(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】車両用のマイクロレンズアレイおよびそれを用いた車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/265 20180101AFI20240612BHJP
F21S 41/43 20180101ALI20240612BHJP
F21S 41/63 20180101ALI20240612BHJP
F21S 41/68 20180101ALI20240612BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20240612BHJP
F21S 41/27 20180101ALI20240612BHJP
F21W 102/15 20180101ALN20240612BHJP
F21W 102/18 20180101ALN20240612BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240612BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240612BHJP
F21W 105/00 20180101ALN20240612BHJP
【FI】
F21S41/265
F21S41/43
F21S41/63
F21S41/68
F21S41/143
F21S41/27
F21W102:15
F21W102:18
F21Y115:10
F21Y115:30
F21W105:00
(21)【出願番号】P 2021548888
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035550
(87)【国際公開番号】W WO2021060200
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019173243
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019173244
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019173245
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019173246
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019173247
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019173248
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019173249
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】元辻 彩香
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534503(JP,A)
【文献】特開2014-035984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0335191(US,A1)
【文献】特開2016-001616(JP,A)
【文献】特開2018-177093(JP,A)
【文献】特開2019-050101(JP,A)
【文献】特表2018-531496(JP,A)
【文献】特開2019-096409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/265
F21S 41/43
F21S 41/63
F21S 41/68
F21S 41/143
F21S 41/27
F21W 102/15
F21W 102/18
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21W 105/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具に用いられる、複数の光学系を有するマイクロレンズアレイであって、
各々の前記光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部と、前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ
部との間に設けられた遮光体と、を有し、
各々の前記光学系は、前記入射側レンズ部の光軸に直交する方向について隣接されて一体化されており、
各々の前記遮光体はそれぞれ、前記入射側レンズ部の光軸と直交する方向に延びて特定の配光パターンに対応する形状を有する第一遮光面と、前記第一遮光面と直交する方向に延びて隣接する前記光学系から入射するクロストーク光を遮る第二遮光面と、を有する、車両用のマイクロレンズアレイ。
【請求項2】
前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部とが共通の光軸上に設けられている、請求項1に記載の車両用のマイクロレンズアレイ。
【請求項3】
車両用灯具に用いられる、複数の光学系を有するマイクロレンズアレイであって、
各々の前記光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部と、前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部との間に設けられた遮光体と、を有し、
前記遮光体は、前記入射側レンズ部の光軸に直交する面方向に延び、配光パターンに対応する形状の遮光部を有し、
前記入射側レンズ部の断面形状が非対称形状である、車両用のマイクロレンズアレイ。
【請求項4】
上下方向および前後方向に延びる断面において、上下方向について前記入射側レンズ部の断面形状は中心線に対して非対称形状である、請求項3に記載の車両用のマイクロレンズアレイ。
【請求項5】
前記上下方向および前後方向に延びる断面において、前記入射側レンズ部の上部の曲率が前記入射側レンズ部の下部の曲率よりも大きい、請求項4に記載の車両用のマイクロレンズアレイ。
【請求項6】
前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部は共通の光軸上に設けられている、請求項3に記載の車両用のマイクロレンズアレイ。
【請求項7】
前記入射側レンズ部の断面形状は、前記遮光部に入射する光よりも前記遮光部に入射しない光が多くなるように、非対称形状である、請求項3に記載の車両用のマイクロレンズアレイ。
【請求項8】
車両用灯具に用いられる、複数の光学系を有するマイクロレンズアレイであって、
各々の前記光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部を有し、
前記光学系には、前記入射側レンズ部から前記出射側レンズ部に向かう光が通過する光通過面にロービーム配光パターンに対応する形状の通常遮光部を有する通常光学系と、OHS配光パターンに対応する形状のOHS遮光部を有するOHS光学系または前記光通過面に前記遮光部が設けられず前記入射側レンズ部に入射した全ての光を前記出射側レンズ部に透過させる透過光学系とが混在している、車両用のマイクロレンズアレイ。
【請求項9】
前記透過光学系の前記入射側レンズ部の焦点距離が前記通常光学系の前記入射側レンズ部の焦点距離以下である、請求項8に記載の車両用のマイクロレンズアレイ。
【請求項10】
前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部は共通の光軸上に設けられている、請求項8に記載の車両用のマイクロレンズアレイ。
【請求項11】
車両用灯具に用いられる、複数の光学系を有するマイクロレンズアレイであって、
各々の前記光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部を一体に有し、
各々の前記光学系は、前記入射側レンズ部の出射方向に直交する方向について隣接されて一体化されており、
各々の前記光学系の
前記入射側レンズ部の水平方向の有効口径は鉛直方向の有効口径よりも小さい、マイクロレンズアレイ。
【請求項12】
前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部とが共通の光軸上に設けられている、請求項11に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項13】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射される請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のマイクロレンズアレイと、
を備えた車両用灯具。
【請求項14】
光源と、
プライマリレンズと、
マイクロレンズアレイを有する車両用灯具であって、
前記マイクロレンズアレイは複数の光学系を有し、
各々の前記光学系の
前記マイクロレンズアレイはそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを一体に有し、
各々の前記光学系は、前記入射側レンズ部の出射方向に直交する方向について隣接されて一体化されており、
各々の前記光学系の
前記入射側レンズ部の水平方向の有効口径は鉛直方向の有効口径よりも小さい、および/または、プライマリレンズの水平方向の焦点距離が鉛直方向の焦点距離よりも小さい、および/または前記光源の水平方向寸法が前記光源の鉛直方向寸法よりも大きい、車両用灯具。
【請求項15】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を備えた車両用灯具であって、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記入射側レンズ部は、前記入射側レンズ部の光軸に直交する第1方向における第1焦点距離が、前記光軸と前記第1方向とに直交する第2方向における第2焦点距離よりも短く、
前記光源は、前記第1方向と平行な方向における長さが、前記第2方向と平行な方向における長さよりも短い、
車両用灯具。
【請求項16】
前記入射側レンズ部は、前記第1方向における第1有効口径が、前記第2方向における第2有効口径よりも短い、
請求項15に記載の車両用灯具。
【請求項17】
前記一対に設けられた前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部は、共通の光軸上に設けられている、
請求項15又は請求項16に記載の車両用灯具。
【請求項18】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を備えた車両用灯具であって、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記入射側レンズ部は、前記入射側レンズ部の光軸に直交する第1方向における第1有効口径が、前記光軸と前記第1方向とに直交する第2方向における第2有効口径よりも短く、
前記光源は、前記第1方向と平行な方向における長さが、前記第2方向と平行な方向における長さよりも短い、
車両用灯具。
【請求項19】
前記一対に設けられた前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部は、共通の光軸上に設けられている、
請求項18に記載の車両用灯具。
【請求項20】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を備えた車両用灯具であって、
前記プライマリレンズは、前記光源に対して第1焦点距離を有する第1部位と、前記光源に対して前記第1焦点距離よりも長い第2焦点距離を有する第2部位とを有し、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記複数の光学系において、前記第1部位からの平行光が入射する第1光学系における第1入射側レンズ部の焦点距離は、前記第2部位からの平行光が入射する第2光学系における第2入射側レンズ部の焦点距離よりも長い、
車両用灯具。
【請求項21】
前記第1入射側レンズ部の有効口径は、前記第2入射側レンズ部の有効口径よりも大きい、
請求項20に記載の車両用灯具。
【請求項22】
前記一対に設けられた前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部は、共通の光軸上に設けられている、
請求項20又は請求項21に記載の車両用灯具。
【請求項23】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を備えた車両用灯具であって、
前記プライマリレンズは、前記光源に対して第1焦点距離を有する第1部位と、前記光源に対して前記第1焦点距離よりも長い第2焦点距離を有する第2部位と、を有し、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記複数の光学系において、前記第1部位からの平行光が入射する第1光学系における第1入射側レンズ部の有効口径は、前記第2部位からの平行光が入射する第2光学系における第2入射側レンズ部の有効口径よりも大きい、
車両用灯具。
【請求項24】
前記一対に設けられた前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部は、共通の光軸上に設けられている、
請求項23に記載の車両用灯具。
【請求項25】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記光学ユニットのうちの第1光学ユニットが有する第1プライマリレンズの第1光源に対する第1焦点距離よりも、前記光学ユニットのうちの第2光学ユニットが有する第2プライマリレンズの第2光源に対する第2焦点距離の方が長く、
前記第1光学ユニットが有する第1マイクロレンズアレイを構成する複数の第1入射側レンズ部それぞれの焦点距離は、前記第2光学ユニットが有する第2マイクロレンズアレイを構成する複数の第2入射側レンズ部それぞれの焦点距離よりも長い、
車両用灯具。
【請求項26】
前記第1マイクロレンズアレイを構成する前記複数の第1入射側レンズ部それぞれの有効口径は、前記第2マイクロレンズアレイを構成する前記複数の第2入射側レンズ部それぞれの有効口径よりも大きい、
請求項25に記載の車両用灯具。
【請求項27】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記光学ユニットのうちの第1光学ユニットが有する第1プライマリレンズの第1光源に対する第1焦点距離よりも、前記光学ユニットのうちの第2光学ユニットが有する第2プライマリレンズの第2光源に対する第2焦点距離の方が長く、
前記第1光学ユニットが有する第1マイクロレンズアレイを構成する複数の第1入射側レンズ部それぞれの有効口径は、前記第2光学ユニットが有する第2マイクロレンズアレイを構成する複数の第2入射側レンズ部それぞれの有効口径よりも大きい、
車両用灯具。
【請求項28】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記光学ユニットのうちの第1光学ユニットが有する第1光源のサイズよりも、前記光学ユニットのうちの第2光学ユニットが有する第2光源のサイズの方が大きく、
前記第1光学ユニットが有する第1マイクロレンズアレイを構成する複数の第1入射側レンズ部それぞれの焦点距離よりも、前記第2光学ユニットが有する第2マイクロレンズアレイを構成する複数の第2入射側レンズ部それぞれの焦点距離の方が長い、
車両用灯具。
【請求項29】
前記第1マイクロレンズアレイを構成する前記複数の第1入射側レンズ部それぞれの有効口径よりも、前記第2マイクロレンズアレイを構成する前記複数の第2入射側レンズ部それぞれの有効口径の方が大きい、
請求項28に記載の車両用灯具。
【請求項30】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記光学ユニットのうちの第1光学ユニットが有する第1光源のサイズよりも、前記光学ユニットのうちの第2光学ユニットが有する第2光源のサイズの方が大きく、
前記第1光学ユニットが有する第1マイクロレンズアレイを構成する複数の第1入射側レンズ部それぞれの有効口径よりも、前記第2光学ユニットが有する第2マイクロレンズアレイを構成する複数の第2入射側レンズ部それぞれの有効口径の方が長い、
車両用灯具。
【請求項31】
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記光学ユニットのうちの第1光学ユニットが有する第1光源のサイズよりも、前記光学ユニットのうちの第2光学ユニットが有する第2光源のサイズの方が大きく、
前記第1光学ユニットが有する第1プライマリレンズの第1光源に対する焦点距離は、前記第2光学ユニットが有する第2プライマリレンズの第2光源に対する焦点距離よりも長い、
車両用灯具。
【請求項32】
前記第1光学ユニットが有する第1マイクロレンズアレイを構成する複数の第1入射側レンズ部それぞれの焦点距離よりも、前記第2光学ユニットが有する第2マイクロレンズアレイを構成する複数の第2入射側レンズ部それぞれの焦点距離の方が長い、
請求項31に記載の車両用灯具。
【請求項33】
前記第1マイクロレンズアレイを構成する前記複数の第1入射側レンズ部それぞれの有効口径よりも、前記第2マイクロレンズアレイを構成する前記複数の第2入射側レンズ部それぞれの有効口径の方が大きい、
請求
項32に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用のマイクロレンズアレイおよびそれを用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、光源ユニットからの出射光をマイクロレンズアレイを介して灯具前方へ向けて照射することにより、所要の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具が知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された車両用灯具は、後側レンズアレイと前側レンズアレイとの間に、複数の集光レンズ部によって形成される複数の光源像の各々の形状を規定するための遮光板を備えている。この遮光板が光源ユニットからの出射光の一部を遮ることにより、カットオフラインを有するロービーム配光パターンが形成される。
【0004】
また、特許文献1~2などにより、マイクロレンズアレイ(以下、「MLA」とも称する)を用いた車両用灯具が提案されている。特許文献1では、MLAに遮光体を設けて光源から出射された光の一部を遮ることにより、所定のアスペクト比を有する投影像を形成することが提案されている。また、特許文献2では、MLAの有効口径が縦横方向のそれぞれで異なるように制御することにより、所定のアスペクト比を有する投影像を形成することが提案されている。
【0005】
また、特許文献1では、MLAに遮光体を設けて光源から出射された光の一部を遮ることにより、車両用灯具の配光パターンを形成することが提案されている。また、特許文献2では、有効口径の異なるマイクロレンズを複数用いることにより、配光パターンを形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特表2016-534503号公報
【文献】米国特許出願公開第2018/0335191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで特許文献1に記載の車両用灯具において、後側レンズアレイのあるレンズ要素に入射した光が、この後側レンズアレイに向かい合う前側レンズアレイのレンズ要素とは別のレンズ要素に入射してしまうクロストークが生じてしまうことがあった。クロストークが生じてしまうと、意図せぬ領域に光が照射されてしまう。
【0008】
また、特許文献1に記載の車両用灯具において、後側レンズアレイのあるレンズ要素に入射した光が、遮光板に遮られることにより、光の利用効率が低下していた。
【0009】
また、特許文献1に記載のようにマイクロレンズアレイを用いた車両用灯具は、投影レンズやリフレクタを用いた車両用灯具に比べて灯具の奥行寸法を小さくできる。しかしながら、特許文献1の車両用灯具は、オーバーヘッドサイン配光パターン(以降、OHS配光パターンと呼ぶ)を形成することができない。
【0010】
また、クロストークが生じると、灯具の設計者の想定していない領域に光が照射されてしまうことから、本来はクロストークが生じないように光学系を設計することが一般的である。
しかし本発明者は、このクロストークを積極的に使って側方に広がった配光パターンを形成することを考えた。近年、車両用灯具にLEDやレーザなど直進性の高い光源を用いることが多くなってきた。車両用灯具には上下方向に比べて左右方向に広い照射範囲が求められるため、このように直進性の高い光源を用いた場合に左右方向に広い照射範囲を実現することが難しい。
本発明者は、クロストークが生じた場合には光は大きく屈折することに着目し、クロストークを積極的に利用することでより左右方向に広い照射範囲を実現することを着想し、本発明を完成させた。
【0011】
また、特許文献1~2では光源の形状について言及されていないが、発光面のアスペクト比が略1:1の光源を用いる場合、実現可能なアスペクト比に限界が生じたり、光学的な設計の自由度を低下したりしてしまう。一方で、発光面のアスペクト比が高い光源を用いた場合、例えば、水平方向の長さが垂直方向の長さよりも長い発光面を有する光源を用いた場合、上記のような問題は解消し得るが、マイクロレンズアレイ内で水平方向のクロストークが発生し易くなり、結果として、グレア光が生じ易くなってしまう。
【0012】
本開示は、所定の配光パターンが形成可能でかつクロストークを防止できる車両用のマイクロレンズアレイおよびそれを用いた車両用灯具を提供することを第1の目的とする。
【0013】
本開示は、所定の配光パターンが形成可能でかつ光の利用効率が高い車両用のマイクロレンズアレイおよびそれを用いた車両用灯具を提供することを第2の目的とする。
【0014】
本開示は、ロービーム配光パターンとOHS配光パターンを形成可能なマクロレンズアレイおよびそれを用いた車両用灯具を提供することを第3の目的とする。
【0015】
本開示は、左右方向に広い照射範囲を有する車両用灯具およびそれに用いられるマイクロレンズアレイを提供することを第4の目的とする。
【0016】
本開示は、所望のアスペクト比を有する投影像を容易に形成可能であり、かつ、グレア光の発生を抑制可能な、車両用灯具を提供することを第5の目的とする。
【0017】
本開示は、新たな構成により所望の配光パターンを形成可能な車両用灯具を提供することを第6の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記第1の目的を達成するために、本開示の一態様の車両用のマイクロレンズアレイは、
車両用灯具に用いられる、複数の光学系を有するマイクロレンズアレイであって、
各々の前記光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部と、前記入射側レンズ部と前記出射側レンズとの間に設けられた遮光体と、を有し、
各々の前記光学系は、前記入射側レンズ部の光軸に直交する方向について隣接されて一体化されており、
各々の前記遮光体はそれぞれ、前記入射側レンズ部の光軸と直交する方向に延びて特定の配光パターンに対応する形状を有する第一遮光面と、前記第一遮光面と直交する方向に延びて隣接する前記光学系から入射するクロストーク光を遮る第二遮光面と、を有する。
【0019】
上記第2の目的を達成するために、本開示の一態様の車両用のマイクロレンズアレイは、
車両用灯具に用いられる、複数の光学系を有するマイクロレンズアレイであって、
各々の前記光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部と、前記入射側レンズ部と前記出射側レンズ部との間に設けられた遮光体と、を有し、
前記遮光体は、前記入射側レンズ部の光軸に直交する面方向に延び、配光パターンに対応する形状の遮光部を有し、
前記入射側レンズ部の断面形状が非対称形状である。
【0020】
上記第3の目的を達成するために、本開示の一態様の車両用のマイクロレンズアレイは、
車両用灯具に用いられる、複数の光学系を有するマイクロレンズアレイであって、
各々の前記光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部を有し、
前記光学系には、前記入射側レンズ部から前記出射側レンズ部に向かう光が通過する光通過面にロービーム配光パターンに対応する形状の通常遮光部を有する通常光学系と、OHS配光パターンに対応する形状のOHS遮光部を有するOHS光学系または前記光通過面に前記遮光部が設けられず前記入射側レンズ部に入射した全ての光を前記出射側レンズ部に透過させる透過光学系とが混在している。
【0021】
上記第1~3の目的のいずれかを達成するために、本開示の一態様の車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射される上記のいずれかのマイクロレンズアレイと、を備える。
【0022】
上記第4の目的を達成するために、本開示の一態様の車両用のマイクロレンズアレイは、
車両用灯具に用いられる、複数の光学系を有するマイクロレンズアレイであって、
各々の前記光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部を一体に有し、
各々の前記光学系は、前記入射側レンズ部の出射方向に直交する方向について隣接されて一体化されており、
各々の前記光学系の入射側レンズ部の水平方向の有効口径は鉛直方向の有効口径よりも小さい。
【0023】
上記第4の目的を達成するために、本開示の一態様の車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
マイクロレンズアレイを有する車両用灯具であって、
前記マイクロレンズアレイは複数の光学系を有し、
各々の前記光学系のマイクロレンズアレイはそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを一体に有し、
各々の前記光学系は、前記入射側レンズ部の出射方向に直交する方向について隣接されて一体化されており、
各々の前記光学系の入射側レンズ部の水平方向の有効口径は鉛直方向の有効口径よりも小さい、および/または、プライマリレンズの水平方向の焦点距離が鉛直方向の焦点距離よりも小さい、および/または前記光源の水平方向寸法が前記光源の鉛直方向寸法よりも大きい。
【0024】
上記第5の目的を達成するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を備えた車両用灯具であって、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記入射側レンズ部は、前記入射側レンズ部の光軸に直交する第1方向における第1焦点距離が、前記光軸と前記第1方向とに直交する第2方向における第2焦点距離よりも短く、
前記光源は、前記第1方向と平行な方向における長さが、前記第2方向と平行な方向における長さよりも短い。
【0025】
この構成によれば、所望のアスペクト比を有する投影像を容易に形成可能であり、かつ、グレア光の発生を抑制可能になる。
【0026】
また、上記第5の目的を達成するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を備えた車両用灯具であって、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記入射側レンズ部は、前記入射側レンズ部の光軸に直交する第1方向における第1有効口径が、前記光軸と前記第1方向とに直交する第2方向における第2有効口径よりも短く、
前記光源は、前記第1方向と平行な方向における長さが、前記第2方向と平行な方向における長さよりも短い。
【0027】
この構成によれば、所望のアスペクト比を有する投影像を容易に形成可能であり、かつ、グレア光の発生を抑制可能になる。
【0028】
上記第6の目的を達成するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を備えた車両用灯具であって、
前記プライマリレンズは、前記光源に対して第1焦点距離を有する第1部位と、前記光源に対して前記第1焦点距離よりも長い第2焦点距離を有する第2部位とを有し、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記複数の光学系において、前記第1部位からの平行光が入射する第1光学系における第1入射側レンズ部の焦点距離は、前記第2部位からの平行光が入射する第2光学系における第2入射側レンズ部の焦点距離よりも長い。
【0029】
この構成によれば、所望の配光パターンを形成可能になる。
【0030】
また、上記第6の目的を達成するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を備えた車両用灯具であって、
前記プライマリレンズは、前記光源に対して第1焦点距離を有する第1部位と、前記光源に対して前記第1焦点距離よりも長い第2焦点距離を有する第2部位と、を有し、
前記マイクロレンズアレイは、複数の光学系を有し、
前記複数の光学系はそれぞれ、一対に設けられた入射側レンズ部と出射側レンズ部とを有し、
前記複数の光学系において、前記第1部位からの平行光が入射する第1光学系における第1入射側レンズ部の有効口径は、前記第2部位からの平行光が入射する第2光学系における第2入射側レンズ部の有効口径よりも大きい。
【0031】
この構成によれば、所望の配光パターンを形成可能になる。
【0032】
また、上記第6の目的を達成するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記光学ユニットのうちの第1光学ユニットが有する第1プライマリレンズの第1光源に対する第1焦点距離よりも、前記光学ユニットのうちの第2光学ユニットが有する第2プライマリレンズの第2光源に対する第2焦点距離の方が長く、
前記第1光学ユニットが有する第1マイクロレンズアレイを構成する複数の第1入射側レンズ部それぞれの焦点距離は、前記第2光学ユニットが有する第2マイクロレンズアレイを構成する複数の第2入射側レンズ部それぞれの焦点距離よりも長い。
【0033】
この構成によれば、所望の配光パターンを形成可能になる。
【0034】
また、上記第6の目的を達成するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記光学ユニットのうちの第1光学ユニットが有する第1プライマリレンズの第1光源に対する第1焦点距離よりも、前記光学ユニットのうちの第2光学ユニットが有する第2プライマリレンズの第2光源に対する第2焦点距離の方が長く、
前記第1光学ユニットが有する第1マイクロレンズアレイを構成する複数の第1入射側レンズ部それぞれの有効口径は、前記第2光学ユニットが有する第2マイクロレンズアレイを構成する複数の第2入射側レンズ部それぞれの有効口径よりも大きい。
【0035】
この構成によれば、所望の配光パターンを形成可能になる。
【0036】
上記第6の目的を達成するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記光学ユニットのうちの第1光学ユニットが有する第1光源のサイズよりも、前記光学ユニットのうちの第2光学ユニットが有する第2光源のサイズの方が大きく、
前記第1光学ユニットが有する第1マイクロレンズアレイを構成する複数の第1入射側レンズ部それぞれの焦点距離よりも、前記第2光学ユニットが有する第2マイクロレンズアレイを構成する複数の第2入射側レンズ部それぞれの焦点距離の方が長い。
【0037】
この構成によれば、所望の配光パターンを形成可能になる。
【0038】
また、上記第6の目的を達成するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記光学ユニットのうちの第1光学ユニットが有する第1光源のサイズよりも、前記光学ユニットのうちの第2光学ユニットが有する第2光源のサイズの方が大きく、
前記第1光学ユニットが有する第1マイクロレンズアレイを構成する複数の第1入射側レンズ部それぞれの有効口径よりも、前記第2光学ユニットが有する第2マイクロレンズアレイを構成する複数の第2入射側レンズ部それぞれの有効口径の方が長い。
【0039】
この構成によれば、所望の配光パターンを形成可能になる。
【0040】
また、上記第6の目的を達成するために、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
光源と、
プライマリレンズと、
前記光源から出射された光が前記プライマリレンズを介して入射されるマイクロレンズアレイと、を有する光学ユニットを複数備えた車両用灯具であって、
前記光学ユニットのうちの第1光学ユニットが有する第1光源のサイズよりも、前記光学ユニットのうちの第2光学ユニットが有する第2光源のサイズの方が大きく、
前記第1光学ユニットが有する第1プライマリレンズの第1光源に対する焦点距離は、前記第2光学ユニットが有する第2プライマリレンズの第2光源に対する焦点距離よりも長い。
【0041】
この構成によれば、所望の配光パターンを形成可能になる。
【発明の効果】
【0042】
本開示の一態様によれば、所定の配光パターンが形成可能でかつクロストークを防止できる車両用のマイクロレンズアレイおよびそれを用いた車両用灯具が提供される。
【0043】
本開示の一態様によれば、所定の配光パターンが形成可能でかつクロストークを防止できる車両用のマイクロレンズアレイおよびそれを用いた車両用灯具が提供される。
【0044】
本開示の一態様によれば、光の利用効率を高く維持しながらロービーム配光パターンとOHS配光パターンを形成可能な車両用灯具、およびそれに用いられるマイクロレンズアレイが提供される。
【0045】
本開示の一態様によれば、左右方向に広い照射範囲を有する車両用灯具およびそれに用いられるマイクロレンズアレイが提供される。
【0046】
本開示の一態様によれば、所望のアスペクト比を有する投影像を容易に形成可能であり、かつ、グレア光の発生を抑制可能な、車両用灯具を提供することができる。
【0047】
本開示の一態様によれば、新たな構成により所望の配光パターンを形成可能な車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】第1~第5の実施形態に係る車両用のマイクロレンズアレイが組み込まれた車両用灯具の断面図である。
【
図2】
図1の車両用灯具が形成する配光パターンを示す図である。
【
図3】マイクロレンズアレイの一部の拡大図である。
【
図5】第1の実施形態の変形例に係る車両用のマイクロレンズアレイに係る
図3と同様の図である。
【
図6】マイクロレンズアレイの一つの光学系の拡大図である。
【
図7】参考例に係る車両用のマイクロレンズアレイに係る
図6と同様の図である。
【
図8】
図1の車両用灯具が形成する配光パターンを示す図である。
【
図9】マイクロレンズアレイの一部の拡大図である。
【
図11】第4の実施形態の変形例に係る車両用のマイクロレンズアレイに係る
図10と同様の図である。
【
図12】第4の実施形態の変形例に係る車両用のマイクロレンズアレイに係る
図10と同様の図である。
【
図14】
図1の車両用灯具が形成する配光パターンを示す図である。
【
図15】クロストークを説明するための図であり、マイクロレンズアレイを左右方向および前後方向に延びる断面で切った断面図を示している。
【
図16A】マイクロレンズアレイを前後方向および左右方向に延びる断面で切った断面図を示す図である。
【
図16B】マイクロレンズアレイを前後方向および上下方向に延びる断面で切った断面図を示す図である。
【
図17】車両用灯具を前後方向および左右方向に延びる断面で切った断面図を示している。
【
図18】車両用灯具を前後方向および上下方向に延びる断面で切った断面図を示している。
【
図19A】光源を前後方向および左右方向に延びる断面で切った断面図を示す図である。
【
図19B】光源を前後方向および上下方向に延びる断面で切った断面図を示す図である。
【
図20】第6~第7の実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
【
図21】マイクロレンズアレイを構成する光学系の分解斜視図である。
【
図22A】
図20の車両用灯具の鉛直面における構成を示す模式図である。
【
図22B】
図20の車両用灯具の水平面における構成を示す模式図である。
【
図23】
図20の車両用灯具によって形成される投影像の模式図である。
【
図24A】本開示の車両用灯具に適用可能なプライマリレンズの一例である。
【
図24B】本開示の車両用灯具に適用可能なプライマリレンズの一例である。
【
図24C】本開示の車両用灯具に適用可能なプライマリレンズの一例である。
【
図24D】本開示の車両用灯具に適用可能なプライマリレンズの一例である。
【
図25A】第6の実施形態の第一変形例に係る車両用灯具の鉛直面における構成を示す模式図である。
【
図25B】第6の実施形態の第一変形例に係る車両用灯具の水平面における構成を示す模式図である。
【
図26A】第6の実施形態の第二変形例に係る車両用灯具の鉛直面における構成を示す模式図である。
【
図26B】第6の実施形態の第二変形例に係る車両用灯具の水平面における構成を示す模式図である。
【
図27】マイクロレンズアレイの一部の拡大模式図である。
【
図28】第一実施形態に係る車両用灯具によって形成される配光パターンの模式図である。
【
図29】第7の実施形態に係る車両用灯具の第一変形例を示す模式図である。
【
図30】第7の実施形態に係る車両用灯具の第二変形例を示す模式図である。
【
図31】第8の実施形態に係る車両用灯具の一部の構成を示す模式図である。
【
図32】
図31に示す車両用灯具によって形成される配光パターンの模式図である。
【
図33】
図31の車両用灯具の第一変形例を示す模式図である。
【
図34】
図31の車両用灯具の第二変形例を示す模式図である。
【
図35】本開示の車両用灯具によって形成可能な配光パターンの一例である。
【
図36】第9の実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
【
図37】マイクロレンズアレイを構成する光学系の分解斜視図である。
【
図38】第9の実施形態に係る車両用灯具の構成を示す模式図である。
【
図39】
図36の車両用灯具の第一変形例を示す模式図である。
【
図40】
図36の車両用灯具の第二変形例を示す模式図である。
【
図41】第10の実施形態に係る車両用灯具の一部の構成を示す模式図である。
【
図42】
図41の車両用灯具の第一変形例を示す模式図である。
【
図43】
図41の車両用灯具の第二変形例を示す模式図である。
【
図44】
図41の車両用灯具の第三変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0050】
なお、本明細書において、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」とは、本開示に係る車両用灯具について、説明の便宜上、設定された相対的な方向である。「前後方向」とは、「前方向」および「後方向」を含む方向である。「左右方向」とは、「左方向」および「右方向」を含む方向である。「上下方向」とは、「上方向」および「下方向」を含む方向である。
【0051】
本開示に係る車両用灯具を車両用前照灯として用いる場合、車両用灯具における「前後方向」、「左右方向」、及び「上下方向」は、車両における「前後方向」、「左右方向」、及び「上下方向」とそれぞれ一致する。なお、以下の説明において、「左右方向」を「水平方向」と称することもある。同様に、「上下方向」を「垂直方向」と称することもある。また、本明細書において、車両用灯具の水平方向における各構成は、特に言及のない限り垂直方向においても適用可能である。
【0052】
(第1の実施形態)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る車両用のマイクロレンズアレイ10を備えた車両用灯具1の断面図である。
図1に示すように車両用灯具1は、アウタカバー2とハウジング3とを備えている。アウタカバー2とハウジング3によって灯室4が形成されている。
【0053】
灯室4内には、光源5と、プライマリレンズ6と、マイクロレンズアレイ10とが設けられている。光源5としては例えばLED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)を用いることができる。以降の説明においては、光源5の発光面の中心点から灯具の前後方向に延びる仮想的な直線を、車両用灯具1の主光軸Mxと呼ぶ。
【0054】
プライマリレンズ6は、光源5から出射される光を平行光にしてマイクロレンズアレイ10に入射させる。プライマリレンズ6として、コリメートレンズ、アプラナートレンズ、フレネルレンズなどを用いることができる。図示のプライマリレンズ6は、光源5と向かい合う位置に設けられた第一入射部61と、第一入射部61の周囲を囲む縦壁として設けられた第二入射部62を備えている。光源5から第一入射部61に入射した光B1は、第一入射部61で主光軸Mxに平行となるように屈折される。光源5から第二入射部62に入射した光B2は、反射部63によって主光軸Mxに平行光となるように反射される。
【0055】
なお、図示した車両用灯具1においては、光源5、プライマリレンズ6、マイクロレンズアレイ10で一つの光源ユニットを構成している。車両用灯具1は、同一の灯室4内に複数の光源ユニットを備えていてもよい。
【0056】
マイクロレンズアレイ10は、複数の光学系20を有する。マイクロレンズアレイ10は、後述する遮光体23を除いて透明樹脂材またはガラス材からなる単一の光学部品である。各々の光学系20は、光の出射方向(主光軸Mx:入射側レンズ部21の光軸)に直交する方向に隣接しており、各々の光学系20は一体化されている。光学系20(各々のマイクロレンズ)の大きさは任意であるが、照射方向正面視で約0.5~3.0mm四方が好ましく、1.0mm四方がより好ましい。
【0057】
各々の光学系20は、一対に設けられた入射側レンズ部21と出射側レンズ部22と、入射側レンズ部21と出射側レンズ部22との間に設けられた遮光体23とを備えている。入射側レンズ部21は遮光体23よりもプライマリレンズ6側に設けられている。出射側レンズ部22は遮光体23よりもアウタカバー2側に設けられている。入射側レンズ部21と出射側レンズ部22は共通の光軸Ax上に設けられており、互いに向かい合っている。各々の光学系20の光軸Axは、車両用灯具1の主光軸Mxに平行である。入射側レンズ部21と出射側レンズ部22はそれぞれ凸レンズ形状とされている。ある光学系20の入射側レンズ部21に入射した光は、基本的には、同じ光学系20に属する出射側レンズ部22に入射するように構成されている。図示したマイクロレンズアレイ10においては、各々の光学系20は互いに同一の形状・寸法となっている。
【0058】
図2は、このような車両用灯具1が形成する配光パターンPを示す図である。
図2に示すように本実施形態に係る車両用灯具1は、いわゆるロービーム配光パターンを形成可能である。各々の光学系20から出射された光が各々、
図2に示したような配光パターンPを形成する。つまり、各々の光学系20が形成する配光パターンPは同一である。各々の光学系20から出射された光が重ねあわされることで所望の照度の配光パターンPが形成されている。
【0059】
図3は、マイクロレンズアレイ10の一部の拡大図である。
図3は、マイクロレンズアレイ10を上下方向および前後方向に延びる断面で切った断面図を示している。
図3に示すように、各々の光学系20において、遮光体23は入射側レンズ部21と出射側レンズ部22との間に設けられている。遮光体23は、入射側レンズ部21の光軸Axと直交する方向に延びる第一遮光面24と、第一遮光面24と直交する方向に延びる第二遮光面25とを備えている。図示の例では、第二遮光面25は、水平方向と前後方向に延びる面に形成されている。
【0060】
図4は、
図3のIV-IV線断面図である。
図4は、ある光学系20の遮光体23の第一遮光面24の形状を示している。
図4に示すように、第一遮光面24は
図2に示したロービーム配光パターンの遮光領域に対応する形状を有している。各々の光学系20は、同じ形状の第一遮光面24を有している。第一遮光面24は、入射側レンズ部21から出射側レンズ部22に入射する光の一部を透過させ、別の一部を遮ることにより、配光パターンの遮光領域を形成する。
【0061】
図3に戻り、第二遮光面25は第一遮光面24と直交する方向に延びている。第二遮光面25は第一遮光面24から出射側レンズ部22まで延びている。
【0062】
ところで、ある光学系20の入射側レンズ部21に入射し、この光学系20に光軸Axに直交する方向に隣接する別の光学系20の出射側レンズ部22に入射する光をクロストーク光と呼ぶ。ある光学系20の入射側レンズ部21に入射した光が、この光学系20に光軸Axに直交する方向に隣接する別の光学系20の出射側レンズ部22に入射することをクロストークと呼ぶ。例えば入射側レンズ部21の曲率半径が小さい、入射側レンズ部21の有効面積が小さい、入射側レンズ部21と出射側レンズ部22との距離が大きい、光源5の寸法が大きいなどの理由によって、クロストークが生じやすい状況が生じてしまう。
【0063】
第二遮光面25は、このクロストークが生じることを防止する。すなわち、第二遮光面25は、ある光学系20の入射側レンズ部21に入射した光が、光軸Axに直交する方向においてこの光学系20に隣接する別の光学系20の出射側レンズ部22に入射することを防止する。
【0064】
なお
図3に示した例においては、遮光体23は、第一遮光面24と第二遮光面25とを含む中実の三次元形状をなしている。このような遮光体23は、入射側レンズ部21と出射側レンズとを含むマイクロレンズアレイ10を多色成形するときに同時に形成することが好ましい。遮光体23の形状は特に限定されないが、くさび型あるいはL字型などが好ましい。
【0065】
本実施形態に係るマイクロレンズアレイ10によれば、各々の光学系20が、入射側レンズ部21の曲率半径が小さい、入射側レンズ部21の有効面積が小さい、入射側レンズ部21と出射側レンズ部22との距離が大きいなどの理由によってクロストークが生じやすい設計であったとしても、第二遮光面25によってクロストーク光を遮り、確実にクロストークが生じることを防止できる。このように本実施形態に係る車両用のマイクロレンズアレイ10によれば、所定の配光パターンが形成可能でかつクロストークが生じにくい。また、このマイクロレンズアレイ10を用いた車両用灯具1が提供される。
【0066】
なお
図3で説明したように、本実施形態のマイクロレンズアレイ10において、第二遮光面25は車両用灯具1の水平方向と前後方向に延びるように設けられている。このため、第二遮光面25は上下方向に生じるクロストークを防止する。すなわち、第二遮光面25は、ある光学系20の入射側レンズ部21に入射した光が、この光学系20の上隣あるいは下隣の光学系20の出射側レンズ部22に入射することを防止する。一般に、車両用灯具1の前方の上方に強い光が出射されてしまうと、対向車などにグレアを与えてしまい、好ましくない。クロストーク光により上方へ光が出射されてしまうと、対向車にグレアを与えてしまうことがある。本実施形態に係る車両用灯具によれば、第二遮光面25によって上下方向に出射されるクロストーク光を遮ることができるため、好ましい。
もっとも、上述した実施形態とは異なり、第二遮光面25を車両用灯具1の上下方向と前後方向に延びるように設けてもよい。このような第二遮光面25は、車両用灯具1の左右方向に出射されるクロストーク光を遮ることができる。
【0067】
図5は第1の実施形態の変形例に係るマイクロレンズアレイ11の
図3に対応する図である。
図5に示すように遮光体26は、第一遮光面24と第二遮光面25とを有する折り曲げた板状に形成されている。このような遮光体26は、マイクロレンズアレイ10の多色成形時に一括して形成する他、遮光体26をマイクロレンズアレイ10に印刷することによって形成することができる。
【0068】
なお上述した実施形態では、遮光体23、26がロービーム配光パターンを形成する第一遮光面24を備えた例を説明したが、本開示はこの例に限られない。遮光体23の第一遮光面24は、OHS(Over Head Sign)用の配光パターンを形成する形状としてもよいし、フォグランプ用の配光パターンなど、任意の配光パターンを形成してもよい。
【0069】
また上述した実施形態においては、各々の光学系20が同一の形状・寸法を有する例を説明したが、本開示はこの例に限られない。各々の光学系20の形状や寸法が異なっていてもよい。この場合でも、各々の光学系20が第二遮光面25を備えていることにより、クロストークが生じることを防止できる。
【0070】
なお上述した実施形態においては、各々の光学系20において、入射側レンズ部21と出射側レンズ部22は互いに共通の光軸Ax上に配置されていたが、本開示はこれに限られない。出射側レンズ部22が入射側レンズ部21の光軸からずれた位置に設けられていてもよい。この場合でも出射側レンズ部22の光軸は入射側レンズ部21の光軸と平行であることが好ましい。
【0071】
(第2の実施形態)
本開示の第2の実施形態に係る車両用のマイクロレンズアレイ10を備えた車両用灯具1の断面図は、
図1に示すものと同様であってよい。以下、第2の実施形態に係る車両用灯具1について説明するが、第1の実施形態において説明した事項については適宜省略する。
【0072】
本開示の第2の実施形態に係る車両用灯具1が形成する配光パターンPは、
図2に示すものと同様であってよい。後述する第2の実施形態に係る遮光体23の遮光部1024は、正面視で、ロービーム配光パターンの遮光領域に対応する形状を有している。
【0073】
図6は、第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ10の一つの光学系20の拡大図である。
図6は、第2の実施形態に係るマイクロレンズアレイ10を上下方向および前後方向に延びる断面で切った断面図を示している。遮光体23は、入射側レンズ部21の光軸Axと直交する面方向に延びる板状の部材である。遮光体23は、入射側レンズ部21の光軸Axと直交する面方向に延びる遮光部1024を有している。遮光部1024が、入射側レンズ部21に入射し出射側レンズ部22に向かう光の一部を透過し、他の一部を遮ることにより、
図2に示したロービーム配光パターンPが形成される。このような遮光体23は、印刷によって形成することができる。あるいはこのような遮光体23は、マイクロレンズアレイ10の多色成形時に他の部位と一緒に形成することができる。
【0074】
図6に示したように、出射側レンズ部22の断面形状は上下方向において中心線に対して対称形状である。一方で、入射側レンズ部21の断面形状は上下方向において中心線に対して非対称形状となっている。図示の例では、入射側レンズ部21の上部の曲率半径は入射側レンズ部21の下部の曲率半径よりも大きくなっている。つまり、入射側レンズ部21の上部に入射した光が下方に向かう屈折の度合いが、入射側レンズ部21の下部に入射した光が上方に向かう屈折の度合いよりも低くなっている。
【0075】
図7は、参考例に係るマイクロレンズアレイ50の
図6と同様の図である。
図7に示した参考例に係るマイクロレンズアレイ50においては、入射側レンズ部51および出射側レンズ部52はいずれも上下方向について中心線に対して対称形状である。
【0076】
例えば
図7のマイクロレンズアレイ50において、入射側レンズ部51の上部のある位置Q1にある入射角度で入射した光A2は、遮光体53で遮られていたものとする。しかし、入射側レンズ部21の上部の曲率半径は、入射側レンズ部51の上部の曲率半径よりも大きいので、
図6のマイクロレンズアレイ10においては、入射側レンズ部21の上部のある位置Q1にある入射角度で入射した光A1は、入射側レンズ部21の焦点よりも上方を通過し、遮光体23で遮られない。
つまり、参考例のマイクロレンズアレイ50においては入射側レンズ部51の焦点面(入射側レンズ部の焦点を通って光軸に直交する仮想的な面)に広く光が当てられていたところ、本実施形態のマイクロレンズアレイ10においては入射側レンズ部21の焦点面の上部に集中して光が照射されるので、遮光体23に遮られる光が低減されている。参考例に係るマイクロレンズアレイ50においては遮光部53によって遮られていた光の一部を、ロービーム配光パターンを形成する光に用いることができ、光の利用効率が高められている。
【0077】
このように、本実施形態に係る車両用のマイクロレンズアレイ10によれば、遮光体23の遮光部1024によって遮られる光が少なくなり、光源5の光の利用効率が高められており、より明るい光を照射することができる。
【0078】
なお第2の実施形態では、遮光体23がロービーム配光パターンを形成する遮光部1024を備えた例を説明したが、本開示はこの例に限られない。遮光部1024は、OHS(Over Head Sign)用の配光パターンを形成する形状としてもよいし、フォグランプ用の配光パターンなど、任意の配光パターンを形成してもよい。
【0079】
上述した説明のように、車両前方の上方の一部に遮光領域が形成されるロービーム配光パターンを形成する場合には、入射側レンズ部21の断面形状が上下方向において中心線に対して非対称形状とする。一方で、車両前方の右部や左部に遮光領域を形成したい場合には、入射側レンズ部21の断面形状の左右方向において中心線に対して非対称形状とすればよい。
【0080】
(第3の実施形態)
本開示の第3の実施形態に係る車両用のマイクロレンズアレイ10を備えた車両用灯具1の断面図は、
図1に示すものと同様であってよい。以下、第3の実施形態に係る車両用灯具1について説明するが、第1の実施形態において説明した事項については適宜省略する。
【0081】
図8は、第3の実施形態に係る車両用灯具1が形成する配光パターンを示す図である。
図8に示すように本実施形態に係る車両用灯具1は、いわゆるロービーム配光パターンP1とOHS配光パターンP2を形成可能である。
【0082】
図9は、第3の実施形態に係るマイクロレンズアレイ10の一部の拡大図である。
図9は、第3の実施形態に係るマイクロレンズアレイ10を上下方向および前後方向に延びる断面で切った断面図を示している。
図9に示した光学系20においては、遮光体23は入射側レンズ部21と出射側レンズ部22との間に設けられている。遮光体23は、入射側レンズ部21から出射側レンズ部22に向かう光が通過する光通過面に設けられている。この光通過面は、光軸Axと直交する方向に延びている。
【0083】
図10は
図9のIV-IV線断面図である。
図10に示すように、ある光学系20(以降の説明においてOHS光学系20Aと呼ぶ)の遮光体23(以降、OHS遮光部2024と呼ぶ)の形状は、別の光学系20(以降の説明において通常光学系20Bと呼ぶ)の遮光体23(以降、通常遮光部2025)の形状と異なる。
【0084】
具体的には、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ10の光学系20には、光通過面にロービーム配光パターンP1に対応する形状の通常遮光部2025を有する通常光学系20Bと、OHS配光パターンP2に対応する形状のOHS遮光部2024を有するOHS光学系20Aとが混在している。OHS遮光部2024は、通常遮光部2025に、OHS配光パターンP2に対応する形状の透過部2026が設けられた形状である。
図10において透過部2026は中央の下部に設けられている。このため、OHS光学系20Aから出射された光により、ロービーム配光パターンP1に加えてOHS配光パターンP2が照射された領域P1+P2の領域が照射される。一方で、通常光学系20Bから出射された光により、ロービーム配光パターンP1が形成される。
図10に示した例では、8個の通常光学系20Bから出射された光と、1個のOHS光学系20Aから出射された光とが合成される。これにより、いずれの光学系にも同じ強度の光が入射したものと仮定すると、OHS配光パターンP2の照度を1としたとき、ロービーム配光パターンP1の照度が9となる。
【0085】
一般に、OHS配光パターンP2に求められる照度は、ロービーム配光パターンP1に求められる照度の1/20程度である。このため、OHS光学系20Aと通常光学系20Bの数の比率を調節したり、灯具を正面視したときの光源5に対するOHS光学系20Aを配置する位置を調整することにより、適した照度のOHS配光パターンP2を形成することができる。なお、車両用灯具1の正面視で光源5に近い位置に配置された光学系20ほど強い光が入射し、該光学系20から強い光が出射される。
【0086】
本実施形態に係る車両用灯具1は、上記のようなマイクロレンズアレイ10を用いているので、光源5とレンズ要素(マイクロレンズアレイ10)との間の距離が短くなり、車両用灯具1の奥行寸法を短くできる。また、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ10は通常遮光部2025とOHS遮光部2024を備えており、OHS配光パターンP2とロービーム配光パターンP1とを形成することができる。
【0087】
(第4の実施形態)
図11は、本開示の第4の実施形態に係るマイクロレンズアレイ2011の
図10に対応する図である。
図11に示すように、マイクロレンズアレイ2011の光学系20は、光通過面にロービーム配光パターンP1に対応する形状の通常遮光部2025を有する通常光学系20Bと、光通過面に遮光部が設けられず入射側レンズ部21に入射した全ての光を出射側レンズ部22に透過させる透過光学系20Cとが混在している。
【0088】
通常光学系20Bの入射側レンズ部21に入射した光の一部は通常遮光部2025によって遮られ、出射側レンズ部22から出射した光によりロービーム配光パターンP1を形成する。一方で、透過光学系20Cの入射側レンズ部21に入射した全ての光が出射側レンズ部22に到達する。透過光学系20Cから出射された光は照射可能なすべての範囲P3に照射される。つまり透過光学系20Cから出射された光は、OHS配光パターンP2を含む領域P3に照射される。通常光学系20Bの数と、車両用灯具1の正面視における光源5に対する通常光学系20BとOHS光学系20Aの配置を調整することにより、ロービーム配光パターンP1に求められる照度とOHS配光パターンP2に求められる照度とを両立することができる。
【0089】
第4の実施形態に係る車両用灯具1によれば、上述した第3の実施形態の車両用灯具1と同様に、奥行寸法が短く、かつ、ロービーム配光パターンP1とOHS配光パターンP2とを両方形成できる。さらに本実施形態のマイクロレンズアレイ2011によれば、透過光学系20Cの入射側レンズ部21に入射した全ての光が出射側レンズ部22に到達するので、光の利用効率が高められている。
【0090】
図12は
図11に示したマイクロレンズアレイ2011の
図9に対応する図である。
図12に示すように、透過光学系20Cの入射側レンズ部21の焦点距離f1が通常光学系20Bの入射側レンズ部21の焦点距離f2以上であることが好ましい。焦点距離が長くなるほど、該入射側レンズ部21を含む光学系20から出射される光が拡散する度合いが大きくなる。つまり、
図12に示したマイクロレンズアレイ2011においては、透過光学系20Cから出射される光は、通常光学系20Bから出射される光よりも、より拡散して灯具前方に照射される。夜間に灯具の反射光により頭上の標識などを認識しようとする場合には、強い照度が求められず、むしろ、幅広い領域に弱い照度の光が照射されていることが求められる。本実施形態のマイクロレンズアレイ2011は、このような用途に適している。
【0091】
なお、遮光体23の形状は
図11に示したものに限られない。
図11に示した例においては、透過光学系20Cとして光通過面に遮光部を設けない例を説明したが、
図13に示したように透過光学系20Cとして光通過面の下部にのみ遮光部2026を設けてもよい。OHS配光パターンP2においては、灯具前方の上部が照射されることが求められるので、
図13に示したように、灯具前方の上部にのみ光が照射され灯具前方の下部に光が照射されない透過光学系20Cと、ロービーム配光パターンを形成可能な通常光学系20Bとを組み合わせてもよい。
【0092】
(第5の実施形態)
本開示の第5の実施形態に係る車両用のマイクロレンズアレイ10を備えた車両用灯具1の断面図は、
図1に示すものと同様であってよい。以下、第5の実施形態に係る車両用灯具1について説明するが、第1の実施形態において説明した事項については適宜省略する。
【0093】
図14は、第5の実施形態に係る車両用灯具1が形成する配光パターンを示す図である。第5の実施形態に係る車両用灯具1が形成する配光パターンは、左右方向の中央部に形成される第一領域Aと、第一領域よりも右方および左方に形成される第二領域Bとを備えている。第二領域Bは、クロストーク光によって形成される配光パターンである。第一領域Aは、入射側レンズ部21に入射した光が、この入射側レンズ部21と同じ光学系20に属する出射側レンズ部22に入射した光によって照射される領域である。一方、第二領域Bは、入射側レンズ部21に入射した光が、この入射側レンズ部21と異なる光学系20に属する出射側レンズ部22に入射した光によって照射される領域である。この入射側レンズ部21に入射した光が、この入射側レンズ部21と異なる光学系20に属する出射側レンズ部22に入射することを、クロストークと呼ぶ。
【0094】
図15は、クロストークを説明するための図であり、第5の実施形態に係るマイクロレンズアレイ10の一部の拡大図である。
図15は、第5の実施形態に係るマイクロレンズアレイ10を左右方向および前後方向に延びる断面で切った断面図を示している。
図15に示すように、ある光学系20の入射側レンズ部21に入射した光B11は、通常、この入射側レンズ部21が属する光学系20と同じ光学系20に属する出射側レンズ部22に入射する。一方で、ある光学系20の入射側レンズ部21に入射した光B12が、この入射側レンズ部21が属する光学系20に光軸Axに直交する方向に隣接する別の光学系20の出射側レンズ部22に入射する。このような光B12をクロストーク光と呼ぶ。
【0095】
一般的には、このようなクロストークが生じてしまうと灯具の設計者の意図とは異なる方向へ光が出射されてしまうため、当業者はこのようにクロストークが生じないように設計しようと考える。しかしながら本発明者は、車両用灯具には上下方向に比べて左右方向に広い配光パターンが求められるところ、LEDやレーザなど直進性の高い光源を用いる場合には左右方向に広い配光パターンを形成することが難しく、このクロストークを積極的に使って左右方向に広い配光パターンを形成することを考えた。
【0096】
図16Aは第5の実施形態に係るマイクロレンズアレイ10を前後方向および左右方向に延びる断面で切った断面図を示している。
図16Aに示す断面は、入射側レンズ部21に入射した光を左右方向に拡散させるように機能する。
図16Bは第5の実施形態に係るマイクロレンズアレイ10を前後方向および上下方向に延びる断面で切った断面図を示している。
図16Bに示す断面は、入射側レンズ部21に入射した光を上下方向に拡散させるように機能する。
図16Aに示したマイクロレンズアレイ10の各々の光学系20の入射側レンズ部21の左右方向(水平方向)の有効口径a1は、
図16Bに示したマイクロレンズアレイ10の各々の光学系20の入射側レンズ部21の上下方向(鉛直方向)の有効口径a2よりも小さくされている。
【0097】
図16Bに示した構成においては光B13が示すように、クロストークが生じないような光学系に設定されている。これにより、上下方向についてはクロストーク光が生じず、
図14に示したように領域Aよりも上方や下方には光が照射されない。
一方で、
図16Aに示した構成においては、入射側レンズ部21の有効口径a1がクロストークが生じないように設定された有効口径a2よりも小さいため、左右方向にはクロストークが生じている。これにより、
図14に領域Bで示したように、領域Aの左方および右方にクロストーク光が照射される領域が形成されている。
【0098】
このように本実施形態に係るマイクロレンズアレイ10を用いた車両用灯具1によれば、光源として直進性の高い光を出射するLEDを用いながらも、左右方向にクロストークを積極的に生じさせているため、左右方向に広い配光パターンを形成することができる。
【0099】
なお、左右方向にクロストークを生じさせる設計は、
図16Aに示した例に限られない。
図16A及び16Bにおいては、マイクロレンズアレイ10の光学系20の設計を工夫した例を説明したが、マイクロレンズアレイ10に加えて、または、マイクロレンズアレイ10の代わりに、プライマリレンズ6の光学系を工夫したり、光源5の形状を工夫してもよい。以下、プライマリレンズ6および光源5についてクロストークを積極的に用いる構成を説明する。
【0100】
図17および
図18は、左右方向にクロストークを生じさせるのに適したプライマリレンズ6Aを含む車両用灯具1Aを示す図である。光源5から出射された光は、プライマリレンズ6Aによって光軸と平行な光線として出射される。プライマリレンズ6Aはアナモルフックレンズであり、水平方向と垂直方向で焦点距離f11,f12が異なる。
図17は車両用灯具1Aを前後方向および左右方向に延びる断面で切った断面図を示している。
図17に示す断面において、入射部61aに入射した光は左右方向に拡散される。
図18はプライマリレンズ6Aを前後方向および上下方向に延びる断面で切った断面図を示している。
図18に示す断面において、入射部61bに入射した光は上下方向に拡散される。
図17に示したプライマリレンズ6Aの入射部61aの焦点距離f11(水平方向の焦点距離)は、
図18に示したプライマリレンズ6Aの入射部61bの焦点距離f12(鉛直方向の焦点距離)よりも短くされている。
【0101】
図18に示した構成においてはクロストークが生じないような光学系に設定されている。これにより、上下方向についてはクロストーク光が生じず、
図14に示したように領域Aよりも上方や下方には光が照射されない。
一方で、
図17に示した構成においては、プライマリレンズ6Aの入射部61aの焦点距離f11は、入射部61bの焦点距離f12よりも短いため、左右方向にクロストークが生じている。これにより、
図14に領域Bで示したように、領域Aの左方および右方にクロストーク光が照射される領域が形成されている。
【0102】
図19Aは基板51上の光源5aを前後方向および左右方向に延びる断面で切った断面図を示している。
図19Bは基板51上の光源5aを前後方向および上下方向に延びる断面で切った断面図を示している。
図19Aに示した光源5aの左右方向(水平方向)の寸法h1は、
図19Bに示した光源5aの上下方向(鉛直方向)の寸法h2よりも小さくされている。
【0103】
図19Bに示した構成においてはクロストークが生じないような大きさの光源5aに設定されている。これにより、上下方向についてはクロストーク光が生じず、
図14に示したように領域Aよりも上方や下方には光が照射されない。
一方で、
図19Aに示した構成においては、光源5aの左右方向の寸法h1がクロストークが生じないように設定された寸法h2よりも大きいため、左右方向にはクロストークが生じている。これにより、
図14に領域Bで示したように、領域Aの左方および右方にクロストーク光が照射される領域が形成されている。
【0104】
【0105】
(第6の実施形態)
図20は、本開示の第6の実施形態に係る車両用灯具3010の水平断面図である。
図20に示すように、車両用灯具3010は、ランプボディ3011及び透光カバー3012によって形成される灯室内に、光源3020と、プライマリレンズ3030と、マイクロレンズアレイ3040と、を備えた構成となっている。
【0106】
光源3020は、ランプボディ3011によって支持される基板3021に搭載された状態で、前方向へ向けて配置されている。光源3020から出射される光は、プライマリレンズ3030及びマイクロレンズアレイ3040を通過して、車両用灯具3010の前方向へと出射される。
【0107】
光源3020は、例えば、白色発光ダイオード又は半導体レーザである。光源3020は、例えば、矩形状(例えば、長方形)の発光面を有している。車両用灯具に適したアスペクト比を実現しやすいという観点から、光源3020の発光面におけるアスペクト比(垂直方向の長さ:水平方向の長さ)は、例えば、1:1~5が好ましく、1:2~3がより好ましい。
【0108】
また、光源3020の発光面の長さ(以下、単に「光源3020の長さ」とも称する)は、特に制限はされないが、例えば、垂直方向において0.25~2mmの範囲であり、水平方向において0.5~5mmの範囲である。なお、光源3020は、複数の光源を並列させたものでもよく、例えば、正方形の発光面を有する光源3020を複数並列させたものでもよい。
【0109】
プライマリレンズ3030は、光源3020に対して第1焦点距離f21を有する第1部位3031aと、光源3020に対して第1焦点距離f21よりも長い第2焦点距離f22を有する第2部位3031b及び3031cとを有している。これらの焦点距離の違いにより、第1部位3031aからマイクロレンズアレイ3040へ向けて出射される平行光と、第2部位3031b及び3031cからマイクロレンズアレイ3040へ向けて出射される平行光とでは、マイクロレンズアレイ3040を介して投影される投影像の投影画角が異なることになる。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。プライマリレンズ3030における光源3020に対する焦点距離が小さいほど、投影画角が大きくなる。
【0110】
なお、プライマリレンズ3030の上記構成および以下で説明する構成は、好ましい構成であって、必須の構成ではない。例えば、プライマリレンズ3030として、光源に対する焦点距離fがレンズ内で変化せずに一定のコリメートレンズ(例えば、アプラナートレンズ)を用いてもよい。
【0111】
プライマリレンズ3030は、光源3020に対する焦点距離(以下、「焦点距離f」とも称する)がレンズ内で変化するコリメートレンズである。プライマリレンズ3030は、例えば、3種類以上の焦点距離fを有する構成であってもよい。また、プライマリレンズ3030は、焦点距離fが光軸Ax1からの距離等に応じて連続的に変化するよう構成してもよいし、不連続的に変化するよう構成してもよい。プライマリレンズ3030の各部位における焦点距離fは、例えば、その部位と光源3020との距離に応じたものとすることが好ましい。
【0112】
プライマリレンズ3030は、光源3020からの光を入射させる入射面3032a~3032cと、入射面3032a~3032cから入射した光をマイクロレンズアレイ3040へ向けて出射させる出射面3033とを備えている。プライマリレンズ3030の形状は、特に制限はされないが、例えば、後方視において円形状である。プライマリレンズ3030は、出射面3033の外周部に形成されるフランジ部3034において、ランプボディ3011に支持される。
【0113】
入射面3032aは、光源3020の発光中心を通るようにして前後方向に延びる光軸Ax1を中心とする回転曲面で構成されている。入射面3032aから入射する光は、例えば、入射面3032aにおいて屈折し、光軸Ax1に略平行な光となって、出射面3033から出射される。
【0114】
入射面3032bから入射する光は、例えば、光軸Ax1から離れる方向に向けて進んだ後、第2部位3031bの周辺領域において全反射によって内面反射し、光軸Ax1と略平行な光となって、出射面3033から出射される。入射面3032cから入射する光も、上記と同様である。
【0115】
出射面3033は、光軸Ax1と直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されている。出射面3033は、例えば、入射面3032a~3032cから入射した光を光軸Ax1と平行な光としてマイクロレンズアレイ3040へ向けて出射する。
【0116】
マイクロレンズアレイ3040は、複数の光学系によって構成されている。
図21は、マイクロレンズアレイ3040を構成する光学系3044の分解斜視図である。
図21に示す光学系3044は、光軸Ax2を有する入射側レンズ部3041と、光軸Ax2’を有する出射側レンズ部3042と、遮光板3043とを備えている。光軸Ax2と光軸Ax2’は一致してもよいし、ずれていてもよい。光軸Ax2と光軸Ax2’は、
図20に示す光軸Ax1に略平行である。
【0117】
入射側レンズ部3041は、プライマリレンズ3030の出射面3033から出射された光が入射する部位であり、例えば、出射面3033に対向する面が凸曲面を有するように形成されている。一方で、入射側レンズ部3041における出射側レンズ部3042と対向する面は、光軸Ax2と直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されている。
【0118】
入射側レンズ部3041の垂直方向における長さ(有効口径)avと、水平方向における長さ(有効口径)ahとは、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。車両用灯具に適した横長の配光パターンを形成することを容易にするという観点からは、長さavよりも長さahを長くすることが好ましい。なお、本実施形態に係る車両用灯具3010は、垂直方向における有効口径avと、水平方向における有効口径ahとが等しくなるように構成されている。
【0119】
遮光板3043は、入射側レンズ部3041と出射側レンズ部3042との間に設けられている。遮光板3043は、投影像の形状を規定するものであり、例えば、カットオフラインを形成するものである。遮光板3043は、開口部3043aと、遮光部3043bとを有している。入射側レンズ部3041に入射した光は、その一部が遮光部3043bによって遮られる。遮られなかった光は、開口部3043aを通過して、出射側レンズ部3042から前方向へと出射される。
【0120】
マイクロレンズアレイ3040を構成する複数の光学系3044のうちの一部は、遮光板3043を有していなくてもよい。また、カットオフラインを必要としない場合等は、マイクロレンズアレイ3040は、遮光板3043を有さないように構成してもよい。また、マイクロレンズアレイ3040は、入射側レンズ部3041と出射側レンズ部3042との間に、光源3020から出射された光の色を変更するためのカラーフィルタを備えていてもよい。
【0121】
また、複数の光学系3044それぞれが遮光板3043を有する場合、各遮光板3043の形状は、異なっていてもよいし、同一の形状であってもよい。各遮光板3043の形状を同一の形状とした場合、マイクロレンズアレイの製造難度や製造コストを過度に上昇させることなく、ロービーム用の配光パターン等を形成することが容易になる。
【0122】
出射側レンズ部3042は、入射側レンズ部3041から入射した光を前方向へ向けて出射する部位である。出射側レンズ部3042における前方向側の面は、凸曲面を有するように形成されている。一方で、出射側レンズ部3042における後方向側の面(入射側レンズ部3041と対向する面)は、光軸Ax2’と直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されている。
【0123】
入射側レンズ部3041と、出射側レンズ部3042とは、互いに対向する面同士が同一形状を有するように構成されている。入射側レンズ部3041と、出射側レンズ部3042とは、互いの間に遮光板3043を挟んだ状態で一体化されている。
【0124】
図20に示すマイクロレンズアレイ3040は、上記の光学系3044を複数備えており、各々の光学系3044が光軸Ax1に交差する方向に隣接して並んだ状態(例えば、左右方向および上下方向に並んだ状態)で一体化したアレイ状の構造を有している。マイクロレンズアレイ3040の形状は、特に制限はされないが、例えば、後方視において矩形状または円形状である。
【0125】
図22Aは、
図20の車両用灯具3010の鉛直面における構成を示す模式図である。
図22Bは、
図20の車両用灯具3010の水平面における構成を示す模式図である。
図22A及び
図22Bに示すように、マイクロレンズアレイ3040を構成する各光学系3044は、上下方向(垂直方向)と左右方向(水平方向)とにおいて、光源3020の長さ及び入射面の曲率半径が異なっている。具体的には、光源3020の左右方向の長さd2は、上下方向の長さd1よりも大きくなっている。また、入射側レンズ部3041aの曲率半径は、上下方向よりも左右方向において大きくなっている。すなわち、入射側レンズ部3041aの入射側焦点距離f’は、上下方向よりも水平方向において大きくなっている。このように、光源3020の長さが長い水平方向において、マイクロレンズアレイ3040の入射側焦点距離f’を大きくすることにより、水平方向におけるクロストークを抑制できる。
【0126】
また、本実施形態においては、これらの入射側焦点距離f’の違いにより、車両用灯具3010の前方へと投影される投影像の投影画角を、垂直方向と水平方向とで異ならせている。入射側焦点距離f’が大きいほど、投影画角が大きくなるので、水平方向ではより投影画角を大きくし、垂直方向では投影画角を小さくしている。すなわち、光源3020の長さが長い水平方向においては、より長い投影像を形成可能にし、光源3020の長さが短い垂直方向においては、より短い投影像を形成可能にしている。
【0127】
なお、既に述べたが、本実施形態において、マイクロレンズアレイ3040を構成する各光学系3044は、上下方向の有効口径av1と、左右方向の有効口径ah1とが略等しい。よって、マイクロレンズアレイ3040のサイズが大きくなることを抑制でき、省スペース性に寄与できる。
【0128】
マイクロレンズアレイ3040の出射側レンズ部3042bは、上下方向(垂直方向)と左右方向(水平方向)とで、構成上の差異はない。このような構成により、マイクロレンズアレイ3040を製造し易くし、製造コストを抑えることが可能になる。なお、
図22A及び
図22Bでは遮光板3043を図示していないが、マイクロレンズアレイ3040は、上述した遮光板3043を備えていてもよい。
【0129】
図23は、
図20の車両用灯具3010によって形成される投影像の模式図である。領域Z1は、車両用灯具3010によって形成される投影像が投影される領域である。
図23に示すように、本実施形態に係る車両用灯具3010によれば、鉛直方向に通るV-V線の方向よりも、水平方向に通るH-H線の方向の方に広がった投影像が容易に形成可能である。なお、既に述べたように、光源3020の垂直方向の長さ及び水平方向の長さ、並びに、マイクロレンズアレイ3040の入射側焦点距離f’のうちのいずれか1以上を調整することにより、得られる投影像のアスペクト比を調整可能である。
【0130】
図24A~
図24Dは、本開示の車両用灯具3010に適用可能なプライマリレンズの一例である。
図24Aに示すプライマリレンズ3050は、いわゆるフレネルレンズである。プライマリレンズ3050は、部位3051a(想像線L3及びL4の間の部位)の焦点距離fが、部位3051b(想像線L4及びL5の間の部位)及び部位3051c(想像線L2及びL3の間の部位)の焦点距離fよりも短いレンズである。
【0131】
図24Bに示すプライマリレンズ3060は、部位3061a(想像線L3及びL4の間の部位)の焦点距離fが、部位3061b(想像線L4及びL5の間の部位)及び部位3061c(想像線L2及びL3の間の部位)の焦点距離fよりも長いレンズである。
【0132】
図24Cに示すプライマリレンズ3070では、焦点距離fが短い順に、部位3071a(想像線L3及びL4の間の部位)、部位3071b(想像線L4及びL5の間の部位)及び部位3071c(想像線L2及びL3の間の部位)、部位3071d(想像線L5の下の部位)及び部位3071e(想像線L2の上の部位)となっている。
【0133】
図24Dに示すプライマリレンズ3080は、いわゆるアプラナートレンズであり、光源に対する焦点距離fがレンズ内で変化せずに一定のコリメートレンズである。
【0134】
(第6の実施形態の第一変形例)
以下、上述した車両用灯具3010の第一変形例を説明する。
図25Aは、第一変形例に係る車両用灯具3010の鉛直面における構成を示す模式図である。
図25Bは、第一変形例に係る車両用灯具3010の水平面における構成を示す模式図である。
【0135】
本変形例では、プライマリレンズ3030に代えて、
図24Aに示したプライマリレンズ3050を用いている。また、マイクロレンズアレイ3040に代えて、マイクロレンズアレイ3140を用いている。その他の構成は、第6の実施形態と同一の構成を採用できるため、以下では、マイクロレンズアレイ3140についてのみ説明する。
【0136】
マイクロレンズアレイ3140を構成する各光学系(入射側レンズ部3141aと、出射側レンズ部3142bをそれぞれ含む)は、上下方向と左右方向とにおいて、有効口径の大きさが異なっている。具体的には、左右方向における有効口径ah2は、上下方向における有効口径av2よりも大きくなっている。このように、光源3020の長さが長い水平方向において、マイクロレンズアレイ3140の有効口径を大きくすることにより、水平方向におけるクロストークを抑制できる。
【0137】
また、本実施形態においては、これらの有効口径の違いにより、車両用灯具3010の前方へと投影される投影像の投影画角を、垂直方向と水平方向とで異ならせている。有効口径が大きいほど、投影画角が大きくなるので、水平方向ではより投影画角を大きくし、垂直方向では投影画角を小さくしている。すなわち、光源3020の長さが長い水平方向においては、より長い投影像を形成可能にし、光源3020の長さが短い垂直方向においては、より短い投影像を形成可能にしている。なお、第一変形例において、入射側レンズ部3141aの入射側焦点距離f’は、垂直方向と水平方向とで略等しい。
【0138】
(第6の実施形態の第二変形例)
以下、上述した車両用灯具3010の第二変形例を説明する。
図26Aは、第二変形例に係る車両用灯具3010の鉛直面における構成を示す模式図である。
図26Bは、第二変形例に係る車両用灯具3010の水平面における構成を示す模式図である。
【0139】
本変形例では、プライマリレンズ3030に代えて、
図24Aに示したプライマリレンズ50を用いている。また、マイクロレンズアレイ3040に代えて、マイクロレンズアレイ3240を用いている。その他の構成は、第6の実施形態と同一の構成を採用できるため、以下では、マイクロレンズアレイ3240についてのみ説明する。
【0140】
マイクロレンズアレイ3240を構成する各光学系(入射側レンズ部3241aと、出射側レンズ部3242bをそれぞれ含む)は、上下方向と左右方向とにおいて、有効口径の大きさが異なっている。具体的には、左右方向における有効口径ah3は、上下方向における有効口径av3よりも大きくなっている。このように、光源3020の長さが長い水平方向において、マイクロレンズアレイ3240の有効口径を大きくすることにより、水平方向におけるクロストークを抑制できる。
【0141】
また、本実施形態においては、これらの有効口径の違いにより、車両用灯具3010の前方へと投影される投影像の投影画角を、垂直方向と水平方向とで異ならせている。有効口径が大きいほど、投影画角が大きくなるので、水平方向ではより投影画角を大きくし、垂直方向では投影画角を小さくしている。すなわち、光源3020の長さが長い水平方向においては、より長い投影像を形成可能にし、光源3020の長さが短い垂直方向においては、より短い投影像を形成可能にしている。
【0142】
また、マイクロレンズアレイ3240を構成する各光学系は、入射側レンズ部3241aの入射面の曲率半径が、上下方向よりも左右方向において大きくなっている。すなわち、入射側レンズ部3241aの入射側焦点距離f’は、上下方向よりも水平方向において大きくなっている。このように、光源3020の長さが長い水平方向において、マイクロレンズアレイ3040の入射側焦点距離f’を大きくすることにより、水平方向におけるクロストークを抑制できる。
【0143】
また、本実施形態においては、これらの入射側焦点距離f’の違いにより、車両用灯具3010の前方へと投影される投影像の投影画角を、垂直方向と水平方向とで異ならせている。入射側焦点距離f’が大きいほど、投影画角が大きくなるので、水平方向ではより投影画角を大きくし、垂直方向では投影画角を小さくしている。すなわち、光源3020の長さが長い水平方向においては、より長い投影像を形成可能にし、光源3020の長さが短い垂直方向においては、より短い投影像を形成可能にしている。
【0144】
本変形例では、垂直方向と水平方向とにおいて、光源3020の長さ、並びに、マイクロレンズアレイ3240における各光学系の有効口径および入射側焦点距離f’を上記のように構成したことで、所望のアスペクト比を有する投影像をさらに容易に形成可能にし、かつ、グレア光の発生を更に抑制することを可能にしている。
【0145】
(第7の実施形態)
本開示の第7の実施形態に係る車両用灯具の水平断面図は、
図1に示すものと同様であってよい。以下、第7の実施形態に係る車両用灯具3010について説明するが、第6の実施形態において説明した事項については適宜省略する。
【0146】
光源3020は、例えば、矩形状(例えば、正方形や長方形)の発光面を有している。発光面の形状として長方形を採用した場合、車両用灯具に適した横長の配光パターンを形成することが容易になる。
【0147】
プライマリレンズ3030は、光源3020に近接して配置されていてもよく、光源3020から一定の距離を置いて配置されていてもよい。
【0148】
第7の実施形態に係る車両用灯具3010に係る光学系3044の構成としては、
図21に示した構成を採用できる。
【0149】
図20では示していないが、本実施形態において、光学系3044における入射側レンズ部3041の入射側焦点距離f’は、その光学系3044の位置に応じて異なっている。以下、入射側レンズ部3041について、
図27を用いて詳述する。
【0150】
図27は、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ3040の一部の拡大模式図である。
図27に示す入射側レンズ部4041a(想像線L1の左方向側の入射側レンズ部3041)は、プライマリレンズ3030における第1部位3031aに対向する位置、すなわち、第1部位3031aからの平行光が入射する位置にある。一方、入射側レンズ部4041b(想像線L1の右方向側の入射側レンズ部3041)は、プライマリレンズ3030における第2部位3031bに対向する位置、すなわち、第2部位3031bからの平行光が入射する位置にある。
【0151】
図27に示すように、入射側レンズ部4041aの入射面の曲率半径は、入射側レンズ部4041bの入射面の曲率半径よりも大きい。すなわち、入射側レンズ部4041aにおける入射側焦点距離f’1は、入射側レンズ部4041bにおける入射側焦点距離f’2よりも長い。これらの入射側焦点距離f’の違いにより、入射側レンズ部4041aを通過する光と、入射側レンズ部4041bを通過する光とでは、車両用灯具3010の前方へと投影される投影像の投影画角が異なることになる。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側焦点距離f’が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0152】
また、第6の実施形態において述べたように、第1部位3031aにおける第1焦点距離f21が第2部位3031bにおける第2焦点距離f22よりも短いことにより、第1部位3031aからの平行光の投影画角は、第2部位3031bからの平行光の投影画角よりも大きくなっている。そのうえで、さらに、投影画角が大きい第1部位3031aからの平行光については入射側レンズ部4041aを通過させ、投影画角が小さい第2部位3031bからの平行光については入射側レンズ部4041bを通過させることで、両者の投影画角の差を大きくしている。
【0153】
このような構成により、プライマリレンズ3030の焦点距離f又はマイクロレンズアレイ3040の入射側焦点距離f’のどちらか一方のみで投影画角を制御するよりも、所望の配光パターンを形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を高めることが可能である。
【0154】
また、投影画角が小さい第2部位3031bからの平行光は、入射側レンズ部4041bを通過することで、さらに投影画角が小さくなるため、当該平行光による投影像の光度を増加させることが可能になる。
【0155】
また、本実施形態に係る車両用灯具3010によれば、各入射側レンズ部3041の有効口径を変えなくとも所望の配光パターンを形成可能になるので、マイクロレンズアレイ3040のサイズが大きくなることを抑制でき、省スペース性に寄与できる。なお、
図27に示す入射側レンズ部4041aの有効口径ah11は、入射側レンズ部4041bの有効口径ah12と同一である。
【0156】
入射側レンズ部4041aからの光が入射する出射側レンズ部4042aと、入射側レンズ部4041bからの光が入射する出射側レンズ部4042bとは、同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。なお、
図27において、遮光板3043の開口部3043aは省略している。
【0157】
図28は、第7の実施形態に係る車両用灯具3010によって形成される配光パターンの模式図である。
図28に示す領域Z11は、例えば、第1部位3031a及び入射側レンズ部4041aを通過した光が照射される領域である。領域Z12は、例えば、第1部位3031a及び入射側レンズ部4041aを通過した光、及び第2部位3031b及び入射側レンズ部4041bを通過した光が照射される領域である。なお、
図28に示す配光パターンは、遮光板3043の影響を考慮しない場合のものである。
【0158】
車両用灯具3010において、プライマリレンズ3030を更に複数の焦点距離fを有するものに変更し、当該変更に応じてマイクロレンズアレイ3040の各入射側レンズ部3041の入射側焦点距離f’も変更することで、更に多様な配光パターンを形成することも可能である。なお、プライマリレンズ3030が3以上の焦点距離fを有する場合、焦点距離fが最も大きい部位に入射側焦点距離f’の最も小さい入射側レンズ部3041が対応するようにし、焦点距離fが2番目に大きい部位に入射側焦点距離f’の2番目に小さい入射側レンズ部3041が対応するように構成することが好ましい。
【0159】
図24A~
図24Cに示した各レンズは、第7の実施形態におけるプライマリレンズとして適用可能である。
【0160】
(第7の実施形態の第一変形例)
以下、第7の実施形態に係る車両用灯具3010の第一変形例を説明する。
図29は、第7の実施形態に係る車両用灯具3010の第一変形例を示す模式図である。本変形例では、プライマリレンズ3030に代えて、
図24Aに示したプライマリレンズ3050を用いている。また、マイクロレンズアレイ3040に代えて、マイクロレンズアレイ4140を用いている。その他の構成は、第7の実施形態と同一の構成を採用できるため、以下では、変更点についてのみ説明する。
【0161】
本変形例において、プライマリレンズ3050は、光源3020に対して第1焦点距離f11を有する第1部位3051a(想像線L3及びL4の間の部位)と、光源3020に対して第1焦点距離f11よりも長い第2焦点距離f12を有する第2部位3051b(想像線L4の右方向側の部位)及び3051c(想像線L3の左方向側の部位)とを有している。第7の実施形態で説明したように、これらの焦点距離の違いにより、マイクロレンズアレイ3040を介して投影される投影像の投影画角を異ならせ、所望の配光パターンを形成できる。
【0162】
マイクロレンズアレイ4140は、複数の入射側レンズ部4141a~4141cと、複数の出射側レンズ部4142a~4142cとを備えている。入射側レンズ部4141a(想像線L3及びL4の間の部位)は、第1部位3051aからの平行光が入射する部位である。同様に、入射側レンズ部4141b(想像線L4の右方向側の部位)は第2部位3051bからの平行光が入射する部位であり、入射側レンズ部4141c(想像線L3の左方向側の部位)は第2部位3051cからの平行光が入射する部位である。
【0163】
本変形例において、入射側レンズ部4141a~4141cにおける各入射面の曲率半径は略等しい。すなわち、入射側レンズ部4141a~4141cの各入射側焦点距離f’は、略等しい。一方で、入射側レンズ部4141aの有効口径ah13は、入射側レンズ部4141cの有効口径ah14よりも大きい。なお、入射側レンズ部4141bの有効口径は、有効口径ah14と略同一である。
【0164】
本変形例では、入射側レンズ部4141aにおける有効口径ah13と、入射側レンズ部4141cにおける有効口径ah14の違いにより、入射側レンズ部4141aを通過する光と、入射側レンズ部4141cを通過する光とで、車両用灯具3010の前方へと投影される投影像の投影画角を異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の有効口径が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0165】
本変形例においても、プライマリレンズ3050の焦点距離f又はマイクロレンズアレイ4140の有効口径のどちらか一方のみで投影画角を制御するよりも、所望の配光パターンを形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を高めることが可能である。また、投影画角が小さい第2部位3051cからの平行光は、入射側レンズ部4141cを通過することで、さらに投影画角が小さくなるため、当該平行光による投影像の光度を増加させることが可能になる。
【0166】
入射側レンズ部4141aからの光が入射する出射側レンズ部4142aと、入射側レンズ部4141cからの光が入射する出射側レンズ部4142cとは、有効口径を除いて、同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0167】
(第7の実施形態の第二変形例)
以下、第7の実施形態に係る車両用灯具3010の第二変形例を説明する。
図30は、第7の実施形態に係る車両用灯具3010の第二変形例を示す模式図である。本変形例は、第7の実施形態の第一変形例におけるマイクロレンズアレイ4140に代えて、マイクロレンズアレイ4240を用いた例である。その他の構成は、第7の実施形態の第一変形例と同一の構成を採用できるため、以下では、変更点についてのみ説明する。
【0168】
マイクロレンズアレイ4240は、複数の入射側レンズ部4241a~4241cと、複数の出射側レンズ部4242a~4242cとを備えている。入射側レンズ部4241a(想像線L3及びL4の間の部位)は、第1部位3051aからの平行光が入射する部位である。同様に、入射側レンズ部4241b(想像線L4の右方向側の部位)は第2部位3051bからの平行光が入射する部位であり、入射側レンズ部4241c(想像線L3の左方向側の部位)は第2部位3051cからの平行光が入射する部位である。
【0169】
本変形例において、入射側レンズ部4241aの入射面の曲率半径は、入射側レンズ部4241b及び4241cの入射面の曲率半径よりも大きい。すなわち、入射側レンズ部4241aにおける入射側焦点距離f’1は、入射側レンズ部4241b及び4241cにおける入射側焦点距離f’2よりも長い。加えて、入射側レンズ部4241aの有効口径ah15は、入射側レンズ部4241cの有効口径ah16よりも大きい。なお、入射側レンズ部4241bの有効口径は、有効口径ah16と略同一である。
【0170】
本変形例は、入射側焦点距離f’及び有効口径ahの両方を上記のように構成したことにより、入射側レンズ部4241aを通過する光の投影画角と、入射側レンズ部4241b及び4241cを通過する光の投影画角との差を、更に大きくすることができる。そのため、所望の配光パターンを更に形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を更に高めることが可能である。また、所定の領域における光度を更に増加させることも可能である。
【0171】
入射側レンズ部4241aからの光が入射する出射側レンズ部4242aと、入射側レンズ部4241cからの光が入射する出射側レンズ部4242cとは、有効口径を除いて、同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0172】
(第8の実施形態)
本開示の第8の実施形態に係る車両用灯具は、複数の光学ユニットから構成される。
図31は、第8の実施形態に係る車両用灯具4110の一部の構成を示す模式図である。
図31に示すように、車両用灯具4110は、光学ユニット4090a~4090cを備えている。光学ユニット4090aは、光源4020aと、プライマリレンズ4080aと、マイクロレンズアレイ4340aとを備えている。光学ユニット4090bは、光源4020bと、プライマリレンズ4080bと、マイクロレンズアレイ4340bとを備えている。光学ユニット4090cは、光源4020cと、プライマリレンズ4080cと、マイクロレンズアレイ4340cとを備えている。
【0173】
光源4020a~4020cは、光源3020と同様の構成を採用できる。プライマリレンズ4080a~4080cは、いわゆるアプラナートレンズであり、光源に対する焦点距離fがレンズ内で変化せずに一定のコリメートレンズである。
【0174】
プライマリレンズ4080a~4080cの焦点距離fは、小さい順から、プライマリレンズ4080a~4080cとなっている。すなわち、プライマリレンズ4080aの焦点距離fが一番小さく、プライマリレンズ4080cの焦点距離fが一番大きい。これらの焦点距離fの違いにより、プライマリレンズ4080a~4080cのそれぞれから出射される平行光の間で、投影像の投影画角が異なることになる。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、焦点距離fが小さいほど、投影画角が大きくなる。
【0175】
マイクロレンズアレイ4340aを構成する各光学系は、全て同一である。すなわち、マイクロレンズアレイ4340aの入射面は、1種類の入射側レンズ部4341aで構成されており、各入射側レンズ部4341aの入射側焦点距離f’及び有効口径ahは等しい。同様に、マイクロレンズアレイ4340b及び4340cも、それぞれ1種類の光学系により構成されている。
【0176】
一方で、マイクロレンズアレイ4340a~4340c間で比較すると、それらを構成する光学系は異なっている。マイクロレンズアレイ4340a~4340cにおける入射側レンズ部4341a~4341cを比較すると、入射側レンズ部4341aの有効口径ah17が最も大きく、入射側レンズ部4341bの有効口径ah18が次に大きく、入射側レンズ部4341cの有効口径ah19が最も小さい。これらの有効口径の違いにより、車両用灯具4110の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の有効口径が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0177】
また、既に述べたように、プライマリレンズ4080a~4080cからの各平行光の投影画角は、それらの焦点距離fの違いにより、プライマリレンズ4080a~4080cの順で大きくなっている。本実施形態では、そのうえで、マイクロレンズアレイ4340a~4340cの有効口径の違いにより、マイクロレンズアレイ4340a~4340cを通過する各平行光の投影画角の差をさらに大きくしている。
【0178】
上記のような構成により、プライマリレンズの焦点距離f又はマイクロレンズアレイの有効口径のどちらか一方のみで投影画角を制御するよりも、所望の配光パターンを形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を高めることが可能である。また、投影画角が小さいプライマリレンズ4080cからの平行光は、マイクロレンズアレイ4340cを通過することで、さらに投影画角が小さくなるため、当該平行光による投影像の光度を増加させることが可能になる。
【0179】
なお、入射側レンズ部4341a~4341cの入射面における曲率半径は略等しい。すなわち、入射側レンズ部4341a~4341cそれぞれの入射側焦点距離f’は略同一である。出射側レンズ部4342a~4342cは、有効口径を除いて、それぞれ同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
図31では遮光板を図示していないが、各マイクロレンズアレイ4340a~4340cは、遮光板を備えていてもよい。上記で説明していない構成については、第7の実施形態で説明した内容を矛盾が生じない範囲で適宜採用することができる。
【0180】
図32は、第8の実施形態に係る車両用灯具4110によって形成される配光パターンの模式図である。
図32に示す領域Z13は、プライマリレンズ4080a及び入射側レンズ部4341aを通過した光によって形成される領域である。領域Z14は、プライマリレンズ4080b及び入射側レンズ部4341bを通過した光によって形成される領域である。領域Z15は、プライマリレンズ4080c及び入射側レンズ部4341cを通過した光によって形成される領域である。なお、
図32に示す配光パターンは、遮光板の影響を考慮しない場合のものである。
【0181】
車両用灯具4110において、更に複数の光学ユニットを備えるように変更することで、更に多様な配光パターンを形成することも可能である。また、少なくとも1以上のマイクロレンズアレイについて、第7の実施形態のように複数種類の光学系から構成されるものとすることで、更に多様な配光パターンを形成することも可能である。
【0182】
(第8の実施形態の第一変形例)
以下、第8の実施形態に係る車両用灯具4110の第一変形例を説明する。
図33は、
図31の車両用灯具4110の第一変形例を示す模式図である。本変形例では、マイクロレンズアレイ4340a~4340cに代えて、マイクロレンズアレイ4440a~4440cを用いている。その他の構成は、第8の実施形態と同一の構成を採用できるため、以下では、変更点についてのみ説明する。
【0183】
マイクロレンズアレイ4440a~4440cを構成する各光学系は、それぞれのマイクロレンズアレイにおいて全て同一である。一方で、マイクロレンズアレイ4440a~4440c間で比較すると、それらを構成する各光学系は、有効口径ah20~ah22は略等しいが、入射側焦点距離f’が異なっている。
【0184】
マイクロレンズアレイ4440a~4440cにおける各入射面における曲率半径は、マイクロレンズアレイ4440a~4440cの順で小さくなっている。すなわち、入射側レンズ部4441aの入射側焦点距離f’が最も大きく、入射側レンズ部4441bの入射側焦点距離f’が次に大きく、入射側レンズ部4441cの入射側焦点距離f’が最も小さい。これらの入射側焦点距離f’の違いにより、車両用灯具4110の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の入射側焦点距離f’が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0185】
本変形例においても、プライマリレンズの焦点距離f又はマイクロレンズアレイの入射側焦点距離f’のどちらか一方のみで投影画角を制御するよりも、所望の配光パターンを形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を高めることが可能である。また、投影画角が小さいプライマリレンズ4080cからの平行光は、マイクロレンズアレイ4440cを通過することで、さらに投影画角が小さくなるため、当該平行光による投影像の光度を増加させることが可能になる。
【0186】
なお、出射側レンズ部4442a~4442cは、それぞれ同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。また、
図33では遮光板を図示していないが、各マイクロレンズアレイ4440a~4440cは、遮光板を備えていてもよい。
【0187】
(第8の実施形態の第二変形例)
以下、車両用灯具4110の第二変形例を説明する。
図34は、
図31の車両用灯具4110の第二変形例を示す模式図である。本変形例は、マイクロレンズアレイ4340a~4340cに代えて、マイクロレンズアレイ4540a~4540cを用いている。その他の構成は、第8の実施形態と同一の構成を採用できるため、以下では、変更点についてのみ説明する。
【0188】
マイクロレンズアレイ4540a~4540cを構成する各光学系は、それぞれのマイクロレンズアレイにおいて全て同一である。一方で、マイクロレンズアレイ4540a~4540c間で比較すると、それらを構成する各光学系は、有効口径および入射側焦点距離f’が異なっている。
【0189】
マイクロレンズアレイ4540a~4540cにおける入射側レンズ部4541a~4541cを比較すると、入射側レンズ部4541aの有効口径ah23が最も大きく、入射側レンズ部4541bの有効口径ah24が次に大きく、入射側レンズ部4541cの有効口径ah25が最も小さい。これらの有効口径の違いにより、車両用灯具4110の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の有効口径が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0190】
また、マイクロレンズアレイ4540a~4540cにおける各入射面における曲率半径は、マイクロレンズアレイ4540a~4540cの順で小さくなっている。すなわち、入射側レンズ部4541aの入射側焦点距離f’が最も大きく、入射側レンズ部4541bの入射側焦点距離f’が次に大きく、入射側レンズ部4541cの入射側焦点距離f’が最も小さい。これらの入射側焦点距離f’の違いにより、車両用灯具4110の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の入射側焦点距離f’が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0191】
本変形例は、入射側焦点距離f’及び有効口径ahの両方を上記のように構成したことにより、各光学ユニットによるそれぞれの投影像の投影画角の差を、更に大きくすることができる。そのため、所望の配光パターンを更に形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を更に高めることが可能である。また、所定の領域における光度を更に増加させることも可能である。
【0192】
なお、出射側レンズ部4542a~4542cは、有効口径を除いて、それぞれ同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。また、
図34では遮光板を図示していないが、各マイクロレンズアレイ4540a~4540cは、遮光板を備えていてもよい。
【0193】
図35は、本開示の車両用灯具3010又は4110によって形成可能な配光パターンの一例である。
図35は、具体的には、車両用灯具3010又は4110を車両用の前照灯に適用し、当該前照灯からの照射光によって形成したロービーム用配光パターンPtを示した図である。
【0194】
ロービーム用配光パターンPtは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁にカットオフラインCL1及びCL2を有している。具体的には、前照灯の正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線よりも右側の対向車線側部分が水平方向のカットオフラインCL1として形成され、V-V線よりも左側の自車線側部分が斜め方向のカットオフラインCL2として形成されている。また、両者の交点であるエルボ点Eは、H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置している。
【0195】
ロービーム用配光パターンPtにおける領域Z13は、例えば、投影画角が最も大きい光によって照射される部分であり、領域Z14及びZ15よりも光度が低い。領域Z14は、例えば、投影画角が最も大きい光および投影画角が二番目に大きい光によって照射される部分であり、Z15よりも光度が低い。領域Z14は、例えば、投影画角が最も大きい光、投影画角が二番目に大きい光、及び投影画角が最も小さい光によって照射される部分であり、各領域の中で最も光度が高い。
【0196】
(第9の実施形態)
図36は、本開示の第9の実施形態に係る車両用灯具5010の水平断面図である。
図36に示すように、車両用灯具5010は、ランプボディ5011及び透光カバー5012によって形成される灯室内に、3つの光学ユニット5090A、5090B、5090Cが左右方向に並んで配置された構成となっている。
【0197】
光学ユニット5090Aは、光源5020Aと、プライマリレンズ5030Aと、マイクロレンズアレイ5040Aと、を備えている。同様に、光学ユニット5090Bは、光源5020Bと、プライマリレンズ5030Bと、マイクロレンズアレイ5040Bと、を備えている。同様に、光学ユニット5090Cは、光源5020Cと、プライマリレンズ5030Cと、マイクロレンズアレイ5040Cと、を備えている。以下では、主に光学ユニット5090Aの構成について説明するが、特に言及がない限り、光学ユニット5090B及び5090Cについても、光学ユニット5090Aと同様の構成を採用可能である。
【0198】
光源5020Aは、ランプボディ5011によって支持される基板5021Aに搭載された状態で、前方向へ向けて配置されている。光源5020Aから出射される光は、プライマリレンズ5030A及びマイクロレンズアレイ5040Aを通過して、車両用灯具5010の前方向へと出射される。
【0199】
光源5020Aは、他の実施形態で説明した光源3020と同様の構成を採用できる。なお、光源5020A、5020B、5020Cは、サイズがそれぞれ異なっている。サイズの違いついては、
図38を用いて後述する。
【0200】
プライマリレンズ5030Aは、光源5020Aに対して第1焦点距離f31を有する第1部位5031aと、光源5020Aに対して第1焦点距離f31よりも長い第2焦点距離f32を有する第2部位5031b及び5031cとを有している。これらの焦点距離の違いにより、第1部位5031aからマイクロレンズアレイ5040Aへ向けて出射される平行光と、第2部位5031b及び5031cからマイクロレンズアレイ5040Aへ向けて出射される平行光とでは、マイクロレンズアレイ5040Aを介して投影される投影像の投影画角が異なることになる。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、プライマリレンズ5030Aにおける光源5020Aに対する焦点距離が小さいほど、投影画角が大きくなる。
【0201】
なお、プライマリレンズ5030Aの上記構成および以下で説明する構成は、好ましい構成の一つであって、必須の構成ではない。例えば、プライマリレンズ5030Aとして、光源に対する焦点距離fがレンズ内で変化せずに一定のコリメートレンズ(例えば、アプラナートレンズ)を用いてもよい。プライマリレンズ5030Aは、光源5020Aに近接して配置されていてもよく、光源5020Aから一定の距離を置いて配置されていてもよい。
【0202】
プライマリレンズ5030Aは、光源5020Aに対する焦点距離fがレンズ内で変化するコリメートレンズである。プライマリレンズ5030Aは、例えば、3種類以上の焦点距離fを有する構成であってもよい。また、プライマリレンズ5030Aは、焦点距離fが光軸Ax11からの距離等に応じて連続的に変化するよう構成してもよいし、不連続的に変化するよう構成してもよい。プライマリレンズ5030Aの各部位における焦点距離fは、例えば、その部位と光源5020Aとの距離に応じたものとすることが好ましい。
【0203】
プライマリレンズ5030Aは、光源5020Aからの光を入射させる入射面5032a~5032cと、入射面5032a~5032cから入射した光をマイクロレンズアレイ5040Aへ向けて出射させる出射面5033とを備えている。プライマリレンズ5030Aの形状は、特に制限はされないが、例えば、後方視において円形状である。プライマリレンズ5030Aは、出射面5033の外周部に形成されるフランジ部5034において、ランプボディ5011に支持される。
【0204】
入射面5032aは、光源5020Aの発光中心を通るようにして前後方向に延びる光軸Ax11を中心とする回転曲面で構成されている。入射面5032aから入射する光は、例えば、入射面5032aにおいて屈折し、光軸Ax11に略平行な光となって、出射面5033から出射される。
【0205】
入射面5032bから入射する光は、例えば、光軸Ax11から離れる方向に向けて進んだ後、第2部位5031bの周辺領域において全反射によって内面反射し、光軸Ax11と略平行な光となって、出射面5033から出射される。入射面5032cから入射する光も、上記と同様である。
【0206】
出射面5033は、光軸Ax11と直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されている。出射面5033は、例えば、入射面5032a~5032cから入射した光を光軸Ax11と平行な光としてマイクロレンズアレイ5040Aへ向けて出射する。
【0207】
マイクロレンズアレイ5040Aは、複数の光学系によって構成されている。
図37は、マイクロレンズアレイ5040Aを構成する光学系5044の分解斜視図である。
図37に示す光学系5044は、光軸Ax14を有する入射側レンズ部5041と、光軸Ax14’を有する出射側レンズ部5042と、遮光板5043とを備えている。光軸Ax14と光軸Ax14’は一致してもよいし、ずれていてもよい。光軸Ax14と光軸Ax14’は、
図36に示す光軸Ax11に略平行である。
【0208】
入射側レンズ部5041は、プライマリレンズ5030Aの出射面5033から出射された光が入射する部位であり、例えば、出射面5033に対向する面が凸曲面を有するように形成されている。一方で、入射側レンズ部5041における出射側レンズ部5042と対向する面は、光軸Ax14と直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されている。
【0209】
入射側レンズ部5041の垂直方向における有効口径(長さ)avと、水平方向における有効口径(長さ)ahとは、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。車両用灯具に適した横長の配光パターンを形成することを容易にするという観点からは、有効口径avよりも有効口径ahを長くすることが好ましい。
【0210】
遮光板5043は、入射側レンズ部5041と出射側レンズ部5042との間に設けられている。遮光板5043は、投影像の形状を規定するものであり、例えば、カットオフラインを形成するものである。遮光板5043は、開口部5043aと、遮光部5043bとを有している。入射側レンズ部5041に入射した光は、その一部が遮光部5043bによって遮られる。遮られなかった光は、開口部5043aを通過して、出射側レンズ部5042から前方向へと出射される。
【0211】
マイクロレンズアレイ5040Aを構成する複数の光学系5044のうちの一部は、遮光板5043を有していなくてもよい。また、カットオフラインを必要としない場合等は、マイクロレンズアレイ5040Aは、遮光板5043を有さないように構成してもよい。また、マイクロレンズアレイ5040Aは、入射側レンズ部5041と出射側レンズ部5042との間に、光源5020から出射された光の色を変更するためのカラーフィルタを備えていてもよい。
【0212】
出射側レンズ部5042は、入射側レンズ部5041から入射した光を前方向へ向けて出射する部位である。出射側レンズ部5042における前方向側の面は、凸曲面を有するように形成されている。一方で、出射側レンズ部5042における後方向側の面(入射側レンズ部5041と対向する面)は、光軸Ax14’と直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されている。
【0213】
入射側レンズ部5041と、出射側レンズ部5042とは、互いに対向する面同士が同一形状を有するように構成されている。入射側レンズ部5041と、出射側レンズ部5042とは、互いの間に遮光板5043を挟んだ状態で一体化されている。
【0214】
図36に示すマイクロレンズアレイ5040Aは、上記の光学系5044を複数備えており、各々の光学系5044が光軸Ax11に交差する方向に隣接して並んだ状態(例えば、左右方向および上下方向に並んだ状態)で一体化したアレイ状の構造を有している。マイクロレンズアレイ5040Aの形状は、特に制限はされないが、例えば、後方視において矩形状または円形状である。
【0215】
図36では示していないが、本実施形態において、光源5020A~5020Cは、それぞれのサイズが異なっている。また、マイクロレンズアレイ5040A~5040C間で比較すると、それらを構成する光学系は異なっている。以下、これらの違いについて、
図38を用いて詳述する。
【0216】
図38は、本実施形態に係る車両用灯具5010の構成を示す模式図である。以下では、
図38を用いて、各光学ユニット5090A~5090C間の主な違いについて説明する。
【0217】
各光学ユニット5090A~5090C間において、光源5020A、5020B、5020Cは、左右方向の長さ(発光面の長さ)がそれぞれ異なっている。左右方向における光源5020Aの長さd11、光源5020Bの長さd12、及び光源5020Cの長さd13は、長さd11<長さd12<長さd13の関係にある。このような構成により、光学ユニット毎に、それぞれのマイクロレンズアレイを介して投影される投影像の左右方向における投影画角が異なることになる。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、光源の長さが長いほど、投影画角が大きくなる。
【0218】
長さd11~d13の比(長さd11:長さd12:長さd13)は、所望する配光パターンに応じて適宜決定すればよいが、例えば、1:1~3:1~5の範囲であることが好ましい。また、長さd11の長さは、特に制限はされないが、例えば、0.25~2mmであることが好ましい。同様に、長さd12の長さは、例えば、0.25~10mmであることが好ましい。長さd13の長さは、例えば、0.25~10mmであることが好ましい。なお、光源5020A~5020Cは、複数の光源を並列させたものでもよく、例えば、正方形の発光面を有する光源を複数並列させたものでもよい。
【0219】
光源5020A~5020Cの上下方向における各々の長さは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。光源5020A~5020Cの上下方向における各々の長さを異ならせる場合、光学ユニット毎に、それぞれのマイクロレンズアレイを介して投影される投影像の上下方向における投影画角も異ならせることができる。結果として、より多彩な配光パターンを実現可能になる。光源5020A~5020Cの上下方向における各々の長さは、特に制限されないが、例えば、0.1~2mmの範囲であることが好ましい。
【0220】
また、各光学ユニット5090A~5090C間において、マイクロレンズアレイ5040A、5040B、5040Cは、それらを構成する光学系が異なっている。具体的には、マイクロレンズアレイ5040A~5040Cをそれぞれ構成する入射側レンズ部5041a~5041c間で比較すると、それぞれの有効口径ah31~ah33は略等しいが、入射側焦点距離f’が異なっている。
【0221】
入射側レンズ部5041a~5041cの各入射面における曲率半径は、小さい順から、入射側レンズ部5041a~5041cとなっている。すなわち、入射側レンズ部5041aの入射側焦点距離f’が最も小さく、入射側レンズ部5041bの入射側焦点距離f’が次に小さく、入射側レンズ部5041cの入射側焦点距離f’が最も大きい。これらの入射側焦点距離f’の違いにより、車両用灯具5010の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部5041の入射側焦点距離f’が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0222】
また、既に述べたように、光源5020A~5020Cの長さd11~d13の違いにより、光学ユニット毎に、それぞれのマイクロレンズアレイを介して投影される投影像の左右方向における投影画角が異なっている。そのうえで、さらに、入射側レンズ部5041a~5041cの各入射側焦点距離f’の違いにより、投影画角の差をさらに大きくしている。
【0223】
このような構成により、光源5020A~5020Cそれぞれの長さ又はマイクロレンズアレイ5040A~5040Cの入射側焦点距離f’のどちらか一方のみで投影画角を制御するよりも、所望の配光パターンを形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を高めることが可能である。
【0224】
また、光学ユニット5090Aでは、光源の長さが短く投影画角の小さい光源5020Aからの光が入射側レンズ部5041aを通過することで、さらに投影画角が小さくなるため、当該光学ユニット5090Aによる投影像の光度を増加させることが可能になる。
【0225】
また、本実施形態に係る車両用灯具5010によれば、各入射側レンズ部5041の有効口径を変えなくとも所望の配光パターンを形成可能になるので、マイクロレンズアレイのサイズが大きくなることを抑制でき、省スペース性に寄与できる。
【0226】
出射側レンズ部5042a~5042cは、それぞれ同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。なお、
図38において、遮光板5043は図示を省略している。
【0227】
本実施形態に係る車両用灯具5010によって形成される配光パターンは、
図32に示すものと同様でありうる。
図32に示す領域Z13は、例えば、光学ユニット90Cから照射される光によって形成される領域である。領域Z14は、例えば、光学ユニット90C及び90Bから照射される光によって形成される領域である。領域Z15は、例えば、光学ユニット90C、90B、及び90Aから照射される光によって形成される領域である。
【0228】
車両用灯具5010において、例えば、更に複数種類の光学ユニットを備えるように構成することで、更に多様な配光パターンを形成することも可能である。車両用灯具5010が更に複数種類の光学ユニットを備える場合、各光学ユニット間において、例えば、各光源の長さの大小関係と、各入射側レンズ部の入射側焦点距離の大小関係とが対応するように構成することが好ましい。
【0229】
図24A~
図24Cに示した各レンズは、本実施形態におけるプライマリレンズとして適用可能である。
【0230】
(第9の実施形態の第一変形例)
以下、上述した車両用灯具5010の第一変形例を説明する。
図39は、
図36の車両用灯具5010の第一変形例を示す模式図である。本変形例では、プライマリレンズ5030A~5030Cに代えて、プライマリレンズ5050A~5050Cを用いている。また、マイクロレンズアレイ5040A~5040Cに代えて、マイクロレンズアレイ5140A~5140Cを用いている。その他の構成は、第9の実施形態と同一の構成を採用できるため、以下では、変更点についてのみ説明する。
【0231】
プライマリレンズ5050A~5050Cは、
図24Aに示したプライマリレンズ5050と同様のレンズである。プライマリレンズ5050A~5050Cは、各光学ユニット5190A~5190Cにおいて、例えば、プライマリレンズ5030A~5030Cと同等の機能を発揮する。
【0232】
各光学ユニット5190A~5190C間において、マイクロレンズアレイ5140A、5140B、5140Cは、それらを構成する光学系が異なっている。具体的には、マイクロレンズアレイ5140A~5140Cをそれぞれ構成する入射側レンズ部5141a~5141c間で比較すると、それぞれの入射側焦点距離f’は略等しいが、有効口径ah34~ah36が異なっている。
【0233】
入射側レンズ部5141a~5141cの有効口径ah34~ah36は、小さい順から、有効口径ah34~ah36となっている。すなわち、入射側レンズ部5141aの有効口径ah34が最も小さく、入射側レンズ部5141bの有効口径ah35が次に小さく、入射側レンズ部5041cの有効口径ah36が最も大きい。これらの有効口径の違いにより、車両用灯具5010の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の有効口径が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0234】
本変形例においても、光源5020A~5020Cそれぞれの長さ又はマイクロレンズアレイ5140A~5140Cの各有効口径のどちらか一方のみで投影画角を制御するよりも、所望の配光パターンを形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を高めることが可能である。また、光学ユニット5190Aでは、光源の長さが短く投影画角の小さい光源5020Aからの光が入射側レンズ部5141aを通過することで、さらに投影画角が小さくなるため、当該光学ユニット5190Aによる投影像の光度を増加させることが可能になる。なお、出射側レンズ部5142a~5142cとは、有効口径を除いて、同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0235】
(第9の実施形態の第二変形例)
以下、上述した車両用灯具5010の第二変形例を説明する。
図40は、
図36の車両用灯具5010の第二変形例を示す模式図である。第二変形例は、第一変形例におけるマイクロレンズアレイ5140A~5140Cに代えて、マイクロレンズアレイ5240A~5240Cを用いた例である。その他の構成は、第一変形例と同一の構成を採用できるため、以下では、変更点についてのみ説明する。
【0236】
各光学ユニット5290A~5290C間において、マイクロレンズアレイ5240A、5240B、5240Cは、それらを構成する光学系が異なっている。具体的には、マイクロレンズアレイ5240A~5240Cをそれぞれ構成する入射側レンズ部5241a~5241c間で比較すると、それぞれの入射側焦点距離f’、及び、有効口径ah37~ah39が異なっている。
【0237】
入射側レンズ部5241a~5241cの各入射面における曲率半径は、小さい順から、入射側レンズ部5241a~5241cとなっている。すなわち、入射側レンズ部5241aの入射側焦点距離f’が最も小さく、入射側レンズ部5241bの入射側焦点距離f’が次に小さく、入射側レンズ部5241cの入射側焦点距離f’が最も大きい。これらの入射側焦点距離f’の違いにより、車両用灯具5010の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の入射側焦点距離f’が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0238】
また、入射側レンズ部5241a~5241cの有効口径ah37~ah39は、小さい順から、有効口径ah37~ah39となっている。すなわち、入射側レンズ部5241aの有効口径ah37が最も小さく、入射側レンズ部5241bの有効口径ah38が次に小さく、入射側レンズ部5241cの有効口径ah39が最も大きい。これらの有効口径の違いにより、車両用灯具5010の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の有効口径が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0239】
本変形例では、入射側焦点距離f’及び有効口径ahの両方を上記のように構成したことにより、各光学ユニットによるそれぞれの投影像の投影画角の差を、更に大きくすることができる。そのため、所望の配光パターンを更に形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を更に高めることが可能である。また、所定の領域における光度を更に増加させることも可能である。なお、出射側レンズ部5242a~5242cは、有効口径を除いて、それぞれ同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0240】
(第10の実施形態)
以下、本開示の第10の実施形態に係る車両用灯具5110の構成を説明する。なお、以下で言及をしない構成については、第9の実施形態で説明した内容を矛盾が生じない範囲で適宜採用することができる。
【0241】
図41は、第10の実施形態に係る車両用灯具5110の一部の構成を示す模式図である。第10の実施形態に係る車両用灯具5110は、光学ユニット5390A~5390Cを備えている。光学ユニット5390Aは、光源5020Aと、プライマリレンズ5080Aと、マイクロレンズアレイ5340Aとを備えている。光学ユニット5090Bは、光源5020Bと、プライマリレンズ5080Bと、マイクロレンズアレイ5340Bとを備えている。光学ユニット5090Cは、光源5020Cと、プライマリレンズ5080Cと、マイクロレンズアレイ5340Cとを備えている。
【0242】
光源5020A~5020Cは、第9の実施形態における光源5020A~5020Cのそれぞれと同様の構成を採用できる。プライマリレンズ5080A~5080Cは、いわゆるアプラナートレンズであり、光源に対する焦点距離fがレンズ内で変化せずに一定のコリメートレンズである。
【0243】
プライマリレンズ5080A~5080Cの焦点距離fは、小さい順から、プライマリレンズ5080C~5080Aとなっている。すなわち、プライマリレンズ5080Cの焦点距離fが一番小さく、プライマリレンズ5080Bの焦点距離fが次に小さく、プライマリレンズ5080Aの焦点距離fが最も大きい。これらの焦点距離fの違いにより、車両用灯具5110の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、プライマリレンズの焦点距離fが小さいほど、投影画角が大きくなる。
【0244】
本実施形態においても、光源5020A~5020Cそれぞれの長さ又はプライマリレンズ5080A~5080Cの各焦点距離のどちらか一方のみで投影画角を制御するよりも、所望の配光パターンを形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を高めることが可能である。また、光学ユニット5390Aでは、光源の長さが短く投影画角の小さい光源5020Aからの光がプライマリレンズ5080Aを通過することで、さらに投影画角が小さくなるため、当該光学ユニット5390Aによる投影像の光度を増加させることが可能になる。
【0245】
マイクロレンズアレイ5340A~5340Cは、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。本実施形態では、マイクロレンズアレイ5340A~5340Cが同一のものであったとしても、所望の配光パターンを形成することが可能である。マイクロレンズアレイ5340A~5340Cを同一のものにする場合、例えば、車両用灯具5110の製造コストを抑えることができる。
【0246】
(第10の実施形態の第一変形例)
以下、車両用灯具5110の第一変形例を説明する。
図42は、
図41の車両用灯具5110の第一変形例を示す模式図である。本変形例では、マイクロレンズアレイ5340A~5340C代えて、マイクロレンズアレイ5440A~5440Cを用いている。その他の構成は、第10の実施形態と同一の構成を採用できるため、以下では、変更点についてのみ説明する。
【0247】
各光学ユニット5490A~5490C間において、マイクロレンズアレイ5440A、5440B、5440Cは、それらを構成する光学系が異なっている。具体的には、マイクロレンズアレイ5440A~5440Cをそれぞれ構成する入射側レンズ部5441a~5441c間で比較すると、それぞれの有効口径ah40~ah42は略等しいが、入射側焦点距離f’が異なっている。
【0248】
入射側レンズ部5441a~5441cの各入射面における曲率半径は、小さい順から、入射側レンズ部5441a~5441cとなっている。すなわち、入射側レンズ部5441aの入射側焦点距離f’が最も小さく、入射側レンズ部5441bの入射側焦点距離f’が次に小さく、入射側レンズ部5441cの入射側焦点距離f’が最も大きい。これらの入射側焦点距離f’の違いにより、車両用灯具5110の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の入射側焦点距離f’が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0249】
本変形例では、光源5020A~5020Cの長さd11~d13の違い、及び、プライマリレンズ5080A~5080Cの各焦点距離fの違いに加えて、さらに、マイクロレンズアレイ5440A~5440Cの入射側焦点距離f’を上記のように構成したことにより、各光学ユニットによるそれぞれの投影像の投影画角の差を、更に大きくすることができる。そのため、所望の配光パターンを更に形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を更に高めることが可能である。また、所定の領域における光度を更に増加させることも可能である。また、各入射側レンズ部の有効口径を変えなくともよいので、マイクロレンズアレイのサイズが大きくなることを抑制でき、省スペース性に寄与できる。なお、出射側レンズ部5442a~5442cは、それぞれ同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0250】
(第10の実施形態の第二変形例)
以下、車両用灯具5110の第二変形例を説明する。
図43は、
図41の車両用灯具5110の第二変形例を示す模式図である。本変形例では、マイクロレンズアレイ5340A~5340Cに代えて、マイクロレンズアレイ5540A~5540Cを用いている。その他の構成は、第10の実施形態と同一の構成を採用できるため、以下では、変更点についてのみ説明する。
【0251】
各光学ユニット5590A~5590C間において、マイクロレンズアレイ5540A、5540B、5540Cは、それらを構成する光学系が異なっている。具体的には、マイクロレンズアレイ5540A~5540Cをそれぞれ構成する入射側レンズ部5541a~5541c間で比較すると、それぞれの入射側焦点距離f’は略等しいが、有効口径ah43~ah45が異なっている。
【0252】
入射側レンズ部5541a~5541cの有効口径ah43~ah45は、小さい順から、有効口径ah43~ah45となっている。すなわち、入射側レンズ部5541aの有効口径ah43が最も小さく、入射側レンズ部5541bの有効口径ah44が次に小さく、入射側レンズ部5541cの有効口径ah45が最も大きい。これらの有効口径の違いにより、車両用灯具5110の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の有効口径が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0253】
本変形例では、光源5020A~5020Cの長さd11~d13の違い、及び、プライマリレンズ5080A~5080Cの各焦点距離fの違いに加えて、さらに、マイクロレンズアレイ5540A~5540Cの各有効口径を上記のように構成したことにより、各光学ユニットによるそれぞれの投影像の投影画角の差を、更に大きくすることができる。そのため、所望の配光パターンを更に形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を更に高めることが可能である。また、所定の領域における光度を更に増加させることも可能である。なお、出射側レンズ部5542a~5542cは、有効口径を除いて、それぞれ同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0254】
(第10の実施形態の第三変形例)
以下、車両用灯具5110の第三変形例を説明する。
図44は、
図41の車両用灯具5110の第三変形例を示す模式図である。本変形例では、マイクロレンズアレイ5340A~5340Cに代えて、マイクロレンズアレイ5640A~5640Cを用いている。その他の構成は、第10の実施形態と同一の構成を採用できるため、以下では、変更点についてのみ説明する。
【0255】
各光学ユニット5690A~5690C間において、マイクロレンズアレイ5640A、5640B、5640Cは、それらを構成する光学系が異なっている。具体的には、マイクロレンズアレイ5640A~5640Cをそれぞれ構成する入射側レンズ部5641a~5641c間で比較すると、それぞれの入射側焦点距離f’、及び、有効口径ah46~ah48が異なっている。
【0256】
入射側レンズ部5641a~5641cの各入射面における曲率半径は、小さい順から、入射側レンズ部5641a~5641cとなっている。すなわち、入射側レンズ部5641aの入射側焦点距離f’が最も小さく、入射側レンズ部5641bの入射側焦点距離f’が次に小さく、入射側レンズ部5641cの入射側焦点距離f’が最も大きい。これらの入射側焦点距離f’の違いにより、車両用灯具5110の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の入射側焦点距離f’が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0257】
また、入射側レンズ部5641a~5641cの有効口径ah46~ah48は、小さい順から、有効口径ah46~ah48となっている。すなわち、入射側レンズ部5641aの有効口径ah46が最も小さく、入射側レンズ部5641bの有効口径ah47が次に小さく、入射側レンズ部5641cの有効口径ah48が最も大きい。これらの有効口径の違いにより、車両用灯具5110の前方へと投影される投影像の投影画角を光学ユニット毎に異ならせている。そのため、これら画角の異なる投影像を重ね合わせることにより、所望の配光パターンを形成できる。なお、入射側レンズ部の有効口径が大きいほど、投影画角が大きくなる。
【0258】
本変形例では、光源5020A~5020Cの長さd11~d13の違い、及び、プライマリレンズ5080A~5080Cの各焦点距離fの違いに加えて、さらに、各マイクロレンズアレイの入射側焦点距離f’及び有効口径ahの両方を上記のように構成したことにより、各光学ユニットによるそれぞれの投影像の投影画角の差を、更に大きくすることができる。そのため、所望の配光パターンを更に形成し易くなっており、光学的な設計の自由度を更に高めることが可能である。また、所定の領域における光度を更に増加させることも可能である。なお、出射側レンズ部5642a~5642cは、有効口径を除いて、それぞれ同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0259】
上述の車両用灯具5010又は5110によって形成可能な配光パターンは、
図35に示すものと同様でありうる。
図12は、具体的には、車両用灯具10又は110を車両用の前照灯に適用し、当該前照灯からの照射光によって形成したロービーム用配光パターンPtを示した図である。
【0260】
ロービーム用配光パターンPtは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁にカットオフラインCL1及びCL2を有している。具体的には、前照灯の正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線よりも右側の対向車線側部分が水平方向のカットオフラインCL1として形成され、V-V線よりも左側の自車線側部分が斜め方向のカットオフラインCL2として形成されている。また、両者の交点であるエルボ点Eは、H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置している。
【0261】
ロービーム用配光パターンPtにおける領域Z13は、例えば、投影画角が最も大きい光によって照射される部分であり、領域Z14及びZ15よりも光度が低い。領域Z14は、例えば、投影画角が最も大きい光および投影画角が二番目に大きい光によって照射される部分であり、Z15よりも光度が低い。領域Z15は、例えば、投影画角が最も大きい光、投影画角が二番目に大きい光、及び投影画角が最も小さい光によって照射される部分であり、各領域の中で最も光度が高い。
【0262】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0263】
本出願は、2019年9月24日出願の日本特許出願2019-173243号、日本特許出願2019-173244号、日本特許出願2019-173245、日本特許出願2019-173246、日本特許出願2019-173247、日本特許出願2019-173248、及び日本特許出願2019-173249号に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。