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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】パーティションシステム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/79 20180101AFI20240612BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240612BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20240612BHJP
   F24F 11/56 20180101ALI20240612BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20240612BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240612BHJP
   F24F 110/30 20180101ALN20240612BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F11/64
F24F11/89
F24F11/56
E04B2/74 541M
F24F110:10
F24F110:30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022168932
(22)【出願日】2022-10-21
(65)【公開番号】P2024061170
(43)【公開日】2024-05-07
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】挾間 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】三原 邦彰
(72)【発明者】
【氏名】小野 永吉
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-199864(JP,A)
【文献】国際公開第2020/075244(WO,A1)
【文献】特開2015-055431(JP,A)
【文献】特開2007-097929(JP,A)
【文献】特開平08-121816(JP,A)
【文献】特開2005-061683(JP,A)
【文献】特開2008-150805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
E04B 2/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の気流を制御するパーティションシステムであって、
前記室内において稼働するパーティションと、
前記パーティションの稼働を制御する制御部と、
前記パーティションシステムのユーザが選択可能な気流温度分布を記憶する気流温度分布記憶部と、
を備え、
前記制御部は、前記パーティションに駆動信号を送信することによって、前記室内の気流温度分布が前記気流温度分布記憶部が記憶している気流温度分布となるように前記パーティションを稼働させ、
前記パーティションシステムは建物に設置されており、
前記気流温度分布記憶部は、前記パーティションの位置と、前記建物が有する部屋における前記室内の空間の気流の分布との関係データを予め記憶しており、
前記室内は、複数の領域に区分されており、
複数の領域は、第1領域、及び前記第1領域とは異なる第2領域を含んでおり、
前記気流温度分布記憶部は、前記第2領域への気流よりも前記第1領域への気流が強い気流温度分布を記憶しており、
前記制御部は、前記パーティションに駆動信号を送信することによって、前記第2領域への気流よりも前記第1領域への気流が強くなるように前記パーティションを稼働させる、
パーティションシステム。
【請求項2】
前記気流温度分布記憶部は、前記パーティションの稼働状態と前記気流温度分布との関係を予め記憶するデータベースである、
請求項1に記載のパーティションシステム。
【請求項3】
前記パーティションは、ベース部と、前記ベース部に対して回転する回転部と、を有し、
前記制御部は、前記パーティションに駆動信号を送信することによって、前記回転部を回転させて前記ベース部に対する前記回転部の回転角度を制御する、
請求項1又は2に記載のパーティションシステム。
【請求項4】
前記パーティションは、ベース部と、前記ベース部に接続されており前記室内の床面を走行する走行体と、を有し、
前記制御部は、前記パーティションに駆動信号を送信することによって、前記走行体を走行させる、
請求項1又は2に記載のパーティションシステム。
【請求項5】
前記室内に気流を発生させる気流発生装置を備え、
前記制御部は、前記気流発生装置に制御信号を送信することによって、前記気流発生装置からの気流を制御する、
請求項1又は2に記載のパーティションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気流を制御するパーティションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パーソナル空調システムが記載されている。パーソナル空調システムは、執務者の作業スペースであるタスク空間に設けられている。タスク空間は、4枚のパーティション壁によって画成されている。1枚のパーティション壁の下端にスリット状の吹出口が形成されており、この吹出口からタスク空間に温度及び湿度が調整された空気が吹き出される。
【0003】
パーソナル空調システムは、当該パーティション壁における吹出口の鉛直上方に設けられた邪魔板を備える。邪魔板は、水平方向に延びる回動軸を中心として上方に揺動可能とされている。すなわち、水平面に対する邪魔板の角度が可変とされている。吹出口から吹き出された空気は、邪魔板に当たり、邪魔板によって風向きが調整された気流となる。
【0004】
執務者は、邪魔板に対向する位置において執務を行う。執務者から見て邪魔板が設けられるパーティション壁とは反対側のパーティション壁には、邪魔板を操作するリモコンである操作指示部が固定されている。執務者は、操作指示部を操作することによって邪魔板の角度を調整し、気流の向きを変更することが可能である。
【0005】
パーソナル空調システムは、邪魔板の角度を制御するソフトウェアがインストールされたパーソナルコンピューターを備える。このソフトウェアは送風位置と邪魔板の角度との関係を複数のモードとして記憶しており、執務者は複数のモードから所望のモードを選択可能である。執務者がモードを選択することによって、邪魔板の角度を調整して所望の位置に気流を吹き込むことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-12012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したパーソナル空調システムの邪魔板は、パーティション壁に固定されているので、室内の什器のレイアウトが変更されたときに対応しづらいという問題がある。また、パーソナル空調システムでは、パーティション壁の下端に吹出口を形成し、更に当該パーティション壁に邪魔板を設置しなければならない。よって、装置が大がかりであるため、設置を容易に行うことができず、コストが高いという懸念がある。
【0008】
本開示は、室内に任意の温度の気流を形成できると共に、装置を簡易にすることができるパーティションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るパーティションシステムは、(1)室内の気流を制御するパーティションシステムである。パーティションシステムは、室内において稼働するパーティションと、パーティションの稼働を制御する制御部と、パーティションシステムのユーザが選択可能な気流温度分布を記憶する気流温度分布記憶部と、を備える。制御部は、パーティションに駆動信号を送信することによって、室内の気流温度分布が気流温度分布記憶部が記憶している気流温度分布となるようにパーティションを稼働させ、気流温度分布記憶部は、パーティションの位置と、建物が有する部屋における室内の空間の気流の分布との関係データを予め記憶しており、室内は、複数の領域に区分されており、複数の領域は、第1領域、及び第1領域とは異なる第2領域を含んでおり、気流温度分布記憶部は、第2領域への気流よりも第1領域への気流が強い気流温度分布を記憶しており、制御部は、パーティションに駆動信号を送信することによって、第2領域への気流よりも第1領域への気流が強くなるようにパーティションを稼働させる
【0010】
このパーティションシステムでは、パーティションが稼働することによって室内の気流及び温度が制御される。従って、間仕切りであるパーティションの稼働によって気流及び温度を制御することができるので、室内の什器のレイアウトが変更された場合でも容易に対応することができる。このパーティションシステムでは、新たに吹出口を形成する必要がなく、室内にはパーティションを設置すればよいので、装置を簡易にすることができる。その結果、設置を容易に行うことができ、コストの増大を抑制することができる。このパーティションシステムは、ユーザが選択可能な気流温度分布を記憶する気流温度分布記憶部と制御部とを備える。制御部は、パーティションに駆動信号を送信し、室内の気流温度分布が気流温度分布記憶部が記憶した気流温度分布となるようにパーティションを稼働させる。従って、パーティションが駆動することによって室内の気流温度分布をユーザが選択した気流温度分布とすることが可能となる。その結果、室内の気流温度分布をユーザが選択した気流温度分布とすることができるので、パーティションの稼働によって室内に任意の気流を形成することができる。
【0011】
(2)上記(1)において、気流温度分布記憶部は、パーティションの稼働状態と気流温度分布との関係を予め取得しているデータベースであってもよい。この場合、ユーザが選択可能な気流温度分布が予めデータベースに記憶されているので、ユーザが気流温度分布を選択することで室内に任意の気流温度分布を形成できる。
【0012】
ーティションの稼働によって、気流が強い第1領域、及び気流が弱い第2領域を形成できる。従って、室内の複数の領域のそれぞれに対して気流を適切に制御できる。その結果、例えば、人が多く密集する第1領域の気流を強めることによって、ウイルス等に対する感染リスクを低減させることができる。
【0013】
(4)上記(1)~(3)のいずれかにおいて、パーティションは、ベース部と、ベース部に対して回転する回転部と、を有してもよい。制御部は、パーティションに駆動信号を送信することによって、回転部を回転させてベース部に対する回転部の回転角度を制御してもよい。この場合、パーティションの回転部の回転角度が制御されることによって室内の気流を制御することができる。従って、パーティションの構成を簡易にしつつ、室内の気流を任意に制御できる。
【0014】
(5)上記(1)~(4)のいずれかにおいて、パーティションは、ベース部と、ベース部に接続されており室内の床面を走行する走行体と、を有してもよい。制御部は、パーティションに駆動信号を送信することによって、走行体を走行させてもよい。この場合、パーティションが駆動信号を受信することによって走行体を走行させることができるので、パーティションの移動を容易に行うことができる。
【0015】
(6)上記(1)~(5)のいずれかにおいて、パーティションシステムは、室内に気流を発生させる気流発生装置を備えてもよい。制御部は、気流発生装置に制御信号を送信することによって、気流発生装置からの気流を制御してもよい。この場合、制御部は、パーティションに駆動信号を送信してパーティションの稼働を制御すると共に、気流発生装置に制御信号を送信して気流発生装置からの気流を制御する。従って、パーティションと気流発生装置を連動させることができるので、よりきめ細やかに気流を制御することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、室内に任意の温度の気流を形成できると共に、装置を簡易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るパーティションシステムの構成を模式的に示す図である。
図2】第1実施形態に係るパーティションシステムの機能を示すブロック図である。
図3】パーティションシステムによる気流制御方法の工程の例を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係るパーティションシステムの構成を模式的に示す図である。
図5】(a)及び(b)は、第3実施形態に係るパーティションシステムによる気流制御を模式的に示す図である。
図6】(a)及び(b)は、変形例に係るパーティションシステムによる気流制御を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るパーティションシステムの実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
(第1実施形態)
図1に示されるように、例えば、本実施形態に係るパーティションシステム1は建物Sに設置されている。パーティションシステム1は、任意の空間温度(気温)、及び気流Fの分布を形成するため、気流Fの流れを偏向させることが可能な自動可動式のパーティション10を備える。
【0020】
建物Sは、例えば、新設の建物であってパーティションシステム1は建物Sの構築時に導入される。しかしながら、建物Sは既設の建物であってもよく、既設の建物Sにパーティションシステム1が導入されてもよい。建物Sは部屋Hを有し、部屋Hは天井2と壁3によって画成されている。
【0021】
パーティションシステム1は、部屋Hの内部(室内)における気流Fを制御することによって、例えば、部屋Hの空間Kに滞在する人Mのウイルス等の感染リスクを低減させる。一例として、空間Kは、人Mが椅子Cに座ってデスクBにおいて仕事をするオフィス空間である。しかしながら、空間Kはオフィス空間でなくてもよく、例えば、イベント会場であってもよい。このように、空間Kの用途は適宜変更可能である。
【0022】
パーティションシステム1は、例えば、室内において稼働するパーティション10と、気流発生装置20とを備える。気流発生装置20は、例えば、冷房を行うエアコンである。しかしながら、気流発生装置20は、天井扇(シーリングファン)であってもよい。気流発生装置20は気流Fを発生させる機器であればよく、気流発生装置20の種類は限定されない。気流Fは、一例として、下降流である。しかしながら、気流Fは上昇流であってもよく、気流Fの向きは特に限定されない。
【0023】
例えば、部屋Hの室内は、パーティション10を介して複数の領域Aに区分されている。複数の領域Aは、例えば、第1領域A1、及び第1領域A1とは異なる第2領域A2を含んでいる。第1領域A1及び第2領域A2は、例えば、第1方向D1に沿って並んでおり、第1領域A1と第2領域A2との間にパーティション10が設けられている。一例として、第1方向D1は水平方向である。
【0024】
例えば、パーティション10は、間仕切りとしての機能、及び気流Fを制御する機能の両方を備える気流制御パーティションである。一例として、パーティション10は、ベース部11と、ベース部11に対して回転する回転部12とを有する。ベース部11は、床面Yに載せられる台座部11bと、台座部11bから鉛直上方に延在する板状部11cとを有する。板状部11cは、例えば、第1方向D1に交差(一例として直交)する第2方向D2、及び鉛直方向D3に延在している。
【0025】
回転部12は、例えば、ベース部11に対して第1方向D1に移動する板状部12bと、ベース部11に対して板状部12bを回転可能に連結するヒンジ部12cとを有する。ヒンジ部12cは、第2方向D2に沿って延びる軸部である。板状部12bは、ヒンジ部12cから上方(又は斜め上方)且つ第2方向D2に延在し、ヒンジ部12cに対して回転可能とされている。ベース部11に対する板状部12bの角度θ(回転角度)が変更されることによって、気流Fが制御される。
【0026】
図2は、本実施形態に係るパーティションシステム1の機能構成を示すブロック図である。図1及び図2に示されるように、パーティションシステム1は、パーティション10を稼働させることによって室内の気流Fを制御する。例えば、パーティションシステム1は、ベース部11に対する回転部12(板状部12b)の角度θを調整するようにパーティション10を稼働させる。パーティションシステム1は、例えば、情報端末Tにおいて実行されるアプリケーション等のプログラムであってもよい。パーティションシステム1は、例えば、情報端末Tと通信可能なサーバ上で実行されてもよい。
【0027】
情報端末Tは、例えば、携帯端末である。携帯端末は、例えば、スマートフォンを含む携帯電話、タブレット、ノートパソコン又はリモコン等、携帯可能な情報端末を示している。情報端末Tは、携帯端末以外の端末であってもよく、例えば、パソコンであってもよい。
【0028】
情報端末Tは、一例として、オペレーティングシステム及びソフトウェア(アプリケーション)等を実行するプロセッサ(例えばCPU)と、ROM及びRAMによって構成される主記憶部と、フラッシュメモリ等によって構成される補助記憶部と、無線通信モジュール等によって構成される通信制御部と、入力装置と、ディスプレイ等の出力装置とを備える。但し、情報端末Tの構成は、上記に限定されず適宜変更可能である。
【0029】
情報端末Tの各機能要素は、プロセッサ又は記憶部(例えば前述した主記憶部又は補助記憶部)に所定のソフトウェアを読み込ませて当該ソフトウェアを実行することによって実現される。プロセッサは、当該ソフトウェアに従って、前述した通信制御部、入力装置又は出力装置を動作させ、記憶部におけるデータの読み出し及び書き出しを行う。情報端末Tの処理に用いられるデータ又はデータベースは記憶部に格納される。
【0030】
パーティションシステム1は、例えば、コントローラ30を備える。コントローラ30は、パーティション10の稼働を制御して気流Fを調整する。また、コントローラ30は、気流発生装置20からの気流Fを制御してもよい。一例として、コントローラ30は、パーティション10、気流発生装置20及び情報端末Tと通信可能とされている。コントローラ30は、情報端末Tにインストールされたアプリケーションプログラムであってもよい。このように、コントローラ30の配置場所及び配置態様は特に限定されない。
【0031】
例えば、コントローラ30は、パーティション10の稼働を制御する制御部31と、パーティション10のユーザ(例えば人M)が選択可能な気流温度分布を記憶する気流温度分布記憶部32とを有する。気流温度分布とは、気流Fの分布、及び空間Kの温度の分布の少なくともいずれかを示している。制御部31は、パーティション10に駆動信号G1を送信することによってパーティション10の稼働を制御する。
【0032】
具体例として、制御部31は、パーティション10に駆動信号G1を送信することによって、回転部12を回転させてベース部11に対する回転部12の角度θを制御する。例えば、制御部31は、気流発生装置20に制御信号G2を送信することによって気流発生装置20からの気流Fを制御する。
【0033】
気流温度分布記憶部32は、例えば、パーティション10の稼働状態と気流温度分布との関係を示す関係データを予め記憶するデータベースである。この場合、気流温度分布記憶部32は、パーティション10の位置(例えば角度θ)と、空間Kの気流Fの分布とを予め記憶している。気流温度分布記憶部32は、パーティション10の位置と、空間Kの気流Fの分布と、空間Kの温度の分布との関係データを予め記憶する気流温度分布データベースであってもよい。
【0034】
気流温度分布記憶部32は、気流発生装置20からの気流Fの状態と、パーティション10の位置と、空間Kの気流Fの分布と、空間Kの温度の分布との関係データを予め記憶してもよい。気流発生装置20からの気流Fの状態とは、例えば、気流発生装置20からの気流Fの吹き出し温度、風量、及び吹き出し角度の少なくともいずれかである。
【0035】
例えば、パーティション10の位置と空間Kの気流Fの分布との関係データを気流温度分布記憶部32に記憶させる作業がパーティションシステム1の運用前までに行われる。この作業では、一例として、気流発生装置20からの気流Fの吹き出し温度、風量、吹き出し角度、及びパーティション10の位置と、空間Kの気流温度分布との関係データが紐付けられ、紐付けられた関係データが気流温度分布記憶部32に記憶される。上記の関係データは、気流シミュレーションによって導出されてもよいし、実測によって導出されてもよいし、所定の関係データ式から導出されてもよい。
【0036】
気流温度分布記憶部32には複数の関係データが記憶されており、情報端末Tでは気流温度分布記憶部32に記憶されている複数の気流温度分布を選択可能とされている。例えば、情報端末Tにおいてパーティションシステム1のユーザ(以下では単に「ユーザ」とすることもある)が気流温度分布記憶部32に記憶されている気流温度分布を選択する。このとき、制御部31は、パーティション10に駆動信号G1を送信することによって、室内の気流温度分布が気流温度分布記憶部32が記憶している気流温度分布となるようにパーティション10を稼働させる。
【0037】
例えば、気流温度分布記憶部32は、第2領域A2への気流Fよりも第1領域A1への気流が強い気流温度分布を記憶している。パーティションシステム1のユーザがこの気流温度分布を選択すると、制御部31は、パーティション10に駆動信号G1を送信することによって、第2領域A2への気流よりも第1領域A1への気流が強くなるようにパーティション10を稼働させる。具体例として、ベース部11に対して回転部12が第2領域A2に傾くようにパーティション10を稼働させる。これにより、第2領域A2への気流Fより第1領域A1への気流Fが強くなる状態が実現される。
【0038】
次に、本実施形態に係る気流制御方法の工程の例について図3のフローチャートを参照しながら説明する。まず、室内の気流温度分布と、パーティション10の位置との関係データを気流温度分布記憶部32に記憶する(ステップS1)。次に、ユーザが気流温度分布記憶部32に記憶されている気流温度分布を選択する(ステップS2)。
【0039】
ユーザは、例えば、情報端末Tから気流温度分布を選択する。具体例として、情報端末Tには気流温度分布記憶部32が記憶している複数の気流温度分布が室内気流温度パターンとして表示される。室内気流温度パターンは、例えば、室内の特定の領域への気流を強くして当該領域の温度を低下させるパターン、及び室内の気流と温度を均一にするパターンを含んでいる。この場合、ユーザは、情報端末Tにおいて複数の室内気流温度パターンから1つの室内気流温度パターンを選択可能である。
【0040】
ユーザが気流温度分布を選択すると、選択された気流温度分布(室内気流温度パターン)に基づくパーティション10の位置を制御部31が決定する(ステップS3)。そして、決定したパーティション10の位置を示す駆動信号G1を制御部31がパーティション10に送信する。パーティション10は、パーティション10の位置を示す駆動信号G1を制御部31から受信すると、当該パーティション10の位置となるように稼働して気流Fの制御を行う(ステップS4)。その後、一連の工程が完了する。
【0041】
次に、本実施形態に係るパーティションシステム1及び気流制御方法から得られる作用効果について説明する。本実施形態に係るパーティションシステム1及び気流制御方法では、パーティション10が稼働することによって室内の気流F及び温度が制御される。従って、間仕切りであるパーティション10の稼働によって気流F及び温度を制御することができるので、室内の什器のレイアウトが変更された場合でも容易に対応することができる。
【0042】
パーティションシステム1では、新たに吹出口を形成する必要がなく、室内には間仕切りとしてのパーティション10を設置すればよいので、装置を簡易にすることができる。その結果、設置を容易に行うことができ、コストの増大を抑制することができる。パーティションシステム1は、ユーザが選択可能な気流温度分布を記憶する気流温度分布記憶部32と制御部31とを備える。制御部31は、パーティション10に駆動信号G1を送信し、室内の気流温度分布が気流温度分布記憶部32が記憶した気流温度分布となるようにパーティション10を稼働させる。従って、パーティション10が駆動することによって室内の気流温度分布をユーザが選択した気流温度分布とすることが可能となる。その結果、室内の気流温度分布をユーザが選択した気流温度分布とすることができるので、パーティション10の稼働によって室内に任意の気流Fを形成することができる。
【0043】
本実施形態において、気流温度分布記憶部32は、パーティション10の稼働状態と気流温度分布との関係を予め取得しているデータベースである。よって、ユーザが選択可能な気流温度分布が予めデータベースに記憶されているので、ユーザが気流温度分布を選択することで室内に任意の気流温度分布を形成できる。
【0044】
本実施形態において、室内は、複数の領域Aに区分されており、複数の領域Aは、第1領域A1、及び第1領域A1とは異なる第2領域A2を含んでいる。制御部31は、パーティション10に駆動信号を送信することによって、第2領域A2への気流Fよりも第1領域A1への気流Fが強くなるようにパーティション10を稼働させる。従って、パーティション10の稼働によって、気流Fが強い第1領域A1、及び気流Fが弱い第2領域A2を形成できる。従って、室内の複数の領域Aのそれぞれに対して気流Fを適切に制御できる。その結果、例えば、人が多く密集する第1領域A1の気流Fを強めることによって、ウイルス等に対する感染リスクを低減させることができる。
【0045】
本実施形態において、パーティション10は、ベース部11と、ベース部11に対して回転する回転部12と、を有する。制御部31は、パーティション10に駆動信号G1を送信することによって、回転部12を回転させてベース部11に対する回転部12の角度θを制御する。従って、パーティション10の回転部12の角度θが制御されることによって室内の気流Fを制御することができる。よって、パーティション10の構成を簡易にしつつ、室内の気流Fを任意に制御できる。
【0046】
本実施形態において、パーティションシステム1は、室内に気流Fを発生させる気流発生装置20を備える。制御部31は、気流発生装置20に制御信号G2を送信することによって、気流発生装置20からの気流Fを制御する。よって、制御部31は、パーティション10に駆動信号G1を送信してパーティション10の稼働を制御すると共に、気流発生装置20に制御信号G2を送信して気流発生装置20からの気流Fを制御する。従って、パーティション10と気流発生装置20を連動させることができるので、よりきめ細やかに気流Fを制御することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るパーティションシステム41について図4を参照しながら説明する。パーティションシステム41の一部の構成は、前述したパーティションシステム1の一部の構成と同一である。従って、以降の説明では、パーティションシステム1の説明と重複する説明を同一の符号を付して適宜省略する。
【0048】
パーティションシステム41は、前述したパーティション10とは異なるパーティション50を備える。パーティション50は、ベース部51と、ベース部51に接続されており室内の床面Yを走行する走行体52とを有する。ベース部51は、例えば、走行体52から上方(鉛直上方又は斜め上方)に延在する板状部51bを有する。
【0049】
走行体52は、例えば、車体52bと、車体52bの下部に取り付けられた複数の車輪52cとを有する。複数の車輪52cのそれぞれは車体52bを支持しており、車体52bからベース部51が上方に延在している。床面Yで複数の車輪52cが転動してパーティション50が床面Yに沿って移動することにより、気流Fが制御される。具体例として、制御部31は、パーティション50に駆動信号G1を送信することによって、走行体52を走行させて室内におけるパーティション50の位置を変更することにより、気流Fを制御する。
【0050】
以上、第2実施形態に係るパーティションシステム41において、パーティション50は、ベース部51と、ベース部51に接続されており室内の床面Yを走行する走行体52と、を有する。制御部31は、パーティション50に駆動信号G1を送信することによって、走行体52を走行させる。従って、パーティション50が駆動信号G1を受信することによって走行体52を走行させることができるので、パーティション50の移動を容易に行うことができる。例えば、制御部31は、下降流である気流Fの下方に位置するパーティション50を第1領域A1寄りの位置に移動させることによって、第1領域A1よりも第2領域A2に入る気流Fを多くすることができる。
【0051】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係るパーティションシステム61について図5(a)及び図5(b)を参照しながら説明する。図5(a)及び図5(b)のそれぞれは、パーティションシステム61における複数のパーティション70の稼働状態を模式的に示す図である。パーティション70は、ベース部71と、ベース部71に対して回転する回転部72と、ベース部71に接続されており床面Yを走行する走行体73とを有する。
【0052】
例えば、ベース部71の構成は前述したベース部11(又はベース部51)の構成と同一であり、回転部72の構成は前述した回転部12の構成と同一であり、走行体73の構成は前述した走行体52の構成と同一である。すなわち、パーティション70は、パーティション10の回転部12を回転させる機能と、パーティション50の走行体52の機能と、の双方を備える。
【0053】
例えば、複数の領域Aは、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3及び第4領域A4を含んでおり、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3及び第4領域A4がこの順で第1方向D1に沿って並んでいる。室内には複数の気流発生装置80が設けられている。例えば、気流発生装置80は天井2に設けられたエアコンの吹き出し口81を有する。
【0054】
複数(一例として3つ)の吹き出し口81が第1方向D1に沿って並んでいる。複数の吹き出し口81は、例えば、第1吹き出し口81b、第2吹き出し口81c及び第3吹き出し口81dを含んでおり、第1吹き出し口81b、第2吹き出し口81c及び第3吹き出し口81dがこの順で並んでいる。一例として、第1吹き出し口81bよりも第1方向D1の一端側(図5(a)及び図5(b)では左側)の領域が第1領域A1であり、第1吹き出し口81bと第2吹き出し口81cとの間の領域が第2領域A2である。そして、第2吹き出し口81cと第3吹き出し口81dとの間の領域が第3領域A3であり、第2吹き出し口81cよりも第1方向D1の他端側(図5(a)及び図5(b)では右側)に位置する領域が第4領域A4である。
【0055】
パーティションシステム61のユーザが前述と同様に気流温度分布を選択すると、制御部31は、複数のパーティション70のそれぞれに駆動信号G1を送信することによって複数のパーティション70の稼働を制御する。例えば、図5(a)に示されるように、制御部31は、室内の温度が均一になるように複数のパーティション70の稼働を制御する。より具体的には、制御部31は、パーティション70が吹き出し口81の直下に位置しないように複数のパーティション70を室内における第1方向D1の端部に移動させることにより、室内の温度を均一にする。
【0056】
例えば、図5(b)に示されるように、制御部31は、第1領域A1の気温が第2領域A2の気温より低くなるようにパーティション70の稼働を制御する。そして、制御部31は、第3領域A3の気温が第4領域A4の気温より低くなるようにパーティション70の稼働を制御する。
【0057】
より具体的には、制御部31は、1つのパーティション70を第1吹き出し口81bの直下に移動させると共に、当該パーティション70の回転部72を第2領域A2側に傾くように回転させる。これにより、第1領域A1への気流Fを第2領域A2への気流Fよりも強めて、第2領域A2よりも第1領域A1の温度を低下させる。
【0058】
そして、制御部31は、1つのパーティション70を第2吹き出し口81cから第1吹き出し口81b寄りの位置に移動させると共に、当該パーティション70とは異なるパーティション70を第3吹き出し口81dの直下に移動させる。そして、第3吹き出し口81dの直下に移動させたパーティション70の回転部72を第4領域A4側に傾くように回転させる。これにより、第3領域A3への気流Fを第4領域A4への気流Fよりも強めて、第4領域A4よりも第3領域A3の温度を低下させる。
【0059】
以上、第3実施形態に係るパーティションシステム61では、室内の一部の気流温度が他の部分の気流温度と異なるようにパーティション70の位置を制御できるので、室内に任意の気流Fを形成できる。従って、パーティションシステム61からは前述したパーティションシステム1等と同様の作用効果が得られる。
【0060】
以上、本開示に係るパーティションシステムの種々の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。すなわち、本開示に係るパーティションシステムの各部の機能、構成、形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0061】
例えば、図5(a)及び図5(b)では、複数のパーティション70が複数の気流発生装置80からの気流Fを制御する例について説明した。しかしながら、複数種類のパーティションを用いて気流Fを制御してもよいし、気流発生装置の種類も気流発生装置80に限定されない。
【0062】
図6(a)及び図6(b)は、図5(a)及び図5(b)の変形例に係るパーティションシステム91である。パーティションシステム91は、回転部12を有するパーティション10と、走行体52を有するパーティション50とを稼働させて気流発生装置92からの気流Fを制御する。気流発生装置92は、シーリングファン(天井扇)である。気流発生装置92は、例えば、第1シーリングファン92b、第2シーリングファン92c及び第3シーリングファン92dを含む。
【0063】
例えば、第1シーリングファン92bの直下、及び第3シーリングファン92dの直下のそれぞれにパーティション10が配置されており、第1方向D1に沿って並ぶ一対のパーティション10の間においてパーティション50が移動可能とされている。パーティションシステム91のユーザが気流温度分布を選択すると、制御部31は、パーティション10及びパーティション50のそれぞれに駆動信号G1を送信することによってパーティション10,50の稼働を制御する。
【0064】
例えば、図6(a)に示されるように、制御部31は、室内の気流Fが均一になるようにパーティション10,50を制御する。より具体的には、制御部31は、各パーティション10の回転部12をベース部11から鉛直上方に延びるようにパーティション10を制御すると共に、第2シーリングファン92cの直下に位置するようにパーティション50の走行体52を走行させる。これにより、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3及び第4領域A4のそれぞれにおいて均一な気流Fを形成できる。
【0065】
また、図6(b)に示されるように、制御部31は、第1領域A1への気流Fが第2領域A2への気流Fより強くなり、且つ第3領域A3への気流Fが第4領域A4への気流より強くなるようにパーティション10,50を制御する。より具体的には、制御部31は、第1シーリングファン92bの直下に位置するパーティション10の回転部12を第2領域A2側に回転させると共に、第3シーリングファン92dの直下に位置するパーティション10の回転部12を第4領域A4側に回転させる。
【0066】
そして、制御部31は、パーティション50の走行体52を第2シーリングファン92cの直下から第2領域A2寄りの位置に移動させる。これにより、第2領域A2よりも第1領域A1に多くの気流Fが入り込み、第4領域A4よりも第3領域A3に多くの気流Fが入り込む状態が実現される。従って、パーティションシステム91からは前述した各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0067】
前述した実施形態では、パーティション10に駆動信号G1を送信すると共に、気流発生装置20に制御信号G2を送信する制御部31について説明した。しかしながら、本開示に係るパーティションシステムにおいて、制御部は、気流発生装置に制御信号を送信しなくてもよい。すなわち、パーティションシステムは、気流発生装置から独立して稼働してもよい。この場合、制御部は、パーティションの稼働の制御を行えばよく、気流発生装置の制御を不要にすることができる。
【0068】
前述した実施形態では、パーティション10の稼働状態と気流温度分布との関係(関係データ)を予め取得しているデータベースである気流温度分布記憶部32について説明した。しかしながら、気流温度分布記憶部はデータベースでなくてもよい。例えば、気流温度分布記憶部は、環境センサであってもよい。例えば、気流温度分布記憶部は、人数検知センサを有し、人数検知センサによって検知された人数に応じた気流温度分布を記憶してもよい。この場合、制御部により、人数検知センサによって検知された人数が多い領域により強い気流を送り込むができるので、ウイルス等への感染リスクを低減できる。
【0069】
例えば、気流温度分布記憶部は領域ごとに会話量センサを有してもよい。そして、制御部は、会話量センサによって検出された会話量が多い領域に会話量が少ない領域よりも多くの気流を送り込んでもよい。この場合、会話量が多い領域により多くの気流を送り込めるので、ウイルス等の感染リスクを低減できる。例えば、気流温度分布記憶部は、温度センサ及び気流センサの少なくともいずれかを有してもよい。この場合、制御部は、検出された温度及び気流の少なくともいずれかによって室内の温度及び気流が適切になるようにフィードバック制御を行うことができる。
【0070】
前述した実施形態では、冷房を行うエアコンである気流発生装置20を備えるパーティションシステム1について説明した。しかしながら、気流発生装置は、冷房を行うものに限られず、暖房を行うものであってもよい。すなわち、本開示に係るパーティションシステムは、冷房だけでなく、暖房に適用させることも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…パーティションシステム、2…天井、3…壁、10…パーティション、11…ベース部、11b…台座部、11c…板状部、12…回転部、12b…板状部、12c…ヒンジ部、20…気流発生装置、30…コントローラ、31…制御部、32…気流温度分布記憶部、41…パーティションシステム、50…パーティション、51…ベース部、51b…板状部、52…走行体、52b…車体、52c…車輪、61…パーティションシステム、70…パーティション、71…ベース部、72…回転部、73…走行体、80…気流発生装置、81…吹き出し口、81b…第1吹き出し口、81c…第2吹き出し口、81d…第3吹き出し口、91…パーティションシステム、92…気流発生装置、A…領域、A1…第1領域、A2…第2領域、A3…第3領域、A4…第4領域、B…デスク、C…椅子、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…鉛直方向、F…気流、G1…駆動信号、G2…制御信号、H…部屋、K…空間、M…人、S…建物、T…情報端末、Y…床面、θ…角度。
図1
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図6