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特許7503085ラスターデータを含む図面データを管理するための装置、方法及びそのためのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ラスターデータを含む図面データを管理するための装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20240612BHJP
   G06V 30/00 20220101ALI20240612BHJP
【FI】
G06F30/10 200
G06V30/00 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022035742
(22)【出願日】2022-03-08
(65)【公開番号】P2023131065
(43)【公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-04-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517404991
【氏名又は名称】キャディ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003605
【氏名又は名称】弁理士法人六本木通り特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇志郎
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-041986(JP,A)
【文献】特開2009-276869(JP,A)
【文献】特開平09-128429(JP,A)
【文献】特開2008-134718(JP,A)
【文献】特開2001-117958(JP,A)
【文献】特開平09-102037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
G06V 30/00
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラスターデータを含む図面データを管理するための方法であって、
コンピュータが、前記図面データをベクター化してベクターデータを生成するステップと、
前記コンピュータが、前記ベクターデータに含まれる第1及び第2のノードに関連づけられた寸法線データを生成するステップと、
前記コンピュータが、前記寸法線データにより表される寸法線に近接する近接領域に対応する前記図面データ内の対応領域に対して文字認識を施すステップと、
前記コンピュータが、前記文字認識により得られた文字を前記寸法線データに関連づけて寸法値として記憶するステップと
前記コンピュータが、前記寸法値を用いて、前記図面データにより表される図面における1mm当たりのピクセル数を算出するステップと
を含む。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記寸法線データを生成するステップは、
前記図面データから複数の先端頂点記号を検出するステップと、
検出された前記複数の先端頂点記号のうちの少なくとも一対の先端頂点記号を判定するステップと、
前記一対の先端頂点記号の第1及び第2の先端頂点に対応する前記ベクターデータ内の第1及び第2のノードを特定するステップと
を含む。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、
前記先端頂点記号は、矢印である。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、
前記近接領域又は前記対応領域の向きを判定するステップをさらに含む。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、
前記近接領域は、前記寸法線データにより表される寸法線に近接する1又は複数の連結されたエッジを含む領域である。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記近接領域は、前記第1及び第2のノードを結ぶエッジ又は前記エッジの一方のノードを越えて延長した線分に垂直な方向の所定範囲内に位置する1又は複数の連結されたエッジを含む領域である。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の方法であって、
前記ベクター化の前に前記図面データに対する細線化処理を施すステップをさらに含む。
【請求項8】
コンピュータに、ラスターデータを含む図面データを管理するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
前記図面データをベクター化してベクターデータを生成するステップと、
前記ベクターデータに含まれる第1及び第2のノードに関連づけられた寸法線データを生成するステップと、
前記寸法線データにより表される寸法線に近接する近接領域に対応する前記図面データ内の対応領域に対して文字認識を施すステップと、
前記文字認識により得られた文字を前記寸法線データに関連づけて寸法値として記憶するステップと
前記寸法値を用いて、前記図面データにより表される図面における1mm当たりのピクセル数を算出するステップと
を含む。
【請求項9】
ラスターデータを含む図面データを管理するための装置であって、
前記図面データをベクター化してベクターデータ及び前記ベクターデータに含まれる第1及び第2のノードに関連づけられた寸法線データを生成し、
前記寸法線データにより表される寸法線に近接する近接領域に対応する前記図面データ内の対応領域に対して文字認識を施し、
前記文字認識により得られた文字を前記寸法線データに関連づけて寸法値として記憶し、
前記寸法値を用いて、前記図面データにより表される図面における1mm当たりのピクセル数を算出するように構成されている
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラスターデータを含む図面データを管理するための装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車1台に約3万点の部品が存在するように、製造業において、必要となる部品は多岐にわたる。製造業者は一般に、こうした多品種の部品をすべて自社で加工することはせず、外部の加工業者への製造委託を利用している。
【0003】
製造委託に当たっては、製造業者は、委託する部品を表す部品図面を、見積、発注等のために、電子媒体又は当該電子媒体から印刷した紙媒体により加工業者に提供するところ、主にPDF形式のデータとして当該電子媒体は管理されている。また、紙媒体で部品図面を受け取った加工業者は、これをスキャンして主にPDF形式のデータとして管理する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PDF形式の図面データには、レイヤーを有するものとレイヤーを有しないものがあり、前者においては、当該図面データにより表される図面内の線、文字及び記号の一部を、それぞれの種類に応じたレイヤー内のデータにより表すことで区別可能な場合がある。
【0005】
しかしながら、上述のように管理されるPDF形式の図面データは、たとえば、印刷して手書きで文字又は記号が加えられた後にスキャンすることで得られるものも少なくなく、レイヤーを有しないことが多い。そのため、図面内の線、文字及び記号の種類に関する情報は保持されていないことが多い。
【0006】
製造業において、部品を表す図面データには、形状及び寸法のほか、部品名、図番、製造番号、材質、表面処理等に関するデータが含まれ、たとえば、ある数字が何を表す数字であるのかを認識することができれば、図面データを管理するためのソフトウェアにおいて、検索可能性の向上、類似図面抽出の容易化等、さまざまな利点が期待される。特に寸法の値を他の数値から区別することができれば、利点は大きい。
【0007】
PDF形式の画像データを例に説明したが、本発明は、部品を表す図面データのうち、ラスターデータを含むものであれば、広く適用可能であり、さらにレイヤーを有しないものに好適である。たとえば、JPG形式、TIFF形式等のデータ形式が挙げられる。ラスターデータとは、複数のピクセルを含むデータである。JPG形式又はTIFF形式の画像データは一般にラスターデータのみを含むが、PDF形式の画像データはラスターデータに加えてベクターデータ又はテキストデータを含むことがある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ラスターデータを含む図面データを管理するための装置、方法及びそのためのプログラムにおいて、当該図面データにより表される図面内の寸法の値を認識可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、ラスターデータを含む図面データを管理するための方法であって、前記図面データをベクター化してベクターデータを生成するステップと、前記ベクターデータに含まれる第1及び第2のノードに関連づけられた寸法線データを生成するステップと、前記寸法線データにより表される寸法線に近接する近接領域に対応する前記図面データ内の対応領域に対して文字認識を施すステップと、前記文字認識により得られた文字を前記寸法線データに関連づけて寸法値として記憶するステップとを含む。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の方法であって、前記寸法線データを生成するステップは、前記図面データから複数の先端頂点記号を検出するステップと、検出された前記複数の先端頂点記号のうちの少なくとも一対の先端頂点記号を判定するステップと、前記一対の先端頂点記号の第1及び第2の先端頂点に対応する前記ベクターデータ内の第1及び第2のノードを特定するステップとを含む。
【0011】
また、本発明の第3の態様は、第2の態様の方法であって、前記先端頂点記号は、矢印である。
【0012】
また、本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様の方法であって、前記近接領域又は前記対応領域の向きを判定するステップをさらに含む。
【0013】
また、本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれかの態様の方法であって、前記近接領域は、前記寸法線データにより表される寸法線に近接する1又は複数の連結されたエッジを含む領域である。
【0014】
また、本発明の第6の態様は、第5の態様の方法であって、前記近接領域は、前記第1及び第2のノードを結ぶエッジ又は前記エッジの一方のノードを越えて延長した線分に垂直な方向の所定範囲内に位置する1又は複数の連結されたエッジを含む領域である。
【0015】
また、本発明の第7の態様は、第1から第6のいずれかの態様の方法であって、前記寸法値を用いて、前記図面データにより表される図面における1mm当たりのピクセル数を算出するステップをさらに含む。
【0016】
また、本発明の第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様の方法であって、前記ベクター化の前に前記図面データに対する細線化処理を施すステップをさらに含む。
【0017】
また、本発明の第9の態様は、コンピュータに、ラスターデータを含む図面データを管理するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、前記図面データをベクター化してベクターデータを生成するステップと、前記ベクターデータに含まれる第1及び第2のノードに関連づけられた寸法線データを生成するステップと、前記寸法線データにより表される寸法線に近接する近接領域に対応する前記図面データ内の対応領域に対して文字認識を施すステップと、前記文字認識により得られた文字を前記寸法線データに関連づけて寸法値として記憶するステップとを含む。
【0018】
また、本発明の第10の態様は、ラスターデータを含む図面データを管理するための装置であって、前記図面データをベクター化してベクターデータ及び前記ベクターデータに含まれる第1及び第2のノードに関連づけられた寸法線データを生成し、前記寸法線データにより表される寸法線に近接する近接領域に対応する前記図面データ内の対応領域に対して文字認識を施し、前記文字認識により得られた文字を前記寸法線データに関連づけて寸法値として記憶する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、 ラスターデータを含む図面データをベクター化して、ベクターデータに含まれる第1及び第2のノードに関連づけられた寸法線データを生成し、当該寸法線データにより表される寸法線に近接する近接領域に対応する図面データ内の対応領域に対して文字認識を施して、得られた文字を当該寸法線データに関連づけて寸法値として記憶することによって、当該図面データにより表される図面内の寸法の値を認識可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態にかかる図面データを管理するための装置を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態にかかる図面データを管理するための方法の流れを示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態にかかる図面データにより表示される図面の一例の部分拡大図を示す図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる寸法線データの一例を示す図である。
図5図3の図面に示す寸法線に近接するものとして特定された複数の連結されたエッジを当該図面上に描画した図である。
図6】本発明の一実施形態にかかる寸法線データに寸法の値を追加した一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態にかかる寸法線の検出方法の流れを示す図である。
図8図3の図面に含まれる複数の矢印を当該図面上に強調して描画した図である。
図9図3の図面に含まれる矢印を記述したデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態にかかる図面データを管理するための装置を示す。装置100は、製造業者が用いる製造業者端末110とインターネット等のIPネットワークを介して通信し、図面データの管理を可能とする。また、装置100は、加工業者が用いる加工業者端末120とも同様に通信し、加工業者に対しても図面管理サービスを提供可能である。当該図面管理サービスのユーザーは、特に限定されないが、本実施形態においては、製造業者が当該図面管理サービスを用いる例を説明する。
【0023】
装置100は、通信インターフェースなどの通信部101と、プロセッサ、CPU等の処理部102と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部103とを備え、各処理を行うためのプログラムを実行することによって構成することができる。装置100は、1又は複数の装置、コンピュータないしサーバを含むことがある。また、当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部103又は装置100からIPネットワークを介してアクセス可能なデータベース104等の記憶装置又は記憶媒体に記憶しておき、処理部102において実行することができる。以下で記憶部103に記憶されるものとして記述されるデータはデータベース104に記憶してもよく、またその逆も同様である。
【0024】
まず、装置100は、ラスター形式の図面データを取得する(S201)。たとえば、当該図面データは、製造業者の購買担当が装置100により提供されるウェブページからアップロードして登録することによって記憶部103に記憶されたものであり、これを読み出すことで取得される。図3は、図面データにより表示される図面の一例の部分拡大図である。
【0025】
次に、装置100は、当該図面データをベクター化してベクターデータに変換する(S202)。本明細書において「ベクター化」とは、複数の点(以下「ノード」とも呼ぶ。)と、当該複数の点のうちの少なくとも2つの点をそれぞれ繋ぐ1又は複数の線分(以下「エッジ」とも呼ぶ。)を表すデータに変換することである。得られたベクターデータは、当該図面データとは別のファイルとしても、当該図面データを含むファイルにレイヤーを加えて、当該図面データとは異なるレイヤー内のデータとしてもよい。
【0026】
当該ベクターデータにおいて、各エッジは一例として以下のように表すことができる。
[
[x1, y1],
[x2, y2]
]
ここでは、図面データによる表される図面の左下を原点とし、横方向にx軸、縦方向にy軸をとり、[x,y]という形式でエッジの各ノードを表している。図3に描画されている線分は、ベクターデータとしては必ずしも単一のエッジではなく、複数のエッジに変換されることがある。
【0027】
当該図面データに対し、ベクター化の前に細線化を実行してもよい。一例として、当該図面データに含まれるラスターデータの各ピクセルを必要に応じて二値化又は多値化し、同一の値を取る連続領域の幅を細くすることによって、ノード及びエッジの精度を上げることができる。
【0028】
次いで、装置100は、当該ベクターデータに含まれる第1及び第2のノードに関連づけられた寸法線データを生成する(S203)。図4に、本発明の一実施形態にかかる寸法線データの一例を示す。当該寸法線データは、図3に示される直径24mmの寸法線を表すJSON形式のデータであり、「Dimension」は寸法線データであることを表し、キー“dimension_chains”の値として寸法線に関する情報が記述されている。キー“projection_lines”の値には、当該寸法線に関連づけられた2つの寸法補助線が記述されている。キー“dimension_chains”の値に、検出された寸法線の一方の先端頂点(apex)である第1のノード“p1”の座標及び他方の先端頂点である第2のノード“p2”の座標が含まれる。キー“arrow_heads”は寸法線が有する第1及び第2の矢印の向きを表している。寸法線の検出の詳細は後述する。
【0029】
その後、装置100は、当該ベクターデータから、寸法線データにより表される寸法線に近接する1又は複数の連結されたエッジを特定する(S204)。より具体的には、寸法線データが有する第1及び第2のノードを結ぶエッジに交差するエッジを含むもの、寸法線データが有する第1及び第2のノードを結ぶエッジに近すぎるノード又はエッジを含むもの(たとえば、3ピクセル以内)等は、当該寸法線に近接する、1又は複数の連結されたエッジには含まないことが好ましい。
【0030】
そして、装置100は、特定された1又は複数の連結されたエッジを含む近接領域に対応する図面データ内の対応領域に対して文字認識を施し(S205)、認識された文字を寸法として寸法線データに関連づけて記憶する(S206)。文字認識を施す際に文字の方向が既知であると認識精度を上げることができるため、当該対応領域の向きを判定してもよい。一例として、第1及び第2のノードを結ぶエッジの方向を当該近接領域又は当該対応領域の向きとして判定することができる。また、別の例として、当該近接領域又は当該対応領域の長辺の方向を当該近接領域又は当該対応領域の方向として判定することもできる。1又は複数の連結されたエッジの特定の詳細は後述する。ここで「連結」とは、エッジ間で共通のノードを有することをいう。
【0031】
寸法線に近接する連結されたエッジは寸法を表す可能性が高いため、このようにして、図面データに含まれる寸法の値を認識することができる。ここでは、1又は複数の連結されたエッジを特定し、当該1又は複数の連結されたエッジを含む領域に対応する図面データ内の対応領域に着目したが、寸法線データにより表される寸法線に近接する近接領域に対応する図面データ内の対応領域に着目しても、当該対応領域内の文字は寸法の値を表す可能性が低くなく、図面データに含まれる寸法の値を認識し得る。
【0032】
これに限らないが、図面データに含まれる寸法の値を記憶することができると、装置100は、たとえば、装置100により提供される図面管理サービスのユーザーに対して、部品に含まれる最大寸法、最小寸法及び寸法範囲の少なくともいずれかを指定して図面データの検索を可能にすることができる。
【0033】
図5は、検出された寸法線に近接するものとして特定された複数の連結されたエッジを図面上に描画したものであり、領域500は、これらを含む領域として特定されている。図6は、特定された1又は複数の連結されたエッジを含む領域の4つの頂点座標及び当該領域に対して文字認識した結果の文字並びに当該文字が表す数値をキー“dimensions”の値としてキー“dimension_chains”の値に追加したものである。キー“pixel_per_millimeter”は、寸法線のピクセル数と当該寸法線の寸法値からこの図面データにおいて1mmが何ピクセルに対応するかを算出した結果を記述している。例えば、生成された複数の寸法線データのそれぞれにつき、当該寸法線データに関連づけられた寸法値から1mm当たりのピクセル数の値を算出し、複数得られた算出結果列の中央値をキー”pixel_per_millimeter”の値としてもよい。この値を用いれば、部品中の任意の箇所の寸法を算出可能となる。
【0034】
寸法線の検出の詳細
図7に、本発明の一実施形態にかかる寸法線の検出方法の流れを示す。まず、装置100は、図面データから、複数の矢印を画像処理によるパターン認識によって検出する(S701)。図8は、検出された複数の矢印を図面上に強調して描画したものである。図9に、検出された矢印を記述したデータの一例を示す。当該データは、JSON形式で記述されており、キー“head”の値が当該矢印の頂点座標を表し、キー“dir”の値が当該矢印の向きを表している。当該矢印は、直径24mmの寸法線の上方の矢印に対応する。
【0035】
そして、装置100は、検出された複数の矢印のうちの少なくとも一対の矢印を判定し(S702)、当該一対の矢印が有する第1及び第2の矢印の第1及び第2の先端頂点に対応するベクターデータ内の第1及び第2のノードを特定する(S703)。先端頂点に対応する第1及び第2のノードが特定されれば、装置100は、当該第1及び第2のノードに関連づけられた寸法線データを生成することができる。
【0036】
図面データについて、ベクターデータと同一の座標系を定めることによって、第1及び第2の先端頂点の座標に対応する第1及び第2のノードを特定することができる。この際、判定された一対の矢印の第1及び第2の先端頂点の座標と完全に一致する座標には必ずしもノードが存在しないものの、例として、第1及び第2の先端頂点に近接又は最近接のノードをそれぞれ第1及び第2のノードとして特定することができる。また、ベクターデータについて定めた座標系と図面データについて定めた座標系は完全に同一であることは必要ではなく、互いに座標点を変換可能であればよい。
【0037】
寸法線の先端頂点は、黒点等の矢印以外の記号によって表されることがあり、この場合、当該代用記号が画像処理によって検出される。図4に示したキー“arrow_heads”の記述は、当該代替記号に合わせて適宜変更される。本明細書における矢印の例による記述は、矢印を含む先端頂点記号一般について同様に当てはまる。
【0038】
1又は複数の連結されたエッジの特定の詳細
上述の説明で着目した直径24mmの寸法線についてみれば、第1及び第2のノードを結ぶエッジに垂直な方向の所定範囲内の位置する1又は複数の連結されたエッジを検出すれば、それらが寸法値に対応する可能性が高い。
【0039】
長さ8mmの寸法線のようにノード間の線分長が短い場合には矢印が内向きになっている場合がある。図8の例は異なるが、このような場合には寸法値がノード間を結ぶエッジに垂直な方向には描画されておらず、当該エッジの一方のノードを越えて延長した線分に近接して描画されていることがあり、その際には、当該延長した線分に垂直な方向の所定範囲内の位置する1又は複数の連結されたエッジを検出する必要がある。
【0040】
寸法線データにより表される寸法線に近接する1又は複数のエッジのうち、当該寸法線データが有するノード間を結ぶエッジ又は当該エッジを一方のノードを越えて延長した線分からの垂直方向の距離がそれらのエッジについて複数得られた距離の推定結果列の中央値から所定値以上離れているものを近接しないものとして除外することによって、近接領域及びそれに対応する対応領域の特定精度を上げることができる。
【0041】
なお、上述の実施形態において、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0042】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【0043】
また、図2において示される「開始」及び「終了」は、一例を示すものに過ぎず、本実施形態にかかる方法が必ずS201で開始され、必ずS206で終了することを意味するものではない。
【符号の説明】
【0044】
100 装置
101 通信部
102 処理部
103 記憶部
104 データベース
110 製造業者端末
120 加工業者端末
500 対応領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9