側に位置する第1工区2aであるので、中央側に位置する第2工区2b又は第3工区2cである場合に比べて、効率的な建物1の施工計画(例えば、部材の運搬計画、作業員の配置計画等)を立案しやすくなる。
【0040】
(建物の施工方法-第2工区施工工程)
次に、第2工区施工工程について説明する。第2工区施工工程は、第1工区施工工程の後に、第2工区2bにおいて第2躯体20bの一部分(具体的には、第2躯体20bにおけるA工区3aからE工区3eの一部分)を施工する工程である。
【0041】
ここで、「躯体20の一部分」とは、実施の形態では、躯体20の部分のうち少なくとも屋根部23を含む部分であり、具体的には、床部22を除く部分(例えば、屋根部23、柱部24、梁部25等)が該当する。また、「躯体20の他の一部分」とは、実施の形態では、躯体20の部分のうち、躯体20の一部分以外の部分であり、具体的には、少なくとも床部22を含む部分(例えば、床部22、壁部26等)が該当する。
【0042】
実施の形態では、図3に示すように、公知の施工手法(例えば、屏風建て工法)及び建設重機を用いて、第2躯体20bの一部分の水平力を第1躯体20aに直接支持させながら、当該一部分を施工する。また、第2躯体20bの一部分を第1階層21aから第4階層21dの順に施工する。
【0043】
(建物の施工方法-第2工区施工工程-第1階層について)
具体的には、まず、第2躯体20bの一部分における第1階層21aを施工する。より具体的には、第2躯体20bの第1柱部24aを地表に対して本固定する。また、第2躯体20bの第1梁部25aを第2躯体20bの第1柱部24aに対して仮固定し、且つ第1躯体20aの第1梁部25a又は第1柱部24aに対して仮固定する。
【0044】
ここで、第2躯体20bの第1梁部25aを仮固定する理由については、このタイミングで第2躯体20bの第1梁部25aを本固定しようとすると、第2躯体20bの第1柱部24a等の付近に仮設部材を設置する必要が生じるものの、第1梁部25aを仮固定する際には仮設部材の設置は必ずしも必要ではないので、仮設部材を設置する作業を省略することが可能になるからである(なお、その他の梁部25を仮固定する理由についても、略同様とする)。なお、「仮設部材」とは、作業者が安全に作業を行うために躯体20又はその周辺に仮設される部材であり、例えば、仮設足場(例えば、トピック、コラム、水平ネット)、仮設機材等が該当する。
【0045】
(建物の施工方法-第2工区施工工程-第2階層について)
次に、第2躯体20bの一部分における第2階層21bを施工する。より具体的には、第2躯体20bの第2柱部24bを第2躯体20bの第1柱部24aに対して本固定した後に、第2躯体20bの第2梁部25bを第2躯体20bの第2柱部24bに対して仮固定し、且つ第1躯体20aの第2梁部25b又は第2柱部24bに対して仮固定する。
【0046】
(建物の施工方法-第2工区施工工程-第3階層について)
次いで、第2躯体20bの一部分における第3階層21cを施工し、より具体的には、上述した第2躯体20bの一部分における第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0047】
(建物の施工方法-第2工区施工工程-第4階層について)
続いて、第2躯体20bの一部分における第4階層21dを施工し、より具体的には、上述した第2躯体20bの一部分における第2階層21bの施工と略同様に施工した後に、第2躯体20bの屋根部23を第2躯体20bの第4梁部25d又は第4柱部24dに対して本固定する。
【0048】
(建物の施工方法-第2工区施工工程-その他について)
また、第2工区施工工程時における第1躯体20aと第2躯体20bの一部分との具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、第1躯体20aは、当該第1躯体20aの水平力及び第2躯体20bの水平力を支持可能に構成されていると共に、当該第1躯体20aの鉛直力を支持可能に構成されており、第2躯体20bの一部分は、当該一部分の水平力を支持不能に構成されていると共に、当該一部分の鉛直力を支持可能に構成されている(なお、後述する第2工区第4工区間施工工程における第2躯体20bと第3躯体20cの一部分との具体的な構成、後述する第2工区第4工区間施工工程における第3躯体20cの一部分と第4躯体20dのD工区3dの一部分との具体的な構成、並びに、後述する第3工区第4工区間施工工程における第3躯体20c及び第4躯体20dのD工区3dの部分と第4躯体20dのD工区3d以外の工区の一部分との具体的な構成についても、略同様とする)。
【0049】
具体的には、第1躯体20aについては、設計上第1躯体20aに作用し得る第1躯体20aの水平力、第2躯体20bの水平力、及び第1躯体20aの鉛直力に耐えられるように、第1躯体20aの各種部材(具体的には、床部22、屋根部23、柱部24、梁部25、及び壁部26)の形状、大きさ(具体的には、左右方向の長さ、前後方向の長さ、上下方向の長さ)、及び材質を設定している。また、第2躯体20bの一部分については、設計上第2躯体20bに作用し得る第2躯体20bの鉛直力のみに耐えられるように、第2躯体20bの一部分の各種部材(具体的には、屋根部23、柱部24、及び梁部25)の形状、大きさ、及び材質を設定している。
【0050】
これにより、第2躯体20bの一部分を施工する際に、第1躯体20aが第2躯体20bの一部分の水平力を確実に支持でき、第2躯体20bの一部分を安定して施工することができる。また、第2躯体20bの一部分の強度を過大に設定することを回避でき、第2躯体20bの一部分の製造性を維持できる。
【0051】
また、第2工区施工工程のその他の作業内容については任意であるが、実施の形態では、図3に示すように、補強材30を第2躯体20bに設ける補強工程をさらに含んでいる(なお、第2工区第4工区間施工工程、及び第3工区第4工区間施工工程についても略同様とする)。
【0052】
具体的には、上述した作業の終了後又は途中に、第2躯体20bのB工区3b及びD工区3dにおける少なくとも1つ以上の階層21に一対の補強材30を設けて、当該部分の床部22及び隣接する床部22に対して固定具等によって本固定する。
【0053】
これにより、第2躯体20bを補強することができ、第3躯体20cを施工する際に第3躯体20cを安定して支持できる。
【0054】
このような第2工区施工工程により、第2躯体20bの一部分を施工する際に第2躯体20bの一部分の水平力を第1躯体20aに直接支持でき、仮設部材を設ける必要がないことから、第2躯体20bの一部分の施工性を高めることができる。また、第2躯体20bの一部分を先行施工することで、全天候において第2躯体20bの他の一部分を施工でき、第2躯体20bの施工性を高めやすくなる。特に、第2躯体20bの床部22がコンクリート製であるので、全天候において当該床部22のコンクリート打設を行うことができ、雨等による当該床部22の施工遅延を回避できる。
【0055】
なお、第2工区施工工程の施工時においては、第1躯体20aは、特許請求の範囲における「第1の躯体」に対応し、第2躯体20bは、特許請求の範囲における「第2の躯体」に対応する。また、第1工区施工工程は、特許請求の範囲における「第1施工工程」に対応し、第2工区施工工程は、特許請求の範囲における「第2先行施工工程」(具体的には、第1施工工程の後に行われる「第2先行施工工程」)に対応する。
【0056】
(建物の施工方法-第2工区第4工区間施工工程)
次に、第2工区第4工区間施工工程について説明する。第2工区第4工区間施工工程は、第2工区施工工程の後に、第2工区2bから第4工区間において第2躯体20bの他の一部分(具体的には、第2躯体20bのA工区3aからE工区3eの他の一部分)、第3躯体20cの一部分(具体的には、第3躯体20cのA工区3aからE工区3eの一部分)、及び第4躯体20dの一部分(具体的には、第4躯体20dのD工区3dの一部分)を施工する工程である。
【0057】
実施の形態では、図4に示すように、公知の施工手法(例えば、屏風建て工法)及び建設重機を用いて、第2躯体20bの他の一部分の水平力を第1躯体20aに直接支持させながら、当該他の一部分を施工すると共に、第3躯体20cの一部分の水平力を第2躯体20bに直接支持させ、且つ第4躯体20dの一部分の水平力を第3躯体20cに直接支持させながら、これら一部分を施工する。また、第2躯体20bの他の一部分、第3躯体20cの一部分、及び第4躯体20dの一部分を第1階層21aから第4階層21dの順に施工する。
【0058】
ここで、第2工区第4工区間施工工程において、第4躯体20dのD工区3dの一部分を施工する理由は、第4躯体20dのD工区3dの一部分を先行施工することにより、図5(a)に示すように、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の部分を施工する際に、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の部分の水平力を第3躯体20c及び第4躯体20dのD工区3dの部分に支持させるためである。特に、第3躯体20cに第4躯体20dのD工区3d以外の工区の部分の左右方向の水平力を支持させ、第4躯体20dのD工区3dの部分に第4躯体20dのD工区3d以外の工区の部分の左右方向とは異なる方向の水平力(図5では、前後方向の水平力)を支持させることで、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の部分の施工時の安定性を高めることが可能となる。
【0059】
(建物の施工方法-第2工区第4工区間施工工程-第1階層について)
具体的には、まず、第2躯体20bの他の一部分における第1階層21aを施工すると共に、第3躯体20cの一部分及び第4躯体20dのD工区3dの一部分の各々における第1階層21aを施工する。
【0060】
より具体的には、第2躯体20bの上記第1階層21aの施工については、まず、第2躯体20bの第1床部22a用の型枠を地表に設置し、当該型枠にコンクリートを流し込んで打設した後、当該コンクリートを所定期間固化させることにより、第2躯体20bの第1床部22aを地表に設置すると共に、第1躯体20aの第1床部22aと連結する。その後、第2躯体20bの第1梁部25aを第2躯体20bの第1柱部24aに対して本固定し、且つ第1躯体20aの第1梁部25a又は第1柱部24aに対して本固定する。また、第2躯体20bの第1壁部26aを第2躯体20bの第1柱部24aに対して本固定する。
【0061】
また、第3躯体20cにおける上記第1階層21aの施工については、第3躯体20cの第1柱部24aを地表に対して本固定した後に、第3躯体20cの第1梁部25aを第3躯体20cの第1柱部24aに対して仮固定し、且つ第2躯体20bの第1梁部25a又は第1柱部24aに対して仮固定する。
【0062】
また、第4躯体20dにおける上記第1階層21aの施工については、上述した第3躯体20cにおける上記第1階層21aの施工と略同様に施工する。
【0063】
(建物の施工方法-第2工区第4工区間施工工程-第2階層について)
次に、第2躯体20bの他の一部分における第2階層21bを施工すると共に、第3躯体20cの一部分及び第4躯体20dのD工区3dの一部分の各々における第2階層21bを施工する。
【0064】
より具体的には、第2躯体20bの上記第2階層21bの施工については、第2躯体20bの第2床部22b用の型枠を第2躯体20bの第1柱部24a及び第1梁部25aの上部に設置し、当該型枠にコンクリートを流し込んで打設した後、当該コンクリートを所定期間固化させることにより、第2躯体20bの第2床部22bを第2躯体20bの第1柱部24a及び第1梁部25aに設置すると共に、第1躯体20aの第2床部22bと連結する。その後、第2躯体20bの第2梁部25bを第2躯体20bの第2柱部24bに対して本固定し、且つ第1躯体20aの第2梁部25b又は第2柱部24bに対して本固定する。また、第2躯体20bの第2壁部26bを第2躯体20bの第2柱部24bに対して本固定する。
【0065】
また、第3躯体20cの上記第2階層21bの施工については、第3躯体20cの第2柱部24bを第3躯体20cの第1柱部24aに対して本固定した後に、第3躯体20cの第2梁部25bを第3躯体20cの第2柱部24bに対して仮固定し、且つ第2躯体20bの第2梁部25b又は第2柱部24bに対して仮固定する。
【0066】
また、第4躯体20dの上記第2階層21bの施工については、上述した第3躯体20cにおける上記第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0067】
(建物の施工方法-第2工区第4工区間施工工程-第3階層について)
次に、第2躯体20bの他の一部分における第3階層21cを施工すると共に、第3躯体20cの一部分及び第4躯体20dのD工区3dの一部分の各々における第3階層21cを施工する。
【0068】
より具体的には、第2躯体20bの上記第3階層21cの施工については、上述した第2躯体20bの上記第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0069】
また、第3躯体20cの上記第3階層21cの施工については、上述した第3躯体20cの上記第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0070】
また、第4躯体20dの上記第3階層21cの施工については、上述した第3躯体20cにおける上記第3階層21cの施工と略同様に施工する。
【0071】
(建物の施工方法-第2工区第4工区間施工工程-第4階層について)
続いて、第2躯体20bの他の一部分における第4階層21dを施工すると共に、第3躯体20cの一部分及び第4躯体20dのD工区3dの一部分の各々における第4階層21dを施工する。
【0072】
より具体的には、第2躯体20bの上記第4階層21dの施工については、上述した第2躯体20bの上記第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0073】
また、第3躯体20cの上記第4階層21dの施工については、上述した第3躯体20cの上記第2階層21bの施工と略同様に施工した後に、第3躯体20cの屋根部23を第3躯体20cの第4梁部25d又は第4柱部24dに対して本固定する。
【0074】
また、第4躯体20dの上記第4階層21dの施工については、上述した第3躯体20cにおける上記第4階層21dの施工と略同様に施工する。
【0075】
このような第2工区第4工区間施工工程により、第2躯体20bの他の一部分を施工する際に第2躯体20bの他の一部分の水平力を第1躯体20aに直接支持でき、仮設部材を設ける必要がないことから、第2躯体20bの他の一部分の施工性を高めることができる。また、第3躯体20cの一部分及び第4躯体20dのD工区3dの一部分を先行施工することで、全天候において第3躯体20cの他の一部分及び第4躯体20dのD工区3dの他の一部分を施工でき、第3躯体20c及び第4躯体20dの施工性を高めやすくなる。特に、第3躯体20c及び第4躯体20dのD工区3dの床部22がコンクリート製であるので、全天候において当該床部22のコンクリート打設を行うことができ、雨等による当該床部22の施工遅延を回避できる。
【0076】
なお、第2工区第4工区間施工工程における第2躯体20bの施工時においては、第1躯体20aは、特許請求の範囲における「第1の躯体」に対応し、第2躯体20bは、特許請求の範囲における「第2の躯体」に対応する。また、第2工区第4工区間施工工程のうち第2躯体20bの他の一部分を施工する工程は、特許請求の範囲における「第2後行施工工程」に対応する。
【0077】
また、第2工区第4工区間施工工程における第3躯体20cの施工時においては、第2躯体20bは、特許請求の範囲における「第1の躯体」に対応し、第3躯体20cは、特許請求の範囲における「第2の躯体」に対応する。また、第2工区施工工程及び第2工区第4工区間施工工程のうち第2躯体20bの他の一部分を施工する工程は、特許請求の範囲における「第1施工工程」に対応し、第2工区第4工区間施工工程のうち第3躯体20cの一部分を施工する工程は、特許請求の範囲における「第2先行施工工程」(具体的には、第1施工工程の途中に行われる「第2先行施工工程」)に対応する。
【0078】
また、第2工区第4工区間施工工程における第4躯体20dの施工時においては、第3躯体20cは、特許請求の範囲における「第1の躯体」に対応し、第4躯体20dは、特許請求の範囲における「第2の躯体」に対応する。また、第2工区第4工区間施工工程のうち第3躯体20cの一部分を施工する工程は、特許請求の範囲における「第1施工工程」に対応し、第2工区第4工区間施工工程のうち第4躯体20dのD工区3dの一部分を施工する工程は、特許請求の範囲における「第2先行施工工程」(具体的には、第1施工工程の途中に行われる「第2先行施工工程」)に対応する。
【0079】
(建物の施工方法-第3工区第4工区間施工工程)
次に、第3工区第4工区間施工工程について説明する。第3工区第4工区間施工工程は、第2工区第4工区間施工工程の後に、第3工区2cから第4工区2d間において第3躯体20cの他の一部分(具体的には、第3躯体20cのA工区3aからE工区3eの他の一部分)、第4躯体20dのD工区3dの他の一部分、及び第4躯体20dのD工区3d以外の工区(具体的には、A工区3a、B工区3b、C工区3c、E工区3e)の一部分を施工する工程である。
【0080】
実施の形態では、図5に示すように、公知の施工手法(例えば、屏風建て工法)及び建設重機を用いて、第3躯体20cの他の一部分の水平力を第2躯体20bに直接支持させ、且つ第4躯体20dのD工区3dの他の一部分の水平力を第3躯体20cに直接支持させながら、これら他の一部分を施工すると共に、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の一部分の水平力を第3躯体20c及び第4躯体20dのD工区3dの部分に直接支持させながら、当該一部分を施工する。また、第3躯体20cの他の一部分、第4躯体20dのD工区3dの他の一部分、及び第4躯体20dのD工区3d以外の工区の一部分を第1階層21aから第4階層21dの順に施工する。
【0081】
(建物の施工方法-第3工区第4工区間施工工程-第1階層について)
具体的には、まず、第3躯体20cの他の一部分及び第4躯体20dのD工区3dの他の一部分の各々における第1階層21aを施工すると共に、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の一部分における第1階層21aを施工する。
【0082】
より具体的には、第3躯体20cの上記第1階層21aの施工については、まず、第3躯体20cの第1床部22a用の型枠を地表に設置し、当該型枠にコンクリートを流し込んで打設した後、当該コンクリートを所定期間固化させることにより、第3躯体20cの第1床部22aを地表に設置すると共に、第2躯体20bの第1床部22aと連結する。その後、第3躯体20cの第1梁部25aを第3躯体20cの第1柱部24aに対して本固定し、且つ第2躯体20bの第1梁部25a又は第1柱部24aに対して本固定する。また、第3躯体20cの第1壁部26aを第3躯体20cの第1柱部24aに対して本固定する。
【0083】
また、第4躯体20dのD工区3dにおける上記第1階層21aの施工については、上述した第3躯体20cの上記第1階層21aの施工と略同様に施工する。
【0084】
また、第4躯体20dのD工区3d以外の工区における上記第1階層21aの施工については、第4躯体20dの第1柱部24aを地表に対して本固定した後に、第4躯体20dの第1梁部25aを第4躯体20dの第1柱部24aに対して仮固定し、且つ第3躯体20cの第1梁部25a又は第1柱部24aに対して仮固定する。さらに、第4躯体20dのC工区3c及びE工区3eの各々の第1梁部25aを第4躯体20dのD工区3dの第1梁部25a又は第1柱部24aに対して仮固定する。
【0085】
(建物の施工方法-第3工区第4工区間施工工程-第2階層について)
次に、第3躯体20cの他の一部分及び第4躯体20dのD工区3dの他の一部分の各々における第2階層21bを施工すると共に、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の一部分における第2階層21bを施工する。
【0086】
より具体的には、第3躯体20cの上記第2階層21bの施工については、まず、第3躯体20cの第2床部22b用の型枠を第3躯体20cの第1柱部24a及び第1梁部25aの上部に設置し、当該型枠にコンクリートを流し込んで打設した後、当該コンクリートを所定期間固化させることにより、第3躯体20cの第2床部22bを第3躯体20cの第1柱部24a及び第1梁部25aに設置すると共に、第2躯体20bの第2床部22bと連結する。その後、第3躯体20cの第2梁部25bを第3躯体20cの第2柱部24bに対して本固定し、且つ第2躯体20bの第2梁部25b又は第2柱部24bに対して本固定する。また、第3躯体20cの第2壁部26bを第3躯体20cの第2柱部24bに対して本固定する。
【0087】
また、第4躯体20dのD工区3dにおける上記第2階層21bの施工については、上述した第3躯体20cの上記第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0088】
また、第4躯体20dのD工区3d以外の工区における上記第2階層21bの施工については、第4躯体20dの第2柱部24bを第4躯体20dの第1柱部24aに対して本固定した後に、第4躯体20dの第2梁部25bを第4躯体20dの第2柱部24bに対して仮固定し、且つ第3躯体20cの第2梁部25b又は第2柱部24bに対して仮固定する。さらに、第4躯体20dのC工区3c及びE工区3eの各々の第2梁部25bを第4躯体20dのD工区3dの第2梁部25b又は第2柱部24bに対して仮固定する。
【0089】
(建物の施工方法-第3工区第4工区間施工工程-第3階層について)
次に、第3躯体20cの他の一部分及び第4躯体20dのD工区3dの他の一部分の各々における第3階層21cを施工すると共に、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の一部分における第3階層21cを施工する。
【0090】
より具体的には、第3躯体20cの上記第3階層21cの施工については、上述した第3躯体20cの上記第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0091】
また、第4躯体20dのD工区3dにおける上記第3階層21cの施工については、上述した第3躯体20cの上記第3階層21cの施工と略同様に施工する。
【0092】
また、第4躯体20dのD工区3d以外の工区における上記第3階層21cの施工については、上述した第4躯体20dのD工区3d以外の工区における上記第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0093】
(建物の施工方法-第3工区第4工区間施工工程-第4階層について)
続いて、第3躯体20cの他の一部分及び第4躯体20dのD工区3dの他の一部分の各々における第4階層21dを施工すると共に、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の一部分における第4階層21dを施工する。
【0094】
より具体的には、第3躯体20cの上記第4階層21dの施工については、上述した第3躯体20cの上記第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0095】
また、第4躯体20dのD工区3dにおける上記第4階層21dの施工については、上述した第3躯体20cの上記第4階層21dの施工と略同様に施工する。
【0096】
また、第4躯体20dのD工区3d以外の工区における上記第4階層21dの施工については、上述した第4躯体20dのD工区3d以外の工区における上記第2階層21bの施工と略同様に施工した後に、第4躯体20dの屋根部23を第4躯体20dの第4梁部25d又は第4柱部24dに対して本固定する。
【0097】
このような第3工区第4工区間施工工程により、第3躯体20cの他の一部分を施工する際に第3躯体20cの他の一部分の水平力を第2躯体20bに直接支持でき、仮設部材を設ける必要がないことから、第3躯体20cの他の一部分の施工性を高めることができる。また、第4躯体20dのD工区3dの他の一部分を施工する際に第4躯体20dのD工区3dの他の一部分の水平力を第3躯体20cに直接支持でき、仮設部材を設ける必要がないことから、第4躯体20dのD工区3dの他の一部分の施工性を高めることができる。また、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の一部分を先行施工することで、全天候において第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分を施工でき、第4躯体20dの施工性を高めやすくなる。特に、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の床部22がコンクリート製であるので、全天候において当該床部22のコンクリート打設を行うことができ、雨等による当該床部22の施工遅延を回避できる。
【0098】
なお、第3工区第4工区間施工工程における第3躯体20cの施工時においては、第2躯体20bは、特許請求の範囲における「第1の躯体」に対応し、第3躯体20cは、特許請求の範囲における「第2の躯体」に対応する。また、第3工区第4工区間施工工程のうち第3躯体20cの他の一部分を施工する工程は、特許請求の範囲における「第2後行施工工程」に対応する。
【0099】
また、第3工区第4工区間施工工程における第4躯体20dのD工区3dの部分の施工時においては、第3躯体20cは、特許請求の範囲における「第1の躯体」に対応し、第4躯体20dは、特許請求の範囲における「第2の躯体」に対応する。また、第3工区第4工区間施工工程のうち第4躯体20dのD工区3dの他の一部分を施工する工程は、特許請求の範囲における「第2後行施工工程」に対応する。
【0100】
また、第3工区第4工区間施工工程における第4躯体20dのD工区3d以外の工区の部分の施工時においては、第3躯体20c及び第4躯体20dのD工区3dの他の一部分は、特許請求の範囲における「第1の躯体」に対応し、第4躯体20dのD工区3d以外の区分の一部分は、特許請求の範囲における「第2の躯体」に対応する。また、第3工区第4工区間施工工程のうち第3躯体20c及び第4躯体20dのD工区3dの他の一部分を施工する工程は、特許請求の範囲における「第1施工工程」に対応し、第3工区第4工区間施工工程のうち第4躯体20dのD工区3d以外の一部分を施工する工程は、特許請求の範囲における「第2先行施工工程」(具体的には、第1施工工程の途中に行われる「第2先行施工工程」)に対応する。
【0101】
(建物の施工方法-第4工区施工工程)
次に、第4工区施工工程について説明する。第4工区施工工程は、第3工区第4工区間施工工程の後に、第4工区2dにおいて第4躯体20dの他の一部分(具体的には、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分)を施工する工程である。
【0102】
実施の形態では、図に示すように、公知の施工手法(例えば、屏風建て工法)及び建設重機を用いて、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分の水平力を第3躯体20c及び第4躯体20dのD工区3dの部分に直接支持させながら、当該他の一部分を施工する。また、第4躯体20dのD工区3d以外の工区を第1階層21aから第4階層21dの順に施工する。
【0103】
(建物の施工方法-第4工区施工工程-第1階層について)
具体的には、まず、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分における第1階層21aを施工する。
【0104】
より具体的には、まず、第4躯体20dのD工区3d以外の工区における第1床部22a用の型枠を地表に設置し、当該型枠にコンクリートを流し込んで打設した後、当該コンクリートを所定期間固化させることにより、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の第1床部22aを地表に設置すると共に、第3躯体20cの第1床部22aと第4躯体20dのD工区3dの第1床部22aと連結する。その後、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の第1梁部25aを第4躯体20dのD工区3d以外の工区の第1柱部24aに対して本固定し、且つ第3躯体20cの第1梁部25a又は第1柱部24aに対して本固定する。また、第4躯体20dのC工区3c及びE工区3eの各々の第1梁部25aを第4躯体20dのD工区3dの第1梁部25a又は第1柱部24aに対して本固定する。さらに、第4躯体20dの第1壁部26aを第4躯体20dの第1柱部24aに対して本固定する。
【0105】
(建物の施工方法-第4工区施工工程-第2階層について)
次に、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分における第2階層21bを施工する。
【0106】
より具体的には、まず、第4躯体20dのD工区3d以外の工区における第2床部22b用の型枠を第4躯体20dの第1柱部24a及び第1梁部25aの上部に設置し、当該型枠にコンクリートを流し込んで打設した後、当該コンクリートを所定期間固化させることにより、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の第2床部22bを第4躯体20dの第1柱部24a及び第1梁部25aに設置すると共に、第3躯体20cの第2床部22bと第4躯体20dのD工区3dの第2床部22bと連結する。その後、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の第2梁部25bを第4躯体20dのD工区3d以外の工区の第2柱部24bに対して本固定し、且つ第3躯体20cの第2梁部25b又は第2柱部24bに対して本固定する。また、第4躯体20dのC工区3c及びE工区3eの各々の第2梁部25bを第4躯体20dのD工区3dの第2梁部25b又は第2柱部24bに対して本固定する。さらに、第4躯体20dの第2壁部26bを第4躯体20dの第2柱部24bに対して本固定する。
【0107】
(建物の施工方法-第4工区施工工程-第3階層について)
次に、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分における第3階層21cを施工し、より具体的には、上述した第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分における第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0108】
(建物の施工方法-第4工区施工工程-第4階層について)
続いて、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分における第4階層21dを施工し、より具体的には、上述した第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分における第2階層21bの施工と略同様に施工する。
【0109】
このような第4工区施工工程により、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分を施工する際に第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分の水平力を第3躯体20c及び第4躯体20dのD工区3dの部分に直接支持でき、仮設部材を設ける必要がないことから、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の他の一部分の施工性を高めることができる。
【0110】
なお、第4工区施工工程の施工時においては、第3躯体20c及び第4躯体20dのD工区3dの部分は、特許請求の範囲における「第1の躯体」に対応し、第4躯体20dのD工区3d以外の工区の部分は、特許請求の範囲における「第2の躯体」に対応する。また、第4工区施工工程は、特許請求の範囲における「第2後行施工工程」に対応する。
【0111】
(建物の施工方法-仕上工程)
続いて、仕上工程について説明する。仕上工程は、第4工区施工工程の後に、建物1の仕上げを行う工程である。
【0112】
具体的には、第1躯体20aから第4躯体20dにおける残りの部材(例えば、残りの壁部26等)を、対応する床部22、梁部25、柱部24、又は壁部26に対して本固定する。また、第1躯体20aから第4躯体20dにおいて、建物1の外装工事(例えば、壁部26又は屋根部23外面の塗装工事等)及び内装工事(例えば、壁部26又は床部22の内面の塗装工事等)を行う。さらに、各工程で使用した建設重機や機材等を撤去する。これにより、図1に示す建物1を施工することができる。
【0113】
以上のような建物1の施工方法により、建物1における隣接する2つの躯体20のうち、一方の躯体20を施工した後に他方の躯体20を施工する際に、他方の躯体20の水平力を一方の躯体20に直接支持でき、仮設部材を設ける必要がないことから、建物1の施工性を高めることができる。また、上記他方の躯体20における屋根部23を含む一部分を先行施工することで、全天候において上記他方の躯体20における他の一部分を施工でき、建物1の施工性を一層高めることができる。
【0114】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、第1の工区において、第1の躯体20を施工する第1施工工程と、第1施工工程の後又は途中に、第1の工区に隣接する第2の工区において、第2の躯体20における少なくとも屋根部23を含む一部分の水平力を第1の躯体20に直接支持させながら、当該一部分を施工する第2先行施工工程と、第2先行施工工程の後に、第2の躯体20における他の一部分の水平力を第1の躯体20に直接支持させながら、当該他の一部分を施工する第2後行施工工程と、を含むので、第1の躯体20を施工した後に第2の躯体20を施工する際に、第2の躯体20の水平力を一方の躯体20に直接支持でき、仮設部材を設ける必要がないことから、建物1の施工性を高めることができる。また、第2の躯体20における屋根部23を含む一部分を先行施工することで、全天候において第2の躯体20における他の一部分を施工でき、建物1の施工性を一層高めることができる。
【0115】
また、第2先行施工工程時において、第1の躯体20は、当該第1の躯体20の水平力及び第2の躯体20の水平力を支持可能に構成されていると共に、当該第1の躯体20の鉛直力を支持可能に構成されており、第2の躯体20における一部分は、当該一部分の水平力を支持不能に構成されていると共に、当該一部分の鉛直力を支持可能に構成されているので、第2の躯体20の一部分を施工する際に、第1の躯体20が第2の躯体20の一部分の水平力を確実に支持でき、第2の躯体20の一部分を安定して施工することができる。また、第2の躯体20の一部分の強度を過大に設定することを回避でき、第2の躯体20の一部分の製造性を維持できる。
【0116】
また、第2先行施工工程の前に、第1の躯体20を補強するための補強材30を当該第1の躯体20に設ける補強工程を含むので、第1の躯体20を補強することができ、第2の躯体20を施工する際に第2の躯体20を安定して支持できる。
【0117】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0118】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決することや、前記に記載されていない効果を奏することもできる。また、記載されている課題の一部のみを解決することや、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0119】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0120】
(建物について)
上記実施の形態では、床部22が、コンクリート製であると説明したが、これに限らず、例えば、非コンクリート製(一例として、鋼製)であってもよい。
【0121】
また、上記実施の形態では、建物1が補強材30を備えていると説明したが、これに限らず、例えば、各躯体20の施工時に各躯体20の強度を確保できる場合には、補強材30を省略してもよい。この場合には、建物1の施工方法のうち、第2工区施工工程、第2工区第4工区間施工工程、及び第3工区第4工区間施工工程において行われる補強工程を省略してもよい。
【0122】
(施工領域について)
上記実施の形態では、施工領域が4つの工区(第1工区2aから第4工区2d)に区分けされていると説明したが、これに限らない。例えば、2つの工区又は3つの工区に区分けされてもよく、あるいは、5つ以上の工区に区分けされてもよい。
【0123】
また、上記実施の形態では、第1工区2aから第4工区2dの各々が5つの工区(A工区3aからE工区3e)にさらに区分けされていると説明したが、これに限らない。例えば、5つ未満の工区に区分けされてもよく、あるいは、6つ以上の工区に区分けされてもよい。
【0124】
(建物の施工方法について)
上記実施の形態では、建物1の施工方法が、仕上工程を含むと説明したが、これに限らず、例えば、仕上工程を省略してもよい。
【0125】
また、上記実施の形態では、建物1の施工方法において最先に施工される工区が、第1工区2aであると説明したが、これに限らず、例えば、第1工区2a以外の工区(例えば、第2工区2bから第4工区2dのいずれか)であってもよい。
【0126】
また、上記実施の形態では、第2工区施工工程が、第1工区施工工程の後に行われると説明したが、これに限らず、例えば、第1工区施工工程の途中に行われもよく、一例として、第1躯体20aの床部22を設置する前に行われてもよい。
【0127】
また、上記実施の形態では、第2工区施工工程において、第2躯体20bの梁部25を第2躯体20bの柱部24に対して仮固定し、且つ第1躯体20aの梁部25又は柱部24に対して仮固定すると説明したが、これに限らず、例えば、第2躯体20bの梁部25を第2躯体20bの柱部24に対して本固定し、且つ第1躯体20aの梁部25又は柱部24に対して本固定してもよい(なお、第2工区第4工区間施工工程、及び第3工区第4工区間施工工程についても略同様とする)。
【0128】
また、上記実施の形態では、第2工区第4工区間施工工程において、第4躯体20dのD工区3dの一部分を施工すると説明したが、これに限らず、例えば、第4躯体20dを安定して施工できる場合には、第4躯体20dのD工区3dの一部分を施工することを省略してもよい。この場合には、第3工区第4工区間施工工程において、第4躯体20dのA工区3aからE工区3eの一部分を施工した後に、第4工区施工工程において、第4躯体20dのA工区3aからE工区3eの他の一部分を施工してもよい。
【0129】
また、上記実施の形態では、第2工区第4工区間施工工程における第3躯体20cの施工時においては、第2躯体20bが、特許請求の範囲における「第1の躯体」に対応すると説明したが、これに限らず、例えば、第1躯体20a及び第2躯体20bは、特許請求の範囲における「第1の躯体」に対応してもよい。この場合には、第1躯体20a及び第2躯体20bは、第2躯体20bの水平力及び第3躯体20cの水平力を支持可能に構成されてもよい(なお、第2工区第4工区間施工工程における第4躯体20dの施工時、及び、第3工区第4工区間施工工程における第4躯体20dのD工区3d以外の工区の一部分の施工時についても略同様とする)。
【0130】
(付記)
付記1の建物の施工方法は、建物を複数の工区に分割して施工するための施工方法であって、第1の工区において、前記建物を構成する第1の躯体を施工する第1施工工程と、前記第1施工工程の後又は途中に、前記第1の工区に隣接する第2の工区において、前記建物を構成する第2の躯体における少なくとも屋根部を含む一部分の水平力を前記第1の躯体に直接支持させながら、当該一部分を施工する第2先行施工工程と、前記第2先行施工工程の後に、前記第2の躯体における他の一部分の水平力を前記第1の躯体に直接支持させながら、当該他の一部分を施工する第2後行施工工程と、を含む。
【0131】
付記2の建物の施工方法は、付記1に記載の建物の施工方法において、前記第2先行施工工程時において、前記第1の躯体は、当該第1の躯体の水平力及び前記第2の躯体の水平力を支持可能に構成されていると共に、当該第1の躯体の鉛直力を支持可能に構成されており、前記第2の躯体における前記一部分は、当該一部分の水平力を支持不能に構成されていると共に、当該一部分の鉛直力を支持可能に構成されている。
【0132】
付記3の建物の施工方法は、付記1又は2に記載の建物の施工方法において、前記第2先行施工工程の前に、前記第1の躯体を補強するための補強材を当該第1の躯体に設ける補強工程を含む。
【0133】
(付記の効果)
付記1に記載の建物の施工方法によれば、第1の工区において、第1の躯体を施工する第1施工工程と、第1施工工程の後又は途中に、第1の工区に隣接する第2の工区において、第2の躯体における少なくとも屋根部を含む一部分の水平力を第1の躯体に直接支持させながら、当該一部分を施工する第2先行施工工程と、第2先行施工工程の後に、第2の躯体における他の一部分の水平力を第1の躯体に直接支持させながら、当該他の一部分を施工する第2後行施工工程と、を含むので、第1の躯体を施工した後に第2の躯体を施工する際に、第2の躯体の水平力を一方の躯体に直接支持でき、仮設部材を設ける必要がないことから、建物の施工性を高めることができる。また、第2の躯体における屋根部を含む一部分を先行施工することで、全天候において第2の躯体における他の一部分を施工でき、建物の施工性を一層高めることができる。
【0134】
付記2に記載の建物の施工方法によれば、第2先行施工工程時において、第1の躯体は、当該第1の躯体の水平力及び第2の躯体の水平力を支持可能に構成されていると共に、当該第1の躯体の鉛直力を支持可能に構成されており、第2の躯体における一部分は、当該一部分の水平力を支持不能に構成されていると共に、当該一部分の鉛直力を支持可能に構成されているので、第2の躯体の一部分を施工する際に、第1の躯体が第2の躯体の一部分の水平力を確実に支持でき、第2の躯体の一部分を安定して施工することができる。また、第2の躯体の一部分の強度を過大に設定することを回避でき、第2の躯体の一部分の製造性を維持できる。
【0135】
付記3に記載の建物の施工方法によれば、第2先行施工工程の前に、第1の躯体を補強するための補強材を当該第1の躯体に設ける補強工程を含むので、第1の躯体を補強することができ、第2の躯体を施工する際に第2の躯体を安定して支持できる。
【符号の説明】
【0136】
1 建物
2a 第1工区
2b 第2工区
2c 第3工区
2d 第4工区
3a A工区
3b B工区
3c C工区
3d D工区
3e E工区
10 通行設備
20 躯体
20a 第1躯体
20b 第2躯体
20c 第3躯体
20d 第4躯体
21 階層
21a 第1階層
21b 第2階層
21c 第3階層
21d 第4階層
22 床部
22a 第1床部
22b 第2床部
22c 第3床部
22d 第4床部
23 屋根部
24 柱部
24a 第1柱部
24b 第2柱部
24c 第3柱部
24d 第4柱部
25 梁部
25a 第1梁部
25b 第2梁部
25c 第3梁部
25d 第4梁部
26 壁部
26a 第1壁部
26b 第2壁部
26c 第3壁部
26d 第4壁部
30 補強材
図1
図2
図3
図4
図5
図6