(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】チャッキングクランプ用の選択的結合装置
(51)【国際特許分類】
A61C 1/14 20060101AFI20240612BHJP
A61C 1/12 20060101ALI20240612BHJP
A61C 1/18 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
A61C1/14 A
A61C1/12
A61C1/18
(21)【出願番号】P 2021555600
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2020058987
(87)【国際公開番号】W WO2020201224
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-27
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517313109
【氏名又は名称】ビエン - エア ホールディング ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サルチ、ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】モシマン、ミリアム
(72)【発明者】
【氏名】ガトー、ヤン
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-154243(JP,A)
【文献】特表2005-532085(JP,A)
【文献】国際公開第2006/130989(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0154642(US,A1)
【文献】特表2008-519662(JP,A)
【文献】特開2015-150365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/12
A61C 1/14
A61C 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科又は外科用途向けのハンドピース(1)用の伝達ロータであって、前記ハンドピース(1)は、入力要素としてベアリング(23)、タービン(21)又は駆動ピニオン(
22)、及び出力要素として回転軸(R)を中心に回転可能な駆動シャフト(2)を含むドリルツール(100)の駆動機構を含み、前記駆動シャフト(2)は、前記回転軸(R)を中心に前記ドリルツール(100)を回転で作動させるように適合され、前記ハンドピース(1)は、ドリルツール(100)のクランプ装置をさらに含み、
前記クランプ装置は、前記回転軸(R)に対して前記ドリルツール(100)を軸方向に固定するために前記駆動シャフト(2)の内側に配置されたクランプ(4)であって、前記クランプ(4)は前記ドリルツール(100)を解放するためにプランジャ(5)と協働する、クランプ(4)と、前記駆動シャフト(2)と一体的に回転する、前記ドリルツール(100)の半径方向ガイドブッシュ(3)と、を含み、
前記クランプ装置は、前記クランプ(4)と前記ガイドブッシュ(3)及び/又は前記駆動シャフト(2)との間に選択的角度結合機構(Cs)を含み、前記選択的角度結合機構(Cs)は、前記クランプ(4)と前記ガイドブッシュ(3)及び/又は前記駆動シャフト(2)との間に角度保持トルク(C)を加え、その値は、前記クランプ(4)と前記ドリルツール(100)との間の滑り閾値に対応する値よりも劣って
おり、
前記角度保持トルク(C)は4mNmから20mNmの間である、伝達ロータ。
【請求項2】
前記クランプ(4)と前記ガイドブッシュ(3)及び/又は前記駆動シャフト(2)との間の前記選択的角度結合機構(Cs)は、前記クランプ(4)と前記駆動シャフト(2)と一体的に回転する前記ガイドブッシュ(3)との間に磁気結合を使用する、請求項
1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記クランプ(4)は、受動強磁性材料でできており、前記ガイドブッシュ(3)は、永久磁石で構成する、請求項
2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記クランプ(4)と前記ガイドブッシュ(3)との間の前記角度保持トルク(C)は、前記クランプ(4)の下部軸方向結合面(41)と、前記ガイドブッシュ(3)の上部軸方向結合面(31)との間の摩擦から生じる、請求項
3に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記クランプ(4)は、受動強磁性材料でできており、前記ガイドブッシュ(3)は、磁化された結合リング(30)によって覆われる、請求項
2に記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記クランプ(4)と前記ガイドブッシュ(3)及び/又は駆動シャフト(2)との間の前記角度保持トルク(C)は、さらに、前記クランプ(4)の下部軸方向結合面(41)と、前記磁化結合リング(30)の上部軸方向結合面(301)との間の摩擦からさらに生じる、請求項
5に記載のクランプ装置。
【請求項7】
前記クランプ(4)と前記ガイドブッシュ(3)及び/又は前記駆動シャフト(2)との間の前記選択的角度結合機構(Cs)は、前記駆動シャフト(2)に取り付けられた半径方向クランプリング(9)と前記クランプ(4)との間の摩擦結合を使用し、前記
半径方向クランプリング(9)の
内側半径方向結合面(91)は、前記クランプ(4)の外側半径方向結合面(42)と接触している、請求項1から
6までのいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項8】
前記クランプ(4)は、その基部に、前記半径方向クランプリング(9)の下部軸方向保持面(92)の下に配置された上部周辺軸方向停止面(401)を有する下部カラー(40)を有する、請求項
7に記載のクランプ装置。
【請求項9】
前記クランプ(4)は、前記半径方向クランプリング(9)と追加のクランプリング(9’)との間に挿入された周辺半径方向ビード肩部(44)を有する、請求項
7に記載のクランプ装置。
【請求項10】
前記プランジャ(5)は、半径方向の周辺肩部(50)を備え、前記駆動シャフト(2)内で自由に回転するように取り付けられたクランプストップ(51)によって覆われる、請求項1から
9までのいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項11】
前記プランジャ(5)は、
前記駆動シャフト(2)と一体的に回転する上部(52)、及び
、前記駆動シャフト(2)内で自由に回転して前記クランプ(4)と協働する下部円錐部分(53)からさらに構成されている、請求項1から
10までのいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項12】
前記クランプ(4)は、DLCなどの自己潤滑性コーティングによって外面が覆われている、請求項1から
11までのいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項13】
前記クランプ(4)は、3D印刷を使用してプラスチック材料でできている、請求項1から
12までのいずれか一項に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン及びコントラアングルの分野、より具体的には、ドリルツール用のチャッキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
市場に出回っている高速歯科用ハンドピースの大部分、つまり(空圧式)タービンとマルチプライヤコントラアングル(電気モーター式)には、弾性クランプを使用してドリルをクランプするシステムが装備されている。このシステムは非常に長い間よく知られており、特に特許文献欧州特許第0273259(B1)号に記載されている解決策はよく知られている。
【0003】
このタイプのクランプシステムでは、ドリルツールを回転で駆動するロータシャフト(エアタービンの場合はタービン、又はコントラアングルの場合は伝達ピニオンのいずれかがその上及び外側に圧入される)が、クランプ及びプランジャを含む。クランプは一般にシャフトに圧入及び/又は溶接され、2つの機能があり、可撓性弾性端によってドリルを軸方向に保持する機能、削っている間に歯科医によって半径方向負荷が加えられた場合、ドリルが過度に傾いたり、作業の精度に悪影響を与える過度の振動を発生させたりするのを防ぐために、ドリルを半径方向にガイドする機能である。プランジャ自体は、シャフト内で軸方向に摺動でき、場合によってはシャフト内で角度を付けて回転できるため、シャフト内で部分的に自由になる(円錐プランジャの場合);クランプの開放段階でクランプと協働して、外科医-歯科医がプランジャを覆っている解放ボタンを押すとドリルを解放する。クランプが閉じてドリルをつかむとき、プランジャはクランプの表面の単純な支台歯にあることができるが、クランプの弾性部分に開く力を加えてはならない。
【0004】
削っている間に、外科医-歯科医によってドリルに加えられる過度の軸方向負荷のために、ドリルがクランプの顎を越えてカバーに向かって摺動し、プランジャを遮断することができなくなり、それにより、ユーザがプランジャをカバーに加えられた圧力に抗して押すことができず、またクランプを開いて作業の最後にドリルを取り外すことができず、クランプストップと呼ばれる追加の構成要素を含むさらに完成されたクランプシステムが存在する。そのような構成要素が導入され、好ましくは、ハンドピースのヘッドのカバーの側面のシャフトに圧入及び/又は溶接又ははんだ付けされ、それにより、プランジャの軸方向の閉塞を防ぐことが可能になる。したがって、クランプストップの存在は、クランプに詰まったドリルが原因のメーカーへの返品を制限する。
【0005】
さらに、クランプのガイド及びクランプ機能を最適化できるようにするために、ガイドブッシュがクランプとは別に形成されるシステムがさらに存在する。次に、これらの2つの部分は、ロータシャフトと回転する1つの一体型ブロックのみをここで形成するために、一般に溶接又はろう付けによって相互に取り付けられる。このような場合、追加の構成要素が次いでドリルの出口近くのシャフトに挿入される。このような解決策により、ドリルの後端をクリップするために可撓性の弾性材料が必要なクランプ及び代わりに硬くて耐摩耗性のある材料が必要なガイドブッシュに最適なさまざまな材料を使用できるようになる。
【0006】
それにもかかわらず、これらの先行技術の解決策のいずれも、負荷がかかった状態での回転中にドリルとクランプとの間の分離に起因するクランプの早期摩耗を効果的に防止することを可能にしない。つまり、それは外科医-歯科医が使用しているときである。クランプ内でのドリルの繰り返しの長時間の滑りは、おそらく、ロータの大きな慣性のために、クランプによって保証された最大トルクの超過を伴う、ドリルの突然の詰まりが原因である可能性がある。
【0007】
したがって、これらの既知の制限のない解決策が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の1つの目的は、より効果的であり、回転中のドリル及びクランプの滑りのリスクを最小限に抑えることを可能にする新しいクランプ装置を提案することである。
【0010】
本発明の別の目的は、それにもかかわらず標準的なハンドピースのヘッドと互換性を維持し、解放に使用されるボタンプランジャの組み立てをより複雑にしない完全なクランプ装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、主請求項の特徴によって、特にクランプとガイドブッシュ又はそれぞれ駆動シャフトとの間の選択的な角度結合機構によって直接達成され、選択的角度結合機構は、クランプとガイドブッシュ及び/又は駆動シャフトとの間に角度保持トルクを加え、その値は、クランプとドリルツールとの間の滑り閾値に対応する値よりも劣っている。
【0012】
提案された解決策の1つの利点は、ドリルとクランプの分離のリスクを最小限に抑えることを可能にし、したがって、チャッキング装置の耐用年数を大幅に改善することを可能にすることである。
【0013】
並行して、提案された解決策は、後のハンドピースの組み立て作業に影響を与えることなく、ハンドピースの構築に導入される追加の構成要素の数を最小限に抑えながら、クランプの信頼性を向上させることを可能にする。
【0014】
好ましい実施例によれば、選択的角度結合機構は、クランプとガイドブッシュとの間の磁気結合を使用して、これらの2つの部品間の磁気引力が、追加の部分を必要とせずに平行な方法で部分を相互に接触して配置及び軸方向に保持することを可能にするようにする。好ましい変形によれば、ガイドブッシュ自体の材料をより自由に選択することができ、したがって与えられるガイド特性に悪影響を及ぼさないようにするために、磁化リングが覆われ、モジュールピースとしてガイドブッシュに取り付けられる。
【0015】
別の好ましい実施例によれば、選択的角度結合機構は、駆動シャフト及びガイドブッシュと一体的に回転する半径方向クランプリングを使用し、これは、滑りクランプ、すなわち調整を介してクランプの下部に取り付けられ、その調整は、通常の動作範囲内にある特定の閾値を超えるねじりトルクの印加を超えて、これら2つの部品間の相対的な動きを可能にするほど大きな保持トルクを加えない。この場合、摩擦面は半径方向で円筒形であることが好ましく、結合はクランプと駆動シャフトとの間で直接行われる。さらに、この純粋に機械的な結合モードの好ましい変形によれば、クランプの形状は、軸方向の保持面を形成する下部カラー、又はより中間部分の周辺ビードさえも有することができ、次に、これは、追加のクランプリングで覆うことができ、軸方向のブロッキングの機能も補足的に実行し、それ以外の場合は、摩擦トルクを加えるための接触面を増やし、その結果、クランプに対する保持トルクの値を調整することができる。
【0016】
さらに別の好ましい実施例によれば、プランジャは2つの部分で設計され、そのうちの1つは駆動シャフト、つまりガイドブッシュに対して回転固定されており、もう1つはクランプと協働して、駆動シャフトに完全に自由に回転して取り付けられている。そのような変形は、これらの2つの部品が分離されるときにクランプがブッシュ上で長時間摺動できるという利点を有するが、しかしながら、顎に加えられるねじれのためにプランジャが開くリスクを生じさせず、とりわけ顎が、正反対の2本の足の形をとる場合である。特に有利な変形によれば、プランジャの下部は、シャフト内で自由に回転し、円錐形である。
【0017】
本発明は、実例として与えられ、以下の図面を参照して、以下の説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の好ましい実施例による、ドリルツールを備えたハンドピースのヘッドの正面図である。
【
図2】本発明の好ましい実施例による、
図1に示されている切断面(S-S)に沿った、可動タービンホイールが取り付けられた伝達ロータを使用したハンドピースの3次元の部分矢状断面図であり、回転中の選択的結合を備えたクランプシステムを備えた「タービンロータ」と呼ばれることが多い。
【
図3】矢状面(S-S)での
図2のハンドピースの拡大断面図を示す。
【
図4】本発明の別の好ましい実施例による、回転中の選択的結合を備えたクランプシステムを備えたタービンロータを使用するハンドピースの3次元での部分矢状断面図である。
【
図5】矢状面(S-S)での
図4のハンドピースの拡大断面図を示す。
【
図6】本発明のさらに別の好ましい実施例による、圧縮空気をそれ以上使用せず、代わりに駆動モーターシャフトを介して作動するコントラアングルタイプのハンドピースの3次元の部分矢状断面図であり、回転中の選択的結合を伴うクランプシステムを装備した伝達ロータを備えている。
【
図7】矢状面における
図8のハンドピースの拡大断面図を示す。
【
図8】本発明の別の好ましい実施例による、再度、矢状断面図による、純粋に機械的な選択的結合機構の詳細を示す。
【
図9】
図8と同じ矢状断面図による、本発明のさらに別の好ましい実施例による選択的結合機構の詳細を示す。
【
図10】
図8及び9と同じ矢状断面図による、本発明のさらに別の好ましい変形による選択的結合機構の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願の文脈において、本発明によるクランプ機構を統合することができるハンドピースは、パイプによって注入された圧縮空気の作用下でドリルが回転して駆動される場合、「タービン」、又は、モーターによって作動する駆動シャフトを使用した「コントラアングル」のいずれかで構成することができる。
【0020】
図1に正確に示されているのは、タービン又はコントラアングルで構成できるハンドピース1の外側の図である。それは、その回転軸Rを中心に回転するように取り付けられた、ドリル100が挿入される基部にあるヘッド10を備える。ヘッド10を覆う押しボタン61は、従来の方法で、ハンドピースのユーザ、すなわち典型的には外科医-歯科医によってドリル100に圧力が加えられたときにドリル100を解放することを可能にする。
【0021】
図1の矢印S-Sは、本発明の文脈で、まずタービンの文脈(
図2から5)で、次にコントラアングルの文脈(
図6と7)で提案されたドリル100の取り付け及びクランプの機構をより詳細に表示することを可能にするために、以下の
図2から8で使用される矢状切断面を示す。
【0022】
以下では、まず、
図2及び3を参照して、タービンに接続された第1の好ましい実施例について説明する。
【0023】
図1に示される切断面(S-S)に沿ったハンドピース1の3次元の部分矢状断面図で構成する
図2は、ドリル100のヘッド10及びクランプ機構の異なる通常の要素を区別することを可能にし(しかし、明確にするために示されていない)、特に、図の右側に圧縮空気11を供給するためのパイプを含み、タービンホイール21を駆動し、それ自体がドリルツール100の駆動シャフト2と一体的に回転する。これは一般に「ロータシャフト」と呼ばれる。ここでの駆動シャフト2には、2つのベアリング23、好ましくはボールベアリングが挿入され、それ自体がOリングタイプ24のそれぞれのガスケットによって圧搾される。駆動シャフト2に取り付けられているのは、それぞれドリル用の軸方向保持クランプ4(その顎はこの図には見えないが、コントラアングルの対応する実施例に関連して
図7によく見られる)及び半径方向ガイドブッシュ3である。これらの2つの部品は、特にクランプ4に使用される材料をガイドブッシュ3の材料に調整することができるように分離されている。したがって、クランプ4は、好ましくは弾性及び変形可能な材料を必要とするが、ブッシュ3は、その部分について、耐摩耗性であり、回転軸Rに沿って可能な限り長い時間ガイドするための優れた特徴を確実にするために、好ましくは非常に硬い材料を必要とする。
【0024】
ヘッドの上部には、ドリル100を解放するために設けられた押しボタン61を保持するための部品が挿入されている。この保持部品は、記載された好ましい実施例によれば、ヘッド10に作られためねじ13と協働する、その外周のねじ山付きビード621によってヘッドにねじ込まれたナット62、提供されたシーリングガスケット64で構成し、これらの2つのねじ込み面が協働して、ナット及び押しボタンの繰り返し可能な配置を確実にし、したがってタービンの場合、ヘッドから出る空気力学的流れを安定させる。保持ナット62の上部に配置されているのはばね63であり、
図2及び3に示されるように、押しボタン61をその静止位置に戻すことを可能にし、押しボタンの周辺半径方向係合部分612が内周保持リップ622と接触して保持され、係合部分の協働が
図3に示されている。
【0025】
図2では、同様に、押しボタン61の下面610において、この目的のために提供された低熱伝導率の材料で作られた抗加熱ボール8を区別することができ、これは、好ましくは、押しボタン61に向けられる熱伝達熱橋を最小化するために、ここでは六角形の断面である押しボタン61に設けられた中央収容部613に直接圧入される。
【0026】
ナット62及び押しボタン61によって形成される押しボタンモジュール6、並びに2つの間に挿入された圧縮ばね63は、後で
図3に示されている。
図2では、プランジャ5をここで区別でき、
図3及び4に見られるように、圧力が方向Pに加えられたときに押しボタン61、又はここではより正確にはボール8と接触させることができ、永久クランプ磁石7がナット62に配置されている。本発明の文脈において、プランジャ5は、永久クランプ磁石7と協働するように、受動強磁性材料でできている。
【0027】
タービンの場合、伝達ロータは、次いで、入力要素としてのタービンホイール、出力要素としての駆動シャフト2、並びにベアリング23、クランプ4、プランジャ5、及びガイドブッシュ3からなる。
【0028】
コントラアングルの場合、伝達ロータは、入力要素としての駆動ピニオン22(タービンホイール21を置き換える)、出力要素としての駆動シャフト2、並びにベアリング23、クランプ4、プランジャ5及びガイドブッシュ3からなる。
【0029】
ロータに利用可能な出力、したがってそのトルクと速度は、ロータが統合されたハンドピース、圧縮空気供給ネットワークのパイプ(タービンの場合)又はモーターとその制御電子機器(コントラアングルの場合)に依存している。駆動シャフト2に供給されるトルクは、伝達ロータの回転速度にも依存し、これは、順にドリルに加えられるトルク(タービンの場合)又はモーターに与えられる回転速度(コントラアングルの場合)に依存する。これは、速度が上がると伝達ロータの効率が大幅に低下するためである(タービンの場合、最大速度でゼロに近づく)。しかし、タービンの場合もコントラアングルの場合も、どちらの場合も、駆動シャフトに供給できる最大トルクは入力構成要素(それぞれタービンホイール21又は駆動ピニオン22)、ベアリングの23効率での摩擦と、入力構成要素と駆動シャフト2との間の機械的接続0のみに依存する(供給トルクは、この機械的接続の破断限界を超えることはできない)。
【0030】
例えば、タービンの場合、駆動シャフト2に供給できる(ロータが組み込まれているハンドピースの幾何学的構成及び利用可能な空気圧とは無関係に)最大トルクは、ベアリングの23効率、タービンホイールの直径及び高さ、並びにタービンホイール21のブレードの数及び形状によって決定される。
【0031】
コントラアングルの場合、駆動シャフト2に供給できる(ロータが統合されているハンドピースの幾何学的構成及び利用可能なモーター出力とは無関係に)最大トルクは、ベアリングの23効率、数、材料、及び駆動ピニオン22の歯の形状によって決定される。
【0032】
さらに、これらの技術的制限を考慮して、伝達ロータを介して駆動シフト2に伝達及び供給できる最大トルクCTrは、ロータがタービンに統合されている場合は2~6mNm以内に含まれるが、一方、ロータが20000rpm未満の速度で回転するモーターに接続されたコントラアングルに統合されている場合、通常は10mNmに達する可能性がある。
【0033】
以下では、矢状面S-Sにおいて、前述の
図2と同じ要素を取り、
図3を等しく参照し、これは、拡大図において本発明による完全なクランプ装置の異なる要素を表す。これらすべての図に共通する参照の説明は、体系的に繰り返されることはない。
【0034】
図2及び3では、環状部分721及び軸方向保持カラー722を有する保持部品72の助けを借りて、環状形状7の永久クランプ磁石が押しボタン61の保持ナット62に配置されていることに留意されたい。この部品は、例えば圧入、溶接又ははんだ付け、さらにはねじ込みによって、任意の方法でナット62に固定することができ、環状形状の磁石7の配置は、クランプストップ51を配置することができるようにするために、周辺肩部50をさらに有するプランジャ5のケーシングを越えて半径方向に延びることに留意されたい。このクランプ磁石7は、軸方向に磁化されており、したがって、パートナー強磁性要素、すなわちクランプ装置のプランジャ5に実質的に上向きに向けられた引力を恒久的に加える。磁気引力F
1は、
図4の矢印によって示され、プランジャ5が押しボタン61の方向で上部位置に保たれているという事実を示す。使用条件、すなわち、駆動シャフト2の回転中及び削っている間、この磁気引力F
1は、プランジャ5をクランプストップ51に対して平らにすることを可能にし、したがって、プランジャ5がクランプ4に詰まり、クランプ4が誤って開くのを防ぐ。
【0035】
本発明の文脈において、永久クランプ磁石7は、好ましくは環状又は円筒形であり、すなわち、ドリルの回転軸Rの周りの回転形態を有する。
図2から4に示される実施例によれば、永久クランプ磁石7がナット62内に配置されるという事実は、結果として、ナット62をそのパートナー強磁性要素、すなわちプランジャ5に可能な限り近づけ、したがって、磁力F
1の強度を最大化して、それをその「高」位置、すなわちプランジャがクランプストップ51に対して接触して保持される位置に効果的に保持することを可能にする。
【0036】
永久クランプ磁石7が固定され、押しボタン61の保持ナット62に配置されるこの実装は、さらに、信頼性の追加の技術的利点を有する。実際、クランプを開くとき、押しボタン61は、ユーザによって方向Pに押されて、プランジャ5をクランプ4の内側に押し込み、したがって、クランプ4の弾性スリーブを開く。この場合、ユーザは、ナット62と押しボタン61との間の圧縮ばね63の保持力だけでなく、プランジャ5と永久クランプ磁石7との間の磁力F1も克服しなければならず、これは、ユーザ側の押しボタン61を誤って押すことに対する補足的なセキュリティを追加する。
【0037】
クランプ4の早期摩耗を防ぐために、負荷がかかった状態での回転中にドリルツール100がクランプ4から分離するため、特にロータの大きな慣性のために、クランプによって保証される最大トルクを超えることを含むドリルの突然の閉塞のために、選択的角度結合装置Csは、本発明の文脈において、一方が他方に対して、取り外し可能な方法で組み立てられ、可逆的である2つの別個の部分によって形成されたクランプ4とガイドブッシュ3との間で提案され、ドリルツール100自体がクランプ4内で回転する前に、ガイドブッシュ3に対してクランプ4の解放を正確な方法で可能にする。ブッシュ3へのクランプ4のモジュール取り付けのそのようなシステムの別の機能的制約は、駆動シャフトの入力に加えられるトルクに関係なく、クランプがブッシュから角度的に外れないことを確実にすることである。換言すれば、提案された選択的角度結合機構Csは、クランプ4とガイドブッシュとの間に角度保持トルクCを加えなければならず、その値は、前記駆動機構の最大伝達トルクCTrに対応する値と、前記クランプ4と前記ドリルツール100との間の滑り閾値に対応する値との間である。これは、以下の不等式によって要約することができる。
Ctr<C<Cglis
【0038】
実際には、クランプ4とドリルツール100との間の滑り閾値が20から30mMの程度であり、上に示されるように、伝達ロータを介して駆動シャフト2に提供される最大結合CTrがタービンの場合は2~6mNmの程度であり、コントラアングルの場合はむしろ10mNmの程度であることを考慮すると、角度保持トルク(C)は4mNm~20mNmの範囲であることが好ましい。
【0039】
伝達ロータは一般的にタービンとコントラアングルのスペアパーツであると仮定する(つまり、したがって、アフターサービスオペレーターが実施する修理サービスとして、又は場合によっては、ユーザ自身が直接、伝達ロータが摩耗したときにのみ交換することができる)と、同じ伝達ロータを使用して、タービンのいくつかのモデル及びタイプ、又は異なるギア比及び/又は効率を有するコントラアングルのモデルを装備することが有利である。このような状況では、伝達ロータの構想中に、クランプとドリルツールとの間の摺動摩擦力/トルクのみがわかる(ドリルツールが正規化されているという事実のおかげで)が、駆動シャフトに供給される最大トルクは指定されていない。その場合、上記で定義したトルク範囲の値を考慮して、本発明による伝達ロータ及びクランプシステムは、角度保持トルクが以下の制約に従うように設計されるべきである。
Cglis/2<C<Cglis
【0040】
この基準により、ユニバーサル伝達ロータに統合されたクランプシステムの信頼性の高い動作を保証できる。つまり、複数のタービンモデル又はコントラアングルモデルで使用できる。
【0041】
図2及び3に示す実施例では、選択的角度結合機構Csによって使用される結合モードは磁気タイプであり、これにより、ガイドブッシュ3とクランプ4との間の回転における相互結合を確実にすることが可能になるだけではなく、この後者の機能を実現するために他の部品を追加する必要なく、それらの軸方向の配置も確実にする。これらの図では、駆動シャフト2に直接圧入及び/若しくはろう付け及び/若しくは溶接若しくははんだ付け、又はガイドブッシュ3の軸方向端部に配置されたその下部固定面302を介してガイドブッシュ3にさらにろう付け及び/若しくは溶接若しくははんだ付けされ得る環状形状の永久磁石(磁化された結合リング30)により、ガイドブッシュ3が覆われることに留意されたい。ガイドブッシュ3は、例えば圧入によって常に駆動シャフト2と結合されているが、クランプ4は、逆に、駆動シャフト2に圧入されていないが、ドリルツール100の回転Rの軸を中心に自由に回転する。
【0042】
この磁化された結合リング30は、軸方向に磁化され、したがって、パートナー強磁性要素(この場合はチャッキングクランプ4で構成する)に下向きの磁気引力F2を永久に加える。磁気起源のトルクに加えて、結合面での部品間の機械的摩擦による機械的起源のトルクが、ガイドブッシュ3に対するクランプ4の回転に対抗してクランプ4上の磁石によって加えられる。したがって、クランプ4とガイドブッシュ3との間の角度保持トルクCは、少なくとも部分的に、クランプ4の下部軸方向結合面41とガイドブッシュ3の上部軸方向結合面31との間の摩擦から生じる。
【0043】
この実施例の利点は、ガイドブッシュ3及び磁化された結合リング30によって形成される永久磁石が2つの異なる材料で製造され得、ガイドブッシュ3の硬度及び磁石の磁気飽和に有利になることである:例えば、ガイドブッシュは、非磁性の硬質金属(CW)と、逆にそれほど硬くなく壊れやすい材料であるSmCoの磁石で作ることができる。
【0044】
機能的な観点から、削り作業中に、ドリルツール100に加えられたドリルトルクは、クランプ4に伝達される。ドリルツール100が、削られた材料の凹凸によって誤って遮断された場合、クランプ4に加えられる突然のトルクは、駆動シャフト2の慣性のためにかなり増加し、それは、ドリルツール100によって持続される衝撃の時に十分に迅速に停止することができない。この場合、ドリルツール100によってクランプ4に加えられる突然のトルクは、ガイドブッシュ3によってクランプ4に加えられる角度保持トルクCを超え、これにより、ガイドブッシュ3との関係でアセンブリ(クランプ4-ドリルツール100)の滑りが生じる。アセンブリ(クランプ4-ドリルツール100)のガイドブッシュ3からの分離が、ドリルツール100がクランプ4から分離される前に起こるという事実は、クランプ4のドリルツール100の摩擦によって引き起こされる摩耗及び引き裂の例から保護することを可能にする。
【0045】
本発明によるクランプシステムの別の重要な特性は、本好ましい実施例で容易に理解することができる:(クランプ4-ドリルツール100)ユニットがガイドブッシュ3及び/又は駆動シャフト2から切り離されて分離する現象に続いて、クランプ4とガイドブッシュ3及び/又は駆動シャフト2との間の選択的結合は、損傷、摩耗、又はいかなる種類の劣化もなく回復する。すなわち、構成要素を切り離した後、保持トルクは変化しない。実際には、(クランプ4-ドリルツール100)ユニットがガイドブッシュ3及び/又は駆動シャフト2から一時的に切り離されても、クランプシステムと伝達ロータの寿命に悪影響はない。切り離し現象は、ユーザが直接知覚することさえできない。
【0046】
図4及び5は、再度、タービンに関連する、本発明の別の好ましい実施例を示す。
【0047】
この実施例によれば、ドリル100を駆動するための装置は、すべての点で、前述の実施例のものと同一であり、
図2及び3によって示されている。したがって、これらの図の文脈で導入されたすべての参照番号は、再度説明されることはない。
【0048】
しかしながら、ドリル100をクランプするための装置は、永久磁石7の異なる配置を有し、これは、今度は、もはやナット62に組み込まれておらず、押しボタンに直接組み込まれている。言い換えれば、
図5に示されているように、環状形状の永久クランプ磁石7が、今度は、押しボタン61の下面610の凹部611内に、抗加熱ボール8の収容部613の周りに配置されている。それは、押しボタン61の凹部の内側の位置に、軸方向保持ワッシャ71によって、好ましくは押しボタン61に溶接又ははんだ付け又は接着されて保持される。磁石のパートナー強磁性要素は、再度、プランジャ5であり、
図4及び5に「高」位置で表されている、すなわち、
図7に表示されている矢印で示されている磁気引力F
1によって、クランプストップ51に対して接触して保持されて、これはプランジャ5を上向きに引っ張る傾向がある。
【0049】
機能機構は、回転/削りモードにおける前の実施例の機構と同様であり、磁石によって加えられる磁気引力F
1に従ってプランジャが上方に引き上げられる。しかしながら、押しボタン61に圧力がかかっている場合、大きな違いに気付くことができ、この圧力は、
図5の矢印Pによって示されている。言い換えれば、押しボタン61へのそのような圧力段階の間、磁気引力は、押しボタンがプランジャ5に近づくとき、永久クランプ磁石7とプランジャ5との間の距離が減少するため、今度は押しボタン61の下向きの動きに有利に働くであろう。その結果、したがって、ユーザが加えなければならない圧力Pの強度は、磁石がない場合の強度よりも小さいが、前の場合には増加した。
【0050】
しかしながら、
図4及び5の実施例では、永久クランプ磁石7は、
図2及び3の実施例よりもプランジャ5からより離れた位置に配置されているので、プランジャ5に加えられる磁気引力F
1は、永久クランプ磁石7及びプランジャ5の寸法に等しい方法で、より小さくする。対照的に、
図4及び5のこの最後の実施例は、単純なワッシャを使用して永久クランプ磁石を裏打ちすることができるので、達成するのがより簡単である。さらに、プランジャ5に加えられる磁力を増加させるために、軸方向保持ワッシャ71を同様に強磁性材料で、例えば、30%コバルトの含有量のある炭化タングステンで、抗加熱ボール8と共に作ることがさらに可能である。
【0051】
図2から5に示される実施例の特に有利な変形では、クランプストップ51はまた、クランプ4のように、駆動シャフト2内で自由に回転することができる。言い換えれば、このクランプストップ51は、圧入及び/又は溶接又ははんだ付けされていないため、プランジャ5が、クランプ4がガイドブッシュ3上を摺動する特に長い過渡状態に耐えることが可能であり、プランジャ5が力を加えることによってクランプ4を強制的に開くことができ、その結果、クランプ顎にねじりトルクが生じるリスクはない。この場合、クランプストップ51は駆動シャフト2に配置され、駆動シャフト2の上部周辺の圧着は、クランプストップ51が駆動シャフト2から軸方向に出ることができないことを確実にする。
【0052】
コントラアングルに関連して、以下の
図6及び7に示される変形によれば、永久クランプ磁石7はまた、押しボタンの内側であるが、抗加熱ボール8の後ろに配置されたディスク又はパッドの形態をとることができる。そのような場合、永久クランプ磁石7の厚さも磁気引力F
1が増加するような顕著な方法で増加させることができる。
【0053】
図6及び7は、ロータシャフトの異なる実施例、すなわち、前の
図1から5のタービンに関して、今回は電気モーターによって駆動されるモーターシャフト12と、伝達ロータのタービンホイールを置き換える駆動ピニオン22との間のギアリングの助けを借りた駆動シャフト2を示す。プランジャ5は、これ以降、2つの部分で達成され、横ピンによって形成されたクランプストップ51のために駆動シャフト2と回転して一体であるプランジャ5の上部52、駆動シャフトに対して自由に回転する下部円錐部分53を備える。押しボタン61の下面610の凹部611に配置されたパッドによって形成された永久クランプ磁石7は、これ以降、今回は、押しボタン61の収容部に直接ではなく、プランジャ5の上部52に提供された抗加熱ボール8と接触することができる。
【0054】
矢状切断面S-Sにおける
図6の拡大図である
図7に見られるように、クランプ4の顎45は、ドリル100を軸方向に保持し(他の部分がより見やすくなるように示されていない)、一方、下部円錐部53は、参照記号「P」が付いた矢印の方向に一致して、押しボタン61にヘッド10の内側に向かって圧力が加えられたときにそれらを広げない。そのような場合、押しボタン61の下面に配置された凹部611に収容された永久クランプ磁石7に関連する受動磁気要素は、少なくとも下部円錐部53、永久クランプ磁石7に対するこの部品の軸方向の遠隔性のために、潜在的にプランジャ5の上部でも正確に構成する。
【0055】
図6及び7によって示されるコントラアングルにおいて、選択的角度結合機構Csの実施例は、結合の磁気モードを含み、磁化された結合リング30がガイドブッシュ3とクランプ4との間に挿入される
図2及び3の実施例と同様であることに留意されたい。したがって、
図2及び3の説明の文脈で詳細に説明されているすべての参照は、ここでは繰り返されない。
【0056】
しかしながら、上で説明したように、プランジャ5は、これ以降、2つの部分に分割され、上部52は、クランプストップ51として使用される横ピンによって回転が遮断され、下部円錐部分53は、駆動シャフト2内で自由に回転する。これはまた、ねじりトルクの行使によってクランプ4の顎45の開放を強制することを回避し、クランプ4が駆動シャフトで回転した場合に生じる摩擦によるプランジャ5の摩滅を引き起こすことを回避することを可能にし、最終的にプランジャ5のわずかな傾斜をもたらし、その結果、軸方向へのその閉塞をもたらす。
【0057】
前述の説明では、選択的角度結合機構Csの磁気結合の実現について説明した。これには、次の利点がある。
- 非接触力を利用して、摩耗の影響を低減又は排除する。
- 幾何学的制約とは関係なく、技術解決策の有効性を確保する。
- ハンドピースの構造に導入される追加構成要素の数を最小限に抑える。
- 通常の構造に比べて、組み立て作業がより複雑にならないようにする。
【0058】
しかしながら、本発明の範囲において、純粋に機械的な結合もまた、すなわち、特にテフロン(登録商標)又はブロンズのリングを介して、駆動シャフトに挿入及び圧入され、摩擦結合を介して達成され得る。その内部のクランプ4は、わずかな圧入力(「滑り圧入」とも呼ばれ、クランプの比較的小さな保持トルクを確保することを可能にする)で圧入される。
【0059】
図8から10は、特にクランプ4と直接駆動シャフト2との間の半径方向表面を使用して、そのような結合モードを使用する本発明による選択的角度結合機構(Cs)の異なる好ましい実施例を示す。これらすべての図について、クランプ装置のすべての通常の部品(特に、駆動シャフト2、プランジャ5及びクランプストップ51、ガイドブッシュ3、クランプ4及びクランプ顎45)及びブッシュとクランプとの間の結合面のすべてに共通の参照は
図8の説明のためにのみ導入されるが、後続の図では繰り返されない。
【0060】
したがって、
図8は、例えば、ガイドブッシュ3が、例えば、圧入、溶接、又ははんだ付けによって取り付けられた駆動シャフト2、及びクランプ顎45がプランジャ5によって広げられることができるクランプ4を示す。前述の構成のように、クランプストップ51がそこに取り付けられている。前述のものと比較したこの結合モードの本質的な違いは、半径方向クランプリング9が存在するため、ガイドブッシュ3とクランプ4との間ではなく、駆動シャフト2とクランプ4との間で直接発生することである。クランプリング9は、好ましくは駆動シャフト2に圧入されるか、又は駆動シャフト2に溶接又ははんだ付けされる。ガイドブッシュ3の軸方向端部に取り付けられたこの半径方向クランプリング9は、クランプの形状の修正を必要とし、これは、半径方向クランプリング9の上面93に隣接するようになる肩部43を有し、一方、半径方向結合92の内面は、クランプ4の外側半径方向結合面42との摩擦によって協働する。このようにして、半径方向クランプリング9とクランプ4との間に角度保持結合Cが確保されるだけでなく、それらの相互係合を確実にするために軸方向保持力が平行に加えられる。完全を期すために、摩擦力は、ブッシュ31の上部結合面及びクランプ41の下部結合面にも同様に加えられることに留意されたい。しかしながら、この表面と前述の半径方向クランプ表面との関係を考慮すると、この摩擦の寄与は、リング93の上面がクランプの下部肩部に隣接するように機能する結合で生成されるものとともに、無視できると見なすことができる。
【0061】
結果として、摩擦面を増加させるために、
図9に示される実施例は、前述の第1の半径方向クランプリング9の上に配置された周辺半径方向ビード44の上に追加の半径方向クランプリング9を追加することを提案する。このビードの下面443の形状は、
図8の下部周辺肩部に対応し、一方、ビード442の外面は、駆動シャフト2の内部と同一平面上にある。ここでも、クランプ4と駆動シャフト2との間の回転中の結合、したがって同時にガイドブッシュ3は、半径方向結合92の内面とクランプ4の半径方向結合42の外面との間の摩擦による協働によって保証されるが、ここから、摩擦による別の協働の例が、追加の半径方向クランプリング9’の半径方向結合92’の第2の内面の間で確保され、それも駆動シャフト2にしっかりと接続される。摩擦面を増加させることを目的とするこの好ましい実施例によれば、ブッシュ31の上部結合面とクランプ41の下部結合面との間の協働からの角度保持トルクCへの寄与は常に使用される2つのクランプリング9及び9’の他の表面の場合と同様に、無視できるという仮説を維持することができる。しかしながら、この解決策は、周辺半径方向ビード44の上面441に重ね合わされる追加の半径方向クランプリングの下面92’によってクランプ4の配置のための軸方向停止を提供するという利点を提示する。さらに、クランプ4が、第1の半径方向クランプリング9と追加のクランプリング9’との間に挿入された周辺半径方向ビード肩部44を有するそのような変形は、駆動シャフト2におけるクランプのガイドをさらに改善する。
【0062】
図8及び9に示されている実施例に関連するクランプ装置の場合、前記クランプ2、ガイドブッシュ3及び半径方向クランプリング9で構成するサブアセンブリは、モジュールタイプの角度結合の特性を確認できるようにするために、駆動シャフト2の外側で組み立てられ、次に駆動シャフト2に圧入され得る。
【0063】
最後に、
図10は、クランプ4が、半径方向クランプリング9の下にくさび形にされた下部カラー40を備えている変形を示す。その下面92は、下側カラー40の上面401に隣接するようになることにより、軸方向ストップとして機能する。しかし、
図8及び9の前述の実施例と同様の方法で、クランプ4と駆動シャフト2との間の回転方向の結合は、半径方向クランプリング9の半径方向結合92の内面とクランプ4の半径方向結合42の外面との間の摩擦による協働によって保証される。
【0064】
図示されていない変形によれば、必要に応じてクランプ4を保持するために半径方向クランプリング9を交換又は補足するために、クランプ4と駆動シャフト2との間にOリングタイプの1つ又は複数のシールを導入することができる。
【0065】
同様に、スプリングブレードを(駆動シャフト2に事前に機械加工された開口部を通して)駆動シャフト2に導入し(次に、圧入又は溶接又ははんだ付け又は接着)、クランプ4の外面の支台歯に持ち込むことができ、半径方向クランプリング9によって確保されたクランプを保持するのと同じ機能を確保する。
【0066】
クランプ装置に関する上記のすべての実施例によれば、クランプ4は、摩擦を最小限に抑え、したがって耐用年数を改善することを可能にする自己潤滑コーティングとして機能するDLC(ダイヤモンドライクカーボン)で外面をコーティングすることができる。さらに、クランプ4は、その幾何学的特徴を最適化するために、3D印刷によって、それが可撓性プラスチック材料で作られている場合に有利な方法で製造することができる。
【0067】
したがって、前述のように、以下を可能にする選択的角度結合機構Csが説明された。
- クランプの摩耗を引き起こす機構の減少、
- 歯科医が作業している間にドリルツール100が偶発的に出るリスクの低減、
- 信頼性や耐用年数を低下させることなく、ハンドピースのトルクと出力を向上させることが可能である。
【0068】
クランプ4とガイドブッシュ3との間の選択的角度結合機構Csを備えたこの新しい改良されたクランプ装置に関する本発明は、前の図のセットによって示された別個の実施例に関連して説明されてきたが、特に、ガイドブッシュ3又はそれぞれ駆動シャフトとクランプ4との間の結合モードに関連する好ましい実施例において、すなわち磁気的及びそれぞれ機械的の組み合わせが可能であり得、必要に応じて、クランプ装置の統合がタービン又はコントラアングルで交互に達成され得ることが理解される。