IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

特許7502914アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法
<>
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図1
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図2
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図3
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図4
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図5
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図6
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図7
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図8
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図9
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図10
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図11
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図12
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図13
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図14
  • 特許-アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】アイウェア表示システムおよびアイウェア表示方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240612BHJP
【FI】
G06T19/00 600
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020109966
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007185
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】安富 敏
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-510903(JP,A)
【文献】特開2015-114757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス測距光を照射し、照射点を測距および測角して該照射点の3次元座標を取得する測定部と、該測定部により測距光を鉛直方向および水平方向に回転照射して、観測データとして点群データを取得する点群データ取得部とを備えるスキャナ;
ディスプレイと、装置の位置を検出する相対位置検出センサと、装置の方向を検出する相対方向検出センサとを備えるアイウェア装置;
観測現場の3次元CAD設計データと前記スキャナの器械情報とを考慮して算出された観測ルートを記憶する記憶装置;および、
前記アイウェア装置の位置および方向に関する情報と、前記観測ルートの座標空間とを同期する座標同期部と、前記観測ルートの前記ディスプレイへの表示を制御する表示制御部とを備える情報処理装置;を備え、
前記スキャナ、前記アイウェア装置、前記記憶装置、および前記情報処理装置は、相互に情報の入出力が可能となっており、前記アイウェア装置は、前記観測ルートを、現場の風景に重ねて表示することを特徴とするアイウェア表示システム。
【請求項2】
前記観測ルートは、前記スキャナの器械情報と、前記3次元CAD設計データにおける立体構造物とを考慮して、前記観測現場全体において最少の器械設置点数で要求される点群密度での点群データが取得可能となるように算出されており、
前記スキャナの器械情報は、前記スキャナの器械中心の座標、前記測距光のパルス間隔設定および前記スキャナの回転速度設定を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のアイウェア表示システム。
【請求項3】
前記観測ルートは、前記観測現場におけるすべての器械設置点を最短のルートで結ぶように算出されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアイウェア表示システム。
【請求項4】
前記アイウェア装置は、観測の進捗に応じて前記観測ルートの表示を更新するように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のアイウェア表示システム。
【請求項5】
前記情報処理装置は、前記観測ルートで器械設置点に前記スキャナを設置できなかった場合に、別の点に前記スキャナを設置することで、前記スキャナの設置情報を取得して前記別の点を始点として、前記観測ルートにおける前記器械設置点の順序を再計算するように構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のアイウェア表示システム。
【請求項6】
パルス測距光を照射し、照射点を測距および測角して該照射点の3次元座標を取得する測定部と、該測定部により測距光を鉛直方向および水平方向に回転照射して、観測データとして点群データを取得する点群データ取得部とを備えるスキャナ;ディスプレイと、装置の位置を検出する相対位置検出センサと、装置の方向を検出する相対方向検出センサとを備えるアイウェア装置;および観測現場の3次元CAD設計データと前記スキャナの器械情報とを考慮して算出された現場における観測ルートを記憶する記憶装置と、相互に情報の入出力が可能な情報処理装置が、
前記アイウェア装置の位置および方向に関する情報と、前記観測ルートの座標空間とを同期し、
前記ディスプレイへの表示を制御して、前記アイウェア装置に、前記観測ルートを、現場の風景に重ねて表示させることを特徴とするアイウェア表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイウェア表示システムに関し、より詳細には、地上設置型スキャナを用いた点群データ観測を支援ンするためのアイウェア表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上設置型スキャナを用いた点群データの観測が知られている(例えば特許文献1参照)。点群データ観測では、要求される観測精度を達成するために、点群密度を確保する必要がある。点群密度は、スキャナからの測定距離と、スキャナの回転速度に依存する。すなわち、スキャナから近距離にある領域では、点群密度が高いが、スキャナから遠ざかるに従って、点群の密度は低くなる。
【0003】
また、スキャナの回転速度が遅いと、点群密度は高くなるが、回転速度が早いと点群密度が低くなる。このため、要求される点群密度を確保するために、測定領域がある程度重なりあうように、複数のスキャナの設置点を(器械設置点)を設定して、点群データを取得する。
【0004】
従って、点群観測においては、測定領域が重なり合う様にスキャナの設置点(器械設置点)を順次設定し、測定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-28464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現地でこの重なり合いを意識しながら、逐次、次の器械設置点を設定し、観測を行っていくことは、過大な労力を要する。また、測定結果の漏れリスクがある。
【0007】
本発明は、係る事情を鑑みてなされたものであり、地上設置型スキャナによる点群データ観測において、現場で漏れのない観測を容易にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る点群データ観測システムは、パルス測距光を照射し、照射点を測距および測角して該照射点の3次元座標を取得する測定部と、該測定部により測距光を鉛直方向および水平方向に回転照射して、観測データとして点群データを取得する点群データ取得部とを備えるスキャナ;ディスプレイと、装置の位置を検出する相対位置検出センサと、装置の方向を検出する相対方向検出センサとを備えるアイウェア装置;観測現場の3次元CAD設計データと前記スキャナの器械情報とを考慮して算出された観測ルートを記憶する記憶装置;および、前記アイウェア装置の位置および方向に関する情報と、前記観測ルートの座標空間とを同期する座標同期部と、前記観測ルートの前記ディスプレイへの表示を制御するアイウェア表示制御部とを備える情報処理装置;を備え、前記スキャナ、前記アイウェア装置、前記記憶装置、および前記情報処理装置は、相互に情報の入出力が可能となっており、前記アイウェア装置は、前記観測ルートを、現場の風景に重ねて表示する。
【0009】
上記態様において、前記観測ルートは、前記スキャナの器械情報と、前記3次元CAD設計データにおける立体構造物とを考慮して、前記観測現場全体において最少の器械設置点数で要求される点群密度での点群データが取得可能となるように算出されており、前記スキャナの器械情報は、前記スキャナの器械中心の座標、前記測距光のパルス間隔設定および前記スキャナの回転速度設定を含むことも好ましい。
【0010】
また、上記態様において、前記観測ルートは、前記観測現場におけるすべての器械設置点を最短のルートで結ぶように算出されていることも好ましい。
【0011】
また、上記態様において、前記アイウェア装置は、観測進捗情報に応じて前記観測ルートの表示を更新するように構成されていることも好ましい。
【0012】
また、上記態様において、前記情報処理装置は、前記観測ルートで器械設置点に前記スキャナを設置できなかった場合に、別の点に前記スキャナを設置することで、前記スキャナの設置情報を取得して前記別の点を始点として、前記観測ルートにおける前記器械設置点の順序を再計算するように構成されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記態様に係る表示システムによれば、地上設置型スキャナによる点群データ観測において、漏れのない観測を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係るアイウェア表示システムの外観斜視図である。
図2】同形態に係るアイウェア表示システムの構成ブロック図である。
図3】同表示システムにおけるスキャナの構成ブロック図である。
図4】同表示システムにおけるアイウェア装置の外観斜視図である。
図5】同アイウェア装置の構成ブロック図である。
図6】同形態に係る処理PCの構成ブロック図である。
図7】同表示システムのスキャナが取得可能な点群データのイメージを示す図である。
図8】同表示システムに用いられる観測ルートの算出方法を説明する図である。
図9】同表示システムに用いられる観測ルートの算出方法を説明する図である。
図10】上記表示システムを用いた点群観測方法のフローチャートでる。
図11】同点群観測方法における初期設定を説明する図である。
図12】上記形態の1つの変形例に係る表示システムに用いられる観測ルートの算出方法を説明する図である。
図13】上記形態の別の変形例に係る表示システムの処理PCの構成ブロック図である。
図14】同変形例に係る表示システムを用いた点群観測方法のフローチャートである。
図15】上記形態のさらに別の変形例に係る表示システムの処理PCの構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明これに限定されるものではない。また、実施の形態および各変形例に共通する同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るアイウェア表示システム(以下、単に「表示システム」ともいう。)1の外観斜視図であり、測定現場での作業イメージを示す。本形態に係る表示システム1は、スキャナ2、アイウェア装置4、および処理PC6を備える。
【0017】
スキャナ2は、三脚上に取り付けられた整準台を介して任意の点に設置される。スキャナ2は、整準台の上に設けられた基盤部2αと、基盤部2α上を軸H-H周りに水平回転する托架部2βと、托架部2βの中央で鉛直回転する投光部2γとを有する。アイウェア装置4は、作業者の頭部に装着される。処理PC6は、観測現場に設置される。
【0018】
図2は、表示システム1の構成ブロック図である。表示システム1において、スキャナ2とアイウェア装置4は、処理PC6に無線または有線で接続されている。アイウェア装置4の数は、特に限定されず、1つであってもよく複数であってもよい。アイウェア装置4が複数の場合、各アイウェア装置4は固有のID等で識別可能に構成される。
【0019】
(スキャナ)
図3は、本形態に係るスキャナ2の構成ブロック図である。スキャナ2は、測距部21、鉛直回転駆動部22、鉛直角検出器23、水平回転駆動部24、水平角検出器25、演算処理部26、表示部27、操作部28、記憶部29、外部記憶装置30、および通信部31を備える。本実施の形態において、測距部21、鉛直角検出器23、および水平角検出器25が測定部を構成する。
【0020】
測距部21は、送光部、受光部、送光光学系、該送光光学系と光学素子を共有する受光光学系および回動ミラー21αを備える。送光部は、半導体レーザ等の発光素子を備え、測距光としてパルス光を出射する。出射された測距光は、送光光学系を介して回動ミラー21αに入射し、回動ミラー21αによって偏向されて測定対象物に照射される。回動ミラー21αは、鉛直回転駆動部22により駆動されて回転軸V-V周りに回転する。
【0021】
測定対象物により再帰反射された測距光は、回動ミラー21α、および受光光学系を経て、受光部に入射する。受光部は、フォトダイオードなどの受光素子を備える。また、受光部には、測距光の一部が内部参照光として入射するようになっており、反射測距光および内部参照光に基づいて、演算処理部26により、照射点までの距離を求めるようになっている。
【0022】
鉛直回転駆動部22と水平回転駆動部24は、モータであり、演算処理部26に制御される。鉛直回転駆動部22は回動ミラー21αを鉛直方向にV-V軸周りに回転させる。水平回転駆動部24は、托架部2βを水平方向にH-H軸周りに回転させる、
【0023】
鉛直角検出器23と水平角検出器25は、エンコーダである。鉛直角検出器23は、回動ミラー21αの鉛直方向の回転角を測定する。水平角検出器25は、托架部2βの水平方向の回転角を測定する。この結果、鉛直角検出器23と水平角検出器25は、測距光の照射方向の角度を測定する測角部を構成する。
【0024】
演算処理部26は、例えばCPU(Central・Processing・Unit)、ROM(Read・Only・Memory)、RAM(Random・Access・Memory)等を集積回路に実装したマイクロコントローラである。
【0025】
演算処理部26は、送光部の発光タイミングと、受光部の受光タイミングの時間差(パルス光の往復時間)に基づき、測距光の1パルス光ごとに照射点までの距離を算出する。また、その時の測距光の照射角度を算出して、照射点の角度を算出する。
【0026】
また、演算処理部26は、ソフトウェア的に構成された点群データ取得部261を備える。点群データ取得部261は、測距部21、鉛直回転駆動部22、および水平回転駆動部24を制御して測距光を全周(360°)に走査して、各照射点の3次元座標を取得して、全周の点群データを器械設置点における観測データとして取得する。このようにスキャナ2の器械全周の点群データを観測することをフルドームスキャンという。
【0027】
表示部27は、例えば、液晶ディスプレイである。操作部28は、電源キー、数字キー、小数点キー、プラス/マイナスキー、実行キー、スクロールキー等を有し、作業者が、スキャナ2の操作、スキャナ2に対する情報の入力を可能となるように構成されている。
【0028】
記憶部29は、例えばハードディスクドライブであり、演算処理部26の機能を実行するためのプログラムを格納している。
【0029】
外部記憶装置30は例えばメモリカード等であり、スキャナ2が取得する種々のデータを記憶する。
【0030】
通信部31は、外部ネットワークとの通信を可能にするものであり、例えばインターネットプロトコル(TCP/IP)を用いてインターネットと接続し、アイウェア装置4および処理PC6との情報の送受信を行う。
【0031】
(アイウェア装置)
図4は、本実施の形態に係るアイウェア装置4の外観斜視図、図5は、アイウェア装置4の構成ブロック図である。アイウェア装置4は、作業者の頭部に装着されるウェアラブルデバイスである。アイウェア装置4は、ディスプレイ41と、制御部42とを備える。
【0032】
ディスプレイ41は、作業者が装着した時に、作業者の両目または片目を覆うゴーグルレンズ型の透過型ディスプレイである。一例として、ディスプレイ41は、ハーフミラーによる光学シースルーのディスプレイであり、現場風景(以下、「現物」という。)の実像に重ねて、制御部42の受信した虚像が合成された映像を観察できるように構成されている。
【0033】
制御部42は、アイウェア演算処理部43、通信部44、相対位置検出センサ(以下、単に「相対位置センサ」という。)45、相対方向検出センサ(以下、単に「相対方向センサ」という。)46、アイウェア記憶部47、操作スイッチ48を備える。
【0034】
アイウェア演算処理部43は、少なくともCPUおよびメモリ(RAM,ROM)を集積回路に実装したマイクロコンピュータである。アイウェア演算処理部43は、相対位置センサ45および相対方向センサ46の検出したアイウェア装置4の位置および方向の情報を処理PC6に出力する。
【0035】
また、アイウェア演算処理部43は、後述する観測ルート661を、アイウェア表示制御部602の制御にしたがって、虚像としてディスプレイ41上で現場の風景に重ねて表示する。本実施例では3次元CAD設計データは、CADを用いて絶対座標系で作成した、観測現場の3次元の設計図面である。
【0036】
通信部44は、外部ネットワークとの通信を可能にするものであり、インターネットプロトコル(TCP/IP)を用いてインターネットに接続し、処理PC6と情報の送受信を行う。
【0037】
相対位置センサ45は、観測現場に設置されたGPS用アンテナ、WiFi(登録商標)アクセスポイント、超音波発振器などから無線測位を行い、観測現場内でのアイウェア装置4の位置を検出する。
【0038】
相対方向センサ46は、三軸加速度センサまたはジャイロセンサと、傾斜センサとの組み合わせからなる。相対方向センサ46は、上下方向をZ軸方向、左右方向をY軸方向、前後方向をX軸方向として、アイウェア装置4の傾きを検出する。
【0039】
アイウェア記憶部47は、例えばメモリカードである。アイウェア記憶部47は、アイウェア演算処理部43が機能を実行するためのプログラムを格納している。
【0040】
操作スイッチ48は、例えば、図4に示すような、アイウェア装置4の電源をON/OFFするための電源ボタン48αを備える。
【0041】
(処理PC)
図6は、本形態に係る処理PC6の構成ブロック図である。処理PC6は、汎用パーソナルコンピュータ、PLD(Programmable・Logic・Device)等による専用ハードウェア、タブレット端末、またはスマートフォン等である。処理PC6は、少なくともPC演算処理部60、PC通信部63、PC表示部64、PC操作部65、およびPC記憶部66を備える。本実施の形態において、PC演算処理部60が、情報処理装置であり、PC記憶部66が記憶装置として機能する。
【0042】
PC通信部63は、ネットワークアダプタ、ネットワークインタフェースカード、LANカード及びモデム等の通信制御装置であり、処理PC6をインターネットやWAN、LAN等の通信ネットワークに有線又は無線で接続する装置である。PC演算処理部60はPC通信部63を介して、スキャナ2およびアイウェア装置4と情報の送受信(入出力)を行う。
【0043】
PC表示部64は、例えば液晶ディスプレイである。PC操作部65は、例えば、キーボード、マウス等であり、種々の入力・選択・決定等を可能にする。
【0044】
PC記憶部66は、情報をコンピュータが処理可能な形式で記憶、保存および伝達する記憶媒体である。例えば、HDD(Hard・Disc・Drive)等の磁気ディスク、DVD(Digital・Versatile・Disc)等の光ディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリが、PC記憶部66として適用可能である。PC記憶部66は、少なくとも、予め算出されたスキャナ2による観測現場における観測ルート661を格納している。
【0045】
PC演算処理部60は、少なくともCPUおよびメモリ(RAM,ROM等)を集積回路に実装した制御ユニットである。PC演算処理部60には、座標同期部601およびアイウェア表示制御部602がソフトウェア的に構成されている。
【0046】
座標同期部601は、スキャナ2の位置および方向に関する情報と、アイウェア装置4の位置・方向に関する情報を受信して、スキャナ2の座標空間と、アイウェア装置4の座標空間および観測ルート661の座標空間を、同一の座標空間のデータに変換して管理する。このように変換された観測ルート661を観測ルート661aと示す。
【0047】
アイウェア表示制御部602は、座標同期部601によってアイウェア装置4と、スキャナ2の座標空間と一致するように変換された観測ルート661を、アイウェア装置4に送信し、観測ルート661のディスプレイ41への表示を制御する。
【0048】
(観測ルートの算出)
ここで、観測ルート661について説明する。観測ルート661は、スキャナ2の器械情報(器械中心の座標、パルス間隔設定、およびスキャンの回転速度設定)および観測現場の3次元CAD設計データに基づいて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置により、予め算出され、PC記憶部66に記憶されている。
【0049】
観測ルート661の算出方法について図7~9を参照して説明する。図7は、スキャナ2による点のデータ取得可能領域Aのイメージを3次元的に表したものである。また、図8は観測ルート算出のための器械設置点設定の様子を模式的に表した平面図である。また、図9(A)は算出された観測ルート661の1例を示し、図9(B)は、観測ルート661をディスプレイ41に表示した例を示す。
【0050】
スキャナ2は、測距光を器械中心から鉛直に所定角度(例えば360°)、および水平に所定角度(例えば180°)回転スキャン(フルドームスキャン)して点群データを取得する。したがって、図7に示すように、点群データ取得可能な領域Aは、スキャナ2の器械中心Cを中心とした略半球状の領域Aとなる。なお、作図の都合上、器械中心Cは地面にあるものとして表したが、実際には、地面からスキャナ2の器械高だけ上方向に位置している。
【0051】
また、スキャナ2により取得される点群の密度は、測距光のパルス間隔が狭いほど高くなり、スキャナ2の回転速度が速いほど低くなり、スキャナ2の器械中心からの距離が遠いほど低くなる。このように、点群密度は、スキャナ2の測距光のパルス間隔設定、スキャナ2の回転速度設定およびスキャナの器械中心からの距離に依存する。
【0052】
点群データ観測では、観測の目的や、依頼者の要望に応じて、要求される点群密度が設定される。スキャナ2の観測範囲には、1回の測定で、要求される点群密度を満たせる領域A1と、1回の測定では要求される点群密度を満たせないが、別の点からの測定と重なり合わせることで、要求される点群密度を満たせる領域A2が存在する。そこで、観測ルートを設計する際には、例えば、図8(A)に示すように、観測現場全体が要求される点群密度を満たすように器械設置点Pを設定する必要がある。
【0053】
しかし、点群データ観測は、観測現場の立体構造物の3次元データを取得するための測量であるため、観測現場には、立体構造物(例えば図8の立体構造物S1,S2,S3)が存在する。立体構造物が存在すると、たとえば、図8(B)のように、器械設置点Pに設置したスキャナ2からの測距光が、立体構造物S1に照射(反射)された場合には、立体構造物に対してスキャナの反対側にある部分Bには、測距光が届かず、点群データを取得することができない。3次元的にも同様のことが起こる。
【0054】
そこで観測現場の3次元CADデータを用いて、スキャナ2の測距光のパルス間隔設定、スキャナ2の回転速度設定およびスキャナの器械中心からの距離と、立体構造物との位置関係を3次元的に考慮してコンピュータシミュレーションを行うことにより、図8(C)で示すように、要求される点群密度で、観測範囲全体をカバーできる最少の器械設置点Pの位置を算出する。すなわち、スキャナの点群データ取得可能領域から、立体構造物に対してスキャナの反対側にある部分を除外して、点群データ取得可能領域を算出してこれを重なり合わせて、要求される点群密度を達成しながら、最少の器械設置点数で観測現場全体をカバーする器械設置点Pの位置を算出する。
【0055】
さらに、図9(A)に示すように算出された器械設置点Pを最短のルートで一筆書きに結ぶルートを算出する。これにより、要求される点群密度で、観測現場全体をカバーできるように配置した器械設置点を最短で結ぶ観測ルート661が算出される。
【0056】
上記の通り、観測ルート661は、座標同期部601により、基準点を原点とする座標空間の座標系に変換され、アイウェア表示制御部602によって、アイウェア装置4に送信され、例えば図9(B)に示すように、ディスプレイ41に表示される。器械設置点P(P1~P11)は、現場風景の地面上の点として表示される。
【0057】
(表示システム1を使用した点群観測方法)
次に、表示システム1を使用した点群観測方法の例について説明する。図10は、本点群観測方法のフローチャートである。図11は、ステップS101~S104の作業イメージ図である。
【0058】
まずステップS101で、作業者は、観測現場に基準点および基準方向を設定する。具体的には、既知点および現場内の任意の点を選択して、作業者がアイウェア装置を装着して立っている状態のアイウェア装置4の位置を基準点とする。また、現場内において、基準点とは別の特徴点(例えば、構造物の角など)を任意に選択し、基準点から特徴点の方向を基準方向とする。
【0059】
次にステップS102で、スキャナ2を用いて、基準点および基準方向の絶対座標系との同期を行う。具体的には、作業者が、現場内の任意の点にスキャナ2を設置し、後方交会法等、公知の方法をもちいて、スキャナ2の絶対座標を把握するとともに、ステップS101で選択した基準点および特徴点の絶対座標を把握する。スキャナ2は、取得したスキャナ2、基準点および特徴点の絶対座標を処理PC6に送信する。
【0060】
処理PC6の座標同期部601は、基準点の絶対座標を(x,y,z)=(0,0,0)に変換し、かつ、基準方向を水平角0°と認識して、以後、スキャナ2からの情報を、基準点を原点とする空間で管理可能とする。
【0061】
次にステップS103で、作業者は、アイウェア装置4の同期を行う。具体的には、作業者は、アイウェア装置を装着して基準点に立って基準方向を向いて、基準点にアイウェア装置4を設置し、ディスプレイ41の中心を基準方向に一致させ、相対位置センサ45の(x,y,z)を(0,0,0)、かつ、相対方向センサの4(roll,pitch,yaw)を(0,0,0)に設定する。
【0062】
アイウェア装置4の同期は、上記方法に限定されず、例えば、アイウェア装置4に、アイウェア装置4の中心および方向軸を示すためのレーザ装置を設け、レーザをガイドにして、基準点および基準方向を一致させることにより行ってもよい。
【0063】
次に、ステップS104で、座標同期部601は、観測ルート661を絶対座標系から基準点を原点とする座標空間に変換し観測ルート661a(図9(B))とする。
【0064】
ステップS101~S104は、表示システム1を使用するための初期設定である。これにより、ステップS105で、ディスプレイ41上で、現場の風景に重ねて観測ルート661aを表示できるようになる。
【0065】
そして、ステップS106で、作業者は、この観測ルートの表示に従って、スキャナ2を設置し、設置点における点群データ観測を実行する。
【0066】
このように、本実施の形態においては、スキャナ2を用いて、要求される点群密度を達成し、かつ最少の器械設置点数で、観測現場全体を観測可能な観測ルートを現場の風景に重ねて表示できるようにした。この結果、作業者は、表示にしたがってスキャナ2を設置して観測するだけで、容易に、漏れのない点群観測を行うことができる。特に、本実施の形態では、観測ルートを、観測現場の3次元CAD設計データに含まれる立体構造物の情報を考慮して算出しているので、単に、2次元的ではなく、3次元的にも漏れのない観測が可能となり、高さ方向の構造物の確認による判断もしやすくなる。
【0067】
また、本実施の形態では、全ての器械設置点を最短のルートで結ぶように算出したので、特に効率的に点群観測を行うことができる。
【0068】
<変形例1>
図12は、本実施の形態の1つの変形例に係るアイウェア表示システム1Aの構成ブロック図である。表示システム1Aは、概略、表示システム1と同じ構成を有するが、用いられる観測ルート661Aが、コンピュータシミュレーションにより算出されたものではなく、機械学習により予測されたものである。
【0069】
具体的には、3次元CAD設計データにおいて、スキャナ2の測距光のパルス間隔設定、スキャナ2の回転速度設定およびスキャナの器械中心の座標(器械高)を設定したスキャナ2を任意の器械設置点Pに設置したものと仮定して、最終的に、最も少ない器械設置点数で、要求される点群密度を達成しうる配置となるものを報酬が最大となるように、次の器械設置点を設定するという強化学習をおこなって作成した強化学習モデルを用いて、今回の3次元CADデータから予測した観測ルートを観測ルート661Aとして用いている。
【0070】
強化学習の手法としては、モンテカルロ法や、Q学習法等の公知の手法を用いることができる。
【0071】
<変形例2>
図13は、本実施の形態の別の変形例に係るアイウェア表示システム1Bの、処理PC6Bの構成ブロック図である。図示を省略するが、表示システム1Bは、概略、表示システム1と同じ構成を有し、スキャナ2Bとアイウェア装置4と、処理PC6Bを備える。スキャナ2Bは、ある器械設置点における点群データ観測が完了する度に、その器械設置点における観測完了の情報(観測進捗情報)を処理PC6Bに送信する。
【0072】
処理PC6Bは、アイウェア表示制御部602に代えてアイウェア表示制御部602Bを備える。
【0073】
座標同期部601は、表示システム1と同様であり、観測ルート661をアイウェア装置4と同期して、観測ルート661a(図示略)に変換する。
【0074】
アイウェア表示制御部602Bは、座標同期部601で同期した観測ルート661aを、後述のようにスキャナ2から受信した観測進捗情報に応じて更新する。
【0075】
図14は、表示システム1Bを用いた、点群観測方法のフローチャートである。ステップS201~S205は、ステップS101~ステップS105と同様であるが、スキャナ2による点群観測を行う際に、ステップS206で、スキャナ2は各点での点群データの観測進捗情報をPC演算処理部60Bに送信する。次に、ステップS207で、アイウェア表示制御部602Bが、ある点での点群データ観測を完了するごとに、ディスプレイ41に表示される観測ルート661aの表示を更新する。
【0076】
具体的には、各点での点群データ観測が完了するごとに、表示される点群観測を完了した点色を変更したり、次の器械設置点に向かって矢印を点滅表示する等、次の器械設置点に移行するように促す表示をしたりする。さらに、スキャナ2から、観測進捗情報と合わせて取得した点群データを受信して、ディスプレイ41上に、取得した点群データを表示するようにしてもよい。そして、各点の観測が完了する毎に、表示を更新して、点群データ観測が進められる。
【0077】
このように構成することで、作業者は、特別に意識をすることなく、観測の進行状況を把握でき、次の点での作業にスムーズに移行することができる。
【0078】
図15は、本実施の形態のさらに別の変形例に係るアイウェア表示システム1Cの、処理PC6Cの構成ブロック図である。表示システム1Cは、概略、表示システム1B同じ構成を有するが、処理PC6Cがさらに観測ルート再計算部603を備える。
【0079】
本変形例では、観測現場において、観測ルート661aで表示された順序で器械設置点を設置できない場合に対応するものである。観測ルート再計算部603は表示された観測ルート661aの順序で器械設置点を設置できなかった場合に、別の点にスキャナ2を設置することで、スキャナ2の設置情報を取得してその点を始点として、器械設置点設置の順序を再計算する。
【0080】
上記構成により、当初の観測ルートの順序に従って器械設置点を設置できなかった場合にも対応することが可能となる。
【0081】
なお、本実施の形態においては、情報処理装置および記憶装置を処理PC6として構成したが、さらなる変形例として情報処理装置および記憶装置を以下のように構成してもよい。
【0082】
(1) アイウェア装置4のアイウェア記憶部47に記憶装置として機能させるとともに、アイウェア演算処理部43に情報処理装置として機能させてもよい。このような構成は、アイウェア記憶部およびアイウェア演算処理部を構成する記憶媒体および制御ユニットが高性能化、小型化することにより達成される。これにより、表示システム1の構成を簡易なものとすることができる。
【0083】
(2)処理PC6,スキャナ2およびアイウェア装置4と通信可能なサーバ装置をさらに備え、サーバ装置に記憶装置および情報処理装置として機能させる。このよう構成すると処理PC6の処理の負担を軽減することができ、処理の時間を大幅に低減することができる。
【0084】
これにより、処理PC6のPC記憶部66の負担を軽減することができる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 :アイウェア表示システム
1A :アイウェア表示システム
1B :アイウェア表示システム
1C :アイウェア表示システム
2 :スキャナ
41 :ディスプレイ
42 :制御部
261 :点群データ取得部
601 :座標同期部
661a :観測ルート
6 :処理PC
6B :処理PC
6C :処理PC
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15