(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20240612BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F37/00 D
(21)【出願番号】P 2020162538
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】奥村 武史
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩司
(72)【発明者】
【氏名】筒井 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 健一
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 太一
(72)【発明者】
【氏名】名取 光夫
(72)【発明者】
【氏名】矢▲崎▼ 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】島田 昭二
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157917(JP,A)
【文献】特開2015-005628(JP,A)
【文献】特開2017-117908(JP,A)
【文献】特開2020-038979(JP,A)
【文献】特開2008-098625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を介して積層され、互いに巻回数の等しい第1、第2及び第3の平面スパイラルコイルが形成された複数の導体層と、
前記第1、第2及び第3の平面スパイラルコイルの一端にそれぞれ接続された第1、第2及び第3の端子電極と、
前記第1、第2及び第3の平面スパイラルコイルの他端にそれぞれ接続された第4、第5及び第6の端子電極と、を備え、
前記複数の導体層は、積層方向にこの順に配列された第1、第2、第3及び第4の導体層を含み、
前記第1及び第3の平面スパイラルコイルは、前記第1及び第3の導体層に形成され、
前記第2の平面スパイラルコイルは、前記第2及び第4の導体層に形成され、
前記第1の導体層に形成された前記第1及び第3の平面スパイラルコイルのパターン幅、並びに、前記第3の導体層に形成された前記第1及び第3の平面スパイラルコイルのパターン幅は、前記第2の導体層に形成された前記第2の平面スパイラルコイルのパターン幅
よりも広く、且つ、前記第4の導体層に形成された前記第2の平面スパイラルコイルのパターン幅より
も狭いことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第2の導体層に形成された前記第2の平面スパイラルコイルは、平面視で前記第3の導体層に形成された前記第1及び第3の平面スパイラルコイルと重なりを有していないことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第4の導体層に形成された前記第2の平面スパイラルコイルの厚さは、前記第2の導体層に形成された前記第2の平面スパイラルコイルの厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1の導体層に形成された前記第1及び第3の平面スパイラルコイルの厚さ、並びに、前記第3の導体層に形成された前記第1及び第3の平面スパイラルコイルの厚さは、前記第2の導体層に形成された前記第2の平面スパイラルコイルの厚さ、並びに、前記第4の導体層に形成された前記第2の平面スパイラルコイルの厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関し、特に、3つの平面スパイラルコイルが互いに磁気結合するコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なコモンモードフィルタは、2つの平面スパイラルコイルが互いに磁気結合するコイル部品であり、差動伝送線路に重畳するコモンモードノイズを除去するために広く使用されている。ところが、近年においては3ラインを1セットとする伝送線路が用いられることがあり、このような伝送線路に重畳するコモンモードノイズを除去するためのコイル部品として、3つの平面スパイラルコイルが互いに磁気結合するコイル部品が求められている。
【0003】
3つの平面スパイラルコイルが互いに磁気結合するコイル部品としては、特許文献1~3に記載されたコイル部品が知られている。特許文献1の
図2、特許文献2の
図3及び特許文献3の
図3には、2つの平面スパイラルコイルが形成された導体層と1つの平面スパイラルコイルが形成された導体層が交互に積層された構造を有するコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6586878号公報
【文献】特開2020-038979号公報
【文献】特許第6678292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載のコイル部品は、2層目の平面スパイラルコイルと3層目の平面スパイラルコイルの間に生じる浮遊容量によって高周波特性、特に、差動信号成分がコモンモードノイズ成分に変換されるモード変換特性(Scd21)が悪化するという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、3つの平面スパイラルコイルを備えたコイル部品において、浮遊容量に起因する高周波特性の悪化を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコイル部品は、絶縁層を介して積層され、互いに巻回数の等しい第1、第2及び第3の平面スパイラルコイルが形成された複数の導体層と、第1、第2及び第3の平面スパイラルコイルの一端にそれぞれ接続された第1、第2及び第3の端子電極と、第1、第2及び第3の平面スパイラルコイルの他端にそれぞれ接続された第4、第5及び第6の端子電極とを備え、複数の導体層は積層方向にこの順に配列された第1、第2、第3及び第4の導体層を含み、第1及び第3の平面スパイラルコイルは第1及び第3の導体層に形成され、第2の平面スパイラルコイルは第2及び第4の導体層に形成され、第2の導体層に形成された第2の平面スパイラルコイルのパターン幅は、第4の導体層に形成された第2の平面スパイラルコイルのパターン幅よりも狭く、或いは、第3の導体層に形成された第1及び第3の平面スパイラルコイルのパターン幅は、第1の導体層に形成された第1及び第3の平面スパイラルコイルのパターン幅よりも狭いことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第2の導体層に形成された第2の平面スパイラルコイルのパターン幅、或いは、第3の導体層に形成された第1及び第3の平面スパイラルコイルのパターン幅が選択的に縮小されていることから、第2の導体層と第3の導体層の間で生じる浮遊容量が低減される。これにより、3つの平面スパイラルコイルを備えた従来のコイル部品と比べてモード変換特性などの高周波特性を高めることが可能となる。
【0009】
本発明において、第2の導体層に形成された第2の平面スパイラルコイルは、平面視で第3の導体層に形成された第1及び第3の平面スパイラルコイルと重なりを有していなくても構わない。これによれば、第2の導体層と第3の導体層の間で生じる浮遊容量がより低減することから、高周波特性がよりいっそう高められる。
【0010】
本発明において、第4の導体層に形成された第2の平面スパイラルコイルの厚さは、第2の導体層に形成された第2の平面スパイラルコイルの厚さよりも厚くても構わない。これによれば、第2の平面スパイラルコイルの直流抵抗の上昇を抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、3つの平面スパイラルコイルを備えたコイル部品において、浮遊容量に起因する高周波特性の悪化を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品1の外観を示す略斜視図である。
【
図12】
図12は、コイル部品1が搭載される回路基板5のパターン形状を説明するための模式的な平面図である。
【
図13】
図13は、積層方向における平面スパイラルコイルC1a~C3a,C1b~C3bの部分断面図である。
【
図14】
図14は、実際のモード変換特性(Scd21)を示すグラフである。
【
図15】
図15は、第1の変形例による平面スパイラルコイルC1a~C3a,C1b~C3bの部分断面図である。
【
図16】
図16は、第2の変形例による平面スパイラルコイルC1a~C3a,C1b~C3bの部分断面図である。
【
図17】
図17は、第3の変形例による平面スパイラルコイルC1a~C3a,C1b~C3bの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品1の外観を示す略斜視図であって、実装状態に対して上下反転させた図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品1は、略直方体形状である表面実装型のコモンモードフィルタであり、基板2と、基板2の表面に設けられたコイル層3と、コイル層3を覆う樹脂層4と、コイル層3に接続された6つの端子電極51~56とを備えている。基板2はフェライトなどの磁性材料又は非磁性材料からなり、コイル層3を支持するとともに、コイル部品1の機械的強度を確保する役割を果たす。基板2が磁性材料からなる場合、基板2はコイル層3によって生じる磁界の磁路としても機能する。樹脂層4についても、磁性材料又は非磁性材料を用いることができる。樹脂層4が磁性材料、例えば、バインダー樹脂に金属磁性体などからなる磁性粉が分散された複合材料からなる場合、コイル層3によって生じる磁界の磁路として機能する。樹脂層4については省略することも可能である。端子電極51~56は、それぞれコイル部品1の角部又は縁部に配置されており、上面及び側面が露出するよう樹脂層4に埋め込まれている。
【0016】
端子電極51~53はx方向に延在する一方の長辺に沿って設けられ、端子電極54~56はx方向に延在する他方の長辺に沿って設けられている。特に限定されるものではないが、端子電極51,53,54,56はコイル部品1の角部に配置されている。このため、これら端子電極51,52,54,55については、コイル部品1の3つの側面(xy面、xz面、yz面)に露出している。これに対し、残りの端子電極52,55については、コイル部品1の2つの側面(xy面、xz面)に露出している。特に限定されるものではないが、端子電極51~56は厚膜めっき法によって形成され、その厚さはスパッタリング法やスクリーン印刷により形成される電極パターンよりも十分に厚い。
【0017】
【0018】
図2に示すように、コイル層3は、基板2側から樹脂層4側に向かって順に積層された絶縁層60,70,80,90,100を備えており、これら絶縁層60,70,80,90,100間に4つの導体層10,20,30,40が形成されている。絶縁層60,70,80,90,100は樹脂などの絶縁材料からなり、導体層10,20,30,40を互いに分離する役割を果たす。導体層10,20,30,40は、銅(Cu)などの良導体からなる。
【0019】
絶縁層60の表面には、導体層10が形成される。
図3に示すように、導体層10は、平面スパイラルコイルC1a,C3aと接続パターン11,13,17,19を備えている。平面スパイラルコイルC1a,C3aは、平面スパイラルコイルC1aが外周側、平面スパイラルコイルC3aが内周側となるよう、互いに沿って同心円状に3ターン巻回されており、その巻回方向は、いずれも平面視で外周端から内周端に向かって時計回り(右回り)である。平面スパイラルコイルC1aの外周端は接続パターン11に接続され、内周端は接続パターン17に接続されている。平面スパイラルコイルC3aの外周端は接続パターン13に接続され、内周端は接続パターン19に接続されている。
【0020】
導体層10は絶縁層70で覆われる。
図4に示すように、絶縁層70にはビア71,73,77,79が設けられている。ビア71,73,77,79はそれぞれ接続パターン11,13,17,19と重なる位置に設けられており、これにより接続パターン11,13,17,19はそれぞれビア71,73,77,79を介して絶縁層70から露出する。
【0021】
絶縁層70の表面には、導体層20が形成される。
図5に示すように、導体層20は、平面スパイラルコイルC2aと接続パターン21~23,27~29を備えている。平面スパイラルコイルC2aは、平面視で外周端から内周端に向かって時計回り(右回り)に3ターン巻回されている。平面スパイラルコイルC2aの外周端は接続パターン22に接続され、内周端は接続パターン28に接続されている。他の接続パターン21,23,27,29は面内において他のパターンに接続されておらず、それぞれ独立して設けられている。接続パターン21,23,27,29は、それぞれビア71,73,77,79と重なる位置に設けられており、これにより接続パターン21,23,27,29はそれぞれ接続パターン11,13,17,19に接続される。
【0022】
導体層20は絶縁層80で覆われる。
図6に示すように、絶縁層80にはビア81~83,87~89が設けられている。ビア81~83,87~89はそれぞれ接続パターン21~23,27~29と重なる位置に設けられており、これにより接続パターン21~23,27~29はそれぞれビア81~83,87~89を介して絶縁層80から露出する。
【0023】
絶縁層80の表面には、導体層30が形成される。
図7に示すように、導体層30は、平面スパイラルコイルC1b,C3bと接続パターン31~34,36~39を備えている。平面スパイラルコイルC1b,C3bは、平面スパイラルコイルC1bが外周側、平面スパイラルコイルC3bが内周側となるよう、互いに沿って同心円状に3ターン巻回されており、その巻回方向は、いずれも平面視で外周端から内周端に向かって反時計回り(左回り)である。平面スパイラルコイルC1bの外周端は接続パターン34に接続され、内周端は接続パターン37に接続されている。平面スパイラルコイルC3bの外周端は接続パターン36に接続され、内周端は接続パターン39に接続されている。他の接続パターン31~33,38は面内において他のパターンに接続されておらず、それぞれ独立して設けられている。接続パターン31~33,37~39は、それぞれビア81~83,87~89と重なる位置に設けられており、これにより接続パターン31~33,37~39はそれぞれ接続パターン21~23,27~29に接続される。その結果、平面スパイラルコイルC1bの内周端は、接続パターン37,27,17を介して平面スパイラルコイルC1aの内周端に接続される。同様に、平面スパイラルコイルC3bの内周端は、接続パターン39,29,19を介して平面スパイラルコイルC3aの内周端に接続される。
【0024】
導体層30は絶縁層90で覆われる。
図8に示すように、絶縁層90にはビア91~94,96,98が設けられている。ビア91~94,96,98はそれぞれ接続パターン31~34,36,38と重なる位置に設けられており、これにより接続パターン31~34,36,38はそれぞれビア91~94,96,98を介して絶縁層90から露出する。
【0025】
絶縁層90の表面には、導体層40が形成される。
図9に示すように、導体層40は、平面スパイラルコイルC2bと接続パターン41~46,48を備えている。平面スパイラルコイルC2bは、平面視で外周端から内周端に向かって反時計回り(左回り)に3ターン巻回されている。平面スパイラルコイルC2bの外周端は接続パターン45に接続され、内周端は接続パターン48に接続されている。他の接続パターン41~44,46は面内において他のパターンに接続されておらず、それぞれ独立して設けられている。接続パターン41~44,46,48は、それぞれビア91~94,96,98と重なる位置に設けられており、これにより接続パターン41~44,46,48はそれぞれ接続パターン31~34,36,38に接続される。その結果、平面スパイラルコイルC2bの内周端は、接続パターン48,38,28を介して平面スパイラルコイルC2aの内周端に接続される。
【0026】
導体層40は絶縁層100で覆われる。
図10に示すように、絶縁層100にはビア101~106が設けられている。ビア101~106はそれぞれ接続パターン41~46と重なる位置に設けられており、これにより接続パターン41~46はそれぞれビア101~106を介して絶縁層100から露出する。
【0027】
絶縁層100の表面には樹脂層4及び端子電極51~56が設けられる。端子電極51~56は、それぞれビア101~106と重なる位置に設けられており、これにより端子電極51~56はそれぞれ接続パターン41~46に接続される。
【0028】
図11は、本実施形態によるコイル部品1の等価回路図である。
【0029】
図11に示すように、端子電極51と端子電極54の間には平面スパイラルコイルC1a,C1bが直列に接続され、端子電極52と端子電極55の間には平面スパイラルコイルC2a,C2bが直列に接続され、端子電極53と端子電極56の間には平面スパイラルコイルC3a,C3bが直列に接続される。直列接続された平面スパイラルコイルC1a,C1bはインダクタL1を構成し、直列接続された平面スパイラルコイルC2a,C2bはインダクタL2を構成し、直列接続された平面スパイラルコイルC3a,C3bはインダクタL3を構成する。インダクタL1~L3のターン数はいずれも6ターンである。そして、本実施形態によるコイル部品1は、3つのインダクタL1~L3が互いに磁気結合する3ラインのコモンモードフィルタ回路を構成する。
【0030】
図12は、コイル部品1が搭載される回路基板5のパターン形状を説明するための模式的な平面図である。
【0031】
図12に示す回路基板5は、コイル部品1が搭載される搭載領域6を有している。搭載領域6には、それぞれ端子電極51~56に対応するランドパターンP1~P6が設けられており、コイル部品1が搭載領域6に搭載されると、半田を介して、端子電極51~56とランドパターンP1~P6がそれぞれ電気的に接続される。
【0032】
回路基板5には、それぞれランドパターンP1~P6に接続された信号配線D1~D6が設けられている。このうち、3ラインの信号配線D1~D3は1セットの配線群S1を構成し、3ラインの信号配線D4~D6も1セットの配線群S2を構成する。配線群S1は例えば入力側の配線群であり、配線群S2は例えば出力側の配線群である。各配線群S1,S2によって伝送される3信号は、2つの信号の電位差によってデータが表現される。例えば、配線群S1においては、信号配線D1のレベルと信号配線D2のレベルの大小関係、信号配線D1のレベルと信号配線D3のレベルの大小関係、並びに、信号配線D2のレベルと信号配線D3のレベルの大小関係によってデータが表現される。配線群S2においても同様である。したがって、この例では一度に3ビットのデータを伝送することができる。そして、このような配線群S1と配線群S2との間に本実施形態によるコイル部品1を挿入することにより、3信号に重畳したコモンモードノイズを除去することができる。
【0033】
図13は、積層方向における平面スパイラルコイルC1a~C3a,C1b~C3bの部分断面図である。
【0034】
図13に示すように、同一ターンを構成する平面スパイラルコイルC1a~C3aは、仮想線7を中心に対称に配置されている。仮想線7は、平面スパイラルコイルC1a,C3a(C1b,C3b)の同一ターン間における中心位置である。つまり、平面スパイラルコイルC1a,C3a(C1b,C3b)の同一ターン間におけるスペース幅をW0a(W0b)とした場合、平面スパイラルコイルC1a,C3a(C1b,C3b)のエッジからW0a/2(W0b/2)となる位置が仮想線7の位置である。そして、平面スパイラルコイルC2a,C2bの径方向における中心位置は、仮想線7と一致している。これにより、インダクタL1~L3が略均等に磁気結合する。
【0035】
また、平面スパイラルコイルC1a~C3a,C1b~C3bの径方向における幅はそれぞれW1a~W3a,W1b~W3bである。また、平面スパイラルコイルC1a,C3aの厚さはH13aであり、平面スパイラルコイルC2aの厚さはH2aであり、平面スパイラルコイルC1b,C3bの厚さはH13bであり、平面スパイラルコイルC2bの厚さはH2bである。そして、本実施形態においては、
W2b>W1a=W3a=W1b=W3b>W2a
H13a=H13b>H2a=H2b
を満たしている。
【0036】
このように、平面スパイラルコイルC2aのパターン幅W2aを細くすれば、導体層20に位置する平面スパイラルコイルC2aと導体層30に位置する平面スパイラルコイルC1b,C3bの間の浮遊容量が減少することから、かかる浮遊容量に起因する高周波特性の悪化を防止することができる。浮遊容量をより低減するためには、平面視で、平面スパイラルコイルC2aと平面スパイラルコイルC1b,C3bが重ならないよう設計することが好ましい。一方、平面スパイラルコイルC2aのパターン幅W2aを細くすると、インダクタL2の直流抵抗が高くなるとともに、インダクタL2とインダクタL1,L3との間の容量バランスが変化することから、これを相殺すべく、導体層40に位置する平面スパイラルコイルC2bのパターン幅W2bをパターン幅W2aよりも拡大している。これにより、インダクタL2の直流抵抗の増加が抑えられるとともに、インダクタL2とインダクタL1,L3との間の容量バランスを維持することができる。
【0037】
尚、幅W1a,W3a,W1b,W3bについては、互いに同じである点は必須ではなく、且つ、幅W2aよりも大きい点や幅W2bよりも小さい点も必須ではない。厚さH13a,H13bについても互いに同じである点は必須ではなく、厚さH2a,H2bについても互いに同じである点は必須でない。さらに、厚さH13a,H13bが厚さH2a,H2bよりも厚い点も必須ではない。
【0038】
このように、本実施形態によるコイル部品1は、平面スパイラルコイルC2aのパターン幅W2aを縮小し、その代わりに、平面スパイラルコイルC2bのパターン幅W2bを拡大していることから、インダクタL1~L3の直流抵抗や容量バランスを大きく崩すことなく、平面スパイラルコイルC2aと平面スパイラルコイルC1b,C3bとの間に生じる浮遊容量を低減することができる。
【0039】
図14は、実際のモード変換特性(Scd21)を示すグラフであり、符号Aは本実施形態によるコイル部品1(但し、W2a=8.5μm、W2a=14μm)の特性を示し、符号Bはパターン幅W2a,W2bを同じ幅(12μm)に設計した場合の特性を示している。
図14に示すように、パターン幅W2a,W2bを同じ幅に設計した場合と比べ、本実施形態によるコイル部品1の方が良好なモード変換特性が得られることが分かる。
【0040】
図15は、第1の変形例による平面スパイラルコイルC1a~C3a,C1b~C3bの部分断面図である。
【0041】
図15に示す第1の変形例では、
W1a=W3a>W2a=W2b>W1b=W3b
を満たしている点において、上記実施形態によるコイル部品1と相違している。このように、平面スパイラルコイルC2a,C2bのパターン幅W2a,W2bが同じであっても、平面スパイラルコイルC1b,C3bのパターン幅W1b,W3bを細くすれば、導体層20に位置する平面スパイラルコイルC2aと導体層30に位置する平面スパイラルコイルC1b,C3bの間の浮遊容量が減少することから、かかる浮遊容量に起因する高周波特性の悪化を防止することができる。一方、平面スパイラルコイルC1b,C3bのパターン幅W1b,W3bを細くすると、インダクタL1,L3の直流抵抗が高くなるとともに、インダクタL2とインダクタL1,L3との間の容量バランスが変化することから、これを相殺すべく、導体層10に位置する平面スパイラルコイルC1a,C3aのパターン幅W1a,W3aをパターン幅W1b,W3bよりも拡大している。これにより、インダクタL1,L3の直流抵抗の増加が抑えられるとともに、インダクタL2とインダクタL1,L3との間の容量バランスを維持することができる。
【0042】
図16は、第2の変形例による平面スパイラルコイルC1a~C3a,C1b~C3bの部分断面図である。
【0043】
図16に示す第2の変形例では、
W2b>W2a
W1a=W3a>W1b=W3b
を満たしている点において、上記実施形態によるコイル部品1と相違している。このように、平面スパイラルコイルC2aのパターン幅W2aを平面スパイラルコイルC2bのパターン幅W2bよりも細くし、且つ、平面スパイラルコイルC1b,C3bのパターン幅W1b,W3bを平面スパイラルコイルC1a,C3aのパターン幅W1a,W3aよりも細くしても構わない。
【0044】
図17は、第3の変形例による平面スパイラルコイルC1a~C3a,C1b~C3bの部分断面図である。
【0045】
図17に示す第3の変形例では、
W2b>W2a
H2b>H2a
を満たしている点において、上記実施形態によるコイル部品1と相違している。このように、平面スパイラルコイルC2bのパターン幅W2bの拡大量を抑える代わりに、平面スパイラルコイルC2bの厚さH2bを平面スパイラルコイルC2aの厚さH2aよりも厚くしても構わない。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0047】
例えば、上記実施形態では、基板2に導体層10,20,30,40がこの順に積層されているが、逆に、導体層40,30,20,10の順に積層しても構わない。
【0048】
また、平面スパイラルコイルC2aと平面スパイラルコイルC1b,C3bの間に生じる浮遊容量をよりいっそう低減すべく、絶縁層80の材料として、他の絶縁層60,70,90,100よりも誘電率の低い材料を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 コイル部品
2 基板
3 コイル層
4 樹脂層
5 回路基板
6 搭載領域
7 仮想線
10,20,30,40 導体層
11,13,17,19,21~23,27~29,31~34,36~39,41~46,48 接続パターン
51~56 端子電極
60,70,80,90,100 絶縁層
71,73,77,79,81~83,87~89,91~94,96,98,101~106 ビア
C1a~C3a,C1b~C3b 平面スパイラルコイル
D1~D6 信号配線
L1~L3 インダクタ
P1~P6 ランドパターン
S1,S2 配線群