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特許7502906タイヤ金型および空気入りタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】タイヤ金型および空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20240612BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20240612BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240612BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20240612BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/10
B29C35/02
B29D30/06
B29L30:00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020101644
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021194824
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-165319(JP,A)
【文献】特開2009-166281(JP,A)
【文献】特開2019-081261(JP,A)
【文献】特開2003-136534(JP,A)
【文献】特開2006-088585(JP,A)
【文献】特開2015-182268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 33/10
B29C 35/02
B29D 30/06
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンタイヤのトレッドを成型する環状のトレッド成形面と、前記トレッド成形面と負圧源とを連通するベントホールとを有する、トレッド成形部を備えた、タイヤ金型であって、
前記トレッド成形面は、
周方向の複数箇所に設けられており、前記ベントホールによる単位面積あたりの排気量が第1排気量となる、第1ベント領域と、
周方向に略等間隔を空けた複数箇所に設けられており、前記ベントホールによる単位面積あたりの排気量が前記第1排気量より増大した第2排気量となる、第2ベント領域と
を有しており、
前記第2ベント領域は、グリーンタイヤが当該グリーンタイヤの径方向中心が前記タイヤ金型の径方向中心に対してずれてセットされた場合に、前記第2排気量が、前記タイヤ金型の径方向中心に対する当該グリーンタイヤの径方向中心のずれが減少するような吸引力を生じるように設定されている、タイヤ金型。
【請求項2】
前記第2ベント領域は、前記トレッド成形面のうち周方向の3箇所以上に設けられている、
請求項1に記載のタイヤ金型。
【請求項3】
前記第2ベント領域における前記ベントホールの排気通路の開口率は、前記第1ベント領域における前記ベントホールの排気通路の開口率よりも大きい、
請求項1または2に記載のタイヤ金型。
【請求項4】
前記第2ベント領域に形成された前記ベントホールの単位面積当たりの数は、前記第1ベント領域に形成された前記ベントホールの単位面積当たりの数よりも多い、
請求項3に記載のタイヤ金型。
【請求項5】
前記第1ベント領域に形成された前記ベントホールは、第1ベントホールであり、
前記第2ベント領域に形成された前記ベントホールは、第2ベントホールであり、
前記第2ベントホールにおける排気通路の開口面積は、前記第1ベントホールにおける排気通路の開口面積より大きい、
請求項3または4に記載のタイヤ金型。
【請求項6】
前記第1ベントホールには、ベントプラグが装着されており、
前記第2ベントホールには、前記ベントプラグは装着されていない、
請求項5に記載のタイヤ金型。
【請求項7】
前記負圧源は、
前記第1ベント領域の前記ベントホールに接続された、第1負圧源と、
前記第2ベント領域の前記ベントホールに接続されており、第1負圧源よりも負圧が強い、第2負圧源と
を有している、
請求項1~6のいずれか1つに記載のタイヤ金型。
【請求項8】
前記トレッド成形部は、周方向に分割された複数のセクターモールドを有し、
前記複数のセクターモールドのそれぞれは、前記第1ベント領域および前記第2ベント領域のいずれか一方を有している、
請求項1~7のいずれか1つに記載のタイヤ金型。
【請求項9】
前記トレッド成形部は、周方向に分割された複数のセクターモールドを有し、
前記複数のセクターモールドのそれぞれは、前記第1ベント領域および前記第2ベント領域の両方を有しており、
前記第2ベント領域は、前記複数のセクターモールドのそれぞれのうち周方向の中央に位置している、
請求項1~のいずれか1つに記載のタイヤ金型。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載のタイヤ金型を用いて、グリーンタイヤを加硫成形して空気入りタイヤを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ金型および空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タイヤ金型として、タイヤ周方向に隣接する一対のブロック成形部間において、それぞれの面積(又は容積)の比率に応じて、これらのブロック成形部それぞれに設けるベントホールの数を設定することが開示されている。これによって、加硫成形時に上記一対のブロック成形部それぞれに流動するゴム量を均一化させて、それぞれのブロック成形部で成型される一対のブロック間のゴム密度を均等にし、その結果、タイヤのユニフォーミティを向上させることが企図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-088846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、加硫成形された空気入りタイヤにおけるユニフォーミティ悪化の要因として、上記一対のブロック成形部間の面積の比率に着目するものであるが、本願の発明者は、グリーンタイヤのタイヤ金型に対する径方向における位置ずれに着目して、該位置ずれを抑制することによって、該タイヤ金型を用いて得られる空気入りタイヤにおけるユニフォーミティを向上させることを想到した。
【0005】
すなわち、グリーンタイヤが、径方向の中心がタイヤ金型に対して大きくずれた状態でセットされた場合、グリーンタイヤのトレッドには、タイヤ金型の型締め状態で、トレッド成形面への押し付け力が強い部分と、トレッド成形面への押し付け力が弱い(または接触しない)部分とが、生じ得る。この場合、該グリーンタイヤを加硫成形して得られる空気入りタイヤにおいては、押し付け力が強い部分は肉厚が相対的に増大しやすい一方で、押し付け力が弱い部分は肉厚が相対的に減少しやすく、ユニフォーミティが悪化しやすい。
【0006】
本発明は、セットされたグリーンタイヤのタイヤ径方向の位置ずれを抑制できるタイヤ金型および該タイヤ金型を用いて空気入りタイヤを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
グリーンタイヤのトレッドを成型する環状のトレッド成形面と、前記トレッド成形面と負圧源とを連通するベントホールとを有する、トレッド成形部を備えた、タイヤ金型であって
前記トレッド成形面は、
周方向の複数箇所に設けられており、前記ベントホールによる単位面積あたりの排気量が第1排気量となる、第1ベント領域と、
周方向に略等間隔を空けた複数箇所に設けられており、前記ベントホールによる単位面積あたりの排気量が前記第1排気量より増大した第2排気量となる、第2ベント領域と
を有しており、
前記第2ベント領域は、グリーンタイヤが当該グリーンタイヤの径方向中心が前記タイヤ金型の径方向中心に対してずれてセットされた場合に、前記第2排気量が、前記タイヤ金型の径方向中心に対する当該グリーンタイヤの径方向中心のずれが減少するような吸引力を生じるように設定されている、タイヤ金型を提供する。
【0008】
本発明によれば、グリーンタイヤは、タイヤ金型にセットされて、タイヤ金型が型締めされる際に、第2ベント領域において、相対的に大きな第2排気量を生じるベントホールを介した排気によってタイヤ径方向外側に相対的に強く吸引される。ここで、第2ベント領域は、トレッド成形部のうち周方向に略等間隔を空けた複数箇所に設けられているので、グリーンタイヤは、周方向に略等間隔を空けた複数箇所においてバランスよく、径方向外側に略等しく吸引される。この結果、グリーンタイヤがタイヤ金型においてセンタリングされるので、タイヤ金型に対するグリーンタイヤの径方向の位置ずれが低減される。
【0009】
よって、該タイヤ金型のトレッド成形面にグリーンタイヤを周方向に均一に押し付けやすく、該グリーンタイヤを加硫成形することによって、トレッドの厚みが略均一化されてユニフォーミティに優れる空気入りタイヤが得られる。
【0010】
前記第2ベント領域は、前記トレッド成形面のうち周方向の3箇所以上に設けられていてもよい。
【0011】
本構成によれば、第2ベント領域が3箇所以上に設けられているので、グリーンタイヤが周方向の複数の位置においてよりバランスよく径方向に吸引されるので、グリーンタイヤをトレッドにおいてトレッド成形面に周方向にわたって略均一に沿わせやすい。例えば第2ベント領域が2つのみ設けられる場合のように、グリーンタイヤが互いに対向する方向(つまり180°方向)に吸引されて楕円状に変形することが抑制される。
【0012】
前記第2ベント領域における前記ベントホールの排気通路の開口率は、前記第1ベント領域における前記ベントホールの排気通路の開口率よりも大きくてもよい。
【0013】
本構成によれば、第1ベント領域および第2ベント領域それぞれのベントホールの排気通路の開口率を変えることによって、それぞれの領域の排気量を容易に調整できる。よって、第1ベント領域および第2ベント領域を容易に構成できる。
【0014】
前記第2ベント領域に形成された前記ベントホールの単位面積当たりの数は、前記第1ベント領域に形成された前記ベントホールの単位面積当たりの数よりも多くてもよい。
【0015】
本構成によれば、第1ベント領域および第2ベント領域それぞれのベントホールの単位面積当たりの数を変えることによって、それぞれの領域の開口率を容易に調整できる。よって、第1ベント領域および第2ベント領域を容易に構成できる。
【0016】
前記第1ベント領域に形成された前記ベントホールは、第1ベントホールであり、
前記第2ベント領域に形成された前記ベントホールは、第2ベントホールであり、
前記第2ベントホールにおける排気通路の開口面積は、前記第1ベントホールにおける排気通路の開口面積より大きくてもよい。
【0017】
本構成によれば、第1ベントホールおよび第2ベントホールそれぞれの排気通路の開口面積を変えることによって、それぞれの領域の開口率を容易に調整できる。よって、第1ベント領域および第2ベント領域を容易に構成できる。
【0018】
前記第1ベントホールには、ベントプラグが装着されており、
前記第2ベントホールには、前記ベントプラグは装着されていなくてもよい。
【0019】
本構成によれば、第1ベントホールにベントプラグを装着することにより排気通路の開口面積を小さく構成することができる。また、第2ベントホールにベントプラグを装着しないことによって、排気通路の開口面積を大きく構成することができる。なお、ベントプラグとして、棒状のもの、筒状のもの、それらを組み合わせたもの、更にスプリング付きのものを使用することができる。
【0020】
前記負圧源は、
前記第1ベント領域の前記ベントホールに接続された、第1負圧源と、
前記第2ベント領域の前記ベントホールに接続されており、第1負圧源よりも負圧が強い、第2負圧源と
を有していてもよい。
【0021】
本構成によれば、第1ベント領域および第2ベント領域それぞれのベントホールに接続される負圧源の強さを変えることによって、それぞれの領域の排気量を容易に調整できる。第1ベント領域および第2ベント領域を容易に構成できる。
【0022】
前記トレッド成形部は、周方向に分割された複数のセクターモールドを有し、
前記複数のセクターモールドのそれぞれは、前記第1ベント領域および前記第2ベント領域のいずれか一方を有していてもよい。
【0023】
本構成によれば、セクターモールドごとに、第1ベント領域および第2ベント領域のいずれか一方が構成されるので、セクターモールドごとにベントホールの仕様を統一しやすい。よって、セクターモールドへのベントホールの形成作業を効率化できる。
【0024】
前記トレッド成形部は、周方向に分割された複数のセクターモールドを有し、
前記複数のセクターモールドのそれぞれは、前記第1ベント領域および前記第2ベント領域の両方を有しており、
前記第2ベント領域は、前記複数のセクターモールドのそれぞれのうち周方向の中央に位置していてもよい。
【0025】
本構成によれば、セクターモールドにおいて、第2ベント領域はトレッド成形面の周方向の中央に位置している。換言すれば、第2ベント領域は、トレッド成形面のうち隣接するセクターモールドとの間で隙間が生じやすい周方向端部から離間している。これによって、第2ベント領域におけるグリーンタイヤの吸引を安定して生じさせやすく、グリーンタイヤの径方向の位置ずれを効率的に抑制しやすい。
【0026】
本発明の他の態様は、
上述したタイヤ金型を用いて、グリーンタイヤを加硫成形して空気入りタイヤを製造する方法を提供する。
【0027】
本発明によれば、上記空気入りタイヤの試験方法に係る発明の効果が、空気入りタイヤの試験装置において好適に発揮される。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るタイヤ金型および空気入りタイヤの製造方法によれば、タイヤ金型にセットされたグリーンタイヤの径方向の位置ずれを抑制できる。この結果、タイヤ金型によりグリーンタイヤを加硫成形して得られる空気入りタイヤのユニフォーミティが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫装置を概略的に示す断面図。
図2】タイヤ加硫装置の作動を概略的に示す図。
図3】セクターモールドの構成を概略的に示す平面図。
図4図3のA矢視によるトレッドリングの成型面を正面から見た図。
図5A】タイヤ加硫装置にセットされたグリーンタイヤを概略的に示す図。
図5B】型締め時におけるセクターモールドおよびここにセットされたグリーンタイヤの動作を概略的に示す図。
図6】第1変形例に係るトレッドリングの図4と同様の図。
図7】第2変形例に係るトレッドリングの図4と同様の図。
図8】第3変形例に係るトレッドリングの図4と同様の図。
図9図8のIX-IX線における断面図。
図10】第4変形例に係るトレッドリングを示す図3と同様の図。
図11】第5変形例に係るトレッドリングを示す図3と同様の図。
図12】他の実施形態に係るタイヤ加硫装置を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0031】
[第1実施形態]
図1に概略的に示すように、本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫装置1は、グリーンタイヤTを所定形状に加硫成形するタイヤ金型10と、該タイヤ金型10を収容保持するコンテナ20と、グリーンタイヤTを内側から膨出させてタイヤ金型10の成形面10aに押圧するブラダ3と、を備えている。タイヤ金型10において、グリーンタイヤTはタイヤ軸線を上下方向に向けてセットされるようになっている。
【0032】
タイヤ金型10は、グリーンタイヤTのトレッドT1を成形するための環状のトレッドリング11と、グリーンタイヤTのサイドウォールT2を成形するための上下一対のサイドプレート12,13と、グリーンタイヤTのビード部T3を成形するための上下一対のビードリング14,15と、を有している。
【0033】
トレッドリング11は、タイヤ周方向において複数のセクターモールド30に分割されている。各セクターモールド30は、タイヤ金型10の開閉時にタイヤ径方向に拡縮変位可能に設けられている。例えば、各セクターモールド30は、型開き状態では放射状に離間しており、型閉め状態では互いに当接して環状のトレッドリング11を形成する。すなわち、タイヤ金型10は、所謂セグメンテッドモールドとして構成されている。
【0034】
コンテナ20は、トレッドリング11を外周から支持する外周コンテナ21と、上側サイドプレート12を上面から支持する上側コンテナ22と、下側サイドプレート13を下面から支持する下側コンテナ23と、を有している。外周コンテナ21は、下広がりに形成された円錐状のテーパー面24aを内周に有する環状のテーパーブロック24と、テーパー面24aに対応するテーパー面25aを外周に有し且つ各セクターモールド30を個別に保持するように分割された複数のセクタブロック25と、を有している。
【0035】
そして、外周コンテナ21と共に上側コンテナ22を下降させることによって、上側サイドプレート12がグリーンタイヤTのサイドウォールT2に向けて移動すると共に、テーパーブロック24及びセクタブロック25の両テーパー面24a,25aの協働によって、各セクターモールド30がグリーンタイヤTのトレッドT1に向けてタイヤ径方向内径側に移動する。このようにして、タイヤ金型10の型閉め動作が行われる。逆に、外周コンテナ21及び上側サイドプレート12を上昇させることによって、タイヤ金型10の型開き動作が行われる。
【0036】
ここで、タイヤ金型10には、成形面10a側から背面10b側に向けて延びる複数のベントホール35が形成されている。また、タイヤ金型10とコンテナ20との間には、負圧空間Sが形成されており、グリーンタイヤTの加硫時に、タイヤ表面とタイヤ金型10の成形面10aとの間に介在する空気が、ベントホール35を介して負圧空間Sに吸引されて排出されるようになっている。これによって、グリーンタイヤTを加硫する際のエア溜まりの発生が抑制されている。
【0037】
負圧空間Sは、背面10bとコンテナ20の内面との間の空間として設けられており、タイヤ金型10及びコンテナ20の各部において、Oリング4によって適宜、封止されて構成されて、負圧源5(図3参照)に連通されて構成されている。
【0038】
図2を参照して、タイヤ加硫装置1における、グリーンタイヤTの加硫成形時におけるタイヤ金型10の型締め動作について説明する。
【0039】
図2(a)に示すように、型開き状態で、グリーンタイヤTをその軸心方向が上下に向かうようにして下側サイドプレート13上に載置する。このとき、下方側に位置するビード部T3を下側ビードリング15上に位置決めする。
【0040】
次に、図2(b)に示すように、ブラダ3内に空気を供給して膨張させ、その外周面でグリーンタイヤTの内側面を保持する。これにより、グリーンタイヤTは、下側ビードリング15とブラダ3とによって支持され、下側サイドプレート13とは非接触状態となる。
【0041】
次に、図2(c)に示すように、図示しない駆動装置を駆動することにより外周コンテナ21及び上側コンテナ22を降下させ、型閉め動作を開始する。これによりまず、上側ビードリング14がグリーンタイヤTの上方側に位置するビード部T3に当接する。そして、ビード部T3を介してグリーンタイヤTが変形し、上側サイドプレート12がグリーンタイヤTに当接する。
【0042】
続いて図2(d)に示すように、上側サイドプレート12がグリーンタイヤTに当接してから型閉めが完了する位置までの所定位置で、一旦、上側コンテナ22の降下動作を停止させる。さらに、図2(e)に示すように、上側コンテナ22を型閉め完了位置まで降下させることにより、グリーンタイヤTは上側サイドプレート12と下側サイドプレート13とによって挟持された状態となる。
【0043】
そして、図2(f)に示すように、上側コンテナ22が型閉め完了位置まで降下した後も外周コンテナ21の下降が続行され、テーパーブロック24が下方側へと移動する。そして、テーパーブロック24の内周側のテーパー面24aがセクタブロック25の外周側のテーパー面25aを押圧する。これにより、セクタブロック25に固定した各セクターモールド30は、タイヤ径方向内径側へと移動して、それぞれが周方向に当接して環状に連なることによってトレッドリング11が構成される。これによって、型閉め動作が完了する。
【0044】
これにより、グリーンタイヤTは、外表面が上側サイドプレート12、下側サイドプレート13及び各セクターモールド30によって、内表面はブラダ3によって押圧された状態となり、型閉め動作が完了する。この状態で、グリーンタイヤTが加硫成形され、空気入りタイヤが製造される。
【0045】
図3は、タイヤ軸線方向から見たトレッドリング11を概略的に示す図である。図3に示されるように、トレッドリング11は、グリーンタイヤTのトレッドT1を成型するトレッド成形面11a(10a)と、トレッド成形面11aと負圧空間Sとを連通させるベントホール35とを備えている。上述したように、負圧空間Sは負圧源5に接続されている。すなわち、トレッド成形面11aは、ベントホール35および負圧空間Sを介して、負圧源5に連通している。例えば、負圧空間Sにおける負圧が40kPa以上になるように、負圧源5による負圧に設定されている。
【0046】
本実施形態では、各セクターモールド30は、トレッドリング11を6分割するように構成されており、それぞれ、タイヤ軸線を中心とする60°の角度を有する。各セクターモールド30の周方向端部30bが周方向に互いに当接することによって、トレッドリング11の嵌合部11bが構成されている。
【0047】
本実施形態では、各セクターモールド30は、それぞれのトレッド成形面30aが、全体的に、ここに形成されたベントホール35による単位面積あたりの排気量が第1排気量となる第1ベント領域31と、ここに形成されたベントホール35による単位面積あたりの排気量が第1排気量より増大した第2排気量となる第2ベント領域32とのいずれかに一方に構成されている。
【0048】
トレッドリング11では、トレッド成形面11aが、第1ベント領域31と第2ベント領域32とが周方向に交互に位置するように構成されている。すなわち、6つのセクターモールド30は、トレッド成形面30aが第1ベント領域31に構成された第1セクターモールド30Aと、トレッド成形面30aが第2ベント領域32に構成された第2セクターモールド30Bとが、周方向に交互に配置されている。
【0049】
したがって、トレッドリング11では、トレッド成形面11aが、タイヤ軸線を中心とする120°ごとに設けられた第1ベント領域31と、タイヤ軸線を中心とする120°ごとに設けられた第2ベント領域32とによって、構成されている。各第1ベント領域31は、タイヤ軸線を中心として60°の略等間隔を空けて位置している。各第2ベント領域32は、タイヤ軸線を柱として60°の略等間隔を空けて位置している。なお、本明細書における略等間隔とは、±10°を意味している。
【0050】
図4は、図3のA矢視による、第1セクターモールド30Aと第2セクターモールド30Bとの嵌合部11bの周辺を正面から見た図である。なお、図4において、空気入りタイヤにおける溝を形成する骨部等が、便宜上省略されている。図4に示されるように、第1セクターモールド30Aに構成された第1ベント領域31と、第2セクターモールド30Bに構成された第2ベント領域32とが、嵌合部11bを挟んで隣接している。
【0051】
第2ベント領域32は、ベントホール35による開口率が、第1ベント領域31よりも大きくなるように構成されている。開口率は、各セクターモールド30のトレッド成形面30aの全表面積に対するベントホール35における排気通路の開口面積の比率として算出される。トレッド成形面30aの全表面積とは、骨部等の凸部、ベントホール35等の孔部及び凹部が形成されていないとした場合の、トレッド成形面30aの表面積を意味している。
【0052】
具体的には、第1ベント領域31および第2ベント領域32に形成された各ベントホール35は、内径D1は同じ(例えば直径1.3mm)であるものの数が異なっている。つまり、第2ベント領域32に形成されたベントホール35の単位面積当たりの数は、第1ベント領域31に形成されたベントホール35の単位面積当たりの数よりも多い。例えば、第1ベント領域31には、ベントホール35が390mmあたり1個の密度で形成されており、第2ベント領域32にはベントホール35が150mmあたり1個の密度で形成されている。
【0053】
すなわち、ベントホール35の形成数を調整することによって、開口率を調整し、これによって、第1排気量を生じる第1ベント領域31と、第1排気量より増大した第2排気量を生じる第2ベント領域32とが、構成されている。
【0054】
図5Aおよび図5Bを参照して、グリーンタイヤTがタイヤ金型10に径方向において位置ずれした状態でセットされたときの、タイヤ金型10の型締め動作によるグリーンタイヤTのセンタリング作用について説明する。
【0055】
図5Aは、図3と同様の各セクターモールド30の平面視であって、グリーンタイヤTが、型開き状態のタイヤ金型10に対して、タイヤ軸線がずれてセットされた状態が示されている。具体的には、グリーンタイヤTは、径方向中心O1が、タイヤ金型10の径方向中心O0に対して、図5Aにおいて右斜め上方にずれてセットされている。
【0056】
図5Aに示す型開き状態では、各セクターモールド30は互いに周方向に離間しているため、タイヤ金型10は、内側および外側が外気に連通しており、外周部に負圧空間Sが構成されにくい。この状態では、第1ベント領域31および第2ベント領域32において、各ベントホール35に作用する負圧が弱く、該負圧によってグリーンタイヤTが第1ベント領域31および第2ベント領域32に吸引されにくい。
【0057】
図5Bは、図5Aに示す型開き状態から、各セクターモールド30が径方向内側に移動して、それぞれの周方向端部30bが当接する直前の状態が示されている。グリーンタイヤTは、径方向中心O1が、タイヤ金型10の径方向中心O0に対して右上方にずれてセットされているので、トレッドT1のうち、右上部がトレッド成形面30aに径方向内側に押圧されると共に、左下部がトレッド成形面30aから離間している。この結果、グリーンタイヤTは、右上部が径方向内側に変形しやすい。
【0058】
ここで、図5Bに示す型締め直前の状態では、各セクターモールド30の周方向端部30bが互いに当接していないものの、Oリング4(図1参照)によるシール作用が生じる程度に近接している。このため、負圧空間Sにおける負圧が高くなり、第1ベント領域31においてベントホール35を介した排気によって吸引力F1が生じると共に、第2ベント領域32においてベントホール35を介した排気によって吸引力F2が生じる。
【0059】
吸引力F1,F2の大きさは排気量に依存する。吸引力F2は、第1ベント領域31における第1排気量より増大した第2排気量を実現するように、第1排気量を実現する吸引力F1より大きい。
【0060】
したがって、グリーンタイヤTのトレッドT1には、第1ベント領域31において吸引力F1により吸引され、第2ベント領域32において吸引力F2により吸引される。第2ベント領域32は、タイヤ金型10の径方向中心O0周りの120°ごとの角度位置に位置しているので、グリーンタイヤTは、周方向に等間隔を空けた3箇所において強く吸引される。この結果、グリーンタイヤTは、径方向中心O1が、タイヤ金型10の径方向中心O0とのずれが減少するようにセンタリングされるので、タイヤ金型10における径方向位置における偏りが抑制される。
【0061】
なお、好ましくは、グリーンタイヤTの径方向中心がタイヤ金型10の径方向中心O0に一致するような吸引力F2を生じるように、第2ベント領域32におけるベントホール35の開口率が設定されている。
【0062】
この結果、グリーンタイヤTは、タイヤ金型10においてセンタリングされることによって、トレッドT1がトレッド成形面30aにタイヤ周方向に均一に押し付けられやすく、該グリーンタイヤTを加硫成形してなる空気入りタイヤにおいてはトレッドの厚みがタイヤ周方向に略均一化される。よって、ユニフォーミティに優れた空気入りタイヤが得られる。
【0063】
また、第2ベント領域32は、トレッド成形面11aのうち周方向に等間隔を空けた3箇所に設けられているので、グリーンタイヤTが周方向の複数の位置においてバランスよく径方向に吸引されるので、グリーンタイヤTをトレッドT1においてトレッド成形面11aに周方向にわたって略均一に沿わせやすい。例えば第2ベント領域32が2つのみ設けられる場合のように、グリーンタイヤTが互いに対向する方向(つまり180°方向)に吸引されて楕円状に変形することが抑制される。
【0064】
また、第1ベント領域31および第2ベント領域32それぞれのベントホール35の開口率を変えることによって、それぞれの領域の排気量を容易に調整できる。さらに、第1ベント領域31および第2ベント領域32それぞれのベントホール35の単位面積当たりの数を変えることによって、それぞれの領域の開口率を容易に調整できる。よって、第1ベント領域31および第2ベント領域32を容易に構成できる。
【0065】
また、各セクターモールド30のトレッド成形面30aごとに、第1ベント領域31および第2ベント領域32のいずれかを構成するようにしたので、セクターモールド30ごとにベントホール35の仕様(単位面積あたりの数、大きさ等)を統一しやすい。よって、セクターモールド30へのベントホール35の形成作業を効率化できる。
【0066】
図6は、第1変形例に係るトレッドリング41の嵌合部41bの周辺を示す、図4と同様のトレッド成形面41aの正面図である。トレッドリング41は、トレッドリング11に対して第2セクターモールド30Bに換えて第2セクターモールド50Bを有している点で異なっている。第2セクターモールド50Bには、複数のベントホール55が形成されており、ベントホール55によってトレッド成形面50aの全面に第2ベント領域52が構成されている。
【0067】
ベントホール55は、内径D2がベントホール35の内径D1よりも大きいが、第2ベント領域52における単位面積あたりの数は、第1ベント領域31におけるベントホール35の単位面積あたりの数と等しい。よって、第2セクターモールド50Bに、内径D2がベントホール35よりも大きいベントホール55を形成することによって、第2ベント領域52における排気通路の開口率が、第1ベント領域31よりも大きく設定される。
【0068】
したがって、トレッドリング41においても、周方向に等間隔を空けた3箇所に位置する第2ベント領域52において、ベントホール55を介して相対的に強い吸引が実現されるので、グリーンタイヤTがタイヤ金型10においてセンタリングされる。
【0069】
図7は、第2変形例に係るトレッドリング42の嵌合部42bの周辺を示す、図4と同様のトレッド成形面42aの正面図である。トレッドリング42は、トレッドリング11に対して第1セクターモールド30Aに換えて第1セクターモールド60Aを有し、第2セクターモールド30Bに換えて第2セクターモールド60Bを有している点で異なっている。第1セクターモールド60Aおよび第2セクターモールド60Bには、それぞれベントホール65が、単位面積当たり同一の数で形成されている。
【0070】
第1セクターモールド60Aに形成された各ベントホール65には、ベントプラグ66がそれぞれ挿入されて装着されている。ベントプラグ66は、ベントホール65に嵌挿(装着)される円筒状部材である。すなわち、ベントホール65は、ベントプラグ66が嵌挿されることによって排気通路(径)が小さくなる。一方、第2セクターモールド60Bは、ベントプラグ66が装着されておらず、単なる貫通孔として構成されている。
【0071】
したがって、第1セクターモールド60Aには、排気通路径が相対的に小さいベントプラグ66によって第1排気量を生じる第1ベント領域61が構成されており、第2セクターモールド60Bには、排気通路径が相対的に大きいベントホール65によって第2排気量を生じる第2ベント領域62が構成されている。
【0072】
すなわち、第2ベント領域62における排気通路の開口率は、第1ベント領域61における排気通路の開口率よりも大きく設定されている。トレッドリング42においても、周方向に等間隔を空けた3箇所に位置する第2ベント領域62において、ベントホール65を介して相対的に強い吸引が実現されるので、グリーンタイヤTがタイヤ金型10においてセンタリングされる。
【0073】
図8は、第3変形例に係るトレッドリング43の嵌合部43bの周辺を示す、図4と同様のトレッド成形面43aの正面図である。トレッドリング43は、トレッドリング42に対してベントプラグとして、バネ付きのスプリングベントプラグ67が装着されている点で異なっている。
【0074】
図9は、図8のIX-IX線に沿った断面図であり、スプリングベントプラグ67の軸線に沿った断面図である。図9に示されるように、スプリングベントプラグ67は、ベントホール65に嵌挿された円筒状のハウジング67aと、ハウジング67aの内径部を軸線方向に延びるステム67bと、ステム67bのトレッド成形面43a側の先端部に設けられた円錐状の弁体67cと、ステム67bおよび弁体67cをトレッド成形面43a側に向けて付勢するコイルスプリング67dとを有している。
【0075】
したがって、スプリングベントプラグ67においては、排気通路がハウジング67aの内径部とステム67bとの間に構成されるので、排気通路径が単なるベントホール65よりも小さくなる。したがって、第2変形例と同様に、第1セクターモールド60Aには、排気通路径が相対的に小さいスプリングベントプラグ67によって第1排気量を生じる第1ベント領域61が構成されており、第2セクターモールド60Bには、排気通路径が相対的に大きいベントホール65によって第2排気量を生じる第2ベント領域62が構成されている。
【0076】
よって、第2変形例と同様に、第2ベント領域62における排気通路の開口率は、第1ベント領域61における排気通路の開口率よりも大きく設定されている。トレッドリング43においても、周方向に等間隔を空けた3箇所に位置する第2ベント領域62において、ベントホール65を介して相対的に強い吸引が実現されるので、グリーンタイヤTがタイヤ金型10においてセンタリングされる。
【0077】
図10は、第4変形例に係るトレッドリング44の一部を拡大して示す平面図である。トレッドリング44は、トレッドリング11と同様に周方向に6分割された、6個のセクターモールド80を有している。6個のセクターモールド80のうち、タイヤ金型10の径方向中心周りの120°ごとの角度位置に位置するセクターモールド80Aにおいて、第2ベント領域82が部分的に構成されている。残余のセクターモールド80Bにおいて、全面に第1ベント領域81が構成されている。
【0078】
具体的には、各セクターモールド80Aは、周方向の中央部分に、第2排気量を生じる第2ベント領域82が構成されており、この周方向両側に第1排気量を生じる第1ベント領域81が構成されている。第1ベント領域81および第2ベント領域82は、上述したように、ベントホール85の内径、数、及び/又はベントプラグの装着を、適宜調整することによって構成できる。なお、セクターモールド80Aにおいて、第1ベント領域81を構成せずに、周方向の中央部分に構成された第2ベント領域82のみとしてもよい。
【0079】
この場合、セクターモールド80Aにおいて、第2ベント領域82はトレッド成形面44aの周方向の中央に位置している。換言すれば、第2ベント領域82は、トレッド成形面44aのうち隣接するセクターモールド80Bとの間で隙間が生じやすい嵌合部44bから離間している。これによって、第2ベント領域82においては、嵌合部44bにおける隙間に起因した負圧漏れによる吸引不良が生じにくく、吸引を安定して生じさせやすいので、グリーンタイヤTを効率的にセンタリングできる。
【0080】
図11は、第5変形例に係るトレッドリング45の一部を拡大して示す平面図である。トレッドリング45は、トレッドリング11と同様に周方向に6分割されており、6個のセクターモールド90を有している。セクターモールド90には複数のベントホール95が形成されている。本変形例では、第1ベント領域91および第2ベント領域92が、各セクターモールド90の全面に構成されておらず、隣接するセクターモールド90にわたって構成されている。
【0081】
本変形例においても、第2ベント領域92は、トレッド成形面45aのうち、周方向に等間隔を空けた3箇所に構成されている。よって、第2ベント領域92において、相対的に強い吸引が実現されるので、グリーンタイヤTがタイヤ金型10においてセンタリングされる。
【0082】
[第2実施形態]
図12は他の実施形態に係るタイヤ加硫装置100を概略的に示す平面図である。タイヤ加硫装置100は、タイヤ金型110と、第1負圧を生じる第1負圧源101と、第1負圧よりもさらに強い第2負圧を生じる第2負圧源102とを備えている。タイヤ金型110は、タイヤ金型10と同様に構成されており、トレッドリング11を構成する複数のセクターモールド130を有している。
【0083】
各セクターモールド130は、第1セクターモールド130Aと第2セクターモールド130Bとを周方向に交互に有している。本実施形態では、3つの第1セクターモールド130Aと、3つの第2セクターモールド130Bとが、設けられている。第1セクターモールド130Aおよび第2セクターモールド130Bには、複数のベントホール135が同じ数だけそれぞれ形成されており、排気通路の開口率は同様に設定されている。
【0084】
第1セクターモールド130Aの各ベントホール135には、第1負圧源101が直接に例えば配管を介して接続されている。第2セクターモールド130Bの各ベントホール135には、第2負圧源102が直接に例えば配管を介して接続されている。すなわち、第1セクターモールド130Aおよび第2セクターモールド130Bはそれぞれ、排気通路は同じに設定されているものの、接続される負圧源の違いによって、第1排気量を生じる第1ベント領域131と、第1排気量よりも増大した第2排気量を生じる第2ベント領域132とが実現されている。
【0085】
本実施形態においても、第2ベント領域132が、トレッド成形面110aのうち、周方向に等間隔を空けた3箇所に構成されている。よって、第2ベント領域132において、相対的に強い吸引が実現されるので、グリーンタイヤTがタイヤ金型110においてセンタリングされる。また、第1セクターモールド130Aおよび第2セクターモールド130Bに形成するベントホール135の仕様を統一できるので、ベントホール135の形成作業を効率化できる。
【0086】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0087】
上記実施形態では、トレッドリングを6つのセクターモールドに分割した場合を例にとって説明したが、これに限らない。任意の数で複数のセクターモールドに分割されたトレッドリングを有するタイヤ金型において採用できる。
【0088】
また、上記実施形態およびその各変形例にて説明したベントホールの構成を、互いに組み合わせて構成してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、セグメンテッドモールドを例にとって説明したが、2ピースモールドにも採用できる。この場合でも、トレッド成形面の周方向に等間隔を空けた複数箇所において、相対的に吸引力が強くなる第2ベント領域を構成すればよい。
【符号の説明】
【0090】
1 タイヤ加硫装置
5 負圧源
10 タイヤ金型
11 トレッドリング
30 セクターモールド
30a トレッド成形面
30A 第1セクターモールド
30B 第2セクターモールド
31 第1ベント領域
32 第2ベント領域
35 ベントホール
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12