IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ福山セミコンダクター株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図1
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図2
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図3
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図4
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図5
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図6
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図7
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図8
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図9
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図10
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図11
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図12
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図13
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図14
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図15
  • 特許-近接センサおよび電子機器 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】近接センサおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/20 20060101AFI20240612BHJP
   G01V 8/12 20060101ALI20240612BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240612BHJP
   H03K 17/945 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
G09G3/20 691Z
G01V8/12 K
G09F9/00 366G
G09G3/20 612L
G09G3/20 612T
G09G3/20 670E
G09G3/20 691D
G09G3/20 691G
H03K17/945 B
H03K17/945 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020107271
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001924
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】濱口 弘治
(72)【発明者】
【氏名】井上 高広
(72)【発明者】
【氏名】大西 雅也
(72)【発明者】
【氏名】河辺 勇
【審査官】橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-032033(JP,A)
【文献】特表2021-516406(JP,A)
【文献】国際公開第2019/237985(WO,A1)
【文献】特開平11-052920(JP,A)
【文献】特開2001-083927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/20
G01V 8/12
G09F 9/00
H03K 17/945
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入射した入射光の少なくとも一部が裏面を透過する表示装置の表示画面における特定表示領域の配置箇所に対応する箇所に内蔵され、前記表示画面に検知対象体が近接しているか否かを検知する近接センサであって、
光を出射する発光素子と、
前記表示装置から出力された、前記表示画面に表示された画像の書き換えのタイミングを示す同期信号が入力される同期信号入力部と、
前記発光素子の前記光の出射を制御する出射制御部と、を備え、
前記出射制御部は、(i)前記特定表示領域で前記画像の走査線の書き換えが開始される書き換えタイミングと、前記発光素子の前記光の出射時間と、に基づいて設定された開始タイミングで、前記発光素子に前記光の出射を開始させ、かつ、(ii)前記書き換えタイミングになる前に、前記発光素子に前記光の出射を終了させ
前記光の出射の開始から終了までの期間には、前記表示画面に表示された画像の走査線のうち、前記期間の長さに応じた複数の走査線の書き換えが行われている時間が含まれていることを特徴とする近接センサ。
【請求項2】
前記表示装置は、前記画像の書き換えの開始を示す垂直同期信号を前記同期信号として出力し、
前記同期信号入力部に前記垂直同期信号が入力されたときから前記書き換えタイミングになるまでの間の基準時間と、前記出射時間との差分時間に応じて、前記開始タイミングを設定する開始タイミング設定部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
前記開始タイミング設定部は、
前記同期信号入力部に前記同期信号が入力されたときから時間計測を開始するカウンタ回路と、
前記時間計測の開始後の前記カウンタ回路から順次出力される出力値と、前記差分時間の値とを比較し、前記出力値と前記差分時間の値とが一致した場合に、前記開始タイミングを設定する比較回路と、を有することを特徴とする請求項2に記載の近接センサ。
【請求項4】
前記表示装置は、前記走査線の書き換えの開始を示す水平同期信号を順次出力し、
前記表示装置から出力された前記水平同期信号の数をカウントすることにより、前記表示画面に表示される1本目の前記走査線から前記特定表示領域に表示される前記走査線までの総本数と同数の前記水平同期信号をカウントしたときに、カウント信号を生成するカウント信号生成部をさらに備え、
前記同期信号入力部には、前記カウント信号生成部から出力された前記カウント信号が前記同期信号として入力され、
前記出射制御部は、前記同期信号入力部に対して前記カウント信号が入力されたときを、前記開始タイミングとすることを特徴とする請求項1に記載の近接センサ。
【請求項5】
前記同期信号入力部は、
入力された前記同期信号の極性に応じて当該極性を反転させる極性反転部と、
前記極性反転部から出力された反転信号のエッジを検出するエッジ検出部と、を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の近接センサ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の近接センサと、前記表示装置と、を備えたことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接センサおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などに代表されるタッチパネル機能付きの表示装置(例えば液晶画面を備えた表示装置)を備えるモバイル機器(電子機器、より具体的にはポータブル電子機器)が、幅広く利用されている。このモバイル機器は、多機能化、小型化および薄型化が進行しており、さらに、モバイル機器に近接する物体の有無を検知する近接センサを搭載したものも登場している。
【0003】
近接センサの用途としては、例えばモバイル機器の誤動作の防止が挙げられる。まず、モバイル機器がタッチパネル機能付きの携帯電話(以下、「携帯電話」と略記)である場合を例に挙げて、前記誤動作の防止について説明する。着信があると、通常、ユーザは携帯電話を耳に当てる動作を行う。このとき、表示画面の表示がオンであり、かつ、タッチパネル機能がアクティブの状態であった場合、表示画面がユーザの肌に当たってしまうと携帯電話が誤動作する可能性がある。
【0004】
このような誤動作を防止するために、携帯電話に備えられた制御部は、近接センサの検知結果に応じてタッチパネル機能をアクティブまたは非アクティブのいずれかに切り替える制御を行う。具体的には、近接センサは、ユーザの肌が表示画面に近接していることを検知すると、その旨の検知結果を制御部に送信する。検知結果を受信した制御部は、表示画面の表示をオフにするとともに、タッチパネル機能をアクティブの状態から非アクティブの状態に切り替える。そして、近接センサがユーザの肌と表示画面とが近接しなくなったことを検知すると、検知結果を受信した制御部は、表示画面の表示を再びオンにするとともに、タッチパネル機能を非アクティブの状態からアクティブの状態に切り替える。
【0005】
次に、モバイル機器がタッチパネル機能付きのメディアプレーヤである場合を例に挙げて、前記誤動作の防止について説明する。例えばユーザがメディアプレーヤを服のポケットに収納する場合、メディアプレーヤが近接センサを搭載していないのであれば、表示画面と服の生地(またはポケットの生地)との接触による誤動作を防止すべく、メディアプレーヤの電源をオフにする必要がある。なぜなら、メディアプレーヤの電源をオフにしなければ、表示装置をオフ、つまりタッチパネル機能を非アクティブの状態にできないためである。メディアプレーヤの電源をオフにするには、通常、メディアプレーヤに設けられた電源ボタンを押下する。
【0006】
一方、メディアプレーヤが近接センサを搭載しているのであれば、ユーザがメディアプレーヤを服のポケットに収納する場合でもメディアプレーヤの電源をオフにする必要はない。なぜなら、ユーザがメディアプレーヤを服のポケットに収納する過程で、近接センサはメディアプレーヤと服の生地(またはポケットの生地)とが近接したことを検知する。そして、検知結果を受信したメディアプレーヤの制御部が、表示画面の表示をオンからオフに切り替えるとともに、タッチパネルの機能をアクティブの状態から非アクティブの状態に切り替えるからである。
【0007】
ユーザがメディアプレーヤをポケットから取り出す過程では、近接センサは、メディアプレーヤと服の生地(またはポケットの生地)とが近接しなくなったことを検知する。そして、検知結果を受信したメディアプレーヤの制御部が、表示画面の表示をオフからオンに切り替えるとともに、タッチパネル機能を非アクティブの状態からアクティブの状態に切り替える。
【0008】
モバイル機器の制御部が、近接センサの検知結果に基づいて上述の各例のような制御を行うことにより、タッチパネル機能が意図せずアクティブの状態であることに起因するモバイル機器の誤動作を防止することができる。また、タッチパネル機能を使用する可能性が低い場面では表示画面の表示が自動的にオフになることから、モバイル機器の消費電力を低減することができる。
【0009】
モバイル機器に対して上述のようなメリットをもたらす近接センサは、タッチパネル機能付きの携帯電話、メディアプレーヤをはじめとする多様なモバイル機器への搭載が見込まれている。ここで、近接センサのモバイル機器における搭載位置、および近接センサを搭載した後のモバイル機器における筐体表面の形状等の設計条件(言い換えれば、近接センサの実装条件)は、モバイル機器の製造メーカおよび機種毎に様々である。この理由としては、モバイル機器におけるデザイン面および設計面の制約が挙げられる。このような経緯から、近接センサの様々な実装条件に対して同等の特性を発揮できる近接センサの実現が強く求められている。
【0010】
なお、近接センサの特性を示す指標としては、検知距離および誤動作の発生確率が挙げられる。検知距離は、近接センサが検知対象体の近接を検知したときの、検知対象体と近接センサとの間の距離である。検知対象体は、近接センサの検知対象となる物体である。
【0011】
近接センサには様々な検知方式があるところ、上述した携帯電話およびメディアプレーヤ等の小型の携帯端末には、光検知方式の近接センサが多く搭載されている。以下、図12および13を用いて、特許文献1に開示された従来の光検知方式の近接センサ100について説明する。
【0012】
近接センサ100は、図12に示すように、近接センサ100内の発光素子102から出射された出射光L1を検知対象体110に反射させる。検知対象物110は、近接センサ100の検知対象となる物体である。そして近接センサ100は、出射光L1が検知対象体110で反射された反射光L2を、近接センサ100内の受光素子103で受光する。このように受光素子103が反射光L2を受光することにより、近接センサ100は、検知対象体110が当該近接センサ100に近接していることを検知する。
【0013】
具体的には近接センサ100は、図13に示すように、発光素子102および受光素子103の他、センサ制御部101およびAD変換部104を備えている。AD変換部104は、受光素子103から出力された受光信号S103をデジタル信号S104に変換する。受光信号S103は、反射光L2の光量に応じた電流信号であり、アナログ信号である。デジタル信号S104は、受光信号S103で表される電流量のアナログ値と相関するデジタル値を表す信号である。センサ制御部101は、AD変換部104から出力されたデジタル信号S104に応じて、電子機器(不図示)の動作を制御するための制御信号S105を電子機器に出力する。なお、センサ制御部101には、必要に応じて、外部から入力信号S101が入力されてもよい。
【0014】
AD変換部104が生成するデジタル信号S104のビット数としては、一般的に8~16ビットが設定される。デジタル信号S104は、ビット数を大きくするほど出力ダイナミックレンジおよび分解能を高くすることができる。
【0015】
センサ制御部101は、制御信号S105として、AD変換部104から入力されたデジタル信号S104を直接出力してもよい。またセンサ制御部101は、AD変換部104から入力されたデジタル信号S104のデジタル値を、予め設定された閾値と比較してもよい。
【0016】
閾値を設定する場合、例えば、近接センサ100と検知対象体110との距離Xが100mmのときにAD変換部104から出力されるデジタル信号S104のデジタル値を、閾値として設定する。そしてセンサ制御部101は、AD変換部104から入力されたデジタル信号S104のデジタル値を閾値と比較することにより、検知対象体110が、距離X=100mmを基準として近接センサ100に近接しているか否かを検知することができる。なおセンサ制御部101は、制御信号S105を複数ビットのデジタル値として出力するのではなく、例えば距離Xが100mmより短いときは「0」を、長いときは「1」を出力することで、制御信号S105を1ビットの信号として出力することができる。
【0017】
近年、携帯電話については、表示装置の大画面化が進む一方で携帯電話本体の小型化・薄型化が望まれる傾向にあるため、筐体の狭額縁化が進んでいる。その結果、携帯電話内部における近接センサを搭載するための空間の確保が困難になってきたことから、近接センサの小型化・薄型化、ならびに、発光素子および受光素子の開口位置の工夫等の対応が求められている。
【0018】
また、携帯電話の表示装置としてはこれまで液晶表示装置が主流であったが、高画質映像、軽量、広視野角、低消費電力といった利点があることから、OLED(Organic Light Emitting Diode)表示装置を搭載した携帯電話が普及しつつある。液晶表示装置は、液晶部の裏面に設置したバックライトにより表示画面の輝度を調整している。このような液晶表示装置の構造上、当該液晶表示装置の裏面の筐体内部には外部からの光が透過しないため、光検知方式の近接センサ等の光学センサは、液晶表示装置のバックライトが存在しない、筐体の額縁部の裏面に配置する必要があった。
【0019】
以下、図14を用いて、液晶表示装置501を搭載した従来の携帯電話500について説明する。液晶表示装置501は、タッチパネル機能を有しており、各種情報を表示する表示部としての機能とユーザ操作の入力を受け付ける操作入力部としての機能とを兼ね備えている。また、液晶表示装置501は、周囲を携帯電話500の筐体の額縁部502に囲まれている。筐体内部における額縁部502の配置位置に形成された空間(以下、「額縁空間」)には、液晶表示装置の駆動回路およびタッチパネル機能の制御回路が配置されている。
【0020】
また額縁空間には、マイク503、カメラ504および近接センサ200等の各種部品も配置されており、額縁部502におけるマイク503、カメラ504および近接センサ200の各配置箇所に対応する領域は、開口されている。マイク503は集音装置である。カメラは撮像装置である。近接センサ200は、従来の光検知方式の光学センサである。このように額縁部502に開口部を形成しなければならないことから、液晶表示装置501の表示領域が狭くなり、ひいては携帯電話のデザイン性・外観にも影響を与えていた。
【0021】
一方、OLED表示装置はバックライトが不要であることから、OLED表示装置の裏面の筐体内部にもごくわずかであるが外部からの光が透過する。そのため、OLED表示装置の裏面の筐体内部に、光検知方式の近接センサ等の光学センサを配置することができる。具体的には、例えば図15に示すように、表示装置としてOLED表示装置601を用いた場合、携帯電話600において、OLED表示装置601の裏面の筐体610内部に光学センサ300を設置することができる。
【0022】
このように、筐体610内部におけるOLED表示装置601の裏面側の空間に光学センサ300を配置することで、筐体610の大きさを光学センサ300の大きさ分だけ大きくする必要がなくなる。そのため、携帯電話600の大きさを光学センサ300の搭載によって変えることなく、表示装置の大画面化を図ることができる。また、筐体610の額縁部に光学センサ300のための開口部を形成する必要がないことから、開口部の形成による携帯電話600のデザイン性・外観の低下を回避することができる。
【0023】
次に、図16を用いて、特許文献2に開示された従来のアクティブマトリクス駆動方式のOLED表示装置における駆動原理について説明する。OLED表示装置の画素410は、図16に示すように、OLED素子411、スイッチング用の薄膜トランジスタ412、OLED素子駆動用の薄膜トランジスタ413および電荷保持容量414を備えている。以下の説明では、スイッチング用の薄膜トランジスタ412を「第1TFT412」と称し、OLED素子駆動用の薄膜トランジスタ413を「第2TFT413」と称する。
【0024】
第1TFT412は、ゲート電極にゲートラインGLが接続され、ソース電極にデータラインDLが接続されている。第1TFT412は、ゲートラインGLの入力電圧によってオンとオフとが切り替わる。データラインDLに入力されているデータ信号は、第1TFT412がオンになったときに、第1TFT412のドレイン電極と第2TFT413のゲート電極との間に接続された電荷保持容量414に保持される。
【0025】
第2TFT413のゲート電極には、第1TFT412を介して入力されたデータ信号に応じた電圧が供給される。第2TFT413は、ゲート電極に供給された電圧の電圧値に応じた電流を、電源ラインVLからOLED素子411に供給する。OLED素子411は、陽極から注入される正孔と陰極から注入される電子とが発光層内で再結合することにより、発光分子が励起される。そして、この発光分子が励起状態から基底状態に戻るときに、OLED素子411が発光する。
【0026】
OLED素子411の発光輝度は、OLED素子411に供給される電流に略比例している。このことから、OLED表示装置が備えている複数の画素410のそれぞれに対して上述のようにデータ信号を入力してOLED素子411に流す電流を制御することにより、データ信号に応じた発光輝度でOLED素子を発光させることができる。そのため、OLED表示装置全体で、所望のイメージ表示を行うことができる。
【0027】
ここで、従来の表示装置には、一般的に60Hzの周波数のフレームレートが適用されている。フレームレートは、表示装置の画像の書き換え周波数である。フレームレートが60Hzの場合、表示装置における画像の書き換え周期は約16667μsになる。そのため、例えば特許文献2のOLED表示装置においてフレームレートを60Hzにした場合、電荷保持容量414は、画像の書き換え後16667μsの期間は、入力されたデータ信号の電圧レベルを維持しておく必要がある。
【0028】
次に、特許文献3には、OLED素子を備えた発光装置に使用されるトランジスタについて、外部からの光が照射されることで電流が発生し、発光装置が誤動作するという問題点があることが指摘されている。また特許文献3には、前記の誤動作を防止すべく、2種類のトランジスタで構成される周辺回路部と光の出射面との間を補助配線で遮光する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【文献】特許第6641469号明細書
【文献】特許第4052865号明細書
【文献】特開2007-147814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
ここで、従来の電子機器では、OLED表示装置の裏面には発光源がないため、トランジスタで構成される周辺回路部に遮光対策がなされていないものが一般的である。そのため、従来の電子機器において、OLED表示装置の裏面に例えば光検知方式の近接センサを配置すると、近接センサから出射された赤外光がOLED表示装置に入射してトランジスタを照射し、トランジスタに電流が発生する。そして、この電流発生に起因して、画素内の電荷保持容量が電荷の充電または放電を行ってしまう。
【0031】
そのため電荷保持容量は、近接センサから出射された赤外光がOLED表示装置に入射することにより、入力されたデータ信号の電圧を維持するための電荷量を保持できなくなる。その結果、OLED表示装置の表示画面における、近接センサから出射された赤外光が照射される表示領域(以下、「特定表示領域」:詳細は後述)のみ、表示イメージが異常な状態となる。なお、この異常な状態の表示イメージは、表示画面に表示された画像中の異常な画像部分が人の肉眼では「点」のように見えることから、以下の説明では、前記の異常な画像部分を「異常点」と称する。
【0032】
この点、特許文献1の近接センサ等および特許文献2の表示装置には、近接センサから出射される赤外光に起因する異常点への対策が施されていない。また、特許文献3の発光装置には、補助配線を用いた遮光という誤動作防止対策が施されているものの、この対策は外部から発光装置に入射した光を対象とするものであり、発光装置の裏面に配置される近接センサから出射された光を対象とするものではない。そのため、特許文献3に開示された誤動作防止対策は、近接センサから出射される光に起因する異常点への対策としては不十分であった。
【0033】
本発明の一態様は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、近接センサから出射される光に起因する異常点発生の期間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る近接センサは、表示装置の表示画面における特定表示領域の配置箇所に対応する箇所に配置され、前記表示画面に検知対象体が近接しているか否かを検知する近接センサであって、光を出射する発光素子と、前記表示装置から出力された、前記表示画面に表示された画像の書き換えのタイミングを示す同期信号が入力される同期信号入力部と、前記発光素子の前記光の出射を制御する出射制御部と、を備え、前記出射制御部は、(i)前記特定表示領域で前記画像の走査線の書き換えが開始される書き換えタイミングと、前記発光素子の前記光の出射時間と、に基づいて設定された開始タイミングで、前記発光素子に前記光の出射を開始させ、かつ、(ii)前記書き換えタイミングになる前に、前記発光素子に前記光の出射を終了させる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一態様によれば、近接センサから出射される光に起因する異常点発生の期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態1および2に係る電子機器の表示装置における要部の回路図である。
図2】前記表示装置の動作タイミングを示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係る近接センサの機能的構成を示すブロック図である。
図4】60Hzで出力される垂直同期信号の動作タイミングを示す図である。符号401は、ハイパルスの垂直同期信号の動作タイミングを示す図である。符号402は、ローパルスの垂直同期信号の動作タイミングを示す図である。
図5】本発明の実施形態1に係る同期信号入力部の要部の回路図である。
図6】符号601は、前記同期信号入力部から出力される入力検知信号の動作タイミングを示す図である。符号602は、本発明の実施形態1に係る開始タイミング設定部から出力される遅延信号の動作タイミングを示す図である。
図7】前記開始タイミング設定部の機能的構成を示すブロック図である。
図8】本発明の実施形態1に係る電子機器の概略構成を示す正面図である。
図9】符号901は、前記同期信号入力部に入力される垂直同期信号の動作タイミングを示す図である。符号902は、本発明の実施形態1に係るセンサ制御部から出力される発光信号の動作タイミングを示す図である。
図10】本発明の実施形態2に係る近接センサの機能的構成を示すブロック図である。
図11】本発明の実施形態2に係る電子機器の概略構成を示す正面図である。
図12】特許文献1に開示された近接センサの動作原理を示す概略図である。
図13】前記近接センサの機能的構成を示すブロック図である。
図14】液晶表示装置を搭載した従来の携帯電話の概略構成を示す正面図である。
図15】OLED表示装置を搭載した従来の携帯電話の概略構成を示す断面図である。
図16】特許文献2に開示された表示装置の画素の要部構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
〔電子機器60および90の表示装置の概要〕
以下、図1および2を用いて、本発明の実施形態1に係る電子機器60の表示装置の概要、および本発明の実施形態2に係る電子機器90の表示装置の概要について、纏めて説明する。本明細書では、電子機器60の表示装置と電子機器90の表示装置とは同一であり、ともにOLED表示装置であるものとする。電子機器60および90としては、例えば携帯電話、タッチパネル機能付きの家電製品、スマートフォン、タブレット端末、メディアプレーヤなどを挙げることができる。
【0038】
なお、電子機器60の表示装置と電子機器90の表示装置とが同一である必要は必ずしもなく、例えばいずれか一方の表示装置のみがOLED表示装置であってもよい。この場合、OLED表示装置でない他方の表示装置は、裏面側に後述の近接センサ10または80が配置されても近接センサ10および80のいずれもがその機能を発揮できるものであればよい。具体的には、OLED表示装置でない他方の表示装置は、検知対象体からの反射光を近接センサ10および80の受光素子13(詳細は後述)が受光できるように、外部から入射した入射光の少なくとも一部が表示装置の裏面を透過するものであればよい。前記の「OLED表示装置でない他方の表示装置」としては、例えばバックライトの無い自発光型の表示パネルを備えた表示装置を挙げることができる。
【0039】
<表示装置の概略構成>
表示装置は、図1に示すように、マトリックス状に配置された複数の画素71、走査線駆動回路76、データ線駆動回路77およびタイミング制御回路78を備えている。複数の画素71で、表示装置の表示画面61および91が構成される。表示画面61と表示画面91とは、同一の表示画面である。なお、表示画面61については図8を参照されたい。また、表示画面91については図11を参照されたい。
【0040】
画素71は、OLED素子72、第1TFT73、第2TFT74および電荷保持容量75を有している。OLED素子72は、図16に示すOLED素子411と同一の機能を有する。第1TFT73は、スイッチング用の薄膜トランジスタであり、図16に示す第1TFT412と同一の機能を有する。第2TFT74は、OLED素子駆動用の薄膜トランジスタであり、図16に示す第2TFT413と同一の機能を有する。電荷保持容量75は、第1TFT73のドレイン電極と第2TFT74のゲート電極との間に接続されており、図16に示す電荷保持容量414と同一の機能を有する。
【0041】
タイミング制御回路78には、主として、垂直同期信号S16、水平同期信号S86および画像が入力される。垂直同期信号S16は画像の1画面の開始位置を示し、水平同期信号S86は1ライン分の画像の開始位置を示す。言い換えれば、垂直同期信号S16は画像の書き換えの開始を示し、水平同期信号S86は走査線64(図8参照)の書き換えの開始を示す。走査線64は、走査によって描かれた画像を構成する画素の、横1行分の軌跡である。なお、本明細書において「横」とは、紙面向かって左右方向を指すものとする。
【0042】
タイミング制御回路78は、垂直同期信号S16、水平同期信号S86および画像が入力されることにより、走査線駆動回路76を駆動する信号とデータ線駆動回路77を駆動する信号とを生成し、それぞれの信号を出力する(詳細については後述)。
【0043】
第1TFT73のゲート電極には、走査線駆動回路76から出力された信号が入力され、ソース電極には、データ線駆動回路77から出力された信号(具体的には、表示画面61および91に表示させる画像)が入力される。第1TFT73がオンになったとき、ソース電極に入力されたデータ線駆動回路77からの信号が、電荷保持容量75に保持される。そして、電荷保持容量75に保持された前記信号の電圧値に比例する電流が、第2TFT74のソース電極とドレイン電極との間に流れることにより、OLED素子72の発光輝度が決まる。
【0044】
<表示装置の動作タイミング>
タイミング制御回路78は、タイミング制御回路78は、入力された水平同期信号S86に基づいてパルス信号SPおよびLPを生成し、データ線駆動回路77に出力する。またタイミング制御回路78は、入力された垂直同期信号S16に基づいてパルス信号GP1~GP4を生成し、データ線駆動回路77に出力する。
【0045】
具体的にはタイミング制御回路78は、シリアルに入力される画像のうち、各ラインの先頭の画像を示すタイミングでパルス信号SPを出力する。パルス信号SPが入力されたデータ線駆動回路77は、図2に示すように、パルス信号SPが入力されたタイミングで各ライン分の画像のサンプリングを開始する。
【0046】
またタイミング制御回路78は、1ライン分の画像のサンプリングが終了する毎に、当該サンプリングが終了するタイミングでパルス信号LPを出力する。パルス信号LPが入力されたデータ線駆動回路77は、図2に示すように、パルス信号LPが入力されたタイミングで、各ライン分の画像に対応するアナログデータを画素信号線S1~S4に順次出力する。アナログデータは、画像をDA変換して得られた電圧である。
【0047】
データ線駆動回路77は、各ライン分のアナログデータが画素信号線S1~S4に出力されているときに、パルス信号GP1~GP4を順次出力して第1TFT73のゲート電極をオンにする。例えばデータ線駆動回路77は、1ライン目の画像に対応するアナログデータが画素信号線S1に出力されているとき、図2に示すように、パルス信号GP1を出力して1ライン目の画素信号線S1と接続している第1TFT73のゲート電極をオンにする。
【0048】
ここで、パルス信号GP1~GP4は、タイミング制御回路78に垂直同期信号S16が入力される毎に、最初の画素71の行に戻って出力される。「最初の画素71の行」とは、図2に示す複数の画素71のうち、紙面向かって最も上側に配置された画素71の行を指す。よって、後述の近接センサ10および80に備えられた発光素子12の配置位置は、垂直同期信号S16のフレームレートおよび後述の走査線64の本数から算出することができる。
【0049】
一方、水平同期信号S86は、1ライン分の画像毎にパルス信号として発生する。そのため、水平同期信号S86自体を近接センサ10および80の同期信号(詳細は後述)として使用することはできない。よって、近接センサ80には、水平同期信号S86から同期信号として使用することが可能なカウント信号S87を生成するカウント信号生成部82(図10参照:詳細は後述)が備えられている。これにより、水平同期信号S86を用いても、発光素子12の配置位置を特定することができる。なお、例えば水平同期信号S86に基づいて生成したSPをカウントすることによっても、発光素子12の光の出射タイミングを調整(言い換えれば、発光素子12の配置位置を特定)することができる。
【0050】
〔実施形態1〕
図3図9を用いて、本発明の実施形態1について説明する。なお説明の便宜上、本実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、後掲の実施形態2では、同じ符号を付記してその説明を繰り返さない。
【0051】
近接センサ10は、電子機器60の表示装置の表示画面61(図8参照)に、検知対象体(図12中の「検知対象物110」と同一)が近接しているか否かを検知する光検出方式の光学センサである。近接センサ10は、図3に示すように、センサ制御部(出射制御部)11、発光素子12、受光素子13、AD変換部14、同期信号入力部15および開始タイミング設定部16を備えている。
【0052】
<同期信号入力部15>
(同期信号入力部15の概要)
同期信号入力部15には、表示装置から出力された同期信号が入力される。同期信号は、表示装置の表示画面61に表示された画像の書き換えのタイミングを示す。本実施形態では、図3に示すように、同期信号入力部15に同期信号として垂直同期信号S16が入力される。同期信号入力部15は、垂直同期信号S16が入力されたことを検知すると、開始タイミング設定部16に入力検知信号S17を出力する。
【0053】
ここで、図4を用いて、表示装置のフレームレートが60Hzの場合における、同期信号入力部15に入力される垂直同期信号S16について説明する。通常駆動時の電圧レベルがローレベルであり、画像の書き換え開始時に電圧レベルがローレベルからハイレベルに遷移する表示装置における、垂直同期信号S16のタイミング波形は、例えば図4の符号401のようなパルス波形となる。垂直同期信号S16のパルス幅は、電子機器毎および表示装置毎に異なるものの、一般的には数μs以上である。また、垂直同期信号S16の周期はフレームレートの逆数となり、フレームレートが60Hzであれば、周期は約16667μsとなる。
【0054】
一方、通常駆動時の電圧レベルがハイレベルであり、画像の書き換え開始時に電圧レベルがハイレベルからローレベルに遷移する表示装置における、垂直同期信号S16のタイミング波形は、例えば図4の符号402のようなパルス波形となる。この場合における垂直同期信号S16のパルス幅も一般的には数μs以上であり、周期も約16667μsとなる。
【0055】
このように表示装置は、同一のフレームレート(60Hz)において、2種類の異なるパルス波形の垂直同期信号S16のいずれかを出力する。以下、信号のパルス波形の種類を「極性」と称する。また、図4の符号401のような信号のパルス波形の極性を「ハイパルス」と称し、図4の符号402のような信号のパルス波形の極性を「ローパルス」と称する。
【0056】
上述のように、垂直同期信号S16は極性およびパルス幅が一律ではないため、同期信号入力部15は、垂直同期信号S16が入力されたことをパルス幅ではなくエッジで検知することが望ましい。エッジとは、ハイパルスの垂直同期信号S16であれば、図4の符号401に示すように、当該垂直同期信号S16がローレベルからハイレベルに遷移する瞬間の波形の立ち上がり部分E1を指す。またローパルスの垂直同期信号S16であれば、エッジとは、図4の符号402に示すように、当該垂直同期信号S16がハイレベルからローレベルに遷移する瞬間の波形の立ち下がり部分E2を指す。以下、ハイパルスの垂直同期信号S16におけるエッジを「立ち上がりエッジE1」と称し、ローパルスの垂直同期信号S16におけるエッジを「立ち下がりエッジE2」と称する。
【0057】
同期信号入力部15は、表示装置がハイパルスまたはローパルスの垂直同期信号S16のいずれを出力かに応じて、垂直同期信号S16の入力を立ち上がりエッジE1または立ち下がりエッジE2のいずれかで検知できるように検知方法を選択できるのが望ましい。勿論、垂直同期信号S16の入力を立ち上がりエッジE1または立下りエッジE2のいずれか一方のみで検知してもよいし、エッジではなくパルス幅で検知してもよい。
【0058】
(同期信号入力部15の要部の構成)
図5を用いて、同期信号入力部15の要部の構成について説明する。同期信号入力部15は、図5に示すように、極性反転部31とエッジ検出部32とを有している。表示装置から出力された垂直同期信号S16は、同期信号入力部15の極性反転部31に直接入力される。
【0059】
極性反転部31は、入力された垂直同期信号S16の極性に応じて当該極性を反転させる。極性反転部31は、図5に示すように、インバータ33とマルチプレクサ34とを有している。インバータ33は、極性反転部31に入力された垂直同期信号S16の極性を反転させる。マルチプレクサ34は、極性反転部31に入力された垂直同期信号S16と、インバータ33からの出力信号とが入力され、両信号のいずれか一方を出力する。極性反転部31(具体的にはマルチプレクサ34)から出力され得る、極性反転部31に入力された垂直同期信号S16とインバータ33からの出力信号とを、纏めて「反転信号」と称する。
【0060】
またマルチプレクサ34には、前記の垂直同期信号S16または前記の出力信号のいずれを出力するかを選択するための信号として、極性選択信号S31が入力される。例えば極性反転部31に入力された垂直同期信号S16の極性がハイパルスの場合、極性選択信号S31の極性がローであれば、マルチプレクサ34は、極性反転部31に入力された垂直同期信号S16(極性:ハイパルス)をそのまま出力する。一方、極性反転部31に入力された垂直同期信号S16の極性がローパルスの場合、極性選択信号S31の極性がハイであれば、マルチプレクサ34は、インバータ33からの出力信号(極性:ハイパルス)を出力する。
【0061】
このように極性反転部31は、反転信号として、常に極性がハイパルスの垂直同期信号S16を出力する。そのため、エッジ検出部32には、立ち上がりエッジE1のみを検出する機能があればよい。
【0062】
エッジ検出部32は、極性反転部31から出力された反転信号のエッジを検出することにより、同期信号入力部15に垂直同期信号S16が入力されたことを検知する。本実施形態では、エッジ検出部32は、上述のように立ち上がりエッジE1のみを検出する。
【0063】
エッジ検出部32は、奇数段のインバータ33で構成されるインバータ群とAND回路35とを有している。インバータ群は、エッジ検出部32に入力された反転信号を反転および遅延させる。AND回路35には、エッジ検出部32に入力された反転信号とインバータ群からの出力信号とが入力される。
【0064】
反転信号がローレベルのとき、インバータ群はハイレベルの出力信号を出力し、AND回路35はローレベルの出力信号を出力する。次に、反転信号がローレベルからハイレベルに遷移したとき、インバータ群からの出力信号がハイレベルからローレベルに遷移するまでの間には、インバータ33の段数に応じて遅延時間が生じる。そのため、遅延時間が経過するまでの間、AND回路35に入力される2つの入力信号はともにハイレベルになることから、AND回路35はハイレベルの出力信号を出力する。次に、遅延時間の経過後、インバータ群からの出力信号がローレベルに遷移すると、AND回路35からの出力信号もハイレベルからローレベルに遷移する。
【0065】
上述したAND回路35からの出力信号が、同期信号入力部15からの出力信号となる。以下、AND回路35からの出力信号、つまり同期信号入力部15からの出力信号を「入力検知信号S17」と称する。
【0066】
なお、図5に示す同期信号入力部15の回路構成、および上述した垂直同期信号S16の入力の検知方法はあくまで一例であり、どのような回路構成および検知手法を採用してもよい。また、表示装置から出力される垂直同期信号S16および同期信号入力部15から出力される入力検知信号S17の各極性も、ハイパルスまたはローパルスのいずれかに限定するものではない。
【0067】
<開始タイミング設定部16>
(開始タイミング設定部16の概要)
開始タイミング設定部16には、同期信号入力部15から出力された入力検知信号S17が入力される。開始タイミング設定部16は、発光素子12が光の出射を開始する開始タイミングを設定する。言い換えれば、開始タイミング設定部16は、同期信号入力部15に垂直同期信号S16が入力されたときから近接センサ10による検知開始までの間の時間を調整する機能を有する。そしてこの機能は、開始タイミング設定部16が、入力検知信号S17の入力をトリガとして設定した遅延時間の経過後に、遅延信号S18をセンサ制御部11に出力することで実現される。
【0068】
以上より、「開始タイミング設定部16が開始タイミングを設定する」とは、具体的には開始タイミング設定部16が遅延信号S18をセンサ制御部11に出力することを指す。また、「開始タイミングが設定された」とは、具体的にはセンサ制御部11に遅延信号S18が入力されたことを指す。
【0069】
さらに、「同期信号入力部15に垂直同期信号S16が入力されたとき」とは、具体的には、開始タイミング設定部16が、同期信号入力部15から垂直同期信号S16の入力を検知した旨の検知結果を受信したときのことを指す。言い換えれば、同期信号入力部15から出力された入力検知信号S17が、開始タイミング設定部16に入力されたときのことを指す。
【0070】
遅延時間は、同期信号入力部15に垂直同期信号S16が入力されたときから書き換えタイミングになるまでの間の基準時間と、発光素子12の光の出射時間との差分時間の一例である。書き換えタイミングは、表示装置の表示画面61の特定表示領域65で、画像の走査線64の書き換えが開始されるタイミングである。なお、表示画面61、特定表示領域65および走査線64のそれぞれについては、図8を参照されたい。また、書き換えタイミング、基準時間および特定表示領域65の詳細については後述する。
【0071】
ここで、図6を用いて、遅延時間の設定および調整について説明する。入力検知信号S17は、垂直同期信号S16と同じ周波数で動作する。そのため、垂直同期信号S16の周波数が60Hzの場合、入力検知信号S17も同様に60Hzで動作し、その周期は図6の符号601に示すように約16667μsとなる。
【0072】
近接センサ10が電子機器60の表示装置の裏面におけるどの空間に配置されても、その機能を発揮できるようにするには、開始タイミング設定部16が、遅延時間として最長で垂直同期信号S16の周期まで設定できる必要がある。具体的には、図6の符号602に示すように、開始タイミング設定部16は最長で約16667μsの遅延時間を設定できる必要がある。また遅延時間の調整幅は、特定表示領域65において画像の走査線64が書き換わるタイミングで、近接センサ10の検知が終了するように(言い換えれば、発光素子12の光の出射が終了するように)、精度よく設定できる必要がある。
【0073】
例えば、表示装置の表示画面61の画素数が1920×1080のフルハイビジョンの解像度であり、かつ、表示画面61に表示される画像の走査線が合計1920本の場合、遅くとも約8.7μs毎に走査線64が1本ずつ書き換わっていくことになる。そのため、開始タイミング設定部16は、遅延時間を約10μsの調整幅で調整できる回路構成にすることが望ましい。
【0074】
(開始タイミング設定部16の要部の構成)
図7を用いて、開始タイミング設定部16の要部の構成について説明する。開始タイミング設定部16は、図7に示すように、カウンタ回路51と比較回路52とを有している。カウンタ回路51には、同期信号入力部15から出力された入力検知信号S17が直接入力される。カウンタ回路51は、入力検知信号S17が入力されたときから時間計測を開始する。またカウンタ回路51は、時間計測の開始後、デジタル値(出力値)を表すカウンタ回路出力信号S51を順次出力する。
【0075】
比較回路52には、カウンタ回路51から出力されたカウンタ回路出力信号S51と遅延時間設定信号S19とが入力される。遅延時間設定信号S19は、遅延時間の設定値を比較回路52に送信するための信号であり、カウンタ回路51からカウンタ回路出力信号S51が出力されたことをトリガとして、センサ制御部11から出力される。遅延時間の設定値は、センサ制御部11に設定値を表す入力信号S11が入力されることにより、センサ制御部11内のレジスタ(不図示)に格納される。
【0076】
入力信号S11は、例えばユーザが、電子機器60の表示装置の表示画面61上で遅延時間の設定操作を行うことにより、表示装置から出力される。なお遅延時間の設定値は、入力信号S11によって設定されるのではなく、例えば近接センサ10の製造段階で前記のレジスタに予め格納されていてもよい。
【0077】
比較回路52は、時間計測の開始後にカウンタ回路51から順次出力されるカウンタ回路出力信号S51のデジタル値と、遅延時間設定信号S19の設定値とを比較する。そして、カウンタ回路出力信号S51のデジタル値と遅延時間設定信号S19の設定値とが一致したとき、比較回路52は遅延信号S18をセンサ制御部11に出力する。開始タイミング設定部16、具体的には比較回路52は、遅延信号S18を出力することによって開始タイミングを設定する。
【0078】
開始タイミング設定部16は、上述のようにして、開始タイミングを垂直同期信号S16が入力したときから所望の時間だけ遅らせることができる。なお、図7に示す開始タイミング設定部16の回路構成、および上述した遅延信号S18の出力方法はあくまで一例であり、どのような回路構成および出力手法を採用してもよい。
【0079】
<センサ制御部11等の概要>
センサ制御部11には、開始タイミング設定部16から出力された遅延信号S18が入力される。遅延信号S18が入力されたセンサ制御部11は、開始タイミングになったら、図3に示すように発光信号S12を出力して発光素子12に光を出射させる。また、センサ制御部11は、近接センサの各部および各回路を統括的に制御する。さらに、センサ制御部11は、電子機器60に制御信号S15を出力する。制御信号S15は、従来の近接センサ100のセンサ制御部101から出力される制御信号S105と同一である(図13参照)。
【0080】
発光素子12は、検知対象体を検知するための光を出射する素子であり、例えばLED(Light Emmitting Diode)または半導体レーザー素子である。LEDおよび半導体レーザー素子は電流が供給されることで発光するため、発光素子12としてLEDまたは半導体レーザー素子を用いる場合には、発光素子12は電流駆動回路(不図示)と組み合わせて用いられる。また、発光素子12から出射される光としては、人の肉眼では認識できない赤外光が一般的である。
【0081】
受光素子13には、一般的にはフォトダイオード等の半導体受光素子が用いられる。フォトダイオードは、光を検知することで電流を発生する素子である。受光素子13は、発光素子12から出射された光(例えば赤外光)が検知対象体で反射された反射光を受光することにより、電流を発生させる(図12参照)。そして受光素子13は、発生させた電流の電流値を表す受光信号S13をAD変換部14に出力する。
【0082】
AD変換部14は、積分回路およびコンパレータ回路(いずれも不図示)等で構成されており、受光信号S13の入力に伴って流入した電荷の電荷量を検出することにより、アナログ信号である受光信号S13をデジタル信号S14にAD変換する。AD変換部14で生成されたデジタル信号S14は、近接センサ10と検知対象体との距離と相関のあるデジタル値を表しており、センサ制御部11に出力される。
【0083】
センサ制御部11は、入力されたデジタル信号S14のデジタル値を電子機器60に直接出力してもよい。またセンサ制御部11は、デジタル信号S14のデジタル値と予め設定された閾値とを比較する判定回路を有していれば、検知対象体が閾値を基準として近接センサ10に対して近いか遠いかを判定し、判定結果を1ビットの信号として出力してもよい。
【0084】
例えば、近接センサ10と検知対象体との距離が100mmのときを基準として「100mm」のデジタル値を閾値として設定すれば、検知対象体が、距離100mmを基準として近接センサ10に対して近いか遠いかを判定することができる。そして、近接センサ10と検知対象体との距離が100mmよりも近いときは「0」を、逆に遠いときは「1」を出力することで、判定結果を1ビットの信号として出力することができる。
【0085】
<近接センサ10における検知タイミングの設定方法>
図8および図9を用いて、近接センサ10における検知タイミングの設定方法について説明する。検知タイミングは、近接センサ10による検知対象体の検知が開始する検知開始タイミング、および近接センサ10による検知対象体の検知が終了する検知終了タイミングの両者を含む概念である。検知開始タイミングは、言い換えれば開始タイミング設定部16が設定する開始タイミング、つまり発光素子12が光の出射を開始するタイミングとなる。検知終了タイミングは、発光素子12が光の出射を終了するタイミングとなる。
【0086】
電子機器60は、図8に示すように表示画面61の大画面化が図られていることから、電子機器60の筐体の額縁部は、正面視した場合の表面積が小さくなっている。額縁部は、電子機器60の筐体における表示装置の周囲を取り囲む部分である。そのため、電子機器60には、筐体の額縁部に、近接センサ10から出射された光および検知対象体からの反射光を筐体に通過させるための開口部を形成することが困難である。よって近接センサ10は、図8に示すように、筐体の内部における、表示装置(具体的には表示画面61)の裏面の空間に配置される。
【0087】
近接センサ10は、前記の空間内であればどの箇所に配置されてもよく、例えば、近接センサ10が検知対象体の存在を最も広範に検知できるような箇所(以下。「ターゲット箇所」)に配置するのが望ましい。近接センサ10をターゲット箇所に配置した場合、当該ターゲット箇所に対応する表示画面61の表示領域では、近接センサ10から出射される光および検知対象体からの反射光が透過する。
【0088】
このようなターゲット箇所に対応する表示画面61の表示領域が、図8に示すような特定表示領域65となる。つまり、近接センサ10は、表示装置の表示画面61における特定表示領域65の配置箇所に対応する箇所(ターゲット箇所)に配置される光検出方式の光学センサと言える。本実施形態では、図8に示すように、電子機器60の筐体内部における表示画面61の中央付近の表示領域に対応する空間がターゲット箇所となっており、近接センサ10はこのターゲット箇所に配置されている。
【0089】
電子機器60の表示装置は、OLED制御装置62とOLED駆動装置63とによって画像の書き換えが制御される。OLED制御装置62は、表示装置が画像の書き換えを行うタイミングを決める同期信号および画像を、OLED駆動装置63に出力する。同期信号としては、垂直同期信号S16および水平同期信号S86を挙げることができ、本実施形態では、同期信号は垂直同期信号S16である。
【0090】
OLED駆動装置63は、OLED制御装置62から出力される同期信号および画像に応じて、表示装置が画像を書き換えるための電圧を表示装置に順次出力していく。図8中の表示画面61上に点線で表示された矢印線は、表示装置の表示画面61に表示された画像の走査線64を示す。
【0091】
以下、表示装置が1920×1080のフルハイビジョンの解像度、かつフレームレートが60Hzの場合を例に挙げて、近接センサ10における検知タイミングの設定方法について説明する。また、以下の説明では、近接センサ10の発光素子12における光の出射時間が、図9の符号902に示すように500μsであるものとする。なお発光素子12の光の出射時間は、近接センサ10の感度、応答速度および消費電流を考慮して、数百μs~数msに設定されるのが一般的である。ただし、発光素子12の光の出射時間は、例えばセンサ制御部11のレジスタにより設定変更されてもよい。
【0092】
表示装置のフレームレートが60Hzの場合、画像の書き換えが約16667μsの周期で行われるため、表示装置の表示画面61に表示される画像の走査線64は、一本当たり16667μs/1920≒8.68μsごとに更新される。近接センサ10は、走査線64の本数を用いて配置箇所を説明すれば、表示画面61における960本目の走査線64の発生箇所付近に対応するターゲット箇所に配置されている。960本目の走査線64は、図9の符号901に示すように、垂直同期信号S16の同期信号入力部15への入力から8.68μs×960≒8333μs後に書き換わる。
【0093】
ここで、近接センサ10をターゲット箇所に配置すると、近接センサ10の発光素子12から出射される光(赤外光)が表示装置を透過することに起因して、表示画面61上に異常点が発生する。異常点の発生期間を極力短くするには、960本目の走査線64の書き換え開始の直前に発光素子12の光の出射を終了させる必要がある。また、発光素子12の光の出射期間中に書き換わる走査線64の本数を、なるべく少なくする必要もある。つまり、960本目の走査線64の書き換え開始の直前を検知終了タイミングとし、かつ、発光素子12の光の出射期間中に書き換わる走査線64の本数がなるべく少なくなるような開始タイミングを検知開始タイミングとする必要がある。
【0094】
具体的には、書き換えタイミングと発光素子12の光の出射期間(言い換えれば、光の出射時間)とを考慮して、遅延時間を設定すればよい。つまり、同期信号入力部15に垂直同期信号S16が入力されたときから960本目の走査線64が書き換わる開始タイミングまでの基準時間と、発光素子12の光の出射時間との差分となる差分時間に応じて、遅延時間を設定すればよい。この例では、基準時間が8333μsであり、発光素子12の光の出射時間が500μsである。したがって、差分時間は、8333μs-500μs=7833μsとなる。ここで、開始タイミング設定部16による遅延時間の調整幅が10μs単位であるならば、960本目の走査線64の書き換えが開始される直前を検知終了タイミングにする必要があることから、例えば7830μsを遅延時間として設定すればよい。
【0095】
上述した遅延時間の算出は、下記の式(1)を用いて行うことができる。つまり、遅延時間Time_Delayは、下記の式(1)を満たす最大値にすればよい。
【0096】
Time_Delay<(1/f)/Num_H×H-Time_IR・・・(1)
f[Hz]:表示装置のフレームレート
Num_H[本]:表示画面61に表示される画像の走査線64の本数の合計値
Time_IR[μs]:近接センサ10が、表示画面61におけるH番目に書き換わる走査線64の表示領域に対応するターゲット箇所に設置された場合の、発光素子12の光の出射時間
Time_Delay[μs]:遅延時間
〔実施形態2〕
図10および図11を用いて、本発明の実施形態2について説明する。本発明の実施形態2に係る電子機器90は、近接センサ10に替えて近接センサ80を備えている点で、本発明の実施形態1に係る電子機器60と異なる。なお、電子機器90の表示装置の表示画面91は、電子機器60の表示装置の表示画面61と同一である。また、表示画面91における特定表示領域95は、表示画面61における特定表示領域65と同一である。
【0097】
本発明の実施形態2に係る近接センサ80は、開始タイミング設定部16を備えていない点、センサ制御部11に替えてセンサ制御部81を備えている点、およびカウント信号生成部82を備えている点で、本発明の実施形態1に係る近接センサ10と異なる。
【0098】
<近接センサ80の要部の構成>
図10を用いて、近接センサ80の要部の構成について説明する。近接センサ80は、図10に示すように、表示装置から順次出力された水平同期信号S86をカウント信号生成部82に入力する。カウント信号生成部82は、入力された水平同期信号S86に基づいて、同期信号として使用することが可能なカウント信号S87を生成する。
【0099】
具体的には、カウント信号生成部82は、入力された水平同期信号S86の数をカウントする。そしてカウント信号生成部82は、図11に示す表示画面91に表示される1本目の走査線64(図8参照)から特定表示領域95に生じる走査線64までの総本数と同数の水平同期信号S86をカウントしたとき、カウント信号S87を生成する。そして、カウント信号生成部82は、生成したカウント信号S87を同期信号入力部15に出力する。
【0100】
同期信号入力部15は、同期信号としてカウント信号S87が入力されることにより、入力検知信号S88を生成する。そして、同期信号入力部15は、生成した入力検知信号S88をセンサ制御部81に出力する。入力検知信号S88は、本発明の実施形態1に係る同期信号入力部15が出力する入力検知信号S17と同一であり、入力検知信号S88の生成方法も、本発明の実施形態1に係る同期信号入力部15と同様である。
【0101】
センサ制御部81は、同期信号入力部15にカウント信号S87が入力されたときを開始タイミングとする。具体的にはセンサ制御部81は、同期信号入力部15から出力された入力検知信号S88がセンサ制御部11に入力されたときを、開始タイミングとする。そしてセンサ制御部81は、入力検知信号S88が入力された開始タイミングで、発光信号S12を発光素子12に出力する。その他のセンサ制御部81の機能は、本発明の実施形態1に係るセンサ制御部11と同一である。また、近接センサ80の各部による、センサ制御部81の発光信号S12の出力以降の一連の動作は、本発明の実施形態1に係る近接センサ10と同一である。
【0102】
このようにカウント信号生成部82を設けることにより、水平同期信号S86を同期信号としても、また開始タイミング設定部16を備えていなくても、近接センサ80は異常点の発生期間を短縮しつつ動作することができる。
【0103】
<近接センサ80における検知タイミングの設定方法>
図11を用いて、近接センサ80における検知タイミングの設定方法について説明する。なお、電子機器90の筐体内部における近接センサ80の配置位置は、図11に示すように本発明の実施形態1に係る電子機器60と同一である。
【0104】
また、本実施形態に係る表示装置も本発明の実施形態1に係る表示装置と同様に、1920×1080のフルハイビジョンの解像度で、フレームレートが60Hzであるものとする。さらに、発光素子12の光の出射時間も実施形態1と同様に500μsであるものとする。
【0105】
画像の書き換えが約16667μsの周期で行われるため、表示装置の表示画面91に表示される画像の走査線64は、一本当たり約8.68μsごとに更新される。したがって、発光素子12の光の出射期間(出射時間:500μs)中に書き換えられる走査線64の本数は、500μs/8.68≒58本となる。
【0106】
ここで、近接センサ80の配置位置は、走査線64の本数で説明すれば960本目の走査線64の表示領域付近に対応している。また、960本目の走査線64の書き換え開始の直前を検知終了タイミングとし、発光素子12の光の出射期間中に書き換わる走査線64の本数がなるべく少なくなるような開始タイミングを検知開始タイミングとする点については、実施形態1と同様である。したがって、960-58=902本目の走査線64の書き換え開始を示す水平同期信号S86をカウント信号生成部82に入力することで、近接センサ80は、開始タイミングを調整することなく異常点の発生期間を短縮することができる。
【0107】
上述した水平同期信号S86の算出は、下記の式(2)を用いて行うことができる。
【0108】
Sel_hsync=H-Time_IR/{(1/f)/Num_H}・・・(2)
f[Hz]:表示装置のフレームレート
Num_H[本]:表示画面61に表示される画像の走査線64の本数の合計値
Time_IR[μs]:近接センサ80が、表示画面61におけるH番目に書き換わる走査線64の表示領域に対応するターゲット箇所に設置された場合の、発光素子12の光の出射時間
Sel_hsync:カウント信号生成部82に入力される水平同期信号
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る近接センサ(10、80)は、外部から入射した入射光の少なくとも一部が裏面を透過する表示装置の表示画面(61、91)における特定表示領域(65、95)の配置箇所に対応する箇所に配置され、前記表示画面に検知対象体が近接しているか否かを検知する近接センサであって、光を出射する発光素子(12)と、前記表示装置から出力された、前記表示画面に表示された画像の書き換えのタイミングを示す同期信号が入力される同期信号入力部(15)と、前記発光素子の前記光の出射を制御する出射制御部(センサ制御部11、81)と、を備え、前記出射制御部は、(i)前記特定表示領域で前記画像の走査線(64)の書き換えが開始される書き換えタイミングと、前記発光素子の前記光の出射時間と、に基づいて設定された開始タイミングで、前記発光素子に前記光の出射を開始させ、かつ、(ii)前記書き換えタイミングになる前に、前記発光素子に前記光の出射を終了させる。
【0109】
前記構成によれば、出射制御部は、書き換えタイミングと出射時間とを考慮して、表示画面における特定表示領域以外の表示領域において画像の走査線の書き換えが行われている時間と、出射時間とがなるべく重ならないように開始タイミングを制御できる。また、出射制御部は、書き換えタイミングおよび出射時間を考慮して、発光素子の光の出射終了直後に書き換えタイミングとなるように開始タイミングを制御できる。
【0110】
これらのことから、本発明の一態様に係る近接センサは、表示装置の表示画面の特定表示領域では、異常点の発生を防止することができる。また、表示画面における特定表示領域以外の表示領域(以下、「対象外表示領域」)でも、異常点の発生を低減することができる。よって、本発明の一態様に係る近接センサは、表示装置の表示画面全体について異常点の発生期間を短縮することができる。
【0111】
本発明の態様2に係る近接センサ(10)は、前記態様1において、前記表示装置は、前記画像の書き換えの開始を示す垂直同期信号(S16)を前記同期信号として出力し、前記同期信号入力部に前記垂直同期信号が入力されたときから前記書き換えタイミングになるまでの間の基準時間と、前記出射時間との差分時間に応じて、前記開始タイミングを設定する開始タイミング設定部(16)をさらに備えていてもよい。
【0112】
前記構成によれば、同期信号入力部に垂直同期信号が入力される場合において、開始タイミング部が、差分時間を考慮して、対象外表示領域で画像の走査線の書き換えが行われている時間と出射時間とがなるべく重ならないように開始タイミングを設定できる。また、開始タイミング設定部は、書き換えタイミングおよび出射時間を考慮して、発光素子の光の出射終了直後に書き換えタイミングとなるように開始タイミングを設定できる。そのため、本発明の一態様に係る近接センサは、表示装置の表示画面全体について異常点の発生期間を短縮することができる。
【0113】
本発明の態様3に係る近接センサは、前記態様2において、前記開始タイミング設定部は、前記同期信号入力部に前記同期信号が入力されたときから時間計測を開始するカウンタ回路(51)と、前記時間計測の開始後の前記カウンタ回路から順次出力される出力値と、前記差分時間の値とを比較し、前記出力値と前記差分時間の値とが一致した場合に、前記開始タイミングを設定する比較回路(52)と、を有していてもよい。
【0114】
前記構成によれば、開始タイミング設定部の比較回路が、差分時間に達した時点で開始タイミングを正確に設定することができる。そのため、本発明の一態様に係る近接センサは、表示装置および近接センサのスペック等に応じて差分時間を適切に設定することにより、表示装置の表示画面全体について異常点の発生期間をさらに短縮することができる。
【0115】
本発明の態様4に係る近接センサ(80)は、前記態様1において、前記表示装置は、前記走査線の書き換えの開始を示す水平同期信号(S86)を順次出力し、前記表示装置から出力された前記水平同期信号の数をカウントすることにより、前記表示画面(91)に表示される1本目の前記走査線から前記特定表示領域(95)に表示される前記走査線までの総本数と同数の前記水平同期信号をカウントしたときに、カウント信号(S87)を生成するカウント信号生成部(82)をさらに備え、前記同期信号入力部には、前記カウント信号生成部から出力された前記カウント信号が前記同期信号として入力され、前記出射制御部(センサ制御部81)は、前記同期信号入力部に対して前記カウント信号が入力されたときを、前記開始タイミングとしてもよい。
【0116】
前記構成によれば、出射制御部が、同期信号入力部に同期信号としてのカウント信号が入力されたときを開始タイミングとする。そのため、差分時間に応じて開始タイミングを設定する必要がなくなることから、差分時間の算出精度に起因する開始タイミングと書き換えタイミングとの意図しないズレが発生しない。よって、表示装置の表示画面全体について、異常点の発生期間の短縮を精度高く実現することができる。
【0117】
本発明の態様5に係る近接センサ(10、80)は、前記態様1~4において、前記同期信号入力部は、入力された前記同期信号の極性に応じて当該極性を反転させる極性反転部(31)と、前記極性反転部から出力された反転信号のエッジを検出するエッジ検出部(32)と、を有していてもよい。
【0118】
前記構成によれば、同期信号入力部は、電子機器毎および表示装置毎に異なる同期信号の極性およびパルス幅の影響を受けることなく、エッジ検出部によって一定の精度で画像書き換えの開始を検知することができる。また、同期信号入力部は、入力された同期信号の極性に拘らず、一定の精度で画像書き換えの開始を検知することができる。そのため、本発明の一態様に係る近接センサは、同期信号の極性およびパルス幅に拘らず、表示装置の表示画面全体について異常点の発生期間を安定的に短縮することができる。
【0119】
本発明の態様6に係る電子機器(60、90)は、前記態様1~5のいずれかに係る近接センサ(10、80)と、前記表示装置と、を備えている。前記構成によれば、本発明の態様1に係る発明と同様の効果を奏する。
【0120】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0121】
10、80 近接センサ
11、81 センサ制御部(出射制御部)
12 発光素子
15 同期信号入力部
16 開始タイミング設定部
31 極性反転部
32 エッジ検出部
51 カウンタ回路
52 比較回路
60、90 電子機器
61、91 表示画面
64 走査線
65、95 特定表示領域
82 カウント信号生成部
E1 立ち上がりエッジ(エッジ)
E2 立ち下がりエッジ(エッジ)
S16 垂直同期信号(同期信号)
S86 水平同期信号(同期信号)
S87 カウント信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16