(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】船舶制御装置、船舶制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B63H 21/21 20060101AFI20240612BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B63H21/21
F02D45/00 362
(21)【出願番号】P 2020089622
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】榊原 隆嗣
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 隼平
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-077760(JP,A)
【文献】特開2019-148212(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110678637(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0139452(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0288744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/21
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の推進力を発生させるエンジンの回転数を検出する複数の検出部が検出したそれぞれの回転数を取得する取得部と、
取得された回転数の値が異なる場合に、取得された回転数、及び、前記エンジンの目標回転数と前記エンジンの状態に関する情報である状態情報と前記船舶の船速とのうちの少なくとも1つに基づき、前記エンジンの
実際の回転数である実回転数を決定する決定部と、
を備える船舶制御装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記取得部が取得した回転数同士の差分が所定値以上である場合に、最も高い回転数を前記
実回転数として決定する、
請求項1に記載の船舶制御装置。
【請求項3】
前記決定部は
、燃料投入量と前記エンジンの出力とに基づいて推定回転数を算出し、前記取得部が取得した回転数の中から算出した前記推定回転数に最も近い回転数を前記
実回転数として決定する、
請求項1又は2に記載の船舶制御装置。
【請求項4】
前記状態情報は、前記エンジンに投入される燃料投入量を含み、
前記決定部は、前記燃料投入量が所定量以上の場合に、前記取得部が取得した回転数の中から前記目標回転数に最も近い回転数を前記
実回転数として決定する、
請求項1又は2に記載の船舶制御装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記目標回転数が決定されたタイミングにおける前
記エンジンの回転数と、前記目標回転数と、前記タイミングから前記複数の検出部が回転数を検出するまでの経過時間と、に基づき、前記取得部が取得した回転数のうちの1つの値を前記
実回転数として決定する、
請求項1又は2に記載の船舶制御装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記目標回転数が所定の時間にわたって略一定である場合に、前記取得部が取得した回転数の中から前記目標回転数に最も近い値を前記
実回転数として決定する、
請求項1又は2に記載の船舶制御装置。
【請求項7】
前記状態情報は、前記エンジンに投入される燃料投入量を含み、
前記決定部は、前記燃料投入量が所定の時間にわたって略一定である場合に、前記取得部が取得した回転数の中から前記目標回転数に最も近い値を前記
実回転数として決定する、
請求項1又は2に記載の船舶制御装置。
【請求項8】
前記状態情報は、前記エンジンの回転方向及び前記エンジンの燃料投入量を含み、
前記決定部は、前記エンジンに燃料が投入されていない場合には、前記船速に基づき、前記
実回転数を決定する、
請求項1又は2に記載の船舶制御装置。
【請求項9】
前記決定部で決定された
実回転数に基づいて前記エンジンに投入される燃料の投入量と前記燃料の投入タイミングとを決定するエンジン制御部、
をさらに備える請求項1から8のいずれか一項に記載の船舶制御装置。
【請求項10】
船舶の推進力を発生させるエンジンの回転数を検出する複数の検出部が検出したそれぞれの回転数を取得する取得ステップと、
取得された回転数の値が異なる場合に、取得された回転数、及び、前記エンジンの目標回転数と前記エンジンの状態に関する情報である状態情報と前記船舶の船速とのうちの少なくとも1つに基づき、前記エンジンの
実際の回転数である実回転数を決定する決定ステップと、
を有する船舶制御方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の船舶制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項12】
船舶の推進力を発生させるエンジンの回転数を検出する複数の検出部が検出したそれぞれの回転数を取得する取得部と、
取得された回転数の値が異なる場合に、前記エンジンに投入される燃料投入量と前記エンジンの出力とに基づいて推定回転数を算出し、算出した前記推定回転数に基づき前記エンジンの
実際の回転数である実回転数を決定する決定部と、
を備える船舶制御装置。
【請求項13】
前記状態情報は、前記エンジンに投入される燃料投入量及び目標回転数を含み、
前記決定部は、前記燃料投入量が所定量以上であって、前記燃料投入量及び前記目標回転数が所定の時間にわたって略一定である場合に、前記取得部が取得した回転数の中から前記目標回転数に最も近い値を前記
実回転数として決定する、
請求項1又は2に記載の船舶制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶制御装置、船舶制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
航行中の船舶は、エンジン等の装置に異常が生じたとしても、遠洋に位置している可能性もあり、近くに修理を行うための施設が無い場合がある。そのため、場合によっては、異常をそのままにしておかざるを得ず、その結果沈没等の事故に発展してしまう危険がある。そこで、船舶が備える装置には、このような危険が生じる可能性を減らすことを目的として、冗長性をもたせることがある。例えば、エンジンの回転数は、共振の発生を防止するために非常に重要な値である。エンジンの回転数には、所定の回転数域での長時間の運転が禁止される危険回転数域が存在している。万が一、エンジンの回転数が危険回転数域に到達してしまった場合には、迅速に危険回転数域から抜け出すことが要求される(例えば特許文献1参照)。このようにエンジンの回転数は重要な値である。そのため、より安定してより正確な値を取得するために、エンジンの回転数を検出するセンサは、冗長性をもたせて複数設置されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら船舶がエンジンの回転数を検出するセンサを複数備える場合、センサの検出した回転数についてセンサ間で差が生じてしまう場合がある。このような場合、各センサで検出された複数の回転数のうち、いずれの回転数を船舶の制御に用いられる値として取得すべきか判断することが難しい場合がある。その結果として、実際のエンジンの回転数と乖離した回転数を取得してしまい、船舶の適切な制御が行われない可能性が高い。そこで、たとえセンサ間で検出結果の回転数に差が生じた場合であっても、実際のエンジンの回転数により近い回転数(より適切な回転数)を取得する必要がある。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、船舶のエンジンの回転数についてより適切な値を取得することを可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、船舶の推進力を発生させるエンジンの回転数を検出する複数の検出部が検出したそれぞれの回転数を取得する取得部と、取得された回転数の値が異なる場合に、取得された回転数、及び、前記エンジンの目標回転数と前記エンジンの状態に関する情報である状態情報と前記船舶の船速とのうちの少なくとも1つに基づき、前記エンジンの実際の回転数である実回転数を決定する決定部と、を備える船舶制御装置である。
【0007】
このように上記船舶制御装置は、目標回転数と、エンジンの状態に関する情報である状態情報と、船速とのうちの少なくとも1つに基づいて、取得部が取得した回転数のうちの1つの回転数を実際のエンジンの回転数(実回転数)として取得する。そのため、上記検出部の一部が故障した場合等の検出部間で検出結果が異なる場合であっても、上記船舶制御装置はエンジンの実回転数についてより適切な値を取得することができる。
【0008】
上記の船舶制御装置では、前記決定部は、前記取得部が取得した回転数同士の差分が所定値以上である場合に、最も高い回転数を前記実回転数として決定してもよい。
【0009】
上記の船舶制御装置では、前記決定部は、燃料投入量と前記エンジンの出力とに基づいて推定回転数を算出し、前記取得部が取得した回転数の中から算出した前記推定回転数に最も近い回転数を前記実回転数として決定してもよい。
【0010】
上記の船舶制御装置では、前記状態情報は、前記エンジンに投入される燃料投入量を含み、前記決定部は、前記燃料投入量が所定量以上の場合に、前記取得部が取得した回転数の中から前記目標回転数に最も近い回転数を前記実回転数として決定してもよい。
【0011】
上記の船舶制御装置では、前記決定部は、前記目標回転数が決定されたタイミングにおける前記エンジンの回転数と、前記目標回転数と、前記タイミングから前記複数の検出部が回転数を検出するまでの経過時間と、に基づき、前記取得部が取得した回転数のうちの1つの値を前記実回転数として決定してもよい。
【0012】
上記の船舶制御装置では、前記決定部は、前記目標回転数が所定の時間にわたって略一定である場合に、前記取得部が取得した回転数の中から前記目標回転数に最も近い値を前記実回転数として決定してもよい。
【0013】
上記の船舶制御装置では、前記状態情報は、前記エンジンに投入される燃料投入量を含み、前記決定部は、前記燃料投入量が所定の時間にわたって略一定である場合に、前記取得部が取得した回転数の中から前記目標回転数に最も近い値を前記実回転数として決定してもよい。
【0014】
上記の船舶制御装置では、前記状態情報は、前記エンジンの回転方向及び前記エンジンの燃料投入量を含み、前記決定部は、前記エンジンに燃料が投入されていない場合には、前記船速に基づき、前記実回転数を決定してもよい。
【0015】
上記の船舶制御装置では、前記決定部で決定された実回転数に基づいて前記エンジンに投入される燃料の投入量と前記燃料の投入タイミングとを決定するエンジン制御部、をさらに備えてもよい。
【0016】
上記の船舶制御装置では、前記状態情報は、前記エンジンに投入される燃料投入量及び目標回転数を含み、前記決定部は、前記燃料投入量が所定量以上であって、前記燃料投入量及び前記目標回転数が所定の時間にわたって略一定である場合に、前記取得部が取得した回転数の中から前記目標回転数に最も近い値を前記実回転数として決定してもよい。
【0017】
本発明の一態様は、船舶の推進力を発生させるエンジンの回転数を検出する複数の検出部が検出したそれぞれの回転数を取得する取得ステップと、取得された回転数の値が異なる場合に、取得された回転数、及び、前記エンジンの目標回転数と前記エンジンの状態に関する情報である状態情報と前記船舶の船速とのうちの少なくとも1つに基づき、前記エンジンの実際の回転数である実回転数を決定する決定ステップと、を有する船舶制御方法である。
【0018】
このように上記船舶制御装方法では、目標回転数と、エンジンの状態に関する情報である状態情報と、船速とのうちの少なくとも1つに基づいて、取得ステップにおいて取得された回転数のうちの1つの回転数を実際のエンジンの回転数(実回転数)として取得する。そのため、上記検出部の一部が故障した場合等の検出部間で検出結果が異なる場合であっても、上記船舶制御方法ではエンジンの実回転数についてより適切な値を取得することができる。
【0019】
本発明の一態様は、上記船舶制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0020】
このように上記プログラムでは、目標回転数と、エンジンの状態に関する情報である状態情報と、船速とのうちの少なくとも1つに基づいて、取得ステップにおいて取得された回転数のうちの1つの回転数を実際のエンジンの回転数(実回転数)として取得する。そのため、上記検出部の一部が故障した場合等の検出部間で検出結果が異なる場合であっても、上記プログラムではエンジンの実回転数についてより適切な値を取得することができる。
【0021】
本発明の一態様は、船舶の推進力を発生させるエンジンの回転数を検出する複数の検出部が検出したそれぞれの回転数を取得する取得部と、取得された回転数の値が異なる場合に、前記エンジンに投入される燃料投入量と前記エンジンの出力とに基づいて推定回転数を算出し、算出した前記推定回転数に基づき前記エンジンの実際の回転数である実回転数を決定する決定部と、を備える船舶制御装置である。
【0022】
このように上記船舶制御装置では、複数の検出部において取得された回転数の値が異なる場合に、エンジンに投入される燃料投入量とエンジンの出力とに基づいて推定回転数を算出し、算出した推定回転数に基づき実際のエンジンの回転数(実回転数)を決定する。そのため、上記検出部の一部が故障した場合等の検出部間で検出結果が異なる場合であっても、上記船舶制御装置ではエンジンの実回転数についてより適切な値を取得することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、船舶のエンジンの回転数についてより適切な値を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態の船舶1の機能構成の一例を示す図。
【
図2】第1実施形態における検出システム60を説明する説明図。
【
図3】第1実施形態における統括制御部11の機能構成の一例を示す図。
【
図4】第1実施形態における航海処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図5】第1実施形態における実回転数決定処理の流れの一例を説明する第1のフローチャート。
【
図6】第1実施形態における実回転数決定処理の流れの一例を説明する第2のフローチャート。
【
図7】第1実施形態における実回転数決定処理の流れの一例を説明する第3のフローチャート。
【
図8】第1実施形態における実回転数決定処理の流れの一例を説明する第4のフローチャート。
【
図9】第1実施形態における実回転数決定処理の流れの一例を説明する第5のフローチャート。
【
図10】変形例における第1変形処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図11】変形例における第2変形処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図13】変形例における第3変形処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図14】変形例における第4変形処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図15】変形例における第5変形処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図16】変形例における第6変形処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図17】第2実施形態における検出システム60を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の船舶1の機能構成の一例を示す図である。船舶1は、遠隔操縦装置10、舶用エンジン20、シャフト30、プロペラ40、軸馬力計50、検出システム60、速度計70及びエンジン制御部80を備える。なお、船舶1は、必ずしも船員が操縦する船舶である必要はなく、自律して運航可能な船舶であってもよい。
【0026】
遠隔操縦装置10は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備える統括制御部11を備え船舶1の動作を制御するプログラム(以下「船舶制御プログラム」という。)を実行する。遠隔操縦装置10は、船舶制御プログラムの実行によって統括制御部11、ハンドル12、通信部13、出力部14及び記憶部15を備える装置として機能する。
【0027】
より具体的には、遠隔操縦装置10は、プロセッサ91が記憶部15に記憶されている船舶制御プログラムを読み出し、読み出した船舶制御プログラムをメモリ92に記憶させる。プロセッサ91が、メモリ92に記憶させた船舶制御プログラムを実行することによって、遠隔操縦装置10は、統括制御部11、ハンドル12、通信部13、出力部14及び記憶部15を備える装置として機能する。
【0028】
統括制御部11は、遠隔操縦装置10が備える各機能部の動作を制御する。統括制御部11は、例えば通信部13の動作を制御することでエンジン制御部80と通信する。また統括制御部11は、例えばハンドル12を介して入力された情報を取得する。統括制御部11は、例えば船舶制御プログラムの実行によって生成された情報を記憶部15に記録する。統括制御部11は、例えば舶用エンジン20(詳細は後述)の回転数を取得する。統括制御部11は、例えば取得した回転数をエンジン制御部80に出力する。以下の説明では、統括制御部11によって取得(決定)された舶用エンジン20の実際の回転数の値を、「実回転数」という。
【0029】
ハンドル12は、船舶1の船速及び進行方向を操縦するためのハンドルである。ハンドル12は、船員の操作を受け付ける。船員は、ハンドル12を操作することによって、エンジンの目標回転数とエンジン回転方向とのいずれか一方又は両方を遠隔操縦装置10に対して入力する。目標回転数は、舶用エンジン20の目標の回転数である。エンジン回転方向は、舶用エンジン20の回転方向である。舶用エンジン20の回転方向は、正転又は逆転のいずれか一方である。舶用エンジン20の回転方向が正転である場合の船舶1の進行方向と、舶用エンジン20の回転方向が逆転である場合の船舶1の進行方向とは、互いに逆向きである。
【0030】
ハンドル12は、船員による操作の結果が示す目標回転数を統括制御部11に出力する。また、ハンドル12は、船員による操作の結果が示すエンジン回転方向を示す情報(以下「回転方向情報」という。)を統括制御部11に出力する。なお、ハンドル12は、必ずしも船員によって操作される必要は無い。例えば、船舶1が自律して運航する場合、ハンドル12は船舶制御プログラムにしたがい統括制御部11によって操作されてもよい。
【0031】
通信部13は、遠隔操縦装置10を軸馬力計50、検出システム60、速度計70及びエンジン制御部80に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部13は、例えば有線と無線とのいずれか一方を介して軸馬力計50、検出システム60、速度計70及びエンジン制御部80と通信する。通信部13は、例えば目標回転数、実回転数及び回転方向情報をエンジン制御部80に送信する。
【0032】
出力部14は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置や、スピーカー等の音声出力装置等の出力装置を含んで構成される。出力部14は、これらの出力装置を自装置に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部14は、遠隔操縦装置10に関する情報を出力する。出力部14は、例えば、ハンドル12の操作結果を出力する。
【0033】
記憶部15は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部15は、遠隔操縦装置10に関する各種情報を記憶する。記憶部15は、例えば船舶制御プログラムを予め記憶する。記憶部15は、例えば船舶制御プログラムの実行によって生成された情報を記憶する。記憶部15は、例えば船員によるハンドル12の操作の履歴を記憶する。記憶部15は、例えばエンジンの実回転数の履歴を記憶する。
【0034】
舶用エンジン20は、船舶1の推進力を発生させるエンジンである。舶用エンジン20は、燃料が有するエネルギーを動力に変換する。舶用エンジン20は、燃料が有するエネルギーを動力に変換可能であれば、燃料の種類や動作の仕組みはどのようなものであってもよい。舶用エンジン20は、例えばツーストロークディーゼルエンジンである。舶用エンジン20は、例えばフォーストロークディーゼルエンジンであってもよいし、ガスエンジンであってもよい。以下説明の簡単のため、舶用エンジン20がツーストロークエンジンである場合を例として船舶1について説明する。
【0035】
シャフト30は、舶用エンジン20が生み出した動力によって回転する。シャフト30の回転数は、舶用エンジン20の回転数に比例する。シャフト30は、回転することで舶用エンジン20が生み出した動力をプロペラ40に伝達する。
【0036】
プロペラ40は、舶用エンジン20が生み出した動力によって回転する。プロペラ40は、回転によって船舶1を移動させる推進力を生み出す。
【0037】
軸馬力計50は、舶用エンジン20が生み出した動力を測定する。軸馬力計50は、例えば、シャフト30に生じる捩れ歪を電気的な方法と光学的な方法とのいずれか一方又は両方の方法で検出することで、舶用エンジン20が生み出した動力を測定する。
【0038】
検出システム60は、複数の検出部を備える。例えば、本実施形態の検出システム60は、2つの検出部(第1検出部610及び第2検出部620)を備える。検出部は、舶用エンジン20の回転数を検出するセンサを用いて構成される。検出部は、例えば近接センサを用いて構成されてもよい。より具体的には、近接センサは、一定の距離内に金属が位置しているとオン信号を出力し、一定の距離内に金属が位置していないとオフ信号を出力するように構成されてもよい。この場合、近接センサは、例えばシャフト30の表面に設けられた凹凸のうち凸部分が検知範囲に位置する際にはオン信号を出力し、凹部分が検知範囲に位置する際にはオフ信号を出力する。検出部は、近接センサの出力のこのような変化と、予め得られているシャフト30の凹凸の間隔を示す情報と、に基づいて舶用エンジン20の回転数を検出してもよい。なお、検出部は、近接センサに限らず他の種類の装置を用いて構成されてもよい。例えば、検出部は、エンコーダを用いて構成されてもよいし、エンジンの音を検出するセンサを用いて構成されてもよいし、エンジンの振動を検出するセンサを用いて構成されてもよい。エンジンの音を検出するセンサが用いられた場合には、検出部は、検出されたエンジンの音に基づいて回転数を検出する。エンジンの振動を検出するセンサが用いられた場合には、検出部は、検出されたエンジンの振動に基づいて回転数を検出する。検出システム60が備える各検出部(第1検出部610及び第2検出部620)は、同じタイミングで回転数を取得する。
【0039】
図2は、第1実施形態における検出システム60を説明する説明図である。
図2におけるシャフト30はシャフト30自身の回転軸に垂直な面の模式図である。第1検出部610は、検出した舶用エンジン20の回転数(以下「第1回転数」という。)を遠隔操縦装置10に出力する。第2検出部620は、検出した舶用エンジン20の回転数(以下「第2回転数」という。)を遠隔操縦装置10に出力する。
【0040】
図1の説明に戻る。速度計70は、船舶1の船速を測定する。速度計70は、例えばドップラー効果を用いて船速を測定する。速度計70が測定する船速は、具体的には、対水船速である。
【0041】
エンジン制御部80は、舶用エンジン20の動作を制御する。具体的には、エンジン制御部80は、後述する決定部112が取得した実回転数に基づき燃料噴射量と燃料噴射のタイミングとを決定し、決定したタイミングで燃料噴射量の燃料が噴射されるように舶用エンジン20の動作を制御する。より具体的には、エンジン制御部80は、燃料投入量算出処理、燃料投入制御処理及び回転方向制御処理の実行により舶用エンジン20の動作を制御する。
【0042】
燃料投入量算出処理は、目標回転数及び実回転数に基づき、予め定められた投入量算出関数を用いて舶用エンジン20に投入する燃料の量(以下「燃料投入量」という。)を算出する処理である。投入量算出関数は、目標回転数と実回転数とを説明変数とし燃料投入量を目的変数とする関数である。エンジン制御部80は、燃料投入量算出処理の実行により燃料投入量を算出する。
【0043】
燃料投入制御処理は、燃料投入量算出処理によって算出された燃料投入量の燃料が舶用エンジン20に投入されるように、燃料投入管に取り付けられた弁の開閉の度合を制御する処理である。燃料投入管は、舶用エンジン20と不図示の燃料タンクとを接続する管であって、燃料タンクから舶用エンジン20へ燃料が流れる管である。エンジン制御部80は、燃料投入制御処理の実行により燃料タンクから舶用エンジン20に燃料投入量の燃料を投入する。
【0044】
回転方向制御処理は、舶用エンジン20の回転方向をエンジン回転方向に制御する処理である。回転方向制御処理は、例えば舶用エンジン20のクラッチを操作することで舶用エンジン20の回転方向の正転と逆転とを切り替える処理である。エンジン制御部80は、回転方向制御処理の実行により舶用エンジン20の回転方向をエンジン回転方向に制御する。
【0045】
なお、舶用エンジン20が出力するトルクの向きは舶用エンジン20の回転方向に応じた方向である。そのため、舶用エンジン20の回転方向が正転の場合におけるトルクの向きと舶用エンジン20の回転方向が逆転の場合におけるトルクの向きとは互いに逆向きである。また、舶用エンジン20が生み出す動力は、舶用エンジン20が出力するトルクの大きさに舶用エンジン20の回転数が掛け算された値である。
【0046】
図3は、第1実施形態における統括制御部11の機能構成の一例を示す図である。統括制御部11は、検出結果取得部111、決定部112、指令部113及び出力制御部114を備える。
【0047】
検出結果取得部111は、通信部13を介して検出システム60が備える各検出部の検出結果を検出システム60が備える各検出部から取得する。検出システム60が備える各検出部の1つは、例えば、第1検出部610である。検出システム60が備える各検出部の1つは、例えば、第2検出部620である。
【0048】
決定部112は、通信部13を介して軸馬力計50が測定した動力を軸馬力計50から取得する。決定部112は、通信部13を介して速度計70が測定した船速を取得する。決定部112は、通信部13を介してエンジン制御部80が算出した燃料投入量を取得する。決定部112は、通信部13を介してハンドル12が出力した目標回転数及び回転方向情報を取得する。
【0049】
決定部112は、回転数決定処理を実行する。回転数決定処理は、目標回転数と、舶用エンジン20の状態に関する情報である状態情報と、船舶1の船速とのうちの少なくとも1つに基づき、各検出部から得られた回転数のうちいずれか一つの値を舶用エンジン20の実回転数として決定する処理である。なお、第1実施形態における実回転数の候補は、具体的には、第1回転数及び第2回転数である。状態情報は、例えば燃料投入量を含む。状態情報は、例えば軸馬力計50が測定した動力を含む。
【0050】
指令部113は、決定部112が決定した実回転数を、通信部13を介してエンジン制御部80に出力する。指令部113は、通信部13を介して回転方向情報をエンジン制御部80に出力する。指令部113は、通信部13を介して目標回転数をエンジン制御部80に出力する。
【0051】
出力制御部114は、出力部14の動作を制御し出力部14に情報を出力させる。出力制御部114は、例えば検出システム60が備える複数の検出部(例えば第1検出部610及び第2検出部620)の検出結果(例えば第1回転数と第2回転数)の違いが所定の違い以上である場合に警告情報を出力部14に出力させる。
【0052】
警告情報は検出システム60が備える複数の検出部のうち少なくとも1つに異常が生じていることを示す情報である。所定の違い以上は、複数の検出部が第1検出部610及び第2検出部620である場合、例えば第1回転数と第2回転数との違いを示す値(以下「検出違い値」という。)が所定の値以上ということを意味する。第1回転数と第2回転数との違いは、第1回転数と第2回転数との差の絶対値であってもよいし、第1回転数と第2回転数との比であってもよい。出力制御部114は、例えば決定部112が取得した実回転数を出力部14に出力させる。
【0053】
船舶1の航海中に実行される処理について説明する。船舶1は、航海中、移動するための処理である航海処理を繰り返し実行することで移動する。航海処理の具体的な一例を、
図4~
図9を用いて説明する。
【0054】
図4は、第1実施形態における航海処理の流れの一例を示すフローチャートである。航海処理ではまずハンドル12が操作され、この操作に応じて決定部112は目標回転数及びエンジン回転方向を取得する(ステップS101)。なお、ステップS101におけるハンドル12の操作は、船員によって行われてもよいし、船舶1が自律して運航する場合には船舶制御プログラムにしたがい統括制御部11によって操作されてもよいし、他の自律運航システムによって操作されてもよい。なお、ステップS101の処理は、目標回転数及びエンジン回転方向が直前の航海処理における目標回転数及びエンジン回転方向から変更が無い場合には実行されない。次に、検出結果取得部111は、検出システム60から第1回転数及び第2回転数を取得する(ステップS102)。
【0055】
次に、決定部112が実回転数決定処理を実行する(ステップS103)。フローチャートを用いた実回転数決定処理の詳細は後述する。次に、指令部113が、決定された実回転数を決定部112から取得する。また指令部113は、目標回転数及び回転方向情報をハンドル12から取得する(ステップS104)。次に、指令部113が、取得した実回転数、目標回転数及び回転方向情報をエンジン制御部80に出力する(ステップS105)。次に、エンジン制御部80が、ステップS105で出力された実回転数、目標回転数及び回転方向情報を取得する(ステップS106)。
【0056】
次に、エンジン制御部80が、回転方向制御処理を実行することで、回転方向情報が示す回転方向に舶用エンジン20が回転するように舶用エンジン20を制御する(ステップS107)。次に、エンジン制御部80が、燃料投入量算出処理を実行する(ステップS108)。この処理によって、目標回転数及び実回転数に基づき燃料投入量が算出される。次に、エンジン制御部80が、燃料投入制御処理を実行する(ステップS109)。この処理によって、燃料投入量に相当する量の燃料が舶用エンジン20に投入される。次に、投入された燃料によって舶用エンジン20が動作することで船舶1が移動する(ステップS110)。
【0057】
図5~
図9を用いて実回転数決定処理の流れの一例を説明する。
図5~
図9は、第1実施形態における実回転数決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0058】
決定部112は、目標回転数及びエンジン回転方向の履歴と実回転数の履歴とに基づき、船舶1が始動中か否かを判定する(ステップS201)。決定部112は、例えば直前の航海処理の実行により得られた実回転数が0であり、ステップS101で取得された目標回転数が0では無い場合に、船舶1は始動中であると判定する。
【0059】
船舶1が始動中である場合(ステップS201:YES)、決定部112は、第1回転数と第2回転数との違いを示す値(検出違い値)を算出する(ステップS202)。次に、決定部112は、第1回転数と第2回転数との間に違いがあるか否かを判定する(ステップS203)。具体的には、決定部112は、検出違い値が0であるか否かを判定する。
【0060】
違いが無い場合(ステップS203:NO)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち、予め定められた一方の値を、舶用エンジン20の実回転数として決定する(ステップS204)。ステップS204の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0061】
一方、違いがある場合(ステップS203:YES)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち、より高い方の値を実回転数として決定する(ステップS205)。
【0062】
オーバースピードの際、低い方の値を実回転数として決定することは危険である。そのため、より高い方の値を実回転数として決定することで、オーバースピードの際の危険を軽減することができる。また、より高い方の値を実回転数として決定すれば、燃料の投入量を少なくすることができる。ステップS205の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0063】
船舶1が始動中では無い場合(ステップS201:NO)、決定部112は、目標回転数及びエンジン回転方向の履歴と実回転数の履歴とに基づき、船舶1が運転中か否かを判定する(ステップS206)。決定部112は、例えば直前の航海処理の実行により得られた実回転数が0ではなく、且つ、ステップS101で取得された目標回転数に等しい場合に、船舶1は運転中であると判定する。
【0064】
船舶1が運転中である場合(ステップS206:YES)、決定部112は、第1回転数と第2回転数との違いを示す値(検出違い値)を算出する(ステップS207)。次に、決定部112は、第1回転数と第2回転数との間に違いがあるか否かを判定する(ステップS208)。具体的には、決定部112は、検出違い値が0であるか否かを判定する。
【0065】
違いが無い場合(ステップS208:NO)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち、予め定められた一方の値を、舶用エンジン20の実回転数として決定する(ステップS209)。ステップS209の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0066】
一方、違いがある場合(ステップS208:YES)、決定部112は、ステップS207で取得された違いが所定の違い以上か否かを判定する(ステップS210)。違いが所定の違い未満である場合(ステップS210:NO)、決定部112は、2つの回転数のうちより高い方の値を実回転数として決定する(ステップS211)。ステップS211の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0067】
一方、違いが所定の違い以上である場合(ステップS210:YES)、決定部112は、エンジン制御部80が算出した燃料投入量をエンジン制御部80から取得する。また、決定部112は、軸馬力計50が測定した動力を取得する(ステップS212)。次に決定部112は、取得した燃料投入量及び動力に基づき、第1回転数と第2回転数のうち一方の値を実回転数として決定する(ステップS213)。ステップS213の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0068】
なお、軸馬力計50が測定した動力は舶用エンジン20の出力の一例である。なお、ステップS201で取得される燃料投入量は、1つ前の航海処理の実行時にエンジン制御部80によって算出された燃料投入量である。
【0069】
ステップS213において決定部112はまず、エンジン制御部80が算出した燃料投入量と軸馬力計50が測定した動力とに応じた推定回転数を以下の式(1)を用いて算出する。推定回転数は、エンジンの回転数として推定される値である。
【0070】
【0071】
Restは推定回転数を表す。Lは、軸馬力計50が測定した動力を表す。RMCR及びFMCRはそれぞれ、定数を表す。RMCRは、具体的にはMCR回転数である。FMCRは、具体的にはMCR燃料量である。MCR回転数とは、エンジン特定値であり、エンジンテストの際の最大出力時のエンジンの回転数である。MCR回転数とは、エンジン特定値であり、エンジンテストの際の最大出力時のエンジンの燃料量である。Fgは、エンジン制御部80が算出した燃料投入量を表す。このようにステップS213において決定部112は、軸馬力計50が測定した動力をエンジン制御部80が算出した燃料投入量で割り算した値に所定の定数を乗算した値を算出し、算出した値を推定回転数として取得する。
【0072】
決定部112は次に、第1回転数と第2回転数とのうち、算出した推定回転数に最も近い値を実回転数として決定する。
【0073】
船舶1が運転中では無い場合(ステップS206:NO)、決定部112は、目標回転数及びエンジン回転方向の履歴と実回転数の履歴とに基づき、船舶1が停止中か否かを判定する(ステップS214)。決定部112は、例えば直前の航海処理の実行により得られた実回転数が0であり、ステップS101で取得された目標回転数も0である場合に、船舶1は停止中であると判定する。
【0074】
船舶1が停止中である場合(ステップS214:YES)、決定部112は、実回転数として0を取得する(ステップS215)。ステップS215の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0075】
船舶1が停止中では無い場合(ステップS214:NO)、決定部112は、目標回転数及びエンジン回転方向の履歴と実回転数の履歴とに基づき、船舶1が逆転中か否かを判定する(ステップS216)。船舶1が逆転中であるとは、舶用エンジン20の回転方向が正転から逆転に移行する場合と舶用エンジン20の回転方向が逆転から正転に移行する場合とのいずれか一方の条件が満たされている状態を意味する。決定部112は、例えばステップS101で取得されたエンジン回転方向の向きが直前の航海処理において取得されたエンジン回転方向の向きと逆である場合に、逆転中と判定する。
【0076】
船舶1が逆転中である場合(ステップS216:YES)、決定部112は、エンジン制御部80が算出した燃料投入量をエンジン制御部80から取得する(ステップS217)。次に決定部112は、燃料投入量が0である(すなわち舶用エンジン20に燃料が投入されていない)か否かを判定する(ステップS218)。燃料が投入されている場合(ステップS218:NO)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち、予め定められた一方の値を実回転数として決定する(ステップS219)。ステップS219の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0077】
一方、燃料が投入されていない場合(ステップS218:YES)、決定部112は、第1回転数と第2回転数との違いを示す値(検出違い値)を算出する(ステップS220)。次に、決定部112は、第1回転数と第2回転数との間に違いがあるか否かを判定する(ステップS221)。具体的には、決定部112はステップS220で算出された検出違い値が0であるか否かを判定する。このように構成されることにより、逆転中における実回転数を適切に取得することができる。具体的には以下の通りである。逆方向に移動する際には、舶用エンジン20の向きを逆転させる必要がある。このとき、舶用エンジン20は急には止まれないため、止まるまでしばらく待つ必要があり、舶用エンジン20には通常燃料は投入されない期間が生じる。この間は、燃料から回転数を推測することができない。そのため、上述したように、燃料ではなく、船速に基づいて回転数を推定することで、より適切に実回転数を取得することができる。
【0078】
違いが無い場合(ステップS221:NO)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち、予め定められた一方の値を実回転数として決定する(ステップS222)。ステップS222の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0079】
一方、違いがある場合(ステップS221:YES)、決定部112は、速度計70が測定した船速を、通信部13を介して取得する(ステップS223)。次に決定部112は、取得した船速に基づき推定回転数を算出する(ステップS224)。
【0080】
決定部112は、例えば予め試験航行等で測定済みの船速と回転数との対応関係を示す情報を用いて、ステップS223で取得された船速に基づき推定回転数を取得する。この場合、試験航行等が実施された際の海洋の状況(例えば外乱、より具体的には潮流や風の状況)を示す情報と、推定回転数を取得する際の海洋の状況と、が一致することを条件として推定が行われてもよい。例えば、予め複数の海洋の状況において上記対応関係を示す情報を取得しておき、推定回転数を取得する際の海洋の状況が最も近い情報に基づいて推定回転数が取得されてもよい。また、推定回転数が取得される際に、海洋の状況が静水状態である場合には、単に現在の船速に基づいて推定回転数が算出されてもよい。
【0081】
次に決定部112は、推定回転数と第1回転数との違いが推定回転数と第2回転数との違い以上か否かを判定する(ステップS225)。推定回転数と第1回転数との違いが推定回転数と第2回転数との違い未満である場合(ステップS225:NO)、決定部112は、第1回転数を実回転数として決定する(ステップS226)。ステップS226の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0082】
一方、推定回転数と第1回転数との違いが推定回転数と第2回転数との違い以上である場合(ステップS225:YES)、決定部112は、第2回転数を実回転数として決定する(ステップS227)。ステップS227の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0083】
このように構成された第1実施形態の船舶1は、状態情報に基づき、検出結果取得部111が取得した回転数のうちの1つの値を実回転数として決定する決定部112を備える。状態情報は舶用エンジン20の状態に関する情報であり、実回転数は舶用エンジン20の状態に相関のある量である。
【0084】
そのため、検出システム60の備える検出部の一部が故障した場合等の検出部間で検出結果が異なる場合であっても、船舶1は実際の回転数との乖離が大きい値ではなく、より適切な実回転数の値を取得することができる。このように、第1実施形態の船舶1は舶用エンジン20の回転数について、より適切な値を取得することができる。
また、船舶1は、検出システム60とは異なる装置の出力(例えば燃料投入量や舶用エンジン20の出力など)に基づいて舶用エンジン20の回転数の推定値(推定回転数)を算出し、推定回転数に基づいて実回転数の値を決定してもよい。このように構成されることによっても、実際の回転数との乖離が大きい値ではなく、より適切な実回転数の値を取得することができる。
【0085】
(第1実施形態の第1変形例)
航海処理では、
図8に示されるステップS212及びステップS213の処理に代えて以下の第1変形処理が実行されてもよい。
図10は、変形例における第1変形処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0086】
まず、決定部112は、燃料投入量及び動力の値を取得する(ステップS212)。次に、決定部112は、燃料投入量が所定量以上か否かを判定する(ステップS301)。燃料投入量が所定量未満である場合(ステップS301:NO)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち、予め定められた一方の値を実回転数として決定する(ステップS302)。ステップS302の次に、ステップS104の処理が実行される。なお、ステップS212で取得される燃料投入量は、1つ前の航海処理の実行時にエンジン制御部80によって算出された燃料投入量である。
【0087】
一方、燃料投入量が所定量以上である場合(ステップS301:YES)、決定部112は、取得した燃料投入量及び動力に基づき、第1回転数と第2回転数のうち一方の値を実回転数として決定する(ステップS213)。ステップS213の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0088】
このように構成された第1変形例の船舶1は、状態情報の1つである燃料投入量に基づき、検出結果取得部111が取得した回転数のうちの1つの値を実回転数として決定する決定部112を備える。燃料投入量は、舶用エンジン20の状態に関する情報である。回転数は、舶用エンジン20の状態に相関のある量である。そのため、検出システム60の備える検出部の一部が故障した場合等の検出部間で検出結果が異なる場合であっても、船舶1は実際の回転数との乖離が大きい値ではなくより適切な実回転数の値を取得することができる。このように、第1実施形態における第1変形例の船舶1は舶用エンジン20の回転数についてより適切な値を取得することができる。
【0089】
(第1実施形態の第2変形例)
航海処理では、
図8に示されるステップS212及びステップS213の処理に代えて以下の第2変形処理が実行されてもよい。
図11は、変形例における第2変形処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0090】
まず、決定部112は、目標回転数をハンドル12から取得する(ステップS401)。次に決定部112は、目標回転数と、その目標回転数における船舶経過時間と、に基づき、第1回転数と第2回転数のうち一方の値を実回転数として決定する(ステップS402)。船舶経過時間は、目標回転数が決定されてからの経過時間であって、検出システム60が回転数を検出するまでの経過時間である。
【0091】
図12は、変形例の第2変形処理におけるステップS402の具体的な処理の一例を説明する説明図である。
【0092】
図12は、船舶経過時間と回転数との対応関係を示すグラフG1を示す。グラフG1は、例えば予め試験航行等で測定済みの船舶経過時間と回転数との対応関係を示す情報である。グラフG1の形は、目標回転数と、その目標回転数が決定されたタイミングにおける実際のエンジンの回転数とに応じて異なってもよいし異なることがなくてもよい。グラフG1の原点は、目標回転数が決定されたタイミングである。グラフG1の回転数R0は、目標回転数が決定されたタイミングにおけるエンジンの実際の回転数を表す。
図12は、例えば船舶経過時間がT1である場合に、エンジンの実際の回転数はR1であることを示す。船舶経過時間T1は、ハンドル12を介して目標回転数が取得されてからの経過時間がT1であるタイミングである。
【0093】
ステップS402において決定部112は、ステップS401で取得した目標回転数に応じた形にグラフG1を設定する。決定部112は、設定後のグラフG1上の点であって船舶経過時間に対応する点が示す回転数を、推定回転数として取得する。決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち、推定回転数に最も近い値を実回転数として決定する。ステップS402の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0094】
このように構成された第2変形例の船舶1は、目標回転数及び船舶経過時間に基づき、検出結果取得部111が取得した回転数のうちの1つの値を実回転数として決定する決定部112を備える。目標回転数は舶用エンジン20の目標の回転数であるため、実回転数は目標回転数に近いほど望ましい。そのため、目標回転数に基づいて実回転数を取得することで、第2変形例の船舶1は、舶用エンジン20の実回転数についてより適切な値を取得することができる。
【0095】
(第1実施形態の第3変形例)
航海処理では、
図8に示されるステップS212及びステップS213の処理に代えて以下の第3変形処理が実行されてもよい。
図13は、変形例における第3変形処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下説明の簡単のため
図4~
図11の少なくとも1つに記載の処理と同様の処理については同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0096】
まずステップS401の処理が実行される。次に決定部112は、記憶部15が記憶する目標回転数の履歴に基づき目標回転数が所定の時間にわたって略一定であるか否かを判定する(ステップS501)。目標回転数が所定の時間にわたって略一定である状況は、例えば、ハンドル12が所定の時間にわたって船員又は統括制御部11によって操作されない状況である。
【0097】
目標回転数が所定の時間にわたって略一定という条件が満たされない場合(ステップS501:NO)、決定部112は第1回転数と第2回転数のうち予め定められた一方の値を実回転数として決定する(ステップS502)。ステップS502の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0098】
目標回転数が所定の時間にわたって略一定である場合(ステップS501:YES)、決定部112は第1回転数と第2回転数のうち目標回転数に最も近い値を実回転数として決定する(ステップS503)。ステップS503の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0099】
このように構成された第3変形例の船舶1は、目標回転数が所定の時間にわたって略一定である場合に、目標回転数に基づき、検出結果取得部111が取得した回転数のうちの1つの値を実回転数として決定する決定部112を備える。
【0100】
目標回転数が所定の時間にわたって略一定という条件が満たされる場面は、例えば波が静かであり船舶1が直進し続けている場面であり、目標回転数とエンジンの実際の回転数とは略同一である可能性が高い。
【0101】
そこで、第3変形例の船舶1は、目標回転数が所定の時間にわたって略一定である場合には、検出システム60が備える各検出部が検出した回転数のうち目標回転数に最も近い値を実回転数として取得する。そのため、第1実施形態における第3変形例の船舶1は、舶用エンジン20の実回転数についてより適切な値を取得することができる。
【0102】
(第1実施形態の第4変形例)
航海処理では、
図8に示されるステップS212及びステップS213の処理に代えて以下の第4変形処理が実行されてもよい。
図14は、変形例における第4変形処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下説明の簡単のため
図4~
図11又は
図13の少なくとも1つに記載の処理と同様の処理については同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0103】
まずステップS401の処理が実行される。次にステップS501の処理が実行される。目標回転数が所定の時間にわたって略一定である場合(ステップS501:YES)、決定部112は、燃料投入量が所定の時間にわたって略一定であるか否かを判定する(ステップS601)。
【0104】
燃料投入量が所定の時間にわたって略一定という条件が満たされない場合(ステップS601:NO)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち予め定められた一方の値を実回転数として決定する(ステップS602)。ステップS602の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0105】
一方、燃料投入量が所定の時間にわたって略一定である場合(ステップS601:YES)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち目標回転数に最も近い値を実回転数として決定する(ステップS603)。ステップS603の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0106】
なお、第4変形処理においてステップS501及びステップS502の処理は必ずしも実行される必要は無い。このような場合、ステップS401の次にステップS601の処理が実行されてもよい。
【0107】
このように構成された第4変形例の船舶1は、燃料投入量が所定の時間にわたって略一定である場合に、目標回転数に基づき、検出結果取得部111が取得した回転数のうちの1つの値を実回転数として決定する決定部112を備える。
【0108】
燃料投入量が所定の時間にわたって略一定という条件が満たされる場面は、例えば海が穏やかな場面である。このような場合、目標回転数とエンジンの実際の回転数とは略同一である可能性が高い。
【0109】
そこで、第4変形例の船舶1は、燃料投入量が所定の時間にわたって略一定である場合には、検出システム60が備える各検出部が検出した回転数のうち目標回転数に最も近い値を実回転数として取得する。そのため、第1実施形態における第4変形例の船舶1は舶用エンジン20の実回転数についてより適切な値を取得することができる。
【0110】
(第1実施形態の第5変形例)
航海処理では、
図8に示されるステップS212及びステップS213の処理に代えて以下の第5変形処理が実行されてもよい。
図15は、変形例における第5変形処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下説明の簡単のため
図4~
図11又は
図13及び
図14の少なくとも1つに記載の処理と同様の処理については同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0111】
決定部112は、記憶部15が記憶する目標回転数及びエンジン回転方向の履歴に基づき、指令が静定しているか否か判定する(ステップS701)。指令が静定しているとは、目標回転数及びエンジン回転方向が所定の時間にわたって略一定であることを意味する。指令が静定している状況は、例えば、ハンドル12が所定の時間にわたって船員及び統括制御部11によって操作されない状況である。
【0112】
指令が静定している場合(ステップS701:YES)、ステップS301が実行される。燃料投入量が所定量未満である場合(ステップS301:NO)、ステップS601の処理が実行される。燃料投入量が所定の時間にわたって略一定である場合(ステップS601:YES)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち目標回転数に最も近い値を実回転数として決定する(ステップS603)。ステップS603の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0113】
一方、燃料投入量が所定の時間にわたって略一定では無い場合(ステップS601:NO)、ステップS212の処理が実行される。次に決定部112は、燃料投入量及び動力に基づき推定回転数を算出する(ステップS702)。ステップS702において推定回転数が算出される処理は、ステップS213において式(1)を用いて推定回転数が算出される処理と同様の処理である。
【0114】
ステップS702の次にステップS225の処理が実行される。推定回転数と第1回転数との違いが推定回転数と第2回転数との違い未満である場合(ステップS225:NO)、決定部112は、第1回転数を実回転数として決定する(ステップS226)。ステップS226の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0115】
一方、推定回転数と第1回転数との違いが推定回転数と第2回転数との違い以上である場合(ステップS225:YES)、決定部112は、第2回転数を実回転数として決定する(ステップS227)。ステップS227の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0116】
燃料投入量が所定量以上である場合(ステップS301:YES)、ステップS212以降の処理が実行される。指令が静定していない場合(ステップS701:NO)、ステップS212以降の処理が実行される。
【0117】
このように構成された第5変形例の船舶1は、状態情報に基づき、検出結果取得部111が取得した回転数のうちの1つの値を実回転数として決定する決定部112を備える。そのため、第5変形例の船舶1は、舶用エンジン20の回転数についてより適切な値を取得することができる。
【0118】
(第1実施形態の第6変形例)
航海処理では、
図8に示されるステップS212及びステップS213の処理に代えて以下の第6変形処理が実行されてもよい。
図16は、変形例における第6変形処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下説明の簡単のため
図4~
図11又は
図13~
図15の少なくとも1つに記載の処理と同様の処理については同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0119】
まず、決定部112は、燃料投入量及び目標回転数を取得する(ステップS801)。次に、決定部112は、燃料投入量が所定量以上か否かを判定する(ステップS301)。燃料投入量が所定量未満である場合(ステップS301:NO)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち、予め定められた一方の値を実回転数として決定する(ステップS502)。なお、ステップS801で取得される燃料投入量は、1つ前の航海処理の実行時にエンジン制御部80によって算出された燃料投入量である。
【0120】
一方、燃料投入量が所定量以上である場合(ステップS301:YES)、決定部112は、記憶部15が記憶する目標回転数の履歴に基づき目標回転数が所定の時間にわたって略一定であるか否かを判定する(ステップS501)。目標回転数が所定の時間にわたって略一定である状況は、例えば、ハンドル12が所定の時間にわたって船員又は統括制御部11によって操作されない状況である。
【0121】
目標回転数が所定の時間にわたって略一定である場合(ステップS501:YES)、決定部112は、燃料投入量が所定の時間にわたって略一定であるか否かを判定する(ステップS601)。
【0122】
燃料投入量が所定の時間にわたって略一定という条件が満たされない場合(ステップS601:NO)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち予め定められた一方の値を実回転数として決定する(ステップS602)。ステップS602の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0123】
一方、燃料投入量が所定の時間にわたって略一定である場合(ステップS601:YES)、決定部112は、第1回転数と第2回転数のうち目標回転数に最も近い値を実回転数として決定する(ステップS603)。ステップS603の次に、ステップS104の処理が実行される。
【0124】
このように構成された第6変形例の船舶1は、燃料投入量が所定量以上であって、且つ、目標回転数が所定の時間にわたって略一定であって、且つ、燃料投入量が所定の時間にわって略一定である場合に、目標回転数に基づき、検出結果取得部111が取得した回転数のうちの1つの値を実回転数として決定する決定部112を備える。
【0125】
目標回転数が所定の時間にわたって略一定という条件が満たされる場面は、例えば波が静かであり船舶1が直進し続けている場面であり、目標回転数と実際の舶用エンジン20の回転数とは略同一である可能性が高い。さらに、燃料投入量が所定の時間にわたって略一定という条件が満たされる場面は、例えば海が穏やかな場面である。このような場合も、目標回転数と実際の舶用エンジン20の回転数とは略同一である可能性が高い。
【0126】
そこで、第6変形例の船舶1は、燃料投入量が所定量以上であって、目標回転数及び燃料投入量が所定の時間にわたって略一定である場合には、検出システム60が備える各検出部が検出した回転数のうち目標回転数に最も近い値を実回転数として取得する。そのため、第1実施形態における第6変形例の船舶1は、舶用エンジン20の回転数についてより適切な値を取得することができる。
【0127】
(第1実施形態の第7変形例)
第7変形例における決定部112は、船舶1が停止以外の状態である場合であって、且つ、検出結果取得部111が取得した回転数の全てが0である場合に、検出システム60の備える全ての検出部の動作が異常であると判定する。停止以外の状態とは、具体的には、始動中、運転中又は逆転中のいずれかの状態である。具体的には、船舶1が停止以外の状態であり第1回転数及び第2回転数がどちらも0である場合に、決定部112は第1検出部610及び第2検出部620の動作が異常であると判定する。判定の結果は、例えば出力制御部114の制御により出力部14が出力する。
【0128】
なお、船舶1が停止中である場合には、検出結果取得部111が取得した回転数の全てが0であったとしても決定部112は異常とは判定しない。
【0129】
(第1実施形態の第8変形例)
決定部112は、船舶1が始動中、運転中又は逆転中のいずれかの状態である場合であって、第1回転数及び第2回転数の一方が0であり一方が0では無い場合には、0では無い回転数を実回転数として取得する。
【0130】
状態情報は、例えば船舶1の運転の状態を示す情報(以下「運転状態情報」という。)を含んでもよい。運転状態情報は、船舶1が始動中か、船舶1が運転中か、船舶1が停止中か、船舶1が逆転中かを示す情報である。このような場合、ステップS201、ステップS206、ステップS214及びステップS216では、運転状態情報に基づいて船舶1の運転の状態が判定されてもよい。運転状態情報は、船舶1の運転の状態を示す情報であるので舶用エンジン20が動作しているか否かを示す情報の一例である。
【0131】
なお、遠隔操縦装置10は、船舶制御装置の一例である。遠隔操縦装置10は、遠隔の通信相手と通信する機能を有していてもよいし有していなくてもよい。遠隔の通信相手と通信する機能を有する場合、通信は例えば通信部13を介して行われる。
【0132】
なお、第1検出部610及び第2検出部620それぞれの型番又は性能は第1検出部610及び第2検出部620で同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0133】
なお、目標回転数はハンドル12の操作によって決定された回転数であり、検出システム60において検出された回転数とは異なる。また、目標回転数はハンドル12の操作によって決定された回転数であり、実際の回転数である実回転数とは異なる。また、実回転数は、舶用エンジン20の実際の回転数であるため、検出システム60において検出された回転数とは異なる。なお検出結果取得部111は取得部の一例である。
【0134】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の船舶1の機能構成の一例について説明する。第2実施形態の船舶1は、検出システム60が3以上の検出部を備える点で第1実施形態の船舶1と異なる。そのため、決定部112は、3以上の検出部から出力される値に基づいて舶用エンジン20の実回転数を決定する。その他の構成は、第1実施形態と第2実施形態とで同じであるため説明を省略する。なお、3以上の検出部のいずれかは、舶用エンジン20の回転方向を決定するために用いられるセンサであってもよい。例えば、2つ以上の検出部(例えば後述する第1検出部610及び第3検出部630)を組み合わせて用いることで、エンジンの回転方向が決定されてもよい。
【0135】
図17は、第2実施形態における検出システム60を説明する説明図である。
図17の例では、検出システム60は、3つの検出部(第1検出部610、第2検出部620及び第3検出部630)を備える。第3検出部630は、検出した舶用エンジン20の回転数(以下「第3回転数」という。)を遠隔操縦装置10に出力する。
【0136】
図6に示されるフローチャートにおいて、第2実施形態では以下のように処理が行われる。ステップS202では、決定部112は、第1回転数、第2回転数及び第3回転数の3つの値について違いを算出する。例えば、第1回転数と第2回転数との差を示す値と、第1回転数と第3回転数との差を示す値と、第2回転数と第3回転数との差を示す値と、が算出されてもよい。例えば、第1回転数、第2回転数及び第3回転数のうち最大値と最小値との差が算出されてもよい。
【0137】
違いがない場合(例えば算出された全てが0である場合)には、決定部112は第1回転数、第2回転数及び第3回転数のうち、予め定められた一つの値(すなわち、第1回転数、第2回転数及び第3回転数のいずれか)を、舶用エンジン20の実回転数として決定する(ステップS204)。
【0138】
一方、違いがある場合(例えば算出された差において0でない値が含まれる場合)には、決定部112は、第1回転数、第2回転数及び第3回転数のうち、最も高い値を実回転数として決定する(ステップS205)。このように構成されることによって、舶用エンジン20がオーバーヒートしてしまうことを防止することができる。すなわち、低い値が実回転数として決定されてしまうと、燃料が必要以上に多く投入されてしまい、エンジンがオーバーヒートしてしまうおそれがある。このような問題に対し、上述したように最も値が実回転数として決定されることで、オーバーヒートの発生を防止することができる。
【0139】
図7に示されるフローチャートにおいて、第2実施形態では以下のように処理が行われる。ステップS207では、決定部112は、第1回転数、第2回転数及び第3回転数の3つの値について違いを算出する。例えば、第1回転数と第2回転数との差を示す値と、第1回転数と第3回転数との差を示す値と、第2回転数と第3回転数との差を示す値と、が算出されてもよい。例えば、第1回転数、第2回転数及び第3回転数のうち最大値と最小値との差が算出されてもよい。
【0140】
違いがない場合(例えば算出された全てが0である場合)には、決定部112は第1回転数、第2回転数及び第3回転数のうち、予め定められた一つの値を、舶用エンジン20の実回転数として決定する(ステップS209)。
【0141】
一方、違いがある場合(例えば算出された差において0でない値が含まれる場合)には、決定部112は、違いが所定の違い以上であるか否か判定する(ステップS210)。このとき、3つの回転数のうち、最大値と最小値との差が所定の違い未満である場合には、決定部112は、第1回転数、第2回転数及び第3回転数のうち、最も高い値を実回転数として決定する(ステップS211)。3つの回転数のうち、2つの回転数の差が所定の違い未満であって、残る1つの回転数と他の2つの回転数との差が所定の違い以上である場合には、決定部112は、その差が所定の違い未満である2つの回転数のうち、より高い方の値を実回転数として決定する(ステップS211)。3つの回転数の互いの差が全て所定の違い以上である場合には、決定部112は
図8に示される処理を実行する。
【0142】
図9に示されるフローチャートにおいて、第2実施形態では以下のように処理が行われる。ステップS220では、決定部112は、第1回転数、第2回転数及び第3回転数の3つの値について違いを算出する。例えば、第1回転数と第2回転数との差を示す値と、第1回転数と第3回転数との差を示す値と、第2回転数と第3回転数との差を示す値と、が算出されてもよい。例えば、第1回転数、第2回転数及び第3回転数のうち最大値と最小値との差が算出されてもよい。
【0143】
違いがない場合(例えば算出された全てが0である場合)には、決定部112は第1回転数、第2回転数及び第3回転数のうち、予め定められた一つの値を、舶用エンジン20の実回転数として決定する(ステップS222)。
【0144】
一方、違いがある場合(例えば算出された差において0でない値が含まれる場合)には、決定部112は、ステップS223及びS224の処理を実行することで、推定回転数を算出する。次に、決定部112は、推定回転数と第1回転数との違いと、推定回転数と第2回転数との違いと、推定回転数と第3回転数との違いと、をそれぞれ算出する。そして、推定回転数との違いが最も小さい回転数の値を、舶用エンジン20の実回転数として決定する。
【0145】
このように構成された第2実施形態では、3つの検出部を備えた検出システム60により舶用エンジン20の回転数が検出される。そして、決定部112は3つの検出部から得られる回転数に基づいて、舶用エンジン20の実回転数を決定する。そのため、第2実施形態の船舶1は舶用エンジン20の実回転数について、さらに適切な値を取得することができる。
【0146】
(第2実施形態の変形例)
図6に示されるフローチャートにおいて、第2実施形態では以下のように処理が行われてもよい。この変形例の処理では、予め定められた所定の閾値(例えば3、10等の値)が用いられる。この閾値は、回転数の差に関する閾値であり、違いがあったとしてもほぼ同値としてみなしても障害が生じない値である。このような閾値は、設計のタイミング等において予め所定の条件に基づき定められることが望ましい。
【0147】
3つの回転数のうち最大値と最小値との差が閾値未満である場合には、決定部112は3つの回転数に基づいて実回転数を決定する。例えば、決定部112は、3つの回転数のうち最大値を舶用エンジン20の実回転数として決定してもよい。例えば、決定部112は、3つの回転数の統計値(例えば平均値、中央値など)を舶用エンジン20の実回転数として決定してもよい。
【0148】
3つの回転数のうち、2つの回転数の差が所定の閾値未満であって、残る1つの回転数と他の2つの回転数との差が所定の閾値以上である場合には、決定部112は、その差が所定の閾値未満である2つの回転数に基づいて実回転数を決定する。例えば、決定部112は、2つの回転数のうちより高い方の値を舶用エンジン20の実回転数として決定してもよい。例えば、決定部112は、2つの回転数の統計値(例えば平均値、中央値など)を舶用エンジン20の実回転数として決定してもよい。
【0149】
3つの回転数のうち、最大値と最小値との差は閾値以上であるものの、最大値と中間値との差と、中間値と最小値との差と、がそれぞれ閾値未満である場合には、決定部112は、所定の条件にしたがって実回転数を決定する。例えば、決定部112は、中間値を実回転数として決定してもよい。例えば、決定部112は、最大値及び中間値の2つの回転数のみを用いて実回転数を決定してもよい。より具体的には、決定部112は、この2つの回転数のうちより高い方の値を舶用エンジン20の実回転数として決定してもよい。例えば、決定部112は、この2つの回転数の統計値(例えば平均値、中央値など)を舶用エンジン20の実回転数として決定してもよい。
【0150】
3つの回転数のうち、最大値と中間値との差と、中間値と最小値との差と、がそれぞれ閾値以上である場合には、決定部112は、所定の条件にしたがって実回転数を決定する。例えば、決定部112は、中間値を実回転数として決定してもよい。例えば、決定部112は、回転数とは異なる他のセンサの出力値に基づいて実回転数を決定してもよい。例えば、船速に基づいて実回転数を決定してもよいし、始動し始めてからの時間に基づいて実回転数を決定してもよい。
【0151】
このような
図6に関する変形例の処理は、
図7や
図9において適用されてもよい。
また、上述した第2実施形態では、検出部の数が3である場合について説明したが、検出部の数が4以上であってもよい。また、第1検出部610又は第2検出部620の少なくとも一方が、複数のセンサを備えることによって、検出システム60が実質的に3以上の検出部を備える様に構成されてもよい。
【0152】
なお、遠隔操縦装置10の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0153】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0154】
1…船舶、 10…遠隔操縦装置、 11…統括制御部、 12…ハンドル、 13…通信部、 14…出力部、 15…記憶部、 20…舶用エンジン、 30…シャフト、 40…プロペラ、 50…軸馬力計、 60…検出システム、 610…第1検出部、 620…第2検出部、 630…第3検出部、 70…速度計、 80…エンジン制御部、 111…検出結果取得部、 112…決定部、 113…指令部、 114…出力制御部