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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/645 20210101AFI20240612BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240612BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20240612BHJP
【FI】
H01M50/645
H01M50/193
H01M50/184 A
H01M50/186
H01M50/15
H01G11/80
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021168637
(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公開番号】P2023058865
(43)【公開日】2023-04-26
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】辻岡 克司
(72)【発明者】
【氏名】高林 洋志
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-063559(JP,U)
【文献】特開2015-210950(JP,A)
【文献】特開2015-099688(JP,A)
【文献】特開2001-023586(JP,A)
【文献】特開2009-048968(JP,A)
【文献】特開2013-161711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/60-50/77
H01M 50/10-50/198
H01G 11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体を収容するための開口を有するケース本体と、
前記ケース本体の開口に取り付けられた蓋と
を有し、
前記蓋は、注液口と、前記注液口に取り付けられた平坦な円環状の樹脂ワッシャーと、封止部材と、を有し、該蓋の外表面には、前記注液口の周囲に凹んだ段差が設けられており、
前記封止部材は、前記注液口に挿入されたスリーブと、前記スリーブから前記蓋の外表面に沿って外径方向に向かって延びたフランジとを有し、
前記封止部材の一部は、前記段差に収まっており、
前記樹脂ワッシャーは、前記注液口に装着されており、前記フランジと前記段差の底面との間に挟まれており、
ここで、前記フランジの径方向の中間部には、前記段差の底面に向けて突出した突起が設けられており
記封止部材に前記樹脂ワッシャーの外縁を規制する規制部が設けられており、
前記フランジは、前記樹脂ワッシャーの外周縁に沿って前記段差の底面に向かって延びた壁部を有しており、該壁部の内側面に前記規制部が設けられている、二次電池。
【請求項2】
電極体と、
前記電極体を収容するための開口を有するケース本体と、
前記ケース本体の開口に取り付けられた蓋と
を有し、
前記蓋は、注液口と、前記注液口に取り付けられた平坦な円環状の樹脂ワッシャーと、封止部材と、を有し、
前記蓋の外表面には、前記注液口の周囲に凹んだ段差が設けられており、
前記段差の底面には、前記注液口のみが設けられており、
前記封止部材は、前記注液口に挿入されたスリーブと、前記スリーブから前記蓋の外表面に沿って外径方向に向かって延びたフランジとを有し、
前記樹脂ワッシャーは、前記注液口に装着されており、前記フランジと前記段差の底面との間に挟まれており、
前記フランジの径方向の中間部には、前記段差の底面に向けて突出した突起が設けられており、
前記段差の内壁面に、前記樹脂ワッシャーの外縁を規制する規制部が設けられている、二次電池。
【請求項3】
前記段差は深くなるにつれて前記注液口の内径側に向けて張り出したテーパ面で形成されている、請求項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-185969号公報、特開2010-277936号公報、および特開2014-175143号公報には、発電要素である電極体が電池ケースの内部に収容された二次電池が開示されている。上記公報で開示された二次電池では、電池ケースの蓋に、電池ケースの内部に電解液を注液するための貫通孔(注液孔)が設けられている。注液孔は封止部材で封止されており、蓋の外表面と封止部材との間には、シール部材が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-185969号公報
【文献】特開2010-277936号公報
【文献】特開2014-175143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは、二次電池の蓋に設けられた注液口周囲における気密性の低下を抑制したい、と考えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される技術によると、電極体と、上記電極体を収容するための開口を有するケース本体と、上記ケース本体の開口に取り付けられた蓋とを有する二次電池が提供される。上記蓋は、注液口と、上記注液口に取り付けられた平坦な円環状の樹脂ワッシャーと、封止部材と、を有している。上記封止部材は、上記注液口に挿入されたスリーブと、上記スリーブから上記蓋の外表面に沿って外径方向に向かって延びたフランジとを有している。上記樹脂ワッシャーは、上記注液口に装着されており、上記フランジと上記蓋の外表面との間に挟まれている。ここで、上記フランジの径方向の中間部には、上記蓋の外表面に向けて突出した突起が設けられている。上記蓋または上記封止部材に上記樹脂ワッシャーの外縁を規制する規制部が設けられている。
【0006】
かかる構成の二次電池では、封止部材のフランジと蓋の外表面との間に樹脂ワッシャーを配置することによって、樹脂ワッシャーをフランジと外表面との間で圧縮し、注液口の気密性を確保することができる。また、フランジの径方向の中間部に突起を設けることによって、フランジと外表面との間で樹脂ワッシャーを圧縮したときに、樹脂ワッシャーに食い込んで、樹脂ワッシャーに局所的により大きな圧縮力を付与することができる。一方で、樹脂ワッシャーに付与された圧縮力が、該樹脂ワッシャーの外径方向に逃げると、樹脂ワッシャーが同方向に広がり、注液口の気密性が低下しうる。ここで開示される二次電池では、蓋または封止部材に設けられた規制部によって、樹脂ワッシャーが、樹脂ワッシャーの外径方向に広がるのを抑制し、注液口の気密性低下を抑制することができる。
【0007】
ここで開示される二次電池の好ましい一態様では、フランジは、樹脂ワッシャーの外周縁に沿って蓋の外表面に向かって延びた壁部を有している。壁部の内側面に規制部が設けられている。かかる構成によると、壁部の内側面に設けられた規制部によって、樹脂ワッシャーが外径方向に広がるのを抑制し、注液口の気密性低下を抑制することができる。
【0008】
また、ここで開示される二次電池の好ましい他の一態様では、蓋の外表面には、注液口の周囲に凹んだ段差が設けられている。段差の内壁面に、規制部が設けられている。かかる構成によると、蓋の外表面に設けられた凹んだ段差の内壁面に形成された規制部によって、樹脂ワッシャーが外径方向に広がるのを抑制し、注液口の気密性低下を抑制することができる。
【0009】
より好ましくは、段差は深くなるにつれて注液口の内径側に向けて張り出したテーパ面で形成されている。かかる構成によると、注液口の気密性低下効果をよりよく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、二次電池100の部分断面図である。
図2図2は、注液口15への封止部材50の取り付けを説明する部分断面図である。
図3図3は、注液口15が封止部材50で封止された状態を示す部分断面図である。
図4図4は、注液口25が封止部材250で封止された状態を示す部分断面図である。
図5図5は、注液口35が封止部材250で封止された状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、ここで開示される二次電池の一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。ここで開示される技術は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、数値範囲を示す「A~B」などの表記は、特に言及されない限りにおいて「A以上B以下」を意味するとともに、「Aを上回り、かつ、Bを下回る」の意味をも包含する。なお、以下に説明する図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0012】
本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して一対の電極(正極と負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じる蓄電デバイス一般をいう。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタなども包含する。以下では、上述した二次電池のうち、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0013】
《第1実施形態》
〈二次電池100〉
図1は、二次電池100の部分断面図である。図1では、略直方体のケース本体12の片側の幅広面に沿って、内部を露出させた状態が描かれている。図1に示されているように、二次電池100は、ケース本体12と、蓋14と、電極体20と、を有している。
【0014】
〈電極体20〉
電極体20は、二次電池100の発電要素であり、正極および負極と、該正極および該負極を離隔するセパレータと、を備えている。電極体20は、絶縁フィルム(図示は省略)などで覆われた状態で、ケース本体12に収容されている。この実施形態では、電極体20は、正極要素としての正極シート21と、負極要素としての負極シート22と、セパレータとしてのセパレータシート23とを備えている。正極シート21と、負極シート22と、セパレータシート23とは、それぞれ長尺の帯状の部材である。
【0015】
〈正極シート21〉
正極シート21は、予め定められた幅および厚さの正極集電箔21a(例えば、アルミニウム箔)に、幅方向の片側の端部に一定の幅で設定された未形成部21a1を除いて、正極活物質を含む正極活物質層21bが両面に形成されている。正極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、リチウム遷移金属複合材料のように、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸収しうる材料である。正極活物質は、一般的にリチウム遷移金属複合材料以外にも種々提案されており、特に限定されない。
【0016】
〈負極シート22〉
負極シート22は、予め定められた幅および厚さの負極集電箔22a(例えば、銅箔)に、幅方向の片側の縁に一定の幅で設定された未形成部22a1を除いて、負極活物質を含む負極活物質層22bが両面に形成されている。負極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、天然黒鉛のように、充電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時に吸蔵したリチウムイオンを放電時に放出しうる材料である。負極活物質は、一般的に天然黒鉛以外にも種々提案されており、特に限定されない。
【0017】
〈セパレータシート23〉
セパレータシート23には、例えば、所要の耐熱性を有する電解質が通過しうる多孔質の樹脂シートが用いられる。セパレータシート23についても種々提案されており、特に限定されない。
【0018】
ここで、負極活物質層22bの幅は、例えば、正極活物質層21bよりも広く形成されている。セパレータシート23の幅は、負極活物質層22bよりも広い。正極集電箔21aの未形成部21a1と、負極集電箔22aの未形成部22a1とは、幅方向において互いに反対側に向けられる。また、正極シート21と、セパレータシート23と、負極シート22と、他のセパレータシート23とが、それぞれ長さ方向に向きを揃え、順に重ねられて捲回されている。負極活物質層22bは、セパレータシート23を介在させた状態で正極活物質層21bを覆っている。負極活物質層22bは、セパレータシート23に覆われている。正極集電箔21aの未形成部21a1は、セパレータシート23の幅方向の片側にはみ出ている。負極集電箔22aの未形成部22a1は、幅方向の反対側においてセパレータシート23からはみ出ている。
【0019】
電極体20は、図1に示されているように、ケース本体12に収容されうるように、捲回軸を含む一平面に沿った扁平な状態とされる。そして、電極体20の捲回軸に沿って、片側に正極集電箔21aの未形成部21a1が配置され、反対側に負極集電箔22aの未形成部22a1が配置されている。なお、ここでは、捲回型の電極体20が例示されている。電極体20の構造はかかる形態に限定されない。電極体20の構造は、例えば、正極シートと負極シートとが、セパレータシートとを介在させて交互に積層された積層構造でもよい。また、ケース本体12内には、複数の電極体20が収容されていてもよい。
【0020】
〈ケース本体12〉
ケース本体12は、図1に示されているように、電極体20を収容しており、電極体20を収容するための開口12hを有している。ケース本体12は、一側面が開口した略直方体の角形形状を有している。ケース本体12は、図1に示されているように、略矩形の底面12aと、一対の幅広面(図示なし)と、一対の幅狭面12cとを有している。一対の幅広面は、それぞれ底面12aのうち長辺から立ち上がっている。一対の幅狭面12cは、それぞれ底面12aのうち短辺から立ち上がっている。開口12hは、一対の幅広面の長辺と一対の幅狭面12cの短辺とで囲まれて形成されている。なお、この実施形態では、ケース本体12および後述の蓋14は、軽量化と所要の剛性を確保するとの観点で、それぞれアルミニウムまたはアルミニウムを主体とするアルミニウム合金で形成されている。
【0021】
またケース本体12は、電極体20と一緒に、図示しない電解液を収容していてもよい。電解液としては、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液を使用できる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。
【0022】
〈蓋14〉
蓋14は、ケース本体12の開口12hに取り付けられている。そして、蓋14の周縁部が、ケース本体12の開口12hの縁に接合される。かかる接合は、例えば、隙間がない連続した溶接によるとよい。かかる溶接は、例えば、レーザー溶接によって実現されうる。ケース本体12および蓋14は、電極体20の収容数、サイズ等に応じた大きさを有している。蓋14には、正極端子42と、負極端子43とが取り付けられている。正極端子42は、内部端子42aと、外部端子42bとを備えている。負極端子43は、内部端子43aと、外部端子43bとを備えている。内部端子42a,43aは、それぞれインシュレータ72を介して蓋14の内側に取り付けられている。外部端子42b,43bは、それぞれガスケット71を介して蓋14の外側に取り付けられている。内部端子42a,43aは、それぞれケース本体12の内部に延びている。正極の内部端子42aの先端は、正極集電箔21aの未形成部21a1に接続されている。負極の内部端子43aの先端は、負極集電箔22aの未形成部22a1に接続されている。
【0023】
詳細な図示は省略するが、この実施形態では、蓋14には、ガス排出弁が設けられている。ガス排出弁は、二次電池100の内圧が所定値以上になったときに破断して、二次電池100内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。
【0024】
また、この実施形態では、蓋14は、注液口15を有している(図2,3参照)。注液口15は、ケース本体12に蓋14を接合した後に電解液を注液するための貫通孔である。この実施形態では、電極端子側からみた注液口15の平面形状は、円形状である。注液口15は、封止部材50により封止されている。
【0025】
ところで、従来の二次電池では、蓋に設けられた注液口に樹脂ワッシャーを取り付けることがあった。樹脂ワッシャーを取り付けた状態で封止部材を注液口に装着すると、樹脂ワッシャーは、封止部材と蓋の外表面との間で圧縮される。かかる樹脂ワッシャーの圧縮によって、樹脂ワッシャーを封止部材および注液口に密着させることができるため、注液口を気密に封止することができる。本発明者らは、注液口の気密性をより高めたい、と考えている。
【0026】
以下、ここで開示されている二次電池100の注液口15の近傍の構造について説明する。図2は、注液口15への封止部材50の取り付けを説明する部分断面図である。図3は、注液口15が封止部材50で封止された状態を示す部分断面図である。図2には、注液口15に封止部材50が装着された状態で、封止部材50が変形する前の状態が示されている。図3には、封止部材50が変形した後で注液口15が封止された状態が示されている。図2,3に示されているように、注液口15には、樹脂ワッシャー60が取り付けられた上で封止部材50が取り付けられている。この実施形態では、蓋14の外表面14aには、注液口15の周囲に凹んだ段差16が設けられている。凹んだ段差16は、注液口15の周囲において封止部材50が取り付けられる領域に応じて形成されている。注液口15の周囲において封止部材50が取り付けられた際に、封止部材50の一部が凹んだ段差16に収まるように構成されている。このように凹んだ部位は、ザグリ16とも称する。
【0027】
〈封止部材50〉
封止部材50は、図2,3に示されているように、スリーブ51と、フランジ52と、を有している。
【0028】
スリーブ51は、封止部材50のうち注液口15に挿入される有底の中空軸状の部位である。かかる中空部には、例えば、軸部材であるマンドレル5が装着されている。この実施形態では、スリーブ51の底部51bは、閉じられた袋状に形成されている。マンドレル5の先端は、スリーブ51の底部51bによって覆われている。マンドレル5は、例えば、図2に記載された形態では、頭部5aと、くびれ部5bと、軸部5cとを有している。頭部5aは、マンドレル5の先端に設けられており、軸部5cよりも外径が太くなっている。くびれ部5bは、頭部5aの基端側で軸部5cの間に設けられており、軸部5cよりも外径が細くなっている。軸部5cは外径が一定の軸であり、スリーブ51から突出している。マンドレル5の頭部5aは、スリーブ51の内側面に引っ掛かるように、スリーブ51の内側面に食い込んでいる。
【0029】
フランジ52は、封止部材50のうちスリーブ51から蓋の外表面に沿って外径方向に向かって延びた部位である。この実施形態では、フランジ52は、スリーブ51の開口端から外径方向に延びており、樹脂ワッシャー60を挟んだ状態で蓋14の外表面14aに対向している。フランジ52の径方向の中間部には、蓋14の外表面14aに向けて突出した突起52xが設けられている。突起52xは、フランジ52の周方向に連続した環状の突起である。突起52xは、フランジ52と蓋14の外表面14aとの間に挟まれた樹脂ワッシャー60に食い込んでいる。また、フランジ52の外周縁には、樹脂ワッシャー60の外周縁に沿って蓋14の外表面14aに向かって延び、樹脂ワッシャー60の外縁を規制する壁部53が設けられている。
【0030】
この実施形態では、封止部材50は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。マンドレル5は、例えば鋼(SUS)製である。なお、ここでは、封止部材50の一形態が示されているが、封止部材50には、気密性が確保される構造であればよく、ブラインドリベットと称されるリベットのうち気密性が確保される種々の形態が採用されうる。
【0031】
〈樹脂ワッシャー60〉
樹脂ワッシャー60は、例えば、封止部材50のスリーブ51が挿通される平坦な円環状の樹脂性のワッシャーである。樹脂ワッシャー60は、注液口15の周囲に取り付けられる。樹脂ワッシャー60には、封止部材50のスリーブ51が挿通される。そして、封止部材50からマンドレル5が引き抜かれる際に、封止部材50のフランジ52と、注液口15の周囲の側面との間で、圧縮された状態で保持される。これにより、樹脂ワッシャー60は、注液口15の気密性を確保している。かかる観点で、樹脂ワッシャー60の構成材料としては、耐薬品性や耐候性に優れた材料が用いられるとよい。例えば、PFA(四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(Tetrafluoroethylene-Perfluoroalkylvinylether Copolymer))が好適例として挙げられる。また、この実施形態では、PFAの他、70℃以上の耐熱性、および耐電解液性を有する、PFAよりも安価な結晶性樹脂を使用することができる。かかる樹脂材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン;ポリアミド(PA);ポリフェニレンサルファイド(PPS);パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP);等が挙げられる。
【0032】
以下に、樹脂ワッシャー60および封止部材50を注液口15に取り付ける手順を説明する。図2に示されているように、まず、樹脂ワッシャー60を、樹脂ワッシャー60の貫通孔が注液口15に重なるように配置する。次いで、中空内部にマンドレル5が装着された封止部材50の、スリーブ51を樹脂ワッシャー60の貫通孔および注液口15に挿通する。このとき、樹脂ワッシャー60は、スリーブ51の壁面51aと、フランジ52の下面52aと、壁部53の内側面53aと、段差16の底面16aとに囲まれた空間に配置される。
【0033】
次いで、フランジ52を蓋14の外表面14aに向けて押え付けつつ、マンドレル5の軸部5cを引っ張る(図2中の矢印Pの方向)。このとき、頭部5aが太くスリーブ51の内側面に引っ掛かりつつ移動する。このとき、蓋14の内側で封止部材50のスリーブ51が拡径して拡径部位51xが形成されることによって、スリーブ51の先端が蓋14の内表面14bにかしめられる(図3参照)。さらに軸部5cを引っ張ると、マンドレル5がくびれ部5bで破断される。このため、軸部5cが引き抜かれる。図3において図示は省略しているが、取り付けられた後の封止部材50の中空内部には、マンドレル5の頭部5aが残っている。このとき、樹脂ワッシャー60は、フランジ52と蓋14の外表面14aに挟まれた状態で圧縮される。この実施形態では、フランジ52に設けられた突起52xが、樹脂ワッシャー60に食い込むため、当該部位により強い圧縮力が付与される。このようにして、封止部材50および樹脂ワッシャー60によって、注液口15が気密に封止される。
【0034】
二次電池100では、蓋14が、注液口15と、注液口15に取り付けられた平坦な円環状の樹脂ワッシャー60と封止部材50と、を有している。換言すれば、注液口15は、樹脂ワッシャー60と封止部材50とで、封止されている。封止部材50は、注液口15に挿入されるスリーブ51と、スリーブ51から、スリーブ51から蓋14の外表面14aに沿って外径方向に向かって延びたフランジ52と、を有している。また、樹脂ワッシャー60は、注液口15に装着されており、フランジ52と蓋14の外表面14aとの間に挟まれている。フランジ52と蓋14の外表面14aとの間に樹脂ワッシャー60を配置することによって、樹脂ワッシャー60をフランジ52と外表面14aとの間で圧縮し、注液口15の気密性を確保することができる。フランジ52の径方向の中間部には、蓋14の外表面14aに向けて突出した突起52xが設けられている。フランジ52と外表面14aとの間で樹脂ワッシャー60を圧縮したときに、突起52xは、樹脂ワッシャー60に食い込み、樹脂ワッシャー60に局所的により大きな圧縮力を付与し、注液口15の気密性を確保することができる。一方で、樹脂ワッシャー60に付与されたフランジ52による圧縮力が、該樹脂ワッシャー60の外径方向に逃げ、樹脂ワッシャー60が同方向に広がり、注液口15の気密性が低下しうる。しかし、二次電池100では、封止部材50に樹脂ワッシャー60の外縁を規制する規制部(壁部53)が設けられている。規制部によって、樹脂ワッシャー60が、該樹脂ワッシャーの外径方向に広がるのを抑制し、注液口15の気密性低下を抑制することができる。
【0035】
上記のとおり、封止部材50は、樹脂ワッシャー60の外周縁に沿って蓋14の外表面14aに向かって延びた壁部53を有している。該壁部53の内側面53aに規制部が設けられている。封止部材50に設けられた壁部53の内側面53aに規制部が設けられることによって、樹脂ワッシャー60の外縁が外径方向に広がるのを抑制することができる。封止部材50を使用することによって、注液口15の気密性低下を抑制することができる。
【0036】
以上、ここで開示される技術の一実施形態について説明した。なお、上述した第1実施形態は、ここで開示される技術が適用された二次電池の一例を示すものであり、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。例えば、上記第1実施形態では、蓋14の外表面14aに、注液口15の周囲に凹んだ段差16が形成されているが、必ずしも形成されなくてもよい。また、以下に、ここで開示される技術の他の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、特に言及している点以外は、上記第1実施形態に係る二次電池100と略同等の構成を採用することができる。
【0037】
《第2実施形態》
上記第1実施形態では、封止部材50に規制部を設けた。しかし、これに限定されない。図4は、注液口25が封止部材250で封止された状態を示す部分断面図である。図4には、封止部材250が変形した後で注液口25が封止された状態が示されている。第2実施形態に係る二次電池は、二次電池100の蓋14および封止部材50に替えて、蓋24および封止部材250を有している。図4に示されているように、注液口25には、樹脂ワッシャー60が取り付けられた上で封止部材250が取り付けられている。
【0038】
この実施形態では、蓋24の外表面24aには、注液口25の周囲に、外表面24aから凹んだ段差26が設けられている。図4に示されているように、凹んだ段差26は、注液口25の周囲において封止部材250が取り付けられる領域に応じて形成されている。この実施形態では、注液口25の周囲において封止部材250および樹脂ワッシャー60が取り付けられた際に、樹脂ワッシャー60の外縁(例えば図4中の符号60b)が凹んだ段差26の内壁面26bに沿うように構成されている。
【0039】
封止部材250は、図4に示されているように、スリーブ251と、フランジ252と、を有している。この実施形態では、封止部材250は、壁部を有していないこと以外は、上記第1実施形態の封止部材50と同様である。そのため、ここでは、封止部材50と重複する説明、および封止部材250を変形させて注液口25を封止する手順の説明を省略する。なお、図4中における符号251xは拡径部位を示しており、符号252xは突起を示している。
【0040】
この実施形態では、樹脂ワッシャー60は、スリーブ251の壁面251aと、フランジ252の下面252aと、凹んだ段差26の内壁面26bと、底面26aとに囲まれた空間に、樹脂ワッシャー60が配置されている。
【0041】
上記のとおり、この実施形態では、蓋24の外表面24aには、注液口25の周囲に凹んだ段差26が設けられている。そして、段差26の内壁面26bに、樹脂ワッシャー60の外縁を規制する規制部が設けられている。この実施形態では、フランジ252と凹んだ段差26の底面26aとの間で樹脂ワッシャー60が圧縮されたとき、圧縮力が樹脂ワッシャー60の外径方向に逃げても、凹んだ段差26の内壁面26bが樹脂ワッシャー60の外縁に当接して、同方向において樹脂ワッシャー60が広がるのを抑制することができる。このため、注液口25の気密性低下を抑制することができる。また、この実施形態では、段差26の内壁面26bが規制部であるため、封止部材に規制部を設けるのを省略することができ、二次電池の生産性を向上させることができる。
【0042】
《第3実施形態》
図5は、注液口35が封止部材250で封止された状態を示す部分断面図である。第3実施形態では、二次電池は、上記第2実施形態の蓋24に替えて、蓋34を有している。図5に示されているように、注液口35には、樹脂ワッシャー60が取り付けられた上で封止部材250が取り付けられている。この実施形態では、凹んだ段差36は、外表面34aから底面36aに向かってスロープ状に形成されている。この実施形態では、注液口35の周囲において封止部材250および樹脂ワッシャー60が取り付けられた際に、樹脂ワッシャー60の外縁(例えば図5中の符号60b)が、凹んだ段差36のスロープ状の内壁面36bに沿うように構成されている。
【0043】
図5に示されているように、段差36は深くなるにつれて注液口35の内径側に向けて張り出したテーパ面で形成されている。段差36の内径(凹みの内径)は、該段差36の上端面(例えば、蓋34の外表面34a)から底面36aに向かって小さくなっている。換言すれば、規制部(この実施形態では、段差36の内壁面36b)によるワッシャー60の外縁の規制を、段差36の上端面から底面36aに向かって強くすることができる。そのため、注液口35の気密性低下を抑制する効果をよりよく実現することができる。なお、少なくとも樹脂ワッシャー60が当接する部分が、テーパ面になっていればよい。
【0044】
《その他の実施形態》
また、上記第1実施形態では、図2,3に示されているように、凹んだ段差16の底面16aには、注液口15のみが形成されている。しかし、これに限定されない。底面16aの径方向の中間部に、フランジ52の下面52aに向かって突出する突起を形成してもよい。かかる突起は、例えば、底面16aの周方向に連続した環状の突起である。かかる突起の形成によって、注液口15の気密性低下を抑制する効果をよりよく実現することができる。
【符号の説明】
【0045】
100 二次電池
12 ケース本体
14,24,34 蓋
15,25,35 注液口
16,26,36 段差
20 電極体
21 正極シート
21a 正極集電箔
21b 正極活物質層
22 負極シート
22a 負極集電箔
22b 負極活物質層
23 セパレータシート
42 正極端子
43 負極端子
50,250 封止部材
60 樹脂ワッシャー
71 ガスケット
72 インシュレータ
図1
図2
図3
図4
図5