(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/54 20060101AFI20240612BHJP
B60G 13/08 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
F16F9/54
B60G13/08
(21)【出願番号】P 2020194815
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】田中 一匡
(72)【発明者】
【氏名】安河内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】李 大維
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-309482(JP,A)
【文献】特開2020-041571(JP,A)
【文献】特開平11-294512(JP,A)
【文献】特開2014-058220(JP,A)
【文献】特開2019-105342(JP,A)
【文献】特開平10-119527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/54
B60G 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターシェルと、前記アウターシェル内に移動自在に挿入されるロッドとを有する緩衝器本体と、
前記アウターシェルの下端側の外周に取付けられるナックルブラケットと、
前記アウターシェルの外周の周方向に沿って湾曲する湾曲片と、前記湾曲片から延びて装着部品が取り付けられる取付片とを有し、前記湾曲片が前記アウターシェルの外周であって前記アウターシェルの軸方向で前記ナックルブラケットの上端から下端までの範囲内
の前記ナックルブラケットと離間した位置に溶接されるブラケットとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
アウターシェルと、前記アウターシェル内に移動自在に挿入されるロッドとを有する緩衝器本体と、
前記アウターシェルの下端側の外周に取付けられるナックルブラケットと、
前記アウターシェルの外周の周方向に沿って湾曲する湾曲片と、前記湾曲片から延びて装着部品が取り付けられる取付片とを有し、前記湾曲片が前記アウターシェルの外周であって前記アウターシェルの軸方向で前記ナックルブラケットの上端から下端までの範囲内にプロジェクション溶接されるブラケットとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項3】
前記ナックルブラケットは、正面側に割を有して断面C形の筒状であって前記アウターシェルの外周を抱持する抱持部と、前記抱持部の周方向両端から径方向の外側へ向けて互いに平行して延びて車両におけるナックルに連結可能な一対の連結部と、前記抱持部の背面側に設けられた切欠とを有しており、
前記ブラケットは、前記切欠に対向する前記アウターシェルの外周に前記湾曲片が溶接されて取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、アウターシェルと、アウターシェル内に移動自在に挿入されるロッドとを備え、たとえば、車両におけるサスペンションに組み込まれて使用され、アウターシェルに対してピストンロッドが軸方向に移動する伸縮時に減衰力を発揮して車体と車輪の振動を抑制する。
【0003】
このようにサスペンションに組み込まれる緩衝器は、たとえば、ストラット式サスペンションに利用される場合、アウターシェルの下端に溶接により取り付けられるとともに車両の車輪を保持するナックルに連結されるナックルブラケットを備えている。
【0004】
ナックルブラケットは、たとえば、アウターシェルの外周を抱持する断面C形であって筒状の抱持部と、抱持部の周方向両端から径方向の外側へ向けて互いに平行して延びてナックルに連結可能な一対の取付部とを備えている。
【0005】
また、緩衝器は、制動装置におけるキャリパのピストンの駆動の為に油圧を供給するブレーキホースやセンサ類等といった装着部品を取り付けるためのブラケットをナックルブラケットとは別に備える場合がある。そして、このような緩衝器では、ブラケットがナックルブラケットの抱持部の外周に溶接されて緩衝器本体に取付けられることがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
より詳細には、前記ブラケットは、母材を折り曲げ加工して構成されており、ナックルブラケットの抱持部に溶接される基部と、基部から延びて装着部品が取り付けられる先端部とを備えている。
【0008】
ブラケットの基部は、ナックルブラケットの抱持部の外周に沿うように湾曲されており、プロジェクション溶接によって前記抱持部に接合されている。つまり、ブラケットは、湾曲する基部を抱持部に周方向に沿わせてナックルブラケットに溶接される。
【0009】
ナックルブラケットを備えた緩衝器は、車両におけるサスペンションを構成して車輪の位置決めをしており、ナックルブラケットには車輪側から荷重が入力される。よって、ナックルブラケットは、緩衝器が適用される車両の仕様に応じて予め決められた荷重に耐えうるように設計されており、車種に応じて抱持部の肉厚も区々となる。
【0010】
ここで、直径が同じアウターシェルに対して、車両の仕様によって緩衝器に適用されるナックルブラケットが、肉厚が薄いものと肉厚が厚いものとで2種類ある場合、肉厚の薄いナックルブラケットの抱持部より肉厚の厚いナックルブラケットの抱持部の方が外周の直径(外径)が大きくなる。
【0011】
前述した通り、ブラケットの基部の内周は、溶接によって抱持部に接合される関係上、抱持部の外周と略同じ曲率で湾曲した形状となっていて、抱持部の外周に全体が沿った形状となっている必要がある。
【0012】
ところが、前述した通り、肉厚の薄いナックルブラケットの抱持部と肉厚の厚いナックルブラケットの抱持部とは外径が異なっており、肉厚の薄い抱持部に適合するブラケットの基部の内周は肉厚の厚い抱持部と曲率が異なるために、肉厚の厚い抱持部の外周にぴったりとは沿わず大きな隙間が生じてしまう。このように、基部と抱持部との間に大きな隙間が生じると両者を強固に溶接できなくなるため、ナックルブラケットの肉厚に応じて、曲率の異なる基部を備えたブラケットを複数用意しなければならない。
【0013】
このように従来の緩衝器では、肉厚違いのナックルブラケットが複数種類あると、肉厚が異なるごとに対応するブラケットを複数用意しなければならず、ブラケットの管理が煩雑となってしまう問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、ナックルブラケットの肉厚の違いによらず単一のブラケットを使用可能な緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記した課題を解決するために、本発明の緩衝器は、アウターシェルと、アウターシェル内に移動自在に挿入されるロッドとを有する緩衝器本体と、アウターシェルの下端側の外周に取付けられるナックルブラケットと、アウターシェルの外周の周方向に沿って湾曲する湾曲片と湾曲片から延びて装着部品が取り付けられる取付片とを有して、湾曲片がアウターシェルの外周であってアウターシェルの軸方向でナックルブラケットの上端から下端までの範囲内のナックルブラケットと離間した位置に溶接されるブラケットとを備えている。また、他の発明の緩衝器は、アウターシェルと、アウターシェル内に移動自在に挿入されるロッドとを有する緩衝器本体と、アウターシェルの下端側の外周に取付けられるナックルブラケットと、アウターシェルの外周の周方向に沿って湾曲する湾曲片と湾曲片から延びて装着部品が取り付けられる取付片とを有して、湾曲片がアウターシェルの外周であってアウターシェルの軸方向でナックルブラケットの上端から下端までの範囲内にプロジェクション溶接されるブラケットとを備えている。
【0016】
このように構成された緩衝器によれば、ブラケットの湾曲片がアウターシェルの外周であってナックルブラケットの上端から下端の範囲内に直接溶接によって取付けられる。そのため、ブラケットの湾曲片の曲率は、アウターシェルの外径のみを基準に設定されればよく、アウターシェルに取付けられるナックルブラケットの肉厚が変わってもこれに何ら影響を受けない。また、ブラケットの取付位置は、アウターシェルの外周であってナックルブラケットの上端から下端の範囲内であるため、取付片を従来の緩衝器と同等の位置に配置してもアウターシェルに溶接される湾曲片の至近にあるため、ブラケットの強度低下も招かない。
【0017】
また、緩衝器におけるナックルブラケットは、正面側に割を有して断面C形の筒状であってアウターシェルの外周を抱持する抱持部と、抱持部の周方向両端から径方向の外側へ向けて互いに平行して延びて車両におけるナックルに連結可能な一対の連結部と、抱持部の背面側に設けられた切欠とを備え、ブラケットは、切欠に対向するアウターシェルの外周に湾曲片が溶接されて取り付けられてもよい。
【0018】
このように構成された緩衝器では、ナックルブラケットを軽量化するために設けられる切欠から覗くアウターシェルの外周に湾曲片を溶接しているので、ブラケットを切欠内に配置すれば自動的にアウターシェルの外周であってナックルブラケットの上端から下端の範囲内に溶接できる。よって、このように構成された緩衝器によれば、緩衝器を軽量化できるとともにブラケットの位置決め作業も容易となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の緩衝器によれば、アウターシェルとナックルブラケットの接合強度を高めて高荷重の繰り返し入力に対する耐性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施の形態における緩衝器の側面図である。
【
図2】一実施の形態における緩衝器の背面図である。
【
図3】一実施の形態における緩衝器の底面図である。
【
図4】(a)一実施の形態の一変形例における緩衝器の側面図である。(b)一実施の形態の一変形例における緩衝器の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1および
図2に示すように、緩衝器Dは、アウターシェル2と、アウターシェル2内に移動自在に挿入されるロッド3とを有する緩衝器本体1と、アウターシェル2の下端側の外周に取付けられるナックルブラケット4と、アウターシェル2の外周に溶接されるブラケット5とを備えており、ナックルブラケット4を利用して図示しない車両の車輪を支持するナックルに連結されて車両の車体と車輪との間に介装される。
【0022】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。緩衝器本体1は、筒状のアウターシェル2と、アウターシェル2内に移動自在に挿入されるロッド3とを有して、ロッド3がアウターシェル2に対して軸方向に相対移動する伸縮作動時にロッド3のアウターシェル2に対する相対移動を妨げる減衰力を発生して、車両の車体と車輪の振動を減衰させる。
【0023】
緩衝器本体1は、たとえば、下端が閉塞される筒状のアウターシェル2と、アウターシェル2内に収容される図示しないシリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッド3と、ロッド3に連結されるとともにシリンダ内に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダとアウターシェルとの間に形成されるリザーバと、シリンダの下端に設けられて圧側室とリザーバとを仕切るバルブケースとを備えている。そして、伸側室と圧側室には、作動油等の液体が充填され、リザーバには、液体と気体とが充填されている。なお、緩衝器Dに使用される液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体でもよい。
【0024】
また、ピストンに設けられた伸側室と圧側室とを連通する通路と、圧側室とリザーバとを連通する通路には、それぞれ減衰バルブが設けられている。このように構成された緩衝器本体1は、伸縮作動時にピストンによって伸側室と圧側室とが拡縮されて液体が通路を介して移動し、この液体の流れに前記減衰バルブが抵抗を与えて減衰力を発生する。
【0025】
ナックルブラケット4は、一枚金属の母材を折り曲げ成型して構成されている。ナックルブラケット4は、アウターシェル2の外周を抱持する断面C形であって筒状の抱持部4aと、抱持部4aの周方向両端から径方向の外側へ向けて互いに平行して延びて図示しない車両におけるナックルに連結可能な一対の連結部4b,4cとを備えており、抱持部4aがアウターシェル2の外周に沿って溶接されてアウターシェル2の外周に接合される。
【0026】
抱持部4aは、
図1から
図3に示すように、正面側に割りを備えた断面C形の筒状であって、正面から見て背部の中央に矩形の切欠4dを備えている。ナックルブラケット4は、この切欠4dを備えているので、軽量化されている。
【0027】
また、連結部4b,4cは、抱持部4aの周方向の両端から互いに対向して平行に抱持部4aの径方向外側へ向けて延びていて、図示しないナックルの取付部に設けられた2つの孔に対向可能な位置にそれぞれ2つずつボルト挿入孔4b1,4c1を備えている。そして、連結部4b,4cの間に図外のナックルの取付部を挿入し、ボルト挿入孔4b1,4c1に挿入されるナックルの取付部を貫通する図示しないボルトとナットによって、連結部4b,4cと前記取付部をボルト締結して、このナックルブラケット4をナックルに取付できるようになっている。なお、連結部4b,4cの下端は、外方へ折り曲げられてフランジ部4b2,4c2が設けられ、連結部4b,4cの強度向上が図られている。
【0028】
ブラケット5は、アウターシェル2の外周であってナックルブラケット4の抱持部4aの背面側に設けられた切欠4dに対向する部位にプロジェクション溶接によって接合されている。
【0029】
詳しくは、ブラケット5は、アウターシェル2の外周の周方向に沿って湾曲する湾曲片5aと、湾曲片5aから延びて図示しない車両のブレーキホースやセンサ類等といった装着部品が取り付けられる取付片5bとを備えている。
【0030】
湾曲片5aは、周方向の先端側にアウターシェル2の軸方向の上下端が切り欠かれた凸形状をしており、周方向の中央には前記軸方向に沿って形成された溝5a1と、溝5a1を中央にして溝5a1の周方向の両側に線対象となる位置にアウターシェル2側へ突出する一対の突起5a2,5a3を備えている。
【0031】
また、湾曲片5aの周方向で基端には、取付片5bが連なっている。取付片5bは、
図1から
図3に示すように、湾曲片5aの周方向の基端から屈曲してアウターシェル2から遠ざかるように延びており、図外の装着部品を取り付けるための孔5b1および切欠5b2とを備えている。取付片5bの形状は、装着される装着部品の形状等に応じて孔5b1および切欠5b2の有無も含めて適宜設計変更可能である。なお、ブラケット5は、板状の母材をプレス加工等の折り曲げ加工によって成型されており、湾曲片5aおよび取付片5bは、前記加工により形成される。
【0032】
このように構成されたブラケット5は、ナックルブラケット4をアウターシェル2の外周に溶接によって取付けた後、ナックルブラケット4の切欠4dを通して湾曲片5aをアウターシェル2の外周に周方向に沿って配置しつつアウターシェル2に突起5a2,5a3を直接当接させる。このブラケット5をアウターシェル2の外周に位置決めする際に、湾曲片5aに軸方向に沿う溝5a1が設けられているので、溝5a1がアウターシェル2の軸線方向となるようにブラケット5を位置決めすれば、ブラケット5の湾曲片5aをアウターシェル2の軸線に対して傾かずにアウターシェル2の外周に適正な姿勢となるように位置決めできる。
【0033】
このような状態からブラケット5の突起5a2,5a3をアウターシェル2に押し当てつつ、ブラケット5とアウターシェル2とに通電してブラケット5をアウターシェル2にプロジェクション溶接する。
【0034】
ブラケット5は、湾曲片5aがアウターシェル2の外周であってアウターシェル2の軸方向でナックルブラケット4の
図1中の上端から下端までの範囲内に溶接されることで、アウターシェル2に対して取付けられる。よって、ブラケット5は、ナックルブラケット4の抱持部4aの外周に取り付けられていた従来の緩衝器と同じ位置に取付片5bを配置できるとともに、取付片5bの至近の湾曲片5aをアウターシェル2の外周に直接接合できる。なお、湾曲片5aは、一部がアウターシェル2の外周であってアウターシェル2の軸方向でナックルブラケット4の
図1中の上端から下端までの範囲内に配置されるように溶接されればよいので、湾曲片5aが前記範囲内に溶接されるとの定義には湾曲片5aの全部が当該範囲内に溶接される態様だけではなく湾曲片5aの少なくとも一部が前記範囲内に配置されて溶接される態様も包含される。
【0035】
このように、本実施の形態の緩衝器Dは、アウターシェル2と、アウターシェル2内に移動自在に挿入されるロッド3とを有する緩衝器本体1と、アウターシェル2の下端側の外周に取付けられるナックルブラケット4と、アウターシェル2の外周の周方向に沿って湾曲する湾曲片5aと湾曲片5aから延びて図外の装着部品が取り付けられる取付片5bとを有して、湾曲片5aがアウターシェル2の外周であってアウターシェル2の軸方向でナックルブラケット4の上端から下端までの範囲内に溶接されるブラケット5とを備えている。
【0036】
このように構成された緩衝器Dによれば、ブラケット5の湾曲片5aがアウターシェル2の外周であってナックルブラケット4の上端から下端の範囲内に直接溶接によって取付けられる。そのため、ブラケット5の湾曲片5aの曲率は、アウターシェル2の外径のみを基準に設定されればよく、アウターシェル2に取付けられるナックルブラケット4の肉厚が変わってもこれに何ら影響を受けない。また、ブラケット5の取付位置は、アウターシェル2の外周であってナックルブラケット4の上端から下端の範囲内であるため、取付片5bを従来の緩衝器と同等の位置に配置してもアウターシェル2に溶接される湾曲片5aの至近にあるため、ブラケット5の強度低下も招かない。以上より、本実施の形態の緩衝器Dによれば、アウターシェル2に取付けられるナックルブラケット4の肉厚の違いによらず単一のブラケット5を使用できるのである。
【0037】
また、本実施の形態の緩衝器Dにおけるナックルブラケット4は、正面側に割を有して断面C形の筒状であってアウターシェル2の外周を抱持する抱持部4aと、抱持部4aの周方向両端から径方向の外側へ向けて互いに平行して延びて車両における図外のナックルに連結可能な一対の連結部4b,4cと、抱持部4aの背面側に設けられた切欠4dとを備え、ブラケット5は、切欠4dに対向するアウターシェル2の外周に湾曲片5aが溶接されて取り付けられている。
【0038】
このように構成された緩衝器Dでは、ナックルブラケット4を軽量化するために設けられる切欠4dから覗くアウターシェル2の外周に湾曲片5aを溶接しているので、ブラケット5を切欠4d内に配置すれば自動的にアウターシェル2の外周であってナックルブラケット4の上端から下端の範囲内に溶接できる。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、緩衝器Dを軽量化できるとともにブラケット5の位置決め作業も容易となる。
【0039】
また、本実施の形態の緩衝器Dにおけるブラケット5の湾曲片5aの外周側には、軸方向に沿って溝5a1が設けられているので、溝5a1を目印にしてブラケット5の湾曲片5aをアウターシェル2の外周に適正な姿勢となるように容易に位置決めでき、また、作業者は、ブラケット5の溶接後にブラケット5がアウターシェル2に傾いて取り付けられた製品を目視で容易に確認できる。なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、湾曲片5aに溝5a1を打刻しているが、溝5a1の代わりに湾曲片5aに目印を書き込んでもよいし塗装によって目印をつけてもよい。ただし、ブラケット5は、プレス加工等によって成型されるため、湾曲片5aの成型時に溝5a1を突起5a2,5a3ともに湾曲片5aに打刻できるので、目印の書き込みや塗装といった作業を省略できる点で有利である。
【0040】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、湾曲片5aの突起5a2,5a3を設けてアウターシェル2に突起5a2,5a3のみが当接するようにしており、プロジェクション溶接時に突起5a2,5a3に集中して電流を流せるようにしているので、ブラケット5をアウターシェル2に良好に接合できる。なお、湾曲片5aをアウターシェル2にアーク溶接する場合には、突起5a2,5a3を設ける必要はなく、湾曲片5aの内周全体がアウターシェル2の外周に当接させればよい。
【0041】
なお、ナックルブラケット4は、アウターシェル2に取付けられた際にアウターシェル2の外周であってナックルブラケット4の上端から下端までの範囲にナックルブラケット4によって覆われず外部へ露出する部分を形成できればよい。そのため、ナックルブラケット4の抱持部4aにおける切欠4dは、孔状ではなく、抱持部4aの上端或いは下端に通じていてもよい。また、
図4に示した一変形例における緩衝器D1のように、ナックルブラケット41は、以下のように構成されてもよい。
【0042】
具体的には、ナックルブラケット41は、アウターシェル2の側部に対向する矩形の対向部41aと、対向部41aにおけるアウターシェル2の軸線に垂直な方向の両端からそれぞれアウターシェル2側へ延びてアウターシェル2を径方向で挟む一対の連結部41b,41cとを有していてもよい。連結部41b,41cは、対向部41aからアウターシェル2側へ向けて互いに平行に延びる直線部41b1,41c1と、直線部41b1,41c1に連なってアウターシェル2の外周に沿って湾曲して互いにアウターシェル2の外周を挟む湾曲部41b2,41c2とを備えている。ナックルブラケット4は、湾曲部41b2,41c2は、アウターシェル2の半周を覆って、湾曲部41b2,41c2の先端がアウターシェル2の外周に軸方向に沿って溶接されている。したがって、アウターシェル2のナックルブラケット41側と反対側の半分は、ナックルブラケット41に覆われずに露出している。そして、ブラケット5は、アウターシェル2のナックルブラケット41で覆われていない露出部分に溶接される。このように、ナックルブラケット41は、切欠4dを備える代わりに、アウターシェル2の外周がナックルブラケット41に覆われずに外方へ露出させるように構成されても、ブラケット5の湾曲片5aをアウターシェル2の外周であってナックルブラケット41の上端から下端までの範囲に直接溶接できる。よって、このように構成された緩衝器Dにあっても、ナックルブラケット41の肉厚の違いによらず単一のブラケット5を使用できる。また、ナックルブラケット41は、対向部41aと、連結部41b,41cとで構成されているので、アウターシェル2のナックルブラケット41と反対側にブラケット5を溶接可能な広いスペースを確保できるので、ブラケット5の溶接加工が容易となるとともに利用可能な溶接の種類も多くなるので加工自由度を向上できる。なお、ナックルブラケット41は、ブラケット5のアウターシェル2への溶接を邪魔しないことを条件にアウターシェル2の半周以上を覆っていてもよい。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1・・・緩衝器本体、2・・・アウターシェル、3・・・ロッド、4,41・・・ナックルブラケット、4a・・・抱持部、4b,4c・・・連結部、4d・・・切欠、5・・・ブラケット、5a・・・湾曲片、5b・・・取付片、D,D1・・・緩衝器