(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】物理的及び化学的突然変異誘発植物のM1世代突然変異を同定する方法、と突然変異体を取得する方法、及びイネの突然変異同定用のタイピングプライマー、突然変異遺伝子及び使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6895 20180101AFI20240612BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240612BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20240612BHJP
A01H 1/06 20060101ALI20240612BHJP
C12N 15/29 20060101ALI20240612BHJP
A01H 1/02 20060101ALI20240612BHJP
A01H 6/46 20180101ALI20240612BHJP
【FI】
C12Q1/6895 Z
C12Q1/6869 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
A01H1/06
C12N15/29
A01H1/02 Z
A01H6/46
(21)【出願番号】P 2022532721
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 CN2020077242
(87)【国際公開番号】W WO2021109344
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】201911223356.0
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911222439.8
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911223360.7
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911223359.4
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522215849
【氏名又は名称】湖南雑交水稲研究中心
【氏名又は名称原語表記】HUNAN HYBRID RICE RESEARCH CENTER
【住所又は居所原語表記】Ma Po Ling, Furong District Changsha, Hunan 410000 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】趙 炳然
(72)【発明者】
【氏名】韶 也
(72)【発明者】
【氏名】毛 畢剛
(72)【発明者】
【氏名】唐 麗
(72)【発明者】
【氏名】彭 彦
(72)【発明者】
【氏名】胡 遠藝
(72)【発明者】
【氏名】李 文建
(72)【発明者】
【氏名】余 麗霞
(72)【発明者】
【氏名】杜 艶
(72)【発明者】
【氏名】李 曜魁
(72)【発明者】
【氏名】張 丹
(72)【発明者】
【氏名】柏 連陽
(72)【発明者】
【氏名】袁 隆平
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105734130(CN,A)
【文献】特表2010-539925(JP,A)
【文献】国際公開第2019/062289(WO,A1)
【文献】特開2019-203810(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065517(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107828794(CN,A)
【文献】Methods in Molecular Biology,2014年,p.75-86,DOI:10.1007/978-1-4939-0446-4_7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12N 15/00-15/90
A01H 1/00
A01H 6/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的及び化学的突然変異誘発植物のM1世代突然変異をハイスループットターゲット同定しM2突然変異体を取得する方法であって、
非致死量の物理的及び化学的突然変異誘発によって植物を突然変異誘発して植物材料M1世代を得るステップ(a)と、
得られたM1世代の植物を個体植物に分けて植え、植えた後の各個体植物の葉を取り、各個体植物の葉を混合するステップ(b)と、
混合後のすべての葉から混合プールDNAを抽出するステップ(c)と、
抽出された混合プールのDNAに対して、ターゲット遺伝子領域の高深度ターゲットシーケンスを実行するステップ(d)と、
高深度ターゲットシーケンス結果をターゲット遺伝子領域の関連配列と比較し、高深度ターゲットシーケンス結果で、集団DNAサンプルのターゲット遺伝子領域にターゲットSNP及び/又はIndelが存在するかどうかを同定するステップ(e)と、
ステップ(e)の結果に対して、デジタルPCR同定方法により、ターゲットSNP及び/又はIndelが存在する集団DNAサンプルを検証するステップ(e
1)と、
ステップ(e
1)で検証されたターゲットSNP及び/又はIndelが存在する集団DNAサンプルの突然変異遺伝子型に従って、KASPタイピングプライマーを設計し、設計されたKASPタイピングプライマーを使用して、ステップ(e
1)で検証された集団DNAサンプル中の個体植物をタイピングし、ターゲット遺伝子の突然変異を伴うM1世代の個体植物を得るステップと、
前記ターゲット遺伝子の突然変異を伴うM1世代の個体植物ごとに、各穗の対応する葉のDNAを抽出して、前記KASPタイピングプライマーを利用してDNA同定を行い、前記ターゲット遺伝子の突然変異を含む穗を選択し、
前記穗を含む種子を混合収集するステップ(f)と、
混合収集された種子を混合播種した後、個体植物から葉を抽出し、前記KASPタイピングプライマーを利用してDNA同定を行って、最終的にターゲット遺伝子表現型を持つM2個体植物を取得するステップ(g)と、
を含むことを特徴とする物理化学的突然変異誘発植物のM1世代突然変異をハイスループットターゲット同定しM2突然変異体を取得する方法。
【請求項2】
前記ターゲット遺伝子領域の関連配列は、イネのOsNramp5遺伝子の遺伝子配列であり、OsNramp5遺伝子の8875646-8875663の位置では、9番目のエクソンに位置する開始塩基に[CCTACGTGGCAATTCACA/-]18個bpの欠失があることに対して、前記KASPタイピングプライマーには
FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGAAGAACCTGCACCCGTCCT-’3、
HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTGAAGAACCTGCACCCGTCAC-’3、
COMMON 5-’GCATGGAAAGAAACTGAACAAAGAT-’3という配列が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ターゲット遺伝子領域の関連配列は、イネのOsRR22遺伝子の遺伝子配列であり、OsRR22遺伝子の4138902位置では、3番目のエクソン内に[G/-]1個bpの欠失があることに対して、前記KASPタイピングプライマーには
FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTCAGGCACCATGAGTTATCCCT-’3、
HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTCAGGCACCATGAGTTATCCCC-’3、
COMMON 5-’TGTTATCAGTAAATGGAGAGACAAAGAC-’3という配列が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲット遺伝子領域の関連配列は、イネのOsRR22遺伝子の遺伝子配列であり、OsRR22遺伝子の4140861-4140867位置では、5番目のエクソン内に[CGGCTTT/-]7個bpの欠失があることに対して、前記KASPタイピングプライマーには
FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGCAAGCTCCTGAAGTCCGAA-’3、
HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTCAAGCTCCTGAAGTCCGCG-’3、
COMMON 5-’TTCTGCTGCTCTTCCATCTTTCA-’3という配列が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)の非致死量とは、半致死量の上下20%の範囲内で量を制御することを指すことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)の物理的及び化学的突然変異誘発方法は、紫外線突然変異誘発、X線突然変異誘発、ガンマ線突然変異誘発、ベータ線突然変異誘発、アルファ線突然変異誘発、高エネルギー粒子突然変異誘発、宇宙線突然変異誘発、および微小重力突然変異誘発が含まれる物理的突然変異誘発方法と、エチルメチルシクロエート突然変異誘発、硫酸ジエチル突然変異誘発、エチレンイミン突然変異誘発が含まれるアルキル化剤突然変異誘発、アジド突然変異誘発、塩基類似体突然変異誘発、塩化リチウム突然変異誘発、抗生物質突然変異誘発、挿入色素突然変異誘発が含まれる化学的突然変異誘発方法との1つまたは複数の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(b)において、得られたM1世代の植物を個体植物に分けて植える場合、任意の数の植物を1つの集団として、各集団を単位で番号付け、次のステップcでは、各集団の葉を1つの遠心分離管で混合してDNAを抽出することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つの集団内の任意の株数は、48株、96株、または192株であり、
そのうちの各個体植物から葉をとるとき、いずれも同じ個体植物の異なる部分から同じ量の葉を選択し、
次のステップ(d)では、48株の単一集団の高深度ターゲットシーケンスのシーケンス深度は2000を超え、
96株の単一集団の高深度ターゲットシーケンスのシーケンス深度は5000を超え、
192株の単一集団の高深度ターゲットシーケンスのシーケンス深度は10000を超える
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(d)において、前記ターゲット遺伝子領域は、ターゲット遺伝子のエキソン領域またはターゲット遺伝子の非コード領域を含み、
前記高深度ターゲットシーケンスには、マルチプレックスPCR増幅に基づくターゲットキャプチャテクノロジー、液相プローブキャプチャーハイブリダイゼーションに基づくターゲットキャプチャーテクノロジー、または第3世代シーケンス単一分子ターゲットシーケンステクノロジーが含まれ、
前記高深度ターゲットシーケンスのシーケンス深度は、各集団内の個体植物の数に応じて決定される
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ターゲット遺伝子はイネOsNramp5遺伝子またはイネOsRR22遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物突然変異体同定の分野に属し、特に物理的及び化学的突然変異誘発植物の突然変異体を同定する方法、と突然変異体を取得する方法に関し、さらに関連する突然変異用タイピングプライマーおよび取得されたイネ突然変異遺伝子と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
種子によって繁殖する禾穀類作物の中で、小麦とイネは中国の主な食糧用作物である。国民経済と社会の急速な発展に伴い、人口増加と耕作可能地の縮小との矛盾がますます顕著になっている。中国にはさまざまな塩分を含む広大な土壌があり、耐塩性が向上した禾穀類作物を栽培すると、中国の耕作可能地の面積が増え、総食料生産量が増える可能性がある。禾穀類作物の中で、イネは耐塩性が低く、遺伝的改良により耐塩性が向上した新品種の栽培が急務となっている。通常、子孫のうちに耐塩性が改善された突然変異材料をスクリーニングするために突然変異誘発が主に使用され、ハイブリッド育種法を用いて、子孫のうちに耐塩性が改善された形質組換え優れた株をスクリーニングし、葯培養法によって耐塩性が改善された株を取得する報告もある。この分野では、中国の沿岸塩性土壌に大量に植え付け、限られた資源を有効に活用するために、耐塩性形質のための生殖質資源を取得することが急務となっている。また、近年、「カドミウム米」事件が相次いで発生しており、米の品質も注目されている。重金属Cdは、毒性が高く累積的な腎毒性および発がん性物質であり、米Cdは、主食として食べる人々によるCd摂取の主な源である。特許文献1は、低カドミウムイネのスクリーニング方法を開示し、対照として湘晩汕12号を選択し、野外植栽と鉢植えの二重実験を行い、軽度、中度、重度のカドミウム汚染の3つのスクリーニング条件を設定し、スクリーニングされた低カドミウムイネの品種/系統の低カドミウム特性は包括的で安定している。低カドミウムイネの育種方法は先行技術で報告されているが、それらは主に環境ストレス条件下での品種スクリーニングに焦点を合わせ、突然変異誘発育種と分子育種による低カドミウムイネのスクリーニングに関する報告はほとんどない。したがって、カドミウムの蓄積が少ない新種のイネの選択と育種を強化することは、安全で栄養価の高い安全な農産物の産業開発を促進するのにさらに役立つ。
【0003】
生殖質資源は植物遺伝と育種の基礎であり、突然変異誘発育種は豊富な遺伝的変異を生み出し、結果として生じる変異率は、自然変異の数千乃至万倍である。1985年の国際原子力機関の統計によると、当時、世界各国で500以上の品種が突然変異誘発によって育てられ、同時に多くの貴重な生殖質資源が得られた。しかし、突然変異誘発育種にも多くの明らかな欠陥があり、その中で最も重要なのは、突然変異の位置がランダムであり、かつターゲット突然変異体はM2世代でのみ選択できるため、革新的な生殖質資源の精度と効率が低くなることである。
【0004】
植物における遺伝子指向編集技術の普及により、この技術は、その正確で効率的かつ単純な特性で突然変異誘発育種の欠陥を効果的に補い、植物遺伝学および育種コミュニティによって支持されている。遺伝子指向編集技術は突然変異誘発育種の主な欠点を克服するが、植物への遺伝子指向編集技術の適用には依然としてトランスジェニック手段が必要であるが、いくつかの重要な植物トランスジェニックシステムは未成熟であり、遺伝子指向編集技術の適用を制限する。突然変異誘発育種は、トランスジェニック技術の助けを借りずに、物理的および化学的手段を介して行われ、ほとんどの植物は突然変異誘発によって安定して遺伝する突然変異生殖質を得ることができるので、突然変異誘発育種には依然としてかけがえのない利点がある。さらに、植物における突然変異誘発育種の適用には長い歴史がある。1927年、Mullerは第3回国際遺伝学会議で、X線がショウジョウバエに多数の突然変異を引き起こすことを議論し、植物を改善するために突然変異を誘発することを提案した。その後、Stadlerは、X線がトウモロコシと大麦に突然変異を誘発する可能性があることを初めて実証した。Nilsson-Ehle&Gustafsson(1930)は、X線照射により、茎がしっかりしていて、穂がコンパクトで、直立型の大麦変異体を取得した。1934年、TollenearはX線を使用して最初の突然変異タバコ品種「Chlorina」を育てた。1948年、インドはX線突然変異誘発を使用して、干ばつに強い綿の品種を育てた。1957年、中国農業科学院は、中国で最初の原子能農業利用研究室を設立し、その後、各省も次々と関連する研究機構を設立した。1960年代半ばには、イネ、コムギ、大豆などの主要作物において放射線突然変異誘発によって新品種が育てられ、生産に使用された。1970年代後半に、植物放射線突然変異誘発育種は、野菜、砂糖、メロンと果物、飼料、薬用および観賞用植物育種に適用され始めた。突然変異誘発育種は長い間テストされており、世界の植物の遺伝子育種に多大な貢献をし、これは、科学と産業の両方で一般的に受け入れられている育種方法になっていることがわかる。
【0005】
突然変異誘発によって引き起こされる遺伝的変異はほとんど劣性であり、M1にキメラの形で存在するため、長い間、突然変異誘発育種の一般的な知識は、突然変異誘発世代(M1)に対して突然変異選択を行われないことである。第二世代の突然変異誘発(M2)の分離集団においてのみ、M1によって生成された劣性突然変異がホモ接合性の形でM2の個体に存在し、その後、突然変異体はターゲット特性に従って選択することができる。突然変異誘発育種のかけがえのない利点に基づいて、有益な突然変異の選択とターゲット遺伝子突然変異の低効率の問題を解決したいと考えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】出願公開番号CN105052641Aの発明特許出願
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によって解決されるべき技術的問題は、上記の背景技術で言及された不足および欠陥を克服し、高効率、正確、および使いやすい物理的及び化学的突然変異誘発植物のM1世代突然変異のハイスループットターゲット同定方法を提供し、人的資源と材料資源を節約でき、効率と精度が高い物理的及び化学的突然変異誘発植物のM1世代突然変異のハイスループットターゲット同定方法と突然変異体の取得方法もそれに応じて提供し、そしてそれに応じて、さまざまなイネ突然変異遺伝子及びイネ突然変異遺伝子の突然変異体の検出、スクリーニング、または取得用のKASPタイピングプライマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的問題を解決するために、本発明によって提供される技術的解決手段は、物理的及び化学的突然変異誘発植物のM1世代突然変異のハイスループットターゲット同定方法であり、
【0009】
非致死量の物理化学的突然変異誘発によって植物を突然変異誘発して、植物材料のM1世代を得るステップ(a)と、
得られたM1世代の植物を個体植物に分けて植え、植えた後の各個体植物の葉を取り、各個体植物の葉を混合するステップ(b)と、
【0010】
混合後のすべての葉から混合プールDNAを抽出するステップ(c)と、
抽出された混合プールのDNAに対して、ターゲット遺伝子領域の高深度ターゲットシーケンスを実行するステップ(d)と、
高深度ターゲットシーケンス結果をターゲット遺伝子領域の関連配列と比較し、高深度ターゲットシーケンス結果で、集団DNAサンプルのターゲット遺伝子領域にターゲットSNP及び/又はIndelが存在するかどうかを同定するステップ(e)と、を含む。
【0011】
今日の次世代シーケンス技術(NGS)と最新の第3世代シーケンスは、遺伝病や癌の分野での研究を加速させ、また、より高度な遺伝子検査法として徐々に臨床に参入している。多くのシーケンス技術の中から、柔軟性と低コストを十分に考慮し、最終的にターゲットシーケンス技術を選択し、ゲノムのターゲット領域への高深度シーケンスにより、植物の革新的な生殖質の迅速なスクリーニングと同定に移行し、これにより、既存の革新的な生殖質のスクリーニングの精度と効率が大幅に向上する。
【0012】
上記の方法は、好ましくは、前記ステップ(e)での同定が終了した後、以下の方法のいずれか1つまたは複数を使用して同定結果を検証し、サンプルのターゲット遺伝子領域にターゲットSNP及び/又はIndelが存在することを検証することも含み、前記検証方法は具体的には、
すべての植物を検出するためのデジタルPCR(すなわち、Digital PCR、dPCR)同定方法e1と、
KASPタイピング方法による各個体植物のタイピング同定e2と、
一世代シーケンス方法による各個体植物の同定e3と、を含む。
【0013】
デジタルPCRは、近年急速に発展している新世代のPCR技術であり、核酸分子の絶対定量技術であり、超高感度のデジタルPCRシステムは、0.01%までの低頻度の突然変異を簡単に定量化できる。デジタルPCRは、DNAの単一分子に対して正確な絶対定量技術であるため、超高精度であり、デジタルPCRと高深度ターゲットシーケンス技術を組み合わせることにより、深度シーケンスによって検出された低頻度の突然変異を正確に検証でき、既存の革新的な生殖質スクリーニングの精度と効率をさらに向上させることができる。
【0014】
KASP即ち競合する対立遺伝子特異性PCR(Kompetitive Allele Specific PCR)はハイスループットの既知のSNP/Indel検出技術であり、ターミナル蛍光の読み取りに基づいて、二色蛍光は同じ遺伝子座で異なる遺伝子型を検出できる。KASP技術を使用して、ハイスループットのタイピングと、高深度ターゲットシーケンスによって発見されたSNP/Indelに対してさまざまな個体のハイスループットタイピング同定を実行することにより、既存の革新的な生殖質スクリーニングの精度と効率をさらに向上させることができる。
【0015】
上記の方法は、好ましくは、前記ステップ(e)において、採用された具体的な同定方法は、
まず、デジタルPCR同定方法を使用して、高深度ターゲットシーケンス結果での集団DNAを検出し、集団DNAサンプルのターゲット遺伝子領域にターゲットSNP及び/又はIndelがあるかどうかを同定し、存在する場合に、次のステップ(2)を実行し、存在しない場合に終了するステップ(1)と、
【0016】
次に、デジタルPCRによって存在するSNP及び/又はIndel部位を同定し、KASPタイピングプライマーを設計し、該突然変異を含む混合プールサンプルに対応する集団に対して個体植物を分けてKASPジェノタイピングを実行し、ターゲット遺伝子領域に突然変異キメラ個体植物を含むかどうかを最終決定するステップ(2)と、を含む。
【0017】
KASPは、ハイスループットの既知のSNP/Indel検出技術であり、ターミナル蛍光の読み取りに基づいて、二色蛍光は同じ遺伝子座で異なる遺伝子型を検出できる。デジタルPCRを使用して候補領域の集団を絞り込み、次にKASP技術を使用して、高深度ターゲットシーケンスによって発見されたSNP/Indelに対してさまざまな個体の正確なタイピングを行うことにより、既存の革新的な生殖質スクリーニングの精度と効率をさらに向上させることができる。
【0018】
上記の方法は、好ましくは、前記ターゲット遺伝子領域の関連配列は、イネのOsNramp5遺伝子の遺伝子配列であり、OsNramp5遺伝子の8875646-8875663の位置では、9番目のエクソンに位置する開始塩基に[CCTACGTGGCAATTCACA/-]18個bpの欠失があることに対して、前記KASPタイピングプライマーには次の配列が含まれている。
【0019】
FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGAAGAACCTGCACCCGTCCT-’3、
【0020】
HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTGAAGAACCTGCACCCGTCAC-’3、
【0021】
COMMON 5-’GCATGGAAAGAAACTGAACAAAGAT-’3。
【0022】
上記の方法は、好ましくは、前記ターゲット遺伝子領域の関連配列は、イネのOsRR22遺伝子の遺伝子配列であり、OsRR22遺伝子の4138902位置では、3番目のエクソン内に[G/-]1個bpの欠失があることに対して、前記KASPタイピングプライマーには次の配列が含まれている。
【0023】
FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTCAGGCACCATGAGTTATCCCT-’3、
【0024】
HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTCAGGCACCATGAGTTATCCCC-’3、
【0025】
COMMON 5-’TGTTATCAGTAAATGGAGAGACAAAGAC-’3。
【0026】
上記の方法は、好ましくは、前記ターゲット遺伝子領域の関連配列は、イネのOsRR22遺伝子の遺伝子配列であり、OsRR22遺伝子の4140861-4140867位置では、5番目のエクソン内に[CGGCTTT/-]7個bpの欠失があることに対して、前記KASPタイピングプライマーには次の配列が含まれている。
【0027】
FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGCAAGCTCCTGAAGTCCGAA-’3、
【0028】
HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTCAAGCTCCTGAAGTCCGCG-’3、
【0029】
COMMON 5-’TTCTGCTGCTCTTCCATCTTTCA-’3。
【0030】
上記の方法は、好ましくは、前記ステップ(a)の非致死量とは、半致死量の上下20%の範囲内で量を制御することを指す。この量制御は、特定の突然変異率を取得できるだけでなく、特定の生きている種子の数を取得することもでき、たとえば、特に好ましい半致死量である。突然変異誘発方法の投与量を制御することにより、突然変異効率と生きている種子の数とのバランスを調和させることができる。
【0031】
上記の方法は、好ましくは、前記ステップ(a)の物理的及び化学的突然変異誘発方法は、
紫外線突然変異誘発、X線突然変異誘発、ガンマ線突然変異誘発、ベータ線突然変異誘発、アルファ線突然変異誘発、高エネルギー粒子突然変異誘発、宇宙線突然変異誘発、および微小重力突然変異誘発が含まれる、Indel突然変異を起こしやすい物理的突然変異誘発方法と、
【0032】
エチルメチルシクロエート(EMS)突然変異誘発、硫酸ジエチル(DES)突然変異誘発、エチレンイミン(EI)突然変異誘発が含まれるアルキル化剤突然変異誘発、アジド突然変異誘発、塩基類似体突然変異誘発、塩化リチウム突然変異誘発、抗生物質突然変異誘発、挿入色素突然変異誘発が含まれる、SNP突然変異を起こしやすい化学的突然変異誘発方法との1つまたは複数の組み合わせを含む。
【0033】
上記の方法は、好ましくは、前記ステップ(b)において、得られたM1世代の植物を個体植物に分けて植える場合、任意の数の植物を1つの集団として、各集団を単位で番号付け、次のステップ(c)では、各集団の葉を1つの遠心分離管で混合してDNAを抽出するため、各管のDNAにはすべて集団全体の遺伝子情報を含有させる。このようなグループ化操作により、大きなサンプルサイズをシーケンスに含めることができ、次に大量のサンプルをプールしてシーケンスのコストを削減し、次に追加のテストとタイピングのためのKASP技術と組み合わせることで、ハイスループットと低コストの効果的なバランスが最終的に達成される。
【0034】
さらに好ましくは、前記1つの集団内の任意の株数は、48株、96株、または192株であり、そのうちの各個体植物から葉をとるときに、すべて同じ個体植物の異なる部分から同じ量の葉を選択する。さらに好ましくは、次のステップ(d)では、48株の単一集団の高深度ターゲットシーケンスのシーケンス深度は2000×を超え、96株の単一集団の高深度ターゲットシーケンスのシーケンス深度は5000×を超え、192株の単一集団の高深度ターゲットシーケンスのシーケンス深度は10000×を超える。
【0035】
上記の方法は、好ましくは、前記ステップ(d)において、前記ターゲット遺伝子領域は、ターゲット遺伝子のエキソン領域またはターゲット遺伝子の非コード領域(または植物ゲノム上の他の関心のある領域、特に好ましくはエキソニック領域)を含み、前記高深度ターゲットシーケンスには、マルチプレックスPCR増幅に基づくターゲットキャプチャテクノロジー、液相プローブキャプチャーハイブリダイゼーションに基づくターゲットキャプチャーテクノロジー、または第3世代シーケンス単一分子ターゲットシーケンステクノロジーが含まれ、
【0036】
前記高深度ターゲットシーケンスのシーケンス深度は、各集団内の個体植物の数に応じて決定される。
【0037】
本発明の実施例の実験データから、本発明の上記の方法は、イネ、ソルガム、トウモロコシ、さらには野菜などの様々な植物に適用することができるが、行ったいくつかの実験によれば、好ましくは、前記ターゲット遺伝子はイネOsNramp5遺伝子またはイネOsRR22遺伝子である。後の試験の結果に基づいて、より多くの植物のより多くの遺伝子型に適用できることを除外しない。
【0038】
一般的な技術的概念として、本発明はまた、上記の方法によって物理的及び化学的突然変異誘発によってイネのM1世代突然変異を同定するときに、得られたイネ突然変異遺伝子を提供し、前記イネ突然変異遺伝子は、イネOsNramp5-18突然変異遺伝子、イネOsRR22-1突然変異遺伝子、またはイネOsRR22-7突然変異遺伝子であり、
【0039】
日本晴イネのOsNramp5遺伝子配列と比較して、前記イネOsNramp5-18突然変異遺伝子は、8875646-8875663位置(RAP_Locus)で9番目のエクソンに[CCTACGTGGCAATTCACA/-]18個bpの欠失があるという塩基欠失セグメントを含み、
【0040】
日本晴イネのOsRR22遺伝子配列と比較すると、前記イネOsRR22-1突然変異遺伝子は、OsRR22遺伝子の4138902位置(RAP_Locus)の3番目のエクソンに[G/-]1個bpの欠失があるという塩基欠失を含み、
日本晴イネのOsRR22遺伝子配列と比較すると、前記イネOsRR22-7突然変異遺伝子は、4140861-4140867位置(RAP_Locus)の5番目のエクソンに[CGGCTTT/-]7個bpの欠失があるという塩基欠失セグメントを含む。
【0041】
上記のイネ突然変異遺伝子、より好ましくは、前記イネOsNramp5-18突然変異遺伝子は、SEQ ID NO.19に示すヌクレオチド配列、又はその短縮配列、または95%以上の相同性を持つ同じ機能性タンパク質をコードする特定の配列を持って、
【0042】
前記イネOsRR22-1突然変異遺伝子は、SEQ ID NO.20に示すヌクレオチド配列、又はその短縮配列、または95%以上の相同性を持つ同じ機能性タンパク質をコードする特定の配列を持って、
【0043】
前記イネOsRR22-7突然変異遺伝子は、SEQ ID NO.21に示すヌクレオチド配列、又はその短縮配列、または95%以上の相同性を持つ同じ機能性タンパク質をコードする特定の配列を持っている。
【0044】
一般的な技術的概念として、本発明はまた、作物の分子支援育種における上記のイネ突然変異遺伝子の使用を提供する。
【0045】
上記の使用では、好ましくは、前記イネ突然変異遺伝子がイネOsNramp5-18突然変異遺伝子である場合、前記イネOsNramp5-18突然変異遺伝子またはイネOsNramp5-18突然変異遺伝子を有する突然変異体を、カドミウム低吸収表現型イネ品種の育種または調製に使用し、
【0046】
前記イネ突然変異遺伝子がイネOsRR22-1突然変異遺伝子またはイネOsRR22-7突然変異遺伝子である場合、前記イネOsRR22-1、OsRR22-7突然変異遺伝子またはイネOsRR22-1、OsRR22-7突然変異遺伝子を有する突然変異体を耐塩性表現型イネ品種の育種または調製に使用する。
【0047】
一般的な技術的概念として、本発明はまた、物理的及び化学的突然変異誘発M1世代の突然変異をハイスループットターゲット同定する方法および突然変異体を取得する方法を提供し、本発明の上記の方法により、ターゲット遺伝子領域の突然変異を含むキメラの個体植物を同定することに基づいて、以下のステップを実行し続ける。
【0048】
(f)ターゲット遺伝子領域の突然変異を含むキメラ個体植物ごとに、各穗の対応する葉のDNAを抽出してDNA同定を行い、該突然変異を含む穗を選択し、その種子を混合収集する。
【0049】
(g)混合収集された種子(M2世代)を混合播種した後、個体植物から葉を抽出し、DNA同定を行って、最終的にターゲット遺伝子表現型を持つM2個体植物を取得する。
【0050】
上記の方法は、好ましくは、前記ターゲット遺伝子領域の突然変異を含むキメラ個体植物とは、イネOsNramp5-18突然変異遺伝子、イネOsRR22-1突然変異遺伝子、またはイネOsRR22-7突然変異遺伝子を含むキメラ個体植物を指し、
【0051】
日本晴イネのOsNramp5遺伝子配列と比較して、前記イネOsNramp5-18突然変異遺伝子は、8875646-8875663位置(RAP_Locus)で9番目のエクソンに[CCTACGTGGCAATTCACA/-]18個bpの欠失があるという塩基欠失セグメントを含み、
【0052】
日本晴イネのOsRR22遺伝子配列と比較すると、前記イネOsRR22-1突然変異遺伝子は、OsRR22遺伝子の4138902位置(RAP_Locus)の3番目のエクソンに[G/-]1個bpの欠失があるという塩基欠失を含み、
【0053】
日本晴イネのOsRR22遺伝子配列と比較すると、前記イネOsRR22-7突然変異遺伝子は、4140861-4140867位置(RAP_Locus)の5番目のエクソンに[CGGCTTT/-]7個bpの欠失があるという塩基欠失セグメントを含む。
【0054】
上記の方法は、好ましくは、前記ステップ(f)では、前記DNA同定は、好ましくは設計されたKASPタイピングプライマーを利用して同定することであるが、ターゲット領域を対象とした一世代シーケンス同定であってもよく、上記のKASPタイピングプライマーを同定に使用すると、ハイスループット、低コスト、操作の利便性をよりよく達成できる。
【0055】
前記ステップ(g)では、前記DNA同定は、好ましくは設計されたKASPタイピングプライマーを利用して同定することであるが、ターゲット領域を対象とした一世代シーケンス同定であってもよい。上記のKASPタイピングプライマーを同定に使用すると、ハイスループット、低コスト、操作の利便性をよりよく達成できる。
【0056】
一般的な技術的概念として、本発明はまた、上記の方法において、イネの突然変異体を同定する又は取得するためのKASPタイピングプライマーを提供し、前記KASPタイピングプライマーには、
【0057】
イネOsNramp5-18突然変異遺伝子を同定または取得するためのプライマーペア1
FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGAAGAACCTGCACCCGTCCT-’3、
HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTGAAGAACCTGCACCCGTCAC-’3、
【0058】
COMMON 5-’GCATGGAAAGAAACTGAACAAAGAT-’3、と、
イネOsRR22-1突然変異遺伝子を同定または取得するためのプライマーペア2
FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTCAGGCACCATGAGTTATCCCT-’3、
HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTCAGGCACCATGAGTTATCCCC-’3、
【0059】
COMMON 5-’TGTTATCAGTAAATGGAGAGACAAAGAC-’3、と、
イネOsRR22-7突然変異遺伝子を同定または取得するプライマーペア3
FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGCAAGCTCCTGAAGTCCGAA-’3、
HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTCAAGCTCCTGAAGTCCGCG-’3、
COMMON 5-’TTCTGCTGCTCTTCCATCTTTCA-’3と、を含むプライマーペアのいずれか1つが含まれる。
【発明の効果】
【0060】
従来技術と比較して、本発明の利点は以下のとおりである。
本発明は、高深度ターゲットシーケンス技術を、ターゲットシーケンス技術、デジタルPCR技術およびKASPジェノタイピング技術の1つまたは複数と創造的に組み合わせ、且つそれを突然変異誘発育種のための突然変異スクリーニングの分野に創造的に移し、突然変異誘発M1世代では、ターゲット遺伝子突然変異のハイスループットで正確な選択を実現でき、ターゲット遺伝子突然変異を含むキメラ個体植物を正確に特定することができる。本発明の技術的解決手段は、一世代の繁殖に必要な時間と費用を節約するだけでなく、一世代の繁殖後に集団数が大幅に増加すると、土地、人員、突然変異の選択にかかるコストが高すぎるという問題を解決し、革新的な生殖質の同定と取得には、著しい進歩意義を有する。
【0061】
本発明の同定方法およびスクリーニング方法に基づいて、発明者らはまた、イネOsNramp5-18突然変異遺伝子、イネOsRR22-1突然変異遺伝子およびイネOsRR22-7突然変異遺伝子を創造的に得て、同時に、作物の分子支援育種および低カドミウム吸収表現型および耐塩性表現型を有するイネ品種の選択または調製における前述の突然変異遺伝子の使用を提供し、顕著な技術的効果が達成され、最終的に低カドミウム吸収表現型イネ品種と耐塩性表現型イネ品種が得られた。
【0062】
さらに、本発明で設計されたイネ突然変異遺伝子の突然変異体を検出、スクリーニング、または取得するためのKASPタイピングプライマーは、高深度ターゲットシーケンスによって発見されたSNP/Indelに対してさまざまな個体の正確なタイピングを行い、既存の革新的な生殖質スクリーニング同定の精度と効率をさらに向上させることができる。
【0063】
本発明の技術的解決手段は、一世代の繁殖に必要な時間と費用を節約するだけでなく、一世代の繁殖後に集団数が大幅に増加すると、土地、人員、突然変異の選択にかかるコストが高すぎるという問題を解決し、著しい進歩意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
本発明の実施例または先行技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下は、実施例または先行技術の説明において使用される必要がある添付の図面を簡単に紹介し、明らかに、以下の説明の図面は、本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとって、他の図面もまた、創造的な努力なしにこれらの図面から得ることができる。
【0065】
【
図1】本発明の物理的及び化学的突然変異誘発植物のM1世代突然変異のハイスループットターゲット同定方法および突然変異体の取得方法のプロセスフロー図である。
【
図2】本発明の実施例1において、KASPタイピングプライマーを使用して、32番号の集団をタイピングした後の結果である。
【
図3】本発明の実施例1において、KASPタイピングプライマーを使用して、26番号の集団をタイピングした後の結果である。
【
図4】本発明の実施例1において、KASPタイピングプライマーを使用して、34番号の集団をタイピングした後の結果である。
【
図5】本発明の実施例4において、突然変異体華占Nramp5
-18と華占(WT)が同時に発芽する比較写真である。
【
図6】本発明の実施例4において、突然変異体と対照の個体植物の穀粒の乾燥重量を測定した比較結果である。
【
図7】本発明の実施例4において、突然変異体と対照玄米のCd含有量を測定した比較結果である。
【
図8】本発明の実施例5において、突然変異体華占OsRR22
-1と華占(WT)が同時に発芽する比較写真である。
【
図9】本発明の実施例6において、突然変異体華占OsRR22
-7と華占(WT)が同時に発芽する比較写真である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明の理解を容易にするために、本発明を添付の図面および本明細書の好ましい実施例を参照して以下により包括的かつ詳細に説明するが、本発明の保護範囲は以下の具体的な実施例に限定されない。
【0067】
別の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。 本明細書で使用される専門用語は、具体的な実施例を説明することのみを目的としており、本発明の保護範囲を限定することを意図するものではない。
【0068】
特に明記しない限り、本発明で使用される様々な原材料、試薬、器具および装置等はすべて、市場から購入することができ、または既存の方法によって調製することができる。
【0069】
実施例1:
図1に示されるような本発明の物理的及び化学的突然変異誘発植物M1世代の突然変異のハイスループットターゲット同定方法および突然変異体の取得方法は、具体的には、以下のステップを含む。
【0070】
1.80MeV/uの炭素イオン(12C6+)を用いて180Gyの線量でイネ品種638Sの20,000種子を照射して、M1世代のイネ品種638S(以下638Sと呼ばれる)を得た。
【0071】
2.638SM1世代の20,000の種子を育苗した後の植物を個体植物に分けて、植え、96株を1つの集団、各集団に8行、各行に12株、100の集団、合計9600株を植え、かつ各集団に1~100の番号を付けた。
【0072】
3.各集団を1つの単位とし、各個体植物から等量の葉を取り、合計96等分を1つの遠心分離管で混合してDNAを抽出し、合計100個のDNAを抽出し、DNA番号は各集団番号1~100に対応した。
【0073】
4.各集団のDNAを1つのシーケンスサンプルとして使用して、OsNramp5遺伝子(Os07g0257200)およびOsRR22遺伝子(Os06g0183100)遺伝子のエクソン領域でターゲット高深度シーケンスを実行し、シーケンス深度>5000×であった。
【0074】
5.高深度ターゲットシーケンスデータを日本晴配列と比較し、100個サンプルのOsNramp5遺伝子およびOsRR22遺伝子エクソンに存在するSNPおよびIndelデータを取得し、検出後、サンプル32番号では、OsNramp5遺伝子の8875646-8875663位置(RAP_Locus)に[CCTACGTGGCAATTCACA/-]18個bpの欠失があることがわかり、該欠失は9番目のエクソンの開始塩基に1個bpを持って、検出後、サンプル26番号には、3番目のエクソン内にあるOsRR22遺伝子の4138902(RAP_Locus)の位置に[G/-]1bpの欠失があることもわかり、検出後、サンプル34番号は5番目のエクソン内にあるOsRR22遺伝子の4148061-4140867位置(RAP_Locus)に[CGGCTTT/-]7個bpの欠失があることもわかった。
【0075】
6.デジタルPCR技術を使用して、上記の集団サンプル番号 32、26、および34のシーケンスデータに存在するIndelを検証し、検証結果は、ターゲットシーケンスデータの欠失突然変異遺伝子型が3つのサンプルすべてに存在することを示した。
【0076】
7.32、26、34番号の集団サンプルのDNAの欠失突然変異遺伝子型に従って、KASPタイピングプライマーを次のように設計した(北京Qing科新業生物技術有限公司製)
32FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGAAGAACCTGCACCCGTCCT-’3
(SEQ ID NO.1に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
32HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTGAAGAACCTGCACCCGTCAC-’3
(SEQ ID NO.2に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
32COMMON 5-’GCATGGAAAGAAACTGAACAAAGAT-’3(SEQ ID NO.3に示す)、
26FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTCAGGCACCATGAGTTATCCCT-’3
(SEQ ID NO.4に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
26HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTCAGGCACCATGAGTTATCCCC-’3
(SEQ ID NO.5に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
26COMMON 5-’TGTTATCAGTAAATGGAGAGACAAAGAC-’3(SEQ ID NO.6に示す)、
34FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGCAAGCTCCTGAAGTCCGAA-’3
(SEQ ID NO.7に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
34HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTCAAGCTCCTGAAGTCCGCG-’3
(SEQ ID NO.8に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
34COMMON 5-’TTCTGCTGCTCTTCCATCTTTCA-’3(SEQ ID NO.9に示す)。
【0077】
8.3つの欠失突然変異部位を持つKASPタイピングプライマーを使用して、それぞれ32、26、および34の集団の96*3=288個の個体植物をタイピングし、タイピング後、集団32番号の4行目の5番目の株(32-D-5)には、OsNramp5遺伝子の9番目のエクソン[CCTACGTGGCAATTCACA/-]の18個bpの欠失遺伝子型が含まれていることがわかり(
図2を参照)、また、集団26番号の1行目の7番目の株(26-A-7)には、OsRR22遺伝子の3番目のエクソン[G/-]の1個bpの欠失遺伝子型が含まれていることがわかり(
図3を参照)、さらに、集団34番号の3行目の6番目の株(34-C-6)には、OsRR22遺伝子の5番目のエクソン[CGGCTTT/-]に7個bpの欠失遺伝子型が含まれていることがわかった(
図4を参照)。最後に、1つのOsNramp5遺伝子フレームシフト突然変異キメラ32-D-5、および2つのOsRR22遺伝子フレームシフト突然変異キメラ26-A-7および34-C-6を含む、ターゲット遺伝子の欠失突然変異を伴うM1世代の3つの個体植物が得られた。
【0078】
欠失突然変異部位のKASPタイピングプライマーを使用して、32、26、および34の集団で96*3=288個の個体植物をタイピングするための具体的な操作は次のとおりである。
【0079】
(1)CTAB法によるイネの葉からのDNAの抽出。
(2)KASPタイピングシステム5μl
FAM-X 10μM 0.15μl
HEX-Y 10μM 0.15μl
COMMON 10μM 0.3μl
KASP MIX 2.5μl
サンプルDNA 10ng-100ng
H2O 5μlまで水を補充し
【0080】
【0081】
9.32-D-5、26-A-7、34-C-6の個体植物の各穗の対応する葉からDNAを抽出し、個体植物におけるIndel変異に対してシーケンス検出を行い、32-D-5個体植物の3つの穗は[CCTACGTGGCAATTCACA/-]変異遺伝子型(SEQ ID NO.19に示す)を含み、26-A-7個体植物の2つの穗は[G/-]変異遺伝子型(SEQ ID NO.20に示す)を含み、34-C-6個体植物の4つの穗は[CGGCTTT/-]変異遺伝子型(SEQ ID NO.21に示す)を含むことがわかった。個体植物を単位として変異遺伝子型穗を含む種子を混合収穫した。
【0082】
10.32-D-5、26-A-7、34-C-6という混合収穫種子を3つの集団に分けて播種し、そして、上記のステップ7で設計されたKASPプライマーを使用して、個体植物をタイピングし、最終的に32-D-5のM2集団でカドミウム低吸収表現型の638S-32-D-5が得られ、26-A-7、34-C-6集団のM2集団で耐塩性表現型の638S-26-A-7および638S-34-C-6が得られた。
【0083】
実施例2
図1に示されるような本発明の物理的及び化学的突然変異誘発植物M1世代の突然変異のハイスループットターゲット同定方法および突然変異体の取得方法は、具体的には以下のステップを含む。
【0084】
1.イネ品種華航31の種子を20,000個取り、28℃の恒温インキュベーターで16時間浄水に浸し、種子をすくい上げ、水分を乾燥させた。種子を1%(w/w)メタンスルホン酸エチル(EMS)溶液に、28℃の恒温インキュベーターで8時間再度浸し、種子をすくい上げ、水分を乾燥させた。浄水で種子をすすぎ、8回に水を交換した後、37℃で発芽を促進して播種して苗を育てた後に植え、96株を1つの集団、各集団に8行、各行に12株、100の集団、合計9600株を植え、かつ各集団に1~100の番号を付けた。
【0085】
2.各集団を1つの単位とし、各個体植物から等量の葉を取り、合計96等分を1つの遠心分離管で混合してDNAを抽出し、合計100個のDNAを抽出し、DNA番号は各集団番号1~100に対応した。
【0086】
3.各集団のDNAを1つのシーケンスサンプルとして使用して、OsBADH2(Os08g0424500)遺伝子のエクソン領域でターゲット高深度シーケンスを実行し、シーケンス深度>5000×であった。
【0087】
4.高深度ターゲットシーケンスデータを日本晴配列と比較し、100個サンプルの OsBADH2遺伝子エクソンに存在するSNPおよびIndelデータを取得し、検出後、サンプル72番号では、OsBADH2遺伝子の20381445位置(RAP_Locus)に[G/A]の一塩基突然変異があることがわかり、この変異により、109番号のアミノ酸がTrpからターミネーターに変化し、OsBADH2遺伝子によってコードされるタンパク質が早期に停止した。
【0088】
5.上記集団サンプル72番号のシーケンスデータのSNPをデジタルPCR技術で検証した結果、ターゲットシーケンスデータのSNP遺伝子型がこのサンプルに存在することがわかった。
【0089】
6.集団サンプル72番号のDNAに存在するSNP遺伝子型によると、KASPタイピングプライマーを次のように設計した。
72FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGAAGCCTCTTGATGAAGCAGCATG-’3
(SEQ ID NO.10に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
72HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTGAAGCCTCTTGATGAAGCAGCATA-’3
(SEQ ID NO.11に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
72COMMON 5-’CAACATCGTCCTGACAAATGGAAT-’3(SEQ ID NO.12に示す)。
【0090】
7.上記で設計されたKASPタイピングプライマーを使用して、それぞれ集団72番号の96個の個体植物をタイピングした。タイピング後、集団72番号の7行目3株(72-G-3)には、OsBADH2遺伝子の3番目のエクソン[G/A]一塩基変異遺伝子型が含まれていることがわかった。最後に、ターゲット遺伝子の早期終結突然変異を有するM1世代の個体植物72-G-3が得られた。
【0091】
8.72-G-3個体植物の各穗の対応する葉からDNAを抽出し、個体植物におけるSNP変異に対してシーケンス検出を行い、72-G-3個体植物の3つの穂には[G/A]一塩基変異遺伝子型が含まれていることがわかり、変異遺伝子型の穂を含む種子を混合収穫した。
【0092】
9.72-G-3個体植物に混合収穫された種子を、育苗した後に個体に植え、そして、上記のステップ6で設計されたKASPプライマーを使用して、個体植物をタイピングし、最終的に72-G-3のM2集団で米の香りの表現型を持つ華航31-72-G-3が得られた。
【0093】
実施例3:
図1に示されるような本発明の物理的及び化学的突然変異誘発植物M1世代の突然変異のハイスループットターゲット同定方法および突然変異体の取得方法は、具体的には以下のステップを含む。
【0094】
1.60Co-γ射線を用いて350Gyの線量でイネ品種華占の10万種子を照射して、M1世代のイネ品種華占を得た。
【0095】
2.華占M1世代の10万種子を育苗した後、96株を1つの集団、各集団に8行、各行に12株、500の集団、合計48000株を植え、かつ各集団に1~500の番号を付けた。
【0096】
3.各集団を1つの単位とし、各個体植物から等量の葉を取り、合計96等分を1つの遠心分離管で混合してDNAを抽出し、合計500個のDNAを抽出し、DNA番号は各集団番号1~500に対応した。
【0097】
4.各集団のDNAを1つのシーケンスサンプルとして使用して、Os11N3遺伝子(Os11g0508600)およびOs8N3遺伝子(Os08g0535200)の遺伝子調節領域における斑点細菌病原菌のTALエフェクター結合領域に対してターゲット高深度シーケンスを行い、シーケンス深度>5000×であった。
【0098】
5.高深度ターゲットシーケンスデータを日本晴配列と比較し、500個サンプルのOs11N3遺伝子およびOs8N3遺伝子調節領域における斑点細菌病原菌TALエフェクター結合領域に存在するSNP及びIndelデータを取得した。検出後、サンプル261番号では、Os11N3遺伝子の18174476-18174497位置(RAP_Locus)に[ccaaccaggtgctaagctcatc/-]22個bpの欠失があることがわかり、検出後、サンプル385番号はOs8N3遺伝子の26728837-26728870位置(RAP_Locus)に[tctccccctactgtacaccaccaaaagtggaggg/-]34個bpの欠失があることもわかった。
【0099】
6.デジタルPCR技術を使用して、上記のサンプル番号 261、385のサンプルシーケンスデータに存在するIndelを検証し、検証結果は、ターゲットシーケンスデータの欠失突然変異遺伝子型が3つのサンプルすべてに存在することを示した。
【0100】
7.261、385番号の集団サンプルのDNAの欠失突然変異遺伝子型に従って、KASPタイピングプライマーを次のように設計した。
261FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTtcctagcactatataaaccccctc-’3
(SEQ ID NO.13に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
261HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTtcctagcactatataaaccccctA-’3
(SEQ ID NO.14に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
261COMMON 5-’cttgagtttgctttgcttgaaggc-’3(SEQ ID NO.15に示す)、
385FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGGCTCAGTGTTTATATAGTTGGAGAC-’3
(SEQ ID NO.16に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
385HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTggctcagtgtttatatagttggaga-’3
(SEQ ID NO.17に示すように、下線部分は蛍光標識プライマーを示す)、
385COMMON 5-’gaaaaaaaagcaaaggttagatatgca-’3(SEQ ID NO.18に示す)。
【0101】
8.2つの欠失突然変異部位を持つKASPタイピングプライマーを使用して、それぞれ261、385番号の集団の96*2=192個の個体植物をタイピングした。タイピング後、集団261番号の2行目の7番目の株(261-B-7)には、Os11N3遺伝子の調節領域における斑点細菌病原菌TALエフェクター結合領域[ccaaccaggtgctaagctcatc/-]の22個bpの欠失遺伝子型が含まれていることがわかり、タイピング後、385番号集団の8行目の3番目の株(385-H-3)には、Os8N3遺伝子調節領域における斑点細菌病原菌TALエフェクター結合領域[tctccccctactgtacaccaccaaaagtggaggg/-]に34個bpの欠失遺伝子型が含まれていることがわかった。最後に、1つのOs11N3遺伝子フレームシフト突然変異キメラ261-B-7、および1つのOs8N3遺伝子フレームシフト突然変異キメラ385-H-3を含む、ターゲット遺伝子の欠失突然変異を伴うM1世代の2つの個体植物が得られた。
【0102】
9.261-B-7、385-H-3の個体植物の各穗の対応する葉からDNAを抽出し、個体植物におけるIndel変異に対してシーケンス検出を行い、261-B-7個体植物の4つの穂には[ccaaccaggtgctaagctcatc/-]変異遺伝子型が含まれ、385-H-3個体植物の三つの穂には[tctccccctactgtacaccaccaaaagtggaggg/-]変異遺伝子型が含まれることがわかった。個体植物を単位として変異遺伝子型穗を含む種子を混合収穫した。
【0103】
10.261-B-7と385-H-3の混合収穫種子を2つの集団で播種し、そして、ステップ7で設計されたKASPプライマーを使用して、個体植物をタイピングし、最後に、261-B-7、385-H-3のM2集団で斑点細菌抵抗性華占261-B-7、385-H-3が得られた。
【0104】
実施例4:
上記の実施例1で得られたイネOsNramp5-18変異遺伝子であって、それはSEQ ID NO.19に示すヌクレオチド配列を有する。北京Qing科新業生物技術有限公司の検出結果から、該イネのOsNramp5-18変異遺伝子は、OsNramp5遺伝子の8875646-8875663位置(RAP_Locus)に[CCTACGTGGCAATTCACA/-]の18個bpの欠失があり、該欠失には9番目のエクソンにある1bpの開始塩基がある。
【0105】
図1に示す実施例1の同定方法により上記のイネOsNramp5
-18変異遺伝子が物理的及び化学的突然変異誘発サンプルに含まれているかどうかを同定することができる。
【0106】
低カドミウム吸収表現型のイネ品種の育種および調製における該イネOsNramp5-18変異遺伝子または実施例1で得られたイネOsNramp5-18変異遺伝子を有する変異体の使用は、具体的には以下のステップを含む。
【0107】
(1)得られたOsNramp5-18変異遺伝子の遺伝子表現型を有する変異体をドナー親とし、イネ華占をレシピエント親として交雑育種し、F1種子を取得した。
(2)F1種子集団を播種した後、個体植物を選択して再発親イネ華占と交雑して、BC1F1種子を得た。
(3)BC1F1種子を播種し、個体植物に分けてBC1F1集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsNramp5-18変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、前記再発する親との背景類似性が最も高い個体植物を選択し戻し交配を続けて、BC2F1種子を得た。
【0108】
(4)BC2F1種子を播種し、個体植物に分けてBC2F1集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsNramp5-18変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、前記再発する親との背景類似性が最も高い個体植物を選択し戻し交配を続けて、BC3F1種子を得た。
【0109】
(5)BC3F1種子を播種し、個体植物に分けてBC3F1集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsNramp5-18変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、再発する親との背景類似性が最も高い個体植物を選択し自家交配して実りBC3F2種子を得た。
【0110】
(6)BC3F2種子を播種し、個体植物に分けてBC3F2集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsNramp5
-18変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、イネ華占と同じ遺伝的背景を持つ個体植物華占-Nramp5
-18を収穫用に選択し、
図5に示すカドミウム取り込み表現型の低いイネ品種華占-Nramp5
-18が得られた。
【0111】
上記の使用後に得られた低カドミウム吸収表現型を有する華占-Nramp5-18イネ品種に対してカドミウムストレスポット実験を行い、土壌は、畑の表面から取られ、基礎肥沃度を測定し、風乾し、ふるいにかけ、不純物を取り除き、均一に混合し、ポットあたり25mg/kgまで分けて入れ、溶液としてCd(CdCl2)を予備用土壌に追加し、カドミウム処理濃度は2mg/kgであり、4週間して使用に備えた。
【0112】
本実施例のステップ(6)で得られた変異体華占-Nramp5
-18および華占対照を、カドミウムで汚染されたポットに植え、ポットあたり6穴、穴あたり2株、3回の繰り返した。イネの成熟時にサンプリングし、個体植物の茎、葉、穂を分離し、脱穀し、茎と葉を水道水ですすぎ、脱イオン水で洗浄し、各サンプルを105℃で30分間硬化させ、80℃で恒量になるまで乾燥させ、個体植物の種子の乾燥重量を測定し、結果を
図6に示した。玄米をすりつぶし、100メッシュのふるいにかけ、それをHNO
3-HClO
4で分解し、玄米中のカドミウムおよびその他の関連ミネラル元素の含有量を、誘導結合プラズマ発光分析装置ICPによって特定し、結果を
図7に示した。前述の
図6および7の結果は、変異体玄米のCd含有量が対照よりも有意に低く、植物の生物学的収量は対照と比較して有意差はないことを示した。
【0113】
実施例5:
上記の実施例1で得られたイネOsRR22-1変異遺伝子であって、それはSEQ ID NO.20に示すヌクレオチド配列を有する。北京Qing科新業生物技術有限公司の検出結果から、該イネのOsRR22-1変異遺伝子は、イネOsRR22遺伝子の3番目のエクソン[G/-]1個bp(4138902位置)の欠失遺伝子型である。
【0114】
図1に示す実施例1の同定方法により上記のイネOsRR22
-1変異遺伝子が物理的及び化学的突然変異誘発サンプルに含まれているかどうかを同定することができる。
【0115】
低カドミウム吸収表現型のイネ品種の育種および調製における該イネOsRR22-1変異遺伝子または実施例1で得られたイネOsRR22-1変異遺伝子を有する変異体の使用は、具体的には以下のステップを含む。
【0116】
(1)実施例1で得られたOsRR22-1変異遺伝子の遺伝子表現型を有する変異体をドナー親とし、イネ華占をレシピエント親として交雑育種し、F1種子を取得した。
(2)F1種子集団を播種した後、個体植物を選択して再発親イネ華占と交雑して、BC1F1種子を得た。
(3)BC1F1種子を播種し、個体植物に分けてBC1F1集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsRR22-1変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、前記再発する親との背景類似性が最も高い個体植物を選択し戻し交配を続けて、BC2F1種子を得た。
【0117】
(4)BC2F1種子を播種し、個体植物に分けてBC2F1集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsRR22-1変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、前記再発する親との背景類似性が最も高い個体植物を選択し戻し交配を続けて、BC3F1種子を得た。
【0118】
(5)BC3F1種子を播種し、個体植物に分けてBC3F1集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsRR22-1変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、再発する親との背景類似性が最も高い個体植物を選択し自家交配して実りBC3F2種子を得た。
【0119】
(6)BC3F2種子を播種し、個体植物に分けてBC3F2集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsRR22
-1変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、イネ華占と同じ遺伝的背景を持つ個体植物華占-OsRR22
-1を収穫用に選択し、
図8に示す耐塩表現型のイネ品種華占-OsRR22
-1が得られた。
【0120】
本実施例で得られた変異体華占-OsRR22-1と華占(WT)を同時に発芽し、イネの苗が三葉・一心期のとき、0.8%濃度の塩化ナトリウム水溶液に10日間継続的にストレス処理してから写真を撮り、突然変異体と対照群をそれぞれ10株取り、純水で洗浄し、水分を吸収した後、苗の根の長さ、草丈、新鮮重を測定し、検出結果を以下の表1に示した。
【0121】
表1:華占-OsRR22
-1と華占(WT)耐塩性試験の比較結果
【0122】
表1の結果から、華占(WT)は10日間のストレス処理後に枯れたが、変異体華占-OsRR22-1は正常に成長でき、根長、株高、根の長さ、草丈、新鮮重も華占(WT)のそれよりも有意に高く、塩ストレス下での変異体華占-OsRR22-1の成長能が、野生型対照の成長能よりも有意に強いことを示している。
【0123】
実施例6:
上記の実施例1で得られたイネOsRR22-7変異遺伝子であって、それはSEQ ID NO.21に示すヌクレオチド配列を有する。北京Qing科新業生物技術有限公司の検出結果から、該イネOsRR22-7変異遺伝子は、イネOsRR22遺伝子の5番目のエクソン[CGGCTTT/-]にある7個bp(4140861-4140867位置)の欠失遺伝子型である。
【0124】
図1に示す実施例1の同定方法により上記のイネOsRR22
-7変異遺伝子が物理的及び化学的突然変異誘発サンプルに含まれているかどうかを同定することができる。
【0125】
低カドミウム吸収表現型のイネ品種の育種および調製における該イネOsRR22-7変異遺伝子または実施例1で得られたイネOsRR22-7変異遺伝子を有する変異体の使用は、具体的には以下のステップを含む。
【0126】
(1)実施例1得られたOsRR22-7変異遺伝子の遺伝子表現型を有する変異体をドナー親とし、イネ華占をレシピエント親として交雑育種し、F1種子を取得した。
(2)F1種子集団を播種した後、個体植物を選択して再発親イネ華占と交雑して、BC1F1種子を得た。
(3)BC1F1種子を播種し、個体植物に分けてBC1F1集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsRR22-7変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、前記再発する親との背景類似性が最も高い個体植物を選択し戻し交配を続けて、BC2F1種子を得た。
(4)BC2F1種子を播種し、個体植物に分けてBC2F1集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsRR22-7変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、前記再発する親との背景類似性が最も高い個体植物を選択し戻し交配を続けて、BC3F1種子を得た。
【0127】
(5)BC3F1種子を播種し、個体植物に分けてBC3F1集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsRR22-7変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、再発する親との背景類似性が最も高い個体植物を選択し自家交配して実りBC3F2種子を得た。
【0128】
(6)BC3F2種子を播種し、個体植物に分けてBC3F2集団DNAを抽出し、実施例1で設計されたKASPタイピングプライマーマーカーを使用した前景選択を行い、イネOsRR22
-7変異遺伝子を含む個体植物に対して背景選択を行い、イネ華占と同じ遺伝的背景を持つ個体植物華占-OsRR22
-7を収穫用に選択し、
図9に示す耐塩表現型のイネ品種華占-OsRR22
-7が得られた。
【0129】
本実施例で得られた変異体華占-OsRR22-7と華占(WT)を同時に発芽し、イネの苗が三葉・一心期のとき、0.8%濃度の塩化ナトリウム水溶液に10日間継続的にストレス処理してから写真を撮り、突然変異体と対照群をそれぞれ10株取り、純水で洗浄し、水分を吸収した後、苗の根の長さ、草丈、新鮮重を測定し、検出結果を以下の表2に示した。
【0130】
表2:華占-OsRR22
-7と華占(WT)耐塩性試験の比較結果
【0131】
表2の結果から、華占(WT)は10日間のストレス処理後に枯れたが、変異体華占-OsRR22-7は正常に成長でき、根の長さ、草丈、新鮮重も華占(WT)のそれよりも有意に高く、塩ストレス下での変異体華占-OsRR22-7の成長能が、野生型対照の成長能よりも有意に強いことを示している。
【0132】
実施例7:
図1に示されるような本発明の物理的及び化学的突然変異誘発ソルガム植物M1世代の突然変異のハイスループットターゲット同定方法および突然変異体の取得方法は、具体的には以下のステップを含む。
【0133】
1.ソルガム品種654の種子を20,000個取り、28℃の恒温インキュベーターで16時間浄水に種子を浸し、種子をすくい上げ、水分を乾燥させた。種子を1%(w/ w)メタンスルホン酸エチル(EMS)溶液に、28℃の恒温インキュベーターで8時間再度浸し、種子をすくい上げ、水分を乾燥させた。浄水で種子をすすぎ、8回に水を交換した後、37℃で発芽を促進して播種して苗を育てた後に移植し、96株を1つの集団、各集団に8行、各行に12株、100の集団、合計9600株を移植し、かつ各集団に1~100の番号を付けた。
【0134】
2.各集団を1つの単位とし、各個体植物から等量の葉を取り、合計96等分を1つの遠心分離管で混合してDNAを抽出し、合計100個のDNAを抽出し、DNA番号は各集団番号1~100に対応した。
3.各集団のDNAを1つのシーケンスサンプルとして使用して、ALS遺伝子(GenBank: LN898467.1)遺伝子のエクソン領域でターゲット高深度シーケンスを実行し、シーケンス深度>5000×であった。
【0135】
4.高深度ターゲットシーケンスデータをSorghum_bicolorNCBIv3参考ゲノムと比較し、100個サンプルにALS遺伝子エクソンが存在するSNPおよびIndelデータを取得した。検出後、サンプル68番号では、ALS遺伝子の唯一のエクソンの塩基1871に[G/A]の一塩基変異があり、該突然変異により、624番目のアミノ酸がSerからAsnに変化したことがわかった。
【0136】
5.上記集団サンプル68番号のシーケンスデータのSNPをデジタルPCR技術で検証した結果、ターゲットシーケンスデータのSNP遺伝子型がこのサンプルに存在することがわかった。
6.集団サンプル68番号のDNAに存在するSNP遺伝子型によると、KASPタイピングプライマーを次のように設計した。
68FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTagcatgtgttgcctatgatccctag-’3
68HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTagcatgtgttgcctatgatccctaA-’3
68COMMON 5-’tcaatacacagtcctgccatcacc-’3。
【0137】
7.上記で設計されたKASPタイピングプライマーを使用して、それぞれ集団68番号の96個の個体植物をタイピングした。タイピング後、集団68番号の6行目8株(68-F-8)には、ALS遺伝子の1871番目のエクソン [G/A]一塩基変異遺伝子型が含まれていることがわかり、最後に、ターゲット遺伝子によってコードされるALSタンパク質がSerからAsnまで624番目のアミノ酸で得られた。
【0138】
8.68-F-8個体植物の各穗の対応する葉からDNAを抽出し、個体植物におけるSNP変異に対してシーケンス検出を行い、68-F-8個体植物の5つの穂には[G/A]一塩基変異遺伝子型が含まれていることがわかり、変異遺伝子型の穂を含む種子を混合収穫した。
9.68-F-8個体植物に混合収穫された種子を、育苗した後に個体に移植し、そして、上記のステップ6で設計されたKASPプライマーを使用して、個体植物をタイピングし、最終的に68-F-8のM2集団でイミダゾリノン除草剤耐性表現型を持つソルガムが得られた。
【0139】
実施例8:
図1に示されるような本発明の物理的及び化学的突然変異誘発ソルガム植物M1世代の突然変異のハイスループットターゲット同定方法および突然変異体の取得方法は、具体的には以下のステップを含む。
【0140】
1.80MeV/uの炭素イオン(12C6+)を用いて180Gyの線量でコーン品種345の20,000種子を照射して、M1世代のコーン品種345(以下345と呼ばれる)を得た。
2.345 M1世代の20,000の種子を育苗した後の植物を個体植物に分けて、移植した。96株を1つの集団、各集団に8行、各行に12株、100の集団、合計9600株を移植し、かつ各集団に1~100の番号を付けた。
【0141】
3.各集団を1つの単位とし、各個体植物から等量の葉を取り、合計96等分を1つの遠心分離管で混合してDNAを抽出し、合計100個のDNAを抽出し、DNA番号は各集団番号1~100に対応した。
4.各集団のDNAを1つのシーケンスサンプルとして使用して、ZmTMS5遺伝子エクソン領域でターゲット高深度シーケンスを実行し、シーケンス深度>5000×であった。
【0142】
5.高深度ターゲットシーケンスデータをコーン参考ゲノムB73_RefGen_v4と比較し、100個サンプルにZmTMS5遺伝子エクソンが存在するSNPおよびIndelデータを取得した。検出後、サンプル54番号では、ZmTMS5遺伝子の最初のエクソンの38番目の塩基に[C/-]1個bpの欠失があることがわかった。
【0143】
6.上記集団サンプル54番号のシーケンスデータのIndelをデジタルPCR技術で検証した結果、このサンプルのターゲットシーケンスデータに欠失変異遺伝子型が存在することを示した。
7.54番号の集団サンプルにDNAの欠失変異遺伝子型によると、KASPタイピングプライマーを次のように設計した。
38FAM 5-’GAAGGTGACCAAGTTCATGCTCGAGTCCACTGTGGAGGTTCC-’3
38HEX 5-’GAAGGTCGGAGTCAACGGATTCGAGTCCACTGTGGAGGTTCT-’3
38COMMON 5-’ACCCCTCGATCTCTATACGGTG-’3
【0144】
上記で設計されたKASPタイピングプライマーを使用して、それぞれ集団54番号の96個の個体植物をタイピングした。タイピング後。集団54番号の4行目3株(54-D-3)には、ZmTMS5遺伝子の38番目のエクソン [C/-]一塩基変異遺伝子型が含まれていることがわかった。
【0145】
8.54-D-3個体植物の各穗の対応する葉からDNAを抽出し、個体植物におけるIndel変異に対してシーケンス検出を行い、54-D-3個体植物の4つの穂には[C/-]一塩基欠失変異遺伝子型が含まれていることがわかり、変異遺伝子型の穂を含む種子を混合収穫した。
【0146】
9.54-D-3個体植物に混合収穫された種子を、育苗した後に個体に移植し、そして、上記のステップ6で設計されたKASPプライマーを使用して、個体植物をタイピングし、最後に、54-D-3のM2集団で、感熱性の雄性不稔系統を備えたトウモロコシ品種345が得られた。
【配列表】