IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特許7503077心臓エラストグラフィのための取得トリガのためのシステム及び方法
<>
  • 特許-心臓エラストグラフィのための取得トリガのためのシステム及び方法 図1
  • 特許-心臓エラストグラフィのための取得トリガのためのシステム及び方法 図2
  • 特許-心臓エラストグラフィのための取得トリガのためのシステム及び方法 図3
  • 特許-心臓エラストグラフィのための取得トリガのためのシステム及び方法 図4
  • 特許-心臓エラストグラフィのための取得トリガのためのシステム及び方法 図5
  • 特許-心臓エラストグラフィのための取得トリガのためのシステム及び方法 図6
  • 特許-心臓エラストグラフィのための取得トリガのためのシステム及び方法 図7
  • 特許-心臓エラストグラフィのための取得トリガのためのシステム及び方法 図8
  • 特許-心臓エラストグラフィのための取得トリガのためのシステム及び方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】心臓エラストグラフィのための取得トリガのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20240612BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20240612BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20240612BHJP
【FI】
A61B8/08
A61B5/33 210
A61B5/352
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021559838
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 EP2020060813
(87)【国際公開番号】W WO2020212551
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】62/835,565
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニョン フランソワ ギー ジェラルド マリー
(72)【発明者】
【氏名】アマドール カラスカル キャロリーナ
(72)【発明者】
【氏名】キム セウングソー
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006213(JP,A)
【文献】特開2015-205033(JP,A)
【文献】特開2015-188514(JP,A)
【文献】特開2005-342006(JP,A)
【文献】特開2015-107311(JP,A)
【文献】特開2019-033806(JP,A)
【文献】特開2013-078570(JP,A)
【文献】特開2010-269018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの超音波信号を送信し、前記超音波信号に応答して少なくとも1つのエコー信号を受信するように構成される超音波プローブと、
前記少なくとも1つのエコー信号から動きデータを生成するように構成される動きプロセッサと、
前記動きデータに少なくとも部分的に基づいて動きトリガ信号を生成するように構成される動きトリガ生成器と、
心電図検査トレース内の特徴の検出に基づいて心電図検査トリガ信号を生成するように構成される心電図検査トリガ生成器と、
前記超音波プローブに、前記動きトリガ信号に基づいて少なくとも1つのエラストグラフィ測定値を取得させるように構成される送信コントローラと
を有し、
前記送信コントローラは、前記心電図検査トリガ信号を受信するように構成され、前記心電図検査トリガ信号を受信するとき、前記超音波プローブに、前記動きトリガ信号を受信した後に少なくとも一つのエラストグラフィ測定値を取得させるように構成され
前記動きデータは、被検体の第1の位置で取得され、前記エラストグラフィ測定値は、前記第1の位置と異なる前記被検体の第2の位置で取得される、
超音波撮像システム。
【請求項2】
前記心電図検査トレースにおける前記特徴は、R波である、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項3】
前記心電図検査トリガ信号は、前記超音波プローブによって取得されるBモード画像を心周期に同期させるために使用される、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項4】
前記遅延は、前記送信コントローラによって自動的に決定される、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項5】
前記動きデータを提供するように構成されるディスプレイと、
ユーザ制御器を含むユーザインターフェースであって、前記遅延は、前記ディスプレイ上に提供される前記動きデータに基づいて前記ユーザ制御器を介して受信されるユーザ入力に基づく、ユーザインターフェースと
をさらに備える、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項6】
前記動きデータが前記超音波プローブによってスキャンされる被検体の一部が静止していることを示すとき、前記動きトリガ生成器は前記動きトリガ信号を生成する、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項7】
前記動きデータによって示される動き関連パラメータが閾値未満であるとき、前記被検体の部分は静止している、請求項6に記載の超音波撮像システム。
【請求項8】
ユーザ制御器を含むユーザインターフェースをさらに有し、前記閾値は、前記ユーザ制御器を介してユーザによって設定される、請求項7に記載の超音波撮像システム。
【請求項9】
前記動き関連パラメータが、所与の期間の間、前記閾値を下回るとき、前記被検体の部分は静止している、請求項7に記載の超音波撮像システム。
【請求項10】
前記動き関連パラメータは、速度、加速度、又は流量の少なくとも1つである、請求項7に記載の超音波撮像システム。
【請求項11】
前記動きデータは、変位データ、スペクトルデータ、又は歪率データの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項12】
前記動きデータ及び前記少なくとも1つのエラストグラフィ測定値を提供するように構成されるディスプレイをさらに備える、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項13】
前記超音波プローブを用いて、少なくとも1つの超音波信号を被検体に送信するステップと、
前記超音波プローブを用いて、前記超音波信号に応答して前記被検体から少なくとも1つのエコー信号を受信するステップと、
前記エコー信号から動きデータを生成するステップと、
前記動きデータに少なくとも部分的に基づいて動きトリガ信号を生成するステップと、
心電図検査トレースの特徴の検出に少なくとも部分的に基づいて心電図検査トリガ信号を生成するステップと、
前記超音波プローブを用いて、前記動きトリガ信号に基づいてエラストグラフィ測定値を取得するステップと
を有し、
前記エラストグラフィ測定値を取得するステップは、前記心電図検査トリガ信号の受信に後続する前記動きトリガ信号を受信した後に実行され、
前記動きデータは、被検体の第1の位置で取得され、前記エラストグラフィ測定値は、前記第1の位置と異なる前記被検体の第2の位置で取得される、
方法。
【請求項14】
前記心電図検査トリガ信号に少なくとも部分的に基づいて、前記超音波プローブによって取得されるBモード画像を配置するステップ
を更に有する、請求項13に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は剪断波エラストグラフィのための超音波システム及び方法に関し、より具体的には、エラストグラフィ測定値のために動きベースのトリガリングを使用するように構成される超音波システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
剪断波速度を測定することによって組織の弾性を評価する超音波剪断波エラストグラフィ(SWE)は、非侵襲的かつ定量的な診断法として広く受け入れられている。ほとんどのSWEシステムは、音響放射力(ARF)を用いて剪断波を誘起する。典型的な例示的なシステムでは、プッシュパルスと呼ばれる初期の長い超音波パルスがARFを介して組織に印加される。組織は、変形することによってプッシュパルスの力に応答することができる。この変形は、剪断波と呼ばれる1つ以上の波として組織を通って伝播する。組織を通る剪断波の伝播は、追跡パルスと呼ばれる追加の超音波パルスによって監視される。
【0003】
1つ以上の因子(例えば、剪断波速度、剪断波の大きさ、及び/又は最大伝播距離)に基づいて、組織の剛性値が計算される。剛性値の一例は、典型的にはkPaで測定されるヤング率(E)である。弾性率を計算する一方法はE=3ρ(Vs)2であり、ここで、Vsはm/sでの剪断波伝播速度であり、ρはkg/m3での組織密度である。組織の剛性値を計算する他の方法を使用してもよい。例えば、剪断波伝播速度のみを組織剛性の尺度として使用することができる。場合によっては、ρの期待値を水の密度として推定することができる。他の場合には微分測定値のみが使用されてもよく、ρの期待値は任意の測定値から因数分解される。
【0004】
組織剛性測定(例えば、エラストグラフィー測定)は、疾患診断及び/又はモニタリングにおいて有用であり得る。たとえば、肝硬変では、病気の肝組織の硬さが健康な肝組織よりも高くなる。したがって、SWE画像診断は、肝疾患の診断又はモニタリングに使用され得る。同様に、SWE画像を使用して、心臓などの他の器官を診断又は監視することができる。例えば、心臓エラストグラフィーにおいて、SWE画像は心筋梗塞によって損傷される心臓の領域を同定し、及び/又は心不全の進行をモニタリングするために使用され得る。これは、改善される診断、モニタリング及び/又は治療を可能にし得る。しかし、心臓が身体を通って血液を送り出す際の心周期を通る動きは、心臓エラストグラフィの測定値にアーチファクトやバイアスをもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、心臓弾性測定値を取得する改善される方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、心電図(ECG)トレースではなく、動きデータに基づいてエラストグラフィ測定値の取得をトリガするためのシステム及び方法を説明する。運動モード(例えば、ドップラー)画像は心臓の中隔などの被検体の一部がいつ静止しているかを決定するために、動きデータを取得するために使用されてもよい。エラストグラフィ測定値の取得をトリガするためにECGデータよりもむしろ動きデータを使用することは、ECGトレースの特徴と視認できない、又は関連する時間での測定値の取得を可能にし得る。これにより、筋収縮による動きのアーチファクト及び/又はバイアスが少ない場合に測定値を取得できる可能性がある。
【0007】
本明細書で説明する少なくとも1つの例によれば、超音波撮像システムは少なくとも1つの超音波信号を送信し、超音波信号に応答して少なくとも1つのエコー信号を受信するように構成される前記超音波プローブと、少なくとも1つのエコー信号から動きデータを生成するように構成される動きプロセッサと、動きプロセッサから動きデータを受信し、動きデータに少なくとも部分的に基づいて動きトリガ信号を生成するように構成される動きトリガ生成器と、動きトリガ生成器から動きトリガ信号を受信するように構成される送信コントローラとを含むことができ、送信コントローラは、動きトリガ信号に基づいて少なくとも1つの弾性測定値を取得するために前記超音波プローブに送信超音波信号を取得させるようにさらに構成される。
【0008】
本明細書で説明する少なくとも1つの例によれば、超音波撮像システムは心電図検査トレース内の特徴の検出に基づいて心電図検査トリガ信号を生成するように構成される心電図検査トリガ生成器をさらに含むことができ、送信コントローラは心電図検査トリガ信号を受信すると、前記超音波プローブに、動きトリガ信号に基づいて遅延後にエラストグラフィ測定値を取得させるようにさらに構成される。
【0009】
本明細書に記載される少なくとも1つの例によれば、方法は、前記超音波プローブを用いて、超音波信号を被検体内に送信することと、前記超音波プローブを用いて、被検体からのエコー信号を超音波信号に応答して受信することと、エコー信号から動きデータを生成することと、動きデータに少なくとも部分的に基づいて動きトリガー信号を生成することと、前記超音波プローブを用いて、動きトリガー信号の受信に基づいて弾性測定値を取得する超音波信号を送信することとを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】心電図検査トレースの一例である。
図2】本開示の実施形態による、中隔Bモード、組織速度、及び先端ビューにおける組織歪み速度測定値のディスプレイを含むスクリーンショットの例である。
図3】本開示の実施形態による、胸骨傍長軸ビューにおける中隔Bモード、組織速度、及び組織歪み速度測定値のディスプレイを含む超音波撮像システムスクリーンショットのさらなる例である。
図4】本開示の実施形態による超音波撮像システムのブロック図である。
図5】本開示の実施形態による、組織速度及び歪み速度Mモードデータに基づいて、動きトリガ及び遅延を決定する例を示す。
図6】本開示の実施形態による、スペクトル組織ドップラーデータに基づいて動きトリガ及び遅延を決定する例を示す。
図7】本開示の実施形態によるドップラーフローデータに基づいて動きトリガー及び遅延を決定する例を示す。
図8】本開示の実施形態による方法のフローチャートである。
図9】本開示の実施形態による例示的なプロセッサを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特定の実施形態の以下の説明は本質的に単に例示的なものであり、本発明又はそのアプリケーション又は使用を限定することを決して意図するものではない。本システム及び方法の実施形態の以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成し、説明されるシステム及び方法を実施することができる特定の実施形態を例として示す添付の図面を参照する。これらの実施形態は当業者が発明開示されているシステム及び方法を実施することを可能にするのに十分に詳細に記載されており、他の実施形態が利用されてもよく、構造的及び論理的な変更が、本システムの精神及び範囲から逸脱することなくなされてもよいことが理解されるべきである。本明細書に記載される実施形態及び例では特定の組み合わせが開示されているが、開示される実施形態及び/又は例の任意の組み合わせが、本開示の原理内にあることが理解される。さらに、明確にするために、特定の特徴の詳細な説明は本システムの説明を不明瞭にしないように、当業者に明らかである場合には論じない。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味で解釈されるべきではなく、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0012】
本技術はまた、本実施形態による方法、装置(システム)、及び/又はコンピュータプログラム製品のブロック図及び/又はフローチャート図を参照して以下に説明される。ブロック図及び/又はフローチャート図のブロック、ならびにブロック図及び/又はフローチャート図のブロックの組み合わせは、コンピュータ実行可能命令によって実装され得ることを理解される。これらのコンピュータ実行可能命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、及び/又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサ、コントローラ、又は制御ユニットに提供されて、コンピュータ及び/又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令がブロック図及び/又はフローチャートの1つ又は複数のブロックで指定される機能/動作を実施するための手段を作成するように、マシンを生成することができる。
【0013】
各心拍を通る心臓の動きを心周期という。心周期は、収縮期(血液を駆出する)と拡張期(血液で満たされる)の2つの主要な位相からなる。収縮期には、脳室が収縮し、心臓から身体へ血液を送り出す。心室駆出に続いて、心臓は拡張期に入る。拡張早期には、心房は体内から戻ってくる血液で満たされる。その後、心臓は心静止と呼ばれる短期間の休息に入る。うっ血後、心房は収縮し、血液を脳室に排出する。心房収縮後、心臓は次の収縮期に入る。
【0014】
心周期の位相は、心臓によって生成される電気信号に関連する。これらの電気信号は、典型的にはECGによって監視される。ECG中、心臓からの電気信号を記録するために、複数の電極が胸部及び/又は四肢に配置される。これらの電気信号は視覚的に、典型的にはディスプレイ上に、ECGトレースとして提供される。ECGトレース100の一例を図1に示す。ECGトレース100のいくつかの特徴は、P波、QRS波、T波、及びU波のような文字が割り当てられている。いくつかの特徴は、心周期のある点と相関している。例えば、P波は一般に心房収縮の開始と関連し、QRS波のR波は一般に心室収縮の開始と関連する。心周期を通る心臓の運動は、画像及び/又は測定における動きアーチファクトにつながる可能性がある。心エコー検査では、超音波撮像システムが撮像されている被検体の心臓からECG信号を取得するECGモニタを含むことができる。ECG信号は、画像の収集をトリガするために使用され、及び/又は異なる心拍の心周期の同じ点で取得される画像を相関させるために使用されることがある。例えば、R波は、画像の取得をトリガするために使用されてもよい。R波は、ECGトレースにおいて顕著な特徴であるため、トリガとして使用するのに便利な特徴であり得る。
【0015】
ECG R波トリガは剪断波撮像を介したエラストグラフィ測定値(例えば、心臓組織の剛性)の取得に使用されてきた。心電図検査トリガにより、心周期の同じ点でエラストグラフィの測定値が確実に取得される。R波でのトリガリングは拡張期の終わり(例えば、脳室が心臓から血液を駆出する直前)に測定値を提供する。R波トリガは周期の一貫した点で測定を行うことを確実にすることができるが、拡張末期における心臓のこわばりの測定は問題がある。心周期のこの時点で、心室組織は拡張期拡張から収縮期収縮に移行する動きをしている。この位相で心臓の一部分が一時的に動かなくなっても、筋線維の筋細胞はすでに張力を発揮しており、脳室が次の位相(例えば、収縮期)で収縮する準備を整えるにつれて、心拡大の効果を位相殺している。筋線維の張力は、エラストグラフィ測定値にバイアスを引き起こすことがある。すなわち、拡張末期の間、SWE画像は、組織の健康状態だけでなく、筋線維の張力、及び拡張末期における伸張の状態を示す剛性値を戻すことができる。
【0016】
さらに、伸長から収縮への移行は心臓全体において同時に起こらず、これはエラストグラフィー測定値において空間的に依存する偏りをもたらし得る。例えば、隔壁の第1の部分は、拡張末期の第2の部分の前の第1の部分で筋線維が収縮するため、第2の部分よりも硬く見えることがある。様々な筋線維収縮状態によるこれらの差は、誤った差分測定につながる可能性がある。誤った測定値は、心臓の健康に関する誤った診断につながる可能性がある。したがって、心臓の時間的に変化する膨張、負荷、及び収縮状態によって導入されるバイアスを低減する心周期のある時点で弾性測定値を取得することが望ましい。
【0017】
さらに、心拡張末期測定値のためのECGトリガは、タイミング誤差を生じやすい。拡張末期は、次の心周期のR波の直前に拡張末期が起こるため、R波上でトリガーするときの最後の心臓期である。正常な心周期長の変動性のために、正確なR波ベースのトリガは困難である。収集がR波後の設定時間の後に起こるように遅延していても、同じ状態の心臓での測定値を取得するためには、遅延期間を心周期ごとに変更する必要があるかもしれない。したがって、心周期の変動及び偏りの傾向が少ない測定取得トリガを使用することが望ましい。
【0018】
心エコー検査中、超音波撮像システムは、1つ又は複数のモードを介して超音波信号を収集することができる。Bモード(輝度モード)では、超音波トランスデューサアレイが解剖学的画像を生成するために心臓を通る1つ以上の平面をスキャンする。超音波信号はまた、心臓内の血液及び/又は組織の動きを検出及び分析するために使用され得る。これは、動きモード及び/又は動き画像と呼ばれることがある。動きデータを取得するための1つの技術は、ドップラーモードで超音波信号を取得することである。ドップラーモードでは、超音波トランスデューサアレイがスキャン線に沿った動きを分析するために、組織内の1つ以上のスキャン線に沿って超音波パルスを送る。超音波パルスは既知の周波数を有し、超音波撮像システムはドップラー効果を利用して戻りエコーの周波数シフトを分析し、各スキャン線における組織の動きを決定する。ドップラーモードが血流を分析するために使用される場合、それは、スペクトルドップラーモード、カラードップラーモード、又はフローモードと呼ばれ得る。ドップラーモードが組織の動き(例えば、速度、変位)を分析するために使用される場合、これは、時に、組織ドップラーモードと呼ばれる。ドップラーはまた、組織の変形及び歪み速度を決定するために使用され得る。相互相関撮像(例えば、RF信号解析)及びオプティカルフロー撮像(例えば、差動技術、領域ベースのマッチング技術)を含むが、これらに限定されない他の動き撮像技術を使用して、動きデータを取得することができる。
【0019】
ドップラーモード及び/又は別の技術によって生成される動きデータは地図上の座標が2つ以上の寸法(例えば、スキャン線の横方向位置及びスキャン線に沿った深さ)に基づくスキャン領域内の空間位置に対応し、色が運動の大きさ(例えば、速度、歪み、変位)に対応する色分けマップとして提供されてもよい。このデータ提示は、カラーオーバレイと呼ばれることがある。動きデータは、時間ベースのプロットとして提供されてもよい。例えば、プロットの第1の軸は単一の空間次元(例えば、スキャン線に沿った深さ)に対応してもよく、プロットの第2の軸は時間に対応してもよく、大きさはグレースケールで色分け又は符号化されてもよい。この動きデータの提示は、Mモードと呼ばれることがある。別の例では、動きデータの空間位置は既知であり、第1の軸は大きさに対応し、第2の軸は時間に対応する。この提示は、スペクトルドップラー情報を提示するためにしばしば使用される。
【0020】
動きデータと同様に、SWE画像からのエラストグラフィー測定値はマップ上の座標がスキャン領域内の位置(例えば、トラッキングラインの横方向位置及びトラッキングラインに沿った深さ)に対応し、カラーがエラストグラフィー測定値の大きさ(例えば、剛性)に対応する色分けマップとして提供することもできる。動きデータ及びエラストグラフィ測定値は追加的に又は代替的に、動きデータ及び/又はエラストグラフィ測定値がスキャンされる領域内の測定値の位置に対応する位置でBモード画像上にオーバレイされるBモード画像上のオーバレイとして提供されてもよい。
【0021】
図2は、本開示による超音波撮像システムによって生成されるスクリーンショット200の一例を示す。スクリーンショット200は、Bモード、速度、及びひずみ速度の測定値のディスプレイを含む。画像202は、心臓の心尖部4腔ビューにおける中隔心筋についての超音波撮像データのBモード画像である。心尖部の図は、心臓の4つの部屋を示している左右の心房と左右の心室、及び心臓の右側と左側の間を走る中隔である。隔壁は点線203で示されている。
【0022】
画像204は、異なる色が異なる速度値に対応するカラーマップとしてオーバーレイされる速度データを有する画像202に示される同じBモード画像である。画像206は、異なる色が異なる歪みレート値に対応するカラーマップとして重ね合わされる歪みレートデータを有する、画像202に示される同じBモード画像である。
【0023】
プロット208は、速度データの代替的な視覚化である。縦軸は、隔壁の線を近似する単一のスキャン線に沿った深さに対応する(画像202の点線203参照)。横軸は時間に対応する。プロット208内の異なる色は凡例209によって示されるように、異なる速度値を示す。プロット210は、歪率データの代替的な視覚化である。縦軸は、隔壁の線に近似する単一のスキャン線に沿った深さに対応する。横軸は時間に対応する。プロット210内の異なる色は凡例211によって示されるように、異なる歪み速度値を示す。時間軸は、拡張終期212及び拡張期214を示す。
【0024】
どのようにしてBモード及び異なるタイプの動きデータがディスプレイ上に提供され得るかの例を提供することに加えて、図2は、拡張末期212における弾性測定値を取得することの困難性を示す。プロット208に示されている速度データ上の拡張終期212に示されているように、拡張終期にはかなりの運動及び加速度が発生している。同様に、拡張末期212において、プロット210に示される歪率データは、組織の有意な収縮及び伸長を示す。さらに、プロット208のレートデータ及びプロット210の歪みレートデータに見られるように、拡張末期における組織の動き及び歪みレートは、空間的に依存する。すなわち、組織の運動及び収縮の程度は、隔壁のスキャン線203に沿った位置によって変化する。したがって、拡張終期に行われるエラストグラフィー測定値は、速度及び歪み速度の変動性のために不正確であり得る。しかしながら、この例では心臓の中隔が健康で均一な組織であると仮定すると、速度及び歪み速度は、休止期間中に空間的にほとんど変化を示さない。
【0025】
図3は、Bモード、速度、及び歪速度測定値の表示を含む、超音波撮像システムスクリーンショット300の別の例を示す。画像302は、心臓における中隔曲線の胸骨傍長軸ビューにおける中隔心筋についての超音波撮像データのBモード画像である。傍胸骨長軸図は、心臓の左側と右側との間で水平に配向される隔壁を示す。画像304は、異なる色が異なる速度値に対応するカラーマップとしてオーバーレイされる速度データを有する画像302に示される同じBモード画像である。ドット303は、隔壁に沿った点に位置する。画像306は、異なる色が異なる歪みレート値に対応するカラーマップとして重ね合わされる歪みレートデータを有する、画像302に示される同じBモード画像である。
【0026】
プロット308は、速度データの代替的な視覚化である。縦軸は、ドット303によって示される位置における隔壁を通るスキャン線に沿った深さに対応する。横軸は時間に対応する。プロット308内の異なる色は凡例309によって示されるように、異なる速度値を示す。プロット310は、歪率データの代替的な視覚化である。縦軸は、ドット303によって示される位置における隔壁を通るスキャン線に沿った深さに対応する。横軸は時間に対応する。プロット310内の異なる色は凡例311によって示されるように、異なる歪み速度値を示す。
【0027】
図2と同様に、図3は、拡張末期におけるエラストグラフィー測定値を取得する困難性を示す。プロット308に示されている速度データ上の拡張終期312に示されているように、拡張終期にはかなりの運動及び加速度が発生している。両端矢印316によって示される非常に狭い時間ウィンドウのみが存在し、速度値はプロット308上の最小値に現れる。同様に、拡張末期312において、プロット310に示される歪率データは、拡張末期312の周りの狭い時間窓の両側の組織の有意な収縮及び伸長を示す。この簡単な最小速度/歪み速度は、R波の少し前に生じる。R波のピークには、かなりの運動及び歪み速度がある。さらに、隔壁の異なるスキャン線に沿って取られた図2のプロット208のレートデータ及び歪みレートデータ210と同様に、プロット308のレートデータ及びプロット310の歪みレートデータは、拡張終期における組織運動及び歪みレートが空間的に依存することを示す。したがって、前述したように、拡張終期に行われたエラストグラフィ測定値は、速度及び歪み速度の変動性のために不正確であり得る。
【0028】
不正確さを減らすために、運動及びひずみ速度が最小の場合には、SWE測定値(例えば、エラストグラフィー測定値)を取得することが好ましい。例えば、図3を参照すると、本発明者らは、拡張期314において、心臓全体が図3の両端矢印318によって示されるように、拡張末期314と比較して比較的長い時間、比較的静止していることを観察した。心拍静止期314におけるプロット308の速度データは空間依存性がより少ない、はるかに少ない組織運動を示す。プロット310の歪率データはまた、拡張末期312と比較して、拡張期314において空間的に依存しない、より低いレベルの歪みを示す。ECGトリガーにベースシステムは、この状態がECGトレース上には見えないか、又はECGトレースの特徴と関連していないので、心臓の静止状態をジアスタシス時に観察される状態を利用することができない可能性がある。従って、本発明者らは、エラストグラフィー測定値の取得のためのトリガーの代替方法を採用する超音波SWEシステムを着想した。本発明の原理によれば、ドップラー撮像からの動きデータを用いて、剪断波撮像をトリガしてエラストグラフィ測定値を取得することができる。動きデータは組織変位、組織速度、加速度変形、歪み、歪み速度、及び/又は血流データを含み得る。運動ベースのトリガの使用はECGトレースによって検出され得ない、拡張中期(例えば、拡張期)のような心周期の部分でのエラストグラフィ測定値をユーザが取得することを可能にし得る。これは、より正確で、より偏りが少なく、及び/又はより再現性のあるエラストグラフィ測定値の取得を可能にすることができる。
【0029】
図4は、本開示の実施形態による超音波撮像システム400のブロック図を示す。超音波撮像システム400は超音波撮像システム400がBモード撮像、Mモード撮像、スペクトル撮像、及び/又は剪断波撮像(例えば、エラストグラフィ)を実施することを可能にするコンポーネントを含んでもよい。超音波画像デバイスは超音波を送信し、被検体からエコーを受信するように動作可能な前記超音波プローブに通信可能に結合される処理コンポーネント(例えば、1つ又は複数のビームフォーマ、信号プロセッサなど)を含むことができる。図4に示される構成要素及びその装置は単に例示的なものであり、構成要素の削除、構成要素の組み合わせ、構成要素の再装置、及び構成要素の置換を含む他の変形形態がすべて企図される。
【0030】
図4に示されるように、超音波撮像システム400は前記超音波プローブ412を含んでもよく、超音波信号(例えば、超音波ビーム)を被検体の標的領域に向けて送信し、超音波信号に応答するエコー信号を受信するためのトランスデューサアレイ414を含んでもよい。様々なトランスデューサアレイ、例えば、線形アレイ、凸形アレイ、又はフェーズドアレイが当技術分野で知られている。トランスデューサアレイ414は例えば、2D及び/又は3D画像のための仰角寸法及び方位角寸法の両方でスキャンすることができるトランスデューサ素子の2次元アレイ(図示)を含むことができる。トランスデューサアレイ414は異なる画像モード(例えば、Bモード画像、ドップラー画像、及び/又は剪断波画像)のために超音波信号を送信し、エコー信号を受信することができる。いくつかの実施形態では、前記超音波プローブ412が異なる撮像モードで使用するように構成される複数のトランスデューサアレイ414を含むことができる。
【0031】
いくつかの実施形態ではトランスデューサアレイ414がプローブ412内のマイクロビーム送信416に連結されてもよく、プローブはトランスデューサアレイ414内のトランスデューサ素子のグループによる信号の送受信を制御する。この例では、マイクロビームフォーマがプローブケーブルによって送信/受信(T/R)スイッチ418に結合され、これは送信と受信を切り替え、メインビームフォーマ422を高エネルギー送信信号から保護する。いくつかの実施形態では、プローブが信号及び画像処理構成要素に無線で結合されてもよい。典型的には、信号及び画像処理コンポーネントが超音波システムベース内に配置される。いくつかの実施形態では、T/Rスイッチ418及びシステム内の他の要素が別個の超音波システムベース内ではなく、トランスデューサプローブ412内に含めることができる。
【0032】
マイクロビームフォーマ416の制御下でのトランスデューサアレイ414からの超音波信号の送信は、T/Rスイッチ418及びビームフォーマ422に結合される送信コントローラ420によって導かれる。送信コントローラ420は超音波信号がいつ送信されるか、及び/又はどのタイプの超音波信号が送信されるか(例えば、Bモード、剪断波、及び/又はドップラーに適したビーム)を制御することができる。送信コントローラ420は、ビームがステアリングされる方向を制御することができる。ビームはトランスデューサアレイから真っ直ぐ(直交して)前方に、又はより広い視野のために異なる角度でステアリングされてもよい。送信コントローラ420は、ユーザインターフェース444の制御パネル424、ECGトリガ生成器410、及び/又は動きトリガ生成器450のユーザの操作から入力を受け取ることができる。これらの入力は、送信コントローラ420によって指示される超音波信号のステアリング、タイミング、及び/又は送信のタイプを決定することができる。
【0033】
マイクロビームフォーマ416によって生成される受信される部分的にビーム形成される信号は、トランスデューサ素子の個々のパッチからの部分的にビーム形成される信号が完全にビーム形成される信号に結合されるメインビームフォーマ422に結合される。いくつかの実施形態では、マイクロビームフォーマ416は省略され、トランスデューサアレイ414はビームフォーマ422の制御下にある。ビーム形成される信号は、信号プロセッサ426に結合される。信号プロセッサ426は、受信されるエコー信号を、帯域通過フィルタリング、デシメーション、I及びQ成分分離、及び高調波信号分離のような様々な方法で処理することができる。また、信号プロセッサ426は、スペックル低減、信号複合化、及びノイズ除去などの追加の信号強化を実行してもよい。
【0034】
処理される信号はBモードプロセッサ428に結合されており、これは、身体内の構造の画像のために振幅検出を使用することができる。Bモードプロセッサ428によって生成される信号は、スキャン変換器430及びマルチプレーナリフォーマッタ432に結合される。スキャン変換器430は、エコー信号を所望の画像フォーマットで受信した空間関係に配置する。例えば、スキャン変換器430は、エコー信号を二次元(2D)扇形フォーマット、又はピラミッド状三次元(3D)画像に配置することができる。マルチプレーナリフォーマッタ432は米国特許6,443,896(Detmer)に記載されているように、身体の体積領域内の共通平面内の点から受け取ったエコーを、その平面の超音波画像に変換することができる。ボリュームレンダラ434は3Dデータセットのエコー信号を、例えば米国特許第6,530,885号(Entrekinら)に記載されているように、所与の基準点から見た投影3D画像に変換する。2D又は3D画像がスキャン変換器430、マルチプレーナリフォーマッタ432、及びボリュームレンダラ434から、画像処理装置436に結合され、画像ディスプレイ438上に表示するために、さらに強調、バッファリング、及び一時記憶される。グラフィックスプロセッサ440は、超音波画像と共に表示するためのグラフィックオーバーレイを生成することができる。これらのグラフィックオーバーレイは例えば、患者名、画像の日時、撮像パラメータ等の標準識別情報を含むことができる。これらの目的のために、グラフィックプロセッサ440は、タイプされる患者名のような入力をユーザインターフェース444から受け取る。ユーザインターフェース444は複数平面再フォーマット(MPR)画像のディスプレイの選択及び制御のために、マルチプレーナリフォーマッタ432に結合することもできる。
【0035】
処理される信号はまた、剪断波プロセッサ452に供給されてもよい。剪断波速度及びエラストグラフィ測定値(例えば、組織剛性)は剪断波プロセッサ452によって推定されてもよく、これは現在知られている、又は後に開発される任意の剪断波エラストグラフィ技術を実施するように構成されてもよい。エラストグラフィ測定値は、エラストグラフィ測定値をBモード画像内の対応する位置と相関させることができるスキャンコンバータ430に提供することができる。弾性測定値をBモード画像と相関させることにより、弾性測定値をBモード画像上のグラフィックオーバーレイとして提供することができる。
【0036】
処理される信号はさらに、動きプロセッサ448に提供されてもよい。動きプロセッサ448は組織動き撮像、ドップラースペクトル撮像、及び/又は他の動きベースの撮像(例えば、歪み率)を実行することが可能であり得る。いくつかの実施形態では、動きプロセッサ448が異なる動きベースの撮像のための別個のプロセッサを含むことができる。動きプロセッサ448はドップラーなどの現在知られている、又は今後開発される任意の動き撮像技術を実装することによって、動きデータ(たとえば、組織の動き、流体の流れ)を決定するように構成され得る。動きプロセッサ448は、動きデータをBモード画像内の対応する位置と相関させることができるスキャンコンバータ430に動きデータを提供することができる。動きデータをBモード画像と相関させることにより、動きデータをBモード画像上にグラフィカルオーバーレイとして提供することができる。例えば、図2及び図3にそれぞれ示すオーバーレイ画像204及び304である。
【0037】
動きデータ及び/又はエラストグラフィ測定値は動きデータ及び/又はエラストグラフィ測定値のグラフィック表現を生成するために、スキャンコンバータ430を介して画像処理装置436に提供され得る。例としてはカラーマップ及び時間依存プロットが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、図2及び図3にそれぞれ示されるプロット208及び310である。
【0038】
図4に示されるように、システム400は、動作ベースのトリガ信号を生成するように構成される動きトリガ生成器450を含んでもよい。動きトリガ生成器450は、コントローラ、プロセッサ、又は特定用途向け回路によって実装されてもよい。動きプロセッサー448によって生成される動きデータは動きトリガー生成器450に提供され得、これは、スキャンされている対象の一部(例えば、血管内の血流、筋肉組織)がいつ静止しているかを決定するために、動きデータを分析し得る。例えば、トリガ生成器は動きデータを処理して、動きデータの1つ又は複数の運動関連パラメータ(例えば、速度、加速度、及び/又は歪み速度)が閾値未満であるかを判定することができる。閾値は、評価される運動関連パラメータのタイプ、ならびに評価される組織のタイプに依存し得る。例えば、血流速度は組織運動速度よりも高くてもよく、例えば、組織運動は10乃至12cm/sのオーダーであり、僧帽弁における血液運動は、50乃至6cm/sのオーダーである。
【0039】
いくつかの実施形態では、動き関連パラメータが所与の期間の間、しきい値未満である場合、例えば、心臓エラストグラフィの場合、動きデータは、速度が少なくとも70ミリ秒間1cm/秒未満に低下したときに心臓が休止していることを示すことができる。別の実施例では、加速度が1cm/秒2又は10cm/秒2を少なくとも50 msec下回ったときに、心臓が休止していることを示してもよい。いくつかの実施形態では、複数の動き関連パラメータを使用することができる。例えば、動きデータは速度が1cm/秒未満に低下し、加速度が1cm/秒又は10cm/秒未満に低下したときに、心臓が静止していることを示してもよい。別の例では、動きデータが速度が1cm/秒未満に低下し、歪み速度が10%/秒未満に低下したときに、心臓が静止していることを示してもよい。いくつかの実施形態では、動きパラメータの期間が使用されてもよい。例えば、上記の条件が50 msecを超えて持続する場合である。これらの例は例示の目的のためであり、被検体の部分がいつ静止しているかの動きトリガ生成器450の決定は、記載される例に限定されない。しきい値は超音波撮像システム400によって予め設定されていてもよいし、ユーザインターフェース444を介してユーザによって設定されていてもよい。
【0040】
動きトリガ生成器450が組織は静止していると判断すると、動きトリガ生成器450は、動きトリガ信号を送信コントローラ420に送信してもよい。動きトリガ信号は送信コントローラ420に、トランスデューサアレイ414に、エラストグラフィ測定値を取得するためのSWE撮像を行わせるようにさせてもよい。エラストグラフィ測定値は、動きデータが取得される位置と同じ位置で取得される必要はない。例えば、動きデータは心臓の中隔で取得されてもよく、エラストグラフィ測定値は心臓の左心室壁で行われてもよい。別の例では、心臓の僧帽弁における血流について動きデータを取得することができ、心臓全体についてエラストグラフィ測定値を取得することができる。
【0041】
システムは、ECGトリガ生成器410を含むことができる。ECGトリガ生成器410は、コントローラ、プロセッサ、又は適切な回路として実装され得る。ECGトリガ生成器410は、システム400によってスキャンされている被検体からECG信号を受信することができる。ECGトリガ生成器410はECGトレース(例えば、QRS群のR波)内の特徴を検出するためにECG信号を分析することができる。ECGトリガ生成器410は、ECGトリガ信号を送信コントローラ420に送信することができる。いくつかの実施形態では、ECGトリガ信号が送信コントローラ420に、トランスデューサアレイ414に超音波信号(例えば、Bモード、ドップラー、SWE)を取得させることができる。いくつかの実施形態では、ECGトリガ信号と送信コントローラ420との間に遅延が存在し、トランスデューサアレイ414に超音波信号を取得させることができる。遅延は、システム400において予め設定されてもよく、ユーザインターフェース444を介してユーザによってプログラムされてもよく、及び/又は動きトリガ信号に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、ECGトリガ生成器410が取得される画像を同期させるために使用されてもよい。例えば、ECGトリガ信号は、1つ以上の心周期にわたって取得される画像が心周期のいつ画像が取得されるかに少なくとも部分的に基づいて配置されることを可能にし得る。
【0042】
いくつかの実施形態ではECGトリガ信号が取得されるBモード画像を同期させるために送信コントローラ420によって使用されてもよく、一方、動きトリガ信号は弾性学的測定のためにSWE画像を取得するために送信コントローラ420によって使用されてもよい。送信コントローラ420による心臓弾性測定値の取得を制御するために動きトリガ信号を使用することにより、心臓が静止しているときの拡張中期(すなわち、拡張期)の間に測定値を取得することが可能になり得る。測定値は、より正確であり得、筋肉収縮に起因する動きエラー及び偏りの傾向がより少なくなり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、動きトリガ信号がECGトリガ信号と超音波信号(例えば、Bモード、ドップラー、及び/又はSWE)の送信との間の遅延をプログラムするために、送信コントローラ420によって使用されてもよい。いくつかの実施形態では、送信コントローラ420が動きトリガ信号に基づいて遅延を自動的にプログラムすることができる。他の実施形態では、ユーザが動きデータをディスプレイ(例えば、ディスプレイ438)上に表示し、ユーザインターフェース444を介して遅延を入力することができる。動きトリガ信号からのデータを使用して、ユーザが遅延を入力するのを支援することができる。心電図検査トリガ信号に遅延を適用するために動きデータを使用すると、心臓エラストグラフィ測定値が心周期のタイミングの自然変動に脆弱になる可能性があるが、動きデータ上の遅延に基づいて、エラストグラフィ測定値を拡張末期よりも長期間持続する拡張中期(すなわち、拡張)に取得することが可能になる。さらに、ECGトリガ生成器410によって生成されるECGトリガ信号に対する遅延を生成するために動きデータを使用することは、運動ベースのトリガ(例えば、動きトリガ生成器450)のみに基づく取得よりも、いくつかの既存の超音波撮像システムにおいて実施することがより容易であり得る。
【0044】
装置400は、ローカルメモリ442を含んでもよい。ローカルメモリ442は任意の適切な非一時的なコンピュータ可読媒体(例えば、フラッシュドライブ、ディスクドライブ)として実装されてもよい。ローカルメモリ442は、Bモード画像、エラストグラフィ測定値、動きデータ、実行可能命令、ユーザインターフェース444を介してユーザによって提供される入力、又はシステム400の動作に必要な任意の他の情報を含む、システム400によって生成されるデータを記憶することができる。
【0045】
前述したように、システム400は、ユーザインターフェース444を含む。ユーザインターフェース444は、ディスプレイ438及び制御パネル424を含み得る。ディスプレイ438は、LCD、LED、OLED、又はプラズマディスプレイ技術などの、種々の既知のディスプレイ技術を用いて実施されるディスプレイ装置を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ディスプレイ438が複数のディスプレイを含むことができる。制御パネル424は、ユーザ入力を受け取るように構成することができる。コントロールパネル424は1つ以上のハードコントロール(例えば、ボタン、ノブ、ダイヤル、エンコーダ、マウス、トラックボール等)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、制御パネル424が付加的に又は代替的に、タッチセンシティブディスプレイ上に提供されるソフトコントロール(例えば、GUI制御要素又は単にGUIコントロール)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ディスプレイ438が制御パネル424の1つ又は複数のソフトコントロールを含むタッチセンシティブディスプレイとすることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、図4に示す様々なコンポーネントを組み合わせることができる。例えば、画像処理装置436及びグラフィックスプロセッサ440は、単一のプロセッサとして実現することができる。いくつかの実施形態では、図4に示される様々なコンポーネントが別個の構成要素として実装されてもよい。例えば、信号プロセッサ426は各撮像モード(例えば、Bモード、動き、及び剪断波)に対して別々の信号プロセッサとして実装されてもよい。いくつかの実施形態では、図4に示される様々なプロセッサの1つ又は複数が指定されるタスクを実行するように構成される汎用プロセッサ及び/又はマイクロプロセッサによって実装され得る。いくつかの実施形態では、様々なプロセッサの1つ又は複数が特定用途向け回路として実装され得る。いくつかの実施形態では、様々なプロセッサ(例えば、画像処理装置436)の1つ以上を、1つ以上のグラフィカル処理ユニット(GPU)で実装してもよい。
【0047】
図9は、本開示の実施形態による例示的なプロセッサ900を示すブロック図である。プロセッサ900は例えば、図4に示される信号プロセッサ426、動きプロセッサ448、剪断波プロセッサ452、Bモードプロセッサ428、グラフィックプロセッサ440、及び/又は画像処理装置436のような、本明細書に記載される1つ以上のプロセッサを実現するために使用されてもよい。いくつかの例では、プロセッサ900が本明細書で説明される1つ又は複数の構成要素、例えば、図4に示される動きトリガ生成器450、ECGトリガ生成器410、スキャンコンバータ430、マルチプレーナリフォーマッタ432、及び/又はボリュームレンダラ434の一部を実装又は実装するために使用され得る。
【0048】
プロセッサ900はマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、FPGAがプロセッサを形成するようにプログラムされているフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、グラフィック処理ユニット(GPU)、ASICがプロセッサを形成するように設計されている特定用途向け集積回路(ASIC)、又はカスタム集積回路の一部、又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない、任意の適切なプロセッサタイプであってもよい。
【0049】
プロセッサ900は、1つ以上のコア902(図示)を含んでもよい。コア902は、1つ又は複数の算術論理ユニット(ALU)904(1つが示されている)を含むことができる。いくつかの実施形態では、コア902が1つ又は複数のALU 904に加えて、又はその代わりに、1つ又は複数の浮動小数点論理ユニット(FPLU)906(1つ図示)及び/又は1つ又は複数のデジタル信号処理ユニット(DSPU)908(1つ図示)を含むことができる。
【0050】
プロセッサ900は、コア902に通信可能に結合される1つ以上のレジスタ912を含んでもよい。レジスタ912は専用論理ゲート回路(例えば、フリップフロップ)及び/又は任意の適切なメモリ技術を使用して実装され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、レジスタ912がスタティックメモリを使用して実装されてもよい。レジスタは、結果、命令、及びアドレスをコア902に提供することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ900がコア902に通信可能に結合される1つ又は複数のレベルのキャッシュメモリ910を含むことができる。キャッシュメモリ910は、実行のためにコア902にコンピュータ可読命令を提供することができる。キャッシュメモリ910は、コア902による処理のためのデータを提供することができる。ある実施形態では、コンピュータ可読命令がローカルメモリ、例えば、外部バス916に接続されるローカルメモリによって、キャッシュメモリ910に提供されてもよい。キャッシュメモリ910は例えば、スタティックランダムアクセスメモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリ、及び/又は他の任意の適切なメモリ技術のような、任意の適切なキャッシュメモリタイプを用いて実現することができる。
【0052】
プロセッサ900はシステムに含まれる他のプロセッサ及び/又はコンポーネント(例えば、図4に示されるビームフォーマ422)からのプロセッサ900への入力、及び/又はプロセッサ900からシステムに含まれる他のプロセッサ及び/又はコンポーネント(例えば、図4に示される信号プロセッサ426)への出力を制御することができるコントローラ914を含むことができる。コントローラ914は、ALU 904、FPLU 906及び/又はDSPU 908内のデータパスを制御することができる。コントローラ914は、1つ以上の状態マシン、データパス及び/又は専用制御ロジックとして実現されてもよい。コントローラ914のゲートは、スタンドアロンゲート、FPGA、ASIC、又は任意の他の適切な技術として実装されてもよい。
【0053】
レジスタ912及びキャッシュ910は、内部接続920A、920B、920C及び920Dを介してコントローラ914及びコア902と通信することができる。内部接続は、バス、マルチプレクサ、クロスバースイッチ、及び/又は任意の他の適切な接続技術として実装され得る。
【0054】
プロセッサ900の入力及び出力は、1つ又は複数の導電線を含むことができるバス916を介して提供することができる。バス916はプロセッサ900の1つ以上の構成要素、例えば、コントローラ914、キャッシュ910、及び/又はレジスタ912に通信可能に結合されてもよい。バス916は、前述の剪断波プロセッサ452及び信号プロセッサ426など、システムの1つ又は複数の構成要素に結合することができる。バス916は、バス、マルチプレクサ、クロスバースイッチ、及び/又は任意の他の適切な接続技術として実装され得る
【0055】
バス916は、1つ又は複数の外部メモリに結合することができる。外部メモリは、読み出し専用メモリ932を含んでもよい。ROM 932は、マスクされるROM、電子的にプログラム可能な読み出し専用メモリ(EPROM)935、又は任意の他の適切な技術であってもよい。外部メモリは、ランダムアクセスメモリ933を含んでもよい。RAM 933は、スタティックRAM、バッテリバックアップスタティックRAM、DRAM、SRAM、又は任意の他の適切な技術であり得る。外部メモリは、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)935を含むことができる。外部メモリは、フラッシュメモリ934を含んでもよい。外部メモリは、ディスク936などの磁気記憶装置を含むことができる。いくつかの実施形態では、外部メモリが図4に示される超音波撮像システム400などのシステムに含まれてもよい。
【0056】
図4に戻ると、本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、超音波撮像システムが超音波信号を送信し、超音波信号に応答するエコー信号を受信して、被検体をスキャンするように構成される前記超音波プローブ(例えば、プローブ412)、エコー信号から動きデータを生成するように構成される動きプロセッサ(例えば、動きプロセッサ448)、動きデータを受信し、動きデータに少なくとも一部は基づいて、動きトリガ信号を生成するように構成される動きトリガ(例えば、動きトリガ生成器450)、及び前記超音波プローブに、動きトリガ信号に基づいて弾性測定値を取得するための超音波信号を送信させるように構成される送信コントローラ(例えば、送信コントローラ420)を含んでもよい。
【0057】
本明細書で説明するように、いくつかの実施形態では、超音波撮像システムが超音波信号を送信し、超音波信号に応答してエコー信号を受信するように構成される前記超音波プローブ(例えば、プローブ412)と、心電図検査トレースを受信し、心電図検査トレース内の特徴の検出に基づいて心電図検査トリガ信号を生成するように構成される心電図検査トリガ信号を生成するように構成される心電図検査トリガ(例えば、ECGトリガ生成器410)と、エコー信号から動きデータを生成するように構成される動きプロセッサ(例えば、動きプロセッサ448)と、動きデータを受信し、動きデータに少なくとも部分的に基づいて動きトリガ信号を生成するように構成される動きトリガ生成器(例えば、動きトリガ生成器450)と、心電図検査トリガ信号及び動きトリガ信号を受信するように構成される送信コントローラ(例えば、送信コントローラ420)と、動きトリガー信号に基づいて遅延後にエラストグラフィ測定値を取得するために前記超音波プローブに超音波信号を送信させるように心電図検査トリガを受信するようにさらに構成される送信コントローラ(例えば、送信コントローラ420)とを含むことができる。
【0058】
図5乃至図7を参照して、本明細書に提示される実施形態と一致する特定の例を説明する。提供される実施例は例示の目的のためであり、本開示の実施形態は、記載される実施例に限定されない。
【0059】
図5は、本開示の実施形態による、Mモードデータ500に基づいて動きトリガ及び遅延を決定する例を示す。図5に示す例では、Mモードデータは速度データのプロット502を含む。縦軸は心臓の中隔を通るスキャン線に沿った深さを示し、横軸は取得時間を示す。プロット502の異なる色は、異なる速度の大きさを示す。Mモードデータは、歪率データのプロット504をさらに含む。縦軸は心臓の中隔を通るスキャン線に沿った深さを示し、横軸は取得時間を示す。プロット502の異なる色は、異なる歪速度の大きさを示す。Mモードデータの下には、時間プロットされるECGトレース505がある。図5に示すように、R波506がECGトレース505上に現れた後、心臓が収縮期に入るにつれて、速度及び歪み速度の大きさは劇的に増加する。R波506からの遅延508の後、心臓は、速度及び歪み速度が最小である休止状態510に入る。
【0060】
エラストグラフィ測定値が動きトリガ生成器450などの動きベースのトリガのみに基づいて取得される超音波撮像システムでは、プロット502及び504に示される速度データ及び/又は歪率データを分析して、心臓がいつ静止しているかを判定することができる。この決定は、速度及び/又は歪み速度がしきい値を下回ったときに基づくことができる。心臓が静止していると判定されると、動きトリガ信号が送信コントローラに送信され、送信コントローラは、超音波トランスデューサに心臓のエラストグラフィ測定値を取得させる。
【0061】
修正されるECGトリガ信号に基づいてエラストグラフィ測定値が取得される超音波撮像システムでは、前の段落で説明した方法と同様に、プロット502及び504に示す速度データ及び/又は歪率データを分析して、心臓がいつ静止しているかを判定することができる。心臓が静止していると判定されると、R波506と静止状態(例えば、心拍静止期510)との間の遅延508が判定される。決定は動きトリガ生成器によって実行されてもよく、又は送信コントローラは動きトリガ生成器によって提供される信号に基づいて、遅延508を計算してもよい。送信コントローラが(例えば、ECGトリガ生成器410から)ECGトリガ信号を受信すると、送信コントローラは、遅延508が経過するまで、エラストグラフィ測定値を取得するのを待つ。
【0062】
図6は、本開示の実施形態による、スペクトル組織ドップラーデータに基づいて動きトリガ及び遅延を決定する例を示す。図6に示す例示的なスクリーンショット600では、スペクトル組織ドップラーデータが心臓の僧帽弁輪で取得される速度データのプロット602を含む。縦軸は速度の大きさ(cm/s)、横軸は時間(s)を示す。スペクトル組織ドップラーデータの上には、経時的にプロットされるECGトレース604がある。図6に示すように、R波606がECGトレース604上に現れた後、心臓が収縮期に入るにつれて速度の大きさは劇的に増加する。R波606からの遅延608の後、心臓は、速度値が最小である心拍静止期610に入る。
【0063】
動きトリガ生成器450のような、トリガ信号生成器によって生成される動きベースのトリガ信号のみに基づいてエラストグラフィ測定値が取得される超音波撮像システムでは、プロット602に示される速度データを分析して、心臓が静止している時期を決定してもよい。この決定は速度曲線の速度及び/又は勾配(例えば、加速度)が閾値を下回ったときに基づくことができる。心臓が静止していると判定されると、動きトリガ信号が送信コントローラに送信され、送信コントローラは、超音波トランスデューサに心臓のエラストグラフィ測定値を取得させる。
【0064】
修正されるECGトリガ信号に基づいてエラストグラフィ測定値が取得される超音波撮像システムでは、前の段落で説明した方法と同様に、プロット602に示す速度データを解析して、心臓がいつ静止しているかを判定することができる。心臓が静止していると判定されると、R波606と静止状態(例えば、心拍静止期610)との間の遅延608が判定される。決定は動きトリガ生成器によって実行されてもよく、又は送信コントローラは動きトリガ生成器によって提供される信号に基づいて、遅延608を計算してもよい。送信コントローラが(例えば、ECGトリガ生成器410から)ECGトリガ信号を受信すると、送信コントローラは、遅延608が経過するまで、エラストグラフィ測定値を取得するのを待つ。
【0065】
図7は、本開示の実施形態によるスペクトルドップラーフローデータに基づいて動きトリガー及び遅延を決定する例を示す。図7に示す例示的なスクリーンショット700では、ドップラーフローデータが心臓の僧帽弁で取得される血流速度データのプロット702を含む。縦軸は速度の大きさ(cm/s)、横軸は時間(s)を示す。ドップラー流データの上には、時間プロットされるECGトレース704がある。図7に示すように、R波706がECGトレース704上に現れた後、心臓が収縮期に入るにつれて、血流の速度の大きさは劇的に増加する。R波706からの遅延708の後、心臓は、速度値が最小ですなわち僧帽弁を通る血流が最小で休止710に入る。
【0066】
動きトリガ生成器450のような動きベースのトリガのみに基づいてエラストグラフィ測定値が取得される超音波撮像システムでは、プロット702に示される血流速度データが心臓がいつ静止しているかを決定するために分析されてもよい。この決定は速度曲線の速度及び/又は勾配(例えば、加速度)が閾値を下回ったときに基づくことができる。心臓が静止していると判定されると、動きトリガ信号が送信コントローラに送信され、送信コントローラは、超音波トランスデューサに心臓のエラストグラフィ測定値を取得させる。
【0067】
修正されるECGトリガ信号に基づいてエラストグラフィ測定値が取得される超音波撮像システムでは、前の段落で説明した方法と同様に、プロット702に示す速度データを解析して、心臓がいつ静止しているかを判定することができる。心臓が静止していると判定されると、R波706と静止状態(例えば、心拍静止期710)との間の遅延708が判定される。決定は動きトリガ生成器によって実行されてもよく、又は送信コントローラは動きトリガ生成器によって提供される信号に基づいて、遅延708を計算してもよい。送信コントローラが(例えば、ECGトリガ生成器410から)ECGトリガ信号を受信すると、送信コントローラは、遅延708が経過するまで、エラストグラフィ測定値を取得するのを待つ。
【0068】
図8は、本開示の原理による方法800のフロー図を示す。方法800は、エラストグラフィ測定値を取得する方法であってもよい。ブロック802では「前記超音波プローブ内に超音波信号を送信する。より具体的には前記超音波プローブ内に含まれるトランスデューサアレイ412及びトランスデューサアレイ414を用いて送信を行ってもよい。ブロック804では「超音波信号に応答して被検体からエコー信号を受信する」ことが行われる。ブロック806では「エコー信号から動きデータを生成する」ことが行われてもよい。一部の実施形態では図4に示される動きプロセッサ448などの動きプロセッサによって動きデータを生成してもよい。一部の実施形態では動きプロセッサ448がドップラープロセッサであってもよい。ブロック808では「動きデータに少なくとも一部基づいて、動きトリガー信号を生成する」が行われてもよい。動きトリガ信号の生成は図4に示されている動きトリガ生成器450などの動きトリガ生成器によって実行されてもよい。ブロック810では「送信」 動きトリガー信号を受信したときにエラストグラフィー測定値を取得するための超音波信号」を行う。送信は動きトリガ信号を受信する送信コントローラ、例えば、図4に示す送信コントローラ420の制御の下で、前記超音波プローブによって実行されてもよい。
【0069】
コンポーネント、システム、及び/又は方法がコンピュータベースのシステム又はプログラマブルロジックなどのプログラマブルデバイスを使用して実装される様々な実施形態では、上述のシステム及び方法が「C」、「C++」、「FORTRAN」、「パスカル」、「VHDL」、「Verilog」などの様々な既知の又は後に開発されるプログラミング言語のいずれかを使用して実装できることを理解される。したがって、上述のシステム及び/又は方法を実施するようにコンピュータなどのデバイスに指示することができる情報を含むことができる、磁気コンピュータディスク、光ディスク、電子メモリなどの様々な記憶媒体を準備することができる。適切な装置が記憶媒体に含まれる情報及びプログラムにアクセスできると、記憶媒体は情報及びプログラムを装置に提供することができ、したがって、装置は、本明細書に記載するシステム及び/又は方法の機能を実行することができる。例えば、ソースファイル、オブジェクトファイル、実行可能ファイルなどの適切な材料を含むコンピュータディスクがコンピュータに提供される場合、コンピュータは情報を受け取り、それ自体を適切に構成し、様々な機能を実行するために、上記の図及びフローチャートに概説される様々なシステム及び方法の機能を実行することができる。すなわち、コンピュータは上述のシステム及び/又は方法の異なる要素に関連する情報の様々な部分をディスクから受信し、個々のシステム及び/又は方法を実装し、上述の個々のシステム及び/又は方法の機能を調整することができる。
【0070】
本開示を考慮して、本明細書で説明される様々な方法及びデバイスは、ハードウェア、ソフトウェア、及びファームウェアで実装され得ることに留意される。さらに、様々な方法及びパラメータは、例としてのみ含まれ、いかなる限定的な意味においても含まれない。この開示を考慮して、当業者は本発明の範囲内に留まりながら、それら自体の技術及びこれらの技術に影響を及ぼすために必要とされる機器を決定する際に、本教示を実施することができる。本明細書で説明されるプロセッサの1つ又は複数の機能はより少ない数又は単一の処理ユニット(たとえば、CPU)に組み込まれてもよく、たとえば、図9を参照して説明されるように、本明細書で説明される機能を実行するために実行可能命令に応答してプログラムされる特定用途向け集積回路(ASIC)又は汎用処理回路を使用して実装されてもよい。
【0071】
理解されるように、本方法、システム、及び装置は例えば、PHILIPS超音波によって提供される超音波撮像システム既存の撮像システムに適用されてもよく、PHILIPS超音波は例えば、ARFベースのSWE撮像をサポートしてもよい。本発明の特定の追加の利点及び特徴は本開示を検討することにより当業者には明らかであるか、又は本発明の新規なシステム及び方法を使用する人々によって経験されることができ、その主な利点は、超音波撮像システム及びその動作方法が提供されることによって、心臓エラストグラフィ中の時間的及び空間的に依存するバイアス及び/又は動きオーバーレイによる不正確さを低減することである。本システム及び方法の別の利点は、従来の医療用撮像システムを容易にアップグレードして、本システム、装置、及び方法の特徴及び利点を組み込むことができることである。もちろん、上記の実施形態又はプロセスのいずれか1つを、1つ又は発明の他の実施形態及び/又はプロセスと組み合わせることができ、あるいは本システム、デバイス、及び方法による別個の装置又はデバイス部分の間で分離及び/又は実行することができることを理解される。
【0072】
最後に、上記の議論は単に本システムを例示することを意図しており、添付の特許請求の範囲を任意の特定の実施形態又は実施形態のグループに限定するものとして解釈されるべきではない。したがって、本システムは例示的な実施形態を参照して特に詳細に説明されてきたが、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載される本システムのより広く意図される精神及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び代替実施形態を考案することができることも理解される。したがって、本明細書及び図面は例示的な方法で見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9