IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特許7503116二酸化炭素還元装置及び有機化合物の製造方法
<>
  • 特許-二酸化炭素還元装置及び有機化合物の製造方法 図1
  • 特許-二酸化炭素還元装置及び有機化合物の製造方法 図2
  • 特許-二酸化炭素還元装置及び有機化合物の製造方法 図3
  • 特許-二酸化炭素還元装置及び有機化合物の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】二酸化炭素還元装置及び有機化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/19 20210101AFI20240612BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20240612BHJP
   C25B 3/05 20210101ALI20240612BHJP
   C25B 3/07 20210101ALI20240612BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240612BHJP
【FI】
C25B9/19
C25B1/23
C25B3/05
C25B3/07
C25B9/00 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022179464
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2020548833の分割
【原出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2023015238
(43)【公開日】2023-01-31
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】15/928,366
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 尚洋
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-269684(JP,A)
【文献】国際公開第2012/077198(WO,A1)
【文献】特開平06-073582(JP,A)
【文献】特開平11-241195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極が設けられる第1電解槽と、第2電極が設けられ、反応基質、又は反応基質と溶媒との混合液である電解液が充填される第2電解槽と、前記第1電解槽と前記第2電解槽とを区画するイオン輸送膜と、前記第1電解槽と前記第2電解槽を連結する第1連結路とを備え、
前記第1電極が、二酸化炭素を還元物に還元する反応を促進する第1触媒を含み、
前記第2電極が、前記還元物と前記反応基質との反応を促進する第2触媒を含み、
前記第1連結路が、前記第1電解槽中の前記還元物を、前記電解液が充填される前記第2電解槽に流出させることができる連結路である、二酸化炭素還元装置。
【請求項2】
前記第1電解槽と前記第2電解槽とを連結する第2連結路をさらに備え、
前記第2連結路は、前記第2電解槽中の二酸化炭素を、前記第1電解槽に流入させることができる連結路である、請求項1に記載の二酸化炭素還元装置。
【請求項3】
前記第2触媒が、第8~12族の一種以上の元素を含むものである、請求項1又は2に記載の二酸化炭素還元装置。
【請求項4】
前記第2電解槽中に、前記還元物と前記反応基質との反応を促進する第3触媒を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素還元装置。
【請求項5】
前記第3触媒が、レドックス触媒である、請求項4に記載の二酸化炭素還元装置。
【請求項6】
前記還元物が一酸化炭素であり、
前記反応基質が、下記一般式(1)~(2)で表される少なくともいずれかの化合物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の二酸化炭素還元装置。
OH (1)
(Rは、炭素数1~15の有機基又は水素原子を示す。)
NH (2)
(Rは、炭素数1~15の有機基又は水素原子を示す。)
【請求項7】
前記還元物と前記反応基質との反応により生成される有機化合物が、以下の一般式(4)及び(5)で表される化合物の少なくとも1つを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の二酸化炭素還元装置。
【化1】
(ただし、Rはそれぞれ独立に炭素数1~15の有機基又は水素原子を示し、R11は炭素数1~15の有機基を示す。)
【請求項8】
前記還元物と前記反応基質との反応により生成される有機化合物が、以下の一般式(6)で表される化合物の少なくとも1つを含む請求項1~7のいずれか1項に記載の二酸化炭素還元装置。
【化2】
(ただし、R、R3はそれぞれ独立に炭素数1~15の有機基又は水素原子を示し、R及びR3は互いに異なる。)
【請求項9】
前記反応基質が、アルコール化合物及びアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~8のいずれか1項に記載の二酸化炭素還元装置。
【請求項10】
前記第1電解槽に接続され、かつ前記二酸化炭素を前記第1電解槽に流入させる第1導入口を備える請求項1~9のいずれか1項に記載の二酸化炭素還元装置。
【請求項11】
前記第2電解槽に接続され、かつ前記反応基質、又は前記反応基質と溶媒との混合液を、前記第2電解槽に導入させる第2導入口を備える請求項1~10のいずれか1項に記載の二酸化炭素還元装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の二酸化炭素還元装置を用いた、有機化合物の製造方法。
【請求項13】
前記第1電解槽に二酸化炭素を流入させ、
流入された前記二酸化炭素を前記第1電極上で還元し還元物を生成し、その還元物が第1連結路を通って第1電解槽から前記電解液が充填される第2電解槽に流出し、かつ
前記第2電極上において、前記第2電解槽内の前記反応基質と、前記還元物とを反応させ、有機化合物を生成する
請求項12に記載の有機化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素還元装置及び有機化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を電気的に還元して有価物を生成する二酸化炭素還元装置は、二酸化炭素排出量の削減及び自然エネルギーの貯蔵方法として注目され、研究開発が行われている(非特許文献1)。従来の二酸化炭素還元装置では、第1電極(カソード)側で二酸化炭素は還元され、この反応を効率よく進めるための触媒として、金属、合金、金属炭素化合物、炭素化合物等が報告されている(特許文献1~3)。これら各文献で報告されている二酸化炭素還元装置では、第1電極(カソード)の反応にのみ開発が注力されており、従来、同一装置における第2電極(アノード)に着目した開発例は少ない。
【0003】
一方で、有機化合物を酸化して有価物を生成する有機化合物酸化装置も、これまでにいくつか報告されている(例えば、特許文献4、非特許文献2~3)。これらに報告されている有機化合物酸化装置では、酸化反応が生じる第2電極に開発が注力されており、従来、第1電極(カソード)にはほとんど着目されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5376381号公報
【文献】特開2003-213472号公報
【文献】特許第5017499号公報
【文献】国際公開第2012/077198号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Nano Energy 29 (2016) 439-456
【文献】Journal of the Electrochemical Society, 153(4),D68 (2006)
【文献】Catal. Sci. Technol. 2016, 6, 6002-6010
【発明の概要】
【0006】
上記のように、上記各装置では、従来、第1電極の反応と第2電極の反応のいずれか一方に着目したものが多く、他方の電極における反応が有効に活用されていないことが多い。例えば、二酸化炭素還元装置では、第2電極上では水の酸化反応が行われることが多いが、その生成物である酸素は工業上の価値が高くはなく、二酸化炭素還元装置の第2電極での反応に要する電力エネルギーが失われることになる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、二酸化炭素還元装置において、第1電極(カソード)で生じる反応と、第2電極(アノード)で生じる反応とを組み合わせて、電力エネルギーを有効活用できる二酸化炭素還元装置、及び該二酸化炭素還元装置を用いる有機化合物の製造方法を提供することである。
【0008】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の構成を有する二酸化炭素還元装置によって、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[2]を提供する。
[1]第1電極が設けられる第1電解槽と、第2電極が設けられる第2電解槽と、前記第1電解槽と前記第2電解槽とを区画するイオン輸送膜と、前記第1電解槽と前記第2電解槽を連結する第1連結路とを備え、
前記第1電極が、二酸化炭素を還元物に還元する反応を促進する第1触媒を含み、
前記第2電極が、前記還元物と反応基質との反応を促進する第2触媒を含み、
前記第1連結路が、前記第1電解槽中の前記還元物を、前記第2電解槽に流出させることができる連結路である、二酸化炭素還元装置。
[2]上記[1]に記載の二酸化炭素還元装置を用いた、有機化合物の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の二酸化炭素還元装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】本発明の二酸化炭素還元装置の別の実施形態を示す模式図である。
図3】本発明の二酸化炭素還元装置の別の実施形態を示す模式図である。
図4】本発明の二酸化炭素還元装置の別の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の二酸化炭素還元装置についてより詳細に説明する。
本発明の二酸化炭素還元装置は、第1電極が設けられる第1電解槽と、第2電極が設けられる第2電解槽と、第1電解槽と第2電解槽とを区画するイオン輸送膜と、第1電解槽と第2電解槽を連結する第1連結路とを備える。
第1電極は、二酸化炭素を還元物に還元する反応を促進する第1触媒を含む。また、第2電極は、上記還元物と反応基質との反応を促進する第2触媒を含む。第1連結路は、第1電解槽中の還元物を第2電解槽に流出させることができる連結路である。
なお、本発明の二酸化炭素還元装置においては、第1電極がカソードであり、第2電極がアノードである。
【0011】
本発明の二酸化炭素還元装置においては、まず、第1電解槽に二酸化炭素が流入され、流入された二酸化炭素が、第1電極上で還元され(以下、「第1反応」ともいう)、二酸化炭素の還元物が生成される。この還元物は、第1連結路を通って、第1電解槽から第2電解槽に流出される。
一方、第2電解槽の第2電極上では、第2電解槽内の反応基質と、第1電解槽から流入された還元物とが反応(以下、「第2反応」ともいう)し、有機化合物等の有価物(以下、「最終生成物」ともいう)が合成される。また、第2電極上では、第2反応によりプロトン等のカチオンが発生し、カチオンは、イオン輸送膜、電解液、又はこれらの両方を介して第1電極に送られ、第1反応に供される。
このように、本発明の二酸化炭素還元装置によると、第1電極の反応と第2電極の反応とを組み合わせて、従来、有効に活用されてこなかった第2電極側の電力エネルギーを、工業的に有益な物質の合成に利用することができる。
また、本発明の二酸化炭素還元装置によると、従来の二酸化炭素還元装置で有益な物質を製造するために必要とされていた、カルボニル化反応などの後段の化学プロセスをなくすことができる。
【0012】
本発明の二酸化炭素還元装置のより好ましい態様では、第1電解槽と第2電解槽が、さらに第2連結路によって連結される。第2連結路は、第2電解槽中の二酸化炭素を、第1電解槽に流入させることができる連結路である。
つまり、本発明の二酸化炭素還元装置が第2連結路を備える場合、二酸化炭素は、第1電解槽、第1連結路、第2電解槽、第2連結路、第1電解槽という回路を循環し、その循環の過程で、第1反応に供されるため、二酸化炭素還元装置全体での二酸化炭素の転化率を高めることができる。
【0013】
本発明の二酸化炭素還元装置の第1電極上で生成する二酸化炭素の還元物としては、CO(一酸化炭素)、HCO 、OH、HCO、HCO、(HCO、HCO、CHOH、CH、C、CHCHOH、CHCOO、CHCOOH、C、O、(COOH)、(COO等が挙げられるが、一酸化炭素であることが好ましい。なお、一酸化炭素が生成する場合の第1反応は、下記式(i)で表される。
CO+2H+2e→CO+HO (i)
【0014】
次に、図面を参照しながら、本発明の二酸化炭素還元装置の実施形態についてより詳細に説明する。なお、以下の本発明の二酸化炭素還元装置の実施形態の説明においては、還元物として一酸化炭素を利用する場合の例について説明するが、本発明の二酸化炭素還元装置は、当該構成に限定されるものではない。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る二酸化炭素還元装置10Aの模式図である。なお、各図において、各矢印は、二酸化炭素還元装置10Aにおける原料及び生成物の進行方向を示すものである。
二酸化炭素還元装置10Aには、セル内部に、第1電極11、第2電極12及びイオン輸送膜13が設けられる。第1電極11及び第2電極12は、イオン輸送膜13の両面それぞれに配置され、かつ接合されて膜-電極接合体14が形成される。
【0016】
二酸化炭素還元装置10Aは、セルが膜-電極接合体14により区画され、第1電解槽15と第2電解槽16が形成されている。これにより、二酸化炭素還元装置10Aは、膜-電極接合体14によって二室に隔てられた二室型隔膜式セル構造を有し、かつ、第1電解槽15の内面に、第1電極11が、第2電解槽16の内面に第2電極12が設けられることになる。第1電極11及び第2電極12には、電源19が接続され、電源19により第1電極11及び第2電極12間に電圧が印加される。
【0017】
<第1電解槽>
第1電解槽15には、第1導入口17Aが接続され、第1導入口17Aを介して二酸化炭素が流入される。二酸化炭素は、気体として流入される。第1導入口17Aは、図示しない二酸化炭素供給器などに接続され、その二酸化炭素供給器などから二酸化炭素が流入される。
第1導入口17Aには、流量調整機構等の任意の機構を有し、流入される二酸化炭素の流量などが調整されてもよい。二酸化炭素は、第1電解槽15に継続的に流入される。
本実施形態において、第1電解槽15には、水、電解液等の溶媒が充填されず、気体の二酸化炭素が第1電極11と接触される。但し、気体の二酸化炭素は、水分を含むものであってもよい。
なお、二酸化炭素は、二酸化炭素単体で第1電解槽15に流入されてもよく、ヘリウム等の不活性気体をキャリアガスとして第1電解槽15に流入されてもよいが、二酸化炭素単体で流入されることが好ましい。
【0018】
(第1電極)
第1電解槽15に流入された二酸化炭素は、第1電極11上にて一酸化炭素に還元される。
第1電極11は、二酸化炭素を還元物に還元する第1触媒(以下、「還元触媒」ともいう)を含む。還元触媒としては、例えば、各種金属又は金属化合物、ヘテロ元素もしくは金属の少なくともいずれかを含有するカーボン化合物を使用することができる。
上記金属としては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Sn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Si、In、Sn、Tl、Pb、Bi、Sb、Te、U、Sm、Tb、La、Ce、及びNd等が挙げられる。これらの中でも金属元素の好ましい具体例としては、Sb、Bi、Sn、Pb、Ni、Ru、Co、Rh、Cu、Agが挙げられ、これらの中では、Bi,Sb,Ni,Co,Ru,Agがより好ましい。
上記金属化合物としては、これら金属の無機金属化合物及び有機金属化合物等の金属化合物を使用することができ、具体的には、金属ハロゲン化物、金属酸化物、金属水酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属酢酸塩、金属リン酸塩、金属カルボニル、及び金属アセチルアセトナト等が挙げられる。
上記ヘテロ元素もしくは金属の少なくともいずれかを含有するカーボン化合物としては、窒素含有グラファイト、窒素含有カーボンナノチューブ、窒素含有グラフェン、Ni及び窒素含有グラファイト、Ni及び窒素含有カーボンナノチューブ、Ni及び窒素含有グラフェン、Cu及び窒素含有グラファイト、Cu及び窒素含有カーボンナノチューブ、Cu及び窒素含有グラフェン、Co及び窒素含有グラファイト、Co及び窒素含有カーボンナノチューブ、Co及び窒素含有グラフェン等が挙げられる
【0019】
第1電極は、上記還元触媒の他に、導電性を付与するための導電性炭素材料を含むことが好ましい。但し、還元触媒として上記カーボン化合物を使用する場合、該カーボン化合物は導電性炭素材料としても機能する。導電性炭素材料としては、電気伝導性を有する種々の炭素材料を使用することができ、例えば、活性炭、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンペーパー、及びカーボンウィスカー等が挙げられる。
【0020】
第1電極は、好ましくは、上記金属及び金属化合物の少なくともいずれかを、カーボンペーパー等の導電性炭素材料に担持させたものが好ましい。担持方法は限定されないが、例えば、金属又は金属化合物を溶媒中に分散してカーボンペーパー等の導電性炭素材料に塗布して加熱すればよい。
【0021】
第1電極には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンオリゴマー(TFEO)、フッ化黒鉛((CF)n)、及びフッ化ピッチ(FP)、パーフロオロエチレンスルホン酸樹脂等の含フッ素化合物を混合させてもよい。これらは、撥水剤として使用されるものであり、電気化学反応効率を向上させる。上記含フッ素化合物は、第1電極を形成する際の結着剤としても使用できる。この場合、上記還元触媒及び上記フッ素化合物を溶媒中に分散して、カーボンペーパー等の導電性炭素材料に塗布して加熱することで、第1電極を作製すればよい。
【0022】
<第1連結路>
第1連結路30は、第1電解槽15と第2電解槽16とを連結し、第1電解槽15において生成した一酸化炭素を第2電解槽16に流出させる。第1連結路30は、例えば、第1電解槽15と第2電解槽16とを接続する導管等であり、流量調整機構等が設けられ、流量などが調整されてもよい。また、導管には、逆止弁などが取り付けられ、第1連結路30を通って、第1電解槽15から第2電解槽16には気体が送られるが、逆方向には気体が送られないようにしてもよい。
第1電解槽15において生成した一酸化炭素は、例えば、第1電解槽15で未反応であった二酸化炭素と共に、気体として第1連結路30を通って第2電解槽16に流入される。
【0023】
なお、電解液等の液体が充填されていない第1電解槽15では、生成した一酸化炭素は順次、未反応であった二酸化炭素と気相で混合され、そのまま、第1連結路30を通って、第2電解槽16に流出される。また、副生成物として生成する水は、電解槽中にとどまり、一定量となったところで排出される。第1電解槽15には、副生成物である水を排出するための排出口が設けられていてもよい。
【0024】
<第2電解槽>
第2電解槽16の内部には、反応基質が充填される。反応気質は、例えば、第2電解槽16に接続される第2導入口17Bより、内部に予め導入させておくとよい。反応基質は、固体状、液体状又は気体状のいずれであってもよいが、気体又は液体状であることが好ましい。反応基質は、固体状又は気体状である場合や、後述する第3触媒等の溶解性を向上させる必要がある場合には、溶媒との混合液(以下、単に「混合液」ともいう)として第2電解槽16に充填されるとよい。なお、第2電解槽16の内部は、反応基質又は混合液によって満たされてもよいし、一部空間があってもよい。
【0025】
反応基質と共に用いてもよい溶媒としては、電気化学反応に通常用いられる溶媒を選択することができ、例えば、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の炭酸エステル系溶媒、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶媒、1,2-ジメトキシエタン、1-エトキシ-2-メトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、リン酸エステル溶媒、リン酸類、スルフォラン系溶媒、ピロリドン類等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
なお、液体状の反応基質又は混合液には、電気化学反応効率を向上させる観点から、電解質塩が添加されていることが好ましい。この場合、反応基質又は混合液自体が、電解液として機能する。
電解質塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ金属の過酸化物、アンモニウム塩等が挙げられる。
具体的には、アルカリ金属塩としては、例えば、水酸化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、炭酸水素リチウム、硫酸リチウム、硫酸水素リチウム、リン酸リチウム、リン酸水素リチウム等のリチウム塩;水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等のナトリウム塩;水酸化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム等のカリウム塩等が挙げられる。
アルカリ金属の過酸化物としては、例えば、過酸化リチウム、過酸化ナトリウム等が挙げられる。
アンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。
これらの電解質塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶液中の電解質塩の濃度は、例えば、0.001~2mol/L、好ましくは0.01~1mol/Lの範囲である。
【0027】
第2電解槽16には、第1電解槽15において生成した一酸化炭素が第1連結路30を介して流入される。一酸化炭素は、バブリング等の方法により、第2電解槽16に流入されることが好ましい。バブリングされた一酸化炭素は、反応基質との第2反応に供される。ここで、一酸化炭素は、第2電解槽16に充填されている反応基質又は混合液に少なくとも一部が溶解したうえで、第2電極12上などにおいて反応基質と反応される。
【0028】
(反応基質)
本発明における反応基質とは、第2電解槽16中で一酸化炭素と反応して、有機化合物等の有価物を生成するものである。反応基質は、目的とする最終生成物に応じて適宜選択すればよいが、一酸化炭素との反応性等の観点から、アルコール化合物、アミン化合物等が好ましい。アルコール化合物としては、モノアルコール化合物、グリコール化合物等が挙げられ、アミン化合物としては、モノアミン化合物、ジアミン化合物等が挙げられる。反応基質は、より具体的には、下記一般式(1)~(2)で表される少なくともいずれかの化合物を含むものが好ましい。
OH (1)
(Rは、炭素数1~15の有機基又は水素原子を示す。)
NH (2)
(Rは、炭素数1~15の有機基又は水素原子を示す。)
【0029】
なお、上記還元物が一酸化炭素であり、上記反応基質が一般式(1)で表される化合物である場合、第2電極12上では、好ましくは、下記式(ii)のようにカルボニル化反応が生じる。
CO+2ROH→(RO)CO+2H+2e (ii)
また、上記還元物が一酸化炭素であり、上記反応基質が一般式(2)で表される化合物である場合、第2電極12上では、好ましくは、下記式(iii)のように尿素化反応が生じる。
CO+2RNH→(RNH)CO+2H+2e (iii)
【0030】
上記一般式(1)中のRが表す炭素数1~15の有機基としては、炭素数1~15の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては、炭素数1~15のアルキル基又はアルケニル基、炭素数6~15のアリール基が好ましい。
炭素数1~15のアルキル基としては、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種ペンタデシル基等が挙げられる。
炭素数1~15のアルケニル基としては、ビニル基、各種プロピニル基、各種ブチニル基、各種ペンチニル基、各種ヘキセニル基、各種ヘプテニル基、各種オクテニル基、各種ノネニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種ペンタデセニル基等が挙げられる。
なお、「各種」とは、n-、sec-、tert-、iso-を含む各種異性体を意味する。また、アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
炭素数6~15のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
なお、上記した炭化水素基は、置換基を有していてもよく、その場合は、置換基も含めた炭素数が1~15である。
【0031】
また、一般式(1)における炭素数1~15の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、リン原子等のヘテロ原子を含有してもよい。
これらの中では、酸素原子が好ましい。酸素原子を有する場合、その酸素原子は、アルコール基(水酸基)、及びエーテル結合のいずれかの酸素原子であることが好ましい。したがって、Rはアルコール基、及びエーテル結合の少なくともいずれかを有する炭化水素基であることが好ましい。また、アルコール基(水酸基)は、Rにおいて1つであることが好ましい。
また、ヘテロ原子としてはハロゲン原子も好ましい。例えば、上記したアルキル基、アルケニル基、又はアリール基は1又は2以上のハロゲン原子で置換されたたものでもよい。ハロゲン原子は、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0032】
上記Rが水酸基を含有する場合、ROHはHOR11OHで表され、以下の式(iv)のカルボニル化反応が起こるとよく、第2電解槽中で環状カーボネート化合物が生成されるとよい。
【化1】
ただし、R11は、炭素数1~15の有機基である。有機基としては炭素数1~15の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、飽和、不飽和のいずれでもよいが、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。R11における炭素数1~15の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、リン原子等のヘテロ原子を含有してもよい。これらのなかでは、酸素原子が好ましい。また、ハロゲン原子も好ましい。有機基が酸素原子を有する場合、その酸素原子は、エーテル結合の酸素原子であることが好ましい。
また、水酸基を有するR(すなわち、RがR11OHである)としては、より具体的には、炭素数2~15のヒドロキシアルキル基、以下の式(3)で表される基であることが好ましい。これらのなかでは、炭素数2~15のヒドロキシアルキル基がより好ましい。
H-(OR)- (3)
なお、式(3)において、Rは炭素数2~4の2価の飽和炭化水素基、mは2~7の整数である。式(3)においてORとしては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基などが挙げられる。
また、Rとしてのヒドロキシアルキル基は、アルキル基の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0033】
上記一般式(2)中のR2が表す炭素数1~15の有機基としては、炭素数1~15の炭化水素基が挙げられ、その具体的な説明は、上記R1における炭化水素基と同様である。
また、一般式(2)における炭素数1~15の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を含有していてもよい。これらの中では、窒素原子が好ましく、窒素原子はアミノ基の窒素原子であることが好ましい。したがって、Rはアミノ基を有する炭化水素基であることが好ましい。より具体的には、炭素数1~15のアミノアルキル基が好ましい。
【0034】
上記一般式(1)で表される化合物としては、上記した中でも、R1が炭素数1~8のアルキル基又はアルケニル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数2~8のヒドロキシアルキル基である化合物がより好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、フェノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-プロパノール、2-ブタノール、2-ペンタノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、エテン-1,2-ジオール、2-ブテン-2,3-ジオール、グリセロール等が好ましい。また、炭素数1~8のアルキル基又はアルケニル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数2~8のヒドロキシアルキル基が塩素原子などの1又は2以上のハロゲン原子で置換されたものも好ましく、例えば2-クロロエタノール、トリクロロメタノール、2,2,2-トリフロオロエタノール、4-クロロフェノール、1-クロロエタン-1,2-ジオール、1-フルオロエタン-1,2-ジオールなども好ましい。これらの中では、R1がアルキル基又はアリール基である化合物が特に好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物としては、上記した中でも、炭素数1~8のアルキル基又はアルケニル基、炭素数6~8のアリール基である化合物がより好ましく、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、アニリン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン等が好ましい。また、炭素数1~8のアルキル基又はアルケニル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数2~8のヒドロキシアルキル基が塩素原子などの1又は2以上のハロゲン原子で置換されたものも好ましく、例えば4-クロロアニリンなども好ましい。これらの中では、R2がアルキル基又はアリール基である化合物が特に好ましい。
【0035】
反応基質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、以下の式(v)で示されるカルボニル化反応、又は式(vi)で示される尿素化反応が起こるとよい。
CO+ROH+ROH→(RO)CO(OR)+2H+2e (v)
CO+RNH+RNH→(RNH)CO(RNH)+2H+2e (vi)
なお、Rは上記のRと同じであり、また、RはRと同義であるが、RとRは互いに異なる。すなわち、R及びRはいずれも炭素数1~15の有機基又は水素原子を示すが、R及びRは互いに異なる基である。Rの詳細な説明は、上記したRと同じである。
また、Rは上記のRと同じであり、また、RはRと同義であるが、RとRは互いに異なる。すなわち、R及びRはいずれも炭素数1~15の有機基又は水素原子を示すが、R及びRは互いに異なる基である。Rの詳細な説明は、上記したRと同じである。
【0036】
上記のとおり、式(1)で示される化合物が使用され、カルボニル化反応が起きるとき、最終生成物は、以下の一般式(4)及び(5)によって示される少なくとも1つの化合物を含むとよい。
【化2】
(ただし、R及びR11は上記で定義したとおりである。)
【0037】
より具体的には、カルボニル化反応による最終生成物の例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、トリホスゲン、ビス(2-クロロエチル)カーボネート、ビス(4-クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソール-2-オン、ビニレンカーボネート、4-クロロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、グリセロール-1,2-カーボネートのうちの1又は2以上が挙げられる。
【0038】
式(v)で述べられる反応が起こる場合、最終生成物は、以下の一般式(6)で示される少なくとも1つの化合物を含むとよい。
【化3】
(ただし、R及びRは上記で定義したとおりである。)
また、式(v)で示される反応による最終生成物の例としては、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、クロロメチルイソプロピルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネートのうちの1又は2以上が挙げられる。
【0039】
さらに、式(2)で表される化合物が使用され、かつ尿素化反応が起こる場合、最終生成物は、以下の一般式(7)で表される少なくとも1つの化合物を含むとよい。
【化4】
(ただし、Rは上記で定義したとおりである。)
より具体的には、尿素化反応による最終生成物の例は、N,N’-ジメチル尿素、N,N’-ジエチル尿素、N,N’-ジプロピル尿素、N,N’-ジイソプロピル尿素、N,N’-ジブチル尿素、N,N’-ジフェニル尿素、N,N’-ペンチル尿素、N,N’-ジベンジル尿素、1,3-ビス(4-クロロフェニル)尿素が挙げられる。
式(vi)で述べられる反応が起こる場合、最終生成物は、以下の一般式(8)で表される少なくとも1つの化合物を含むとよい。
【化5】
(ただし、R、Rは上記で定義したとおりである。)
【0040】
(第2電極)
第2電極12は、一酸化炭素と反応基質との反応を電気的に促進させる第2触媒を含む。第2触媒としては、例えば、各種金属、金属化合物、及び導電性炭素材料からなる群から選択される1種又は2種以上を含む材料を使用することができる。
第2触媒は、金属として、第8~12族の一種以上の元素を含むことが好ましく、例えば、鉄、金、銅、ニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム等が挙げられる。金属化合物としては、これら金属の無機金属化合物及び有機金属化合物等の金属化合物を使用することができ、具体的には、金属ハロゲン化物、金属酸化物、金属水酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属酢酸塩、金属リン酸塩、金属カルボニル、及び金属アセチルアセトナト等が挙げられ、金属ハロゲン化物が好ましい。
【0041】
導電性炭素材料としては、電気伝導性を有する種々の炭素材料を使用することができ、例えば、メソポーラスカーボン、活性炭、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンペーパー、及びカーボンウィスカー等が挙げられる。
【0042】
第2電極12は、金属及び金属化合物の少なくともいずれかと、導電性炭素材料とを混合して形成された複合体である。複合体としては複合膜が挙げられる。複合膜は、金属及び金属化合物の少なくともいずれかと、導電性炭素材料の混合物を溶媒中に分散して基材等に塗布して加熱することにより形成することができる。このとき、基材としては、カーボンペーパー等の導電性炭素材料を使用するとよい。
【0043】
第2電極12には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンオリゴマー(TFEO)、フッ化黒鉛((CF)n)、及びフッ化ピッチ(FP)、パーフロオロエチレンスルホン酸樹脂の含フッ素化合物を混合させてもよい。これらは、撥水剤として使用されるものであり、電気化学反応効率を向上させる。
また、上記含フッ素化合物は、第2電極を形成する際の結着剤としても使用できる。したがって、上記した複合体を形成するとき、金属及び金属化合物の少なくともいずれかと、導電性炭素材料に、さらに含フッ素化合物を混合させるとよい。
【0044】
(第3触媒)
本発明の二酸化炭素装置は、第2電解槽中に、二酸化炭素の還元物と反応基質との反応(第2反応)を促進する、第3触媒を含んでもよい。第3触媒は、第2電解槽中に充填された反応基質又は反応基質と溶媒との混合液中に含有させることが好ましい。また、第3触媒は、第2電極に担持などされることで、第2電解槽の第2電極に含有されていてもよい。
第3触媒は、レドックス触媒が好ましい。なお、本明細書におけるレドックス触媒は、酸化状態の可逆的な変化が可能な化合物であればよく、少なくとも1種の活性金属を含む金属化合物、有機化合物、ハロゲンなどが挙げられる。レドックス触媒は、酸化還元特性を示すことから、第2電極近傍以外の領域では一酸化炭素と反応基質との第2反応を促進すると共に、レドックス触媒自体は還元される。ここで還元されたレドックス触媒は、第2電極上の電気化学反応によって再び酸化されることで、再度一酸化炭素と反応基質との第2反応を促進できる。
【0045】
第2電解槽中に充填された反応基質は、一般的に、反応基質、又は反応基質と溶媒との混合液中に存在する一酸化炭素と第2電極上で反応する(第2反応)。ここで、第2反応は、通常反応基質の体積が大きい場合に、第2電極近傍の反応基質の拡散が第2反応の律速となり、全体の反応速度が遅くなる。しかし、レドックス触媒が含まれると、第2電極に拡散する物質はレドックス触媒のみになるため、第2電解槽16における第2反応の反応速度を向上させることができる。また、反応基質の物性に関する制限が緩和されるため、様々な反応基質を使用することが可能になる。さらには、反応のバリエーションも広がり、第2電解槽16における反応を、アミノカルボニル化反応、アルコキシカルボニル化反応、カルボニル化カップリング反応などにすることも可能になる。
【0046】
レドックス触媒に含まれる活性金属としては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Sn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Si、In、Sn、Tl、Pb、Bi、Sb、Te、U、Sm、Tb、La、Ce、及びNd等が挙げられる。これらの中でも、Pd、Co、Niが好ましい。
上記活性金属を含む金属化合物としては、これら金属の無機金属化合物及び有機金属化合物等の金属化合物を使用することができ、具体的には、金属ハロゲン化物、金属酸化物、金属水酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属酢酸塩、金属リン酸塩、金属カルボニル、及び金属アセチルアセトナト等の金属有機錯体等が挙げられる。
活性金属を含む金属化合物の具体例としては、パラジウムアセチルアセトナト(Pd(OAc))、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh錯体)、トリス(2,2’-ビピリジン)コバルト(Co(bpy)3錯体)、トリス[1,3-ビス(4‐ピリジル)プロパン)]コバルト(Co(bpp)錯体)等が挙げられる。
レドックス触媒において使用される有機化合物としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル(TEMPO)等が挙げられる。
レドックス触媒において使用されるハロゲンとしては、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
第3触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第2電解槽中に充填される溶液中の第3触媒の濃度は、例えば、0.001~2mol/L、好ましくは0.001~1mol/Lの範囲である。
【0047】
上記第2反応によって生成された最終生成物は、排出口18から排出させるとよい。排出口18からは、通常、最終生成物とともに、未反応の反応基質、溶媒なども排出される。排出口18からの最終生成物の排出は、特に限定されないが、例えば、第2電解槽16内部に最終生成物が一定量生成されてから行うとよい。また、排出口18から排出された最終生成物は、適宜精製するとよく、二酸化炭素還元装置は、そのための精製機構を有していてもよい。また、最終生成物とともに排出された未反応の反応基質、溶媒等は、再び第2導入口17Bより導入してもよく、本実施形態の二酸化炭素還元装置は、そのための反応基質分離機構、反応基質循環機構等を有していてもよい。
【0048】
<イオン輸送膜>
イオン輸送膜13としては、固体膜が使用され、プロトン等のカチオンを輸送できるカチオン輸送膜、アニオンを輸送できるアニオン輸送膜が挙げられる。本実施形態では、上記のように第2電極12でプロトン等のカチオンが発生し、カチオンはイオン輸送膜13を介して、第1電極11側に送られる。
カチオン輸送膜としては、ポリエチレンスルホン酸、フラーレン架橋ポリスルホン酸、ポリアクリル酸のような炭化水素樹脂系のポリスルホン酸類やカルボン酸類、パーフルオロエチレンスルホン酸のようなフッ素樹脂系のスルホン酸類やカルボン酸類等が好ましく挙げられる。また、SiO-Pのようなリン酸ガラス類、ケイタングステン酸やリンタングステン酸のようなヘテロポリ酸類、ペロブスカイト型酸化物等のセラミックス類等も用いることができる。
また、アニオン輸送膜としては、ポリ(スチリルメチルトリメチルアンモニウムクロリド)のような4級アンモニウム塩を有する樹脂やポリエーテル類等が好ましく挙げられる。
上記した中では、カチオン輸送膜の中でもパーフルオロエチレンスルホン酸樹脂が好ましい。パーフルオロエチレンスルホン酸樹脂の市販品としてはナフィオン(デュポン社の商標)が挙げられる。
【0049】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る二酸化炭素還元装置を説明する。第2の実施形態の二酸化炭素還元装置は、第2連結路を備えるものである。図2は、本発明の第2の実施形態の二酸化炭素還元装置10Bの模式図を示す。
二酸化炭素還元装置10Bは、第1電解槽15と第2電解槽16とを連結する第2連結路40をさらに備える以外は、第1の実施形態の二酸化炭素還元装置10Aと同様の構成を有する。なお、本実施形態の二酸化炭素還元装置10Bが有する各構成のうち、第1の実施形態の二酸化炭素還元装置10Aと同じ番号が付されている部材は、特に説明しない限り、二酸化炭素還元装置10Aと同様の構成を有する。
【0050】
<第2連結路>
第2連結路40は、第1電解槽15と第2電解槽16とを連結する。第2連結路40は、例えば、第1電解槽15と第2電解槽16とを接続する導管等であり、流量調整機構等が設けられ、流量などが調整されてもよい。また、導管には、逆止弁などが取り付けられ、第2電解槽16から第1電解槽15には気体が送られるが、逆方向には気体が送られないようにしてもよい。
第2連結路40は、図2に示すように、第1導入口17Aの中途に接続され、第1導入口17Aを介して、第1電解槽15に接続されるが、第2連結路40は直接第1電解槽15に接続されてもよい。
【0051】
第2連結路40が設けられることで、第1電解槽15及び第1連結路30を通過して第2電解槽16に流出された未反応の二酸化炭素は、さらに第2電解槽16及び第2連結路40を通過し、気体として第1電解槽15に再び流入することが可能になる。このように、二酸化炭素は、第1電解槽15、第1連結路30、第2電解槽16、第2連結路40、第1電解槽15という回路を循環し、その循環の過程で、第1反応に供されるため、二酸化炭素還元装置全体での二酸化炭素の転化率を高めることができる。
【0052】
なお、第2連結路40を通過して、第1電解槽15に流入される成分は、上記した未反応の二酸化炭素の他、第1電解槽15で生成して第2電解槽16に流出された一酸化炭素のうち、第2反応に供されなかった未反応の一酸化炭素等も含んでいてもよい。一酸化炭素は、二酸化炭素と同様に、第2電解槽16、第2連結路40、第1電解槽15、第1連結路30、及び第2電解槽16の順に循環して、その循環の過程で、第2反応に供されるとよい。これにより、一酸化炭素から最終生成物の変換率が上昇する。
【0053】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る二酸化炭素還元装置を説明する。第3の実施形態は、第1電解槽15に電解液が充填された二酸化炭素還元装置である。図3は、本発明の第3の実施形態に係る二酸化炭素還元装置20Aの模式図を示す。なお、本実施形態の二酸化炭素還元装置20Aが有する各構成のうち、第1の実施形態の二酸化炭素還元装置10Aと同じ番号が付されている部材は、特に説明しない限り、二酸化炭素還元装置10Aと同様の構成を有する。
【0054】
二酸化炭素還元装置20Aは、電解槽21内部に、電解液22が満たされ、その電解液22の内部に、第1電極11及び第2電極12が配置される。ただし、第1電極11及び第2電極12は、電解液22に接していればよく、電解液22の内部に配置される必要は必ずしもない。また、二酸化炭素還元装置20Aには、第1電極11側の領域において電解液22中に配置された参照電極(図示せず)等が設けられてもよい。
電解槽21の内部には、イオン輸送膜13が配置され、電解液22が、イオン輸送膜13によって、第1電極11側の領域と、第2電極12側の領域に区画され、第1電解槽15と第2電解槽16が形成される。第2電解槽16中の電解液22は、上記した通り反応基質が含まれるものである。また、第1電解槽15中の電解液22は、第2電解槽16中の電解液22と同一のものであっても、異なるものであってもよい。
【0055】
二酸化炭素還元装置20Aにおいては、第1導入口17Aの一端は、第1電解槽15内部において電解液22の内部に配置され、気体状の二酸化炭素が、バブリング等の方法で電解液中に流入される。流入された二酸化炭素は、少なくとも一部が電解液22に溶解し、第1電極11と接触して還元され、一酸化炭素が生成される。
【0056】
第1電極11上で生成した一酸化炭素は、電解液22上方の空間23に送り出された後、第1連結路30を通過して、第2電解槽16に流出される。このとき、一酸化炭素とともに、未反応の二酸化炭素等も、第1連結路30を通過して、第2電解槽16に流出されてもよい。第2電解槽16では、電解液22として、反応基質又は混合液が充填されているため、上記各実施形態と同様に、第2反応が進行する。
【0057】
<電解液>
電解液22は、アニオン、カチオンを移動できるものである。第2電解槽16における電解液は、電解質塩が添加された反応基質又は混合液が使用される。また、第1電解槽15における電解液は、第2電解槽16における電解質と同じものが使用されてもよいし、異なるものが使用されてもよい。第1電解槽15における電解質としては、電解質塩が添加された反応基質又は混合液以外にも、炭酸水素ナトリウム水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等が使用できる。
【0058】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、第1電解槽15に電解液が充填され、かつ第2連結路が設けられた二酸化炭素還元装置である。図4は、本発明の第4の実施形態に係る二酸化炭素還元装置20Bの模式図を示す。
本実施形態の二酸化炭素還元装置20Bが有する各構成のうち、上記第3の実施形態の二酸化炭素還元装置20Aと同じ番号が付されている部材は、二酸化炭素還元装置20Aと同様の構成を有する。また、第2連結路40の構成は、第2の実施形態の二酸化炭素還元装置10Bにおいて説明した通りである。
本実施形態でも、第2の実施形態と同様に、二酸化炭素、一酸化炭素などが二酸化炭素還元装置20B内を循環するので、二酸化炭素還元装置全体での二酸化炭素の転化率、及び最終生成物の生成率を高めることができる。
【0059】
[その他の実施形態]
なお、上記で示した二酸化炭素還元装置は、本発明の二酸化炭素還元装置の一例を示すものであって、本発明の二酸化炭素還元装置は、上記構成に限定されるものではない。
二酸化炭素還元装置は、例えば、光による起電力により電圧を印加する二酸化炭素還元装置であってもよい。
また、一酸化炭素以外の二酸化炭素の還元物を、第1連結路を介して、第2電解槽に流入させて、その還元物を第2反応に供する二酸化炭素還元装置であってもよい。なお、還元物が液体又は液体に溶解している場合、還元物は、液状のまま、第1連結路を通過させて、第2電解槽に流入させてもよい。
【0060】
[有機化合物の製造方法]
本発明の有機化合物の製造方法は、本発明の二酸化炭素還元装置を用いた製造方法であり、その具体的な方法は、本発明の二酸化炭素還元装置で説明した通りである。
本発明の製造方法で得られる有機化合物とは、二酸化炭素の還元物と反応基質との反応物である。具体的には、本実施形態の二酸化炭素還元装置の説明において記載した通り、上記式(ii)における(RO)CO、上記式(iii)における(RNH)CO等が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0061】
以上説明したように、本発明によると、二酸化炭素還元装置において、第1電極(カソード)で生じる反応と、第2電極(アノード)で生じる反応とを組み合わせた、電力エネルギーを有効活用できる新たな二酸化炭素還元装置、及び該二酸化炭素還元装置を用いる有機化合物の製造方法を提供することができる。
【0062】
上述したように、本発明は、次の[1]~[47]を提供する。
[1]第1電極が設けられる第1電解槽と、第2電極が設けられる第2電解槽と、前記第1電解槽と前記第2電解槽とを区画するイオン輸送膜と、前記第1電解槽と前記第2電解槽を連結する第1連結路とを備え、
前記第1電極が、二酸化炭素を還元物に還元する反応を促進する第1触媒を含み、
前記第2電極が、前記還元物と反応基質との反応を促進する第2触媒を含み、
前記第1連結路が、前記第1電解槽中の前記還元物を、前記第2電解槽に流出させることができる連結路である、二酸化炭素還元装置。
[2]前記第1連結路が、前記第1電解槽と前記第2電解槽とを接続する導管であり、
前記導管が流量調整機構又は逆止弁を有する、上記[1]に記載の二酸化炭素還元装置。
[3]前記第1電解槽と前記第2電解槽とを連結する第2連結路をさらに備え、
前記第2連結路は、前記第2電解槽中の二酸化炭素を、前記第1電解槽に流入させることができる連結路である、上記[1]又は[2]に記載の二酸化炭素還元装置。
[4]前記第2連結路が、前記第1電解槽と前記第2電解槽とを接続する導管であり、
前記導管が流量調整機構又は逆止弁を有する、上記[3]に記載の二酸化炭素還元装置。
[5]前記第1の電解槽に接続された第1導入口をさらに備え、
二酸化炭素が前記第1導入口を介して前記第1電解槽に流入される、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[6]前記第1電極は気体の二酸化炭素と接触する、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[7]前記イオン輸送膜は、カチオンを輸送できるカチオン輸送膜又はアニオンを輸送できるアニオン輸送膜である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[8]前記イオン輸送膜がカチオン輸送膜である、上記[7]に記載の二酸化炭素還元装置。
[9]前記カチオン輸送膜がパーフルオロエチレンスルホン酸樹脂の膜である、上記[8]に記載の二酸化炭素還元装置。
[10]前記第1触媒が、金属、金属化合物、ヘテロ元素を含有するカーボン化合物及び金属を含有するカーボン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含む、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[11]前記金属及び前記金属化合物の金属が、Bi、Sb、Ni、Co、Ru及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の金属である、上記[10]に記載の二酸化炭素還元装置。
[12]前記金属がAgである、上記[10]又は[11]に記載の二酸化炭素還元装置。
[13]前記1電極は、前記金属及び前記金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種の物質と、前記金属及び前記金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種の物質を担持した導電性炭素材料とを含有する、上記[10]~[12]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[14]前記第1電極は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンオリゴマー(TFEO)、フッ化黒鉛((CF)n)、フッ化ピッチ(FP)、及びパーフロオロエチレンスルホン酸樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の含フッ素化合物をさらに含有する、上記[1]~[13]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[15]前記第2触媒が、金属、金属化合物及び導電性炭素材料からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含む、上記[1]~[14]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[16]前記第2触媒が、第8~12族の一種以上の元素を含むものである、上記[1]~[15]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[17]前記第2触媒が、鉄、金、銅、ニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、及びイリジウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むものである、上記[16]に記載の二酸化炭素還元装置。
[18]前記第2触媒がパラジウムを含むものである、上記[16]又は[17]に記載の二酸化炭素還元装置。
[19]前記第2触媒が金を含むものである、上記[16]又は[17]に記載の二酸化炭素還元装置。
[20]前記物質が金属ハロゲン化物である、上記[15]~[18]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[21]前記第2電極は、前記金属及び前記金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種の物質と導電性炭素材料とを混合して形成された複合体である、上記[15]~[20]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[22]前記第2電極は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンオリゴマー(TFEO)、フッ化黒鉛((CF)n)、フッ化ピッチ(FP)、及びパーフロオロエチレンスルホン酸樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の含フッ素化合物をさらに含有する、上記[1]~[21]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[23]前記反応基質が、溶媒との混合液として前記第2電解槽の内部に充填される、上記[1]~[22]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[24]前記溶媒が、ニトリル系溶媒、炭酸エステル系溶媒、ラクトン系溶媒、エーテル系溶媒、リン酸エステル系溶媒、リン酸類、スルフォラン系溶媒及びピロリドン類からなる群から選択される少なくとの1種の溶媒である、上記[23]に記載の二酸化炭素還元装置。
[25]前記反応基質又は前記混合液が電解質塩をさらに含有する、上記[24]に記載の二酸化炭素還元装置。
[26]前記電解質塩が、アルカリ金属塩、アルカリ金属の過酸化物及びアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種の塩である、上記[25]に記載の二酸化炭素還元装置。
[27]前記第2電解槽が、前記還元物と反応基質との反応を促進する第3触媒を含む、上記[1]~[26]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[28]前記第3触媒が、レドックス触媒である、上記[27]に記載の二酸化炭素還元装置。
[29]前記レドックス触媒に含まれる活性金属は、Pd、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属である、上記[28]に記載の二酸化炭素還元装置。
[30]前記レドックス触媒は、パラジウムアセチルアセトナト(Pd(OAc))、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh錯体)、トリス(2,2’-ビピリジン)コバルト(Co(bpy)3錯体)、及びトリス[1,3-ビス(4‐ピリジル)プロパン)]コバルト(Co(bpp)錯体)からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物である、上記[28]又は[29]に記載の二酸化炭素還元装置。
[31]前記レドックス触媒に含まれる活性金属はPdである、上記[28]又は[29]に記載の二酸化炭素還元装置。
[32]前記レドックス触媒は、パラジウムアセチルアセトナト(Pd(OAc))及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh錯体)からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物である、上記[29]~[31]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
[33]前記還元物が一酸化炭素であり、
前記反応基質が、下記一般式(1)~(2)で表される少なくともいずれかの化合物を含む、上記[1]~[32]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
OH (1)
(Rは、炭素数1~15の有機基又は水素原子を示す。)
NH (2)
(Rは、炭素数1~15の有機基又は水素原子を示す。)
[34]前記一般式(1)で表される化合物が、R1が1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数1~8のアルキル基である化合物、R1が1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数2~8のアルケニル基である化合物、R1が1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数6~8のアリール基である化合物、及びR1が1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数2~8のヒドロキシアルキル基である化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、上記[33]に記載の二酸化炭素還元装置。
[35]前記一般式(1)で表される化合物が、メタノール、エタノール、フェノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-プロパノール、2-ブタノール、2-ペンタノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、エテン-1,2-ジオール、2-ブテン-2,3-ジオール、グリセロール、2-クロロエタノール、トリクロロメタノール、2,2,2-トリフロオロエタノール、4-クロロフェノール、1-クロロエタン-1,2-ジオール、及び1-フルオロエタン-1,2-ジオールからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、上記[34]に記載の二酸化炭素還元装置。
[36]前記一般式(2)で表される化合物が、R2が1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数1~8のアルキル基である化合物、R2が1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数2~8のアルケニル基である化合物、及びR2が1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数6~8のアリール基である化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、上記[33]に記載の二酸化炭素還元装置。
[37]前記一般式(2)で表される化合物が、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、アニリン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、及び4-クロロアニリンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、上記[36]に記載の二酸化炭素還元装置。
[38]前記還元物と反応基質との反応により生成される有機化合物が、以下の一般式(4)及び(5)で表される化合物の少なくとも1つを含む上記[1]~[37]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
【化6】
(ただし、Rはそれぞれ独立に炭素数1~15の有機基又は水素原子を示し、R11は炭素数1~15の有機基を示す。)
[39]前記一般式(4)及び(5)で表される化合物が、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、トリホスゲン、ビス(2-クロロエチル)カーボネート、ビス(4-クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソール-2-オン、ビニレンカーボネート、4-クロロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、及びグリセロール-1,2-カーボネートなる群から選択される少なくとも1種の化合物である上記[38]に記載の二酸化炭素還元装置。
[40]前記還元物と反応基質との反応により生成される有機化合物が、以下の一般式(6)で表される化合物の少なくとも1つを含む上記[1]~[39]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
【化7】
(ただし、R、R3はそれぞれ独立に炭素数1~15の有機基又は水素原子を示し、R及びR3は互いに異なる。)
[41]前記還元物と反応基質との反応により生成される有機化合物が、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、クロロメチルイソプロピルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、及びブチルメチルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、上記[40]に記載の二酸化炭素還元装置。
[42]前記還元物と反応基質との反応により生成される有機化合物が、以下の一般式(7)で表される化合物を含む上記[1]~[37]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
【化8】
(ただし、Rはそれぞれ独立に1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数1~8のアルキル基、1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数2~8のアルケニル基、又は、1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数6~8のアリール基である。)
[43]前記一般式(7)で表される化合物が、N,N’-ジメチル尿素、N,N’-ジエチル尿素、N,N’-ジプロピル尿素、N,N’-ジイソプロピル尿素、N,N’-ジブチル尿素、N,N’-ジフェニル尿素、N,N’-ペンチル尿素、N,N’-ジベンジル尿素、及び1,3-ビス(4-クロロフェニル)尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である上記[42]に記載の二酸化炭素還元装置。
[44]前記還元物と反応基質との反応により生成される有機化合物が、以下の一般式(8)で表される化合物を含む上記[1]~[37]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置。
【化9】

(ただし、R及びRはそれぞれ独立に1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数1~8のアルキル基、1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数2~8のアルケニル基、又は、1又は2以上のハロゲン原子で置換してもよい炭素数6~8のアリール基であり、R及びRは互いに異なる。)
[45]上記[1]~[44]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置を用いた、有機化合物の製造方法。
[46]前記第1電解槽に二酸化炭素を流入させ、
流入された前記二酸化炭素を前記第1電極上で還元し還元物を生成し、その還元物が第1連結路を通って第1電解槽から第2電解槽に流出し、かつ
前記第2電極上において、前記第2電解槽内の反応基質と、前記還元物とを反応させ、有機化合物を生成する
上記[45]に記載の有機化合物の製造方法。
[47]前記二酸化炭素還元装置は前記第1電解槽と前記第2電解槽とを連結する第2連結路をさらに備え、
二酸化炭素は、前記第1電解槽、前記第1連結路、前記第2電解槽、前記第2連結路及び前記第1電解槽という回路を循環し、二酸化炭素はその循環の過程で前記還元物に還元する反応に供される
上記[45]又は[46]に記載の有機化合物の製造方法。
【実施例
【0063】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
30mgの銀ナノ粒子(アルドリッチ社製)と、3mgのPTFEを0.3mLのイソプロパノールに分散させ、カーボンペーパー上に塗布した。これを80℃で1時間加熱乾燥させて第1電極を得た。
続いて、30mgのPdCl(アルドリッチ社製)と10mgのメソポーラスカーボン(アルドリッチ社製)、3mgのPTFEを、0.5mlのイソプロパノールに分散させ、カーボンペーパー上に塗布し、300℃で1時間加熱することで第2電極を得た。
得られた第1電極と第2電極を、ナフィオン(商標名)からなるイオン輸送膜に積層し、59MPa、413Kで熱プレスすることで膜-電極接合体を作製した。第1電解槽と第2電解槽の空間を有する二室型隔膜式セル中央に膜-電極接合体をセットし、二酸化炭素還元装置とした。
第1電解槽にCO(1atm)を流通させ、第2電解槽には、電解質塩としてLiBr(アルドリッチ社製)を0.2mol/L含有するメタノール(反応基質)を満たした。さらに、第1電解槽と第2電解槽とをテフロンチューブで連結させて連結路を形成し、第1電解槽で生じた生成物を第2電解槽でバブリングさせた。
273Kで第1電極-第2電極間に2.5Vの電圧を印加させ、第1電解槽及び第2電解槽での生成物をガスクロマトグラフィー(GC)にて分析した。各電解槽における主生成物が表1に示される。
【0065】
(実施例2)
実施例1において、反応基質を、メタノールからエタノールに変更したこと以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0066】
(実施例3)
実施例1において、PdClに代えて金ナノ粒子(アルドリッチ社製)を使用し、第2電解槽における反応基質を、メタノールからフェノールに変更したこと以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0067】
(実施例4)
実施例1において、第2電解槽を、LiBrを含有するメタノールに代えて、第3触媒としてパラジウムアセチルアセトナト(Pd(OAc))(アルドリッチ社製)を0.002mol/L、電解質塩としてテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(アルドリッチ社製)0.2mol/L、反応基質としてブチルアミン(BuNH)(アルドリッチ社製)を0.02mol/L含有するアセトニトリルで満たしたこと以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0068】
(実施例5)
実施例1において、第2電解槽を、LiBrを含有するメタノールに代えて、第3触媒としてパラジウムアセチルアセトナト(Pd(OAc))(アルドリッチ社製)を0.002mol/L、電解質塩としてテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(アルドリッチ社製)0.2mol/L、反応基質としてアニリン(PhNH)(アルドリッチ社製)を0.02mol/L含有するアセトニトリルで満たしたこと以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0069】
(実施例6)
反応基質をメタノールから1-プロパノールに変更した以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0070】
(実施例7)
反応基質をメタノールから1-ブタノールに変更した以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0071】
(実施例8)
反応基質をメタノールからエチレングリコールに変更した以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0072】
(実施例9)
反応基質をメタノールから1,2-プロパンジオールに変更した以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0073】
(実施例10)
反応基質をメタノールから1,2-ブタンジオールに変更した以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0074】
(実施例11)
反応基質をメタノールから1,3-プロパンジオールに変更した以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0075】
(実施例12)
反応基質をメタノールから質量比1:1のメタノールとエタノールの混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0076】
(実施例13)
反応基質をメタノールから質量比1:1のメタノールとフェノールの混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0077】
(実施例14)
反応基質をメタノールから質量比1:1のメタノールと1-ブタノールの混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0078】
(実施例15)
反応基質をメタノールから2-クロロエタノールに変更した以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0079】
(実施例16)
反応基質をブチルアミンからペンチルアミンに変更した以外は、実施例4と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0080】
(実施例17)
反応基質をブチルアミンからベンジルアミンに変更した以外は、実施例4と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0081】
(実施例18)
反応基質をブチルアミンから4-クロロアニリンに変更した以外は、実施例4と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0082】
(実施例19)
第1電解槽を第2電解槽に第2のテフロンチューブで連結させて、第2連結路を形成した以外は、実施例1と同様に二酸化炭素還元装置を用意した。第2のテフロンチューブから導入される気体も合わせたCO合計量が、実施例1において流入されるCO量と同じとなるように、第1電解槽に流入されるCO量を調整したところ、実施例1に比べると原料としてのCO消費量が減少した。
【0083】
(実施例20)
第1電解槽を第2電解槽に第2のテフロンチューブで連結させて、第2連結路を形成した以外は、実施例2と同様に二酸化炭素還元装置を用意した。第2のテフロンチューブから導入される気体も合わせたCO合計量が、実施例2において流入されるCO量と同じとなるように、第1電解槽に流入されるCO量を調整したところ、実施例2に比べると原料としてのCO消費量が減少した。
【0084】
(比較例1)
実施例1において、第2電解槽を、LiBrを含有するメタノールに代えて、電解質塩としてLiBr(アルドリッチ社製)を0.2mol/L含有する水を満たし、第1電解槽と第2電解槽とを連結する連結路を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0085】
(比較例2)
実施例1において、第1電解槽と第2電解槽とを連結する連結路を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0086】
(比較例3)
実施例4において、第1電解槽と第2電解槽とを連結する連結路を設けなかったこと以外は、実施例4と同様にして二酸化炭素還元装置を作製し、生成物を評価した。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示すとおり、各実施例の第1電解槽において、比較例では生じえなかった化合物が生成した。これにより、本発明の二酸化炭素還元装置は、第1電極における還元反応と、第2電極における酸化反応を同時に活用することで二酸化炭素を有益な化合物に変換できることが明らかである。
【符号の説明】
【0089】
10A、10B、20A、20B 二酸化炭素還元装置
11 第1電極
12 第2電極
13 イオン輸送膜
14 膜-電極接合体
15 第1電解槽
16 第2電解槽
17A 第1導入口
17B 第2導入口
18 排出口
19 電源
21 電解槽
22 電解液
23 空間
30 第1連結路
40 第2連結路
図1
図2
図3
図4