(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】廃熱利用吸収式冷凍機の熱交換媒体の制御装置、及び廃熱利用吸収式冷凍システム
(51)【国際特許分類】
F25B 15/00 20060101AFI20240612BHJP
F25B 15/06 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
F25B15/00 306Z
F25B15/00 301E
F25B15/06
(21)【出願番号】P 2020149588
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 佑亮
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-121332(JP,A)
【文献】特開平07-280383(JP,A)
【文献】特開2017-036856(JP,A)
【文献】特開平03-137461(JP,A)
【文献】特開2010-107156(JP,A)
【文献】特開昭59-225264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00
F25B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側と吸収式冷凍機の再生器との間で熱交換媒体が循環する循環路と、
前記循環路に設けられ、前記再生器を流れる前記熱交換媒体の流量と前記再生器をバイパスして前記エンジン側に還流する前記熱交換媒体の流量とを調整する第1の弁と、
前記エンジン側から送給された前記熱交換媒体の温度を測定する第1の測温部と、
前記循環路に設けられ、前記再生器から前記エンジン側に還流する前記熱交換媒体の温度を測定する第2の測温部と、
前記循環路における前記第1の弁と前記エンジンとの間に設けられ、前記再生器に向かう前記熱交換媒体の流量と前記再生器に向かわずに前記エンジン側に還流する前記熱交換媒体の流量とを調整する第2の弁と、
前記第1の測温部により測定された温度に応じて前記第1の弁を制御
し、前記第2の測温部により測定された温度に応じて前記第2の弁を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記吸収式冷凍機の起動後の所定時間、前記第1の測温部により測定された温度が第1の所定値未満である場合、前記エンジン側から送給された前記熱交換媒体の全量が前記再生器をバイパスして前記エンジン側に還流し、前記第1の測温部により測定された温度が前記第1の所定値以上である場合、前記エンジン側から送給された前記熱交換媒体の一部が前記再生器を流れ、前記エンジン側から送給された前記熱交換媒体の残部が前記再生器をバイパスして前記エンジン側に還流するように、前記第1の弁を制御
し、
前記制御部は、前記第2の測温部により測定された温度が前記第1の所定値よりも低い第2の所定値未満である場合に、前記熱交換媒体の全量が前記再生器に向かわずに前記エンジン側に還流するように、前記第2の弁を制御する廃熱利用吸収式冷凍機の熱交換媒体の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記吸収式冷凍機の起動から前記所定時間が経過した後、前記第1の測温部により測定された温度が前記第1の所定値以上である場合、前記エンジン側から送られた前記熱交換媒体の全量が前記再生器を流れるように、前記第1の弁を制御する請求項1に記載の廃熱利用吸収式冷凍機の熱交換媒体の制御装置。
【請求項3】
前記エンジンと前記第
2の弁との間に設けられたラジエータを備える請求項1
又は2に記載の廃熱利用吸収式冷凍機の熱交換媒体の制御装置。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか1項に記載の前記制御装置と、
前記熱交換媒体から受熱する前記再生器を備える前記廃熱利用吸収式冷凍機と
を備える廃熱利用吸収式冷凍システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱利用吸収式冷凍機の熱交換媒体の制御装置、及び廃熱利用吸収式冷凍システムに関する。
【背景技術】
【0002】
吸収式冷凍機として、熱媒体回路でボイラにより加熱された熱媒体により、再生器内の希溶液を加熱するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の吸収式冷凍機では、冷房運転開始時に冷房負荷の大きさに応じて熱媒体回路の制御弁の開度を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸収式冷凍機では、再生器の起動時における熱の消費量が、再生器の定常運転時における熱の消費量に比して格段に大きくなる。このため、エンジンの廃熱を利用して再生器内の希溶液を加熱する廃熱利用吸収式冷凍機では、再生器の起動時に、再生器からエンジン側に還流する熱交換媒体の温度が急激に低下する。この場合、再生器に送給する熱交換媒体の流量と再生器をバイパスしてエンジン側に還流する熱交換媒体の流量とを制御する制御弁が急に切り替えられ、熱交換媒体の全量が再生器をバイパスしてエンジン側に還流するようになり、再生器への入熱が無くなる。これにより、再生器においてハンチングが生じ、エンジンの廃熱を有効に利用できない状態になる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、エンジンの廃熱を有効に利用できる廃熱利用吸収式冷凍機の熱交換媒体の制御装置、及び廃熱利用吸収式冷凍システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る廃熱利用吸収式冷凍機の熱交換媒体の制御装置は、エンジン側と吸収式冷凍機の再生器との間で熱交換媒体が循環する循環路と、前記循環路に設けられ、前記再生器を流れる前記熱交換媒体の流量と前記再生器をバイパスして前記エンジン側に還流する前記熱交換媒体の流量とを調整する第1の弁と、前記エンジン側から送給された前記熱交換媒体の温度を測定する第1の測温部と、前記循環路に設けられ、前記再生器から前記エンジン側に還流する前記熱交換媒体の温度を測定する第2の測温部と、前記循環路における前記第1の弁と前記エンジンとの間に設けられ、前記再生器に向かう前記熱交換媒体の流量と前記再生器に向かわずに前記エンジン側に還流する前記熱交換媒体の流量とを調整する第2の弁と、前記第1の測温部により測定された温度に応じて前記第1の弁を制御し、前記第2の測温部により測定された温度に応じて前記第2の弁を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記吸収式冷凍機の起動後の所定時間、前記第1の測温部により測定された温度が第1の所定値未満である場合、前記エンジン側から送給された前記熱交換媒体の全量が前記再生器をバイパスして前記エンジン側に還流し、前記第1の測温部により測定された温度が前記第1の所定値以上である場合、前記エンジン側から送給された前記熱交換媒体の一部が前記再生器を流れ、前記エンジン側から送給された前記熱交換媒体の残部が前記再生器をバイパスして前記エンジン側に還流するように、前記第1の弁を制御し、前記制御部は、前記第2の測温部により測定された温度が前記第1の所定値よりも低い第2の所定値未満である場合に、前記熱交換媒体の全量が前記再生器に向かわずに前記エンジン側に還流するように、前記第2の弁を制御する。
【0007】
本発明に係る廃熱利用吸収式冷凍機の熱交換媒体の制御装置において、前記制御部は、前記吸収式冷凍機の起動から前記所定時間が経過した後、前記第1の測温部により測定された温度が前記第1の所定値以上である場合、前記エンジン側から送給された前記熱交換媒体の全量が前記再生器を流れるように、前記第1の弁を制御してもよい。
【0009】
本発明に係る廃熱利用吸収式冷凍機の熱交換媒体の制御装置において、前記エンジンと前記第2の弁との間に設けられたラジエータを備えてもよい。
【0010】
本発明に係る廃熱利用吸収式冷凍システムは、前記制御装置と、前記熱交換媒体から受熱する前記再生器を備える前記廃熱利用吸収式冷凍機とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸収式冷凍機の起動後の所定時間、エンジン側から送給された熱交換媒体の温度が第1の所定値未満である場合、エンジン側から送給された熱交換媒体の全量が再生器をバイパスしてエンジン側に還流し、エンジン側から送給された熱交換媒体の温度が第1の所定値以上である場合、エンジン側から送給された熱交換媒体の一部が再生器を流れ、エンジン側から送給された熱交換媒体の残部が再生器をバイパスしてエンジン側に還流する。これによって、吸収式冷凍機の起動後の所定時間、再生器を流れてエンジン側に還流する熱交換媒体と再生器をバイパスしてエンジン側に還流する熱交換媒体とが合流するので、エンジン側に還流する熱交換媒体の急激な温度低下を防止できる。従って、エンジン側に還流する熱交換媒体の急激な温度低下に起因する再生器のハンチングを抑制でき、エンジンの廃熱を有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る廃熱利用吸収式冷凍システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、廃熱利用吸収式冷凍機の起動時における熱交換媒体制御装置の処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る廃熱利用吸収式冷凍システム1の概略構成を示す図である。この図に示すように、廃熱利用吸収式冷凍システム1は、エンジン11と再生器21との間でエンジン冷却水を循環させる熱交換媒体制御装置100と、再生器21内の後述の希溶液をエンジン11の廃熱を利用して加熱する吸収式冷凍機20とを備える。
【0015】
吸収式冷凍機20は、再生器21と、凝縮器22と、蒸発器23と、吸収器24とを備え、蒸発器23と室内機IUとの間で循環する冷媒を冷却する。また、吸収式冷凍機20は、室外機としての冷却塔CTと、冷媒循環路C1,C2,C3とを備える。
【0016】
冷媒循環路C1は、蒸発器23と室内機IUとの間で冷媒を循環させる。冷媒循環路C1で循環する冷媒は、例えば水である。冷媒循環路C2は、冷却塔CTと凝縮器22との間で冷媒を循環させる。冷媒循環路C2で循環する冷媒は、例えば水である。冷媒循環路C3は、冷却塔CTと吸収器24との間で冷媒を循環させる。冷媒循環路C3で循環する冷媒は、例えば水である。
【0017】
また、吸収式冷凍機20は、再生器21から凝縮器22へ冷媒蒸気(冷媒が蒸気化したもの)を送給する送給管25と、凝縮器22から蒸発器23へ冷媒液(冷媒蒸気が凝縮したもの)を送給する送給管26と、蒸発器23から吸収器24へ冷媒蒸気を送給する送給管27と、蒸発器23内で冷媒液を散布する散布器28とを備える。
【0018】
凝縮器22から蒸発器23へ冷媒液を送給する送給管26は、細管であり、冷媒液を絞って低圧にする。散布器28は、ポンプ28Aとノズル28Bとを備える。ポンプ28Aは、蒸発器23内の冷媒液をノズル28Bに送給する。ノズル28Bは、蒸発器23内に設けられており、冷媒液を蒸発器23内に散布する。吸収式冷凍機20で循環させる冷媒は、例えば水である。
【0019】
さらに、吸収式冷凍機20は、溶液循環路Sを備える。溶液循環路Sは、再生器21と吸収器24との間で溶液(吸収液)を循環させる。溶液循環路Sで循環させる溶液は、例えば臭化リチウム(LiBr)である。
【0020】
溶液循環路Sは、吸収器24から再生器21へ希溶液を送給する希溶液送給路S1と、再生器21から吸収器24へ濃溶液を送給する濃溶液送給路S2と、溶液熱交換器S3と、ポンプS4とを備える。濃溶液送給路S2は、吸収器24内で濃溶液を散布するノズルS5を備える。ポンプS4は、希溶液送給路S1を通して吸収器24から再生器21へ希溶液を送給する。また、溶液熱交換器S3は、希溶液送給路S1を流れる希溶液と濃溶液送給路S2を流れる濃溶液とを熱交換させる。希溶液は、濃溶液が冷媒蒸気を吸収して薄められた溶液である。
【0021】
蒸発器23内は真空状態であり、蒸発器23内では、水が5℃程度で蒸発する。このため、蒸発器23内でノズル28Bから散布された冷媒液が蒸発し、この際に発生する気化熱により、冷媒循環路C1で循環する冷媒が冷却される。他方で、冷媒蒸気は、送給管27により吸収器24に送給される。
【0022】
吸収器24内では、蒸発器23から送給された冷媒蒸気が、ノズルS5から散布された濃溶液に吸収される。この吸収作用時に発生する熱は、冷媒循環路C3で循環する冷媒により除去される。吸収器24内において濃溶液が冷媒蒸気を吸収して薄められることで希溶液となり、この希溶液が、ポンプS4によって加圧されて再生器21へ送給される。その際、希溶液は、溶液熱交換器S3において再生器21からの高温の濃溶液と熱交換して、昇温した状態で再生器21に流入する。再生器21に流入する希溶液の温度が再生器21内の濃溶液の温度と近くなるほど吸収式冷凍機20の効率は向上する。
【0023】
再生器21内では、希溶液が、エンジン11の廃熱を伝送する熱媒としてのエンジン冷却水によって加熱される。加熱された希溶液から冷媒蒸気が発生し、他方で、加熱された希溶液から冷媒が蒸気の状態で分離することにより濃溶液が発生する。再生器21で発生した冷媒蒸気は、送給管25により凝縮器22へ送給される。他方で、再生器21で発生した濃溶液は、溶液熱交換器S3において吸収器24から再生器21へ送給される希溶液を温め、吸収器24内でノズルS5から散布される。
【0024】
再生器21から凝縮器22へ送給された冷媒蒸気は、冷媒循環路C2で循環する冷媒により冷却されることにより凝縮され、冷媒液になる。この冷媒液は、細管である送給管26により絞られてから膨張し低圧となって蒸発器23に流入する。
【0025】
熱交換媒体制御装置100は、エンジン冷却水をエンジン11と再生器21との間で循環させる循環路101と、エンジン冷却水を再生器21をバイパスしてエンジン11側に還流させる第1のバイパス路102と、エンジン冷却水を再生器21及び第1のバイパス路102をバイパスしてエンジン11側に還流させる第2のバイパス路103とを備える。循環路101は、エンジン冷却水をエンジン11から再生器21へ送給する送給路101Aと、エンジン冷却水を再生器21からエンジン11へ還流させる還流路101Bとを備える。
【0026】
送給路101Aには、給湯器等の複数の負荷Lが設けられており、エンジン11の廃熱は、再生器21のみならず複数の負荷Lにおいても消費される。また、還流路101Bには、ラジエータ12が設けられている。ラジエータ12は、エンジン11に還流するエンジン冷却水を目標温度まで冷却する。ここで、エンジン11の廃熱は、複数の負荷Lと再生器21とにおいて消費されるが、複数の負荷Lと再生器21とにおける熱の消費量が少ない場合には、上記目標温度よりも高温のエンジン冷却水がラジエータ12に還流する。ラジエータ12は、この上記目標温度よりも高温のエンジン冷却水を目標温度まで冷却する。
【0027】
熱交換媒体制御装置100は、第1の三方弁104と、第2の三方弁105と、第1の温度センサ106と、第2の温度センサ107と、第3の温度センサ108と、第1の制御装置109と、第2の制御装置110とを備える。第1の三方弁104は、第1のバイパス路102と還流路101Bとの接続部に設けられ、再生器21側に送給されるエンジン冷却水の流量と第1のバイパス路102を通ってエンジン11側に還流するエンジン冷却水の流量とを調整する。第2の三方弁105は、第2のバイパス路103と還流路101Bとの接続部に設けられ、再生器21側に送給されるエンジン冷却水の流量と第2のバイパス路103を通ってエンジン11側に還流するエンジン冷却水の流量とを調整する。
【0028】
第1の温度センサ106は、負荷Lと第2のバイパス103との間におけるエンジン冷却水の温度T1を測定して第1の制御装置109に送信する。第2の温度センサ107は、第2の三方弁105とラジエータ12との間におけるエンジン冷却水の温度T2を測定して第2の制御装置110に送信する。第3の温度センサ108は、蒸発器23から室内機IUに送給される冷媒の温度T3を測定して第1の制御装置109に送信する。
【0029】
第2の制御装置110は、ラジエータ12に還流するエンジン冷却水の温度T2が所定値t2となるように、第2の温度センサ107から受信するエンジン冷却水の温度T2に応じて第2の三方弁105の開度を比例制御することにより、再生器21へ送給されるエンジン冷却水の流量を調整する。
【0030】
第2の制御装置110は、ラジエータ12に還流するエンジン冷却水の温度T2が所定値t2以上の場合には、第2の三方弁105の再生器21側への流れに対する最大開度を100%にする。以下、第2の三方弁105の再生器21側への流れに対する最大開度が100%となった状態を完全運転状態という。
【0031】
他方で、第2の制御装置110は、ラジエータ12に還流するエンジン冷却水の温度T2が所定値t2未満の場合には、第2の三方弁105の再生器21側への流れに対する最大開度を0%にする。以下、第2の三方弁105の再生器21側への流れに対する最大開度が0%となった状態を完全バイパス状態という。この完全バイパス状態では、エンジン冷却水の全流量が再生器21をバイパスしてエンジン11側に還流する。
【0032】
第1の制御装置109は、蒸発器23から室内機IUに送給される冷媒の温度T3が目標温度となるように第3の温度センサ108から受信する冷媒の温度T3に応じて第1の三方弁104の開度を比例制御することにより、再生器21に送給されるエンジン冷却水の流量を調整する。即ち、吸収式冷凍機20の冷凍能力は、再生器21への入熱量によって決まることから、第1の制御装置109は、再生器21に送給されるエンジン冷却水の流量を調整することにより、吸収式冷凍機20の冷凍能力を調整する。
【0033】
また、第1の制御装置109は、第1の温度センサ106から受信するエンジン冷却水の温度T1に応じて第1の三方弁104の開度を制御する。第1の制御装置109は、吸収式冷凍機20の起動後の所定時間Aの間、負荷Lを経由して再生器21へ向かって流れるエンジン冷却水の温度T1が所定値t1未満の場合には、第1の三方弁104の再生器21側への流れに対する最大開度を0%にする。以下、第1の三方弁104の再生器21側への流れに対する最大開度が0%となった状態を完全バイパス状態という。この完全バイパス状態では、エンジン冷却水の全流量が再生器21をバイパスしてエンジン11側に還流する。
【0034】
他方で、第1の制御装置109は、吸収式冷凍機20の起動後の所定時間Aの間、負荷Lを経由して再生器21へ向かって流れるエンジン冷却水の温度T1が所定値t1以上の場合には、第1の三方弁104の再生器21側への流れに対する最大開度をB%(0<B<100)にする。以下、第1の三方弁104の再生器21側への流れに対する最大開度がB%となった状態を制限運転状態という。制限運転状態では、第1の三方弁104が比例制御され、エンジン冷却水の全流量のうちの一部が再生器21を流れてエンジン11側に還流し、エンジン冷却水の全流量のうちの残部が再生器21をバイパスしてエンジン11側に還流する。
【0035】
第1の制御装置109は、吸収式冷凍機20の起動後、第1の三方弁104を制限運転状態にした後に、吸収式冷凍機20の運転を開始する。また、第1の制御装置109は、吸収式冷凍機20の起動から所定時間Aが経過した後に、第1の三方弁104の再生器21側への流れに対する最大開度を100%にする。以下、第1の三方弁104の再生器21側への流れに対する最大開度が100%となった状態を完全運転状態という。
【0036】
ところで、吸収式冷凍機20の起動時には、再生器21内での濃溶液の温度が定常運転時に比して低いことから、再生器21でのエンジン冷却水の熱の消費量が定常運転時に比して大きくなる。このため、吸収式冷凍機20の起動時に、第1の三方弁104を上記の完全運転状態にした場合、再生器21を通過したエンジン冷却水の温度が急激に低下する。再生器21からラジエータ12に向かって流れるエンジン冷却水の温度T2が所定値t2より低い場合には、第2の制御装置110により第2の三方弁105が完全運転状態から完全バイパス状態に変更される。このため、エンジン廃熱を伝送するエンジン冷却水による再生器21への入熱がなくなり、再生器21にハンチングが生じ、エンジン11の廃熱を有効に利用できない状態になる。なお、再生器21からラジエータ12に向かって流れるエンジン冷却水の温度T2が所定値t2より低いにもかかわらず、エンジン冷却水の全流量を再生器21に送給する場合には、急激に温度が低下したエンジン冷却水によりラジエータ12を冷やす結果となる。
【0037】
そこで、本実施形態に係る熱交換媒体制御装置100では、吸収式冷凍機20の起動後の所定時間Aの間、第1の温度センサ106により測定された温度T1が所定値t1未満である場合、第1の三方弁104を完全バイパス状態とし、第1の温度センサ106により測定された温度T1が所定値t1以上である場合、第1の三方弁104を制限運転状態にする。以下、熱交換媒体制御装置100の処理について
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0038】
図2は、吸収式冷凍機20の起動時における熱交換媒体制御装置100の処理について説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示す熱交換媒体制御装置100の処理は、吸収式冷凍機20の電源スイッチがONになると開始される。なお、熱交換媒体制御装置100の処理が開始される際、第1の三方弁104は、完全バイパス状態に設定され、第2の三方弁105は、完全運転状態に設定されている。また、本実施形態では、ラジエータ12に還流するエンジン冷却水の目標温度としての所定値t2は、83℃に設定されている。
【0039】
まず、ステップ1において、第1の制御装置109は、第1の温度センサ106により測定された温度T1が所定値t1以上であるか否かを判定する。本実施形態では、所定値t1は、88℃に設定されており、上記の所定値t2との差は+5℃である。ここで、所定値T1は、吸収式冷凍機20の定常運転時にラジエータ12に還流するエンジン冷却水の温度を所定値t2以上に維持するのに十分な温度値に設定されている。本ステップにおいて肯定判定がされた場合にはステップ2に移行し、本ステップにおいて否定判定がされた場合にはステップ1が繰り返される。
【0040】
ステップ2において、第1の制御装置109は、第1の三方弁104を完全バイパス状態から制限運転状態に変更する。本実施形態では、第1の三方弁104の最大開度B%は50%に設定されており、再生器21に送給されるエンジン冷却水の流量は最大で全流量の50%である。
【0041】
次に、ステップ3において、第1の制御装置109は、吸収式冷凍機20の運転を開始する。次に、ステップ4において、第1の制御装置109は、ステップ3において吸収式冷凍機20が起動されてから所定時間Aが経過したか否かを判定する。本実施形態では、所定時間Aは、30分に設定されている。本ステップにおいて肯定判定がされた場合にはステップ5に移行し、本ステップにおいて否定判定がされた場合には本ステップが繰り返される。
【0042】
ステップ5において、第1の制御装置109は、第1の三方弁104の最大開度を100%に変更する。これにより、再生器21に送給されるエンジン冷却水の流量は最大で全流量の100%となる。以上で、吸収式冷凍機20の起動時における熱交換媒体制御装置100の処理が終了する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る熱交換媒体制御装置100では、吸収式冷凍機20の起動後の所定時間Aの間、エンジン11から送給され負荷Lを経由して吸収式冷凍機20の再生器21へ向かうエンジン冷却水の温度T1が所定値t1未満である場合、エンジン11側から吸収式冷凍機20側に送給されたエンジン冷却水の全流量が再生器21をバイパスしてエンジン11に還流する。ここで、吸収式冷凍機20の起動時に低温のエンジン冷却水を再生器21に送給した場合、吸収式冷凍機20の起動時には再生器21における熱の消費量が大きいことと相俟って、エンジン11側に還流するエンジン冷却水の温度低下が過大になるという問題が生じる。本実施形態に係る熱交換媒体制御装置100では、吸収式冷凍機20の起動時に低温のエンジン冷却水が再生器21に送給されることを防止できるので、当該問題が生じることを防止できる。
【0044】
また、本実施形態に係る熱交換媒体制御装置100では、吸収式冷凍機20の起動後の所定時間Aの間、エンジン11から送給され負荷Lを経由して吸収式冷凍機20の再生器21へ向かうエンジン冷却水の温度T1が所定値t1以上になった場合、エンジン11側から吸収式冷凍機20側に送給されたエンジン冷却水の全流量のうちの一部が再生器21を流れ、エンジン11側から吸収式冷凍機20側に送給されたエンジン冷却水の全流量のうちの残部が再生器21をバイパスしてエンジン11側に還流する。ここで、吸収式冷凍機20の起動時には再生器21における熱の消費量が大きいことにより、再生器21を通過したエンジン冷却水の温度低下は大きい。しかしながら、再生器21を通過したエンジン冷却水は、再生器21をバイパスした再生器21における温度低下の無いエンジン冷却水と合流する。これによって、第1の三方弁104を通過してラジエータ12に向かうエンジン冷却水の温度T2の低下が抑制される。従って、ラジエータ12に向かうエンジン冷却水の温度T2の所定値t2を下回る程の温度低下を抑制でき、第2の三方弁105が完全バイパス状態になって再生器21への入熱が途切れることを抑制できるので、吸収式冷凍機20の起動時の運転の安定化を実現できる。
【0045】
また、本実施形態に係る熱交換媒体制御装置100では、吸収式冷凍機20の起動から所定時間Aが経過した後、エンジン11側から吸収式冷凍機20側に送給されるエンジン冷却水の温度T1が所定値t1以上である場合、エンジン11側から送給されて再生器21を流れるエンジン冷却水の流量が最大で全流量の100%となる。これにより、再生器21における熱の消費量が過大でなくなった後は、エンジン冷却水によって伝送されるエンジン11の廃熱を全て再生器21に入熱させることで、エンジン11の廃熱を有効利用できる。
【0046】
また、本実施形態に係る熱交換媒体制御装置100では、再生器21からエンジン11側に還流するエンジン冷却水の温度T2が所定値t2(<t1)未満である場合、エンジン冷却水の全流量が再生器21に向かわずにエンジン11に還流する。これによって、エンジン11側に還流するエンジン冷却水の過大な温度低下を抑制でき、エンジン冷却水によるラジエータ12の冷却を抑制できる。
【0047】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0048】
例えば、上記実施形態では、エンジン11を冷却するエンジン冷却水を再生器21に送給したが、エンジン冷却水が循環する循環路と、再生器21を加熱する熱交換媒体が循環する循環路とを別々に設け、エンジン冷却水と熱交換媒体とを熱交換させる熱交換器を設けてもよい。即ち、再生器21を加熱する熱交換媒体は、エンジン冷却水に限定されるものではなく、エンジン11の廃熱をエンジン冷却水を介して受熱し再生器21へ伝送しエンジン11側に還流する熱交換媒体を含むものである。
【符号の説明】
【0049】
1 廃熱利用吸収式冷凍システム
11 エンジン
12 ラジエータ
20 吸収式冷凍機(廃熱利用吸収式冷凍機)
21 再生器
100 熱交換媒体制御装置(熱交換媒体の制御装置)
101 循環路
104 第1の三方弁(第1の弁)
105 第2の三方弁(第2の弁)
106 第1の温度センサ(第1の測温部)
107 第2の温度センサ(第2の測温部)
109 第1の制御装置(制御部)
110 第2の制御装置(制御部)
t1 所定値(第1の所定値)
t2 所定値(第2の所定値)
T1 温度
T2 温度
A 所定時間