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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドの製剤化方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20240612BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C12Q1/68 ZNA
C12N15/10 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021549745
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2020054716
(87)【国際公開番号】W WO2020173845
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】19159353.2
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515129320
【氏名又は名称】ロシュ イノベーション センター コペンハーゲン エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アッペルドルフ ラーセン インナ
(72)【発明者】
【氏名】メルゴー ミカエル
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/023439(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0009009(US,A1)
【文献】特開2001-033439(JP,A)
【文献】特開2010-227003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチド塩の水和粉末形態中に存在するオリゴヌクレオチド塩の乾燥重量(m化合物塩)を決定するための方法であって、
a.固体粉末形態の前記オリゴヌクレオチド塩の既知の分子量(MW化合物塩)を得ること;
b.前記固体粉末形態の前記オリゴヌクレオチド塩を少なくとも2時間の期間、約10~約70%の相対湿度を有する雰囲気に曝露すること;
c.前記少なくとも2時間の期間後の前記固体粉末形態の前記オリゴヌクレオチド塩の重量(W=m化合物塩+HO)を測定すること;
d.前記オリゴヌクレオチドの前記乾燥重量を決定すること
を含み、
前記乾燥重量(m化合物塩)が以下の式:
(式中、
Wは、工程cで測定された前記固体粉末形態の前記オリゴヌクレオチド塩の重量であり;
Yは、0.06±0.011であり、例えば、Yは0.0545~0.0711の間の値であり;
MWH2Oは、水の分子量であり、
Zは、前記オリゴヌクレオチド中のヌクレオチドの数であり、
MW化合物塩は、前記オリゴヌクレオチド塩の分子量である)
によって決定される、方法。
【請求項2】
オリゴヌクレオチド塩の水和粉末形態中に存在するオリゴヌクレオチド塩のモル数(n化合物塩)を決定するための方法であって、請求項1に記載の方法を実施することを含み、前記モル数が、以下の式:
化合物塩=化合物塩/MW化合物塩
により決定される、方法。
【請求項3】
規定濃度(m化合物塩/単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を調製するための方法であって、請求項1に記載の方法を実施し、続いて、計算された乾燥重量の前記オリゴヌクレオチド塩を既知の容積の溶媒に溶解して、前記規定濃度(m化合物塩/単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を提供することを含む、方法。
【請求項4】
規定モル濃度(n化合物塩/単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を調製するための方法であって、請求項2に記載の方法を実施し、続いて、計算されたモル数の前記オリゴヌクレオチド塩を既知の容積の溶媒に溶解して、前記規定モル濃度(n化合物塩/単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を提供することを含む、方法。
【請求項5】
前記溶媒製剤をバイアルまたはシリンジに分取する工程をさらに含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記バイアルまたはシリンジに分取することが、単位用量形態の前記オリゴヌクレオチド塩を分取することである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒製剤を滅菌する(請求項5または6に記載の分取の前、最中、または後になし得る)工程をさらに含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒製剤をバイアルに分取する工程、続いて、前記溶媒製剤から前記溶媒を除去して、既知量の乾燥オリゴヌクレオチド塩を含有するバイアルを提供する工程をさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドコンジュゲートである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチドコンジュゲートが、炭水化物コンジュゲート部分、例えばGalNAcコンジュゲート部分、またはレポーター基、例えば蛍光基(例えばFAM)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程b)の前記雰囲気が、約10~約60%の既知の相対湿度、または約20~約50%の相対湿度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程b.で言及される前記期間が、少なくとも約2時間、または少なくとも約3時間、または少なくとも約4時間である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドが、2′-O-アルキル-RNA、2′-O-メチル-RNA、2′-アルコキシ-RNA、2′-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、2′-アミノ-DNA、2′-フルオロ-RNA、2′-F-ANAヌクレオシド、およびLNAヌクレオシド(複数可)からなる群から選択される1種以上のヌクレオシドを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチド塩のイオン性カチオンが、ナトリウムもしくはカリウムカチオンなどの金属カチオン、またはアンモニウムカチオンから選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチドが、8~25個の連続するヌクレオチド、例えば12~20個のヌクレオチドの長さを有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、粉末形態中に存在するオリゴヌクレオチドの量を決定するための方法に関する。この方法は、オリゴヌクレオチドの吸光係数の実験的決定、または段階希釈およびA260の測定を必要としない。この方法は、例えば、2′糖修飾オリゴヌクレオチド、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、レポーター標識オリゴヌクレオチドおよびコンジュゲートオリゴヌクレオチドを含む修飾オリゴヌクレオチドに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
背景
オリゴヌクレオチドと水分子との間の水素結合形成のための多数の潜在的な部位、例えば、リボース部分もしくはヌクレオシド間結合もしくは塩基部分の酸素原子、または他の修飾、例えば共役基が存在する。
【0003】
Vovelle and Goodfellow,Int.J.Biol.Macromol.,1990,Vol.12,pp369-373(非特許文献1)には、DNAの水和レベルが塩基配列およびDNA立体配座の両者によって決まることが報告されている。
【0004】
結果として、粉末化オリゴヌクレオチドは、周囲の相対湿度に応じて、水を吸い上げる(吸収)または放出(収着)する傾向があり、相対湿度の関数としての重量増加または重量減少をもたらす。
【0005】
オリゴヌクレオチドを無水雰囲気下、例えば窒素下で維持しない限り、製剤化の前にオリゴヌクレオチドの含水量を決定する必要がある。これは、一般的には、水への可溶化および260nmでの吸収(A260)によるオリゴヌクレオチド濃度の測定によって実施され、多くの場合、段階希釈手順を使用する。オリゴヌクレオチドの含水量を決定するためのカールフィッシャー分析の使用をさらに開示しているHandbook of Analysis of Oligonucleotide and Related Products,p286-289(非特許文献2)を参照されたい。また後の臨床段階(高い精度が必要とされる場合)では、Beer-Lambertの法則(Abs=ε260*l*C)に基づいて、希釈系列を通してオリゴヌクレオチドの吸光係数の実験的決定を行うべきである。
【0006】
Murphy and Trapane,Analytical Biochemistry 1996,Vol 240,pp273-282(非特許文献3)には、オリゴマー分解および化学量論的リンの決定に基づいて核酸オリゴマーおよびそれらの類似体の濃度を決定するための一般的なリン酸分析方法、核酸オリゴマー中の個々のヌクレオシド残基の吸収プロファイルの事前知識を必要としない方法が報告されている。
【0007】
オリゴヌクレオチドの物理化学的性質は、オリゴヌクレオチドの配列および修飾の存在に依存し、オリゴヌクレオチドは、それらの特性を高めるために日常的に修飾され、例えば、2′糖修飾修飾の組み込みは、相補的な標的配列に対するオリゴヌクレオチドの結合親和性を高めるために使用され、プローブおよびプライマーならびに研究試薬および治療薬における有用性があることがわかる。典型的には、リボースの2′位に負に帯電した置換基が存在すると、結合親和性が向上し、さらにヌクレアーゼ耐性が向上し得る(例えば、2′-O-メトキシエチルまたはLNAヌクレオシドで見られるように)。負に帯電した置換基の付加および負に帯電した置換基の性質は、糖修飾オリゴヌクレオチドの水和特性に影響を及ぼすと予想される。
【0008】
生体系またはインビボで使用するための、治療薬を含むオリゴヌクレオチドは、典型的には修飾されたヌクレオシド間結合を含有し、2個の酸素原子を含むホスホジエステル結合は、例えば、ホスホロチオエート結合またはメチルホスホネート結合で置き換えられ得る。
【0009】
オリゴヌクレオチドに共有結合したコンジュゲート部分の使用は、例えば、検出可能なコンジュゲート部分がオリゴヌクレオチド、例えばフルオロフォアもしくはビオチンに結合している分析用オリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドの薬理学的特性を向上させるために十分に確立されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAなどのオリゴヌクレオチドを肝臓に標的化するために広く使用されているコンジュゲートの1つは、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)-GalNAc部分が、肝細胞などの細胞上のアシアロ糖タンパク質受容体によって認識され、GalNAc/オリゴヌクレオチド分子の内在化をもたらす。GalNAcなどのコンジュゲート基は、水素結合のためのさらなる部位を提供し、したがって、非コンジュゲートオリゴヌクレオチドと比較して水和レベルが変化していると予想される。
【0010】
本発明者らは、様々な2′糖修飾、骨格結合およびコンジュゲート基を含む様々な修飾オリゴヌクレオチドを評価し、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドコンジュゲートの分子量、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドコンジュゲートが存在する雰囲気の相対湿度、および雰囲気中のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドコンジュゲートの市販形態の平衡重量に基づいて、固体試料中に存在するオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドコンジュゲートの量を決定するための方法を開発した。また、本発明の方法を使用して、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドコンジュゲートの試料(例えば、粉末化または凍結乾燥試料)中に存在する水の量を決定し得、それにより、本方法を使用して、試料中に存在するオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドコンジュゲートの乾燥重量またはモル量を計算し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Vovelle and Goodfellow,Int.J.Biol.Macromol.,1990,Vol.12,pp369-373
【文献】Handbook of Analysis of Oligonucleotide and Related Products,p286-289
【文献】Murphy and Trapane,Analytical Biochemistry 1996,Vol 240,pp273-282
【発明の概要】
【0012】
本発明は、オリゴヌクレオチド塩の水和粉末形態中に存在するオリゴヌクレオチド塩の乾燥重量(m化合物塩)を決定するための方法であって、
a.固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩の既知の分子量(MW化合物塩)を得ること;
b.前記固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩を少なくとも約2時間の期間、約10~約70%の相対湿度(RH)を有する雰囲気に曝露すること;
c.前記少なくとも約2時間の期間後の固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩の重量(W=m化合物塩O)を測定すること;
d.オリゴヌクレオチドの乾燥重量を決定すること
を含み、
前記乾燥重量(m化合物塩)が以下の式:
(式中、
Wは、工程cで測定された固体粉末形態のオリゴヌクレオチド塩の重量であり;
Yは、式Y=a*RH+bで決定され(式中、a=0.0545~0.0711の値であり、b=-0.6818~1.365の値であり、RHは、工程bで言及される相対湿度である)、
MWH2Oは、水の分子量であり、
Zは、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチドの数であり、
MW化合物塩は、オリゴヌクレオチド塩の分子量である)
によって決定される、方法を提供する。
【0013】
本発明は、オリゴヌクレオチド塩の水和粉末形態中に存在するオリゴヌクレオチド塩のモル数(n化合物塩)を決定するための方法であって、
a.固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩の既知の分子量(MW化合物塩)を得ること;
b.前記固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩を少なくとも約2時間の期間、約10~約70%の既知の相対湿度(RH)を有する雰囲気に曝露すること;
c.前記少なくとも約2時間の期間後の固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩の重量(W=m化合物塩O)を測定すること;
d.オリゴヌクレオチドの乾燥重量を決定すること;
(前記乾燥重量(m化合物塩)は、以下の式:
(式中、Wは、工程cで測定された固体粉末形態のオリゴヌクレオチド塩の重量であり;
Yは、式Y=a*RH+bで決定され(式中、a=0.0545~0.0711の値であり、b=-0.6818~1.365の値であり、RHは、工程bで言及される相対湿度である)、
MWH2Oは、水の分子量であり、
Zは、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチドの数であり、
MW化合物塩は、オリゴヌクレオチド塩の分子量である)
で決定される)
e.以下の式:
化合物塩=化合物塩/MW化合物塩
を用いてオリゴヌクレオチド塩のモル数(n化合物塩)を計算すること
を含む、方法を提供する。
【0014】
本発明の方法は、既知の乾燥重量のオリゴヌクレオチド塩をバイアルに分取する工程をさらに含み得る。バイアルは無菌バイアルであり得る。
【0015】
本発明は、既知の濃度(m化合物塩/単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を調製するための方法であって、本発明による方法を用いてオリゴヌクレオチド塩の乾燥重量(m化合物塩)を決定し、続いて、計算された乾燥重量のオリゴヌクレオチド塩(m化合物塩)を既知の容積の溶媒に溶解して、既知の濃度(m化合物塩/単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を提供することを含む方法を提供する。
【0016】
既知のモル濃度(n化合物塩/単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を調製するための方法であって、本発明の方法によりオリゴヌクレオチドのモル数(n化合物塩)を決定し、続いて、オリゴヌクレオチド塩のモル数を既知の容積の溶媒に溶解して、既知のモル濃度(化合物塩/単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を提供することを含む方法を提供する。
【0017】
本発明の方法は、溶媒製剤を、例えばろ過滅菌によって滅菌する工程を更に含み得る。
【0018】
本発明の方法は、溶媒製剤をバイアルまたはシリンジに分取する工程をさらに含み得る。滅菌工程は、分取工程の前、間または後に実施され得る。
【0019】
実験的またはインビボ使用のために、例えば、製剤を使用前に滅菌し得、例えば、溶媒製剤を含むバイアルまたはシリンジを滅菌し得る。
【0020】
分取工程の後、方法は、溶媒製剤をバイアルに分取する工程をさらに含み、方法は、溶媒組成物から溶媒を除去して、既知量の乾燥オリゴヌクレオチド塩を含有するバイアルを提供する工程をさらに含み得る。溶媒は、例えば、凍結乾燥(freeze drying)、凍結乾燥(lyophilisation)または沈殿によって除去され得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド塩中に存在するオリゴヌクレオチドは、コンジュゲート部分を含み、すなわち、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドコンジュゲートの形態である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、炭水化物コンジュゲート部分、例えば、GalNAcコンジュゲート部分を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、工程b)の雰囲気は、約10~約60%の相対湿度、例えば約20~約50%の相対湿度を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、工程bで言及される期間(順応期間)は、少なくとも約2時間、または少なくとも約3時間、または少なくとも約4時間である。
【0024】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の2′糖修飾ヌクレオシド、例えば負に帯電した置換基/原子を含む2′糖修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、2′-O-アルキル-RNA、2′-O-メチル-RNA、2′-アルコキシ-RNA、2′-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、2′-アミノ-DNA、2′-フルオロ-RNA、2′-F-ANAヌクレオシド、およびLNAヌクレオシド(複数可)からなる群から独立して選択される、1つ以上の2′糖修飾ヌクレオシドを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1以上のLNAヌクレオチドを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の2′-O-メトキシエチルヌクレオシド(2′-MOE)を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ホスホロジチオエートヌクレオシド間結合を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエートおよびホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合およびホスホジエステルヌクレオシド間結合のいずれをも含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、塩のイオン性カチオンは、ナトリウムもしくはカリウムカチオンなどの金属カチオン、またはアンモニウムカチオンから選択される。
[本発明1001]
オリゴヌクレオチド塩の水和粉末形態中に存在するオリゴヌクレオチド塩の乾燥重量(m 化合物塩 )を決定するための方法であって、
a.固体粉末形態の前記オリゴヌクレオチド化合物塩の既知の分子量(MW 化合物塩 )を得ること;
b.前記固体粉末形態の前記オリゴヌクレオチド化合物塩を少なくとも2時間の期間、約10~約70%の相対湿度を有する雰囲気に曝露すること;
c.前記少なくとも2時間の期間後の前記固体粉末形態の前記オリゴヌクレオチド化合物塩の重量(W=m 化合物塩 +H 2 O)を測定すること;
d.前記オリゴヌクレオチドの前記乾燥重量を決定すること
を含み、
前記乾燥重量(m 化合物塩 )が以下の式:
(式中、
Wは、工程cで測定された前記固体粉末形態の前記オリゴヌクレオチド塩の重量であり;
Yは、0.06±0.011であり、例えば、Yは0.0545~0.0711の間の値であり;
MW H2O は、水の分子量であり、
Zは、前記オリゴヌクレオチド中のヌクレオチドの数であり、
MW 化合物塩 は、前記オリゴヌクレオチド塩の分子量である)
によって決定される、方法。
[本発明1002]
オリゴヌクレオチド塩の水和粉末形態中に存在するオリゴヌクレオチド塩のモル数(n 化合物塩 )を決定するための方法であって、本発明1001の方法を実施することを含み、前記モル数が、以下の式:
化合物塩= 化合物塩/ MW 化合物塩
により決定される、方法。
[本発明1003]
規定濃度(m 化合物塩 /単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を調製するための方法であって、本発明1001の方法を実施し、続いて、計算された乾燥重量の前記オリゴヌクレオチド塩を既知の容積の溶媒に溶解して、前記規定濃度(m 化合物塩 /単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を提供することを含む、方法。
[本発明1004]
規定モル濃度(n 化合物塩 /単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を調製するための方法であって、本発明1002の方法を実施し、続いて、計算されたモル数の前記オリゴヌクレオチド塩を既知の容積の溶媒に溶解して、前記規定モル濃度(n 化合物塩 /単位容積)を有するオリゴヌクレオチド塩の溶媒製剤を提供することを含む、方法。
[本発明1005]
前記溶媒製剤をバイアルまたはシリンジに分取する工程をさらに含む、本発明1003または1004の方法。
[本発明1006]
前記バイアルまたはシリンジに分取することが、単位用量形態の前記オリゴヌクレオチド塩を分取することである、本発明1005の方法。
[本発明1007]
前記溶媒製剤を滅菌する(本発明1005または1006の分取の前、最中、または後になし得る)工程をさらに含む、本発明1003~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記溶媒製剤をバイアルに分取する工程、続いて、前記溶媒組成物から前記溶媒を除去して、既知量の乾燥オリゴヌクレオチド塩を含有するバイアルを提供する工程をさらに含む、本発明1005または1006の方法。
[本発明1009]
前記オリゴヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドコンジュゲートである、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記オリゴヌクレオチドコンジュゲートが、炭水化物コンジュゲート部分、例えばGalNAcコンジュゲート部分、またはレポーター基、例えば蛍光基(例えばFAM)を含む、本発明1009の方法。
[本発明1011]
工程b)の前記雰囲気が、約10~約60%の既知の相対湿度、または約20~約50%の相対湿度を有する、本発明1001~1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
工程b.で言及される前記期間が、少なくとも約2時間、または少なくとも約3時間、または少なくとも約4時間である、本発明1001~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
前記オリゴヌクレオチドが、2′-O-アルキル-RNA、2′-O-メチル-RNA、2′-アルコキシ-RNA、2′-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、2′-アミノ-DNA、2′-フルオロ-RNA、2′-F-ANAヌクレオシド、およびLNAヌクレオシド(複数可)からなる群から選択される1種以上のヌクレオシドを含む、本発明1001~1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
前記オリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む、本発明1001~1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
前記塩のイオン性カチオンが、ナトリウムもしくはカリウムカチオンなどの金属カチオン、またはアンモニウムカチオンから選択される、本発明1001~1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
前記オリゴヌクレオチドが、8~25個の連続するヌクレオチド、例えば12~20個のヌクレオチドの長さを有する、本発明1001~1015のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、標準的な化合物のDVS分析の例を示す。
図2図2は、グラフは、分析された全ての化合物について、RHとヌクレオチドあたりの水分子の比率との間の相関を示す。グラフは平均値に基づいており、DVS分析中の吸収および収着からの結果を区別しない。相対湿度範囲10~90%の間の試験したオリゴヌクレオチド塩(化合物1~20)のヌクレオチドあたりの水分子の比率。RH 10%~60%の間の全ての化合物、およびRH 10%~70%の間のFAM標識化合物(20)を除く全ての化合物の直線性に留意されたい。
図3図3は、式4と比率モデルとの間の関係を示す。比率モデルの構築は、DVS分析および式4からのデータを使用して行った。新しい化合物の質量変化は、比率モデルに続いて式4を使用して計算し得る。
図4図4は、グラフは、変換されたDVS分析からの平均値、最大値、および最小値に基づく傾向線を示す。最大値の70%RHは、このモデルから除外される。
図5図5は、DVSの比率モデル法とA260吸収ベース法との比較を示す。
図6図6は、DVS分析中の吸収および収着の詳細な分析を示す。
図7図7は、相対湿度範囲10~65%(図2の拡大図)の間の試験したオリゴヌクレオチド塩(化合物1~20)のヌクレオチドあたりの水分子の比率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
乾燥重量
乾燥重量という用語は、水の非存在下、すなわち、水和なしでの固体形態の化合物塩の計算重量を指す。特定の濃度または投与量で化合物塩を製剤化するためには、化合物塩の乾燥重量が製剤化前に既知であることが必要である。
【0034】
製剤
製剤という用語は、化合物塩と1つ以上のさらなる化合物との組み合わせ(混合物)を指す。いくつかの実施形態では、製剤は、適切な溶媒、例えば水中での化合物塩の可溶化を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、滅菌試薬を用いて作製されてもよく、または製剤工程後に滅菌されて滅菌製剤を提供してもよい。製剤は、例えば化合物および溶媒以外のさらなる成分の添加をさらに含んでもよく、例えば保存剤を製剤の一部として添加してもよい。
【0035】
オリゴヌクレオチド塩
オリゴヌクレオチド塩という用語は、塩形態のオリゴヌクレオチド化合物を指す。この用語には、オリゴヌクレオチドコンジュゲート化合物の塩ならびに非コンジュゲートオリゴヌクレオチド化合物の塩が含まれる。
【0036】
オリゴヌクレオチド塩は、有利には固体粉末形態中に存在し、例えば、オリゴヌクレオチド塩の試料またはバッチであり得る。
【0037】
水和形態/水和粉末形態
水和形態という用語は、水分子の存在下での化合物塩を指し、化合物と水分子との間にいくらかの水素結合形成が存在する部分水和を含む任意の程度の水和、および化合物上に存在する全ての水和部位が水分子と水素結合を形成する完全水和形態を包含する。
【0038】
水和形態は、固体形態である。
【0039】
水和粉末形態は、凍結乾燥、噴霧乾燥または沈殿によって調製された粉末形態などの粉末形態である水和固体化合物を指す。粉末形態は、オリゴヌクレオチド塩の試料またはバッチ全体にわたって迅速かつ均一なDVSを確実にするために本発明において有利に使用される。
【0040】
分子量(MW)
オリゴヌクレオチド塩の分子量は、乾燥形態の化合物塩の分子量(すなわち、水和なしの場合)であり、オリゴヌクレオチド化合物塩の既知の化学構造に基づいて計算されたMWであってもよい。
【0041】
オリゴヌクレオチド
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、2つ以上の共有結合したヌクレオシドを含む分子として当業者によって一般的に理解されるように定義される。そのような共有結合したヌクレオシドは、核酸分子またはオリゴマーとも称され得る。オリゴヌクレオチドは合成オリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、通常、固相化学合成と、その後の精製および単離によって研究室内で作製される。オリゴヌクレオチドの配列に言及する場合、共有結合したヌクレオチドまたはヌクレオシドの核酸塩基部分の配列もしくは順序、またはその修飾が参照される。本発明のオリゴヌクレオチドは、人工のものであり、化学的に合成され、典型的には精製または単離される。本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば2′糖修飾ヌクレオシドなどの1つ以上の修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含んでもよい。有利には、オリゴヌクレオチドは、基A、T、C、GおよびU(式中、Cは5-メチルシトシンであり得る)から選択される少なくとも2つ、例えば少なくとも3つの異なる核酸塩基を含む混合配列オリゴヌクレオチドである。
【0042】
有利には、オリゴヌクレオチドは、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはプライマーもしくはプローブの場合、8~25ヌクレオチドの長さを有し得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、変化は、増加であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ギャップマーオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ミックスマーオリゴヌクレオチドである。
【0045】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、コンジュゲート基を含み得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーであり得る。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、レポーター基を含み得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドはsiRNAの鎖であり得る。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、リボザイムまたはアプタマーであり得る。
【0048】
ヌクレオチド
ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの構成単位であり、本発明の目的のために、天然に存在するヌクレオチドおよび天然に存在しないヌクレオチドの両方を含む。本来、DNAおよびRNAヌクレオチドなどのヌクレオチドは、リボース糖部分、核酸塩基部分、および1つ以上のリン酸基(ヌクレオシドに存在しない)を含む。ヌクレオシドおよびヌクレオチドはまた、互換的に「単位」または「モノマー」と呼ばれ得る。
【0049】
修飾ヌクレオシド
本明細書で使用される「修飾ヌクレオシド」または「ヌクレオシド修飾」という用語は、等価なDNAまたはRNAヌクレオシドと比較して、糖部分または(核酸)塩基部分の1つ以上の修飾の導入によって修飾されたヌクレオシドを指す。好ましい実施形態では、修飾ヌクレオシドは、修飾された糖部分を含む。修飾ヌクレオシドという用語はまた、「ヌクレオシドアナログ」または修飾「単位」または修飾「モノマー」と本明細書では互換的に使用されてもよい。非修飾DNAまたはRNA糖部分を有するヌクレオシドは、本明細書でDNAまたはRNAヌクレオシドと称される。DNAまたはRNAヌクレオシドの塩基領域における修飾を有するヌクレオシドは、それらがワトソン・クリック塩基対合が可能であれば、依然として一般的にDNAまたはRNAと称される。
【0050】
修飾ヌクレオシド間結合
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオシド間結合を含む。
【0051】
「修飾ヌクレオシド間結合」という用語は、2つのヌクレオシドを互いに共有結合する、ホスホジエステル(PO)結合以外の結合として当業者により一般的に理解されるように定義される。したがって、オリゴヌクレオチドは、修飾ヌクレオシド間結合を含み得る。修飾ヌクレオシド間結合は、例えば、ホスホロチオエート、ジホスホロチオエート、およびボラノホスフェートからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合など硫黄(S)を備える。ホスホロチオエートヌクレオシド間結合は、アンチセンスオリゴヌクレオチドにおける使用、特にインビボでの使用に有用である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明の文脈において言及されるオリゴヌクレオチドにおいて、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を使用することが有利である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはその連続ヌクレオチド配列の少なくとも50%のヌクレオシド間結合がホスホロチオエートであり、オリゴヌクレオチドまたはそのヌクレオチド配列の少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%または例えば少なくとも90%のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエートである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはその連続ヌクレオチド配列のヌクレオシド間結合の全部は、ホスホロチオエートである。いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、ホスホロジチオエート結合(複数可)に加えて、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合と、2、3、または4ホスホジエステル結合などの少なくとも1つのホスホジエステル結合との両方を含む。
【0053】
核酸塩基
核酸塩基という用語は、ヌクレオシドおよびヌクレオチドに存在するプリン(例えば、アデニンおよびグアニン)ならびにピリミジン(例えば、ウラシル、チミンおよびシトシン)部分を含み、これらは核酸ハイブリダイゼーションにおいて水素結合を形成する。本発明の文脈において、核酸塩基という用語はまた、天然に存在する核酸塩基とは異なり得るが、核酸ハイブリダイゼーション中に機能性である修飾核酸塩基も包含する。この文脈において、「核酸塩基」とは、天然に存在する核酸塩基、例えばアデニン、グアニン、シトシン、チミジン、ウラシル、キサンチンおよびヒポキサンチン、ならびに天然に存在しないバリアントの両方を指す。そのようなバリアントは、例えば、Hirao et al(2012)Accounts of Chemical Research vol 45 page 2055およびBergstrom(2009)Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry Suppl.37 1.4.1.に記載されている。
【0054】
いくつかの実施形態では、核酸塩基部分は、プリンまたはピリミジンを修飾プリンまたはピリミジン、例えば置換プリンまたは置換ピリミジン、例えばイソシトシン、シュードイソシトシン、5-メチルシトシン、5-チアゾロ-シトシン、5-プロピニル-シトシン、5-プロピニル-ウラシル、5-ブロモウラシル5-チアゾロ-ウラシル、2-チオ-ウラシル、2′チオ-チミン、イノシン、ジアミノプリン、6-アミノプリン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリンおよび2-クロロ-6-アミノプリンから選択される核酸塩基(nucleobased)に変えることにより修飾される。
【0055】
核酸塩基部分は、各々の対応する核酸塩基の文字コード、例えばA、T、G、CまたはUにより示され得、ここで、各文字は、等価な機能の修飾核酸塩基を任意に含み得る。例えば、例示したオリゴヌクレオチドにおいて、核酸塩基部分は、A、T、G、C、および5-メチルシトシンから選択される。場合により、LNAギャップマーについて、5-メチルシトシンLNAヌクレオシドが使用され得る。
【0056】
修飾オリゴヌクレオチド
修飾オリゴヌクレオチドという用語は、1つ以上の糖-修飾ヌクレオシドおよび/または修飾ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドを記述する。「キメラ」オリゴヌクレオチドという用語は、修飾ヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを記述するために文献で使用されている用語である。
【0057】
高親和性修飾ヌクレオシド
高親和性修飾ヌクレオシドは、修飾されたヌクレオチドであり、これは、オリゴヌクレオチドに組み込まれる場合、例えば融解温度(T)によって測定されるように、その相補的標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性を高める。本発明の高親和性修飾ヌクレオシドは、好ましくは、修飾ヌクレオシドあたり+0.5~+12、より好ましくは+1.5~+10、最も好ましくは+3~+8の融解温度の上昇をもたらす。数多くの高親和性修飾ヌクレオシドが当該技術分野において知られており、例えば、多くの2′置換ヌクレオシドおよびロックド核酸(LNA)が挙げられる(例えば、Freier&Altmann;Nucl.Acid Res.,1997,25,4429-4443およびUhlmann;Curr.Opinion in Drug Development,2000,3(2),293-213を参照されたい)。
【0058】
糖修飾
本発明のオリゴマーは、修飾された糖部分、すなわち、DNAおよびRNAに見られるリボース糖部分と比較して、糖部分が修飾された1つ以上のヌクレオシドを含み得る。
【0059】
リボース糖部分の修飾を有する数多くのヌクレオシドが、親和性および/またはヌクレアーゼ耐性などのオリゴヌクレオチドの特定の性質を改善することを主な目的として作製されてきた。
【0060】
そのような修飾には、例えば、ヘキソース環(HNA)もしくは二環式環(典型的には、リボース環(LNA)のC2とC4炭素の間にビラジカル架橋を有する)、または典型的にはC2とC3炭素の間の結合を欠く非結合リボース環(例えば、UNA))で置き換えることにより、リボース環構造が修飾されているものが含まれる。他の糖修飾ヌクレオシドには、例えば、ビシクロヘキソース核酸(国際公開第2011/017521号)または三環式核酸(国際公開第2013/154798号)が含まれる。修飾ヌクレオシドにはまた、例えばペプチド核酸(PNA)の場合には、糖部分が非糖部分で置き換えられているヌクレオシド、またはモルホリノ核酸が含まれる。
【0061】
糖修飾にはまた、リボース環上の置換基を水素以外の基、またはDNAおよびRNAヌクレオシドに天然に存在する2′-OH基に変更することによる修飾も含まれる。置換基は、例えば2′、3′、4′、または5′位で導入され得る。
【0062】
2′糖修飾ヌクレオシド
2′糖修飾ヌクレオシドは、2′位にHまたは-OH以外の置換基を有し(2′置換ヌクレオシド)、または2′炭素とリボース環の第2の炭素との間に架橋を形成できる2′結合ビラジカルを含むヌクレオシド、例えばLNA(2′-4′ビラジカル架橋)である。
【0063】
実際、2′糖置換ヌクレオシドの開発には多くの注目が集まっており、数多くの2′置換ヌクレオシドが、オリゴヌクレオチドに組み込まれた際に有益な特性を有することが見出されている。例えば、2′修飾ヌクレオシドは、向上された結合親和性および/または増大されたヌクレアーゼ耐性をオリゴヌクレオチドに提供することができる。2′置換修飾ヌクレオシドの例は、2′-O-アルキル-RNA、2′-O-メチル-RNA、2′-アルコキシ-RNA、2′-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、2′-アミノ-DNA、2′-フルオロ-RNA、および2′-F-ANAヌクレオシドである。更なる例については、例えばFreier&Altmann;Nucl.Acid Res.,1997,25,4429-4443およびUhlmann;Curr.Opinion in Drug Development,2000,3(2),293-213,およびDeleavey and Damha,Chemistry and Biology 2012,19,937を参照されたい。
【0064】
以下は、いくつかの2′置換修飾ヌクレオシドの説明図である。
【0065】
本発明に関して、2′置換糖修飾ヌクレオシドは、LNAのような2′架橋ヌクレオシドを含まない。
【0066】
ロックド核酸ヌクレオシド(LNAヌクレオシド)
「LNAヌクレオシド」は、前記ヌクレオシドのリボース糖環のC2′とC4′を結合するビラジカル(「2′-4′架橋」とも呼ばれる)を含む2′修飾ヌクレオシドであり、これはリボース環の立体配座を制限または固定する。これらのヌクレオシドはまた、文献にて架橋核酸または二環式核酸(BNA)とも称されている。リボースの立体配座の固定は、LNAが相補的RNAまたはDNA分子のオリゴヌクレオチドに組み込まれる場合、ハイブリダイゼーションの親和性の向上(二重鎖安定化)に関連している。これは、オリゴヌクレオチド/相補二重鎖の融解温度を測定することにより日常的に決定され得る。
【0067】
非限定的な、例示的なLNAヌクレオシドは、国際公開第99/014226号、国際公開第00/66604号、国際公開第98/039352号、国際公開第2004/046160号、国際公開第00/047599号、国際公開第2007/134181号、国際公開第2010/077578号、国際公開第2010/036698号、国際公開第2007/090071号、国際公開第2009/006478号、国際公開第2011/156202号、国際公開第2008/154401号、国際公開第2009/067647号、国際公開第2008/150729号、Morita et al.,Bioorganic&Med.Chem.Lett.12,73-76,Seth et al.J.Org.Chem.2010,Vol 75(5)pp.1569-81,and Mitsuoka et al.,Nucleic Acids Research 2009,37(4),1225-1238およびWan and Seth,J.Medical Chemistry 2016,59,9645-9667に開示されている。
【0068】
更なる非限定的な、例示的なLNAヌクレオシドは、スキーム1に開示されている。
【0069】
スキーム1:
【0070】
特定のLNAヌクレオシドは、ベータ-D-オキシ-LNA、6′-メチル-ベータ-D-オキシLNA、例えば(S)-6′-メチル-ベータ-D-オキシ-LNA(ScET)およびENAである。
【0071】
特に有利なLNAは、ベータ-D-オキシ-LNAまたはメチル-ベータ-D-オキシ-LNA(ScET)である。
【0072】
ギャップマー
アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその連続するヌクレオチド配列は、ギャップマーオリゴヌクレオチドとも呼ばれるギャップマーであり得るか、ギャップマーオリゴヌクレオチドとも呼ばれるギャップマーを含み得る。アンチセンスギャップマーは、通常、RNase H媒介分解を介して標的核酸を阻害するのに使用される。ギャップマーオリゴヌクレオチドは、少なくとも3つの区別される構造領域、5′-フランク、ギャップおよび3′-フランク、F-G-F′を5′->3′配向で含む。「ギャップ」領域(G)は、オリゴヌクレオチドがRNase Hを動員することを可能にする連続DNAヌクレオチドのストレッチを含む。ギャップ領域は、1つ以上の糖修飾ヌクレオシド、有利には高親和性糖修飾ヌクレオシドを含む5′隣接領域(F)、および1つ以上の糖修飾ヌクレオシド、有利には高親和性糖修飾ヌクレオシドを含む3′隣接領域(F′)と隣接している。領域FおよびF′の1つ以上の糖修飾ヌクレオシドは、標的核酸に対するオリゴヌクレオチドの親和性を増強する(すなわち、これは親和性増強糖修飾ヌクレオシドである)。いくつかの実施形態では、領域FおよびF′の1つ以上の糖修飾ヌクレオシドは、2′糖修飾ヌクレオシド、例えばLNAおよび2′-MOEから独立して選択される、例えば高親和性2′糖修飾である。
【0073】
ギャップマー設計において、ギャップ領域の最も5′および3′のヌクレオシドはDNAヌクレオシドであり、各々、5′(F)または3′(F′)の糖修飾ヌクレオシドに隣接して配置されている。フランクは更に、ギャップ領域から最も遠い端、すなわち5′フランクの5′末端および3′フランクの3′末端に少なくとも1つの糖修飾ヌクレオシドを有することによって定義してもよい。
【0074】
領域F-G-F′は、連続ヌクレオチド配列を形成する。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド、またはその連続ヌクレオチド配列は、式F-G-F′のギャップマー領域を含んでもよい。
【0075】
ギャップマー設計F-G-F′の全長は、例えば12~32ヌクレオシド、例えば13~24、例えば14~22ヌクレオシド、例えば14~17、例えば16~18ヌクレオシドであってもよい。
【0076】
例として、本発明のギャップマーオリゴヌクレオチドは、以下の式により表すことができる:
1-8-G5-16-F′1-8、例えば
1-8-G7-16-F′2-8
ただし、ギャップマー領域F-G-F′の全長は、少なくとも12、例えば少なくとも14ヌクレオチド長であることを条件とする。
【0077】
本発明の一態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその連続ヌクレオチド配列は、式5′-F-G-F′-3′のギャップマーからなるかまたはそれを含み、式中、領域FおよびF′が独立して1~8個のヌクレオシドを含むかまたはそれらからなり、そのうち1~4個が2′糖修飾され、FおよびF′領域の5′および3′末端を規定し、GがRNase Hを動員することができる6~16個のヌクレオシドの領域である。
【0078】
ギャップマーの領域G(ギャップ領域)は、オリゴヌクレオチドがRNaseH、例えばヒトRNase H1を動員することを可能にするヌクレオシド、典型的にはDNAヌクレオシドの領域である。RNaseHは、DNAとRNAの間の二重鎖を認識し、RNA分子を酵素的に切断する細胞酵素である。好適には、ギャップマーは、少なくとも5または6連続DNAヌクレオシド、例えば5~16連続DNAヌクレオシド、例えば6~15連続DNAヌクレオシド、例えば7~14連続DNAヌクレオシド、例えば8~12連続DNAヌクレオチド、例えば8~12連続DNAヌクレオチド長のギャップ領域(G)を有し得る。
【0079】
あるいは、いくつかのRNaseH活性を保持しながら、ギャップマーのギャップ領域に3′エンドコンフォメーションを付与する修飾ヌクレオシドの挿入についての多くの報告が存在する。1つ以上の3′エンド修飾ヌクレオシドを含むギャップ領域を有するそのようなギャップマーは、「ギャップブレーカー」または「ギャップ破壊」ギャップマーと称される。例えば、国際公開第2013/022984号を参照されたい。
【0080】
LNAギャップマー
LNAギャップマーは、領域FおよびF′の一方または両方のいずれかで、LNAヌクレオシドを含むか、またはそれからなるギャップマーである。β-D-オキシギャップマーは、領域FおよびF′の一方または両方のいずれかで、β-D-オキシLNAヌクレオシドを含むか、またはそれからなるギャップマーである。
【0081】
いくつかの実施形態では、LNAギャップマーは、式:[LNA]1-5-[領域G]-[LNA]1-5のものであり、領域Gはギャップマー領域Gの定義に定義したとおりである。
【0082】
MOEギャップマー
MOEギャップマーは、領域FおよびF′がMOEヌクレオシドからなるギャップマーである。いくつかの実施形態では、MOEギャップマーは、設計[MOE]1-8-[領域G]5-16-[MOE]1-8、例えば[MOE]2-7-[領域G]6-14-[MOE]2-7、例えば[MOE]3-6-[領域G]8-12-[MOE]3-6のものであり、領域Gはギャップマーの定義に規定した通りである。5-10-5設計(MOE-DNA-MOE)を有するMOEギャップマーは、当該技術分野で広く使用されている。
【0083】
混合ウィングギャップマー
混合ウィングギャップマーは、領域FおよびF′の一方または両方が、2′置換ヌクレオシド、例えば2′-O-アルキル-RNA単位、2′-O-メチル-RNA、2′-アミノ-DNA単位、2′-フルオロ-DNA単位、2′-アルコキシ-RNA、MOE単位、アラビノ核酸(ANA)単位および2′-フルオロ-ANA単位から独立して選択される2′置換ヌクレオシド、例えばMOEヌクレオシドを含むLNAギャップマーである。領域FおよびF′の少なくとも一方、または領域FおよびF′の両方が少なくとも1つのLNAヌクレオシドを含むいくつかの実施形態では、領域FおよびF′の残りのヌクレオシドは、MOEおよびLNAからなる群から独立して選択される。領域FおよびF′の少なくとも一方、または領域FおよびF′の両方が少なくとも2つのLNAヌクレオシドを含むいくつかの実施形態では、領域FおよびF′の残りのヌクレオシドは、MOEおよびLNAからなる群から独立して選択される。いくつかの混合ウィング実施形態では、領域FおよびF′の一方または両方が、1つ以上のDNAヌクレオシドをさらに含んでもよい。
【0084】
混合ウィングギャップマー設計は、国際公開第2008/049085号および国際公開第2012/109395号(これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0085】
交互フランクギャップマー
フランキング領域は、LNAとDNAヌクレオシドの両方を含んでよく、それらはLNA-DNA-LNAヌクレオシドの交互のモチーフを含むことから、「交互フランク」と呼ばれる。そのような交互フランクを含むギャップマーは、「交互フランクギャップマー」と呼ばれる。「交互フランクギャップマー」はそれ故、LNAギャップマーオリゴヌクレオチドであり、フランクの少なくとも一方(FまたはF′)が、LNAヌクレオシド(複数可)に加えてDNAを含む。いくつかの実施形態では、領域FもしくはF′のうちの少なくとも1つ、または両領域FおよびF′は、LNAヌクレオシドとDNAヌクレオシドの両方を含む。そのような実施形態では、フランキング領域FもしくはF′、またはFおよびF′の両方は、少なくとも3つのヌクレオシドを含み、Fおよび/またはF′領域の最も5′および3′のヌクレオシドは、LNAヌクレオシドである。
【0086】
オリゴヌクレオチドにおける領域D′またはD”
本発明のオリゴヌクレオチドは、いくつかの実施形態では、標的核酸に相補的なオリゴヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列、例えばギャップマーF-G-F′、ならびにさらに5′および/または3′ヌクレオシドを含むか、またはそれからなり得る。更なる5′および/または3′ヌクレオシドは、標的核酸に完全に相補的であってもよく、または完全に相補的でなくてもよい。そのような更なる5′および/または3′ヌクレオシドは、本明細書では領域D′およびD”と呼ばれ得る。
【0087】
領域D′またはD”の追加は、連続ヌクレオチド配列、例えばギャップマーをコンジュゲート部分または他の官能基に連結することを目的として用いられ得る。連続ヌクレオチド配列をコンジュゲート部分に連結するのに使用される場合、生体切断可能なリンカーとしての役割を果たし得る。あるいは、それはエキソヌクレアーゼ保護を提供するために、または合成もしくは製造を容易にするために使用され得る。
【0088】
領域D′およびD”は、各々、領域Fの5′末端または領域F′の3′末端に結合されて、以下の式D′-F-G-F′、F-G-F′-D”または
D′-F-G-F′-D”の設計を生成することができる。この場合、F-G-F′はオリゴヌクレオチドのギャップマー部分であり、領域D′またはD”は、オリゴヌクレオチドの別個の部分を構成する。
【0089】
領域D′またはD”は、独立して、1、2、3、4または5個の追加のヌクレオチドを含むか、またはそれからなり、標的核酸に相補的であっても、または相補的でなくてもよい。FまたはF′領域に隣接するヌクレオチドは、糖修飾ヌクレオチドではなく、例えばDNAもしくはRNAまたはこれらの塩基修飾バージョンである。D′およびD′領域は、ヌクレアーゼ感受性の生体切断可能なリンカーとしての役割を果たし得る(リンカーの定義を参照されたい)。いくつかの実施形態では、追加の5′および/または3′末端ヌクレオチドは、ホスホジエステル結合で連結され、DNAまたはRNAである。領域D′およびD′′としての使用に好適なヌクレオチドベースの生体切断可能なリンカーは、国際公開第2014/076195号に開示されており、これは例としてホスホジエステル結合DNAジヌクレオチドを含む。ポリオリゴヌクレオチド構築物における生体切断可能なリンカーの使用は国際公開第2015/113922号に開示されており、それらは複数のアンチセンス構築物(例えば、ギャップマー領域)を単一のオリゴヌクレオチド内で結合するのに使用されている。
【0090】
一実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、ギャップマーを構成する連続ヌクレオチド配列に加えて、領域D′および/またはD”を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、以下の式により表すことができる:
F-G-F′;特にF1-8-G5-16-F′2-8
D′-F-G-F′、特にD′1-3-F1-8-G5-16-F′2-8
F-G-F′-D′′、特にF1-8-G5-16-F′2-8-D′′1-3
D′-F-G-F′-D′′、特にD′1-3-F1-8-G5-16-F′2-8-D′′1-3
【0092】
いくつかの実施形態では、領域D′と領域Fの間に位置するヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合である。いくつかの実施形態では、領域F′と領域D”の間に位置するヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合である。
【0093】
トータルマー(Totalmer)
いくつかの実施形態では、オリゴマーまたはその連続ヌクレオチド配列は、ヌクレオシドアナログ、例えば親和性増強ヌクレオシドアナログ連続配列からなり、本明細書では「トータルマー」と呼ばれる。
【0094】
トータルマーは、一本鎖オリゴマー、またはその連続ヌクレオチド配列であり、これはDNAまたはRNAヌクレオシドを含まず、したがって、ヌクレオシドアナログヌクレオシドのみを含む。オリゴマー、またはその連続ヌクレオチド配列は、トータルマーの可能性があり、実際、様々なトータルマーの設計が、特にマイクロRNA(抗miR)またはスプライススイッチングオリゴマー(SSO)を標的とする場合、治療用オリゴマーとして非常に有効である。
【0095】
いくつかの実施形態では、トータルマーは、反復配列XYXもしくはYXYなどの少なくとも1つのXYXもしくはYXY配列モチーフを含むか、またはそれからなり、XはLNAであり、Yは2′-OMe RNA単位および2′-フルオロDNA単位などの代替(すなわち、非LNA)ヌクレオチドアナログである。上記の配列モチーフは、いくつかの実施形態では、例えば、XXY、XYX、YXYまたはYYXであり得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、トータルマーは、8~16ヌクレオチド、例えば、9、10、11、12、13、14もしくは15ヌクレオチド、例えば8~12ヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなっていてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、トータルマーの連続ヌクレオチド配列は、少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば95%、例えば100%のLNA単位を含む。残りの単位は、2′-O-アルキル-RNA単位、2′-OMe-RNA単位、2′-アミノ-DNA単位、2′-フルオロ-DNA単位、LNA単位、PNA単位、HNA単位、INA単位、および2′-MOE RNA単位からなる群、または2′-OMe RNA単位および2′-フルオロDNA単位の群から選択されるものなど、本明細書で言及される非LNAヌクレオチドアナログから選択されてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、トータルマーは、LNA単位のみからなる連続ヌクレオチド配列からなるか、またはそれを含む。
【0099】
ミックスマー(Mixmer)
用語「ミックスマー」は、DNAヌクレオシドと糖修飾ヌクレオシドの両方を含むオリゴマーを指し、RNaseHを動員するには連続DNAヌクレオシド長が不十分である。適切なミックスマーは、最大3つまたは最大4つの連続DNAヌクレオシドを含み得る。いくつかの実施形態では、ミックスマー、またはその連続ヌクレオチド配列は、糖修飾ヌクレオシドとDNAヌクレオシドの交互領域を含む。オリゴヌクレオチドに組み込まれたときにRNA様(3′エンド)コンフォメーションを形成する糖修飾ヌクレオシドの領域と、DNAヌクレオシドの短い領域と交互に配置することにより、非RNaseH動員オリゴヌクレオチドを作製することができる。有利には、糖修飾ヌクレオシドは、親和性増強糖修飾ヌクレオシドである。
【0100】
オリゴヌクレオチドミックスマーは、スプライスモジュレーターやマイクロRNA阻害剤などの標的遺伝子の作業ベースの調節を提供するために使用されることが多い。
【0101】
いくつかの実施形態では、ミックスマー中の糖修飾ヌクレオシド、またはその連続ヌクレオチド配列は、LNAヌクレオシド、例えば(S)cETまたはβ-D-オキシLNAヌクレオシドを含むか、または全てそれらである。
【0102】
いくつかの実施形態では、ミックスマーの糖修飾ヌクレオシドの全ては、同じ糖修飾を含み、例えば、それらは、全てLNAヌクレオシドであっても、全て2′O-MOEヌクレオシドであってもよい。いくつかの実施形態では、ミックスマーの糖修飾ヌクレオシドは、LNAヌクレオシドおよび2′置換ヌクレオシド、例えば、2′-O-アルキル-RNA、2′-O-メチル-RNA、2′-アルコキシ-RNA、2′-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、2′-アミノ-DNA、2′-フルオロ-RNA、および2′-F-ANAヌクレオシドからなる群から選択される2′置換ヌクレオシドから独立して選択されてよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、LNAヌクレオシドと、2′置換ヌクレオシド、例えば、2′-O-アルキル-RNA、2′-O-メチル-RNA、2′-アルコキシ-RNA、2′-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、2′-アミノ-DNA、2′-フルオロ-RNA、および2′-F-ANAヌクレオシドからなる群から選択される2′置換ヌクレオシドの両方を含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、LNAヌクレオシドと2′-O-MOEヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、(S)cET LNAヌクレオシドと2′-O-MOEヌクレオシドを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、ミックスマーまたはその連続ヌクレオチド配列は、LNAおよびDNAヌクレオシドのみを含み、そのようなLNAミックスマーオリゴヌクレオチドは、例えば、8~24ヌクレオシド長であり得る(例えば、マイクロRNAのLNA antimiR阻害剤を開示する国際公開第2007112754号を参照されたい)。
【0104】
コンジュゲート
本明細書で使用されるコンジュゲートという用語は、非ヌクレオチド部分に共有結合したオリゴヌクレオチドを指す(コンジュゲート部分または領域Cまたは第3の領域)。
【0105】
1つ以上の非ヌクレオチド部分に対する本発明のオリゴヌクレオチドのコンジュゲーションは、例えば、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、細胞取込み、または安定性に影響を及ぼすことにより、オリゴヌクレオチドの薬理学を改善することができる。いくつかの実施形態では、コンジュゲート部分は、オリゴヌクレオチドの細胞分布、バイオアベイラビリティ、代謝、排泄、浸透性、および/または細胞取り込みを改善することにより、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を調節または向上させる。特に、コンジュゲートは、オリゴヌクレオチドを特定の器官、組織または細胞型に標的化し、それにより、その器官、組織または細胞型におけるオリゴヌクレオチドの有効性を増強し得る。同時に、コンジュゲートは、非標的細胞型、組織または器官内のオリゴヌクレオチドの活性を低下させるのに役立ち得る(例えば、非標的細胞型、組織または器官内のオフ標的活性または活性)。
【0106】
いくつかの実施形態では、コンジュゲート基は、極性部分であるか、または極性部分を含む。極性コンジュゲートとしては、炭水化物コンジュゲート、タンパク質コンジュゲート、ペプチドコンジュゲート、ポリマーコンジュゲート、例えばPEGコンジュゲートが挙げられる。いくつかの実施形態では、コンジュゲート部分は、N-アセチルガラクトサミン残基であるか、またはN-アセチルガラクトサミン残基を含む。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、レポーター基、例えば、フルオロフォアであるか、またはフルオロフォアを含む。
【0107】
オリゴヌクレオチドコンジュゲートとその合成については、Manoharan in Antisense Drug Technology,Principles,Strategies,and Applications,S.T.Crooke,ed.,Ch.16,Marcel Dekker,Inc.,2001およびManoharan,Antisense and Nucleic Acid Drug Development,2002,12,103による包括的なレビューでも報告されており、この各文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
一実施形態では、非ヌクレオチド部分(コンジュゲート部分)は、炭水化物(例えば、GalNAc)、細胞表面受容体リガンド、原薬、ホルモン、親油性物質、ポリマー、タンパク質、ペプチド、毒素(例えば、細菌毒素)、ビタミン類、ウイルスタンパク質(例えば、カプシド)、またはそれらの組合せからなる群から選択される。
【0109】
いくつかの実施形態では、コンジュゲート部分は、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)に結合し得る部分である。特に、3価のN-アセチルガラクトサミンコンジュゲート部分は、ASGPR(GalNAc)への結合に適しており、例えば、国際公開第2014/076196号、国際公開第2014/207232号および国際公開第2014/179620号を参照されたい。そのようなコンジュゲートは、肝臓へのオリゴヌクレオチドの取り込み促進する一方で、腎臓におけるその存在を減少させ、それにより、同じオリゴヌクレオチドの非コンジュゲートバージョンと比較して、コンジュゲートされたオリゴヌクレオチドの肝臓/腎臓比を増加させる。
【0110】
リンカー
結合またはリンカーは、1つ以上の共有結合を介して目的の1つの化学基またはセグメントを目的の別の化学基またはセグメントに結合する、2つの原子間の接続である。コンジュゲート部分は、直接または連結部分(例えば、リンカーまたはテザー)を介してオリゴヌクレオチドに結合させ得る。リンカーは、第3の領域、例えばコンジュゲート部分(領域C)を、第1の領域、例えば、標的核酸に相補的なオリゴヌクレオチドまたは連続ヌクレオチド配列(領域A)に共有結合する役割を果たす。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明のコンジュゲートまたはオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、必要に応じて、標的核酸に相補的なオリゴヌクレオチドまたは連続ヌクレオチド配列(領域Aまたは第1の領域)の間に位置するリンカー領域(第2の領域または領域Bおよび/または領域Y)と、コンジュゲート部分(領域Cまたは第3の領域)とを含み得る。
【0112】
領域Bは、哺乳動物の体内で通常遭遇するまたは遭遇するものに類似した条件下で切断可能である生理学的に不安定な結合を含むか、またはそれからなる生体切断可能なリンカーを指す。生理学的に不安定なリンカーが化学的変換(例えば、切断)を受ける条件には、pH、温度、酸化もしくは還元条件または薬剤などの化学条件、および哺乳動物の細胞で見られるまたは遭遇するものに類似した塩濃度が含まれる。哺乳動物の細胞内条件には、タンパク質分解酵素または加水分解酵素またはヌクレアーゼなどの哺乳動物細胞に通常存在する酵素活性の存在も含まれる。一実施形態では、生体切断可能なリンカーは、S1ヌクレアーゼ切断の影響を受けやすい。好ましい実施形態では、ヌクレアーゼ感受性リンカーは、少なくとも2つの連続したホスホジエステル結合、少なくとも3つまたは4つまたは5つの連続したホスホジエステル結合を含む、1~10ヌクレオシド、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオシド、より好ましくは2~6ヌクレオシド、最も好ましくは2~4連結ヌクレオシドを含む。好ましくは、ヌクレオシドは、DNAまたはRNAである。ホスホジエステルを含む生体切断可能なリンカーは、国際公開第2014/076195号(参照により本明細書に組み込まれる)により詳細に記載されている。
【0113】
領域Yは、必ずしも生体切断可能ではないが、主にコンジュゲート部分(領域Cまたは第3の領域)をオリゴヌクレオチド(領域Aまたは第1の領域)に共有結合させるのに役立つリンカーを指す。領域Yリンカーは、エチレングリコール、アミノ酸単位またはアミノアルキル基などの繰り返し単位の鎖構造またはオリゴマーを含み得る。本発明のオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、以下の領域要素A-C、A-B-C、A-B-Y-C、A-Y-B-CまたはA-Y-Cから構築し得る。いくつかの実施形態では、リンカー(領域Y)は、アミノアルキル、例えばC6-C12アミノアルキル基を含むC2-C36アミノアルキル基である。好ましい実施形態では、リンカー(領域Y)は、C6アミノアルキル基である。
【0114】
発明の詳細な説明
オリゴヌクレオチド
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、10~50ヌクレオチド、例えば14~25ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、14、15、16、17、18、19または20ヌクレオチドの長さを有する。
【0115】
実施例で示されるように、本発明の方法は、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、すなわち、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含むオリゴヌクレオチドを製剤化することにおいて特に有用である。実際、実施例は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む化合物が、DVS結果に基づいて線形相関を有し、ホスホジエステル結合オリゴヌクレオチドを超えることさえ示している。意外なことに、ホスホロチオエート結合中の硫黄原子は、水と水素結合を形成するその能力がかなり弱い(Platts et al.,J.Am.Chem.Soc.,1996,118(11),pp2726-2733)。オリゴヌクレオチド中に存在し得る他の硫黄含有ヌクレオシド間結合としては、ホスホロジチオエートおよびホスホトリチオエートのヌクレオシド間結合が挙げられる。
【0116】
実施例は、本発明の方法が、1つ以上の糖修飾ヌクレオシド、例えば負に帯電した2′基(例えば、置換基、またはLNAの場合、4′-2′ビラジカル)を含む1つ以上の糖修飾ヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドに特に適用可能であることをさらに示す。そのような糖修飾ヌクレオシドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、PCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブに使用されることが多く、相補的ヌクレオチド配列に対する結合親和性を高める。
【0117】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるか、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の糖修飾ヌクレオシド、例えば、2′-O-アルキル-RNA、2′-O-メチル-RNA、2′-アルコキシ-RNA、2′-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、2′-アミノ-DNA、2′-フルオロ-RNA、2′-F-ANAヌクレオシド、およびLNAヌクレオシド(複数可)からなる群から独立して選択される1つ以上の糖修飾ヌクレオシドを含む。
【0118】
いくつかの実施形態にでは、オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるか、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の糖修飾ヌクレオシド、例えば、2′-O-メトキシエチルおよびLNAからなる群から独立して選択される1つ以上の糖修飾ヌクレオシドを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の糖修飾ヌクレオシド、例えば1つ以上のLNAヌクレオシドおよび/または1つ以上の2′-メトキシエチル(2-MOE)ヌクレオシド、ならびにホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の糖修飾ヌクレオシド、例えば1つ以上のLNAヌクレオシドおよび/または1つ以上の2′-メトキシエチル(2-MOE)ヌクレオシドを含み、さらにホスホロチオエートおよびホスホジエステルヌクレオシド間結合のいずれをも含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、、LNAギャップマー(領域FおよびF′がいずれもLNAヌクレオシドを含む)、MOEギャップマー(領域FおよびF′がいずれもMOEヌクレオシドを含む)などのギャップマーオリゴヌクレオチドであるか、またはギャップマーオリゴヌクレオチドを含む。混合ウィングギャップマー、交互フランクギャップマー、およびギャップブレーカーオリゴヌクレオチド。いくつかの実施形態では、ギャップマーのヌクレオチド内のヌクレオシド間結合は、全てホスホロチオエートである。実施例で示されるように、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド領域(例えばギャップマー領域)は、1つ以上のホスホジエステル結合ヌクレオシド(例えば、本明細書において領域Dと記載される)に隣接し得る。ギャップマーまたはギャップマー領域は、典型的には少なくとも12ヌクレオチド長であり、24または26ヌクレオチド長であり得るが、より典型的には15~20ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、トータルマーまたはミクスマーオリゴヌクレオチドである。
【0122】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、蛍光標識(蛍光色素とも呼ばれる)を含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドはクエンチャーを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、炭水化物コンジュゲート基、例えば、GalNAc部分を含む。
【0124】
雰囲気
本発明の方法は、オリゴヌクレオチド化合物塩の含水量(水和レベル)が雰囲気と十分に平衡になり得るように、オリゴヌクレオチド化合物塩が一定期間、雰囲気にさらされる期間(この期間を順応期間と呼ぶ場合もある)を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、順応期間に使用される雰囲気は、約10%~約70%の所定のRHレベル、または約10~60%の所定のRHレベルを有する雰囲気である。
【0126】
いくつかの実施形態では、局所的雰囲気のRHは、雰囲気のRHを決定するために、順応期間中に測定される。いくつかの実施形態では、順応期間中の雰囲気は、室内の雰囲気(局所的雰囲気)である。
【0127】
10~50%の雰囲気のRHレベルは、50%を超えると吸収または収着速度が遅くなり、より長い順応期間(例えば、少なくとも約4時間)を必要とするので有利である。
【0128】
吸収および収着期間(順応期間)
実施例で示されるように、オリゴヌクレオチドの水分の増減速度は、雰囲気の相対湿度(RH)がオリゴヌクレオチド化合物塩が貯蔵された相対湿度よりも高いか低いか、およびRH間の差に依存する。より高いRHの雰囲気中へのオリゴヌクレオチド化合物塩の移動は、吸収をもたらすが、より低いRHの雰囲気中へのオリゴヌクレオチド化合物塩の移動は、収着をもたらす。収着速度は、典型的には、吸収速度より遅い。
【0129】
典型的には、少なくとも約2~4時間の期間は、本方法によって決定されるオリゴヌクレオチドの乾燥重量の決定を可能にするのに十分に完全な吸収/吸着を可能にするのに十分である。
【0130】
いくつかの実施形態では、工程bにおいて、固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩を、少なくとも約2時間の期間、雰囲気に曝露し、雰囲気は、約10~約70%の相対湿度(RH)、例えば、約10%~約60%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約20%~約50%の既知の相対湿度(RH)を有する。
【0131】
いくつかの実施形態では、工程bにおいて、固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩を、少なくとも約3時間の期間、雰囲気に曝露し、雰囲気は、約10~約70%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約10%~約60%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約20%~約50%の既知の相対湿度(RH)を有する。
【0132】
いくつかの実施形態では、工程bにおいて、固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩を、少なくとも約4時間の期間、雰囲気に曝露し、雰囲気は、約10~約70%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約10%~約60%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約20%~約50%の既知の相対湿度(RH)を有する。
【0133】
いくつかの実施形態では、工程bにおいて、固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩を、少なくとも約5時間の期間、雰囲気に曝露し、雰囲気は、約10~約70%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約10%~約60%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約20%~約50%の既知の相対湿度(RH)を有する。
【0134】
いくつかの実施形態では、工程bにおいて、固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩を、少なくとも約6時間の期間、雰囲気に曝露し、雰囲気は、約10~約70%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約10%~約60%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約20%~約50%の既知の相対湿度(RH)を有する。
【0135】
いくつかの実施形態では、工程bにおいて、固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩を、少なくとも約8時間の期間、雰囲気に曝露し、雰囲気は、約10~約70%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約10%~約60%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約20%~約50%の既知の相対湿度(RH)を有する。
【0136】
いくつかの実施形態では、工程bにおいて、固体粉末形態のオリゴヌクレオチド化合物塩を、少なくとも約1時間の期間、雰囲気に曝露し、雰囲気は、約10~約70%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約10%~約60%の既知の相対湿度(RH)、例えば、約20%~約50%の既知の相対湿度(RH)を有する。
【0137】
コンジュゲート基
実施例で示されるように、本発明の方法は、オリゴヌクレオチドコンジュゲートの乾燥重量またはモル数を決定する際に使用され得る。実施例によれば、水素結合形成のための複数の面(水和部位)を含む親水性コンジュゲートの組み込みが、同等の非コンジュゲート化合物と比較して、DVS結果に基づく線形相関が乱されないことが示される。GalNAcコンジュゲートなどの炭水化物コンジュゲートは、10~70%RHで、非コンジュゲートオリゴヌクレオチド当量と同等の優れた直線性を保持する。比較すると、ポリフェノールコンジュゲート(6-FAM(フルオレセイン)を使用して例示)の使用により、10~60%RHで、非コンジュゲートオリゴヌクレオチド当量と同等の優れた直線性も得られた。
【0138】
いくつかの実施形態では、コンジュゲート基は、水素結合(水和)に利用可能な2個以上の酸素原子を含む親水性コンジュゲート基である。
【0139】
炭水化物コンジュゲート部分
実施例で示されるように、本発明は、オリゴヌクレオチドコンジュゲートを含むオリゴヌクレオチドの乾燥重量またはモル数を決定するための方法を提供する。実施例によれば、本発明の方法が、炭水化物コンジュゲート部分(非ヌクレオシド)などの親水性コンジュゲート部分を含むオリゴヌクレオチドコンジュゲートの乾燥重量/モル数を決定するのに特に有用であることが示される。いくつかの実施形態では、コンジュゲート部分は、1個以上のC6糖残基(ヘキソース)を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、炭水化物コンジュゲート部分は、ガラクトース、ラクトース、n-アセチルガラクトサミン(galNAc)、マンノースおよびマンノース-6-リン酸基からなる群から選択される炭水化物基を含む。
【0141】
炭水化物コンジュゲートは、肝臓および/または筋肉などの様々な組織における送達または活性を増強するために使用され得る。例えば、EP第1495769号、国際公開第99/65925号、Yang et al.,Bioconjug Chem(2009)20(2):213-21.Zatsepin&Oretskaya Chem Biodivers.(2004)1(10):1401-17を参照されたい。
【0142】
いくつかの実施形態では、糖質コンジュゲート部分は多価であり、例えば、2、3または4個の同一または非同一の炭水化物部分は、必要に応じて1つ以上のリンカーを介してオリゴヌクレオチドに共有結合し得る。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドおよび炭水化物コンジュゲート部分を含むコンジュゲートを提供する。
【0143】
いくつかの実施形態では、コンジュゲート部分は、マンノースまたはマンノース-6-リン酸であるか、またはマンノースまたはマンノース-6-リン酸を含み得る。これは、筋細胞を標的化するのに特に有用である(例えば、米国特許出願公開第2012/122801号を参照されたい)。
【0144】
アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPRr)に結合し得るコンジュゲート部分は、肝臓の肝細胞を標的とするのに特に有用である。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドおよびアシアロ糖タンパク質受容体を標的とするコンジュゲート部分を含むコンジュゲートを提供する。アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)コンジュゲート部分は、ガラクトースと同等以上の親和性でアシアロ糖タンパク質受容体(ASPGR標的化部分)に結合することができる、1つ以上の炭水化物部分を含む。アシアロ糖タンパク質受容体に対する多数のガラクトース誘導体の親和性については研究がなされており(例えば、Jobst,S.T.and Drickamer,K.JB.C.1996,271,6686を参照されたい。)、または当技術分野で典型的な方法を用いて容易に決定される。
【0145】
一実施形態では、コンジュゲート部分は、ガラクトース、ガラクトサミン、N-ホルミル-ガラクトサミン、N-アセチルガラクトサミン、N-プロピオニル-ガラクトサミン、N-n-ブタノイル-ガラクトサミン、およびN-イソブタノイルガラクサミンからなる群より選択される、少なくとも1つのアシアロ糖タンパク質受容体標的化部分を含む。有利には、アシアロ糖タンパク質受容体標的化部分は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)である。
【0146】
ASGPRコンジュゲート部分を生成するために、ASPGR標的化部分(好ましくは、GalNAc)をコンジュゲート足場に付着させることができる。一般に、ASPGR標的化部分は、足場の同じ末端にあり得る。一実施形態では、コンジュゲート部分は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに結合され得るブランチャ分子に各GalNAc部分を結合するスペーサーに結合された、2~4個、例えば、3個の末端GalNAc部分からなる。
【0147】
更なる実施形態では、コンジュゲート部分は、アシアロ糖タンパク質受容体標的化部分に関して、一価、二価、三価、または四価である。有利には、アシアロ糖タンパク質受容体標的化部分は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分を含む。
【0148】
コンジュゲート部分を構成するASPGR標的化足場は、例えば、GalNAc部分をそのC-1炭素を介してスペーサーに連結することによって生成し得る。好ましいスペーサーは、柔軟な親水性スペーサーである(米国特許第5885968号;Biessen et al.J.Med.Chern.1995 Vol.39 p.1538-1546)。好ましい柔軟な親水性スペーサーは、PEGスペーサーである。好ましいPEGスペーサーは、PEG3スペーサーである。分岐点は、2~3つのGalNAc部分または他のアシアロ糖タンパク質受容体標的化部分の付着を可能にし、さらにオリゴヌクレオチドへの分岐点の付着を可能にする任意の小分子であり得、そのような構築物は、GalNAcクラスターまたはGalNAcコンジュゲート部分と呼ばれる。例示的な分岐点群は、ジリジンである。ジリジン分子は、3つのGalNAc部分または他のアシアロ糖タンパク質受容体標的化部分が結合され得る3つのアミン基、およびジリジンがオリゴマーに結合され得るカルボキシル反応性基を含む。Khorev et al 2008 Bioorg.Med.Chem.Vol 16、pp.5216は、適切な三価分岐剤の合成についても説明している。他の市販の分岐剤は、1,3-ビス-[5-(4,4′-ジメトキシトリチルオキシ)ペンチルアミド]プロピル-2-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]ホスホルアミダイト(Glen Researchカタログ番号:10-1920-xx);トリス-2,2,2-[3-(4,4′-ジメトキシトリチルオキシ)プロピルオキシメチル]エチル-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Researchカタログ番号:10-1922-xx);およびトリス-2,2,2-[3-(4,4′-ジメトキシトリチルオキシ)プロピルオキシメチル]メチレンオキシプロピル-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト;および1-[5-(4,4′-ジメトキシ-トリチルオキシ)ペンチルアミド]-3-[5-フルオレノメトキシ-カルボニル-オキシ-ペンチルアミド]-プロピル-2-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Researchカタログ番号:10-1925-xx);ならびにTyr-Glu-Glu-(アミノヘキシルGalNAc)3(YEE(ahGalNAc)3などのGalNAc部分が結合した小ペプチド;肝細胞上のアシアロ糖タンパク質受容体に結合するグリコトリペプチド(例えば、Duff,et al.,Methods Enzymol,2000,313,297を参照されたい);リジン系ガラクトースクラスタ(例えば、L3G4;Biessen,et al.,Cardovasc.Med.,1999,214);およびコールラン系ガラクトースクラスタ(例えば、アシアロ糖タンパク質受容体に対する炭水化物認識モチーフ)である。
【0149】
ASGPRコンジュゲート部分、特に三価GalNAcコンジュゲート部分は、当該技術分野で公知の方法を用いてオリゴヌクレオチドの3′末端または5′末端に結合し得る。一実施形態では、ASGPRコンジュゲート部分は、オリゴヌクレオチドの5′末端に結合する。
【0150】
コンジュゲート部分(例えば、分枝分子)とオリゴヌクレオチドとの間に1つ以上のリンカーを挿入し得る。コンジュゲート部分とアンチセンスオリゴヌクレオチドとの間に、必要に応じてC6リンカーなどの切断不可能なリンカーと組み合わせて、生物切断可能なリンカーを有することが有利である。リンカー(複数可)は、「リンカー」の「定義」セクションに記載されているリンカーから選択することができ、特に生物切断可能領域D′またはD′′のリンカーが有利である。
【0151】
いくつかの実施形態では、コンジュゲート基は、1つ以上のN-アセチルガラクトサミン残基(GalNAc)を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、コンジュゲート部分は、複数のN-アセチルガラクトサミン残基(GalNAc複合体)を含む。いくつかの実施形態では、N-アセチルガラクトサミン残基(複数可)は、PEGリンカー(PEGはさらなる水素結合部位を含む)などのポリマー基に共有結合している。複数のGalNAc(または、例えば、GalNAc-PEG部分)は、連結部分を介して、例えばペプチドリンカー、例えばポリリジンリンカーを介して、互いに共有結合し得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、galNAcコンジュゲートは、必要に応じてC6リンカーなどのリンカー基を介して、オリゴヌクレオチドの5′末端に共有結合している。
【0154】
一実施形態では、コンジュゲート部分は、以下に示すものから選択されるGalNAc部分などの三価N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)であるか、またはそれを含む(波線は、オリゴヌクレオチドの5′もしくは3′末端またはコンジュゲート部分とオリゴヌクレオチドの5′もしくは3′末端との間に配置されたリンカーとの共有結合を表す):
式中、T2は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに対する3′共役GalNAc部分の使用を開示している国際公開第2014/179620号に記載されているように、GalNAc部分をオリゴヌクレオチドに連結するオリゴヌクレオチドまたはリンカーである。
【0155】
国際公開第2016/055601号には、例えば、ホスホルアミダイト法を使用したオリゴヌクレオチドへのGalNAcコンジュゲート部分の導入について記載されている。
【0156】
ポリマーコンジュゲート部分
いくつかの実施形態では、コンジュゲート部分は、ポリマーであるか、またはポリマーを含む。ポリマーとしては、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコール(PPG)などの親水性ポリマー(国際公開第2008/034123号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。)、ポリアミン、ポリペプチド、ポリメタクリレート(例えば、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA))、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(DLラクチド-コ-グリコリド(PGLA)、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアルキルアクリル酸、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、ポリスペルミン(PSP)、ポリエーテル、シクロデキストリン、それらの誘導体およびそれらのコポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0157】
いくつかの実施形態では、コンジュゲート部分は、PEG基またはPEGスペーサーを含む。
【0158】
レポーター群
いくつかの実施形態では、コンジュゲート部分は、フルオルフォアなどのレポーター基であるか、またはレポーター基を含む。例示的なフルオロフォアとしては、6-カルボフルオレセイン、6-カルボキシテトラメチルローダミン、Cy3およびクマリンが挙げられる。
式中、Xはリンカーであり、Rはオリゴヌクレオチドである。
【0159】
蛍光標識オリゴヌクレオチドは、例えば、しばしばクエンチャー分子と組み合わせてqPCRで日常的に使用されている。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、クエンチャー部分基、例えば、ダブシル、BHQ2、IBFQおよびIQ4を含む。
【0160】
レポーター基は、典型的には、ホスホルアミダイトまたはオリゴヌクレオチド合成後として、例えばアミノ基/エステル反応を介してオリゴヌクレオチドに組み込まれる。
【実施例
【0161】
化合物表
以下の化合物をDVS分析に使用した。化合物は、長さ、配列、異なるコンジュゲートの存在、および異なるヌクレオチド類似体の存在の違いに基づいて選択された。化合物はまた、異なる組み合わせでのホスホジエステル結合およびホスホロチオエート結合の存在に基づいて選択された。
【0162】
【0163】
ホスホジエステルヌクレオシド間結合は、下付き文字によって表され、そうでなければ、全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合であり;非イタリック体の大文字はベータ-D-オキシLNAヌクレオシドを表し、全てのベータ-D-オキシLNA Cは5-メチルシトシンベータ-D-オキシLNAであり;イタリック体の大文字は2′-O-メトキシエチルRNAヌクレオシドを表し、小文字はDNAヌクレオシドを表し;5′-GN2-C6は、オリゴヌクレオチド配列の5′末端ヌクレオシドの5′位に共有結合したC6アルキルリンカーを有する三価のGalNAcコンジュゲートを表し;6SHは3′末端チオールを表し;5′-FAMは、5′FAMフルオロフォアコンジュゲート基を表す。5′-AM-C6は、例えばGalNAc部分へのコンジュゲーションの前に中間体として使用されることのあるアミノC6アルキルリンカーを指す。化合物6では、小さいnがDNAヌクレオシドであり、大きいNがベータ-D-オキシLNAヌクレオシドである混合配列ギャップマーオリゴヌクレオチドである。
【0164】
実施例1:コンジュゲートされていない、FAM標識およびチオール標識オリゴヌクレオチドの合成:
オリゴヌクレオチドを、MerMade12またはOligoPilot100シンセサイザーでホスホルアミダイトアプローチを20μmol以上の合成スケールで使用してDMT-offで合成した。各オリゴヌクレオチドを切断し、アンモニア水を用いて60で少なくとも5時間脱保護した。粗化合物を以下の方法の1つによって精製した:
1)イオン交換HPLC、引き続いてクロスフローでの限外濾過。
2)クロスフローでの直接限外濾過
3)サイズ排除クロマトグラフィーを用いた直接脱塩
精製後、オリゴヌクレオチドを凍結乾燥した。オリゴヌクレオチドの純度および分子量をUPLC-MSによって特徴付けた。
【0165】
実施例2:GalNAcコンジュゲートオリゴヌクレオチドの合成:
オリゴヌクレオチドを、MerMade12またはOligoPilot100シンセサイザーでホスホルアミダイトアプローチを20μmol以上の合成スケールで使用して、5′末端でアミノC6として合成した。各オリゴヌクレオチドを切断し、アンモニア水を用いて60℃で少なくとも5時間脱保護した。粗化合物を以下の方法の1つによって処理した:
1)クロスフローでの直接限外濾過
2)0,1M NaOHに溶解し、蒸発させる
3)アセトン中2%LiClO4中で沈殿させ、続いてアセトンを蒸発させる。
オリゴヌクレオチドを、国際公開第2014118267号に記載される方法を使用して三価のGalNAcコンジュゲートにコンジュゲート化した。共役化合物を以下の方法の1つによって精製した:
1)イオン交換HPLC、引き続いてクロスフローでの限外濾過。
2)イオン交換HPLC、引き続いてサイズ排除クロマトグラフィーを用いて脱塩
精製後、オリゴヌクレオチドを凍結乾燥、噴霧乾燥または沈殿させた。オリゴヌクレオチドの純度および分子量をUPLC-MSによって特徴付けた。
【0166】
WO2014/118267(conj 4a)に記載されているようなgalNAc-C6リンカーコンジュゲート部分を以下に示す:
【0167】
実施例3:DVS分析
DVS(動的蒸気収着)分析は、自動化重量吸着システムを使用して行った。湿度の動的変化を開始させる前に、全ての試料を分析機器内の相対湿度(RH)0%で定常状態に到達させた。質量の変化は、0~90または95%RHの範囲に上昇または下降させる、両方のRH条件下で分析した。試験化合物の大部分は、2サイクルを用いて分析した。1つの化合物のみを1サイクルで分析した。2つの化合物は2サイクル分析したが、測定中の装置の技術的問題のために、1サイクルのみ使用した。
【0168】
分析は、2つの異なる装置:
DVSデータ分析スイートを備えた表面測定システムDVS装置、
SPSソフトウェアを備えたproUmid DVS装置
を使用して3つの実験室で実施した。
【0169】
両者のソフトウェアタイプから出力された結果は、固定温度での相対湿度条件の関数としての試料の質量の動的変化であった。
【0170】
使用した装置の種々のプロファイルを使用して相対湿度を変化させた:
1)RHは:0~5、5~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、(90~95)と間隔をおいて上昇させ、同じ間隔を使用して再び下降させた。試料を各段階の条件に平衡化させた後、相対湿度を次のレベルに変更した。走査速度は、現在の条件での平衡速度に応じて、同じ化合物の中で1.5~9%RH/hに相当した。
2)相対湿度は、0~95%RHの範囲で固定速度5% RH/hで変化させた。
【0171】
得られたデータを、以下の表1に示す。図1に示すように、分析された化合物は、RH条件の上昇および下降中に質量変化のヒステリシスを示した。データから、化合物間の明確なパターンまたは相関は観察されなかった。
【0172】
全てのDVS分析からの全てのデータ点の平均を使用して、質量変化の割合とオリゴヌクレオチドの長さとの間の関連を調査した。
【0173】
(表1)種々のRH条件での質量変化の平均
【0174】
目視によれば、表1に示す結果は、RH条件と質量(%)の変化との間の明確な関連を示さなかった。質量変化の割合を、特定の化合物によって吸収される水の重量に変換した。さらに、水の重量を水のモル数に換算した。化合物の重量を化合物のモル数に変換し、モル数に各化合物のヌクレオチド数を乗じた。各化合物におけるヌクレオチドのモル数とモル数の比率を算出した。以下の式を使用して、任意の所与のオリゴヌクレオチド試料中のヌクレオチドあたりの水分子の数(以下、比率と呼ぶ)を計算した。このステップは、全ての結果を標準化するために必要であり、そうでなければDVS分析からの種々の化合物の重量増加(パーセント)はランダムになると思われた。
【0175】
実施例4-DVS分析に基づいてオリゴヌクレオチドの含水量を評価するための数学アルゴリズムの開発。
DVS分析からのデータは全て、4つの式を使用して変換した。
式1~3では、未知の因子をできるだけ少なくするために、分離の数学的規則を使用して未知の量を少なくした。式4は、式1~3の結果に基づいており、3つ全ての式の組み合わせである。
オリゴ=オリゴヌクレオチドのみを含む(水を含まない)試料の質量。
=順応後のオリゴヌクレオチドによって得られた水の質量。
オリゴ+水=mオリゴ+mに対応する、オリゴヌクレオチドおよび水の質量。
Δm%=順応後の試料の質量変化(%)(例えば、9%でなく、0,09と記載されている)。これらのデータは、DVS分析によって供給された。
オリゴ=オリゴヌクレオチドのモル数
ヌクレオチド=全ヌクレオチドのモル数=オリゴヌクレオチドのモル数×化合物中のヌクレオチド数
=水のモル数
【0176】
式1は、所与の化合物のDVS分析が、この化合物が順応後に20%の重量を増加することを示す場合、すなわち:
オリゴ+0,20×mオリゴの場合に、新しい重量を計算し得るという仮定に基づいていた。
式1
【0177】
式2は、異なる因子を使用してmオリゴを計算し得ることを示すために式1を変換したものであった。それができるように、mオリゴ+水=mオリゴ+mと仮定した。
【0178】
式2
【0179】
式3は、式1および式2の組み合わせであった。mオリゴを、式1および式2の両方で分離し、一緒に結合して式3を形成した。
【0180】
式3
【0181】
式4は、式m=M*nと共に式1、2および3を使用して作成された。全ての式を組み合わせることによって、未知の因子の数をただ1つ(Δm%)に減らすことが可能であった。
【0182】
式4
【0183】
実施例5-DVS生データへの比率モデル(ration model)の適用
式4および各化合物の質量の変化の平均を使用して、全ての試験化合物および全てのRHデータポイントについて比率を計算した。Δm%データは、種々の室内湿度における各化合物の質量変化の概要を示す表から得た。Mオリゴおよびヌクレオチド数などの他の因子は化合物特異的であり、計算し得るものであり、一方で、Mは常に一定で18.02g/molであった。これらの結果を表2に要約する。
【0184】
(表2)水分子の比率は、式4を用いて算出する
【0185】
オリゴヌクレオチドは一連のヌクレオチドからなり、その数は化合物間で異なることを覚えておくことが重要である。質量変化の割合(パート1で導入)と室内湿度の変化の割合(パート2で導入)とを区別することも重要である。
【0186】
実施例6-比率データの比較分析
DVS分析からの全ての平均結果をグラフに組み合わせると、10~70%RHの区間における全ての化合物間の挙動の傾向を視覚化することが可能であった。この区間において、全ての化合物は、相対湿度と化合物中のヌクレオチド当たりに吸収された水分子の数との間の線形相関を示した。これは、試験した全ての化合物が非常に類似した挙動を有し(図2)、元のDVS分析データからは明瞭ではないか、または予測されなかったことを示している(表1)。
【0187】
試験された化合物は、設計が非常に相違しており、依然として非常に類似した挙動を示し、ヌクレオチドあたりの水分子の平均数は、全ての試験された化合物間で非常に類似していることが証明された。全ての試験されていないオリゴヌクレオチドが同じ様式で挙動すると仮定すると、オリゴヌクレオチド(部分)の長さ(またはMW)、重量、および雰囲気のRHの知識のみに基づいて、他のオリゴヌクレオチドの挙動を予測するために、既に分析された化合物にモデルを構築し得る。特に:
【0188】
LNA修飾オリゴヌクレオチドおよび2-MOE修飾オリゴヌクレオチドの両方、ならびにホスホロチオエート結合のみまたはホスホロチオエート結合とホスホジエステル結合の両方を含むオリゴヌクレオチドの場合、オリゴヌクレオチドの水和レベルと雰囲気の相対湿度との間に顕著な密接な相関関係がある。さらに、水との多数の潜在的な水素結合部位を提示するGalNAcコンジュゲートなどのコンジュゲート基の付加は、比率モデルに顕著に影響せず、意外なことに、DVS分析と本発明者らによって開発された比率モデルとの併用が、糖修飾オリゴヌクレオチド、結合修飾オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドコンジュゲートにおける使用に適していることを示している。
【0189】
相対湿度区間10~70%における以下のグラフからの結果を組み合わせることにより、比率モデルとも呼ばれる傾向線を描くことが可能である(図2および図7)。
【0190】
比率モデルに基づいて、これまでDVS分析を使用して分析されていなかった新しい化合物について、10~70%の任意の湿度条件でヌクレオチド当たりの水分子の数を算出することが可能になる。比率モデルの使用の概略図を図3に示す。
【0191】
ヌクレオチドあたりの水分子の比率に関する情報を、新しい化合物の長さおよび分子量に関する知識と組み合わせると、式4を使用して、任意のオリゴヌクレオチド粉末について水の理論的な含有割合を算出し得る。
【0192】
実施例7:比率モデル-平均対最大または最小
前述の比率モデルは、DVS分析の平均結果に基づいていた。全ての化合物がRH条件の上昇および下降中に質量変化のヒステリシスを示したため、各DVS分析は平均結果にも基づいており、これは全ての化合物が水の収着および吸着中に別々に挙動したことを意味する。
【0193】
オリゴヌクレオチド製剤の平均吸水率に基づく比率モデルをどの程度正確に使用しているかを調べるために、以下の計算を行った。得られた全てのDVS分析からの最高および最低の結果を使用して、最大の比率モデルおよび最小の比率モデルを作成した。
【0194】
相対湿度10~60/70%の区間の各化合物について、以下のデータ点に基づいて3つの傾向線を作成した。全ての傾向線は1に近い相関係数を示した。これらの傾向線を比率モデル最小、最大および平均と命名した。
【0195】
比率モデル平均:10~70%の区間でDVS分析から変換された全ての利用可能なデータ点の平均を示す。ヒステリシスを示すという事実にもかかわらず、吸収および収着からの結果がここに含まれた。
【0196】
比率モデル最大:10~60%の区間におけるRHの各値について、最大データ点が見出された。値は、区間を通して同じ化合物に由来しなかった。70% RHのデータ点は、異常な挙動のため除外した。
【0197】
比率モデル最小:10~70%の区間におけるRHの各値について、最小データ点が見出された。値は、区間を通して同じ化合物に由来しなかった。
【0198】
図4:グラフは、変換されたDVS分析からの平均値、最大値、および最小値に基づく傾向線を示す。最大値の70%RHは、このモデルから除外される。
【0199】
実施例8:DVS比率モデルに基づくオリゴヌクレオチド溶液の製剤化
平均モデルと比較して、最大値と最小値との間のこの近似に関与する偏差を評価するために、以下の理論実験を行った。
【0200】
質量の平均変化
質量の変化は、式4と組み合わせて比率モデルを使用して任意の未知の化合物について算出し得る。オリゴヌクレオチドのハイスループット製剤化には、平均比率モデルが適している。
【0201】
比率=0,061*RH+0,4218
比率=化合物中のヌクレオチドあたりに吸収された水分子の数(GalNAcはこれから除外される)。
RH=化合物が順応している現在の室内湿度。
Δm%=順応後の化合物の質量変化。
MW(水)=18.02g/mol、水の分子量。
MW(化合物、Na塩)=ナトリウム塩としての化合物の分子量。
ヌクレオチドの数=化合物中のヌクレオチドの数(化合物がGalNAcを含有する場合、それはこの数に含まれるべきではない)。
【0202】
2mg/mlの化合物A、5mlが必要である。
この溶液に必要な理論質量: 2mg/ml*5ml=10mg
【0203】
化合物Aの情報: MW(Na塩)=4900g/mol、化合物は14ヌクレオチドを含む
RH:45%
比率=0,061*RH+0,4218=0,061*45+0,4218=3,17
【0204】
実際の重量を計算できると仮定すると、
化合物+水=m化合物+Δm%*m化合物=10mg+0,16*10mg=11,6mg
【0205】
5mlの2mg/ml溶液を得るためには、結果として11.6mgの化合物Aを秤量する必要がある。
【0206】
実施例9:許容誤差の計算
平均に基づく計算と最も外側の結果に基づく計算とがどの程度異なるかを調べるために、上記の3つの比率モデルを使用して以下の計算を行った。最大、平均、および最小の比率モデルを使用し、続いてこれらの結果を式4で使用することにより、質量の差、したがって割合の偏差を計算することが可能である。
以下の計算は全て、上記の例からの化合物Aの同じ溶液に基づく。
第1のステップは、最大、平均および最小についての比率モデルを使用して、化合物Aにおけるヌクレオチドあたりの水分子の比率を計算することであった。上記のグラフから3つの式を得た。
最大:比率=0,0711*RH+1,365=0,0711*45+1,365=4,56
平均:比率=0,061*RH+0,4218=0,061*45+0,4218=3,17
最小:比率=0,0545*RH-0,6818=0,0545*45-0,6818=1,77
【0207】
この比率を式4で使用して、上記のように45%のRHでの化合物Aの理論的重量増加を計算した。
【0208】
質量の最大予想変化:
【0209】
質量の平均予想変化:
【0210】
質量の最小予想変化:
【0211】
質量の変化の割合を計算すると、試料の実際の重量も計算することができた。
【0212】
最大モデル:
化合物+水=m化合物+Δm%*m化合物=10mg+0,23*10mg=12,3mg
【0213】
平均モデル:
m化合物+水=m化合物+Δm%*m化合物=10mg+0,16*10mg=11,6mg
【0214】
最小モデル:
m化合物+水=m化合物+Δm%*m化合物=10mg+0,09*10mg=10,9mg
【0215】
目的は、最も外側の結果をその平均と比較することであり、最大モデル対平均モデルと最小モデル対平均モデルとの差を計算した。
【0216】
最大対平均モデルと最小対平均との間の必要な化合物の差は、わずか6%である。
【0217】
これは、分析された全ての化合物が、RH条件の増減中に質量変化のヒステリシスを示したにもかかわらず、平均モデルによって導入された偏差が非常に低いことを意味する。未知化合物が境界的な場合であり、最大値または最小値に近い値を有する場合でも、平均モデルからの最大の予想偏差は6%である。この偏差にもかかわらず、平均結果に基づく比率モデルは、UV測定に依存する方法および理論的に計算された吸光係数に基づく方法よりも優れており、さらに高い偏差が得られる可能性がある。
【0218】
実施例10-別の製剤化法との比較
UV測定は、オリゴヌクレオチドを含む溶液中の濃度決定のための標準的な方法の1つとして一般的に受け入れられている。比率モデルを使用することによって送達される濃度がUV測定および実験的に測定された吸光係数によって送達される結果に非常に近いことを示すために、以下の実験を行った。
【0219】
第1の工程は、一連のオリゴヌクレオチドについて実験的に吸光係数を決定することであった。これらの化合物についても理論的な吸光係数が見出された。第2の工程は、(平均結果に基づく)比率モデルを使用した同じ化合物の溶液の製剤化であった。
【0220】
各化合物について、Beer-Lambertの法則および2つの利用可能な吸光係数を使用して、溶液中の濃度を算出した。
【0221】
吸光係数の実験的決定
TGA分析を使用して試験化合物中の含水量を分析し、結果を次の工程に使用した。
【0222】
試験化合物を秤量し、重量を含水量について補正した。全ての試料を水で0,05mg/mlに希釈し、続いて0,033mg/ml、0,025mg/ml、0,0042mg/mlにさらに希釈した。吸光度を260nmで測定し、グラフのX軸に濃度を、Y軸に吸光度をプロットした。各化合物について傾向線を作成し、勾配を吸光係数とした。結果を化合物の純度についても補正した。
【0223】
製剤化方法の比較
実験的に測定された利用可能な吸光係数を有する化合物を、計量手順が行われた吸引キャビネット内で少なくとも4時間順応させた。室内湿度読取装置もその吸引キャビネット内に配置した。室内湿度を読み取り、平均結果に基づく式を用いて理論含水率を計算した。各化合物を2回秤量し、粉末を対応する量の水に溶解して2mg/mlの溶液を得た。各溶液中の吸光度をEppendorf Biophotometerで測定した。試験化合物の理論的吸光係数および測定吸光係数の両方を用いて、Beer-Lambertの法則を使用して濃度を算出した。これらの結果を表3に要約する。
【0224】
(表3)
【0225】
比率モデルに基づく濃度と測定された吸光係数に基づく濃度とは非常に一致している。理論的吸光係数に基づく結果は、通常は低すぎる他の2つの方法とは大きく異なっている。これは、試験溶液中の濃度が理論的吸光係数を使用して調整された場合、同じ化合物が高濃度に投入されたことを意味する。方法間の違いを説明するために、結果を1つのグラフにまとめた(図5)。
【0226】
視覚的には、比率モデルおよび測定された吸光係数に基づいて、濃度を表す青色バーと緑色バーとの間の相関性は良好であった。差が10%未満であることを示すために、これらの2つの方法は、目標濃度の+/-10%を表すために、比率モデルに基づいて濃度にエラーバーを追加した。理論的に計算された吸光係数に基づく結果は、ほとんどの場合、10%の範囲外にあるという結果を示した。
【0227】
この実験は、比率モデルと最も広く認められており、広く使用されている製剤化方法の1つである、測定された吸光係数を用いた吸光度測定との間に非常に良好な相関関係があることを示している。したがって、吸光度測定による濃度決定は、代わりに比率モデルを使用した溶液の調製に置き換えることができる。
【0228】
提案された方法はまた、誤差の原因となり得る吸光度測定と比較してピペット操作の工程が少ないという利点を有する。
【0229】
実施例11-吸収および収着速度の詳細な調査
実施例3:DVS分析(39頁)に記載の方法を用いて試料を分析した。ソフトウェアオプション1および相対湿度の変化は、両方の分析についてプロファイル1を使用して行った。
【0230】
(表4)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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