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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20240612BHJP
   B62K 25/10 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
F16F9/32 B
F16F9/32 J
B62K25/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021006165
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110639
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】カヤバモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】松原 勇太
(72)【発明者】
【氏名】天田 昇平
(72)【発明者】
【氏名】野口 寛洋
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176637(JP,A)
【文献】特開平11-173367(JP,A)
【文献】特開2010-065719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
B62K 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に螺子部を有するアウターチューブと、前記アウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとを有する緩衝器本体と、
前記緩衝器本体の外周に配置されるコイルばねでなる懸架ばねと、
前記ロッドに取付けられて前記懸架ばねの一端を支持するロッド側ばね受と、
前記アウターチューブの前記螺子部に螺着されて前記懸架ばねの他端を支持する環状のチューブ側ばね受と、
前記アウターチューブの外周に軸方向への移動のみが許容されて装着されるスライダと、
前記チューブ側ばね受と前記スライダとを着脱可能に連結する連結部と、
前記チューブ側ばね受と前記スライダとが連結された状態で前記アウターチューブの軸回りの相対回転を規制する回転規制部とを備え
前記チューブ側ばね受は、前記スライダに連結された状態で前記スライダに対向する環状のばね受側対向部を有し、
前記スライダは、環状であって前記チューブ側ばね受に連結された状態で前記チューブ側ばね受に対向する環状のスライダ側対向部を有し、
前記回転規制部は、前記ばね受側対向部と前記スライダ側対向部との一方に周方向に等間隔に設けられた複数の溝と、前記ばね受側対向部と前記スライダ側対向部との他方に設けられて前記溝に嵌合する前記溝の設置数以下の突起とを有する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
外周に螺子部を有するアウターチューブと、前記アウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとを有する緩衝器本体と、
前記緩衝器本体の外周に配置されるコイルばねでなる懸架ばねと、
前記ロッドに取付けられて前記懸架ばねの一端を支持するロッド側ばね受と、
前記アウターチューブの前記螺子部に螺着されて前記懸架ばねの他端を支持する環状のチューブ側ばね受と、
前記アウターチューブの外周に軸方向への移動のみが許容されて装着されるスライダと、
前記チューブ側ばね受と前記スライダとを着脱可能に連結する連結部と、
前記チューブ側ばね受と前記スライダとが連結された状態で前記アウターチューブの軸回りの相対回転を規制する回転規制部とを備え、
前記スライダは、環状であって、
前記連結部は、前記チューブ側ばね受と前記スライダとの一方の外周に周方向に沿って設けられた環状凸部と、前記チューブ側ばね受と前記スライダとの他方から延びる弾性片と前記弾性片の先端側に設けられて前記環状凸部に引掛かる爪とを有する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項3】
外周に螺子部を有するアウターチューブと、前記アウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとを有する緩衝器本体と、
前記緩衝器本体の外周に配置されるコイルばねでなる懸架ばねと、
前記ロッドに取付けられて前記懸架ばねの一端を支持するロッド側ばね受と、
前記アウターチューブの前記螺子部に螺着されて前記懸架ばねの他端を支持する環状のチューブ側ばね受と、
前記アウターチューブの外周に軸方向への移動のみが許容されて装着されるスライダと、
前記チューブ側ばね受と前記スライダとを着脱可能に連結する連結部と、
前記チューブ側ばね受と前記スライダとが連結された状態で前記アウターチューブの軸回りの相対回転を規制する回転規制部とを備え、
前記チューブ側ばね受と前記スライダの少なくとも一方は磁性体であり、
前記連結部は、前記チューブ側ばね受と前記スライダの他方に設けられて前記チューブ側ばね受と前記スライダの一方を吸引する磁石を有する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項4】
前記チューブ側ばね受の内周或いは外周に前記スライダが嵌合可能であり、
前記チューブ側ばね受と前記スライダのうち外周側に配置される一方は、外周であって、自身に形成された前記溝または前記突起と周方向で同じ位置に目印を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記チューブ側ばね受は、周方向に等間隔に設置されて外周側へ向けて放射状に突出する複数の凸部を有し、
前記スライダは、環状であって、周方向に等間隔に設置されて前記チューブ側ばね受側へ向けて突出して前記チューブ側ばね受に重ねられると前記凸部の間のそれぞれに嵌合する複数の嵌合突起と、前記凸部の外周側を覆うカバーとを有する
ことを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記アウターチューブは、外周に軸方向に沿って設けられたキー溝を有し、
前記スライダは、環状であって、内周に前記キー溝に対応して前記キー溝内に挿入されるキーを有し、
前記連結部は、前記キーと対応する磁石を有し、
前記キーと対応する磁石は、前記スライダの前記キーに対応する箇所に設置される
ことを特徴とする請求項または請求項に記載の緩衝器。
【請求項7】
前記アウターチューブは、外周に軸方向に沿って形成されて周方向で180度位相差をもって設けられた2つのキー溝を有し、
前記スライダは、環状であって、内周に前記2つのキー溝に対応してそれぞれ前記キー溝内に挿入される2つのキーを有し、
前記連結部は、前記2つのキーと対応して2つの磁石を有し、
前記キーと対応する磁石は、前記スライダの対応する前記キーの径方向外側に設置される
ことを特徴とする請求項または請求項に記載の緩衝器。
【請求項8】
前記チューブ側ばね受と前記スライダとの一方または両方は、合成樹脂製である
ことを特徴とする請求項1,2又は4のいずれか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、鞍乗車両における車両の車体と後輪との間に介装されて使用され、伸縮時に発生する減衰力で車体と後輪の振動を抑制する。
【0003】
具体的には、緩衝器は、アウターチューブとアウターチューブ内に軸方向へ移動自在に挿入されるロッドとを有して伸縮時に伸縮を妨げる減衰力を発生する緩衝器本体を備える他、ロッドに設けられたロッド側ばね受と、アウターチューブの外周に装着されたチューブ側ばね受と、ロッド側ばね受とチューブ側ばね受けとの間に介装される懸架ばねとを備えている。
【0004】
このように構成された緩衝器は、前記鞍乗車両の車体と後輪との間に介装されると懸架ばねが発揮する弾発力で車体を弾性支持するとともに、伸縮時に緩衝器本体が減衰力を発生して車体の振動の抑制できる。
【0005】
また、緩衝器は、前記鞍乗車両の車高調整を可能とするため、アウターチューブの外周に雄螺子部を備えており、環状であって内周に雌螺子を備えたチューブ側ばね受が雄螺子部に螺着される構造を採用している(たとえば、特許文献1参照)。よって、従来の緩衝器では、チューブ側ばね受をアウターチューブに対して回転させると、チューブ側ばね受をアウターチューブに対して軸方向へ移動させて、懸架ばねの支持位置をアウターチューブの軸方向で調節できる。
【0006】
さらに、緩衝器は、アウターチューブにチューブ側ばね受とともに雄螺子部に螺着されてチューブ側ばね受の回転を規制するロックナットを備えている。よって、緩衝器の伸縮に伴って伸縮する懸架ばねからトルクを受けてもロックナットによってチューブ側ばね受の回転が規制され、緩衝器は、車高を一定に保てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開2019/207710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の緩衝器では、車高調整する場合、一対の専用工具を用いてロックナットを弛めてチューブ側ばね受から離間させた後、チューブ側ばね受をアウターチューブに対して回転させて軸方向位置を調整する。チューブ側ばね受の位置が決まったら、専用工具の一方でチューブ側ばね受を把持しつつ、専用工具の他方でロックナットを操作してロックナットをチューブ側ばね受側へ締めこむようにする。
【0009】
しかしながら、車高調整時に専用工具が手元にない場合、或いは、緊急時に急ぎ車高調整したい場合では、ドライバーの先端をロックナットの外周の凹凸へ押し当てておき、ドライバーの持手の後端をハンマーで叩いて、ロックナットの弛めと締めこみを行うことがある。
【0010】
このようにドライバーとハンマーとを用いた車高調整では、ロックナットの締め込み時にロックナットとともにチューブ側ばね受が回転して、チューブ側ばね受の位置が変化してしまうため、狙い通りに車高を調整できない。
【0011】
前記したように、従来の緩衝器では、車高調整のための専用工具が必要であり、急場しのぎでドライバーとハンマーを用いて車高調整すると車高が狙った車高とずれてしまうという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、工具を利用せず狙い通りに車高を調整可能な緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した課題を解決するために、本発明の緩衝器は、外周に螺子部を有するアウターチューブとアウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとを有する緩衝器本体と、緩衝器本体の外周に配置されるコイルばねでなる懸架ばねと、ロッドに取付けられて懸架ばねの一端を支持するロッド側ばね受と、アウターチューブの螺子部に螺着されて懸架ばねの他端を支持する環状のチューブ側ばね受と、アウターチューブの外周に軸方向への移動のみが許容されて装着されるスライダと、チューブ側ばね受とスライダとを着脱可能に連結する連結部と、チューブ側ばね受とスライダとが連結された状態でアウターチューブの軸回りの相対回転を規制する回転規制部とを備えて構成されている。
【0014】
このように構成された緩衝器では、作業者は、工具を利用せずにチューブ側ばね受とスライダとの着脱が可能となり、チューブ側ばね受とスライダとが連結部によって連結されると回転規制部によって相対回転が規制されるため、チューブ側ばね受のアウターチューブへの固定の際にトルクを作用させる必要がない。
【0015】
また、チューブ側ばね受がスライダに連結された状態でスライダに対向する環状のばね受側対向部を備え、スライダが環状であってチューブ側ばね受に連結された状態でチューブ側ばね受に対向する環状のスライダ側対向部を備え、回転規制部がばね受側対向部とスライダ側対向部の一方に周方向に等間隔に設けられた複数の溝と、ばね受側対向部とスライダ側対向部の他方に設けられて溝に嵌合する溝の設置数以下の突起とを備えてもよい。このように構成された緩衝器によれば、チューブ側ばね受をアウターチューブに対して周方向の複数位置で位置決めできるので、車高を容易且つ多段階に調節できる。
【0016】
さらに、スライダが環状であって、連結部がチューブ側ばね受とスライダとの一方の外周に周方向に沿って設けられた環状凸部と、チューブ側ばね受とスライダとの他方から延びる弾性片と弾性片の先端側に設けられて環状凸部に引掛かる爪とを備えてもよい。このように構成されたによれば、チューブ側ばね受とスライダとの着脱作業が非常に簡単となる。
【0017】
また、チューブ側ばね受の内周または外周にスライダが嵌合可能であり、チューブ側ばね受とスライダのうち外周に配置される方が外周に自身に形成された溝或いは突起と周方向で同じ位置に目印を備えてもよい。このように構成された緩衝器によれば、作業者によるチューブ側ばね受とスライダとの嵌合作業が非常に簡単となる。
【0018】
さらに、緩衝器は、チューブ側ばね受とスライダの少なくとも一方を磁性体とし、連結部がチューブ側ばね受とスライダの他方に設けられてチューブ側ばね受とスライダの一方を吸引する磁石を有して構成されてもよい。このように構成された緩衝器によれば、磁石が磁性体を吸引する磁力を利用してスライダとチューブ側ばね受とを連結するので、連結部の構造が簡素となるとともに、スライダへのチューブ側ばね受の着脱を繰り返しても連結部が劣化しにくいので長期間に亘り性能の維持と発揮ができる。
【0019】
また、緩衝器は、チューブ側ばね受が周方向に等間隔に設置されて外周側へ向けて放射状に突出する複数の凸部を有し、スライダが環状であって周方向に等間隔に設置されてチューブ側ばね受側へ向けて突出してチューブ側ばね受に重ねられると凸部の間のそれぞれに嵌合する複数の嵌合突起と、凸部の外周側を覆うカバーとを有して構成されてもよい。このように構成された緩衝器によれば、スライダの嵌合凸部と嵌合凸部が嵌合されるチューブ側ばね受の凸部の外周側がカバーで覆われるため、砂や泥がスライダとチューブ側ばね受との間に侵入するのを防止できる。また、このように構成された緩衝器によれば、砂や泥のスライダとチューブ側ばね受と当接面への侵入を防止できるので、磁石の吸引力の低下によるスライダのチューブ側ばね受からの脱落を効果的に防止できる。
【0020】
また、緩衝器は、アウターチューブが外周に軸方向に沿って設けられたキー溝を有し、スライダが環状であって内周にキー溝に対応してキー溝内に挿入されるキーを有し、連結部がキーと対応する磁石を有し、キーと対応する磁石がスライダのキーに対応する箇所に設置されている。このように構成された緩衝器によれば、キーの設置によって径方向で幅が厚くなるスライダのキーに対応する箇所に磁石が設置されるのでスライダの強度低下を招きにくいという利点がある。
【0021】
さらに、緩衝器は、アウターチューブが外周に軸方向に沿って形成されて周方向で180度位相差をもって設けられた2つのキー溝を有し、スライダが環状であって内周に2つのキー溝に対応してそれぞれキー溝内に挿入される2つのキーを有し、連結部が2つのキーと対応して2つの磁石を有し、キーと対応する磁石がスライダの対応するキーの径方向外側に設置されてもよい。このように構成された緩衝器によれば、スライダをチューブ側ばね受から取り外す際に磁石を1つずつチューブ側ばね受から取り外せるため、スライダからチューブ側ばね受の取り外し作業において作業者の作業負担を軽減できる。
【0022】
また、チューブ側ばね受とスライダとの一方または両方を合成樹脂製としてもよく、このように構成された緩衝器によれば、緩衝器を軽量化できる。
【発明の効果】
【0023】
以上より、本発明の緩衝器によれば、工具を利用せず狙い通りに車高を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施の形態における緩衝器の側面図である。
図2図2(a)は、第1の実施の形態における緩衝器のチューブ側ばね受のAA断面図である。図2(b)は、第1の実施の形態における緩衝器のチューブ側ばね受の平面図である。
図3図3(a)は、第1の実施の形態における緩衝器のスライダの側面図である。図3(b)は、第1の実施の形態における緩衝器のスライダの底面図である。図3(c)は、第1の実施の形態における緩衝器のスライダのBB断面図である。
図4】第2の実施の形態の緩衝器の側面図である。
図5図5(a)は、第2の実施の形態における緩衝器のチューブ側ばね受のCC断面図である。図5(b)は、第2の実施の形態における緩衝器のチューブ側ばね受の平面図である。
図6図6(a)は、第2の実施の形態における緩衝器のスライダの側面図である。図6(b)は、第2の実施の形態における緩衝器のスライダの底面図である。図6(c)は、第2の実施の形態における緩衝器のスライダのEE断面図である。
図7】第2の実施の形態の緩衝器におけるスライダとアウターチューブの一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施の形態>
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、第1の実施の形態における緩衝器Dは、外周に螺子部2aを有するアウターチューブ2とアウターチューブ2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とを有する緩衝器本体1と、緩衝器本体1の外周に配置されるコイルばねでなる懸架ばね4と、ロッド3に取付けられて懸架ばね4の一端4aを支持するロッド側ばね受5と、アウターチューブ2の螺子部2aに螺着されて懸架ばね4の他端4bを支持する環状のチューブ側ばね受6と、アウターチューブ2の外周に軸方向への移動のみが許容されて装着されるスライダ7と、チューブ側ばね受6とスライダ7とを着脱可能に連結する連結部と、チューブ側ばね受6とスライダ7とが連結された状態でアウターチューブ2の軸回りの相対回転を規制する回転規制部とを備えて構成されている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない鞍乗車両における車体と後輪との間に介装されて使用され、車体および後輪の振動を抑制する。
【0026】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。図1に示すように、緩衝器本体1は、筒状のアウターチューブ2と、アウターチューブ2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とを有して、ロッド3がアウターチューブ2に対して軸方向に相対移動する伸縮作動時にロッド3のアウターチューブ2に対する相対移動を妨げる減衰力を発生して、前記鞍乗車両の車体と後輪の振動を減衰させる。
【0027】
より詳細には、緩衝器本体1は、図示しないが、上端が閉塞される筒状のアウターチューブ2と、アウターチューブ2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3と、ロッド3に連結されるとともにアウターチューブ2内に挿入されてアウターチューブ2内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、アウターチューブ2の上端側方に設けた中空なハウジング2bに一体化されてアウターチューブ2に平行配置されて内部に気室と液室とを備えた筒状のタンク10と、ハウジング2b内に設置されて圧側室と液室とを仕切るバルブケースとを備えている。そして、伸側室と圧側室には、作動油等の液体が充填されている。また、タンク10内にはフリーピストンが摺動自在に挿入されていて、タンク10内がフリーピストンによって前述の液室と気室とに区画されている。そして、タンク10内の液には、アウターチューブ2内に充填される液体と同じ液体が充填され、気室には窒素などの不活性ガスが充填されている。なお、緩衝器Dに使用される液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体でもよく、気体についても大気等といった不活性ガス以外の気体を利用してもよい。
【0028】
また、ピストンには、伸側室と圧側室とを連通する通路と、当該通路を通過する液体の流れに抵抗与えるピストンバルブが設けられている。また、バルブケースには、圧側室から液室へ向かう液体の流れのみを許容するとともに当該液体の流れに抵抗を与えるベースバルブと、ベースバルブに並列されて圧側室から液室へ向かう液体の流れのみを許容するとともに当該液体の流れに与える抵抗を調整可能な可変バルブと、液室から圧側室へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブとが設けられている。このように構成された緩衝器本体1は、伸縮作動時にピストンによって伸側室と圧側室とが拡縮されて、液体がピストンバルブ或いはベースバルブを通過する際に発生する圧力損失によって減衰力を発生する。また、可変バルブの調整によって、緩衝器本体1が収縮作動時に発生する減衰力を調整できる。
【0029】
なお、緩衝器本体1の内部構造は、一例であって、アウターチューブ2に対してロッド3が軸方向に相対移動する緩衝器本体1の伸縮作動時に緩衝器本体1が伸縮を妨げる減衰力を発生できる限りにおいて、設計変更可能である。
【0030】
つづいて、アウターチューブ2は、上端の頂部に鞍乗車両の車体に連結可能なブラケット2cを備えている。また、ロッド3は、図示しない鞍乗車両の車体に揺動可能に取り付けられて後輪を回転自在に支持するスイングアームに連結されるリンクに取付できるように、下端にブラケット3aを備えている。よって、第1の実施の形態の緩衝器Dは、アウターチューブ2が車体に、ロッド3が後輪に連結される態様で車体と後輪との間に介装される。
【0031】
また、アウターチューブ2は、途中から図1中上方側が下方側よりも大きな外周径を持つ拡径部2dを備える他、当該拡径部2dの外周であって拡径部2dの下端から途中までにかけて形成される雄螺子でなる螺子部2aと、拡径部2dの外周であって周方向に180度位相差をもって配置されて拡径部2dの下端から軸方向に沿って螺子部2aより上方側まで形成される一対のキー溝2eとを備えている。なお、キー溝2eは、アウターチューブ2に2つ設けられているが、キー溝2eの設置数は、1つでもよいし、3つ以上とされてもよい。
【0032】
アウターチューブ2の螺子部2aには、環状のチューブ側ばね受6が螺着されている。また、ロッド3の下端側には、環状のロッド側ばね受5が取り付けられている。緩衝器本体1の外周であってロッド側ばね受5とチューブ側ばね受6との間には、コイルばねでなる懸架ばね4が介装されている。つまり、懸架ばね4内に緩衝器本体1のアウターチューブ2とロッド3とが挿入されている。ロッド側ばね受5は、懸架ばね4の一端4aとなる下端を支持しており、チューブ側ばね受6は、懸架ばね4の他端4bとなる上端を支持していて、緩衝器本体1は、懸架ばね4の弾発力によって常に伸長するよう付勢されている。よって、緩衝器Dを鞍乗車両の車体と後輪との間に介装すると、懸架ばね4が発生する弾発力によって車体が弾性支持される。また、チューブ側ばね受6をアウターチューブ2に対して周方向へ回転させると送り螺子の要領でチューブ側ばね受6は、アウターチューブ2に対して軸方向へ移動するので、懸架ばね4の他端4bの支持位置を変更できる。懸架ばね4が支持する車体の重量が変化しなければ圧縮状態の懸架ばね4の長さも変わりがないため、チューブ側ばね受6の懸架ばね4の他端4bの支持位置を変更すると、チューブ側ばね受6とブラケット2cとの距離が変わって車高を高低調整できる。
【0033】
チューブ側ばね受6は、図1および図2に示すように、内周に雌螺子が形成された本体6aと、本体6aの外周の軸方向の中間部から外方へ向けて突出する環状のフランジ6bと、本体6aの図2(a)中の上端外周に周方向に沿って設けた環状凸部6cと、環状凸部6cの外周に周方向に等間隔に設けられるとともに軸方向に沿って形成される12個の溝6dと、フランジ6bの外周に周方向に等間隔であって溝6d,6d間に配置されて設けられる12個の凹部6eとを備えている。
【0034】
チューブ側ばね受6は、合成樹脂で形成されている。チューブ側ばね受6は、第1の実施の形態の緩衝器Dでは、懸架ばね4から受ける荷重に耐え得るように高い強度を持つガラス繊維強化ポリアミド系樹脂製とされており、緩衝器Dの軽量化に寄与している。なお、チューブ側ばね受6は、強度上問題が無ければガラス繊維強化合成樹脂以外の合成樹脂を用いて形成されればよく、合成樹脂製とされることで緩衝器Dの軽量化に寄与できる。また、チューブ側ばね受6は、合成樹脂に代えて金属で形成されてもよい。
【0035】
そして、チューブ側ばね受6の本体6aのフランジ6bよりも図2(a)中の下方、つまり、本体6aのフランジ6bを挟んで環状凸部6cが設けられている側とは逆側の部分は、懸架ばね4の他端4bに設けた座巻部分が嵌合する嵌合部として機能している。懸架ばね4の他端4bが本体6aの嵌合部に嵌合されると、フランジ6bの図2(a)中の下端に懸架ばね4の他端4bの座巻部分が当接するようになっていて、チューブ側ばね受6は、フランジ6bで懸架ばね4の他端4bを支承する。なお、フランジ6bの外周に設けられる凹部6eは、フランジ6bの環状凸部6c側を向く図2(a)中の上端側に設けられていて、フランジ6bの図2(a)中の下端には形成されておらず、フラットな面を持つフランジ6bの下端面で懸架ばね4の他端4bを安定支持できる。
【0036】
また、フランジ6bと環状凸部6cとの間には、これらの外径よりも小さい外径の本体6aが露出している。よって、チューブ側ばね受6は、フランジ6bと環状凸部6cとの間に環状凹部を備えているとも言い得る。
【0037】
また、チューブ側ばね受6は、環状凸部6cの外周に周方向で30度位相差をもって等間隔に12個の溝6dを備えている。各溝6dは、環状凸部6cの軸方向に沿って全長に渡って形成されている。つまり、溝6dは、環状凸部6cの図2(a)中の上端から下端にかけて軸方向に沿って設けられている。
【0038】
スライダ7は、図3に示すように、環状であって、一部に割を有してC形に形成されて内周にチューブ側ばね受6の環状凸部6cの嵌合を可能とする内径大径部7aと、環状凸部6cよりも内周径が小さな内径小径部7bとを備えている。
【0039】
スライダ7は、合成樹脂で形成されている。スライダ7は、懸架ばね4から直接荷重を受けるチューブ側ばね受6程の強度が求められないため、ガラス繊維の配合による強化された合成樹脂の使用が求められない。そのため、スライダ7は、第1の実施の形態の緩衝器Dでは、ポリアセタール樹脂製とされているが、他の合成樹脂で形成されてもよい。また、スライダ7は、合成樹脂製とされるため、緩衝器Dの軽量化に寄与している。なお、スライダ7は、合成樹脂に代えて金属で形成されてもよい。
【0040】
また、スライダ7は、環状凸部6cが嵌合される内径大径部7aの内周に周方向に30度位相差をもって等間隔に配置されてスライダ7の内周側へ突出して環状凸部6cに設けられた各溝6dに嵌合する12個の突起7cを備えるとともに、内径小径部7bの内周にアウターチューブ2の2つのキー溝2eに符合する位置に設けられて各キー溝2eにそれぞれ挿入されるキー7dを備えている。
【0041】
スライダ7は、内周のキー7dをアウターチューブ2の外周に設けられたキー溝2eに周方向で位置合わせしつつ、アウターチューブ2の図1中下端側から内周にアウターチューブ2を挿入させ、アウターチューブ2の外周に装着される。キー7dがキー溝2e内に嵌合するとキー溝2eの両側壁にキー7dの側壁が摺接し、スライダ7のアウターチューブ2の周方向への移動は規制されるものの、スライダ7のアウターチューブ2のキー溝2eに沿う軸方向への移動は許容される。よって、スライダ7は、キー7dとキー溝2eによってアウターチューブ2の外周に軸方向への移動のみが許容された状態で装着されている。なお、スライダ7のアウターチューブ2に対する回転の阻止と軸方向への移動の許容をキー7dとキー溝2eとで実現しているが、他の構造で実現してもよい。よって、たとえば、アウターチューブ2の外周形状を円の一部を直線状に切り落とした形状としてスライダ7の内周形状をアウターチューブ2の外周形状と符合する形状とするようにして、スライダ7のアウターチューブ2に対する回転の阻止と軸方向への移動の許容とを実現してもよい。
【0042】
このようにスライダ7をアウターチューブ2へ装着した後、チューブ側ばね受6は、アウターチューブ2の図1中下端側から内周にアウターチューブ2を挿入させ、アウターチューブ2の螺子部2aに螺着される。チューブ側ばね受6を螺子部2aに螺着した状態では、スライダ7は、チューブ側ばね受6を乗り越えチューブ側ばね受6の反対側へ移動できず、キー溝2eがアウターチューブ2の途中までしか形成されていないので、アウターチューブ2から脱落しない。
【0043】
つづいて、突起7cは、スライダ7の内径大径部7a内にチューブ側ばね受6の環状凸部6cを嵌合した状態で環状凸部6cの各溝6dに嵌合可能なように、内径大径部7aの内周の溝6dに対向する位置に軸方向に沿って内径大径部7aの全長に渡って形成されている。つまり、突起7cは、内径大径部7aの内周に周方向に30度位相差をもって等間隔に設けられるとともに、内径大径部7aの図3(a)中の上端から下端にかけて軸方向に沿って設けられている。よって、突起7cを溝6dに符合するように周方向で位置合わせをしつつスライダ7の内径大径部7a内に環状凸部6cを軸方向から嵌合すると、突起7cは、溝6d内に入り込む。このように、溝6d内に突起7cを嵌合させてスライダ7内にチューブ側ばね受6の環状凸部6cを嵌合させると、スライダ7とチューブ側ばね受6との周方向の相対回転が規制される。
【0044】
ここで、前述した通り、スライダ7は、アウターチューブ2に対して周方向の回転が規制されており、スライダ7に嵌合されたチューブ側ばね受6は、スライダ7に対して相対回転が規制される。そのため、チューブ側ばね受6は、アウターチューブ2に装着されたスライダ7に嵌合されると、アウターチューブ2に対して周方向への回転が規制される。
【0045】
なお、第1の実施の形態の緩衝器Dでは、スライダ7のチューブ側ばね受6に対向するスライダ側対向部が内径大径部7aの内周部とされ、チューブ側ばね受6のスライダ7に対向するばね受側対向部が環状凸部6cとされている。
【0046】
また、第1の実施の形態の緩衝器Dでは、回転規制部は、ばね受側対向部である環状凸部6cに設けられた各溝6dと、スライダ側対向部である内径大径部7aに設けた突起7cとで構成されている。そして、第1の実施の形態の緩衝器Dでは、スライダ7からチューブ側ばね受6の環状凸部6cを引き抜いて、今まで或る溝6dに嵌合されていた突起7cとは別の突起7cを当該或る溝6dに嵌合させて再度スライダ7内に環状凸部6cを嵌合させると、スライダ7とチューブ側ばね受6とが互いに回転が規制された状態で互いの周方向の相対位置を変更できる。この例では、溝6dと突起7cとがそれぞれ12個ずつ設けられているので、スライダ7に対してチューブ側ばね受6を周方向に30度ずつ異なる12の相対位置に回転が規制された状態で位置決めできる。なお、スライダ7側に設けられる突起7cは、溝6dに嵌合できる位置に設けられており、チューブ側ばね受6とスライダ7とを相対的にアウターチューブ2の軸方向に移動させてスライダ7の内径大径部7a内に環状凸部6cを挿入と引き抜きができるという条件を満たせば、溝6dの設置数以下の任意の個数だけ設置されればよい。ただし、溝6dと突起7cとで回転規制部を構成しているので、スライダ7とチューブ側ばね受6との周方向の相対回転を規制する上で、溝6dと突起7cとが同数だけ設けられると、スライダ7とチューブ側ばね受6とを相対回転させるトルクに対する回転規制部の強度が向上するという点で好ましい。
【0047】
また、スライダ7は、内径大径部7aの外周の前記突起7cに対して径方向で対向する位置にそれぞれ軸方向沿って形成される12個の目印用溝7eを備えている。つまり、目印用溝7eは、スライダ7を軸方向から見て、円形の内径大径部7aの図示しない中心点と突起7cとを結んだ延長線上であって内径大径部7aの外周とが交わる位置にそれぞれ設けられている。よって、鞍乗車両の車高調整を行う作業者は、スライダ7を見たときに目印用溝7eを視認できる。突起7cが内径大径部7aの目印用溝7eの真裏に位置しているため、前記作業者は、スライダ7から引き出したチューブ側ばね受6を再度スライダ7に嵌合させる際に、目印用溝7eと環状凸部6cの溝6dの位置を目視しつつ周方向で位置合わせすればよい。作業者は、スライダ7の外周側から視認できない突起7cを溝6d内に容易に嵌合してスライダ7内にチューブ側ばね受6を嵌合できる。なお、目印は、第1の実施の形態の緩衝器では目印用溝7eとされているが、作業者が目視可能であればよいので、突起その他の形状によって形成されるものであってもよいし、塗装によって形成されるものでもよい。
【0048】
さらに、スライダ7は、内径小径部7bの図3(a)中の下端から延長されて内径大径部7aの割内に収容される弾性片7fと、弾性片7fの先端側であってスライダ7の内周側に設けられた爪7gとを備えている。
【0049】
弾性片7fは、基端が内径小径部7bに連なっており、基端側が固定端として自由端である先端側のスライダ7の径方向へ撓む弾性変形が許容されている。また、弾性片7fにおける内周側面は、図3(c)に示すように、内径大径部7aの内周面と面一となっている。爪7gは、弾性片7fからスライダ7の内周側へ突出しており、図3に示すようにスライダ7を軸方向から見て弾性片7fが撓んでいない状態において先端が内径大径部7aの内周よりもスライダ7の内周側へ突出している。爪7gの下端には、先端側へ向かうほど先細りとなるように傾斜したテーパ面が設けられている。
【0050】
よって、スライダ7の内径大径部7a内にチューブ側ばね受6の環状凸部6cを挿入する場合、まず、環状凸部6cの先端の外周が爪7gのテーパ面に当接する。その状態で、チューブ側ばね受6をスライダ7側へ軸方向に移動させると、爪7gが押されて弾性片7fがスライダ7の外側へ撓んで、爪7gが環状凸部6cを除けて環状凸部6cの内径大径部7a内への侵入を許容する。さらに、チューブ側ばね受6をスライダ7側へ移動させて環状凸部6cを内径大径部7a内へ侵入させると、やがて爪7gが環状凸部6cを通り越し、弾性片7fが自身の復元力で元の撓んでいない状態に戻るので、爪7gは、環状凸部6cとフランジ6bとの間の環状凹部に入り込む。この状態となると、爪7gは、環状凸部6cのフランジ6b側の端面に当接して、スライダ7からのチューブ側ばね受6の抜けを阻止して、スライダ7とチューブ側ばね受6とを連結した状態に維持する。第1の実施の形態の緩衝器Dにおけるスライダ7は、高い弾性と弾性回復率を有するポリアセタール樹脂で形成されているため、弾性片7fを備えるのに好適である。
【0051】
そして、スライダ7とチューブ側ばね受6とが連結されると、溝6dと突起7cとでアウターチューブ2に対して回転が規制されたスライダ7に対してチューブ側ばね受6の相対回転が規制され、結果、チューブ側ばね受6は、アウターチューブ2に対して周方向の回転が規制される。よって、チューブ側ばね受6が懸架ばね4の伸縮に伴って懸架ばね4からトルクを受けても、チューブ側ばね受6は、スライダ7に連結された状態では、アウターチューブ2に対して回転しないので、アウターチューブ2に対して軸方向に移動しない。
【0052】
このように第1の実施の形態の緩衝器Dでは、連結部は、チューブ側ばね受6の外周に周方向に沿って設けられた環状凸部6cと、スライダ7から延びる弾性片7fと弾性片7fの先端側に設けられて環状凸部6cに引掛かる爪7gとを有して構成されるスナップフィットとされていて、スライダ7とチューブ側ばね受6とを着脱可能に連結している。なお、チューブ側ばね受6に弾性片と爪を設け、スライダ7に環状凸部を設けて連結部を構成してもよい。このように、連結部がスナップフィットとされる場合、作業者は、指で爪7gを外側へ押して環状凸部6cから離間させればスライダ7とチューブ側ばね受6との連結を解いて簡単にスライダ7からチューブ側ばね受6を引き抜ける。また、スライダ7内にチューブ側ばね受6を嵌合させる場合、特に、連結部であるスナップフィットを操作する必要なく、環状凸部6cに爪7gが引掛かるまでスライダ7内にチューブ側ばね受6を挿入すればよく、簡単にスライダ7にチューブ側ばね受6を連結できる。なお、工具を利用せず、スライダ7とチューブ側ばね受6の相対回転を伴わずに、スライダ7とチューブ側ばね受6との連結と切り離し、つまり、着脱を行えればよいので、連結部は、スナップフィットの他にも、トグルラッチ、水筒やカバンに汎用されているような留め金等とされてもよい。
【0053】
緩衝器Dは、以上のように構成されており、鞍乗車両の車体と後輪との間に介装されると、前述した通り、懸架ばね4の弾発力で車体を弾性支持して鞍乗車両の走行時に後輪側から入力される振動の車体への伝達を低減するとともに、車体の振動を緩衝器本体1が発生する減衰力で振動を減衰させることで、車体の振動を抑制する。
【0054】
この緩衝器Dでは、作業者は、以下に示す手順で鞍乗車両の車体の高さである車高を調整できる。まず、作業者は、スライダ7の内径大径部7aがチューブ側ばね受6の環状凸部6cが嵌合されて連結部であるスナップフィットによって両者が連結された状態から、片手でチューブ側ばね受6を掴み、もう片方の手でスライダ7を掴んで爪7gを外側へ押して爪7gを環状凸部6cから離間させつつ、スライダ7をアウターチューブ2に対して図1中上方へ押し上げる。すると、チューブ側ばね受6をスライダ7から抜くことができ、チューブ側ばね受6は、アウターチューブ2に対して周方向へ回転できる状態となる。
【0055】
つづいて、作業者は、チューブ側ばね受6を掴んでアウターチューブ2に対して周方向の希望する方向へ回転させて送り螺子の要領でアウターチューブ2に対して軸方向へ移動させ、チューブ側ばね受6が希望する位置に配置できたらチューブ側ばね受6の回転操作を止める。さらに、作業者は、スライダ7の外周の目印用溝7eとチューブ側ばね受6の溝6dとが周方向で同じ位置になっていない場合、チューブ側ばね受6を回転操作して溝6dの位置を微調整して目印用溝7eと溝6dとを周方向で同じ位置に合わせる。
【0056】
そして、作業者は、その状態で、チューブ側ばね受6に対してスライダ7を図1中下方へ移動させて、環状凸部6cのフランジ6b側の面に爪7gが引掛かるまで内径大径部7a内に環状凸部6cを挿入し、スライダ7をチューブ側ばね受6に連結する。
【0057】
すると、チューブ側ばね受6の溝6d内にスライダ7の突起7cが嵌合されるため、チューブ側ばね受6は、アウターチューブ2に対して周方向の回転が規制されたスライダ7に対して周方向に相対回転不能にスライダ7に連結される。よって、チューブ側ばね受6は、このようにスライダ7に連結されるとアウターチューブ2に対して周方向への回転が規制されるため、アウターチューブ2に軸方向へ移動不能な状態で固定される。なお、チューブ側ばね受6のフランジ6bの外周には周方向に並べて凹部6eが設けられ、スライダ7の外周には、目印用溝7eが設けられているので、作業者がチューブ側ばね受6およびスライダ7を掴んだ際に、凹部6eおよび目印用溝7eが滑り止めの役割を果たして作業者の車高調整作業の負担を軽減している。
【0058】
このように、作業者は、工具類を利用することなくスライダ7とチューブ側ばね受6とを分離させ、チューブ側ばね受6を回転操作してアウターチューブ2に対する軸方向の位置を調整した後、工具類を利用することなくスライダ7とチューブ側ばね受6とを連結できる。また、作業者は、ドライバーとハンマーを利用したロックナットの締め付け作業のようにチューブ側ばね受6にトルクが負荷される作業をしなくて済むため、チューブ側ばね受6のアウターチューブ2への固定の際にチューブ側ばね受6が意図せず回転してしまって車高調整を狙い通りに行うことができないといった問題も解消される。
【0059】
以上のように、第1の実施の形態の緩衝器Dは、外周に螺子部2aを有するアウターチューブ2とアウターチューブ2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とを有する緩衝器本体1と、緩衝器本体1の外周に配置されるコイルばねでなる懸架ばね4と、ロッド3に取付けられて懸架ばね4の一端4aを支持するロッド側ばね受5と、アウターチューブ2の螺子部2aに螺着されて懸架ばね4の他端4bを支持する環状のチューブ側ばね受6と、アウターチューブ2の外周に軸方向への移動のみが許容されて装着されるスライダ7と、チューブ側ばね受6とスライダ7とを着脱可能に連結する連結部(環状凸部6c、弾性片7fおよび爪7g)と、チューブ側ばね受6とスライダ7とが連結された状態でアウターチューブ2の軸回りの相対回転を規制する回転規制部(溝6dおよび突起7c)とを備えて構成されている。
【0060】
このように構成された緩衝器Dでは、作業者は、工具を利用せずにチューブ側ばね受6とスライダ7との着脱が可能となり、チューブ側ばね受6とスライダ7とが連結部によって連結されると回転規制部によって相対回転が規制されるため、チューブ側ばね受6のアウターチューブ2への固定の際にトルクを作用させる必要がない。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、工具類を利用することなく、鞍乗車両の車高を作業者が狙った通りに調整できる。
【0061】
なお、スライダ7は、アウターチューブ2に対して回転が規制されて軸方向のみの移動が許容される態様で装着されていて、連結部によってチューブ側ばね受6に連結でき、回転規制部によってチューブ側ばね受6とアウターチューブ2の軸回りの相対回転が規制可能であればよい。よって、スライダ7は、第1の実施の形態では環状とされているが、環状でなくてもよい。
【0062】
また、第1の実施の形態の緩衝器Dでは、チューブ側ばね受6がスライダ7に連結された状態でスライダ7に対向する環状の環状凸部(ばね受側対向部)6cを備え、スライダ7が環状であってチューブ側ばね受6に連結された状態でチューブ側ばね受6に対向する環状の内径大径部(スライダ側対向部)7aを備え、回転規制部が環状凸部(ばね受側対向部)6cに周方向に等間隔に設けられた複数の溝6dと、内径大径部(スライダ側対向部)7aに設けられて溝6dに嵌合する溝6dの設置数以下の突起7cとを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、溝6dが複数設けられているので、溝6dに嵌合させる突起7cを変えることで、スライダ7に対してチューブ側ばね受6の周方向における相対位置を溝6dの設置数に応じて変更できる。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、チューブ側ばね受6をアウターチューブ2に対して周方向の複数位置で位置決めできるので、車高を容易且つ多段階に調節できる。
【0063】
なお、第1の実施の形態の緩衝器Dでは、チューブ側ばね受6において環状凸部6cの外周をばね受側対向部とし、スライダ7において内径大径部7aの内周をスライダ側対向部としているが、スライダ側対向部とばね受側対向部は、上記の組み合わせに限られない。したがって、たとえば、チューブ側ばね受6の環状凸部6cの図2(a)中の上端面をばね受側対向部とし、スライダ7の内径大径部7aと内径小径部7bとの境の段部をスライダ側対向部としてもよい。つまり、チューブ側ばね受6とスライダ7とを相対的にアウターチューブ2の軸方向に移動させて分離できる態様であって、チューブ側ばね受6とスライダ7とが互いに対向する部位が複数ある場合、当該部位のうち任意の部位を選んでスライダ側対向部とばね受側対向部とに設定すればよい。
【0064】
また、チューブ側ばね受6をスライダ7の内周へ嵌合しているが、チューブ側ばね受6内にスライダ7の一部が嵌合される構造を採用してもよい。さらに、スライダ側対向部とばね受側対向部との一方に溝を設け、他方に突起を設ければよいので、環状凸部(ばね受側対向部)6cに突起を設けて、内径大径部(スライダ側対向部)7aに複数の溝を設けてもよい。
【0065】
さらに、第1の実施の形態の緩衝器Dでは、スライダ7が環状であって、連結部がチューブ側ばね受6の外周に周方向に沿って設けられた環状凸部6cと、スライダ7から延びる弾性片7fと弾性片7fの先端側に設けられて環状凸部6cに引掛かる爪7gとを備えている。このように構成された緩衝器Dでは、作業者は、チューブ側ばね受6をスライダ7から離脱される際には爪7gを外側へ向けて押せばチューブ側ばね受6とスライダ7との分離が可能で、スライダ7にチューブ側ばね受6を嵌合させると弾性片7fの復元力で爪7gが環状凸部6cに引っ掛かってチューブ側ばね受6とスライダ7との連結を行える。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、チューブ側ばね受6とスライダ7との着脱作業が非常に簡単となる。なお、第1の実施の形態の緩衝器Dでは、内径大径部7aが割を有するC形とされており、弾性片7fが内径大径部7aの割に収容されているので、弾性片7fを飛来する飛び石等から保護でき、チューブ側ばね受6とスライダ7との連結が解かれてしまうのを阻止できる。
【0066】
また、第1の実施の形態の緩衝器Dでは、チューブ側ばね受6の外周にスライダ7が嵌合可能であり、スライダ7が外周に自身に形成された突起7cと周方向で同じ位置に目印用溝(目印)7eを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、スライダ7内にチューブ側ばね受6を嵌合させる際に、環状凸部6cの溝6dと目印用溝(目印)7eとを周方向で位置合わせすることで、目視できない突起7cと溝6dとの位置を周方向で簡単に位置合わせでき、作業者によるチューブ側ばね受6とスライダ7との嵌合作業が非常に簡単となる。なお、前述したが、スライダ7をチューブ側ばね受6内に嵌合する構造の採用も可能であるから、このような場合、チューブ側ばね受6の外周に目印を設ければよい。
【0067】
また、第1の実施の形態の緩衝器Dでは、チューブ側ばね受6とスライダ7とが合成樹脂製とされているので、緩衝器Dを軽量化できる。なお、チューブ側ばね受6とスライダ7のいずれか一方のみを合成樹脂製としても緩衝器Dの軽量化に寄与できる。
【0068】
<第2の実施の形態>
つづいて、第2の実施の形態の緩衝器D1について説明する。第2の実施の形態の緩衝器D1において、第1の実施の形態の緩衝器Dと同じ部材については、説明が重複するため、同じ符号を付すのみとして詳しい説明を省略し、第1の実施の形態の緩衝器Dと異なる部材について詳細に説明する。
【0069】
図4に示すように、第2の実施の形態における緩衝器D1は、第1の実施の形態における緩衝器Dと同様に、外周に螺子部2aを有するアウターチューブ2とアウターチューブ2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とを有する緩衝器本体1と、緩衝器本体1の外周に配置されるコイルばねでなる懸架ばね4と、ロッド3に取付けられて懸架ばね4の一端4aを支持するロッド側ばね受5と、アウターチューブ2の螺子部2aに螺着されて懸架ばね4の他端4bを支持する環状のチューブ側ばね受12と、アウターチューブ2の外周に軸方向への移動のみが許容されて装着されるスライダ11と、チューブ側ばね受12とスライダ11とを着脱可能に連結する連結部と、チューブ側ばね受12とスライダ11とが連結された状態でアウターチューブ2の軸回りの相対回転を規制する回転規制部とを備えて構成されている。そして、この緩衝器D1は、第1の実施の形態における緩衝器Dと同様に、図示しない鞍乗車両における車体と後輪との間に介装されて使用され、車体および後輪の振動を抑制する。
【0070】
第2の実施の形態の緩衝器D1は、スライダ11、チューブ側ばね受12およびこれらを連結する連結部において第1の実施の形態の緩衝器Dと構造を異にしている。なお、緩衝器本体1の構成において第2の実施の形態の緩衝器D1と第1の実施の形態の緩衝器Dとで異なるところはない。
【0071】
以下、第2の実施の形態の緩衝器D1において第1の実施の形態の緩衝器Dと異なるスライダ11、チューブ側ばね受12およびこれらを連結する連結部において詳細に説明する。
【0072】
アウターチューブ2の螺子部2aには、環状のチューブ側ばね受12が螺着されている。チューブ側ばね受12は、磁性体で形成されていて、図5に示すように、内周に雌螺子が形成された本体12aと、本体12aの外周の図4中上端から外方へ向けて突出する環状のフランジ12bと、フランジ12bの外周に周方向に等間隔に設けられて径方向外方へ向けて突出する10個の凸部12cとを備えている。
【0073】
そして、チューブ側ばね受12の本体12aのフランジ12bよりも図5(a)中の下方側の部分は、懸架ばね4の他端4bに設けた座巻部分が嵌合する嵌合部として機能している。懸架ばね4の他端4bが本体12aの嵌合部に嵌合されると、フランジ12bの図5(a)中の下端に懸架ばね4の他端4bの座巻部分が当接するようになっていて、チューブ側ばね受12は、フランジ12bで懸架ばね4の他端4bを支承する。また、第2の実施の形態の緩衝器D1では、フランジ12bの外周には、周方向に36度の位相差をもって等間隔に10個の凸部12cが設けられている。凸部12cは、図5(b)に示すように、平面視で扇形となっている。
【0074】
スライダ11は、図6に示すように、環状であって、チューブ側ばね受12のフランジ12bの図4中上面に軸方向で対向する本体11aと、本体11aに対して周方向に等間隔に設けた10個の嵌合突起11bと、本体11aの内周にアウターチューブ2の2つのキー溝2eに符合する位置に設けられて各キー溝2eにそれぞれ挿入されるキー11cと、本体11aの外周に連なって嵌合突起11b,11b間を覆うカバー11dとを備えている。
【0075】
スライダ11は、合成樹脂で形成されている。スライダ11は、懸架ばね4から直接荷重を受けるチューブ側ばね受12程の強度が求められないため、ガラス繊維の配合による強化された合成樹脂の使用が求められない。そのため、スライダ11は、第2の実施の形態の緩衝器D1にあっても、ポリアセタール樹脂製とされているが、他の合成樹脂で形成されてもよい。また、スライダ11は、合成樹脂製とされるため、緩衝器D1の軽量化に寄与している。なお、スライダ11は、合成樹脂に代えて金属で形成されてもよい。
【0076】
また、スライダ11は、チューブ側ばね受12の凸部12cと同数の10個の嵌合突起11bを備えている。より詳細には、嵌合突起11bは、本体11aに対して周方向で等間隔に36度の位相差を以って設けられており、本体11aからチューブ側ばね受12側へ向けて突出している。よって、スライダ11の本体11aとチューブ側ばね受12のフランジ12bとが当接した際にチューブ側ばね受12の隣り合う凸部12cと凸部12cとの間に各嵌合突起11bが入り込んで嵌合する。また、嵌合突起11bは、図6(b)に示すように、平面視で扇形をしており、チューブ側ばね受12の隣り合う凸部12cと凸部12cとの間に端面を凸部12cの周方向の端面に正対させて嵌合する。よって、スライダ11の本体11aとチューブ側ばね受12のフランジ12bとが当接すると、スライダ11の嵌合突起11bとチューブ側ばね受12の凸部12cとが噛み合って、スライダ11とチューブ側ばね受12とは互いに相手方に対して軸回りへの回転が阻止される。なお、嵌合突起11bと凸部12cの平面視の形状は、互いに噛み合ってスライダ11とチューブ側ばね受12との互いの相対回転を阻止可能な形状とされていれば、図示した形状に限定されない。
【0077】
また、スライダ11の本体11aの内周に設けられたキー11cは、本体11aに対して周方向で180度の位相差を以って径方向内側へ向けて突出している。キー11cは、アウターチューブ2に設けられるキー溝2eの設置数に合わせてキー溝2eと同数だけ設けられている。なお、キー11cの設置数は、アウターチューブ2のキー溝2eの設置数と同数だけ設けられればよい。
【0078】
スライダ11は、内周のキー11cをアウターチューブ2の外周に設けられたキー溝2eに周方向で位置合わせしつつ、アウターチューブ2の図4中下端側から内周にアウターチューブ2を挿入させ、アウターチューブ2の外周に装着される。キー11cがキー溝2e内に嵌合するとキー溝2eの両側壁にキー11cの側壁が摺接し、スライダ11のアウターチューブ2の周方向への移動は規制されるものの、スライダ11のアウターチューブ2のキー溝2eに沿う軸方向への移動は許容される。よって、スライダ11は、キー11cとキー溝2eによってアウターチューブ2の外周に軸方向への移動のみが許容された状態で装着されている。なお、スライダ11のアウターチューブ2に対する回転の阻止と軸方向への移動の許容をキー11cとキー溝2eとで実現しているが、他の構造で実現してもよい。よって、第2の実施の形態の緩衝器D1にあっても、アウターチューブ2の外周形状を円の一部を直線状に切り落とした形状としてスライダ11の内周形状をアウターチューブ2の外周形状と符合する形状とするようにして、スライダ11のアウターチューブ2に対する回転の阻止と軸方向への移動の許容とを実現してもよい。
【0079】
このようにスライダ11をアウターチューブ2へ装着した後、チューブ側ばね受12は、アウターチューブ2の図4中下端側から内周にアウターチューブ2を挿入させ、アウターチューブ2の螺子部2aに螺着される。チューブ側ばね受12を螺子部2aに螺着した状態では、スライダ11は、チューブ側ばね受12を乗り越えチューブ側ばね受12の反対側へ移動できず、キー溝2eがアウターチューブ2の途中までしか形成されていないので、アウターチューブ2から脱落しない。
【0080】
また、スライダ11は、本体11aの外周に連なって嵌合突起11b間を覆うカバー11dを備えている。カバー11dは、環状とされて本体11aの外周からチューブ側ばね受12側へ向けて立ち上がっており、周方向に矩形の凹凸が現れる波形状をしていて嵌合突起11bの外周に一体化されるとともにスライダ11を側方から見て嵌合突起11b,11b間を覆っている。カバー11d図6(c)中で最下端から本体11aまでの軸方向の深さは、凸部12cの軸方向長さよりも短く設定されており、スライダ11の本体11aがチューブ側ばね受12のフランジ12bに当接して凸部12c,12c間に嵌合突起11bが嵌合した状態となると、凸部12cおよびフランジ12bが少しカバー11dの下端から外方に突出する。よって、スライダ11にチューブ側ばね受12を嵌合してもスライダ11は、懸架ばね4が干渉しないスライダ11のカバー11dおよび嵌合突起11bの内周形状は、チューブ側ばね受12のフランジ12bと凸部12cとの外周形状と適合する形状となっていて、チューブ側ばね受12をスライダ11に重ねると凸部12cおよびフランジ12bは、スライダ11のカバー11dと嵌合突起11bの内周に嵌合されて収容される。
【0081】
ここで、前述した通り、スライダ11は、アウターチューブ2に対して周方向の回転が規制されており、チューブ側ばね受12の突起12c,12c間にスライダ11の嵌合突起11bを嵌合させてチューブ側ばね受12をスライダ11に当接させるとスライダ11とチューブ側ばね受12との相対回転が規制される。そのため、チューブ側ばね受12は、アウターチューブ2に装着されたスライダ11に嵌合されると、アウターチューブ2に対して周方向への回転が規制される。
【0082】
なお、第2の実施の形態の緩衝器D1では、スライダ11のチューブ側ばね受12に対向するスライダ側対向部が本体11aおよび嵌合突起11bとされ、チューブ側ばね受12のスライダ11に対向するばね受側対向部がフランジ12bおよび凸部12cとされている。
【0083】
また、第2の実施の形態の緩衝器D1では、回転規制部は、ばね受側対向部である嵌合突起11bと、スライダ側対向部である凸部12cとで構成されている。そして、第2の実施の形態の緩衝器D1では、スライダ11からチューブ側ばね受12を引き抜いて回転させて、再度スライダ11内に嵌合突起11bを凸部12c,12c間に嵌合させると、スライダ11とチューブ側ばね受12とが互いに回転が規制された状態で互いの周方向の相対位置を変更できる。この例では、嵌合突起11bと凸部12cとがそれぞれ10個ずつ設けられているので、スライダ11に対してチューブ側ばね受12を周方向に36度ずつ異なる10の相対位置に回転が規制された状態で位置決めできる。なお、スライダ11側に設けられる嵌合突起11bとチューブ側ばね受12の凸部12cの設置数は、チューブ側ばね受12とスライダ11とを相対的にアウターチューブ2の軸方向に移動させてスライダ11とチューブ側ばね受12との嵌合と引き抜きとができるという条件を満たせば、互いに同数でなくともよい。ただし、スライダ11を合成樹脂で形成している本実施の形態の緩衝器D1では、嵌合突起11bと凸部12cとで回転規制部を構成している関係上、嵌合突起11bと凸部12cとが同数だけ設けられると、スライダ11とチューブ側ばね受12とを相対回転させるトルクに対する回転規制部の強度が向上するという点で好ましい。
【0084】
また、スライダ11は、カバー11d周方向で凸部12cが嵌まり込む嵌合突起11b,11b間に対応する部分11d1が外周側へ突出する波形状とされている。よって、鞍乗車両の車高調整を行う作業者は、スライダ11を外部から見たときに外周側へ突出する部分11d1を目印として視認できる。前記部分11d1と凸部12cと周方向で位置合わせすれば、スライダ11内にチューブ側ばね受12を挿入できるため、前記作業者は、スライダ11から引き出したチューブ側ばね受12を再度スライダ7に嵌合させる際に、前記部分11d1を目印にしてスライダ11とチューブ側ばね受12とを周方向で位置合わせすればよい。作業者は、スライダ11の外周側から視認できない嵌合突起11bを凸部12c,12c間に容易に嵌合してスライダ11内にチューブ側ばね受12を嵌合できる。なお、目印は、第2の実施の形態の緩衝器D1では前記部分11d1とされているが、作業者が目視可能であればよいので、突起その他の形状によって形成されるものであってもよいし、塗装によって形成されるものでもよい。また、スライダ11にカバー11dを設けない場合には、嵌合突起11bを目視できるので、目印の設置は不要となる。
【0085】
さらに、スライダ11は、チューブ側ばね受12を本体11aに当接した際にチューブ側ばね受12を吸引する磁石13を備えている。磁石13は、第2の実施の形態の緩衝器D1では、本体11aであってキー11cの径方向外側に位置する範囲内にそれぞれ設けられている。つまり、キー11cと同数の2つの磁石13がスライダ11の本体11aに埋め込まれて設けられている。本体11aのキー11cの径方向外側に対向する部分は、キー11cの設置によって径方向で幅が厚くなっているので、この部分に磁石13を埋め込んでも本体11aの強度低下を招きにくいという利点がある。また、本実施の形態の緩衝器D1では、磁石13の設置数は、キー11cと同数とされているが、少なくとも1以上であればスライダ11に設けられたキー11cよりも少なくてもよく、磁石13の設置箇所はフランジ12bのキー11cに対応する箇所に設けられればフランジ12bの強度低下を招きにくくなる。また、フランジ12bに設けられるキー11cの設置数は、1以上であってアウターチューブ2のキー溝2eの設置数よりも少なくてもよい。よって、磁石13は、本体11aに埋め込んで設置される場合、本体11aのキー11cの径方向外側に設けるとよいが、磁石13のフランジ12bへの設置個所は本体11aの前記範囲に限定されない。
【0086】
第2の実施の形態の緩衝器D1では、磁石13は、吸引力(磁力)に優れる永久磁石であるネオジウム磁石とされているが、スライダ11の本体11aにチューブ側ばね受12のフランジ12bを当接させた際にチューブ側ばね受12を吸引し、鞍乗車両の走行中に入力される振動によってスライダ11がチューブ側ばね受12から脱落しない程度の吸引力(磁力)を発揮する永久磁石とされればよいので、ネオジウム磁石以外の永久磁石でもよい。なお、磁石13は、スライダ11に対して本体11aに設けた孔に接着剤を介在させて接合されているが、スライダ11が合成樹脂で弾性を備えているので前記孔内への磁石13の嵌合によってスライダ11に脱落することなく強固に保持される場合には接着剤を用いなくともよい。磁石13の磁力の設定によってもスライダ11とチューブ側ばね受12との連結強度を大小調節できるが、スライダ11の本体11aの孔の深さの設定で磁石13のチューブ側ばね受12側の端面の位置を調節できるため、前記孔の深さの設定によっても前記連結強度を大小調節できる。また、磁石13の設置数は、スライダ11がチューブ側ばね受12から脱落しない程度の接合強度を確保できれば任意に設定できるが、複数をスライダ11に周方向で等間隔に配置すればチューブ側ばね受12を周方向でバランスよく吸引できる。
【0087】
そして、スライダ11にチューブ側ばね受12を前述した通り嵌合させると、スライダ11に取り付けられた磁石13がチューブ側ばね受12を吸着して、スライダ11とチューブ側ばね受12とが嵌合した状態で連結される。
【0088】
スライダ11とチューブ側ばね受12とが連結されると、嵌合突起11bが凸部12c,12c間に嵌合して嵌合突起11bと凸部12cとが噛み合い、アウターチューブ2に対して回転が規制されたスライダ11に対してチューブ側ばね受12の相対回転が規制される。結果、チューブ側ばね受12は、アウターチューブ2に対して周方向の回転が規制される。よって、チューブ側ばね受12が懸架ばね4の伸縮に伴って懸架ばね4からトルクを受けても、チューブ側ばね受12は、スライダ11に連結された状態では、アウターチューブ2に対して回転しないので、アウターチューブ2に対して軸方向に移動しない。
【0089】
このように第2の実施の形態の緩衝器D1では、連結部は、スライダ11に取り付けられた磁石13と、磁性体で形成されたチューブ側ばね受12とで構成されており、スライダ11とチューブ側ばね受12とを着脱可能に連結している。なお、チューブ側ばね受12に磁石を設けて、スライダ11を磁性体で形成するかスライダ11が磁石と対向する部位に磁性体を備えていてもよい。アウターチューブ2を磁性体で形成する場合、大きな荷重やトルクを受けないスライダ11を合成樹脂として、スライダ11に磁石13を保持させると、スライダ11が磁石13によって磁化されないのでアウターチューブ2に対して軸方向へスムーズに移動できる。また、チューブ側ばね受12の全体を磁性体で形成せずに、フランジ12bの磁石13と対向する部分にフランジ12bの全周に亘って環状の磁性体を取り付けてもよい。さらに、チューブ側ばね受12に磁石13を設ける場合、チューブ側ばね受12を高い強度を持つガラス繊維強化ポリアミド系樹脂製とすればアウターチューブ2を磁性体としても全体の磁化によって回転操作を妨げられずに済む。磁石13をチューブ側ばね受12に設ける場合でも、スライダ11とチューブ側ばね受12との連結強度が確保できれば、磁石13の設置位置と設置数は任意に設定できる。
【0090】
緩衝器D1は、以上のように構成されており、鞍乗車両の車体と後輪との間に介装されると、前述した通り、懸架ばね4の弾発力で車体を弾性支持して鞍乗車両の走行時に後輪側から入力される振動の車体への伝達を低減するとともに、車体の振動を緩衝器本体1が発生する減衰力で振動を減衰させることで、車体の振動を抑制する。
【0091】
この緩衝器D1では、作業者は、以下に示す手順で鞍乗車両の車体の高さである車高を調整できる。まず、作業者は、スライダ11にチューブ側ばね受12が嵌合されて連結部であるスライダ11に設けられた磁石13と磁性体であるチューブ側ばね受12とが吸着して、スライダ11とチューブ側ばね受12とが連結された状態から、片手でスライダ11を掴んで、もう片方の手でチューブ側ばね受12或いはアウターチューブ2を掴んで、スライダ11をチューブ側ばね受12から軸方向へ押し上げて引き離す。すると、チューブ側ばね受12をスライダ11から抜くことができ、チューブ側ばね受12は、アウターチューブ2に対して周方向へ回転できる状態となる。
【0092】
つづいて、作業者は、チューブ側ばね受12をアウターチューブ2に対して周方向の希望する方向へ回転させて送り螺子の要領でアウターチューブ2に対して軸方向へ移動させ、チューブ側ばね受12が希望する位置に配置できたらチューブ側ばね受12の回転操作を止める。さらに、作業者は、スライダ11のカバー11dの外周の凹凸を目印にしてチューブ側ばね受12の凸部12c,12c間にスライダ11の嵌合突起11bが嵌合する位置にとなるようにチューブ側ばね受12を周方向にて位置を合わせる。
【0093】
そして、作業者は、その状態で、チューブ側ばね受12に対してスライダ11を図4中下方へ移動させて、スライダ11内にチューブ側ばね受12を嵌合させる。すると、スライダ11に設けられた磁石13がチューブ側ばね受12に吸着して、嵌合突起11bが凸部12c,12c間に嵌合した状態で、スライダ11とチューブ側ばね受12とが連結される。
【0094】
チューブ側ばね受12は、アウターチューブ2に対して周方向の回転が規制されたスライダ11に対して周方向に相対回転不能にスライダ11に連結される。よって、チューブ側ばね受12は、このようにスライダ11に連結されるとアウターチューブ2に対して周方向への回転が規制されるため、アウターチューブ2に軸方向へ移動不能な状態で固定される。なお、チューブ側ばね受12のフランジ12bの外周には周方向に並べて凸部12cが設けられ、スライダ11のカバー11dの外周には凹凸が設けられているので、作業者がチューブ側ばね受12およびスライダ11を掴んだ際に、凸部12cおよびカバー11dの外周が滑り止めの役割を果たして作業者の車高調整作業の負担を軽減している。
【0095】
このように、作業者は、工具類を利用することなくスライダ11とチューブ側ばね受12とを分離させ、チューブ側ばね受12のアウターチューブ2に対する軸方向の位置を調整した後に工具類を利用することなくスライダ11とチューブ側ばね受12とを連結できる。
【0096】
また、作業者は、ドライバーとハンマーを利用したロックナットの締め付け作業のようにチューブ側ばね受12にトルクが負荷される作業をしなくて済むため、チューブ側ばね受12のアウターチューブ2への固定の際にチューブ側ばね受12が意図せず回転してしまって車高調整を狙い通りに行うことができないといった問題も解消される。
【0097】
なお、前述した通り、磁石13は、スライダ11の本体11aに対して、周方向でアウターチューブ2のキー溝2eに嵌合されるキー11cが設けられる範囲に取り付けられている。スライダ11は、キー11cがキー溝2e内に挿入されており、アウターチューブ2に対して周方向への回転が規制されるものの軸方向への移動は妨げられていない。スライダ11は、アウターチューブ2に対して軸方向へ移動できるようにアウターチューブ2の外周に遊嵌されており多少ガタがあるため、図7に示すように、アウターチューブ2の軸線とキー溝2eの周方向(幅方向)の中心とを含み前記軸線に沿う平面に直交する軸100の回りに少し図7中の矢印で示す方向に回転してアウターチューブ2に対して少し傾く姿勢をとり得る。よって、作業者は、スライダ11をチューブ側ばね受12から取り外す際に、スライダ11の一方のキー11c側をアウターチューブ2に対して持ち上げて2つある磁石13のうち一方をまずチューブ側ばね受12から離間させてスライダ11とチューブ側ばね受12との連結強度を弱めて、引き続き、磁石13のうち他方をチューブ側ばね受12から離間させるような操作が可能となる。
【0098】
したがって、アウターチューブ2の外周に軸方向に沿って周方向で180度位相差をもって2つのキー溝2eを設け、スライダ11の内周に2つのキー溝2eに対応してそれぞれキー溝2e内に挿入される2つのキー11cを設け、連結部が2つのキー11cと対応してスライダ11の本体11aに対応するキー11cの径方向外側に設置される2つの磁石13を設ける場合、スライダ11をチューブ側ばね受12から取り外す際に磁石13を1つずつチューブ側ばね受12から取り外せる。よって、この場合、2つの磁石13から同時にチューブ側ばね受12を取り外す場合に比較して、スライダ11からチューブ側ばね受12の取り外し作業において作業者の作業負担を軽減できる。
【0099】
以上のように、第2の実施の形態の緩衝器D1は、外周に螺子部2aを有するアウターチューブ2とアウターチューブ2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とを有する緩衝器本体1と、緩衝器本体1の外周に配置されるコイルばねでなる懸架ばね4と、ロッド3に取付けられて懸架ばね4の一端4aを支持するロッド側ばね受5と、アウターチューブ2の螺子部2aに螺着されて懸架ばね4の他端4bを支持する環状のチューブ側ばね受12と、アウターチューブ2の外周に軸方向への移動のみが許容されて装着されるスライダ11と、チューブ側ばね受12とスライダ11とを着脱可能に連結する連結部(磁石13およびチューブ側ばね受12)と、チューブ側ばね受12とスライダ11とが連結された状態でアウターチューブ2の軸回りの相対回転を規制する回転規制部(凸部12cおよび嵌合突起11b)とを備えて構成されている。
【0100】
このように構成された緩衝器D1では、作業者は、工具を利用せずにチューブ側ばね受12とスライダ11との着脱が可能となり、チューブ側ばね受12とスライダ11とが連結部によって連結されると回転規制部によって相対回転が規制されるため、チューブ側ばね受12のアウターチューブ2への固定の際にトルクを作用させる必要がない。よって、このように構成された緩衝器D1によれば、工具類を利用することなく、鞍乗車両の車高を作業者が狙った通りに調整できる。
【0101】
なお、スライダ11は、アウターチューブ2に対して回転が規制されて軸方向のみの移動が許容される態様で装着されていて、連結部によってチューブ側ばね受12に連結でき、回転規制部によってチューブ側ばね受12とアウターチューブ2の軸回りの相対回転が規制可能であればよい。よって、スライダ11は、第2の実施の形態では環状とされているが、環状でなくてもよい。
【0102】
また、第2の実施の形態の緩衝器D1では、チューブ側ばね受12がスライダ11に連結された状態でスライダ11に対向する環状のフランジ(ばね受側対向部)12bを備え、スライダ11が環状であってチューブ側ばね受12に連結された状態でチューブ側ばね受12に対向する環状の本体(スライダ側対向部)11aを備え、回転規制部がフランジ(ばね受側対向部)12bに周方向に等間隔に設けられた複数の凸部12cと、本体(スライダ側対向部)11aに設けられて凸部12cに嵌合する凸部12cの設置数以下の嵌合突起11cとを備えている。このように構成された緩衝器D2によれば、凸部12cが複数設けられているので、凸部12cに嵌合させる嵌合突起11cを変えることで、スライダ11に対してチューブ側ばね受12の周方向における相対位置を突起12cの設置数に応じて変更できる。よって、このように構成された緩衝器D2によれば、チューブ側ばね受12をアウターチューブ2に対して周方向の複数位置で位置決めできるので、車高を容易且つ多段階に調節できる。また、チューブ側ばね受12をスライダ11内へ嵌合しているが、チューブ側ばね受12にスライダ11の一部が嵌合される構造を採用してもよい。
【0103】
さらに、第2の実施の形態の緩衝器D1では、チューブ側ばね受12を磁性体として、連結部がスライダ11に設けられてチューブ側ばね受12を吸引する磁石13を有して構成されている。このように構成された緩衝器D1によれば、磁石13が磁性体を吸引する磁力を利用してスライダ11とチューブ側ばね受12とを連結するので、連結部の構造が簡素となるとともに、スライダ11へのチューブ側ばね受12の着脱を繰り返しても連結部が劣化しにくいので長期間に亘り性能の維持と発揮ができる。
【0104】
なお、前述した通り、連結部は、チューブ側ばね受12に設けられた磁石と、磁性体で形成されるスライダ11或いはスライダ11に前記磁石と対向する部位に設けられる磁性体とで構成されてもよい。さらに、チューブ側ばね受12の全体を磁性体で形成せずに、フランジ12bの磁石13と対向する部分にフランジ12bの全周に亘って環状の磁性体を取り付けてもよい。
【0105】
そして、第2の実施の形態の緩衝器D1は、チューブ側ばね受12が周方向に等間隔に設置されて外周側へ向けて放射状に突出する複数の凸部12cを有し、スライダ11が環状であって周方向に等間隔に設置されてチューブ側ばね受12側へ向けて突出してチューブ側ばね受12に重ねられると凸部12c,12cの間のそれぞれに嵌合する複数の嵌合突起11bと、凸部12c,12cの外周側を覆うカバー11dとを有して構成されている。このように構成された緩衝器D1によれば、スライダ11の嵌合凸部11bと嵌合凸部11bが嵌合されるチューブ側ばね受12の凸部12cの外周側がカバー11dで覆われるため、砂や泥がスライダ11とチューブ側ばね受12との間に侵入するのを防止できる。また、このように構成された緩衝器D1によれば、砂や泥のスライダ11とチューブ側ばね受12と当接面への侵入を防止できるので、磁石13の吸引力の低下によるスライダ11のチューブ側ばね受12からの脱落を効果的に防止できる。
【0106】
また、第2の実施の形態の緩衝器D1は、アウターチューブ2が外周に軸方向に沿って設けられたキー溝2eを有し、スライダ11が環状であって内周にキー溝2eに対応してキー溝2e内に挿入されるキー11cを有し、連結部がキー11cと対応する磁石13を有し、キー2eと対応する磁石13がスライダ11のキー11cに対応する箇所に設置されている。このように構成された緩衝器D1によれば、キー11cの設置によって径方向で幅が厚くなるスライダ11のキー11cに対応する箇所に磁石13が設置されるのでスライダ11の強度低下を招きにくいという利点がある。
【0107】
さらに、第2の実施の形態の緩衝器D1は、アウターチューブ2が外周に軸方向に沿って形成されて周方向で180度位相差をもって設けられた2つのキー溝2e,2eを有し、スライダ11が環状であって内周に2つのキー溝2e,2eに対応してそれぞれキー溝2e,2e内に挿入される2つのキー11c,11cを有し、連結部が2つのキー11c,11cと対応して2つの磁石13,13を有し、キー2eと対応する磁石13がスライダ11の対応するキー11cの径方向外側に設置されている。このように構成された緩衝器D1によれば、スライダ11をチューブ側ばね受12から取り外す際に磁石13を1つずつチューブ側ばね受12から取り外せるため、スライダ11からチューブ側ばね受12の取り外し作業において作業者の作業負担を軽減できる。
【0108】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0109】
1・・・緩衝器本体、2・・・アウターチューブ、2a・・・螺子部、2e・・・キー溝、3・・・ロッド、4・・・懸架ばね、4a・・・懸架ばねの一端、4b・・・懸架ばねの他端、5・・・ロッド側ばね受、6・・・チューブ側ばね受、6c・・・環状凸部(ばね受側対向部および連結部)、6d・・・溝(回転規制部)、7,11・・・スライダ、7a・・・内径大径部(スライダ側対向部)、7c・・・突起(回転規制部)、7e・・・目印用溝(目印)、7f・・・弾性片(連結部)、7g・・・爪(連結部)、11b・・・嵌合突起、11c・・・キー、11d・・・カバー、12・・・チューブ側ばね受(連結部)、12c・・・凸部、13・・・磁石、D・・・緩衝器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7