(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】運転評価装置、運転評価方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240612BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/09 F
(21)【出願番号】P 2020147382
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592018320
【氏名又は名称】あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】梅田 傑
(72)【発明者】
【氏名】乙黒 彰仁
(72)【発明者】
【氏名】藤井 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 薫
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-107155(JP,A)
【文献】特開2013-164831(JP,A)
【文献】特開2014-089602(JP,A)
【文献】特開2012-226548(JP,A)
【文献】特開2012-033107(JP,A)
【文献】特開2015-022499(JP,A)
【文献】特開2012-203869(JP,A)
【文献】特開2008-040787(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0307188(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転状態をあらわす運転状態情報を取得する取得部と、
地図上の道路網を、道路結節点に設定されたノードと各ノード間の道路区間をあらわすリンクの組み合わせによって表現するための電子地図情報を記憶する記憶部と、
前記運転状態情報と前記電子地図情報に基づいて、前記リンクごとに、前記車両の運転挙動を計測する計測部と、
前記リンクごとに重みが設定されており、前記リンクごとの前記車両の運転挙動の計測結果及び前記重みを利用して、前記車両のユーザの運転リスクを評価する評価部と、
を具備する運転評価装置。
【請求項2】
前記運転状態情報は、前記車両の現在位置情報を含み、
前記計測部は、前記運転状態情報と前記電子地図情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の平均速度を求め、前記リンクごとの前記車両の平均速度が第1閾値を超えた場合に1回の危険運転としてカウントする、
請求項1に記載の運転評価装置。
【請求項3】
前記運転状態情報は、さらに前記車両の前方向の加速度をあらわす加速度情報を含み、
前記計測部は、前記運転状態情報と前記電子地図情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の前方向の最大加速度を求め、前記リンクごとの前記車両の前方向の最大加速度が第2閾値を超えた場合に1回の危険運転としてカウントする、
請求項1または2に記載の運転評価装置。
【請求項4】
前記運転状態情報は、さらに前記車両の後方向の加速度をあらわす加速度情報を含み、
前記計測部は、前記運転状態情報と前記電子地図情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の後方向の最大加速度を求め、前記リンクごとの前記車両の後方向の最大加速度が第3閾値を超えた場合に1回の危険運転としてカウントする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の運転評価装置。
【請求項5】
前記運転状態情報は、さらに前記車両の左方向の加速度をあらわす加速度情報を含み、
前記計測部は、前記運転状態情報と前記電子地図情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の左方向の最大加速度を求め、前記リンクごとの前記車両の左方向の最大加速度が第4閾値を超えた場合に1回の危険運転としてカウントする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の運転評価装置。
【請求項6】
前記運転状態情報は、さらに前記車両の右方向の加速度をあらわす加速度情報を含み、
前記計測部は、前記運転状態情報と前記電子地図情報に基づいて、前記リンクごとに前記車両の右方向の最大加速度を求め、前記リンクごとの前記車両の右方向の最大加速度が第5閾値を超えた場合に1回の危険運転としてカウントする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の運転評価装置。
【請求項7】
前記ユーザの通信端末に、前記ユーザの運転リスクを送信する送信部をさらに備える、請求項
1に記載の運転評価装置。
【請求項8】
前記送信部は、前記計測部が前記危険運転としてカウントした前記リンクの識別情報を、前記ユーザの通信端末に送信する、請求項
7に記載の運転評価装置。
【請求項9】
車両の運転状態をあらわす運転状態情報を取得するステップと、
前記運転状態情報と、地図上の道路網を、道路結節点に設定されたノードと各ノード間の道路区間をあらわすリンクの組み合わせによって表現するための電子地図情報に基づいて、前記リンクごとに、前記車両の運転挙動を計測するステップと
、
前記リンクごとに重みが設定されており、前記リンクごとの前記車両の運転挙動の計測結果及び前記重みを利用して、前記車両のユーザの運転リスクを評価するステップと
を含む運転評価方法。
【請求項10】
地図上の道路網を、道路結節点に設定されたノードと各ノード間の道路区間をあらわすリンクの組み合わせによって表現するための電子地図情報を記憶する記憶部を備えたコンピュータに、
車両の運転状態をあらわす運転状態情報を取得するステップと、
前記運転状態情報と前記電子地図情報に基づいて、前記リンクごとに、前記車両の運転挙動を計測するステップと
、
前記リンクごとに重みが設定されており、前記リンクごとの前記車両の運転挙動の計測結果及び前記重みを利用して、前記車両のユーザの運転リスクを評価するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転評価装置、運転評価方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたセンサを用いて、運転手のアクセルワークやブレーキワーク、ハンドルワークなどの運転挙動を計測し、運転の荒さや事故リスクなどを評価することが行われている。こうした運転評価の結果を用いて、事故リスクの高い運転手に対して運転アドバイスを行うサービスや、運転手の運転レベルに応じて自動車保険の保険料を変動するサービスも利用されている。これらのサービスを利用することで、ユーザは、事故率の削減や、安全運転により保険料を安く抑えられるなどのメリットを享受できる。
【0003】
運転評価に関して、特許文献1には、時間単位で運転挙動の計測を行う車両用運転支援装置が開示されている。この車両用運転支援装置では、現在の運転挙動を示す短時間のデータと、その日の運転挙動を示す中時間のデータをそれぞれ取得し、短時間のデータの分布と中時間のデータの分布とを比較することで運転評価を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、時間単位で運転挙動を計測し、運転評価を行う方法では、運転リスクの正確な把握や、安全運転の促進効果を高めるのは難しい、という問題が指摘されていた。
【0006】
本発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、従来に比して運転リスクの正確な把握や、安全運転の促進効果を高めることが可能な運転評価技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る運転評価装置は、車両の運転状態をあらわす運転状態情報を取得する取得部と、地図上の道路網を、道路結節点に設定されたノードと各ノード間の道路区間をあらわすリンクの組み合わせによって表現するための電子地図情報を記憶する記憶部と、運転状態情報と電子地図情報に基づいて、リンクごとに、車両の運転挙動を計測する計測部と、を具備することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
従来に比して運転リスクの正確な把握や、安全運転の促進効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る運転評価システムの概要を説明するための図である。
【
図2】車載端末の要部構成を示すブロック図である。
【
図3】情報センタの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】速度超過の検出フローを示すフローチャートである。
【
図6】急加速の検出フローを示すフローチャートである。
【
図7】急減速の検出フローを示すフローチャートである。
【
図8】左急旋回の検出フローを示すフローチャートである。
【
図9】右急旋回の検出フローを示すフローチャートである。
【
図10】リンク単位での運転挙動の計測結果を例示する説明図である。
【
図11】運転リスクの評価方法を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
A.本実施形態
<システム概要>
図1は、本実施形態に係る運転評価システム1の概要を説明するための図である。
図1に示す例において、運転評価システム1は、各ユーザの車両に搭載されている車載端末100と、各ユーザの運転リスクなどを評価する情報センタ200とを備えて構成されている。
【0012】
車載端末100と情報センタ200とは、ネットワークNを介して相互通信可能となっている。なお、
図1では、3台の車載端末100と1台の情報センタ200を図示しているが、運転評価システム1に含まれる車載端末100及び情報センタ200の数はこれに限定されず、それぞれ任意の数の装置を含めることができる。
【0013】
ネットワークNは、車載端末100と情報センタ200との間の通信のための通信ネットワークである。例えば、ネットワークNは、インターネット、LAN、専用線、パケット通信網、公衆交換電話網(Public Switched Telephone Network:PSTN)の一部、携帯電話網、ISDNs(Integrated Service Digital Networks)、無線LANs、LTE(Long Term Evolution)、CDMA(Code Division Multiple Access)、その他の通信回線、それらの組み合わせ等のいずれであってもよい。ネットワークNは、有線であるか無線であるかを問わない。また、車両は、二輪車や自律走行車両などを含み、ネットワークNを介して他の装置と通信可能なあらゆる車両を含む。
【0014】
<車載端末100>
図2は、車載端末100の要部構成を示すブロック図である。
車載端末100は、制御装置110、ナビゲーション装置120、センサ装置130、通信装置140などを備えている。
【0015】
制御装置110は、CPU、ROM、RAM、I/Oインタフェースなどを備えたマイクロコンピュータにより構成され、車載端末100の各部を中枢的に制御する。
ナビゲーション装置120は、絶対方位を検出するための地磁気センサ、ジャイロスコープ、GPS受信機、地図データベース、表示パネルなどを備えている。ナビゲーション装置120は、GPS受信機などから得られる車両の現在位置情報(時刻情報や緯度・経度情報など)と、地図データベースに格納されている地図情報に基づいて、自車両が走行する道路などを表示パネルに表示する。また、ナビゲーション装置120は、取得される車両の現在位置情報を制御装置110に出力する。
【0016】
センサ装置130は、車速センサ131、重力センサ132などを備えて構成される。車速センサ131は、例えば車輪の回転数や変速機の出力側の回転数を計測することにより、自車両の車速を検出し、これを車速情報として制御装置110に出力する。
重力センサ132は、加減速時に車両に作用する車両前後方向の加速度(加速時:前加速度、減速時:後加速度)や、急ハンドル時に車両に作用する車両左右方向の加速度(左旋回時:左加速度、右旋回時:右加速度)を検出し、これを加速度情報として制御装置110に出力する。
【0017】
通信装置140は、各種の通信インタフェースを備えて構成され、ネットワークNを介して情報センタ200や他の装置の間で様々な情報を授受することが可能となっている。一例として、通信装置140は、制御装置110による制御の下、車両の現在位置情報や、車速情報、加速度情報などを情報センタ200に送信する。なお、車両の現在位置情報や、車速情報、加速度情報などは、いずれも車両の運転状態をあらわすことから、特に区別する必要がない場合には「運転状態情報」と総称する。
【0018】
<情報センタ200>
情報センタ200は、例えば保険会社によって運営されるサーバセンタであり、専用又は汎用のコンピュータにより構成されている。情報センタ200は、各車載端末100から提供される運転状態情報などに基づいて運転挙動を計測し、各ユーザの運転リスクを評価する計測・評価機能などを提供する。ここで、情報センタ200を構成するコンピュータは、必ずしも1台である必要はなく、ネットワークN上に分散する複数のコンピュータから構成されてもよい。
【0019】
図3は、情報センタ200の機能構成を示すブロック図である。
情報センタ200は、制御部210と、通信部220と、記憶部230とを備えて構成される。
【0020】
制御部210は、CPU、ROM、RAM、I/Oインタフェースなどを備えたマイクロコンピュータにより構成され、ROM等の記憶手段に格納されている各種プログラムを実行することで情報センタ200の各部を中枢的に制御する。また、制御部210は、運転挙動の計測の際に利用する5種類のカウンタC1~C5を備えている。なお、制御部210の具体的な制御内容は後述する。
【0021】
通信部220は、様々な通信規格に準拠した通信インタフェースを備えている。通信部(取得部)220は、ネットワークNを介して各車載端末100からアップロードされる運転状態情報を受信する一方、情報センタ200において導出される各ユーザの運転リスクの評価結果を、各車載端末100や各ユーザの通信端末(携帯電話やスマートフォンなど)に送信する。なお、通信部220は、各車載端末100を含む外部機器との間で様々な情報の授受を行う。
【0022】
記憶部230は、例えば、ディスクドライブ又は半導体メモリ等によって構成され、各種プログラムやこれらのプログラムの実行中に使用される各種データを記憶する。具体的には、記憶部230は、各車載端末100から取得した運転状態情報とともに、各ユーザを特定するためのユーザ情報を記憶する。ユーザ情報には、本システムを利用するユーザのアカウント情報(例えば、ユーザID、氏名、年齢、電話番号、連絡先など)が含まれる。また、記憶部230は、上述した計測・評価機能を実現するためのコンピュータプログラムや、運転挙動の計測のために利用される電子地図情報IM1などを記憶する。電子地図情報IM1は、デジタル形式の道路地図(デジタル道路地図)をあらわすものである。
【0023】
図4は、電子地図情報IM1から生成されるデジタル道路地
図DRMのイメージ図である。
デジタル道路地
図DRMは、地図上の道路網を、「ノード」と「リンク」の組み合わせによって表現したものである。「ノード」は、交差点や、道路の構造変化点、行政界との交点など、道路網表現上の結節点(以下、「道路結節点」ともいう。)に設定される。「リンク」は、各ノード間の道路区間をあらわしている。各ノードと各リンクには、それぞれ固有のノード番号とリンク番号が設定されている。なお、
図4では、ノード番号のみを表示しているが、リンク番号もあわせて表示してもよい。リンク番号は、例えばリンク両端のノード番号を小さい方から並べたものとすることができる。一例を挙げて説明すると、ノード番号がそれぞれ「1024」、「1025」に設定された両ノード間のリンクであれば、「10241025」がリンク番号となる。
【0024】
現状、衝突事故や追突事故といった交通事故の多く(5~6割程度)が交差点付近で発生していることから、交通事故の発生確率が高い交差点付近の危険区間を単位として、各車両の運転挙動を計測し、運転リスクを評価するのが最も効果的であると考えられる。
【0025】
かかる考えのもと、本願発明者は、交差点などに設定されている「ノード」と「ノード」の間の道路区間、すなわち「リンク」を単位として、運転挙動を計測し、運転リスクを評価する方法を創出した。以下、リンク単位での運転挙動の計測方法、及び運転リスクの評価方法について説明する。
【0026】
<リンク単位での運転挙動の計測方法>
(1)速度超過の検出
図5は、制御部210によって実行される速度超過の検出フローを示すフローチャートである。
ステップS1において、制御部210は、まず、リンク内での車両の平均速度を求める。一例として、制御部210は、車載端末100から取得される運転状態情報に含まれる車両の現在位置情報や車速情報に基づいて、対象となるリンク内での車両の平均速度を求める。なお、対象となるリンクの距離がわかっている場合には、当該車両の現在位置情報からリンクの走行時間を求め、リンクの距離をリンクの走行時間で除することにより、リンク内での車両の平均速度を求めることができる。
【0027】
ステップS2において、制御部210は、リンク内での車両の平均速度Vaveが、記憶部230に記憶されている速度閾値(第1閾値)Vth1を超えている否かを判断する。速度閾値Vth1は、例えば道路の種類や車両ごとに設定されており、一般道(普通車)であれば60km/h、高速自動車国道(普通車)であれば、100km/hなどである。なお、以下では説明の便宜上、「高速自動車国道」を単に「国道」と呼ぶ。
【0028】
制御部210は、リンク内での車両の平均速度Vaveが、速度閾値vth1を超えていると判断すると(ステップS2:YES)、ステップS3に進む。一方、制御部210は、リンク内での車両の平均速度Vaveが、速度閾値Vth1を超えていないと判断すると(ステップS2:NO)、ステップS4に進む。
【0029】
ステップS3において、制御部210は、危険運転が行われたとして、第1カウンタC1のカウント値を「1」だけインクリメントし、ステップS4に進む。第1カウンタC1は、速度超過による危険運転の回数を計数するためのカウンタである。
【0030】
ステップS4において、制御部210は、平均速度を算出すべき次のリンクが存在するか否かを判断する。具体的には、制御部210は、車両の現在位置情報や車速情報から、車両が走行を継続しており、平均速度を算出すべき次のリンクが存在すると判断すると(ステップS4:YES)、ステップS1に戻り、上述した一連の処理を継続する。一方、制御部210は、車両の現在位置情報や速度情報から、車両が走行を停止し、平均速度を算出すべき次のリンクが存在しないと判断すると(ステップS4:NO)、処理を終了する。
【0031】
かかる構成によれば、“リンク内での車両の平均速度”に基づいて速度超過を検出する。よって、たとえリンク内で“瞬間的な速度超過”が生じたとしても、リンク内での車両の平均速度が速度閾値を超えない限り、速度超過と判断されることはない。これにより、車両を運転するユーザの納得感を高めることが可能となる。
【0032】
(2)急加速の検出
図6は、制御部210によって実行される急加速の検出フローを示すフローチャートである。
ステップSa1において、制御部210は、まず、リンク内での車両の前方向の最大加速度を求める。一例として、制御部210は、車載端末100から取得される運転状態情報に含まれる車両の加速度情報に基づいて、対象となるリンク内での車両の前方向の最大加速度(すなわち、最大前加速度)αfmaxを求める。
【0033】
ステップSa2において、制御部210は、リンク内での車両の最大前加速度αfmaxが、記憶部230に記憶されている前加速度閾値(第2閾値)αfth1を超えている否かを判断する。前加速度閾値αfth1は、例えば道路の種類や車両ごとに設定されており、一般道(普通車)であれば0.25G、国道(普通車)であれば、0.3Gなどである。
【0034】
制御部210は、リンク内での車両の最大前加速度αfmaxが、前加速度閾値αfth1を超えていると判断すると(ステップSa2:YES)、ステップSa3に進む。一方、制御部210は、リンク内での車両の最大前加速度αfmaxが、前加速度閾値αfth1を超えていないと判断すると(ステップSa2:NO)、ステップSa4に進む。
【0035】
ステップSa3において、制御部210は、危険運転が行われたとして、第2カウンタC2のカウント値を「1」だけインクリメントし、ステップSa4に進む。第2カウンタC2は、急加速による危険運転の回数を計数するためのカウンタである。
【0036】
ステップSa4において、制御部210は、最大前加速度αfmaxを算出すべき次のリンクが存在するか否かを判断する。具体的には、制御部210は、車両の現在位置情報や速度情報から、車両が走行を継続しており、最大前加速度αfmaxを算出すべき次のリンクが存在すると判断すると(ステップSa4:YES)、ステップSa1に戻り、上述した一連の処理を継続する。一方、制御部210は、車両の現在位置情報や速度情報から、車両が走行を停止し、最大前加速度αfmaxを算出すべき次のリンクが存在しないと判断すると(ステップSa4:NO)、処理を終了する。
【0037】
かかる構成によれば、“リンク内での車両の最大前加速度”に基づいて急加速を検出する。ここで、単純に、車両の前加速度が加速度基準値を超えた場合に、危険運転としてカウントすると、一連の危険運転行為により、1つのリンク内で複数の危険運転がカウントされることが予想され、ユーザの納得感に乏しい基準になってしまう。これに対し、本実施形態では、“リンク内での車両の最大前加速度”が前加速度閾値を超えた場合に、危険運転としてカウントすることで、ユーザの納得感を高めることが可能となる。
【0038】
(3)急減速の検出
図7は、制御部210によって実行される急減速の検出フローを示すフローチャートである。
ステップSb1において、制御部210は、まず、リンク内での車両の後方向の最大加速度を求める。一例として、制御部210は、車載端末100から取得される運転状態情報に含まれる車両の加速度情報に基づいて、対象となるリンク内での後方向の車両の最大加速度(すなわち、最大後加速度)αbmaxを求める。
【0039】
ステップSb2において、制御部210は、リンク内での車両の最大後加速度αbmaxが、記憶部230に記憶されている後加速度閾値(第3閾値)αbth1を超えているか否かを判断する。後加速度閾値αbth1は、例えば道路の種類や車両ごとに設定されており、一般道(普通車)であれば0.3G、国道(普通車)であれば、0.35Gなどである。
【0040】
制御部210は、リンク内での車両の最大後加速度αbmaxが、後加速度閾値αbth1を超えていると判断すると(ステップSb2:YES)、ステップSb3に進む。一方、制御部210は、リンク内での車両の最大後加速度αbmaxが、後加速度閾値αbth1を超えていないと判断すると(ステップSb2:NO)、ステップSb4に進む。
【0041】
ステップSb3において、制御部210は、危険運転が行われたとして、第3カウンタC3のカウント値を「1」だけインクリメントし、ステップSb4に進む。第3カウンタC3は、急減速による危険運転の回数を計数するためのカウンタである。
【0042】
ステップSb4において、制御部210は、最大後加速度αbmaxを算出すべき次のリンクが存在するか否かを判断する。具体的には、制御部210は、車両の現在位置情報や車速情報から、車両が走行を継続しており、最大後加速度αbmaxを算出すべき次のリンクが存在すると判断すると(ステップSb4:YES)、ステップSb1に戻り、上述した一連の処理を継続する。一方、制御部210は、車両の現在位置情報や速度情報から、車両が走行を停止し、最大後加速度αbmaxを算出すべき次のリンクが存在しないと判断すると(ステップSb4:NO)、処理を終了する。
【0043】
かかる構成によれば、“リンク内での車両の最大後加速度”に基づいて急減速を検出する。ここで、単純に、車両の後加速度が加速度基準値を超えた場合に、危険運転としてカウントすると、一連の危険運転行為により、1つのリンク内で複数の危険運転がカウントされることが予想され、ユーザの納得感に乏しい基準になってしまう。これに対し、本実施形態では、“リンク内での車両の最大後加速度”が後加速度閾値を超えた場合に、危険運転としてカウントすることで、ユーザの納得感を高めることが可能となる。
【0044】
(4)左急旋回の検出
図8は、制御部210によって実行される左急旋回の検出フローを示すフローチャートである。
ステップSc1において、制御部210は、まず、リンク内での車両の左方向の最大加速度を求める。一例として、制御部210は、車載端末100から取得される運転状態情報に含まれる車両の加速度情報に基づいて、対象となるリンク内での左方向の車両の最大加速度(すなわち、最大左加速度)αlmaxを求める。
【0045】
ステップSc2において、制御部210は、リンク内での車両の最大左加速度αlmaxが、記憶部230に記憶されている左加速度閾値(第4閾値)αlth1を超えているか否かを判断する。左加速度閾値αlth1は、例えば道路の種類や車両ごとに設定されており、一般道(普通車)であれば0.4G、国道(普通車)であれば、0.45Gなどである。
【0046】
制御部210は、リンク内での車両の最大左加速度αlmaxが、左加速度閾値αlth1を超えていると判断すると(ステップSc2:YES)、ステップSc3に進む。一方、制御部210は、リンク内での車両の最大左加速度αlmaxが、左加速度閾値αlth1を超えていないと判断すると(ステップSc2:NO)、ステップSc4に進む。
【0047】
ステップSc3において、制御部210は、危険運転が行われたとして、第4カウンタC4のカウント値を「1」だけインクリメントし、ステップSc4に進む。第4カウンタC4は、左急旋回による危険運転の回数を計数するためのカウンタである。
【0048】
ステップSc4において、制御部210は、最大左加速度αlmaxを算出すべき次のリンクが存在するか否かを判断する。具体的には、制御部210は、車両の現在位置情報や車速情報から、車両が走行を継続しており、最大左加速度αlmaxを算出すべき次のリンクが存在すると判断すると(ステップSc4:YES)、ステップSc1に戻り、上述した一連の処理を継続する。一方、制御部210は、車両の現在位置情報や速度情報から、車両が走行を停止し、最大左加速度αlmaxを算出すべき次のリンクが存在しないと判断すると(ステップSc4:NO)、処理を終了する。
【0049】
かかる構成によれば、“リンク内での車両の最大左加速度”に基づいて左急旋回(左急ハンドル)を検出する。ここで、単純に、車両の左加速度が加速度基準値を超えた場合に、危険運転としてカウントすると、一連の危険運転行為により、1つのリンク内で複数の危険運転がカウントされることが予想され、ユーザの納得感に乏しい基準になってしまう。これに対し、本実施形態では、“リンク内での車両の最大左加速度”が左加速度閾値を超えた場合に、危険運転としてカウントすることで、ユーザの納得感を高めることが可能となる。
【0050】
(5)右急旋回の検出
図9は、制御部210によって実行される右急旋回の検出フローを示すフローチャートである。
ステップSd1において、制御部210は、まず、リンク内での車両の右方向の最大加速度を求める。一例として、制御部210は、車載端末100から取得される運転状態情報に含まれる車両の加速度情報に基づいて、対象となるリンク内での右方向の車両の最大加速度(すなわち、最大右加速度)αrmaxを求める。
【0051】
ステップSd2において、制御部210は、リンク内での車両の最大右加速度αrmaxが、記憶部230に記憶されている右加速度閾値(第5閾値)αrth1を超えているか否かを判断する。右加速度閾値αrth1は、例えば道路の種類や車両ごとに設定されており、一般道(普通車)であれば0.5G、国道(普通車)であれば、0.55Gなどである。
【0052】
制御部210は、リンク内での車両の最大右加速度αrmaxが、右加速度閾値αrth1を超えていると判断すると(ステップSd2:YES)、ステップSd3に進む。一方、制御部210は、リンク内での車両の最大右加速度αrmaxが、右加速度閾値αrth1を超えていないと判断すると(ステップSd2:NO)、ステップSd4に進む。
【0053】
ステップSd3において、制御部210は、危険運転が行われたとして、第5カウンタC5のカウント値を「1」だけインクリメントし、ステップSd4に進む。第5カウンタC5は、右急旋回による危険運転の回数を計数するためのカウンタである。
【0054】
ステップSd4において、制御部210は、最大右加速度αrmaxを算出すべき次のリンクが存在するか否かを判断する。具体的には、制御部210は、車両の現在位置情報や車速情報から、車両が走行を継続しており、最大右加速度αrmaxを算出すべき次のリンクが存在すると判断すると(ステップSd4:YES)、ステップSd1に戻り、上述した一連の処理を継続する。一方、制御部210は、車両の現在位置情報や速度情報から、車両が走行を停止し、最大右加速度αrmaxを算出すべき次のリンクが存在しないと判断すると(ステップSd4:NO)、処理を終了する。
【0055】
かかる構成によれば、“リンク内での車両の最大右加速度”に基づいて右急旋回(右急ハンドル)を検出する。ここで、単純に、車両の右加速度が加速度基準値を超えた場合に、危険運転としてカウントすると、一連の危険運転行為により、1つのリンク内で複数の危険運転がカウントされることが予想され、ユーザの納得感に乏しい基準になってしまう。これに対し、本実施形態では、“リンク内での車両の最大右加速度”が右加速度閾値を超えた場合に、危険運転としてカウントすることで、ユーザの納得感を高めることが可能となる。
【0056】
なお、上記例では、速度閾値Vth1、前加速度閾値αfth1、後加速度閾値αbth1、左加速度閾値αlth1、右加速度閾値αrth1が固定的であることを想定したが、例えば情報センタ200の管理者が適宜変更できるようにしてもよい。
【0057】
(6)リンク単位での運転挙動の計測結果の例示
図10は、リンク単位での運転挙動の計測結果を例示する説明図である。
図10では、リンク番号と、道路種別と、リンク距離と、リンク走行時間と、平均速度と、速度超過による危険運転判定と、最大前加速度と、急加速による危険運転判定と、最大後加速度と、急減速による危険運転判定と、最大左加速度と、左急旋回による危険運転判定と、最大右加速度と、右急旋回による危険運転判定が示されている。リンク番号や道路種別、リンク距離などは、例えば電子地図情報IM1から取得することができる。その他の情報は、制御部210が運転状態情報などに基づいて求めることができる。
【0058】
ここで、一般道及び国道にそれぞれ設定される速度閾値Vth1、前加速度閾値αfth1、後加速度閾値αbth1は、以下の通りである。
一般道の速度閾値Vth1 ・・・ 60km/h
国道の速度閾値Vth1 ・・・ 80km/h
一般道の前加速度閾値αfth1 ・・・ 0.3G
国道の前加速度閾値αfth1 ・・・ 0.3G
一般道の後加速度閾値αbth1 ・・・ 0.3G
国道の後加速度閾値αbth1 ・・・ 0.3G
一般道の左加速度閾値αlth1 ・・・ 0.4G
国道の左加速度閾値αlth1 ・・・ 0.4G
一般道の右加速度閾値αrth1 ・・・ 0.4G
国道の右加速度閾値αrth1 ・・・ 0.4G
【0059】
一例として、リンク番号「10271028」で特定されるリンク内での運転挙動について説明すると、当該リンクは「一般道」であり、当該リンク内での平均速度「65km/h」は、一般道の速度閾値Vth1(=60km/h)を上回っていることから、制御部210は、「速度超過による危険運転」が行われたと判定する。
【0060】
さらに、制御部210は、当該リンク内での最大後加速度「0.35」は、一般道の後加速度閾値αbth1(=0.3G)を上回っていることから、「急減速による危険運転」が行われたと判定する。さらに、制御部210は、当該リンク内での最大右加速度「0.5」は、一般道の右加速度閾値αrth1(=0.4G)を上回っていることから、「右急旋回による危険運転」が行われたと判定する。このように、1つのリンク内で異なる種類の危険運転が行われた場合には、それぞれカウントされることになる。制御部(計測部)210は、リンク単位での運転挙動を順次計測すると、記憶部230に格納するとともに、かかる計測結果を利用してユーザの運転リスクの評価を行う。
【0061】
<運転リスクの評価方法>
図11は、
図10に示すリンク単位での運転挙動の計測結果を利用したときの運転リスクの評価方法を例示する説明図である。
図11に示すように、基準となる減点の大きさは、「道路種別」と「危険運転の種類(危険挙動種別)」によって決定される。例えば、危険挙動が「速度超過」であれば、1回当たりの減点の大きさ(以下、「基準減点数」ともいう。)は、一般道が0.15点、国道が0.1点である。同様に、危険挙動が「急加速」であれば、基準減点数は、一般道が0.2点、国道が0.25点、危険挙動が「急減速」であれば、基準減点数は、一般道が0.3点、国道が0.35点である。なお、危険挙動が「左急旋回」や「右急旋回」については、一般道及び国道ともに同じ基準減点数(=0.2点)が設定されているが、異なる値に設定されてもよい。
【0062】
制御部(評価部)210は、これら基準減点数に、100km走行換算時の危険挙動の回数と、リンク危険度係数をそれぞれ乗じることで、危険挙動ごとの減点数を求める。そして、制御部210は、ユーザの持ち点から、危険挙動ごとの減点数を減じることで、運転リスクを算出する。例えば、一般道の場合であれば、制御部210は、ユーザの持ち点(=100点)から、「速度超過」の減点数(=6点)、「急加速」の減点数(=0点)、「急減速」の減点数(=12点)、「左急旋回」の減点数(=0点)、「右急旋回」の減点数(=8点)をそれぞれ減ずることで、ユーザの運転リスク(=74点)を算出する。
【0063】
制御部210は、国道の場合も同様にユーザの運転リスク(=57点)を算出し、これらを運転リスクの評価結果として表示パネルなどに出力する。さらに、制御部(送信部)210は、通信部220を介してユーザの通信端末に運転リスクの評価結果を送信する。
【0064】
保険会社は、表示パネルなどに出力されるユーザの運転リスクの評価結果をもとに、当該ユーザの保険料の算定などを行う。一方、ユーザは自身の通信端末を確認することで、客観的な運転リスクを把握することができる。
【0065】
かかる構成によれば、リンク単位での運転挙動の計測結果を利用して運転リスクの評価を行うため、従来に比して運転リスクの正確な把握や、安全運転の促進効果を高めることが可能となる。
【0066】
なお、上記例では特に言及しなかったが、リンク危険度係数(重み)は、例えばリンクごとに設定したり、道路種別に応じて設定してもよい。もちろんリンク危険度係数は設定しなくてもよい。また、
図9に示す運転リスクの評価方法はあくまで一例にすぎず、いかなる方法で運転リスクを評価するかは任意である。
【0067】
また、上記例では、制御部210が運転リスクの評価結果をユーザの通信端末に送信する場合について説明したが、これに加えて(または代えて)、危険運転が検出されたリンクのリンク番号(識別情報)などを送信するようにしてもよい。
【0068】
B.変形例
以上、実施形態について詳述したが、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、上記実施形態以外にも種々の変形及び変更が可能である。
【0069】
上述した処理のフローに含まれる各処理ステップは、処理内容に矛盾を生じない範囲で、任意に順番を変更して又は並列に実行することができるとともに、各処理ステップ間に他のステップを追加してもよい。また、便宜上1ステップとして記載されているステップは、複数ステップに分けて実行することができる一方、便宜上複数ステップに分けて記載されているものは、1ステップとして把握することができる。
【0070】
また、上述した各処理は、コンピュータにより実行されるプログラムとして実装されてもよい。このプログラムは、コンピュータにインストールされたり、コンピュータに読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)に記憶されたりし、コンピュータの制御部(例えばプロセッサなど)により実行されることで、上記処理が実現されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…運転評価システム、100…車載端末、110…制御装置、120…ナビゲーション装置、130…センサ装置、131…車速センサ、132…重力センサ、140…通信装置、200…情報センタ、210…制御部、220…通信部、230…記憶部、C1,C2,C3,C4,C5…カウンタ、IM1…電子地図情報。