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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】調湿システム及び住宅
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/14 20060101AFI20240612BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20240612BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20240612BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20240612BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240612BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20240612BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20240612BHJP
【FI】
F24F3/14
F24F5/00 K
F24F7/10 A
F24F11/70
F24F110:10
F24F110:12
F24F110:20
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020163159
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055627
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関谷 佳子
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-92364(JP,A)
【文献】特開2000-111096(JP,A)
【文献】特開2006-170597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱された床下空間と、前記床下空間の上に設けられた床上空間とを具えた住宅を調湿するための調湿システムであって、
外気を除湿又は加湿して得られる調湿空気を、前記床下空間に供給する調湿装置と、
前記床下空間の空気を、前記床上空間に供給する供給装置と
前記調湿装置及び前記供給装置の運転を制御する制御装置と、
前記床上空間の空気を排出する排気ファンとを含み、
前記制御装置は、前記調湿装置からの前記調湿空気の第1供給量と、前記供給装置からの前記床下空間の空気の第2供給量とが一致するように、前記調湿装置及び/又は前記供給装置の運転を制御し、かつ、前記第1供給量及び前記第2供給量が、前記排気ファンからの前記床上空間の空気の排気量よりも大きくなるように、前記調湿装置及び前記供給装置の運転を制御する
調湿システム。
【請求項2】
前記調湿装置は、デシカント型である、請求項1に記載の調湿システム。
【請求項3】
前記調湿装置は、調湿性能を回復させるための外気を供給可能な外気供給経路を有する、請求項1又は2に記載の調湿システム。
【請求項4】
前記調湿装置は、前記除湿及び前記加湿をすることなく、前記外気を前記床下空間に供給可能なバイパス経路を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の調湿システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記外気と前記床上空間の空気との温度差が、予め定められた閾値よりも大きい場合に、前記第1供給量及び前記第2供給量が小さくなるように、前記調湿装置及び前記供給装置の運転を制御する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の調湿システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記床上空間又は前記床下空間の湿度が予め定められた閾値よりも大きい場合に、前記調湿装置を除湿運転させる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の調湿システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記床上空間の湿度が大きいほど、除湿量が大きくなるように、前記調湿装置の運転を制御する、請求項6に記載の調湿システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記床上空間又は前記床下空間の湿度が予め定められた閾値よりも小さい場合に、前記調湿装置を加湿運転させる、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の調湿システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記床上空間の湿度が小さいほど、加湿量が大きくなるように、前記調湿装置の運転を制御する、請求項8に記載の調湿システム。
【請求項10】
前記調湿空気を空調するための空気調和機をさらに具え、
前記供給装置は、空調された空気を前記床上空間に供給する、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の調湿システム。
【請求項11】
住宅であって、
断熱された床下空間と、
前記床下空間の上に設けられた床上空間と、
外気を除湿又は加湿して得られる調湿空気を、前記床下空間に供給する調湿装置と、
前記床下空間の空気を、前記床上空間に供給する供給装置と、
前記調湿装置及び前記供給装置の運転を制御する制御装置と、
前記床上空間の空気を排出する排気ファンとを含み、
前記制御装置は、前記調湿装置からの前記調湿空気の第1供給量と、前記供給装置からの前記床下空間の空気の第2供給量とが一致するように、前記調湿装置及び/又は前記供給装置の運転を制御し、かつ、前記第1供給量及び前記第2供給量が、前記排気ファンからの前記床上空間の空気の排気量よりも大きくなるように、前記調湿装置及び前記供給装置の運転を制御する、
住宅。
【請求項12】
前記床下空間を区画する基礎と、前記床上空間を区画する外壁とをさらに具え、
前記調湿装置は、前記基礎又は前記外壁の近傍に取り付けられる、請求項11に記載の住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿システム及び住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、 建物の調湿システムが記載されている。この調湿システムは、空気調和機と、調湿材が収容されたチャンバーと、空気調和機からの空気をチャンバーに供給するための第1ダクト手段と、チャンバー内で除加湿された空気を、居室に供給するための第2ダクト手段とを含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-227397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、床上空間だけでなく、床下空間も調湿したいというニーズがある。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、床下空間及び床上空間を調湿することが可能な調湿システム及び住宅を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、断熱された床下空間と、前記床下空間の上に設けられた床上空間とを具えた住宅を調湿するための調湿システムであって、外気を除湿又は加湿して得られる調湿空気を、前記床下空間に供給する調湿装置と、前記床下空間の空気を、前記床上空間に供給する供給装置とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記調湿装置は、デシカント型であってもよい。
【0008】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記調湿装置は、調湿性能を回復させるための外気を供給可能な外気供給経路を有してもよい。
【0009】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記調湿装置は、前記除湿及び前記加湿をすることなく、前記外気を前記床下空間に供給可能なバイパス経路を有してもよい。
【0010】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記調湿装置及び前記供給装置の運転を制御する制御装置をさらに含んでもよい。
【0011】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記制御装置は、前記調湿装置からの前記調湿空気の第1供給量と、前記供給装置からの前記床下空間の空気の第2供給量とが一致するように、前記調湿装置及び/又は前記供給装置の運転を制御してもよい。
【0012】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記制御装置は、前記外気と前記床上空間の空気との温度差が、予め定められた閾値よりも大きい場合に、前記第1供給量及び前記第2供給量が小さくなるように、前記調湿装置及び前記供給装置の運転を制御してもよい。
【0013】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記制御装置は、前記床上空間又は前記床下空間の湿度が予め定められた閾値よりも大きい場合に、前記調湿装置を除湿運転させてもよい。
【0014】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記制御装置は、前記床上空間の湿度が大きいほど、除湿量が大きくなるように、前記調湿装置の運転を制御してもよい。
【0015】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記制御装置は、前記床上空間又は前記床下空間の湿度が予め定められた閾値よりも小さい場合に、前記調湿装置を加湿運転させてもよい。
【0016】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記制御装置は、前記床上空間の湿度が小さいほど、加湿量が大きくなるように、前記調湿装置の運転を制御してもよい。
【0017】
本発明に係る前記調湿システムにおいて、前記調湿空気を空調するための空気調和機をさらに具え、前記供給装置は、空調された空気を前記床上空間に供給してもよい。
【0018】
本発明は、住宅であって、断熱された床下空間と、前記床下空間の上に設けられた床上空間と、外気を除湿又は加湿して得られる調湿空気を、前記床下空間に供給する調湿装置と、前記床下空間の空気を、前記床上空間に供給する供給装置とを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る前記住宅において、前記床下空間を区画する基礎と、前記床上空間を区画する外壁とをさらに具え、前記調湿装置は、前記基礎又は前記外壁の近傍に取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の調湿システムは、上記の構成を採用したことにより、床下空間及び床上空間を調湿することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】住宅の一例を概念的に示す断面図である。
図2】調湿装置17の一例を概念的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0023】
[住宅の全体構造]
図1には、住宅1の一例を概念的に示す断面図が示されている。本実施形態の住宅1は、例えば、優れた断熱性能を具えた工業化住宅として構成されている。なお、住宅1は、工業化住宅に限定されるものではない。
【0024】
本実施形態の住宅1は、床下空間2と、床下空間2の上に設けられた床上空間3とを含んで構成されている。
【0025】
[床下空間]
床下空間2は、基礎5と床6と土間7とで区画されている。
【0026】
[基礎]
基礎5は、住宅1の外周に連続して配置されている。本実施形態の基礎5は、例えば、鉄筋コンクリート製の布基礎として構成されているが、ベタ基礎であってもよい。本実施形態の基礎5には、断熱材8が配されている。これにより、床下空間2が断熱される。
【0027】
[断熱材]
本実施形態の断熱材8は、基礎5の床下空間2側の側面に沿って、上下に延びている。このような断熱材8は、基礎5を介して伝えられる外気の熱を遮断することができる。これにより、住宅1は、床下空間2の空気(以下、単に「床下空気」ということがある。)A3の温度変化を小さくすることができる。断熱材8としては、例えば、ポリスチレンフォーム等が適宜採用されうる。
【0028】
[床]
図1に示されるように、床6は、基礎5、5の間をのびている。本実施形態の床6は、例えば、複数の板パネルが並べられたフローリングとして構成されている。
【0029】
[土間]
土間7は、床下空間2の底面を構成している。本実施形態の土間7は、基礎5、5間に敷設される土間コンクリートとして構成されているが、このような態様に限定されない。土間7には、一年を通して温度変化が小さい地中熱が伝達されている。これにより、土間7は、地中熱と、床下空気A3とを熱交換することができる熱交換部として構成される。したがって、床下空間2には、夏季は外気A1より冷たく、かつ、冬季は外気A1よりも暖かい床下空気A3が蓄えられる。
【0030】
本実施形態の住宅1は、床下空間2が断熱されているため、上記のような床下空気A3を、床下空間2に効果的に蓄えることができる。そして、床下空気A3が、後述の供給装置18によって床上空間3に供給されることにより、床上空間3内の空調効率を向上させることができる。
【0031】
[床上空間]
床上空間3は、床下空間2の上に、床6を介して設けられている。本実施形態の床上空間3は、床6、天井11、外壁12、及び、間仕切り壁13で区画されている。床上空間3には、居室14と、非居室(例えば、トイレ等)15とが含まれる。
【0032】
[調湿システム]
本実施形態の住宅1には、調湿システム16が設けられている。調湿システム16は、調湿装置17と、供給装置18とを含んで構成されている。
【0033】
[調湿装置]
調湿装置17は、外気A1を除湿又は加湿して得られる調湿空気A2を、床下空間2に供給するためのものである。調湿装置17は、調湿空気A2を得ることができれば、特に限定されない。本実施形態の調湿装置17は、デシカント型である場合が例示される。このようなデシカント型の調湿装置17は、他の種類の調湿装置(図示省略)に比べて、小さく形成されうる。このため、調湿装置17は、住宅1内での占有スペースを小さくすることができる。図2は、調湿装置17の一例を概念的に示す断面図である。
【0034】
本実施形態の調湿装置17は、チャンバー21と、デシカントロータ22と、第1加熱冷却コイル23と、第2加熱冷却コイル24と、第1送風機25と、第2送風機26とを含んで構成されている。
【0035】
チャンバー21は、ケーシング27と、その内部の空間を2つに区分する仕切部28とを含んで構成されている。このような仕切部28により、チャンバー21には、互いに独立した第1チャンバー31と第2チャンバー32とが設けられる。
【0036】
第1チャンバー31には、その内部に外気A1を案内するための第1入口31aと、その内部の空気を排出するための第1出口31bとが設けられている。第1入口31aは、屋外33に連通している。一方、第1出口31bは、床下空間2に連通している。
【0037】
第2チャンバー32には、その内部に外気A1を案内するための第2入口32aと、その内部の空気を排出するための第2出口32bとが設けられている。第2入口32a及び第2出口32bは、屋外33に連通している。
【0038】
デシカントロータ22は、従来のものと同様に、軸方向(厚さ方向)に通風可能な円筒構造体に、シリカゲルやゼオライトなどの吸湿剤が担持されることによって構成されている。本実施形態のデシカントロータ22は、その回転軸22sを中心として、第1チャンバー31と第2チャンバー32との間を回転可能に配置されている。デシカントロータ22の回転速度は、従来と同様に設定されうる。
【0039】
第1加熱冷却コイル23及び第2加熱冷却コイル24は、ヒートポンプユニット(図示省略)によって循環する冷媒により、空気を加熱又は冷却するためのものである。
【0040】
第1加熱冷却コイル23は、第1チャンバー31において、デシカントロータ22よりも第1入口31a側(上流側)に設けられている。これにより、第1加熱冷却コイル23は、第1チャンバー31に案内された外気A1を加熱又は冷却して、その外気A1をデシカントロータ22に供給することができる。
【0041】
第2加熱冷却コイル24は、第2チャンバー32において、デシカントロータ22よりも第1入口31a側(上流側)に設けられている。これにより、第2加熱冷却コイル24は、第2チャンバー32に案内された外気A1を加熱又は冷却して、その外気A1をデシカントロータ22に供給することができる。
【0042】
第1送風機25は、第1入口31aから第1チャンバー31内に空気(外気A1)を案内し、第1チャンバー31内の空気(調湿空気A2)を第1出口31bから排出するためのものである。本実施形態の第1送風機25は、ファンとして構成されている。第1送風機25は、デシカントロータ22に対して第1出口31b側(下流側)において、第1出口31bに向かって送風する向きに配置されている。これにより、第1送風機25は、第1チャンバー31内を負圧にして、第1入口31aから外気A1を案内することができる。
【0043】
第2送風機26は、第2入口32aから第2チャンバー32内に空気(外気A1)を案内し、第2チャンバー32内の空気A5を第2出口32bから排出するためのものである。本実施形態の第2送風機26は、第1送風機25と同様に、ファンとして構成されている。第2送風機26は、デシカントロータ22に対して第2出口32b側(下流側)において、第2出口32bに向かって送風する向きに配置されている。これにより、第2送風機26は、第2チャンバー32内を負圧にして、第2入口32aから外気A1を案内することができる。
【0044】
[調湿装置の運転]
次に、調湿装置17の運転が説明される。本実施形態の調湿装置17では、冬季に比べて外気A1の湿度(相対湿度)が高くなる夏季において、除湿運転が行われる。一方、夏季に比べて外気A1の湿度(相対湿度)が低くなる冬季では、加湿運転が行われる。
【0045】
[除湿運転]
除湿運転では、先ず、第1送風機25及び第2送風機26の運転により、第1チャンバー31及び第2チャンバー32内に外気A1がそれぞれ案内される。
【0046】
第1チャンバー31内に案内された外気A1は、第1加熱冷却コイル23によって冷却される。これにより、外気A1の温度が低下し、その湿度(相対湿度)が高められる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、外気A1に含まれる水蒸気がデシカントロータ22に効果的に吸着されうる。これにより、調湿装置17は、外気A1の湿度を低く(外気A1を除湿)した調湿空気A2が得られる。除湿して得られた調湿空気A2は、第1出口31bから床下空間2に供給される。
【0047】
第2チャンバー32内に案内された外気A1は、第2加熱冷却コイル24によって加熱される。これにより、外気A1の温度が上昇し、その湿度(相対湿度)が低くされる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、デシカントロータ22に吸着されている水蒸気が、外気A1に効果的に放出されうる。これにより、調湿装置17は、デシカントロータ22を再生(即ち、再び除湿できるように調湿性能を回復)することができる。水蒸気が放出された空気A5は、第2出口32bから屋外33に排出される。
【0048】
デシカントロータ22は、第1チャンバー31と第2チャンバー32との間で回転しているため、第1チャンバー31での除湿と、第2チャンバー32での再生(調湿性能の回復)とを連続して行うことができる。したがって、調湿装置17は、外気A1の除湿を継続して行うことができる。
【0049】
[加湿運転]
加湿運転では、先ず、第1送風機25及び第2送風機26の運転により、第1チャンバー31及び第2チャンバー32内に外気A1がそれぞれ案内される。
【0050】
第1チャンバー31内に案内された外気A1は、第1加熱冷却コイル23によって加熱される。これにより、外気A1の温度が上昇し、その湿度(相対湿度)が低くされる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、デシカントロータ22に吸着されている水蒸気が、外気A1に効果的に放出されうる。これにより、調湿装置17は、外気A1の湿度を高く(外気A1を加湿)した調湿空気A2が得られる。加湿して得られた調湿空気A2は、第1出口31bから床下空間2に供給される。
【0051】
第2チャンバー32内に案内された外気A1は、第2加熱冷却コイル24によって冷却される。これにより、外気A1の温度が低下し、その湿度(相対湿度)が高められる。このような外気A1がデシカントロータ22を通過することにより、外気A1に含まれる水蒸気がデシカントロータ22に効果的に吸着されうる。これにより、調湿装置17は、デシカントロータ22を再生(即ち、再び加湿できるように調湿性能を回復)することができる。水蒸気が吸着された空気A5は、第2出口32bから屋外33に排出される。
【0052】
デシカントロータ22は、第1チャンバー31と第2チャンバー32との間で回転しているため、第1チャンバー31での加湿と、第2チャンバー32での再生(調湿性能の回復)とを連続して行うことができる。したがって、調湿装置17は、外気A1の加湿を継続して行うことができる。
【0053】
このように、本実施形態の調湿システム16は、調湿装置17によって、外気A1を除湿又は加湿して得られる調湿空気A2を、床下空間2に供給することができるため、床下空間2を調湿することができる。
【0054】
[外気供給経路]
本実施形態の調湿装置17では、外気A1が供給される第2入口32a及び第2チャンバー32によって、調湿性能を回復させるための外気A1を供給可能な外気供給経路35が構成されている。このような外気供給経路35は、例えば、調湿性能を回復させるために、図1に示した床上空間3の空気(以下、単に「床上空気」ということがある。)A4が用いられていた従来の調湿装置(図示省略)に比べて、床上空間3が負圧の状態になるのを防ぐことができる。これにより、調湿装置17は、例えば、調湿されていない外気A1が、住宅1の隙間等から床上空間3に案内されるのを防ぐことができるため、住宅1の快適性の低下を抑制しうる。さらに、排気ファン39から排出される床上空気A4の減少を抑制できるため、その床上空気A4からの排熱を効率よく利用することが可能となる。
【0055】
[バイパス経路]
図2に示されるように、調湿装置17は、第1チャンバー31、第1入口31a及び第1出口31bにより、通風可能なデシカントロータ22を介して、屋外33と床下空間2との間を連通させることができる。これにより、調湿装置17は、第1チャンバー31、第1入口31a及び第1出口31bを、除湿及び加湿をすることなく外気A1を床下空間2に供給可能なバイパス経路36として構成することができる。したがって、調湿装置17は、外気A1の除湿や加湿が必要のない時期において、外気A1を床下空間2に供給することができる。このような床下空気A3が、図1に示した供給装置18によって床上空間3に供給されることによって、住宅1全体を換気することが可能となる。なお、床下空間2に外気A1が効率よく供給されるように、第1送風機25(図2に示す)が運転されるのが望ましい。
【0056】
[調湿装置の設置位置]
調湿装置17は、図1に示した住宅1の内外において、適宜設置されうる。なお、調湿装置17と屋外33との距離が大きくなると、調湿装置17に外気A1を案内するためのダクト(図示省略)や、調湿装置17から屋外33に外気A1を排出するためのダクト(図示省略)が長くなるおそれがある。このような長いダクトは、調湿システム16の初期導入コストの増大や、圧力損失の増加に伴う送風機(図2に示した第1送風機25や第2送風機26)の動力の増大を招く傾向がある。このため、調湿装置17は、基礎5又は外壁12の近傍に取り付けられるのが望ましい。ここで、「近傍に取り付けられる」とは、基礎5又は外壁12からの距離が2.0m以下の領域内に、調湿装置17が取り付けられることを意味している。
【0057】
このように、本実施形態の調湿装置17は、基礎5又は外壁12の近傍に取り付けられるため、屋外33との距離を小さくすることができる。これにより、調湿装置17は、上記のようなダクト(図示省略)を短くすることができるため、調湿システム16の初期導入コストの増大や、送風機(図2に示した第1送風機25や第2送風機26)の動力の増大を抑制できる。このような作用を効果的に発揮させるために、調湿装置17は、好ましくは、基礎5又は外壁12からの距離が0.5m以下の領域内に配されるのが望ましく、さらに好ましくは、基礎5又は外壁12に面するように取り付けられるのが望ましい。本実施形態の調湿装置17は、外壁12に面するように取り付けられているため、上記のようなダクトが不要となる。
【0058】
[供給装置]
図1に示されるように、供給装置18は、床下空気A3を、床上空間3に供給するためのものである。本実施形態の供給装置18は、空気流路37と、送風機38とを含んで構成されている。
【0059】
空気流路37は、例えば、住宅1の配管スペースに配置されるダクトによって構成されている。なお、空気流路37は、例えば、間仕切り壁等で囲まれた空間(図示省略)によって構成されてもよい。空気流路37の一端は、床下空間2に連通している。空気流路37の他端は、床上空間3(居室14)に連通している。
【0060】
本実施形態の送風機38は、ファンとして構成されている。送風機38は、床下空間2から空気流路37(床上空間3)に向かって送風(空気を圧送)する向きに配置されている。このような送風機38の運転により、床下空気A3が、空気流路37を介して、床上空間3に供給されうる。本実施形態の住宅1では、例えば、外壁12に設けられた排気ファン39によって、床上空気A4が屋外33へ排出されている。これにより、住宅1では、床上空間3が効率よく換気されうる。
【0061】
[調湿システム(住宅)の作用]
本実施形態の調湿システム16では、上述のとおり、調湿装置17によって床下空間2が調湿される。調湿された床下空気A3は、床下空間2の断熱によって温度変化が抑制されるため、その湿度(相対湿度)が安定する。さらに、床下空間2には、一年を通して温度変化が小さい地中熱が伝達されているため、温度変化が効果的に抑制され、床下空気A3の湿度をより安定させることができる。このような床下空気A3が、供給装置18によって床上空間3に供給されることにより、床上空間3を調湿することができる。
【0062】
このように、本実施形態の調湿システム16(住宅1)は、床下空間2及び床上空間3の双方を調湿することができる。これにより、調湿システム16は、住宅1の全体として、湿度環境を安定化させることができるため、住宅1の快適性を向上しうる。また、調湿システム16では、床下空間2の調湿により、床6の反りや、床下空間2でのカビの発生等を効果的に抑制できる。したがって、調湿システム16は、住宅1の耐久性を向上させることができる。
【0063】
調湿システム16は、床下空間2を、調湿経路の一部(チャンバー)として利用することができるため、ダクト(例えば、空気流路37)の使用量を少なくすることができる。したがって、本実施形態の調湿システム16は、初期導入コストを低減しうる。
【0064】
[制御装置]
調湿システム16には、調湿装置17及び供給装置18の少なくとも一方(本実施形態では、調湿装置17及び供給装置18の双方)の運転を制御する制御装置40がさらに設けられてもよい。制御装置40は、CPU(中央演算装置)からなる演算部(図示省略)と、制御手順が予め記憶されている記憶部(図示省略)と、記憶部から制御手順を読み込む作業用メモリ(図示省略)とを含んで構成されている。このような制御装置40は、例えば、間仕切り壁13等に設置されうる。
【0065】
本実施形態の制御装置40には、調湿装置17及び供給装置18が接続されている。これにより、制御装置40は、調湿装置17及び供給装置18に信号を伝達することで、調湿装置17及び供給装置18の運転を制御することができる。
【0066】
本実施形態の制御装置40は、調湿装置17からの調湿空気A2の第1供給量と、供給装置18からの床下空気A3の第2供給量とが一致するように、調湿装置17及び/又は供給装置18の運転を制御してもよい。なお、上記の「一致」は、完全な一致に限定されるわけではなく、第1供給量と第2供給量との差の絶対値が、第1供給量の5%以下である態様が許容されるものとする。
【0067】
本実施形態の調湿システム16は、調湿空気A2の第1供給量と、床下空気A3の第2供給量とを一致させることにより、床下空間2が負圧になるのを抑制できるため、調湿されていない外気A1が、床下空間2に浸入するのを防ぐことができる。したがって、調湿システム16は、床上空間3を効果的に調湿することができる。
【0068】
本実施形態では、第1供給量と第2供給量とを一致させるために、調湿装置17(第1送風機25)及び供給装置18(送風機38)の双方の運転が制御されてもよいが、いずれか一方の運転のみが制御されてもよい。例えば、第1供給量に対して第2供給量が一致するように、供給装置18の運転のみが制御されてもよいし、第2供給量に対して第1供給量が一致するように、調湿装置17の運転のみが制御されてもよい。
【0069】
さらに、制御装置40は、調湿空気A2の第1供給量、及び、床下空気A3の第2供給量が、排気ファン39からの床上空気A4の排気量よりも大きくなるように、調湿装置17及び供給装置18の運転を制御してもよい。これにより、調湿システム16は、床上空間3が正圧に維持されるため、調湿されていない外気A1が、床上空間3に浸入するのを防ぐことができる。
【0070】
本実施形態の制御装置40には、外気A1の温度及び湿度を測定するための第1温湿度センサー41(図2に示す)と、床上空間3の温度及び湿度を測定するための第2温湿度センサー42とが接続されてもよい。これにより、制御装置40は、第1温湿度センサー41及び第2温湿度センサー42に信号を伝達することで、外気A1の温度及び湿度や、床上空間3の温度及び湿度を測定することができる。
【0071】
制御装置40は、外気A1と床上空間3の空気との温度差が、予め定められた閾値よりも大きい場合に、調湿空気A2の第1供給量、及び、床下空気A3の第2供給量が小さくなるように、調湿装置17及び供給装置18の運転を制御してもよい。これにより、調湿システム16は、上記の温度差によって外気A1が床上空間3に浸入する傾向がある冬季において、床上空間3が過換気になるのを防ぐことができる。なお、温度差の閾値、及び、第1供給量及び第2供給量の減少率は、適宜設定されうる。温度差の閾値は、例えば、10~20℃程度に設定されうる。供給量の減少率は、通常時の供給量に対して20%~40%程度に設定されうる。
【0072】
制御装置40は、床上空間3又は床下空間2の湿度(相対湿度)が予め定められた閾値よりも大きい場合に、調湿装置17を除湿運転してもよい。これにより、調湿システム16は、高湿な外気A1を除湿して得られる調湿空気A2を、床下空間2及び床上空間3に確実に供給することができる。なお、湿度の閾値は、適宜設定され、例えば、60%~80%に設定される。
【0073】
制御装置40は、床上空間3又は床下空間2の湿度(相対湿度)が予め定められた閾値よりも小さい場合に、調湿装置17を加湿運転してもよい。これにより、調湿システム16は、低湿な外気A1を加湿して得られる調湿空気A2を、床下空間2及び床上空間3に確実供給することができる。なお、湿度の閾値は、適宜設定され、例えば、40%~60%に設定される。
【0074】
制御装置40は、床上空間3の湿度(相対湿度)が大きいほど、除湿量が大きくなるように、調湿装置17の運転を制御してもよい。これにより、調湿システム16は、床上空間3の湿度に応じて、除湿量を調節することができるため、住宅1の快適性をさらに向上しうる。
【0075】
上記のような除湿量の調節は、適宜実現されうる。本実施形態では、床上空間3の湿度(相対湿度)の大きさに比例するように、図2に示した第2チャンバー32への外気A1の供給量(第2送風機26の風量)の大きさが設定される。なお、第2チャンバー32への外気A1の供給量が大きくなると、デシカントロータ22に吸着された水蒸気の放出量を大きくすることができる。これにより、デシカントロータ22の調湿性能(除湿性能)を、効率よく回復させることができるため、第1チャンバー31において、デシカントロータ22への外気A1に含まれる水蒸気の吸着量を効果的に大きくでき、除湿量を大きくすることができる。逆に、第2チャンバー32への外気A1の供給量が小さくなると、デシカントロータ22の調湿性能(除湿性能)の回復を小さくでき、除湿量を小さくすることができる。このように、本実施形態では、除湿量の調節が可能となる。
【0076】
また、制御装置40は、床上空間3の湿度(相対湿度)が小さいほど、加湿量が大きくなるように、調湿装置17の運転を制御してもよい。これにより、調湿システム16は、床上空間3の湿度に応じて、加湿量を調節することができるため、住宅1の快適性をさらに向上しうる。なお、加湿量の調節についても、除湿量と同様に調節が可能である。
【0077】
[調湿システム(第2実施形態)]
調湿システム16には、調湿空気A2を空調するための空気調和機(図示省略)がさらに設けられてもよい。空気調和機は、調湿空気A2(床下空気A3を含む)を空調できれば、調湿装置17と供給装置18との間に設けられてもよいし、供給装置18の下流側に設けられてもよい。
【0078】
空気調和機43は、調湿空気A2を空調できるため、その空調効率を高めることができる。そして、空調された空気は、供給装置18によって床上空間3に供給される。これにより、この実施形態の調湿システム16では、床上空間3を調湿しながら、換気及び空調を同時に行うことが可能となる。
【0079】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0080】
1 住宅
2 床下空間
3 床上空間
16 調湿システム
17 調湿装置
18 供給装置
図1
図2