(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】電池パック及びその異常監視方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240612BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240612BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240612BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02H7/18
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H01M10/48 301
(21)【出願番号】P 2021528151
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2020022937
(87)【国際公開番号】W WO2020262002
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019119647
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須山 敦史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳平
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109741(JP,A)
【文献】特開2012-227986(JP,A)
【文献】特開2009-261092(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072002(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02H 7/18
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を充電可能な電池パックであって、
前記二次電池と直列に接続され、該二次電池を充電する充電電流を調整する充電スイッチ部と、
前記二次電池への充電電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された充電電流に基づき、前記充電スイッチ部を駆動する駆動回路と、
前記駆動回路による前記充電スイッチ部の動作制御を行う充電制御部と、
前記充電制御部の動作を監視する監視部と、
前記充電制御部及び前記監視部により、前記充電スイッチ部の動作可否を指示する判定部と、
を備えており、
前記充電制御部は、前記充電スイッチ部を、前記二次電池を充電する動作に制御する充電信号を生成するよう構成されており、
前記充電制御部は、前記監視部に対し、監視信号を出力し、
前記監視部は、前記監視信号を監視し、該監視信号の正常、異常の判定結果を判定信号として出力し、かつ前記判定信号を前記充電制御部に出力し、
前記充電制御部は、前記判定信号が異常の場合にリセットされ、前記判定信号が異常から正常に切り替わると、前記監視信号を安定して出力可能となった状態で、前記充電スイッチ部のショート故障有無の確認を含む故障診断を行い、異常が検出されない場合に前記充電信号を出力し、
前記判定部は、前記充電制御部からの前記充電信号及び前記監視部からの前記判定信号に基づいて、前記充電スイッチ部の動作制御により前記二次電池の充電の可否を指示し、
前記充電スイッチ部は、前記監視部からの異常の判定結果の前記判定信号に基づいて前記二次電池の充電を禁止する動作に制御されると共に、前記充電制御部からの前記充電信号に基づいて前記二次電池の充電を開始する動作に制御されるよう構成してなる電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記判定信号が、正常の場合はHIGH、異常の場合はLOWとなるリセット信号であり、
前記充電制御部は、前記リセット信号がLOWの場合に該充電制御部をリセットするよう構成してなる電池パック。
【請求項3】
請求項2に記載の電池パックであって、
前記監視部が、ウォッチドックタイマICであり、
前記監視信号が、ウォッチドッグパルスである電池パック。
【請求項4】
請求項3に記載の電池パックであって、
前記判定部が、前記充電制御部の前記充電信号がHIGHで、かつ前記監視部の前記リセット信号がHIGHの場合にのみ、前記充電スイッチ部の充電を許可するよう構成してなる電池パック。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電池パックであって、
前記判定部が、NAND回路である電池パック。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電池パックであって、さらに、
前記判定部の出力側と、前記充電スイッチ部との間に接続され、前記判定部が前記充電スイッチ部の充電を禁止する場合に、前記充電スイッチ部の動作制御により前記二次電池の充電動作を強制的に遮断する切替部を備える電池パック。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電池パックであって、さらに、
前記二次電池と直列に接続され、該二次電池を放電する放電電流を調整する放電スイッチ部を備えており、
前記駆動回路は、前記電流検出部により検出された放電電流に基づき、前記放電スイッチ部を駆動すると共に、
前記充電制御部は、前記放電スイッチ部を放電する放電信号を、該放電スイッチ部に出力するよう構成されており、
前記判定部は、前記充電制御部からの前記充電信号及び前記監視部からの前記判定信号に基づいて、前記放電スイッチ部の動作制御により前記二次電池の放電の可否を指示するよう構成してなる電池パック。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の電池パックであって、さらに、
前記二次電池の電圧を検出する電圧検出部と、
前記二次電池の温度を検出する温度検出部と、
を備え、
前記駆動回路は、前記電流検出部により検出された充電電流と、前記電圧検出部により検出された電圧と、前記温度検出部により検出された電池温度とを前記充電制御部に出力して、前記充電スイッチ部を駆動するよう構成してなる電池パック。
【請求項9】
二次電池と直列に接続される充電スイッチ部と、
前記二次電池への充電電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された充電電流に基づき、前記充電スイッチ部を駆動する駆動回路と、
前記駆動回路による前記充電スイッチ部の動作制御を行う充電制御部と、
前記充電制御部の動作を監視する監視部と、
前記充電制御部及び前記監視部により、前記充電スイッチ部の動作可否を指示する判定部と、
を備える電池パックの異常監視方法であって、
前記充電制御部が、前記監視部に対し、監視信号を出力する工程と、
前記監視部が、前記監視信号を監視し、該監視信号の正常、異常の判定結果を判定信号として出力し、かつ前記判定信号を前記充電制御部に出力する工程と、
前記充電制御部が、前記判定信号が異常の場合にリセットされ、前記判定信号が異常から正常に切り替わると、前記監視信号を安定して出力可能となった状態で、前記充電スイッチ部のショート故障有無の確認を含む故障診断を行い、異常が検出されない場合に充電信号を出力する工程と、
前記判定部が、前記充電制御部からの前記充電信号及び前記監視部からの前記判定信号に基づいて、前記充電スイッチ部の動作制御により前記二次電池の充電の可否を指示する工程と、
前記充電スイッチ部が、前記監視部からの異常の判定結果の前記判定信号に基づいて前記二次電池の充電を禁止する動作に制御されると共に、前記充電制御部からの前記充電信号に基づいて前記二次電池の充電を開始する動作に制御される工程と、
を含む電池パックの異常監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パック及びその異常監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器やアシスト自転車、電動工具、電動クリーナ、電動スクータ等の、電池で駆動される機器の電源として二次電池が利用されている。このような二次電池は、充電器などの電池パックで充電される。電池パックには、バッテリマネージメントシステムとよばれるマイコンを備えた充放電制御装置が広く用いられており、二次電池の電圧や温度、電流等の各種情報に基づいて、このバッテリマネージメントシステムが保護動作を含めた各種制御を行うよう構成されている。さらに、電池パックは、充電回路を備えており、商用電源をより適切な値に変換された電圧、電流が入力され、二次電池を充電する(例えば特許文献1,2)。
【0003】
バッテリマネージメントシステムは、マイコンや充電用FET等で構成されている。しかしながら、マイコンが万一暴走すると、正しく充電ができなくなることにより、安全性が低下することがある。そこで、マイコンが暴走しても、正しく充電を行えるように、例えばマイコンを二重化して相互チェックを行う、一方が異常時に他方で充電を行うなどの方法が考えられるが、この方法では構成が複雑化してコストが高くなってしまうという問題があった。
【0004】
さらに、特許文献1では、充電器に接続される電池パックのなかにマイコンの暴走を監視するウォッチドッグタイマICを設けて、マイコンから一定周期で出力されるウォッチドッグパルスに基づき、マイコンの動作状態を監視する方法が提案されている。そして、マイコンの動作が異常と判断したときは、マイコンへリセット信号を出力すると共に、充電許可・停止回路へも出力することで、マイコンから充電許可・停止回路に出力されている信号の内容にかかわらず充電を強制停止させる。
【0005】
ここで、ウォッチドッグタイマICが発生する一般的なリセット信号は、マイコンの暴走を検出後、ある一定時間ローレベルを出力してマイコンのリセットを行い、その後、ハイレベルに信号に切り替えを行う。このため、この信号を用いてマイコンのリセットと充電許可・停止回路により充電の強制停止を共用する場合、マイコンのリセットが完了して、正常動作する前に、充電の強制停止が解除され、電池パックが異常状態にも関わらず、充電が再開されることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許5284672号公報
【文献】特開平7-141066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の一は、バッテリマネージメントシステムのマイコンが万一暴走しても、異常な充電が行われないようにして信頼性を高めた電池パック及びその異常監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る電池パックは、二次電池と直列に接続され、該二次電池を充電する充電電流を調整する充電スイッチ部と、二次電池への充電電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された充電電流に基づき、前記充電スイッチ部を駆動する駆動回路と、前記駆動回路による前記充電スイッチ部の動作制御を行う充電制御部と、前記充電制御部の動作を監視する監視部と、前記充電制御部及び前記監視部により、前記充電スイッチ部の動作可否を指示する判定部とを備えており、前記充電制御部は、前記充電スイッチ部を、前記二次電池を充電する動作に制御する充電信号を生成するよう構成されており、前記充電制御部は、前記監視部に対し、監視信号を出力し、前記監視部は、前記監視信号を監視し、該監視信号の正常、異常の判定結果を判定信号として出力し、かつ前記判定信号を前記充電制御部に出力し、前記充電制御部は、前記判定信号が異常の場合にリセットされ、前記判定信号が異常から正常に切り替わると、前記監視信号を安定して出力可能となった状態で、前記充電スイッチ部のショート故障有無の確認を含む故障診断を行い、異常が検出されない場合に前記充電信号を出力し、前記判定部は、前記充電制御部からの前記充電信号及び前記監視部からの前記判定信号に基づいて、前記充電スイッチ部の動作制御により前記二次電池の充電の可否を指示し、前記充電スイッチ部は、前記監視部からの異常の判定結果の前記判定信号に基づいて前記二次電池の充電を禁止する動作に制御されると共に、前記充電制御部からの前記充電信号に基づいて前記二次電池の充電を開始する動作に制御されるよう構成される。
【0009】
また、本発明の他の形態に係る二次電池の充電方法は、二次電池と直列に接続される充電スイッチ部と、前記二次電池への充電電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された充電電流に基づき、前記充電スイッチ部を駆動する駆動回路と、前記駆動回路による前記充電スイッチ部の動作制御を行う充電制御部と、前記充電制御部の動作を監視する監視部と、前記充電制御部及び前記監視部により、前記充電スイッチ部の動作可否を指示する判定部とを備える電池パックで、二次電池を充電する充電方法であって、前記充電制御部が、前記監視部に対し、監視信号を出力する工程と、前記監視部が、前記監視信号を監視し、該監視信号の正常、異常の判定結果を判定信号として出力し、かつ前記判定信号を前記充電制御部に出力する工程と、前記充電制御部が、前記判定信号が異常の場合にリセットされ、前記判定信号が異常から正常に切り替わると、前記監視信号を安定して出力可能となった状態で、前記充電スイッチ部のショート故障有無の確認を含む故障診断を行い、異常が検出されない場合に前記充電信号を出力する工程と、前記判定部が、前記充電制御部からの前記充電信号及び前記監視部からの前記判定信号に基づいて、前記充電スイッチ部の動作制御により前記二次電池の充電の可否を指示する工程と、前記充電スイッチ部が、前記監視部からの異常の判定結果の前記判定信号に基づいて前記二次電池の充電を禁止する動作に制御されると共に、前記充電制御部からの前記充電信号に基づいて前記二次電池の充電を開始する動作に制御される工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態に係る電池パック及びその異常監視方法によれば、充電制御部による充電信号のみでなく、充電制御部を監視する監視部からの判定信号に基づいて、充電の可否を判定するようにしたことで、万一、充電制御部に異常が発生した場合に、充電制御部が充電信号を出力し続ける状態となっても監視部からの判定信号で確実に充電スイッチ部を遮断することが可能となる。また、充電制御部が再起動した際に、各種異常状態が発生していないことを確認した上で、充電信号を出力することになるので、電池パックを充電する際の信頼性や安全性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る電池パックを示すブロック図である。
【
図2】充電スイッチ部のON/OFF動作を示す表である。
【
図3】充電制御部が正常時のウォッチドッグパルスの例を示すグラフである。
【
図4】
図4A~
図4Bは充電制御部が異常時のウォッチドッグパルスの例を示すグラフである。
【
図5】
図5Aは監視部からのリセット信号、
図5Bは充電制御部内部のリセット信号、
図5Cは充電制御部内部のクロック動作、
図5Dは充電制御部からの充電信号、
図5Fは充電スイッチ部の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のある態様の電池パックは、上述の構成に加えて、以下のように構成してもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る電池パックによれば、前記監視部が、前記判定信号を前記充電制御部にも出力しており、前記充電制御部は、前記判定信号が異常の場合は、該充電制御部をリセットするよう構成できる。上記構成により、充電制御部の異常が監視部で検出されると、充電制御部をリセットさせて異常状態の解消を図ることが可能となる。
【0014】
また、本発明の他の実施形態に係る電池パックは、前記充電制御部が、前記判定信号によりリセットされた後、前記監視信号を安定して出力可能となった状態で、故障診断を行い、異常が検出されない場合に前記充電信号を出力するよう構成できる。例えば、故障診断は、充電用FETのショート故障の確認、マイコン内部のプログラムを保存しているROMの異常確認があげられる。上記構成により、充電制御部のリセット後の安定状態で故障診断を行い、電池パックの各種異常が発生していないことを確認した上で充電信号を出力させることになるので、より信頼性の高い故障診断が期待される。
【0015】
さらに、本発明の他の実施形態に係る電池パックは、前記判定信号が、正常の場合はHIGH、異常の場合はLOWとなるリセット信号であり、前記充電制御部は、前記リセット信号がLOWの場合に該充電制御部をリセットするよう構成できる。上記構成により、監視部の判定信号を充電制御部のリセット信号に共用でき、充電制御部の異常時の復旧に役立てることが可能となる。
【0016】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電池パックは、前記監視部が、ウォッチドックタイマICであり、前記監視信号が、ウォッチドッグパルスである。上記構成により、ウォッチドックタイマを用いて充電制御部の異常判定が行える。
【0017】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電池パックは、前記判定部が、前記充電制御部の前記充電信号がHIGHで、かつ前記監視部のリセット信号がHIGHの場合にのみ、前記充電スイッチ部の充電を許可するよう構成できる。上記構成により、充電制御部による充電信号のみでなく、別部材の監視部からの判定信号でも判定を行うことで、受電制御部の異常時にも対応でき、一層の安全性、信頼性の向上が図られる。
【0018】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電池パックは、前記判定部が、NAND回路である。
【0019】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電池パックは、さらに、前記判定部の出力側と、前記充電スイッチ部との間に接続され、前記判定部が前記充電スイッチ部の充電を禁止する場合に、前記充電スイッチ部の動作制御により前記二次電池の充電動作を強制的に遮断する切替部を備える。
【0020】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電池パックは、さらに二次電池と直列に接続され、該二次電池を放電する放電電流を調整する放電スイッチ部を備えており、前記駆動回路は、前記電流検出部により検出された放電電流に基づき、前記放電スイッチ部を駆動すると共に、前記充電制御部は、前記放電スイッチ部を放電する放電信号を、該放電スイッチ部に出力するよう構成されており、前記判定部は、前記充電制御部からの前記充電信号及び前記監視部からの前記判定信号に基づいて、前記放電スイッチ部の動作制御により前記二次電池の放電の可否を指示するよう構成できる。上記構成により、電池パックは二次電池の充電時のみならず放電時においても、充電制御部を監視して異常時には放電電流が異常となる事態を回避させ、放電時の安全性も高めることができる。
【0021】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る充電方法は、前記監視部が前記判定信号を出力する工程が、該判定信号を前記充電制御部に出力する工程を含み、二次電池の充電方法はさらに、前記充電制御部が、前記判定信号が異常の場合に、該充電制御部をリセットする工程を含む。これにより、充電制御部の異常が監視部で検出されると、充電制御部をリセットさせて異常状態の解消を図ることが可能となる。
【0022】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る充電方法は、さらに、前記充電制御部をリセットする工程に続き、前記充電制御部が、前記監視信号を安定して出力可能となった状態で、故障診断を行い、異常が検出されない場合に前記充電信号を出力する工程を含む。これにより、電池パックの各種異常が発生していないことを確認した上で充電信号を出力させることになるので、より信頼性の高い故障診断が期待される。
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電池パックを例示するものであって、本発明は電池パックを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0024】
本発明の電池パックは、主として動力用の電源として使用される。この電池パックは、例えば、電動クリーナー、電動工具、電動アシスト自転車、電動バイク、電動車椅子、電動三輪車、電動カート等のモータで駆動される電動機器の電源として使用される。ただし、本発明は電池パックの用途を特定するものではなく、電動機器以外の電気機器、例えば無線機、照明装置等の屋内外で使用される種々の電気機器用の電源、移動手段の動力及び補助電源として使用することもできる。
[実施形態1]
【0025】
本発明の実施形態1に係る電池パック100を、
図1に示す。この図に示す電池パック100は、二次電池1と、この二次電池1と直列に接続される充電スイッチ部2、放電スイッチ部3、電流検出部4、外部端子5と、温度検出部6と、電圧検出部7と、駆動回路10と、充電制御部20と、監視部30と、判定部40と、切替部50を備えている。
【0026】
二次電池1は、充電可能な電池、例えばリチウムイオン二次電池が好適に利用できる。ただ、リチウムイオン二次電池以外の二次電池、例えばニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等も利用できる。二次電池1は、複数の電池と直列や並列に組み合わせることで、高容量化、高出力化を図ることができる。また電池の外形を円筒状とする円筒形電池の他、外形を矩形状とした角形電池や扁平形電池を使用することもできる。なお二次電池1は、電池パック100に必ずしも含める必要はない。例えば二次電池1を電池パック100に着脱式としたり交換式としてもよい。
【0027】
外部端子5は、二次電池1を充電する電力を外部から受けるための接続端子である。この外部端子5は、例えば充電器等と接続される。この場合は、外部端子5と接続された充電器を介し商用電源から適切な値に変換された電圧、電流が入力され、充電スイッチ部2を介して二次電池1を充電する。また電池パック100を、二次電池1で駆動される被駆動機器に内蔵させる場合は、被駆動機器内部の電力供給端子と接続される。この場合は、電圧値や電流値の変換を適宜省略してもよい。なお二次電池1で駆動される被駆動機器としては、モバイル機器やアシスト自転車、電動工具、電動クリーナ、電動スクータ等の、電池で駆動される機器が挙げられる。
【0028】
充電スイッチ部2は、二次電池1と直列に接続され、この二次電池1を充電する充電電流を調整する。充電スイッチ部2は、例えば充電用FETが利用できる。
【0029】
同様に放電スイッチ部3も、二次電池1と直列に接続され、この二次電池1を放電する放電電流を調整する。放電スイッチ部3は、例えば放電用FETが利用できる。
【0030】
電流検出部4は、二次電池1と直列に接続され、二次電池1に対する充放電電流を検出する。この電流検出部4には、電流検出抵抗が好適に利用できる。
【0031】
電圧検出部7は、二次電池1の電圧を検出する。二次電池1が、多数の二次電池を直列に接続した形態の場合は、電圧検出部7は、各二次電池の電圧を検出するよう構成してもよい。
【0032】
温度検出部6は、二次電池1の温度を検出する。この温度検出部6は、サーミスタなどが利用できる。また多数の二次電池を接続した形態の場合は、温度検出部6で、各二次電池の温度を検出するよう構成してもよい。
(駆動回路10)
【0033】
電流検出部4、温度検出部6、電圧検出部7の出力は駆動回路10に接続される。駆動回路10は、電流検出部4により検出された充放電電流、温度検出部6により検出された温度、電圧検出部7により検出された直列接続された二次電池の各電池電圧を取得する。この駆動回路10は、充電スイッチ部2の動作を制御する充電制御回路12、放電スイッチ部3の動作を制御する放電制御回路13、電流検出部4の出力及び電圧検出部7の電圧、温度検出部6の温度をA/D変換するAD変換部14、充電制御部20や監視部30の電源を供給する低電圧用の電源回路15などを備えている。更には、上記検出した充放電電流、温度、各電池電圧を通信等によって、充電制御部20に送信した後、充電制御部20の指示に従って、充電スイッチ部2と放電スイッチ部3のON/OFF制御を行う。
(充電制御部20)
【0034】
充電制御部20は、駆動回路10による充電スイッチ部2の動作制御を行う。また充電制御部20は、充電スイッチ部2を
、二次電池を充電する
動作に制御する充電信号を出力する。充電信号はHIGH又はLOWであり、
図2の表に示すように、判定信号との組み合わせで、充電スイッチ部2の充電可否を決定する。この充電制御部20は、プログラミングが可能なマイコン等が好適に利用できる。
【0035】
さらに充電制御部20は、監視部30に対し、監視信号を出力する。監視信号は、例えばウォッチドッグパルスである。ウォッチドッグパルスは、充電制御部20のマイコンが正常時は、
図3に示すような所定の周期Tで出力される。一方、マイコンが異常時には、例えば
図4Aに示すように周期が長くなったり(T+α)、
図4Bに示すように短くなったり(T-β)する。
(監視部30)
【0036】
監視部30は、監視信号を監視しており、この監視信号の正常、異常を判定し、判定結果を判定信号として出力する。監視部30は例えばウォッチドッグパルスを監視するウォッチドックタイマICであり、
図3で示したような正常なウォッチドッグパルスか、あるいは
図4A、
図4Bに示したような異常なウォッチドッグパルスかを判定する。このように、ウォッチドックタイマICを利用して充電制御部20の異常判定が行える。
(判定部40)
【0037】
判定部40は、充電制御部20及び監視部30の出力に基づいて、充電スイッチ部2の動作可否を指示する。この判定部40は、NAND回路が好適に利用できる。
図1のNAND回路で構成された判定回路は、充電制御部20の充電信号と、監視部30の判定信号を入力している。この判定回路は、何れかの入力がLOWのとき、HIGHを出力して、充電スイッチ部2を強制的にOFFする。
(リセット信号)
【0038】
監視部30は、判定信号を充電制御部20にも出力してよい。この場合、判定信号を、充電制御部20をリセットするリセット信号とできる。充電制御部20は、判定信号が異常の場合は、この充電制御部20をリセットする。これにより、充電制御部20の異常が監視部30で検出されると、充電制御部20をリセットさせて異常状態の解消を図ることが可能となる。また監視部30の判定信号を充電制御部20のリセット信号に共用でき、充電制御部20の異常時の復旧に役立てることが可能となる。
【0039】
判定信号をリセット信号とする場合、正常の場合はHIGH、異常の場合はLOWとなるように設定してもよい。この場合、充電制御部20は、リセット信号がLOWの場合にこの充電制御部20をリセットする。
【0040】
さらに
図2に示したように、判定部40は、充電制御部20の充電信号がHIGHで、かつ監視部30のリセット信号がHIGHの場合にのみ、充電スイッチ部2の充電を許可するよう構成できる。これにより、充電制御部20による充電信号のみでなく、別部材の監視部30からの判定信号でも判定を行うことで、充電制御部の異常時にも対応でき、一層の安全性、信頼性の向上が図られる。
【0041】
また充電制御部20は、判定信号によりリセットされた後、監視信号を安定して出力可能となった状態で、故障診断を行い、異常が検出されない場合に充電信号を出力する。このように、電池パックの各種異常が発生していないことを確認した上で充電信号を出力させることになるので、より信頼性の高い故障診断が期待される。なお、ここで充電制御部20が行う故障診断は、充電スイッチ部2のショート故障有無の確認や、マイコン内部のプログラムを保存するROMの異常チェック等が挙げられる。
(切替部50)
【0042】
切替部50は、判定部40の出力側と、充電スイッチ部2との間に接続される。この切替部50は、判定部40が充電スイッチ部2の充電を禁止する場合に、充電スイッチ部2の充電動作を強制的に遮断する。
【0043】
図1の切替部50は、二次電池1の電圧であるVbatと、駆動回路10の出力を入力しており、判定部40からの判定出力に基づいてこれらを切り替える。
図1の例では切替部50は、判定部40の判定出力がLOWのときは、駆動回路10の出力をそのまま出力する。一方、判定部40の判定出力がHIGHのときは、Vbat電圧を出力する。このVbat電圧は、充電用FETの強制OFF信号となり、これによって充電スイッチ部2は強制的にOFFされる。このように充電用FETによる充電動作をハードウェア的にOFFすると共に、後述する通り電池パック100が通常動作を再開するまで安全に充電経路を遮断することができる。
(暴走監視機能)
【0044】
図1の電池パック100では、充電制御部20の異常を検出して、充電の安全性を図ることができる。従来の電池パックにおいては、充電制御部20を構成するマイコンのプログラムが万一暴走すると、充電電圧が高くなっても充電を停止することができないおそれがある。これを防止するためには、別のマイコンを設けて二重化を図ることが考えられるが、この方法では構成が複雑化してコストが高くなってしまう。そこで本実施形態においては、より安価で簡単な監視部30を付加することで、充電制御部20の異常発生時に確実に充電を停止できるようにしている。更には、従来の別の電池パックでは、マイコンのリセットが発生後、マイコンが正常に起動し、適切な制御や保護動作を開始する前に、このウォッチドッグタイマICのリセット信号がローレベルからハイレベル信号に切り替わることによって、充電許可・停止回路の強制停止が解除され、異常状態にも関わらず、充電が再開される恐れがあったが、判定信号と充電信号のNAND回路出力(判定部)を用いることで、充電制御部の動作が安定し、各種異常が発生しないことを確認してから、電池パックの動作を開始できるようにしている。
【0045】
具体的な手順の一例を、
図5A~
図5Eのタイミングチャートに基づいて説明する。充電制御部20のマイコンは、
図5Cに示すように、内部で生成された所定のクロックに従い、動作される。ここで充電制御部20は、監視部30に対し、監視信号を出力する。監視信号は、上述の通りウォッチドッグパルスとできる。ウォッチドッグパルスは、充電制御部20のマイコンが正常時は、
図3に示すような所定の周期Tで出力される。一方、マイコンが異常時には、例えば
図4Aに示すように周期が長くなったり(T+α)、
図4Bに示すように短くなったり(T-β)する。監視部30は、この監視信号であるウォッチドッグパルスを監視するウォッチドックタイマIC(WDTIC)である。WDTICは、この監視信号の正常、異常を判定して、判定結果を判定信号として出力する。すなわち
図3で示したような正常なウォッチドッグパルスか、あるいは
図4A、
図4Bに示したような異常なウォッチドッグパルスかを判定する。そして判定部40が、充電制御部20からの充電信号及び監視部30からの判定信号に基づいて、充電スイッチ部2
の動作制御により二次電池の充電の可否を指示する。
【0046】
今、
図5Aに示すように、監視部30(WDTIC)がマイコンすなわち充電制御部20のプログラムの暴走を検出し、リセット信号を出力したとする。すなわち、判定信号であるリセット信号が、正常時のHIGHからLOWに変化したとする。これを受けて、充電制御部20はリセット信号に従い、マイコンのリセットすなわち再起動を行う。ここでは
図5Bに示すように、若干の遅延を経て、リセット信号が正常時のHIGHからLOWに変化する。これに従い、
図5Cに示すよう正常時に周期的に発生されていたマイコンのクロック信号が消失する。同様に、マイコンが発する充電信号は、正常時のHIGHすなわち充電許可から、LOWすなわち充電禁止に切り替わる。一方、充電スイッチ部2である充電用FETは、
図5Aのリセット信号のHIGHからLOWへの変化を受けて、
図2において2行目で示すように充電禁止、すなわちOFFされている。このように、従来であればマイコンの充電信号のOFF(
図5D)を受けて充電が禁止されるところ、充電信号のOFFを待つことなく、監視部30の判定結果を受けて直ちに充電を停止されており、より反応速度を速くして安全性が高められる。
【0047】
次に、所定期間経過後にリセットが解除され、
図5Aに示すようにリセット信号が異常時のLOWから正常時のHIGHに復帰する。一方、リセットされたマイコンは所定時間経過後再起動して、
図5Bに示すように再びマイコン内部のリセット信号が異常時のLOWから正常時のHIGHに変化し、同様に
図5Cに示すようにマイコン内部のクロック動作も再開される。一方で、マイコンからの充電信号を再開する前に、発振精度の安定期間を経て故障診断を行う。上述の通り、充電用FETのショート故障判定やマイコン内部のROMチェック等を行い、故障がなければ、
図5Dに示すように充電信号を異常時のLOWから正常時のHIGHに変化させる。これを受けて、NAND回路である判定部40は、
図2の1行目に示す充電許可信号(
図5D)と判定信号(
図5A)が共にHIGHとなったことで、判定出力を異常時のHIGHから正常時のLOWに切り替え、
図5Eに示すように充電用FETがONされ、充電が開始される。このようにして、マイコンのリセット後の動作が安定し、故障なしと判定されたことを受けて、二次電池1の充電が再開される。また従来の、監視部30や判定部40を有さない構成では、マイコンの再起動時に直ぐ充電が再開されるため、故障が発生している場合の安全性が担保されなかったところ、本実施形態に係る二次電池1の電池パック100では上述の通り、マイコンの動作が安定し、かつ故障診断を得た後に充電用FETをONさせることで、一層の安全性が担保される。
【0048】
このように、充電制御部20による充電信号のみでなく、充電制御部20を監視する監視部30からの判定信号に基づいて、充電の可否を判定するようにしたことで、万一、充電制御部20に異常が発生した場合であっても、充電制御部20が充電信号を出力し続ける状態となっても監視部30からの判定信号で確実に充電スイッチ部2を遮断することが可能となり、二次電池1の充電の信頼性や安全性が向上される。またマイコン内のプログラム暴走が発生した際、電源装置の動作再開まで確実に充電経路を遮断できる。
【0049】
特に、ウォッチドッグタイマICによるリセットの解除後にマイコンが安定動作するまでの期間も安全性が担保される。また稼動再開までに電池パック100内の故障発生有無を診断することで、さらに安全性が高められる。逆に従来の電池パックでは、リセット解除と同時に充電経路の遮断が解除されるため、万一故障があると充電によって問題が発生する事態が考えられた。これに対して、マイコンがリセットされた後の安全性も考慮したことで、電池パックや電池パックをより安全に使用できる。
【0050】
なお以上の例では、二次電池1の充放電時に充電スイッチ部2の動作を制御する方法について説明した。ただ本発明は、充電時に監視する構成に限らず、二次電池の充電時及び放電時を監視するようにしてもよい。特に充電時は、放電時に比べて二次電池1の異常が発生した場合に安全対策が求められるため、本発明の二次電池の異常監視機能が好適に発揮される。なお、二次電池の充電時及び放電時を監視する電池パックにおいては、充電制御部に代えて充放電制御部を用いてもよい。もちろん、充電制御部は、その名称に拘わらず、放電電流の制御を行う機能を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る電池パック及びその異常監視方法は、電動工具、電動アシスト自転車、電動バイク、電動三輪車、電動車椅子、電動カート、電動クリーナー、電動ブロワーなどを駆動する電池パック、例えばこれらの機器に組み込まれたバッテリマネージメントシステムや、別部材として用意された充電器等に好適に適用できる。また、モータで駆動される電動機器以外の電気機器、例えば無線機、照明装置等の屋内外で使用される種々の電気機器用の電源、移動手段の動力及び補助電源として適用することもできる。
【符号の説明】
【0052】
100…電池パック
1…二次電池
2…充電スイッチ部
3…放電スイッチ部
4…電流検出部
5…外部端子
6…温度検出部
7…電圧検出部
10…駆動回路
12…充電制御回路
13…放電制御回路
14…AD変換部
15…電源回路
20…充電制御部
30…監視部
40…判定部
50…切替部