(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20240612BHJP
B29C 64/129 20170101ALI20240612BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240612BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240612BHJP
B29K 7/00 20060101ALN20240612BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
A47C27/00 Z
B29C64/129
B29C44/00 Z
B60N2/90
B29K7:00
B29K105:04
(21)【出願番号】P 2020160201
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】篠原 寿充
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佳之
(72)【発明者】
【氏名】山口 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】家永 諭
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/235544(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/235547(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0071979(US,A1)
【文献】特表2019-534064(JP,A)
【文献】特開2019-115724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00
B29C 64/129
B29C 44/00
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、その全体にわたって、骨格部を備えており、
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
から構成されており、
前記骨格部は、それぞれ複数の前記骨部と複数の前記結合部とから環状に構成された、複数の環状部を有しており、
各前記環状部は、それぞれ、その内周側縁部によって、仮想面を区画しており、
1つ又は複数の前記仮想面は、それぞれ、その少なくとも一部が、1つ又は複数の部分連結膜によって覆われており、
前記1つ又は複数の部分連結膜は、それぞれ、前記環状部の周方向の一部のみと連結されて
おり、
前記多孔質構造体は、クッション材に用いられ、
前記多孔質構造体は、3Dプリンタによって造形されたものである、多孔質構造体。
【請求項2】
1つ又は複数の前記部分連結膜は、それぞれ、前記環状部のうち1つ又は複数の前記骨部のそれぞれの一部のみと連結されている、請求項1に記載の多孔質構造体。
【請求項3】
前記1つ又は複数の部分連結膜と連結された各前記骨部のうち、少なくとも一部の前記骨部は、それぞれ、前記部分連結膜と連結されていない部分が、前記部分連結膜と連結された部分よりも、断面積が小さい、請求項2に記載の多孔質構造体。
【請求項4】
1つ又は複数の前記部分連結膜は、それぞれ、前記環状部の周方向の複数部分と連結されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項5】
1つ又は複数の前記環状部は、前記環状部の各前記骨部に、それぞれ別々の前記部分連結膜が連結されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項6】
1つ又は複数の前記環状部は、前記環状部の各前記骨部にそれぞれ別々の前記部分連結膜が連結されているとともに、各前記部分連結膜における内周側端部によってオリフィスが区画されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項7】
3Dプリンタを用いて、請求項1~
6のいずれか一項に記載の多孔質構造体を製造する、多孔質構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クッション性のある多孔質構造体(例えば、ウレタンフォーム)は、例えば金型成形等において、化学反応により発泡させる工程を経て、製造されている。
一方、近年、3Dプリンタによってクッション性のある多孔質構造体を容易に製造することが可能な、多孔質構造体が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2019/235544号公報
【文献】WO2019/235547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1や特許文献2の技術においては、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度に関し、向上の余地があった。
【0005】
本発明は、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる、多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多孔質構造体は、
可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、その全体にわたって、骨格部を備えており、
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
から構成されており、
前記骨格部は、それぞれ複数の前記骨部と複数の前記結合部とから環状に構成された、複数の環状部を有しており、
各前記環状部は、それぞれ、その内周側縁部によって、仮想面を区画しており、
1つ又は複数の前記仮想面は、それぞれ、その少なくとも一部が、1つ又は複数の部分連結膜によって覆われており、
前記1つ又は複数の部分連結膜は、それぞれ、前記環状部の周方向の一部のみと連結されている。
本発明の多孔質構造体によれば、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【0007】
本発明の多孔質構造体において、
1つ又は複数の前記部分連結膜は、それぞれ、前記環状部のうち1つ又は複数の前記骨部のそれぞれの一部のみと連結されていてもよい。
【0008】
本発明の多孔質構造体において、
前記1つ又は複数の部分連結膜と連結された各前記骨部のうち、少なくとも一部の前記骨部は、それぞれ、前記部分連結膜と連結されていない部分が、前記部分連結膜と連結された部分よりも、断面積が小さくてもよい。
【0009】
本発明の多孔質構造体において、
1つ又は複数の前記部分連結膜は、それぞれ、前記環状部の周方向の複数部分と連結されていてもよい。
【0010】
本発明の多孔質構造体において、
1つ又は複数の前記環状部は、前記環状部の各前記骨部に、それぞれ別々の前記部分連結膜が連結されていてもよい。
【0011】
本発明の多孔質構造体において、
1つ又は複数の前記環状部は、前記環状部の各前記骨部にそれぞれ別々の前記部分連結膜が連結されているとともに、各前記部分連結膜における内周側端部によってオリフィスが区画されていてもよい。
【0012】
本発明の多孔質構造体において、
前記多孔質構造体は、クッション材に用いられると、好適である。
【0013】
本発明の多孔質構造体において、
前記多孔質構造体は、3Dプリンタによって造形されたものであると、好適である。
【0014】
本発明の多孔質構造体の製造方法は、
3Dプリンタを用いて、上記の多孔質構造体を製造する。
本発明の多孔質構造体の製造方法によれば、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる、多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る多孔質構造体の一部を示す、斜視図である。
【
図2】
図1の多孔質構造体を、
図1のA矢印の方向から観たときの様子を示す、A矢視図である。
【
図3】
図1の多孔質構造体のセル区画部を、部分連結膜の図示を省略した状態で示す、斜視図である。
【
図4】
図3に対応する図面であり、
図1の多孔質構造体のセル区画部を、部分連結膜を図示した状態で示す、斜視図である。
【
図5】
図4の環状部及び部分連結膜を示す、平面図である。
【
図6】
図5の環状部及び部分連結膜を、
図5のB-B線に沿う断面により示す、B-B断面図である。
【
図7】
図6の環状部及び部分連結膜を、多孔質構造体が圧縮変形又は復元変形しているときの状態で示す、断面図である。
【
図8】
図5に対応する図面であり、本発明の第2実施形態に係る多孔質構造体の環状部及び部分連結膜を示す、平面図である。
【
図9】
図5に対応する図面であり、本発明の第3実施形態に係る多孔質構造体の環状部及び部分連結膜を示す、平面図である。
【
図10】
図5に対応する図面であり、本発明の第4実施形態に係る多孔質構造体の環状部及び部分連結膜を示す、平面図である。
【
図11】
図5に対応する図面であり、本発明の第5実施形態に係る多孔質構造体の環状部及び部分連結膜を示す、平面図である。
【
図12】
図5に対応する図面であり、本発明の第6実施形態に係る多孔質構造体の環状部及び部分連結膜を示す、平面図である。
【
図13】
図5に対応する図面であり、本発明の第7実施形態に係る多孔質構造体の環状部及び部分連結膜を示す、平面図である。
【
図14】
図4に対応する図面であり、本発明の第8実施形態に係る多孔質構造体のセル区画部を示す、斜視図である。
【
図15】本発明の任意の実施形態に係る多孔質構造体を備えることができる車両用シートを、概略的に示す斜視図である。
【
図16】本発明の任意の実施形態に係る多孔質構造体を製造するために用いることができる、本発明の一実施形態に係る多孔質構造体の製造方法を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法は、クッション材に用いられると好適であり、例えば任意の乗り物用シート及び任意の乗り物用シートパッドに用いられると好適であり、特に、車両用シート及び車両用シートパッドに用いられると好適なものである。
【0018】
以下、本発明に係る多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0019】
〔多孔質構造体〕
まず、
図1~
図7を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る多孔質構造体1について、説明する。
なお、
図1~
図4では、多孔質構造体1の向きを理解しやすくするために、多孔質構造体1に固定されたXYZ直交座標系の向きを表示している。
【0020】
図1~
図2では、多孔質構造体1のうち、略直方体の外形状を有する一部分を、それぞれ別々の角度から観ている。
図1は、多孔質構造体1の当該部分を示す、斜視図である。
図2は、
図1の多孔質構造体1の当該部分をA矢印の方向(Y方向)から観た様子を示すA矢視図である。
【0021】
多孔質構造体1は、3Dプリンタによって造形されたものである。多孔質構造体1の製造方法については、後に
図16を参照しつつ詳述する。3Dプリンタを用いて多孔質構造体1を製造することにより、従来のように化学反応により発泡させる工程を経る場合に比べ、製造が簡単になり、かつ、所期したとおりの構成が得られる。また、今後の3Dプリンタの技術進歩により、将来的に、3Dプリンタによる製造を、より短時間かつ低コストで、実現できるようになることが期待できる。また、3Dプリンタを用いて多孔質構造体1を製造することにより、様々な要求特性に対応した多孔質構造体1の構成を、簡単かつ所期したとおりに実現できる。
【0022】
多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。
ここで、「可撓性のある樹脂」とは、外力が加わると変形することができる樹脂を指しており、例えば、エラストマー系の樹脂が好適であり、ポリウレタンがより好適である。ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムが挙げられる。多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されているので、ユーザからの外力の付加・解除に応じて、圧縮・復元変形が可能であるので、クッション性を有することができる。
なお、3Dプリンタによる製造のし易さの観点からは、多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂から構成されている場合のほうが、ゴムから構成されている場合よりも、好適である。
また、3Dプリンタによる製造のし易さの観点からは、多孔質構造体1は、その全体が、同じ組成の材料から構成されていると、好適である。ただし、多孔質構造体1は、部位によって異なる組成の材料から構成されてもよい。
なお、多孔質構造体1を3Dプリンタを用いて製造する場合は、多孔質構造体1を構成する材料として、光硬化性ポリウレタン(特に紫外線硬化性ポリウレタン)を原料とする樹脂を使用することができる。光硬化性ポリウレタン(特に紫外線硬化性ポリウレタン)としては、ウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレートを原料とする樹脂を使用することができる。このような樹脂としては、例えばUS4337130に記載されたものが挙げられる。
【0023】
上述したように、多孔質構造体1は、3Dプリンタによって造形されたものである。多孔質構造体1は、その全体が一体に構成されている。
多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。より具体的に、多孔質構造体1は、多孔質構造体1の骨格をなす骨格部2を備えている。骨格部2は、多数のセル孔Cを区画している。骨格部2は、多孔質構造体1のほぼ全体にわたって存在しており、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。後述するように、本実施形態において、多孔質構造体1は、骨格部2に加え、1つ又は複数の部分連結膜31を備えている。本実施形態において、多孔質構造体1のうち、骨格部2及び部分連結膜31以外の部分は、空隙であり、言い換えれば、多孔質構造体1は、骨格部2及び部分連結膜31のみからなる。
【0024】
図1~
図4に示すように、多孔質構造体1の骨格部2は、複数の骨部2Bと、複数の結合部2Jと、から構成されており、骨格部2の全体が一体に構成されている。本例において、各骨部2Bは、それぞれ柱状に構成されており、また、本例では、それぞれ直線状に延在している。各結合部2Jは、それぞれ、互いに異なる方向に延在する複数(例えば、4つ)の骨部2Bの延在方向の端部2Beどうしが互いに隣接する箇所で、これらの端部2Beどうしを結合している。
図1~
図4には、多孔質構造体1の一部分に、骨格部2の骨格線Oを1点鎖線により示している。骨格部2の骨格線Oは、各骨部2Bの骨格線Oと、各結合部2Jの骨格線Oと、からなる。骨部2Bの骨格線Oは、骨部2Bの中心軸線である。結合部2Jの骨格線Oは、当該結合部2Jに結合された各骨部2Bの中心軸線をそれぞれ当該結合部2J内へ滑らかに延長させて互いに連結させてなる、延長線部分である。骨部2Bの中心軸線は、骨部2Bの延在方向の各点における、骨部2Bの延在方向に垂直な断面において骨部2Bのなす形状の重心点どうしを、結んでなる線である。
骨部2Bの延在方向は、骨部2Bの骨格線O(骨格線Oのうち、骨部2Bに対応する部分。以下同じ。)の延在方向である。
多孔質構造体1は、そのほぼ全体にわたって骨格部2を備えているので、通気性を確保しつつ、外力の付加・解除に応じた圧縮・復元変形が可能であるので、クッション材としての特性が良好になる。また、多孔質構造体1の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち、一部又は全部の骨部2Bが、湾曲しながら延在してもよい。この場合、一部又は全部の骨部2Bが湾曲していることで、荷重の入力時において、骨部2Bひいては多孔質構造体1の急激な形状変化を防ぎ、局所的な座屈を抑制することができる。
【0025】
本例では、骨格部2を構成する各骨部2Bが、それぞれほぼ同じ形状及び長さを有している。ただし、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bの形状及び/又は長さは、それぞれ同じでなくてもよく、例えば、一部の骨部2Bの形状及び/又は長さが他の骨部2Bとは異なっていてもよい。この場合、骨格部2のうちの特定の部分の骨部2Bの形状及び/又は長さを他の部分とは異ならせることで、意図的に異なる機械特性を得ることができる。
【0026】
本例において、各骨部2Bの幅W0(
図1)及び断面積は、骨部2Bの全長にわたって一定である(すなわち、骨部2Bの延在方向に沿って均一である)。
ここで、骨部2Bの断面積は、骨部2Bの骨格線Oに垂直な断面の断面積を指す。また、骨部2Bの幅W0(
図1)は、骨部2Bの骨格線Oに垂直な断面に沿って測ったときの、当該断面における最大幅を指す。
ただし、本明細書で説明する各例において、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bは、それぞれ、骨部2Bの幅W0及び/又は断面積が、骨部2Bの延在方向に沿って不均一でもよい。例えば、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bは、それぞれ、骨部2Bの延在方向の両側の端部2Beを含む部分において、骨部2Bの幅W0が、骨部2Bの延在方向の両端に向かうにつれて徐々に増大又は減少していてもよい。また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bは、それぞれ、骨部2Bの延在方向の両側の端部2Beを含む部分において、骨部2Bの断面積が、骨部2Bの延在方向の両端に向かうにつれて徐々に増大又は減少していてもよい。また、本明細書において、「徐々に変化(増大又は減少)」とは、途中で一定となることなく常に滑らかに変化(増大又は減少)することを指す。
【0027】
本明細書で説明する各例において、骨格部2の構造の簡単化、ひいては、3Dプリンタによる多孔質構造体1の製造のし易さの観点からは、骨部2Bの幅W0(
図1)は、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。幅W0が0.05mm以上の場合、高性能な3Dプリンタの解像度で造形可能であり、0.10mm以上の場合、高性能な3Dプリンタだけでなく汎用の3Dプリンタの解像度でも造形可能である。
一方、骨格部2の外縁(外輪郭)形状の精度を向上させる観点や、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくする観点や、クッション材としての特性を良好にする観点からは、骨部2Bの幅W0は、2.0mm以下であると好適である。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0028】
本例において、骨格部2を構成する各骨部2Bは、それぞれ柱状であるとともに、それぞれの断面形状が、円形(真円形)である。
これにより、骨格部2の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。また、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームでの機械特性を再現しやすい。よって、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。また、このように骨部2Bを柱状に構成することにより、仮に骨部2Bを薄い膜状の部分に置き換えた場合に比べて、骨格部2の耐久性を向上できる。
なお、各骨部2Bの断面形状は、それぞれ、骨部2Bの中心軸線(骨格線O)に垂直な断面における形状である。
なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
例えば、本明細書で説明する各例において、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち全部又は一部の骨部2Bは、それぞれの断面形状が、多角形(正三角形、正三角形以外の三角形、四角形等)でもよいし、あるいは、真円形以外の円形(楕円形等)でもよく、その場合でも、本例と同様の効果が得られる。また、各骨部2Bは、それぞれの断面形状が、その延在方向に沿って均一でもよいし、あるいは、その延在方向に沿って非均一でもよい。また、各骨部2Bどうしで、断面形状が互いに異なっていてもよい。
【0029】
本明細書で説明する各例において、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合(VB×100/VS [%])は、3~10%であると、好適である。この構成により、骨格部2に外力が付加されたときに骨格部2に生じる反力、ひいては、骨格部2の硬さ(ひいては多孔質構造体1の硬さ)を、クッション材として、例えばシートパッド(特には車両用のシートパッド)として、良好なものにすることができる。
ここで、「骨格部2の見かけの体積VS」とは、骨格部2の外縁(外輪郭)によって囲まれた内部空間の全体(骨格部2の占める体積と、後述の部分連結膜31(
図4)や全部連結膜32(
図14)の占める体積と、空隙の占める体積との合計)の体積を指している。
骨格部2を構成する材料を同じとして考えたとき、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が高いほど、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)は硬くなる。また、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が低いほど、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)は柔らかくなる。
骨格部2に外力が付加されたときに骨格部2に生じる反力、ひいては、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)の硬さを、クッション材として、例えばシートパッド(特には車両用のシートパッド)として、良好なものにする観点からは、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が、4~8%であると、より好適である。
なお、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合を調整する方法としては、任意の方法を用いてよいが、例えば、骨格部2を構成する一部又は全部の骨部2Bの太さ(断面積)、及び/又は、骨格部2を構成する一部又は全部の結合部Jの大きさ(断面積)を、調整する方法が挙げられる。
【0030】
本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1の25%硬度は、60~500Nが好適であり、100~450Nがより好適である。ここで、多孔質構造体1の25%硬度(N)は、インストロン型圧縮試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境にて、多孔質構造体を25%圧縮するのに要する荷重(N)を測定して得られる測定値であるものとする。これにより、多孔質構造体1の硬さを、クッション材として、例えばシートパッド(特には車両用のシートパッド)として、良好なものとすることができる。
【0031】
図1~
図4に示すように、本例において、骨格部2は、セル孔Cを内部に区画するセル区画部21を複数(セル孔Cの数だけ)有している。
図3及び
図4は、1つのセル区画部21を単独で示している。
図3では、便宜のため、部分連結膜31の図示を省略しており、
図4では、部分連結膜31を図示している。本例の骨格部2は、多数のセル区画部21がX、Y、Zの各方向に連なった構造を有している。
図1~
図4に示すように、各セル区画部21は、それぞれ、複数(本例では、14つ)の環状部211を有している。各環状部211は、それぞれ、環状に構成されており、それぞれの環状の内周側縁部2111によって、略平坦な仮想面V1を区画している。仮想面V1は、環状部211の内周側縁部2111によって区画された、仮想平面(すなわち、仮想閉平面)である。セル区画部21を構成する複数の環状部211は、それぞれの内周側縁部2111によって区画する仮想面V1どうしが交差しないように互いに連結されている。なお、仮想面V1に関し、「略平坦」とは、厳密に平坦な場合に限らず、実質的に平坦であれば足りるものであり、例えば曲面状の場合も含む。
セル孔Cは、セル区画部21を構成する複数の環状部211と、これら複数の環状部211がそれぞれ区画する複数の仮想面V1とによって、区画されている。概略的に言えば、環状部211は、セル孔Cのなす立体形状の辺を区画する部分であり、仮想面V1は、セル孔Cのなす立体形状の構成面を区画する部分である。
各環状部211は、それぞれ、複数の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数の結合部2Jと、から構成されている。
互いに連結された一対の環状部211どうしの連結部分は、これら一対の環状部211に共有される、1つの骨部2Bと、その両側の一対の結合部2Jと、から構成されている。すなわち、各骨部2B及び各結合部2Jは、それぞれに隣接する複数の環状部211によって共有されている。
各仮想面V1は、それぞれ、仮想面V1の一方側の面(仮想面V1の表面)によって、ある1つのセル孔Cの一部を区画しているとともに、当該仮想面V1の他方側の面(仮想面V1の裏面)によって、別のセル孔Cの一部を区画している。言い換えれば、各仮想面V1は、それぞれ、その表裏両側の面によって別々のセル孔Cの一部を区画している。さらに言い換えれば、各仮想面V1は、当該仮想面V1に隣接する一対のセル孔C(すなわち、当該仮想面V1を間に挟んだ一対のセル孔C)によって共有されている。
また、各環状部211は、それぞれ、当該環状部211に隣接する一対のセル区画部21(すなわち、当該環状部211を間に挟んだ一対のセル区画部21)によって共有されている。言い換えれば、各環状部211は、それぞれ、互いに隣接する一対のセル区画部21のそれぞれの一部を構成している。
図1~
図2の例において、多孔質構造体1における一部の仮想面V1は、部分連結膜31(
図4)によって覆われておらず、開放されており、すなわち、開口を構成している。このため、当該仮想面V1を通じて、セル孔Cどうしが連通され、セル孔C間の通気が、可能にされている。これにより、骨格部2の通気性を向上できるとともに、外力の付加・解除に応じた骨格部2の圧縮・復元変形がし易くなる。
【0032】
図3に示すように、本例において、各セル区画部21の骨格線Oは、多面体の形状をなしており、それにより、各セル孔Cが、略多面体の形状をなしている。より具体的に、
図1~
図4の例において、各セル区画部21の骨格線Oは、ケルビン14面体(切頂8面体)の形状をなしており、それにより、各セル孔Cが、略ケルビン14面体(切頂8面体)の形状をなしている。ケルビン14面体(切頂8面体)は、6つの正4角形の構成面と8つの正6角形の構成面とから構成される、多面体である。骨格部2を構成するセル孔Cは、概略的に言えば、骨格部2の外縁(外輪郭)により囲まれた内部空間を空間充填するように(すなわち、各セル孔Cが無駄な隙間無く敷き詰められるように、さらに言い換えれば、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくするように)、規則性をもって配列されている。
本例のように、骨格部2の一部または全部(本例では、全部)のセル区画部21の骨格線Oの形状(ひいては、骨格部2の一部または全部(本例では、全部)のセル孔Cの形状)を多面体とすることにより、骨格部2を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になり、より多くのセル孔Cを骨格部2の内部に形成することができる。また、これにより、外力の付加・解除に応じた骨格部2(ひいては、多孔質構造体1)の圧縮・復元変形の挙動が、クッション材として、例えばシートパッド(特には車両用のシートパッド)として、より良好になる。
セル区画部21の骨格線Oのなす多面体形状(ひいては、セル孔Cのなす多面体形状)としては、本例に限らず、任意のものが可能である。例えば、セル区画部21の骨格線Oの形状(ひいては、セル孔Cのなす形状)を略4面体、略8面体又は略12面体とした場合も、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくする観点から好適である。また、骨格部2の一部または全部のセル区画部21の骨格線Oの形状(ひいては、骨格部2の一部または全部のセル孔Cのなす形状)は、略多面体以外の立体形状(例えば、球、楕円体、円柱等)でもよい。また、骨格部2は、セル区画部21として、骨格線Oの形状が同じである1種類のセル区画部21のみを有していてもよいし、あるいは、骨格線Oの形状が異なる複数種類のセル区画部21を有していてもよい。同様に、骨格部2は、セル孔Cとして、同じ形状からなる1種類のセル孔Cのみを有していてもよいし、あるいは、形状の異なる複数種類のセル孔Cを有していてもよい。なお、本例のように、セル区画部21の骨格線Oの形状(ひいては、セル孔Cの形状)を略ケルビン14面体(切頂8面体)とした場合は、他の形状に比べて、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等のクッション材の特性を、最も再現し易い。
【0033】
図1~
図4に示すように、本例において、セル区画部21を構成する複数(本例では、14つ)の環状部211は、それぞれ、1つ又は複数(本例では、6つ)の小環状部211Sと、1つ又は複数(本例では、8つ)の大環状部211Lと、を含んでいる。各小環状部211Sは、それぞれ、その環状の内周側縁部2111によって、略平坦な小仮想面V1Sを区画している。各大環状部211Lは、それぞれ、その環状の内周側縁部2111によって、略平坦かつ小仮想面V1Sよりも面積の大きな大仮想面V1Lを区画している。小仮想面V1S、大仮想面V1Lは、それぞれ、仮想平面(すなわち、仮想閉平面)である。なお、小仮想面V1S、大仮想面V1Lに関し、「略平坦」とは、厳密に平坦な場合に限らず、実質的に平坦であれば足りるものであり、例えば曲面状の場合も含む。
図3から判るように、本例において、大環状部211Lは、その骨格線Oが正6角形をなしており、それに伴い、大仮想面V1Lも、略正6角形をなしている。また、本例において、小環状部211Sは、その骨格線Oが正4角形をなしており、それに伴い、小仮想面V1Sも、略正4角形をなしている。このように、本例において、小仮想面V1Sと大仮想面V1Lとは、面積だけでなく、形状も異なる。
各大環状部211Lは、それぞれ、複数(本例では、6つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(本例では、6つ)の結合部2Jと、から構成されている。各小環状部211Sは、それぞれ、複数(本例では、4つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(本例では、4つ)の結合部2Jと、から構成されている。
そして、
図1~
図4の例において、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oは、それぞれ、ケルビン14面体(切頂8面体)をなしている。上述のように、ケルビン14面体(切頂8面体)は、6つの正4角形の構成面と8つの正6角形の構成面とから構成される、多面体である。これに伴い、各セル区画部21によって区画されるセル孔Cも、略ケルビン14面体をなしている。骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oは、空間充填するように互いに連なっている。すなわち、複数のセル区画部21の骨格線Oどうしの間には、隙間がない。
【0034】
このように、本例において、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oは、それぞれ多面体(本例では、ケルビン14面体)をなしており、それに伴い、セル孔Cが略多面体(本例では、略ケルビン14面体)をなしているため、多孔質構造体1を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になり、より多くのセル孔Cを多孔質構造体1の内部に形成することができる。また、これにより、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形の挙動が、クッション材として、例えばシートパッド(特には車両用のシートパッド)として、より良好になる。なお、セル孔C間の隙間(間隔)とは、セル孔Cを区画する骨格部2の肉部分(骨部2Bや結合部2J)に相当する。
また、本例において、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oは、空間充填するように互いに連なっているので、多孔質構造体1を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になる。よって、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
【0035】
セル区画部21の骨格線Oのなす多面体(ひいては、セル孔Cのなす略多面体)としては、各図の例に限らず、任意のものが可能である。
例えば、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oのなす多面体(ひいては、セル孔Cのなす略多面体)は、空間充填できる(隙間無く配置できる)ようなものであると好適である。これにより、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oを、空間充填するように互いに連ならせることができるので、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。この場合、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oがなす多面体(ひいては、セル孔Cのなす略多面体)は、本例のように1種類の多面体のみを含んでいてもよいし、あるいは、複数種類の多面体を含んでいてもよい。ここで、多面体に関し、「種類」とは、形状(構成面の数や形状)を指しており、具体的には、形状(構成面の数や形状)が異なる2つの多面体については2種類の多面体として扱うが、形状は同じであり寸法のみが異なる2つの多面体については同じ種類の多面体として扱うことを意味する。骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oのなす多面体が、空間充填できるとともに1種類の多面体のみを含む場合の当該多面体の例としては、ケルビン14面体の他に、正3角柱、正6角柱、立方体、直方体、菱形12面体等が挙げられる。なお、各図の例のように、セル区画部21の骨格線Oの形状をケルビン14面体(切頂8面体)とした場合は、他の形状に比べて、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等のクッション材の特性を、最も再現し易い。また、セル区画部21の骨格線Oの形状をケルビン14面体(切頂8面体)とした場合は、X-Y-Zそれぞれの方向に等しい機械特性を得ることができる。骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oのなす多面体が、空間充填できるとともに複数種類の多面体を含む場合の当該多面体の例としては、正4面体と正8面体との組み合わせ、正4面体と切頂4面体との組み合わせ、正8面体と切頂6面体との組み合わせ等が挙げられる。なお、これらは、2種類の多面体の組み合わせの例であるが、3種類以上の多面体の組み合わせも可能である。
また、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oのなす多面体(ひいては、セル孔Cのなす略多面体)は、例えば、任意の正多面体(全ての面が合同な正多角形で、全ての頂点において接する面の数が等しい凸多面体)、半正多面体(全ての面が正多角形で、全ての頂点形状が合同(頂点に集まる正多角形の種類と順序が同じ)な凸多面体のうち、正多面体以外)、角柱、角錐等が可能である。
また、骨格部2を構成する複数のセル区画部21のうちの一部又は全部のセル区画部21の骨格線Oは、多面体以外の立体形状(例えば、球、楕円体、円柱等)をなしていてもよい。ひいては、骨格部2を構成する複数のセル孔Cのうちの一部又は全部のセル孔Cは、略多面体以外の略立体形状(例えば、略球、略楕円体、略円柱等)をなしていてもよい。
【0036】
セル区画部21を構成する複数の環状部211が、大きさの異なる小環状部211Sと大環状部211Lとを含むことにより、骨格部2を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になる。また、本例のように、小環状部211Sと大環状部211Lとの形状が異なる場合、骨格部2を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をさらに小さくすることが可能になる。
ただし、セル区画部21を構成する複数の環状部211は、それぞれ、大きさ及び/又は形状が互いに同じでもよい。セル区画部21を構成する各環状部211の大きさ及び形状が同じである場合、X、Y、Zのそれぞれの方向に等しい機械特性を得ることができる。
【0037】
本例のように、セル区画部21を構成する各環状部211のうち、一部又は全部(本例では全部)の環状部211の骨格線O(ひいては、セル区画部21を構成する各仮想面V1のうち、一部又は全部(本例では全部)の仮想面V1)が、略多角形状をなすことにより、骨格部2を構成するセル孔Cどうしの間隔をより小さくすることが可能になる。また、外力の付加・解除に応じた骨格部2の圧縮・復元変形の挙動が、シートパッドとして、特には車両用のシートパッドとして、より良好になる。また、環状部211の形状(ひいては仮想面V1の形状)がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できる。なお、骨格部2を構成する各環状部211のうち、少なくとも1つの環状部211(ひいては、骨格部2を構成する各仮想面V1のうち、少なくとも1つの仮想面V1)が、この構成を満たしている場合は、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
なお、骨格部2を構成する各環状部211のうち、少なくとも1つの環状部211の骨格線O(ひいては、骨格部2を構成する各仮想面V1のうち、少なくとも1つの仮想面V1)が、本例のような略正6角形、略正4角形以外の任意の略多角形状、あるいは、略多角形状以外の平面形状(例えば、円(真円、楕円等))をなしてもよい。環状部211の骨格線Oの形状(ひいては仮想面V1の形状)が円(真円、楕円等)である場合は、環状部211の形状(ひいては仮想面V1の形状)がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できるとともに、より均質な機械特性が得られる。例えば、環状部211の骨格線Oの形状(ひいては仮想面V1の形状)が、荷重が掛かる方向に対して略垂直な方向に長い楕円(横長の楕円)である場合は、荷重が掛かる方向に略平行な方向に長い楕円(縦長の楕円)である場合に比べて、環状部211が、ひいては、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)が、荷重の入力に対して変形し易くなる(柔らかくなる)。
【0038】
本例において、骨格部2は、直径が5mm以上のセル孔Cを少なくとも1つ有すると、好適である。これにより、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造が実現し易くなる。骨格部2の各セル孔Cの直径が5mm未満であると、骨格部2の構造が複雑になりすぎる結果、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(CADデータ等)、あるいは、その3次元形状データに基づき生成される3D造形用データを、コンピュータ上で生成するのが難しくなるおそれがある。
なお、従来のクッション材を構成する多孔質構造体は、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、直径が5mm以上のセル孔Cを形成することは容易でなかった。
また、骨格部2が直径5mm以上のセル孔Cを有することにより、骨格部2の通気性や変形し易さを向上しやすくなる。
このような観点から、骨格部2を構成する全てのセル孔Cの直径が、それぞれ、5mm以上であると、好適である。
セル孔Cの直径が大きくなるほど、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造が実現し易くなり、また、通気性や変形し易さを向上しやすくなる。このような観点から、骨格部2は、少なくとも1つ(好適には全部)のセル孔Cの直径が、より好適には8mm以上、さらに好適には10mm以上であるとよい。
一方、骨格部2のセル孔Cが大きすぎると、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)の外縁(外輪郭)形状をきれいに(滑らかに)形成するのが難しくなり、クッション材(例えばシートパッド、特には車両用のシートパッド)の形状精度が低下し外観が悪化するおそれがある。また、クッション材(例えばシートパッド、特には車両用のシートパッド)としての特性も、十分に良好でなくなるおそれがある。よって、外観やクッション材(例えばシートパッド、特には車両用のシートパッド)としての特性を向上させる観点から、骨格部2の各セル孔Cの直径は、好適には30mm未満、より好適には25mm以下、さらに好適には20mm以下であるとよい。
なお、多孔質構造体1は、上記の直径の数値範囲を満たすセル孔Cを多く有するほど、上記の各効果が得られやすくなる。この観点からは、多孔質構造体1を構成する各セル孔Cの直径が、上記の少なくともいずれか1つの数値範囲を満たすと、好適である。同様に、多孔質構造体1を構成する各セル孔Cの直径の平均値が、上記の少なくともいずれか1つの数値範囲を満たすと、より好適である。
なお、セル孔Cの直径は、本例のようにセル孔Cが厳密な球形状とは異なる形状をなす場合、セル孔Cの外接球の直径を指す。
【0039】
骨格部2のセル孔Cが小さすぎると、骨格部2の構造が複雑になりすぎる結果、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(CADデータ等)、あるいは、その3次元形状データに基づき生成される3D造形用データを、コンピュータ上で生成するのが難しくなるおそれがあるため、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造がしにくくなる。3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造を容易にする観点から、骨格部2を構成する各セル孔Cのうち、最小の直径を有するセル孔Cの直径が、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。最小の直径を有するセル孔Cの直径が、0.05mm以上の場合、高性能な3Dプリンタの解像度で造形可能であり、0.10mm以上の場合、高性能な3Dプリンタだけでなく汎用の3Dプリンタの解像度でも造形可能である。
【0040】
上述のように、多孔質構造体1は、
図1、
図2、
図4に示すように、骨格部2に加えて、1つ又は複数の部分連結膜31を備えている。骨格部2を構成する各仮想面V1のうちの1つ又は複数の仮想面V1は、それぞれ、その少なくとも一部が、1つ又は複数の部分連結膜31によって覆われている。
図5に拡大して示すように、当該1つ又は複数の部分連結膜31は、それぞれ、環状部211の周方向の一部のみと連結されている。具体的に、各部分連結膜31は、それぞれ、環状部211の環状の内周側縁部2111の周方向の一部のみと連結されている。部分連結膜31は、骨格部2と一体に構成されている。
各部分連結膜31は、環状部211の内周側縁部2111によって区画された仮想面V1上を延在しており、それにより、当該環状部211によって区画された仮想面V1の少なくとも一部を覆っている。
図6は、
図5の環状部211及び部分連結膜31を、
図5のB-B線に沿う断面により示す、B-B断面図である。
図6は、環状部211及び部分連結膜31を、多孔質構造体1に外力が加わっていない自然状態にあるときの様子で示している。
図7は、
図6に対応する位置の断面図であり、環状部211及び部分連結膜31を、多孔質構造体1が圧縮変形又は復元変形しているときの状態で示している。
図6~
図7に例示するように、部分連結膜31は、環状部211の周方向の一部のみと連結されているので、多孔質構造体1に外力が加わって多孔質構造体1が圧縮変形又は復元変形する時(
図7)に、部分連結膜31のうち環状部211に連結されていない部分が、空気によって押されることで反り返り、空気が、このときに形成される部分連結膜31と環状部211との間の隙間を通る。このようにして、部分連結膜31が覆う仮想面V1を間に挟んだ2つのセル孔Cどうしの間の通気が、実現される。多孔質構造体1が圧縮変形又は復元変形する時における、部分連結膜31と環状部211との間の隙間での空気の出入りや、部分連結膜31及び環状部211の変形動作は、多孔質構造体1の動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))に影響を与える。部分連結膜31及び環状部211の構成を調整することにより、部分連結膜31と環状部211との間の隙間での空気の出入り動作や、部分連結膜31及び環状部211の変形動作を、調整することができ、ひいては、要求に応じて、より様々な動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))を実現可能である。よって、多孔質構造体1の動的特性の調整の自由度を向上できる。このことは、多孔質構造体1が、使用時に振動が入力される乗り物用シートパッド、特には車両用シートパッドに用いられる場合に、特に好適である。
なお、従来のクッション材を構成する多孔質構造体は、上述のとおり、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、各セルどうしを連通する連通孔における膜を、所期したとおりの位置、数、大きさ、形状で形成することは難しかった。本例のように、多孔質構造体1を3Dプリンタで製造する場合は、3Dプリンタに読み込まれる3D造形用データに、予め部分連結膜31の情報も含めることで、確実に、所期したとおりの位置、数、大きさ、形状で、部分連結膜31を形成することが可能である。
【0041】
以下では、
図1~
図7に示す本発明の第1実施形態に係る多孔質構造体1に加えて、
図8~
図14に示す本発明の第2~第8実施形態に係る多孔質構造体1についても説明する。
図8~
図14に示す第2~第8実施形態に係る多孔質構造体1も、第1実施形態に係る多孔質構造体1と同様に、多孔質構造体1が、骨格部2に加えて、1つ又は複数の部分連結膜31を備えており、骨格部2を構成する各仮想面V1のうちの1つ又は複数の仮想面V1は、それぞれ、その少なくとも一部が、1つ又は複数の部分連結膜31によって覆われており、当該1つ又は複数の部分連結膜31は、それぞれ、環状部211の周方向の一部のみと連結されているものとする。よって、第2~第8実施形態に係る多孔質構造体1も、第1実施形態に係る多孔質構造体1と同様の効果を奏する。
【0042】
本明細書で説明する各実施形態においては、骨格部2を構成する各仮想面V1のうちの1つ又は複数の仮想面V1は、それぞれ、
図5、
図9~
図11の各実施形態のように、1つの部分連結膜31のみによって覆われていてもよいし、あるいは、
図8、
図12~
図13の各実施形態のように、複数の部分連結膜31によって覆われていてもよい。仮想面V1が複数の部分連結膜31によって覆われる場合、これら複数の部分連結膜31どうしは、
図8、
図12~
図13の各実施形態のように、平面視において、互いに重複していないと、好適である。
仮想面V1を覆う部分連結膜31の数や大きさを調整することにより、部分連結膜31と環状部211との間の隙間での空気の出入り動作や、部分連結膜31の変形動作を、調整することができ、ひいては、動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))を調整することができる。
【0043】
本明細書で説明する各実施形態においては、1つ又は複数の部分連結膜は、それぞれ、
図5、
図8~
図9、
図11~
図13の各実施形態のように、環状部211の周方向の一部分のみと連結されていてもよいし、あるいは、
図10の実施形態のように、環状部211の周方向の複数部分(
図10の例では、2つの部分)と連結されていてもよい。
部分連結膜31と環状部211との連結部分の数や位置を調整することにより、部分連結膜31と環状部211との間の隙間での空気の出入り動作や、部分連結膜31及び環状部211の変形動作を調整することができ、ひいては、動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))を調整することができる。
【0044】
本明細書で説明する各実施形態においては、1つ又は複数の部分連結膜31は、それぞれ、
図5、
図8~
図9、
図11~
図13の各実施形態のように、環状部211のうち1つの骨部2Bのみと連結されていてもよいし、あるいは、
図10の実施形態のように、環状部211のうち複数の骨部2Bのみと連結されていてもよいし、あるいは、図示は省略するが、環状部211のうち1つ又は複数の骨部2Bと1つ又は複数の結合部2Jとに連結されていてもよい。
部分連結膜31と環状部211との連結部分の位置や長さを調整することにより、部分連結膜31及び環状部211の変形動作を調整することができ、ひいては、動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))を調整することができる。
【0045】
本明細書で説明する各実施形態において、1つ又は複数の部分連結膜31は、それぞれ、
図5、
図8~
図13の各実施形態のように、環状部211のうち1つ又は複数の骨部2Bのそれぞれの一部のみと連結されていてもよい。
図5、
図8~
図9、
図11~
図13の各実施形態では、部分連結膜31は、環状部211のうち1つの骨部2Bの一部のみと連結されている。
図10の実施形態では、部分連結膜31は、環状部211のうち2つの骨部2Bのそれぞれの一部のみと連結されている。これらの実施形態においては、部分連結膜31と連結された骨部2Bが、部分連結膜31と連結された部分である連結部2BCと、部分連結膜31と連結されていない部分である根元部3BRと、からなる。この場合、
図5、
図8~
図13の各実施形態のように、部分連結膜31と連結された骨部2Bが、骨部2Bの延在方向における連結部2BCの両側に、一対の根元部3BRを有していると、好適である。
ただし、本明細書で説明する各実施形態において、1つ又は複数の部分連結膜31は、それぞれ、環状部211のうち1つ又は複数の骨部2Bのそれぞれの全部と連結されていてもよい。この場合、部分連結膜31と連結された骨部2Bは、部分連結膜31と連結された部分である連結部2BCをのみからなり、部分連結膜31と連結されていない部分である根元部3BRを有しない。
これらの実施形態においては、多孔質構造体1が圧縮変形又は復元変形する時に、骨部2Bにおける根元部3BRが骨格線O(
図4)の周りで捩れてヒンジの機能を発揮することにより、部分連結膜31と連結部2BCとが一体となって骨格線O(
図4)の周りで回動する。骨部2Bにおける連結部2BCの長さ(ひいては、骨部2Bの全体長さに対する連結部2BCの長さの比)を調整することにより、部分連結膜31及び骨部2Bの変形動作を、調整することができ、ひいては、動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))を調整することができる。
例えば、
図5の実施形態と
図9の実施形態とでは、部分連結膜31の大きさや形状がほぼ同じであるものの、骨部2Bにおける連結部2BCの長さ(ひいては、骨部2Bの全体長さに対する連結部2BCの長さの比)が異なるため、動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))が異なり得る。
【0046】
図5、
図8~
図13の各実施形態のように、1つ又は複数の部分連結膜31が、それぞれ、環状部211のうち1つ又は複数の骨部2Bのそれぞれの一部のみと連結されている場合、当該1つ又は複数の部分連結膜31と連結された各骨部2Bのうち、少なくとも一部の骨部2Bは、それぞれ、部分連結膜31と連結されていない部分である根元部2BRが、
図5、
図8~
図10、
図12~
図13の各実施形態のように、部分連結膜31と連結された部分である連結部2BCと、断面積が同じでもよいし、あるいは、
図11の実施形態のように、連結部2BCよりも、断面積が小さくてもよいし、あるいは、図示は省略するが、連結部BCよりも、断面積が大きくてもよい。
骨部2Bにおける根元部2BRの断面積(ひいては、連結部2BCの断面積に対する根元部3BRの断面積の比)を調整することにより、根元部3BRの骨格線O周りでの捩れ易さ(ひいては、ヒンジ機能)を調整することができ、ひいては、部分連結膜31及び連結部2BCの骨格線O周りでの回動動作を調整することができ、ひいては、動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))を調整することができる。
同様の観点から、
図5、
図8~
図13の各実施形態のように、1つ又は複数の部分連結膜31が、それぞれ、環状部211のうち1つ又は複数の骨部2Bのそれぞれの一部のみと連結されている場合、当該1つ又は複数の部分連結膜31と連結された各骨部2Bのうち、少なくとも一部の骨部2Bは、それぞれ、部分連結膜31と連結されていない部分である根元部2BRが、
図5、
図8~
図10、
図12~
図13の各実施形態のように、部分連結膜31と連結されていない骨部2Bと、断面積が同じでもよいし、あるいは、
図11の実施形態のように、部分連結膜31と連結されていない骨部2Bよりも、断面積が小さくてもよいし、あるいは、図示は省略するが、部分連結膜31と連結されていない骨部2Bよりも、断面積が大きくてもよい。
なお、連結部2BC及び根元部2BRの断面積は、それぞれ、連結部2BC及び根元部2BRにおける、骨格線O(
図4)に垂直な断面の断面積を指す。
【0047】
本明細書で説明する各実施形態において、骨部2Bにおける連結部2BCの断面積は、
図5、
図8~
図13の各実施形態のように、部分連結膜31と連結されていない骨部2Bと、断面積が同じでもよいし、あるいは、図示は省略するが、部分連結膜31と連結されていない骨部2Bよりも、断面積が小さくてもよいし、あるいは、図示は省略するが、部分連結膜31と連結されていない骨部2Bよりも、断面積が大きくてもよい。
骨部2Bにおける連結部2BCの断面積は、動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))に影響を与えにくい傾向がある。
【0048】
本明細書で説明する各実施形態において、部分連結膜31の厚さT31(
図6)は、
図6の実施形態のように、当該部分連結膜31が連結された骨部2Bの連結部2BCの幅W0(
図6)よりも小さくてもよいし、あるいは、図示は省略するが、当該部分連結膜31が連結された骨部2Bの連結部2BCの幅W0と同じでもよいし、あるいは、図示は省略するが、当該部分連結膜31が連結された骨部2Bの連結部2BCの幅W0よりも大きくてもよい。
部分連結膜31の厚さT31(ひいては、連結部2BCの幅W0に対する部分連結膜31の厚さT31の比)を調整することにより、部分連結膜31の変形動作を調整することができ、ひいては、動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))を調整することができる。
同様の観点から、本明細書で説明する各実施形態において、部分連結膜31の厚さT31(
図6)は、部分連結膜31と連結されていない骨部2Bの幅W0(
図1)よりも小さくてもよいし、あるいは、図示は省略するが、部分連結膜31と連結されていない骨部2Bの連結部2BCの幅W0と同じでもよいし、あるいは、部分連結膜31と連結されていない骨部2Bの連結部2BCの幅W0よりも大きくてもよい。
【0049】
本明細書で説明する各実施形態において、1つ又は複数の環状部211は、
図12~
図13の各実施形態のように、環状部211の各骨部2Bに、それぞれ別々の部分連結膜31が連結されていてもよい。この場合、部分連結膜31どうしの間には、
図12~
図13に示すように隙間があってもよいし、あるいは、隙間が無くてもよい。
このような場合でも、上述のように、骨部2Bにおける連結部2BCの長さ、骨部2Bが根元部2BRを有する場合には根元部2BRの断面積、部分連結膜31の厚さT31、部分連結膜31どうしの間の隙間等を調整することで、部分連結膜31と環状部211との間の隙間や部分連結膜31どうしの間の隙間での空気の出入り動作や、部分連結膜31及び環状部211の変形動作を、調整することができ、ひいては、動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))を調整することができる。
この場合、1つ又は複数の環状部211は、
図13の実施形態のように、環状部211の各骨部2Bにそれぞれ別々の部分連結膜が連結されているとともに、各部分連結膜31における内周側端部によってオリフィス(穴)5が区画されていてもよい。オリフィス5の形状は、
図13の例のように円形でもよいし、あるいは、他の任意の形状でもよい。オリフィス5の大きさや形状を調整することで、オリフィス5を通る空気の空気抵抗や、部分連結膜31の変形動作を、調整することができ、ひいては、動的特性(具体的には振動減衰特性(特には粘性減衰特性))を調整することができる。
【0050】
本明細書で説明する各実施形態において、部分連結膜31の形状は、3角形、4角形、6角形等の多角形や、円形又は楕円形等、任意でよい。
図5、
図8~
図11の各例において、部分連結膜31の形状は、6角形(
図9の例では、略6角形)である。また、
図12~
図13の各例において、部分連結膜31の形状は、3角形である。
本明細書で説明する各実施形態において、部分連結膜31の形状は、
図5、
図8~
図11の各例のように、当該部分連結膜31と連結された環状部211の骨格線O(
図4)がなす形状(
図5、
図8~
図11の各例では、6角形)と略同じ形状であってもよいし、あるいは、
図12~
図13の各例のように、当該部分連結膜31と連結された環状部211の骨格線Oがなす形状(
図12~
図13の各例では、6角形)とは異なる形状であってもよい。
【0051】
本明細書で説明する各実施形態においては、多孔質構造体1が自然状態にあるときに、仮想面V1を覆う1つ又は複数の部分連結膜31は、
図5、
図8~
図13の各実施形態のように仮想面V1の一部のみを覆っていてもよいし、あるいは、仮想面V1の全体を覆っていてもよい。
【0052】
本明細書で説明する各実施形態においては、骨格部2を構成する各仮想面V1のうち任意の仮想面V1が、1つ又は複数の部分連結膜31で覆われていてよい。骨格部2を構成する各小仮想面V1Sのうちの少なくとも1つが、1つ又は複数の部分連結膜31で覆われていてもよい。かつ/又は、骨格部2を構成する各大仮想面V1Lのうちの少なくとも1つが、1つ又は複数の部分連結膜31で覆われていてもよい。
本明細書で説明する各実施形態においては、
図1~
図2の例のように、セル区画部21毎に部分連結膜31の数や位置や構成が異なっていてもよいし、あるいは、セル区画部21毎に部分連結膜31の数や位置や構成が同じでもよい。
例えば、多孔質構造体1が備える各セル区画部21のそれぞれにおける少なくとも1つの仮想面V1Lが1つ又は複数の部分連結膜31で覆われているようにすることもできる。
【0053】
多孔質構造体1は、上述した第1~第7実施形態(
図5、
図8~
図13)のうち任意の複数の実施形態の構成を、それぞれ異なる環状部211において、備えていてもよい。
【0054】
部分連結膜31は、骨格部2と同じ材料からなると、好適である。ただし、部分連結膜31は、骨格部2とは異なる材料から構成されてもよい。
【0055】
図5、
図8~
図13の各例において、部分連結膜31は、略平坦に構成されており、より具体的には、平坦に構成されている。なお、部分連結膜31に関し、「略平坦」とは、厳密に平坦な場合に限らず、実質的に平坦であれば足りるものであり、例えば曲面状の場合も含む。部分連結膜31が曲面状に構成される場合は、部分連結膜31がダイヤフラムのように機能することができる。
【0056】
本明細書で説明する各実施形態において、多孔質構造体1は、
図14に示すように、骨格部2及び部分連結膜31に加えて、1つ又は複数の全部連結膜32を備えてもよい。
全部連結膜32は、環状部211の環状の内周側縁部2111によって区画された仮想面V1上を延在しており、それにより、当該環状部211によって区画された仮想面V1を覆っている。全部連結膜32は、環状部211の周方向の全部と連結されている。具体的に、全部連結膜32は、環状部211の環状の内周側縁部2111の周方向の全部と連結されている。全部連結膜32は、骨格部2と一体に構成されている。全部連結膜32は、骨格部2と同じ材料からなると好適である。ただし、全部連結膜32は、骨格部2とは異なる材料から構成されてもよい。
図14の例において、全部連結膜32は、略平坦に構成されており、より具体的には、平坦に構成されている。なお、全部連結膜32に関し、「略平坦」とは、厳密に平坦な場合に限らず、実質的に平坦であれば足りるものであり、例えば曲面状の場合も含む。全部連結膜32が曲面状に構成される場合は、全部連結膜32がダイヤフラムのように機能することができる。
全部連結膜32は、骨部2Bの幅W0(
図1)よりも小さな厚さを有すると、好適である。
全部連結膜32によって、仮想面V1を間に挟んだ2つのセル孔Cどうしが、仮想面V1を通じた連通がなくなり、仮想面V1を介した通気ができなくなるため、ひいては、多孔質構造体1の全体としての通気性が低下する。多孔質構造体1を構成する各仮想面V1のうち、全部連結膜32で覆われたものの数を調整することにより、多孔質構造体1の全体としての通気性を調整でき、要求に応じて様々な通気性レベルを実現可能である。
骨格部2を構成する各小仮想面V1Sのうちの少なくとも1つが、全部連結膜32で覆われていてもよい。かつ/又は、骨格部2を構成する各大仮想面V1Lのうちの少なくとも1つが、全部連結膜32で覆われていてもよい。
セル区画部21毎に全部連結膜32の数や位置が異なっていてもよいし、あるいは、セル区画部21毎に全部連結膜32の数や位置が同じでもよい。
なお、多孔質構造体1は、全部連結膜32を備えていなくてもよい。
【0057】
〔多孔質構造体を備えたシートパッド〕
上述のように、本発明の各実施形態に係る多孔質構造体1は、シートパッド(特には車両用シートパッド)に用いられることができる。
以下、
図15を参照しつつ、本発明の任意の実施形態に係る多孔質構造体1を備え得るシートパッド302の一例について説明する。
図15は、本発明の様々な実施形態に係る多孔質構造体1から構成されることができるシートパッド302(車両用シートパッド)を備えた車両用シート300の一例を、概略的に示す斜視図である。
図15に破線で示すように、車両用シート300は、着座者が着座するためのクッションパッド310と、着座者の背中を支持するためのバックパッド320と、を備えている。クッションパッド310とバックパッド320とは、それぞれ、シートパッド302から構成されている。以下では、クッションパッド310又はバックパッド320を、単に「シートパッド302」と呼ぶことがある。クッションパッド310とバックパッド320とは、それぞれ、本明細書で説明する任意の実施形態の多孔質構造体1から構成されることができる。多孔質構造体1に固定されたXYZ直交座標系(
図1~
図4)は、シートパッド302に対し任意の向きに指向されてよい。車両用シート300は、クッションパッド310及びバックパッド320のそれぞれを構成するシートパッド302に加え、例えば、シートパッド302の表側(着座者側)を覆う表皮330と、クッションパッド310を下側から支持するフレーム(図示せず)と、バックパッド320の裏側に設置されるフレーム(図示せず)と、バックパッド320の上側に設置され、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト340と、を備えることができる。表皮330は、例えば、通気性のよい材料(布等)から構成される。
図15の例において、クッションパッド310とバックパッド320とは、互いに別体に構成されているが、互いに一体に構成されてもよい。
また、
図15の例において、ヘッドレスト340は、バックパッド320とは別体に構成されているが、ヘッドレスト340は、バックパッド320と一体に構成されてもよい。
本明細書では、
図15に表記するとおり、車両用シート300(ひいてはシートパッド302)に着座した着座者から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の各方向を、それぞれ単に「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」などという。
【0058】
クッションパッド310は、着座者の臀部及び大腿部を下側から支持するように構成されたメインパッド部311と、メインパッド部311の左右両側に位置し、メインパッド部311よりも上側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部312と、を有している。メインパッド部311は、着座者の大腿部を下側から支持するように構成された、腿下部311tと、腿下部311tに対し後側に位置し、着座者の尻部を下側から支持するように構成された尻下部311hと、からなる。
【0059】
バックパッド320は、着座者の背中を後側から支持するように構成されたメインパッド部321と、メインパッド部321の左右両側に位置し、メインパッド部321よりも前側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部322と、を有している。
【0060】
本明細書において、「シートパッド(302)の延在方向(LD)」とは、シートパッド302の左右方向及び厚さ方向(TD)に対して垂直な方向であり、クッションパッド310の場合は前後方向を指しており(
図15)、バックパッド320の場合はバックパッド320のメインパッド部321の下面から上面までにわたってメインパッド部321が延在する方向を指している(
図15)。
また、「シートパッド(302)の厚さ方向(TD)」とは、クッションパッド310の場合、上下方向を指しており(
図15)、バックパッド320の場合、バックパッド320のメインパッド部321の着座者側の面(表面)FSから裏面BSまでにわたってメインパッド部321が延在する方向である(
図15)。
また、シートパッド(302)の「着座者側の面(表面、FS)」は、クッションパッド310の場合は上面を指しており(
図15)、バックパッド320の場合は前面を指している(
図15)。シートパッド(302)の「裏面(BS)」は、シートパッド(302)の着座者側の面(FS)とは反対側の面であり、クッションパッド310の場合は下面を指しており(
図15)、バックパッド320の場合は後面を指している(
図15)。シートパッド(302)の「側面(SS)」は、シートパッド(302)の着座者側の面(FS)と裏面(BS)との間の面であり、クッションパッド310の場合は前面、後面、左面及び右面のうちいずれかを指しており(
図15)、バックパッド320の場合は下面、上面、左面及び右面のうちいずれかを指している(
図15)。
【0061】
なお、
図15に示す例では、多孔質構造体1は、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320のそれぞれの全体を構成している。
ただし、多孔質構造体1は、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320、又は、ヘッドレスト340のいずれか一つのみを構成してもよい。
また、多孔質構造体1は、シートパッド302のクッションパッド310の一部のみ、バックパッド320の一部のみ、かつ/又は、ヘッドレスト340の一部のみを、構成してもよい。これにより、多孔質構造体1の大きさを小さくすることができ、ひいては、比較的小型の3Dプリンタによっても製造することが可能になる。その場合、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320、ヘッドレスト340のうち、多孔質構造体1によって構成された部分以外の部分については、例えば金型成形又はスラブ成形等において化学反応により発泡させる工程を経て製造されることにより、上述したような従来の一般的な多孔質構造体(発泡体)で構成するとよい。例えば、図示は省略するが、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320、かつ/又は、ヘッドレスト340は、それぞれ、互いに別体に構成された複数のクッション部を備え、当該複数のクッション部のうち一部(1つ又は複数)のクッション部のみが、多孔質構造体1から構成され、他のクッション部が、例えば金型成形又はスラブ成形等において化学反応により発泡させる工程を経て製造された多孔質構造体(発泡体)からなってもよい。より具体的には、例えば、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320、かつ/又は、ヘッドレスト340は、それぞれ、1つ又は複数の多孔質構造体1からなる挿填体と、当該1つ又は複数の挿填体とは別体に構成され、当該1つ又は複数の挿填体を収容する凹部を有し、例えば金型成形又はスラブ成形等において化学反応により発泡させる工程を経て製造された多孔質構造体(発泡体)からなる、本体部と、を備えてもよい。
あるいは、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320、かつ/又は、ヘッドレスト340は、互いに別体に構成された複数のクッション部からなり、当該複数のクッション部のそれぞれが、多孔質構造体1から構成されてもよい。これによっても、多孔質構造体1の大きさを小さくすることができ、ひいては、比較的小型の3Dプリンタによっても製造することが可能になる。
多孔質構造体1は、クッションパッド310又はバックパッド320のメインパッド部311、321の少なくとも一部を構成していると、好適である。
【0062】
〔多孔質構造体の製造方法〕
つぎに、
図16を参照しつつ、本発明の多孔質構造体1の製造方法を例示説明する。以下に説明する方法は、多孔質構造体1を3Dプリンタを用いて製造する方法であり、本明細書で説明する任意の実施形態の多孔質構造体1を製造するために好適に用いることができる。
図16は、シートパッドを構成する多孔質構造体1を製造する様子を示している。
まず、事前に、コンピュータを用いて、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(例えば、3次元CADデータ)を作成する。
つぎに、コンピュータを用いて、上記3次元形状データを、3D造形用データ500に変換する。3D造形用データ500は、3Dプリンタ400の造形部420が造形を行う際に3Dプリンタ400の制御部410に読み込まれるものであり、制御部410が、造形部420に、多孔質構造体1を、造形させるように構成されている。3D造形用データ500は、例えば、多孔質構造体1の各層の2次元形状を表すスライスデータを含む。
つぎに、3Dプリンタ400によって多孔質構造体1の造形を行う。3Dプリンタ400は、例えば、光造形方式、粉末焼結積層方式、熱溶融積層方式(FDM方式)、インクジェット方式等、任意の造形方式を用いて造形を行ってよい。生産性の観点からは、光造形方式が好適である。
図16では、光造形方式によって造形を行う様子を示している。
3Dプリンタ400は、例えば、CPU等によって構成された制御部410と、制御部410による制御に従って造形を行う造形部420と、造形される造形物(すなわち、多孔質構造体1)を載せるための支持台430と、液体樹脂LR、支持台430及び造形物が収容される収容体440と、を備える。造形部420は、本例のように光造形方式を用いる場合、紫外線レーザ光LLを照射するように構成されたレーザ照射器421を有する。収容体440には、液体樹脂LRが充填されている。液体樹脂LRは、レーザ照射器421から照射される紫外線レーザ光LLが当たると、硬化し、可撓性のある樹脂となる。
このように構成された3Dプリンタ400は、まず、制御部410が、3D造形用データ500を読み込み、読み込んだ3D造形用データ500に含まれる3次元形状に基づいて、造形部420に紫外線レーザ光LLを照射するよう制御しながら、各層を順次造形していく。
3Dプリンタ400による造形が完了した後は、造形物を収容体440から取り出す。それにより、最終的に、造形物として、多孔質構造体1が得られる。
3Dプリンタを用いて多孔質構造体1を製造することにより、部分連結膜31を備えた多孔質構造体1を、1つの工程で、簡単かつ精度良く、所期したとおりに実現できる。
なお、多孔質構造体1を樹脂で構成する場合、3Dプリンタ400による造形が完了した後に、造形物としての多孔質構造体1を、オーブンの中で加熱してもよい。その場合、多孔質構造体1を構成する各層どうしの結合を強化し、それにより多孔質構造体1の異方性を低減できるので、多孔質構造体1のクッション性をさらに向上できる。
また、多孔質構造体1をゴムで構成する場合、3Dプリンタ400による造形が完了した後に、造形物としての多孔質構造体1を加硫してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法は、クッション材に用いられると好適であり、例えば任意の乗り物用シート及び任意の乗り物用シートパッドに用いられると好適であり、特に、車両用シート及び車両用シートパッドに用いられると好適なものである。
【符号の説明】
【0064】
1:多孔質構造体、
2:骨格部、 2B:骨部、 2Be:骨部の端部、 2BC:連結部、 3BR:根元部、 2J:結合部、 21:セル区画部、 211:環状部、 211L:大環状部、 211S:小環状部、 2111:環状部の内周側縁部、
31:部分連結膜、 32:全部連結膜、
5:オリフィス、
C:セル孔、 O:骨格線、 V1:仮想面、 V1L:大仮想面、 V1S:小仮想面、
300:車両用シート、
302:シートパッド、
310:クッションパッド、 311:メインパッド部(着座部)、 311t:腿下部、 311h:尻下部、 312:サイドパッド部、
320:バックパッド、 321:メインパッド部、 322:サイドパッド部、
330:表皮、
340:ヘッドレスト、
FS:着座者側の面(表面)、 SS:側面、 BS:裏面、 TD:厚さ方向、 LD:延在方向、
400:3Dプリンタ、 410:制御部、 420:造形部、 421:レーザ照射器、 430:支持台、 440:収容体、 LL:紫外線レーザ光、 LR:液体樹脂、 500:3D造形用データ