(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】航空機のVR訓練システム、航空機のVR訓練方法および航空機のVR訓練プログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 9/08 20060101AFI20240612BHJP
G09B 9/32 20060101ALI20240612BHJP
G09B 9/34 20060101ALI20240612BHJP
G09B 9/46 20060101ALI20240612BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20240612BHJP
【FI】
G09B9/08
G09B9/32
G09B9/34 A
G09B9/46
G06T19/00 300A
(21)【出願番号】P 2020110966
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-05-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小松 誠司
(72)【発明者】
【氏名】村田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 琢巳
(72)【発明者】
【氏名】倉地 修
(72)【発明者】
【氏名】西村 寛史
(72)【発明者】
【氏名】志水 裕一
(72)【発明者】
【氏名】川部 祐司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】新開 颯馬
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0004325(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110148330(CN,A)
【文献】中国実用新案第206833745(CN,U)
【文献】Getting Started with X-Plane VR,YouTube [online] [video],2018年06月01日,https://www.youtube.com/watch?v=EFQBnqrkeks,主に2:33-2:37,2:49-2:50を参照、2021年9月1日検索
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00-G09B 9/56
G09B17/00-G09B19/26
JSTPlus(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実空間における訓練者の動作に連動する、前記訓練者のアバタを含み、VR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を生成する端末と、
前記訓練者が省略操作を行う操作装置とを備え、
前記端末は、模擬訓練を開始し
、前記シミュレーション画像において前記アバタの動作を開始させた後の模擬訓練の一連の動作において、前記操作装置への省略操作が行われた際、前記アバタの所定の動作を省略して、前記所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に前記シミュレーション画像を更新する、航空機のVR訓練システム。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機のVR訓練システムにおいて、
前記模擬訓練の一連の動作は、省略が不可能な第1類の動作と、省略が可能な第2類の動作とに区分されており、
前記所定の動作は、前記第2類の動作である、航空機のVR訓練システム。
【請求項3】
実空間における訓練者の動作に連動する、前記訓練者のアバタを含み、VR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を生成する端末と、
前記訓練者が省略操作を行う操作装置とを備え、
前記端末は、模擬訓練を開始した後の模擬訓練の一連の動作において、前記操作装置への省略操作が行われた際、前記アバタの所定の動作を省略して、前記所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に前記シミュレーション画像を更新し、
前記VR空間のオブジェクトは、航空機の機体から巻き上げ機によって巻き上げられるホイストケーブルを含んでおり、
前記所定の動作は、前記機体から前記アバタを前記巻き上げ機によって昇降させる際、前記アバタが自身と前記ホイストケーブルとを連結する動作を含む、航空機のVR訓練システム。
【請求項4】
実空間における訓練者の動作に連動する、前記訓練者のアバタを含み、VR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を生成する端末と、
前記訓練者が省略操作を行う操作装置とを備え、
前記端末は、模擬訓練を開始した後の模擬訓練の一連の動作において、前記操作装置への省略操作が行われた際、前記アバタの所定の動作を省略して、前記所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に前記シミュレーション画像を更新し、
前記VR空間のオブジェクトは、航空機の機体から巻き上げ機によって巻き上げられるホイストケーブルと、地表とを含んでおり、
前記所定の動作は、前記機体から前記アバタを前記巻き上げ機によって昇降させている際、前記アバタが、前記地表又は前記機体に着地し、且つ、前記ホイストケーブルを脱離する動作を含む、航空機のVR訓練システム。
【請求項5】
実空間における訓練者の動作に連動する、前記訓練者のアバタを含み、VR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を生成する端末と、
前記訓練者が省略操作を行う操作装置とを備え、
前記端末は、模擬訓練を開始した後の模擬訓練の一連の動作において、前記操作装置への省略操作が行われた際、前記アバタの所定の動作を省略して、前記所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に前記シミュレーション画像を更新し、
前記VR空間のオブジェクトは、航空機の機体から巻き上げ機によって巻き上げられるホイストケーブルと、前記ホイストケーブルに連結された救助縛帯と、地表と、前記地表に存在する要救助者とを含んでおり、
前記所定の動作は、前記要救助者を救助する際、前記地表に存在する前記アバタが、前記要救助者の場所まで移動する動作、前記要救助者を前記救助縛帯の場所まで移動させる動作、前記要救助者に前記救助縛帯を縛着する動作、及び、前記救助縛帯の場所まで移動する動作の少なくとも1つを含む、航空機のVR訓練システム。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れか1項に記載の航空機のVR訓練システムにおいて、
前記端末は、前記アバタが前記ホイストケーブルと連結されている時は、前記アバタと前記ホイストケーブルとの連結部の位置情報を前記アバタの位置情報として置き換える、航空機のVR訓練システム。
【請求項7】
実空間における訓練者の動作に連動する前記訓練者のアバタが含まれ、端末によって生成されるVR空間におけるシミュレーション画像を用いて模擬訓練を行う、航空機のVR訓練方法であって、
前記訓練者が省略操作を行う工程と、
模擬訓練を開始し
、前記シミュレーション画像において前記アバタの動作を開始させた後の模擬訓練の一連の動作において、前記省略操作が行われると、前記端末が、前記アバタの所定の動作を省略して、前記所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に前記シミュレーション画像を更新する工程とを備える、航空機のVR訓練方法。
【請求項8】
実空間における訓練者の動作に連動する、前記訓練者のアバタを含み、VR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を生成する機能をコンピュータに実現させるための、航空機のVR訓練プログラムであって、
前記訓練者による省略操作の操作信号を受信する機能と、
模擬訓練を開始し
、前記シミュレーション画像において前記アバタの動作を開始させた後の模擬訓練の一連の動作において、前記省略操作の操作信号を受信すると、前記アバタの所定の動作を省略して、前記所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に前記シミュレーション画像を更新する機能とをコンピュータに実現させる、航空機のVR訓練プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、航空機のVR訓練システム、航空機のVR訓練方法および航空機のVR訓練プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、仮想現実空間(即ち、VR空間)において、VR体験を行うシステムが知られている。例えば、特許文献1には、VR空間を使って消火体験を行うシステムが開示されている。このシステムでは、消火に必要な一連の動作に応じたシミュレーション映像が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヘリコプタ等の航空機の訓練に関しては、実機での訓練はコストがかかるだけでなく危険も伴うことから、VR空間を使った訓練を実施することが考えられる。しかしながら、訓練(特に、連携訓練)の一連の動作においては、VR空間を使って行っても効果がほとんど得られない動作が含まれる場合がある。そのため、単にVR空間を使って一連の訓練動作を行うようにすると、訓練の効率が低下してしまう場合がある。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、VR空間を使った航空機の訓練において、高効率な訓練を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された航空機のVR訓練システムは、端末と、操作装置とを備えている。前記端末は、実空間における訓練者の動作に連動する、前記訓練者のアバタを含み、VR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を生成する。前記操作装置は、前記訓練者が省略操作を行うものである。そして、前記端末は、模擬訓練の一連の動作において、前記操作装置への省略操作が行われた際、前記アバタの所定の動作を省略して、前記所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に前記シミュレーション画像を更新する。
【0007】
ここに開示された航空機のVR訓練方法は、実空間における訓練者の動作に連動する前記訓練者のアバタが含まれ、端末によって生成されるVR空間におけるシミュレーション画像を用いて模擬訓練を行う、方法である。そして、航空機のVR訓練方法は、前記訓練者が省略操作を行う工程と、模擬訓練の一連の動作において、前記省略操作が行われると、前記端末が、前記アバタの所定の動作を省略して、前記所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に前記シミュレーション画像を更新する工程とを備えている。
【0008】
ここに開示された航空機のVR訓練プログラムは、実空間における訓練者の動作に連動する、前記訓練者のアバタを含み、VR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を生成する機能をコンピュータに実現させるための、プログラムである。そして、航空機のVR訓練プログラムは、前記訓練者による省略操作の操作信号を受信する機能と、模擬訓練の一連の動作において、前記省略操作の操作信号を受信すると、前記アバタの所定の動作を省略して、前記所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に前記シミュレーション画像を更新する機能とをコンピュータに実現させる。
【発明の効果】
【0009】
前記航空機のVR訓練システムによれば、高効率な訓練を行うことができる。
【0010】
前記航空機のVR訓練方法によれば、高効率な訓練を行うことができる。
【0011】
前記航空機のVR訓練プログラムによれば、高効率な訓練を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、VR訓練システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、VR訓練システムを用いて訓練を行う実空間の様子を示す概略図である。
【
図3】
図3は、操縦士及び副操縦士の訓練用端末及びその周辺機器のブロック図である。
【
図4】
図4は、ホイストマン及び降下員の訓練用端末及びその周辺機器のブロック図である。
【
図5】
図5は、設定用端末及びその周辺機器のブロック図である。
【
図6】
図6は、模擬訓練における各種訓練の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、概略のシミュレーション画像の一例である。
【
図8】
図8は、降下員の訓練用端末における降下訓練処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、概略のシミュレーション画像の一例である。
【
図10】
図10は、概略のシミュレーション画像の一例である。
【
図11】
図11は、概略のシミュレーション画像の一例である。
【
図12】
図12は、概略のシミュレーション画像の一例である。
【
図13】
図13は、概略のシミュレーション画像の一例である。
【
図14】
図14は、降下員の訓練用端末における救助訓練処理を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、概略のシミュレーション画像の一例である。
【
図16】
図16は、概略のシミュレーション画像の一例である。
【
図17】
図17は、降下員の訓練用端末における引上げ訓練処理を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、概略のシミュレーション画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、VR訓練システム100の構成を示す図である。
図2は、VR訓練システム100を用いて訓練を行う実空間の様子を示す概略図である。なお、
図2では各端末の図示を省略している。
【0014】
VR訓練システム100は、共通のVR空間における模擬訓練(以下、「VR訓練」と称する)を行うためのシステムである。このVR訓練システム100は、航空機(この例では、ヘリコプタ)におけるVR訓練に用いられる。VR訓練システム100は、共通のVR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を生成し、対応する訓練者9にシミュレーション画像を提供する複数の訓練用端末1と、シミュレーション画像の生成に必要な設定情報を有する設定用端末6とを備えている。シミュレーション画像は、VR空間を形成する画像であり、いわゆるVR画像である。シミュレーション画像は、訓練者9のアバタ、要救助者88、地表及び航空機の機体80を含む。訓練者9のアバタは、実空間における訓練者9の動作に連動する。
【0015】
複数の訓練用端末1のそれぞれは、互いに通信可能に接続されている。また、複数の訓練用端末1は、設定用端末6と通信可能に接続されている。これらの各端末は、LAN等を介して有線接続されている。なお、各端末は、無線接続であってもよい。
【0016】
模擬訓練は、複数の訓練用端末1にそれぞれ対応する複数の訓練者9による連携訓練である。この例では、複数の訓練者9は、VR訓練システム100を使って、共通のVR空間において救助用ヘリコプタにおける連携訓練を行う。例えば、ヘリコプタは、機体80と、機体80の上部から右側又は左側へ片持ち状に延びるブーム81と、ブーム81から吊り下げられたホイストケーブル82と、ホイストケーブル82に連結された救助縛帯83と、ホイストケーブル82を巻き上げる巻き上げ機84と、巻き上げ機84を操作するためのペンダント型操作部(図示省略)とを有している。訓練者9には、例えば、操縦士91、副操縦士92、ホイストマン93及び降下員94が含まれている。以下、各訓練者を区別しない場合には、単に「訓練者9」と称する。連携訓練とは、複数の訓練者9が連携して行う訓練である。なお、上述した機体80や救助縛帯83、要救助者88等はシミュレーション画像におけるオブジェクトであり、これらオブジェクトに付した符号は、後述する
図7~
図18(
図8,14,17を除く)に記載されている符号であり、以降も同様である。
【0017】
訓練用端末1は、訓練者9のための端末である。訓練者9ごとに1台の訓練用端末1が割り当てられている。各訓練用端末1は、対応する訓練者9のためのシミュレーション画像を生成する。このシミュレーション画像は、実空間における訓練者9の動作に連動する、訓練者9のアバタを含んでいる。例えば、各訓練用端末1は、対応する訓練者9の一人称視点でのシミュレーション画像を生成する。つまり、各訓練用端末1は、共通のVR空間において異なる視点のシミュレーション画像を生成する。この例では、4人の訓練者9のための4台の訓練用端末1が設けられている。
【0018】
各訓練用端末1には、VR表示装置2が接続されている。VR表示装置2は、訓練用端末1によって生成されたシミュレーション画像を表示する。VR表示装置2は、訓練者9の頭部に装着される。例えば、VR表示装置2は、HMD(Head Mounted Display)である。HMDは、ディスプレイを有するゴーグル形状のVR専用の装置であってもよく、あるいは、頭部に装着可能なホルダにスマートフォン又は携帯ゲーム装置を取り付けることによって構成されるものであってもよい。VR表示装置2は、右目用画像及び左目用画像を含む3次元画像を表示する。VR表示装置2は、ヘッドホン28及びマイク29を有していてもよい。訓練者9は、ヘッドホン28及びマイク29を介して、他の訓練者9と対話を行う。また、訓練者9は、シミュレーションに必要な音声をヘッドホン28を介して聞くことができる。
【0019】
VR訓練システム100は、模擬訓練において訓練者9によって使用される操作装置をさらに備えている。訓練者9は、操作装置を訓練内容に応じて操作する。操作装置は、訓練者9及び操作内容に応じて適宜変更される。例えば、操縦士91及び副操縦士92の操作装置は、操縦装置3Aである。ホイストマン93及び降下員94の操作装置は、コントローラ3Bである。VR訓練システム100は、操縦士91のための操縦装置3Aと副操縦士92のための操縦装置3Aとを備えている。VR訓練システム100は、ホイストマン93のための2つのコントローラ3Bと、降下員94のための2つのコントローラ3Bとを備えている。
【0020】
操縦装置3Aは、複数の訓練者9のうち航空機を操縦する訓練者9、即ち、操縦士91又は副操縦士92が操縦する。操縦装置3Aは、操縦士91又は副操縦士92の操作入力を受け付ける。具体的には、操縦装置3Aは、操縦桿31、ペダル32及びCPレバー33を有している。操縦桿31、ペダル32及びCPレバー33のそれぞれには、操作量を検出するセンサ(図示省略)が設けられている。各センサは、操作量に応じた操作信号を出力する。操縦装置3Aは、シート34をさらに有している。操縦士91又は副操縦士92が操縦装置3Aを操作することによって、シミュレーション画像中の航空機、具体的にはヘリコプタの位置及び姿勢が変更される。操縦装置3Aは、機体演算端末5に接続されている。つまり、操縦桿31、ペダル32及びCPレバー33からの操作信号は、機体演算端末5に入力される。
【0021】
機体演算端末5は、操縦装置3Aを介した操作入力に基づいて航空機の機体80の移動量及び姿勢の変化量を演算する。機体演算端末5は、訓練用端末1の演算負荷軽減のためにVR訓練システム100に設けられた端末である。機体演算端末5は、複数の訓練用端末1及び設定用端末6のそれぞれと通信可能に接続されている。機体演算端末5と複数の訓練用端末1及び設定用端末6とは、LAN等を介して有線接続されている。なお、機体演算端末5と複数の訓練用端末1及び設定用端末6とは、無線接続されていてもよい。
【0022】
機体演算端末5は、機体80の移動量及び姿勢の変化量に関する移動量情報を操縦士91の訓練用端末1及び副操縦士92の訓練用端末1の少なくとも一方へ送信する。移動量情報を受け取った訓練用端末1は、移動量情報に基づいて機体80のVR空間における位置及び姿勢を演算する。つまり、機体演算端末5と移動量情報を受け取る訓練用端末1とは、操縦装置3Aを介した操作入力に基づいて航空機の機体80のVR空間における位置及び姿勢を演算する機体端末50を形成する。
【0023】
コントローラ3Bは、可搬型のデバイスである。訓練者9(即ち、ホイストマン93及び降下員94)は、右手と左手のそれぞれでコントローラ3Bを携帯する。コントローラ3Bは、モーショントラッカ機能を有する。すなわち、コントローラ3Bは、後述するトラッキングシステム4によってセンシングされる。コントローラ3Bは、訓練者9の入力操作(省略操作を含む)を受け付ける操作スイッチ35(
図4参照)を有している。操作スイッチ35は、訓練者9からの入力操作に応じた操作信号を出力する。コントローラ3Bは、ホイストマン93又は降下員94の訓練用端末1に接続されている。つまり、操作スイッチ35からの操作信号は、対応するホイストマン93又は降下員94の訓練用端末1に入力される。
【0024】
設定用端末6は、初期設定を行う権限を有する管理者(例えば、教官)からの設定情報の入力を受け付ける。設定用端末6は、入力された設定情報を初期設定として設定する。設定用端末6は、設定情報を訓練用端末1に送信すると共に、模擬訓練の開始通知を訓練用端末1に送信する。また、設定用端末6は、訓練におけるシミュレーション画像を表示する。ただし、本実施形態では設定用端末6は、シミュレーション画像を生成していない。設定用端末6は、訓練用端末1によって生成されたシミュレーション画像を取得して、表示する。これにより、訓練者9以外の者(例えば、教官)が訓練のシミュレーションを監視することができる。なお、設定用端末6は、各訓練用端末1から情報を取得して各訓練者9のシミュレーション画像を生成してもよい。
【0025】
さらに、VR訓練システム100は、トラッキングシステム4をさらに有している。トラッキングシステム4は、実空間における複数の訓練者9の動きを検出する。トランキングシステム4は、VR表示装置2及びコントローラ3Bをセンシングする。トラッキングシステム4は、この例では、アウトサイドイン方式のトラッキングシステムである。
【0026】
具体的には、トラッキングシステム4は、複数のトラッキングセンサ41と、トラッキングセンサ41からの信号を受信する通信装置42(
図3,4参照)とを有している。トラッキングセンサ41は、例えば、カメラである。トラッキングセンサ41は、訓練者9が存在する実空間をステレオ撮影できるように配置されている。VR表示装置2及びコントローラ3Bのそれぞれには、発光式のトラッキングマーカが設けられている。複数のトラッキングセンサ41は、VR表示装置2及びコントローラ3Bのそれぞれのトラッキングマーカをステレオ撮影する。
【0027】
トラッキングシステム4は、複数の訓練者9に関して共通である。つまり、共通のトラッキングシステム4によって、複数の訓練者9のVR表示装置2及びコントローラ3Bがセンシング、即ち、トラッキングされる。
【0028】
トラッキングセンサ41によって撮影された画像データは、通信装置42に送信される。通信装置42は、受信した画像データを、訓練用端末1へ送信する。
【0029】
訓練用端末1のそれぞれは、トラッキングシステム4からの画像データを画像処理することによって、対応する訓練者9のアバタのVR空間における位置及び姿勢を求める。
【0030】
それに加えて、ホイストマン93及び降下員94の訓練用端末1のそれぞれは、トラッキングシステム4からの画像データを画像処理することによって、対応する訓練者9のコントローラ3Bのトラッキングマーカに基づいて、対応する訓練者9のアバタのVR空間における両手の位置及び姿勢を求める。
【0031】
図3は、操縦士91及び副操縦士92の訓練用端末1及びその周辺機器のブロック図である。
【0032】
操縦士91及び副操縦士92の訓練用端末1には、VR表示装置2、機体演算端末5及びトラッキングシステム4が接続されている。機体演算端末5には、操縦装置3Aが接続されている。
【0033】
訓練用端末1は、入力部11と、通信部12と、記憶部13と、処理部14とを有している。
【0034】
入力部11は、訓練者9からの入力操作を受け付ける。入力部11は、操作入力に応じた入力信号を処理部14へ出力する。例えば、入力部11は、キーボード、又はマウスである。
【0035】
通信部12は、他の端末等と通信を行うインターフェースである。例えば、通信部12は、ケーブルモデム、ソフトモデム又は無線モデムで形成されている。なお、後述する通信部22、通信部51及び通信部63も、通信部12と同様に構成されている。通信部12は、他の訓練用端末1、機体演算端末5及び設定用端末6等の他の端末との通信を実現する。
【0036】
記憶部13は、各種プログラム及び各種データを記憶する、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体である。記憶部13は、ハードディスク等の磁気ディスク、CD-ROM及びDVD等の光ディスク、又は半導体メモリによって形成されている。なお、後述する記憶部52及び記憶部64も、記憶部13と同様に構成されている。
【0037】
記憶部13は、シミュレーションプログラム131、フィールド定義データ132、アバタ定義データ133、オブジェクト定義データ134及び音声データ135等を記憶している。
【0038】
シミュレーションプログラム131は、共通のVR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を生成して、対応する訓練者9にシミュレーション画像を提供する各種機能をコンピュータ、即ち、処理部14に実現させるためのプログラムである。シミュレーションプログラム131は、処理部14によって読み出され、実行される。
【0039】
フィールド定義データ132は、訓練が行われるフィールドを定義する。例えば、フィールド定義データ132は、フィールドの広さ、フィールドの地形、及びフィールド内の障害物等のオブジェクトを定義する。フィールド定義データ132は、訓練が行われるフィールドの種類ごとに用意されている。
【0040】
アバタ定義データ133は、自己のアバタ(以下、「自アバタ」と称する)及び他の訓練者9のアバタ(以下、「他アバタ」と称する)を定義する。アバタ定義データ133は、アバタの種類ごとに用意されている。自アバタのアバタ定義データ133は、自アバタのCGデータ(例えば、ポリゴンデータ)だけでなく、初期位置情報(VR空間における初期位置及び初期姿勢に関する情報)も含んでいる。
【0041】
ここで、アバタの位置情報(初期位置情報も含む)は、位置に関する情報としてVR空間における直交三軸の位置座標(x,y,z)と、姿勢に関する情報として各軸回りの回転角(Φ,θ,ψ)とを含む。後述するヘリコプタの機体80等のオブジェクトの位置情報についても同様である。
【0042】
オブジェクト定義データ134は、訓練に必要な各種オブジェクトを定義する。オブジェクト定義データ134は、オブジェクトの種類ごとに用意されている。例えば、ヘリコプタの機体80、救助縛帯83、ホイストケーブル82、巻き上げ機84、ブーム81、ペンダント型操作部、要救助者88及び地表等のオブジェクト定義データ134が用意されている。
【0043】
音声データ135は、ヘリコプタの飛行音等のシミュレーション中の効果音に関するデータである。
【0044】
処理部14は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及び/又はDSP(Digital Signal Processor)等の各種プロセッサと、VRAM、RAM及び/又はROM等の各種半導体メモリとを有している。なお、後述する処理部25、処理部53及び処理部65も、処理部14と同様に構成されている。
【0045】
処理部14は、記憶部13に記憶された各種プログラムを読み出して実行することによって、訓練用端末1の各部を統括的に制御すると共に、シミュレーション画像を提供するための各種機能を実現する。具体的には、処理部14は、通信制御部141と、設定部142と、完了通知部143と、トラッキング制御部144と、音声生成部145と、シミュレーション進行部146とを機能ブロックとして有する。
【0046】
通信制御部141は、通信部12を介した外部の端末又は装置との通信処理を実行する。通信制御部141は、データ通信に関するデータ処理を実行する。
【0047】
設定部142は、シミュレーション画像の生成に関する設定情報を設定用端末6から受信して、設定情報を設定する。設定部142は、各種設定情報を初期設定として設定する。
【0048】
完了通知部143は、設定部142による設定情報の設定が完了すると、設定情報の設定の完了通知を設定用端末6に送信する。
【0049】
トラッキング制御部144は、対応する訓練者9のアバタである自アバタのVR空間における位置及び姿勢をトラッキングシステム4の検出結果に基づいて演算する。トラッキング制御部144は、通信装置42を介して入力されるトラッキングセンサ41からの画像データに基づいて、トラッキングに関する各種演算処理を実行する。具体的には、トラッキング制御部144は、画像データを画像処理することによって、対応する訓練者9のVR表示装置2のトラッキングマーカを追跡し、実空間における訓練者9の位置及び姿勢を求める。トラッキング制御部144は、実空間における訓練者9の位置及び姿勢を所定の座標対応関係に基づいて、VR空間における自アバタの位置及び姿勢を求める。トラッキング制御部144によって求められたVR空間における自アバタの位置及び姿勢に関する情報を位置情報と称する。以下、「アバタの位置及び姿勢」並びに「アバタの位置」は、それぞれ「VR空間における位置及び姿勢」並びに「VR空間における位置」を意味する。
【0050】
音声生成部145は、音声データ135を記憶部13から読み出し、シミュレーションの進行に応じた音声を生成する。
【0051】
シミュレーション進行部146は、シミュレーションの進行に関する各種演算処理を実行する。例えば、シミュレーション進行部146は、シミュレーション画像を生成する。シミュレーション進行部146は、設定部142の初期設定に基づいてフィールド定義データ132及びオブジェクト定義データ134を記憶部13から読み出し、フィールド画像にオフジェクト画像が合成されたシミュレーション画像を生成する。
【0052】
また、シミュレーション進行部146は、自アバタに対応するアバタ定義データ133を記憶部13から読み出し、自アバタの位置情報に基づいて自アバタ(例えば、自アバタの手足)をVR空間に合成してシミュレーション画像を生成する。ここで、操縦士91及び副操縦士92の自アバタは、VR空間内の操縦席及び副操縦席に着席した状態が維持されていてもよい。すなわち、シミュレーション画像において、操縦士91及び副操縦士92の自アバタの、機体80内の位置は固定であり、自アバタの頭部のみが動作(回転及び傾動)してもよい。その場合、操縦士91及び副操縦士92の訓練用端末1のシミュレーション進行部146は、自アバタの画像を生成しなくてもよい。
【0053】
さらに、シミュレーション進行部146は、複数の訓練用端末1のうちの他の訓練用端末1に対応する訓練者9のアバタである他アバタの位置情報を他の訓練用端末1から取得し、取得された位置情報に基づいて他アバタをVR空間に生成する。具体的には、シミュレーション進行部146は、他アバタに対応するアバタ定義データ133を記憶部13から読み出し、他の訓練用端末1から取得した他アバタの位置情報に基づいて他アバタをVR空間に合成してシミュレーション画像を生成する。
【0054】
シミュレーション進行部146は、設定用端末6から模擬訓練の開始通知を受信して模擬訓練を開始する。すなわち、シミュレーション進行部146は、シミュレーション画像における訓練を開始する。シミュレーション進行部146は、模擬訓練中は、連携訓練のシミュレーションの進行を制御する。
【0055】
具体的には、シミュレーション進行部146は、後述する機体演算端末5からの移動量情報(操縦装置3Aの操作入力に応じた機体の移動量及び姿勢の変化量に関する情報)に基づいて機体80のVR空間における位置及び姿勢を演算する。シミュレーション進行部146は、機体演算端末5からの機体の移動量及び姿勢の変化量を、VR空間の座標系における機体80の移動量及び姿勢の変化量に変換し、機体80のVR空間における位置及び姿勢を演算する。これにより、操縦装置3Aの操作入力に応じて、VR空間においてヘリコプタが移動、即ち、飛行する。
【0056】
このVR空間における機体80の位置及び姿勢の演算は、操縦士91及び副操縦士92の訓練用端末1のうち、機体の操縦機能が有効となっている方の訓練用端末1が実行する。操縦士91及び副操縦士92の訓練用端末1のうち何れの訓練用端末1の操縦機能を有効とするかは切り替え可能となっている。通常は、操縦士91の訓練用端末1の操縦機能が有効に設定されている。訓練の状況に応じて、副操縦士92の訓練用端末1の操縦機能が有効に設定される場合もある。
【0057】
また、シミュレーション進行部146は、トラッキング制御部144からの位置情報に基づいてVR空間内で自アバタを動作させ、他の訓練端末1から受信する他アバタの位置情報に基づいてVR空間内で他アバタを動作させる。なお、操縦士91及び副操縦士92の自アバタは、VR空間内の操縦席及び副操縦席に固定されている場合には、自アバタの頭部のみが動作(回転及び傾動)する。ただし、操縦士91及び副操縦士92の自アバタは、頭部のみが動作するだけでなく、他アバタと同様にトラッキング制御部144からの位置情報に基づいてVR空間内で動作してもよい。
【0058】
さらに、シミュレーション進行部146は、トラッキング制御部144からの位置情報に基づく操縦士91又は副操縦士92の頭部の向きの変更に応じて、表示させるシミュレーション画像のフレームの位置又は角度を変更する。シミュレーション進行部146は、生成したシミュレーション画像をVR表示装置2及び設定用端末6へ出力する。このとき、シミュレーション進行部146は、必要に応じて、音声生成部145によって生成された音声をヘッドホン28及び設定用端末6へ出力する。
【0059】
VR表示装置2は、入力部21と、通信部22と、記憶部23と、表示部24と、処理部25とを有している。
【0060】
入力部21は、訓練者9からの操作入力を受け付ける。入力部21は、操作入力に応じた入力信号を処理部25へ出力する。例えば、入力部21は、操作ボタン又はスライドスイッチ等である。
【0061】
通信部22は、訓練用端末1との通信を実現するインターフェースである。
【0062】
記憶部23は、各種プログラム及び各種データを記憶する、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体である。記憶部23は、半導体メモリ等によって形成されている。記憶部23は、シミュレーション画像を表示部24で表示するための各種機能をコンピュータ、即ち、処理部25に実現させるためのプログラム及び各種データが記憶されている。
【0063】
表示部24は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである。表示部24は、右目用画像と左目用画像とを表示することができる。
【0064】
処理部25は、記憶部23に記憶された各種プログラムを読み出して実行することによって、VR表示装置2の各部を統括的に制御すると共に、シミュレーション画像を表示部24に表示させるための各種機能を実現する。
【0065】
機体演算端末5は、通信部51と、記憶部52と、処理部53とを有している。機体演算端末5には、操縦装置3Aから出力される操作信号が入力される。具体的には、操縦桿31、ペダル32及びCPレバー33のそれぞれから、スイッチの押下及び操作量に応じた操作信号が入力される。機体演算端末5は、操縦装置3Aの操作量に応じた機体の移動量及び姿勢の変化量を演算し、移動量情報を出力する。
【0066】
通信部51は、訓練用端末1等との通信を行うインターフェースである。
【0067】
記憶部52は、演算プログラム521等を記憶している。演算プログラム521は、VR空間における航空機の機体80の位置及び姿勢を演算するための各種機能をコンピュータ、即ち、処理部53に実現させるためのプログラムである。演算プログラム521は、処理部53によって読み出され、実行される。
【0068】
処理部53は、記憶部52に記憶された各種プログラムを読み出して実行することによって、機体演算端末5の各部を統括的に制御すると共に、機体80の移動量及び姿勢の変化量を演算するための各種機能を実現する。具体的には、処理部53は、通信制御部531と、機体演算部532とを機能ブロックとして有する。
【0069】
通信制御部531は、通信部51を介した訓練用端末1等との通信処理を実行する。通信制御部531は、データ通信に関するデータ処理を実行する。
【0070】
機体演算部532は、操縦装置3Aからの操作信号に基づいて機体80の移動量及び姿勢の変化量を演算する。詳しくは、機体演算部532は、操縦桿31、ペダル32及びCPレバー33からの各操作信号に基づいて、操縦桿31、ペダル32及びCPレバー33のスイッチの押下及び操作量に応じた機体80の移動量及び姿勢の変化量を演算する。機体演算部532は、演算した機体80の移動量及び姿勢の変化量に関する移動量情報を訓練用端末1へ送信する。
【0071】
図4は、ホイストマン93及び降下員94の訓練用端末1及びその周辺機器のブロック図である。
【0072】
ホイストマン93及び降下員94の訓練用端末1には、VR表示装置2、コントローラ3B及びトラッキングシステム4が接続されている。コントローラ3Bは、操作スイッチ35を有している。操作スイッチ35の操作信号は、訓練用端末1に入力される。
【0073】
ホイストマン93及び降下員94の訓練用端末1の基本的な構成は、操縦士91及び副操縦士92の訓練用端末1と同様である。ただし、ホイストマン93及び降下員94と操縦士91及び副操縦士92との訓練内容の違いに起因して、ホイストマン93及び降下員94の訓練用端末1の処理内容は、操縦士91及び副操縦士92の訓練用端末1と少し異なる。
【0074】
詳しくは、トラッキング制御部144は、対応する訓練者9のアバタである自アバタのVR空間における位置及び姿勢をトラッキングシステム4の検出結果に基づいて演算する。トラッキング制御部144は、通信装置42を介して入力されるトラッキングセンサ41からの画像データに基づいて、トラッキングに関する各種演算処理を実行する。具体的には、トラッキング制御部144は、画像データを画像処理することによって、対応する訓練者9のVR表示装置2のトラッキングマーカを追跡し、実空間における訓練者9の位置及び姿勢を求める。トラッキング制御部144は、実空間における訓練者9の位置及び姿勢を所定の座標対応関係に基づいて、自アバタの位置及び姿勢を求める。それに加えて、トラッキング制御部144は、画像データを画像処理することによって、コントローラ3Bのトラッキングマーカを追跡し、実空間における訓練者9の両手の位置及び姿勢を求める。トラッキング制御部144は、実空間における訓練者9の両手の位置及び姿勢を所定の座標対応関係に基づいて、自アバタの両手の位置及び姿勢を求める。つまり、ホイストマン93及び降下員94の訓練用端末1のトラッキング制御部144は、自アバタの位置及び姿勢、並びに、自アバタの両手の位置及び姿勢を位置情報として求める。
【0075】
シミュレーション進行部146がシミュレーション画像を生成し、連携訓練のシミュレーションの進行を制御することは、操縦士91及び副操縦士92の訓練用端末1と同様である。ただし、操縦席及び副操縦席に着席したままの操縦士91及び副操縦士92と異なり、ホイストマン93及び降下員94は、機内及び機外で移動が可能である。そのため、シミュレーション進行部146は、VR空間内で自アバタを自由に移動させる。また、シミュレーション進行部146は、トラッキング制御部144からの位置情報に基づいて、ホイストマン93又は降下員94の頭部の位置又は向きの変更に応じて、表示させるシミュレーション画像のフレームの位置又は角度を変更する。
【0076】
さらに、シミュレーション進行部146は、コントローラ3Bの操作スイッチ35からの操作信号に応じて、シミュレーション画像内で自アバタに操作信号に応じた処理を実行させる。例えば、シミュレーション進行部146は、自アバタにヘリコプタのドアを開閉させる。
【0077】
また、ホイストマン93に対応するシミュレーション進行部146は、自アバタにペンダント型操作部で巻き上げ機84を操作させる。つまり、ホイストマン93に対応するシミュレーション進行部146は、シミュレーション画像内で救助縛帯83を昇降させる。さらに、ホイストマン93に対応するシミュレーション進行部146は、救助縛帯83の昇降時、即ち降下員94のアバタがホイストケーブル82と連結されている時、アバタとホイストケーブル82との連結部の位置情報を、少なくとも降下員94に対応するシミュレーション進行部146に送信する。
【0078】
さらに、ホイストマン93及び降下員94に対応するシミュレーション進行部146のそれぞれは、模擬訓練の一連の動作において、訓練者9によるコントローラ3Bへの省略操作が行われた際、自アバタの所定の動作を省略して、その所定の動作の動作前の状態から動作後の状態にシミュレーション画像を更新する。つまり、シミュレーション進行部146は、所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に自アバタの状態及び/又はオブジェクトの状態を更新する。
【0079】
訓練者9によるコントローラ3Bへの入力操作は、省略操作を含む。省略操作は、模擬訓練の一連の動作のうち所定の動作を省略させるための入力指示である。訓練者9は、コントローラ3Bの操作スイッチ35を操作することにより、省略操作を行うことが可能である。コントローラ3Bは、省略操作に応じた操作信号を訓練用端末1に送信する。シミュレーション進行部146は、コントローラ3Bからの操作信号が入力部11に入力されると、アバタの所定の動作を省略する処理を行う。
【0080】
模擬訓練の一連の動作は、省略が不可能な第1類の動作と、省略が可能な第2類の動作とに区分されている。上述したアバタの所定の動作は、第2類の動作である。第1類の動作は、VR空間を使った訓練においても高い訓練効果を得られる動作(訓練)として設定されている。第2類の動作は、VR空間を使った訓練(特に、連携訓練)では、ほとんど訓練効果を得られない動作(訓練)として設定されている。
【0081】
図5は、設定用端末6及びその周辺機器のブロック図である。
【0082】
設定用端末6は、表示部61と、入力部62と、通信部63と、記憶部64と、処理部65とを有している。
【0083】
表示部61は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、又は、プロジェクタ及びスクリーンである。
【0084】
入力部62は、初期設定を行う権限を有する管理者(例えば、教官)の入力操作を受け付ける。入力部62は、例えば、キーボード又はマウスである。
【0085】
通信部63は、訓練用端末1等との通信を実現するインターフェースである。
【0086】
記憶部64は、開始プログラム641等を記憶している。開始プログラム641は、共通のVR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を、対応する訓練者に提供する複数の訓練用端末1に模擬訓練を開始させる各種機能をコンピュータ、即ち、処理部65に実現させるためのプログラムである。開始プログラム641は、処理部65によって読み出され、実行される。
【0087】
処理部65は、記憶部64に記憶された各種プログラムを読み出して実行することによって、設定用端末6の各部を統括的に制御すると共に、シミュレーションに関する初期設定を行うための各種機能を実現する。具体的には、処理部65は、通信制御部651と、設定部652と、開始通知部653と、監視部654とを機能ブロックとして有する。
【0088】
通信制御部651は、通信部63を介した外部の端末又は装置との通信処理を実行する。通信制御部651は、データ通信に関するデータ処理を実行する。
【0089】
設定部652は、シミュレーション画像の生成に必要な初期設定に関する各種設定情報のユーザからの入力を受け付けると共に、入力された設定情報を初期設定として設定する。設定部652は、記憶部64に記憶された設定入力画面を表示部61に表示させる。設定部652は、設定入力画面に対して入力部62を介して入力された設定情報を初期設定として記憶部64に記憶させる。また、設定部652は、設定情報を複数の訓練用端末1に送信する。
【0090】
開始通知部653は、設定情報の設定の完了通知を複数の訓練用端末1の全てから受信すると、複数の訓練用端末1に模擬訓練を開始させる開始通知を送信する。開始通知部653から全ての訓練用端末1に開始通知がなされることによって、各訓練用端末1において訓練が開始される。
【0091】
監視部654は、各訓練用端末1からシミュレーション画像を受け取る。つまり、監視部654は、それぞれの訓練者9に応じた一人称視点のシミュレーション画像を受け取る。監視部654は、何れか1人の訓練者9の一人称視点のシミュレーション画像を表示部61に表示させる。あるいは、監視部654は、全ての訓練者9の一人称視点のシミュレーション画像を表示部61に分割表示させる。全ての一人称視点のシミュレーション画像を分割表示させた場合、監視部654は、入力部62を介した選択操作に応じて、何れか1つの一人称視点のシミュレーション画像を表示部61に表示させてもよい。
【0092】
〈模擬訓練の動作〉
上述したVR訓練システム100における模擬訓練の動作について一例を説明する。この模擬訓練は、4人の訓練者9(操縦士91、副操縦士92、ホイストマン93及び降下員94)による連携訓練であり、要救助者88が存在する地点までヘリコプタを飛行させ、要救助者88を救出する訓練である。
【0093】
模擬訓練(連携訓練)では、各種訓練が
図6に示す順で行われる。
図6は、模擬訓練における各種訓練の流れを示すフローチャートである。模擬訓練は、設定用端末6からの開始通知を各訓練用端末1が受信することで開始される。
【0094】
模擬訓練では、まず、飛行訓練が行われる(ステップS1)。この飛行訓練は、ヘリコプタを出発地から要救助者が存在する地点(到着地)まで飛行させる訓練である。操縦士91は、操縦装置3Aを操作することによって、シミュレーション画像内でヘリコプタを飛行させる。副操縦士92は、シミュレーション画像を観ながら、飛行中の安全確認を行ったり、操縦装置3Aによって操縦補助を行ったりする。他のホイストマン93等も、飛行中の安全確認を行う。
【0095】
この飛行訓練では、操縦士91又は副操縦士92に対応するシミュレーション進行部146は、機体演算端末5の演算結果に基づいて、シミュレーション画像内で機体80の移動量を及び姿勢を変化させる。また、4人の訓練者9のそれぞれに対応するシミュレーション進行部146は、訓練者9の実空間におけるそれぞれの動作に連動して操縦や安全確認に必要な動作をアバタにさせる。この飛行訓練において、例えば、ホイストマン93又は降下員94に対応するシミュレーション進行部146では、一例として
図7に示すようなシミュレーション画像が生成される。このシミュレーション画像は、機体80内においてホイストマン93又は降下員94が操縦席側を視ている状態を表す画像であり、操縦席に座っている操縦士91のアバタ91A及び副操縦士92のアバタ92Aが表示されている。このように、ステップS1の飛行訓練では、ヘリコプタの操縦動作や安全確認動作は省略が不可能な第1類の動作として設定されている。
【0096】
ヘリコプタが要救助者88の地点に到着すると、飛行訓練からホバリング訓練(ステップS2)に移行する。ホバリング訓練は、ヘリコプタを空中における所定位置に停止させ続ける訓練である。このホバリング訓練では、ステップS1の飛行訓練と同様、操縦士91による操縦動作及び副操縦士92等による安全確認動作が行われる。このホバリング訓練におけるヘリコプタの操縦動作や安全確認動作も、第1類の動作として設定されている。
【0097】
ホバリング飛行が安定して行われると、ホバリング訓練から降下訓練(ステップS3)に移行する。降下訓練は、ホイストマン93が巻き上げ機84を操作して降下員94を機体80から降下させる訓練である。つまり、降下員94がブーム81から吊られたホイストケーブル82と連結した後、ホイストマン93が巻き上げ機84を操作してホイストケーブル82を降下させることによって降下員94は降下する。
【0098】
この降下訓練時の、降下員94の訓練用端末1による降下訓練処理について説明する。
図8は、降下員の訓練用端末における降下訓練処理を示すフローチャートである。この降下訓練処理に先立って、ホイストマン93又は降下員94は、コントローラ3Bの操作スイッチ35を操作して、シミュレーション画像内で自アバタにヘリコプタのドアを開閉させる。また、ホイストマン93は、シミュレーション画像内で自アバタの手にペンダント型操作部を持たせる。
【0099】
まず、ステップSa1において、オブジェクトである救助縛帯83が選択される。具体的に、降下員94は、コントローラ3Bを操作することによって、シミュレーション画像内の救助縛帯83を選択する。このコントローラ3Bによる選択動作は、
図9に示すように、操作スイッチ35を半押し状態にすることでシミュレーション画像内にポインタ70を表示させ、コントローラ3Bを動かしてポインタ70を、ホイストケーブル82に連結されている救助縛帯83の位置に移動させることによって行われる。シミュレーション進行部146は、操作スイッチ35の半押し状態に応じた操作信号をコントローラ3Bから受信することで、シミュレーション画像内にポインタを表示する。
図9のシミュレーション画像は、ホイストケーブル82に連結された救助縛帯83及びカラビナ86が表示されている。救助縛帯83は、要救助者88をホイストケーブル82で引き上げる際、要救助者88に縛着するものである。カラビナ86は、降下員94のアバタが予め装着している縛帯87(
図10を参照)に連結するものである。つまり、カラビナ86は、降下員94のアバタとホイストケーブル82とを連結する連結部である。また、救助縛帯83とカラビナ86とはホイストケーブル82において略同じ位置に連結されているため、上記のステップSa1において救助縛帯83を選択することは、カラビナ86を選択することと実質的には同じである。
【0100】
続く、ステップSa2において、シミュレーション進行部146は、選択位置がカラビナ86の連結可能範囲内か否かを判定する。具体的に、シミュレーション進行部146は、コントローラ3Bによって選択された位置(ポインタの位置)と自アバタの位置との距離が所定値以内であるか否かを判定することによって、選択位置がカラビナ86の連結可能範囲内か否かを判定する。
【0101】
シミュレーション進行部146は、例えば、選択位置が連結可能範囲内であると判定すると、即ち自アバタがポインタで連結可能範囲を指定できる位置に移動し、ポインタが連結可能範囲内を指示すると、ポインタの色を変える。降下員94は、シミュレーション画像におけるポインタの色の変化を視認することで、後述する選択位置の決定動作を行うことができる。ここで、ポインタが連結可能範囲を指示した際、ポインタではなく、オブジェクトである救助縛帯83及び/又はカラビナ86の色を変えてもよく、選択することでシミュレーション画像における変化を視認できればよい。
【0102】
選択位置が連結可能範囲外であると判定されると、即ち選択位置と自アバタの位置との距離が所定値を超えている場合、ステップSa1に戻る。つまり、降下員94は、シミュレーション画像におけるポインタの色が変化するまで、実空間において移動し続け、自アバタを移動させ続ける。これによれば、降下員94は、機体80内において救助縛帯83(カラビナ86)の場所にある程度近づく動作が必要になるため、救助縛帯83を選択する動作は機体80内における訓練動作の一環として有用である。
【0103】
選択位置が連結可能範囲内であると判定されると、即ち選択位置と自アバタの位置との距離が所定値以内である場合、降下員94は選択位置を決定する(ステップSa3)。具体的に、降下員94は、コントローラ3Bを操作するとことによって、シミュレーション画像内のポインタで選択した位置の決定を行う。このコントローラ3Bによる決定動作は、半押し状態の操作スイッチ35を全押し状態にすることによって行われる。このように、降下員94が操作スイッチ35を半押ししてポインタを表示する選択動作と操作スイッチ35を全押しして選択位置を決定する決定動作とを行う一連の操作は、上述した省略操作に相当する。
【0104】
続く、ステップSa4において、シミュレーション進行部146は、所定の動作前の状態から動作後の状態にシミュレーション画像を更新する(切り換える)。このステップSa4でいう所定の動作は、降下員94のアバタ94Aが自身とホイストケーブル82とを連結する動作である。つまり、シミュレーション進行部146は、自アバタ94Aが自身の縛帯87とカラビナ86とを連結する前の状態を表すミュレーション画像(
図9参照)から、自アバタ94Aが自身の縛帯87とカラビナ86とを連結した状態を表すシミュレーション画像(
図10参照)に更新する。さらに言い換えると、シミュレーション進行部146は、カラビナ86と連結する前の状態からカラビナ86と連結した状態に自アバタの状態を更新する。なお、
図9は、一人称視点のシミュレーション画像であり、
図10は、一人称視点のものではなく、説明の便宜上、三人称視点のシミュレーション画像を表している。
図10のシミュレーション画像では、機体80のブーム81から吊り下げられたホイストケーブル82と連結した状態の降下員94のアバタ94Aと、救助縛帯83及びカラビナ86を昇降させる巻き上げ機84を操作している状態のホイストマン93のアバタ93Aが表示されている。
【0105】
より詳しくは、シミュレーション進行部146は、選択位置の決定が行われると、即ち操作スイッチ35を全押しする動作に応じた操作信号をコントローラ3Bから受信すると、上述したように自アバタの状態を更新する。また、シミュレーション進行部146は、上述した自アバタの更新の際、救助縛帯83の位置情報を自アバタの位置情報として置き換える。つまり、自アバタとホイストケーブル82との連結部(即ち、カラビナ86)の位置情報が、自アバタの位置情報として置き換えられる。つまり、救助縛帯83の位置が自アバタの位置として認識される。ここで、救助縛帯83とカラビナ86とは略同じ位置に存在するため、実質的に救助縛帯83の位置情報はカラビナ86の位置情報に相当する。これは、以降に言及する救助縛帯83の位置情報についても同様である。こうして、模擬訓練の一連の動作において、所定の動作である自アバタのホイストケーブル82連結動作が省略されて、自アバタの状態が更新される。つまり、降下訓練において、自アバタとホイストケーブル82とを連結する動作は省略が可能な第2類の動作として設定されている。
【0106】
また、本実施形態では、機体80内においてホイストマン93及び降下員94の自アバタが移動する動作は、第2類として設定されている。つまり、ホイストマン93及び降下員94がコントローラ3Bで省略操作することによって、機体80内におけるホイストマン93等の自アバタの移動動作が省略される。ホイストマン93等は、例えば
図11に示すように、操作スイッチ35を半押しすることでシミュレーション画像内にポインタ70を表示させ、移動したい任意の位置(機体80内の床面85における任意の位置)にポインタ70を移動させることで移動位置を選択(指示)する。ポインタ70の色が変わると、ホイストマン93等は、操作スイッチ35を全押しして選択位置(移動位置)を決定する。そうすると、ホイストマン93等に対応するシミュレーション進行部146は、自アバタが移動する前の状態を表すシミュレーション画像(
図11参照)から、自アバタが選択位置に移動した状態を表すシミュレーション画像に更新する。つまり、移動する前の状態から移動した状態に自アバタの状態が更新される。なお、
図11のシミュレーション画像では、操縦席に座っている操縦士91のアバタ91A及び副操縦士92のアバタ92Aが表示されている。
【0107】
こうした機体80内におけるアバタの移動動作の省略は、前述したステップSa2においても実施することができる。つまり、コントローラ3Bによる省略操作によって降下員94のアバタを機体80内における例えばドア付近に移動させた後に、ポインタで救助縛帯83を選択するようにしてもよい。このように、機体80内においては、実空間において訓練者9が移動することによって自アバタを移動させることもできるし、訓練者9がコントローラ3Bで省略操作することによって自アバタの移動動作を省略することもできる。
【0108】
続いて、ステップSa5において、シミュレーション進行部146は、ホイストマン93の訓練用端末1から救助縛帯83の位置情報(即ち、移動情報)を受信する。これにより、シミュレーション進行部146は、シミュレーション画像内で救助縛帯83の移動(降下)に伴って自アバタを移動(降下)させる。これにより、降下員94のシミュレーション画像では、自アバタが救助縛帯83と共に降下していく(ステップSa6)。
【0109】
なお、ホイストマン93の訓練用端末1のシミュレーション進行部146においても、上述した降下員94のシミュレーション画像の更新に伴って、降下員94のアバタ(他アバタ)がホイストケーブル82と連結した状態を表すシミュレーション画像に更新される。同様にして、操縦士91及び副操縦士92の訓練用端末1のシミュレーション進行部146においても、上述した降下員94のシミュレーション画像の更新に伴って、降下員94のアバタ(他アバタ)がホイストケーブル82と連結した状態を表すシミュレーション画像に更新される。ホイストマン93は、コントローラ3Bを操作することによって、シミュレーション画像内でペンダント型操作部を操作し、救助縛帯83を降下させていく。このとき、ホイストマン93に対応するシミュレーション進行部146では、一例として
図12に示すようなシミュレーション画像が生成される。このシミュレーション画像は、ホイストマン93が、ホイストケーブル82によって吊られた救助縛帯83と共に降下していく降下員94のアバタ94Aを機体80内から視ている状態を表す画像である。また、操縦士91または副操縦士92に対応するシミュレーション進行部146では、一例として
図13に示すようなシミュレーション画像が生成される。このシミュレーション画像は、操縦士91または副操縦士92が、機体80内で救助縛帯83の降下操作を行うホイストマン93のアバタ93A、及び、ホイストケーブル82に連結された救助縛帯83と共に降下する降下員94のアバタ94Aを視ている状態を表す画像である。
【0110】
自アバタが救助縛帯83と共に降下しているときは、自アバタの位置は救助縛帯83の位置に固定された状態であるが、自アバタの頭部や手は動作させることができる。そのため、降下員94は実空間において両手を振ることによって、自アバタにも同様に両手を振らせ、ホイストマン93に合図を送る訓練を行うことができる。つまり、降下訓練において、降下員94が巻き上げ機84によって降下していく動作、並びに、ホイストマン93が巻き上げ機84を操作して降下員94を降下させていく動作は、第1類の動作として設定されている。
【0111】
続いて、ステップSa7において、シミュレーション画像内で地表の位置が選択される。具体的に、降下員94は、シミュレーション画像内で自アバタが地表付近まで降下すると、コントローラ3Bを操作して、シミュレーション画像内の地表の位置を選択する。このコントローラ3Bによる選択動作は、上述した救助縛帯83の選択動作と同様である。つまり、操作スイッチ35を半押しすることでシミュレーション画像内にポインタが表示され、コントローラ3Bを動かしてポインタを地表の位置に移動させる。
【0112】
続いて、ステップSa8において、シミュレーション進行部146は、選択位置が自アバタの移動可能範囲内か否かを判定する。具体的に、シミュレーション進行部146は、例えば、コントローラ3Bによって選択された位置(ポインタの位置)が地表であるか否か(第1判定基準)を判定し、地表である場合、降下員94が着地することができるとして、選択位置は自アバタの移動可能範囲内となる。なお、第1判定基準は、地表であるか否かということに代えて、崖等の危険な位置であるか否かということにしてもよい。その場合、危険な位置ではない場合は、降下員94が安全に着地することができるとして、選択位置は自アバタの移動可能範囲内となる。また、シミュレーション進行部146は、選択位置(ポインタの位置)と救助縛帯83の位置との距離が所定値以内であるか否か(第2判定基準)を判定し、その距離が所定値以内である場合、降下員94が安全に着地することができるとして、選択位置は自アバタの移動可能範囲内となる。この例では、上記2つの判定基準の両方を満たした場合に、選択位置は自アバタの移動可能範囲内であると判定される。なお、訓練条件に応じて、いずれか一方の判定基準だけを用いるようにしてもよい。
【0113】
ステップSa8において、選択位置が移動可能範囲外であると判定されると、ステップSa7に戻る。つまり、第1判定基準を満たすために、降下員94は、シミュレーション画像におけるポインタの色が変化するまで、コントローラ3Bによってポインタを移動させる。また、第2判定基準を満たすために、降下員94は、自アバタに手を振らせる等をしてホイストマン93に合図を送り、ホイストマン93は、降下員94のアバタの合図に従って救助縛帯83を降下させ、こうした動作が、シミュレーション画像におけるポインタの色が変わるまで続けられる。
【0114】
ステップSa8において、選択位置が移動可能範囲内であると判定されると、降下員94は選択位置を決定する(ステップSa9)。具体的に、降下員94は、コントローラ3Bを操作するとことによって、シミュレーション画像内のポインタで選択した位置の決定を行う。このコントローラ3Bによる決定動作は、上述した救助縛帯83位置の決定動作と同様である。つまり、半押し状態の操作スイッチ35を全押しすることによって決定動作が行われる。この場合も、シミュレーション進行部146は、選択位置が移動可能範囲内であると判定すると、ポインタの色を変える。
【0115】
続く、ステップSa10において、シミュレーション進行部146は、ステップSa4と同様、所定の動作前の状態から動作後の状態にシミュレーション画像を更新する(切り換える)。このステップSa10でいう所定の動作は、降下員94のアバタが地表に着地してカラビナ86(ホイストケーブル82)を脱離する動作である。つまり、シミュレーション進行部146は、地表に着地する前の状態から地表に着地してカラビナ86を脱離した状態に自アバタの状態を更新する。こうして、模擬訓練の一連の動作において、所定の動作である、自アバタが地表に着地してカラビナ86(ホイストケーブル82)を脱離する動作(自アバタの着地・脱離動作)が省略されて、自アバタの状態が更新される。つまり、降下訓練において、自アバタの着地・脱離動作は第2類の動作として設定されている。
【0116】
以上より、降下員94の訓練用端末1による降下訓練処理が終了し、救助訓練(ステップS4)に移行する。
【0117】
救助訓練は、地表に着地した降下員94が、要救助者88を救助縛帯83のところまで連れて行き、要救助者88に救助縛帯83を縛着する訓練である。
【0118】
この救助訓練時の、降下員94の訓練用端末1による救助訓練処理について説明する。
図14は、降下員94の訓練用端末1における救助訓練処理を示すフローチャートである。この救助訓練処理は、上述した降下訓練処理によって降下員94のアバタが地表に着地してカラビナ86(ホイストケーブル82)を脱離した状態から開始される。
【0119】
まず、ステップSb1において、シミュレーション進行部146は、VR空間において自アバタを要救助者88の近傍に向かって移動させる。つまり、降下員94は、自アバタが要救助者88へ向かって近づくように、実空間において動作する。シミュレーション進行部146は、トラッキング制御部144における降下員94のトラッキング情報に基づいて、VR空間において自アバタを動作させる。
【0120】
降下員94は、要救助者88の近傍に到達すると、コントローラ3Bを操作することによって、シミュレーション画像内で要救助者88を選択する(ステップSb2)。このコントローラ3Bによる選択動作は、例えば、操作スイッチ35を半押し状態にし、
図15に示すように、コントローラ3Bを動かして「自アバタ94Aの手」を要救助者88の位置に移動させることによって行われる。シミュレーション進行部146は、操作スイッチ35の半押し状態に応じた操作信号をコントローラ3Bから受信することで、降下員94が、要救助者88の救助可能範囲内か否かの判定を要求していると判断する。
【0121】
続く、ステップSb3において、シミュレーション進行部146は、選択位置が要救助者88の救助可能範囲内か否かを判定する。具体的に、シミュレーション進行部146は、コントローラ3Bによって選択された位置(自アバタの手の位置)が、要救助者88の位置を含むその近傍の所定範囲内にあるか否かを判定する。シミュレーション進行部146では、要救助者88の位置を含むその近傍の所定範囲が、要救助者88の救助可能な範囲として、設定されている。
【0122】
選択位置が救助可能範囲内であると判定されると、シミュレーション進行部146は、要救助者88をアクティブ状態(移動可能状態)にする(ステップSb4)。シミュレーション進行部146は、選択位置が救助可能範囲内であると判定すると、例えば
図15に示すように、シミュレーション画像内で要救助者88の輪郭を色付け光らせる。この要救助者88の表示を視認することで、降下員94は要救助者88がアクティブ状態になったことを認識することができる。
【0123】
こうして要救助者88がアクティブ状態になると、降下員94は、選択位置を決定する(ステップSb5)。具体的に、降下員94は、コントローラ3Bを操作することによって、シミュレーション画像内の「自アバタの手」で選択した位置の決定を行う。このコントローラ3Bによる決定動作は、例えば、半押し状態の操作スイッチ35を全押しすることによって行われる。このように、降下員94が操作スイッチ35を半押しして自アバタの手を表示する選択動作と操作スイッチ35を全押しして選択位置を決定する決定動作とを行う一連の操作は、上述した省略操作に相当する。
【0124】
続く、ステップSb6において、シミュレーション進行部146は、所定の動作前の状態から動作後の状態にシミュレーション画像を更新する(切り換える)。このステップSb6でいう所定の動作は、降下員94のアバタ94Aが、要救助者88を救助縛帯83の場所まで移動させる動作及び要救助者88に救助縛帯83を縛着する動作である。つまり、シミュレーション進行部146は、降下員94のアバタ94Aによって移動させられる前の状態から救助縛帯83を縛着した状態に要救助者88の状態を更新する。例えば、シミュレーション進行部146では、
図16に示すようなシミュレーション画像に更新される。このシミュレーション画像は、救助縛帯83を縛着しホイストケーブル82によって吊られている要救助者88を、要救助者88の移動する前の場所から降下員94が視ている状態を表す画像である。なお、降下員94のアバタ94Aが要救助者88を救助縛帯83の場所まで移動させる動作としては、誘導や連行、搬送等がある。
【0125】
より詳しくは、シミュレーション進行部146は、選択位置の決定が行われると、即ち操作スイッチ35を全押しする動作(省略操作)に応じた操作信号をコントローラ3Bから受信すると、上述したように要救助者88の状態を更新する。また、シミュレーション進行部146は、上述した要救助者88の更新の際、救助縛帯83の位置情報を要救助者88の位置情報として置き換える。つまり、救助縛帯83の位置が要救助者88の位置として認識される。こうして、模擬訓練の一連の動作において、所定の動作である、要救助者88を救助縛帯83の位置まで連れて行き要救助者88に救助縛帯83を縛着する動作が省略されて、要救助者88の状態が更新される。つまり、救助訓練において、自アバタが、要救助者88を救助縛帯83の場所まで移動させる動作及び要救助者88に救助縛帯83を縛着する動作は、省略が可能な第2類の動作として設定されている。
【0126】
続く、ステップSb7において、シミュレーション進行部146は、シミュレーション画像内で自アバタを救助縛帯83の近傍へ向かって移動させる。つまり、降下員94は、自アバタが救助縛帯83へ向かって近づくように、実空間において動作する。シミュレーション進行部146は、トラッキング制御部144における降下員94のトラッキング情報に基づいて、VR空間において自アバタを動作させる。
【0127】
降下員94は、救助縛帯83の近傍に到達すると、コントローラ3Bを操作することによって、シミュレーション画像内で救助縛帯83を選択して決定する(ステップSb8~ステップSb10)。この救助訓練処理におけるステップSb8~ステップSb10のそれぞれの処理は、上述した降下訓練処理におけるステップSa1~ステップSa3と同様である。なお、ステップSb8においても、降下訓練処理におけるステップSa1と同様、救助縛帯83を選択することはカラビナ86を選択することと実質的には同じである。
【0128】
続く、ステップSb11において、シミュレーション進行部146は、降下訓練処理におけるステップSa4と同様、カラビナ86を連結する前の状態からカラビナ86を連結した状態に自アバタの状態を更新する。そして、シミュレーション進行部146は、シミュレーション画像の更新の際、救助縛帯83の位置情報を自アバタの位置情報として置き換える。こうして、模擬訓練の一連の動作において、所定の動作である自アバタのカラビナ86連結動作が省略されて、自アバタの状態が更新される。つまり、救助訓練において、自アバタが自身とホイストケーブル82とを連結する動作、即ち自アバタが自身の縛帯87とカラビナ86とを連結する動作は、省略が可能な第2類の動作として設定されている。
【0129】
以上より、降下員94の訓練用端末1による救助訓練処理が終了し、引上げ訓練(ステップS5)に移行する。
【0130】
引上げ訓練は、ホイストマン93が巻き上げ機84によって降下員94及び要救助者88を機体内に引き上げる訓練である。
【0131】
この引上げ訓練時の、降下員94の訓練用端末1による引上げ訓練処理について説明する。
図17は、降下員94の訓練用端末1における引上げ訓練処理を示すフローチャートである。この引上げ訓練処理は、上述した救助訓練処理によって降下員94のアバタ94Aがカラビナ86と連結し要救助者88が救助縛帯83を縛着した状態から開始される。
【0132】
まず、ステップSc1において、シミュレーション進行部146は、ホイストマン93の訓練用端末1から救助縛帯83の位置情報を受信する。これにより、シミュレーション進行部146は、救助縛帯83の移動(上昇)に伴って自アバタ及び要救助者88を移動(上昇)させる。そのため、降下員94のシミュレーション画像では、自アバタ及び要救助者88が救助縛帯83と共に上昇していく(ステップSc2)。
【0133】
なお、ホイストマン93、操縦士91及び副操縦士92の訓練用端末1のシミュレーション進行部146においても、上述した降下員94の自アバタ及び要救助者88の更新に伴って、降下員94のアバタ(他アバタ)がカラビナ86と連結され要救助者88が救助縛帯83を縛着した状態を表すシミュレーション画像に更新される。ホイストマン93は、コントローラ3Bを操作することによって、シミュレーション画像内でペンダント型操作部を操作し、救助縛帯83(ホイストケーブル82)を上昇させていく。なお、自アバタが救助縛帯83と共に上昇しているときは、自アバタの位置は救助縛帯83の位置に固定された状態であるが、自アバタの頭部や手は動作させることができる。引上げ訓練において、降下員94が巻き上げ機84によって上昇していく動作、並びに、ホイストマン93が巻き上げ機84を操作して降下員94を上昇させていく動作は、第1類の動作として設定されている。
【0134】
続いて、ステップSc3において、シミュレーション画像内で機体80内の位置が選択される。具体的に、降下員94は、シミュレーション画像内で自アバタが機体80付近まで上昇すると、コントローラ3Bを操作して、例えば
図18に示すようにシミュレーション画像内の機体80内の位置をポインタ70で選択する。このコントローラ3Bによる選択動作は、降下訓練処理のステップSa1における選択動作と同様である。
図18のシミュレーション画像は、機体80の操縦等を行っている操縦士91のアバタ91A及び副操縦士92のアバタ92Aと、巻き上げ機84を操作しながら、降下員94のアバタ94A及び要救助者88の機体80内への乗り込みを補助しようとしているホイストマン93のアバタ93Aが表示されている。
【0135】
続いて、ステップSc4において、シミュレーション進行部146は、選択位置が自アバタの移動可能範囲内か否かを判定する。具体的に、シミュレーション進行部146は、例えば、コントローラ3Bによって選択された位置(ポインタの位置)と救助縛帯83との距離が所定値以内か否かを判定する。選択位置(ポインタの位置)と救助縛帯83との距離が所定値以内であると、降下員94が安全に機体80内に移動することができるとして、選択位置が移動可能範囲内であると判定される。
【0136】
選択位置が移動可能範囲内であると判定されると、降下員94は選択位置を決定する(ステップSc5)。降下員94は、コントローラ3Bを操作するとことによって、シミュレーション画像内のポインタで選択した位置の決定を行う。このコントローラ3Bによる決定動作は、降下訓練処理のステップSa3における決定動作と同様である。この場合も、シミュレーション進行部146は、選択位置が移動可能範囲内であると判定すると、ポインタの色を変える。ステップSc4において、選択位置が移動可能範囲外であると判定されると、ステップSc3に戻る。
【0137】
続く、ステップSc6において、シミュレーション進行部146は、所定の動作前の状態から動作後の状態にシミュレーション画像を更新する(切り換える)。このステップSc6でいう所定の動作は、自アバタが機体80内に乗り込む動作である。つまり、シミュレーション進行部146は、機体80内に乗り込む前の状態(
図18参照)から機体80内に乗り込んだ状態に自アバタの状態を更新する。例えば、機体80内の所定位置に自アバタが表示されるように状態が更新される。こうして、模擬訓練の一連の動作において、所定の動作である自アバタの機体80内への乗り込み動作が省略されて、自アバタの状態が更新される。つまり、引上げ訓練において、自アバタの機体80内への乗り込み動作は省略が可能な第2類の動作として設定されている。
【0138】
なお、図示しないが、この引上げ訓練では、ホイストマン93の訓練用端末1により、要救助者88の機体80内への乗り込み動作を行うようにしてもよい。この段落で言及するシミュレーション進行部146は、ホイストマン93の訓練用端末1のものである。具体的には、ホイストマン93は、シミュレーション画像内で要救助者88が機体80付近まで上昇すると、コントローラ3Bを操作して、例えばシミュレーション画像内において要救助者88の救助縛帯83をポインタで選択する(ステップ1)。このコントローラ3Bによる選択動作は、上述したステップSc3における選択動作と同様である。そして、シミュレーション進行部146は、選択位置が要救助者88の移動可能範囲内か否かを判定する(ステップ2)。選択位置が移動可能範囲内であると判定されると、ホイストマン93は選択位置を決定する(ステップ3)。つまり、ホイストマン93は、コントローラ3Bを操作することによって、シミュレーション画像内のポインタで選択した位置の決定を行う。このコントローラ3Bによる決定動作は、上述したステップSc5における決定動作と同様である。この場合も、シミュレーション進行部146は、選択位置が移動可能範囲内であると判定すると、ポインタの色を変える。ステップ2において、選択位置が移動可能範囲外であると判定されると、ステップ1に戻る。続いて、シミュレーション進行部146は、所定の動作前の状態から動作後の状態にシミュレーション画像を更新する(ステップ4)。このステップ4でいう所定の動作は、要救助者88が機体80内に乗り込む動作である。つまり、シミュレーション進行部146は、機体80内に乗り込む前の状態から機体80内に乗り込んだ状態に要救助者88の状態を更新する。例えば、機体80内の所定位置に要救助者88が表示されるように状態が更新される。こうして、模擬訓練の一連の動作において、所定の動作である要救助者88の機体80内への乗り込み動作が省略されて、要救助者88の状態が更新される。つまり、引上げ訓練において、要救助者88の機体80内への乗り込み動作は省略が可能な第2類の動作として設定されている。
【0139】
以上より、降下員94の訓練用端末1による引上げ訓練処理が終了し、飛行訓練(ステップS6)に移行する。
【0140】
この飛行訓練は、ヘリコプタを元の出発地まで飛行させる訓練である。ステップS1の飛行訓練と同様、操縦士91は、操縦装置3Aを操作することによって、シミュレーション画像内でヘリコプタを飛行させる。副操縦士92は、飛行中の安全確認を行ったり、操縦装置3Aによって操縦補助を行ったりする。ホイストマン93及び降下員94も、適宜、飛行中の安全確認を行う。ヘリコプタが元の出発地に到着すると、飛行訓練が終了すると共に、一連の模擬訓練(連携訓練)が終了する。
【0141】
以上のように、航空機のVR訓練システム100は、実空間における訓練者9の動作に連動する、訓練者9のアバタを含み、VR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を生成する訓練用端末1と、訓練者9が省略操作を行うコントローラ3Bとを備えている。降下員94の訓練用端末1は、模擬訓練の一連の動作において、コントローラ3Bへの省略操作が行われた際、降下員94の自アバタの所定の動作を省略して、その所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に前記シミュレーション画像を更新する。
【0142】
また、航空機のVR訓練方法は、実空間における訓練者9の動作に連動する訓練者9のアバタが含まれ、訓練用端末1によって生成されるVR空間におけるシミュレーション画像を用いて模擬訓練を行う、航空機のVR訓練方法であって、訓練者9が省略操作を行う工程と、模擬訓練の一連の動作において、前記省略操作が行われると、訓練用端末1が、アバタの所定の動作を省略して、前記所定の動作の動作前の状態から動作後の状態にシミュレーション画像を更新する工程とを備える。
【0143】
また、シミュレーションプログラム131は、実空間における訓練者9の動作に連動する、訓練者9のアバタを含み、VR空間における模擬訓練を行うためのシミュレーション画像を生成する機能をシミュレーション進行部146(コンピュータ)に実現させるための、航空機のVR訓練プログラムであって、訓練者9による省略操作の操作信号を受信する機能と、模擬訓練の一連の動作において、省略操作の操作信号を受信すると、アバタの所定の動作を省略して、前記所定の動作の動作前の状態から動作後の状態に前記シミュレーション画像を更新する機能とをシミュレーション進行部146(コンピュータ)に実現させる。
【0144】
これらの構成によれば、模擬訓練の一連の動作において、訓練者9のアバタの所定の動作を省略してシミュレーション画像を更新することができる。そのため、VR空間を用いての訓練ではほとんど訓練効果がない動作を上記所定の動作として設定することにより、そういった無用な動作を省略しながら模擬訓練を行うことができる。したがって、高効率の訓練を行うことができる。
【0145】
特に、複数の訓練者9による連携訓練では、無用な動作が顕著となるため、より高効率な模擬訓練を実現することができる。
【0146】
また、模擬訓練の一連の動作は、省略が不可能な第1類の動作と、省略が可能な第2類の動作とに区分されており、前記所定の動作は、第2類の動作である。
【0147】
この構成によれば、訓練効果の高い重要な動作は第1類の動作として設定され、無用な動作は第2類の動作として設定される。そのため、模擬訓練の一連の動作において、重要な動作とそうでない動作とが明確に区別されるので、複数の訓練者9は共通の緊張感をもって連携訓練を行うことができる。
【0148】
また、VR空間のオブジェクトは、航空機の機体80から巻き上げ機84によって巻き上げられるホイストケーブル82と、ホイストケーブル82に連結された救助縛帯83と、地表と、地表に存在する要救助者88とを含む。そして、省略可能な所定の動作(第2類の動作)は、機体80からアバタを巻き上げ機84によって昇降させる際、アバタが自身とホイストケーブル82とを連結する動作、機体80からアバタを巻き上げ機84によって降下させている際、アバタが、地表に着地し且つホイストケーブル82を脱離する動作、要救助者88を救助する際、地表に存在するアバタが、要救助者88を救助縛帯83の場所まで移動させる動作及び要救助者88に救助縛帯83を縛着する動作である。これらの動作は特に連携訓練では無用な動作となるため、これらの動作を省略することで高効率な訓練を実現することができる。
【0149】
また、訓練用端末1は、アバタがホイストケーブル82と連結されている時は、アバタとホイストケーブル82との連結部の位置情報をアバタの位置情報として置き換える。この構成によれば、アバタ自身の位置情報を取得しなくてもよいため、訓練用端末1における処理量を軽減することができる。
【0150】
(その他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0151】
例えば、VR訓練システム100が適用されるVR訓練は、ヘリコプタにおけるVR訓練に限定されない。VR訓練システム100は、ヘリコプタ以外の航空機のVR訓練にも適用できる。
【0152】
操縦士91の訓練用端末1及び副操縦士92の訓練用端末1の演算能力に余裕がある場合などにおいては、機体演算端末5を省略し、操縦士91の訓練用端末1及び副操縦士92の訓練用端末1のそれぞれがVR空間における機体80の移動量及び姿勢の変化量を演算してもよい。その場合には、操縦士91の訓練用端末1及び副操縦士92の訓練用端末1のそれぞれに対応する操縦装置3Aが接続される。この場合、複数の訓練用端末のうちの一の訓練用端末1(具体的には、操縦士91及び副操縦士92の訓練用端末1のうち操縦機能が有効となっている方の訓練用端末1)が、操縦装置3Aを介した操作入力に基づいて、航空機の機体80のVR空間における位置及び姿勢を演算する機体端末として機能する。
【0153】
あるいは、機体演算端末5は、操縦装置3Aを介した操作入力に基づいて機体80の移動量及び姿勢の変化量を演算するだけでなく、移動量情報に基づいて機体80のVR空間における位置及び姿勢を演算してもよい。この場合、機体演算端末5は、操縦装置3Aを介した操作入力に基づいて、航空機の機体80のVR空間における位置及び姿勢を演算する機体端末として機能する、訓練用端末1とは別の端末である。
【0154】
あるいは、訓練用端末1のそれぞれが機体演算端末5から移動量情報を取得し、移動量情報に基づいて機体80のVR空間における位置及び姿勢を演算してもよい。
【0155】
また、設定用端末6は、訓練を監視する機能を有していなくてもよい。
【0156】
訓練者9は、操縦士91、副操縦士92、ホイストマン93及び降下員94に限定されない。訓練者9は、これらの中の3人又は2人であってもよい。あるいは、訓練者9は、これらの4人以外の者であってもよい。つまり、VR訓練システム100を使って連携訓練を行うことができる者であれば、任意の者が訓練者9となることができる。例えば、訓練者9に地上員(地表からヘリコプタを誘導する者)、管制官又は要救助者88が含まれていてもよい。
【0157】
図6,8,14,17のフローチャートは、実施できる範囲で、ステップを省略したり、ステップの順番を変更したり、複数のステップを並行して処理したり、別のステップを追加したりすることができる。
【0158】
図14のステップSb1の動作、即ち降下員94のアバタが要救助者88の場所まで移動する動作を、第2類の動作として設定してもよい。この場合、降下員94は、操作スイッチ35によって省略操作を行うことにより、要救助者88の近傍位置を選択する。これにより、降下員94のアバタが要救助者88の場所まで移動する動作が省略される。
【0159】
図14のステップSb7の動作、即ち降下員94のアバタが救助縛帯83の場所まで移動する動作を、第2類の動作として設定してもよい。つまり、この場合、降下員94のアバタが救助縛帯83の場所まで移動する動作が省略される。
【0160】
また、
図14のステップSb5において、選択位置が決定されると、要救助者88を救助縛帯83を縛着した状態に更新すると同時に、降下員94のアバタをホイストケーブル82に連結した状態に更新するようにしてもよい。つまり、この場合、降下員94のアバタが、救助縛帯83の場所まで移動する動作及び自身とホイストケーブル82(カラビナ86)とを連結する動作が一気に省略される。そのため、この場合、
図14のステップSb7~ステップSb11は不要となる。
【0161】
上記実施形態では、操作スイッチ35を半押しする選択動作と操作スイッチ35を全押しする決定動作とを行う一連の操作を省略操作としたが、本願に開示の技術はこれに限らず、操作スイッチ35を全押しする決定動作のみを省略操作としてもよい。
【0162】
VR表示装置2が表示する画像は、一人称視点のシミュレーション画像に限定されない。例えば、VR表示装置2は、三人称視点のシミュレーション画像を表示してもよい。
【0163】
トラッキングシステム4は、訓練者9の動きを追跡できる限りは、任意の方式を採用することができる。例えば、トラッキングシステム4は、インサイドアウト方式であってもよい。
【0164】
本実施の形態で開示された構成の機能は、電気回路又は処理回路を用いて実行されてもよい。電気回路又は処理回路は、開示された機能を実行するように構成若しくはプログラムされた、メインプロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASICs、従来型の電気回路、コントローラ又はこれらを組み合わせたものであってもよい。プロセッサ又はコントローラは、トランジスタ及びその他の回路を含む処理回路等である。本開示において、回路、ユニット、コントローラ又は手段は、記載した機能を実行するためのハードウェア又はプログラムされたものである。ここで、ハードウェアは、本実施の形態で開示された機能を実行するように構成若しくはプログラムされた、本実施の形態で開示されたもの又は公知のハードウェアである。ハードウェアが、プロセッサ又はコントローラの場合、回路、手段又はユニットは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアは、ハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために用いられる。
【符号の説明】
【0165】
100 VR訓練システム
1 訓練用端末(端末)
131 シミュレーションプログラム(VR訓練プログラム)
3B コントローラ(操作装置)
91 操縦士(訓練者)
92 副操縦士(訓練者)
93 ホイストマン(訓練者)
94 降下員(訓練者)