(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】給水自動遮断装置
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20240612BHJP
E02B 13/02 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
A01G25/00 501B
A01G25/00 501D
E02B13/02 B
(21)【出願番号】P 2021018503
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】加納 一啓
(72)【発明者】
【氏名】白石 宗士
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-165693(JP,A)
【文献】特開昭63-254929(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108040821(CN,A)
【文献】特開平06-280243(JP,A)
【文献】特開平09-098678(JP,A)
【文献】特公昭34-006382(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0359581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00
E02B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場への給水路を自動で遮断する給水自動遮断装置であって、
前記圃場に設置されてその圃場内の水位の所定水位への上昇を検知する水位計ユニットと、前記給水路に設置される弁体ユニットとを備え、
前記弁体ユニットは、前記水位計ユニットによる所定水位の検知を受けて、前記給水路を開放する開位置から閉鎖する閉位置へと移動する弁体を備え、
前記水位計ユニットは、水位計本体と、前記水位計本体とは独立分離して前記圃場内の水面に浮くフロートと、前記圃場の土壌に打ち込まれて固定される固定杭とを備え、
前記水位計本体は、前記固定杭の長手方向における任意の位置に固定される本体部と、前記水位の上昇に伴って上昇する前記フロートに押されて上昇する作動部と、前記本体部に配備されて前記作動部に連動して移動することにより前記所定水位を検知する検知部とを備え、
前記フロートは、前記作動部の直下で上下に移動可能となるよう、前記圃場の土壌に打ち込まれた案内杭の外周面に案内される被案内部を備える、給水自動遮断装置。
【請求項2】
前記固定杭が前記案内杭を兼ねる、請求項1に記載の給水自動遮断装置。
【請求項3】
前記被案内部は、上下方向に貫通して前記案内杭が通される被案内孔からなる、請求項1または2に記載の給水自動遮断装置。
【請求項4】
前記案内杭は、複数あり、前記被案内部は、複数の前記案内杭に対応して、複数設けられる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の給水自動遮断装置。
【請求項5】
前記フロートは、前記被案内部とは別の位置に、複数の前記案内杭を前記土壌に打ち込むときのそれら案内杭の相対的な位置を指示する複数の打込み指示部を備える、請求項4に記載の給水自動遮断装置。
【請求項6】
前記打込み指示部は、上下方向に貫通して前記案内杭が挿通可能な指示孔からなり、
前記被案内部は、上下方向に貫通して前記案内杭が通される被案内孔からなるとともに、その被案内孔は、前記指示孔よりも大径に形成され、また、
前記指示孔と前記被案内孔とは、複数の前記案内杭に対応して、複数設けられるとともに、複数の前記指示孔の中心の相対位置と、複数の前記被案内孔の中心の相対位置とが同じである、請求項5に記載の給水自動遮断装置。
【請求項7】
前記水位計本体は、伸縮可能な外覆部材を備え、その外覆部材は、前記本体部と前記作動部との間を覆うようにそれら本体部と作動部とに渡って設けられる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の給水自動遮断装置。
【請求項8】
少なくとも一本の前記固定杭には、前記土壌への進入長さを規制するよう、外方に張り出した沈み込み防止板が設けられるとともに、その上方に前記沈み込み防止板を基準とする目盛りが付されている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の給水自動遮断装置。
【請求項9】
前記フロートは、中空に形成されるとともに、その中空を形成する内部空間を外部に臨ませる開口と、その開口を閉鎖する蓋とを備える、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の給水自動遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水位計ユニットを備えて圃場への給水路を自動で遮断する給水自動遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場への給水路を自動で遮断する給水自動遮断装置は、圃場に設置される水位計ユニットと、給水路に設置される弁体ユニットとで構成されていた(例えば、特許文献1、2参照)。
図26に示すように、この給水自動遮断装置を構成する水位計ユニット42は、水位計本体43と、圃場41の水面に浮くフロート44と、圃場41の土壌面41aからの水位計本体43の高さを位置決めする位置決め部45を備えていた。そこで、水位計本体43は、水位の上昇によるフロート44の上昇を受けて、水位の所定位置までの上昇を検知した(
図26は、フロートが上昇する前の状態を示す)。ここで、フロート44には、中央位置に、上下に貫通する貫通孔44aがあけられ、水位計本体43には、この貫通孔44aと嵌まり合う筒部43aが設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-165693
【文献】特開2019-165692
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記水位計ユニット42においては、フロート44の貫通孔44aと、水位計本体43の筒部43aとの嵌め合い部に泥が入り込むと、フロート44の上下動が困難となる虞があった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、フロートの上下動を円滑に行うことができる、給水自動遮断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る給水自動遮断装置は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る給水自動遮断装置は、圃場への給水路を自動で遮断する給水自動遮断装置であって、前記圃場に設置されてその圃場内の水位の所定水位への上昇を検知する水位計ユニットと、前記給水路に設置される弁体ユニットとを備える。ここで、前記弁体ユニットは、前記水位計ユニットによる所定水位の検知を受けて、前記給水路を開放する開位置から閉鎖する閉位置へと移動する弁体を備える。前記水位計ユニットは、水位計本体と、前記水位計本体とは独立分離して前記圃場内の水面に浮くフロートと、前記圃場の土壌に打ち込まれて固定される固定杭とを備える。そこで、前記水位計本体は、前記固定杭の長手方向における任意の位置に固定される本体部と、前記水位の上昇に伴って上昇する前記フロートに押されて上昇する作動部と、前記本体部に配備されて前記作動部に連動して移動することにより前記所定水位を検知する検知部とを備える。そして、前記フロートは、前記作動部の直下で上下に移動可能となるよう、前記圃場の土壌に打ち込まれた案内杭の外周面に案内される被案内部を備える。
【0007】
この給水自動遮断装置によると、水位計ユニットが、圃場に設置されてその圃場内の水位の所定水位への上昇を検知する。そして、弁体ユニットが、給水路に設置されて、その弁体ユニットに備わる弁体が、水位計ユニットによる所定水位の検知を受けて、給水路を開放する開位置から閉鎖する閉位置へと移動する。ここで、水位計ユニットは、水位計本体と、その水位計本体とは分離独立したフロートと、圃場の土壌に打ち込まれて固定される固定杭とを備えている。そして、水位計本体は、その本体部が、固定杭の適宜位置に固定され、作動部が、水位の上昇に伴って上昇するフロートに押されて上昇し、本体部に配備された検知部が、作動部に連動して移動することで、前記所定水位を検知する。ここにおいて、フロートは、その被案内部が、案内杭の外周面に案内されて、前記作動部の直下で上下に移動可能となる。そこで、案内杭の外周面には泥等の異物が留まり難く、また、フロートは、水位計本体(ひいては、作動部)とは分離独立していることから、フロートは、円滑に上下動する。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る給水自動遮断装置は、請求項1に記載の給水自動遮断装置において、前記固定杭が前記案内杭を兼ねる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る給水自動遮断装置は、請求項1または2に記載の給水自動遮断装置において、前記被案内部は、上下方向に貫通して前記案内杭が通される被案内孔からなる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る給水自動遮断装置は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の給水自動遮断装置において、前記案内杭は、複数あり、前記被案内部は、複数の前記案内杭に対応して、複数設けられる。案内杭が複数あることで、フロートは、安定して上下動することができる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係る給水自動遮断装置は、請求項4に記載の給水自動遮断装置において、前記フロートは、前記被案内部とは別の位置に、複数の前記案内杭を前記土壌に打ち込むときのそれら案内杭の相対的な位置を指示する複数の打込み指示部を備える。そこで、はじめに、圃場に配置したフロートの、複数の打込み指示部に合わせるようにして、複数の案内杭を、土壌に打ち込む。こうすることで、複数の案内杭は、その相対的な位置が正確に定められる。その後に、改めて、フロートを、そのフロートの被案内部を打ち込まれた案内杭の外周面に沿わせるようにして配置する。
【0012】
また、請求項6に記載の発明に係る給水自動遮断装置は、請求項5に記載の給水自動遮断装置において、前記打込み指示部は、上下方向に貫通して前記案内杭が挿通可能な指示孔からなる。そして、前記被案内部は、上下方向に貫通して前記案内杭が通される被案内孔からなるとともに、その被案内孔は、前記指示孔よりも大径に形成される。そこで、前記指示孔と前記被案内孔とは、複数の前記案内杭に対応して、複数設けられるとともに、複数の前記指示孔の中心の相対位置と、複数の前記被案内孔の中心の相対位置とが同じである。これにより、複数の被案内孔において、案内杭との隙間を的確に確保することができる。
【0013】
また、請求項7に記載の発明に係る給水自動遮断装置は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の給水自動遮断装置において、前記水位計本体は、伸縮可能な外覆部材を備え、その外覆部材は、前記本体部と前記作動部との間を覆うようにそれら本体部と作動部とに渡って設けられる。水位計本体に外覆部材を設けることで、本体部と作動部との間に異物が侵入するのを防ぐことができる。
【0014】
また、請求項8に記載の発明に係る給水自動遮断装置は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の給水自動遮断装置において、少なくとも一本の前記固定杭には、前記土壌への進入長さを規制するよう、外方に張り出した沈み込み防止板が設けられるとともに、その上方に前記沈み込み防止板を基準とする目盛りが付されている。この目盛りに合わせて、固定杭に水位計ユニットの本体部(水位計本体)を固定することで、本体部の高さを、水位計ユニットが検知する予定の所定水位に応じた高さとすることができる。
【0015】
また、請求項9に記載の発明に係る給水自動遮断装置は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の給水自動遮断装置において、前記フロートは、中空に形成されるとともに、その中空を形成する内部空間を外部に臨ませる開口と、その開口を閉鎖する蓋とを備える。これにより、開口からフロート内に水等を適宜入れることで、水面に対するフロートの浮き出る量を調整して、この水位計ユニットが検知する水位を微調整することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る給水自動遮断装置によれば、フロートを案内杭の外周面で案内し、かつ、フロートを水位計本体とは分離独立して設けることで、フロートの上下動を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の一実施の形態の、給水自動遮断装置の斜視図である。
【
図6】フロートが上昇したときの、
図5相当図である。
【
図7】作動部と検知部との関係を示す拡大斜視図である。
【
図12】フロートの指示孔に案内杭を通したときの斜視図である。
【
図14】フロートの被案内孔に案内杭を通したときの斜視図である。
【
図16】弁体ユニットの、上側からの斜視図である。
【
図22】弁体ユニットにおいて、作動指示体の出没体が前進位置にあって弁体が開位置にあるときの、斜視図である。
【
図25】弁体ユニットにおいて、作動指示体の出没体が後退位置にあって弁体が閉位置にあるときの、
図21相当図である。
【
図26】従来の水位計ユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1~
図25は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、水田等の圃場を示す。2は、前記圃場1への給水路を示す。3は、前記給水路2を自動で遮断する給水自動遮断装置を示す。
【0020】
給水自動遮断装置3は、圃場1に設置されてその圃場1内の水位の所定水位への上昇を検知する水位計ユニット4と、給水路2に設置される弁体ユニット5とを備える。ここで、弁体ユニット5は、水位計ユニット4による所定水位の検知を受けて、給水路2を開放する開位置から閉鎖する閉位置へと移動する弁体6を備える。水位計ユニット4は、水位計本体7と、水位計本体7とは独立分離して圃場1内の水面に浮くフロート8と、圃場1の土壌1aに打ち込まれて固定される固定杭9とを備える。そこで、水位計本体7は、固定杭9の長手方向における任意の位置に固定される本体部10と、水位の上昇に伴って上昇するフロート8に押されて上昇する作動部11と、本体部10に配備されて(詳しくは、本体部10内にあって)作動部11に連動して移動することにより前記所定水位を検知する検知部12とを備える。そして、フロート8は、作動部11の直下で上下に移動可能となるよう、圃場1の土壌1aに打ち込まれた案内杭13の外周面に案内される被案内部8aを備える。
【0021】
詳細には、固定杭9が、案内杭13を兼ねている。そして、被案内部8aは、上下方向に貫通して案内杭13が通される被案内孔14からなる。また、案内杭13は、複数あり、被案内部8a(詳しくは、被案内孔14)は、複数の案内杭13、13に対応して、複数設けられる。
【0022】
また、フロート8は、被案内部8aとは別の位置に、複数の案内杭13、13を土壌1aに打ち込むときのそれら案内杭13、13の相対的な位置を指示する複数の打込み指示部8b、8bを備える。この打込み指示部8bは、上下方向に貫通して案内杭13が挿通可能な指示孔15からなる。そして、前記被案内部8aとなる被案内孔14は、指示孔15よりも大径に形成される。そこで、指示孔15と被案内孔14とは、複数(図示実施の形態では、二本)の案内杭13、13に対応して、複数(図示実施の形態では、それぞれ作用部8gを挟んで一つずつの計二つ)設けられるとともに、複数の指示孔15、15の中心の相対位置と、複数の被案内孔14、14の中心の相対位置とが同じになっている。すなわち、複数の指示孔15、15と複数の被案内孔14、14とは、複数の指示孔15、15の中心を、それら中心の相対位置を保ったまま並進移動させたり回転移動(詳しくは、上下方向を軸とする回転移動)させたりすることにより、それら中心を、複数の被案内孔14、14の中心に一致させることができる位置関係にある。
【0023】
具体的には、水位計ユニット4においては、水位計本体7の本体部10は、検知部12を収容するケース部10aと、そのケース部10aから離れる方向に延設された複数の固定腕10bとを備える。図示実施の形態においては、ケース部10aは、円筒状に形成され、固定腕10bは、二つ設けられて、ケース部10aの上端部分から、そのケース部10aから離れるように斜め下方に向かって延設される。ここで、本体部10は、その本体部10を前記固定杭9に固定するための固定手段16を備える。この固定手段16は、固定腕10bの先端部分の位置決め固定部16aと、その位置決め固定部16aにあけられて固定杭9が挿入される固定孔16bと、その固定孔16bの内周面から外方に通ずるねじ孔16c(図示実施の形態においては、ナットの雌ねじ孔)と、そのねじ孔16cにねじ込まれて固定杭9を押圧する固定ねじ16dとを備える。
【0024】
水位計本体7の作動部11は、本体部10の下方に位置する作動部本体11aと、その作動部本体11aから上方に突出する一対の支持腕11b、11bとを備える。それら支持腕11b、11bは、ケース部10aの底壁10cにあけられた孔10d、10dを貫通してケース部10a内に進入する。そして、ケース部10a内において、一対の支持腕11b、11b間に案内ピン17が架け渡される。さらに、作動部11は、作動部本体11aから上方に突出する被案内突部11cを備える(
図7参照)。そこで、この被案内突部11cが、ケース部10aの底壁10cにあけられた孔(図示せず)に案内されて、作動部11は、ケース部10a(ひいては、本体部10)に対して上下に移動可能となる。また、作動部本体11a(作動部11)の下面11dは、すり鉢状に窪んで形成されており、その窪んだ下面11dを、上昇するフロート8(詳しくは、フロート8の後述する作用部8gの頂部部分)が押すこととなる。また、この作動部11(詳しくは、作動部本体11a)と、本体部10(詳しくは、ケース部10a)との間には、弾性体としてのコイルスプリング18が設けられており、このコイルスプリング18により、作動部11は、下方に付勢される。そして、作動部11は、上昇するフロート8に押されると、コイルスプリング18による付勢に抗して、フロート8とともに上昇する(
図6参照)。
【0025】
つまり、圃場1内の水位が低いときは、
図1~
図5に示すように、フロート8は、水位計本体7(詳しくは、作動部11)の下方に、その水位計本体7から離れて位置する。そして、水位の上昇とともに、フロート8が上昇して、そのフロート8(詳しくは、後述する作用部8gの頂部部分)が、作動部11の下面11dに当接する。そして、さらに水位が上昇すると、
図6に示すように、フロート8ともに作動部11が上昇する。
【0026】
水位計本体7の検知部12は、ケース部10a内において、横方向(
図5および
図6において、左右方向)にスライド移動可能に支持される。また、
図5~
図7に示すように、検知部12には、長孔からなってその長手方向が傾斜する案内孔12aがあけられている。そして、検知部12は、前記一対の支持腕11b、11b間に位置して、案内孔12aには、前記案内ピン17が通される。そこで、本体部10に対して作動部11が上下動すると、案内ピン17と案内孔12aとの係合(カム機構あるいはリンク機構)により、検知部12は、横方向(
図5および
図6において、左右方向)にスライド移動する。
【0027】
また、検知部12は、ワイヤー接続部12bを有し、そのワイヤー接続部12bに、ケース部10a内に引き入れられたインナーワイヤー20aが接続される。そして、そのインナーワイヤー20aを内部に配するアウターチューブ20bが、ケース部10aに支持される。
【0028】
ところで、水位計ユニット4(詳しくは、本体部10)と弁体ユニット5との間には、伝達体19が設けられ、この伝達体19により、水位計ユニット4(詳しくは、検知部12)による水位の検知が、弁体ユニット5へと伝達される。そこで、この伝達体19が、前記インナーワイヤー20aと前記アウターチューブ20bとを有するケーブル20を備える。
【0029】
また、水位計本体7は、伸縮可能な外覆部材22を備え、その外覆部材22は、本体部10と作動部11との間を覆うようにそれら本体部10と作動部11とに渡って設けられる。図示実施の形態においては、外覆部材22は、蛇腹状に形成されて、その一端側が、本体部10(詳しくは、ケース部10a)の外周面に被せられるようにして止められ、他端側が、作動部11(詳しくは、作動部本体11a)の外周面に被せられるようにして止められる。
【0030】
フロート8は、中空に形成されて、圃場1内の水面に浮き、その水位の変動に追従して上下動する。そして、フロート8は、中空を形成する内部空間8cを外部に臨ませる開口8dと、その開口8dを閉鎖する蓋8eとを備える。このフロート8は、円盤状のフロート本体8fとそのフロート本体8fから上方に突出する作用部8gとが一体となって形成されて、水位計本体7の下方に配置される。そして、フロート本体8fに、前記指示孔15と前記被案内孔14とが形成されるが、それら指示孔15とか被案内孔14は、内部空間8cと通じることのないよう、全長に渡って周壁が設けられている。これら指示孔15と被案内孔14とは、中央部分を境にして、その中央部分から離れるほど大径となるほぼテーパ状に形成されている。そこで、前述した指示孔15の中心とか被案内孔14の中心は、最小径となる部分での中心(図示実施の形態においては、中央部分での中心)を意味する。
【0031】
また、フロート本体8fに、前記開口8dが設けられる。この開口8dを閉鎖する蓋8eは、周囲が起立した盆状に形成されており、その蓋8eは、開口8dに嵌められることで取り付けられる。そして、蓋8eには、舌片8xが設けられており、その舌片8xを摘んで引っぱることで、蓋8eを開口8dから取り外すことができる。
【0032】
固定杭9は、少なくとも一本の固定杭(図示実施の形態においては、二本ある固定杭のうちの一本の固定杭)に、土壌1aへの進入長さを規制するよう、外方に張り出した沈み込み防止板23が設けられる。そして、沈み込み防止板23が設けられた固定杭9には、沈み込み防止板23の上方に、沈み込み防止板23を基準とする目盛り9aが付されている。詳細には、沈み込み防止板23は、固定杭9の中間位置に固定されており、その沈み込み防止板23が、土壌1aに当たることで、固定杭9の、土壌1aへの進入長さが規制され、土壌1aへのそれ以上の進入が阻止される。図示実施の形態においては、固定杭9は、丸棒からなり、直線状に延びている。沈み込み防止板23は、平板からなり、固定杭9と直交するように配置されている。そして、固定杭9は、沈み込み防止板23の中央を貫通し、沈み込み防止板23は、固定杭9に溶接等により固定されている。
【0033】
また、沈み込み防止板23には、貫通孔23aがあけられている。そこで、固定杭9が土壌1aに打ち込まれた後に、補助杭24が、貫通孔23aを通って、土壌1aに斜めに打ち込まれる。図示実施の形態においては、貫通孔23aは二つ設けられる。補助杭24は、コ字状に形成されて、その対向する両杭部24aが、貫通孔23a、23aを通って、土壌1aに斜めに打ち込まれる。
【0034】
弁体ユニット5は、圃場1への給水路2を形成する水路形成部材2a(例えば、給水パイプ)に接続される。この弁体ユニット5は、給水路2内に通じる流路空間25aを内側に有する弁体ケース25を備え、その弁体ケース25が、前記水路形成部材2aに固定される。そして、この弁体ケース25内に前記弁体6が設けられ、その弁体6が、流路空間25aを開閉することで、前記給水路2を開放したり閉鎖したりする。そして、弁体ユニット5(詳しくは、弁体ケース25)は、前述した伝達体19を接続可能な接続部25bを有している。
【0035】
弁体ケース25は、弁体6を軸支するための軸受け部25cを有する。この軸受け部25cは、弁体ケース25の内外を貫通する孔からなり、弁体ケース25の、前記流路空間25aを挟む両側部に設けられる。
【0036】
弁体6は、弁本体6aと、軸部構成部6bとを備え、それら弁本体6aと軸部構成部6bとが繋ぎ部6cによって繋がっている。弁本体6aは、円板状に形成される。そして、弁本体6aの周縁側が斜めに折れ曲がって形成され、その折れ曲がった部分が、弁体ケース25に設けられた弁座25dに当接することで、圃場1への水の流出口25eを塞いで、弁体ケース25内の流路空間25a(ひいては、給水路2)を閉鎖する(
図19参照)。
【0037】
軸部構成部6bは、弁体ケース25の内側において、各端が、軸受け部25cと対向位置する。そして、弁体6は、前記閉位置においては、前記流出口25eを塞ぐようにして配置され、前記開位置においては、弁体ケース25内の上部部分に収容される。また、軸部構成部6bには、中央位置に棒状の芯材6eが設けられる。そこで、この芯材6eの外周には、付勢部材となるトーションスプリング26が装着される。このトーションスプリング26は、一端が、弁体6の裏面(詳しくは、弁本体6aの裏面に設けられたスプリング受け6f)に支えられ、他端が、弁体ケース25の天面に支えられて、弁体6を、前記開位置から前記閉位置に向かう閉方向に付勢する。
【0038】
また、弁体ユニット5は、操作ハンドル27を有する。この操作ハンドル27は、円錐台形状の基部27aと、その裏面から突出する第1軸部分27bと、基部27aの側面から延設されたハンドル部27cとを備える。
図20に示すように、この操作ハンドル27は、第1軸部分27bが、弁体ケース25の一方の軸受け部25cに挿入されて、弁体6の軸部構成部6bの一端に取付け固定され、こうして、操作ハンドル27は、軸部構成部6bの一端(ひいては、弁体6)に連結される。軸部構成部6bの他端においては、第2軸部分28aを有する軸部材28が、弁体ケース25の他方の軸受け部25cに挿入されて、軸部構成部6bの他端に取付け固定される。こうして、弁体6と操作ハンドル27(図示実施の形態においては、加えて、軸部材28)とは、一体化されて、操作ハンドル27は、弁体6の回動移動にあわせて(詳しくは、弁体6と一体となって)回動し、弁体6が閉位置にあるとき、ハンドル部27cは、下方を向く閉弁姿勢となり、弁体6が開位置にあるとき、ハンドル部27cは、水平方向を向く開弁姿勢となる。
【0039】
詳細には、操作ハンドル27における第1軸部分27bは、ビス29により、軸部構成部6bの一端に取付け固定されて、操作ハンドル27は、軸部構成部6bの一端(ひいては、弁体6)に連結される(
図20参照)。そして、第2軸部分28a(軸部材28)は、ビス30により、軸部構成部6bの他端に取付け固定される(
図20参照)。
【0040】
また、操作ハンドル27は、ハンドル部27cの延設方向が、第1軸部分27bの突出方向と直交する方向となっており、そのハンドル部27cの先端部分、つまりは操作ハンドル27の先端部分は、第1軸部分27bの突出方向に位置ずれして偏平状に形成されている。そして、その先端部分には、被係止孔27dがあけられている。
【0041】
接続部25bは、弁体ケース25の、流路空間25aを挟む側部に設けられる。詳細には、接続部25bは、軸受け部25c(ひいては、操作ハンドル27の基部27a)と同じ高さ位置に突出して形成される。図示実施の形態においては、この接続部25bに、伝達体19が、接続補助部材31を介して接続される。つまり、接続部25bに、接続補助部材31が取り付けられ、その接続補助部材31に、伝達体19が連結(詳しくは、着脱可能に連結)される。詳細には、接続補助部材31には、取付孔31aがあけられており、ビス32が、その取付孔31aを通り、接続部25bに設けられた孔25fにねじ込まれることで、接続補助部材31は、接続部25bに取り付けられる(
図21参照)。
【0042】
また、接続補助部材31は、弁体6が開位置にあるときの操作ハンドル27(詳しくは、操作ハンドル27の先端部分)を受け入れる受入れ凹部31bを有する。詳細には、接続補助部材31は、略円柱状の基端部31cと、その基端部31cの先端から突出する略円筒状の筒部31dとを備え、前記受入れ凹部31bは、筒部31dの後方であって前記基端部31cに設けられる。前記取付孔31aは、裏面から受入れ凹部31bに貫通するようにあけられる。そして、受入れ凹部31bには、取付孔31aと交差するように、溝31eが設けられ、この溝31eに、ビス32の頭部が嵌まり込む。筒部31dは、伝達体19(詳しくは、後述する作動指示体33)が連結される被連結部となるものであり、その内周面には、雌ねじ31fが形成されている。そして、筒部31d内と受入れ凹部31bとを連通するように孔31gがあけられている。
【0043】
伝達体19は、前述したように、ケーブル20を備えるが、そのケーブル20のインナーワイヤー20aは、水位計ユニット4による所定水位の検知によりその水位計ユニット4側に引き込まれるように作動する。また、伝達体19は、弁体ユニット5側の先端に、作動指示体33を備える。この作動指示体33は、出没体34と、その出没体34をスライド可能に収容する指示体ケース35とを備える。詳細には、指示体ケース35は、その外周面に雄ねじ35aが設けられており、その雄ねじ35aを接続補助部材31の雌ねじ31fにねじ込むことで、作動指示体33(伝達体19)は、接続補助部材31に連結され、ひいては、弁体ユニット5の接続部25bに接続される。
【0044】
出没体34は、前記スライドにより、先端に備わる係止部34aが、指示体ケース35から突出して(
図24参照)、接続補助部材31に設けられた孔31gを通り、開弁姿勢にある操作ハンドル27の被係止孔27dに進入する。
【0045】
また、出没体34は、後端側に前記インナーワイヤー20aが接続されるワイヤー接続部34bを有して、インナーワイヤー20aが水位計ユニット4側に引き込まれることで、出没体34が、突出状態となる前進位置から引き下がった後退位置に移動して、操作ハンドル27(詳しくは、被係止孔27d)への出没体34(詳しくは、係止部34a)の係止が外れて、付勢部材であるトーションスプリング26の付勢により、操作ハンドル27に連動する弁体6が開位置(
図24参照)から閉位置(
図25参照)に移動する。なお、図示実施の形態においては、出没体34が、指示体ケース35に収容されることから、インナーワイヤー20aは、指示体ケース35内に引き入れられて、出没体34のワイヤー接続部34bに接続される。そして、アウターチューブ20bは、指示体ケース35に支持される。
【0046】
次に、以上の構成からなる給水自動遮断装置3の作用効果について説明する。この給水自動遮断装置3によると、水位計ユニット4が、圃場1に設置されてその圃場1内の水位の所定水位への上昇を検知する。そして、弁体ユニット5が、圃場1への給水路2に設置されて、その弁体ユニット5に備わる弁体6が、水位計ユニット4による所定水位(詳しくは、水位が上昇して所定水位となったときの水位)の検知を受けて、給水路2を開放する開位置から閉鎖する閉位置へと移動する。ここで、水位計ユニット4は、水位計本体7と、その水位計本体7とは分離独立したフロート8と、圃場1の土壌1aに打ち込まれて固定される固定杭9とを備えている。そして、水位計本体7は、その本体部10が、固定杭9の適宜位置に固定され、作動部11が、水位の上昇に伴って上昇するフロート8に押されて上昇し、本体部10に配備された(詳しくは、本体部10内の)検知部12が、作動部11に連動して移動することで前記所定水位を検知する。ここにおいて、フロート8は、その被案内部8aが、案内杭13の外周面に案内されて、作動部11の直下で上下に移動可能となっている。そこで、案内杭13の外周面には泥等の異物が留まり難く、また、フロート8は、水位計本体7(ひいては、作動部11)とは分離独立していることから、フロート8は、円滑に上下動する。すなわち、フロート8を案内杭13の外周面で案内し、かつ、フロート8を水位計本体7とは分離独立して設けることで、フロート8の上下動を円滑に行うことができる。
【0047】
また、案内杭13が複数あることから、それら案内杭13に案内されて、フロート8は、安定して上下動することができる。
【0048】
また、水位計本体7は、本体部10と作動部11との間を覆う伸縮可能な外覆部材22を備えている。この外覆部材22により、本体部10と作動部11との間、さらには本体部10(詳しくは、ケース部10a)内に、異物が侵入するのを防ぐことができる。
【0049】
また、フロート8は、被案内部8aとは別の位置に、土壌1aに打ち込まれる複数の案内杭13、13の相対的な位置を指示する複数の打込み指示部8b、8bを備えている。そこで、はじめに、圃場1に配置したフロート8の、複数の打込み指示部8b、8bに合わせるようにして、複数の案内杭13、13を、土壌1aに打ち込む。こうすることで、複数の案内杭13、13は、その相対的な位置が正確に定められる。その後に、改めて、フロート8を、そのフロート8の被案内部8aを打ち込まれた案内杭13の外周面に沿わせるようにして配置する。
【0050】
また、打込み指示部8bは、指示孔15からなり、被案内部8aは、指示孔15よりも大径となる被案内孔14からなっている。そして、指示孔15と被案内孔14とは、複数の案内杭13、13に対応して、複数設けられ、複数の指示孔15、15の中心の相対位置と、複数の被案内孔14、14の中心の相対位置とが同じになっている。このため、複数の被案内孔14、14において、案内杭13との隙間を的確に確保することができる。
【0051】
また、少なくとも一本の固定杭9(図示実施の形態においては、二本ある固定杭のうちの一本)には、沈み込み防止板23が設けられる。この沈み込み防止板23により、土壌1aへの固定杭9の沈み込む量が制限される。そして、沈み込み防止板23の上方に沈み込み防止板23を基準とする目盛り9aが付されている。この目盛り9aに合わせて(例えば、水位計本体7における位置決め固定部16aの上面を、目盛り9aに合わせるようにして)、固定杭9に本体部10(水位計本体7)を固定することで、本体部10の高さを、水位計ユニット4が検知する予定の所定水位に応じた高さとすることができる。
【0052】
また、補助杭24が、沈み込み防止板23の貫通孔23aを通って、土壌1aに斜めに打ち込まれる。この補助杭24により、固定杭9の浮き上がりが防止され、この補助杭24と沈み込み防止板23とで、固定杭9の意図しない上下動が阻止されて、本体部10は、その所定の位置に安定して保持される。
【0053】
また、フロート8は、中空に形成されており、開口8dからフロート8内に水等を適宜入れることで、その水等を重りとして、圃場1の水面に対するフロート8の浮き出る量を調整して、この水位計ユニット4が検知する水位を微調整することができる。また、水位計本体7を設置したい基準となる土壌1aからの高さが、固定杭9の長さよりも上方の場合(つまり、固定杭9の長さが足りない場合)とか、固定杭9に対し水位計本体7を上下に移動させることなく圃場1への水を増したい場合とかに、フロート8を水等で重くして水面からのフロート8の浮き出る量を抑えることで、それらの場合に対処することができる。また、一度、水位計ユニット4による所定水位の検知を受けて、弁体ユニット5が給水路2を閉鎖したが、その後に、もう少し圃場1へ水を追加したいときに、フロート8内に水等を入れてそのフロート8を沈めることで、その沈めた高さの分だけ水を圃場1へ追加することができる。また、すでに、ある程度水がある状態の圃場1に対し、水を追加したい場合にも、水位計ユニット4が水位を検知する位置で、水位計本体7を固定杭9に固定した後に、フロート8内に水等を入れてそのフロート8を沈めることで、その沈めた高さの分だけ水を圃場1へ追加することができる。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、固定杭9が案内杭13を兼ねているが、兼ねることなく固定杭9と案内杭13とが別々に設けられてもよい。また、固定杭9とか案内杭13の数は、複数でなくても、一本であってもよい。同様に、被案内孔14および指示孔15も、一つであってもよい。
【0055】
また、作動部11が上下に移動するのに対し、検知部12は、横方向にスライド移動するが、例えば、作動部11と検知部12とが一体となって、検知部12が、作動部11とともに上下に移動するようにしてもよい。
【0056】
また、被案内部8aは、孔でなくても、フロート8の側方へ開放する凹部でもよい。同様に、打込み指示部8bは、孔でなくても、フロート8の側方へ開放する凹部であってもよく、さらには、この打込指示部8bは、フロート8に付された印であってもよい。
【0057】
また、水面からのフロート8の浮き出る量の調整は、フロート8内へ水等を追加することで調整してもよく、また、フロート8内へ予め入れた水等を減らすことで調整してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 圃場
1a 土壌
2 給水路
3 給水自動遮断装置
4 水位計ユニット
5 弁体ユニット
6 弁体
7 水位計本体
8 フロート
8a 被案内部
8b 打込み指示部
8c 内部空間
8d 開口
8e 蓋
9 固定杭
9a 目盛り
10 本体部
11 作動部
12 検知部
13 案内杭
14 被案内孔
15 指示孔
22 外覆部材
23 沈み込み防止板