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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ハニカム基材ホルダー
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20240612BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20240612BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240612BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
B01J19/24 A
B01J19/00 311Z
B01J35/57 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020127376
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024660
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【弁理士】
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】小坂 民生
(72)【発明者】
【氏名】水上 友人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 祐介
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-296325(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125711(WO,A1)
【文献】特開2018-153719(JP,A)
【文献】特開2012-037165(JP,A)
【文献】特開2019-052849(JP,A)
【文献】特開平04-041194(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054679(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02
B01J 14/00-19/32
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム基材を反応器として用いるときに、前記ハニカム基材を保持するためのハニカム基材ホルダーであって、
前記ハニカム基材ホルダーは、少なくとも、
弾性変形可能な筒状内周壁と、
前記筒状内周壁の外側に、前記筒状内周壁と筒状間隙を介して配置された、筒状外周壁と、
前記筒状内周壁及び前記筒状外周壁とともに、前記筒状間隙を封止している、2つの端面と
を有し、
前記筒状内周壁の軸側に、前記ハニカム基材を挿入することができ、
前記筒状間隙内に、流体を流通又は保持させることができ、かつ、
前記筒状間隙内の前記流体を加圧することにより、前記筒状内周壁を弾性変形させて、前記筒状内周壁を前記ハニカム基材の外周面、並びに前記ハニカム基材と反応体導入口を有するフランジ及び生成物排出口を有するフランジのうちの少なくとも一方との接触部に押し付けることができる、
ハニカム基材ホルダー。
【請求項2】
前記筒状間隙内の前記流体を加圧することにより、前記筒状内周壁を弾性変形させて、前記筒状内周壁を前記ハニカム基材の外周面、前記ハニカム基材と反応体導入口を有するフランジとの接触部、及び前記ハニカム基材と生成物排出口を有するフランジとの接触部に押し付けることができる、請求項1に記載のハニカム基材ホルダー。
【請求項3】
前記筒状外周壁及び前記端面のうちの任意の位置に、前記筒状間隙に前記流体を流入させるための流体導入口1個以上と、前記筒状間隙から前記流体を排出させるための流体排出口1個以上とを有する、請求項1又は2に記載のハニカム基材ホルダー。
【請求項4】
前記流体が、熱媒又は冷媒である、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカム基材ホルダー。
【請求項5】
前記筒状間隙内に、温度調整器を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカム基材ホルダー。
【請求項6】
前記筒状外周壁の外側に、温度調整器を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカム基材ホルダー。
【請求項7】
前記筒状内周壁、前記筒状外周壁、及び前記2つの端面が、一体的に形成されており、かつ弾性変形可能である、請求項1~6のいずれか一項に記載のハニカム基材ホルダー。
【請求項8】
前記筒状外周壁の外側に筒状支持壁を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のハニカム基材ホルダー。
【請求項9】
前記筒状内周壁が、円筒形状又は多角筒形状を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のハニカム基材ホルダー。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のハニカム基材ホルダーの筒状内周壁の軸側にハニカム基材を挿入し、
前記ハニカム基材を反応器として化学反応を行わせる、
反応方法。
【請求項11】
前記ハニカム基材ホルダーの筒状内周壁の軸側に、ハニカム基材とともに、前記ハニカム基材と反応体導入口を有するフランジ及び生成物排出口を有するフランジのうちの少なくとも一方との接触部も挿入する、請求項10に記載の反応方法。
【請求項12】
前記化学反応が、液相反応体と、ファインバブル化した気相反応体との化学反応である、請求項10又は11に記載の反応方法。
【請求項13】
前記ハニカム基材が、
複数の流路を有し、前記流路が多孔質壁で隔てられており、
前記多孔質壁が、前記多孔質壁の厚さ方向に貫通する連続気孔を有する、多孔質体から成る、
請求項10~12のいずれか一項に記載の反応方法。
【請求項14】
前記多孔質壁が、少なくともその表面に、反応触媒を有する、請求項13に記載の反応方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応の反応器として用いられるハニカム基材を保持するためのハニカム基材ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
液相、気相等の状態にある流体状の反応体を反応させるための反応器として、流体が流通可能な形状の基材を用いることが知られている。この基材には、当該反応の触媒が担持されていてもよい。
【0003】
例えば、特許文献1には、コージェライト、炭素コンポジット、ムライト等から成るハニカム形状の支持体の表面に、触媒層を形成して用いることが記載されている。特許文献2には、ウォールフロータイプの多孔質ハニカム基材に、ファインバブル化した気相反応体と液相反応体とを供給して反応させることが記載されている。
【0004】
化学反応の反応器として、ハニカム基材を用いることには、多くの利点がある。例えば、以下の利点が考えられる:
機械的耐久性が高く、反応のための加温、冷却、加圧、減圧等のストレスに長期間耐えられること、
単位体積当たりの表面積が大きく、これに担持される触媒と反応体との接触頻度を高くすることができること、
基材が多孔質である場合、細孔径を適宜に選択することにより、特定の分子径の反応体を選択的に反応させ、又は反応させないことができること、
等。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-110341号公報
【文献】特開2020-40022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、反応器としてハニカム基材を用いる際には、いくつかの留意点がある。
【0007】
例えば、ハニカム基材の両端に、反応体導入口を備えるフランジと、生成物排出口を備えるフランジとをそれぞれ装着し、反応体導入口からハニカム基材に反応体を導入し、ハニカム基材を通過して得られた生成物を、生成物排出口から排出する。このとき、ハニカム基材の端面と、フランジとの隙間から、反応物及び生成物が漏れることを抑制する必要がある。この点、従来技術では、ハニカム基材の両端と、2つのフランジとの間に、それぞれ、O-リング等のシール材を配置して、ハニカム基材の端面とフランジとの隙間をシールする必要がある。
【0008】
また、ハニカム基材が多孔質である場合には、ハニカム基材壁の細孔を通過して、ハニカム基材の外周面から反応体が滲出する。これを防止するために、ハニカム基材の外周面に、例えばフッ素樹脂製のフィルムを巻いてシールすることが必要となる。
【0009】
更に、反応温度の制御には、ハニカム基材を恒温槽に入れている。このとき、ハニカム基材に反応体を供給し、生成物を排出するための配管の少なくとも一部を、ハニカム基材とともに恒温槽中に入れる必要があるため、大容量の恒温槽を要するとの問題がある。また、恒温槽の熱媒体が空気である場合には、熱の伝達速度が遅いとの問題もある。
【0010】
本発明は、化学反応の反応器として多孔質のハニカム基材を用いるときに発生する、上記の問題点のうちの、少なくとも1つを解決することが可能な、ハニカム基材ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のとおりである。
《態様1》反応器として用いられるハニカム基材を保持するためのハニカム基材ホルダーであって、
前記ハニカム基材ホルダーは、少なくとも、
弾性変形可能な筒状内周壁と、
前記筒状内周壁の外側に、前記筒状内周壁と筒状間隙を介して配置された、筒状外周壁と、
前記筒状内周壁及び前記筒状外周壁とともに、前記筒状間隙を封止している、2つの端面と
を有し、
前記筒状内周壁の軸側に、前記ハニカム基材を挿入することができ、
前記筒状間隙内に、流体を流通又は保持させることができ、かつ、
前記筒状間隙内の前記流体を加圧することにより、前記筒状内周壁を弾性変形させて、前記筒状内周壁を前記ハニカム基材の外周面に押し付けることができる、
ハニカム基材ホルダー。
《態様2》前記筒状外周壁及び前記端面のうちの任意の位置に、前記筒状間隙に前記流体を流入させるための流体導入口1個以上と、前記筒状間隙から前記流体を排出させるための流体排出口1個以上とを有する、態様1に記載のハニカム基材ホルダー。
《態様3》前記流体が、熱媒又は冷媒である、態様1又は2に記載のハニカム基材ホルダー。
《態様4》前記筒状間隙内に、温度調整器を有する、態様1又は2に記載のハニカム基材ホルダー。
《態様5》前記筒状外周壁の外側に、温度調整器を有する、態様1又は2に記載のハニカム基材ホルダー。
《態様6》前記筒状内周壁、前記筒状外周壁、及び前記2つの端面が、一体的に形成されており、かつ弾性変形可能である、態様1~5のいずれか一項に記載のハニカム基材ホルダー。
《態様7》前記筒状外周壁の外側に筒状支持壁を有する、態様1~6のいずれか一項に記載のハニカム基材ホルダー。
《態様8》前記筒状内周壁が、円筒形状又は多角筒形状を有する、態様1~7のいずれか一項に記載のハニカム基材ホルダー。
《態様9》態様1~8のいずれか一項に記載のハニカム基材ホルダーの筒状内周壁の軸側にハニカム基材を挿入し、
前記ハニカム基材を反応器として化学反応を行わせる、
反応方法。
《態様10》前記化学反応が、液相反応体と、ファインバブル化した気相反応体との化学反応である、態様9に記載の反応方法。
《態様11》前記ハニカム基材が、
複数の流路を有し、前記流路が多孔質壁で隔てられており、
前記多孔質壁が、前記多孔質壁の厚さ方向に貫通する連続気孔を有する、多孔質体から成る、
態様9又は10に記載の反応方法。
《態様12》前記多孔質壁が、少なくともその表面に、反応触媒を有する、態様11に記載の反応方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、化学反応の反応器としてハニカム基材を用いるときに、シール材を用いずに、ハニカム基材の端面とフランジ等との隙間からの反応体等の滲出を防止すること、及び大容量の恒温槽を要さずに、反応温度を効率的に制御すること、並びにハニカム基材が多孔質である場合に、ハニカム基材の外周面からの反応体等の滲出を防止すること、のうちの少なくとも1つが可能な、ハニカム基材ホルダーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のハニカム基材ホルダーの構成の一例を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1のハニカム基材ホルダーのA-A線断面図である。
図3図3は、本発明のハニカム基材ホルダーの構成の別の一例を示す概略斜視図である。
図4図4は、図3のハニカム基材ホルダーのA-A線断面図である。
図5図5は、本発明のハニカム基材ホルダーの構成の更に別の一例を示す概略斜視図である。
図6図6は、図5のハニカム基材ホルダーのA-A線断面図である。
図7図7は、比較例1及び2で用いた反応装置の構成を示す、概略断面図である。
図8図8は、実施例1及び2で用いた反応装置の構成を示す、概略断面図である。
図9図9は、実施例2及び比較例2で得られた、排出水温度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《ハニカム基材ホルダー》
本発明のハニカム基材ホルダーは、反応器として用いられるハニカム基材を保持するためのハニカム基材ホルダーであって、少なくとも、
弾性変形可能な筒状内周壁と、
筒状内周壁の外側に、筒状内周壁と筒状間隙を介して配置された、筒状外周壁と、
筒状内周壁及び筒状外周壁とともに筒状間隙を封止している、2つの端面と
を有し、
筒状内周壁の軸側に、ハニカム基材を挿入することができ、かつ、
筒状間隙内に、熱媒又は冷媒である流体を流通又は保持させることができる、
ハニカム基材ホルダーである。
【0015】
本発明のハニカム基材ホルダーでは、筒状内周壁が弾性変形可能である。そのため、筒状間隙内の流体を加圧することにより、筒状内周壁を弾性変形させて、筒状内周壁をハニカム基材の外周面に押し付けることができる。
【0016】
本発明の好ましい態様では、筒状内周壁は、ハニカム基材の外周面の形状に応じて弾性変形し、外周面に密着して、外表面に開口する細孔を閉塞させる。このようにして、流体状の反応体を反応させるための反応器として多孔質のハニカム基材を用いるときでも、ハニカム基材の外周面からの反応体の滲出を防止することができる。
【0017】
また、本発明の別の好ましい態様では、筒状内周壁がハニカム基材の外周面に押し付けられるとき、筒状内周壁は、ハニカム基材の外表面の細孔の形状に追随して弾性変形して、細孔内部に入り込む。このことにより、ハニカム基材の外周面からの反応体の滲出が、より効果的に防止される。
【0018】
また、ハニカム基材の端面に、反応体導入口を有するフランジ及び/又は生成物排出口を有するフランジが接続されている場合、筒状間隙内の流体の加圧に伴う筒状内周壁の弾性変形によって、筒状内周壁が、ハニカム基材と、フランジとの接触部に押し付けられるように構成してもよい。これにより、ハニカム基材の端面と、フランジとの接触部にO-リングを配置しなくても、該接触部からの反応体の滲出を防止することができる。
【0019】
更に、本発明のハニカム基材ホルダーでは、筒状内周壁がハニカム基材の外周面に密着する。このことにより、筒状間隙内の流体が熱媒又は冷媒である場合、該熱媒は、空気等の熱伝導率の低い介在物を介さずに、ハニカム基材及びこれに含まれる反応体と熱交換することができる。このことにより、大容量の恒温槽を使用しなくても、反応温度を効率的に制御することが可能になる。
【0020】
以下、本発明のハニカム基材ホルダーを構成する各要素について、順に説明する。
【0021】
〈筒状内周壁〉
本発明のハニカム基材ホルダーの筒状内周壁は、弾性変形可能である。そのため、筒状間隙内の流体を加圧することにより、筒状内周壁を弾性変形させて、筒状内周壁をハニカム基材の外周面に押し付けることができ、好ましくは更に、ハニカム基材と、反応体導入口を有するフランジ及び/又は生成物排出口を有するフランジとの接触部に押し付けることができる。
【0022】
筒状内周壁は、例えば、円筒形状、多角筒形状等の任意の形状を有していてよい。筒状内周壁は、その軸側にハニカム基材を挿入し、このハニカム基材を反応器として化学反応を行うことが予定されている。したがって、筒状内周壁の形状は、挿入して使用することが予定されているハニカム基材の形状に適合させて、適宜に設定されてよい。
【0023】
筒状内周壁のサイズも、任意であり、これに挿入して使用することが予定されているハニカム基材のサイズに適合させて、適宜に設定されてよい。したがって、筒状内周壁の軸方向の長さは、ハニカム基材の長さほぼ同じであってよい。或いは、筒状内周壁の長さを、ハニカム基材の長さよりも短いものとし、1つのハニカム基材を複数のハニカム基材ホルダーで保持する態様も、本発明に包含される。
【0024】
筒状内周壁の材質は、筒状間隙内の流体を加圧することにより、筒状内周壁をハニカム基材の外周面に押し付けることができる程度の弾性を有する弾性素材である限り、任意の材質であってよい。この弾性素材は、加硫ゴム、熱可塑性エラストマー等のゴムであってよく、具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(VMQ、PVMQ、FVMQ)、フッ素ゴム(FKM)、多流加ゴム(T)等であってよい。
【0025】
〈筒状外周壁〉
筒状外周壁は、筒状内周壁と筒状間隙を介して配置されており、筒状内周壁及び筒状外周壁とともに、筒状間隙を封止して、筒状間隙内に、熱媒又は冷媒である流体を流通又は保持させる機能の一端を担う。
【0026】
筒状外周壁の形状は、筒状内周壁と筒状間隙を介して配置可能な限りで、筒状内周壁と相似形であってもよいし、筒状内周壁と相似形でなくてもよい。筒状外周壁の形状としては、例えば、円筒形状、多角筒形状等が例示できる。
【0027】
筒状外周壁のサイズは、筒状内周壁と筒状間隙を介して配置可能な限りで、任意である。筒状外周壁の軸方向の長さは、筒状内周壁の軸方向の長さと、ほぼ同じであってよい。筒状外周壁の軸方向に垂直な方向の断面積と、筒状内周壁の軸方向に垂直な方向の断面積との比は、1よりも大きく、この比を調節することにより、筒状間隙の容量を適当な値に設定することができる。
【0028】
筒状外周壁は、弾性変形可能であってもよいし、弾性変形ができなくてもよい。したがって、筒状外周壁の材質は、筒状内周壁と同様の弾性素材であってもよいし、硬質素材であってもよい。硬質素材は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂の他、鉄、ブリキ、トタン、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属又は合金であってもよい。
【0029】
〈端面〉
端面は、筒状内周壁及び筒状外周壁とともに筒状間隙を封止して、筒状間隙内に、流体特に、熱媒又は冷媒である流体を流通又は保持させる機能の一端を担う。
【0030】
端面の形状は、筒状内周壁の端面と筒状外周壁の端面との間を塞ぐ形状であってよく、筒状内周壁及び筒状外周壁の形状に応じて、適宜に設定されてよい。例えば、筒状内周壁及び筒状外周壁双方が円筒形状である場合、端面は、円環状(アニュラス状)であってよい。筒状内周壁及び筒状外周壁双方が多角筒形状である場合、端面は、多角形の中心部に多角形状の孔を有する形状であってよい。
【0031】
端面のサイズは、筒状内周壁の端面と筒状外周壁の端面との間を塞ぐことができる限りで、任意のサイズであってよい。筒状内周壁及び筒状外周壁双方が円筒形状であり、端面が円環状である場合、円環状の端面の外径は、筒状外周壁の軸方向に垂直な方向の直径とほぼ同じであってよく、円環状の端面の内径は、筒状内周壁の軸方向に垂直な方向の直径とほぼ同じであってよい。
【0032】
端面は、弾性変形可能であってもよいし、弾性変形ができなくてもよい。したがって、端面の材質は、筒状外周壁と同様であってよい。
【0033】
〈筒状内周壁、筒状外周壁、及び端面の構成〉
筒状内周壁、筒状外周壁、及び端面は、それぞれ別個の部材として製造した後に、接合することにより、本発明のハニカム基材ホルダーとしてよい。しかしながら、ハニカム基材ホルダーの製造工程を簡易化し、かつ、筒状間隙内に流通又は保持される流体の漏れを防止する観点から、筒状内周壁、筒状外周壁、及び2つの端面が、一体的に形成されてよい。この場合、筒状内周壁、筒状外周壁、及び2つの端面すべてが、弾性変形可能であってよい。
【0034】
〈筒状間隙〉
筒状間隙は、流体を流通させ、又は保持する機能を有する。これにより、筒状間隙内の流体が加圧されたときに、筒状内周壁が弾性変形してハニカム基材の外周面に押し付けられることが可能になり、流体が熱媒又は冷媒である場合には、ハニカム基材を反応器として行う反応の温度を制御することができる。
【0035】
流体が熱媒又は冷媒である場合、筒状間隙は、ハニカム基材を反応器として行う反応の温度制御を有効とするために、ある程度の量の流体を収納可能であることが望まれる。この観点から、筒状間隙の容量は、ハニカム基材の容量の、0.3倍以上、0.5倍以上、1倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上、又は15倍以上であってよい。一方で、筒状間隙の容量を無制限に大きくしても、反応の温度制御の効率が比例して向上するものではない。この観点から、筒状間隙の容量は、ハニカム基材の容量の、100倍以下、50倍以下、30倍以下、又は20倍以下であってよい。
【0036】
筒状間隙内に螺旋状の流路を設け、流体が筒状間隙内を螺旋状に進行するように構成してもよい。これにより、流体とハニカム基材の外周面の全体との均一な熱交換が可能となる。
【0037】
筒状間隙を、反応体の流れ方向に沿って複数に区分してもよい。この場合、区分ごとに流体導入孔及び流体排出口を設けてもよい。これにより、筒状間隙の区分ごとに、異なる温度制御をすることが可能となる。
【0038】
〈流体導入口及び流体排出口〉
本発明のハニカム基材ホルダーは、筒状外周壁及び端面のうちの任意の位置に、筒状間隙に、流体を流入させるための流体導入口1個以上と、筒状間隙からこの流体を排出させるための流体排出口1個以上とを有していてよい。
【0039】
熱媒又は冷媒である流体を、筒状間隙内に流通させるときには、流体の入口と出口とをできるだけ離す方が、流体が筒状間隙の特定の部分に滞留することなく、筒状間隙内を満遍なく流通して、ハニカム基材との熱交換を効率化できる点で、好ましい。この観点から、流体導入口及び流体排出口のうちの一方を、2つの端面のうちの一方、又は筒状外周壁のうちの該端面の近くに配置し、流体導入口及び流体排出口のうちの他方を、2つの端面のうちの他方、又は筒状外周壁のうちの該端面の近くに配置することが好ましい。
【0040】
本発明のハニカム基材ホルダーが、2個以上の流体導入口を有するとき、各流体導入口は、それぞれ互いに近い位置に配置されていてもよいし、互いに離隔した位置に配置されていてもよい。
【0041】
本発明のハニカム基材ホルダーが、2個以上の流体排出口を有するとき、各流体導入口は、それぞれ互いに近い位置に配置されていてもよいし、互いに離隔した位置に配置されていてもよい。
【0042】
流体導入口及び流体排出口の数は、それぞれ独立に、1個以上、2個以上、3個以上、又は4個以上であってよく、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下、3個以下、又は2個以下であってよい。
【0043】
流体導入口及び流体排出口は、それぞれ、流体の供給元及び排出先と接続可能な形状を有していてよく、例えば、端面又は筒状外周壁から突出する管状であってよい。
【0044】
流体導入口及び流体排出口の材質は、流体の漏れを防止できる限りで、任意であってよく、端面又は筒状外周壁と同じ材質であってよく、異なる材質であってもよい。
【0045】
〈温度調整器〉
本発明のハニカム基材ホルダーは、更に、温度調整器を有していてよい。この温度調整器は、例えば、加熱のためのリボンヒータ、冷却のためのペルチェ素子等であってよい。
【0046】
温度調整器は、例えば、筒状間隙内に配置されていてよく、筒状外周壁の外側に配置されていてよい。筒状間隙内、及び筒状外周壁の外側の双方に、温度調整器が配置されている態様も、本発明の実施形態に含まれる。
【0047】
更に、本発明のハニカム基材ホルダーに用いられる流体が熱媒又は冷媒である場合でも、本発明のハニカム基材ホルダーは、温度調整器を有していてよい。本発明のハニカム基材ホルダーが、温度調整器を有しており、かつ、用いられる流体が熱媒又は冷媒である場合、本発明のハニカム基材ホルダーに挿入されたハニカム基材を反応器として行う化学反応の温度制御が、極めて効果的に行えることとなる。
【0048】
〈筒状支持壁〉
本発明のハニカム基材ホルダーは、筒状外周壁の外側に筒状支持壁を有していてよい。本発明のハニカム基材ホルダーが、筒状外周壁の外側に温度調整器を有する場合、筒状支持壁は、温度調整器の更に外側に配置されていてよい。
【0049】
筒状支持壁の形状は、筒状外周壁を覆うことができる限りで任意であり、筒状外周壁と相似形であってもよいし、筒状外周壁と相似形でなくてもよい。筒状支持壁の形状としては、例えば、円筒形状、多角筒形状等が例示できる。
【0050】
筒状支持壁のサイズは、筒状外周壁を覆うことが可能な限りで、任意である。筒状支持壁の軸方向の長さは、筒状外周壁の軸方向の長さと、ほぼ同じであってよい。
【0051】
ハニカム基材ホルダーが筒状支持壁を有すると、筒状間隙内の流体を保温することができる。また、筒状外周壁が弾性素材から構成されている場合に、筒状間隙内の流体が加圧されたとき、筒状外周壁が径方向外側に弾性変形することを防止して、筒状内周壁の弾性変形によるハニカム基材の外周への押しつけが補助される。
【0052】
したがって、筒状支持壁の材質は、筒状外周壁の弾性変形防止の観点からは、硬質素材であってよい。また、筒状間隙内の流体の保温の観点からは、熱容量の大きい素材であってよい。これらを総合して、筒状支持壁の材質は、例えば、合成樹脂、セラミックス、金属等であってよい。
【0053】
筒状支持壁を構成する合成樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂等から選択される1種又は2種以上であってよい。セラミックスは、例えば、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、フォルステライト、ステアタイト、サイアロン、ムライト等から選択される1種又は2種以上であってよい。金属は、例えば、アルミニウム、ジェラルミン、チタン、鉄等から選択される1種又は2種以上であってよい。
【0054】
〈ハニカム基材ホルダーの具体例〉
図1図6に、本発明のハニカム基材ホルダーの一例を示した。
【0055】
図1は、本発明のハニカム基材ホルダーの構成の一例を示す概略斜視図である。図2は、図1のハニカム基材ホルダーのA-A線断面図である。
【0056】
図1及び図2のハニカム基材ホルダー(100)は、
弾性変形可能な筒状内周壁(10)と、
筒状内周壁(10)の外側に、筒状内周壁(10)と筒状間隙(20)を介して配置された、筒状外周壁(30)と、
筒状内周壁(10)及び筒状外周壁(30)とともに筒状間隙(20)を封止している、2つの端面(41、42)と
を有する。
【0057】
ハニカム基材ホルダー(100)では、筒状内周壁(10)及び筒状外周壁(30)は、軸(60)方向の長さがほぼ同じである。また、2つの端面(41、42)は、円環状の形状を有し、円環の外径は、筒状外周壁の軸方向に垂直な方向の直径とほぼ同じであり、円環の内径は、筒状内周壁の軸方向に垂直な方向の直径とほぼ同じである。
【0058】
ハニカム基材ホルダー(100)は、筒状間隙(20)内に、流体を流通又は保持させることができる。
【0059】
ハニカム基材ホルダー(100)は、更に、筒状外周壁(30)上に、流体導入口(51)及び流体排出口(52)を有する。流体導入口(51)は、筒状外周壁(30)のうちの、2つの端面のうちの一方の端面(41)の近くに配置されており、流体排出口(52)は、筒状外周壁(30)のうちの、他方の端面(41)の近くに配置されている。流体導入口(51)及び流体排出口(52)を、このように互いに離れた位置に配置することにより、流体が筒状間隙の特定の部分に滞留することなく、筒状間隙内を満遍なく流通できることになり、好ましい。
【0060】
ハニカム基材ホルダー(100)は、筒状内周壁(10)の軸(60)側の空間に、反応器として用いられるハニカム基材を挿入することができる。ハニカム基材ホルダー(100)は、1つのハニカム基材を1つのハニカム基材ホルダーによって保持するように用いられてよい。
【0061】
ハニカム基材ホルダー(100)は、筒状支持壁を有していないが、筒状外周壁(30)の外側に、筒状支持壁を有していてもよい。
【0062】
図3は、本発明のハニカム基材ホルダーの構成の別の一例を示す概略斜視図である。図4は、図3のハニカム基材ホルダーのA-A線断面図である。
【0063】
図3及び図4には、2個のハニカム基材ホルダー(200(1)、200(2))が、直列に配置された様子が示されている。各ハニカム基材ホルダー(200(1)、200(2))の基本的な構成は、図1及び図2のハニカム基材ホルダー(100)とほぼ同じである。しかしながら、これら2個のハニカム基材ホルダー(200(1)、200(2))は、それぞれ、軸(60)方向の長さが短く、これらを直列に配置して、1組のハニカム基材ホルダー群(200)として使用することが予定されている。
【0064】
ハニカム基材ホルダー群(200)は、2個のハニカム基材ホルダー(200(1)、200(2))それぞれの筒状内周壁の軸(60)側の空間に、反応器として用いられるハニカム基材を挿入することができる。ハニカム基材ホルダー群(200)は、1個のハニカム基材を、直列に配置された2個のハニカム基材ホルダー(200(1)、200(2))によって保持するように用いられてよい。このような使用態様によると、ハニカム基材ホルダーの領域ごとに、異なる温度制御をすることが可能となる。
【0065】
ハニカム基材ホルダー群(200)は、2個のハニカム基材ホルダー(200(1)、200(2))から構成されているが、直列に配置された3個以上のハニカム基材ホルダーによって1組のハニカム基材ホルダー群を構成してもよい。1組のハニカム基材ホルダー群を構成するハニカム基材ホルダーの数は、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、又は6個以上であってよく、10個以下、8個以下、6個以下、5個以下、4個以下、又は3個以下であってよい。
【0066】
ハニカム基材ホルダー群(200)は、筒状支持壁を有していないが、筒状外周壁(30)の外側に、筒状支持壁を有していてもよい。この場合、ハニカム基材ホルダー群(200)の全体を1つの筒状支持壁で覆われていてもよいし、2個のハニカム基材ホルダー(200(1)、200(2))が、それぞれ1つの筒状支持壁で覆われる態様であってもよい。
【0067】
図5は、本発明のハニカム基材ホルダーの構成の更に別の一例を示す概略斜視図である。図6は、図5のハニカム基材ホルダーのA-A線断面図である。
【0068】
図5及び図6のハニカム基材ホルダー(300)の基本的な構成は、図1及び図2のハニカム基材ホルダー(100)とほぼ同じである。しかしながら、このハニカム基材ホルダー(300)は、筒状内周壁(10)と筒状外周壁(30)との間の筒状間隙(20)内に、温度調整器(70)を有する。
【0069】
この温度調整器(70)は、上述のように、例えば、加熱のためのリボンヒータ、冷却のためのペルチェ素子等であってよい。
【0070】
ハニカム基材ホルダー(300)は、筒状支持壁を有していないが、筒状外周壁(30)の外側に、筒状支持壁を有していてもよい。
【0071】
〈ハニカム基材ホルダーのバリエーション〉
本発明のハニカム基材ホルダーは、上記に具体的に示された態様に限られるものではなく、これに、当業者による適宜の変更を加えた態様としてもよい。
【0072】
《反応方法》
本発明の反応方法は、上記に説明した本発明のハニカム基材ホルダーの筒状内周壁の軸側にハニカム基材を挿入し、このハニカム基材を反応器として化学反応を行わせる方法である。
【0073】
〈ハニカム基材〉
本発明の反応方法に用いられるハニカム基材は、ハニカム基材ホルダーの筒状内周壁の軸側に挿入することができる限り、任意の形状およびサイズを有していてよい。
【0074】
ハニカム基材は、例えば、
複数の流路を有し、これら複数の流路が多孔質壁で隔てられており、
多孔質壁が、多孔質壁の厚さ方向に貫通する連続気孔を有する、多孔質体から成る
ものであってよい。
【0075】
ハニカム基材は、
複数の流路が、それぞれ、入口側端面から出口側端面まで貫通している、ストレートフロー型のハニカム基材であってもよいし、
複数の流路が、
入口側端面に開口し、出口側端面が閉塞されている、入口側流路と、
出口側端面に開口し、入口側端面が閉塞されている、出口側流路と
から構成されている、ウォールフロー型のハニカム基材であってもよい。
【0076】
ハニカム基材の多孔質壁は、少なくともその表面に、反応触媒を有していてもよい。
【0077】
〈反応〉
本発明の反応方法によって行われる反応は、典型的には、化学反応である。この化学反応は、ハニカム基材を反応器として実施可能なものである限り、任意の化学反応であってよい。例えば、特許文献2に記載されたような、液相反応体と、ファインバブル化した気相反応体との化学反応が好適である。
【実施例
【0078】
《比較例1》
コージェライト製のストレートタイプのハニカム基材(容量30mL)の両端面に、反応体導入口を有するフランジ、及び生成物排出口を有するフランジを、それぞれ、O-リングを介して装着し、基材の軸方向に締め付けて、図7に示した構造の反応装置を構成した。
【0079】
この反応装置の反応体導入口から、プランジャーポンプを用いて、脱イオン水を40mL/分の流量で5分間送液した(合計送液量200mL)。この5分間に、生成物排出口から排出された脱イオン水の量は、152mLであった。すなわち、比較例1では、5分間に送液された脱イオン水のうち、24%が漏出したと計算された({(200-152)/200}×100=24%)。
【0080】
《実施例1》
比較例1で用いたのと同種同サイズのコージェライト製ハニカム基材の両端面に、反応体導入口を有するフランジ、及び生成物排出口を有するフランジを、それぞれ装着した。このとき、フランジとして、直径がハニカム基材の直径とほぼ等しいものを使用した。また、O-リングは用いなかった。
【0081】
このフランジが装着されたハニカム基材を、ハニカム基材ホルダー(100)の軸側に挿入した。ここで使用したハニカム基材ホルダー(100)は、流体導入口(51)及び流体排出口(52)を有し、全体がクロロプレンゴムから成るものであった。また、ハニカム基材ホルダー(100)の長さは、ハニカム基材の外周面の全部、及びフランジとハニカム基材端面との接触面を覆うことができる長さとした。ハニカム基材ホルダー(100)の筒状間隙(20)の容量は、約500mLであった。
【0082】
更に、ハニカム基材ホルダー(100)の筒状外周壁の外側に、ポリプロピレン製の筒状支持壁(400)を設置して、図8に示した構造の反応装置を構成した。
【0083】
そして、ハニカム基材ホルダー(100)の流体導入口(51)から水を注入して、筒状間隙(20)内を水で満たし、更に、筒状間隙(20)内に0.2MPaの圧力をかけた状態で流体導入口(51)及び流体排出口(52)を封止した。
【0084】
この状態で、比較例1と同様にして、反応装置の反応体導入口から、脱イオン水を40mL/分の流量で5分間送液した。この5分間に、生成物排出口から排出された脱イオン水の量は、200mLであった。すなわち、実施例1では、5分間に送液された脱イオン水の漏出は観察されなかった。
【0085】
上記の結果により、ハニカム基材端面とフランジとの接触面、及び多孔質のハニカム基材の外周面の双方が、本発明のハニカム基材ホルダーによって十分にシールされており、これらの部分からの反応体の滲出を、防止できることが検証された。
【0086】
《比較例2》
比較例2では、ハニカム基材として、ステンレス製のストレートタイプのハニカム基材(容量30mL)を用いた他は、比較例1で用いたのと同じ構成の反応装置を使用して実験を行った。
【0087】
反応装置全体を70℃に調温された恒温槽内に設置した。設置後、直ちに、反応装置の反応体導入口から、20℃の脱イオン水を40mL/分の流量で送液した。そして、ハニカム基材内が脱イオン水で満たされて、反応装置の生成物排出口から脱イオン水が排出され始めた時点を時間0(ゼロ)として、排出水の温度を経時的に測定した。排出水温度の経時変化を示すグラフを、図9に示す。
【0088】
《実施例2》
実施例2では、ハニカム基材として、比較例2で用いたのと同種同サイズのステンレス製ハニカム基材を用いた他は、実施例1で用いたのと同じ構成の反応装置を使用して実験を行った。
【0089】
反応装置の流体導入口(51)から、70℃の水(温水)を300mL/分の流量で送液した。ハニカム基材ホルダー(100)の筒状間隙(20)が温水で満たされて、流体排出口(52)から温水が排出され始めたときに、反応装置の反応体導入口から、20℃の脱イオン水を40mL/分の流量で送液した。そして、ハニカム基材内が脱イオン水で満たされて、反応装置の生成物排出口から脱イオン水が排出され始めた時点を時間0(ゼロ)として、排出水の温度を経時的に測定した。排出水温度の経時変化を示すグラフを、図9に示す。
【0090】
図9を参照すると、本発明のハニカム基材ホルダーを用いると、温度調節に恒温槽を用いた比較例2よりも、反応体の温度制御を迅速に行えることが検証された。
【符号の説明】
【0091】
10 筒状内周壁
20 筒状間隙
30 筒状外周壁
41、42 端面
51 流体導入口
52 流体排出口
60 軸
70 温度調整器
100、200(1)、200(2)、300 ハニカム基材ホルダー
200 ハニカム基材ホルダー群
400 筒状支持壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9