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特許7503121インジウム化合物、その製造方法、インジウム含有薄膜蒸着用組成物、およびインジウム含有薄膜の製造方法
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  • 特許-インジウム化合物、その製造方法、インジウム含有薄膜蒸着用組成物、およびインジウム含有薄膜の製造方法 図1
  • 特許-インジウム化合物、その製造方法、インジウム含有薄膜蒸着用組成物、およびインジウム含有薄膜の製造方法 図2
  • 特許-インジウム化合物、その製造方法、インジウム含有薄膜蒸着用組成物、およびインジウム含有薄膜の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】インジウム化合物、その製造方法、インジウム含有薄膜蒸着用組成物、およびインジウム含有薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20240612BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20240612BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20240612BHJP
   C07F 5/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/365
H01L21/318 B
C07F5/00 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022196355
(22)【出願日】2022-12-08
(65)【公開番号】P2023099307
(43)【公開日】2023-07-12
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0192107
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514145604
【氏名又は名称】ディーエヌエフ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DNF Co. Ltd.
【住所又は居所原語表記】142 Daehwa-ro 132beon-gil, Daedeok-gu, Daejeon 306-802 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヨンヒ
(72)【発明者】
【氏名】イム ユンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン サンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ビュン テソク
(72)【発明者】
【氏名】イ サンチャン
(72)【発明者】
【氏名】イ サンイク
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-143316(JP,A)
【文献】特開2004-299963(JP,A)
【文献】国際公開第2021/106652(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225668(WO,A1)
【文献】特開2005-068074(JP,A)
【文献】特表2002-510700(JP,A)
【文献】特開2018-090855(JP,A)
【文献】特開平02-163930(JP,A)
【文献】特表2000-509708(JP,A)
【文献】特表2000-510117(JP,A)
【文献】特表2001-510443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/365
H01L 21/318
C07F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるインジウム化合物。
[化学式1]
【化1】
[前記化学式1中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり;
~Rは、互いに独立して、C1-C10アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してもよい。]
【請求項2】
前記化学式1中、
Lは、C1-C6アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり;
~Rは、互いに独立して、C1-C6アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してもよい、請求項1に記載のインジウム化合物。
【請求項3】
下記化学式2で表される、請求項1に記載のインジウム化合物。
[化学式2]
【化2】
[前記化学式2中、
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり;
~Rは、互いに独立して、C1-C6アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してもよく;
mは1~3の整数である。]
【請求項4】
下記化合物から選択されるものである、請求項1に記載のインジウム化合物。
【化3】
【請求項5】
下記化学式4の化合物に、下記化学式5および下記化学式6の化合物を反応させて、下記化学式1のインジウム化合物を製造するステップを含むインジウム化合物の製造方法。
[化学式1]
【化4】
[化学式4]
【化5】
[化学式5]
MgX
[化学式6]
MgX
[前記化学式1、4、5、および6中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり;
およびRは、互いに独立して、C1-C10アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してもよく;
X、X、およびXは、互いに独立して、ハロゲンである。]
【請求項6】
前記化学式4の化合物は、下記化学式7の化合物および下記化学式8の化合物を反応させて製造される、請求項5に記載のインジウム化合物の製造方法。
[化学式7]
【化6】
[化学式8]
InX
[前記化学式7および8中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してもよく;
Xはハロゲンである。]
【請求項7】
請求項1から4の何れか一項に記載のインジウム化合物を含む、インジウム含有薄膜蒸着用組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のインジウム化合物を用いて薄膜を製造する、インジウム含有薄膜の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載のインジウム含有薄膜蒸着用組成物を用いて薄膜を製造する、インジウム含有薄膜の製造方法。
【請求項10】
a)チャンバー内に取り付けられた基板を昇温させるステップと、
b)前記チャンバー内に反応ガスとインジウム含有薄膜蒸着用組成物を注入してインジウム含有薄膜を製造するステップと、を含む、請求項8に記載のインジウム含有薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記反応ガスは、酸素(O)、オゾン(O)、水蒸気(HO)、過酸化水素(H)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、アンモニア(NH)、窒素(N)、ヒドラジン(N)、アミン、ジアミン、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、C~C12の飽和または不飽和炭化水素、水素(H)、アルゴン(Ar)、シラン(silane)、およびヘリウム(He)から選択される何れか1つまたは2つ以上である、請求項10に記載のインジウム含有薄膜の製造方法。
【請求項12】
前記インジウム含有薄膜は、インジウムの含量が35%以上である、請求項8に記載のインジウム含有薄膜の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジウム化合物、その製造方法、それを含む薄膜蒸着用組成物、インジウム含有薄膜の製造方法、およびインジウム含有薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代ディスプレイは、低電力、高解像度、高信頼性を目標として発展している。このような目標を達成するためには、高い電荷移動度を有する薄膜トランジスタ(thin film transistor;TFT)物質が求められる。
【0003】
薄膜は、半導体装置の製造やナノ技術のような重要なアプリケーションに多様に利用されている。かかるアプリケーションは、例えば、伝導性膜、高-屈折率の光学コーティング、腐食防止コーティング、光触媒自己洗浄ガラスコーティング、生体適合性コーティング、電界効果トランジスタ(FET)内のゲート誘電体絶縁膜、誘電体キャパシタ層、キャパシタ電極、ゲート電極、接着体拡散障壁、および集積回路などを含む。また、薄膜は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)アプリケーションのためのhigh-k誘電体酸化物、赤外線検出器、および不揮発性強誘電体ランダムアクセスメモリ(non-volatile ferroelectric random access memories、NV-FeFAMs)に用いられる強誘電性のペロブスカイトのようなマイクロ電子応用分野にも用いられている。マイクロ電子工学部品の小型化が続けられており、これに伴い、誘電体薄膜使用の必要性が増大している。
【0004】
従来は、薄膜トランジスタに非晶質のシリコンが用いられていたが、近年、シリコンよりも電荷移動度が高く、多結晶シリコンに比べて低温工程が容易な金属酸化物が用いられている。かかる金属酸化物としては、インジウム(Indium)、亜鉛(Zinc)などの種々の金属原子を添加した材料が用いられており、金属酸化物薄膜は、スパッタリング(Sputtering)、ALD(Atomic Layer Deposition)、PLD(Pulsed Laser Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの工程により製造される。
【0005】
インジウムは、優れた透明度と電気伝導度を有するため、透明電極に広く活用されているが、インジウム(In)を含む金属薄膜を、スパッタ(Sputter)ターゲットを利用してスパッタリングにより形成する場合、蒸着された薄膜の組成はスパッタターゲットによって決定されるため、薄膜の組成を均一に調節するのに限界がある。また、大面積の蒸着時に、薄膜の組成および厚さを均一に維持しにくいため、均一な膜の特性を得ることも困難である。また、スパッタリング(Sputtering)の代わりに化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition;CVD)方式により製造する場合、従来に用いられていたトリメチルインジウム(CAS NO.3385-78-2)などのインジウム前駆体はたいていが固体であるため、蒸気圧調節および均一な膜の再現性の点で問題があった。特に、250℃以上の高温条件で、たいていのインジウム(In)前駆体は熱分解される特性があるため高品質の薄膜が得られにくく、大面積の蒸着時に均一な厚さと一定な多成分系組成の薄膜を得る点においても限界があった。
【0006】
したがって、高温に対する熱安定性に優れ、且つ均一に蒸着される高品質のインジウム前駆体の開発が必要とされている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国特許登録第10-2328782号(2017.03.06.)公報
【文献】韓国特許登録第10-1953893号(2012.11.08.)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、新規なインジウム化合物、および大量生産が容易なインジウム化合物の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、本発明の一実施形態に係るインジウム化合物を含むインジウム含有薄膜蒸着用組成物を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、インジウム化合物、およびそれを含むインジウム含有薄膜蒸着用組成物を用いて、均一な厚さを有するインジウム含有薄膜の製造方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明は、インジウムの含量が35%以上であるインジウム含有薄膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記化学式1で表されるインジウム化合物を提供する。
【0013】
[化学式1]
【化1】
[前記化学式1中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり;
~Rは、互いに独立して、C1-C10アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してもよい。]
【0014】
前記化学式1中、LはC1-C6アルキレンであり、R~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり、R~Rは、互いに独立して、C1-C6アルキルであり、Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、R11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係る前記インジウム化合物は、下記化学式2で表されてもよい。
【0016】
[化学式2]
【化2】
[前記化学式2中、
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり;
~Rは、互いに独立して、C1-C6アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してもよく;
mは1~3の整数である。]
【0017】
本発明の一実施形態に係る前記インジウム化合物は、下記化合物から選択されるものであってもよい。
【0018】
【化3】
【0019】
また、本発明は、インジウム化合物の製造方法を提供し、下記化学式1で表されるインジウム化合物は、下記化学式4の化合物に、下記化学式5および下記化学式6の化合物を反応させて製造されることができる。
【0020】
[化学式1]
【化4】
【0021】
[化学式4]
【化5】
【0022】
[化学式5]
MgX
【0023】
[化学式6]
MgX
[前記化学式1、4、5、および6中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり;
およびRは、互いに独立して、C1-C10アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してもよく;
X、X、およびXは、互いに独立して、ハロゲンである。]
【0024】
前記化学式4の化合物は、下記化学式7の化合物および下記化学式8の化合物を反応させて製造されることができる。
【0025】
[化学式7]
【化6】
【0026】
[化学式8]
InX
[前記化学式7および8中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してもよく;
Xはハロゲンである。]
【0027】
本発明は、本発明の一実施形態に係るインジウム化合物を含むインジウム含有薄膜蒸着用組成物を提供する。
【0028】
また、本発明は、本発明の一実施形態に係るインジウム化合物、またはそれを含むインジウム含有薄膜蒸着用組成物を用いてインジウム含有薄膜を製造する製造方法を提供する。
【0029】
上記の製造方法は、a)チャンバー内に取り付けられた基板を昇温させるステップと、b)前記チャンバー内に反応ガスと前記インジウム含有薄膜蒸着用組成物を注入してインジウム含有薄膜を製造するステップと、を含んでもよい。
【0030】
前記反応ガスは、酸素(O)、オゾン(O)、水蒸気(HO)、過酸化水素(H)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、アンモニア(NH)、窒素(N)、ヒドラジン(N)、アミン、ジアミン、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、C~C12の飽和または不飽和炭化水素、水素(H)、アルゴン(Ar)、シラン(silane)、およびヘリウム(He)から選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよい。
【0031】
本発明は、インジウム35%以上を含むインジウム含有薄膜を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一実施形態に係るインジウム化合物は、より向上した熱安定性、高い揮発性、および向上した蒸気圧を有するため、安定な蒸着速度を示し、信頼性に優れた薄膜を形成することができる。
【0033】
本発明の一実施形態に係るインジウム化合物の製造方法は、単純な工程により、産業的に容易に高純度のインジウム化合物を高収率で製造することができる。
【0034】
本発明の一実施形態に係るインジウム含有薄膜の製造方法は、本発明のインジウム化合物、またはそれを含むインジウム含有薄膜蒸着用組成物を用いることで、原子層蒸着法(ALD)などにより、高い膜均一性および良好なドープ調節性を有することができる。さらに、上記の製造方法は、立体的な半導体装置に対する均一なステップカバレッジ(conformal step coverage)を提供することができる。
【0035】
本発明の一実施形態に係るインジウム含有薄膜は、35%以上のインジウムを含有するため、優れた物性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施例1のTG分析結果を示した図である。
図2】本発明の実施例1のDSC分析結果を示した図である。
図3】本発明の実施例2のTG分析結果を示した図である。
図4】本発明の実施例2のDSC分析結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、インジウム化合物、その製造方法、それを含むインジウム含有薄膜蒸着用組成物、およびそれを利用した薄膜の製造方法を提供する。
【0038】
本発明で用いられる単数の形態は、文脈で特に断らない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0039】
本発明に記載の「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、さらに挙げられていない要素、材料、または工程を排除しない。
【0040】
本発明に記載の「アルキル」は、直鎖状または分岐状の両方を含み、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子であってもよい。また、さらに他の態様において、アルキルは、1~4個の炭素原子を有してもよい。
【0041】
本発明に記載の「アルキレン」は、「アルキル」から1つの水素の除去により誘導された2価の有機ラジカルを意味し、ここで、アルキルは上記の定義のとおりである。
【0042】
本発明に記載の「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0043】
本発明に記載の「ハロアルキル」は、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。例えば、ハロアルキルは、CF、-CHF、-CHF、-CBr、-CHBr、-CHBr、-CCl、-CHCl、-CHCl、-CI、-CHI、-CHI、-CH-CF、-CH-CHF、-CH-CHF、-CH-CBr、-CH-CHBr、-CH-CHBr、-CH-CCl、-CH-CHCl、-CH-CHCl、-CH-CI、-CH-CHI、-CH-CHI、およびこれらと類似のものを含む。ここで、アルキルおよびハロゲンは、上記の定義のとおりである。
【0044】
本発明に記載のアルキル、などに記載された炭素数は、置換基の炭素数を含まないものであり、一例として、C1-C10アルキルは、アルキルの置換基の炭素数が含まれない炭素数1~10のアルキルを意味する。
【0045】
本発明に記載の「置換された(substituted)」は、置換される部分(例えば、アルキル、アリール、またはシクロアルキル)の水素原子が置換基で代替されることを意味する。
【0046】
以下、本発明について具体的に説明する。この際、用いられる技術用語および科学用語において、別に定義されない限り、この発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明において本発明の旨を不明瞭にする可能性のある公知機能および構成についての説明は省略する。
【0047】
本発明は、下記化学式1で表されるインジウム化合物を提供する。
【0048】
[化学式1]
【化7】
[前記化学式1中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり;
~Rは、互いに独立して、C1-C10アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してもよい。]
【0049】
本発明に係る前記化学式1で表されるインジウム化合物は、優れた熱安定性、高い揮発性、および向上した蒸気圧を示し、これを採用すると、高い信頼性を有するインジウム含有薄膜を得ることができる。
【0050】
本発明の一実施形態に係るインジウム化合物は、前記化学式1中、LはC1-C6アルキレンであり、R~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり、R~Rは、互いに独立して、C1-C6アルキルであり、Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、R11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してもよい。
【0051】
好ましい一実施形態に係るインジウム化合物は、下記化学式2で表されてもよい。
【0052】
[化学式2]
【化8】
[前記化学式2中、
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであり;
~Rは、互いに独立して、C1-C6アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C6アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて脂環族環を形成してもよく;
mは1~3の整数である。]
【0053】
前記化学式2で表されるインジウム化合物は、より具体的に、R~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、R~Rは、互いに独立して、C1-C4アルキルであり、Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり、R11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してもよく、mは2または3の整数である。
【0054】
より好ましい一実施形態に係るインジウム化合物は、下記化学式2-1で表されてもよい。
【0055】
[化学式2-1]
【化9】
[前記化学式2-1中、
Rは、C1-C4アルキルであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであるか、前記R11とR12は、C2-C6アルキレンで連結されて脂環族環を形成してもよく;
mは2または3の整数である。]
【0056】
一実施形態において、前記インジウム化合物は、下記化合物から選択されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
【化10】
【0058】
本発明は、本発明の一実施形態に係るインジウム化合物を製造する方法を提供し、下記化学式1で表されるインジウム化合物は、下記化学式4の化合物に、下記化学式5および下記化学式6の化合物を反応させて製造されることができる。
【0059】
[化学式1]
【化11】
【0060】
[化学式4]
【化12】
【0061】
[化学式5]
MgX
【0062】
[化学式6]
MgX
[前記化学式1、4、5、および6中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり;
およびRは、互いに独立して、C1-C10アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してもよく;
X、X、およびXは、互いに独立して、ハロゲンである。]
【0063】
具体的に、本発明の一実施形態に係るインジウム化合物を製造する方法において、下記化学式1で表されるインジウム化合物は、前記化学式4の化合物に、前記化学式5および前記化学式6の化合物を反応させて製造し、この際、化学式5の化合物と化学式6の化合物を徐々に添加して製造するか、化学式5の化合物を添加して一定時間反応させてから化学式6を添加して反応させることで製造することができる。
【0064】
前記化学式4の化合物は、下記化学式7の化合物および下記化学式8の化合物を反応させて製造されることができる。
【0065】
[化学式7]
【化13】
【0066】
[化学式8]
InX
[前記化学式7および8中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してもよく;
Xはハロゲンである。]
【0067】
また、前記化学式7で表される化合物は、アルキルリチウムおよび下記化学式9の化合物を反応させて製造されることができる。
【0068】
[化学式9]
【化14】
[前記化学式9中、
Lは、C1-C10アルキレンまたはハロC1-C10アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり;
Yは、-NR1112、-OR13、または-SR14であり;
11~R14は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、またはハロC1-C10アルキルであるか、前記R11とR12は連結されて環を形成してもよい。]
【0069】
具体的に、前記アルキルリチウムはC1-C10アルキルリチウムであってもよく、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、Tert-ブチルリチウム、およびn-ヘキシルリチウムから選択される1つまたは2つ以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0070】
前記インジウム化合物の製造方法は、単純な工程により、容易に大量生産が可能である。
【0071】
一実施形態に係る製造方法で用いられる溶媒としては、通常の有機溶媒であれば何れも可能であるが、ヘキサン、ペンタン、ジクロロメタン(DCM)、ジクロロエタン(DCE)、ベンゼン(Benzene)、トルエン(Toluene)、アセトニトリル(MeCN)、ニトロメタン(Nitromethan)、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、およびN,N-ジメチルアセトアミド(DMA)からなる群から選択される1つまたは2つ以上を用いることが好ましい。
【0072】
反応温度は、通常の有機合成で用いられる温度であればよいが、反応物質および出発物質の量によって変わり得、好ましくは-30℃~40℃で行われてもよく、具体的には-20℃~30℃で行われてもよく、より具体的には-10℃~20℃で行われてもよい。
【0073】
反応は、NMRなどにより、出発物質が完全に消費されたことを確認してから終了させる。その後、抽出過程、減圧下で溶媒を蒸留させる過程、およびカラムクロマトグラフィーなどの通常の方法により目的物を分離精製する過程を行うこともできる。
【0074】
前記シクロペンタジエン系化合物は、共鳴構造により中心金属に安定して配位結合され、インジウム化合物の熱的安定性が非常に向上することができる。これにより、本発明の一実施形態に係るインジウム化合物は、これを採用することで、インジウム、インジウム窒化物(InNx)またはインジウム酸化物(InOx)から構成される薄膜を高い信頼性で形成することができる。
【0075】
前記シクロペンタジエン系化合物は、アミノアルキル、アルコキシアルキル、またはアルキルスルフィドが結合されることができる。これにより、蒸着工程時における前記シクロペンタジエン化合物の熱的安定性がより向上することができる。
【0076】
本発明は、本発明の一実施形態に係るインジウム化合物を含むインジウム含有薄膜蒸着用組成物を提供する。
【0077】
また、本発明は、本発明の一実施形態に係るインジウム化合物またはそれを含むインジウム含有薄膜蒸着用組成物を用いてインジウム含有薄膜を製造する製造方法を提供する。
【0078】
前記インジウム含有薄膜の製造方法は、当業界で用いられる通常の方法、具体的には、原子層蒸着法(ALD)、化学気相蒸着法(CVD)、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、低圧化学気相蒸着法(LPCVD)、プラズマ強化化学気相蒸着法(PECVD)、またはプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)であってもよい。
【0079】
より好ましく、一実施形態に係る前記インジウム含有薄膜の製造方法は、原子層蒸着法(ALD)、化学気相蒸着法(CVD)、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)などであってもよい。
【0080】
前記製造方法は、a)チャンバー内に取り付けられた基板を昇温させるステップと、b)前記チャンバー内に反応ガスと前記インジウム含有薄膜蒸着用組成物を注入してインジウム含有薄膜を製造するステップと、を含んでもよい。
【0081】
本発明に係る一実施形態において、前記a)ステップにおいて、チャンバー内に取り付けられた基板は、200℃~1000℃に昇温してもよく、具体的に250℃~500℃、より具体的に300℃~400℃に昇温してもよい。上記の温度のように、相対的に低い温度でインジウム含有薄膜蒸着用組成物の蒸着が可能であって、工程効率が向上し、蒸着工程で用いられる化合物の熱分解を減少させることで、蒸着工程の安定性および生産性が著しく改善される効果を奏することができる。また、インジウム含有薄膜の炭素のような不純物の含量を減少させ、製造された薄膜の物性を向上させることができる。
【0082】
一実施形態に係る基板は、ガラス、シリコン、金属、ポリエステル(Polyester、PE)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate、PET)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylenenapthalate、PEN)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PC)、ポリエーテルイミド(Polyetherimide、PEI)、ポリエーテルスルホン(Polyethersulfone、PES)、ポリエーテルエーテルケトン(Polyetheretherketone、PEEK)、およびポリイミド(Polyimide、PI)からなる群から選択される1つまたは2つ以上の基材を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0083】
前記b)ステップにおいて、インジウム含有薄膜蒸着用組成物は、単独で用いてもよく、前記組成物に、ガリウム前駆体および亜鉛前駆体からなる群から選択される1つまたは2つ以上を混合した混合物として用いてもよい。
【0084】
具体的に、前記ガリウム前駆体はTMG(trimethylgallium)であってもよく、前記亜鉛前駆体はDEZ(diethylzinc)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0085】
本発明の一実施形態に係るインジウム含有薄膜の製造方法は、異種金属が含まれる多層構造の薄膜で製造されることができ、前記インジウム含有薄膜蒸着用組成物と他の金属の前駆体を順に蒸着して積層された構造であってもよい。
【0086】
また、前記多層構造の薄膜は、インジウム含有薄膜蒸着用組成物と他の金属の前駆体を混合して蒸着されたものであってもよく、具体的に、ガリウム前駆体および亜鉛前駆体からなる群から選択される1つまたは2つ以上と、インジウム薄膜蒸着用組成物とを混合した化合物を基材上に蒸着して積層された構造であってもよい。
【0087】
より詳細に、前記多層構造の薄膜は、IGZO(インジウム/ガリウム/亜鉛/酸化物)であってもよく、インジウム:ガリウム:亜鉛の組成比は、(1~10):(1~10):(1~10)であり、好ましくは(1~5):(1~5):(1~5)、より好ましくは1:1:1であってもよい。
【0088】
前記製造方法のb)ステップにおいて、目的とする薄膜の構造、または熱的特性に応じて蒸着条件が調節され得る。一実施形態に係る蒸着条件としては、インジウム化合物の投入流量、反応ガスおよび移送ガスの投入流量、圧力、RFパワーなどが挙げられる。
【0089】
かかる蒸着条件の非限定的な例として、インジウム化合物の投入流量はBubbler Typeで1~1000sccm、移送ガスは1~5000sccm、反応ガスの流量は10~5000sccm、圧力は0.1~10torr、RFパワーは10~1000Wの範囲で調節されることができるが、これに限定されるものではない。
【0090】
前記製造方法のb)ステップにおいて、インジウム含有薄膜蒸着用組成物を注入する時の注入時間は、1~30秒、好ましくは1~20秒、より好ましくは2~10秒であってもよく、この範囲内で、薄膜の厚さの均一度が向上し、複雑な形状の基板でも均一な薄膜を製造することができる。
【0091】
一実施形態において、前記反応ガスは、酸素(O)、オゾン(O)、水蒸気(HO)、過酸化水素(H)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、アンモニア(NH)、窒素(N)、ヒドラジン(N)、アミン、ジアミン、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、C~C12の飽和または不飽和炭化水素、水素(H)、アルゴン(Ar)、シラン(silane)、およびヘリウム(He)から選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよい。
【0092】
具体的に、前記反応ガスは、水蒸気(HO)、酸素(O)、オゾン(O)、水素(H)、シラン(silane)、アンモニア(NH)、およびヒドラジン(N)から選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよい。水蒸気(HO)、酸素(O)、およびオゾン(O)のような酸化性反応ガスの存在下で蒸着が行われる場合にはインジウム酸化物(InOx)薄膜が形成され、水素(H)およびシラン(silane)のような反応ガスの存在下で蒸着が行われる場合にはインジウム含有薄膜が形成され、アンモニア(NH)およびヒドラジン(N)のような窒素系反応ガスの存在下で蒸着が行われる場合にはインジウム窒化物(InNx)薄膜が形成されることができる。
【0093】
一実施形態において、前記蒸着するステップで、移送ガスは不活性ガスであり、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、および窒素(N)から選択される何れか1つまたは2つ以上であり、具体的に、窒素(N)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0094】
本発明の一実施形態に係る前記製造方法は、c)b)ステップの後に、チャンバー内に反応ガスを注入するステップをさらに含んでもよく、前記b)およびc)ステップを1サイクルとし、前記サイクルを繰り返して行ってもよい。
【0095】
一実施形態において、前記チャンバー内に移送ガスと前記インジウム含有薄膜蒸着用組成物を注入した後、基板に吸着されていないインジウム含有薄膜蒸着用組成物を、前記移送ガスを用いて除去するパージ(purge)ステップを行ってもよい。
【0096】
一実施形態において、前記チャンバー内に反応ガスを注入した後、反応副産物および残留反応ガスを、前記移送ガスを用いて除去するパージ(purge)ステップを行ってもよい。
【0097】
一実施形態において、前記インジウム含有薄膜蒸着用組成物の注入ステップ、パージ(purge)、反応ガスの注入ステップ、およびパージ(purge)工程を1サイクルとし、所望の厚さの薄膜が形成されるまで繰り返して行ってもよく、具体的に、50~1000回、より具体的に100~300回繰り返してもよい。この場合、薄膜の厚さが適切に実現され、工程効率が向上することができる。
【0098】
本発明の一実施形態に係る前記インジウム含有薄膜の製造方法により製造された薄膜は、均一で、向上した蒸着速度を示し、大きいアスペクト比を有する構造体に対する均一なステップカバレッジ(conformal step coverage)を提供することができる。
【0099】
前記インジウム含有薄膜は、25℃での比抵抗値が1×10-5~1×10-1Ωcm、好ましくは1×10-4~1×10-2Ωcm、より好ましくは1×10-3~5×10-3Ωcmであってもよい。
【0100】
本記載において、比抵抗の測定方法は、本発明が属する技術分野において通常実施される公知の測定方法であれば特に制限されず、具体的な一例として、4-探針法(4-probe測定法)により測定することができる。
【0101】
本発明に係るインジウム含有薄膜は、インジウムの含量が35%以上であり、好ましくは35%~65%、より好ましくは35%~50%であってもよい。
【0102】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明に係るインジウム化合物の製造方法およびそれを採用した薄膜の製造方法についてより詳細に説明する。
【0103】
但し、下記実施例は、本発明を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本発明がこれに限定されるものではなく、種々の形態で実現されることができる。また、本発明における説明で用いられる用語は、特定の実施例を効果的に述べるためのものであり、本発明を制限することを意図しない。
【0104】
また、特に断らない限り、全ての実施例は、不活性雰囲気、例えば、精製された窒素(N)またはアルゴン(Ar)下で、当業界で遍く知られた空気-敏感性物質を扱う技術を用いて行われた。
【0105】
[実施例1](C(CHCHN(CH))In(CHの製造
磁気撹拌機と還流装置(condenser)を含む1Lの二口フラスコに、n-ブチルリチウム(59ml、2.3M solution in n-Hexane、0.14mol)を投入し、引き続き、200mlのn-ヘキサンを投入してから撹拌した。
【0106】
前記混合物の内温を0℃に維持し、(2-ジメチルアミノエチル)シクロペンタジエンを徐々に投入した後、常温で2時間撹拌してLi(2-ジメチルアミノエチル)シクロペンタジエンを合成した。
【0107】
磁気撹拌機と還流装置(condenser)を含む2Lの二口フラスコに、InCl(30g、0.14mol)投入し、引き続き、200mlのn-ヘキサンを投入した後、内温0℃を維持して撹拌した。前記フラスコに、準備されたLi(2-ジメチルアミノエチル)シクロペンタジエンを徐々に投入し、常温で2時間撹拌して(C(CHCHN(CH))In(Cl)を合成した。
【0108】
前記フラスコに、MeMgCl(90ml、3.0M solution in THF、0.27mol)を内温10℃を維持して徐々に投入した後、薄い灰色の沈殿物が生成されることを確認した。合成された混合物を濾過装置で濾過した後、溶媒を減圧下で除去し、薄い黄色の液体を34g(InClから85%)得た。
H NMR(400 MHz, C6D6) δ 6.5, 5,6, 1.7(m, 4H, Cp), 2.5(t, 2H), 1.8(t, 2H), 1.5(s, 6H), -0.1(s, 6H)
【0109】
図1に、実施例1で製造された(C(CHCHN(CH))In(CHのTGグラフを示した。これを参照すると、実施例1で製造されたインジウム化合物が、約200℃で単一蒸発ステップを有することが分かり、500℃でresidue massが4.2%と確認され、これから、本発明のインジウム化合物は熱安定性に優れることが分かる。
【0110】
また、図2にDSC分析結果を示した。これを参照すると、260℃でEndothermic peakが確認され、これから、効果的なvaporizationが示されることが分かる。
【0111】
[実施例2](C(CHCHO(CH)))In(CHの製造
磁気撹拌機と還流装置(condenser)を含む1Lの二口フラスコに、n-ブチルリチウム(59ml、2.3M solution in n-Hexane、0.14mol)を投入し、引き続き、200mlのn-ヘキサンを投入してから撹拌した。
【0112】
前記混合物の内温を0℃に維持し、(2-メトキシエチル)シクロペンタジエンを徐々に投入した後、常温で2時間撹拌してLi(2-メトキシエチル)シクロペンタジエンを合成した。
【0113】
磁気撹拌機と還流装置(condenser)を含む2Lの二口フラスコに、InCl(30g、0.14mol)を投入し、引き続き、200mlのn-ヘキサンを投入した後、内温0℃を維持して撹拌した。前記フラスコに、準備されたLi(2-メトキシエチル)シクロペンタジエンを徐々に投入し、常温で2時間撹拌して(C(CHCHO(CH))In(Cl)を合成した。前記フラスコに、MeMgCl(90ml、3.0M solution in THF、0.27mol)を内温10℃を維持して徐々に投入した後、薄い灰色の沈殿物が生成されることを確認した。合成された混合物を濾過装置で濾過した後、溶媒を減圧下で除去し、薄い黄色の液体を20.5g(InClから76%)得た。
H NMR(400 MHz, C6D6) δ 6.5, 5.7, 3.0(m, 4H, Cp), 2.9(t, 2H), 2.7(s, 3H), 2.6(t, 2H), -0.3(s, 6H)
【0114】
図3に、実施例2で製造された(C(CHCHO(CH)))In(CHのTGグラフを示した。これを参照すると、実施例2で製造されたインジウム化合物が、190℃で単一蒸発ステップを有することが分かり、500℃でresidue massが4%と確認され、これから、本発明のインジウム化合物は熱安定性に優れることが分かる。
【0115】
また、図4にDSC分析結果を示した。これを参照すると、230℃でEndothermic peakが確認され、これから、効果的なvaporizationが示されることが分かる。
【0116】
[実施例3](C(CHCHN(CH))In(CHを利用したインジウム含有薄膜の製造
前記実施例1に係るインジウム化合物を用い、反応ガスとしてオゾン(O)を用いて原子層蒸着法(ALD)によりインジウム含有薄膜を製造した。
【0117】
蒸着チャンバーの内部にシリコン基板をローディングし、前記基板の温度を350℃に調節した。ステンレス鋼製のバブラー容器内にある、実施例1で製造された(C(CHCHN(CH))In(CHを有機金属前駆体として充填し、温度を100℃に調節した。
【0118】
窒素ガスを移送気体(100sccm)として、3秒間、前記有機金属前駆体を蒸着チャンバーの内部に注入した。窒素ガス(500sccm)を用いて5秒間パージし、前記蒸着チャンバー内に残留した前記有機金属前駆体および反応副産物を除去した。
【0119】
反応ガスとしてオゾンを5秒間注入し、インジウム含有酸化薄膜を蒸着した。その後、窒素ガス(500sccm)を用いて5秒間パージし、残留反応ガスおよび反応副産物を除去した。
【0120】
上述の工程を1サイクルとし、1000サイクルを行ってインジウム含有酸化薄膜を製造した。前記インジウム含有薄膜に対してXPS分析を行った結果、インジウムの含量および酸素(O)の含量はそれぞれ38.2%および58.1%と測定され、実質的にインジウム酸化膜が形成されたことが確認された。
【0121】
[実施例4](C(CHCHO(CH)))In(CHを利用したインジウム含有薄膜の製造
前記実施例1に係るインジウム化合物を用い、反応ガスとしてオゾン(O)を用いて原子層蒸着法(ALD)によりインジウム含有薄膜を製造した。
【0122】
蒸着チャンバーの内部に酸化シリコンが成長されたシリコン基板をローディングし、前記基板の温度を350℃に調節した。ステンレス鋼製のバブラー容器内にある、実施例1で製造された(C(CHCHO(CH)))In(CHを有機金属前駆体として充填し、温度を100℃に調節した。
【0123】
窒素ガスを移送気体(100sccm)として、3秒間、前記有機金属前駆体を蒸着チャンバーの内部に注入した。窒素ガス(500sccm)を用いて5秒間パージし、前記蒸着チャンバー内に残留した前記有機金属前駆体および反応副産物を除去した。
【0124】
反応ガスとしてオゾンを3秒間注入し、インジウム含有酸化薄膜を蒸着した。その後、窒素ガス(500sccm)を用いて5秒間パージし、残留反応ガスおよび反応副産物を除去した。
【0125】
上述の工程を1サイクルとし、1000サイクルを行ってインジウム含有酸化薄膜を製造した。前記インジウム含有薄膜に対してXPS分析を行った結果、インジウムの含量および酸素の含量はそれぞれ38.5%および59.1%と測定され、実質的にインジウム酸化膜が形成されたことが確認された。
【0126】
このように、本発明の一実施形態に係るインジウム化合物は、より向上した熱安定性、高い揮発性、および向上した蒸気圧を有することで、それを用いて薄膜を製造した際に、均一で、安定な蒸着速度を示し、高い信頼性を有する薄膜を形成することができ、立体的な装置に対して均一な膜厚を提供することができ、優れた組成比のインジウムおよび酸素を有する薄膜を製造することができる。
【0127】
以上、特定の事項と、限定された実施例および比較例によって本発明を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されるものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0128】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定されて決まってならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形のある全てのものなどは、本発明思想の範疇に属するといえる。
図1
図2
図3
図4