(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 33/44 20100101AFI20240612BHJP
H01L 33/30 20100101ALI20240612BHJP
H01S 5/028 20060101ALI20240612BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20240612BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240612BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20240612BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20240612BHJP
H01S 5/42 20060101ALI20240612BHJP
H01S 5/22 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H01L33/44
H01L33/30
H01S5/028
H01S5/183
H01L31/10 A
H01L33/32
H01S5/343
H01S5/343 610
H01S5/42
H01S5/22 610
(21)【出願番号】P 2021570242
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2020065068
(87)【国際公開番号】W WO2020254093
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-04-03
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】521513384
【氏名又は名称】コンプテック ソリューションズ オーユー
【氏名又は名称原語表記】COMPTEK SOLUTIONS OY
【住所又は居所原語表記】Voimakatu 14 20520 Turku Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ローン ヨウコ
(72)【発明者】
【氏名】トゥオミネン マルユッカ
(72)【発明者】
【氏名】ダール ジョニー
(72)【発明者】
【氏名】アロンソ ビセンテ
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-111295(JP,A)
【文献】特開2015-211155(JP,A)
【文献】特開2012-182276(JP,A)
【文献】特開2020-150174(JP,A)
【文献】特表2018-505567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面平面と、前記第1の表面平面に対して反対でありかつ平行である第2の表面平面と、を有する基板層と、
前記基板層の前記第1の表面平面上に配置されたメサ構造であって、
・ III-V族材料の少なくとも1つの層と、
・ 前記基板層の前記第1の表面平面に対して、
0°でも180°でもない角度αで配置された第1の表面と、
を備える、メサ構造と、
前記メサ構造の前記第1の表面上に配置された第1のタイプの第1の終端酸化物層であって、前記メサ構造の前記第1の表面は、第1のタイプの前記第1の終端酸化物層を上に配置する前に、前記メサ構造の前記第1の表面上の自然酸化物の少なくとも75%を除去することによって洗浄されている、第1の終端酸化物層と、
を備え
、前記第1の終端酸化物層の表面は長距離秩序を示す、光電子デバイス。
【請求項2】
前記第1の終端酸化物層の全体の酸化物化合物の少なくとも50%は、III族酸化物である、請求項
1に記載の光電子デバイス。
【請求項3】
前記第1の終端酸化物層の厚さは10nm未満である、請求項1又は2に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記メサ構造は、前記基板層の前記第1の表面平面に対して平行である第2の表面と、前記メサ構造の前記第2の表面上に配置された第2のタイプの第2の終端酸化物層とを更に備える、請求項
1から3のいずれかに記載の光電子デバイス。
【請求項5】
前記第2の終端酸化物層の全体の酸化物化合物の少なくとも50%は、III族酸化物である、請求項
4に記載の光電子デバイス。
【請求項6】
前記第2の終端酸化物層は、結晶性終端酸化物層である、請求項
4又は5に記載の光電子デバイス。
【請求項7】
多数のメサ構造を備え、
前記角度αは、0°よりも大きく180°よりも小さく、2つの隣接するメサ構造の中心間の距離は、2~500μmである、請求項1から
6のいずれかに記載の光電子デバイス。
【請求項8】
第3のタイプの第3の終端酸化物層は、2つの隣接するメサ構造間の表面上に配置されている、請求項
7に記載の光電子デバイス。
【請求項9】
最も外側の終端酸化物層上にオーバーコーティングを更に備える、請求項1から
8のいずれかに記載の光電子デバイス。
【請求項10】
前記角度αは、30~90°である、請求項1から
9のいずれかに記載の光電子デバイス。
【請求項11】
マイクロ発光ダイオードで
ある、請求項1から10のいずれかに記載の光電子デバイスあって、
前記基板層上の前記メサ構造の設置面積は、1~250000μm
2である
、
光電子デバイス。
【請求項12】
光検出器
ある、請求項1から10のいずれかに記載の光電子デバイスであって、
前記基板上の前記メサ構造の設置面積は、1μm
2~100mm
2である
、
光電子デバイス。
【請求項13】
垂直共振器型面発光レーザーで
ある、請求項1から10のいずれかに記載の光電子デバイスあって、
前記基板上の前記メサ構造の設置面積は、1~250000μm
2である
、
光電子デバイス。
【請求項14】
光電子デバイスを製造するための方法であって、
・ 基板層の第1の表面平面上に配置されたメサ構造を得ることと、
・ 前記メサ構造の第1の表面上の自然酸化物の少なくとも75%を除去することによって、前記メサ構造の前記第1の表面を洗浄することと、
・ 前記メサ構造の前記第1の表面上に第1のタイプの第1の終端酸化物層を形成することと、
を含み、
前記メサ構造は、
・ III-V族材料の少なくとも1つの層と、
・ 前記基板層の前記表面平面に対して、
0°でも180°でもない角度αで配置された前記第1の表面と、
を備え
、
前記第1の終端酸化物層の表面は長距離秩序を示す、
方法。
【請求項15】
前記メサ構造は、前記基板層の前記第1の表面平面に対して平行である第2の表面を備え、
前記方法は、前記メサ構造の前記第2の表面上に第2のタイプの第2の終端酸化物層を形成することを更に含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の終端酸化物層及びオプションで第2の終端酸化物層を形成した後、前記基板層を除去することを更に含む、請求項
14又は
15に記載の方法。
【請求項17】
前記終端酸化物層上にオーバーコーティングを堆積させることを更に含む、請求項
15又は
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、光電子デバイス及び光電子デバイスを製造するための方法に関する。光電子デバイスは、メサ構造を備える。
【背景】
【0002】
レーザー、発光ダイオード、検出器、及び光起電力デバイスなどの光電子デバイスは、典型的には、量子井戸構造を含むエピタキシャル成長半導体ヘテロ構造、より正確には、化合物半導体材料ベースの構造で構成されている。化合物半導体材料の一例は、III-V族化合物半導体であり、これは、III族元素(実質的に、Al、Ga、In)をV族元素(実質的に、N、P、As、Sb)と結合させることによって得られる。光電子デバイスでは、所与の半導体材料は、別の所与の半導体材料の上で層としてエピタキシャル成長し、それによってヘテロ構造を生成する。更に、エピタキシャル成長製造技術を使用することによって、III-V族半導体は、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)構造を実装するために、量子井戸及び同様の積層構造に製造され得る。更に、量子井戸は、窒化インジウムガリウム(InGaN)などの材料を、より広いバンドギャップを有する材料、例えば、窒化ガリウム(GaN)の2つの層の間で挟むことによって半導体内に形成される。他の可能性のある材料の結合の例には、より高いアルミニウム濃度を有するリン化インジウムガリウムアルミニウムの2つの層の間で挟まれたリン化インジウムガリウムアルミニウム(InGaAlP)の層などが含まれ得る。これらの構造は、分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy:MBE)又は有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)のようなプロセスによって成長し得る。更に、エピタキシャル成長III-V族化合物半導体構造は、半導体層を垂直にエッチングすることによって、当該技術で一般に既知であるリソグラフィ技術を使用することによって、メサ構造に形成され得る。メサ構造は、表面平面及び斜めの(又は傾斜した)側面を有する基板層の上に形成された多層半導体構造である。
【0003】
光電子デバイスの一例として、発光デバイスでの光子生成は、バンド不連続性によって引き起こされるポテンシャルエネルギー障壁間で閉じ込められる電荷キャリアが再結合して光子を生成するときの動作で生じる。光子は、量子井戸の対応する伝導帯最小値と価電子帯最大値との間のエネルギー差、すなわち、バンドギャップエネルギーに依存する波長を有する。同様に、光子検出は、活性領域でバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーを有する光子が、デバイス内で印加される電圧差で、後で収集される電子正孔対を生成して吸収されるときの動作で、光検出器デバイスで生じる。
【0004】
一般に、光電子デバイスでは、特に、発光デバイスでは、光電子デバイスの活性量子井戸領域内への効率的な電流注入の要件がある。マイクロLEDデバイスの特定の例では、例えばマイクロLEDベースのディスプレイを駆動するために要求される低注入電流レベルでデバイス効率が乏しい。一般に、できる限り高い割合の注入された電流がデバイスの活性領域で光生成に移され、したがって、できる限り多くの注入される電子が正孔と再結合し光子を生成すべきことが望まれる。これは、LEDの内部量子効率(Internal Quantum Efficiency:IQE)と定義される。
【0005】
効率が乏しくなるメカニズムは、(i)電子/正孔のショックレーリードホール(Shockley-Read-Hall:SRH)再結合、(ii)オージェ再結合、及び(iii)量子井戸からの電子オーバーフローといった因子によってもたらされると考えられる。特に、デバイスの低電流密度動作で、IQE低下に対する主な要因は、欠陥状態での非輻射ショックレーリードホール再結合によってもたらされ、それによって、光生成及び出力を低減する。更に、この再結合プロセスは、所与の光電子デバイスの動作寿命を低減する過剰な熱を生成する。
【0006】
マイクロLEDデバイスの特定の例では、寸法が減少するにつれてLEDの表面積対体積比が増加し、したがって、材料表面品質は、最終的なデバイス性能を定める際に寄与する。すなわち、マイクロLEDメサ構造がエッチング及びリソグラフィ技術を使用して処理されるため、LEDのメサ側壁は、欠陥状態ならびに非輻射SRH再結合及び漏れ電流の源である高密度の原子レベル欠陥及び構造不規則性を特徴とする。特に、マイクロLEDベースのディスプレイデバイスの例では、電荷キャリア拡散長がマイクロLEDサイズ及びピクセルピッチに匹敵し得るため、欠陥のある側壁の影響は、大きい距離にわたって、及びチップの全体の体積の性能に影響を及ぼし得る。
【0007】
典型的な化合物半導体ベースの光電子デバイスでの高密度の欠陥の本来の源は、III-V族材料の制御されていない酸化である。化合物半導体の酸化物は、原子レベル結合不規則性、壊された結合(ダングリングボンド)、ならびに混合されたIII族及びV族酸化物を特徴とする。このナノメートル厚さの酸化物層は、半導体材料バンドギャップで高密度の電気活性欠陥状態を生成しやすい。特に、V族酸化物は、高欠陥状態密度に寄与しやすい。当該好ましくない酸化物の形成は、光電子デバイスの処理の間に生じやすい。マイクロLEDデバイスメサ製造の特定の例では、リソグラフィ及びエッチング技術でのメサ構造形成の後、メサ表面は酸化される。
【0008】
現代の既知の半導体生産設備は、いくつかの既知の技術を採用することによって、光電子デバイスを製造における前述の問題に対処する。一当該技術は、メサ側壁表面の化学洗浄及び不動態化が採用される光電子デバイスを製造することである。当該化学的不動態化は、例えば、硫化アンモニウムベースの不動態化又はSU-8ベースの不動態化であり得る。当該不動態化での既知の問題は、それらが安定でなく、容易に酸化し得ることである。別の当該アプローチは、原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)、スパッタリング、又はプラズマ化学気相堆積(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition:PECVD)などの技術を使用して、メサ側壁上に金属酸化物オーバーコーティング(例えば、Al2O3、SiO2)を堆積させることである。光電子デバイスを製造するためのこれらのアプローチは、オーバーコーティング材料が酸素を含み、化学洗浄が多くの場合、特に、アルミニウム含有化合物半導体材料での酸化物の除去で不十分であるため、品質の乏しい界面酸化物の層及びこれに伴う欠陥を生成しやすい。
【0009】
したがって、前述の説明に照らして、従来の半導体デバイス及び従来の製造技術に伴う前述の欠点を克服する必要がある。
【0010】
したがって、本開示は、自然酸化物層を有する品質の乏しい光電子デバイスメサ表面、及び関連の非輻射再結合及び漏れ電流の既存の問題にソリューションを提供することを目的とする。本開示の目的は、従来技術で遭遇する問題を少なくとも部分的に克服するソリューションを提供することであり、経済的で実装しやすく高度な光電子デバイスを提供する。
【摘要】
【0011】
本開示は、光電子デバイスを提供することを目的とする。本開示はまた、光電子デバイスを製造する方法を提供することを目的とする。
【0012】
本開示は、第1の表面平面と、前記第1の表面平面に対して反対でありかつ平行である第2の表面平面と、を有する基板層を備える光電子デバイスを提供する。前記光電子デバイスは、前記基板層の前記第1の表面平面上に配置されたメサ構造を更に備える。前記メサ構造は、III-V族材料の少なくとも1つの層と、前記基板層の前記第1の表面平面に対して、0°でも180°でもない角度αで配置された第1の表面と、を備える。前記デバイスはまた更に、前記メサ構造の前記第1の表面上に配置された第1のタイプの第1の終端酸化物層を備え、前記メサ構造の前記第1の表面は、第1のタイプの前記第1の終端酸化物層を上に配置する前に、前記メサ構造の前記第1の表面上の自然酸化物の少なくとも75%を除去することによって洗浄されている。
【0013】
本開示は、光電子デバイスを製造するための方法を更に提供する。この方法は、
・ 基板層の第1の表面平面上に配置されたメサ構造を得ることと、
・ 前記メサ構造の第1の表面上の自然酸化物の少なくとも75%を除去することによって、前記メサ構造の前記第1の表面を洗浄することと、
・ 前記メサ構造の前記第1の表面上に第1のタイプの第1の終端酸化物層を形成することと、
を含み、
前記メサ構造は、III-V族材料の少なくとも1つの層と、前記基板層の前記表面平面に対して、0°でも180°でもない角度αで配置された前記第1の表面と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
上記摘要及び例示的な実施形態の以下の詳細説明は、添付の図面と共に読むとより十分に理解される。本開示を示す目的で、本開示の例示的な構成が図面で示される。しかしながら、本開示は、本明細書で開示される特定の方法及び装置に限定されない。更に、当業者は、図面が縮尺どおりでないことを理解するであろう。可能な限り、同様の要素は、同一の番号で示されている。
【0015】
ここで、本開示の実施形態は、以下の図面を参照して、例示としてのみ説明される。
【
図1A】本開示の第1の実施形態に係る光電子デバイスの概略図である。
【
図1B】本開示の第1の実施形態に係る光電子デバイスの概略図である。
【
図2A】本開示の更なる実施形態に係る光電子デバイスの概略図である。
【
図2B】本開示の更なる実施形態に係る光電子デバイスの概略図である。
【
図2C】本開示の更なる実施形態に係る光電子デバイスの概略図である。
【
図3A】メサ構造表面上に自然酸化物を有する光電子デバイスの概略図である。
【
図3B】自然酸化物の上にオーバーコーティング層を有する光電子デバイスの概略図である。
【
図3C】本開示の第3の実施形態に係る、終端酸化物層を有する光電子デバイスの概略図である。
【
図3D】本開示の第4の実施形態に係る、終端酸化物層及び誘電オーバーコーティング層を有する光電子デバイスの概略図である。
【
図4】本開示の第5の実施形態に係るプロセスフローの概略図である。
【
図5】本開示の第6の実施形態に係る処理機器の概略図である。
【
図6】自然酸化物を有するマイクロLEDデバイス及び本開示の第7の実施形態に従って処理されたマイクロLEDデバイスから時間相関単一光子計数法を使用して測定されたキャリア寿命減衰曲線を示す。
【
図7】不動態化無しで自然酸化物層を有する典型的なマイクロLEDデバイス、従来技術を使用して不動態化されたマイクロLEDデバイス、及び本開示の第8の実施形態に従って処理されたマイクロLEDデバイスを示すフォトルミネッセンススペクトルを示す。
【
図8】本開示の第9の実施形態に係る垂直共振器型面発光レーザーダイオードの概略図である。
【
図9A】洗浄されたInGaAlP材料の表面からの反射高速電子線回折パターンを示す。
【
図9B】本開示の第10の実施形態に従って不動態化されたInGaAlP材料の表面からの反射高速電子線回折パターンを示す。
【
図10A】メサ表面上に自然酸化物層を有するマイクロLEDデバイスからのGa2p X線光電子スペクトルを示す。
【
図10B】本開示の第11の実施形態に係る、終端酸化物層を有するマイクロLEDデバイスからのGa2p X線光電子スペクトルである。
【
図10C】メサ表面上に自然酸化物層を有するマイクロLEDデバイスからのP2P X線光電子スペクトルである。
【
図10D】本開示の第12の実施形態に係る、終端酸化物層を有するマイクロLEDデバイスからのP2P X線光電子スペクトルである。
【
図11】本開示の第13の実施形態に係る光電子デバイスの概略図である。
【
図12】本開示の第14の実施形態に係る光電子デバイスの概略図である。
【
図13】本開示の第15の実施形態に係る光電子デバイスの概略図である。
【0016】
添付の図では、下線付き番号は、その番号が上に位置している、又は隣接している部材を表すために採用される。下線無しの番号は、その番号を部材につなぐ線によって識別される部材に関する。
【実施形態の詳細説明】
【0017】
以下の詳細説明は、本開示の実施形態及び実施形態が実装され得る方法を示す。本開示を実行するいくつかのモードが開示されているが、当業者は、本開示を実行又は実施するための他の実施形態もまた可能であることを認識するであろう。
【0018】
本開示は、第1の表面平面と、前記第1の表面平面に対して反対でありかつ平行である第2の表面平面と、を有する基板層を備える光電子デバイスを提供する。前記光電子デバイスは、前記基板層の前記第1の表面平面上に配置されたメサ構造を更に備える。前記メサ構造は、III-V族材料の少なくとも1つの層と、前記基板層の前記第1の表面平面に対して、0°でも180°でもない角度αで配置された第1の表面と、を備える。前記デバイスはまた更に、前記メサ構造の前記第1の表面上に配置された第1のタイプの第1の終端酸化物層を備え、前記メサ構造の前記第1の表面は、第1のタイプの前記第1の終端酸化物層を上に配置する前に、前記メサ構造の前記第1の表面上の自然酸化物の少なくとも75%を除去することによって洗浄されている。
【0019】
本開示は、光電子デバイスを製造するための方法を更に提供する。この方法は、
・ 基板層の第1の表面平面上に配置されたメサ構造を得ることと、
・ 前記メサ構造の第1の表面上の自然酸化物の少なくとも75%を除去することによって、前記メサ構造の前記第1の表面を洗浄することと、
・ 前記メサ構造の前記第1の表面上に第1のタイプの第1の終端酸化物層を形成することと、を含み、
前記メサ構造は、III-V族材料の少なくとも1つの層と、前記基板層の前記表面平面に対して、0°でも180°でもない角度αで配置された前記第1の表面と、を備える。
【0020】
したがって、本開示は、前記光電子デバイスの前記メサ構造の表面上に終端酸化物層を生成することによって、光電子半導体デバイスを不動態化する新しい方法を提供する。当該終端酸化物層は、従来の既知の方法によって形成又は堆積される自然酸化物又は他の酸化物層と比較して、向上した物理的及び電気的特性を示す。これらの理由で、当該終端酸化物層は、後の誘電オーバーコーティング堆積のために品質が向上した界面によって、メサ構造表面で前記非輻射再結合を抑制する有益な不動態化挙動を提供する。したがって、当該終端酸化物層は、メサ構造として形成された複数の半導体層の積層構成内へのキャリア閉じ込めを向上させるために前記光電子デバイスについてのエネルギー障壁の増加を提供する。
【0021】
前記光電子デバイスでは、前記メサ構造の前記第1の表面は、第1のタイプの前記第1の終端酸化物層を上に配置する前に、その上の自然酸化物の少なくとも75%を除去することによって洗浄されている。自然酸化物は、望ましくない低い電気的特性を有し、したがって、その存在によって光電子デバイスの品質が落ちる。更に、最終製品で自然酸化物が前記終端酸化物層の形成の前に少なくとも主に除去されていることを示すことができる。実際、前記終端酸化物層の構造が並べられており、したがって、前記メサ構造の前記第1の表面及び前記第1の終端酸化物層の界面で、前記終端酸化物層の前記酸化物の順序は、前記メサ構造の前記第1の表面が、前記第1の終端酸化物層を上に形成する前に少なくとも主に洗浄されていることを示す。この構造は、例えば、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)又はX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を使用することによって分析できる。最終製品での洗浄されていない表面と洗浄された表面との差は、以下でより詳細に説明するように
図3にも示される。
【0022】
典型的には、前記第1の終端酸化物層の変換又は形成の割合は、完全に100%ではない。すなわち、前記自然酸化物の少なくとも75%が除去されていたとしても、前記自然酸化物が除去された場所のすべてが必ずしも終端酸化物層によって覆われているわけではないことにも留意されたい。変換の割合は、例えば、50%であり得る。変換の割合は、意図的に又は非意図的に影響され得る。意図的により低い変換割合とする例としては、自然酸化物の除去の後であり、終端酸化物層の形成の前に、特定のエリアを隠すか又は覆って、その下のエリアの更なる変化を防ぐことが挙げられる。非意図的により低い変換割合となる例としては、終端酸化物層の形成を防ぎ得るコンタミネーションの存在が挙げられる。
【0023】
本説明では、「タイプ」という用語は、前記終端酸化物層と関連して使用されている。「タイプ」という用語は、前記終端酸化物層の性質、すなわち、その組成を意味する。使用される様々な終端酸化物層は、以下でより詳細に説明するように同一か又は互いに異なり得る。したがって、前記終端酸化物層のタイプは、その層に存在する酸化物に依存する。
【0024】
光電子デバイスは、光子を発しているか又は光子を検出することができるデバイスを指し得る。当該光電子デバイスの例としては、発光ダイオード(LED)、マイクロLED、レーザーダイオード、光起電力太陽電池、及び光検出器が挙げられる。本光電子デバイスはまた、複数のLEDのマトリクス、複数の光検出器のマトリクス、又はマルチ接合太陽電池の一部であり得る。したがって、前記光電子デバイスは、半導体デバイスである。
【0025】
前記光電子デバイスは、表面平面を有する基板層の上に配置されたメサ構造を備える。前記メサ構造は、絶縁された複数の半導体スタックを指し、III-V族材料の少なくとも1つの層を備える。各々の絶縁された半導体スタックは、前記光電子デバイスの光電子構成要素として機能する。一例として、レーザー、発光ダイオード、検出器、及び光起電力デバイスなどの光電子デバイスは、量子井戸構造などの活性層を含む半導体ヘテロ構造、より正確には、化合物半導体材料ベースの構造で構成され得る。前記半導体ヘテロ構造は、典型的には、基板層の上でエピタキシャル成長する。基板層の例は、GaAsウェハである。基板層の別の例は、ウェハ上のエピタキシャルIII-V層である。前記基板層の前記表面平面は、例えば、(GaAs又はウェハ上のエピタキシャルIII-V層の場合)(001)面、又は(GaNの場合)(0001)面を指す。
【0026】
前記メサ構造(すなわち、前記絶縁された半導体スタック)は、前記基板層の前記第1の表面平面に対して角度αで配置された第1の表面を備える。前記表面平面と前記第1の表面との間の前記角度は、例えば、30~90度であり得る。前記第1の表面は、前記メサ構造の側面を取り囲む表面、すなわち、傾斜部分である。実施形態によっては、前記メサ構造はまた、前記基板層の前記第1の表面平面に対して平行である第2の表面を備える。前記第2の表面は、前記基板から最も遠い、前記メサ構造の表面層である。前記表面層は、前記構造の少なくとも第1の原子層を指す。
【0027】
前記第1の表面は、前記基板層の前記第1の表面平面に対して、0°でも180°でもない角度αで配置されている。実施形態によっては、前記角度αは、30~90度である。したがって、前記角度αは、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、又は170度から、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、又は175度までであり得る。
【0028】
実施形態によっては、本光電子デバイスはまた、最も外側の終端酸化物層上にオーバーコーティングを備える。当該オーバーコーティングの機能は、例えば、前記終端酸化物層及び前記デバイスの残りの部分を保護することであり得る。オーバーコーティングはまた、前記デバイスの前記外側の表面の屈折率を変更するか、又は反射防止コーティングもしくは高反射コーティングとして機能するために使用され得る。したがって、前記オーバーコーティングは、場所によって異なる厚さを有し得、例えば、いくつかのピークを含み得る。
【0029】
更に、前記オーバーコーティングは、前記光電子デバイスの一部にのみ配置され得る。実際、使用時には、最も典型的には、必ずしも前記光電子デバイスの残りの部分ではなく前記終端酸化物層を保護するために使用される。したがって、前記オーバーコーティングは、不連続であり得、例えば、パターンに沿って作られ得る。
【0030】
前記光電子デバイスは、前記メサ構造の前記第1の表面上に配置された第1のタイプの第1の終端酸化物層を更に備える。別の実施形態では、第2のタイプの第2の終端酸化物層が、前記メサ構造の前記第2の表面上に配置される。
【0031】
前記第1の終端酸化物層は、前記メサ構造、すなわち、その側面を取り囲むように配置されている。前記第1の終端酸化物層は、第1のタイプである。前記第1のタイプは、好ましくは、III族酸化物主体である終端酸化物層である。III族酸化物主体は、表面での全体の酸化物化合物の少なくとも50%以上がIII族酸化物である状況を指す。V族酸化物及び関連の原子結合は、半導体のバンドギャップで高密度の欠陥状態を生成しやすく、したがって、前記表面酸化物をIII族主体酸化物に定めることが意図されることに留意されたい。更に、本開示の前記方法によって形成される前記第1の終端酸化物層は、好ましくは、10nmよりも小さい厚さを示す。実施形態によっては、前記第1の終端酸化物層の(割合における主体のレベルなどの)組成及び厚さは、メサ側壁、すなわち、前記第1の表面上に存在する材料に依存する。
【0032】
存在する場合、前記第2の終端酸化物層は、前記メサ構造の前記第2の表面を覆うように配置されている。前記第2の終端酸化物層は、第2のタイプである。実施形態によっては、前記第2のタイプは、前記第1のタイプと異なっている。別の実施形態では、前記第2のタイプは、前記第1のタイプと同一である。前記第2の終端酸化物層は、好ましくは、組成及び厚さで均一である。代替的な実施形態では、前記第2の終端酸化物層は、結晶性終端酸化物層である。
【0033】
したがって、実施形態によっては、前記第1の終端酸化物層の全体の酸化物化合物の少なくとも50%は、III族酸化物である。別の実施形態によると、前記第2の終端酸化物層の全体の酸化物化合物の少なくとも50%は、III族酸化物である。したがって、前記第1及び第2の終端酸化物層の両方、又はそのいずれかは、主に、III族酸化物で形成され得る。
【0034】
前記メサ構造は、任意の形態であり得る。すなわち、上から(前記基板層の前記第1の表面に対して垂直に)見たとき、前記メサ構造は、正方形、三角形、円形、もしくは楕円形の形態、又は任意の他の好適な形態を有し得る。前記メサ構造は、側方から見たとき、直線形態、非直線形態、前記第1の基板面に対して異なる角度を有する直線形態の組合せ、非直線形態の組合せ、又は直線及び非直線形態の組合せを有し得る。
【0035】
前記光電子デバイスが(2~10個、10~50個、又は50~100個のメサ構造などの)多数のメサ構造を備える実施形態では、これらは、好ましくは、規則正しく配置されているか、又は規則的なパターンに従って(例えば、円形であって、前記円形の中心に近いメサ構造が外円でのメサ構造よりも互いに近くに)配置されている。隣接するメサ構造間の距離は、メサ構造の隣接する中心間の距離として示される。2つの隣接するメサ構造の中心間の距離は、例えば、2~500μm(マイクロメートル)であり得る。この距離は、例えば、2、4、6、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、150、200、250、300、又は350μmから、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、150、200、250、300、350、400、450、又は500μmまでであり得る。実施形態によっては、前記光電子デバイスは、多数のメサ構造を備え、前記角度αは、0°よりも大きく180°よりも小さく、2つの隣接するメサ構造の中心間の距離は、2~500μmである。
【0036】
更に別の実施形態によると、前記光電子デバイスが多数のメサ構造を備えるとき、第3のタイプの第3の終端酸化物層は、2つの隣接するメサ構造間の表面上に配置される。前記第3のタイプの終端酸化物層は、前記第1の終端酸化物層もしくはオプションの第2の終端酸化物層のいずれかと同一であり得るか、これらと同じであり得るか、又はこれらの両方と異なり得る。第1及び第3の終端酸化物層のみが存在し、第2の終端酸化物層がないことも可能である。前記第3のタイプの終端酸化物層はまた、全体の酸化物化合物の少なくとも50%がIII族酸化物であり得る。この場合、前記表面はまた、好ましくは、前記第3の終端酸化物層が形成される前記表面上の自然酸化物の少なくとも75%を除去することによって、前記第3の終端酸化物層を形成する前に洗浄される。
【0037】
したがって、前記第1の終端酸化物層、オプションの第2の終端酸化物層、及びオプションの第3の終端酸化物層でのIII族酸化物の量は、好ましくは、少なくとも50%であるが、(複数存在するとき)各終端酸化物層について独立して選択される。実施形態によっては、III族酸化物の量は、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95%である。
【0038】
更に別の実施形態によると、前記第1の終端酸化物層、オプションの第2の終端酸化物層、及びオプションの第3の終端酸化物層は、互いに独立して、酸化物の全体の量の最大20%などの、ある分量のV族酸化物を更に備え得る。例えば、V族酸化物の量は、0%よりも多いが、その検出限界(典型的には、0.1%又は1%)よりも低い。したがって、V族酸化物の量は、最大0.1、0.5、1、1.5、2、5、10、15、又は20%であり得る。V族酸化物の量が最大50%であることも可能である。
【0039】
したがって、実施形態によっては、前記第1の終端酸化物層、オプションの第2の終端酸化物層、及びオプションの第3の終端酸化物層は、互いに独立して、少なくとも50%のIII族の酸化物と、0%よりも多いV族の酸化物とを備える。
【0040】
実施形態によっては、前記光電子デバイスは、マイクロLEDデバイスであり得る。実際、前記光電子デバイスは、マイクロ発光ダイオードであり得、ベース層上の前記メサ構造の設置面積は、1~250000μm2である。この設置面積は、例えば、1、10、100、500、1000、1500、2000、5000、10000、10500、15000、20000、50000、100000、又は150000μm2から、500、1000、1500、2000、5000、10000、10500、15000、20000、50000、100000、150000、200000、又は250000μm2までであり得る。
【0041】
前記ベース層上の前記メサ構造の前記設置面積は、前記基板層の前記第1の表面平面上への前記メサ構造の(すなわち単一のメサ構造の)平行投影と定義される。この説明での前記ベース層は、前記メサ構造によって覆われていない前記デバイスの一部を表す。
【0042】
ここで使用される「マイクロ」という用語は、前記デバイスの記述的サイズを指し、ある実施形態では、1μmから500μmまでの範囲の個々の構成要素の横の寸法を指し得る。典型的なマイクロLEDデバイスのメサ構造での側壁は、低い全体効率を有して前記マイクロLEDデバイスを取り囲む光学的デッドエリアを生成する注入された電荷キャリアについての欠陥及びこれに伴う非輻射再結合中心を特徴とする。この問題は、前記終端酸化物層の特性により、本出願で回避される。
【0043】
実際、前記マイクロLEDデバイス構造は、側壁表面を含む前記マイクロLEDメサ表面を、メサ表面で低減された量の欠陥ならびに低減された非輻射再結合及びキャリア漏れの特性を有する終端酸化物層に変換するプロセスを使用して不動態化される。
【0044】
更に別の実施形態では、前記光電子デバイスは、垂直共振器型面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)であり、例えば最小の横の寸法は1μmである。実際、前記光電子デバイスは、垂直共振器型面発光レーザーであり得、ベース層上の前記メサ構造の前記設置面積は、1~250000μm2である。この設置面積は、例えば、1、10、100、500、1000、1500、2000、5000、10000、10500、15000、20000、50000、100000、又は150000μm2から、500、1000、1500、2000、5000、10000、10500、15000、20000、50000、100000、150000、200000、又は250000μm2までであり得る。VCSELデバイスは、AlGaAs層及びAlAs層のような複数のアルミニウム含有III-V族層を有するメサ構造を備え得る。このアルミニウム含有層は、1つ以上の表面不動態化層、すなわち、終端酸化物層を含み得る上表面によって垂直方向に環境から保護され得る。既知のVCSELデバイスのアルミニウム含有層は、典型的には、特に、ウェハが個々のダイにカットされた後、前記メサ構造の側表面で環境に曝される。これらの材料で生じる自然酸化は制御されておらず、自然酸化物層の厚さは、アルミニウム含有層の縁内部から増加し、最終的に、VCSEL活性層にさえ達し、それによって、性能を低下させるか、更には動作を妨げる。VCSELデバイスは、一般に、比較的高価で比較的かさばり得る密閉パッケージで取り付けられている。これらの問題は、前記第1の終端酸化物層により、実施形態によっては更に第2の終端酸化物層により、本デバイスで回避される。
【0045】
別の実施形態では、前記光電子デバイスは、光検出器である。実際、前記光電子デバイスは、光検出器であり得、ベース層上の1つのメサ構造の前記設置面積は、1μm2~100mm2である。前記設置面積は、例えば、1、5、50、100、250、500、700、1000μm2、0.01、0.1、1、10、15、20、30、35、40、45、50、55、60、65、又は70mm2から、50、100、250、500、700、1000μm2、0.01、0.1、1、10、15、20、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mm2までであり得る。
【0046】
前記光検出器は、典型的には、任意の組合せでInP、InGaAs、InGaAsP、及びGaAsなどの半導体材料の多層スタックを備える。前記光検出器は、典型的には、p-n接合間で電圧を印加することによって収集され得る電流に光子を変換するp-n接合を少なくとも有するか、又は更に、光子吸収によりp-n接合間で電圧差が生成される。吸収された光子は、空乏領域で電子正孔対を作る。フォトダイオード及びフォトトランジスタは、光検出器の例である。
【0047】
更に、本開示は、メサ構造表面を覆う終端酸化物層を有する、垂直にエッチングされた光電子デバイスの新しい構造に関する。
【0048】
本開示の別の態様では、光電子デバイスを製造するための方法が提供される。メサ構造は、基板層の上に予め製造されている(配置されている)。前記基板層の上に配置された提供された前記メサ構造は、前記メサ構造の前記第1の表面上に前記第1のタイプの前記第1の終端酸化物層を形成し、実施形態によっては更に、前記メサ構造の前記第2の表面上に前記第2のタイプの前記第2の終端酸化物層を形成することによって更に処理される。
【0049】
前記方法は、3つのメインステップである、ステップS1(準備)、ステップS2(第1の終端酸化物層の形成及びオプションで第2の終端酸化物層の形成)、及びオプションのステップS3(オーバーコーティング)に分けられ得る。これらは以下でより詳細に論じる。
【0050】
前記製造方法では、前記第1の表面及びオプションで第2の表面で曝される前記層の材料は、自然酸化物層を形成しやすい。この酸化は、好ましくは、当業者が十分に既知であるメカニズムによって、前記自然酸化物層によりもたらされる暗電流及び電流漏れの出現により、前記光電子デバイスの効率減少を回避するために防がれる。
【0051】
前記方法は、前記メサ構造の前記第1の表面上の自然酸化物の少なくとも75%を除去することによって、前記メサ構造の前記第1の表面を洗浄することを更に含む。これは、典型的には、前記第1の終端酸化物層を形成する前に少なくとも1つの洗浄ステップで実行される。様々な可能な洗浄ステップは、ステップS1と関連して以下でより詳細に説明する。
【0052】
実施形態によっては、前記メサ構造は、前記基板層の前記第1の表面平面に対して平行である第2の表面を備え、前記方法は、前記メサ構造の前記第2の表面上に第2のタイプの第2の終端酸化物層を形成することを更に含む。この場合、前記第2の表面はまた、好ましくは、前記メサ構造の前記第2の表面上の自然酸化物の少なくとも75%を除去することによって、前記第2の終端酸化物層を形成する前に洗浄される。
【0053】
前記方法はまた、前記第1の終端酸化物層及び前記オプションの第2の終端酸化物層(ならびにオプションの第3の終端酸化物層)を形成した後、前記基板層を除去することを含み得る。当該ステップが使用されるとき、得られた前記光電子デバイスは、もはや前記基板層を備えない。それは、実施形態によっては別の基板層上に配置され得、前記角度αが90°とは異なっていた場合、前記新しい基板層と前記メサ構造の前記第1の表面(すなわち、前記第1の終端酸化物層を備える前記第1の表面)との間の角度βは、必然的に90°-αである。あるベース層から別のベース層への前記メサ構造の移動は、当該技術で既知の手段で行われ得る。したがって、前記メサ構造の新しい表面は、(前記基板層の除去によって)曝され得、また(他の終端酸化物層のうちの1つと同じか、又は異なるものであり得る)終端酸化物層を備えるように処理され得る。
【0054】
更に、前記メサ構造が形成され得る(既製で得られるのではない)。前記メサ構造の形成は、当該技術で既知の方法、例えば、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)で作られ得る。メサ構造を分離するためのエッチング深さは、事前に選択される。一例では、前記材料は、前記基板までずっとエッチングされ得る。別の例では、エッチングでは、前記メサ構造間で前記基板上に材料を残す。
【0055】
〔ステップS1〕
ステップS1で、コンタミナント、炭素、及び自然酸化物が、前記メサ構造(複数可)から除去される。第1の終端酸化物層を形成するとき、及び実施形態によっては第2の終端酸化物層を形成するときにそれらが好ましくないため、この除去が必要とされる。前記基板がコンタミナント及び炭素を全く有しない場合があるが、自然酸化物が存在する場合、その少なくとも75%が除去される。実施形態によっては、前記自然酸化物の少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上が除去される。洗浄後に前記自然酸化物の数パーミルしか残らない場合さえある。
【0056】
実施形態によっては、前記プロセスは、基板上に形成されたメサ構造を有する基板を得ること又は提供することで始まる。前記ステップS1の間、一連の処理は、前記メサ構造を備える前記基板からコンタミネーション、炭素、及び自然酸化物を除去するために行われる。実施形態では、前記コンタミネーション除去は、アセトンメタノールイソプロピルアルコール処理などの湿式化学処理で構成されている。別の実施形態では、前記コンタミネーション除去は、超音波振動下で実行され得る。
【0057】
実施形態によっては、炭素関連原子種は、湿式化学処理を使用するプロセスステップで前記メサ構造の表面から除去される。当該プロセスは、アセトンメタノールイソプロピルアルコール処理又は更にはRCA洗浄であり得る。RCA洗浄の詳細は、当該技術で十分に既知である。前記処理は、超音波振動下で行われ得る。別の実施形態では、前記炭素除去ステップは、酸素プラズマプロセスなどの乾式洗浄プロセスであり得る。例えば、下流のリモートプラズマ構成で生成される酸素プラズマは、プラズマチャンバ構成で使用される真空ポンプで容易に除去される揮発性炭素関連種を生成する際に効率的である。
【0058】
実施形態によっては、前記炭素除去ステップの後、自然酸化物が除去される。III-V族半導体の自然酸化物は、乏しい特性を示し、半導体エネルギーバンドギャップで高密度の欠陥及びこれに伴う電子状態を含むことに留意されたい。前記自然酸化物は、III族及びV族関連酸化物、ダングリングボンド、ならびにダイマーボンドの混合物を備える。典型的には、V族関連酸化物及びこれに伴う電子状態は、前記光電子デバイスの前記性能に有害であると考えられる。これらの酸化物の効果は、
図10と関連して以下に示す。
【0059】
前記自然酸化物除去の実施形態によっては、湿式化学処理が使用され得る。一例として、自然酸化物は、フッ化水素酸ベースの溶液、クエン酸ベースの溶液、又は硫酸ベースの溶液などの化学物質を使用して異なる材料から除去され得る。例えば、InGaAlP、GaAs、AlGaAs、InP、GaP、GaN、InGaNのような材料を含むメサ構造を洗浄するために、塩酸溶液が使用され得る。前記溶液のモル濃度は、材料によって0.1Mから12Mまで変わり得、溶媒は、脱イオン水、イソプロピルアルコール、又はメタノールであり得る。エッチング時間は、前記溶液の選択されたモル濃度及び前記メサ構造での材料組成によって1秒から5分まで変わり得る。当該化学作用を行った後のメサ表面の再酸化を回避するために、エッチングプロセスが不活性ガス雰囲気で行われ得るが、この環境での酸素の部分的含有量は、少なくとも1000ppm(parts-per-million)よりも低い。使用される場合もある他の湿式エッチングレシピは、フッ化水素酸溶液である。前記フッ化水素酸溶液は、脱イオン水を使用して希釈され、フッ化アンモニウムなどの緩衝剤を使用して緩衝され得る。前記湿式化学エッチング技術では、化学配合は、処理される材料によって変わり得ることに留意されたい。
【0060】
前記自然酸化物除去ステップの別の実施形態では、乾式洗浄プロセスが使用され得る。実施形態によっては、前記メサ構造の表面についての前記乾式自然酸化物除去プロセスは、例えば、真空条件で原子水素フラックスを使用して定められる。前記原子水素フラックスは、例えば、リモート電子サイクロトロン共鳴プラズマソースを使用して、又は水素サーマルクラッカーを使用することによって生成され得る。サーマルクラッカーは、分子水素を原子水素に分離し得る。更に別の乾式自然酸化物洗浄プロセスは、希ガスを使用したイオンスパッタリングである。
【0061】
代替的な実施形態によると、前記メサ構造の表面から前記自然酸化物除去を実行するための乾式プロセスは、ヘリウム、アルゴン、ネオン、又はキセノンなどの希ガス原子種を利用したスパッタリングなどのイオン衝撃を使用して実行される。この例では、イオンソースは、十分に低いイオンエネルギー(<200eV)であるが、前記メサ構造へのスパッタリングダメージ及びイオン注入を最小化するが自然酸化物のゆるやかな除去を可能にする高い電流密度を有する、エンドホールタイプグリッドレスイオンソースであり得る。更に別の例では、前記基板は、イオンエネルギーを増加させるためのイオン衝撃の間に負電圧にバイアスされ得る。
【0062】
実施形態によっては、(コンタミナント、自然酸化物、及び炭素を除去するための)上述のような前記洗浄の後、前記メサ構造は、ステップS2のための超高真空チャンバ条件に導入される。ここで、超高真空(Ultra-High-Vacuum:UHV)は、ベース圧力条件が1×10-7から1×10-11mbarまでの範囲内である真空を意味する。
【0063】
〔ステップS2〕
S2の第1のサブステップでは、前記光電子デバイスは、超高真空条件での脱ガスステップで高温に加熱されて、前の洗浄ステップから前記メサ構造の表面に残された揮発性化合物を実質的に蒸発させる。前記脱ガスステップの実施形態によっては、脱ガス温度は、前記メサ構造での材料によって、200℃から600℃まで変わり得る。正しい温度及び脱ガス時間が、洗浄されたメサ構造表面からの揮発種の除去を促進するために要求されることが理解されるであろう。実施形態によっては、温度は、ヒ素及びリンなどのV族原子が軽く除去されて、前記メサ構造の前記第1の表面での前記第1の原子層がIII族元素リッチになるように選択され得る。
【0064】
前記脱ガスステップが行われた後、前記メサ構造は、前記第1の終端酸化物層を形成するように処理される。前記メサ構造は、前記メサ構造の表面上に1つ以上の終端酸化物層を形成するように制御可能に酸化される。
【0065】
酸素ドーズ及び表面温度が正しく選択されると、酸素が表面に吸収され、良好な品質の終端酸化物層への表面構造の変換をもたらす。
【0066】
実際、実施形態によっては、酸化条件は、プロセスが、高温で表面から容易に除去される揮発性V族酸化物の生成を促進し、したがって、V族原子が不足した前記メサ構造の表面で第1の原子層を作り、前記表面を良好な品質のIII族関連酸化物に変換するように選択される。V族種の除去の効果は、例えば、反射高速電子線回折(Reflection High Energy Electron Diffraction:RHEED)、X線光電子分光法(XPS)を使用して、又は前記脱ガス処置の間に質量分析法による監視により監視され得る。当該処置の効果は、
図9と関連して以下でより詳細に説明する。
【0067】
実施形態によっては、金属堆積ステップは、前記終端酸化物層形成の前に、例えば、0.2~10モノレイヤ(Monolayer:ML)のIn、Ga、又はSn金属を前記メサ構造の表面上に蒸着させて、III族又はIV族リッチ表面層となることによって行われる。当該金属堆積を行うことによって、結果として得られる表面は、V族不足終端酸化物層をより形成しやすい。
【0068】
実施形態によっては、前記第1の終端酸化物層は、第1のタイプである。前記第1のタイプは、III族酸化物リッチで10nm未満の厚さを有する化合物半導体酸化物層である。より詳細は、
図9及び
図10と関連して以下で説明される。
【0069】
前記オプションの第2の終端酸化物層は、第2のタイプである。前記第2のタイプは、前記処理条件及び外形に依存する。前記第2のタイプは、III族酸化物リッチで10nm未満の厚さを有する化合物半導体酸化物層である。更に、前記構造の平面表面が(001)の結晶方位を有する場合、前記第2の終端酸化物層は、結晶性終端酸化物層であり得る。
【0070】
一例として、前記終端酸化物層は、真空条件で酸素フラックスを採用することによって製造され得る。前記第1の終端酸化物層及びオプションで第2の終端酸化物層は、(気体形態としての、O2もしくはO3としての、又は例えば、H2O2が存在している)酸素をメサ構造の加熱表面に施すことによって製造され得る。更に、この施された酸素は、高反応性原子酸素を生成するプラズマソースで生成され得る。当該プラズマソースは、処理されるサンプルから離れて取り付けられた電子サイクロトロン共鳴プラズマソースであり得る。酸素ドーズ及び表面温度が正しく選択されると、酸素が表面に吸収され、良好な品質の終端酸化物層への表面構造の変換をもたらす。実施形態によっては、酸化条件は、プロセスが、高揮発性で、高温で表面から容易に除去されるV族酸化物の生成を促進し、したがって、V族原子が不足した前記メサ構造の表面で一番上の原子層を作り、前記表面を良好な品質のIII族関連酸化物に変換するように選択される。複数の元素反応の使用を典型的に含み、新しい酸化物材料が表面上で成長する(既存の表面を変換するのではなく)より従来の酸化物層形成プロセスと比較して、典型的には、酸素のみが反応物として使用される。
【0071】
更なる例として、前記メサ構造の外表面は、酸化プロセスをサポートするために、少なくとも200℃で最大750℃の温度に加熱される。この温度は、外表面の材料組成によって選択される。この反応は、典型的には、真空条件で行われ、チャンババックグラウンド圧力は、典型的には、1×10-11から1×10-7mbarまでの範囲である。続いて、前記メサ構造の外表面は、前記選択された温度で、酸素原子、分子、オゾン、又はH2O2などの別の酸化剤のフラックスに曝される。前記酸化プロセスの間の酸素の部分的圧力は、処理された前記メサ構造の材料組成によって、5×10-8から5×10-3mbarまで変わり得る。更に、酸化時間は、5秒~60分で変わり得る。更に別の実施形態では、前記終端酸化物層は、真空条件下のUV光照射下で、酸化プロセスで形成される。UV照射は、前記酸化プロセスの間に、酸素分子についてのより高反応性一重項酸素量子状態の形成を促進し得る。更に、短い波長でのUV照射は、表面原子結合を壊し、したがって、表面反応を促進する効果を有する。表面反応促進波長の例は、172nmである。
【0072】
追加の実施形態又は代替的な実施形態では、インジウム原子が、表面を終端酸化物層に変換する前に前記メサ表面上に堆積される。あるいは、スズ原子が、表面を終端酸化物層に変換する前に前記メサ表面上に堆積され得る。更に別の例では、ガリウム原子が、表面を終端酸化物層に変換する前に前記メサ表面上に堆積される。洗浄されたメサ表面への金属原子の前記堆積は、前記メサ構造の表面で薄いV族不足層を生成して、前記終端酸化物層形成の間にIII族又は更にはIV族(Sn)関連酸化物の形成を促進する効果を有する。当該実施形態では、金属の堆積量は、0.2ML~10ML(モノレイヤ)である。当該金属層の堆積のために、エフュージョンセルなどのサーマルエバポレータ又は更には電子ビーム蒸着が使用され得る。
【0073】
前記終端酸化物層の生成のためのプロセス条件は、UHV条件下で生じ得、したがって、前記プロセスは、分子の平均自由行程が、それが行われるチャンバのサイズよりも大きい自由分子流領域下で生じ得る。分子は、チャンバ内の任意の表面で容易に衝突し得る。この特性は、前記プロセスが3D表面に十分に適合することを可能にする。
【0074】
前記終端酸化物層形成ステップの後、前記メサ構造は、好ましくは、冷却ステップにおいてUHV条件で100℃よりも低くまで冷却される。
【0075】
〔ステップS3〕
オプションのステップとして、前記終端酸化物層(複数可)の生成の後、前記光電子デバイスは、オーバーコーティングの堆積のために移動され得る。オーバーコーティングの堆積は、例えば、化学気相成長法(Chemical Vapour Deposition:CVD)、ALD、もしくはPECVDを使用することによって、又はスパッタリング堆積によって行われ得る。オーバーコーティング層の例は、Al2O3、HfO2、SiNx、又はSiO2である。好ましいプロセスは、前記コンタミネーション吸収を最小化するために真空移動ラインを介した移動を行うことであるが、空気による移動もまた、良好な結果を提供することが示されている。前記移動はまた、UHV条件下もしくは高真空条件下で生じ得るか、又は空気を介してもしくは不活性ガス環境下で移動され得る。
【0076】
製造の間の洗浄の効果はまた、前記終端酸化物層が十分に並べられているため、前記オーバーコーティング層が、前記オーバーコーティング層とその下の半導体との間で乱れた界面を生成することなく作られ得ることである。
【0077】
実施形態によっては、前記真空移動はまた、脱ガスステップを含む。前記オーバーコーティングの堆積の後、急速熱アニーリング(Rapid-Thermal-Annealing:RTA)などのポストアニーリング処理が、層品質を向上させるために行われ得る。
【0078】
したがって、実施形態によっては、前記方法は、前記終端酸化物層上にオーバーコーティングを堆積させることを更に含む。ここで、前記終端酸化物層は、前記メサ構造上に存在する任意の終端酸化物層を意味する。
【0079】
当該追加の実施形態では、更なる酸素曝露に耐え、少量の原子レベル欠陥に特徴がある、メサ表面上の構造(前記メサ構造の斜めの側表面)を含む、酸素の生成の利益が提供される。前記実施形態は、例えば、メサ構造として形成された量子井戸(Quantum Well:QW)半導体材料構造を備える光電子及び光起電力の用途に好適である。前記半導体デバイスは、典型的には、複数の半導体層の積層構成を備え、前記複数の半導体層は、電荷キャリアを収容するように動作可能である。
【0080】
前記終端酸化物層(複数可)の有益な効果及びその不動態効果は、前記デバイスの少数キャリア寿命を評価することによって測定され得る。この測定は、例えば、時間相関単一光子計数法を使用して、したがって、前記デバイスの時間分解フォトルミネッセンス特性に対処して行われ得る。キャリア寿命は、少数キャリアが再結合するのにかかる平均時間と定義される。高密度の欠陥を有する材料システムでの典型的な場合、少数キャリア寿命は、非輻射再結合によるキャリア損失により短い。終端酸化物層の効果は、
図6と関連して以下で示す。
【0081】
更に、前記終端酸化物層の効果はまた、フォトルミネッセンス(Photoluminescence:PL)分光法と特徴とし得る。この技術では、マイクロLED表面は、半導体材料バンドギャップよりも大きいエネルギーに対応する波長を有する外部レーザーによって励起される。励起の後、生成された電荷キャリアは再結合し、輻射再結合の場合、半導体材料が発光する。フォトルミネッセンスの強度は、とりわけ、例えば品質の乏しい酸化物によって生成される表面状態欠陥の量によって影響を受ける。高密度の欠陥の場合、SRH再結合が主体であり、材料によって発せられるフォトルミネッセンス強度は、一般に、低密度の欠陥を有する材料と比較して低い。一例を
図7で、以下で示す。終端酸化物層を有するデバイスで得られる放出レベルは、既知の不動態化技術で不動態化された同じマイクロLEDデバイスよりも数倍高い。
【0082】
前記製造プロセスでは、ステップS1、S2、及びS3は、典型的には、別々のチャンバで行われる。これらのチャンバ及び他のチャンバは、ゲートバルブで互いに分離され得、それは、開位置のとき、それを介した材料の移動を可能にし得る。更に、使用する機器は、圧力及び温度ゲージ、ヒーター、真空ポンプ、プラズマソース、プラズマガン、スパッタリングヘッド、ガスライン、リークバルブなどの、プロセスS1、S2、及びS3の異なるステップを監視及び生成するための異なる構成要素を有する。
【0083】
本開示によれば、メサ構造を形成するように処理される複数の半導体層の積層構成を備える半導体デバイスを不動態化する方法が提供される。前記複数の半導体層は、電荷キャリアを収容するように動作可能である。前記方法は、曝された表面から炭素及びコンタミナントをまず洗浄し、次に、(悪い電気的特性を保持する)前記自然酸化物を除去し、その後、3D形状に適合可能であるプロセスで、UHV条件、基板温度、時間、ガスの部分的圧力などの制御された条件でのプロセスによって前記終端酸化物層を形成することによって、前記メサ構造を処理することで構成されている。
【0084】
実施形態では、InAsを含む前記メサ構造の前記第1の表面を有するメサ構造を含んだ基板が提供された。前記メサ構造の表面は、溶媒でコンタミネーション及び炭素を洗浄された。使用された溶媒は、アセトン、メタノール、及びイソプロピルアルコールであった。サンプルが、1分間、各溶媒に浸けられた。続いて、前記メサ構造は、アルゴンイオンスパッタリングで自然酸化物を洗浄された。イオンガンフィラメント電流は15mA、イオンガン電圧は2kV、アルゴン部分的圧力は3×10-6mbar、スパッタリング時間は15分であった。次いで、前記メサ構造は、バックグラウンド圧力1×10-9mbarを有するUHVチャンバに導入された。前記メサ構造は、30分間450℃にアニーリングしてUHV条件で脱ガス化された。酸化の準備ができている得られた表面は、低速電子線回折測定下で(4×2)再構築を示した。分子酸素ガスは、酸化のための反応物として使用された。酸素ガス部分的圧力は3×10-6mbarで、酸化時間は15分であった。結果は、90%のIII族酸化物及び10%のV族酸化物を含む第1の終端酸化物層であった。
【0085】
本開示の追加の態様、利点、特徴、及び目的は、添付の請求項と共に解釈される例示的な実施形態の図面及び詳細説明から明確にされるであろう。本開示の特徴は、添付の請求項によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組合せで組み合わされることが理解されるであろう。
【図面の説明】
【0086】
図1Aは、実施形態に係る、上から見た光電子デバイス100の概略図である。
図1Bは、光電子デバイス100の断面A-Aの図である。
図1Aの光電子デバイス100は、9個のメサ構造120を備える。各メサ構造は、基板層110の上、すなわち、その第1の表面平面上に配置されている。基板層110の第1の表面平面112は、
図1Bに示されている。第1のタイプの第1の終端酸化物層130は、メサ構造120の第1の表面上に配置されている。
図1Aに示すように、第1の終端酸化物層130は、すべての側面方向からメサ構造を取り囲んでいる。第2の終端酸化物層132は、メサ構造120の第2の表面上に配置されている。第2の酸化物層132は、基板層110の表面平面112に対して平行である。更に、第3の終端酸化物層134は、メサ構造の間で基板層の上に形成されている。
【0087】
図2A、
図2B、及び
図2Cは、更なる実施形態に係る光電子デバイスの概略図である。
図2Aでは、光電子デバイス200は、基板210の上、すなわち、その第1の表面平面上に配置されたメサ構造220を含む。第1の表面平面212は、第2の表面平面214に対して反対でありかつ平行である。メサ構造220は、基板の上でエピタキシャル成長した第1の層202(光電子デバイスがLED又はマイクロLEDである場合、バッファ層)と、第1の層の上で成長した第2の層204と、第2の層の上で成長した活性領域206と、活性領域の上で成長した第3の層208と、を備える。第1のタイプの第1の終端酸化物層230は、メサ構造220の第1の表面上に配置されている。第2のタイプの第2の終端酸化物層232は、メサ構造220の第2の表面上に配置されている。第1の表面の例示的な拡大図もまた
図2Aで提供されている。第1の終端酸化物層230の厚さが、メサ構造の層の材料によって変化していることが分かる。例示的な拡大図で分かるように、層206は、その側面で終端酸化物層の一部240を備え、その厚さは、エピタキシャル層204上に配置された一部242の厚さと異なっている。層208は、その側面で終端酸化物層の一部244を備え、その厚さは、一部240の厚さと同様である。更に、接点222が第3の層208の上に形成されており、第3の終端酸化物層234が基板層の表面上に配置されている。
【0088】
図2Bは、別の実施形態に係る別の光電子デバイス250を示す。この実施形態では、メサ構造220は、基板210上に形成されているが、その第1の表面のみが、終端酸化物層230を備えるように処理されている。
図2Cでは、更に別の光電子デバイス260が示されており、メサ構造220と、第1の終端酸化物層230と、第2の終端酸化物層232と、第3の終端酸化物層234と、を備える。この実施形態では、メサ構造は、第1の層202が基板層210上に残される、すなわち、エッチングされないように製造されている。
【0089】
図3Aは、メサ構造表面上に自然酸化物を有する光電子デバイス300の概略図である。メサ構造320は、基板310の上に配置されている。メサ構造320は、例えば、メサ構造320の上でリソグラフィ技術を使用して製造された接触層322と、メサ構造320の結晶性半導体材料360の表面上の自然酸化物層370と、を備える。自然酸化物層370もまた
図3Aの部分拡大図で示されている。
【0090】
図3Bは、自然酸化物の上にオーバーコーティング層を有する光電子デバイス300の概略図である。メサ構造320は、基板310の上に配置されている。メサ構造320は、メサ構造320の結晶性半導体材料360の表面上の自然酸化物層370と、自然酸化物層370の上に配置された誘電体層390と、を備える。誘電体層390もまた
図3Bの部分拡大図で示されている。したがって、
図3Bは、既知の方法に従って製造された光電子デバイスを示し、
図3Bの拡大図により、界面で酸化物が並んでいないことが分かる。
【0091】
図3Cは、本開示の第3の実施形態に係る、終端酸化物層を有する光電子デバイス300の概略図である。メサ構造320は、基板310の上に配置されている。メサ構造320は、例えば、メサ構造320の上でリソグラフィ技術を使用して製造された接触層322を備える。更に、第1のタイプの第1の終端酸化物層330及び第2のタイプの第2の終端酸化物層332が、メサ構造320の結晶性半導体材料360の表面上に配置されており、第3の終端酸化物層334が、基板層310の表面上に配置されている。第1の終端酸化物層330もまた
図3Cの部分拡大図で示されており、拡大図は、酸化物がどれくらい十分に界面上に並べられているかを示す。これは、どのように、最終製品で自然酸化物が終端酸化物層の形成の前に少なくとも主に除去されていることを示すことができるかを概略的に示す。
【0092】
図3Dは、本開示の第4の実施形態に係る、終端酸化物層及び誘電オーバーコーティング層を有する光電子デバイス300の概略図である。メサ構造320は、基板310の上に配置されている。メサ構造320は、例えば、メサ構造320の上でリソグラフィ技術を使用して製造された接触層322と、メサ構造320の結晶性半導体材料360の表面上に配置された、第1のタイプの第1の終端酸化物層330及び第2のタイプの第2の終端酸化物層332と、を備える。第3の終端酸化物層334が、基板層310の表面上に配置されている。この図では、誘電オーバーコーティング340が、終端酸化物層330、332、及び334の上に配置されている。これらもまた
図3Dの部分拡大図で示されている。
【0093】
図4は、本開示の実施形態に係るプロセスフローの図である。プロセスフローは、メインプロセスステップS1(準備)、S2(終端酸化物層の形成)、及びS3(オーバーコーティング)を記載している。プロセスは、基板上に形成されたパターンメサ構造を有する基板を提供すること400で始まる。ステップS1の間、一連の処理402、404、及び406は、コンタミネーション、炭素、及び自然酸化物を除去するために行われる。この実施形態では、コンタミネーション除去402は、アセトンメタノールIPA処理などの湿式化学処理で構成されている。炭素除去プロセス404の実施形態によっては、アセトンメタノールイソプロピルアルコール処理又は更にはRCA洗浄などの湿式化学処理が使用される。別の実施形態では、炭素除去ステップ404は、酸素プラズマプロセスなどの乾式洗浄プロセスを使用して行われる。炭素除去ステップ404の後、自然酸化物がステップ406で除去される。自然酸化物除去406の実施形態によっては、塩酸又はフッ化水素酸ベースの処理などの湿式化学処理410が使用される。自然酸化物除去ステップ406の別の実施形態では、原子状水素処理又は希ガスを使用したイオンスパッタリングなどの乾式洗浄プロセス408が使用される。自然酸化物除去ステップ406の後、メサ構造を有する洗浄されたパターン基板は、S1のステップ412で超高真空チャンバに導入される。次いで、洗浄されたメサ構造の脱ガスステップ414が、200℃~600℃でメサ構造をアニーリングすることによって制御された方法で行われる。脱ガスステップ414の後、実施形態によっては、金属堆積ステップ416が、0.2~10MLのIn、Ga、又はSn金属をメサ構造の表面上に蒸着させて、III族又はIV族リッチ表面層となることによって行われる。終端酸化物層は、脱ガスステップ414の後、又は金属堆積ステップ416の後にステップ418で配置される。実施形態によっては、終端酸化物層は、(気体形態としての、O
2もしくはO
3としての、又は例えば、H
2O
2が存在している)酸素をメサ構造の加熱表面に施すことによって、ステップ418で配置される。実施形態によっては、終端酸化物層形成ステップ418の後、メサ構造は、酸化物形成後の高温アニールステップ420を受け得る。更に、メサ構造は、UV活性化ステップ422を受け得る。ステップ424で、メサ構造は、超高真空条件で100℃よりも低くまで冷却される。ステップ424でのメサ構造の冷却の後、オーバーコーティング機器への移動が、S3のステップ426で行われる。移動は、ステップ428で超高真空条件下もしくは高真空条件下で生じ得るか、又は空気を介してもしくは不活性ガス環境下で移動され得る。実施形態によっては、UHV移動はまた、428で脱ガスステップを含む。続いて、誘電オーバーコーティングが、例えば、原子層堆積、プラズマ化学気相堆積を使用して、又はスパッタリング堆積によって、ステップ430で堆積される。誘電オーバーコーティング堆積の後、ポストアニーリング処理が、ステップ432で行われ得る。
【0094】
図5は、本開示の実施形態に係る処理機器の概略図である。処理機器は、グローブボックス510を備え、ここで、湿式準備プロセスが、不活性制御雰囲気、すなわち、100ppm未満の酸素濃度の窒素雰囲気下で行われ得る。グローブボックス510は、移動チャンバ520に接続されており、ここで、グローブボックスから機器の異なる部分にデバイスを移動させるための移動機構、例えば、ロボット又は別の例では、線形移動ロッドシステムが取り付けられている。移動チャンバは、チャンバ間の要求される真空レベルでサンプルが移動することを可能にする。移動チャンバは、移動チャンバ520及び酸化チャンバ540を接続するバッファチャンバ530に接続されており、それにより、終端酸化物層形成チャンバ540へのサンプルの移動のために、必要な高真空レベルを達成することが可能になる。バッファチャンバの理由は、異なるステップに要求される異なる圧力レベルを補償するためであり、例えば、酸化チャンバ540での圧力は、10
-10mbarのレベルであり得るが、移動ライン520では、例えば、10
-6mbarであり得る。他のチャンバよりも非常に小さい体積であるバッファチャンバ530で圧力を適用することによって、処理時間は短縮される。移動チャンバ520はまた、オーバーコーティング堆積チャンバ550に接続されており、ここで、誘電材料の堆積が行われ得る。オーバーコーティングチャンバ550は、例えば、原子層堆積チャンバ又はプラズマ化学気相堆積チャンバであり得る。
【0095】
図6は、マイクロLEDメサ構造表面で自然酸化物層を有する標準的なマイクロLEDデバイスから時間相関単一光子計数法を使用して測定された電荷キャリア寿命減衰曲線、及びマイクロLEDメサ構造表面で終端酸化物層を有するマイクロLEDデバイスからの寿命減衰曲線の図である。両方のデバイスは、5μmよりも小さいサイズのInGaAlPベースのマイクロLEDアレイに基づいている。キャリア寿命は、少数キャリアが再結合するのにかかる平均時間と定義される。高密度の欠陥を有する材料システムでの典型的な場合、少数キャリア寿命は、非輻射再結合によるキャリア損失により短い。
図6では、終端酸化物層を有するデバイスは、キャリア寿命が実質的に向上していることを示す。図では、(nsでの)寿命が横座標上に示されており、(絶対単位での)計数が縦座標上に示されている。三角形は、標準的なマイクロLEDについての結果(<τ>約2.8ns)を示しており、円形は、本発明に係る終端酸化物層を備えるマイクロLEDについての結果(<τ>約3.5ns)を示している。
【0096】
図7は、マイクロLEDメサ構造表面で自然酸化物層を有する標準的なマイクロLEDデバイスからのフォトルミネッセンススペクトル(最も低い曲線)、マイクロLEDメサ構造表面が従来技術を使用して不動態化されたマイクロLEDデバイスからのフォトルミネッセンススペクトル(中間の曲線)、及び本開示の実施形態に係るマイクロLEDメサ構造表面で終端酸化物層を有するマイクロLEDデバイスからのフォトルミネッセンススペクトル(最も上の曲線)の図である。(nmでの)波長は、横座標上に示されており、(計数での)フォトルミネッセンス強度は、縦座標上に示されている。デバイスは、10μmのサイズである、InGaAlP材料に基づくマイクロLEDであり、最も低い曲線、中間の曲線、及び最も上の曲線についての参照は、グラフの中央部で見られる。
【0097】
図8は、実施形態に係る垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)構造800の図である。複数の半導体層812及び814は、基板810の上に配置されている。この例では、半導体層812は、底部の分布ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector:DBR)に備わる層であり、層814は、n接触層である。メサ構造は、n接触層814の上に配置されている。この例では、メサ構造は、nタイプDBR826、光マイクロキャビティ824、酸化物開口層816、pタイプDBR822、及び上部のpタイプ接触層818を構成する複数の層を備える。この例では、上部の誘電DBR828は、誘電材料の複数の層によって形成されている。第1のタイプの第1の終端酸化物層830は、メサ構造820の第1の表面上に配置されている。第2のタイプの第2の終端酸化物層832は、メサ構造の第2の表面上に配置されている。第3の終端酸化物層840は、n接触層814の上に配置されている。
【0098】
当該終端酸化物層によって、メサ構造として形成された複数の半導体層の積層構成内へのキャリア閉じ込めを向上させるために半導体デバイスについてのエネルギー障壁が増加される。終端酸化物層は、不動態化効果を提供して、822、826、816、818、及び824に存在する表面の制御されていない酸化を防ぐ。これらは、密閉パッケージに当該デバイスを囲う必要性をなくし得る。
【0099】
図9Aは、上記で説明したように洗浄されたきれいなInGaAlP(001)材料表面からの反射高速電子線回折パターンの図である。回折パターンは、(2×4)表面対称(別の方位は
示されていない)の表面の
長距離秩序(Long Range Order, LRO)を示し、表面が自然酸化物及び他のコンタミナントをうまく洗浄されており、表面が一例としてきれいな(2×4)表面対称を形成するように再構築されていることを示す。
【0100】
図9Bは、本開示に係る、結晶性の終端酸化物層を有するInGaAlP(001)材料表面からの反射高速電子線回折パターンの図である。回折パターンは、平面(001)表面で(3×1)表面対称(別の方位は図示せず)の表面の長距離秩序を示し、すなわち、終端酸化物層は、結晶性である。
【0101】
図10Aは、自然酸化物層を有するInGaAlP材料ベースのメサ構造からのGa2p X線光電子(XPS)スペクトル放出スペクトルの図である。逆畳み込み放出スペクトルは、Ga-O結合の成分1010特性を示す。更に、成分1012は、ホスト半導体スタックでのGaの結合環境に特有である。
【0102】
図10Bは、本開示の実施形態に係る、終端酸化物層を有するInGaAlP材料ベースのメサ構造からのGa2p X線光電子放出スペクトルの図である。逆畳み込み放出スペクトルは、自然酸化物層の場合と比較してはるかに小さいGa-O結合に特有の成分1020を示す。更に、成分1022は、ホスト半導体スタックでのGaの結合環境に特有である。
【0103】
図10Cは、自然酸化物層を有するInGaAlP材料ベースのメサ構造からのP2p X線光電子放出スペクトルの図である。逆畳み込み放出スペクトルは、ホスト半導体材料内のP結合に特有の弱い成分1030、及び酸化されたリンを示す強い成分1032を示す。
【0104】
図10Dは、一実施形態に係る、終端酸化物層を有するInGaAlP材料ベースのメサ構造からのP2p X線光電子放出スペクトルの図である。逆畳み込み放出スペクトルは、ホスト半導体材料内のP結合に特有の明確な成分1040を示す。リン酸化物に特有の成分1042は、XPS機器の検出限界よりも下である。
【0105】
図11は、一実施形態に係る、
図1A及び
図1Bに示すものと同様の光電子デバイスの側面図の概略図である。同図は、メサ構造103の第1の表面101と基板層107の第1の表面平面105との間の角度αを示す。参照番号109の線は、2つの隣接するメサ構造の中心間の距離を示す。
【0106】
図12は、本開示の第14の実施形態に係る光電子デバイスの概略図である。この実施形態では、メサ構造123の第1の表面は、2つの部分、すなわち、互いに対してある角度で配置された121a及び121bにある。角度αは、同図に示すように、すなわち、メサ構造の活性領域125に沿って測定される。
【0107】
図13は、本開示の第15の実施形態に係る光電子デバイスの概略図である。この実施形態では、メサ構造133の第1の表面131は、部分的に球形であり、角度αは、同図に示すように、すなわち、メサ構造の活性領域135に沿って測定される。
【0108】
添付の請求項によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、前述の本開示の実施形態に対する修正が可能である。本開示を説明及び請求するために使用される、「含む」、「備える」、「組み込む」、「有する」、「である」などの表現は、非排他的な方式で解釈されることが意図され、すなわち、明示的に説明されていない、部材、構成要素、又は要素が存在することも可能である。単数での言及は、その複数のものに関すると解釈されるものとする。