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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】車載用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/12 20140101AFI20240612BHJP
   E05B 81/76 20140101ALI20240612BHJP
   H01H 13/52 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
E05B85/12 A
E05B81/76
H01H13/52 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021097732
(22)【出願日】2021-06-11
(65)【公開番号】P2022189246
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2024-01-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋介
(72)【発明者】
【氏名】菊地 譲
(72)【発明者】
【氏名】安本 遼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-94455(JP,A)
【文献】特開2008-248581(JP,A)
【文献】特開2012-2987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
H01H 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ドアに設けられるハンドル用筐体と、
前記ハンドル用筐体に設けられたシャフトに揺動自在に取り付けられるドアハンドルと、
前記ドアハンドルに付勢トルクを与えるハンドル付勢機構と、
前記ハンドル用筐体に固定され、前記ドアハンドルによって押下されるプッシュスイッチと、を備え、
前記ドアハンドルの持ち手部が車室側に揺動することで、前記ドアハンドルは前記自動車用ドアのラッチ機構に操作力を与え、
前記ドアハンドルの持ち手部が車室外側に揺動することで、前記ドアハンドルは前記プッシュスイッチを押下し、
前記プッシュスイッチは、車室外側に押下される力に対抗する力を前記ドアハンドルの持ち手部に与える対抗力付与機構、を備えることを特徴とする車載用ドアハンドル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用ドアハンドル装置において、
前記プッシュスイッチは、
前記ラッチ機構を駆動する電動アクチュエータに接続されていることを特徴とする車載用ドアハンドル装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車載用ドアハンドル装置において、
前記プッシュスイッチは、
複数の電極が設けられた基板と、
前記ドアハンドルの持ち手部が接触するスイッチノブと、
前記スイッチノブの動きに応じて前記複数の電極に接触するスイッチ導体と、を備え、
前記対抗力付与機構は、前記スイッチノブを押し戻し方向に付勢する圧縮バネを備えることを特徴とする車載用ドアハンドル装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車載用ドアハンドル装置において、
前記プッシュスイッチは、
前記スイッチノブと前記基板との間に設けられたシート状弾力性部材を備え、
前記シート状弾力性部材は、前記スイッチノブに向かう方向に突出した押下部であって、前記基板側に開放した中空空間を有する押下部を備え、
前記中空空間で前記押下部の先端部から前記基板側に向かって突出した接点突起に、前記スイッチ導体が設けられていることを特徴とする車載用ドアハンドル装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の車載用ドアハンドル装置において、
前記プッシュスイッチは、
複数の電極が設けられた基板と、
前記ドアハンドルの持ち手部が接触するスイッチノブと、
前記スイッチノブの動きに応じて前記複数の電極に接触するスイッチ導体と、を備え、
前記プッシュスイッチは、
前記スイッチノブと前記基板との間に設けられたシート状弾力性部材を備え、
前記シート状弾力性部材は、前記スイッチノブに向かう方向に突出した押下部であって、前記基板側に開放した中空空間を有する押下部を備え、
前記中空空間で前記押下部の先端部から前記基板側に向かって突出した接点突起に、前記スイッチ導体が設けられていることを特徴とする車載用ドアハンドル装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の車載用ドアハンドル装置において、
前記ドアハンドルは、ユーザによって力が加えられていない初期状態にあるときに、前記プッシュスイッチに接触しており、
前記プッシュスイッチが押下されている状態では、前記ハンドル付勢機構が前記ドアハンドルに与えるトルクよりも、前記対抗力付与機構が前記ドアハンドルに与えるトルクの方が大きいことを特徴とする車載用ドアハンドル装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車載用ドアハンドル装置において、
前記プッシュスイッチは、
前記ドアハンドルの持ち手部が接触するスイッチノブを備え、
前記ドアハンドルが前記初期状態にあるときには、前記ハンドル付勢機構が前記ドアハンドルに与えるトルクよりも、前記対抗力付与機構が前記スイッチノブに与えるトルクの方が大きい状態で、前記スイッチノブが前記プッシュスイッチにおいて留められることを特徴とする車載用ドアハンドル装置。
【請求項8】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の車載用ドアハンドル装置において、
前記ドアハンドルの持ち手部は、ユーザによって力が加えられていない初期状態にあるときに前記スイッチノブに接触しており、
前記スイッチノブが押下されている状態では、前記ハンドル付勢機構が前記ドアハンドルに与えるトルクよりも、前記対抗力付与機構が前記スイッチノブに与えるトルクの方が大きいことを特徴とする車載用ドアハンドル装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車載用ドアハンドル装置において、
前記ドアハンドルが前記初期状態にあるときには、前記ハンドル付勢機構が前記ドアハンドルに与えるトルクよりも、前記対抗力付与機構が前記スイッチノブに与えるトルクの方が大きい状態で、前記スイッチノブが前記プッシュスイッチにおいて留められることを特徴とする車載用ドアハンドル装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車載用ドアハンドル装置において、
前記プッシュスイッチは、
前記シャフトと前記ドアハンドルの一端との間の位置で前記ドアハンドルによって押下され、
前記プッシュスイッチよりも前記ドアハンドルの一端側で、前記ドアハンドルと、前記ハンドル用筐体との間に隙間が設けられていることを特徴とする車載用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ドアハンドル装置に関し、特に、自動車のドアを開けるためのドアハンドルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアには、外側および内側にドアハンドルが設けられている。また、自動車のドアには、ドアハンドルの操作に応じてドアを開閉するラッチ機構が設けられている。ラッチ機構には、ドアハンドルと併せて電動アクチュエータによって動作するものがある。電動アクチュエータを備えるラッチ機構に対しては、例えば特許文献1に記載されているように、自動車内のドアハンドルの傍らにスイッチが設けられている。ドアハンドルの操作によってスイッチが押下されることで電動アクチュエータが動作し、ドアが開放可能な状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-94455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車内のドアハンドルでは、ドアハンドルが車室側に揺動することで、機械的にラッチ機構が動作する。また、特許文献1に記載されているドアハンドルでは、ドアハンドルが車室外側に揺動することでスイッチが押下される。この文献に記載されているドアハンドルには、車室側への揺動に対抗するための付勢トルクをドアハンドルに与える付勢機構が設けられている。一方、スイッチには、押下されていない状態(非押下状態)を維持する機構が設けられている。このような構成では、ドアハンドル側の付勢力と、スイッチが非押下状態を維持しようとする力のバランスによっては、ドアハンドルに軽く触れただけでスイッチが押下されてしまう等、付勢力の調整が困難となる場合があった。
【0005】
本発明の目的は、プッシュスイッチが設けられたドアハンドルの設計を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自動車用ドアに設けられるハンドル用筐体と、前記ハンドル用筐体に設けられたシャフトに揺動自在に取り付けられるドアハンドルと、前記ドアハンドルに付勢トルクを与えるハンドル付勢機構と、前記ハンドル用筐体に固定され、前記ドアハンドルによって押下されるプッシュスイッチと、を備え、前記ドアハンドルの持ち手部が車室側に揺動することで、前記ドアハンドルは前記自動車用ドアのラッチ機構に操作力を与え、前記ドアハンドルの持ち手部が車室外側に揺動することで、前記ドアハンドルは前記プッシュスイッチを押下し、前記プッシュスイッチは、車室外側に押下される力に対抗する力を前記ドアハンドルの持ち手部に与える対抗力付与機構、を備えることを特徴とする。
【0007】
望ましくは、前記プッシュスイッチは、前記ラッチ機構を駆動する電動アクチュエータに接続されている。
【0008】
望ましくは、前記プッシュスイッチは、複数の電極が設けられた基板と、前記ドアハンドルの持ち手部が接触するスイッチノブと、前記スイッチノブの動きに応じて前記複数の電極に接触するスイッチ導体と、を備え、前記対抗力付与機構は、前記スイッチノブを押し戻し方向に付勢する圧縮バネを備える。
【0009】
望ましくは、前記プッシュスイッチは、前記スイッチノブと前記基板との間に設けられたシート状弾力性部材を備え、前記シート状弾力性部材は、前記スイッチノブに向かう方向に突出した押下部であって、前記基板側に開放した中空空間を有する押下部を備え、前記中空空間で前記押下部の先端部から前記基板側に向かって突出した接点突起に、前記スイッチ導体が設けられている。
【0010】
望ましくは、前記プッシュスイッチは、複数の電極が設けられた基板と、前記ドアハンドルの持ち手部が接触するスイッチノブと、前記スイッチノブの動きに応じて前記複数の電極に接触するスイッチ導体と、を備え、前記プッシュスイッチは、前記スイッチノブと前記基板との間に設けられたシート状弾力性部材を備え、前記シート状弾力性部材は、前記スイッチノブに向かう方向に突出した押下部であって、前記基板側に開放した中空空間を有する押下部を備え、前記中空空間で前記押下部の先端部から前記基板側に向かって突出した接点突起に、前記スイッチ導体が設けられている。望ましくは、前記ドアハンドルは、ユーザによって力が加えられていない初期状態にあるときに、前記プッシュスイッチに接触しており、前記プッシュスイッチが押下されている状態では、前記ハンドル付勢機構が前記ドアハンドルに与えるトルクよりも、前記対抗力付与機構が前記ドアハンドルに与えるトルクの方が大きい。望ましくは、前記プッシュスイッチは、前記ドアハンドルの持ち手部が接触するスイッチノブを備え、前記ドアハンドルが前記初期状態にあるときには、前記ハンドル付勢機構が前記ドアハンドルに与えるトルクよりも、前記対抗力付与機構が前記スイッチノブに与えるトルクの方が大きい状態で、前記スイッチノブが前記プッシュスイッチにおいて留められる。望ましくは、前記ドアハンドルの持ち手部は、ユーザによって力が加えられていない初期状態にあるときに前記スイッチノブに接触しており、前記スイッチノブが押下されている状態では、前記ハンドル付勢機構が前記ドアハンドルに与えるトルクよりも、前記対抗力付与機構が前記スイッチノブに与えるトルクの方が大きい。望ましくは、前記ドアハンドルが前記初期状態にあるときには、前記ハンドル付勢機構が前記ドアハンドルに与えるトルクよりも、前記対抗力付与機構が前記スイッチノブに与えるトルクの方が大きい状態で、前記スイッチノブが前記プッシュスイッチにおいて留められる。望ましくは、前記プッシュスイッチは、前記シャフトと前記ドアハンドルの一端との間の位置で前記ドアハンドルによって押下され、前記プッシュスイッチよりも前記ドアハンドルの一端側で、前記ドアハンドルと、前記ハンドル用筐体との間に隙間が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プッシュスイッチが設けられたドアハンドルの設計を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る自動車用ドアを示す図である。
図2】車載用ドアハンドル装置の分解斜視図である。
図3】プッシュスイッチの分解斜視図である。
図4】車載用ドアハンドル装置のAA線断面図である。
図5】車載用ドアハンドル装置のBB線断面図である。
図6】車載用ドアハンドル装置のBB線断面図である。
図7】スイッチドアハンドルの押下荷重特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示されている同一の事項については同一の符号を付してその説明を省略する。各図面では、自動車の前方がz軸正方向とされている。また、車室側に向かう方向がx軸正方向とされ、上方向がy軸正方向とされている。本明細書における上下左右等の方向を示す用語は自動車の乗員から見た方向を示す。
【0014】
図1には、本発明の実施形態に係る自動車用ドア10が示されている。自動車用ドア10には、プッシュスイッチとしての機能と、ドアハンドルとしての機能を備えたスイッチドアハンドル16が設けられている。スイッチドアハンドル16では、機械的な操作による自動車用ドア10の解放と、電気的な操作による自動車用ドア10の解放の両者が可能となっている。ここで、自動車用ドア10の解放とは、自動車用ドア10が閉じた状態に固定されておらず、揺動自在な状態とすることをいう。
【0015】
機械的な操作はスイッチドアハンドル16の引き揺動によって行われ、電気的な操作はスイッチドアハンドル16の押下揺動によって行われる。ここで、引き揺動とは、スイッチドアハンドル16の持ち手部が車室側に引っ張られる運動をいい、押下揺動とは、スイッチドアハンドル16の持ち手部が車室外側に押下される運動をいう。
【0016】
自動車用ドア10の車室側にはアームレスト12が設けられている。アームレスト12は車室側に突出し、ユーザとしての乗員が腕を乗せる台を形成している。アームレスト12の側面には、ハンドル用筐体としてのベゼル14が取り付けられている。ベゼル14は車室外側に凹んだハンドル取り付け空間を形成しており、ハンドル取り付け空間にスイッチドアハンドル16が揺動自在に取り付けられている。
【0017】
自動車用ドア10の後方の縁にはラッチ機構20が設けられている。自動車のボデーの縁には、U字状に突出したストライカが設けられている。ラッチ機構20の状態には、ストライカに引っ掛かったラッチ状態と、ストライカから外れたアンラッチ状態の2つの状態がある。ラッチ機構20がラッチ状態となることで自動車用ドア10が閉じた状態となり、ラッチ機構20がアンラッチ状態となることで自動車用ドア10が解放された状態となる。自動車用ドア10が車室側に揺動し、自動車用ドア10の後方の縁が、ボデーの縁に合わせられることでラッチ機構20がラッチ状態となり、自動車用ドア10が閉じられる。
【0018】
ラッチ機構20は、ケーブルによってスイッチドアハンドル16に結合されている。スイッチドアハンドル16の引き揺動に応じてケーブルが引っ張られることで、ラッチ機構20に操作力が与えられ、ラッチ機構20がアンラッチ状態となる。スイッチドアハンドル16からラッチ機構20に操作力を伝達するケーブルに代えて、またはケーブルと共にその他の機構が用いられてもよい。
【0019】
ラッチ機構20は電動アクチュエータを備えている。ラッチ機構20は、スイッチドアハンドル16の引き揺動による操作力の他、電動アクチュエータの駆動力によってもアンラッチ状態となる。電動アクチュエータは、スイッチドアハンドル16の傍らに配置されたプッシュスイッチに導線によって接続されている。スイッチドアハンドル16の押下揺動によってプッシュスイッチが押下されることで、電動アクチュエータがオンになる。これによって電動アクチュエータは、ラッチ機構20をアンラッチ状態に駆動する。
【0020】
図2には、自動車用ドア10に搭載される車載用ドアハンドル装置1の分解斜視図が示されている。車載用ドアハンドル装置1は、スイッチドアハンドル16、ベゼル14、ねじりコイルバネ34、シャフト36およびプッシュスイッチ38を備えている。ベゼル14は、スイッチドアハンドル16を囲むフレーム40と、フレーム40の内側の縁から後方に壁状に延びた囲み構造41を有している。囲み構造41は、フレーム40が形成する穴よりも車室外側にハンドル取り付け空間44を形成している。
【0021】
囲み構造41の底面からは、スイッチ取り付け壁42が立設している。スイッチ取り付け壁42には、プッシュスイッチ38が車室側を見通すスイッチ開口43が設けられている。プッシュスイッチ38は、そのスイッチノブがスイッチ開口43を貫通するようにベゼル14に固定される。すなわち、プッシュスイッチ38の上方と、プッシュスイッチ38の下方の前後にはフランジ48が設けられており、各フランジ48にはネジ穴が設けられている。各フランジ48のネジ穴には、車室外側から車室側に向けてタッピングネジ45が挿通し、タッピングネジ45によってプッシュスイッチ38がベゼル14に固定される。なお、タッピングネジ45に代えて、ボルトが用いられてもよい。この場合、ベゼル14に固定された各ナットに各ボルトがねじ込まれることでプッシュスイッチ38がベゼル14に固定される。
【0022】
囲み構造41の底部、すなわち囲み構造41のうち底面を構成する部分には、スイッチ取り付け壁42の後方に下シャフト穴46が設けられている。囲み構造41の底部における下シャフト穴46よりも車室外側には、バネ引っ掛け壁47が形成されている。バネ引っ掛け壁47は、囲み構造41の底部から上方に立設している。また、囲み構造41の上部、すなわち囲み構造41のうち天井を構成する部分には、下シャフト穴46に対向する位置に上シャフト穴50が設けられている。
【0023】
スイッチドアハンドル16には、シャフト36が挿通されるシャフト挿通穴49が形成されている。シャフト挿通穴49の下方には、ねじりコイルバネ34が配置される空間が設けられている。シャフト挿通穴49と同心となる位置関係でねじりコイルバネ34が配置され、スイッチドアハンドル16がハンドル取り付け空間44に嵌め込まれた状態で、上シャフト穴50、シャフト挿通穴49、ねじりコイルバネ34、および下シャフト穴46にシャフト36が挿通される。これによって、シャフト36がベゼル14に取り付けられ、スイッチドアハンドル16は、ハンドル取り付け空間44においてシャフト36を中心軸として揺動自在となる。ねじりコイルバネ34は、引き揺動に逆らう付勢トルクをスイッチドアハンドル16に与える。
【0024】
図3には、プッシュスイッチ38の分解斜視図が示されている。プッシュスイッチ38は、スイッチノブ70、圧縮バネ71、スイッチハウジング72、スイッチシート73、基板74およびスイッチカバー75を備えている。スイッチノブ70は略直方体状に形成されている。スイッチノブ70の上面には、x軸方向に延伸する3本の摺動突起76-1~76-3が、延伸方向を揃えて形成されている。スイッチノブ70の前方および後方の側面のそれぞれにも、x軸方向に延伸する摺動突起76Fおよび76Rが形成されている。
【0025】
スイッチハウジング72は、ベース部77および摺動筒78から構成されている。ベース部77は、縦方向に長い略長方形状の領域である。摺動筒78は、ベース部77から車室側に延びた略四角筒状に形成されている。摺動筒78は、スイッチノブ70を摺動させる摺動空間を内側に形成している。摺動筒78の上側の内側側面には、摺動突起76-2が入り込む摺動溝79Uが形成されている。摺動溝79Uは、下方に突出しx軸方向に延伸した一対の突起によって形成されている。摺動溝79Uは、上方に凹みx軸方向に延伸した溝によって形成されてもよい。
【0026】
摺動筒78の前方および後方の内側側面には、それぞれ、摺動突起76Fおよび76Rが入り込む摺動溝79Fおよび79Rが形成されている。摺動溝79Fおよび79Rは、それぞれ、前方および後方に凹み、x軸方向に延伸した溝によって形成されている。後方に突出しx軸方向に延伸した一対の突起によって摺動溝79Fが形成されてもよい。また、前方に突出しx軸方向に延伸した一対の突起によって摺動溝79Rが形成されてもよい。
【0027】
摺動筒78の底面にはバネ支持構造80が設けられている。バネ支持構造80は摺動筒78の底面から上方に突出し、バネ支持構造80におけるバネ固定棒81の部分が車室側に棒状に突出する。ベース部77のうち、前面が摺動筒78に囲まれる領域には、スイッチシート73の押下部83が車室側を見通す押下部開口82が設けられている。
【0028】
スイッチシート73はシート状弾力性部材によって形成されている。シート状弾力性部材は、yz平面に沿って広がり上方において車室側に突出し、突出した部分が押下部83の一部をなす。シート状弾力性部材は、合成ゴム等の弾力性のある材料によって形成されてよい。押下部83の基板74側には、基板74側に開放した中空空間が形成されており、その中空空間にはスイッチ導体が設けられている。
【0029】
基板74は、yz平面に沿って広がっており、車室側の面には、複数の電極と、各電極から引き出された導線が設けられている。
【0030】
圧縮バネ71にはつるまきバネが用いられる。圧縮バネ71は、その中心軸方向に外力が与えられることで中心軸方向に圧縮される。圧縮バネ71は、バネ支持構造80におけるバネ固定棒81に差し込まれる。圧縮バネ71がバネ固定棒81に差し込まれた状態で、スイッチノブ70における摺動突起76-2、76Fおよび76Rが、それぞれ、摺動溝79U、79Fおよび79Rに入り込むように、スイッチノブ70が摺動筒78の内側に差し込まれる。圧縮バネ71は、伸張および収縮できる余裕を残しつつ収縮した状態で、プッシュスイッチ38内に収容されてよい。
【0031】
摺動突起76-2、76Fおよび76Rは、それぞれ、摺動溝79U、79Fおよび79Rに沿って摺動自在であり、摺動突起76-1および76-3は、摺動筒78の上側の2つの角において摺動自在である。これによって、スイッチノブ70が摺動筒78内で摺動自在となる。
【0032】
スイッチノブ70は摺動筒78内で摺動自在である一方で、摺動筒78から外れないように構成されており、圧縮バネ71によって車室側に押された状態で摺動筒78内に留まる。圧縮バネ71は、スイッチノブ70が押下される力とは逆向きの付勢力をスイッチノブ70に与える。
【0033】
スイッチシート73は、スイッチハウジング72のベース部77に設けられた押下部開口82に押下部83が挿入され状態で、ベース部77の後方に重ねられる。さらに、ベース部77の車室外側に基板74が重ねられた状態で、スイッチハウジング72の車室外側にスイッチカバー75が取り付けられる。
【0034】
図4には、図1におけるAA線で車載用ドアハンドル装置1を切断したときの断面図が示されている。図4には、力が加えられていない初期状態にあるスイッチドアハンドル16が実線によって示され、引き揺動した状態にあるスイッチドアハンドル16が二点鎖線によって示されている。
【0035】
スイッチドアハンドル16は、シャフト36よりも前方側の持ち手部91と、シャフト36よりも後方側の後方部92とを含んでいる。持ち手部91がユーザによって引っ張られることで、スイッチドアハンドル16はシャフト36を中心に引き揺動する。持ち手部91がユーザによって押下されることで、スイッチドアハンドル16はシャフト36を中心に押下揺動する。初期状態にあるスイッチドアハンドル16の車室側の面は、ベゼル14の車室側の面に対して、車室外側にずれた位置にあってよい。
【0036】
ねじりコイルバネ34およびバネ引っ掛け壁47は、スイッチドアハンドル16に付勢トルクを与えるハンドル付勢機構を構成する。ねじりコイルバネ34にはシャフト36が貫通している。ねじりコイルバネ34の一端側の第1腕93は、スイッチドアハンドル16における後方部92の車室外側の面(裏面)に沿って滑り自在に接触している。ねじりコイルバネ34の他端側の第2腕94は、バネ引っ掛け壁47に接触している。ねじりコイルバネ34は、バネ引っ掛け壁47および後方部92に、第1腕93および第2腕94がなす角が広がる方向に付勢力を与える。これによって、ねじりコイルバネ34は、スイッチドアハンドル16に対し、スイッチドアハンドル16が押下揺動する方向(図4の時計回り方向)の付勢トルクを与える。
【0037】
スイッチドアハンドル16にはケーブルの一端が結合され、ケーブルの他端はラッチ機構20に結合されている。スイッチドアハンドル16が引き揺動することでケーブルが引っ張られ、ラッチ機構20に操作力が与えられる。これによって、ラッチ機構20がラッチ状態からアンラッチ状態となる。
【0038】
スイッチドアハンドル16における持ち手部91の裏面には、車室外側に突出し前後方向に延びるスイッチ押下リブ95が設けられている。スイッチドアハンドル16が初期状態にあるとき、または、押下揺動した状態にあるときは、スイッチ押下リブ95がプッシュスイッチ38のスイッチノブ70に接触する。スイッチドアハンドル16が押下揺動することで、持ち手部91がスイッチノブ70を押下する。スイッチノブ70が押下されることでプッシュスイッチ38がオンになり、ラッチ機構20の電動アクチュエータが動作する。
【0039】
このように、本実施形態に係る車載用ドアハンドル装置1は、自動車用ドア10に設けられるベゼル14(ハンドル用筐体)と、ベゼル14に設けられたシャフト36に揺動自在に取り付けられるスイッチドアハンドル16(ドアハンドル)とを備えている。車載用ドアハンドル装置1は、さらに、スイッチドアハンドル16に付勢トルクを与えるハンドル付勢機構を備えている。ハンドル付勢機構は、ねじりコイルバネ34およびバネ引っ掛け壁47によって構成されている。
【0040】
車載用ドアハンドル装置1は、さらに、スイッチドアハンドル16によって押下されるプッシュスイッチ38を備えている。プッシュスイッチ38はベゼル14に固定される。スイッチドアハンドル16の持ち手部91が車室側に揺動することで、スイッチドアハンドル16はラッチ機構20に操作力を与える。スイッチドアハンドル16の持ち手部91が車室外側に揺動することで、スイッチドアハンドル16はプッシュスイッチ38を押下する。プッシュスイッチ38は、車室外側に押下される力に対抗する力を、スイッチドアハンドル16の持ち手部91に与える対抗力付与機構を備える。対抗力付与機構は、バネ支持構造80および圧縮バネ71によって構成されている。
【0041】
図5および図6には、図4におけるBB線で車載用ドアハンドル装置1を切断したときの断面図が示されている。図5は、スイッチドアハンドル16が初期状態にあるときの断面図が示されており、図6には、スイッチドアハンドル16が押下揺動したときの断面図が示されている。図5に示されているように、スイッチシート73の押下部83は、略円板状に形成された先端部101と、先端部101の外周から車室外側に向かって径が広がる末広がり部102とから構成されている。先端部101からは、車室外側に向けて接点突起103が突出しており、接点突起103の先端にはスイッチ導体104が設けられている。基板74の車室側の面には、スイッチ導体104に対向する位置に複数の電極が設けられている。
【0042】
スイッチノブ70は、押下板99と、押下板99の車室外側に形成されたスイッチ押下片100とを備えている。圧縮バネ71は、バネ固定棒81に差し込まれた状態で、スイッチノブ70の押下板99を車室側に押している。スイッチノブ70は摺動筒78内で摺動自在であるものの、圧縮バネ71によって車室側に押された状態で摺動筒78内に留まっている。スイッチ押下片100の車室外側の端は、スイッチシート73の押下部83における先端部101に接触している。
【0043】
スイッチドアハンドル16における持ち手部91が押下され、スイッチドアハンドル16が押下揺動すると、図6に示されているように、スイッチノブ70はスイッチドアハンドル16によって押下され、車室外側に摺動する。これによってスイッチ押下片100は、スイッチシート73の押下部83を車室外側に押下する。押下部83における末広がり部102が径方向外側に膨らむように屈曲する。これによって、スイッチ導体104は、基板74上の複数の電極に接触し、スイッチ導体104によって複数の電極が導通する。
【0044】
スイッチドアハンドル16における持ち手部91が解放されると、圧縮バネ71が伸張し、スイッチノブ70の押下板99を車室側に押し戻す。スイッチノブ70の押下板99は、スイッチドアハンドル16を車室側に押し戻し、スイッチドアハンドル16は初期状態となる。スイッチノブ70が押し戻されることで、スイッチ押下片100はスイッチシート73の押下部83を解放する。これによって、押下部83における末広がり部102が伸張し、スイッチ導体104が基板74上の複数の電極から離れ、複数の電極が互いに絶縁される。
【0045】
このように、本実施形態に係る車載用ドアハンドル装置1におけるプッシュスイッチ38は、複数の電極が設けられた基板74と、スイッチドアハンドル16の持ち手部91が接触するスイッチノブ70と、スイッチノブ70の動きに応じて複数の電極に接触するスイッチ導体104と、対抗力付与機構とを備えている。対抗力付与機構は、スイッチノブ70を押し戻し方向に付勢する圧縮バネ71を備えている。
【0046】
プッシュスイッチ38は、スイッチノブ70と基板74との間に設けられたシート状弾力性部材によって構成されたスイッチシート73を備えている。スイッチシート73は、スイッチノブ70に向かう方向に突出した押下部83を備えている。押下部83は、スイッチノブ70におけるスイッチ押下片100に接触し、基板74側に開放した中空空間を有している。この中空空間で先端部101から基板74側に向かって突出した接点突起103に、スイッチ導体104が設けられている。
【0047】
図7には、スイッチドアハンドル16の押下荷重特性が示されている。横軸は、車室外側への押下距離Sを示し、縦軸は、押下に必要な荷重である押下荷重Fが示されている。初期状態の押下距離Sは0であり、スイッチドアハンドル16が最も奥に押下されたときの押下距離SはS0である。以下の説明では、押下距離S1およびS2について、0<S1<S2<S0の関係が成立する。
【0048】
押下距離Sが0以上S1未満の範囲では、押下距離Sの増加に対して押下荷重Fは直線的に増加する。押下距離SがS1以上S2未満の範囲では、押下距離Sの増加に対して押下荷重Fが減少する。押下距離SがS2以上S0以下の範囲では、押下距離Sの増加に対して押下荷重Fが増加する。押下距離SがS2以上S0以下の範囲では、押下距離Sが0以上S1未満の範囲に比べて、単位押下距離当たりの押下荷重Fの増加(ばね係数)が大きい。
【0049】
押下距離Sが0以上S1未満の範囲では、スイッチドアハンドル16の押下には、圧縮バネ71および末広がり部102の付勢力に逆らう押下荷重Fが要される。押下距離SがS1以上S2未満の範囲では、押下部83の末広がり部102の屈曲により押下荷重Fが減少し、ユーザに対するクリック感が実現される。押下距離SがS2以上S0以下の範囲では、スイッチドアハンドル16の押下には、再び、圧縮バネ71および押下部83の付勢力に逆らう押下荷重Fが要される。
【0050】
スイッチドアハンドル16にユーザの膝が当たるときの平均的な押下荷重をFhとし、押下距離SがS1であるときの押下荷重FをF0とした場合、この膝当たり荷重Fhが押下荷重F0未満となるように、圧縮バネ71および押下部83が設計される。
【0051】
本実施形態に係る車載用ドアハンドル装置1では、プッシュスイッチ38における圧縮バネ71および押下部83が、車室側に押し戻す力をスイッチノブ70に与える。一方、ねじりコイルバネ34は、押下揺動する方向の付勢トルクをスイッチドアハンドル16に与え、スイッチドアハンドル16の持ち手部91がスイッチノブ70に接触している。圧縮バネ71および押下部83がスイッチノブ70を押し戻す力の方が、ねじりコイルバネ34がスイッチドアハンドル16の持ち手部91に与える押下力よりも大きい状態でスイッチノブ70は摺動筒78に留まり、スイッチドアハンドル16が初期状態となっている。
【0052】
上記のように、車載用ドアハンドル装置1では、プッシュスイッチ38に圧縮バネ71が用いられている。したがって、ねじりコイルバネ34がスイッチドアハンドル16の持ち手部91に与える力と、プッシュスイッチ38における圧縮バネ71および押下部83が、スイッチドアハンドル16の持ち手部91に与える力とのバランスの調整が容易となる。これによって、スイッチドアハンドル16に軽く触れただけでプッシュスイッチ38が押下されてしまう等の問題が容易に回避される。
【符号の説明】
【0053】
1 車載用ドアハンドル装置、10 自動車用ドア、12 アームレスト、14 ベゼル(ハンドル用筐体)、16 スイッチドアハンドル(ドアハンドル)、20 ラッチ機構、34 ねじりコイルバネ(ハンドル付勢機構)、36 シャフト、38 プッシュスイッチ、40 フレーム、41 囲み構造、42 スイッチ取り付け壁、43 スイッチ開口、44 ハンドル取り付け空間、45 タッピングネジ、46 下シャフト穴、47 バネ引っ掛け壁(ハンドル付勢機構)、48 フランジ、49 シャフト挿通穴、50 上シャフト穴、70 スイッチノブ、71 圧縮バネ(対抗力付与機構)、72 スイッチハウジング、73 スイッチシート、74 基板、75 スイッチカバー、76-1~76-3,76F,76R 摺動突起、77 ベース部、78 摺動筒、79U,79F,79R 摺動溝、80 バネ支持構造(対抗力付与機構)、81 バネ固定棒(対抗力付与機構)、82 押下部開口、83 押下部、91 持ち手部、92 後方部、93 第1腕、94 第2腕、95 スイッチ押下リブ、99 押下板、100 スイッチ押下片、101 先端部、102 末広がり部、103 接点突起、104 スイッチ導体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7