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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ファン付ウエア
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20240612BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20240612BHJP
   A41D 27/28 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D1/00 E
A41D27/28 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021130131
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023024073
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】500173929
【氏名又は名称】株式会社ワークマン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】中野 登仁
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125551(JP,A)
【文献】中国実用新案第213486968(CN,U)
【文献】中国実用新案第212697730(CN,U)
【文献】特開2018-141256(JP,A)
【文献】特開2020-147891(JP,A)
【文献】特開2019-127675(JP,A)
【文献】特表2008-531202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/002
A41D 1/00
A41D 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の胴部、胸部、肩部を覆い、前記胴部に密着可能なウエア本体と、
前記ウエア本体に設けられ、外気を前記ウエア本体と前記着用者との間に送風可能な送風ファンと、
を備え、
前記ウエア本体の上端部には、袋とじされてなるワイヤー挿通部が左右方向に沿って設けられ、
前記ワイヤー挿通部の一方の端部に近く且つ前側の前記ウエア本体に一対のワイヤー取出口が形成され、
前記ワイヤー挿通部にはワイヤー部材が挿通され、前記ワイヤー部材の両端部が前記ワイヤー挿通部の一方の端部を通って前記一対のワイヤー取出口から前記ウエア本体の外部に取り出され、前記ワイヤー部材は前記ワイヤー挿通部の他方の端部の近傍で折り返し部に掛け回されて折り返されることにより、前記ワイヤー挿通部には少なくとも2本の前記ワイヤー部材が挿通され、
前記ウエア本体の前側に、ロック状態及び解除状態を切り替え可能に構成され、前記ロック状態では前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さが固定し、前記解除状態では前記ワイヤー部材を長手方向に沿って巻き取り可能であり、前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さを調節するダイヤル式ロック機構が設けられ、
前記ダイヤル式ロック機構は前記ワイヤー部材を掛けまわされたダイヤル部を備え、
前記解除状態において前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さの変化量は前記ダイヤル部の回転量によって決まる、
ファン付ウエア。
【請求項2】
着用者の胴部、胸部、肩部を覆い、前記胴部に密着可能なウエア本体と、
前記ウエア本体に設けられ、外気を前記ウエア本体と前記着用者との間に送風可能な送風ファンと、
を備え、
前記ウエア本体の前記胴部に対向する部分の少なくとも一部には、袋とじされてなるワイヤー挿通部が周方向に沿って設けられ、
前記ワイヤー挿通部の一方の端部に近く且つ前側の前記ウエア本体に一対のワイヤー取出口が形成され、
前記ワイヤー挿通部にはワイヤー部材が挿通され、前記ワイヤー部材の両端部が前記ワイヤー挿通部の一方の端部を通って前記一対のワイヤー取出口から前記ウエア本体の外部に取り出され、前記ワイヤー部材は前記ワイヤー挿通部の他方の端部の近傍で折り返し部に掛け回されて折り返されることにより、前記ワイヤー挿通部には少なくとも2本の前記ワイヤー部材が挿通され、
前記ウエア本体の前側に、ロック状態及び解除状態を切り替え可能に構成され、前記ロック状態では前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さが固定し、前記解除状態では前記ワイヤー部材を長手方向に沿って巻き取り可能であり、前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さを調節するダイヤル式ロック機構が設けられ、
前記ダイヤル式ロック機構は前記ワイヤー部材を掛けまわされたダイヤル部を備え、
前記解除状態において前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さの変化量は前記ダイヤル部の回転量によって決まる、
ファン付ウエア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン付ウエアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋外のようにエアコンを使用できない環境や、工場や建物内の修理点検現場のようにエアコンの効果が得られにくい環境において、作業者が快適に作業を行うことができるように、作業者がファン付ウエアを着用する機会が増えている。ファン付ウエアは、服に取り付けられた送風機構によって服と着用者の体の表面との間に外気を取り入れ、着用者の体の表面に風を流し、汗を気化させ、気化熱によって体を冷ますことができるように構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、着用者の首後部と襟後部との間を流通する冷却風を外部に排出する空気排出口の開口度を調整する空気排出口調整機構が設けられたファン付ウエアが開示されている。特許文献1に記載されているファン付ウエアは、空気排出口調整機構として、留め具が設けられた帯状の端部が襟後部に取り付けられた調整ベルトと、留め具を取り付け可能な係合部とを備えている。この空気排出口調整機構では、端部から留め具までの調整ベルトの長さを調整ベルトが取り付けられた位置から係合部までのファン付ウエアに沿った距離よりも短くし、留め具を係合部に取り付けることによって、空気排出口が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-141259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているファン付ウエアでは、調整ベルト及び係合部が襟後部の内側、即ち着用者に対面するように設けられている。このことによって、着用時には着用者の手が調整ベルト及び係合部に届きにくく、空気排出口の開閉及び空気排出口の大きさの調整に手間がかかり、襟後部からの空気の排出操作が面倒であるという問題があった。例えば、空気排出口を調整するために、着用者はファン付ウエアを一旦脱ぐ必要があった。また、特許文献1に記載されているファン付ウエアのように1本のバンド部を用い、且つバンド部の長手方向における係合部と取付部との係合箇所が間隔をあけて不連続に位置しているため、空気排出口の形状が安定し難く、空気の排出量を調整し難かった。さらに、襟部と同様の空気排出口の操作機構を例えば胴部等に適用した場合でも同様に、空気の排出量を調整し難かった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、着用者が涼しく快適に過ごすことができるファン付ウエアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のファン付ウエアは、着用者の胴部、胸部、肩部を覆い、前記胴部に密着可能なウエア本体と、前記ウエア本体に設けられ、外気を前記ウエア本体と前記着用者との間に送風可能な送風ファンと、を備え、前記ウエア本体の上端部には、左右方向に沿ってワイヤー挿通部が設けられ、前記ワイヤー挿通部の一方の端部に近く且つ前側の前記ウエア本体に一対のワイヤー取出口が形成され、前記ワイヤー挿通部にはワイヤー部材が挿通され、前記ワイヤー部材の両端部が前記ワイヤー挿通部の一方の端部を通って前記一対のワイヤー取出口から前記ウエア本体の外部に取り出され、前記ワイヤー部材は前記ワイヤー挿通部の他方の端部の近傍で折り返され、前記ウエア本体に、ロック状態及び解除状態を切り替え可能に構成され、前記ロック状態では前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さが固定し、前記解除状態では前記ワイヤー部材を長手方向に沿って巻き取り可能であり、前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さを調節するダイヤル式ロック機構が設けられ、前記ダイヤル式ロック機構は前記ワイヤー部材を掛けまわされたダイヤル部を備え、前記解除状態において前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さの変化量は前記ダイヤル部の回転量によって決まる。
【0008】
本発明のファン付ウエアは、着用者の胴部、胸部、肩部を覆い、前記胴部に密着可能なウエア本体と、前記ウエア本体に設けられ、外気を前記ウエア本体と前記着用者との間に送風可能な送風ファンと、を備え、前記ウエア本体の前記胴部に対向する部分の少なくとも一部には、周方向に沿ってワイヤー挿通部が設けられ、前記ワイヤー挿通部の一方の端部に近く且つ前側の前記ウエア本体に一対のワイヤー取出口が形成され、前記ワイヤー挿通部にはワイヤー部材が挿通され、前記ワイヤー部材の両端部が前記ワイヤー挿通部の一方の端部を通って前記一対のワイヤー取出口から前記ウエア本体の外部に取り出され、前記ワイヤー部材は前記ワイヤー挿通部の他方の端部の近傍で折り返され、前記ウエア本体に、ロック状態及び解除状態を切り替え可能に構成され、前記ロック状態では前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さが固定し、前記解除状態では前記ワイヤー部材を長手方向に沿って巻き取り可能であり、前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さを調節するダイヤル式ロック機構が設けられ、前記ダイヤル式ロック機構は前記ワイヤー部材を掛けまわされたダイヤル部を備え、前記解除状態において前記ワイヤー挿通部に挿通されている前記ワイヤー部材の長さの変化量は前記ダイヤル部の回転量によって決まる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のファン付ウエアによれば、着用者が涼しく快適に過ごすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態のファン付ウエアの正面図である。
図2図1に示すファン付ウエアの襟部及びその周囲の斜視図である。
図3図1に示すファン付ウエアにおいてダイヤル式ロック機構を用いて空気排出口の形状を調節する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のファン付ウエアの好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
本発明の一実施形態のファン付ウエア200は、エアコンを使用できない環境や、エアコンの効果が得られにくい環境において、着用者が快適に作業を行うことができるように構成されている。ファン付ウエア200は、ウエア本体21と、送風ファン41と、襟51と、ワイヤー部材153、155と、ダイヤル式ロック機構160、170と、を備えている。
【0013】
以下、図1に示すようにファン付ウエア200を正面から見たときの前側、後側、左側、右側、上側、下側をそれぞれ、単に「前側」、「後側」、「左側」、「右側」、「上側」、「下側」という。また、前側と後側とを結ぶ方向を前後方向とし、左側と右側とを結ぶ方向を左右方向とし、上側と下側とを結ぶ方向を上下方向とする。
【0014】
図1に示すように、ファン付ウエア200は、例えば長袖の上着である。ウエア本体21は、着用者(図示略)の胴部、胸部及び肩部を覆う。ウエア本体21の前側には、上下方向に沿って線ファスナー31が設けられている。ファン付ウエア200は、線ファスナー31によって前側で開閉可能に構成されている。
【0015】
ウエア本体21の裾部(胴部に対向する部分)25は、着用者の胴部を覆い、胴部の周方向に沿って袋とじされている。裾部25には、例えば袋とじされてなるワイヤー挿通部26が設けられている。ワイヤー挿通部26の前側において線ファスナー31を挟んで右側又は左側(図1では右側)に、ワイヤー取出口27、27が形成されている。周方向のワイヤー取出口27、27の間のワイヤー挿通部26には、ワイヤー部材155が挿通している。ワイヤー挿通部26内の前側において線ファスナー31を挟んで左側又は右側(すなわち、ワイヤー取出口27が形成されている側とは反対側、図1では左側)に、微小な滑車やプーリー等の折り返し部157が設けられている。ワイヤー部材155は、一方のワイヤー取出口27からワイヤー挿通部26内に挿入され、周方向に挿通し、折り返し部157に掛け回されて折り返し、周方向を逆向きに挿通し、他方のワイヤー取出口27からワイヤー挿通部26外に取り出されている。ワイヤー部材155の端部(両端部)29、29は、ワイヤー取出口27、27のそれぞれからウエア本体21の前側表面に取り出されている。端部29、29は、ダイヤル式ロック機構170に接続されている。
【0016】
ダイヤル式ロック機構170は、例えば回転カバー(ダイヤル部)172と、不図示のハウジング、リール及び回転制御盤によって構成されている。回転カバー172には、ワイヤー取出口27、27からウエア本体21の前側表面に引き出されて押さえ部140を通ったワイヤー部材155の端部が掛け回されている。ハウジングの内周部且つ上部(すなわち、前後方向の前側)には、不図示のラチェットギアが設けられている。ハウジングは円筒形の内周面を有し、ハウジングの内部空間にはリール及び回転制御盤が順次収容されている。なお、ハウジング及び回転カバーには、リール及び回転制御盤を貫通してこれらの部材が回転するように支持する回転軸151が結合されている。回転軸151の先端部(すなわち、前後方向の後側、着用者に近い側)は、回転カバー172を貫通して結合される締め付けボルトによってこれらの部材を回転可能な状態でウエア本体21に支持されている。リールには、ワイヤー部材155を巻き取り可能とするために、凹溝形状の取り巻き部が形成されている。
【0017】
着用者がダイヤル式ロック機構170の回転カバー172を周方向に回転させると、ワイヤー取出口27、27の一方からウエア本体21の前側表面に引き出されたワイヤー部材155が端部29から長手方向に沿って巻き取られるが、ワイヤー取出口27、27の他方からウエア本体21の前側表面に引き出されたワイヤー部材155の端部29は固定されたままである。そのため、回転カバー172を周方向に回転させることによって、ワイヤー挿通部26内に挿通するワイヤー部材155の長さが調節される。回転カバー172の回転を止めたところで、ワイヤー部材155がロックされ、ワイヤー挿通部26内に挿通するワイヤー部材155の長さが再び固定される。ワイヤー部材155をワイヤー挿通部26から引き出すと、ワイヤー部材155を介してワイヤー挿通部26が着用者の胴部に密着する。着用者がダイヤル式ロック機構170の回転カバー172を前側に引き出すと、ロック状態が解除され、ワイヤー挿通部26が緩み、ワイヤー挿通部26と着用者の胴部との間に隙間が生じる。
【0018】
ウエア本体21の左側及び右側の袖口には、袖22、22が設けられている。袖22の先端には、不図示の袖口が開いている。袖口には、挿通する着用者の手に対する袖口の緩み具合を調節可能な袖口調節部が設けられている。袖口調節部によって袖口の周方向の長さを縮小すれば、袖口が着用者の手首近傍に密着可能になる。
【0019】
送風ファン41は、ウエア本体21の後側の下部に、左右方向において互いに間隔をあけて2つ設けられている。送風ファン41は、不図示の電気コードを介して電源に接続されている。前述の電源は、ウエア本体21の前側に設けられたポケットに収容可能である。着用者がファン付ウエア200を着用した状態で、電源が作動すると、送風ファン41は、ファン付ウエア200の外気をウエア本体21と着用者との間に送風可能である。
【0020】
ウエア本体21の首周りの開口の周縁には、上側に立ち上がる襟51が設けられている。襟51の直下部且つウエア本体21の上端部の背中側の部分、以下、襟下部(上端部)70には、例えば袋とじされてなるワイヤー挿通部126が設けられている。ワイヤー挿通部126の左右方向の両端には、一対の挿通孔154、155が形成されている。挿通孔(一方の端部)155から挿通孔(他方の端部)154に向かって、ワイヤー部材153がワイヤー挿通部126内に挿通されている。
【0021】
挿通孔154の近傍に、微小な滑車やプーリー等の折り返し部158が設けられている。挿通孔155からワイヤー挿通部126内に挿入されたワイヤー部材153は、周方向(主に左右方向)に延在し、折り返し部158に掛け回されて折り返し、周方向を逆向きに挿通し、挿通孔155からワイヤー挿通部126外に取り出されている。ワイヤー部材155の端部(両端部)55、55は、一対の挿通孔154、155の各々からウエア本体21の裏面(着用者側の内面)上を周方向に沿ってなぞるように延在し、ワイヤー取出口127、127からウエア本体21の右側の肩部の前側表面に取り出されている。つまり、ワイヤー挿通部126には、少なくとも2本分のワイヤー部材155が挿通している。端部55、55は、ダイヤル式ロック機構160に接続されている。
【0022】
ダイヤル式ロック機構160は、ダイヤル式ロック機構170と同様に、例えば回転カバー(ダイヤル部)162と、不図示のハウジング、リール及び回転制御盤によって構成されている。回転カバー162には、ワイヤー取出口127、127からウエア本体21の前側表面に引き出されて押さえ部140を通ったワイヤー部材155の端部55、55が掛け回されている。ハウジングの内周部且つ上部(すなわち、前後方向の前側)には、不図示のラチェットギアが設けられている。ハウジングは円筒形の内周面を有し、ハウジングの内部空間にはリール及び回転制御盤が順次収容されている。なお、ハウジング及び回転カバーには、リール及び回転制御盤を貫通してこれらの部材が回転するように支持する回転軸152が結合されている。回転軸152の先端部(すなわち、前後方向の後側、着用者に近い側)は、回転カバー162を貫通して結合される締め付けボルトによってこれらの部材を回転可能な状態でウエア本体21に支持されている。リールには、ワイヤー部材153を巻き取り可能とするために、凹溝形状の取り巻き部が形成されている。
【0023】
ファン付ウエア200の着用者が回転カバー162に接触せずに回転カバー162が回転していない場合、ダイヤル式ロック機構160は、ロック状態である。着用者が回転カバー162を時計回り(図3に示す白抜矢印の向き)又は反時計回りに回転させることによって、ダイヤル式ロック機構160で解除状態に切り替わる。つまり、ダイヤル式ロック機構160は、ロック状態及び解除状態を切り替え可能に構成されている。
【0024】
着用者がダイヤル式ロック機構160の回転カバー162を周方向に回転させると、ワイヤー取出口127、127の一方からウエア本体21の前側表面に引き出されたワイヤー部材153が端部55から長手方向に沿って巻き取られるが、ワイヤー取出口127、127の他方からウエア本体21の前側表面に引き出されたワイヤー部材153の端部55は固定されたままである。そのため、回転カバー162を周方向に回転させることによって、ワイヤー挿通部126内に挿通するワイヤー部材153の長さが調節される。回転カバー162の回転を止めたところで、ワイヤー部材153がロックされ、ワイヤー挿通部126内に挿通するワイヤー部材153の長さが再び固定される。ワイヤー部材153をワイヤー挿通部26から引き出すと、ワイヤー挿通部126と着用者の首部や肩部との隙間の形状や密着状態が変化する。着用者がダイヤル式ロック機構160の回転カバー162を前側に引き出すと、ロック状態が解除され、ワイヤー挿通部126が緩み、ワイヤー挿通部126と着用者の首部との間に隙間が生じる。
【0025】
上述のワイヤー部材153、155の各々は、少なくとも伸縮性を有さず、変形自在ではあるが形状保持性を有する。ワイヤー部材153、155の各々は、例えば強化樹脂或いは金属で形成され、回転カバー162の回転に伴う巻き上げ等の動作に好適な程度に高い強度を有する。
【0026】
以上説明したファン付ウエア200は、ウエア本体21と、送風ファン41と、襟51と、を備えている。襟下部70の少なくとも背中側には、ワイヤー挿通部126が形成されている。ファン付ウエア200は、ワイヤー部材153と、解除状態及び係止状態とが切り替わるダイヤル式ロック機構160と、をさらに備える。
【0027】
図2に示すように、着用者がファン付ウエア200を着用したときの基本着用状態では、襟51と着用者の首部との間に周方向の全体で隙間が生じる。このとき、ファン付ウエア200は、重力の影響を受け、着用者の肩部及びその下方且つ図示略の肩甲骨近傍に密着している。
【0028】
図2に示す着用状態から、着用者がダイヤル式ロック機構160の回転カバー162を周方向に回し、ワイヤー部材153を巻き取ると、図3に示すように、左側及び右側の襟51近傍が首部に略密着するように移動する。このような状態では、左側及び右側の襟51近傍の移動に伴って、ファン付ウエア200の肩部にあたっていた部分等が首部に近づきつつ肩部から浮く。ファン付ウエア200の肩部及び首部の後側にあたっていた部分(すなわち、襟ぐり部分)は、後方に向かって撓み、肩部及び首部から離間し、空気排出口が形成され、開口する。これらの動きがファン付ウエア200の全体に連動し、基本着用状態における密着状態が崩れる。
【0029】
本実施形態のファン付ウエア200によれば、着用者がダイヤル式ロック機構160を操作して回転カバー162から巻き出されているワイヤー部材153の長さを短くするように調節することによって、ウエア本体21の襟下部70に上下に亘る空気排出口が開口する。送風ファン41によってウエア本体21と着用者との間に送風された外気は、前述のように開口した空気排出口から着用者の後頭部から上方に排出されるので、外気が上昇する過程において着用者の上半身を冷却できる。一方、着用者がダイヤル式ロック機構160を操作して解除状態とし、上述のロック状態からワイヤー部材153を緩め、回転カバー162から巻き出されているワイヤー部材153の長さを長くするように調節すると、ウエア本体21が基本着用状態に近づき、空気排出口を閉じつつ、襟下部70の背中側に排出される外気の量を調節できる。したがって、ファン付ウエア200によれば、襟下部70の背中側での空気の排出操作を容易にし、ファン付ウエア200を着用した状態でも着用者が外気の排出量を容易に調節できる。
【0030】
また、本実施形態のファン付ウエア200によれば、着用者がダイヤル式ロック機構170を操作して回転カバー172から巻き出されているワイヤー部材155の長さを短くするように調節することによって、裾部25がウエア本体21で着用者の胴部に密着する。一方で、着用者がダイヤル式ロック機構170を操作して解除状態とし、上述のロック状態からワイヤー部材153を緩め、回転カバー172から巻き出されているワイヤー部材155の長さを長くするように調節すると、着用者の胴部とウエア本体21との間に空気排出口が開口し、送風ファン41によってウエア本体21と着用者との間に送風された外気が流通可能になる。したがって、ファン付ウエア200によれば、裾部25の少なくとも背中側での空気の排出操作を容易にし、ファン付ウエア200を着用した状態でも着用者が外気の排出量を容易に調節できる。なお、本発明における裾部25は、着用者の胴部に当たり得るウエア本体21の部分を意味し、必ずしもウエア本体21の下端部である必要はなく、裾部25よりも下方にウエア本体21が所定の長さで延在していてもよい。
【0031】
また、本実施形態のファン付ウエア200では、ダイヤル式ロック機構160、170では、回転カバー162、172の回転時に、回転カバー162、172から巻き出されているワイヤー部材153、155の長さを例えばミリメートル(mm)単位で高精度且つ高い再現性で変更することができる。本実施形態のファン付ウエア200では、例えば回転カバー162、172に形成されている係合爪等の係合構造とハウジング等の内周面に形成されている非係合凹部等の被係合との嵌合や、ラチェットギアが設けられていることによって、解除状態においてワイヤー挿通部26、126に挿通されているワイヤー部材153、155の長さの変化量は回転カバー162、172の回転量によって決まる。そのため、所定の回転量で回転カバー162、172を回転させたときに、ワイヤー挿通部26、126に挿通されているワイヤー部材153、155の長さを所望の長さに再現性良く調節することができる。また、ワイヤー部材153、155は例えば強化樹脂で形成されており、ワイヤー挿通部126、26にはワイヤー部材153、155が2本分挿通されている。本実施形態のファン付ウエア200では、空気排出口を形成するウエア本体21のしわや折り曲がりを形成せずに、空気排出口の形状を安定させ、着用者が空気排出口を所望の形状や大きさに調節し、空気の排出量を簡単に再現性良く、且つ高精度に調整することができる。
【0032】
また、本実施形態のファン付ウエア200では、ワイヤー部材153、155の端がウエア本体21の外部に開放される、言い換えれば放置されることはないため、ファン付ウエア200の着用者の作業時にワイヤー部材153、155の端が引っ掛かることがない。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0034】
上述の実施掲載では、ダイヤル式ロック機構160、170は、回転カバー162、172から巻き出されているワイヤー部材153、155の長さの変化量と回転カバー162、172の回転量とが一定の相関関係を有していれば、特定の構造を有するものに限定されない。
【0035】
また、上述の実施形態のファン付ウエア200では、ウエア本体21においてダイヤル式ロック機構160、170を設ける位置は適宜変更可能である。例えば、ダイヤル式ロック機構160は、ウエア本体21の後側の上端部又は上端部とは別の位置、或いはウエア本体21の肩部近傍に設けられていてもよい。
【0036】
また、上述の実施形態のファン付ウエア200では、上述のようにウエア本体21において着用者の胴部に密着可能な部分が設けられ、図1に示す裾部25よりも下方に例えば防寒を目的としてウエア本体が延在していてもよく、ワイヤー挿通部26が裾部25にあたる部分の周方向全体ではなく、後側(すなわち、着用者の背中側)の部分(胴部に対向する部分の少なくとも一部)に設けられていてもよい。このような構成では、例えばウエア本体21の前側の胴部に対向する部分にポケットの一部が重なる場合でも、ワイヤー挿通部26及びワイヤー挿通部26内を通るワイヤー部材155等を干渉させずに済む。つまり、本発明において、ワイヤー挿通部26は、ポケットやポケット以外に設けられている所望の構成との干渉しないように、ウエア本体21において着用者の胴部に密着可能な部分の少なくとも一部に設けられていてもよい。
【0037】
また、上述の実施形態のファン付ウエア200のウエア本体21は、例えばダイヤル式ロック機構160、170を外部からの衝撃等から保護するために、ダイヤル式ロック機構160、170を前側からウエア本体21と同じ素材で覆う保護カバーをさらに備えてもよい。このような保護カバーには、着用者が回転カバー162、172を把持するための開口と、ワイヤー部材153、155の端部55、29を保護カバーで覆われる領域と保護カバーの外部との間で挿通させる開口とが形成されている。図1には、破線で正面視略三角形状の保護カバー180を例示している。保護カバー180には、着用者が回転カバー172を把持するための開口181と、ワイヤー部材155の端部29、29を通過させる開口182とが形成されている。
【0038】
また、上述の実施形態のファン付ウエア200は、袖22、22を備えず、所謂ベストであってもよい。
【0039】
本実施形態では、空気排出口を形成する箇所として襟下部及び裾部にワイヤーとワイヤー挿通部とダイヤル式ロック機構とを組み合わせた構造を設けているが、本発明では、襟下部及び裾部の何れか一方にワイヤーとワイヤー挿通部とダイヤル式ロック機構とを組み合わせた構造を設けてもよい。その場合であっても、上述のように着用者が空気排出口を所望の形状や大きさに調節し、空気の排出量を簡単に再現性良く、且つ高精度に調整することができるという効果が得られる。また、本発明では、ファン付ウエアにおいて空気排出口を形成し得る箇所に、ワイヤーとワイヤー挿通部とダイヤル式ロック機構とを組み合わせた構造を設けることが有用である。
【符号の説明】
【0040】
21 ウエア本体
41 送風ファン
153、155 ワイヤー部材
160、170 ダイヤル式ロック機構
162、172 回転カバー(ダイヤル部)
200 ファン付ウエア
図1
図2
図3