(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】屋根材の積層体
(51)【国際特許分類】
E04D 1/30 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
E04D1/30 603Z
(21)【出願番号】P 2020217252
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 襟子
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-123930(JP,A)
【文献】特開2012-167477(JP,A)
【文献】実開昭52-039467(JP,U)
【文献】実開昭50-107569(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0112406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00、1/12、1/26、1/30
B65D 85/30-85/48;85/86;85/90
B65D 67/00-79/02;81/18-81/30、81/38;85/88
B65D 85/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原屋根材をカットしてなる複数のカット屋根材を三層以上に積み重ねて構成される屋根材の積層体であって、
前記複数のカット屋根材のうち表面積の大きい順に一番目から所定番目までの複数のものを大型カット屋根材とし、
最下層に、複数の前記大型カット屋根材のうちの第1大型カット屋根材が配置され、
最上層に、複数の前記大型カット屋根材のうちの第2大型カット屋根材が配置され、
前記最下層と前記最上層との間の一層又は複数層からなる中間層に、前記第1大型カット屋根材及び前記第2大型カット屋根材以外の前記カット屋根材が配置されている、
屋根材の積層体。
【請求項2】
少なくとも一の前記中間層に、複数の前記カット屋根材が配置されており、
前記中間層に配置される前記複数のカット屋根材は、積層方向に見て、一の前記原屋根材の輪郭内に収まるように配置されている、
請求項1に記載の屋根材の積層体。
【請求項3】
前記中間層の各層において、一又は複数の前記カット屋根材は、積層方向に見て、一の前記原屋根材の輪郭と略同じ大きさとなるように配置されている、
請求項2に記載の屋根材の積層体。
【請求項4】
前記原屋根材は、略矩形状をなし、前記中間層の各層において、前記カット屋根材は、前記原屋根材の長手方向の長さと略同じ長さとなるように配置されている、
請求項3に記載の屋根材の積層体。
【請求項5】
前記カット屋根材は、所定形状の前記原屋根材が、所定方向に延びる任意の切断面に沿ってカットされて形成されるものであり、
前記中間層に配置される前記複数のカット屋根材は、一の前記カット屋根材の前記切断面と、他の前記カット屋根材の前記切断面とが対向しかつ平行となるように配置されている、
請求項2~4のいずれか一項に記載の屋根材の積層体。
【請求項6】
少なくとも一の前記中間層に、三個の前記カット屋根材が配置されており、
これらのうち最も表面積の小さい前記カット屋根材は、残りの二個の前記カット屋根材の間に配置されている、
請求項2~5のいずれか一項に記載の屋根材の積層体。
【請求項7】
少なくとも一の前記中間層かあるいは前記積層体の外側に、緩衝材が配置されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の屋根材の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平形スレートカット瓦の輸送時の積重ね方法が開示されている。この輸送時の積重ね方法では、屋根の隅棟部または谷部を構成するカット瓦において、一枚の平形スレート瓦からカットされ廃材となる瓦を除いた一枚もしくは二枚の平形スレートカット瓦を、一枚の平形スレートカット瓦の場合は一枚のみを、二枚の平形スレートカット瓦の場合は平面上に下端縁の一端を接触させ下端縁が一直線になるように、かつ並べた二枚の平形スレートカット瓦の重心位置ができるだけ中央部になるように並べ、前記一枚もしくは二枚の平形スレートカット瓦の下端縁の両端を揃えると共に下端縁側が垂直面を構成するように積重ねて輸送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した軒先構造にあっては、最下段と最上段の平形スレートカット瓦は特に一枚の平形スレートカット瓦からなるものではない。このため、輸送時に積重ねた平形スレートカット瓦に上から荷重が掛かったり曲げモーメントが掛かったりすると、最下段と最上段のそれぞれ二枚の平形スレートカット瓦が互いに折れ曲がって平板形状を保てなくなると共に、積重ねた平形スレートカット瓦の全体も変形しやすくなる。また、中途の段の平形スレートカット瓦に大きな荷重や曲げモーメントが掛かりやすい。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、全体の形状が変形しにくく、中間層のカット屋根材に荷重や曲げモーメントが掛かりにくい屋根材の積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の屋根材の積層体は、原屋根材をカットしてなる複数のカット屋根材を三層以上に積み重ねて構成される。前記複数のカット屋根材のうち表面積の大きい順に一番目から所定番目までの複数のものを大型カット屋根材とする。前記積層体の最下層に、複数の前記大型カット屋根材のうちの第1大型カット屋根材が配置される。前記積層体の最上層に、複数の前記大型カット屋根材のうちの第2大型カット屋根材が配置される。前記積層体の前記最下層と前記最上層との間の一層又は複数層からなる中間層に、前記第1大型カット屋根材及び前記第2大型カット屋根材以外の前記カット屋根材が配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の屋根材の積層体によれば、全体の形状が変形しにくく、中間層のカット屋根材に荷重や曲げモーメントが掛かりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、同上の屋根における一つの屋根面の一部を示す平面図である。
【
図3】
図3Aは、原屋根材の正面図である。
図3Bは、カット屋根材の一例の正面図である。
図3Cは、カット屋根材の他例の正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る積層体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る屋根材の積層体について、実施形態に基づいて説明する。なお、本発明に係る屋根材の積層体の実施形態は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
【0010】
(1)概要
図4に示すように、本発明に係る屋根材2の積層体1は、原屋根材3をカットしてなる複数のカット屋根材4を三層以上に積み重ねて構成される。複数のカット屋根材4のうち表面積の大きい順に一番目から所定番目までの複数のものを大型カット屋根材40とする。積層体1の最下層11に、複数の大型カット屋根材40のうちの第1大型カット屋根材401が配置される。積層体1の最上層12に、複数の大型カット屋根材40のうちの第2大型カット屋根材402が配置される。積層体1の最下層11と最上層12との間の一層又は複数層からなる中間層13に、第1大型カット屋根材401及び第2大型カット屋根材402以外のカット屋根材4が配置されている。
【0011】
この屋根材2の積層体1にあっては、最下層11及び最上層12に大型カット屋根材40が用いられている。このため、積層体1に荷重や曲げモーメントが掛かっても、最下層11及び最上層12を構成する大型カット屋根材40が若干撓んだりするものの、積層体1全体の形状は変形しにくい。また、中間層13に配置されるカット屋根材4には最下層11及び最上層12に掛かるような荷重や曲げモーメントが掛かりにくく、破損しにくい。
【0012】
(2)詳細な説明
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基づいて説明する。まず、原屋根材3をカットしてなるカット屋根材4について説明する。
【0013】
カット屋根材4は、例えば寄棟屋根等の屋根構造6において用いられる。
図1に示す寄棟屋根は、一つの大棟61と、四つの隅棟62とを有している。なお、屋根構造6によって形成される屋根は、隅棟62を有する屋根であればよく、寄棟屋根に限定されない。屋根構造6によって形成される屋根は、例えば、方形屋根又は入母屋屋根等であってもよい。
【0014】
屋根構造6は、屋根下地(不図示)と、複数の屋根材2と、を備える。屋根下地は、図示しないが、野地板及び下葺材を有し、水下側に近い部分ほど下方に位置するように傾斜している。野地板の上面に、下葺材(防水シート)が敷かれる。下葺材は、例えば、合成高分子系下葺材又はアスファルトルーフィングである。
【0015】
複数の屋根材2は、屋根下地の上面を構成する下地面に葺かれる。屋根構造6は、隅棟62を介して隣接する複数の下地面(屋根下地)を有する。ここで、水下側(軒側)に向かう方向と、水上側(軒とは反対側)に向かう方向との二方向を「縦方向」と定義する。更に、各下地面において、縦方向と直交し、かつ、水平で互いに逆向きとなる二方向を「横方向」と定義する。一の下地面において隣接する二つの隅棟62のうち、左側に位置する隅棟62を第1隅棟621とし、右側に位置する隅棟62を第2隅棟622とする。
【0016】
図2に示すように、下地面には、複数の屋根材2が千鳥葺きされる。千鳥葺きとは、縦方向に隣り合う屋根材2が、横方向において屋根材2の働き幅21の半分の寸法(半裁サイズ)だけずれた状態で葺かれることをいうものとする。
【0017】
屋根材2は、平板状の横葺き屋根材であって、例えば、セメント系成形材料を成形し、養生硬化することで製造される。本実施形態では、各下地面において横方向に並ぶ屋根材2が、第2隅棟622側(右側)に位置する屋根材2から第1隅棟621側(左側)に向かって順に葺かれ、各下地面において縦方向に並ぶ屋根材2が、水下側に位置する屋根材2から水上側に向かって(本実施形態では、軒先から棟に向かって)順に葺かれる。
【0018】
各下地面において、複数の屋根材2は、横方向に隣り合う屋根材2のうち第2隅棟622側に位置する屋根材2における第1隅棟621側の端部が、第1隅棟621側に位置する屋根材2における第2隅棟622側の端部の上に重なる状態で葺かれる。また、各下地面において、複数の屋根材2は、横方向に隣り合う屋根材2の水下側の端縁同士が縦方向において揃う状態で葺かれる。なお、複数の屋根材2は、横方向に隣り合う屋根材2の端面同士が突き付けられた状態で、葺かれてもよい。
【0019】
各下地面において、複数の屋根材2は、縦方向に隣り合う屋根材2のうち上段の屋根材2における水下側の端部が、下段の屋根材2における水上側の端部の上に重なる状態で葺かれる。
【0020】
各屋根材2の上面は、隣接する屋根材2によって覆われて露出しない非曝露部(不図示)と、隣接する屋根材2によって覆われずに露出する曝露部22とを有する。屋根材2の働き長さ23は、曝露部22の縦方向の寸法である。屋根材2の働き幅21は、曝露部22の横方向の寸法である。
【0021】
屋根構造6は、複数の屋根材2として、複数の通常屋根材24と、複数の隅棟屋根材25と、を備える。通常屋根材24は、各下地面において横方向の両端部を除く他の部分に葺かれて、いずれの隅棟62にも沿わない。隅棟屋根材25は、各下地面において横方向の両端部の各々に葺かれ、隅棟62に沿う。すなわち、屋根材2には、隅棟62に沿う隅棟屋根材25と、隅棟62に沿わない通常屋根材24との2種類がある。
【0022】
複数の通常屋根材24は、形状及び大きさが同じである。なお、本明細書における「同じ」とは、厳密な同一性までは要求されず、当該分野において同じとみなし得る程度であればよい。
【0023】
通常屋根材24は、平板状であり、かつ、平面視で横方向に延びた略矩形状であり、より詳細には、横長矩形板状の短手方向一端部の両端部を切り落とした六角形状をなしている。各通常屋根材24は、働き幅21が互いに同じになり、かつ、働き長さ23が互いに同じになるように、屋根下地に施工される。なお、通常屋根材24の形状は、本実施形態の形状に限定されない。
【0024】
隅棟屋根材25は、平板状であり、かつ、平面視略台形状又は略三角形状である。なお、隅棟屋根材25の形状は、本実施形態の形状に限定されない。
【0025】
図3A~
図3Cに示すように、隅棟屋根材25は、例えば、所定形状の原屋根材3をカットして作製される。すなわち、隅棟屋根材25は、カット屋根材4により構成される。原屋根材3は、例えば、通常屋根材24と同じ形状及び同じ大きさを有する。すなわち、通常屋根材24は、原屋根材3として利用可能である。なお、原屋根材3は、通常屋根材24とは形状又は大きさが異なってもよい。
【0026】
本実施形態では、原屋根材3は、
図3Aに示すように、長方形状をしたものであるが、長方形の一方の長辺の両端部に切欠31が形成されている。
【0027】
カット屋根材4は、例えば、通常屋根材24と形状及び大きさが同じ原屋根材3の横方向の一端部又は両端部を、手動カッター若しくは電動カッター等の切断機、又は瓦金槌等を用いて切断することによって作製される。
【0028】
本実施形態において、
図3Bに示すように、カット屋根材4は、所定形状の原屋根材3が、所定方向に延びる任意の切断面30に沿ってカットされて形成されるものである。更に説明すると、カット屋根材4は、原屋根材3において、他方の長辺(切欠が形成されていない方の長辺であり、底辺32とする)に対して所定角度θをなす線33(表面上の線)を通る切断面30に沿って切断される。すなわち、複数のカット屋根材4は、正面視における形状は異なり得るが、切断面30が底辺32に対してなす角度θ(正確には切断面30と正面の交線と底辺32がなす角度)は同じである。
【0029】
また、
図3Cに示すように、一の隅棟屋根材25が、二枚のカット屋根材4から構成されてもよい。各カット屋根材4は、別の原屋根材3が切断されてそれぞれ形成される。
【0030】
本実施形態のカット屋根材4は、プレカット材である。ここで、プレカットとは、原屋根材3を予め施工現場に運ばれる前に工場等において切断することを意味する。カット屋根材4がプレカット材であることにより、隅棟屋根材25となるカット屋根材4を施工現場において作製する必要が無くなり、作業者の手間が軽減される。また、施工現場において原屋根材3の切断に伴う廃材が発生せず、施工現場における廃材の処理の手間も削減できる。
【0031】
以下、
図4に基づいて屋根材2の積層体1について説明する。積層体1は、複数のカット屋根材4を三層以上に積み重ねて構成される。積層体1は、同じ下地面に葺かれるカット屋根材4のうち、同じ側の端部に位置する隅棟屋根材25の集合が積層されて構成されることが好ましい。例えば、同じ下地面に葺かれるカット屋根材4のうち、第1隅棟621側の端部に位置する隅棟屋根材25(カット屋根材4)の下から一段目から十段目までのカット屋根材4が積層されて構成されてもよい。これにより、屋根上の比較的近い位置に配置すべきカット屋根材4同士が纏められることになり、積層体1から取り出した各カット屋根材4を遠くまで移動させることが抑えられ、施工性が向上する。
【0032】
複数のカット屋根材4のうち、表面積の大きい順に一番目から所定番目までの複数のものを、大型カット屋根材40とする。ここで、所定番目は、二番目であることが好ましいが、三番目、四番目、五番目又は十番目であってもよく、特に限定されない。本実施形態では、表面積の大きい順に一番目~三番目のカット屋根材4を、大型カット屋根材40とする。なお、同じ表面積のカット屋根材4が複数ある場合には、これらのカット屋根材4における順序は任意であるとする。
【0033】
積層体1の最下層11に、複数の大型カット屋根材40のうちの第1大型カット屋根材401が配置される。最下層11には、第1大型カット屋根材401のみが配置される。本実施形態では、第1大型カット屋根材401は、表面積が三番目に大きいカット屋根材4である。
【0034】
積層体1の最上層12に、複数の大型カット屋根材40のうちの第2大型カット屋根材402が配置される。最上層12には、第2大型カット屋根材402のみが配置される。本実施形態では、第2大型カット屋根材402は、表面積が一番目に大きいカット屋根材4である。
【0035】
積層体1の最下層11と最上層12との間の中間層13に、残りのカット屋根材4(すなわち第1大型カット屋根材401及び第2大型カット屋根材402以外のカット屋根材4)が配置されている。中間層13は、一層であってもよいし、複数層であってもよい。本実施形態では、積層体1は、中間層131~中間層136の六層の中間層13を有する。
【0036】
積層体1は、帯部材や包装部材等により、各層が分離したり互いに平行移動しないように束ねられる。
【0037】
本発明に係る積層体1においては、最下層11及び最上層12にそれぞれ一枚の大型カット屋根材40のみが配置される。これにより、最下層11及び最上層12に二枚以上のカット屋根材4が配置される場合と比較して、最下層11及び最上層12が変形しにくく、積層体1の全体の形状も変形しにくくなる。また、中間層13のカット屋根材4に荷重や曲げモーメントが過度に掛かりにくくなる。
【0038】
また、最下層11及び最上層12により、中間層13のカット屋根材4を広く覆うことができる。これにより、中間層13のカット屋根材4の露出を抑えて、中間層13のカット屋根材4が損傷するのが抑えられる。
【0039】
また、少なくとも一の中間層13に、複数のカット屋根材4が配置されていることが好ましい。本実施形態では、中間層131~135に、複数のカット屋根材4が配置されており、中間層136は、一枚のカット屋根材4のみ配置されている。なお、中間層136に配置されるカット屋根材4は、表面積が二番目に大きい大型カット屋根材40である。
【0040】
一の中間層13に、複数のカット屋根材4が配置される場合、中間層13の複数のカット屋根材4は、積層方向に見て、一の原屋根材3の輪郭300(
図3A参照)内に収まるように配置されるようにする。これにより、中間層13のカット屋根材4が露出したり最下層11及び最上層12からはみ出したりしにくくなり、中間層13のカット屋根材4が破損しにくくなる。
【0041】
更に、中間層13に配置される複数のカット屋根材4は、積層方向に見て、最下層11及び最上層12を構成する大型カット屋根材40(特に、最下層11を構成する大型カット屋根材40)の輪郭内に収まるように配置されることが好ましい。これにより、中間層13のカット屋根材4がより一層破損しにくくなる。
【0042】
また、中間層13の各層において、一又は複数のカット屋根材4は、積層方向に見て、一の原屋根材3の輪郭300と略同じ大きさとなるように配置されることが好ましい。本実施形態では、複数のカット屋根材4が配置される中間層131~135及び一枚のカット屋根材4のみ配置される中間層136の全ての中間層131~136において、積層方向に見て、一の原屋根材3の輪郭300と略同じ大きさとなるように配置される。これにより、中間層13における隙間をできるだけ小さくして、多くのカット屋根材4を積層しやすくなる。
【0043】
また、中間層13の各層において、カット屋根材4は、原屋根材3の長手方向の長さと略同じ長さとなるように配置されることが好ましい。細長い(すなわち長手方向/短手方向の比率が例えば3以上)カット屋根材4においては、中間層13の各層における一又は複数のカット屋根材4の長手方向の長さを、原屋根材3の長手方向の長さと同じとするかあるいはできるだけ近づけ、各層における隙間をできるだけなくし、隙間なく積層される部分を多くすることで、曲げモーメントが掛かっても変形し(すなわち撓み)にくくなる。
【0044】
また、中間層13に配置される複数のカット屋根材4は、一のカット屋根材4の切断面30と、他のカット屋根材4の切断面30とが対向しかつ平行となるように配置されることが好ましい。本実施形態では、中間層131~135のそれぞれにおいて、一のカット屋根材4の切断面30と、他のカット屋根材4の切断面30とが、対向しかつ平行となる。これにより、中間層13において、隙間を小さくして多くのカット屋根材4を積層しやすくなる。
【0045】
なお、ここで平行とは、必ずしも維持される必要はないものとする。すなわち、例えば中間層132及び133においては、二枚のカット屋根材4が切断面30で対向しかつ平行となりかつ接触しており、中間層132及び133の輪郭は原屋根材3の輪郭300と一致していて、それぞれの二枚のカット屋根材4は積層されて束ねられると動かないため、互いの切断面30は平行が維持される。しかしながら、例えば中間層131においては、二枚のカット屋根材4の切断面30が対向しかつ平行となるが接触しておらず、中間層13の輪郭は原屋根材3の輪郭300内に収まっていて、カット屋根材4は動き得る。この場合には、二枚のカット屋根材4の切断面30の平行は維持されない。
【0046】
また、少なくとも一の中間層13に、三個のカット屋根材4が配置され、これらのうち最も表面積の小さいカット屋根材43は、残りの二個のカット屋根材41,42の間に配置されることが好ましい。本実施形態では、中間層134及び135のそれぞれにおいて、最も表面積の小さいカット屋根材43が、他のカット屋根材41,42の間に配置されている。これにより、デッドスペースとなる隙間を有効利用して多くのカット屋根材4を積層することができる。
【0047】
また、少なくとも一の中間層かあるいは積層体の外側に、緩衝材5が配置されていることが好ましい。本実施形態では、中間層131、134、135及び136の隙間に、緩衝材5が配置されている。緩衝材5は、例えば段ボールやウレタンにより構成可能である。なお、緩衝材5の形状、大きさ、材質、設けられる位置は、特に限定されない。緩衝材5が設けられることにより、カット屋根材4が破損するのが抑制される。
【0048】
(3)変形例
原屋根材3の形状は、矩形状(正方形状又は長方形状)に限定されず、多角形状やその他の形状であってもよい。また、原屋根材3の頂点(辺の交点)に面取りやRが形成されていたり、切欠や孔が形成されていてもよい。原屋根材3の形状が略矩形状であるとは、正面視における原屋根材3の形状が正方形及び長方形のみならず、正方形及び長方形から辺の一部を切り落とした多角形状も含むものとする。
【0049】
切断面30の法線は、カット屋根材4の正面に沿うことが好ましいが、特に限定されない。
【0050】
最下層11に、表面積が二番目に大きいカット屋根材4が配置されてもよいし、最上層12に、表面積が一番目に大きいカット屋根材4が配置されてもよい。
【0051】
最下層11に、表面積が一番目に大きいカット屋根材4が配置されてもよい。これにより、中間層13及び最上層12の平面視において最下層11に収まりきらない部分に曲げモーメントが発生したりすることが抑えられる。
【0052】
最下層11と最上層12とに、表面積が一番目に大きいカット屋根材4と二番目に大きいカット屋根材4が配置されてもよい。これにより、最下層11、最上層12及び積層体1の全体の変形と、中間層13のカット屋根材4に荷重や曲げモーメントが掛かることが極力抑えられる。
【0053】
(4)態様
以上、述べた実施形態から明らかなように、第1の態様の屋根材2の積層体1は、原屋根材3をカットしてなる複数のカット屋根材4を三層以上に積み重ねて構成される。複数のカット屋根材4のうち表面積の大きい順に一番目から所定番目までの複数のものを大型カット屋根材40とする。積層体1の最下層11に、複数の大型カット屋根材40のうちの第1大型カット屋根材401が配置される。積層体1の最上層12に、複数の大型カット屋根材40のうちの第2大型カット屋根材402が配置される。積層体1の最下層11と最上層12との間の一層又は複数層からなる中間層13に、第1大型カット屋根材401及び第2大型カット屋根材402以外のカット屋根材4が配置されている。
【0054】
第1の態様によれば、積層体1の最下層11及び最上層12が変形しにくく、積層体1の全体の形状も変形しにくくなると共に、中間層13のカット屋根材4に荷重や曲げモーメントが掛かりにくくなる。
【0055】
第2の態様は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様では、少なくとも一の中間層13に、複数のカット屋根材4が配置されている。中間層13に配置される複数のカット屋根材4は、積層方向に見て、一の原屋根材3の輪郭300内に収まるように配置されている。
【0056】
第2の態様によれば、中間層13のカット屋根材4が露出したり最下層11及び最上層12からはみ出したりしにくくなり、中間層13のカット屋根材4が破損しにくくなる。
【0057】
第3の態様は、第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様では、中間層13の各層において、一又は複数のカット屋根材4は、積層方向に見て、一の原屋根材3の輪郭300と略同じ大きさとなるように配置されている。
【0058】
第3の態様によれば、中間層13における隙間をできるだけ小さくして、多くのカット屋根材4を積層しやすくなる。
【0059】
第4の態様は、第3の態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様では、原屋根材3は、略矩形状をなし、中間層13の各層において、カット屋根材4は、原屋根材3の長手方向の長さと略同じ長さとなるように配置されている。
【0060】
第4の態様によれば、中間層13の各層における隙間をできるだけなくし、隙間なく積層される部分を多くすることで、曲げモーメントが掛かっても撓みにくくなる。
【0061】
第5の態様は、第2~第4のいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第5の態様では、カット屋根材4は、所定形状の原屋根材3が、所定方向に延びる任意の切断面30に沿ってカットされて形成されるものである。中間層13に配置される複数のカット屋根材4は、一のカット屋根材4の切断面30と、他のカット屋根材4の切断面30とが対向しかつ平行となるように配置されている。
【0062】
第5の態様によれば、隙間を小さくして多くのカット屋根材4を積層しやすくなる。
【0063】
第6の態様は、第2~第5のいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第6の態様では、少なくとも一の中間層13に、三個のカット屋根材4が配置されている。これらのうち最も表面積の小さいカット屋根材4は、残りの二個のカット屋根材4の間に配置されている。
【0064】
第6の態様によれば、デッドスペースとなる隙間を有効利用して多くのカット屋根材4を積層することができる。
【0065】
第7の態様は、第1~第6のいずれかのいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第7の態様では、少なくとも一の中間層13かあるいは積層体1の外側に、緩衝材5が配置されている。
【0066】
第7の態様によれば、カット屋根材4が破損するのが抑制される。
【符号の説明】
【0067】
1 積層体
11 最下層
12 最上層
13 中間層
2 屋根材
3 原屋根材
30 切断面
300 輪郭
4 カット屋根材
40 大型カット屋根材
401 第1大型カット屋根材
402 第2大型カット屋根材
5 緩衝材