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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240612BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240612BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
G08G1/09 D
G06T7/00 650A
H04N7/18 J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021126946
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021834
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】土田 憲生
(72)【発明者】
【氏名】栃木 康平
(72)【発明者】
【氏名】安達 允彦
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-224925(JP,A)
【文献】特開2021-018737(JP,A)
【文献】特開2015-032179(JP,A)
【文献】特開2007-219758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0032197(US,A1)
【文献】国際公開第2016/194228(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G06T 7/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方を撮像するカメラ(11)が撮像した画像に基づいて自車両の前方の交通状況を認識する車両制御装置(21)であって、
前記画像において、道路形態に応じて、自車両の前方に存在する信号機を検出する信号機検出範囲を設定する検出範囲設定部と、
前記信号機検出範囲で検出された信号機から、自車両が従うべき対象信号機を選択する選択部と、
自車両の前方における道路形状情報から道路延在方向を認識する認識部と、
自車両の走行速度とヨーレートとに基づいて、車両旋回時における旋回半径を推定する推定部と、
前記認識部により認識された前記道路延在方向をカーブ路情報として用いて設定される道路延在範囲、および前記推定部により推定された前記旋回半径を前記カーブ路情報として用いて設定される旋回半径範囲について左右の曲がりの方向が互いに同じであることを判定する曲がり方向判定部と、
を備え
前記検出範囲設定部は、
自車両の前方において当該自車両の正面側に直線状に定められる第1検出範囲と、自車両の前方において、カーブ路情報に基づいてそのカーブ路の曲がり具合に応じて定められる第2検出範囲とを含む範囲で、前記信号機検出範囲を設定し、
前記道路延在範囲と、前記旋回半径範囲との少なくともいずれかに基づいて、前記第2検出範囲を設定し、
前記選択部は、前記道路延在範囲および前記旋回半径範囲の左右の曲がりの方向が互いに同じであると判定されている場合に、前記第1検出範囲および前記第2検出範囲のうち前記第1検出範囲でのみ検出された信号機を前記対象信号機として選択しない、車両制御装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記信号機検出範囲において、前記第1検出範囲および前記第2検出範囲で検出された信号機を前記対象信号機として選択し、前記第1検出範囲および前記第2検出範囲のうちいずれか一方でのみ検出された信号機を前記対象信号機として選択しない、請求項に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記検出範囲設定部は、自車両が走行している道路において、走行許可方向が自車両の進行方向と同じである順方向車道と、走行許可方向が前記順方向車道の逆方向である逆方向車道とを含む範囲を前記信号機検出範囲の横幅として設定する、請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
道路幅方向の左右両端の道路端のうち前記逆方向車道側の道路端を検出道路端として検出する道路端検出部を備え、
前記検出範囲設定部は、
自車両から前記検出道路端までの距離が所定距離よりも短い場合に、その検出道路端が中央帯であるとみなし、前記検出道路端よりも奥側に道路幅を拡張して前記信号機検出範囲の横幅を設定し、
自車両から前記検出道路端までの距離が前記所定距離よりも長い場合に、前記検出道路端よりも奥側に道路幅を拡張せずに前記信号機検出範囲の横幅を設定する、請求項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
自車両の前方を撮像するカメラ(11)が撮像した画像に基づいて自車両の前方の交通状況を認識する車両制御装置(21)であって、
前記画像において、道路形態に応じて、自車両の前方に存在する信号機を検出する信号機検出範囲を設定する検出範囲設定部と、
前記信号機検出範囲で検出された信号機から、自車両が従うべき対象信号機を選択する選択部と、
自車両が走行している道路の道路幅方向の左右両端の道路端のうち、走行許可方向が自車両の進行方向の逆方向である逆方向車道側の道路端を検出道路端として検出する道路端検出部と、
を備え、
前記検出範囲設定部は、
自車両が走行している道路において、走行許可方向が自車両の進行方向と同じである順方向車道と、前記逆方向車道とを含む範囲を前記信号機検出範囲の横幅として設定するものであり、
自車両から前記検出道路端までの距離が所定距離よりも短い場合に、その検出道路端が中央帯であるとみなし、前記検出道路端よりも奥側に道路幅を拡張して前記信号機検出範囲の横幅を設定し、
自車両から前記検出道路端までの距離が前記所定距離よりも長い場合に、前記検出道路端よりも奥側に道路幅を拡張せずに前記信号機検出範囲の横幅を設定する、車両制御装置。
【請求項6】
前記選択部は、交差点内で対象信号機が選択されている状況下でその対象信号機がロストした場合において、同一交差点内で検出状態の残りの信号機のうち、前記ロストした対象信号機とは異なる表示色をしており、かつ自車両に対する横方向の距離が所定距離以上である信号機を前記対象信号機として選択しない、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
自車両が駐車場エリアにいる状況下にあることを判定する状況判定部を備え、
前記状況判定部により自車両が駐車場エリアにいる状況下にあると判定された場合に、前記選択部による前記対象信号機の選択を行わない、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
自車両の前方を撮像するカメラ(11)が撮像した画像に基づいて自車両の前方の交通状況を認識する車両制御装置(21)であって、
前記画像において、道路形態に応じて、自車両の前方に存在する信号機を検出する信号機検出範囲を設定する検出範囲設定部と、
前記信号機検出範囲で検出された信号機から、自車両が従うべき対象信号機を選択する選択部と、
を備え、
前記選択部は、交差点内で対象信号機が選択されている状況下でその対象信号機がロストした場合において、同一交差点内で検出状態の残りの信号機のうち、前記ロストした対象信号機とは異なる表示色をしており、かつ自車両に対する横方向の距離が所定距離以上である信号機を前記対象信号機として選択しない、車両制御装置。
【請求項9】
自車両が駐車場エリアにいる状況下にあることを判定する状況判定部を備え、
前記状況判定部により自車両が駐車場エリアにいる状況下にあると判定された場合に、前記選択部による前記対象信号機の選択を行わない、請求項に記載の車両制御装置。
【請求項10】
自車両の前方を撮像するカメラ(11)が撮像した画像に基づいて自車両の前方の交通状況を認識する車両制御装置(21)であって、
前記画像において、道路形態に応じて、自車両の前方に存在する信号機を検出する信号機検出範囲を設定する検出範囲設定部と、
前記信号機検出範囲で検出された信号機から、自車両が従うべき対象信号機を選択する選択部と、
自車両が駐車場エリアにいる状況下にあることを判定する状況判定部と、
を備え、
前記状況判定部により自車両が駐車場エリアにいる状況下にあると判定された場合に、前記選択部による前記対象信号機の選択を行わない、車両制御装置。
【請求項11】
自車両に対する信号機の向きを判定する向き判定部を備え、
前記選択部は、前記信号機検出範囲で検出された信号機から、前記向き判定部による判定結果に基づいて前記対象信号機を選択する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項12】
信号機の表示色を検出し、その表示色が予め定めた規定色であることを判定する色判定部を備え、
前記選択部は、前記信号機検出範囲で検出された信号機から、前記色判定部による判定結果に基づいて前記対象信号機を選択する、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項13】
前記選択部は、前記信号機検出範囲で検出された信号機として、同一交差点内に存在し、かつ表示色が相違する複数の信号機が含まれる場合において、その複数の信号機のうち、自車両に対する横方向の距離が所定距離以上であり、かつ自車両の正面側の信号機と表示色が異なる信号機を前記対象信号機として選択しない、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の前方を撮像するカメラが撮像した画像に基づいて自車両の前方の交通状況を認識する技術が知られている。例えば、特許文献1には、狭角カメラにより撮像された狭角画像および広角カメラにより撮像された広角画像の少なくともいずれかの画像から信号機を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6447722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が走行する道路は様々な形態を呈しており、都度の道路形態を加味しつつ、カメラにより撮像された画像から、自車両が従うべき対象信号機を認識することが望ましい。この点について、未だ改善の余地があると考えられる。また、画像の中に複数の信号機が写りこむ場合にも、いずれの信号機が対象信号機であるかを適正に認識することが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、自車両が従うべき対象信号機を適正に認識することができる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明は、自車両の前方を撮像するカメラが撮像した画像に基づいて自車両の前方の交通状況を認識する車両制御装置であって、前記画像において、道路形態に応じて、自車両の前方に存在する信号機を検出する信号機検出範囲を設定する検出範囲設定部と、前記信号機検出範囲で検出された信号機から、自車両が従うべき対象信号機を選択する選択部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
カメラが撮像した画像において、道路形態に応じて、自車両の前方に信号機検出範囲を設定し、その信号機検出範囲で検出される信号機から、自車両が従うべき対象信号機を選択するようにした。この場合、都度の道路形態を加味しつつ信号機検出範囲を適正に設定でき、ひいては、画像に写り込んだ信号機から対象信号機を正しく認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】運転支援装置の概略構成を示す図。
図2】信号機検出範囲を示す図。
図3】(a)道路延在方向に基づく第2検出範囲の設定を説明する図、(b)旋回半径に基づく第2検出範囲の設定を説明する図。
図4】(a)~(c)道路幅算出の具体的な構成を説明する図。
図5】対象信号機選択処理の手順を示すフローチャート。
図6】複数の信号機が含まれた交差点を示す図。
図7】複数の信号機が含まれた交差点を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る車両制御装置を、車載の運転支援装置10に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援装置10は、カメラ11と、レーダ装置12と、車両制御装置としてのECU21と、を備えている。
【0011】
カメラ11は、単眼カメラである。カメラ11は、例えば自車両の前端、後端、および両側面にそれぞれ取り付けられており、自車両周辺を撮像する。カメラ11は、撮像した撮像画像の画像情報をECU21に送信する。カメラ11は、複眼カメラであってもよい。
【0012】
レーダ装置12は、ミリ波帯の高周波信号を送信波とする測距装置である。レーダ装置12は、例えば、自車両の前端、後端、および両側面にそれぞれ搭載されており、自車両周辺の物体までの距離を計測する。具体的には、所定周期で探査波を送信し、複数のアンテナにより反射波を受信する。この探査波の送信時刻と反射波の受信時刻とにより、物体上の複数の検出点を検出し、これにより当該物体までの距離を計測する。加えて、複数のアンテナが受信した反射波の位相差により、物体の方位を算出する。物体までの距離および物体の方位が算出できれば、その物体の自車両に対する相対位置を特定することができる。
【0013】
また、レーダ装置12は、物体で反射された反射波の、ドップラー効果により変化した周波数により、物体の相対速度を算出する。これにより、自車両周辺に存在している物体が静止物又は移動物であると検出される。具体的には、物体の相対速度と自車両の車速である自車速度との和がゼロとなる場合に、物体が静止物であると検出され、物体の相対速度と自車速度との和がゼロでない場合に、物体が移動物であると検出される。レーダ装置12は、自車両周辺の静止物および移動物の検出情報をECU21に送信する。
【0014】
ECU21は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えた制御装置である。ECU21は、各種信号を取得し、取得した情報に基づき、各種制御を実施する。
【0015】
ECU21は、カメラ11の撮像画像に基づいて、自車両周辺の物体を検出する。具体的には、ECU21は、カメラ11の撮像画像に写る各物体の自車両に対する相対位置を算出する。検出対象となる物体には、自車両周辺の他車両、歩行者、自転車等の移動物や、道路周辺に設けられる信号機、縁石、ガードレール等の固定物が含まれる。また、ECU21は、カメラ11の撮像画像に基づいて、自車両VEが走行する道路上の区画線に関する区画線情報を認識する。具体的には、区画線として白線等の有無を認識するとともに、その形態(具体的には、区画線の種別、位置、幅、長さ、曲率等)を認識する。道路上の路面標示として検出されるものとしては、区画線以外に、停止線、横断歩道、路面矢印などが挙げられる。
【0016】
ECU21は、レーダ装置12から送信される自車両周辺の物体の検出情報およびカメラ11の撮像画像から検出された自車両周辺の物体の検出情報に基づいて、各種制御を実施する。例えば、ECU21は、当該検出情報に基づいて、カメラ11の撮像画像から検出された信号機への注意喚起を示す情報を、車室内のインストルメントパネル等に設けられたディスプレイ31に表示させたり、車室内に設置されたスピーカやブザー等の聴覚的に報知する警報装置32を作動させたりする。
【0017】
また、ECU21には、ヨーレートセンサ13、舵角センサ14、車速センサ15が接続されている。ヨーレートセンサ13は、たとえば自車両の中央位置に設けられており、自車両の操舵量の変化速度に応じたヨーレートを示す信号をECU21に出力する。舵角センサ14は、たとえば車両のステアリングロッドに取り付けられており、ドライバの操作に伴うステアリングホイールの舵角の変化量に応じた舵角を示す信号をECU21に出力する。車速センサ15は、たとえば自車両のホイール部分に取り付けられており、車輪の回転方向を検出するとともに、車輪速度に応じた車速信号をECU21に出力する。
【0018】
ところで、車両が走行する道路は様々な形態を呈しており、都度の道路形態を加味しつつ、カメラ11により撮像された画像から、自車両が従うべき対象信号機を認識することが望ましい。また、画像の中に複数の信号機が写りこむ場合に、いずれの信号機が対象信号機であるかを適正に認識することが望ましい。このような考えに基づき、本実施形態の車両制御装置であるECU21は、カメラ11が撮像した画像において、道路形態に応じて、自車両の前方に存在する信号機を検出する信号機検出範囲RXを設定し、その信号機検出範囲RXで検出された信号機から、自車両が従うべき対象信号機を選択するようにした。
【0019】
信号機検出範囲RXの設定について説明する。なお本実施形態では、道路左側を車両(自動車)が走行する左側通行を想定しており、道路の左側を順方向とし、右側を逆方向としている。つまり、道路において左側の左車道が、走行許可方向が自車両の進行方向と同じである順方向車道であり、右側の右車道が、走行許可方向が順方向車道の逆方向である逆方向車道である。
【0020】
信号機検出範囲RXは、自車両の進行方向前方を縦方向、道路幅方向(左右方向)を横方向とする範囲であり、車両走行時において逐次設定される。以下には、まず信号機検出範囲RXにおける縦方向の設定と横方向の設定とのうち縦方向の設定を説明する。本実施形態では、図2に示すように、信号機検出範囲RXを、自車両VEの正面側に直線状に定められる第1検出範囲R1と、道路100(カーブ路)の曲がり具合に応じて定められる第2検出範囲R2とを含む範囲で設定することとしている。
【0021】
図2では、道路100がカーブ路となっており、自車両VEが道路100のコーナー部分に至る前の直線部分を走行する状態が示されている。この場合、ECU21は、自車両VEの前方において、自車両VEの向きに応じて、自車両VEの正面側に直線状の第1検出範囲R1を設定する。また、ECU21は、自車両VEの前方において、道路100のカーブ路情報に基づいてそのカーブ路の曲がり具合に応じて第2検出範囲R2を設定する。これら各検出範囲R1,R2を含む範囲が信号機検出範囲RXである。
【0022】
第2検出範囲R2の設定について、図3(a),(b)を用いて説明する。本実施形態では、道路100のカーブ路情報として、道路100の道路形状情報から認識される道路延在方向と、車両旋回時に推定される旋回半径とをそれぞれ用い、それら各情報に基づいて第2検出範囲R2を設定することとしている。図3(a)は、道路延在方向に基づく第2検出範囲R2の設定を説明する図であり、図3(b)は、道路100の旋回半径に基づく第2検出範囲R2の設定を説明する図である。
【0023】
図3(a)に示す範囲設定では、ECU21は、道路100の道路形状情報として、道路端を示す道路端情報を取得し、その道路端情報を縦方向に繋ぐことにより道路延在方向を認識する。そして、道路延在方向に沿って延びる範囲を道路延在範囲R21として設定する。道路端情報には、路面上の区画線の情報や、縁石、ガードレール等の路側物を示す情報が含まれている。また、道路形状情報として、道路の車線間を区切る白線や、センターラインを用いることも可能である。このような道路形状情報を取得した場合には、その白線やセンターラインが延びる方向を道路延在方向として認識する。
【0024】
また、図3(b)に示す範囲設定では、ECU21は、車速センサ15により検出された車速を、ヨーレートセンサ13により検出されたヨーレートで割ることにより、車両旋回時における推定旋回半径(推定R)を算出する。そして、推定旋回半径の逆数である曲率に沿って延びる範囲を旋回半径範囲R22として設定する。
【0025】
ECU21は、道路延在範囲R21と旋回半径範囲R22との少なくともいずれかに基づいて、第2検出範囲R2を設定する。この場合、ECU21は、道路延在範囲R21と旋回半径範囲R22とのうち少なくとも道路延在範囲R21が設定されていれば、道路延在範囲R21を第2検出範囲R2とする。また、道路延在範囲R21と旋回半径範囲R22とのうち旋回半径範囲R22のみが設定されていれば、旋回半径範囲R22を第2検出範囲R2とする。道路延在範囲R21および旋回半径範囲R22の両方を含む範囲を第2検出範囲R2とすることも可能である。
【0026】
なお、道路延在範囲R21は、旋回半径範囲R22よりも正確に道路形状を反映したものとなるため、道路延在範囲R21が優先的に用いられるとよい。ただし、道路延在方向で認識された距離が所定距離(例えば50m)未満であれば、道路延在範囲R21に代えて旋回半径範囲R22が用いられるとよい。
【0027】
ECU21は、信号機検出範囲RXにおいて信号機を検出し、信号機検出範囲RXで検出された信号機から、自車両が従うべき対象信号機を選択する。図2では、道路100がカーブ路であり、かつ道路100上に2つの信号機110A,110Bが存在する状況が示されている。また、信号機検出範囲RXとして、第1検出範囲R1と第2検出範囲R2とにより略Y字状の範囲が設定されている。なお、図2において、信号機110Cは、自車両VEの正面側ではあるが、道路100からは外れた位置に存在する信号機である。この場合、信号機検出範囲RXでは3つの信号機110A~110Cが検出され、それら各信号機110A~110Cから対象信号機が選択される。
【0028】
対象信号機の選択に際し、ECU21は、信号機検出範囲RX内において、第1検出範囲R1および第2検出範囲R2で検出された信号機を対象信号機として選択し、第1検出範囲R1および第2検出範囲R2のうちいずれか一方でのみ検出された信号機を対象信号機として選択しない。図2で説明すると、信号機検出範囲RX内で検出された信号機110A~110Cのうち、信号機110Aは、第1検出範囲R1および第2検出範囲R2で検出された信号機であり、信号機110B,110Cは、第1検出範囲R1および第2検出範囲R2のうち一方でのみ検出された信号機である。そのため、信号機110Aは対象信号機として選択されるのに対し、信号機110B,110Cは対象信号機として選択されない。
【0029】
なお、道路延在範囲R21および旋回半径範囲R22により第2検出範囲R2が設定される場合において、道路延在範囲R21が右曲がりの範囲となるとともに、旋回半径範囲R22が左曲がりの範囲となること、すなわち各範囲R21,R22の曲がりの向きが相違することが生じ得る。例えば、推定旋回半径(推定R)が安定していないと、各範囲R21,R22の曲がりの向きが相違することが生じる。より具体的には、道路100が自車両前方で右曲がりのカーブ路になっている状況で、自車両VEの向きが一時的に左向きとなる場合に、各範囲R21,R22での相違が生じる。かかる場合には、信号機検出範囲RX内において第2検出範囲R2から外れていても、信号機を除外対象にしないとよい。つまり、第1検出範囲R1の信号機を対象信号機として選択することが可能になっているとよい。
【0030】
図2では、自車両VEがカーブ路を走行する際に信号機検出範囲RXが略Y字状に設定される場合を例示したが、自車両VEが直線道路を走行する際には、第1検出範囲R1と第2検出範囲R2とが一致するため、信号機検出範囲RXが直線範囲、すなわち第1検出範囲R1と同じ範囲で設定される。つまり、直線道路では、道路延在方向が自車両VEの正面側の直線方向となり、道路延在範囲R21、旋回半径範囲R22はいずれも直線範囲で設定される。そのため、第1検出範囲R1及び第2検出範囲R2が一致し、信号機検出範囲RXが直線範囲(第1検出範囲R1と同じ範囲)で設定される。
【0031】
次に、信号機検出範囲RXの横方向の設定について説明する。信号機検出範囲RXの横方向の横幅は、道路100の左車道及び右車道を含む範囲の道路幅として設定される。この場合、ECU21は、道路100の道路端を示す道路端情報(区画線や路側物)を取得し、その道路端情報に基づいて、道路100における左側の道路端位置(左車道の左端位置)と右側の道路端位置(右車道の右端位置)とをそれぞれ算出する。また、それら左右の道路端位置に基づいて道路幅を算出するとともに、その道路幅に基づいて、信号機検出範囲RXの横方向の範囲を設定する。
【0032】
ただし、道路中央、すなわち道路100の左車道と右車道との間に中央帯が存在する場合には、その中央帯が支障となり、右車道の右道路端(逆方向車道において自車両VEから遠い側の道路端)を自車両VEから検出することが困難になると考えられる。つまり、道路100に中央帯が存在する場合には、その中央帯が右車道の右道路端として誤って検出されることが考えられる。そこで本実施形態では、道路100における中央帯の有無を考慮しつつ道路幅を算出し、その道路幅に基づいて信号機検出範囲RXの横幅を設定する。自車両VEから右車道側において、実際の右道路端が検出される場合と、中央帯が検出される場合とを比べると、右車道の右道路端として検出される検出道路端までの距離が相違する。そのため、自車両VEから右車道側で検出された検出道路端までの距離を算出し、その距離に基づいて、その検出道路端が中央帯であるか、実際に右車道側の道路端であるかを判定する。
【0033】
一般に道路におけるレーン幅(車線幅)は3~3.5m程度であり、片側2レーンずつの道路を想定すると、中央帯の存否を判定する距離閾値(所定距離DT)を例えば12mにする。この場合、自車両VEから右車道側で検出された検出道路端までの距離が12mよりも短ければ中央帯が存在すると判定し、12mよりも長ければ中央帯が存在しないと判定する。なお、所定距離DTは、道路におけるレーン数などに依存するものであるため、マップデータ等からレーン数情報を取得し、そのレーン数に応じて所定距離DTを可変に設定することも可能である。
【0034】
道路幅算出の具体的な構成を図4(a)~(c)を用いて説明する。図4(a)~(c)のうち(a),(b)は、道路100において、左車道101と右車道102との間に中央帯103が存在する場合を想定している。道路100の左右の道路端のうち左車道101の左端位置が左側道路端SLであり、右車道102の右端位置が右側道路端SRである。また、中央帯103の左車道101側の境界部が左側境界部SCである。
【0035】
図4(a)は、自車両VEが走行する左車道101において、左側道路端SLと中央帯103の左側境界部SCとが検出されている状態であり、中央帯103の左側境界部SCが、自車両VEから右車道102側で検出された検出道路端となっている。また、自車両VEの中央位置から左側道路端SLまでの距離がD1、自車両VEの中央位置から右車道102側の検出道路端(ここでは中央帯103の左側境界部SC)までの距離がD2となっている。この場合、ECU21は、距離D2が所定距離DTよりも短いことに基づいて、右車道102側の検出道路端が中央帯103の左側境界部SCであると判定する。
【0036】
そして、ECU21は、右車道102側の検出道路端よりも奥側に道路幅を拡張すべく、左車道101の横幅と、中央帯103及び右車道102の各想定幅とからなる範囲を道路幅とする。具体的には、左車道101と右車道102との横幅が同じであり、かつ中央帯103の幅をD3とすると、右車道102と中央帯103とを含む範囲の横幅(図のD11)は「D1+D2+D3」である。したがって、道路100の道路幅を「2(D1+D2)+D3」として算出する。信号機検出範囲RXは、横方向の左端が左側道路端SLであり、かつ横方向の右端が自車両VEの中央位置から距離D2+D11で右側にシフトした位置である範囲に設定される。
【0037】
また、図4(b)は、自車両VEが走行する左車道101において、中央帯103の左側境界部SCが検出され、その左側境界部SCが右車道102側の検出道路端となっていることは図4(a)と同じであるが、左側道路端SLが検出されていないことが相違している。この場合、ECU21は、右車道102側の検出道路端(ここでは中央帯103の左側境界部SC)までの距離D2が所定距離DTよりも短いことに基づいて、右車道102側の検出道路端が中央帯103の左側境界部SCであると判定する。
【0038】
そして、ECU21は、右車道102側の検出道路端よりも奥側に道路幅を拡張すべく、自車両中央から左側道路端SLまでの想定距離D21と、自車両中央から右側道路端SRまでの想定距離D22とからなる範囲を道路幅とする。想定距離D21は例えば最大10m、想定距離D22は例えば最大30mである。これら各想定距離D21,D22は、予め定められた規定距離であってもよいし、マップデータ等から取得されるレーン数情報や、レーン間の区画線情報に応じて可変に設定される距離であってもよい。信号機検出範囲RXは、横方向の左端が自車両VEの中央位置から距離D21で左側にシフトした位置であり、かつ横方向の右端が自車両VEの中央位置から距離D22で右側にシフトした位置である範囲に設定される。
【0039】
また、図4(c)は、自車両VEが走行する道路100において中央帯103が存在していない。この場合、ECU21は、右車道102側の検出道路端までの距離D2が所定距離DTよりも長いことに基づいて、右車道102側の検出道路端が実際に右側道路端SRであると判定する。そして、ECU21は、右車道102側の検出道路端よりも奥側に道路幅を拡張せず、自車両中央から左側道路端SLまでの距離D1と、自車両中央から右側道路端SRまでの距離D2とからなる範囲を道路幅とする。信号機検出範囲RXは、横方向の左端が左側道路端SLであり、かつ横方向の右端が右側道路端SRである範囲に設定される。
【0040】
なお、図4(c)において、左側道路端SLが検出されていなければ、距離D1として、自車両中央から左側道路端SLまでの想定距離D21が用いられるとよい。
【0041】
図示は省略しているが、上記図4(a)~(c)の状況以外に、右車道102側の道路端情報が取得できず、右車道102側の検出道路端までの距離D2が算出できない場合が想定される。この場合、ECU21は、道路100の道路幅を、予め定めたデフォルト値にするとよい。そのデフォルト値は例えば30mである。信号機検出範囲RXは、自車両VEの中央位置を基準にして左側に所定距離D31、右側に所定距離D32となる範囲に設定されるとよい。例えばD31+D32=30mであり、D31<D32である。又は、右車道102側の道路端情報が取得できない場合に、信号機検出範囲RXの設定が禁止される構成であってもよい。
【0042】
図5は、ECU21が実行する対象信号機選択処理の手順を示すフローチャートである。本処理は、ECU21により所定周期で繰り返し実行される。
【0043】
対象信号機選択処理が開始されると、まず初めに、ECU21は、カメラ11により撮像された自車両VE前方の画像を取得する(ステップS11)。次に、ECU21は、対象信号機の選択を禁止する禁止条件が成立しているか否か判定する(ステップS12)。禁止条件の詳細については、後述する。禁止条件が成立している場合(ステップS12:YES)、ECU21は、対象信号機の選択を行うことなく、対象信号機選択処理を終了する。
【0044】
一方、禁止条件が成立していない場合(ステップS12:NO)、ECU21は、信号機検出範囲RXを設定する。この場合、ECU21は、信号機検出範囲RXの横幅を、道路100の左車道101と右車道102とを含む範囲として設定する。以下に、信号機検出範囲RXの横幅を設定する設定処理を説明する。
【0045】
ECU21は、自車両VEが走行する左車道101において、右車道102側の道路端情報が取得されているか否かを判定する(ステップS13)。このとき、ECU21は、カメラ11の画像又はレーダ装置12の検出情報に基づいて右車道102側の道路端情報が取得されていれば、ステップS13を肯定し、右車道102側の道路端情報が取得されていなければ、ステップS13を否定する。
【0046】
右車道102側の道路端情報が取得されている場合(ステップS13:YES)、ECU21は、自車両VEの中央位置から右車道102側の検出道路端までの距離D2が所定距離DTよりも短いか否かを判定する(ステップS14)。このとき、距離D2が所定距離DTよりも短ければ、右車道102側の検出道路端が中央帯であるとみなされ、距離D2が所定距離DTよりも長ければ、右車道102側の検出道路端が中央帯でなく右側道路端SRであるとみなされる。距離D2が所定距離DTよりも短い場合(ステップS14:YES)、ECU21は、左側道路端SLが検出されているか否かを判定する(ステップS15)。
【0047】
左側道路端SLが検出されている場合(ステップS15:YES)、ECU21は、道路100の道路幅を「2(D1+D2)+D3」として算出する(ステップS16)。これにより、図4(a)で説明したとおり、右車道102側の検出道路端よりも奥側に道路幅が拡張される。また、道路100の道路幅を信号機検出範囲RXの横幅とするとともに、信号機検出範囲RXの横方向の範囲を、左端が自車両中央から距離D1で左側にシフトした位置であり、かつ右端が自車両中央から距離D2+D11で右側にシフトした位置である範囲に設定する。
【0048】
一方、左側道路端SLが検出されていない場合(ステップS15:NO)、ECU21は、道路100の道路幅を、自車両中央から左側道路端SLまでの想定距離D21と、自車両中央から右側道路端SRまでの想定距離D22とにより「D21+D22」として算出する(ステップS17)。これにより、図4(b)で説明したとおり、右車道102側の検出道路端よりも奥側に道路幅が拡張される。また、道路100の道路幅を信号機検出範囲RXの横幅とするとともに、信号機検出範囲RXの横方向の範囲を、左端が自車両中央から距離D21で左側にシフトした位置であり、かつ右端が自車両中央から距離D22で右側にシフトした位置である範囲に設定する。
【0049】
距離D2が所定距離DTよりも長い場合(ステップS14:NO)、ECU21は、道路100の道路幅を、自車両中央から左側道路端SLまでの距離D1と、自車両中央から右側道路端SRまでの距離D2とにより「D1+D2」として算出する(ステップS18)。この場合には、図4(c)で説明したとおり、右車道102側の検出道路端よりも奥側に道路幅が拡張されることはない。また、道路100の道路幅を信号機検出範囲RXの横幅とするとともに、信号機検出範囲RXの横方向の範囲を、左端が左側道路端SLであり、かつ右端が右側道路端SRである範囲に設定する。
【0050】
右車道102側の道路端情報が取得されていない場合(ステップS13:NO)、ECU21は、道路100の道路幅を、予め定めたデフォルト値にする(ステップS19)。また、道路100の道路幅を信号機検出範囲RXの横幅とするとともに、信号機検出範囲RXの横方向の範囲を、自車両中央を基準にして左側に所定距離D31、右側に所定距離D32(>D31)となる範囲に設定する。
【0051】
信号機検出範囲RXの横方向の範囲が設定された後、ECU21は、自車両VEの前方において自車両VEの正面側に直線状に定められる第1検出範囲R1を設定する(ステップS21)。このとき、ステップS13~S19の処理により算出された道路幅を用い、その道路幅を自車両VEの正面方向に延ばした範囲を第1検出範囲R1とする。
【0052】
その後、ECU21は、自車両VEの前方において、カーブ路情報に基づいてそのカーブ路の曲がり具合に応じて定められる第2検出範囲R2を設定する(ステップS22)。このとき、図3(a),(b)で説明したとおり、道路延在方向をカーブ路情報として用いて設定される道路延在範囲R21と、旋回半径(推定R)をカーブ路情報として用いて設定される旋回半径範囲R22との少なくともいずれかに基づいて、第2検出範囲R2を設定する。
【0053】
より具体的には、ECU21は、自車両VEの前方における道路形状情報から道路延在方向を認識し、その道路延在方向をカーブ路情報として用いて道路延在範囲R21を設定する(図3(a)参照)。このとき、ステップS13~S19の処理により算出された道路幅を用い、その道路幅を道路延在方向に延ばした範囲を道路延在範囲R21とする。また、ECU21は、自車両VEの走行速度とヨーレートとに基づいて、車両旋回時における旋回半径(推定R)を推定し、その旋回半径をカーブ路情報として用いて旋回半径範囲R22を設定する(図3(b)参照)。このとき、ステップS13~S19の処理により算出された道路幅を用い、その道路幅を旋回半径の逆数である曲率に沿って延ばした範囲を旋回半径範囲R22とする。
【0054】
例えば、道路延在範囲R21と旋回半径範囲R22とのうち、道路延在範囲R21を優先的に用いて旋回半径範囲R22が設定されるとよい。また、道路延在方向で認識された距離が所定距離(例えば50m)未満であれば、道路延在範囲R21に代えて旋回半径範囲R22により旋回半径範囲R22が設定されるとよい。道路延在範囲R21および旋回半径範囲R22の両方を含む範囲により第2検出範囲R2が設定されてもよい。なお、各検出範囲R1,R2の設定において、ステップS13~S19の処理により算出された道路幅よりも左右に所定幅ずつ拡張した範囲を、各検出範囲R1,R2として設定することも可能である。
【0055】
その後、ECU21は、第1検出範囲R1と第2検出範囲R2とを含む範囲で、信号機検出範囲RXを設定する(ステップS23)。
【0056】
信号機検出範囲RXが設定された後、ECU21は、信号機検出範囲RX内に存在する信号機を検出する(ステップS24)。
【0057】
その後、ECU21は、信号機検出範囲RX内で検出された信号機から対象信号機を選択する選択処理を実行する(ステップS25,S26)。このとき、ECU21は、第1選択処理として、信号機が第1検出範囲R1又は第2検出範囲R2に入っていることに基づいて、対象信号機を選択する(ステップS25)。また、ECU21は、第2選択処理として、信号機検出範囲RX内の信号機について確からしさの判定を行い、その判定結果により対象信号機を選択する(ステップS26)。本実施形態では、2つの選択処理を実施することとしており、第1選択処理で仮対象信号機を選択し、第2選択処理で仮対象信号機から最終の対象信号機を絞り込むようにしている。
【0058】
第1選択処理について詳しくは、ECU21は、信号機検出範囲RXにおいて、第1検出範囲R1又は第2検出範囲R2で検出された信号機を、仮対象信号機として選択する。ただしこの場合、ECU21は、道路延在範囲R21および旋回半径範囲R22について左右の曲がりの方向が互いに同じであるか否かを判定するとともに、これら各範囲R21,R22の左右の曲がりの方向が互いに同じであると判定されている場合に、第1検出範囲R1および第2検出範囲R2のうち第1検出範囲R1でのみ検出された信号機を対象信号機として選択しない。
【0059】
また、第2選択処理では、ECU21は、第1選択処理で選択された仮対象信号機について確からしさの判定を行い、対象信号機を選択する。その際、ECU21は、以下に示す採点基準1~6に沿って仮対象信号機を採点し、採点基準1~6による採点結果の合計点が最も高い仮対象信号機を、対象信号機として選択する。なお、複数の仮対象信号機について採点結果の合計点が同点となる場合には、該当する複数の仮対象信号機がそれぞれ対象信号機として選択されるとよい。
【0060】
採点基準1として、ECU21は、自車両に対する仮対象信号機の向きを判定し、その判定結果に基づいて仮対象信号機を採点する。具体的には、自車両VEの方を向いている度合いが高い仮対象信号機ほど高いスコアが付けられる。すなわち、自車両VEと向かい合っている仮対象信号機には、採点基準1において最も高いスコアが付けられ、自車両VEから信号機の表示色が見えない向きの仮対象信号機には、採点基準1において低いスコアが付けられる。
【0061】
採点基準2として、ECU21は、信号機の表示色を検出し、その表示色が予め定めた規定色であることを判定し、その判定結果に基づいて仮対象信号機を採点する。具体的には、信号機の表示色を検出する処理がECU21により一定周期で実行され、規定色として赤が検出された仮対象信号機にはスコアが1加算され、緑が検出された仮対象信号機にはスコアが3加算される。また、規定色として赤を検出するたびにカウンタが1加算され、緑を検出するたびにカウンタが3加算され、カウンタの合計が所定の値以上となったことを条件として、仮対象信号機にスコアが付けられてもよい。
【0062】
採点基準3として、ECU21は、閾値回数以上その仮対象信号機が検出されたか否かに基づいて仮対象信号機を採点する。具体的には、仮対象信号機を検出する処理がECU21により一定周期で実行され、閾値回数以上連続して検出された信号機にはスコアが付けられる。
【0063】
採点基準4として、ECU21は、検出信頼度に基づいて仮対象信号機を採点する。具体的には、仮対象信号機を検出する処理がECU21により一定周期で実行され、仮対象信号機として検出された形状と照合用データに含まれるサンプルの信号機形状とを比較し、その類似度合いが高い仮対象信号機ほど高いスコアが付けられる。
【0064】
採点基準5として、ECU21は、地面からの高さに基づいて仮対象信号機を採点する。具体的には、地面からの高さが所定範囲内にある仮対象信号機にスコアが付けられる。地面からの高さが所定範囲の下限より下側にある仮対象信号機は、歩行者用信号機である可能性が高く、採点基準5では、そのような信号機にスコアが付けられることを防止している。
【0065】
採点基準6として、ECU21は、灯火位置を示す形状の数に基づいて仮対象信号機を採点する。具体的には、灯火位置を示す形状である円形状が3つ以上検出された仮対象信号機にスコアが付けられる。例えば、灯火位置を示す円形状が2つ検出された仮対象信号機は、予告信号機である可能性が高く、採点基準6では、そのような信号機にスコアが付けられることを防止している。
【0066】
第2選択処理において、上述した採点基準1~6による採点結果の合計点が最も高い仮対象信号機を、ECU21は、対象信号機として選択する。対象信号機として選択された信号機の位置や表示色は、ディスプレイ31に表示される。また、当該信号機の表示色に応じて、ECU21は、運転支援としてのブレーキ制御やアクセル制御を行ってもよい。
【0067】
次に、図5の対象信号機選択処理のステップS12において成立が判定される禁止条件について説明する。以下に示す要件1~7のうち少なくとも1つを満たす場合、禁止条件は成立したと判定される。
【0068】
要件1として、自車両VEを始動させる始動スイッチがオンにされてから前進走行した距離が所定距離未満であることが挙げられる。
【0069】
要件2として、自車両VEが後退してから、前進走行した距離が所定距離未満であること、車速センサ15により検出された車速が所定車速を超えていないこと、カメラ11が撮像した画像から道路上の白線が検出されていないこと、のうち少なくとも1つを満たすことが挙げられる。自車両VEが後退する場合とは、例えば、自車両VEが駐車場エリア内を走行している場合を想定している。
【0070】
要件3として、所定半径より小さい旋回半径で自車両VEが走行してから、前進走行した距離が所定距離未満であること、車速センサ15により検出された車速が所定車速を超えていないこと、カメラ11が撮像した画像から道路上の白線が検出されていないこと、のうち少なくとも1つを満たすことが挙げられる。ここで、所定半径より小さい旋回半径で自車両VEが走行した場合とは、駐車場エリアから車道へ進入する際の旋回走行を想定していることから、所定半径には、駐車場エリアから車道へ進入する際に想定される旋回半径より大きい値が設定される。
【0071】
要件4として、車速センサ15により検出された車速が高速道路を走行中であるとみなされる車速以上であることが挙げられる。
【0072】
要件5として、交差点の位置を示す位置情報を運転支援装置10が有する場合、交差点内で右左折してから前進走行した距離が所定距離未満であることが挙げられる。
【0073】
要件6として、運転支援装置10が信号機の配置情報を有する場合、信号機が配置されていない道路を自車両VEが走行していることが挙げられる。
【0074】
要件7として、信号機と当該信号機の表示に従うべき車線の位置との対応を示す情報を運転支援装置10が有する場合、当該車線とは異なる車線を自車両VEが走行していることが挙げられる。
【0075】
要件1~7のいずれかが成立した場合、ECU21は、信号機検出範囲RXの横幅の設定(ステップS13~S19)以降の処理を実行しないことにより、対象信号機の選択を行わない。この場合、ECU21は、要件1~3により、自車両VEが駐車場エリアにいる状況下にあることを判定し、その判定に伴い、対象信号機の選択を禁止する。なお、要件3は、自車両VEが駐車場エリアから道路に出る状況下にあることを判定するものでもあり、かかる状況の判定時にも、ECU21が対象信号機の選択を禁止するとよい。
【0076】
以上説明した実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0077】
本実施形態の車両制御装置では、カメラ11が撮像した画像において、道路形態に応じて、自車両VEの前方に存在する信号機を検出する信号機検出範囲RXを設定し、その信号機検出範囲RXで検出された信号機から、自車両VEが従うべき対象信号機を選択するようにした。この場合、都度の道路形態を加味しつつ信号機検出範囲RXを適正に設定でき、ひいては、画像に写り込んだ信号機から対象信号機を正しく認識することができる。
【0078】
また、自車両VEの前方において自車両VEの正面側に直線状に定められる第1検出範囲R1と、自車両VEの前方において、カーブ路情報に基づいてそのカーブ路の曲がり具合に応じて定められる第2検出範囲R2とを含む範囲で、信号機検出範囲RXを設定するようにした。このような構成によれば、自車両VEの正面方向だけでなく、カーブ方向にも検出範囲の設定が可能となっている。そのため、直線道路以外にカーブ路であることも想定しつつ、これら直線道路やカーブ路に存在する信号機を適正に把握することができる。これにより、多様な道路形態に則した信号機認識を実現できる。
【0079】
また、道路延在方向をカーブ路情報として用いて設定される道路延在範囲R21と、旋回半径をカーブ路情報として用いて設定される旋回半径範囲R22との少なくともいずれかに基づいて、第2検出範囲R2を設定するようにした。自車両VEの前方における道路形状情報から道路延在方向が把握できれば、自車両VEが今後進む進行方向に則して適正に第2検出範囲R2を設定することができる。また、自車両VEの走行速度とヨーレートとに基づき推定された旋回半径を用いた第2検出範囲R2の設定も可能であるようにしたため、道路延在方向と旋回半径とのうち少なくともいずれかの情報に基づいて、適正に第2検出範囲R2を設定することができる。
【0080】
また、信号機検出範囲RXにおいて、第1検出範囲R1および第2検出範囲R2で検出された信号機を対象信号機として選択し、第1検出範囲R1および第2検出範囲R2のうちいずれか一方でのみ検出された信号機を対象信号機として選択しないようにした。このような構成によれば、自車両が従うべき信号機を選択する際に、第1検出範囲R1および第2検出範囲R2のうちいずれか一方でのみ検出された信号機を選択対象から除外できることから、対象信号機を適正に選択することができる。
【0081】
また、道路100の左車道101(順方向車道)と右車道102(逆方向車道)とを含む範囲を信号機検出範囲RXの横幅として設定するようにした。対象信号機は、左車道101だけでなく逆向きの右車道102上に存在している場合がある。この点、左右の車道101,102を含む範囲を信号機検出範囲RXの横幅として設定し、その信号機検出範囲RXで検出された信号機から対象信号機を選択するため、カメラ11が撮像した画像の中から対象信号機を適正に選択することができる。
【0082】
また、自車両VEから右車道102側の検出道路端までの距離が所定距離DTよりも短い場合に、その検出道路端が中央帯であるとみなし、検出道路端よりも奥側に道路幅を拡張して信号機検出範囲RXの横幅を設定し、自車両VEから検出道路端までの距離が所定距離DTよりも長い場合に、検出道路端よりも奥側に道路幅を拡張せずに信号機検出範囲RXの横幅を設定するようにした。これにより、道路の中央帯が支障となり自車両VEから遠い側の道路端を検出することが困難になる場合であっても、信号機検出範囲RXを適正に設定することができ、ひいては対象信号機を好適に選択することができる。
【0083】
また、自車両VEに対する信号機の向きを判定し、その判定結果に基づいて、対象信号機を選択するようにした。交差点等では、複数の方向から自車両VEが進入するため、自車両VE進入の各方向に対応させて信号機の向きが定められている。この場合、信号機検出範囲RXに含まれる信号機(仮対象信号機)について、自車両VEに対する向きの判定結果に基づいて対象信号機を選択することにより、対象信号機を選択する際の信頼性を高めることができる。
【0084】
また、信号機の表示色を検出して、その表示色が規定色であることを判定し、その判定結果に基づいて対象信号機を選択するようにした。交差点等では、自車両VEの進行および停止表示のための信号機以外に、予告用信号機や街路灯などの発光装置が設けられていることがあり、信号機として誤って予告用信号機や街路灯などが検出されることが懸念される。この点、信号機の表示色が予め定めた規定色であることを判定し、信号機検出範囲RXに含まれる信号機についてその表示色の判定結果に基づいて対象信号機を選択することにより、対象信号機を選択する際の信頼性を高めることができる。
【0085】
また、自車両VEが駐車場エリアにいる状況下にあると判定された場合に、対象信号機の選択を行わないようにした。自車両VEが駐車場エリアにいる場合には、仮に自車両VEの正面方向に信号機が認識されていたとしても、それは対象信号機ではないと考えられる。この場合、自車両VEが駐車場エリアにいる状況下で、通常の道路走行時と同様に信号機の選択処理が行われると、誤って対象信号機が選択されたり、その選択結果による不要な処理が実施されたりするおそれがある。この点、自車両VEが駐車場エリアにいる状況下にあると判定された場合に対象信号機の選択を行わないようにしたため、誤って対象信号機が選択されたり、その選択結果による不要な処理が実施されたりすることを抑制できる。
【0086】
(第2実施形態)
第2実施形態について、第1実施形態との相違点を説明する。第2実施形態では、第2選択処理において、仮対象信号機から対象信号機を選択する構成として別の構成を説明する。
【0087】
図6において、交差点には、自車両VEの正面でありかつ交差点奥側に設けられた信号機110Dと、自車両VEの正面でありかつ交差点手前側に設けられた信号機110Eと、自車両VEの直進方向に交差する交差道路用に設けられた信号機110Fとが存在している。この場合、自車両VEが設定した信号機検出範囲RXに信号機110D、110E、110Fが含まれていることから、これら信号機110D~110Fが仮対象信号機として選択される。信号機110D~110Fのうち、交差道路用の信号機110Fは、自車両VEに対する横距離Da(横方向の距離)が他の信号機に比べて大きくなっている。また、信号機110Dの表示色と信号機110Eの表示色は同じであり、信号機110D、110Eの表示色と信号機110Fの表示色は異なっている。図6では、信号機110D、110Eの表示色は赤であり、信号機110Fの表示色は緑である。
【0088】
ECU21は、仮対象信号機として、同一交差点内に存在し、かつ表示色が相違する複数の信号機110D~110Fが含まれる場合において、その複数の信号機110D~110Fのうち、自車両VEに対する横距離Daが所定距離以上であり、かつ自車両正面側の信号機110D,110Eと表示色が異なる信号機110Fを対象信号機の選択から除外する。これにより、信号機110D~110Fのうち信号機110D,110Eが対象信号機として選択される。信号機110D,110Eのうち、更に自車両VEに対して正面寄りである信号機110Dが対象信号機として選択される構成であってもよい。なお、このときの選択の基準に用いられる表示色は、赤と緑であり、黄は対象信号機の選択の際に用いない。
【0089】
交差点では、信号機として、互いに交差する道路ごとの各信号機が含まれることが考えられるが、それら複数の信号機のうちいずれが自車両VEの対象信号機であるかを正しく把握することが必要である。この点、上記構成によれば、自車両VEの対象信号機を適正に把握できる。
【0090】
また、以下の構成により、第2選択処理において、仮対象信号機から対象信号機を選択することも可能である。図7では、図6と同様に、交差点に信号機110D~110Fが存在しており、これら各信号機110D~110Fは、信号機検出範囲RXに含まれていることから仮対象信号機として選択される。信号機110Dの表示色と信号機110Eの表示色は同じであり、信号機110D、110Eの表示色と信号機110Fの表示色は異なっている。図7では、信号機110D、110Eの表示色は緑であり、信号機110Fの表示色は赤である。また、交差点内において、自車両VEの前方には先行車VZが走行している。
【0091】
ここでは、交差点内において、信号機110Dが対象信号機として選択されている状況下で、その信号機110Dが、車高の高い先行車VZにより隠されることでロストした場合を想定している。この場合、ECU21は、同一交差点内で検出状態の残りの信号機110E,110Fのうち、ロストした信号機110D(対象信号機)とは異なる表示色をしており、かつ自車両VEに対する横距離Daが所定距離以上である信号機110Fを対象信号機の選択から除外する。これにより、信号機110E,110Fのうち信号機110Eが対象信号機として選択される。なお、信号機110Dのロスト状態において、同一交差点内の残りの信号機110E,110Fの表示色が相違し、かつ信号機110Fについて横距離Daが所定距離以上であれば、その信号機110Fを対象信号機の選択から除外する構成であってもよい。
【0092】
上記構成によれば、交差点内において、自車両VEの正面の対象信号機がロストする状況であっても、自車両VEの対象信号機を継続的に正しく把握することができる。
【0093】
上記実施形態は、例えば、次のように変更してもよい。
【0094】
・上述した第1実施形態では、左側通行を想定して説明していたが、これに限られない。例えば、本発明に係る車両制御装置は、右側通行の道路においても適用可能である。右側通行の道路では、右側の右車道が、走行許可方向が自車両の進行方向と同じである順方向車道であり、左側の左車道が、走行許可方向が順方向車道の逆方向である逆方向車道である。この道路においても適用可能である。
【0095】
図5の対象信号機選択処理で説明した第1選択処理(ステップS25)として、以下の処理を実施してもよい。ECU21は、信号機検出範囲RXにおいて、第1検出範囲R1および第2検出範囲R2で検出された信号機を、仮対象信号機として選択し、第1検出範囲R1および第2検出範囲R2のうちいずれか一方でのみ検出された信号機を仮対象信号機として選択しない。この場合、第1選択処理(ステップS25)および第2選択処理(ステップS26)を実行して対象信号機を選択していたが、これに限られない。例えば、第1選択処理(ステップS25)と第2選択処理(ステップS26)とのうち一方のみを実行して対象信号機を選択してもよい。
【0096】
・上述した第1実施形態では、採点基準1~6による採点結果の合計点が最も高い仮対象信号機を、対象信号機として選択していたが、これに限られない。例えば、少なくとも1つ以上の採点基準によって仮対象信号機を採点し、その採点結果の合計点が最も高い仮対象信号機を、対象信号機として選択してもよい。
【0097】
・上述した第1実施形態では、要件3が成立した場合、ECU21は、信号機検出範囲RXの横幅の設定(ステップS13~S19)以降の処理を実行しないことにより、対象信号機の選択を行わないとしていたが、これに限られない。例えば、要件3が成立した場合、ECU21は、信号機検出範囲RXの横幅の設定(ステップS13~S19)および信号機検出範囲RXの設定(ステップS21~S24)の処理を実行したのち、信号機検出範囲RXのうち自車両VEから所定範囲内に含まれる信号機を、仮対象信号機として検出してもよい。すなわち、信号機検出範囲RXのうち所定範囲より離れた位置にある信号機を、仮対象信号機として検出しなくてもよい。このようにすることで、所定半径より小さい旋回半径で自車両VEが走行し、駐車場エリアから車道へ進入した直後の状態(要件3が成立している状態)であっても、自車両VEから所定範囲内に含まれる信号機を、仮対象信号機として検出することができる。
【0098】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0099】
11…カメラ、21…ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7