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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 15/00 20060101AFI20240612BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B23B15/00 G
B23Q7/04 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020216042
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101767
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】加藤 駿
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-001204(JP,A)
【文献】特開昭55-164402(JP,A)
【文献】特開平01-127203(JP,A)
【文献】特開2016-144850(JP,A)
【文献】特開2017-213658(JP,A)
【文献】特開昭52-095384(JP,A)
【文献】特開平04-365501(JP,A)
【文献】特開昭56-157936(JP,A)
【文献】特開平05-301140(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101920472(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 15/00
B23B 3/30
B23Q 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持しつつ回転する第1主軸と、
前記第1主軸から受け渡された前記ワークを把持しつつ回転する第2主軸と、
前記ワークを加工する工具ユニットを支持するスライド台を有し、前記スライド台を移動させる工具移動機構と、
前記スライド台とともに移動可能に前記スライド台に取り付けられ、前記第2主軸から前記ワークを受け取るアンローダ装置と、
前記アンローダ装置から前記ワークを受け取って受け渡し対象に受け渡すワークキャッチャと、を備え、
前記ワークキャッチャは、格納状態にあるとき、前記第2主軸の下部に配置され、
前記アンローダ装置が離した前記ワークを受け取る受け取り部と、
前記受け取り部にて受け取った前記ワークを前記受け渡し対象に向けて案内するワーク案内部と、
前記ワークキャッチャを展開状態及び前記格納状態の間で移行させる状態移行部と、を備え、
前記ワークキャッチャが前記展開状態にあるとき、前記受け取り部及び前記ワーク案内部は前記アンローダ装置が前記ワークを離した位置から前記受け渡し対象に向けて連続するように並べられ、
前記ワークキャッチャが前記格納状態にあるとき、前記受け取り部及び前記ワーク案内部は互いに重なるように並べられ、
前記第1主軸で加工された前記ワークを前記第2主軸に受け渡す際に、前記ワークキャッチャは前記格納状態である、
工作機械。
【請求項2】
前記ワークキャッチャが前記展開状態にあるとき、前記受け取り部の傾斜角度は、前記ワーク案内部の傾斜角度より小さい、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記ワークキャッチャが前記格納状態にあるとき、前記受け取り部の傾斜角度は、前記ワーク案内部の傾斜角度と略同じである、
請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記アンローダ装置は前記ワークを掴むハンド部を備え、
前記ハンド部と前記第2主軸とを相対的に移動させることで、前記第2主軸から前記ハンド部で前記ワークを途中まで引き抜き、途中まで引き抜いた前記ワークの前記第2主軸内にあった部分を前記ハンド部で掴む、
請求項1から3の何れか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の工作機械は、ワークを把持しつつ回転する主軸と、ワークを把持する主軸の背面側から挿入されるワーク排出部材と、主軸の先端側にワークを押し出すようにワーク排出部材を移動させるワーク排出用サーボモータ及び変換機構と、主軸からワークを受け取って把持してワークコンベアに落下させるローダユニットと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-62009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成において、ローダユニットを主軸に対して移動可能とするためには、新たな移動機構が必要となり、構成が複雑となる。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、より簡易な構成を実現することができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る工作機械は、ワークを把持しつつ回転する第1主軸と、前記第1主軸から受け渡された前記ワークを把持しつつ回転する第2主軸と、前記ワークを加工する工具ユニットを支持するスライド台を有し、前記スライド台を移動させる工具移動機構と、前記スライド台とともに移動可能に前記スライド台に取り付けられ、前記第2主軸から前記ワークを受け取るアンローダ装置と、前記アンローダ装置から前記ワークを受け取って受け渡し対象に受け渡すワークキャッチャと、を備え、前記ワークキャッチャは、格納状態にあるとき、前記第2主軸の下部に配置され、前記アンローダ装置が離した前記ワークを受け取る受け取り部と、前記受け取り部にて受け取った前記ワークを前記受け渡し対象に向けて案内するワーク案内部と、前記ワークキャッチャを展開状態及び前記格納状態の間で移行させる状態移行部と、を備え、前記ワークキャッチャが前記展開状態にあるとき、前記受け取り部及び前記ワーク案内部は前記アンローダ装置が前記ワークを離した位置から前記受け渡し対象に向けて連続するように並べられ、前記ワークキャッチャが前記格納状態にあるとき、前記受け取り部及び前記ワーク案内部は互いに重なるように並べられ、前記第1主軸で加工された前記ワークを前記第2主軸に受け渡す際に、前記ワークキャッチャは前記格納状態である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より簡易な構成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る展開状態のワークキャッチャ及び第2主軸ユニットの正面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る(a)は格納状態のワークキャッチャの平面図であり、(b)は格納状態のワークキャッチャの正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る(a)~(c)はワークを掴み替える際のハンド部の動作を示す概略図である。
図6】本発明の一実施形態に係る加工処理の手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係るワーク受け取り処理の手順を示すサブフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る工作機械について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、工作機械1は、NC(Numerical Control)旋盤である。工作機械1は、工作機械1全体の台であるベッドSと、第1主軸11を有する第1主軸ユニット10と、第2主軸21を有する第2主軸ユニット20と、第1主軸移動機構15と、第2主軸移動機構25と、工具移動機構40と、工具ユニット50と、アンローダ装置60と、ワークキャッチャ70と、ワークコンベア80と、制御部300と、を備える。
以下では、第1主軸11及び第2主軸21の回転軸に沿う軸線方向をZ軸方向と規定し、Z軸方向に直交する高さ方向をY軸方向と規定し、Y軸方向及びZ軸方向に直交する方向をX軸方向と規定する。
【0010】
図1に示すように、第1主軸ユニット10は、ワークWを把持しつつ回転させる。具体的には、第1主軸ユニット10は、第1主軸11と、第1主軸11を回転可能に支持する第1主軸台12と、を備える。第1主軸11は、ワークWの一端を把持する。第1主軸台12には、第1主軸11を回転させるワーク回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。
第1主軸移動機構15は、第1主軸ユニット10をZ軸方向に移動させる。
【0011】
第2主軸ユニット20は、Z軸方向に第1主軸ユニット10と向かい合う位置に設けられている。第2主軸ユニット20は、ワークWの他端を把持する第2主軸21と、第2主軸21を回転可能に支持する第2主軸台22と、を備える。第2主軸台22には、第2主軸21を回転させるワーク回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。
第2主軸移動機構25は、第2主軸ユニット20をZ軸方向に移動させる。
【0012】
図2に示すように、工具移動機構40は、ワークWを加工するための工具ユニット50をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させる。工具移動機構40は、スライド台41X,41Y,41Zと、スライド台41X,41Y,41Z及び工具ユニット50をZ軸方向に移動させるZ軸移動部42Zと、スライド台41X,41Y及び工具ユニット50をX軸方向に移動させるX軸移動部42Xと、スライド台41Y及び工具ユニット50をY軸方向に移動させるY軸移動部42Yと、を備える。
【0013】
工具ユニット50は工具51を回転させるツールスピンドルである。工具ユニット50はスライド台41Yに支持されている。工具ユニット50は、工具51と、工具51を支持する工具支持部52と、を備える。工具支持部52は工具51を軸回転可能に支持する。工具51は、回転ドリルであり、工具回転駆動源からの回転力を受けて回転させられる。また、工具支持部52は、スライド台41Yに対して、Y軸方向に沿う回転軸を中心とした回転方向であるB軸方向に回転可能に構成される。
なお、工具ユニット50は、回転ドリルに限らず、バイト等のその他の工具を備えていてもよい。
【0014】
第1主軸移動機構15、第2主軸移動機構25、X軸移動部42X、Y軸移動部42Y及びZ軸移動部42Zは、それぞれ、モータ、ボールねじ及びナットを有し、モータの回転力をボールねじ及びナットにより直線運動に変換することにより、対応する第1主軸ユニット10、第2主軸ユニット20及びスライド台41X,41Y,41Zを直線的に移動可能な構成からなる。
【0015】
図2に示すように、アンローダ装置60は、工具移動機構40のスライド台41Yに固定され、スライド台41YとともにX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動する。アンローダ装置60は第2主軸21(図1参照)により把持されたワークWを第2主軸21から受け取り、受け取ったワークWをワークキャッチャ70に受け渡す。
図1に示すように、アンローダ装置60は、Z軸方向において、工具ユニット50と異なる位置、例えば、工具ユニット50よりも第2主軸21に近い位置に設けられ、スライド台41Yとは独立して後述するハンド部61をY軸方向に移動可能に構成される。
【0016】
詳しくは、図2に示すように、アンローダ装置60は、ハンド部61と、駆動部62と、スライダ63と、ハンド支持部64と、を備える。
ハンド部61は、ワークWを把持する部位であり、ワークWを把持した把持状態と把持したワークWを離す把持解除状態の間で切り替わる。ハンド支持部64は、スライダ63とハンド部61の間に位置する。ハンド支持部64は、X軸方向においてハンド部61を工具ユニット50からオフセット距離Osだけ離れた位置に支持する。ハンド部61と工具ユニット50がX軸方向にオフセット距離Osだけずらされることにより、第2主軸21により支持されるワークWをハンド部61が掴み替える際にワークWが工具ユニット50に接触することが回避される。スライダ63は、スライド台41Yに設けられるレール41Rに沿ってY軸方向に移動可能に構成される。
【0017】
駆動部62は、スライダ63をハンド部61及びハンド支持部64とともにY軸方向に移動させる。駆動部62は、流体式シリンダ、例えば、エアシリンダである。なお、駆動部62は、エアシリンダに限らず、油圧式シリンダであってもよい。
詳しくは、駆動部62は、シリンダ部62aと、駆動軸部62bと、を備える。シリンダ部62aは、スライド台41Yに固定され、Y軸方向に長い筒状をなす。駆動軸部62bは、シリンダ部62aの下端面から外出し、Y軸方向に延びる円柱状をなす。駆動軸部62bの下端部にはスライダ63が固定されている。シリンダ部62aは、駆動軸部62bをハンド部61、スライダ63及びハンド支持部64とともにY軸方向に移動させる。
【0018】
図2に示すように、ハンド部61は、駆動部62により、受け渡し位置P1、受け取り位置P2及び待機位置P3の間で移動可能である。受け渡し位置P1は、Y軸方向において、第2主軸21(図3参照)よりも下方に位置し、ワークキャッチャ70に対向する位置にある。図1に示すように、受け取り位置P2は、Y軸方向において、第2主軸21により把持されたワークWと同じ高さにある。待機位置P3は第2主軸21よりも上方に位置する。ハンド部61が待機位置P3にあるときには、ハンド部61が第1主軸11又は第2主軸21の移動を阻害することが回避され、ワークWの加工に伴う切粉又はクーラント液がハンド部61に付着しづらい。
【0019】
図3に示すように、ワークキャッチャ70は、ハンド部61から離されたワークWを受けてワークコンベア80に運ぶ。ワークキャッチャ70は、第2主軸ユニット20とともに移動可能に第2主軸ユニット20に取り付けられている。詳しくは、ワークキャッチャ70は、駆動部71と、プレート73と、一対のガイドシャフト74と、受け取り部75と、ワーク案内部76と、ヒンジ77と、ローラ部78と、を備える。
【0020】
ワークキャッチャ70は、図3に示す展開状態と、図4(a),(b)に示す格納状態との間で移行可能に構成される。まず、図3に示す展開状態におけるワークキャッチャ70の構成について説明する。
受け取り部75及びワーク案内部76は、受け渡し位置P1にあるハンド部61とワークコンベア80の間に連続するように並べられ、受け渡し位置P1のハンド部61から離されたワークWが自重によりワークコンベア80に向かって滑るように傾斜している。すなわち、受け取り部75及びワーク案内部76は、Z軸方向においてワークコンベア80に近づくにつれて下方(重力方向)に向かうように傾斜している。
【0021】
受け取り部75は、受け渡し位置P1のハンド部61の直下に位置する。ワーク案内部76は、受け取り部75のハンド部61から遠い端部とワークコンベア80の上面の間に延びる。受け取り部75は、プレート73を介して駆動部71に接続されている。ワーク案内部76は、固定部79を介して第2主軸ユニット20の下方に固定される。
【0022】
ローラ部78は、受け取り部75の下面側に、X軸方向に延びる回転軸を中心に回転可能に支持される。ローラ部78は、ワークキャッチャ70が展開状態と格納状態の間で移行する際にワーク案内部76の上面を転がる。
【0023】
図3に示すように、駆動部71は、プレート73を介して受け取り部75をZ軸方向に移動させる。駆動部71は、流体式シリンダ、例えば、エアシリンダである。なお、駆動部71は、エアシリンダに限らず油圧式シリンダであってもよい。
詳しくは、駆動部71は、シリンダ部71aと、駆動軸部71bと、を備える。シリンダ部71aは、第2主軸台22の下部に固定部79を介して固定され、Z軸方向に長い筒状をなす。シリンダ部71aの先端部が固定部79に固定され、シリンダ部71aの後端部は第2主軸台22よりも後側に位置する。シリンダ部71aの先端面(図3の左側の面)からZ軸方向に延びる円柱状の駆動軸部71bが突出する。シリンダ部71aは、駆動軸部71bをZ軸方向に進退移動させる。シリンダ部71aの先端にはプレート73が固定される。
【0024】
図4(a)に示すように、プレート73は、受け取り部75をその幅方向(X軸方向)から挟み込むように形成される。受け取り部75は、プレート73内においてヒンジ77を介してプレート73に対して回転可能に設けられている。ヒンジ77は、プレート73と受け取り部75のそれぞれの先端側に位置している。
【0025】
一対のガイドシャフト74は、それぞれZ軸方向に延び、X軸方向において駆動部71、プレート73及び受け取り部75を挟み込むように並べられる。一対のガイドシャフト74は、プレート73に固定されており、固定部79によりZ軸方向に移動可能に支持される。一対のガイドシャフト74により、プレート73と受け取り部75のZ軸方向への移動が安定する。
【0026】
次に、ワークキャッチャ70が図3に示す展開状態から図4(a),(b)に示す格納状態に移行する際の作用について説明する。
展開状態において、駆動部71は、駆動軸部71bを退避させることにより、プレート73を介して受け取り部75をシリンダ部71aに近づくように移動させる。これにより、受け取り部75は、ローラ部78がワーク案内部76の上面を転がりつつZ軸方向に移動してワーク案内部76に重なっていく。この際、受け取り部75は、ヒンジ77を中心にローラ部78がワークコンベア80に近づく方向に回転する。
図4(b)に示すように、ローラ部78がワーク案内部76のワークコンベア80に近い端部に到達すると、ワークキャッチャ70が格納状態となる。この格納状態においては、第2主軸ユニット20の下方において受け取り部75とワーク案内部76がY軸方向に重なる。よって、ワークキャッチャ70がコンパクトとなる。また、ワークキャッチャ70が第2主軸ユニット20の下方に位置するため、加工の邪魔とならない。
【0027】
ワークキャッチャ70を格納状態から展開状態に移行させる際には、駆動部71は、駆動軸部71bを前進させることにより、プレート73を介して受け取り部75をシリンダ部71aから離れるように移動させる。これにより、受け取り部75は、ローラ部78がワーク案内部76の上面を転がりつつ第2主軸21の先端側に向けて移動し、ワーク案内部76にZ軸方向に連続する位置となる。この際、受け取り部75は、ヒンジ77を中心にローラ部78がワークコンベア80から離れる方向に回転する。これにより、ワークキャッチャ70が展開状態となる。
以上で、ワークキャッチャ70の作用の説明を終了する。
【0028】
図3に示すように、ワークコンベア80は、ワークキャッチャ70を介して運ばれたワークWを機外に排出する。ワークコンベア80は、ベッドS(図1参照)に対して固定され、第2主軸台22及び駆動部71の下方に設けられる。
詳しくは、ワークコンベア80は、歯車81,82と、ベルト83と、を備える。歯車81,82は、Z軸方向に並べられ、図示しないモータにより回転駆動される。ベルト83は歯車81,82の間に掛け回されている。歯車81,82の回転駆動によりベルト83の上面に設置されたワークWが機外に運ばれる。ベルト83の上面は、展開状態におけるワーク案内部76の下端に対向して位置する。
【0029】
制御部300は、第1主軸ユニット10、第2主軸ユニット20、第1主軸移動機構15、第2主軸移動機構25、工具移動機構40、工具ユニット50、アンローダ装置60、ワークキャッチャ70及びワークコンベア80を制御する。制御部300は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、CPUによる処理の手順を定義したプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)等を備える。
【0030】
次に、図6のフローチャートを参照しつつ制御部300による加工処理について説明する。制御部300は、事前に作成されたNCプログラムに従って、この加工処理を実行する。この加工処理の開始時には、ハンド部61は待機位置P3に存在し、ワークキャッチャ70は格納状態にある。
【0031】
まず、制御部300は、第1主軸ユニット10により把持されたワークWの前面側(第1端部側)を加工する(S101)。例えば、制御部300は、ワークWを把持する第1主軸11を軸回転させた状態で、図示しないタレットに装着されるバイトの先端がワークWの外周面に接触させつつ第1主軸移動機構15を介してワークWをZ軸方向に送る。これにより、ワークWの外径切削が行われる。また、例えば、制御部300は、ワークWを把持する第1主軸11の軸回転を停止した状態で工具51を軸回転させてワークWの穴開け加工を行う。
【0032】
次に、制御部300は、第2主軸移動機構25を介して第2主軸ユニット20を第1主軸11にZ軸方向に対向する位置に移動させ、第1主軸ユニット10から第2主軸ユニット20にワークWを受け渡す(S102)。そして、制御部300は、第2主軸ユニット20により把持されたワークWの背面側(第2端部側)を加工する(S103)。このステップS103の加工方法は、上記ステップS101の加工方法と同様である。
【0033】
次に、制御部300は、アンローダ装置60を介して第2主軸ユニット20からワークWを受け取る(S104)。
このステップS104に係るワーク受け取り処理を、図7のサブフローチャート及び図5に沿って説明する。
制御部300は、工具移動機構40を介してスライド台41Yをアンローダ装置60とともに移動させて、ハンド部61を第2主軸21により把持されたワークWの上方に位置させる(S104a)。
【0034】
次に、制御部300は、アンローダ装置60を介して、図5(a)の矢印J1に示すように、ハンド部61を待機位置P3から受け取り位置P2に移動させ、ハンド部61によりワークWを把持させる(S104b)。このステップS104bの後のステップS104c、S104dの処理により、ハンド部61は第2主軸21に支持されるワークWを掴み替える。
詳しくは、制御部300は、工具移動機構40を介して、図5(a)の矢印J2に示すように、ハンド部61をZ軸方向における第2主軸21から離れる方向に移動させて、第2主軸21からワークWを途中まで引き抜く(S104c)。このワークWが引き抜かれる際に第2主軸21のワークWを把持した状態が解除される。また、この際、ハンド部61は、ワークWの中央部が第2主軸21から外部に露出する距離だけ移動する。
【0035】
次に、制御部300は、ハンド部61を把持解除状態に切り替えたうえで、工具移動機構40を介して、図5(b)の矢印J3に示すように、ハンド部61をZ軸方向における第2主軸21に近づく方向に移動させ、ハンド部61によりワークWの中央部を把持させる(S104d)。ステップS104c、S104dの処理により、ハンド部61がワークWを掴み替えることにより、ハンド部61がワークWを安定的に把持及び運搬可能となる。
【0036】
そして、制御部300は、工具移動機構40を介して、図5(b)の矢印J4に示すように、ハンド部61をZ軸方向における第2主軸21から離れる方向に移動させ、図5(c)に示すように、ハンド部61によりワークWの全域を第2主軸21から引き抜き(S104e)、ステップS104に係るワーク受け取り処理を終了し、図6のステップS105に移行する。
図2に示すように、X軸方向においてハンド部61が工具ユニット50からオフセット距離Osだけずらされているため、このステップS104eにおいて、ハンド部61が把持したワークWが工具ユニット50に接触することが抑制される。
【0037】
図6に示すように、制御部300は、ワークキャッチャ70を格納状態から展開状態に移行させる(S105)。
次に、制御部300は、アンローダ装置60を介して、ハンド部61を受け取り位置P2から受け渡し位置P1に移動させ、ワークWを把持したハンド部61をワークキャッチャ70の受け取り部75に対向させる(S106)。そして、制御部300は、ワークWを把持したハンド部61を把持状態から把持解除状態に切り替えて、ハンド部61からワークWを受け取り部75に受け渡す(S107)。これにより、ワークWが受け取り部75及びワーク案内部76に沿ってワークコンベア80に運ばれる。制御部300は、ワークWがワークコンベア80に到達したタイミングで、ワークキャッチャ70を展開状態から格納状態に戻して(S108)、加工処理を終了する。
上述した加工処理は、ワークWの加工毎に繰り返される。
【0038】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)工作機械1は、ワークWを把持しつつ回転する主軸の一例である第2主軸21と、ワークWを加工する工具ユニット50を支持するスライド台41Yを有し、スライド台41Yを移動させる工具移動機構40と、スライド台41Yとともに移動可能にスライド台41Yに取り付けられ、第2主軸21からワークWを受け取るアンローダ装置60と、を備える。
この構成によれば、アンローダ装置60は、スライド台41Yに取り付けられ、工具移動機構40のスライド台41Yとともに移動可能に構成される。よって、アンローダ装置60は、工具移動機構40を利用して移動可能となる。このため、アンローダ装置60の独立した移動機構を減らすことができ、より簡易な構成を実現することができる。
【0039】
(2)アンローダ装置60は、第2主軸21からワークWを受け取るハンド部61を備える。ハンド部61は、第2主軸21の回転軸に沿う軸線方向(Z軸方向)に交わるX軸方向において工具ユニット50と異なる位置に設けられる。
この構成によれば、ハンド部61により把持されたワークWが工具ユニット50に接触することが回避され、ワークWを把持したハンド部61のZ軸方向の移動領域を増やすことができる。特に、ハンド部61が第2主軸21に支持されるワークWを掴み替える際に、ワークWが工具ユニット50に接触することが回避される。
【0040】
(3)工作機械1は、アンローダ装置60からワークWを受け取るワークキャッチャ70を備える。アンローダ装置60は、ハンド部61を第2主軸21の軸線方向(Z軸方向)に交わるY軸方向に移動させる駆動部71を備える。駆動部71は、ハンド部61を、ワークキャッチャ70に対向しハンド部61からワークキャッチャ70にワークWを受け渡す受け渡し位置P1、第2主軸21からワークWを受け取る受け取り位置P2、及び受け取り位置P2の受け渡し位置P1とは反対側に位置する待機位置P3の間で移動させる。
この構成によれば、ハンド部61は、ワークキャッチャ70にワークWを受け渡す際に、ワークキャッチャ70に対向する受け渡し位置P1に位置する。これにより、ハンド部61がワークWをワークキャッチャ70に落下させてワークWを受け渡す際、この落下に伴う衝撃を小さくすることができ、ワークW又はワークキャッチャ70が傷付くことが抑制される。
また、ワークWの加工中に、ハンド部61を待機位置P3に位置させることにより、ハンド部61が加工の邪魔となることが抑制される。
【0041】
(4)工作機械1は、アンローダ装置60からワークWを受け取って受け渡し対象の一例であるワークコンベア80に受け渡すワークキャッチャ70を備える。ワークキャッチャ70は、アンローダ装置60が離したワークWを受け取る受け取り部75と、受け取り部75にて受け取ったワークWをワークコンベア80に向けて案内するワーク案内部76と、アンローダ装置60を展開状態及び格納状態の間で移行させる状態移行部の一例である駆動部71と、を備える。ワークキャッチャ70が展開状態にあるとき、受け取り部75及びワーク案内部76は、アンローダ装置60がワークWを離した受け渡し位置P1からワークコンベア80に向けて連続するように並べられる。ワークキャッチャ70が格納状態にあるとき、受け取り部75及びワーク案内部76は互いに重なるように並べられる。
この構成によれば、ワークキャッチャ70は格納状態となることによりコンパクトとなり、ワークWの加工の邪魔となることが抑制される。
また、ワークキャッチャ70が展開状態となることにより、第2主軸21の近くでアンローダ装置60からワークWを受け取ることができる。よって、アンローダ装置60は、より短時間で、第2主軸21から受け取ったワークWを展開状態のワークキャッチャ70に受け渡すことができる。
【0042】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0043】
(変形例)
上記実施形態においては、工作機械1は、第1主軸ユニット10及び第2主軸ユニット20を備えていたが、第1主軸ユニット10及び第2主軸ユニット20の何れか一方が省略されてもよい。
【0044】
上記実施形態におけるワークコンベア80は省略されてもよい。この場合、ワークキャッチャ70は、加工済みのワークWをワーク収容箱に収容してもよい。
【0045】
上記実施形態においては、アンローダ装置60は、ハンド部61をY軸方向に独立して移動可能に構成されていたが、ハンド部61をY軸方向に独立して移動不能に構成されてもよい。この場合、駆動部62とスライダ63が省略される。
また、上記実施形態においては、アンローダ装置60は、第2主軸21により支持されるワークWを掴み替えていたが、これに限らず、ワークWを掴み替えずに第2主軸21からワークWを引き抜いてもよい。
【0046】
上記実施形態においては、ワークキャッチャ70は、展開状態と格納状態の間で移行可能に構成されていたが、これに限らず、展開状態と格納状態の間で移行不能に構成されてもよい。この場合、ローラ部78が省略され、受け取り部75及びワーク案内部76はZ軸方向に連続して互いに連結されてなる。
【符号の説明】
【0047】
1…工作機械、10…第1主軸ユニット、11…第1主軸、12…第1主軸台、15…第1主軸移動機構、20…第2主軸ユニット、21…第2主軸、22…第2主軸台、25…第2主軸移動機構、40…工具移動機構、41R…レール、41X,41Y,41Z…スライド台、42X…X軸移動部、42Y…Y軸移動部、42Z…Z軸移動部、50…工具ユニット、51…工具、52…工具支持部、60…アンローダ装置、61…ハンド部、62…駆動部、62a…シリンダ部、62b…駆動軸部、63…スライダ、64…ハンド支持部、70…ワークキャッチャ、71…駆動部、71a…シリンダ部、71b…駆動軸部、73…プレート、74…ガイドシャフト、75…受け取り部、76…ワーク案内部、77…ヒンジ、78…ローラ部、79…固定部、80…ワークコンベア、81,82…歯車、83…ベルト、300…制御部、P1…受け渡し位置、P2…受け取り位置、P3…待機位置、S…ベッド、W…ワーク、Os…オフセット距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7