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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】送り装置及び送り装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 1/02 20060101AFI20240612BHJP
   B21D 43/02 20060101ALI20240612BHJP
   B21D 43/09 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B21D1/02 K
B21D43/02 E
B21D43/09 C
B21D43/09 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022202946
(22)【出願日】2022-12-20
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】大田 龍介
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 太志
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-137130(JP,A)
【文献】実開昭50-051284(JP,U)
【文献】実開昭61-004829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 1/02
B21D 43/02
B21D 43/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送する第1回転体及び第2回転体と、
第1室及び第2室を有し、前記第1回転体と前記第2回転体とが当接した閉状態、又は、前記第1回転体が前記第2回転体から離間した開状態、となるように前記第1回転体を移動させるアクチュエータと、
流体源から流体を前記第1室に供給し前記第2室から排出する第1状態と、前記流体を前記第2室に供給し前記第1室から排出する第2状態と、を切り替える切替手段と、
前記流体の排出を遮断する遮断手段と、
前記切替手段を前記第1状態に切り替えることで前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態とし、前記切替手段を前記第2状態に切り替えることで前記第1回転体及び前記第2回転体を前記開状態とするように制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態から前記開状態にする途中で前記第1回転体と前記第2回転体との間の隙間に対応する所定時間が経過したら前記第1室からの前記流体の排出を遮断させるよう前記遮断手段を制御して、前記第1回転体の移動を停止させる、送り装置。
【請求項2】
前記所定時間は、前記ワークに関する情報に基づいて設定される、請求項1に記載の送り装置。
【請求項3】
前記切替手段は、前記アクチュエータと前記遮断手段との間に接続されている、請求項1に記載の送り装置。
【請求項4】
前記遮断手段は、前記アクチュエータと前記切替手段との間に接続されている、請求項1に記載の送り装置。
【請求項5】
前記切替手段及び前記遮断手段は、電磁弁である、請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の送り装置。
【請求項6】
ワークを搬送する第1回転体及び第2回転体と、
ピストンと、前記ピストンによって分けられた第1室及び第2室と、を有し、前記第1回転体と前記第2回転体とが当接した閉状態、又は、前記第1回転体が前記第2回転体から離間した開状態、となるように前記第1回転体を移動させるシリンダと、
前記シリンダを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態から前記開状態にする途中で、前記第1室の圧力と前記第2室の圧力との差がなくなることで前記ピストンの移動が停止するように前記シリンダを制御して、前記第1回転体の移動を停止させる、送り装置。
【請求項7】
ワークを搬送する送り装置の制御方法であって、
前記送り装置は、
ワークを搬送する第1回転体及び第2回転体と、
第1室及び第2室を有し、前記第1回転体と前記第2回転体とが当接した閉状態、又は、前記第1回転体が前記第2回転体から離間した開状態、となるように前記第1回転体を移動させるアクチュエータと、
流体源から流体を前記第1室に供給し前記第2室から排出する第1状態と、前記流体を前記第2室に供給し前記第1室から排出する第2状態と、を切り替える切替手段と、
前記流体の排出を遮断する遮断手段と、
前記切替手段を前記第1状態に切り替えることで前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態とし、前記切替手段を前記第2状態に切り替えることで前記第1回転体及び前記第2回転体を前記開状態とするように制御する制御手段と、
を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態から前記開状態にするように前記制御手段が前記切替手段を制御するリリース工程と、
前記リリース工程の途中で、前記リリース工程を開始してから前記第1回転体と前記第2回転体との間の隙間に対応する所定時間が経過したら前記第1室からの前記流体の排出を遮断させるように前記制御手段が前記遮断手段を制御して、前記第1回転体の移動を停止させる遮断工程と、
を備える送り装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送り装置及び送り装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの巻き癖等を矯正しつつワークを搬送するレベラフィーダ等の送り装置は、ワークロール等を備えている(例えば、特許文献1参照)。送り装置には、圧縮エア等の気体又は油等の液体といった流体(以下、作動流体等という。)を用いたシリンダ等のアクチュエータによって、ワークロール等の開閉動作を行うものがある。ワークロール等の開閉動作は、送り装置がプレス装置から開閉動作の制御信号を受け、電磁弁等の切り替え装置を作動させ、シリンダ等のアクチュエータを動作させることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-216427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の送り装置では、アクチュエータの作動位置を検出していないため、ワークに対してワークロール等を必要以上に開いた状態にしてしまい(リリースしてしまい)、上下のロール間の隙間が大きくなっている。このようにアクチュエータが不要な範囲まで移動することで、作動流体等や電力をより多く消費してしまう。また、プレス装置の生産スピードが上がるにつれ、ワークロール等の開閉動作が生産スピードに追従できなくなってくる。さらに、挟持していたワークからワークロール等を開状態とする際にワークとワークロール等との隙間が大きくなることで、ワークロール等を閉状態としワークとワークロール等とが当接したときに、騒音やワークへの傷、機械本体への負荷がかかるという課題もある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、アクチュエータによるロールの開閉動作時に、ワークに最適化した開閉動作を行うことができる送り装置及び送り装置の制御方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0007】
(1)ワークを搬送する第1回転体及び第2回転体と、第1室及び第2室を有し、前記第1回転体と前記第2回転体とが当接した閉状態、又は、前記第1回転体が前記第2回転体から離間した開状態、となるように前記第1回転体を移動させるアクチュエータと、流体源から流体を前記第1室(B)に供給し前記第2室(A)から排出する第1状態と、前記流体を前記第2室(A)に供給し前記第1室(B)から排出する第2状態と、を切り替える切替手段と、前記流体の排出を遮断する遮断手段と、前記切替手段を前記第1状態に切り替えることで前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態とし、前記切替手段を前記第2状態に切り替えることで前記第1回転体及び前記第2回転体を前記開状態とするように制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態から前記開状態にしたとき、所定時間が経過したら前記第1室からの前記流体の排出を遮断させるよう前記遮断手段を制御する、送り装置。
【0008】
(2)ワークを搬送する第1回転体及び第2回転体と、ピストンと、前記ピストンによって分けられた第1室及び第2室と、を有し、前記第1回転体と前記第2回転体とが当接した閉状態、又は、前記第1回転体が前記第2回転体から離間した開状態、となるように前記第1回転体を移動させるシリンダと、前記シリンダを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態から前記開状態にしたとき、前記第1室の圧力と前記第2室の圧力との差がなくなることで前記ピストンの移動が停止するように前記シリンダを制御する、送り装置。
【0009】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、アクチュエータによるロールの開閉動作時に、ワークに最適化した開閉動作を行うことができる送り装置及び送り装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1~第3実施形態のプレスシステムの構成を示す概略斜視図である。
図2図2は、第1~第3実施形態のプレスシステムのブロック図である。
図3図3は、第1実施形態のレベラフィーダの構成を示す図である。
図4図4は、第1~第3実施形態のプレス装置の構成を示す概略斜視図である。
図5図5は、第1実施形態のアクチュエータ、方向切替弁、遮断弁を説明する回路図である。
図6図6は、第1実施形態の方向切替弁、遮断弁のポートの切り替えを説明する回路図であり、(a)はホームポジションを示す図、(b)はリリース開始時を示す図、(c)は排気の遮断時を示す図である。
図7図7は、第1~第3実施形態の遮断開始時間の求め方を説明する図であり、(a)は高さH1を示す図、(b)は高さH2を示す図、(c)はアーム長さL、回転角度θ、偏心軸の偏心量lを示す図である。
図8図8は、第1~第3実施形態の遮断開始時間とストローク量及びリリース量を示すグラフである。
図9図9は、第1実施形態のレベラフィーダにおける各ロールの開閉動作を示すフローチャートであり、(a)は遮断開始時間の設定処理を示すフローチャート、(b)はプレスシステムを用いた加工処理を示すフローチャートである。
図10図10は、図9のフローチャートの各処理におけるアクチュエータ、方向切替弁、遮断弁を示す回路図であり、(a)は図9のS230での状態を示す回路図、(b)は図9のS250での状態を示す回路図、(c)は図9のS270での状態を示す回路図である。
図11図11は、第2実施形態の方向切替弁、遮断弁のポートの切り替えを説明する回路図であり、(a)はホームポジションを示す図、(b)はリリース開始時を示す図、(c)は排気の遮断時を示す図である。
図12図12は、(A-a)従来のホームポジションを示す図、(A-b)従来のリリース開始時を示す図、(A-c)ピストンがB室の端まで移動した従来の状態を示す図、(B-a)第3実施形態のホームポジションを示す図、(B-b)第3実施形態のリリース開始時を示す図、(B-c)第3実施形態の排気の遮断時を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、プレスシステムのプレス装置において加工が行われているときに、ワーク(コイル材)が搬送される方向を搬送方向という。また、搬送されているワークの高さを加工高さといい、加工高さを搬送方向に沿って結んだ仮想線をパスラインという。なお、加工高さは、例えば、プレスシステムが設置されている床面やプレス装置の金型の下型やボルスタを基準とした高さである。
【0013】
また、ワークを挟持して搬送する1組のロールが離間した状態を開状態、当接した状態を閉状態という。1組のロールが開状態から閉状態、又は、閉状態から開状態となる動作を開閉動作という。ここで、1組のロールのリリースとは主に閉状態から開状態となる動作をいうが、以下の説明においては、開状態から閉状態となる動作までも含めてリリースということもある。さらに、1組のロールには、1つの上ロールと1つの下ロールからなる1対のロールや、複数の上ロールと複数の下ロールからなる1組のロール等が含まれる。
【0014】
[第1実施形態]
<プレスシステム>
図1は、第1実施形態のプレスシステム1の構成を示す概略斜視図である。図1にはワークの搬送方向及び上流、下流、上下方向、パスラインPL(破線)も示す。図2は、第1実施形態のプレスシステム1のブロック図である。本実施形態のプレスシステム1は、アンコイラ100、レベラフィーダ200、プレス装置300を備えている。アンコイラ100、レベラフィーダ200は、プレス装置300の加工動作に連動して動作する。プレスシステム1は、床面10に設置される。以降の説明では、図1図2を参照しながら各装置の構成・機能について説明する。
【0015】
<アンコイラ>
ワーク120を保持する保持装置であるアンコイラ100は、マンドレル110、制御部130、駆動部140を有している。マンドレル110には、プレス装置300の加工の対象物であるワーク120が保持されている。例えば、コイル状に巻かれたワーク120の内径がマンドレル110によって保持される。制御部130は、プレス装置300による加工動作と連動するように、駆動部140によってマンドレル110を回転させ、ワーク120の巻きほぐしを行う。
【0016】
アンコイラ100は、ワーク120がなくなるまで、一定の速度でワーク120をレベラフィーダ200に供給する。すなわち、アンコイラ100は、プレス装置300の動作に応じた速度でワーク120を供給する。
【0017】
<レベラフィーダ>
図1図2のレベラフィーダ200について、図3も参照しながら説明する。図3は、第1実施形態のレベラフィーダ200の構成を示す図であり、搬送方向(上流、下流)及び上下方向も示す。レベラフィーダ200は、アンコイラ100に保持されたワーク120についた巻き癖等を矯正しながらワーク120を搬送する(供給する、送り出す、ともいう)送り装置として機能している。レベラフィーダ200は、一定の速度でワーク120をプレス装置300に供給する。すなわち、レベラフィーダ200は、プレス装置300の動作に応じた速度でワーク120を搬送し、運転・停止を繰り返して動作している。
【0018】
レベラフィーダ200は、アーム261、ナックルジョイント263、偏心軸262、リンク264、偏心軸268、上フレーム266を有している。また、レベラフィーダ200は、入口ロール220、複数のワークロール230、フィードロール250、制御部260、記憶部270、アクチュエータ280、282、モータ290、方向切替弁420、422、遮断弁430、432、消音機420s、422s、430s、432sを有している。
【0019】
アーム261は、ナックルジョイント263を介してアクチュエータ280に連結されており、アクチュエータ280に連動して往復動作する。偏心軸262は、アーム261の往復動作に連動して回転する。上フレーム266は、偏心軸262の回転に連動して上下に移動する。リンク264、偏心軸268は、ワークロール230によってどの程度ワーク120を矯正するかを示す矯正量を調整するための部材である。
【0020】
入口ロール220は、アンコイラ100によってほぐされたワーク120をレベラフィーダ200内に受け入れ、ワークロール230に搬送するためのロールである。入口ロール220は、閉状態となってワーク120を挟持し、開状態となってワーク120を挟持していた状態を解除し、ワーク120を開放する。
【0021】
ワークロール230には、複数の上ワークロール230a、複数の下ワークロール230bがある。上ワークロール230aは第1回転体に相当し、下ワークロール230bは第2回転体に相当する。図3では、例えば4つの上ワークロール230aと3つの下ワークロール230bが示されている。上ワークロール230aは上フレーム266に固定されており、上フレーム266の上下移動に連動して上下に移動する。下ワークロール230bはレベラフィーダ200の本体に固定されている。ワークロール230は、閉状態でワーク120の巻き癖等を矯正する。複数のワークロール230は、例えば、互い違いに段差をもった配列、すなわち千鳥配列されており、アンコイラ100で巻きほぐされたワーク120を挟持し搬送することで、ワーク120の搬送方向の上流側から下流側に向かって、ワーク120についた巻き癖等を徐々に矯正していく。
【0022】
フィードロール250は、閉状態となってワーク120を挟持し搬送し、開状態となってワーク120を開放する。フィードロール250には、上フィードロール250a、下フィードロール250bがある。上フィードロール250aは第1回転体に相当し、下フィードロール250bは第2回転体に相当する。上フィードロール250aはアクチュエータ282に連結されている。下フィードロール250bはレベラフィーダ200に固定されている。なお、本実施形態では、下ワークロール230b及び下フィードロール250bが固定され、上ワークロール230a及び上フィードロール250aが移動可能としたが、これに限定されない。上ワークロール230a及び上フィードロール250aが固定され、下ワークロール230b及び下フィードロール250bが移動可能としてもよい。
【0023】
アクチュエータ280はワークロール230の閉状態と開状態とを切り替え、アクチュエータ282はフィードロール250の閉状態と開状態とを切り替える。なお、アクチュエータ280、282は、例えばシリンダ等であり、空気等の気体、又は、油等の液体、すなわち流体を用いて動作する。コンプレッサー410はアクチュエータ280、282に、圧縮した流体を供給する流体源である。モータ290は、入口ロール220、ワークロール230、フィードロール250の回転を駆動する。
【0024】
方向切替手段である方向切替弁420は、コンプレッサー410とアクチュエータ280との間に設けられており、アクチュエータ280によるワークロール230の開閉動作の方向を切り替えている。方向切替手段である方向切替弁422は、コンプレッサー410とアクチュエータ282との間に設けられており、アクチュエータ282によるフィードロール250の開閉動作の方向を切り替えている。ここで、開閉動作の方向の切り替えとは、閉状態から開状態への切り替えと、開状態から閉状態への切り替えとをいう。
【0025】
遮断手段である遮断弁430は、方向切替弁420に接続されている。すなわち、方向切替弁420は、アクチュエータ280と遮断弁430との間に設けられている。遮断手段である遮断弁432は、方向切替弁422に接続されている。すなわち、方向切替弁422は、アクチュエータ282と遮断弁432との間に設けられている。方向切替弁420、422及び遮断弁430、432の構成については後述する。
【0026】
制御部260は、プレスシステム1の他の装置の動作と連動してアクチュエータ280、282及びモータ290を制御することでワーク120の巻き癖等の矯正しつつ、ワーク120をプレス装置300に送り出す。なお、制御部260は、入口ロール220、ワークロール230、フィードロール250の回転制御を、例えばエンコーダ等の不図示の検知手段を用いて公知の方法によって制御しているものとする。制御部260は、記憶部270に記憶されている各種プログラムに従ってプレスシステム1の他の装置と連動しながらレベラフィーダ200を制御する。なお、レベラフィーダ200は、表示部や入力部を有していてもよい。また、本実施形態では、巻き癖等の矯正とプレス装置300へのワーク120の供給を1つのレベラフィーダ200で行っているがこれに限定されない。巻き癖等を矯正するレベラと、プレス装置300にワーク120を供給するフィーダを別の装置としてもよい。
【0027】
<プレス装置>
図1のプレス装置300について、図2図4を用いて説明する。図4は、第1実施形態のプレス装置300の構成を示す概略斜視図であり、例えば、一体型ストレートサイドフレーム型又はCフレーム型のプレス装置300の概略図である。図4には、ワーク120の搬送方向や搬送方向における上流(左)、下流(右)、上下方向、及び前後方向(正面、背面)も示している。プレス装置300は、筐体302の内外に、駆動モータ304(駆動手段)、伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310、スライド312、ボルスタ322を有して構成される。また、プレス装置300は、コントローラ314、記憶部315、表示部316、入力部318、を有している。さらに、プレス装置300は、センサ324、ロータリーエンコーダ325、ギブ326を有している。
【0028】
駆動モータ304は、例えばサーボ制御されるサーボモータであり、回転量及び回転方向を制御しつつ伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310を介して後述する金型303を上下移動させるものである。伝達機構306は、例えばギヤやベルト等の伝達部材を有して構成され、駆動モータ304のモータ軸の回転をクランク軸308へと伝達するものである。駆動モータ304への制御信号はコントローラ314から送られるようになっている。
【0029】
クランク軸308及びコンロッド310は、伝達機構306により伝達されたモータ軸の回転移動を往復移動(本実施形態では、上下移動。)に変換するためのものである。モータ軸の回転によりクランク軸308が回転し、クランク軸308に一端近傍が連結されたコンロッド310にその回転が伝達されてコンロッド310が上下移動(昇降移動)するようになっている。
【0030】
また、クランク軸308には、クランク軸308の回転に連動して、オン信号又はオフ信号を出力するロータリーカムスイッチ(不図示)が設けられている。ロータリーカムスイッチは、例えばクランク軸308の回転が所定の角度となったとき、言い換えれば加工動作中の所定のタイミングとなったときに、オン信号又はオフ信号を出力する。ロータリーカムスイッチがオン信号(又はオフ信号)を出力するタイミングを、以下、出力タイミングという。コントローラ314は、ロータリーカムスイッチから出力される信号に基づいて、プレスシステム1の他の装置と連動し、加工動作を行っている。
【0031】
コンロッド310の他端近傍にはスライド312が連結されている。コンロッド310の上下移動に伴いスライド312がギブ326に沿って上下移動するようになっている。プレス装置300においては、スライド312と対向するようにボルスタ322が配置されている。スライド312のボルスタ322と対向する側の面(本実施形態では下面)に金型303の一部としての上型303aが装着される。ボルスタ322のスライド312と対向する側の面(本実施形態では上面)に金型303の一部として、上型303aと対になる下型303bが装着される。
【0032】
上型303aと下型303bとの間に加工の対象物としてのワーク120を配置し、上型303aと下型303bとで押圧することにより、プレス装置300によるワーク120に対するプレス加工(以下、単に加工ともいう)が行われる。ワーク120は、例えば図2中左(上流)側から右(下流)側に搬送される。
【0033】
詳しくは、コントローラ314により制御されて駆動モータ304が回転する。駆動モータ304の回転が伝達機構306、クランク軸308を介してコンロッド310へと伝達され、スライド312が上下移動する。スライド312の下方移動によって上型303aと下型303bとが押圧され、ワーク120のプレス加工が行われる。すなわち、プレス装置300において、駆動モータ304、伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310、スライド312がプレス部を構成する。伝達機構306には、クランク軸308の回転数を検知するための回転数検知手段であるロータリーエンコーダ325が設けられている。コントローラ314は、ロータリーエンコーダ325によりクランク軸308の回転数を検知することで、スライド312の位置を検知することが可能である。また、コントローラ314は、ロータリーエンコーダ325の検知結果に基づいてクランク軸308の角度を検知することも可能であり、角度検知手段としても機能する。なお、角度検知手段には上述したロータリーカムスイッチを含めてもよい。
【0034】
加工の際の荷重を検知する荷重検知手段であるセンサ324は、プレス装置300がワーク120にプレス加工を行う際に、コンロッド310に働く荷重を検知するためのセンサで、例えばロードセルである。センサ324は、例えば、筐体302に設置された歪ゲージであってもよい。センサ324は、コンロッド310のいずれかの位置(例えば、中央近傍位置)に設置されていてもよい。さらに、センサ324は複数設置されていてもよく、例えば筐体302の左右の歪をそれぞれ検知し、検知した結果を加算してトータルの荷重としてもよい。なお、図2において、表示部316が配置されている側がプレス装置300の前側である。
【0035】
コントローラ314は、記憶部315に記憶されている各種プログラムに従ってプレス装置300を制御する。記憶部315には、使用される金型303ごとに対応するプログラム(モーションプログラム)が記憶されている。また、金型303に関する情報(例えば、金型の仕様を含む。)も記憶されている。表示部316は、プレス装置300の状態を示すデータを表示する。入力部318は、プレス装置300を操作するために必要なデータを入力するために用いられる。入力部318は、加工に必要なパラメータをユーザーが入力する際に用いられる。コントローラ314は、プレス装置300とプレスシステム1の他の装置とが互いに連動して加工を行うように制御している。
【0036】
<方向切替弁、遮断弁、アクチュエータ>
方向切替弁420及び遮断弁430の構成について図3図5を用いて説明する。図5は、第1実施形態のアクチュエータ280、方向切替弁420、遮断弁430を説明する回路図であり、左右方向も示す。なお、方向切替弁420と方向切替弁422とは同じ構成であり、遮断弁430と遮断弁432とは同じ構成であるため、方向切替弁422及び遮断弁432の説明は省略する。また、アクチュエータ280は左右方向に移動し、アクチュエータ282は上下方向に移動する点で異なるが、他の構成は同じであるため、アクチュエータ282の説明も省略する。なお、アクチュエータの移動方向は、レベラフィーダ200の設計に応じて設定されればよい。
【0037】
以下の説明では、方向切替弁420及び遮断弁430が電磁弁(ソレノイドバルブ)である場合について説明する。また、コンプレッサー410がエアコンプレッサーである場合について説明する。さらに、アクチュエータ280がエアシリンダである場合について説明する。
【0038】
(方向切替弁)
方向切替弁420は、Pポート、Aポート、Bポート、R1ポート、R2ポートを有している。Pポートは、コンプレッサー410に接続され、コンプレッサー410からのエアが供給されるポートである。Aポートは、後述するアクチュエータ280のA室280Aに接続されたポートである。Bポートは、後述するアクチュエータ280のB室280Bに接続されたポートである。R1ポートは、エアを排出するポートであり、消音機(サイレンサー)420sが接続されている。なお、以下の説明においては、エアを排出することを排気ともいう。R2ポートも、エアを排気するポートであり、後述する遮断弁430のpポートに接続されている。
【0039】
(遮断弁)
遮断弁430は、pポート、aポート、bポートを有している。pポートは、方向切替弁420のR2ポートに接続され、方向切替弁420のR2ポートからエアが供給されるポートである。aポートは、エアを排気するポートであり、消音機430sが接続されている。bポートは、エアの排気を遮断するポートであり、エアが排出されないようになっている。なお、消音機420s、430sはエアの排気時に発生する音の音量を低減させるためのものである。
【0040】
(アクチュエータ)
アクチュエータ280は、例えば内部が空洞の円筒形状のシリンダであり、ロッド280r、ピストン280pを有している。ピストン280pは、アクチュエータ280の内部の空間を、第2室であるA室280Aと第1室であるB室280Bとに分けている。なお、A室280Aが第1室として機能し、B室280Bが第2室として機能してもよい。ピストン280pのA室280A側にはロッド280rの一方の端部が接続されており、ピストン280pの移動に連動してロッド280rも移動する。ロッド280rの他方の端部には、ロッド280rの往復動作をワークロール230の上下方向の開閉動作に変換する伝達機構が接続されている。伝達機構には、上述したアーム261、ナックルジョイント263、偏心軸262、上フレーム266が含まれる。
【0041】
A室280Aにエアが供給され、B室280Bからエアが排出されると、ピストン280pはB室280B側へ、すなわち左から右へ移動する。逆に、B室280Bにエアが供給され、A室280Aからエアが排出されると、ピストン280pはA室280A側へ、すなわち右から左へ移動する。
【0042】
図5では、コンプレッサー410は方向切替弁420のPポートに接続され、Pポートが方向切替弁420の内部でBポートに接続されており、エアがアクチュエータ280のB室280Bに供給されている。一方、アクチュエータ280のA室はAポートに接続され、Aポートは方向切替弁420の内部でR1ポートに接続されている。このとき、ピストン280pは、図5中の左右方向において、右から左に押されており、ワークロール230は閉状態であり、この状態をホームポジションとする。ホームポジションは、コンプレッサー410からエアをB室280Bに供給しA室280Aから排出する第1状態である。
【0043】
<方向切替弁、遮断弁、アクチュエータの動作>
図6を用いて、方向切替弁420、遮断弁430、アクチュエータ280の動作について説明する。図6は、第1実施形態の方向切替弁420、遮断弁430のポートの切り替えを説明する回路図であり、(a)はホームポジションを示す図、(b)はリリース開始時を示す図、(c)は排気の遮断時を示す図である。なお、図6において、ピストン280p及びロッド280rが移動する方向を左右方向とする。
【0044】
図6(a)は、図5で説明したホームポジションの状態であり、ワークロール230は閉状態である。すなわち、アクチュエータ280のB室280Bにエアが供給され、A室280Aからエアが排気されており、アクチュエータ280の右から左へピストン280pが押されている。
【0045】
図6(b)は、制御部260がワークロール230を閉状態から開状態に制御するとき、すなわち、リリースを開始するときの様子を示す図である(リリース工程)。ここで、制御部260は、プレス装置300のコントローラ314から出力された信号に応じてワークロール230の開閉動作を制御するものとする。コントローラ314から出力される信号をリリース信号という。コントローラ314は、レベラフィーダ200においてワークロール230をリリースするとき、すなわち閉状態から開状態にするときに、リリース信号をONとし、開状態から閉状態にするときに、リリース信号をOFFとするものとする。
【0046】
図6(b)は、エアをA室280Aに供給しB室280Bから排出する第2状態である。制御部260は、方向切替弁420を第1状態に切り替えることでワークロール230を閉状態とし、方向切替弁420を第2状態に切り替えることでワークロール230を開状態とするように制御している。なお、プレス装置300がレベラフィーダ200にリリース信号を送信するタイミングや動作の制御は公知であり、説明を省略する。
【0047】
制御部260の制御によって、方向切替弁420は、PポートとBポートの接続をPポートとAポートの接続に切り替える。また、方向切替弁420は、BポートをR2ポートに接続する。これにより、コンプレッサー410に接続された方向切替弁420のPポートからAポートにエアが流れ、アクチュエータ280のピストン280pが図中、左から右へ動き出す。動き出したピストン280pによってアクチュエータ280内のB室280Bのエアは、Bポート、R2ポートを通り、遮断弁430のpポートへと流れ、aポートから排気される。
【0048】
図6(c)は、本実施形態の特徴を示す図であり、ワークロール230が閉状態から開状態となっている途中で遮断弁430が作動し、エアの排気が遮断される様子を示す図である(遮断工程)。制御部260は、ワークロール230のリリースを開始してから、後述する所定時間である遮断開始時間が経過すると、遮断弁430によりエアの排気を遮断する。遮断弁430は、制御部260の制御によって、pポートとaポートとの接続を、pポートとbポートとの接続に切り替える。
【0049】
このとき、アクチュエータ280のピストン280pの動作によって、方向切替弁420を介して遮断弁430のaポートから排気されていたエアは、bポートでせき止められる。これにより、アクチュエータ280のB室280B内の圧力が上昇し、Aポートから流入するエアの圧力と等しくなったタイミングで、ピストン280pの移動が停止する。この一連の動作によってアクチュエータ280の動作を制限することができる。そして、ロッド280r、伝達機構を介して接続されているワークロール230の開動作も停止する。このように、制御部260は、ワークロール230を閉状態から開状態にしたとき、遮断開始時間が経過したらB室280Bからのエアの排出を遮断させるよう遮断弁430を制御している。
【0050】
<リリース開始からエアの遮断開始までの遮断開始時間の設定>
制御部260がワークロール230のリリースを開始してから、遮断弁430によるエアの遮断を開始するまでの遮断開始時間Tsは、上ワークロール230aと下ワークロール230bとの間の隙間が適切な距離となるように設定される。以下に、遮断開始時間Tsの設定について説明する。
【0051】
まず、ワークロール230によるワーク120の矯正量は、ワーク120に関する情報(例えば、ワーク120の仕様を含む。)に基づき決定される。ここで、矯正量は、上ワークロール230aと下ワークロール230bとの隙間の寸法によって管理される量である。また、ワーク120に関する情報には、例えば、ワーク120の厚さ(以下、板厚ともいう。)、物性等を含む。
【0052】
ワークロール230をリリースする際には、矯正が行われているワーク120を開放する必要があるため、ワーク120を矯正している状態からワーク120を開放する状態まで、アクチュエータ280のピストン280pを移動させる必要がある。ここで、ワークロール230が閉状態から開状態となったときの上ワークロール230aの下ワークロール230bに対する移動量をリリース量ともいう。以上のことから、ワーク120に関する情報がわかれば矯正量及びリリース量が決まり、ピストン280pの移動量が決まる。矯正量、リリース量は以下の式より算出される。
【0053】
ここで、図7は、第1実施形態の遮断開始時間Tsの求め方を説明する図であり、(a)は高さH1を示す図、(b)は高さH2を示す図、(c)はアーム長さL、回転角度θ、偏心軸の偏心量lを示す図である。なお、図を見やすくするために、一部の符号を省略している。まず、ワークロール230によるワーク120の矯正時の、下ワークロール230bに対する上ワークロール230aの高さをH1とする。高さH1は図7(a)に示す高さである。また、ワーク120が開放されたときの、下ワークロール230bに対する上ワークロール230aの高さをH2とする。高さH2は図7(b)に示す高さである。
【0054】
このとき、リリースに必要なトータルの移動量をHとすると、移動量Hは、次の式(1)により求められる。
H=H2-H1 (1)
ここで、上ワークロール230aと下ワークロール230bとの間の隙間が0の場合を基準値0とする。言い換えれば、パスラインPLの位置を0とする。また、パスラインPLよりも上側(ワーク120の板厚側)を+(プラス)、パスラインPLよりも下側(ワーク120への食い込み側)を-(マイナス)とする。
【0055】
また、移動量Hを求めるために、ワーク120に関する情報を含む各パラメータを、次のように定義する。
E:ワーク120の縦弾性係数(kgf/mm)
ξ:ワーク120の塑性変形率
t:ワーク120の板厚(mm)
σe:ワーク120の降伏点応力(kgf/mm
S:上ワークロール230aと下ワークロール230bとの間のピッチ(mm)
r:ワーク120のスプリングバック後の曲げ半径(mm)
【0056】
高さH1は、図7(a)に示すように、ワーク120に十分な塑性変形を与えるために必要な上ワークロール230aの高さであり、次の式(2)から求められる。
H1=f1(E、ξ、t、σe、S) (2)
ここで、f1(E、ξ、t、σe、S)は、上述したパラメータE、ξ、t、σe、Sにより表される関数である。
【0057】
図7(b)に示す高さH2は、矯正したワーク120のスプリングバック(ワーク120の戻り、跳ね返り)も考慮し、プレス装置300による加工を妨げることなく、上ワークロール230aを離間しすぎない程度の上ワークロール230aの高さである。高さH2は、次の式(3)から求められる。
H2=f2(r、S、t) (3)
ここで、f2(r、S、t)は、上述したパラメータr、S、tにより表される関数である。なお、f1、f2の具体的な数式は、プレスシステム1全体の仕様やワーク120に応じて設定されればよい。
【0058】
式(1)から求められた移動量Hは、上ワークロール230aの高さを表す。このため、上ワークロール230aを移動量Hmm動かすために必要なピストン280pの移動量を求める。なお、ピストン280pの移動量を、以下、ストローク量stという。
【0059】
レベラフィーダ200のリリースは偏心軸262を用いて行われる。アクチュエータ280のロッド280rの先端金具はナックルジョイント263、に連結されており、ナックルジョイント263に連結されたアーム261は偏心軸262に取り付けられている。ピストン280pによってアーム261が揺動され偏心軸262が回転することにより、偏心量l分の上下運動が行われる。以上のことから、移動量Hに相当する偏心軸262の回転角度θが、次の式(4)から求められる。
θ=sin-1(H/l) (4)
ここで、lは偏心軸262の偏心量である。偏心軸262の回転角度θ及び偏心量lは図7(c)に示すとおりである。図7(c)では、偏心軸262が回転角度θ回転したときのアーム261等を破線で示している。
【0060】
式(4)から求められた回転角度θから、ストローク量stが次の式(5)から求められる。
st=Lsinθ (5)
ここで、アーム長さLは、図7(c)に示すとおりである。
【0061】
式(5)からストローク量stが決まれば、ピストン280pの動作を制限するための遮断開始時間Tsが決定される。なお、本実施形態では、ワークロール230の移動量Hを用いて遮断開始時間Tsを求めたが、これに限定されない。レベラフィーダ200に用いられるロールの中で、最も厳しい条件となる移動量を求めればよい。
【0062】
ここで、図8は、第1実施形態の遮断開始時間Tsとストローク量st及びリリース量を示すグラフであり、横軸に遮断開始時間(msec)を示し、左の縦軸にストローク量st(mm)を示し、右の縦軸にリリース量(mm)を示す。なお、実線はピストン280pのストローク量stを示し、破線はワークロール230のリリース量を示す。本実施形態のアクチュエータ280は、最大ストローク量が例えば70mmとする。
【0063】
このとき、図8からわかるように、ストローク量stもリリース量も、遮断開始時間Tsと比例関係にあることがわかる。このとき、比例係数をkとすると、図8のグラフから次の式(6)の関係が成り立つ。
st=k×Ts (6)
このため、遮断開始時間Tsは、次の式(7)から求められる。
Ts=st/k (7)
比例係数kは、レベラフィーダ200の機種に依存する固有値であり、各機種に応じて選択可能なパラメータとすればよい。制御部260は、使用するワーク120が決まったタイミングで、上述した式(7)から、遮断開始時間Tsを設定する。なお、遮断開始時間Tsは、使用者が手動で入力部(不図示)を用いて設定してもよい。
【0064】
<レベラフィーダの各ロールのリリース量制御>
以下に、送り装置であるレベラフィーダ200の制御方法について説明する。図9は、第1実施形態のレベラフィーダ200における各ロールの開閉動作処理を示すフローチャートであり、(a)は遮断開始時間Tsの設定処理を示すフローチャート、(b)はプレスシステム1を用いた加工処理を示すフローチャートである。また、図10は、図9のフローチャートの各処理におけるアクチュエータ280、282、方向切替弁420、422、遮断弁430、432を示す回路図であり、(a)は後述する図9のステップ(以下、Sとする。)230での状態を示す回路図、(b)は図9のS250での状態を示す回路図、(c)は図9のS270での状態を示す回路図である。図10には上下方向及び左右方向も示す。図9のフローチャートを用いてレベラフィーダ200の各ロールのリリースを最適な位置で停止させるためのリリース量(又はストローク量st)の制御について説明する。
【0065】
図9(a)は、ワーク120がアンコイラ100にセットされたとき等、プレスシステム1による加工の連続運転の開始前に行われる処理である。S110で制御部260は、入力部(不図示)からワーク120の仕様を受信する。S120で制御部260は、上述した式(1)から式(7)を用い、遮断開始時間Tsを求め、処理を終了する。
【0066】
図9(b)は、プレスシステム1により加工の連続運転が開始されてからの処理を説明するフローチャートである。S210で制御部260は、プレス加工が開始されると、プレス装置300と協働しながらワーク120の搬送を開始する。S220で制御部260は、プレス装置300のコントローラ314から各ロールを閉状態から開状態にするためのリリース信号(ON)を受信したか否かを判断する。
【0067】
S220で制御部260は、リリース信号を受信していないと判断した場合、処理をS220に戻し、リリース信号を受信したと判断した場合、処理をS230に進める。S230で制御部260は、各ロールが閉状態から開状態となるようリリースを開始する。具体的には、制御部260は、アクチュエータ280、282、方向切替弁420、422、遮断弁430、432を図10(a)に示すような接続状態となるように制御する。また、制御部260は、タイマ(不図示)をリセットし、S120で算出した遮断開始時間Tsを計測するためにタイマをスタートさせる。
【0068】
S240で制御部260は、タイマを参照し、遮断開始時間Tsが経過したか否かを判断する。S240で制御部260は、遮断開始時間Tsが経過していないと判断した場合、処理をS240に戻し、遮断開始時間Tsが経過したと判断した場合、処理をS250に進める。
【0069】
S250で制御部260は、各ロールのリリースを停止させる。具体的には、制御部260は、遮断弁430、432の各ポートの接続を切り替える。これにより、エアの排気が遮断され、ピストン280pの移動が停止し、各ロールのリリースが停止する。このとき、アクチュエータ280、282、方向切替弁420、422、遮断弁430、432は図10(b)に示すような接続状態となっている。
【0070】
S260で制御部260は、プレス装置300のコントローラ314から各ロールを開状態から閉状態にするためのリリース信号(OFF)を受信したか否かを判断する。S260で制御部は、リリース信号を受信していないと判断した場合、処理をS260に戻し、リリース信号を受信したと判断した場合、処理をS270に進める。
【0071】
S270で制御部260は、各ロールを開状態から閉状態とする。具体的には、制御部260は、方向切替弁420、422、遮断弁430、432を切り替える。このとき、アクチュエータ280、282、方向切替弁420、422、遮断弁430、432は図10(c)に示すような接続状態となっている(ホームポジション)。
【0072】
S280で制御部260は、プレス装置300からワーク120をプレス装置300に供給するための送り指令(以下、フィーダ送り信号という。)を受信したか否かを判断する。プレス装置300のコントローラ314は、レベラフィーダ200からワーク120を供給させるとき、フィーダ送り信号をONにして制御部260に送信するものとする。S280で制御部260は、フィーダ送り信号を受信していないと判断した場合、処理をS280に戻し、フィーダ送り信号を受信したと判断した場合、処理をS290に進める。
【0073】
S290で制御部260は、レベラフィーダ200によるワーク120の送り(フィーダ送り)を開始する。S300で制御部260は、プレス装置300から連続運転を停止する信号を受信したか否かを判断する。なお、プレス装置300は、連続運転を停止するときにONの信号を送信するものとする。S300で制御部260は、連続運転を停止する信号を受信していないと判断した場合、処理をS310に進め、連続運転を停止する信号を受信したと判断した場合、処理をS320に進める。
【0074】
S310で制御部260は、加工に必要な分のワーク120が送られたことを示すフィーダ送り完了信号をプレス装置300から受信したか否かを判断する。S310で制御部260は、フィーダ送り完了信号を受信していないと判断した場合、処理をS300に戻し、送り完了信号を受信したと判断した場合、処理をS220に戻す。S320で制御部260は、ワーク120を所定の位置まで搬送してから停止させ、処理を終了する。なお、プレス装置300は、上死点となるようにスライド312を移動させてから終了する。なお、プレスシステム1の停止時の処理は例えば公知の制御により行われ、説明を省略する。
【0075】
このように、既存の動作回路に回路遮断用の電磁弁を追加するだけで、各ロールのリリースを行うアクチュエータの動作を制限することができ、リリース量を任意に設定することができる。これにより、各ロールのリリース量が減るため、コンプレッサーの流体の消費量を削減することができる。また、各ロールのリリース量の最適化を行い、生産スピードを上げることができる。さらに、フィードロールでは、リリースの開始後、再びワークを把持(クランプ)する際の衝撃を緩和することができるため、ワークへの打痕、衝撃による騒音、機械本体への負荷等を軽減することができる。
【0076】
以上、第1実施形態によれば、アクチュエータによるロールの開閉動作時に、ワークに最適化した開閉動作を行うことができる送り装置及び送り装置の制御方法を提供することができる。
【0077】
[第2実施形態]
第1実施形態では、遮断弁430、432は、方向切替弁420、422の排出口であるR2ポートに接続されていた。第2実施形態では、遮断弁430、432をアクチュエータ280、282と方向切替弁420、422との間に設ける構成について説明する。なお、遮断弁432、方向切替弁422、アクチュエータ282の接続状態は、遮断弁430、方向切替弁420、アクチュエータ280と同じ構成であり、説明を省略する。
【0078】
<方向切替弁、遮断弁、アクチュエータ>
図11は、第2実施形態の方向切替弁420、遮断弁430のポートの切り替えを説明する回路図であり、(a)はホームポジションを示す図、(b)はリリース開始時を示す図、(c)は排気の遮断時を示す図である。以下では、図5図6と異なる接続について説明する。
【0079】
図11(a)はホームポジションの各ポートの接続状態を示す回路図である。本実施形態では、方向切替弁420は、Bポートが遮断弁430のpポートに接続されており、R1ポートが消音機420s1に接続され、R2ポートが消音機420s2に接続されている。遮断弁430は、pポートが方向切替弁420のBポートに接続され、aポートがアクチュエータ280のB室280Bに接続されている。アクチュエータ280は、B室280Bが遮断弁430のaポートに接続されている。
【0080】
<方向切替弁、遮断弁、アクチュエータの動作>
図11を用いて、方向切替弁420、遮断弁430、アクチュエータ280の動作について説明する。なお、図11において、ピストン280p及びロッド280rが移動する方向を左右方向とする。
【0081】
図11(a)は、上述したホームポジションの状態であり、ワークロール230は閉状態である。すなわち、コンプレッサー410に接続された方向切替弁420のPポートからBポートにエアが流れ、遮断弁430のpポートからaポートを介してエアがB室280Bに供給される。このため、アクチュエータ280の右から左へピストン280pが押されている。
【0082】
図11(b)は、制御部260がワークロール230を閉状態から開状態に制御するときの様子を示す図である。制御部260からの制御により、方向切替弁420は、PポートとBポートの接続をPポートとAポートの接続に切り替える。また、方向切替弁420は、BポートをR2ポートに接続する。これにより、コンプレッサー410に接続された方向切替弁420のPポートからAポートにエアが流れ、A室280Aに供給される。このため、アクチュエータ280のピストン280pが図中、左から右へ動き出す。動き出したピストン280pによってアクチュエータ280内のB室280Bのエアは、遮断弁430を介してBポートに接続されたR2ポートから排気される。
【0083】
図11(c)は、本実施形態の特徴を示す図であり、ワークロール230が閉状態から開状態となっている途中で、遮断弁430が作動し、エアの排気が遮断される様子を示す図である。制御部260は、ワークロール230のリリースを開始してから、第1実施形態で説明した遮断開始時間Tsが経過すると、遮断弁430によりエアの排気を遮断する。遮断弁430は、制御部260からの制御によって、pポートとaポートとの接続を、pポートとbポートとの接続に切り替える。
【0084】
このとき、アクチュエータ280のピストン280pの動作によって、遮断弁430を介して方向切替弁420のR2ポートから排気されていたエアは、aポートでせき止められる。これにより、アクチュエータ280のB室280B内の圧力が上昇し、Aポートから流入するエアの圧力と等しくなったタイミングで、ピストン280pの移動が停止する。この一連の動作によってアクチュエータ280の動作を制限することができる。そして、ロッド280r、伝達機構を介して接続されているワークロール230の開動作も停止する。
【0085】
以上、第2実施形態によれば、アクチュエータによるロールの開閉動作時に、ワークに最適化した開閉動作を行うことができる送り装置及び送り装置の制御方法を提供することができる。
【0086】
[第3実施形態]
上述した実施形態では、電磁弁である遮断弁430、432を用いて、各ロールのリリース量が適切になるようにアクチュエータ280、282を制御したが、これに限定されない。図12(A-a)は従来のホームポジションを示す図、(A-b)は従来のリリース開始時を示す図、(A-c)はピストンがB室280Bの端まで移動した従来の状態を示す図、(B-a)は第3実施形態のホームポジションを示す図、(B-b)は第3実施形態のリリース開始時を示す図、(B-c)は第3実施形態の排気の遮断時を示す図である。図12において、黒矢印はエアの供給を示し、白矢印はエアの排気を示している。
【0087】
図10(A-a)は、プレス装置300からリリース信号を受信したときの様子を示す図であり、方向切替弁420が各ポートの接続を切り替えて、A室280Aにエアを供給するとともにB室280Bからエアを排気し、A室280A内の圧力が上昇し始めたときの様子を示している。
【0088】
図10(A-b)は、アクチュエータ280のB室280B内の圧力が低いため、ロッド280rの移動が維持される様子を示している。図10(A-c)は、ロッド280r及びピストン280pがB室280Bの端部(右端部)まで移動した様子を示している。このため、従来は、上フィードロール250aと下フィードロール250bとの間が不要な寸法まで開いてしまっていた。
【0089】
図10(B-a)(B-b)は、図10(A-a)(A-b)と同様の図であり、説明を省略する。図10(B-c)では、アクチュエータ280のB室280Bの排気が遮断される。このため、ピストン280pは、A室280A内の圧力とB室280B内の圧力とが釣り合ったタイミング、言い換えれば両室の圧力差がなくなったタイミングで、移動を停止する。
【0090】
第3実施形態では、アクチュエータ280(シリンダ)は、ワークロール230が閉状態又は開状態となるように上ワークロール230aを移動させている。制御部260は、ワークロール230を閉状態から開状態にしたとき、B室280Bの圧力とA室280Aの圧力との差がなくなることでアクチュエータ280の移動が停止するようにアクチュエータ280を制御している。
【0091】
このように、各ロールのリリースの途中で、アクチュエータ280のA室280AとB室280Bとの圧力差がなくなり、ピストン280pが停止するように制御できるのであれば、第1、第2実施形態の構成に限定されず、どのような部品を用いて制御してもよい。
【0092】
以上、第3実施形態によれば、アクチュエータによるロールの開閉動作時に、ワークに最適化した開閉動作を行うことができる送り装置及び送り装置の制御方法を提供することができる。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能であり、例えば以下のような趣旨がある。
【0094】
[趣旨1]
本発明の送り装置は、
ワークを搬送する第1回転体及び第2回転体と、
第1室及び第2室を有し、前記第1回転体と前記第2回転体とが当接した閉状態、又は、前記第1回転体が前記第2回転体から離間した開状態、となるように前記第1回転体を移動させるアクチュエータと、
流体源から流体を前記第1室に供給し前記第2室から排出する第1状態と、前記流体を前記第2室に供給し前記第1室から排出する第2状態と、を切り替える切替手段と、
前記流体の排出を遮断する遮断手段と、
前記切替手段を前記第1状態に切り替えることで前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態とし、前記切替手段を前記第2状態に切り替えることで前記第1回転体及び前記第2回転体を前記開状態とするように制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態から前記開状態にしたとき、所定時間が経過したら前記第1室からの前記流体の排出を遮断させるよう前記遮断手段を制御する。
【0095】
[趣旨2]
前記所定時間は、前記ワークに関する情報に基づいて設定されてもよい。
【0096】
[趣旨3]
前記切替手段は、前記アクチュエータと前記遮断手段との間に接続されていてもよい。
【0097】
[趣旨4]
前記遮断手段は、前記アクチュエータと前記切替手段との間に接続されていてもよい。
【0098】
[趣旨5]
前記切替手段及び前記遮断手段は、電磁弁であってもよい。
【0099】
[趣旨6]
本発明の送り装置は、
ワークを搬送する第1回転体及び第2回転体と、
ピストンと、前記ピストンによって分けられた第1室及び第2室と、を有し、前記第1回転体と前記第2回転体とが当接した閉状態、又は、前記第1回転体が前記第2回転体から離間した開状態、となるように前記第1回転体を移動させるシリンダと、
前記シリンダを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態から前記開状態にしたとき、前記第1室の圧力と前記第2室の圧力との差がなくなることで前記ピストンの移動が停止するように前記シリンダを制御する。
【0100】
[趣旨7]
本発明のワークを搬送する送り装置の制御方法であって、
前記送り装置は、
ワークを搬送する第1回転体及び第2回転体と、
第1室及び第2室を有し、前記第1回転体と前記第2回転体とが当接した閉状態、又は、前記第1回転体が前記第2回転体から離間した開状態、となるように前記第1回転体を移動させるアクチュエータと、
流体源から流体を前記第1室に供給し前記第2室から排出する第1状態と、前記流体を前記第2室に供給し前記第1室から排出する第2状態と、を切り替える切替手段と、
前記流体の排出を遮断する遮断手段と、
前記切替手段を前記第1状態に切り替えることで前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態とし、前記切替手段を前記第2状態に切り替えることで前記第1回転体及び前記第2回転体を前記開状態とするように制御する制御手段と、
を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体を前記閉状態から前記開状態にするように前記制御手段が前記切替手段を制御するリリース工程と、
前記リリース工程を開始してから所定時間が経過したら前記第1室からの前記流体の排出を遮断させるように前記制御手段が前記遮断手段を制御する遮断工程と、
を備える。
【符号の説明】
【0101】
1 プレスシステム
10 床面
100 アンコイラ
110 マンドレル
120 ワーク
130 制御部
140 駆動部
200 レベラフィーダ
220 入口ロール
230 ワークロール、230a 上ワークロール、230b 下ワークロール
250 フィードロール、250a 上フィードロール、250b 下フィードロール
260 制御部
261 アーム
262 偏心軸
263 ナックルジョイント
264 リンク
266 上フレーム
268 偏心軸
270 記憶部
280 アクチュエータ、280A A室、280B B室、
280p ピストン、280r ロッド
282 アクチュエータ、282A A室、282B B室、
282p ピストン、282r ロッド
290 モータ
300 プレス装置
302 筐体
303 金型、303a 上型、303b 下型
304 駆動モータ
306 伝達機構
308 クランク軸
310 コンロッド
312 スライド
314 コントローラ
315 記憶部
316 表示部
318 入力部
320 スライド
322 ボルスタ
324 センサ
325 ロータリーエンコーダ
326 ギブ
410 コンプレッサー
420、422 方向切替弁
420s、422s、430s、432s、420s1、420s2 消音機
430、432 遮断弁
PL パスライン
【要約】
【課題】アクチュエータによるロールの開閉動作時に、ワークに最適化した開閉動作を行うことができる送り装置及び送り装置の制御方法を提供すること。
【解決手段】ワークロールが当接した閉状態、又は、ワークロールが離間した開状態、となるように上ワークロールを移動させるアクチュエータ280と、流体をB室280Bに供給しA室280Aから排出する第1状態と、流体をA室280Aに供給しB室280Bから排出する第2状態と、を切り替える方向切替弁420と、流体の排出を遮断する遮断弁430と、方向切替弁420を第1状態に切り替えてワークロールを閉状態とし、方向切替弁を第2状態に切り替えてワークロールを開状態とするように制御する制御部と、を備え、制御部は、ワークロールを閉状態から開状態にしたとき、遮断開始時間が経過したらB室280Bからの流体の排出を遮断させるよう遮断弁430を制御する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12