(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】画像処理装置、撮像装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 5/00 20240101AFI20240612BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20240612BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20240612BHJP
【FI】
G06T5/00
H04N23/63
H04N23/60
(21)【出願番号】P 2020094910
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 裕紀子
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/125691(WO,A1)
【文献】特開2011-160019(JP,A)
【文献】特開2019-012179(JP,A)
【文献】特開2019-071568(JP,A)
【文献】特開2014-194525(JP,A)
【文献】特開2013-128177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0161882(US,A1)
【文献】池田 大介ほか,“多チャンネル映像の同時閲覧インタフェースの検討”,電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報,2004年12月17日,第104巻, 第526号,pp.49-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 5/00
H04N 23/63
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面に同時表示する複数の画像とその配置態様の情報を取得する取得手段と、
前記配置態様の情報に基づいて、前記取得手段により取得された前記複数の画像を同時表示する際に表れる
、画像間の輝度
及び色味
の少なくともいずれかの差異に起因する視覚的な対比効果の影響を評価
した複数種類の評価値を導出する評価手段と、
前記評価手段によ
り導出された前記複数種類の評価値に基づいて、前記複数の画像それぞれ
の補正量を導出する導出手段と、
前記導出手段により導出された補正量に基づいて、前記複数の画像を補正する補正手段と、
を有
し、
前記複数種類の評価値は、前記複数の画像のうちの、近接して配置される画像間の輝度及び色味の少なくともいずれかの差または比率に基づく評価値を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記
複数種類の評価値は、前記複数の画像のうちの、近接して配置される画像間の前記画面における距離に基づ
く評価値を含むことを特徴とする請求項
1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記
複数種類の評価値は、前記複数の画像のうちの、近接して配置される画像間の表示サイズの差または比率に基づ
く評価値を含むことを特徴とする請求項1
または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記
複数種類の評価値は、前記複数の画像それぞれの輝度に基づ
く評価値を含むことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記
複数種類の評価値は、前記複数の画像のそれぞ
れと、該画像に近接して配置される画像のうちの最大の平均輝度を示す画像とに基づ
く評価値を含むことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記補正手段により補正された前記複数の画像を前記配置態様の情報に基づいて配列することで、前記画面を生成する生成手段をさらに有することを特徴とする請求項
1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成手段により生成された前記画面を表示する表示手段をさらに有することを特徴とする請求項
6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
撮像手段と、
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
を有し、
前記画像処理装置の前記取得手段が、前記撮像手段により撮像された画像を取得する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
画面に同時表示する複数の画像とその配置態様の情報を取得する取得工程と、
前記配置態様の情報に基づいて、前記取得工程において取得された前記複数の画像を同時表示する際に表れる
、画像間の輝度
及び色味
の少なくともいずれかの差異に起因する視覚的な対比効果の影響を評価
した複数種類の評価値を導出する評価工程と、
前記評価工程にお
いて導出された前記複数種類の評価値に基づいて、前記複数の画像それぞれ
の補正量を導出する導出工程と、
前記導出工程において導出された補正量に基づいて、前記複数の画像を補正する補正工程と、
を有
し、
前記複数種類の評価値は、前記複数の画像のうちの、近接して配置される画像間の輝度及び色味の少なくともいずれかの差または比率に基づく評価値を含むことを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、撮像装置、制御方法及びプログラムに関し、特に視覚的な効果を生じさせる画像処理技術に関する。
【0002】
本発明は、画像処理装置に関し、特にディスプレイ上に複数枚同時に表示される画像間で発生する対比効果の補正を行う画像処理に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイの表示可能な輝度(表示輝度)の範囲が拡張されたことに伴い、より人間の視覚に近い階調表現の画像表示が可能となってきている。これに伴い、デジタルカメラ等の撮像装置には、従来圧縮していた高輝度側の階調を含む、高分解能の階調表現(HDR:ハイダイナミックレンジ)の画像を撮像する機能を備えるものも開発されてきている。例えば、HDR映像信号規格であるBT.2100のOETF(Opto-Electronic transfer function)を用いて撮像画像の変換処理(以下、ガンマ処理)を行うことで、HDRモニタで高輝度側の階調を表示できる。
【0004】
ガンマ処理を適用して得られるHDR画像は、従来のSDR画像に比べて高輝度側の階調が表現される。このとき、例えば背景の明度や彩度が上がることで、前景が暗い、色がくすむ、コントラストが高い等、SDR画像とは異なる印象の画像として知覚(視認)される対比効果が生じる。このような対比効果は、1つの画像内だけでなく、例えば1つの画面内に複数の画像を配置して表示する態様においても、画像間で生じ得る。例えばHDR画像とSDR画像を同時表示させる場合や、最高輝度の異なる複数のHDR画像を同時表示させる場合において、周辺に配置される画像よりも明度や彩度が低い画像は視認しにくくなる。より具体的には、画面に配置される1つの画像に着目する場合、該着目する画像(着目画像)の周辺に配置される画像の明度・彩度が高いと、着目画像は暗い、色がくすんでいるといった印象の画像として知覚される。
【0005】
特許文献1には、複数の動画のサムネイルをディスプレイに一覧表示する際に、撮影シーンごとに生じる明るさまたは色調のバラツキを低減すべく、各動画の階調の特徴量に基づいてサムネイルの階調値を補正する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載される補正は動画の階調の特徴量に基づくものであり、例えば隣接して配置される場合のような対比効果がより強く表れる態様については考慮されていない。故に、複数の画像(サムネイル)の配置態様によっては、ユーザにより知覚される明度・彩度のバラツキが好適に低減されない可能性があった。
【0008】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、複数の画像を同時表示する際に表れる対比効果の影響を低減する画像処理装置、撮像装置、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像処理装置は、画面に同時表示する複数の画像とその配置態様の情報を取得する取得手段と、配置態様の情報に基づいて、取得手段により取得された複数の画像を同時表示する際に表れる、画像間の輝度及び色味の少なくともいずれかの差異に起因する視覚的な対比効果の影響を評価した複数種類の評価値を導出する評価手段と、評価手段により導出された複数種類の評価値に基づいて、複数の画像それぞれの補正量を導出する導出手段と、導出手段により導出された補正量に基づいて、複数の画像を補正する補正手段と、を有し、複数種類の評価値は、複数の画像のうちの、近接して配置される画像間の輝度及び色味の少なくともいずれかの差または比率に基づく評価値を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このような構成により本発明によれば、複数の画像を同時表示する際に表れる対比効果の影響を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るデジタルカメラ100の機能構成を示したブロック図
【
図2】本発明の実施形態に係る画像処理部107の機能モジュールの構成を示したブロック図
【
図3】本発明の実施形態に係るデジタルカメラ100で実行される表示処理を例示したフローチャート
【
図4】本発明の実施形態に係るマップ構成処理を例示したフローチャート
【
図5】本発明の実施形態に係るマップ構成処理を説明するための図
【
図6】本発明の実施形態に係る評価部202による評価を説明するための図
【
図7】本発明の実施形態に係る影響マップの構成を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
以下に説明する一実施形態は、画像処理装置の一例としての、撮像した画像の一覧表示機能を備えたデジタルカメラに、本発明を適用した例を説明する。しかし、本発明は、複数の画像を同時表示する際に、各画像の補正量を導出することが可能な任意の機器に適用可能である。また、本明細書において、「対比効果」とは、複数の画像を同時表示する際の、画像間の明度や彩度の差異に起因する視覚的な印象の違い(見え方の違い)を示すものとして説明する。
【0014】
《デジタルカメラの構成》
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ100の機能構成を示したブロック図である。
【0015】
システム制御部101は、例えばCPU等の、デジタルカメラ100が備える各ブロックを制御する制御装置である。システム制御部101は、デジタルカメラ100が備える各ブロックの動作プログラムをROM102から読み出して、RAM103に展開して実行することによりデジタルカメラ100が備える各ブロックの動作を制御する。
【0016】
ROM102は、例えばフラッシュROM等の書き換え可能な不揮発性メモリである。ROM102は、デジタルカメラ100が備える各ブロックの動作プログラムに加え、各ブロックの動作に必要なパラメータ等を記憶する。一方、RAM103は、書き換え可能な揮発性メモリである。RAM103は、デジタルカメラ100が備える各ブロックの動作プログラムの展開領域としてだけでなく、各ブロックの動作により出力された中間データの一時的な記憶領域としても用いられる。本実施形態では、システム制御部101と後述の画像処理部107が、RAM103をワークメモリとして使用するものとする。
【0017】
光学系104は、被写体像を撮像部105に結像する。光学系104には、例えば、固定レンズ、焦点距離を変更する変倍レンズ、焦点調節を行うフォーカスレンズ等が含まれている。光学系104には絞りも含まれており、絞りにより光学系の開口径を調節することで撮影時の光量調節を行う。
【0018】
撮像部105は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子である。撮像部105は、光学系104により撮像素子の撮像面に結像された光学像を光電変換してアナログ画像信号を得る。撮像部105は、得られたアナログ画像信号をA/D変換部106に出力する。
【0019】
A/D変換部106は、入力されたアナログ画像信号にA/D変換処理を適用することで、デジタル画像データ(以下では単に画像として言及)を得る。A/D変換部106は、得られた画像をRAM103に出力して記憶させる。
【0020】
画像処理部107は、RAM103に記憶されている画像に対して、各種の画像処理を行い、画像処理後の画像を記録媒体108に記録する。画像処理部107が行う画像処理は、例えば、ホワイトバランス調整、色補間、縮小/拡大に係る処理等を含むものであってよい。本実施形態のデジタルカメラ100では、HDR画像とSDR画像の2種類の画像を記録可能に構成されているものとする。ここで、HDR画像とは、HDR映像信号規格であるBT.2100に記載されたPQ、HLG方式の映像信号を想定しているものとして説明する。より詳しくは、HDR画像の色域はBT.2020、デジタルカメラ100内で使用するHDR画像のガンマがPQ方式であるものとして説明する。
【0021】
また画像処理部107は、後述の記録媒体108に記録されている画像を表示する画面を生成する処理も行う。ここで、画像の表示態様は、1つの画像のみを表示する態様と、複数の画像を画面内に配置して同時表示する態様の2種類が含まれるものとし、画像処理部107は設定されている表示態様に応じて処理内容を異ならせる。
【0022】
記録媒体108は、例えば、メモリカード等の、デジタルカメラ100に着脱可能に構成されていてよい記録装置である。記録媒体108には、画像処理部107により画像処理が適用された画像(撮像画像)やA/D変換部106によりA/D変換された画像信号(RAW画像)等が、記録画像として記録される。
【0023】
表示部109は、例えばLCD等の表示装置であり、デジタルカメラ100における各種の情報提示を行う。表示部109は、デジタルカメラ100が撮像モードに設定されて撮像部105により撮像が行われている際、A/D変換された画像を表示(スルー表示)することで、デジタルビューファインダとして機能する。また表示部109は、デジタルカメラ100が再生モードに設定されている際、記録媒体108に記録されている画像を表示する。
【0024】
操作入力部110は、例えばレリーズスイッチ、設定ボタン、モード設定ダイアル等のユーザ入力インタフェースを含み、ユーザによりなされた操作入力を検出すると、該操作入力に対応する制御信号をシステム制御部101に出力する。また表示部109がタッチパネルセンサを備えている態様においては、操作入力部110は、表示部109に対してなされたタッチ操作を検出するインタフェースとしても機能する。
【0025】
デジタルカメラ100が備えるこれらの機能ブロックは、基本的にはバス111によって接続され、バス111を介してブロック間の信号のやり取りが可能に構成される。
【0026】
〈画像処理部107の詳細構成〉
次に、本実施形態のデジタルカメラ100の再生モードにおける複数の画像の表示に係り、画像処理部107が有する各種の画像処理機能について、
図2を参照して説明する。
【0027】
取得部201は、表示部109に表示する1つの画面について、該画面内に配置する複数の画像を記録媒体108から読み出して取得する。本実施形態では、発明の理解を容易にすべく、複数の画像はいずれも記録媒体108に記録されている画像であるものとして説明するが、本発明の実施において、画像の取得元がこれに限られるものではないことは容易に理解されよう。
【0028】
また取得部201は、表示対象の複数の画像について、画面内にどのように配置するかを示す配置態様の情報も取得する。1つの画像についての配置態様の情報は、例えば該画像の画面中の表示位置及び表示サイズの情報を含むものであってよい。本実施形態では表示対象の画像は、1つの画面中にモザイク状に配置されて同時表示されるものとし、その表示サイズには複数種類のサイズが設けられているものとする。以下では、1つの画面には、表示対象の画像が間隙なく配置されるものとして説明するが、配置態様はこれに限られるものではない。
【0029】
評価部202は、取得部201により取得された表示対象の画像及びその配置態様の情報に基づいて、該画像群を同時表示した場合に表れる視覚的な対比効果の影響を評価する。本実施形態では評価部202は、視覚的な対比効果の影響を評価値として導出し、表示する画面と同様の分布を示し、画素値として各画像が配置される領域にその評価値に基づく補正量を格納した影響マップを構成する。詳細は後述するが評価部202は、取得した画像を明るさ成分画像と色成分画像に分離する分離部211、各画像について評価値を導出する導出部212、及び導出された評価値に基づいて影響マップを構成するマップ構成部213を含む。
【0030】
補正部203は、評価部202により構成された影響マップに基づいて表示対象の複数の画像を補正する。各画像の補正量は、生成する画面における該画像の表示位置に対応した、影響マップ中の画素の画素値によって規定される。
【0031】
生成部204は、補正部203による補正がなされた画像と配置態様の情報とに基づいて、表示部109に表示する画面を生成する。より詳しくは、生成部204は、表示対象の画像の各々について、補正後の画像を表示サイズに基づいて拡大/縮小した上で、表示する画面を展開する例えばRAM103上の表示用領域に配置して画面を生成する。
【0032】
本実施形態ではハードウェアとしてデジタルカメラ100が備える各ブロックに対応した回路やプロセッサにより処理が実現されるものとして説明する。しかしながら、本発明の実施はこれに限られるものではなく、各ブロックの処理が該各ブロックと同様の処理を行うプログラムにより実現されるものであってもよい。
【0033】
《表示処理》
このような構成をもつ本実施形態のデジタルカメラ100で、複数の画像を表示部109に表示する際に実行される表示処理について、
図3のフローチャートを用いて具体的な処理を説明する。該フローチャートに対応する処理は、システム制御部101が、例えばROM102に記憶されている対応する処理プログラムを読み出し、RAM103に展開して実行することにより実現することができる。本表示処理は、例えばデジタルカメラ100が再生モードで起動され、記録媒体108に記録されている複数の画像を同時表示する設定になされた際に開始し、該設定がなされている間、表示更新レートに従って繰り返し実行されるものとして説明する。
【0034】
S301で、システム制御部101は、画面に配列される表示対象の画像群の内容を変更するか否かを判断する。本実施形態では画面に配列される画像群は、表示送り操作に係る操作入力がなされたことに応じて変更されるものとして説明するが、本発明の実施はこれに限られるものではない。例えば、選択操作がなされた画像と関連性が高い画像が表示されるよう表示対象が変更されるものであってもよいし、反対に類似性が高い画像を除外して表示するよう表示対象が変更されるものであってもよい。また例えば、スライドショーのように、時間経過に応じて順次表示対象が変更されるものであってもよい。システム制御部101は、表示対象の画像群の内容を変更すると判断した場合は処理をS302に移し、変更しないと判断した場合は処理をS307に移す。
【0035】
S302で、システム制御部101は、表示対象の画像群の選択及びそれらの配置態様の情報の構成を行い、表示対象の画像群を特定する情報及び配置態様の情報を画像処理部107に伝送する。より詳しくはシステム制御部101は、表示対象の画像群を選択し、所定の配置規則に基づいて各画像の表示位置及びサイズを決定し、配置態様の情報を構成する。画像処理部107は、該情報を受信すると、システム制御部101の制御の下、以下のS303乃至S306の処理を実行する。なお、本実施形態では発明の理解を簡潔にすべく、表示対象の画像群はいずれもHDR画像であるものとし、表現可能な階調範囲に差異はないものとして説明する。
【0036】
S303で、画像処理部107の取得部201は、受信した情報に基づいて表示対象の画像を記録媒体108から読み出して取得する。読み出された画像は、例えばRAM103や画像処理部107が有する不図示の画像メモリに展開されるものであってよい。
【0037】
S304で、画像処理部107は、表示対象の画像についてマップ構成処理を実行し、影響マップを構成する。
【0038】
〈マップ構成処理〉
ここで、本ステップで実行されるマップ構成処理について、さらに
図4のフローチャートを参照して詳細を説明する。なお、以下の例では、配置態様の情報は、
図5(a)に示されるような配置態様で各画像が画面に配置されることを記述しているものとして説明する。
【0039】
S401で、分離部211は、表示対象の画像群の各々を、明るさ成分の画像と色成分画像とに分離する。より詳しくは分離部211は、表示対象の画像であるHDR画像を、人間の視覚特性を考慮したICtCp色空間に変換することで、明るさ成分画像(I画像)と色成分画像(Ct画像、Cp画像)とに分離する。
【0040】
S402で、評価部202は、表示対象の画像群のうちから、評価値を未導出の画像を処理対象の画像(対象画像)として選択する。対象画像の選択順序はいずれであってもよく、表示対象の画像の全てについて本ステップで順に選択する。
【0041】
S403で、導出部212は、S402において選択された対象画像について視覚的な対比効果の影響を示す評価値を導出する。ここで、視覚的な対比効果の影響とは、1つの画面に配置して表示する場合に、対象画像の周辺に近接して配置される画像との対比で対象画像の視認性に生じる影響(暗く見える、色がにじむ等)を示す。本実施形態では、視覚的な対比効果の影響を定量的に評価すべく、導出部212は、画像間の明るさの差(平均輝度の差)、画像間の位置関係(画面配置時の中心間距離)及び画像間の表示サイズの比率について評価値の導出を行う。しかしながら、画像間に表れる視覚的な対比効果の影響は、これらの項目に限り評価されるものでなくてよい。
【0042】
またこれらの評価値の導出は、対象画像について、該対象画像の周辺に近接して配置される全ての画像のうちの、最大の平均輝度を示す画像(以下、最大輝度画像)との関係において行われるものとして以下では説明する。これは、最大輝度画像と対象画像との間で視覚的な対比効果の影響が最も強く表れるからである。しかしながら、本発明の実施はこれに限られるものではなく、各項目に係る対象画像の評価値は、該対象画像と最大輝度画像との関係について導出されるものに限られず、対象画像の周辺に配置される他の画像との関係について導出されるものであってもよい。なお、本実施形態では、周辺に配置される画像は、生成する画面において、対象画像(矩形)の辺または頂点に隣接して配置される画像、として定義する。しかしながら、1つの画面に複数の画像を配置して同時表示する態様における、任意の画像の周辺に配置される画像の定義は、適宜変更されるものであってよい。
【0043】
以下、配置態様の情報が
図5(a)のような画面構成を示し、画面中の501で示される画像が対象画像である場合の、該対象画像に係る各種評価値の導出方法について例示する。ここでは、配置態様の情報が
図5(a)のような画面構成を示す場合について、実際に表示部109に表示される画面ではなく、
図6に示すような画面と同サイズの平均輝度マップを用いて各種評価値を導出する。しかしながら、各種評価値の導出に際して平均輝度マップの構成が必須ではないことは言うまでもない。
【0044】
対象画像と最大輝度画像の明るさの差に係る評価値E
aは、最大輝度画像の明るさ画像全体の平均輝度値と対象輝度の明るさ画像全体の平均輝度値の差として導出される。生成する画面に配置する画像の平均輝度が
図6(a)に示される平均輝度マップのように分布する場合、最大輝度画像は対象画像の画面下方に配置される画像となる。図の例では、対象画像に対応する領域601には、該領域の辺または頂点を介して接する領域は4種類存在し、このうち平均輝度が最も高い700nitを示す領域602に対応する画像が最大輝度画像となる。このとき、領域601の平均輝度をI
i、領域602の平均輝度をI
i+1とすると、明るさの差に係る評価値E
aは、
I
i+1-I
i=700-80=620
となる。
【0045】
対象画像と最大輝度画像の位置関係に係る評価値E
bは、生成する画面における対象画像と最大輝度画像の中心(撮像画像の場合は光軸中心)座標の距離として導出される。これは、最大輝度画像と対象画像との視覚的な対比効果の影響が、画面上でのこれら画像の距離が小さいほど強く表れることによる。生成する画面に対応する平均輝度マップが
図6(a)のとおりである場合、評価の対象は
図6(b)に示されるように、領域601の中心座標611と領域602の中心座標612との間の該マップにおける距離となる。このとき、中心座標611の座標を(x
i,y
i)、中心座標612の座標を(x
i+1,y
i+1)とすると、位置関係に係る評価値E
bは、
で導出できる。
【0046】
対象画像と最大輝度画像の表示サイズの比率に係る評価値E
cは、生成する画面における最大輝度画像の表示サイズ(面積、画素数)に対する対象画像の表示サイズ(面積、画素数)の比率として導出される。これは、最大輝度画像と対象画像との視覚的な対比効果の影響が、対象画像の面積が相対的に小さいほど強く表れることによる。生成する画面に対応する平均輝度マップが
図6(a)のとおりである場合、対象画像が配置される領域601の面積をS
i、最大輝度画像が配置される領域602の面積をS
i+1とすると、表示サイズの比率に係る評価値E
cは、
E
c=S
i/S
i+1
で導出できる。例えば、画面に配置される際の対象画像と最大輝度画像の画素数が
図6(c)のようである場合、表示サイズの比率に係る評価値E
cは1となる。
【0047】
S404で、マップ構成部213は、対象画像と最大輝度画像とについてS403で導出された評価値に基づいて、生成する画面に配置する際の対象画像の補正量を導出する。本実施形態のデジタルカメラ100では、表示対象の各画像についての視覚的な対比効果の影響を低減する補正を後述の表示処理のS305で一括して行うため、本マップ構成処理では上述した影響マップの構成を行う。影響マップは、表示輝度マップと同様に生成する画面と同サイズで、かつ、該画面における表示対象の各画像の配置位置と対応する領域に、該画像の補正量を格納した二次元情報である。従って、マップ構成部213は、例えばRAM103に設けられた影響マップの展開領域の対象画像に対応する領域の画素値として、導出した補正量を格納する。
【0048】
ここで、対象画像の補正量の導出方法について
図7を用いて説明する。本実施形態のデジタルカメラ100では、1つの対象画像についての補正量は、該対象画像について最大輝度画像との関係で導出した3種類の評価値に基づいてそれぞれ導出される。対象画像と最大輝度画像との関係で導出した評価値の各々について、マップ構成部213は、予め定められた関数に基づいて補正量を導出する。本実施形態では補正量は、対象画像の明るさ成分(I)の値を変更する加算値(gain)として表されるものとして説明するが、本発明の実施はこれに限られるものではない。例えば、補正量は所定の係数であり、乗算することで補正が行われるものであってもよい。
【0049】
周辺に配置される画像との平均輝度の差が大きいほど視覚的な対比効果の影響が強くなるため、明るさに係る関数は、
図7(a)に示されるように明るさの差に係る評価値E
aが大きくなるほど大きい補正量gain
aを出力する傾向を示す。また周辺に配置される画像との距離が短いほど視覚的な対比効果の影響が強くなるため、距離に係る関数は、
図7(b)に示されるように位置関係に係る評価値E
bが小さいほど大きい補正量gain
bを出力する傾向を示す。また周辺に配置される画像との面積比が小さい、即ち、最大輝度画像の面積の方が大きいほど視覚的な対比効果の影響が強くなるため、面積比に係る関数は、
図7(c)に示されるように表示サイズの比率に係る評価値E
cが小さいほど大きい補正量gain
cを出力する傾向を示す。
【0050】
さらに表示対象の画像群を同時表示する際に生じる視覚的な対比効果の影響は、対象画像とその周辺に配置される画像との間の輝度差、距離、面積比に応じて生じるものだけでなく、該対象画像の平均輝度に応じても生じる。換言すれば、対象画像が暗いほど視覚的な対比効果の影響が強くなる可能性が高いため、対象画像そのものの平均輝度に係る関数は、
図7(d)に示されるように、該平均輝度が小さいほど大きい補正量gain
dを出力する傾向を示す。
【0051】
マップ構成部213は、このように導出された4種類の補正量に基づいて最終的な補正量Map
combを決定し、影響マップの対象画像に対応する領域の画素値として格納する。最終的な補正量Map
combは、例えば予備的に導出する補正量の数n(本実施形態では4)を用いて、
で導出されるものであってよい。なお、画像間、または対象画像そのものについて行った複数の評価結果に基づく補正量は、このように複数の補正量の平均化によって導出されるものである必要はなく、重み付け加算等、異なる手法で導出されるものであってよい。
【0052】
S405で、画像処理部107は、対象画像として未選択の画像が表示対象の画像群に存在するか否かを判断する。画像処理部107は、対象画像として未選択の画像が表示対象の画像群に存在すると判断した場合は処理をS402に戻し、存在しないと判断した場合は本マップ構成処理を完了する。このようにすることで、生成する画面の各領域について補正量を格納した、
図5(b)に示されるような影響マップを構成することができる。図の例では、補正量の大きさによって画素値が変化しており、補正を行わない領域を黒(0)とし、補正での加算値が大きいほど白に近い色を示すよう構成されている。
【0053】
マップ構成処理が終了すると、画像処理部107の補正部203は表示処理のS305で、構成された影響マップに基づいて表示対象の各画像を補正する。より詳しくは、補正部203は、表示対象の各画像について、影響マップ中の該画像に対応する領域を参照し、該領域の画素値Mapcombを各画像の明るさ成分に加算することで補正を行う。例えば、1つの画像の座標(x,y)の明るさ成分の信号値I’(x,y)は、同補正前の信号値I(x,y)を用いて、
I’(x,y)=I(x,y)+Mapcomb
で導出できる。
【0054】
S306で、画像処理部107の生成部204は、補正後の表示対象の画像群を配置態様の情報に基づいて配列した画面を生成する。そしてシステム制御部101はS307で、該生成された画面を表示部109に表示するよう制御し、処理をS301に戻す。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の画像処理装置によれば、同時表示する複数の画像について、それらの配置態様に応じて画像間に生じる視覚的な対比効果の影響を低減させた状態で表示させるよう制御することができる。
【0056】
なお、本実施形態では表示対象の画像群がいずれもHDR画像であるものとして説明したが、本発明の実施はこれに限られるものではない。表示対象の画像群は、例えばHDR画像に加え、SDR画像が含まれるものであってもよい。この場合、HDR画像とSDR画像は、前者がBT.2100記載のPQガンマ及びBT2020の色空間で現像されており、後者がsRGBガンマ及びsRGB色域の色空間で現像されている点で異なっている。従って、例えば表現される輝度の値範囲が異なっており、HDR画像とSDR画像とを単純に比較することができないため、平均輝度の差を導出する際に、SDR画像をHDR画像で用いられているガンマと色空間に変換すればよい。
【0057】
また本実施形態では表示対象の画像群について、明るさ成分I(明度、輝度)の大小に基づいて視覚的な対比効果の影響を評価する方法について説明したが、本発明の実施はこれに限られるものではない。例えば色成分Ct、Cpから彩度(色味)に係る色情報を導出し、該色情報に基づいて評価を行うものとしてもよい。またこれらの双方を用いて評価を行うものとしてもよい
【0058】
また本実施形態では画像間に生じる視覚的な対比効果の影響の評価値として、明るさの差、表示サイズの比率を用いるものとして説明したが、本発明の実施において、画像間の差異を評価するにあたり、差、比率のいずれを用いてもよいことは言うまでもない。即ち、画像間の明るさの差異の評価は、2つの画像間の明るさの差または比率に基づいて行われるものであってよいし、表示サイズについても同様である。
【0059】
また本実施形態では表示対象の画像群の全てを対象画像として選択し、これら画像の全てについて補正量を導出する態様について説明したが、本発明の実施はこれに限られるものではない。例えば、同時表示される画像群のうちから、カーソルや枠等によって1つの画像をユーザが選択可能に構成されている場合、選択された画像についてのみ視覚的な対比効果の影響を低減するよう補正するものであってもよい。
【0060】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【0061】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0062】
100:デジタルカメラ、101:システム制御部、102:ROM、103:RAM、107:画像処理部、109:表示部、201:取得部、202:評価部、203:補正部、204:生成部、211:分離部、212:導出部、213:マップ構成部