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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】グロメット及びラケット
(51)【国際特許分類】
   A63B 49/022 20150101AFI20240612BHJP
   A63B 102/02 20150101ALN20240612BHJP
   A63B 102/04 20150101ALN20240612BHJP
【FI】
A63B49/022
A63B102:02
A63B102:04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021012755
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116540
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390010917
【氏名又は名称】ヨネックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】加藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】西山 博基
(72)【発明者】
【氏名】長澤 康史
(72)【発明者】
【氏名】井上 直
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-149066(JP,U)
【文献】実開昭57-176270(JP,U)
【文献】実開昭54-066968(JP,U)
【文献】特開2013-132455(JP,A)
【文献】特開2003-117028(JP,A)
【文献】特開2014-193205(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0098142(US,A1)
【文献】中国実用新案第2892190(CN,Y)
【文献】独国特許出願公開第19502898(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 49/022
A63B 102/02
A63B 102/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延出する帯状部と、該帯状部の一方の面から突出する筒部とを備え、ラケットにおけるループ状をなすフレームに装着されるグロメットにおいて、
前記筒部は、前記フレームに形成された孔に貫通した状態でストリングが通過する筒本体と、
前記筒本体の外周面から突出して該筒本体における中心軸の延出方向に沿って延びる複数のリブとを備え、
前記複数のリブは、前記筒本体の外周面から前記帯状部の延出方向両側に向かって突出する第1リブと、前記筒本体の外周面から前記帯状部の延出方向に直交する方向両側に向かって突出する第2リブとにより構成され、
前記第1リブは、前記筒本体における前記帯状部の延出方向両側それぞれに2本以上形成され、
前記第2リブは、前記筒本体における前記帯状部の延出方向に直交する方向両側それぞれに1本以上形成されることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記筒本体における前記帯状部の延出方向両側それぞれに形成される前記第1リブは2本、前記筒本体における前記帯状部の延出方向に直交する方向両側それぞれに形成される前記第2リブは1本であることを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記複数のリブは、前記フレームの内周面より内方にはみ出す長さに形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記筒部を複数備えた前記請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のグロメットと、
前記ストリングが縦方向及び横方向に張設されるフレームとを備えたラケットであって、
前記フレームに形成された孔に前記筒部を貫通して前記グロメットが前記フレームに装着され、複数の前記筒部に前記ストリングが通過して張設されることを特徴とするラケット。
【請求項5】
複数の前記筒部のうち、縦方向に張設されて前記フレームの中央領域を通過する前記ストリングが挿通される前記筒部が、前記複数のリブを備えていることを特徴とする請求項4に記載のラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラケットのフレームに装着されてストリングとフレームとの接触を回避するグロメット及びかかるグロメットを用いたラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
テニスやバドミントンのラケットにおいては、特許文献1に開示されるように、ループ状に形成されたフレームを備え、フレームの内側にストリングが張設されて打球面(フェース)が形成される。また、フレームには、ストリングが挿通される孔が所定の間隔を隔てて多数形成される。各孔にはグロメットが装着され、グロメットの筒状部分(以下、「筒部」とする)が孔の内周面とストリングとの間に介在し、それらの接触を回避するようになっている。
【0003】
ラケットにあっては、打球時にストリングが撓み変形する。かかる撓み変形によりグロメットの筒部に力が作用して筒部が変形し、筒部の変形による復元力がストリングだけでなくストリングに接触するボールにも作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2012-517873号公報
【文献】実公昭56-4042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレームの各孔は丸穴状に形成され、グロメットの筒部は円筒状に形成される。フレームの各孔に筒部を挿入する作業の都合上、孔の内径より筒部の外径の方が小さく形成され、孔と筒部との間にはクリアランスが形成される。かかるクリアランスが形成されると、ラケットによる打球でストリングが撓んで筒部に力が加わったときに、筒部がクリアランスの大きさ分変形し易くなる。このような筒部の変形により、筒部が変形してから復元するまでの時間が長くなって打球の弾き性能が低下する、という問題がある。
【0006】
ここで、仮に筒部の外径寸法を大きくしてクリアランスを小さくすれば、打球時に筒部が変形し難くなるが、フレームの各孔に筒部を挿入する抵抗が大きくなり、筒部を孔に挿入することが困難になる、という問題がある。
【0007】
ところで、特許文献2には、筒部にリブを形成したグロメットが知られている。リブは、筒部の周方向に90°の間隔を隔てて4本形成されている。しかしながら、特許文献2では、孔内にて筒部及びリブの周方向の位置(回転角度)が任意となる。リブには、ストリングの張設によってフレームの孔に押し付けられる押圧力が加わるが、特許文献2のグロメットでは該押圧力が1本のリブに作用し、リブが潰れ易くなって孔と筒部とのクリアランスが大きくなる。従って、特許文献2のグロメットにおいても、打球の弾き性能を高めることが困難になる、という問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ラケットによる打球時の弾き性能を向上することができるグロメット及びラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における一態様のグロメットは、所定方向に延出する帯状部と、該帯状部の一方の面から突出する筒部とを備え、ラケットにおけるループ状をなすフレームに装着されるグロメットにおいて、前記筒部は、前記フレームに形成された孔に貫通した状態でストリングが通過する筒本体と、前記筒本体の外周面から突出して該筒本体における中心軸の延出方向に沿って延びる複数のリブとを備え、前記複数のリブは、前記筒本体の外周面から前記帯状部の延出方向両側に向かって突出する第1リブと、前記筒本体の外周面から前記帯状部の延出方向に直交する方向両側に向かって突出する第2リブとにより構成され、前記第1リブは、前記筒本体における前記帯状部の延出方向両側それぞれに2本以上形成され、前記第2リブは、前記筒本体における前記帯状部の延出方向に直交する方向両側それぞれに1本以上形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明における一態様のラケットは、前記筒部を複数備えた前記グロメットと、前記ストリングが縦方向及び横方向に張設されるフレームとを備えたラケットであって、前記フレームに形成された孔に前記筒部を貫通して前記グロメットが前記フレームに装着され、複数の前記筒部に前記ストリングが通過して張設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ストリングの張設によってフレームの孔に押し付けられる第1リブを2本以上とすることができる。これにより、第1リブが潰れることを抑制でき、筒部とフレームの孔との間にクリアランスを生じ難くしてラケットによる打球時の筒部の変形を抑えることができる。更には、帯状部の延出方向に直交する方向両側、言い換えるとラケットの表裏方向両側それぞれに第2リブを形成することができる。かかる第2リブによって、打球によるストリングの撓みで筒部に力が加わっても筒部の変形を抑えることができる。このように、第1及び第2リブによってラケットによる打球時に筒部が変形し難くなり、筒部が変形してから元の形状に復元する時間を短くして打球の弾き性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係るラケットの外観図であり、図1Aは、前記ラケットの正面図、図1Bは、前記ラケットの側面図である。
図2】フレームからグロメットを取り外した状態の説明用正面図である。
図3】実施の形態におけるストリングの張設状態を表したラケットの上部部分正面断面図である。
図4】実施の形態におけるグロメットの部分拡大斜視図である。
図5】実施の形態におけるグロメットの部分正面図である。
図6図3のA-A線断面図である。
図7図6の部分拡大図である。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下においては、本発明に係るグロメットを硬式テニス或いはソフトテニス用のラケットに適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、スカッシュ用のラケットや、バドミントン用のラケットなどに適用してもよい。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るラケットの外観図であり、図1Aは、前記ラケットの正面図、図1Bは、前記ラケットの側面図である。なお、以下の各図では、説明の便宜上、一部の構成を省略している。
【0015】
図1に示すように、ラケット10は、ボールを打つ部位であるヘッド11と、プレーヤーがラケット10を把持する部位であるグリップ12と、ヘッド11とグリップ12とを一体に連結するシャフト13とを備えている。なお、以下の説明において、図1中矢印にて示すように、ラケット10の長手方向を縦方向とし、この縦方向にてヘッド11が位置する側を上側とし、グリップ12が位置する側を下側とする。また、ラケット10の打球面22上において(即ち打球面22に沿う平面上において)縦方向に直交する方向を横方向とし、ラケット10の打球面22に直交する方向を表裏方向とし、図1Aの紙面手前側(図1Bの紙面左側)を表側とし、その反対側を裏側とする。
【0016】
シャフト13は、表裏方向から見て、グリップ12からヘッド11に向かって二股に分岐するスロート15を備え、横方向両側(図1A中左右)のスロート15の間にはヘッド11の一部を形成するヨーク17が形成されている。ヨーク17は後述するフレーム20の下側を形成する。なお、シャフト13は、これに限らず、二股に分岐しないものとしてもよい。
【0017】
ヘッド11は、縦方向に長い楕円形となるループ状をなすフレーム20と、フレーム20の内側に縦方向及び横方向に張設されたストリング21とを備えている。ストリング21は、フレーム20の内側における表裏両面に打球面(フェース)22を形成する。フレーム20は、例えば繊維強化樹脂等からなる中空の筒状体を楕円形状に成形したものである。なお、フレーム20は中空とせずに内部に発泡材を充填したり、木製或いは金属製としたりしてもよい。
【0018】
フレーム20の外周面20aには、表裏方向における中央部が両側部に比べて凹んだ溝部20bが設けられている。溝部20bは、フレーム20の周方向に沿って連続して設けられている。また、フレーム20には、貫通孔(孔)23が設けられ、かかる貫通孔23は、フレーム20の溝部20bの底側から内周面20cまで貫通して形成されている。貫通孔23は、フレーム20の周方向に沿って複数設けられている。
【0019】
図2は、フレームからグロメットを取り外した状態の説明用正面図である。図2にも示すように、フレーム20には、その外周側から4体のグロメット25~28が装着され、これらグロメット25~28を介してストリング21がフレーム20に張設される。本実施の形態では、上側のグロメット25は、図2のフレーム20の正面視にて、約11時方向の個所から約1時方向の個所に亘って設けられている。横方向両側のグロメット26、27は、上側のグロメット25の横方向両端近傍からフレーム20の横方向の側面に形成された最下位の貫通孔23に達する位置に亘って設けられている。また、下側のグロメット28は、ヨーク17に設けられている。なお、下側のグロメット28を除く各グロメット25~27は、各種条件に応じ、フレーム20の周方向に沿う長さを変えてもよい。
【0020】
各グロメット25~28は、熱可塑性樹脂を射出成形した成形体とすることが例示できる。各グロメット25~28は、フレーム20の周方向に延在する帯状部31と、帯状部31の一方の面から突出する複数の筒部32とを備えている。帯状部31の前後幅は、溝部20bの前後幅より大きく又は同一とされ、フレーム20の前後幅より小さく設定されている。
【0021】
筒部32は、帯状部31側が基部とされ、基部と反対側の先端部がフレーム20の外側から貫通孔23に貫通される。この貫通によってグロメット25~28がフレーム20に装着され、この状態で、筒部32の先端側は、フレーム20の内周面20c側から内方に突出するように配設される。ここで、各筒部32の内部空間は、ストリング21を挿通する挿通路33(図3参照)として形成される。なお、挿通路33の内径寸法は、ストリング21を通す作業性の都合上、ストリング21の直径寸法より大きくなっている。
【0022】
続いて、本実施の形態のストリング21の張設要領について図3を参照して説明する。図3は、実施の形態におけるストリングの張設状態を表したラケットの上部部分正面断面図である。ここでは、フレーム20の中央領域となるスイートスポットで縦方向に張設されるストリング21、つまり、中央領域S(図1参照)内の縦糸となるストリング21の張設要領について説明する。
【0023】
図3に示すように、フレーム20に縦糸となるストリング21を張設する場合、例えば、矢印a1の位置及び方向から見ると、ストリング21が筒部32の先端側から基部側に挿通される。そして、かかる筒部32の基部(一端側)でストリング21が折り返され、フレーム20の外側で帯状部31の表面に沿って矢印a2の位置及び方向となる。続いて、横方向に隣り合う筒部32の基部にてストリング21が折り返され、筒部32の基部側から先端側に挿通されて矢印a3の位置及び方向となり、フレーム20の内側にて縦方向に延在される。
【0024】
このような要領が縦糸を形成する1本のストリング21にてフレーム20の下側と上側とで交互に実施される。これにより、縦糸となるストリング21は、複数の筒部32内の挿通路33にて挿通及び折り返しを繰り返して蛇行しながら横方向に延出する。このときの矢印a1~a3方向を含むストリング21の延出方向がストリング21の張り上げ方向となる。
【0025】
続いて、上側のグロメット25における筒部32であって、中央領域S(図1参照)内の縦糸となるストリング21が挿通される筒部32の具体的構成について説明する。かかる筒部32は、図3に示すように、フレーム20の貫通孔23に貫通した状態でストリング21が通過する筒本体35を備えている。
【0026】
図4は、実施の形態におけるグロメットの部分拡大斜視図である。図5は、実施の形態におけるグロメットの部分正面図である。図4及び図5に示すように、筒部32は、円筒状をなす筒本体35に加え、該筒本体35の外周から突出して形成された複数のリブ36を備えている。筒本体35は、先端側が次第に細くなる形状に形成されている。
【0027】
リブ36は、筒本体35の中心軸Cの延出方向に沿って延びており、該延出方向にて筒本体35と同じ長さに形成されている。図5に示すように、筒本体35の先端側はフレーム20の内周面20c側から内方に突出している。よって、筒本体35と同じ長さとなるリブ36は、フレーム20の内周面20cより内方にはみ出す長さに形成される。これにより、リブ36による剛性向上効果を筒部32の長さ方向全体で得ることができる。
【0028】
図6は、図3のA-A線断面図である。図4に加え、図6に示すように、リブ36は、筒本体35の周方向に等角度毎に形成され、本実施の形態では、筒本体35の周方向で60°間隔毎に6本のリブ36が形成されている。
【0029】
図7は、図6の部分拡大図である。図7にも示すように、筒部32において6本のリブ36は、筒本体35の外周面から突出している。ここで、リブ36の突出方向についての説明では、図6及び図7中左右方向となる帯状部31の延出方向を、単に「延出方向」とする場合がある。該延出方向は、グロメット25をフレーム20に装着した状態で、フレーム20を形成するループの延出方向と一致する。また、リブ36の突出方向の説明では、帯状部31の延出方向に直交する方向(図6及び図7中上下方向)を、単に「直交方向」とする場合がある。該直交方向は、グロメット25をフレーム20に装着した状態で、ラケット10の表裏方向と一致する。
【0030】
筒部32において、6本のリブ36は、帯状部31の延出方向及び該延出方向に対する直交方向の何れにおいても筒本体35の外周面から突出している。更に詳述すると、6本のリブ36のうち、延出方向両側2本ずつ計4本のリブ36は延出方向両側に向かって筒本体35の外周面から突出し、かかる4本のリブ36が第1リブ36aとされる。また、6本のリブ36のうち、直交方向両側1本ずつ計2本のリブ36は該直交方向両側に向かって筒本体35の外周面から突出し、かかる2本のリブ36が第2リブ36bとされる。言い換えると、筒部32における6本のリブ36は、4本の第1リブ36aと2本の第2リブ36bとにより構成されている。
【0031】
リブ36における短手方向両側はテーパ面によって形成され、リブ36の短手方向の幅が筒本体35の外周面に近付くに従って大きく形成されている。
【0032】
フレーム20の貫通孔23に上述した形状の筒部32を挿通した状態で、各リブ36の突出方向先端側が貫通孔23の内周面に接触可能な形状及び大きさに設けられている。これにより、筒部32が貫通孔23内にて、それらの径方向に変位することを防止することができる。また、フレーム20にグロメット25を装着すべく筒部32を貫通孔23内に挿入するときに、筒部32への摩擦抵抗力が増大することを防止でき、グロメット25装着の作業性を良好に維持することができる。
【0033】
ここで、本実施の形態のラケット10は、各グロメット25~28において、複数の筒部32を備えて構成されるが、上記の複数のリブ36を備えた筒部32は、その一部とされる。
【0034】
具体例を挙げると、複数のリブ36を備えた筒部32は、縦糸となるストリング21が挿通される筒部32とされる。また、かかる筒部32のうち、中央領域Sを通過するストリング21が挿通される筒部32に複数のリブ36を形成する構成としてもよい。具体的には、縦糸となるストリング21が16本の場合、左右方向中央上部については10本の縦糸(ストリング21)が挿通される筒部32(言い換えると10個の筒部32)に、左右方向中央下部(ヨーク17)については6本の縦糸が挿入される筒部32(言い換えると6個の筒部32)に複数のリブ36が形成される。これは、プレーヤーがフレーム20上部で打球することが多くラケット10の上部のほうに力がかかりフレーム20の上部の筒部32が動きやすくなるが、この上部の筒部32の動きを規制するためである。また、複数の筒部32のうちの一部に複数のリブ36を形成した場合、それ以外の筒部32の外周面は、筒本体35により円筒外周面によって形成される。
【0035】
上述のようにストリング21を張設すると、ストリング21の張り上げ方向が蛇行するので、帯状部31の延出方向にて筒部32が貫通孔23に押し付けられた状態となる。この状態で、例えば図7に示す筒部32では、挿通路33を通過して折り返されるストリング21によって同図中右側に押し付けられる。図7の筒部32は筒本体35の同図中右側に第1リブ36aが2本突出して形成されるので、第1リブ36a自体の潰れ変形を抑制することができる。これにより、全てのリブ36と貫通孔23との間にクリアランスを生じ難くすることができる。
【0036】
なお、筒部32にあっては、挿通路33を通過して折り返されるストリング21によって図7とは逆に左側に押し付けられる場合がある(図3及び図6参照)。この場合であっても、帯状部31の延出方向両側それぞれで筒本体35から第1リブ36aが2本突出して形成されるので、第1リブ36a自体の潰れ変形を抑制することができる。
【0037】
本実施の形態におけるラケット10にて打球した場合、縦方向に張設されたストリング21が表裏方向や横方向の力を受けて撓むようになる。ストリング21の撓みにより上下のグロメット25、28の筒部32に力が加わって変形し、該変形による復元力がストリング21に作用する。よって、撓んだストリング21の復元力に加えて筒部32の復元力がボールに作用し、これらの力によってボールが弾き飛ぶようになる。
【0038】
ここで、筒部32に4本の第1リブ36aを形成したことで、ストリング21の張設によって筒部32とフレーム20の貫通孔23との間にクリアランスを生じ難くすることができる。これにより、ラケット10による打球時の筒部32の変形を抑えることができる。しかも、ラケット10の表裏両方向に対応する方向において、第2リブ36bが筒本体35から突出して形成されるので、打球によってストリング21が表裏方向に大きく撓むものの、該撓みによる力によっても筒部32の変形を抑えることができる。
【0039】
このように本実施の形態では、筒部32が第1リブ36a及び第2リブ36bを有するので、ラケット10による打球時に筒部32が変形し難くなる。その結果、筒部32が変形してから元の形状に復元する時間を短くして打球の弾き性能を向上でき、打球のスピードアップを図ることができる。
【0040】
また、帯状部31によって筒部32の中心軸C回りの位置を固定できるので、貫通孔23内で筒部32が中心軸C回りに回転することを規制できる。これにより、第1リブ36aが帯状部31の延出方向両側それぞれで1本以下になることを防止し2本となることを維持できる。よって、第1リブ36a及び第2リブ36bを有する筒部32において、上述した打球の弾き性能効果を安定して発揮することができる。
【0041】
また、ラケット10を継続的に使用するあたり、ストリング21の張り替えが複数回行われることで筒部32に荷重が加わるが、かかる荷重に対しても第1リブ36a自体の潰れ変形を抑制することができる。これにより、上述した打球の弾き性能効果を長期に亘って得ることが可能となる。
【0042】
更に、筒部32が複数のリブ36を有し、該リブ36が筒本体35と同じ長さとなってフレーム20の内周面20cより内方にはみ出す位置まで形成されるので、リブ36によって筒部32の剛性を向上することができる。かかる筒部32の剛性向上によっても、ラケット10による打球時に筒部32が変形し難くなり、上述した打球の弾き性能効果を得ることができる。
【0043】
また、縦糸となるストリング21は弾き性能を含む打球性能への影響が大きくなるので、縦糸となるストリング21が挿通される筒部32に対し第1リブ36a及び第2リブ36bを形成したことで、上述の効果を効率良く発揮させることができる。更に、中央領域Sを通過するストリング21が挿通される筒部32に第1リブ36a及び第2リブ36bを形成したことで、上述の効果をより効率良く発揮できるようになる。
【0044】
ここで、横糸となるストリング21をフレーム20の横方向両側で挿通する筒部32がリブ36を有しない構成としたので、弾き性能等が抑制される可能性がある。但し、横糸のストリング21は、弾き性能に比べて打球感に大きく寄与しており、縦糸のストリング21及びリブ36を有する筒部32の弾き性能と相俟ってラケット10全体としてバランスの良い性能を発揮するよう設計可能となる。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、方向などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0046】
例えば、横糸となるストリング21を挿通する筒部32についても、リブ36を設けても良い。この場合、縦糸となるストリング21を挿通する筒部32の向きを縦方向から横方向に90°変更した構成となる。
【0047】
また、筒部32において、第1リブ36aは、単一の筒本体35に対し、帯状部31の延出方向両側それぞれに3本や4本にする等、2本以上形成されていればよい。また、第2リブ36bは、単一の筒本体35に対し、帯状部31の延出方向に直交する方向両側それぞれに2本や3本にする等、1本以上形成されていればよい。よって、筒本体35の周方向で45°間隔毎に8本のリブ36を形成する構成とすることが例示できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ラケットによる打球時の弾き性能を向上できるグロメット及びこれを用いたラケットに関する。
【符号の説明】
【0049】
10 ラケット
20 フレーム
21 ストリング
23 貫通孔(孔)
25~28 グロメット
31 帯状部
32 筒部
35 筒本体
36 リブ
36a 第1リブ
36b 第2リブ
C 中心軸
S 中央領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7