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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】クリップ装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/10 20060101AFI20240612BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
F16B19/10 B
F16B19/00 E
F16B19/00 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020187865
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077160
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】大原 智彦
(72)【発明者】
【氏名】姜 文赫
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05651562(US,A)
【文献】特開2007-309420(JP,A)
【文献】特表2002-519591(JP,A)
【文献】特開2009-029329(JP,A)
【文献】特開2019-128017(JP,A)
【文献】中国実用新案第201342996(CN,Y)
【文献】特開2006-103426(JP,A)
【文献】特開平11-247813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/10
F16B 19/00
B60R 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装部材を押圧・移動させて車室側に展開するエアバッグを備えた車両における前記内装部材を前記移動の開始前位置に保持させるクリップ装置であって、
前記内装部材に形成された取付穴に挿入されることで前記内装部材に係合される外側係合部を備えた雌部材と、
車体側に形成された取付穴に挿入されることで前記車体側に係合する第一部分と、前記雌部材に挿入されることで前記雌部材内に形成された内側係合部に係合される第二部分と、前記内装部材の前記移動を所定の距離に規制するように前記内装部材に繋がれるストラップ部分とを備えた雄部材とを備えてなると共に、
前記内側係合部は、筒状の前記雌部材の内部に支持された、前記雌部材の筒軸に沿う向きに延びる弾性片に係合凸部を形成させてなり、
しかも、前記内側係合部は、前記筒軸を含む仮想の第一平面を挟んだ両側にそれぞれ備えられると共に、
一方の前記内側係合部の前記弾性片は、前記筒軸を含み且つ前記第一平面に前記筒軸で直交する仮想の第二平面を挟んだ一方側にあって、前記係合凸部の形成側の一面を前記第二平面上に実質的に位置づけ、
且つ、他方の前記内側係合部の前記弾性片は、前記第二平面を挟んだ他方側にあって、前記係合凸部の形成側の一面を前記第二平面上に実質的に位置づけさせてなる、クリップ装置。
【請求項2】
前記外側係合部は、筒状の前記雌部材の側部に形成された割溝によって区分された前記側部の一部からなる、請求項1に記載のクリップ装置。
【請求項3】
前記雄部材の前記第二部分は、前記内側係合部の前記弾性片の一面と、この一面に向き合う前記雌部材の内面との間に挟まれるようにして、前記雌部材に挿入される構成としてなる、請求項1に記載のクリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内装部材を押圧・移動させて車室側に展開するエアバッグを備えた車両における前記内装部材を前記移動の開始前位置に保持させるために用いられるクリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内装部材を押圧・移動させて車室側に展開するエアバッグを備えた車両における前記内装部材を前記移動の開始前位置に保持させるために用いられる連結構造として、特許文献1に示されるものがある。
【0003】
この特許文献1のものは、内装側係合部材と、車体側係合部材と、車体側係合部材と内装部材とを繋ぐ連結バンドとからなる。車体側係合部材は車体パネルの貫通取付孔に挿入・係合され、このように車体パネルに係合された車体側係合部材に内装側係合部材に形成された係合雄部材が挿入・係合される。これに対し、内装側係合部材と内装部材としてのトリムカバーとは、このトリムカバーに形成された取付座に前記挿入方向に直交する方向から内装側係合部材の一部をはめ込むことで一体化されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-309420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の内装部材を車体側に保持させるために用いられるクリップ装置による車体側への内装部材の取り付け状態をより安定的なものとする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、クリップ装置を、
内装部材を押圧・移動させて車室側に展開するエアバッグを備えた車両における前記内装部材を前記移動の開始前位置に保持させるクリップ装置であって、
前記内装部材に形成された取付穴に挿入されることで前記内装部材に係合される内装側係合部材と、
前記車体側に形成された取付穴に挿入されることで前記車体側に係合すると共に、前記内装部材の前記移動を所定の距離に規制するように前記内装部材に繋がれるストラップ部分とを備えた車体側係合部材とを備え、
前記内装側係合部材及び前記車体側係合部材の一方の一部を、これらの他方に挿入することで、両者を係合させるようにしてなる、ものとした。
【0007】
また、前記課題を達成するために、この発明にあっては、第二の観点から、クリップ装置を、
内装部材を押圧・移動させて車室側に展開するエアバッグを備えた車両における前記内装部材を前記移動の開始前位置に保持させるクリップ装置であって、
前記内装部材に形成された取付穴に挿入されることで前記内装部材に係合される外側係合部を備えた雌部材と、
前記車体側に形成された取付穴に挿入されることで前記車体側に係合する第一部分と、前記雌部材に挿入されることで前記雌部材内に形成された内側係合部に係合される第二部分と、前記内装部材の前記移動を所定の距離に規制するように前記内装部材に繋がれるストラップ部分とを備えた雄部材とを備えてなる、ものとした。
【0008】
前記外側係合部を、筒状の前記雌部材の側部に形成された割溝によって区分された前記側部の一部からなるものとすることが、この発明の形態の一つとされる。
【0009】
また、前記内側係合部を、筒状の前記雌部材の内部に支持された、前記雌部材の筒軸に沿う向きに延びる弾性片に係合凸部を形成させてなるものとすることが、この発明の形態の一つとされる。
【0010】
また、前記内側係合部は、前記筒軸を含む仮想の第一平面を挟んだ両側にそれぞれ備えられると共に、
一方の前記内側係合部の前記弾性片は、前記筒軸を含み且つ前記第一平面に前記筒軸で直交する仮想の第二平面を挟んだ一方側にあって、前記係合凸部の形成側の一面を前記第二平面上に実質的に位置づけ、
且つ、他方の前記内側係合部の前記弾性片は、前記第二平面を挟んだ他方側にあって、前記係合凸部の形成側の一面を前記第二平面上に実質的に位置づけさせてなるものとすることが、この発明の形態の一つとされる。
【0011】
また、前記雄部材の前記第二部分は、前記内側係合部の前記弾性片の一面と、この一面に向き合う前記雌部材の内面との間に挟まれるようにして、前記雌部材に挿入される構成としてなるものとすることが、この発明の形態の一つとされる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、この種の内装部材を車体側に保持させるために用いられるクリップ装置を構成する内装側係合部材を内装部材の取付穴に挿入されることでこれに係合するものとし、かつ、車体側係合部材を車体側に形成された取付穴に挿入されることでこれに係合するものとして、かかるクリップ装置による車体側への内装部材の取り付け状態をより安定的なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかるクリップ装置の使用状態を示した側面図である。
図2図2は、図1の状態におけるクリップ装置の要部破断側面図である。
図3図3は、図2におけるA-A線位置での断面図である。
図4図4は、前記クリップ装置を構成する雌部材と雄部材とを分離した状態で示した斜視図である。
図5図5は、前記雄部材の斜視図である。
図6図6は、前記雄部材の側面図である。
図7図7は、前記雄部材の側面図であり、図6と異なる向きから雄部材を見て示している。
図8図8は、図7におけるB-B線位置での断面図である。
図9図9は、図7におけるC-C線位置での断面図である。
図10図10は、前記雌部材の側面図である。
図11図11は、前記雌部材の側面図であり、図10と異なる向きから雌部材を見て示している。
図12図12は、前記雌部材の底面図である。
図13図13は、図11におけるD-D線位置での断面図である。
図14図14は、図12におけるE-E線位置での断面図である。
図15図15は、前記雌部材の底面図であり、説明用の符号を付している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図15に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるクリップ装置1は、内装部材Tを押圧・移動させて車室側Rに展開するエアバッグを備えた車両における前記内装部材Tを前記移動の開始前位置に保持させるために用いられるものである。
【0015】
典型的には、かかるクリップ装置1は、自動車に備えられるエアバッグ(図示は省略する。)のカバーTaとして機能する自動車の内装部材Tを、車体パネルPに取り付けるために用いられる。非展開状態にあるエアバッグは、カバーTaと車体パネルPとの間に収容される。非常時にエアバッグが膨張してこれによってカバーTaに車室側Rに向けた所定の大きさの押圧力が作用されるとクリップ装置1を構成する後述の内装側係合部材2と車体側係合部材3との係合が解かれ、カバーTaは車室側Rに移動し、エアバックの展開が許容される。車体側係合部材3には内装部材Tの前記移動を所定の距離に規制するように前記内装部材Tに繋がれるストラップ部分20が備えられており、カバーTaは非常時に前記のように移動するが車体パネルPと完全に分離することがないようになっている。
【0016】
内装側係合部材2は、前記内装部材Tに形成された取付穴Tbに挿入されることで前記内装部材Tに係合されるようになっている。
【0017】
また、車体側係合部材3は、前記車体側としての車体パネルPに形成された取付穴Paに挿入されることで前記車体側に係合するようになっている。
そして、内装側係合部材2と車体側係合部材3とは、前記内装側係合部材2及び前記車体側係合部材3の一方の一部を、これらの他方に挿入することで、係合させるようになっている。
【0018】
内装側係合部材2は、内装部材Tの取付穴Tbに挿入されることでこれに係合するものとなっており、かつ、車体側係合部材3は、車体側に形成された取付穴Paに挿入されることでこれに係合するものとなっていることから、これらの挿入方向に交叉する方向に向けた力の作用によって、内装側係合部材2と内装部材Tとの係合状態、および、車体側係合部材3と車体側との係合状態が予期せず解かれることはなく、内装部材Tに内装側係合部材2を取り付けた状態、および、車体側に車体側係合部材3を取り付けた状態を、前記非常時も含め常時安定的に維持することができる。
【0019】
図示の例では、内装部材Tの取付穴Tbの中心、車体側の取付穴Paの中心、内装側係合部材2の中心軸(後述の雌部材4の筒軸x)、および、車体側係合部材3の中心軸(後述の雄部材17の中心軸x’)は、いずれも一つの仮想の直線L1(図1参照)上に位置されており、この直線L1に交叉する方向に向けた力の作用によってそれぞれの係合状態は予期せず解かれることはなく、一方、この直線L1に沿う向きに作用される力に対しては、それぞれの係合が解かれるために必要となる抜去力を容易且つ適切にコントロールすることができる。すなわち、非常時に内装部材Tに作用される前記押圧力によって内装側係合部材2と車体側係合部材3との係合は解かれるが、この押圧力によっては、内装側係合部材2と内装部材Tとの係合状態、および、車体側係合部材3と車体側との係合状態は解かれることがないように、前記抜去力をコントロールすることができる。
【0020】
この実施の形態にあっては、前記内装側係合部材2は、前記内装部材Tに形成された取付穴Tbに挿入されることで前記内装部材Tに係合される外側係合部11を備えた雌部材4として構成されている。
【0021】
かかる雌部材4は、筒両端7、8を共に開放させた角筒状を呈している。図示の例では、雌部材4は、その筒軸x(中心軸)に直交する向きの断面形状を、この筒軸x方向のいずれの位置においても、実質的に長方形とした形態となっている(図15参照)。図示の例では、雌部材4は、一対の長さ側の側板部5と、一対の幅側の側板部6とを備えている。
【0022】
一対の長さ側の側板部5における一方の筒端7の外縁を形成する箇所にはそれぞれ、長さ側の側板部5の外面に直交する向きに突き出す鍔片9が形成されている。雌部材4は、内装部材Tに形成された、雌部材4の前記断面の外郭形状に倣った四角形の取付穴Tbに対し、前記鍔片9がこの取付穴Tbを巡る内装部材Tの外面に接する位置まで、この取付穴Tbに挿入されるようになっている(図1参照)。
【0023】
前記外側係合部11は、筒状の前記雌部材4の側部10に形成された割溝11a、11bによって区分された前記側部10の一部から構成されている。図示の例では、一対の長さ側の側板部5にそれぞれ、二箇所の外側係合部11が形成されている。
【0024】
二箇所の外側係合部11の一方は、長さ側の側板部5において、前記筒軸xを含む仮想の第一平面S1(図14図15参照)を挟んだ両側にそれぞれ形成されている。二箇所の外側係合部11はそれぞれ、前記筒軸xに沿った二条の縦向き割溝11aと、この二条の縦向き割溝11aにおける前記鍔片9の形成側の一方の筒端7側の溝端間に亘る横向き割溝11bとにより区分された長さ側の側板部5の一部の外面に、山状隆起部11cを形成させることで形成されている。山状隆起部11cは、前記一方の筒端7側に頂部11dを有し、一方の筒端7側に向いた係合面11eと、係合面11eと反対の側に頂部11dから他方の筒端8側に向かうにつれて山状隆起部11cの突き出し量を次第に減ずる傾斜面11fを備えている。
【0025】
一対の長さ側の側板部5の一方に形成された外側係合部11の頂部11dと、他方に形成された外側係合部11の頂部11dとの間の距離は、前記の挿入時に長さ側の側板部5が向き合う内装部材Tの取付穴Tbの穴縁間の距離よりもやや大きくなっている。
【0026】
これにより、この実施の形態にあっては、雌部材4は他方の筒端8を先にして内装部材Tの取付穴Tbの穴縁に外側係合部11の傾斜面11fを摺接させてこの外側係合部11を雌部材4内に撓み込ませながら、前記鍔片9が取付穴Tbを巡る内装部材Tの外面に接する位置までこの取付穴Tbに挿入されるようになっている。そして、この位置まで雌部材4が挿入されると、四箇所の外側係合部11が弾性復帰して、前記の挿入先において係合面11eを取付穴Tbの穴縁に係合させるようになっている。
このように雌部材4の内装部材Tに対する係合箇所を分割することで、内装部材Tの取付穴Tbの穴縁に対する一つの外側係合部11の係合力を過大にすることなく、雌部材4全体での係合力を所定値とすることができ、内装部材Tが高温下での軟化やクリープ変形し易い合成樹脂から構成されている場合であっても、外側係合部11が内装部材Tの取付穴Tbの変形をできるだけ生じさせないようになっている。
【0027】
雌部材4には、後述のように第一部分18により車体側に取り付けられる雄部材17の第二部分19が前記一方の筒端7から挿入されるようになっている。そして、雌部材4内には、このように挿入される第二部分19に係合される内側係合部12が備えられている。
【0028】
前記内側係合部12は、筒状の前記雌部材4の内部に支持された、前記雌部材4の筒軸xに沿う向きに延びる弾性片12aに係合凸部12bを形成させて構成されている。
【0029】
また、図15に示されるように、前記内側係合部12は、前記仮想の第一平面S1を挟んだ両側にそれぞれ備えられると共に、
図13および図15に示されるように、一方の前記内側係合部12の前記弾性片12aは、前記筒軸xを含み且つ前記第一平面S1に前記筒軸xで直交する仮想の第二平面S2を挟んだ一方側にあって、前記係合凸部12bの形成側の一面12cを前記第二平面S2上に実質的に位置づけ、
且つ、他方の前記内側係合部12の前記弾性片12aは、前記第二平面S2を挟んだ他方側にあって、前記係合凸部12bの形成側の一面12cを前記第二平面S2上に実質的に位置づけさせた構成となっている。
【0030】
図示の例では、前記第一平面S1よりも幅側の側板部6の一方側にあって、第一平面S1に平行な仮想の第三平面S3(図15参照)と、前記第二平面S2と、前記長さ側の側板部5の一方と前記幅側の側板部6の一方との接し合う隅部とで囲まれた四角形の第一領域E1と、
前記第一平面S1よりも幅側の側板部6の他方側にあって、第一平面S1に平行な仮想の第四平面S4(図15参照)と、前記第二平面S2と、前記長さ側の側板部5の他方と前記幅側の側板部6の他方との接し合う隅部とで囲まれた四角形の第二領域E2とが、
前記一方の筒端7から雌部材4の筒軸xに直交する向きに突き出す実質的に四角形の板状をなす内鍔片13によって占められるようになっている(図15)。
【0031】
これにより、雌部材4の一方の筒端7側においては、第二平面S2を挟んで第一領域E1と反対側に形成される第三領域E3と、第二平面S2を挟んで第二領域E2と反対側に形成される第四領域E4と、雌部材4の一方の筒端7側において第三領域E3と第四領域E4とを連通させる中央領域ESとからなる、雄部材17の第二部分19の差し込み口14が形成されている(図4図15参照)。
【0032】
そして、このように形成される内鍔片13における他方の筒端8に向けられた面から他方の筒端8側に向けて、前記弾性片12aが突き出している。第一領域E1の内鍔片13から突き出す弾性片12aの他面12dと長さ側の側板部5の一方、および、第二領域E2の内鍔片13から突き出す弾性片12aの他面12dと長さ側の側板部5の他方との間には、隙間15が形成されている(図13参照)。
【0033】
係合凸部12bは、雌部材4の筒軸方向の略中程の位置に自由端を位置させる弾性片12aのこの自由端側に頂部12eを位置させる山状を呈している。係合凸部12bの頂部12eを挟んだ前記弾性片12aの自由端側が後述の雄部材17の第二部分19の係合穴19fに対する係合面12fとなる(図3参照)。図示の例では、この係合面12fおよび係合凸部12bの頂部12eを挟んだ弾性片12aの根本側はそれぞれ、傾斜面となっている。
【0034】
また、この実施の形態にあっては、前記車体側係合部材3は、前記車体側に形成された取付穴Paに挿入されることで前記車体側に係合する第一部分18と、前記雌部材4に挿入されることで前記雌部材4内に形成された内側係合部12に係合される第二部分19と、前記内装部材Tの前記移動を所定の距離に規制するように前記内装部材Tに繋がれるストラップ部分20とを備えた雄部材17として構成されている。
【0035】
図示の例では、雄部材17は、その中心軸x’(図5参照)に板面を実質的に直交させるように形成された中央基板21と、この中央基板21の一面から前記中心軸x’に沿って延び出す第一部分18と、この中央基板21の他面から前記中心軸x’に沿って延び出す第二部分19とを備えている。
【0036】
ストラップ部分20は、一端を中央基板21に一体に連接させた帯状体の他端に内装部材Tへの取付部20aを形成させた態様となっている。図示の例では、内装部材Tの取付穴Tbの形成箇所と、内装部材Tにおける車室側Rに臨む面部との間にストラップ部分20の取付部20aに対する被取付部Tcが形成されている。
【0037】
図示の例では、第一部分18は、筒一端を前記中央基板21に一体に連接させた中空の円筒状を呈している。第一部分18には、前記中心軸x’を挟んだ両側にそれぞれ係合片18aが形成されている。係合片18aは、中心軸x’に沿った一対の縦向き割溝18bと、この一対の縦向き割溝18bの中央基板21側の溝端間に亘る横向き割溝18cとにより区分された第一部分18の側部の一部によって構成されている。係合片18aの外面には前記中央基板21側に向いた係合面18eを形成させる隆起部18dが形成されている。隆起部18dの係合面18eと反対の側は傾斜面18fとなっている。
【0038】
図示の例では、車体側の取付穴Paは丸穴状であり、その穴径は第一部分18の一対の係合片18aの隆起部18dの頂部間の距離よりやや小さくなっている。
【0039】
図中符号22で示すのは、第一部分18の筒一端側から側方に延び出すと共に、延び出し端に近づくに連れて前記中央基板21との間の距離を漸増させるひれ部である。図示の例では、雄部材17の第一部分18は他方の筒端8を先にして車体側の取付穴Paの穴縁に隆起部18dの傾斜面18fを摺接させて前記係合片18aを雄部材17内に撓み込ませながら、前記ひれ部22が取付穴Paを巡る車体パネルPの外面に接する位置までこの取付穴Paに挿入されるようになっている。そして、この位置まで第一部分18が挿入されると、二箇所の係合片18aが弾性復帰して、前記の挿入先において係合面18eを取付穴Paの穴縁に係合させるようになっている。ひれ部22は前記挿入手前側において車体パネルPの外面に弾性変形状態又は弾性変形可能な状態で接し、これにより、車体側へ雄部材17をガタなく取り付けることができるようになっている(図1参照)。
【0040】
一方、前記雄部材17の前記第二部分19は、前記内側係合部12の前記弾性片12aの一面12cと、この一面12cに向き合う前記雌部材4の内面16との間に挟まれるようにして、前記雌部材4に挿入される構成となっている(図3参照)。
【0041】
図示の例では、第二部分19は、その中心軸に直交する向きの断面を、この中心軸方向のいずれの位置においても、雌部材4の前記差し込み口14と相補状をなす形状としている。
【0042】
すなわち、第二部分19は、前記中央領域ESに導入される芯板部19aによって、前記第三領域E3に導入される板状部19bと、前記第四領域E4に導入される板状部19bとを、連接させた形態となっている。
【0043】
二箇所の板状部19bの一方は、第三領域E3に臨んだ弾性片12aの一面12cに向き合う正面部19cと、第三領域E3に臨んだ雌部材4の長さ側の側板部5の内面16に向き合う背面部19dとを備えている。二箇所の板状部19bの他方は、第四領域E4に臨んだ弾性片12aの一面12cに向き合う正面部19cと、第四領域E4に臨んだ雌部材4の長さ側の側板部5の内面16に向き合う背面部19dとを備えている。
【0044】
図示の例では、背面部19dには、前記中心軸x’方向に沿った溝状の彫り込み部19eが形成されており、背面部19dは雌部材4の長さ側の側板部5の内面16にこの彫り込み部19eの入り口に形成されたリブ状部19gをもって接するようになっている(図3参照)。
【0045】
二箇所の板状部19bにそれぞれ、前記正面部19cと前記彫り込み部19eとに亘る貫通穴としての四角形の係合穴19fが形成されている。
【0046】
そして、この実施の形態にあっては、雌部材4内に雄部材17の第二部分19は、前記弾性片12aの一面12cに第二部分19の板状部19bの正面部19cを向き合わせ、かつ、雌部材4の長さ側の側板部5の内面16に第二部分19の板状部19bの背面部19dを向き合わせて、挿入されるようになっている。この挿入の過程において、雌部材4の内側係合部12の係合凸部12bは板状部19bの正面部19cに摺接して弾性片12aは弾性変形し、これにより、前記係合穴19fに係合凸部12bを入り込ませる位置まで雌部材4内への第二部分19の挿入が許容される。かかる位置までの挿入がされると、弾性片12aが弾性復帰して係合凸部12bが係合穴19fに入り込み、これにより、雄部材17と雌部材4とは一体化される(図1図2図3)。
【0047】
このように、雄部材17と雌部材4とを一体化させた状態から、雌部材4を内装部材T側の取付穴Tbに前記のように挿入・係合させると共に、雄部材17の第一部分18を車体側の取付穴Paに前記のように挿入・係合させることで、雄部材17の第二部分19と雌部材4の内側係合部12との係合を解く大きさの力以上の力が内装部材Tに作用されたときに車体側から内装部材Tを分離させるようにした状態で、クリップ装置1を介して内装部材Tを車体側に取り付けることができる(図1参照)。前記雄部材17の第二部分19と雌部材4の内側係合部12との係合を解く大きさの力の設定は、前記係合凸部12bの係合面12fの前記中心軸(筒軸x)に対する角度を変更することで容易に調整可能である。
【0048】
図示の例では、前記雌部材4の外側係合部11の内方に前記雄部材17の第二部分19の板状部19bの彫り込み部19eが位置するようになっており(図3参照)、これにより、雌部材4を内装部材T側の取付穴Tbに前記のように挿入するときの雌部材4の内方への外側係合部11の撓み込みが許容されるようになっている。
【0049】
雌部材4の内側係合部12は前記のようにいわば互い違いに配置されていることから、雄部材17の第二部分19の係合穴19fへの内側係合部12の係合凸部12bの係合量(オーバーラップ量)を適切に確保させながら、内側係合部12の弾性変形方向y(図15参照)での雌部材4の大きさは最小化させることができる。
【0050】
また、雄部材17の第二部分19は、内側係合部12の前記弾性片12aの一面12cと、この一面12cに向き合う前記雌部材4の内面16との間に挟まれるようにして、前記雌部材4に挿入されることから、前記中心軸(筒軸x)を巡る向きへの雄部材17のガタつきは効果的に抑止される。
【0051】
以上に説明した実施の形態における弾性変形特性を備えるべき部分へのこの特性の付与は、前記雌部材4及び雄部材17の全部又は一部を合成樹脂の成形品とすることで、容易に確保可能である。
【0052】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0053】
T 内装部材
Tb 取付穴
R 車室側
Pa 取付穴
1 クリップ装置
2 内装側係合部材
3 車体側係合部材
20 ストラップ部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15