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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】インク及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240612BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240612BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021530675
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2020026217
(87)【国際公開番号】W WO2021006211
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2019126609
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020101970
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】崔 波
(72)【発明者】
【氏名】戸田 正悟
(72)【発明者】
【氏名】武田 径明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博俊
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-280830(JP,A)
【文献】特開2017-186505(JP,A)
【文献】特開2012-201692(JP,A)
【文献】特開2012-201691(JP,A)
【文献】特開2012-184365(JP,A)
【文献】特開2019-108559(JP,A)
【文献】特開2019-077848(JP,A)
【文献】特開2019-104136(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156460(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/079761(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152580(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/181528(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/30
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性着色剤、分散剤、ポリマー樹脂、及び水を含有し、
前記ポリマー樹脂が、メタクリル酸、メタクリル酸C1-C4アルキル、アクリル酸C6-C10アルキル、及びメタクリル酸C2-C4不飽和アルキルから1種類ずつ選択される4種類のモノマーと、分子内にラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤とからなるポリマー樹脂であり、
前記4種類のモノマーの総含有量100質量部中のメタクリル酸C1-C4アルキルの含有量が21~39質量部であるインク。
【請求項2】
前記反応性乳化剤が、分子内にアニオン性の基を有するアニオン型の反応性乳化剤である請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記アニオン性の基が硫酸エステル基の塩である請求項2に記載のインク。
【請求項4】
さらに、水溶性有機溶剤を含有する請求項1~3のいずれか1項に記載のインク。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のインクの液滴を、記録信号に応じてインクジェットプリンタにより吐出させて記録メディアに付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記記録メディアが、インク受容層を有する記録メディアである請求項5に記載のインクジエット記録方法。
【請求項7】
前記記録メディアが、インク受容層を有しない記録メディアである請求項5に記載のインクジエット記録方法。
【請求項8】
前記インクジェットプリンタが、ラインヘッド型のインクジェットプリンタである請求項5~7のいずれか1項に記載のインクジエット記録方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載のインクが付着した記録メディア。
【請求項10】
前記記録メディアが、インク受容層を有する記録メディア、及びインク受容層を有しない記録メディアから選択される記録メディアである請求項9に記載の記録メディア。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載のインクが充填された容器を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記インクジェットプリンタが、ラインヘッド型のインクジェットプリンタである請求項11に記載のインクジエットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、そのインクを用いるインクジェット記録方法、そのインクが付着した記録メディア、及びそのインクが充填された容器を備えるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタを用いるインクジェット印刷方法は、代表的なカラー印刷方法の1つとして知られている。このインクジェット方法では、インクの小滴を発生させ、これを紙等の記録メディアに付着させて印刷を行う。
【0003】
近年、インクジェット印刷方法は、産業用途としての応用が進んでいる。インクジェットインクが含有する着色剤は、水溶性の着色剤と水不溶性の着色剤とに大別される。顔料に代表される水不溶性の着色剤は、水溶性の着色剤と比較して、一般に各種の堅牢性に優れる。このため、産業用のインクジェットインクは、水不溶性の着色剤を含有することが多い。その反面、水不溶性の着色剤は、水溶性の着色剤と比較して、一般に発色性に劣る。このような背景から、水不溶性の着色剤を含有し、且つ、発色性に優れる産業用インクが強く要望されている。
【0004】
産業用途に用いられる記録メディアは、各種の紙、繊維、フィルムなど多様化しており、インク非吸収性又はインク難吸収性の記録メディアも多い。そのようなインク非吸収性又はインク難吸収性の記録メディアに印刷する際に用いられるインクとしては、非水系の溶剤インク、硬化性インク等が知られている。しかし、自然環境、生体等に対する安全性の観点から、これらのインクに代わる水性インクが強く要望されている。そのような水性インクは、水不溶性の着色剤、及び分散剤を含有し、さらに、耐擦過性、耐溶剤性等を向上させる目的で、一般にポリマー、ワックス等も含有する。そのような水性インクは、固形分の含有量が多いため極めて乾燥しやすく、また、乾燥により固形物が生じやすい。インク非吸収性又はインク難吸収性の記録メディアに印刷する際には、この固形物により被膜を形成することにより、記録メディアへの定着性及び耐擦過性を向上させる。このため、固形物により形成される被膜は、強固であるほど望ましいとされる。
【0005】
一方、インクの乾燥は、長期の保管、高温又は低湿度環境での保管等においても生じる。インクジェットプリンタに充填されたインクが乾燥すると、インクジェットヘッドのノズル又はインク流路内で固形物を生じ、これが目詰まりの原因となる。このようにインクジェットヘッド内で目詰まりが生じると、インクの吐出を安定して行えず、記録画像の画質が低下するという問題を招く。さらに、インクジェットヘッド自体が使用できなくなることもあり、大きな問題となっている。このため、インクジェットヘッド内等で固形物が生じても、それを容易に洗浄できる性能も強く求められている。しかし、上記の被膜の形成による定着性及び耐擦過性の向上と、容易に洗浄できる性能とは相反することから、それらの両方の効果を満足するインクは未だ提案されていない。これらの理由から、産業用インクジェットヘッドのノズル部にキャップ部材を装備することにより、インクの乾燥を防止する方法等が提案されている。しかし、それでもなお、インクの乾燥を完全に防止することは極めて難しい。
【0006】
特許文献1~6には、樹脂エマルジョン又は樹脂粒子分散体、及びそれを含有するインク組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/147192号
【文献】特開2000-34432号公報
【文献】特開2000-336292号公報
【文献】特開2009-191133号公報
【文献】特開2013-213210号公報
【文献】特開2017-141388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、発色性が良好であり、耐擦過性及び洗浄性にも優れるインク、そのインクを用いるインクジェット記録方法、そのインクが付着した記録メディア、及びそのインクが充填された容器を備えるインクジェットプリンタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
1)
水不溶性着色剤、分散剤、ポリマー樹脂、及び水を含有し、
前記ポリマー樹脂が、メタクリル酸、メタクリル酸C1-C4アルキル、アクリル酸C6-C10アルキル、及びメタクリル酸C2-C4不飽和アルキルから1種類ずつ選択される4種類のモノマーと、分子内にラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤とからなるポリマー樹脂であるインク。
2)
前記反応性乳化剤が、分子内にアニオン性の基を有するアニオン型の反応性乳化剤である1)に記載のインク。
3)
前記アニオン性の基が硫酸エステル基の塩である2)に記載のインク。
4)
さらに、水溶性有機溶剤を含有する1)~3)のいずれか1項に記載のインク。
5)
1)~4)のいずれか1項に記載のインクの液滴を、記録信号に応じてインクジェットプリンタにより吐出させて記録メディアに付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
6)
前記記録メディアが、インク受容層を有する記録メディアである5)に記載のインクジェット記録方法。
7)
前記記録メディアが、インク受容層を有しない記録メディアである5)に記載のインクジェット記録方法。
8)
前記インクジェットプリンタが、ラインヘッド型のインクジェットプリンタである5)~7)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
9)
1)~4)のいずれか1項に記載のインクが付着した記録メディア。
10)
前記記録メディアが、インク受容層を有する記録メディア、及びインク受容層を有しない記録メディアから選択される記録メディアである9)に記載の記録メディア。
11)
1)~4)のいずれか1項に記載のインクが充填された容器を備えるインクジェットプリンタ。
12)
前記インクジェットプリンタが、ラインヘッド型のインクジェットプリンタである11)に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発色性が良好であり、耐擦過性及び洗浄性にも優れるインク、そのインクを用いるインクジェット記録方法、そのインクが付着した記録メディア、及びそのインクが充填された容器を備えるインクジェットプリンタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<インク>
本実施形態に係るインクは、水不溶性着色剤、分散剤、ポリマー樹脂、及び水を含有し、ポリマー樹脂が、メタクリル酸、メタクリル酸C1-C4アルキル、アクリル酸C6-C10アルキル、及びメタクリル酸C2-C4不飽和アルキルから1種類ずつ選択される4種類のモノマーと、分子内にラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤とからなるものである。以下、本実施形態に係るインクに含有される成分について詳細に説明する。なお、以下に説明する各成分は、そのうちの1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0012】
[水不溶性着色剤]
水不溶性着色剤とは、25℃の水に対する溶解度が通常3g/L以下、好ましくは2g/L以下、より好ましくは1g/L以下である着色剤を意味する。
【0013】
水不溶性着色剤としては、例えば、顔料、分散染料、及び溶剤染料を挙げることができる。代表的なこれらの着色剤としては、それぞれC.I.Pigment、C.I.Disperse、及びC.I.Solventから選択される着色剤が挙げられる。
【0014】
顔料としては、無機顔料、有機顔料、体質顔料等が挙げられる。
【0015】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属フェロシアン化物、金属塩化物等が挙げられる。
【0016】
カーボンブラックとしては、例えば、サーマルブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、ランプブラック、ガスブラック、及びチャンネルブラックが挙げられる。これらの中では、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が好ましい。様々な種類のカーボンブラックが、コロンビア・カーボン社、キャボット社、デグサ社、三菱ケミカル株式会社等から容易に入手することができる。
【0017】
有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、不溶性ジアゾ顔料、縮合アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
【0018】
有機顔料の具体例としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、24、55、73、74、75、83、93、94、95、97、98、108、114、128、129、138、139、150、151、154、180、185、193、199、202;C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、57、88、112、122、123、146、149、150、166、168、177、178、179、184、185、202、206、207、254、255、257、260、264、269、272;C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、25、60、66、80;C.I.Pigment Violet 19、23、29、37、38、50;C.I.Pigment Orange 13、16、68、69、71、73;C.I.Pigment Green 7、36、54;C.I.Pigment Black 1;等が挙げられる。
【0019】
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、ホワイトカーボン等が挙げられる。これらの体質顔料は、粉体の流動性を向上させる目的で、無機顔料又は有機顔料と併用されることが多い。
【0020】
なお、不溶性着色剤としては、顔料粒子の表面に化学的な処理を行って自己分散性を付与した自己分散顔料を用いることもできる。
【0021】
分散染料としては、例えば、C.I.Dispers Yellow 9、23、33、42、49、54、58、60、64、66、71、76、79、83、86、90、93、99、114、116、119、122、126、149、160、163、165、180、183、186、198、200、211、224、226、227、231、237;C.I.Dispers Red 60、73、88、91、92,111、127、131、143、145、146、152、153、154、167、179、191、192、206、221、258、283;C.I.Dispers Orange 9、25、29、30、31、32、37、38、42、44、45、53、54、55、56、61、71、73、76、80、96、97;C.I.Dispers Violet 25、27、28、54、57、60、73、77、79、79:1;C.I.Dispers Blue 27、56、60、79:1、87、143、165、165:1、165:2、181、185、197、202、225、257、266、267、281、341、353、354、358、364、365、368;等が挙げられる。
【0022】
また、水不溶性着色剤としては、水溶性着色剤により着色された水不溶性の共重合体を挙げることもできる。水不溶性の共重合体としては、例えば、ポリエステル、後述する分散剤及びポリマー樹脂等が挙げられる。
【0023】
水溶性着色剤としては、例えば、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、建染染料、及び可溶性建染染料が挙げられる。代表的なこれらの着色剤としては、それぞれC.I.Direct、C.I.Acid、C.I.Food、C.I.Basic、C.I.Reactive、C.I.Vat、及びC.I.Solubilised Vatから選択される染料が挙げられる。
【0024】
なお、水溶性着色剤により着色された水不溶性の共重合体における共重合体と、例えば分散剤として使用する共重合体とは、同じ共重合体を使用してもよく、異なる共重合体を使用してもよい。同じ共重合体を使用する場合、水溶性着色剤により着色された共重合体と、水溶性着色剤により着色されていない共重合体とのうち、前者が水不溶性着色剤、後者が分散剤にそれぞれ相当する。
【0025】
これらの水不溶性着色剤の中でも、顔料が好ましく、C.I.Pigmentから選択される顔料がより好ましい。
【0026】
本実施形態に係るインクの総質量中における水不溶性着色剤の含有率は、通常1~30質量%、好ましくは1~15質量%、より好ましくは2~10質量%である。
【0027】
[分散剤]
分散剤は、水不溶性着色剤をインク中に分散させる目的で使用される。分散剤としては特に制限されず、公知の分散剤が使用できるが、一般には樹脂等の高分子分散剤が用いられる。そのような樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース系誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマール酸、フマール酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、スルホン化ビニルナフタレンのα,β-不飽和モノマー等のイオン性モノマー、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等から誘導されたポリマーが挙げられる。
【0028】
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」の用語は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を含む意味で用いる。「(メタ)アクリレート」等も同様である。
【0029】
分散剤は、市販品として入手することも、合成することもできる。市販品の具体例としては、例えば、ジョンクリル62、67、68、678、687(BASF社製のスチレン-アクリル系共重合体);モビニールS-100A(ジャパンコーティングレジン株式会社製の変性酢酸ビニル共重合体);ジュリマーAT-210(東亜合成株式会社製のポリアクリル酸エステル共重合体);等が挙げられる。
【0030】
合成により得られる分散剤としては、国際公開第2013/115071号に開示されたA-Bブロックポリマーと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。A-Bブロックポリマーの製造方法等についても、国際公開第2013/115071号に開示された製造方法と同様である。国際公開第2013/115071号に開示されたA-Bブロックポリマーとしては、例えば、Aブロックを構成するモノマーが、(メタ)アクリル酸、及び直鎖又は分岐鎖C4アルキル(メタ)アクリレートから選択される1種類以上のモノマーであり、Bブロックを構成するモノマーが、ベンジルメタクリレート及びベンジルアクリレートから選択される1種類以上のモノマーであるものが挙げられる。Aブロックを構成するモノマーとしては、メタクリル酸及びn-ブチルメタクリレートから選択される1種類以上のモノマーが好ましく、これら2種類のモノマーを併用することがより好ましい。Bブロックを構成するモノマーとしては、ベンジルメタクリレートが好ましい。その具体例としては、国際公開第2013/115071号の合成例3~8に開示されたブロック共重合体が挙げられる。
【0031】
分散剤の質量平均分子量(Mw)は、通常10000~60000、好ましくは10000~40000、より好ましくは15000~30000、さらに好ましくは20000~25000である。また、分散剤の酸価は、通常90~200mgKOH/g、好ましくは100~150mgKOH/g、より好ましくは100~120mgKOH/gである。また、分散剤のPDI(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.29~1.49程度である。上記のような範囲とすることにより、インクの分散性及び保存安定性が良好になる傾向にある。
【0032】
分散剤は、水不溶性着色剤と混合した状態で使用することができる。また、水不溶性着色剤の表面の一部又は全部を分散剤で被覆した状態で使用することもできる。あるいは、これらの両方の状態を併用してもよい。
【0033】
本実施形態に係るインクは、水不溶性着色剤と分散剤とを含有する分散液を調製した後、他の成分と混合して調製するのが好ましい。分散液の調製方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0034】
分散液の調製方法の一例としては、転相乳化法が挙げられる。すなわち、2-ブタノン等の有機溶剤に分散剤を溶解し、中和剤の水溶液を加えて乳化液を調製する。得られた乳化液に水不溶性着色剤を加えて分散処理を行う。このようにして得られた液から有機溶剤及び一部の水を減圧留去することにより、目的とする分散液を得ることができる。分散処理は、例えば、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いて行うことができる。一例として、サンドミルを用いるときは、粒子径が0.01~1mm程度のビーズを使用し、ビーズの充填率を適宜設定して分散処理を行うことができる。上記のようにして得られた分散液に対して、濾過、遠心分離等の操作を行ってもよい。この操作により、分散液に含まれる粒子の粒子径を揃えることができる。分散液の調製中に泡立ちが生じるときは、公知のシリコーン系、アセチレングリコール系等の消泡剤を極微量加えてもよい。
【0035】
上記以外の分散液の調製方法としては、酸析法、界面重合法、in-situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等が挙げられる。
【0036】
これらの調製方法の中では、転相乳化法、酸析法、及び界面重合法が好ましい。
【0037】
分散液中における水不溶性着色剤の平均粒径(D50)は、通常300nm以下、好ましくは30~280nm、より好ましくは40~270nm、さらに好ましくは50~250nmである。また、水不溶性着色剤の平均粒径(D90)は、通常400nm以下、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下である。下限は100nm以上が好ましい。また、水不溶性着色剤の平均粒径(D10)は、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上である。上限は100nm以下が好ましい。なお、水不溶性着色剤の粒径は、レーザ光散乱を用いて測定できる。
【0038】
本実施形態に係るインクの総質量中における分散剤の含有率は、通常0.5~6.0質量%、好ましくは0.5~4.0質量%、より好ましくは1.0~4.0質量%である。
【0039】
[ポリマー樹脂]
ポリマー樹脂は、メタクリル酸、メタクリル酸C1-C4アルキル、アクリル酸C6-C10アルキル、及びメタクリル酸C2-C4不飽和アルキルから1種類ずつ選択される4種類のモノマーと、分子内にラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤とから構成される共重合体である。このようなポリマー樹脂を用いることにより、インクの保存安定性及び耐擦過性がより向上する傾向にある。
【0040】
共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等が挙げられ、ランダム共重合体が好ましい。ポリマー樹脂は、塩の形態であってもよい。ポリマー樹脂は、公知の方法により合成することができる。
【0041】
メタクリル酸C1-C4アルキルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル等のアルキル部分が直鎖状のもの;メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル等のアルキル部分が分岐鎖状のもの;メタクリル酸シクロプロピル、メタクリル酸シクロブチル等のアルキル部分が環状のもの;などが挙げられる。これらの中では、アルキル部分が直鎖状のものが好ましく、アルキル部分が直鎖状のメタクリル酸C1-C3アルキルがより好ましく、メタクリル酸メチルがさらに好ましい。
【0042】
アクリル酸C6-C10アルキルとしては、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル等のアルキル部分が直鎖状のもの;アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸イソヘプチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸イソデシル等のアルキル部分が分岐鎖状のもの;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロヘプチル、アクリル酸シクロオクチル、アクリル酸シクロノニル、アクリル酸シクロデシル等のアルキル部分が環状のもの;などが挙げられる。これらの中では、アルキル部分が分岐鎖状のものが好ましく、アルキル部分が分岐鎖状のアクリル酸C8アルキルがより好ましく、アクリル酸2-エチルヘキシルがさらに好ましい。
【0043】
メタクリル酸C2-C4不飽和アルキルとしては、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸2-ブテン、メタクリル酸3-メチル-2-ブテン、メタクリル酸3-ブテン等のメタクリル酸C2-C4アルケニルなどが挙げられる。これらの中では、メタクリル酸C2-C4アルケニルが好ましく、メタクリル酸C3アルケニルがより好ましく、メタクリル酸アリルがさらに好ましい。
【0044】
上記4種類のモノマーの含有量の範囲の目安を下記表1に示す。モノマーの総含有量が100質量部となるように、表1の範囲で調整するのが好ましい。表1中の数値は「質量部」であり、略号等は以下の意味を有する。
MAA:メタクリル酸
MC1-4:メタクリル酸C1-C4アルキル
AC6-10:アクリル酸C6-C10アルキル
MKC2-4:メタクリル酸C2-C4不飽和アルキル
【0045】
【表1】
【0046】
反応性乳化剤は、分子内にラジカル重合性の二重結合を有する乳化剤である。ラジカル重合性の二重結合の数は、通常1個である。
【0047】
この反応性乳化剤としては、分子内にアニオン性の基を有するアニオン型の反応性乳化剤が好ましい。このようなアニオン型の反応性乳化剤は、「反応性のアニオン性界面活性剤」等と称されることもある。アニオン性の基としては、例えば、スルホン酸基、スルホネート基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、硝酸エステル基、カルボキシ基、及びこれらの塩が挙げられる。これらの中では、スルホン酸基、スルホネート基、硫酸エステル基、及びこれらの塩が好ましく、硫酸エステル基の塩がより好ましい。塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)等が挙げられる。
【0048】
反応性乳化剤の中でも、スルホン酸基、スルホネート基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、及びこれらの塩から選択される基を有するエチレン性不飽和単量体等が好ましい。
【0049】
反応性乳化剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム、エーテルサルフェート型アンモニウム、リン酸エステル、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル、2-ソジウムスルホエチルメタクリレート、アルコキシポリエチレングリコールマレイン酸エステル、及びそれらの塩が挙げられる。反応性乳化剤の具体例としては、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業株式会社製、エレミノール JS-20)、アルケニルコハク酸ジカリウム(花王株式会社製、ラテムル ASK)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬株式会社製、アクアロンHS-10)、α-[1-[(アリルオキシ)メチル]-2-(ノニルフェノキシ)エチル]-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(株式会社ADEKA製、アデカリアソープ SE-10N等のアデカリアソープ SEシリーズ)、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製、アクアロン KH-1025等のアクアロン KHシリーズ)、スチレンスルホン酸塩(東ソー・ファインケム株式会社製、スピノマーNaSS)、α-[2-[(アリルオキシ)-1-(アルキルオキシメチル)]エチル]-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(株式会社ADEKA製、アデカリアソープSR-1025等のアデカリアソープ SRシリーズ)、ポリオキシエチレンポリオキシブチレン(3-メチル-3-ブテニル)エーテルの硫酸エステル塩(花王株式会社製、ラテムルPD-104)、[({α-[2-(アリルオキシ)-1-({C10-C14アルキルオキシ}メチル)エチル]-ω-ヒドロキシポリ(n=1~100)(オキシエチレン)}を主成分とする、{C10-C14分岐鎖アルカノールと1-(アリルオキシ)-2,3-エポキシプロパンの反応生成物}のオキシラン重付加物)の硫酸エステル化物]のアンモニウム塩等が挙げられる。これらの中では、[({α-[2-(アリルオキシ)-1-({C10-C14アルキルオキシ}メチル)エチル]-ω-ヒドロキシポリ(n=1~100)(オキシエチレン)}を主成分とする、{C10-C14分岐鎖アルカノールと1-(アリルオキシ)-2,3-エポキシプロパンの反応生成物}のオキシラン重付加物)の硫酸エステル化物]のアンモニウム塩が好ましい。
【0050】
反応性乳化剤は、ポリマー樹脂を合成するときに上記4種類のモノマーとともに使用される。これにより、ポリマー樹脂のエマルジョンを得ることができる。本実施形態に係るインクを調製する際には、このようなポリマー樹脂のエマルジョンを使用することが好ましい。
【0051】
ポリマー樹脂を合成する際の反応性乳化剤の使用量は特に制限されない。使用量の目安としては、上記4種類のモノマーの総質量に対して、通常0.1~10質量%、好ましくは0.3~5質量%、より好ましくは0.5~3質量%、さらに好ましくは1~3質量%である。反応性乳化剤を上記の範囲で使用することにより、ポリマー樹脂を安定に合成することができ、ポリマー樹脂の平均粒径を好適な範囲に制御することができ、且つ、ポリマー樹脂のエマルジョンの粘度を好適な範囲に調整することができる傾向にある。
【0052】
ポリマー樹脂の平均粒径は、通常10~500nm、好ましくは20~200nm、より好ましくは40~120nm、さらに好ましくは70~90nmである。平均粒径をこの範囲にすることにより、インクジェットヘッドの目詰り、及びポリマー樹脂の再凝集が抑制される傾向にある。
【0053】
ポリマー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常-30~25℃、好ましくは-25~20℃、より好ましくは-20~20℃、さらに好ましくは-15~20℃である。ポリマー樹脂の酸価は、通常0.5~80mgKOH/g、好ましくは5~75mgKOH/g、より好ましくは8~70mgKOH/g、さらに好ましくは10~65mgKOH/gである。
【0054】
ポリマー樹脂のテトラヒドロフランに対する不溶解度は、通常80~100%、好ましくは90~100%である。このような不溶解度とすることにより、ポリマー樹脂の平均分子量を制御するとともに、未反応のモノマー等を不純物として含有しないポリマー樹脂となる傾向にある。
【0055】
本実施形態に係るインクの総質量中、ポリマー樹脂の含有率(固形分換算値)の下限値は、通常0.1質量%、好ましくは0.2質量%、より好ましくは0.3質量%であり、上限値は、通常10質量%、好ましくは7質量%、より好ましくは6質量%、さらに好ましくは5質量%である。
【0056】
[水]
水としては、イオン交換水、蒸留水等の不純物(金属イオン等)の含有量の少ないものが好ましい。
【0057】
本実施形態に係るインクの総質量中における水の含有率は、通常30~80質量%、好ましくは35~75質量%、より好ましくは40~70質量%である。
【0058】
[水溶性有機溶剤]
本実施形態に係るインクは、さらに、水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1-C6アルカノール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素類;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、エチレンカーボネート等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは分子量400、800、1540、又はそれ以上のもの)、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、又はポリアルキレングリコール及びチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のC3-C9ポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル(好ましくはC3-C10のモノ、ジ、又はトリエチレングリコールエーテル、及びC4-C13のモノ、ジ、又はトリプロピレングリコールエーテルからなる群より選択されるグリコールエーテル);1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等のC5-C9アルカンジオール;γ-ブチロラクトン;ジメチルスルホキシド;などが挙げられる。これらの中では、グリコールエーテル及びC5-C9アルカンジオールからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0059】
本実施形態に係るインクの総質量中における水溶性有機溶剤の含有率は、通常0~60質量%、好ましくは1~60質量%、より好ましくは2~50質量%、さらに好ましくは3~45質量%、特に好ましくは5~40質量%である。
【0060】
[その他の成分]
本実施形態に係るインクは、上述した成分以外に、インク調製剤をさらに含有していてもよい。インク調製剤としては、例えば、界面活性剤(但し、反応性乳化剤に相当するものを除く)、防腐防黴剤、pH調整剤、消泡剤等が挙げられる。
【0061】
本実施形態に係るインクの総質量中におけるインク調製剤の総含有率は、通常0~30質量%、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~10質量%である。
【0062】
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、ノニオン、両性、シリコーン系、及びフッ素系の各界面活性剤が挙げられる。これらの中ではシリコーン系及びフッ素系から選択される界面活性剤が好ましく、生体や環境への安全性の観点からはシリコーン系界面活性剤がより好ましい。
【0063】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0064】
カチオン界面活性剤としては、例えば、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0065】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(例えば、花王株式会社製のエマルゲン A-60、A-90、A-500)等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;ポリグリコールエーテル系等が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、日信化学工業株式会社製のサーフィノール 104、104PG50、82、420、440、465、485、オルフィン STG;花王株式会社製のエマルゲン A-60、A-90、A-500等が挙げられる。
【0066】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0067】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。その一例としては、エアープロダクツ社製のダイノール 960、980;日信化学工業株式会社製のシルフェイス SAG001、SAG002、SAG003、SAG005、SAG503A、SAG008、SAG009、SAG010;BYK Additives & Instruments社製のBYK-345、347、348、349、3455、LP-X23288、LP-X23289、LP-X23347;Evonic Tego Chemie社製のTEGO Twin 4000、TEGO Wet KL 245、250、260、265、270、280等が挙げられる。
【0068】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。
【0069】
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物;デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその塩;などが挙げられる。防腐防黴剤の市販品としては、アーチケミカル社製のプロキセル GXL(S)、XL-2(S)等が挙げられる。
【0070】
pH調整剤としては、調製されるインクに悪影響を及ぼさずに、そのpHを5~11に調整できる化合物であれば、任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基;などが挙げられる。
【0071】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系、シリカ鉱物油系、オレフィン系、アセチレン系等の化合物が挙げられる。市販の消泡剤としては、例えば、いずれも信越化学工業株式会社製のサーフィノール DF37、DF58、DF110D、DF220、MD-20;オルフィン SK-14等が挙げられる。
【0072】
消泡剤を使用するとき、消泡剤の含有率は、通常0.01~5質量%、好ましくは0.03~3質量%、より好ましくは0.05~1質量%である。消泡剤の含有量を0.01質量%以上とすることにより消泡剤としての効果が得られる傾向にあり、5質量%以下とすることにより分散安定性が良好になる傾向にある。
【0073】
[インクの物性等]
本実施形態に係るインクをインクジェット記録用のインクとして使用するときは、インク中における金属陽イオンの塩化物(例えば、塩化ナトリウム)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム)等の無機不純物の含有率の少ないものを用いるのが好ましい。その無機不純物の含有率の目安は、着色剤の総質量に対しておおよそ1質量%以下程度である。下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0質量%であってもよい。
【0074】
無機不純物は、着色剤中に混在していることも多い。このため、必要に応じて着色剤から無機不純物を除去し、着色剤を精製することができる。その精製方法としては、例えば、着色剤の固体をメタノール等のC1-C4アルコールと水との混合溶媒等で懸濁精製する方法;インクを調製した後に、イオン交換樹脂で無機不純物を交換吸着する方法;等が挙げられる。
【0075】
本実施形態に係るインクの25℃におけるpHは、通常7~11であり、好ましくは8~10である。本実施形態に係るインクの25℃における表面張力は、通常10~50mN/mであり、好ましくは20~40mN/mである。本実施形態に係るインクの25℃における粘度は、通常2~30mPa・sであり、好ましくは3mPa・s~20mPa・sである。本実施形態に係るインクのpH、表面張力、及び粘度は、pH調整剤、界面活性剤、水溶性有機溶剤等で適宜調整することができる。
【0076】
本実施形態に係るインクは、各種の記録において使用することができる。例えば、本実施形態に係るインクは、筆記具、各種の印刷、情報記録、捺染等に好適であり、インクジェット記録に用いることが特に好ましい。
【0077】
[インクジェット記録方法、インクジェットプリンタ、及び記録メディア]
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上述したインクの液滴を、記録信号に応じてインクジェットプリンタにより吐出させて記録メディアに付着させることにより記録を行うものである。インクジェット記録を行う際には、上述したインクが充填された容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填することにより、上記のように記録を行うことができる。
【0078】
本発明のインクジェット記録方法では、上述したインクを単独で使用してもよく、他のインクと併用してもよい。例えば、フルカラーの記録画像を得る目的で、上述したインクと、イエロー、ブルー、レッド、グリーン、バイオレット、及びオレンジの各着色剤を含有するインクと併用することもできる。
【0079】
産業用インクジェットプリンタは、印刷速度を高速にする目的で、ラインヘッド型のインクジェットプリンタの構成で、シングルパスでの印刷も好ましく行われる。上述したインクによれば、そのような印刷条件においても、発色性が良好で、耐擦過性にも優れた記録画像を得ることができる。
【0080】
インクジェット方式としては、公知の方式が使用できる。インクジェット方式の具体例としては、例えば、電荷制御方式、ドロップオンデマンド(圧力パルス)方式、音響インクジェット方式、サーマルインクジェット方式等が挙げられる。また、インク中の着色剤の含有量が少ないインクを小さい体積で多数射出して画質を改良する方式;実質的に同じ色相で、インク中の着色剤の濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式;無色透明のインクを用いることにより、着色剤の定着性を向上させる方式;等も含まれる。
【0081】
記録メディアは、インクが付着できる物質を意味する。記録メディアの一例としては、例えば、紙、フィルム、繊維又は布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられる。
【0082】
記録メディアは、インク受容層を有するものと、有しないものとに大別することができる。
【0083】
インク受容層を有する記録メディアは、通常、インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙等と呼ばれる。その代表的な市販品の例としては、キヤノン株式会社製のプロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー、光沢ゴールド、及びマットフォトペーパー;セイコーエプソン株式会社製の写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、フォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード株式会社製のアドバンスフォト用紙(光沢);富士フイルム株式会社製の画彩写真仕上げPro等が挙げられる。
【0084】
インク受容層を有しない記録メディアとしては、グラビア印刷、オフセット印刷等の用途に用いられるコート紙、アート紙等の各種の用紙;ラベル印刷用途に用いられるキャストコート紙;などが挙げられる。上述したインクは、インク受容層を有しない記録メディアに好適に用いることができる。
【0085】
インク受容層を有しない記録メディアを用いるときは、着色剤の定着性等を向上させる目的で、記録メディアに対して表面改質処理を施すことも好ましく行われる。表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等が挙げられる。
【0086】
上述した全ての事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
【実施例
【0087】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例により限定されるものではない。
【0088】
実施例においては、特に断りのない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%をそれぞれ意味する。実施例における各種の合成、調製等の操作は、特に断りのない限り、いずれも撹拌下に行った。また、液中の固形分の含有率を測定するときは、株式会社エイ・アンド・デイ製のMS-70を用いて、乾燥重量法により求めた。
【0089】
実施例中で使用した「水」は、イオン交換水である。
また、実施例中で使用した反応性乳化剤は、[({α-[2-(アリルオキシ)-1-({C10-C14アルキルオキシ}メチル)エチル]-ω-ヒドロキシポリ(n=1~100)(オキシエチレン)}を主成分とする、{C10-C14分岐鎖アルカノールと1-(アリルオキシ)-2,3-エポキシプロパンの反応生成物}のオキシラン重付加物)の硫酸エステル化物]のアンモニウム塩である。
【0090】
[調製例1:ポリマー樹脂1の調製]
ガラス製反応容器(容量3L)に、水(100部)、過硫酸アンモニウム(0.3部)、及び反応性乳化剤(1部)を加えて液を得た。反応容器内部の空気を窒素で置換した後、液の温度を70℃に昇温した。この液に、水(120部)、反応性乳化剤(0.9部)、メタクリル酸(2部)、メタクリル酸メチル(37部)、アクリル酸2-エチルヘキシル(59部)、及びメタクリル酸アリル(2部)からなる液を3時間かけて滴下した。液の滴下中は、窒素を導入しながら、液温を70℃に維持した。液の滴下終了後、さらに70℃で2時間反応させた後、40℃に冷却した。得られた液にトリエタノールアミン(3.1部)を加えることにより、固形分25%の白色懸濁液としてポリマー樹脂1のエマルジョンを得た。得られたポリマー樹脂1のエマルジョンを「PEM1」とする。得られたポリマー樹脂1の酸価は13mgKOH/g、ガラス転移点は-10℃であった。
【0091】
[調製例2:ポリマー樹脂2の調製]
メタクリル酸を5部、メタクリル酸メチルを33.5部、アクリル酸2-エチルヘキシルを60部、メタクリル酸アリルを1.5部に変更する以外は調製例1と同様にして、固形分25%の白色懸濁液としてポリマー樹脂2のエマルジョンを得た。得られたポリマー樹脂2のエマルジョンを「PEM2」とする。得られたポリマー樹脂2の酸価は33mgKOH/g、ガラス転移点は-5℃であった。
【0092】
[調製例3:ポリマー樹脂3の調製]
メタクリル酸を3部、メタクリル酸メチルを36部、アクリル酸2-エチルヘキシルを59部、メタクリル酸アリルを2部に変更する以外は調製例1と同様にして、固形分25%の白色懸濁液としてポリマー樹脂3のエマルジョンを得た。得られたポリマー樹脂3のエマルジョンを「PEM3」とする。得られたポリマー樹脂3の酸価は20mgKOH/g、ガラス転移点は-5℃であった。
【0093】
[調製例4:ポリマー樹脂4の調製]
反応性乳化剤の代わりにノニオン性乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用する以外は調製例1と同様にして、固形分24.9%の白色懸濁液としてポリマー樹脂4のエマルジョンを得た。得られたポリマー樹脂4のエマルジョンを「PEM4」とする。得られたポリマー樹脂4の酸価は13mgKOH/g、ガラス転移点は-10℃であった。
【0094】
[調製例5:ポリマー樹脂5の調製]
ガラス製反応容器(容量3L)に、水(60部)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.3部)、及び過硫酸アンモニウム(0.3部)を加えて液を得た。反応容器内部の空気を窒素で置換した後、液の温度を70℃に昇温した。この液に、水(70部)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(10部)、メタクリル酸(2部)、メタクリル酸メチル(50部)、アクリル酸2-エチルヘキシル(47部)、及びメタクリル酸アリル(1部)からなる液を3時間かけて滴下した。液の滴下中は、窒素を導入しながら、液温を70℃に維持した。液の滴下終了後、さらに70℃で2時間反応させた後、40℃に冷却し、固形分3.5%の白色懸濁液としてポリマー樹脂5のエマルジョンを得た。得られたポリマー樹脂5のエマルジョンを「PEM5」とする。得られたポリマー樹脂5の酸価は13mgKOH/g、ガラス転移点は10℃であった。
【0095】
[調製例6:着色剤の分散液の調製]
国際公開第2013/115071号の合成例3を追試することにより、ブロック共重合体(ブロック共重合体A)を得た。得られたブロック共重合体(6部)を2-ブタノン(20部)に溶解させ、均一な溶液とした。この液に、水酸化ナトリウム(0.45部)を水(52.3部)に溶解させた液を加え、1時間撹拌して液を得た。この液にカーボンブラック(20部、ORION ENGINEERED CARBONS社製のNerox 605)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行って液を得た。得られた液に水(100部)を滴下した後、この液を濾過することにより、濾液を得た。得られた濾液から2-ブタノン及び水の一部を減圧留去することにより、着色剤の含有率が12.3%である着色剤の分散液を得た。着色剤の含有率は、乾燥重量法により、液中の全固形分から着色剤の含有率の換算値として求めた。測定機器としては、株式会社エイ・アンド・デイ製のMS-70を使用した。
【0096】
[実施例1~3:インクの調製]
下記表2に記載の各成分を混合してそれぞれ総量100部の液を得た後、得られた液を孔径3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、実施例1~3のインクを得た。
【0097】
[調製例7:洗浄液の調製]
下記表2に記載の各成分を使用する以外は実施例1~3と同様にして、洗浄液を得た。
【0098】
[比較例1~2:比較用インクの調製]
下記表3に記載の各成分を使用する以外は上記の実施例1~3と同様にして、比較例1~2のインクを得た。
【0099】
下記表2及び表3中の略号等は、以下の意味を有する。また、表2及び表3中の数値は「部」である。
また、表2及び表3中のPEM1~PEM5の欄の部数は、ポリマー樹脂1~5のエマルジョンの固形分量を示す。ポリマー樹脂4、5は、乳化剤と反応していないものの、疎水性相互作用により乳化剤が付着していると思われる。このため、ポリマー樹脂4、5のエマルジョンの固形分量としては、ポリマー樹脂4、5と使用した乳化剤との合計量を記載した。
PG:プロピレングリコール
2Py:2-ピロリドン
12HD:1,2-ヘキサンジオール
TEA:トリエタノールアミン
TEX:テキサノール
BYK-349:シリコーン系界面活性剤、BYK-349
GXL(S):プロキセルGXL(S)
PEM1~PEM5:調製例1~5でそれぞれ得たポリマー樹脂1~5のエマルジョン
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
[インクジェット記録]
各実施例及び比較例で得たインクを、京セラ株式会社製のインクジェットヘッドKJ4B-YH(600dpi×600dpi)を搭載したプリンターを用いて液滴サイズ12pl、速度25m/minの条件にて、UPM社製Finesse Gloss 90(コート紙)にインクジェット記録を行った。インクジェット記録は100%Dutyのベタ画像となるように行い、各実施例又は比較例のインクにより記録された記録画像を得た。なお、上記のようにして得た各試験片の測色には、X-rite社製の測色機、商品名eXactを使用した。測色条件は、濃度基準ISO ステータス T、視野角2°、光源D50である。
【0103】
[発色性試験]
上記のようにして得た各試験片を用いて、Dk値(OD値)を測色した。結果を下記表4に示す。得られたDk値は大きい方が発色性に優れることを意味する。
【0104】
[耐擦過性試験]
各試験片の擦過性を、安田精機製作所製、No.428学振形摩耗試験機(摩擦試験機II形)を用いて評価した。すなわち、試験片に500gの荷重を掛けた状態で、インクジェット記録した部分を40回擦り合わせ、画像の劣化具合を下記3段階の評価基準で評価した。結果を下記表4に示す。
-評価基準-
A:記録画像の傷は、ほとんど確認できなかった。
B:記録画像に少しの傷が確認できた。
C:記録画像の傷が非常に大きかった。
【0105】
[洗浄性試験]
各実施例及び比較例のインクをガラスシャーレ上に20μL滴下し、60℃の恒温槽に1時間静置して乾燥させることにより、インクが固化した固形物を得た。得られた固形物に調製例7で得た洗浄液を10mL滴下し、固形物を溶解除去できるか否かを目視にて評価した。評価基準は以下の4段階とした。結果を下記表4に示す。
-評価基準-
A:固形物の残存が認められず、均一な液となった。
B:わずかに固形物の残存が認められるが、ほぼ均一な液となった。
C:明らかに固形物が残存し、均一な液とは認められなかった。
D:固形物の形状が全く変化しなかったか、又はほとんど変化しなかった。
【0106】
【表4】
【0107】
表4の結果から明らかなように、各実施例のインクは、発色性及び耐擦過性に優れていた。また、各実施例のインクは、乾燥して固形物を生じたときでも、その固形物を充分に溶解除去できることが確認された。一方、各比較例のインクは、耐擦過性に優れていたものの、発色性が不十分であった。また、各比較例のインクは、乾燥して生じた固形物を充分には溶解除去できなかった。