(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】アルカン及びアルキル芳香族炭化水素のアップグレードプロセス
(51)【国際特許分類】
C10G 35/14 20060101AFI20240612BHJP
B01J 38/12 20060101ALI20240612BHJP
B01J 38/10 20060101ALI20240612BHJP
B01J 38/06 20060101ALI20240612BHJP
B01J 23/62 20060101ALI20240612BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20240612BHJP
B01J 23/96 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C10G35/14
B01J38/12 C
B01J38/10 C
B01J38/06
B01J23/62 M
B01J23/63 M
B01J23/96 M
(21)【出願番号】P 2022553121
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 US2021017314
(87)【国際公開番号】W WO2021178115
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-11-02
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】バオ シャオイン
(72)【発明者】
【氏名】コールマン ジョン エス
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-522216(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0236985(US,A1)
【文献】米国特許第05633421(US,A)
【文献】特開平02-071850(JP,A)
【文献】特表2001-519771(JP,A)
【文献】特開2018-177750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素のアップグレードプロセスであって、
(I)炭化水素含有供給原料を、変換ゾーン内で、担体上に配置された第8~10族元素を含む流動触媒粒子と接触させて前記炭化水素含有供給原料の少なくとも一部の脱水素、脱水素芳香族化、及び脱水素環化の1つ以上を引き起こして、コークス化触媒粒子と、1種以上のアップグレードされた炭化水素と、分子水素とを含む変換流出物を生成する工程、ここで:
前記炭化水素含有供給原料は、1種以上のC
2-C
16直鎖若しくは分岐アルカン、1種以上のC
4-C
16環式アルカン、1種以上のC
8-C
16アルキル芳香族炭化水素、又はその混合物を含み;
前記炭化水素含有供給原料と触媒粒子は、300℃~900℃の範囲内の温度で、0.1秒~2分の範囲内の時間にわたって、少なくとも20kPa絶対圧の炭化水素分圧下で接触され、この炭化水素分圧は、前記炭化水素含有供給原料中のあらゆるC
2-C
16アルカン及びあらゆるC
8-C
16アルキル芳香族炭化水素の総分圧であり;
前記触媒粒子は、前記担体の質量に基づいて>
0.025wt%~6wt%の第8~10族元素を含
み;
前記担体は、第2族元素を含む;
(II)前記変換流出物から、前記1種以上のアップグレードされた炭化水素と分子水素に富む第1のガス流及び前記コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流を得る工程;
(III)前記第1の粒子流中の前記コークス化触媒粒子の少なくとも一部を燃焼ゾーン内で酸化剤と接触させてコークスの少なくとも一部の燃焼を引き起こして、コークスが少ない再生触媒粒子と、燃焼ガスとを含む燃焼流出物を生成する工程;
(IV)前記燃焼流出物から、前記燃焼ガスに富む第2のガス流及び前記再生触媒粒子に富む第2の粒子流を得る工程
;
(IVa)前記再生触媒粒子の少なくとも一部を還元性ガスと1秒~30分の範囲内の時間にわたって接触させて再生還元触媒粒子を生成する工程;及び
(V)追加量の前記炭化水素含有供給原料を流動再生
還元触媒粒子と接触させて、再コークス化触媒粒子と、追加の1種以上のアップグレードされた炭化水素と、追加の分子水素とを含む追加の変換流出物を生成する工程
を含
み、
工程(I)の前記炭化水素含有供給原料と前記触媒粒子の接触から、工程(V)の前記追加量の炭化水素含有供給原料と前記再生還元触媒粒子の接触までのサイクル時間が、≦70分である、前記プロセス。
【請求項2】
工程
(IVa)において、下記事項:
(i)前記再生触媒粒子と還元性ガスが、450℃~900℃の範囲内の温度で接触されること;及び
(ii)前記再生触媒と還元性ガスが、20kPa絶対圧~1,000kPa絶対圧の範囲内の還元性ガス分圧下で接触されること
の少なくとも1つが満たされる、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(I)において、前記炭化水素含有供給原料と前記触媒粒子が、前記炭化水素含有供給原料中のあらゆるC
2-C
16アルカン及びあらゆるC
8-C
16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、0.1vol%~50vol%の範囲内の量の
水蒸気の存在下で互いに接触される、請求項1~
2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記炭化水素含有供給原料と前記触媒粒子が、いずれもの
水蒸気の非存在下又は前記炭化水素含有供給原料中のあらゆるC
2-C
16アルカン及びあらゆるC
8-C
16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて0.1vol%未満の
水蒸気の存在下で互いに接触される、請求項1~
2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記炭化水素含有供給原料が、前記炭化水素含有供給原料の総体積に基づいて≧70vol%のプロパンを含み、前記炭化水素含有供給原料と前記触媒粒子が、少なくとも40kPa絶対圧のプロパン分圧下で接触され、かつ工程(I)の前記炭化水素含有供給原料と前記触媒粒子の接触が、≧75%のプロピレン選択性で少なくとも52%のプロピレン収率を有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
工程(I)において、下記事項:
(i)前記炭化水素含有供給原料と前記触媒粒子が、600℃~900℃の範囲内の温度で接触されること;及び
(ii)前記炭化水素含有供給原料と前記触媒粒子が、20kPa絶対圧~1,000kPa絶対圧の範囲内の炭化水素分圧下で接触されること
の少なくとも1つが満たされる、請求項1~
5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
工程(III)において、下記事項:
(i)前記コークス化触媒粒子と酸化剤が、600℃~1,100℃の範囲内の温度で接触されること;及び
(ii)前記コークス化触媒粒子と酸化剤が、20kPa絶対圧~1,000kPa絶対圧の範囲内の酸化剤分圧下で接触されること
の少なくとも1つが満たされる、請求項1~
6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒粒子が、さらにプロモーターを含み、前記プロモーターが、Sn、Ga、Zn、Ge、In、Re、Ag、Au、Cu、その組み合わせ、又はその混合物を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記担体において、あらゆる第2族元素、あらゆる第4族元素、あらゆる第12族元素、及び21、39、又は57~71の原子数を有するあらゆる元素の合計量と第8~10族元素のモル比が、少なくとも0.18である、請求項1~
8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
下記事項:
(i)工程(I)において、前記炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、0.1秒~1.5分の範囲内の時間にわたって接触されること;
(ii)前記触媒粒子の、あらゆるC
2-C
16アルカン及びあらゆるC
8-C
16芳香族炭化水素の合計量に対する質量比が、1~150の範囲内であること;及び
(iii)工程(I)において、前記炭化水素含有供給原料が、前記炭化水素含有供給原料中のあらゆるC
2-C
16アルカン及びあらゆるC
8-C
16芳香族炭化水素の質量に基づいて、0.1時間
-1~100時間
-1の範囲内の質量毎時空間速度で前記触媒と接触すること
の少なくとも1つが満たされる、請求項1~
9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記触媒粒子が、前記炭化水素含有供給原料との接触時に高密度の乱流流動床の形態である、請求項1~
10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
さらに:
工程(I)の間に、前記炭化水素含有供給原料と前記流動触媒粒子の接触中に前記変換ゾーンから前記触媒粒子の一部を除去する工程;
前記変換ゾーンから除去された前記触媒粒子の部分を加熱して、加熱触媒粒子を生成する工程;及び
前記加熱触媒粒子を前記変換ゾーンに供給して、前記炭化水素含有供給原料と接触させる工程
を含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
工程(I)の前記炭化水素含有供給原料と前記触媒粒子の接触から、工程(V)の前記追加量の炭化水素含有供給原料と前記再生還元触媒粒子の接触までのサイクル時間が、≦60分である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(I)の前記炭化水素含有供給原料と前記触媒粒子の接触から、工程(V)の前記追加量の炭化水素含有供給原料と前記再生還元触媒粒子の接触までのサイクル時間が、≦30分である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記担体が、少なくとも3wt%の第2族元素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記担体が、担体の質量に基づいて少なくとも11wt%の第2族元素を含み、第2族元素がMgを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記担体が、ヒドロタルサイトをか焼することにより生成される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月24日に出願された米国仮出願第62/993,985号及び2020年6月11日に出願されたEP出願第20179409.6号に対する優先権及びそれらの利益を主張する。両開示内容は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、アルカン及び/又はアルキル芳香族炭化水素のアップグレードプロセスに関する。より詳細には、本開示は、1種以上のアルカン及び/又は1種以上のアルキル芳香族炭化水素を流動触媒粒子の存在下で脱水素、脱水素芳香族化及び/又は脱水素環化して1種以上のアップグレードされた炭化水素を含む流出物を生成するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
アルカン及び/又はアルキル芳香族炭化水素の接触脱水素、脱水素芳香族化、及び脱水素環化は、工業的に重要な化学変換プロセスであり、吸熱反応で、平衡の制限を受ける。アルカン、例えばC2-C16アルカン、及び/又はアルキル芳香族炭化水素、例えばエチルベンゼンの脱水素は、種々の異なる担持触媒粒子システム、例えばPt系、Cr系、Ga系、V系、Zr系、In系、W系、Mo系、Zn系、及びFe系システムを介して行うことができる。既存のプロパン脱水素プロセスの中で、特定のプロセスは、アルミナ担持クロミア触媒を使用して、約50%(90%のプロピレン選択性で55%のプロパン変換率)の最高のプロピレン収率の1つをもたらし、これは約560℃~650℃の温度及び20kPa絶対圧~50kPa絶対圧の低圧力で得られる。脱水素プロセスの効率を高めるためにこのような低圧で操作しなくてもプロピレン収率を高めることが望ましい。
【0004】
脱水素プロセスの温度を上げることは、プロセスの熱力学に従ってプロセスの変換率を高める1つの方法である。例えば、670℃、100kPa絶対圧で、いずれもの不活性な希釈剤の非存在下で、平衡プロピレン収率は、シミュレーションによって約74%であると推定された。しかしながら、このような高温では、触媒粒子が非常に急速に失活し、及び/又はプロピレン選択性が不経済に低くなる。触媒粒子の急速な失活は、触媒粒子上へのコークス沈着及び/又は活性相の凝集に起因すると考えられる。コークスは、酸素含有ガスを用いる燃焼によって除去できるが、活性相の凝集は、燃焼プロセス中に悪化され、急速に触媒粒子の活性及び安定性を減じると考えられる。
従って、アルカン及び/又はアルキル芳香族炭化水素を脱水素、脱水素芳香族化、及び/又は脱水素環化するための改善されたプロセス及び触媒粒子が必要である。本開示は、この必要性及び他の必要性を満たす。
【発明の概要】
【0005】
概要
アルカン及び/又はアルキル芳香族炭化水素のアップグレードプロセスを提供する。一部の実施形態では、炭化水素のアップグレードプロセスは、(I)炭化水素含有供給原料を、変換ゾーン内で、担体上に配置された第8~10族元素を含み得る流動触媒粒子と接触させて炭化水素含有供給原料の少なくとも一部の脱水素、脱水素芳香族化、及び脱水素環化の1つ以上を引き起こして、コークス化触媒と、1種以上のアップグレードされた炭化水素と、分子水素とを含み得る変換流出物を生成する工程を含むことができる。炭化水素含有供給原料は、1種以上のC2-C16直鎖若しくは分岐アルカン、1種以上のC4-C16環式アルカン、1種以上のC8-C16アルキル芳香族炭化水素、又はその混合物を含み得る。炭化水素含有供給原料と触媒は、300℃~900℃の範囲内の温度で、0.1秒~2分の範囲内の時間にわたって、少なくとも20kPa絶対圧の炭化水素分圧下でを接触され得る。この炭化水素分圧は、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総分圧である。触媒粒子は、担体の質量に基づいて0.05wt%~6wt%の第8~10族元素を含み得る。担体は、下記:担体の質量に基づいて、wwt%の第2族元素、xwt%の第4族元素、ywt%の第12族元素、及びzwt%の、21、39、又は57~71の原子数を有する元素の少なくとも1つを含むことができ、ここで、w、x、y、及びzは、独立に0~100の範囲内であり、いずれの第2族元素も担体の質量に基づいてwt% mと関連し得、いずれの第4族元素も担体の質量に基づいてwt% nと関連し得、いずれの第12族元素も担体の質量に基づいてwt% pと関連し得、21、39、又は57~71の原子数を有するいずれの元素も担体の質量に基づいてwt% qと関連し得、m、n、p、及びqは、独立に1~100の範囲内の数であり、かつw/m+x/n+y/p+z/pの合計は、担体の質量に基づいて≧1である。1種以上のアップグレードされた炭化水素は、脱水素炭化水素、脱水素芳香族化炭化水素、脱水素環化炭化水素、又はその混合物を含み得る。プロセスは、(II)変換流出物から、1種以上のアップグレードされた炭化水素と分子水素に富む第1のガス流及びコークス化触媒粒子に富む第1の粒子流を得ることをも含むことができる。プロセスは、(III)第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の少なくとも一部を燃焼ゾーン内で酸化剤と接触させてコークスの少なくとも一部の燃焼を引き起こして、コークスが少ない再生触媒粒子及び燃焼ガスを含み得る燃焼流出物を生成する工程をも含むことができる。プロセスは、(IV)燃焼流出物から、燃焼ガスに富む第2のガス流及び再生触媒粒子に富む第2の粒子流を得ることをも含むことができる。プロセスは、(V)追加量の炭化水素含有供給原料を、流動再生触媒粒子と接触させて、再コークス化触媒粒子と、追加の1種以上のアップグレードされた炭化水素と、追加の分子水素とを含む追加の変換流出物を生成する工程をも含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】1つ以上の実施形態に記載の、反応器及び再生器を含む、炭化水素含有供給原料をアップグレードするためのシステムを示す。
【
図2】1つ以上の実施形態に記載の、反応器、再生器、及び還元反応器を含む、炭化水素含有供給原料をアップグレードするための別のシステムを示す。
【
図3】1つ以上の実施形態に記載の、反応器、再生器、還元反応器、及びコークス化触媒粒子の少なくとも一部を反応器に再循環させるための再循環ラインを含む、炭化水素含有供給原料をアップグレードするための別のシステムを示す。
【
図4】1つ以上の実施形態に記載の、反応器、再生器、還元反応器、及び触媒粒子を加熱するための入熱装置を含む、炭化水素含有供給原料をアップグレードするための別のシステムを示す。
【
図5】1つ以上の実施形態に記載の、反応器、再生器、還元反応器、及びコークス化触媒粒子の少なくとも一部を還元反応器に供給するための移送ラインを含む、炭化水素含有供給原料をアップグレードするための別のシステムを示す。
【
図6】1つ以上の実施形態に記載の、反応器、再生器、還元反応器、及び第2の反応器を含む、炭化水素含有供給原料をアップグレードするための別のシステムを示す。
【
図7】1つ以上の実施形態に記載の、反応器、再生器、還元反応器、及び第2の反応器を含む、炭化水素含有供給原料をアップグレードするための別のシステムを示す。
【
図8】実施例1~3で用いた触媒の、実施例1で用いた同一条件下で行った35サイクル(再生、還元、及び脱水素)を経た後の触媒安定性結果を示す。
【
図9】実施例23で用いた触媒の、蒸気の存在下で49サイクル(再生、還元、及び脱水素)を経た後の触媒安定性結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
請求項に係る発明の理解のために本明細書で採択した好ましい実施形態及び定義を含め、本発明の種々の特定の実施形態、見解及び実施例を以下に述べる。下記詳細な説明は、特定の好ましい実施形態を与えるが、これらの実施形態は単なる例示であり、本発明は、他の方法で実施できることが当業者なら分かるだろう。侵害を判定するため、本発明の範囲は、添付請求項のいずれか1つ以上を、それらの等価物、及び列挙されるものに等価な要素又は制限を含めて言及することになる。「発明」へのいずれの言及も、請求項によって規定される発明の必ずしも全てではないが、1つ以上を指し得る。
本開示では、少なくとも1つの「工程」を含むようにプロセスを記述する。各工程は、プロセスにおいて、連続又は不連続様式で1回又は複数回実施され得る作用又は操作であることを理解すべきである。特段の記載がないか又は文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、プロセス中の複数工程は、1つ以上の他の工程と重複してもしなくても、連続的に記載どおりの順序で行ってよく、又は場合によっては、いずれの他の順序で行ってもよい。さらに、1つ以上の工程又は全ての工程でさえ、材料の同一又は異なるバッチに関して同時に行ってよい。例えば、連続プロセスでは、プロセスの最初に供給されたばかりの原材料に対してプロセスの第1の工程を行いながら、同時に、第1の工程のより早い時にプロセスに供給された原材料の処理の結果として生じる中間材料に対して第2の工程を行ってよい。好ましくは、工程は、記載した順序で行われる。
【0008】
別段の指示がない限り、本開示で量を示す全ての数は、全ての場合に、用語「約」によって修飾されているものと理解すべきである。本明細書及び特許請求の範囲で使用する正確な数値は、特定の実施形態を構成するとも理解すべきである。実施例のデータの精度を確保するために努力した。しかしながら、いずれの測定データも、測定値を得るために用いた技術及び/又は機器の限界のため、ある一定レベルの誤差を本質的に含有することを理解すべきである。
本明細書では一連の上限数及び一連の下限数を用いて特定の実施形態及び特徴を記述する。別段の指示がない限り、任意の2つの値の組み合わせ、例えば、任意の下限値と任意の上限値の組み合わせ、任意の2つの下限値の組み合わせ、及び/又は任意の2つの上限値の組み合わせを含む範囲が企図されることを理解すべきである。
本明細書で用いる不定冠詞「a」又は「an」は、特段の記載がないか又は文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、「少なくとも1つ」を意味する。従って、「a reactor」又は「a conversion zone」を使用する実施形態は、特段の記載がないか又は文脈上1つのみの反応器若しくは変換ゾーンを使用すると明白に指示していない限り、1つ、2つ又は3つ以上の反応器若しくは変換ゾーンを使用する実施形態を含む。
【0009】
用語「炭化水素」は、(i)水素原子と炭素原子から成る任意の化合物又は(ii)(i)の2つ以上の該化合物の任意の混合物を意味する。用語「Cn炭化水素」(nは正の整数である)は、(i)その分子中に総数nで炭素原子を含む任意の炭化水素化合物、又は(ii)(i)の2つ以上の該炭化水素化合物の任意の混合物を意味する。従って、C2炭化水素は、エタン、エチレン、アセチレン、又はこれらの化合物の少なくとも2つの任意の比率の混合物であり得る。「Cm~Cn炭化水素」又は「Cm-Cn炭化水素」(m及びnは正の整数であり、m<nである)は、Cm、Cm+1、Cm+2、…、Cn-1、Cn炭化水素、又はその2つ以上の任意の混合物を意味する。従って、「C2~C3炭化水素」又は「C2-C3炭化水素」は、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロペン、プロピン、プロパジエン、シクロプロパン、及びその2つ以上の成分間の任意の比率の任意の混合物のいずれかであり得る。「飽和C2-C3炭化水素」は、エタン、プロパン、シクロプロパン、又はその2つ以上の任意の比率の任意の化合物であり得る。「Cn+炭化水素」は、(i)その分子中に少なくともnの総数で炭素原子を含む任意の炭化水素化合物、又は(ii)(i)の2つ以上の該炭化水素化合物の任意の混合物を意味する。「Cn-炭化水素」は、(i)その分子中に最大nの総数で炭素原子を含む任意の炭化水素化合物、又は(ii)(i)の2つ以上の該炭化水素化合物の任意の混合物を意味する。「Cm炭化水素流」は、本質的にCm炭化水素から成る炭化水素流を意味する。「Cm-Cn炭化水素流」は、本質的にCm-Cn炭化水素から成る炭化水素流を意味する。
【0010】
本開示の目的では、元素の命名法は、Hawley's Condensed Chemical Dictionary, 16th Ed., John Wiley & Sons, Inc., (2016), Appendix Vに提供されている元素周期表(新表記法下)の見解に準拠する。例えば、第8族元素にはFe、Ru、及びOsの1つ以上が含まれてもよく、第9族元素にはCo、Rh、及びIrの1つ以上が含まれてもよく、第10族元素にはNi、Pd、及びPtの1つ以上が含まれてもよい。本明細書で使用する用語「半金属」は、下記元素を指す:B、Si、Ge、As、Sb、Te、及びAt。本開示では、所与の元素が存在すると示されるとき、それは、別段の定めがないか又は文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、元素状態で又はその任意の化合物として存在し得る。
用語「アルカン」は、飽和炭化水素を意味する。用語「環式アルカン」は、その分子構造中に環式炭素環を含む飽和炭化水素を意味する。アルカンは、直鎖、分岐、又は環式であり得る。
用語「芳香族」は、当該技術分野において承認されている範囲に従って理解すべきであり、アルキル置換及び非置換単核及び多核化合物が含まれる。
【0011】
用語「リッチ」は、装置、例えば、変換ゾーンから得られる出ていく流れに関して、「X-リッチ」又は「Xに富む」のような句で使用されるとき、該流れが引き出される同装置に供給された供給材料中におけるより高い濃度で材料Xを該流れが含むことを意味する。用語「リーン」は、装置、例えば、変換ゾーンから得られる出ていく流れに関して、「X-リーン」又は「Xが少ない」のような句で使用されるとき、該流れが引き出される同装置に供給された供給材料中におけるより低い濃度で材料Xを該流れが含むことを意味する。
用語「選択性」は、触媒反応における特定化合物の生産率(炭素のモル数に基づく)を指す。例として、句「アルカン炭化水素変換反応は、オレフィン炭化水素について100%の選択性を有する」は、該反応で変換されるアルカン炭化水素の100%(炭素モルベース)がオレフィン炭化水素に変換されることを意味する。特定反応体に関して使用されるときは、用語「変換率」は、該反応で消費された反応体の量を意味する。例えば、特定反応体がプロパンであるとき、100%の変換率は、プロパンの100%が反応で消費されることを意味する。収率(炭素モルベース)は、変換率×選択性である。
【0012】
概要
炭化水素含有供給原料は、限定するものではないが、1種以上のアルカン、例えば、C2-C16直鎖若しくは分岐アルカン及び/又はC4-C16環式アルカン、及び/又は1種以上のアルキル芳香族炭化水素、例えば、C8-C16アルキル芳香族炭化水素であってよく、或いはこれらを含み得る。一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料は、任意に、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、0.1vol%~50vol%の蒸気を含むことができる。他の実施形態では、炭化水素含有供給原料は、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、<0.1vol%の蒸気を蒸気を含むか又は蒸気を含まなくてもよい。炭化水素含有供給原料は、変換ゾーン内で、担体上に配置された1つ以上の第8~10族元素、例えば、Ptを含む流動触媒粒子と接触されて炭化水素含有供給原料の少なくとも一部の脱水素、脱水素芳香族化、及び脱水素環化の1つ以上を引き起こして、コークス化触媒粒子と、1種以上のアップグレードされた炭化水素及び分子水素を含み得る流出物とを含み得る変換流出物を生成することができる。1種以上のアップグレードされた炭化水素は、1種以上の脱水素炭化水素、1種以上の脱水素芳香族化炭化水素、1種以上の脱水素環化炭化水素、又はその混合物であってよく、或いはこれらを含み得る。炭化水素含有供給原料と触媒粒子は、300℃~900℃の範囲内の温度で0.1秒~2分又は3分でさえの範囲内の時間にわたって少なくとも20kPa絶対圧の炭化水素分圧下で接触され得る。この炭化水素分圧は、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総分圧である。触媒粒子は、担体の質量に基づいて、0.05wt%~6wt%の第8~10族元素、例えば、Ptを含み得る。担体は、限定するものではないが、第2族元素、第4族元素、第12族元素、21、39、若しくは57~71の原子数を有する元素、又はその化合物であってよく、或いはそれを含み得る。
【0013】
変換流出物から、1種以上のアップグレードされた炭化水素と分子水素に富む第1のガス流及びコークス化触媒粒子に富む第1の粒子流を分離するか又は他の方法で得ることができる。第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の少なくとも一部を変換ゾーン内で1種以上の酸化剤と接触させてコークスの少なくとも一部の燃焼を引き起こして、コークスが少ない再生触媒粒子及び燃焼ガスを含み得る燃焼流出物を生成することができる。燃焼流出物から、燃焼ガスに富む第2のガス流及び再生触媒粒子に富む第2の粒子流を分離するか又は他の方法で得ることができる。追加量の炭化水素含有供給原料を流動再生触媒粒子と接触させて、再コークス化触媒粒子と、再コークス化触媒粒子、追加の1種以上のアップグレードされた炭化水素、及び追加の分子水素を含む追加の変換流出物とを生成することができる。一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料と触媒粒子の接触から追加量の炭化水素含有供給原料と再生触媒粒子の接触までのサイクル時間は、≦70分、例えば、1分、5分、10分、又は20分から30分、45分、60分、又は70分までであり得る。
【0014】
本明細書で開示する触媒粒子は、炭化水素含有供給原料との再接触前に追加の還元工程を経た後に改善された活性及び選択性を示し得る。さらに、還元後の触媒粒子は、炭化水素含有供給原料の存在下で10分以上にわたって改善された活性及び選択性を維持し得る。従って、一部の実施形態ではプロセスは任意に第2の粒子流中の再生触媒粒子の少なくとも一部を還元性ガスと接触させて再生還元触媒粒子を生成する工程を含むことができる。この実施形態では、追加量の炭化水素含有供給原料を再生還元触媒粒子の少なくとも一部と接触させて追加の変換流出物を生成することができる。他の実施形態ではプロセスは、再生触媒粒子の少なくとも一部及び再生還元触媒粒子の少なくとも一部を追加量の炭化水素含有供給原料と接触させて追加の変換流出物を生成することを含むことができる。さらに他の実施形態では、プロセスは、再生触媒粒子の少なくとも一部、再生還元触媒粒子の少なくとも一部、及び/又は新しい若しくは補充触媒粒子と接触させて追加の変換流出物を生成する工程を含むことができる。プロセスが任意的な還元工程を含む場合、炭化水素含有供給原料と触媒粒子の接触から追加量の炭化水素含有供給原料と再生還元触媒粒子の接触までのサイクル時間は、≦70分、例えば、1分、5分、10分、又は20分から30分、45分、60分、又は70分までであってもよい。
【0015】
驚いたことに及び予想外に、担体上に配置された第8~10族元素、例えば、Ptを含む触媒粒子は、各サイクル時間が≦70分間持続する多数のサイクル、例えば、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも100サイクル、少なくとも125サイクル、少なくとも150サイクル、少なくとも175サイクル、又は少なくとも200サイクル後に十分に活性かつ安定なままであり得ることを発見した。一部の実施形態では、触媒粒子の性能が安定化した後(わずかな初めのサイクルは相対的に不十分又は相対的に良好な性能を有するこもあるが、性能は最終的に安定化し得る)、プロセスは、最初に炭化水素含有供給原料と接触したときに≧75%、≧80%、≧85%、又は≧90%、又は>95%の、アップグレードされた炭化水素、例えば、炭化水素含有供給原料がプロパンを含むときにはプロピレンの選択性で、第1のアップグレードされた炭化水素生成物収率の、例えば、プロピレンを生成することができ、かつ最後のサイクル(少なくとも全部で15サイクル)の完了時に、≧75%、≧80%、≧85%、又は≧90%、又は>95%の、アップグレードされた炭化水素、例えば、プロピレンの選択性で、第1のアップグレードされた炭化水素生成物収率の少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも100%であり得る第2のアップグレードされた炭化水素生成物収率を有し得る。この発見の前は、第8~10族元素、例えば、Ptを有する触媒粒子は、ハロゲンの添加を必要としない単純な酸化的再生を伴う非常に多くの短いサイクルにさらされると活性成分として十分な活性及び安定性を維持しないだろうと考えられていた。
【0016】
触媒粒子が炭化水素含有供給原料と接触すると最初のサイクルが始まり、続いて少なくとも酸化剤と接触して再生触媒粒子を生成するか又は少なくとも酸化剤及び任意的な還元性ガスと接触して再生還元触媒粒子を生成し、最初のサイクルは、再生触媒粒子又は再生還元触媒粒子が追加量の炭化水素含有供給原料と接触すると終わる。第2及びその後の各サイクルは、再生触媒粒子又は再生還元触媒粒子と追加量の炭化水素含有供給原料が接触すると始まり、第2及びその後の各サイクルは、さらなる又はその後の再生触媒粒子又は再生還元触媒粒子が追加量の炭化水素含有供給原料と接触すると終わる。
【0017】
さらに、本明細書に記載のプロセス及び触媒粒子によって、前例のないプロピレン収率が得られた。一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料がプロパンを含み、アップグレードされた炭化水素がプロピレンを含むとき、炭化水素含有供給原料と触媒粒子の接触は、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも100サイクル、少なくとも125サイクル、少なくとも150サイクル、少なくとも175サイクル、又は少なくとも200サイクルにわたって、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のプロピレン選択性で、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも55%、少なくとも57%、少なくとも60%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも65%、少なくとも67%、又は少なくとも69%のプロピレン収率をもたらすことができる。他の実施形態では、炭化水素含有供給原料が、少なくとも20kPa絶対圧のプロパン分圧下で接触される、炭化水素含有供給原料の総体積に基づいて、少なくとも70vol%のプロパンを含むとき、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも100サイクル、少なくとも125サイクル、少なくとも150サイクル、少なくとも175サイクル、又は少なくとも200サイクルにわたって、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のプロピレン選択性で、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも55%、少なくとも57%、少なくとも60%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも65%、少なくとも67%、又は少なくとも69%のプロピレン収率を得ることができる。担体の組成をさらに最適化し、及び/又は1つ以上のプロセス条件を調整することによって、少なくとも15サイクル、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも100サイクル、少なくとも125サイクル、少なくとも150サイクル、少なくとも175サイクル、又は少なくとも200サイクルにわたって、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のプロピレン選択性で、少なくとも70%、少なくとも72%、少なくとも75%、少なくとも77%、少なくとも80%、又は少なくとも82%までプロピレン収率をさらに高められると考えられる。一部の実施形態において、触媒粒子が少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも100サイクル、少なくとも125サイクル、少なくとも150サイクル、少なくとも175サイクル、又は少なくとも200サイクルにわたって炭化水素供給原料と少なくとも620℃、少なくとも630℃、少なくとも640℃、少なくとも650℃、少なくとも655℃、少なくとも660℃、少なくとも670℃、少なくとも680℃、少なくとも690℃、少なくとも700℃、又は少なくとも750℃の温度で接触されると、このプロピレン収率を得ることができる。該処理条件下で、このような高いプロピレン収率は考えられなかった。
【0018】
炭化水素のアップグレードプロセス
炭化水素含有供給原料は、任意の適切な変換ゾーン内で触媒粒子と接触されて炭化水素含有供給原料の少なくとも一部の脱水素、脱水素芳香族化、及び脱水素環化の1つ以上を引き起こして、コークス化触媒粒子と、1種以上のアップグレードされた炭化水素と、分子水素とを含み得る変換流出物を生成することができる。一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料と触媒粒子は、流動床反応器に一般的に利用される連続型プロセス内に配置された変換ゾーン内で接触され得る。一部の実施形態では、変換ゾーンは、ライザー(riser)反応器内に配置され得る。他の実施形態では、変換ゾーンは、ダウナー(downer)反応器内に配置され得る。さらに他の実施形態では、変換ゾーンは、渦流反応器内に配置され得る。他の実施形態では、変換ゾーンは、反応器内に配置されて、流動粒子が炭化水素含有供給原料との接触中に反応器内に相対的に高密度の乱流流動床を形成できるようにし得る。相対的に高密度の乱流流動床は、バブリング床と乱流床の移行間の臨界速度と指定された移行速度を超えるが、ライザー反応器におけるような触媒粒子が運ばれる高速流動領域を画定する輸送速度未満であるガス空塔速度状態にある流動床を指す。
【0019】
いずれの数の反応器をも直列又は並列に操作することができる。いずれの2つ以上のタイプの反応器をも相互に組み合わせて使用することができる。2つ以上の反応器を使用する場合、同一条件及び/又は異なる条件で反応器を操作することができ、反応器は同一の炭化水素含有供給原料又は異なる炭化水素含有供給原料を受けることができる。2つ以上の反応器を使用する場合、反応器を直列、並列、又はそれらを相互に組み合わせて配置することができる。一部の実施形態では、適切な反応器は、限定するものではないが、高ガス速度ライザー反応器、高ガス速度ダウナー反応器、渦流反応器、第1若しくは下端に相対的に高密度の流動触媒床を有し、かつ第2若しくは上端に位置するライザー内に相対的に低密度の流動触媒を有する反応器、同一若しくは互いに異なる条件、又はその組み合わせで操作する並列及び/又は直接に操作される多段ライザー反応器及び/又はダウナー反応器であってよく、或いはこれらを含み得る。
【0020】
一部の例では、触媒粒子は、例えば、キャリア流体又は輸送流体を介して、変換ゾーンに供給され、燃焼ゾーンに供給され、2つ以上の場所を接続する導管を通って輸送される等、空気圧で反応器システムを通って移動され得る。輸送流体は、限定するものではないが、希釈剤、ガス形態の反応体の1種以上、すなわち、1種以上のC2-C16アルカン、1種以上のC8-C16アルキル芳香族炭化水素、又はその混合物であってよく、或いはこれらを含み得る。適切な輸送流体は、限定するものではないが、分子窒素、揮発性炭化水素、例えばメタン、エタン、及び/又はプロパン等、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、蒸気等であってよく、或いはこれらを含み得る。輸送流体の量は、流動状態で触媒粒子を維持し、かつ触媒粒子を1つの場所、例えば、燃焼ゾーン又は再生ゾーンから第2の場所、例えば、変換ゾーンに輸送できれば十分である。一部の実施形態では、触媒粒子と輸送流体の質量比は5、10、15、又は20から50、60、80、90、又は100の範囲内であり得る。輸送流体の注入地点は、任意の2つのゾーン又は他の場所、例えば燃焼ゾーンと変換ゾーン又は再生ゾーンと変換ゾーン等を連結する任意の1つ以上の移送ラインに沿って複数地点に準備することができる。
【0021】
炭化水素含有供給原料と触媒粒子は、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、620℃、630℃、640℃、650℃、660℃、670℃、680℃、690℃、又は700℃から725℃、750℃、760℃、780℃、800℃、825℃、850℃、875℃、又は900℃までの範囲内の温度で接触され得る。一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料と触媒粒子は、少なくとも620℃、少なくとも630℃、少なくとも640℃、少なくとも650℃、少なくとも660℃、少なくとも670℃、少なくとも680℃、少なくとも690℃、又は少なくとも700℃から725℃、750℃、760℃、780℃、800℃、825℃、850℃、875℃、又は900℃までの温度で接触され得る。炭化水素含有供給原料を変換ゾーンに導入して、その中で0.1秒、1秒、1.5秒、2秒、又は3秒から5秒、10秒、20秒、30秒、45秒、1分、1.5分、2分、2.5分、又は3分までの範囲内の時間にわたって触媒粒子と接触させることができる。
【0022】
変換ゾーン内の触媒粒子の平均滞留時間は、≦7分、≦6分、≦5分、≦4分、≦3分、≦2分、≦1.5分、≦1分、≦45秒、≦30秒、≦20秒、≦15秒、≦10秒、≦7秒、≦5秒、≦3秒、≦2秒、又は≦1秒であり得る。一部の実施形態では、変換ゾーン内の触媒粒子の平均滞留時間は、ガス成分、例えば、変換ゾーン内の炭化水素含有供給原料及びそれから得られた変換流出物の平均滞留時間より長い可能性がある。
【0023】
炭化水素含有供給原料と触媒粒子は、少なくとも20kPa絶対圧の炭化水素分圧で接触され得る。この炭化水素分圧は、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総分圧である。一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料と触媒粒子の接触中の炭化水素分圧は、20kPa絶対圧、50kPa絶対圧、70kPa絶対圧、100kPa絶対圧、150kPa絶対圧、又は200kPa絶対圧から300kPa絶対圧、500kPa絶対圧、750kPa絶対圧、又は1,000kPa絶対圧までの範囲内であり得、この炭化水素分圧は、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総分圧である。
一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料は、炭化水素含有供給原料の総体積に基づいて、少なくとも60vol%、少なくとも65vol%、少なくとも70vol%、少なくとも75vol%、少なくとも80vol%、少なくとも85vol%、少なくとも90vol%、少なくとも95vol%、又は少なくとも99vol%の単一C2-C16アルカン、例えば、プロパンを含み得る。炭化水素含有供給原料と触媒粒子は、少なくとも20kPa絶対圧、少なくとも50kPa絶対圧、少なくとも70kPa絶対圧、少なくとも100kPa絶対圧、少なくとも150kPa絶対圧、又は少なくとも250kPa絶対圧から300kPa絶対圧、400kPa絶対圧、500kPa絶対圧、又は1,000kPa絶対圧までの単一C2-C16アルカン、例えば、プロパンの圧力下で接触され得る。
【0024】
炭化水素含有供給原料は、変換ゾーン内で、アップグレードプロセスを行うのに有効な任意の質量毎時空間速度(WHSV)で触媒粒子と接触され得る。一部の実施形態では、WHSVは、0.1時間-1、0.2時間-1、0.4時間-1、0.8時間-1、2時間-1、4時間-1、又は8時間-1から16時間-1、32時間-1、64時間-1、又は100時間-1までであり得る。一部の実施形態では、触媒粒子の、あらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の合計量に対する比は、質量対質量に基づいて1、3、5、10、15、20、25、30、又は40から50、60、70、80、90、100、110、125、又は150までの範囲内であり得る。
一部の実施形態では、変換ゾーン内の流動触媒粒子の少なくとも一部を除去し、熱入装置に供給し、そこで触媒粒子を加熱し、これらの加熱触媒粒子を変換ゾーンに戻して供給することができる。吸熱反応である変換ゾーン内で起こる反応にとっては、変換ゾーンから流動触媒粒子の一部を除去して、炭化水素含有供給原料とのいくらかの接触後の温度をさらに高めることが有益であり得る。電気ヒーター、又は触媒粒子を間接的に加熱するために典型的に用いられる他の適切なヒーターによって供給されるいずれの適切な伝熱媒体からも熱を間接的に伝達することができる。別の実施形態では、変換ゾーン内に直接熱を加えることができる。
【0025】
変換流出物からいずれの適切な装置によってもコークス化触媒粒子に富む第1の粒子流及び1種以上のアップグレードされた炭化水素と分子水素に富む第1のガス流を分離するか又は他の方法で得ることができる。一部の実施形態では、第1の粒子流及び第1のガス流は、変換流出物から1つ以上の固気含浸分離器、例えば、1つ以上のサイクロン分離器を介して得ることができる。一部の例では、サイクロン分離器は、正圧と負圧の両構造を含む二段若しくは連結構造であってよく、或いはそれを含み得る。一部の実施形態では、適切な分離器としては、米国特許第4,502,947号;第4,985,136号;及び第5,248,411号に開示されたものを挙げることができる。他の実施形態では、第1の粒子流及び第1のガス流は、変換流出物から、触媒粒子を重力によって一方向に流し、ガス成分を他方向に流すことができる「T」形導管経由で得ることができる。
【0026】
第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の少なくとも一部は、再生ゾーン又は燃焼ゾーン内で酸化剤と接触されて再生触媒粒子を生成することができる。酸化剤は、限定するものではないが、分子酸素、オゾン、二酸化炭素、蒸気、又はその混合物であってよく、或いはそれを含み得る。一部の実施形態では、コークス化触媒粒子上のコークスの100%を燃やすのに必要な量を超えた量の酸化剤を用いて、触媒粒子からのコークス除去率を高めることができ、その結果、コークス除去に必要な時間を短縮することができ、所与の時間内に生成されるアップグレードされた生成物の収率上昇につながり得る。一部の実施形態では、コークス化触媒粒子に加えて、1種以上の補助燃料を燃焼ゾーン内で酸化剤と接触させて、補助燃料の少なくとも一部の燃焼を引き起こして、熱及び追加の燃焼ガスを生成することもできる。この任意的補助燃料は、限定するものではないが、分子水素、メタン、エタン、プロパン、又はその混合物であってよく、或いはそれを含み得る。任意的補助燃料を不活性ガス、例えばアルゴン、ネオン、ヘリウム、分子窒素、メタン、又はその混合物と混合することができる。
【0027】
コークス化触媒粒子と酸化剤は、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、750℃、又は800℃から900℃、950℃、1,000℃、1,050℃、又は1,100℃までの範囲内の温度で互いに接触されて再生触媒粒子を生成することができる。一部の実施形態では、コークス化触媒粒子と酸化剤は、500℃~1,100℃、600℃~1,100℃、600℃~1,000℃、650℃~950℃、700℃~900℃、又は750℃~850℃の範囲内の温度で互いに接触されて再生触媒粒子を生成することができる。コークス化触媒粒子と酸化剤は、20kPa絶対圧、50kPa絶対圧、70kPa絶対圧、100kPa絶対圧、150kPa絶対圧、又は200kPa絶対圧から300kPa絶対圧、500kPa絶対圧、750kPa絶対圧、又は1,000kPa絶対圧までの範囲内の酸化剤分圧下で互いに接触され得る。
コークス化触媒粒子と酸化剤は、15秒、30秒、1分、2分、又は5分から10分、20分、30分、40分、50分、又は60分までの範囲の時間にわたって互いに接触され得る。例えば、コークス化触媒粒子と酸化剤は、2秒から50分、55分、又は60分までの範囲の時間にわたって互いに接触され得る。一部の実施形態では、コークス化触媒粒子と酸化剤は、触媒粒子上に配置されたあらゆるコークスの≧50wt%、≧75wt%、又は≧90wt%、又は>99%を除去するのに十分な時間にわたって接触され得る。
【0028】
一部の実施形態では、コークス化触媒粒子と酸化剤が互いに接触する時間は、変換流出物を生成するために触媒粒子が炭化水素含有供給原料と接触する時間より長い可能性がある。例えば、コークス化触媒粒子と酸化剤が互いに接触する時間は、変換流出物を生成するために触媒粒子が炭化水素含有供給原料と接触する時間より少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも300%、少なくとも500%、少なくとも1,000%、少なくとも10,000%、少なくとも30,000%、少なくとも50,000%、少なくとも75,000%、少なくとも100,000%、少なくとも250,000%、少なくとも500,000%、少なくとも750,000%、少なくとも1,000,000%、少なくとも1,250,000%、少なくとも1,500,000%、少なくとも1,800,000%、少なくとも2,500,000%、少なくとも3,500,000%、又は4,140,000%長い可能性がある。
理論によって束縛されることを望むものではないが、コークス化触媒粒子上に配置された第8~10族元素、例えば、Ptの少なくとも一部は、炭化水素含有供給原料との接触前の触媒粒子に比べて凝集され得ると考えられる。コークス化触媒粒子上のコークスの少なくとも一部の燃焼中に、第8~10族元素の少なくとも一部が担体周りに再分散され得ると考えられる。あらゆる凝集した第8~10族元素の少なくとも一部の再分散は、多くのサイクルにわたって触媒粒子の活性を高め、その安定性を改善することができる。
【0029】
一部の実施形態では、再生触媒粒子中の第8~10族元素、例えば、Ptの少なくとも一部は、炭化水素含有供給原料と接触した触媒粒子中の第8~10族元素に比べて及びコークス化触媒粒子中の第8~10族元素に比べて高い酸化状態であり得る。従って、上述したように、一部の実施形態ではプロセスは、任意に、再生触媒粒子の少なくとも一部を還元性ガスと接触させて再生還元触媒粒子を生成することを含みことができる。適切な還元性ガス(還元剤)は、限定するものではないが、分子水素、一酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、蒸気、又はその混合物であってよく、或いはそれを含み得る。一部の実施形態では、還元剤を不活性ガス、例えばアルゴン、ネオン、ヘリウム、分子窒素、又はその混合物と混合することができる。該実施形態では、再生還元触媒粒子中の第8~10族元素の少なくとも一部を、再生触媒粒子中の第8~10族元素に比べて、低い酸化状態、例えば、元素状態に還元することができる。この実施形態では、追加量の炭化水素含有供給原料は、再生触媒粒子の少なくとも一部及び/又は再生還元触媒粒子の少なくとも一部と接触され得る。
一部の実施形態では、再生触媒粒子と還元性ガスは、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、620℃、650℃、又は670℃から720℃、750℃、800℃、又は900℃までの範囲内の温度で接触され得る。再生触媒粒子と還元性ガスは、1秒、5秒、10秒、20秒、30秒、又は1分から10分、30分、又は60分までの範囲内の時間にわたって接触され得る。再生触媒粒子と還元性ガスは、20kPa絶対圧、50kPa絶対圧、70kPa絶対圧、100kPa絶対圧、150kPa絶対圧、又は200kPa絶対圧から300kPa絶対圧、500kPa絶対圧、750kPa絶対圧、又は1,000kPa絶対圧までの範囲内の還元剤分圧で接触され得る。
【0030】
一部の実施形態では、コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の第1の部分を触媒粒子の再生のため燃焼ゾーンに供給することができ、かつコークス化触媒粒子の第2の部分を変換ゾーンに直接戻して再循環させることができる。一部の実施形態では、プロセスが再生と還元の両方を含む場合、コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の第1の部分を触媒粒子の再生のため燃焼ゾーンに供給することができ、かつコークス化触媒粒子の第2の部分を還元ゾーンに供給することができる。他の実施形態では、プロセスが再生と還元の両方を含む場合、コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の第1の部分を触媒粒子の再生のため燃焼ゾーンに供給することができ、コークス化触媒粒子の第2の部分を変換ゾーンに直接戻して再循環させることができ、かつコークス化触媒粒子の第3の部分を還元ゾーンに供給することができる。これらの実施形態のいずれにおいても、継続的又は断続的に、コークス化触媒粒子の一部、再生触媒粒子の一部、及び/又は再生還元触媒粒子の一部をプロセスから除去して、新しい又は補充触媒粒子をプロセスに導入することができる。触媒粒子が分解して小さくなるか、不活化するか、又は望ましくない変換率で炭化水素含有供給原料を変換し始めるときに触媒粒子の除去を行うことができる。
【0031】
コークス化触媒粒子の少なくとも一部、再生触媒粒子の少なくとも一部、再生還元触媒粒子の少なくとも一部、新しい若しくは補充触媒粒子、又はその混合物は、追加量の炭化水素含有供給原料と変換ゾーン内で接触されて、追加の変換流出物を生成することができる。上述したように、炭化水素含有供給原料と触媒粒子の接触から追加量の炭化水素含有供給原料と再生触媒粒子、及び/又は再生還元触媒粒子の少なくとも一部、並びに場合によっては新しい若しくは補充触媒粒子との接触までのサイクル時間は、≦70分、例えば、1分~70分又は5分~45分であり得る。
一部の実施形態では、1種以上の追加の供給原料、例えば、1種以上のストリッピング流体を利用して、あらゆる同伴ガス成分の少なくとも一部を触媒粒子から除去することができる。一部の例では、コークス化触媒粒子を酸化剤との接触前にストリッピング流体と接触させて、あらゆる同伴アップグレード炭化水素及び/又は分子水素、及び/又は他のガス成分の少なくとも一部を除去することができる。同様に、再生触媒粒子及び/又は再生還元触媒粒子をストリッピングガスと接触させて、それらからあらゆる同伴燃焼ガス又は還元性ガスの少なくとも一部を除去することができる。一部の実施形態では、ストリッピングガスは、脱水素、脱水素芳香族化、及び脱水素環化、燃焼、及び/又は還元条件下で不活性であり得る。適切なストリッピング流体は、限定するものではないが、分子窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、蒸気、メタン、又はその混合物であってよく、或いはそれを含み得る。ストリッピングガスは、コークス化触媒粒子、再生触媒粒子、及び/又は再生還元触媒粒子と、触媒粒子1立方メートル当たり約0.1m3~10m3のストリッピングガスの体積比で接触され得る。
【0032】
上述したように、触媒粒子が炭化水素含有供給原料と接触すると最初のサイクルが始まり、続いて少なくとも酸化剤と接触して再生触媒粒子を生成するか又は少なくとも酸化剤及び任意的な還元性ガスと接触して再生還元触媒粒子を生成し、再生触媒粒子又は再生還元触媒粒子が追加量の炭化水素含有供給原料と接触すると最初のサイクルが終わる。例えば、コークス化触媒粒子から残留炭化水素を取り除くために任意の掃引流体を利用する場合、該掃引流体を利用する時間は、サイクル時間に含められることになる。従って、工程(I)の炭化水素含有供給原料と触媒粒子の接触から、工程(III)の追加量の炭化水素含有供給原料と再生触媒粒子及び/又は再生還元触媒粒子との接触までのサイクル時間は、≦70分、例えば、1分~70分又は5分~45分であり得る。
【0033】
一実施形態では、ライザー構造を装備することができ、炭化水素含有供給原料は、ライザー内で希釈ガスと混合され、加熱された流動触媒粒子と接触され得る。希釈ガスは、限定するものではないが、分子窒素、メタン、蒸気、分子水素、又はその混合物であってよく、或いはそれを含み得る。混合ガスは、ライザーの中を通って流れる混合物として接触及び反応しながら、対流によって又は他の方法でライザーの中を通して流動触媒粒子を運んで、アップグレードされた炭化水素と、分子水素と、コークス化触媒粒子とを含む変換流出物を生成することができる。炭化水素含有供給原料及び流動触媒粒子の滞留時間は、炭化水素含有供給原料の1種以上のアップグレードされた炭化水素への望ましい変換を果たすのに十分でればよく、気固分離装置を利用して混合物を分離することができ、この装置では、ガスは回収のために送られ、触媒粒子は回収され得る。製作及び寸法を含め、ライザーの具体的デザインは、少なくとも部分的に、意図した化学に依存し得るが、典型的には平均ガス組成下で4.5m/秒超の速度を必要とし得る。炭化水素の熱分解を少なくするため、炭化水素含有供給原料の望ましい変換達成後であるが、固気分離前に、多数の異なる方法の1つ以上によって変換流出物をクエンチすることができる。該方法には、蒸気等の冷却媒体の変換流出物への直接注入、変換流出物を熱交換器の中を通すこと等が含まれる。同様の方法を用いて気固分離装置後のガス生成物をクエンチして、熱分解を回避するか又は減らすこともできる。
本明細書で開示するプロセスの実施に適したシステムとしては、米国特許第3,888,762号;第7,102,050号;第7,195,741号;第7,122,160号;及び第8,653,317号;米国特許出願公開第2004/0082824号;第2008/0194891;並びにWO公開第WO2001/85872号;第WO2004/029178号;及び第WO2005/077867号に開示された流動反応器のような技術上周知のシステムが挙げられる。
【0034】
触媒粒子
触媒粒子は、担体の総質量に基づいて0.05wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.5wt%、又は1wt%から2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、又は6wt%までの第8~10族元素を含み得る。一部の実施形態では、触媒粒子は、担体の総質量に基づいて>0.025wt%、>0.05wt%、>0.1wt%、>0.13wt%、>0.15wt%、>0.17wt%、>0.2wt%、>0.2wt%、>0.23、>0.25wt%、>0.27wt%、又は>0.3wt%かつ<0.5wt%、<1wt%、<2wt%、<3wt%、<4wt%、<5wt%、又は<6wt%の第8~10族元素を含み得る。一部の実施形態では、第8~10族元素は、限定するものではないが、Fe、Co、Ni、Ru、Pd、Os、Ir、Pt、その組み合わせ、又はその混合物であってよく、或いはそれを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、第8~10族元素はPtであってよく、又はPtを含み得る。
【0035】
担体は、限定するものではないが、4、12、20~22、30、38~40、48、若しくは56~71の原子数を有する1種以上の元素であるか又はこれらを含み得る。別の方法だとしたら、担体は、1種以上の第2族元素、1種以上の第4族元素、1種以上の第12族元素、21、39、若しくは57~71の原子数を有する1種以上の元素、その組み合わせ、又はその混合物であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、第2族元素、第4族元素、第12族元素、及び/又は21、39、若しくは57~71の原子数を有する元素は、その元素形態で存在し得る。他の実施形態では、第2族元素、第4族元素、第12族元素、及び/又は21、39、若しくは57~71の原子数を有する元素は化合物の形態で存在し得る。例えば、第2族元素、第4族元素、第12族元素、及び/又は21、39、若しくは57~71の原子数を有する元素は、酸化物、リン酸塩、ハロゲン化物、ハラート(halate)、硫酸塩、硫化物、ホウ酸塩、窒化物、炭化物、アルミン酸塩、アルミノケイ酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、メタリン酸塩、セレン化物、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、亜クロム酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、又はケイ化物として存在し得る。一部の実施形態では、第2族元素、第4族元素、第12族元素、及び/又は21、39、若しくは57~71の原子数を有する元素を含む任意の2種以上の化合物の混合物は異なる形態で存在し得る。例えば、第1の化合物が酸化物であり、第2の化合物がアルミン酸塩であってよく、この場合、第1の化合物及び第2の化合物は、同一の又は互いに異なる第2族元素、第4族元素、第12族元素、及び/又は21、39、若しくは57~71の原子数を有する元素を含む。
【0036】
一部の実施形態では、担体は、下記:担体の質量に基づいてwwt%の第2族元素、xwt%の第4族元素、ywt%の第12族元素、及びzwt%の、21、39、若しくは57~71の原子数を有する元素の少なくとも1つであるか又はそれを含むことができ、w、x、y、及びzは、独立に0~100の範囲内である。担体に存在するいずれの第2族元素も担体の質量に基づいてwt% mと関連し得、担体に存在するいずれの第4族元素も担体の質量に基づいてwt% nと関連し得、担体に存在するいずれの第12族元素も担体の質量に基づいてwt% pと関連し得、担体に存在する21、39、又は57~71の原子数を有するいずれの元素も担体の質量に基づいてwt% qと関連し得、m、n、p、及びqは独立に1~100の範囲内の数であり得る。一部の実施形態では、w/m+x/n+y/p+z/pの合計は、担体の質量に基づいて少なくとも1であり得る。他の実施形態では、w/m+x/n+y/p+z/pの合計は、担体の質量に基づいて少なくとも1、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも12、少なくとも24、少なくとも48、又は少なくとも60であり得る。他の実施形態では、w/m+x/n+y/p+z/pの合計は、1、2、3、4、5、6、7、又は8から10、12、16、24、30、48、又は60までの範囲内であり得る。他の実施形態では、w/m+x/n+y/p+z/pの合計は、1~2、2~4、4~6、6~8、8~12、12~24、24~48、又は48~60の範囲内であり得る。
【0037】
一部の実施形態では、mは、2、4、6、8、10、12、14、16、18、及び20から選択される10個の値の1つであり得;nは、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、及び24から選択される12個の値の1つであり得;pは、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、及び24から選択される12個の値の1つであり得;qは、2、4、6、10、14、18、22、26、30、34、38、及び40から選択される12個の値の1つであり得;m、n、p、及びqは、任意の組み合わせであり得るので、17,280(10×12×12×12)の別個の組み合わせがある。他の実施形態では、mは、2、7、10、又は20に等しくてもよく、nは、2、10、20、又は25であり得、pは、2、10、20、又は25であり得、qは、2、10、30、又は40であり得、m、n、p、及びqは、任意の組み合わせであり得るので、256(4×4×4×4)の別個の組み合わせが存在する。一部の実施形態では、m、n、p、及びqは、それぞれ2、10、15、又は30に等しくてもよい。他の実施形態では、mは7に等しくてもよく、nは10に等しくてもよく、pは10に等しくてもよく、かつqは10に等してもよくい。他の実施形態では、mは7に等しくてもよく、nは20に等しくてもよく、pは20に等しくてもよく、かつqは10に等してもよい。他の実施形態では、mは10に等しくてもよく、nは20に等しくてもよく、pは20に等しくてもよく、かつqは30に等してもよい。他の実施形態では、mは7に等しくてもよく、nは10に等しくてもよく、pは10に等しくてもよく、かつqは30に等してもよい。
【0038】
一部の実施形態では、w、x、y及びzは、独立に0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49,50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100であり得、w、x、y、zの合計は≦100である。
【0039】
一部の実施形態において、担体が第2族元素を含むとき、第2族元素と第8~第10族元素のモル比は、0.24、0.5、1、10、50、100、300、450、600、800、1,000、1,200、1,500、1,700、又は2,000から3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、5,500、6,000、6,500、7,000、7,500、8,000、8,500、9,000、又は9,500までの範囲内であり得る。一部の実施形態において、担体が第4族元素を含むとき、第4族元素と第8~第10族元素のモル比は、0.18、0.3、0.5、1、10、50、100、又は200から300、400、500、600、700、又は810までの範囲内であり得る。一部の実施形態において、担体が第12族元素を含むとき、第12族元素と第8~第10族元素のモル比は、0.29、0.5、1、10、50、又は100から200、300、400、500、又は590までの範囲内であり得る。一部の実施形態において、担体が21、39、又は57~71の原子数を有する元素を含むとき、21、39、若しくは57~71の原子数を有する元素と第8~第10族元素のモル比は、0.19、0.5、1、10、50、100、又は150から200、250、300、350、400、又は438までの範囲内であり得る。一部の実施形態において、担体が、第2族、第4族、又は第12族元素及び21、39、又は57~71の原子数を有する元素の2つ以上を含むとき、あらゆる第2族元素、あらゆる第4族元素、あらゆる第12族元素、及び21、39、又は57~71の原子数を有するあらゆる元素の合計量と第8~第10族元素のモル比は、0.18、0.5、1、10、50、100、300、450、600、800、1,000、1,200、1,500、1,700、又は2,000から3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、5,500、6,000、6,500、7,000、7,500、8,000、8,500、9,000、又は9,500までの範囲内であり得る。
【0040】
一部の実施形態では、担体は、限定するものではないが、下記化合物:MguZn1-uO(uは正数である);ZnvAl2O3+v(vは正数である);MgwAl2O3+w(wは正数である);CaxAl2O3+x(xは正数である);SryAl2O3+y(yは正数である);BazAl2O3+z(zは正数である);BeO;MgO;CaO;BaO;SrO;BeCO3;MgCO3;CaCO3;SrCO3;BaCO3;ZrO2;ZrC;ZrN;ZrSiO4;CaZrO3;Ca7ZrAl6O18;TiO2;TiC;TiN;TiSiO4;CaTiO3;Ca7Al6O18;HfO2;HfC;HfN;HfSiO4;HfZrO3;Ca7HfAl6O18;ZnO;Zn3(PO4)2;Zn(ClO3)2;ZnSO4;B2O6Zn3;Zn3N2;ZnCO3;CeO2;Y2O3;La2O3;Sc2O3;Pr6O11;CePO4;CeZrO4;CeAlO3;BaCeO3;CePO4;イットリア安定化ZrO2;1種以上のクロム酸マグネシウム、1種以上のタングステン酸マグネシウム、1種以上のモリブデン酸マグネシウム、その組み合わせ、及びその混合物の1種以上であるか又はそれらを含み得る。
【0041】
MguZn1-uO(uは正数である)は、担体として又は担体の成分として存在する場合、1、2、3、又は6から12、25、50、又は100までの範囲のMgとZnのモル比を有し得る。ZnvAl2O3+v(vは正数である)は、担体として又は担体の成分として存在する場合、0.05、0.3、又は0.6から0.9、1.5、又は3までの範囲のZnとAlのモル比を有し得る。MgwAl2O3+w(wは正数である)は、担体として又は担体の成分として存在する場合、1、2、3、4、又は5から6、7、8、9、又は10までの範囲のMgとAlのモル比を有し得る。CaxAl2O3+x(xは正数である)は、担体として又は担体の成分として存在する場合、1:12、1:4、1:2、2:3、5:6、1:1、12:14、又は1.5:1の範囲のCaとAlのモル比を有し得る。一部の実施形態では、CaxAl2O3+xは、アルミン酸三カルシウム、七アルミン酸十二カルシウム、アルミン酸一カルシウム、二アルミン酸一カルシウム、六アルミン酸一カルシウム、アルミン酸二カルシウム、三アルミン酸五カルシウム、三アルミン酸四カルシウム、又はその任意の混合物を含み得る。SryAl2O3+y(yは正数である)は、担体として又は担体の成分として存在する場合、0.05、0.3、又は0.6から0.9、1.5、又は3までの範囲のSrとAlのモル比を有し得る。BazAl2O3+z(zは正数である)は、担体として又は担体の成分として存在する場合、0.05、0.3、又は0.6から0.9、1.5、又は3までのBaとAlのモル比を有し得る。
【0042】
一部の実施形態では、担体は、限定するものではないが、第5族、第6族、第7族、第11族、第13族、第14族、第15族、及び第16族から選択される少なくとも1種の金属元素及び/若しくは少なくとも1種の半金属元素並びに/又はその少なくとも1種の化合物をも含み得る。担体が、第5族、第6族、第7族、第11族、第13族、第14族、第15族、及び第16族から選択される金属元素及び/若しくは半金属を含む化合物をも含む場合、化合物は、担体中に、酸化物、リン酸塩、ハロゲン化物、ハラート、硫酸塩、硫化物、ホウ酸塩、窒化物、炭化物、アルミン酸塩、アルミノケイ酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、メタリン酸塩、セレン化物、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、亜クロム酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、又はケイ化物として存在し得る。一部の実施形態では、第5族、第6族、第7族、第11族、第13族、第14族、第15族、及び第16族から選択される金属元素及び/若しくは半金属を含む適切な化合物は、限定するものではないが、下記:B2O3、AlBO3、Al2O3、SiO2、SiC、Si3N4、アルミノケイ酸塩、VO、V2O3、VO2、V2O5、Ga2O3、In2O3、Mn2O3、Mn3O4、MnO、1種以上の酸化モリブデン、1種以上の酸化タングステン、1種以上のゼオライト、並びにその混合物及び組み合わせの1種以上であるか又はこれらを含み得る。
【0043】
一部の実施形態では、担体は、その上に配置された1種以上のプロモーターをも含み得る。プロモーターは、限定するものではないが、Sn、Ga、Zn、Ge、In、Re、Ag、Au、Cu、その組み合わせ、若しくはその混合物であるか又はそれらを含み得る。従って、触媒粒子の成分として存在する場合、プロモーターは、担体の成分として、担体上に配置されたプロモーターとして、又は担体の成分としても担体上に配置されたプロモーターとしても存在し得る。一部の実施形態では、プロモーターは、第8~10族元素、例えば、Ptと関連し得る。例えば、担体上に配置されたプロモーターと第8~10族元素は、担体上に分散され得る第8~10族元素-プロモータークラスターを形成することができる。プロモーターは、存在する場合、所与のアップグレードされた炭化水素のために触媒の選択性/活性/寿命を改善することができる。一部の実施形態では、プロモーターの添加は、炭化水素含有供給原料がプロパンを含むとき触媒粒子のプロピレン選択性を改善することができる。触媒粒子は、担体の質量に基づいて、0.01wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%、又は1wt%から3wt%、5wt%、7wt%、又は10wt%までの量でプロモーターを含むことができる。
【0044】
一部の実施形態では、担体は、担体上に配置された1種以上のアルカリ金属元素をも含み得る。アルカリ金属元素は、存在する場合、限定するものではないが、Li、Na、K、Rb、Cs、その組み合わせ、若しくはその混合物であるか又はそれらを含み得る。少なくともいくつかの実施形態では、アルカリ金属元素は、K及び/又はCsであるか又はこれらを含み得る。アルカリ金属元素は、存在する場合、所与のアップグレードされた炭化水素のために触媒粒子の選択性を改善することができる。触媒粒子は、担体の質量に基づいて、0.01wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%、又は1wt%から2wt%、3wt%、4wt%、又は5wt%までの量でアルカリ金属元素を含むことができる。
【0045】
担体の調製は、いずれの既知プロセスによっても達成することができる。簡便さ及び説明の容易さのため、マグネシウムとアルミニウムの混合酸化物(Mg(Al)O又はMgO/Al2O3)担体を含む好適な担体の調製についてより詳細に記述する。触媒合成手法は周知であり、下記説明は例示目的であり、担体又は触媒粒子の合成を限定するものとみなすべきでない。一部の実施形態では、MgO/Al2O3混合酸化物担体を作製するため、Mg前駆物質及びAl前駆物質、例えばMg(NO3)2及びAl(NO3)3を合わせて混合、例えば、ボールミルで粉砕した後、か焼することができる。別の実施形態では、2つの前駆物質をH2Oに溶かし、乾燥するまで撹拌(場合によっては熱を加えて)した後、か焼することができる。別の実施形態では、2つの前駆物質をH2Oに溶かした後、塩基及び炭酸塩、例えば、NaOH/Na2CO3を添加してヒドロタルサイトを生成した後、か焼することができる。別の実施形態では、市販のすぐに使えるMgO及びAl2O3を混合して、ボールミルで粉砕してよい。別の実施形態では、Mg(NO3)2前駆物質をH2Oに溶かし、この溶液を既存担体、例えば、Al2O3担体上に含浸させ、これを乾燥及びか焼することができる。別の実施形態では、Mg(NO3)2からMgをイオン吸着を介して既存Al2O3担体上にロードした後、液固分離、乾燥及びか焼することができる。
【0046】
第8~10族金属及び任意のプロモーター及び/又は任意のアルカリ金属元素を任意の既知技術によって混合酸化物担体上にロードしてよい。例えば、1種以上の第8~第10族元素前駆物質、例えば、クロロ白金酸、硝酸テトラアンミン白金(tetramineplatinum nitrate)、及び/又は水酸化テトラアンミン白金(tetramineplatinum hydroxide)、1種以上のプロモーター前駆物質(使用する場合)、例えば、SnCl4及び/又はAgNO3等の塩、並びに1種以上のアルカリ金属元素前駆物質(使用する場合)、例えば、KNO3、KCl、及び/又はNaClを水に溶かすことができる。この溶液を担体上に含浸させた後、乾燥及びか焼することができる。一部の実施形態では、第8~第10族元素前駆物質並びに場合によってはプロモーター前駆物質及び/又はアルカリ金属元素前駆物質を担体上に同時にロードすることができ、或いは別々に乾燥及び/又はか焼工程によって順次分離することができる。他の実施形態では、第8~第10族元素並びに、場合によってはプロモーター及び/又はアルカリ金属元素を担体上に化学蒸着によってロードすることができ、この場合、前駆物質は揮発して担体上に沈着された後、か焼される。他の実施形態では、第8~第10族元素前駆物質並びに、場合によっては、プロモーター前駆物質及び/又はアルカリ金属前駆物質をイオン吸着を介して担体上にロードした後、液固分離、乾燥及びか焼することができる。場合によっては、ワンポット合成法を利用して触媒粒子を合成することもでき、この方法では、担体の前駆物質、第8~10族金属活性相及びプロモーターが全て一緒に、合成を助けるための任意の他の添加剤の有無に係わらず、乾式又は湿式混合された後、乾燥及びか焼される。
【0047】
本明細書で開示する触媒粒子の調製に使用できる好適なプロセスとしては、米国特許第4,788,371号;第4,962,265号;第5,922,925号;第8,653,317号;EP特許第EP0098622号;Journal of Catalysis 94 (1985), pp. 547-557;及び/又はApplied Catalysis 54 (1989), pp. 79-90に記載されているプロセスを挙げることができる。
合成されたままの触媒粒子は、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡で調べると、一次粒子のように、一次粒子の凝集体のように、一次粒子の集合体のように、又はその組み合わせのように見え得る。一次粒子、一次粒子の凝集体及び一次粒子の集合体はPowder Technology 181 (2008) 292-300に記載されている。合成されたままの触媒粒子中の一次粒子は、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡で調べると、0.2nm、0.5nm、1nm、5nm、10nm、25nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、又は500nmから1μm、10μm、25μm、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、400μm、又は500μmまでの範囲の平均断面長又は平均粒子サイズ、例えば、球状のときは直径を有し得る。一部の実施形態では、合成されたままの触媒粒子中の一次粒子は、透過型電子顕微鏡で測定して0.2nm~500μm、0.5nm~300μm、1nm~200μm、2nm~100μm、又は2nm~500nmの平均粒子サイズを有し得る。
合成されたままの触媒粒子は、0.1m2/g、1m2/g、10m2/g、又は100m2/gから500m2/g、800m2/g、1,000m2/g、又は1,500m2/gまでの範囲の表面積を有し得る。触媒粒子の表面積は、4時間350℃で粉末を脱気した後にMicromeritics 3flex機器で窒素の吸着-脱着(液体窒素の温度、77K)を利用してブルナウアー‐エメット‐テラー(BET)法に従って測定可能である。該方法に関するさらなる情報は、例えば“Characterization of Porous Solids and Powders: Surface Area, Pore Size and Density,” S. Lowell et al., Springer, 2004で見つけることができる。
【0048】
合成されたままの触媒粒子を様々な短サイクル(≦70分)の炭化水素アップグレードプロセスに適した1種以上の形態に処方することができる。これとは別に、第8~10族元素並びに、あらゆる任意的なプロモーター及び/又はアルカリ金属元素の添加前に、様々な短サイクルの炭化水素アップグレードプロセスに適した形態に担体を処方することができる。処方中に、1種以上の結合剤及び/又は添加剤を触媒粒子及び/又は担体に添加して、最終的に生成され、本プロセスに用いられる触媒粒子の化学的/物理的性質を改善することができる。結合剤及び/又は添加剤は、限定するものではないが、シリカ、シリカゾル、シリカ-アルミナ、アルミナ、アルミニウムクロールハイドロール(chlorhydrol)、解膠した(peptized)アルミナ、アルミノケイ酸塩、スメクタイト、カオリン、酸処理メタカオリン、イライト、クロライト、アタパルジャイト、柱状層間粘土及び混合層粘土、シラン、アルコキシシラン、アリールオキシシラン、アシルオキシシラン,オキシミノシラン(oximinosilane)、ハロシラン、アミノキシシラン、アミノシラン、アミドシラン、シラザン、シリコーン、若しくはその混合物であるか又はこれらを含み得る。
【0049】
一部の実施形態では、触媒粒子を周知の噴霧乾燥プロセスによって処方することができる。FCC型流動床反応器では典型的に20μm、40μm、又は50μmから80μm、90μm、又は100μmまでの範囲内の平均断面積を有する噴霧乾燥触媒粒子を使用する。噴霧乾燥触媒粒子を作製するため、スラリー中の結合剤/添加剤で担体、第8~10元素、及び任意の追加成分、例えば、プロモーター及び/又はアルカリ金属をスラリーにした後に噴霧乾燥及びか焼することができる。或いは、第8~10族元素、及び任意の追加成分、例えば、プロモーター及び/又はアルカリ金属を処方担体に添加して、処方触媒を生成することができる。
処方触媒粒子は、0.5g/cm3、0.7g/cm3、0.9g/cm3、1g/cm3、1.2g/cm3又は1.3g/cm3から1.5g/cm3、1.8g/cm3、2g/cm3、2.3g/cm3、2.5g/cm3、2.7g/cm3又は3g/cm3までの範囲内の粒子密度を有し得る。「粒子密度」は、g/cm3の細孔容積を含む触媒粒子の密度を指し、水銀ポロシメトリーによって測定可能である。UOP578-11に従って触媒粒子の粒子密度を測定することができる。一部の実施形態では、触媒粒子は、Geldart A定義と一致する平均粒子サイズ及び粒子密度を有し得る。
【0050】
炭化水素含有供給原料
C2-C16アルカンは、限定するものではないが、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、2,2,3-トリメチルブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、n-プロピルシクロペンタン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、若しくはその混合物であるか又はそれを含み得る。例えば、炭化水素含有供給原料は、脱水素されてプロピレンを生成し得るプロパン、及び/又は脱水素されてイソブチレンを生成し得るイソブタンを含み得る。別の例では、炭化水素含有供給原料は、触媒粒子と接触するときに気相内にあり得る液化石油ガス(LPガス)を含むことができる。一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料中の炭化水素は、実質的に単一アルカン、例えばプロパンで構成され得る。一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料は、炭化水素含有供給原料中の全ての炭化水素の総質量に基づいて、≧50mol%、≧75mol%、≧95mol%、≧98mol%、又は≧99mol%の単一C2-C16アルカン、例えば、プロパンを含み得る。一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料は、炭化水素含有供給原料の総体積に基づいて、少なくとも50vol%、少なくとも55vol%、少なくとも60vol%、少なくとも65vol%、少なくとも70vol%、少なくとも75vol%、少なくとも80vol%、少なくとも85vol%、少なくとも90vol%、少なくとも95vol%、少なくとも97vol%、又は少なくとも99vol%の単一C2-C16アルカン、例えば、プロパンを含み得る。
【0051】
C8-C16アルキル芳香族炭化水素は、限定するものではないが、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、1種以上のエチルトルエン、若しくはその混合物であるか又はそれらを含み得る。一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料は、炭化水素含有供給原料中の全ての炭化水素の総質量に基づいて、≧50mol%、≧75mol%、≧95mol%、≧98mol%、又は≧99mol%の単一C8-C16アルキル芳香族化合物、例えば、エチルベンゼンを含み得る。一部の実施形態では、エチルベンゼンは、脱水素されてスチレンを生成することができる。従って、一部の実施形態では、本明細書で開示するプロセスは、プロパンの脱水素、ブタンの脱水素、イソブタンの脱水素、ペンタンの脱水素、ペンタンのシクロペンタジエンへの脱水素環化、ナフサ改質、エチルベンゼンの脱水素、エチルトルエンの脱水素等を含み得る。
一部の実施形態では、1種以上の希釈ガスで炭化水素含有供給原料を希釈することができる。好適な希釈剤は、限定するものではないが、アルゴン、ネオン、ヘリウム、分子窒素、二酸化炭素、メタン、分子水素、又はその混合物であるか又はこれらを含み得る。炭化水素含有供給原料が希釈剤を含む場合、炭化水素含有供給原料は、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総質量に基づいて、0.1vol%、0.5vol%、1vol%、又は2vol%から3vol%、8vol%、16vol%、又は32vol%までの希釈剤を含み得る。希釈剤が分子水素を含むとき、分子水素の、あらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の合計量に対するモル比は0.1、0.3、0.5、0.7、又は1から2、3、4、5、6、7、8、9、又は10までの範囲内であり得る。一部の実施形態では、希釈剤を使用する場合、希釈剤を炭化水素含有供給原料と混合し及び/又は変換ゾーンに導入するか、そうでなければ変換ゾーンへの希釈剤の供給専用の1つ以上の入口を介して別の供給原料として希釈剤を変換ゾーンに供給することができる。同様に、変換ゾーンへの炭化水素含有供給原料の供給専用の1つ以上の入口を介して炭化水素含有供給原料を変換ゾーンに導入することもできる。
【0052】
一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料は、実質的にいずれの蒸気をも含まず、例えば、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、<0.1vol%の蒸気を含み得る。他の実施形態では、炭化水素含有供給原料は蒸気を含み得る。例えば、炭化水素含有供給原料は、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、0.1vol%、0.3vol%、0.5vol%、0.7vol%、1vol%、3vol%、又は5vol%から10vol%、15vol%、20vol%、25vol%、30vol%、35vol%、40vol%、45vol%、又は50vol%までの蒸気を含み得る。他の実施形態では、炭化水素含有供給原料は、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、≦50vol%、≦45vol%、≦40vol%、≦35vol%、≦30vol%、≦25vol%、≦20vol%、又は≦15vol%の蒸気を含み得る。他の実施形態では、炭化水素含有供給原料は、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、少なくとも1vol%、少なくとも3vol%、少なくとも5vol%、少なくとも10vol%、少なくとも15vol%、少なくとも20vol%、少なくとも25vol%、又は少なくとも30vol%の蒸気を含み得る。希釈剤と同様に、蒸気を変換ゾーンに供給する場合、炭化水素含有供給原料の成分として又は変換ゾーンへの蒸気の導入専用の1つ以上の別の入口を介して変換ゾーンに蒸気を供給することができる。
【0053】
一部の実施形態では、炭化水素含有供給原料は硫黄を含み得る。例えば、炭化水素含有供給原料は、0.5ppm、1ppm、5ppm、10ppm、20ppm 30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、又は80ppmから100ppm、150ppm、200ppm、300ppm、400ppm、又は500ppmまでの範囲の硫黄を含み得る。他の実施形態では、炭化水素含有供給原料は、1ppm~10ppm、10ppm~20ppm、20ppm~50ppm、50ppm~100ppm、又は100ppm~500ppmの範囲内の硫黄を含み得る。硫黄は、炭化水素含有供給原料に存在する場合、限定するものではないが、H2S、ジメチルジスルフィド、1種以上のメルカプタンとして、又はその任意の混合物であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、硫黄を別の供給原料として、希釈剤を使用する場合は希釈剤の成分として、及び/又は蒸気を使用する場合は蒸気の成分として変換ゾーンに導入することができる。
炭化水素供給原料は、分子酸素を実質的に含まず又は分子酸素を含まない。一部の実施形態では、炭化水素供給原料は、≦5mol%、≦3mol%、又は≦1mol%の分子酸素(O2)を含み得る。実質的に分子酸素を含まない炭化水素供給原料を供給すると、さもなければ炭化水素供給原料中のアルカン及び/又はアルキル芳香族炭化水素の少なくとも一部を消費することになる酸化的カップリング反応を実質的に防止すると考えられる。
【0054】
アップグレードされた炭化水素の回収及び使用
アップグレードされた炭化水素は、少なくとも1種のアップグレードされた炭化水素、例えば、オレフィン、水、未反応炭化水素、未反応分子水素等を含み得る。いずれの便利なプロセスによっても、例えば、1種以上の従来のプロセスによって、アップグレードされた炭化水素を回収するか又は他の方法で得ることができる。1つの該プロセスは、流出物を冷却して、存在し得るあらゆる水及びあらゆる重質炭化水素の少なくとも一部を濃縮して、主に気相内にオレフィン及びあらゆる未反応アルカン又はアルキル芳香族化合物を残すことを含み得る。次に1つ以上のドラムセパレーターでオレフィン及び未反応アルカン又はアルキル芳香族炭化水素を反応生成物から除去することができる。例えば、1つ以上のスプリッターを用いて脱水素生成物を未反応炭化水素供給原料から分離することができる。
一部の実施形態では、回収オレフィン、例えば、プロピレンをポリマー生成に使用することができ、例えば、回収プロピレンを重合させて、回収プロピレン由来のセグメント又は単位を有するポリマー、例えばポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー等を生成することができる。回収イソブテンは、例えば、下記:メチルtert-ブチルエーテル等の含酸素化合物、ジイソブテン等の燃料添加剤、ブチルゴム等の合成エラストマーポリマー等の1種以上を生成するために使用することができる。
【0055】
例示実施形態
図1は、1つ以上の実施形態に記載の、反応器又は変換ゾーン1及び再生器又は燃焼ゾーン2を含む、ライン20の炭化水素含有供給原料をアップグレードするためのシステムを示す。炭化水素含有供給原料は、ライン20経由で反応器1に、例えば、ライザー反応器の下端又はダウナー反応器の上端に導入され得る。一部の実施形態では、ライン21経由の希釈ガスがライン20の炭化水素含有供給原料と混合され得る。炭化水素含有供給原料及び任意的な希釈ガスは、ライン50経由で反応器1に導入された再生触媒粒子と混合されるか又は他の方法で接触され得る。ライン50の再生触媒粒子は、ライン31経由で導入された輸送ガスを介してライン50を通って移動又は他の方法で運搬され得る。炭化水素含有供給原料が触媒粒子の存在下で反応し、反応器1を通って移動しているときに、ライン22経由で追加の炭化水素含有供給原料及び/又は場合によってはライン23経由で追加の希釈ガスが反応器1に導入され得る。ガス成分とコークス化触媒粒子は、前述したように、1つ以上の気固分離装置を介して、ライン24経由で回収された1種以上のアップグレードされた炭化水素と、未反応炭化水素と、分子水素と、あらゆる他のガス成分とに富む第1のガス流及びライン51経由で回収されたコークス化触媒粒子に富む第1の粒子流を用いて分離され得る。ガス成分とコークス化触媒粒子の分離は、反応器1内で起こるように示されているが、該分離は、反応器1の外部でも起こり得る。
【0056】
ライン24経由の第1のガス流は、生成物回収に送られて追加の処理工程を受け得る。コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流は、ライン51経由で再生器2に導入され得る。再生器2は、コークス化触媒粒子が、ライン25経由で導入された酸化剤、例えば、空気と接触されて、触媒粒子の表面上に沈着したコークスの少なくとも一部を燃焼できる反応器であり得る。一部の実施形態では、任意的な補助燃料がライン26経由で再生器2に導入されることもある。補助燃料を用いて、反応器1内で起こる吸熱反応を支援するのに望ましい温度まで再生器2内の再生触媒粒子をさらに加熱できる追加の熱を生成することができる。
再生器2内では、気固分離装置を用いて、ライン27経由で回収された燃焼ガスに富む第2のガス流及びライン50経由で回収された再生触媒粒子に富む第2の粒子流で、燃焼ガスから再生触媒粒子を分離することができる。一部の実施形態では、微細な触媒微粒子を含有する可能性があるライン27の燃焼ガスは、微細な触媒微粒子の回収、熱回収、又は廃棄用の第2の分離装置に向けられることがある。再生触媒粒子は、触媒粒子を反応器1に運ぶために使用されるライン31経由の輸送ガスで反応器1にライン50経由で導入され得る。
【0057】
図2は、1つ以上の実施形態に記載の、反応器又は変換ゾーン1、再生器又は燃焼ゾーン2、及び還元反応器又は還元ゾーン3を含む、ライン2の炭化水素含有供給原料をアップグレードするためのシステムを示す。炭化水素含有供給原料は、ライン20経由で反応器1に、例えば、ライザー反応器の下端又はダウナー反応器の上端に導入され得る。一部の実施形態では、ライン21経由の希釈ガスがライン20の炭化水素含有供給原料と混合され得る。炭化水素含有供給原料及び任意的な希釈ガスは、ライン50経由で反応器1に導入される再生還元触媒粒子と混合されるか又は他の方法で接触され得る。ライン50の再生還元触媒粒子は、ライン31経由で導入された輸送ガスを介してライン50を通って移動又は他の方法で運搬され得る。炭化水素含有供給原料が触媒粒子の存在下で反応し、反応器1を通って移動しているときに、ライン22経由で追加の炭化水素含有供給原料及び/又は場合によってはライン23経由で追加の希釈ガスが反応器1に導入され得る。ガス成分とコークス化触媒粒子は、前述したように、1つ以上の気固分離装置を介して、ライン24経由で回収された1種以上のアップグレードされた炭化水素と、未反応炭化水素と、分子水素と、あらゆる他のガス成分とに第1の富むガス流及びライン51経由で回収されたコークス化触媒粒子に富む第1の粒子流を用いて分離され得る。
【0058】
ライン24経由の第1のガス流は、生成物回収に送られて追加の処理工程を受け得る。コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流は、ライン51経由で再生器2に導入され得る。再生器2は、コークス化触媒粒子が、ライン25経由で導入された酸化剤、例えば、空気と接触されて、触媒粒子の表面上に沈着したコークスの少なくとも一部を燃焼できる反応器であり得る。必要に応じて、補助燃料がライン26経由で再生器2に導入されることもある。補助燃料を用いて、反応器1内で起こる吸熱反応を支援するのに望ましい温度まで再生器2内の再生触媒粒子をさらに加熱することができる。
再生器2内では、気固分離装置を用いて、ライン27経由で回収された燃焼ガスに富む第2のガス流及びライン52で回収された再生触媒粒子に富む第2の粒子流で、燃焼ガスから再生触媒粒子を分離することができる。一部の実施形態では、微細な触媒微粒子を含有する可能性があるライン27の燃焼ガスは、微細な触媒微粒子の回収、熱回収、又は廃棄用の第2の分離装置に向けられることがある。
【0059】
ライン52経由の再生触媒粒子及びライン28経由の還元性ガスは、還元反応器3に導入され得る。再生触媒粒子は、還元反応器3内で還元性ガスと接触されて再生還元触媒粒子を生成することができる。還元反応器3内では、気固分離装置を用いて、ライン30及び/又はライン29経由で回収された還元性ガスに富む第3のガス流並びにライン50経由の再生還元触媒粒子に富む第3の粒子流で、再生還元触媒粒子を還元性ガスから分離し得る。少なくとも部分的に、還元性ガスの組成に応じて、還元性ガスは、全体的又は部分的に、ライン30経由で再生器2に導入されて、再生器2に供給され得る任意的な補助燃料の少なくとも一部を形成することができる。一部の実施形態では、還元性ガスは、ライン29経由でシステムから除去され得る。一部の実施形態では、触媒還元からの残留還元性ガス及びガス生成物は、触媒から分離されずに直接反応器1に運ばれることがある。再生還元触媒粒子は、触媒粒子を反応器1に運ぶために使用されるライン31経由の輸送ガスでライン50を経て反応器1に導入され得る。
【0060】
図3は、1つ以上の実施形態に記載の、反応器又は変換ゾーン1、再生器又は燃焼ゾーン2、還元反応器又は還元ゾーン3、及びライン51経由のコークス化触媒粒子の少なくとも一部の反応器1への再循環のための再循環ライン53を含む、ライン20の炭化水素含有供給原料をアップグレードするための別のシステムを示す。一部の実施形態では、反応器1内の触媒失活の程度は、全てのコークス化触媒粒子を再生器2に導入することを必要とするのに十分でなくてよい。そうであるから、コークス化触媒粒子の少なくとも一部の反応器1への再循環を行って、再生器に導入される触媒粒子の量を減らすか又は最小限にすることができる。
【0061】
図4は、1つ以上の実施形態に記載の、反応器又は変換ゾーン1、再生器又は燃焼ゾーン2、還元反応器又は還元ゾーン3、及び触媒粒子を加熱するための熱入装置4を含む、炭化水素含有供給原料をアップグレードするための別のシステムを示す。少なくとも部分的に、特定の炭化水素含有供給原料、触媒粒子と炭化水素含有供給原料の質量比、再生還元触媒粒子の温度、及び他のプロセス変量に応じて、反応器1に導入された時点で触媒粒子の少なくとも一部を加熱することが望ましい可能性がある。そうであるから、一部の実施形態では、反応器1内の触媒粒子の少なくとも一部が、ライン54経由で熱入装置4に向けられ、そこで触媒粒子は加熱され得る。いずれの適切な熱源を用いても触媒粒子を加熱することができる。一部の実施形態では、熱が加熱媒体から間接的に伝達されて、触媒粒子の温度を所望温度まで上昇させ得る。適切な加熱媒体は、限定するものではないが、蒸気、燃料ガス、熱油、溶融塩等であるか又はこれらを含み得る。一部の実施形態では、熱が1つ以上の通電発熱体から生成され得る。加熱された触媒粒子は、熱入装置4からライン55経由で回収されて反応器1に再導入され得る。代替実施形態では、熱入装置を反応器1内に配置することができ、その結果、触媒粒子を反応器1からライン54経由で取り出してライン55経由で反応器1に戻す必要がない。
【0062】
図5は、1つ以上の実施形態に記載の、反応器又は変換ゾーン1、再生器又は燃焼ゾーン2、還元反応器又は還元ゾーン3、及びライン51のコークス化触媒粒子の少なくとも一部を還元ゾーン3に供給するための移送ライン56を含む、ライン20の炭化水素含有供給原料をアップグレードするための別のシステムを示す。一部の実施形態では、反応器1内の触媒失活の程度は、全てのコークス化触媒粒子を再生器2に導入することを必要とするのに十分でなくてよい。そうであるから、コークス化触媒粒子の少なくとも一部の還元ゾーン3への供給を行って、再生器に導入される触媒粒子の量を減らすか又は最小限にすることができる。コークス化触媒粒子の少なくとも一部の還元ゾーン3への供給を利用して、ライン52経由で還元ゾーン3に供給される再生触媒粒子の温度を調整するか又は他の方法で制御することもできる。一部の実施形態では、コークス化触媒粒子の少なくとも一部をライン56で還元ゾーン3に導入し、コークス化触媒粒子の少なくとも一部をライン53(
図3)経由で反応器1に再循環させることができ、かつコークス化触媒粒子の少なくとも一部をライン51経由で再生ゾーン2に供給することができる。
【0063】
図6は、1つ以上の実施形態に記載の、反応器又は変換ゾーン1、再生器又は燃焼ゾーン2、還元反応器又は還元ゾーン3、及び第2の反応器5を含む、ライン20の炭化水素含有供給原料をアップグレードするための別のシステムを示す。炭化水素含有供給原料は、ライン20経由で反応器1に、例えば、ライザー反応器の下端又はダウナー反応器の上端に導入され得る。一部の実施形態では、ライン21経由の希釈ガスがライン20の炭化水素含有供給原料と混合され得る。炭化水素含有供給原料及び任意的な希釈ガスは、ライン50経由で反応器1に導入された再生還元触媒粒子と混合されるか又は他の方法で接触され得る。ライン50の再生還元触媒粒子は、ライン31経由で導入された輸送ガスを介してライン50を通って移動又は他の方法で運搬され得る。炭化水素含有供給原料が触媒粒子の存在下で反応し、反応器1の中を移動しているときに、ライン22経由で追加の炭化水素含有供給原料及び/又は場合によってはライン23経由で追加の希釈ガスが反応器1に導入され得る。ガス成分とコークス化触媒粒子は、前述したように、1つ以上の気固分離装置を介して、ライン24経由で回収された1種以上のアップグレードされた炭化水素と、未反応炭化水素と、分子水素と、あらゆる他のガス成分とに富む第1のガス流及びライン51経由で回収されたコークス化触媒粒子に富む第1の粒子流を用いて分離され得る。
【0064】
第1のガス流はライン24経由で生成物回収に送られて、追加の処理工程を受け得る。コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流は、ライン51経由で第2の反応器5に導入され得る。ライン32経由で反応体流、例えば、追加の炭化水素含有供給原料及びライン33経由で任意的な希釈流も第2の反応器5に導入され得る。一部の実施形態では、ライン20の炭化水素含有供給原料は、ライン32の反応体流とは異なる炭化水素を含み得る。一部の実施形態では、ライン20の炭化水素含有供給原料は、望ましい変換流出物を生成するためにライン32の反応体供給原料より高い温度に加熱される流動触媒粒子を必要とすることがある。従って、ライン24のアップグレードされた炭化水素及びライン34のアップグレードされた炭化水素は、同一であるか又は互いに異なることがある。別の実施形態では、ライン24のガス流の少なくとも一部がライン32経由で第2の反応器5に導入され得る。
ライン34の第2の生成物は、サイクロン分離器等の気固分離装置を用いてコークス化触媒から分離され得る。第2の生成物は、ライン34経由で生成物回収に送られて追加の処理工程を受け得る。別の実施形態では、ライン34の第2の生成物の少なくとも一部は、ライン20及び/又はライン22経由で反応器1に導入され得る。コークス化触媒粒子はライン57経由で再生器2に供給され得る。再生器2は、コークス化触媒粒子が、ライン25経由で導入された酸化剤、例えば、空気と接触されて、触媒粒子の表面上に沈着したコークスの少なくとも一部を燃やすことができる反応器であり得る。必要に応じて、補助燃料がライン26経由で再生器2に導入されることもある。補助燃料を用いて、反応器1内で起こる吸熱反応を支援するのに望ましい温度まで再生器2内の再生触媒粒子をらに加熱することができる。
【0065】
再生器2内では、気固分離装置を用いて、ライン27経由で回収された燃焼ガスに富む第2のガス流及びライン52経由で回収された再生触媒粒子に富む第2の粒子流で、再生触媒粒子を燃焼ガスから分離することができる。一部の実施形態では、微細な触媒微粒子を含有し得るライン27の燃焼ガスは、微細な触媒微粒子の回収、熱回収、又は廃棄用の第2の分離装置に向けられることがある。
再生触媒粒子はライン52経由で、還元性ガスはライン28経由で還元反応器3に導入され得る。再生触媒粒子は、還元反応器3内の還元性ガスと接触されて再生還元触媒粒子を生成することができる。還元反応器3内では、気固分離装置を用いて、ライン30及び/若しくはライン29経由で回収された還元性ガスに富む第3のガス流並びにライン50経由の再生還元触媒粒子に富む第3の粒子流で、再生還元触媒粒子を還元性ガスから分離することができる。少なくとも部分的に、還元性ガスの組成に応じて、還元性ガスは、全体的又は部分的に、ライン30経由で再生器2に導入されて、再生器2に供給され得る任意的な補助燃料の少なくとも一部を形成することができる。一部の実施形態では、還元性ガスは、ライン29経由でシステムから除去され得る。再生還元触媒粒子は、反応器1に触媒粒子を運ぶために使用されるライン31の輸送ガスで、ライン50を経て反応器1に導入され得る。
【0066】
図7は、1種以上の実施形態による、反応器又は変換ゾーン1、再生器又は燃焼ゾーン2、還元反応器又は還元ゾーン3、及び第2の反応器6を含む、ライン20の炭化水素含有供給原料をアップグレードするための別のシステムを示す。炭化水素含有供給原料は、ライン20経由で反応器1に、例えば、ライザー反応器の下端又はダウナー反応器の上端に導入され得る。一部の実施形態では、ライン21経由の希釈ガスがライン20の炭化水素含有供給原料と混合され得る。炭化水素含有供給原料及び任意的な希釈ガスは、ライン50経由で反応器1に導入された再生還元触媒粒子と混合されるか又は他の方法で接触され得る。ライン50の再生還元触媒粒子は、ライン31経由で導入された輸送ガスを介してライン50を通って移動されるか又は他の方法で運搬され得る。炭化水素含有供給原料が触媒粒子の存在下で反応し、反応器1の中を移動しているときに、ライン22経由で追加の炭化水素含有供給原料及び/又は場合によってはライン23経由で追加の希釈ガスが反応器1に導入され得る。ガス成分とコークス化触媒粒子は、前述したように、1つ以上の気固分離装置を介して、ライン24経由で回収された1種以上のアップグレードされた炭化水素と、未反応炭化水素と、分子水素と、あらゆるガス成分とに富む第1のガス流及びライン58で回収されたコークス化触媒粒子に富む第1の粒子流を用いて分離され得る。
【0067】
第1のガス流は、ライン24経由で生成物回収に送られて追加の処理工程を受け得る。コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流は、ライン58経由で再生器2に導入され得る。再生器2は、コークス化触媒粒子が、ライン25経由で導入された酸化剤、例えば、空気と接触されて、触媒粒子の表面上に沈着したコークスの少なくとも一部を燃やすことができる反応器であり得る。必要に応じて、補助燃料がライン26経由で再生器2に導入されることもある。補助燃料を用いて、反応器1内で起こる吸熱反応を支援するのに望ましい温度まで再生器2内の再生触媒粒子をさらに加熱することができる。
再生器2内では、気固分離装置を用いて、ライン27経由で回収された燃焼ガスに富む第2のガス流及びライン52で回収された再生触媒粒子に富む第2の粒子流で、再生触媒粒子を燃焼ガスから分離することができる。一部の実施形態では、微細な触媒微粒子を含有し得るライン27の燃焼ガスは、微細な触媒微粒子の回収、熱回収、又は廃棄用の第2の分離装置に向けられることがある。
再生触媒粒子はライン52経由で、還元性ガスはライン28経由で還元反応器3に導入され得る。再生触媒粒子は、還元反応器3内の還元性ガスと接触されて再生還元触媒粒子を生成することができる。還元反応器3内では、気固分離装置を用いて、ライン30及び/若しくはライン29経由で回収された還元性ガスに富む第3のガス流、ライン50経由の再生還元触媒粒子に富む第3の粒子流、並びにライン60経由の再生還元触媒粒子に富む第4の粒子流で、再生還元触媒粒子を還元性ガスから分離することができる。少なくとも部分的に、還元性ガスの組成に応じて、還元性ガスは、全体的又は部分的に、ライン30経由で再生器2に導入されて、再生器2に供給され得る任意的な補助燃料の少なくとも一部を形成することができる。一部の実施形態では、還元性ガスは、ライン29経由でシステムから除去され得る。
【0068】
再生還元触媒粒子の第1の部分は、触媒粒子を反応器1に運ぶために用いられるライン31経由の輸送ガスで、ライン50を経て反応器1に導入され得る。再生還元触媒粒子の第2の部分は、触媒粒子を第2の反応器6に運ぶために用いられるライン35経由の輸送ガスで、ライン60を経て第2の反応器6に導入され得る。炭化水素含有供給原料はライン32経由で及び任意的な希釈流がライン33経由で第2の反応器に供給されることもある。炭化水素含有供給原料は、第2の反応器6内で還元再生触媒粒子と接触されて別の変換流出物を生成することができる。
ガス成分とコークス化触媒粒子は、前述したように、1つ以上の気固分離装置を介して、ライン34経由で回収された1種以上のアップグレードされた炭化水素と、未反応炭化水素と、分子水素と、あらゆる他のガス成分とに富む第2のガス流及びライン59経由で回収されたコークス化触媒粒子に富む粒子流を用いて分離され得る。別の実施形態では、ライン24の第1のガス流の少なくとも一部が、ライン32経由で第2の反応器6に導入され得る。別の実施形態では、ライン34の第2のガス流の少なくとも一部が、ライン20及び/又は22経由で反応器1に導入され得る。
図1~7には、種々のガス生成物、例えば、アップグレードされた炭化水素及び分子水素のコークス化触媒粒子からの分離、燃焼ガスの再生触媒粒子からの分離、及び還元性ガスの再生還元触媒粒子からの分離が反応器1、再生器2、還元反応器3、第2の反応器5、及び第2の反応器6内で起こるように示されているが、該分離は、当該反応器のいずれか1つ以上の外部でも起こり得る。
【実施例】
【0069】
実施例
下記非限定例を参照して前述の考察をさらに記述することができる。
ほとんどの下記実施例で用いた触媒について下記プロセス工程を行った。全ての実験は、下記実施例で述べる少数の例外を除き、周囲圧力で行った。
1. He中に10vol%のO2を含むガス、又は空気を再生温度(Tregen)で一定時間(tregen)触媒を通過させて触媒を再生した。
2. ガスの流れを変えずに、反応器内の温度をTregenから還元温度(Tred)に変えた。
3. システムにHeガスを流した。
4. Ar中に10vol%のH2を含むガスをTredで一定時間(tred)触媒を通過させた。
5. システムにHeガスを流した。
6. 反応器内の温度をTredから不活性ガスの存在下で反応温度(Trxn)に変えた。
7. Ar又はKr又はHe中に90vol%のC3H8を含む炭化水素含有供給原料をTrxnにて一定時間(trxn)流量(Frxn)で触媒を通過させた。一部の実施例では、炭化水素含有供給原料を、T1の温度で維持した脱イオン水に含浸させたスパージャーを通過させてから、慎重に制御したT2の温度で還流させた後、反応器に導入し、触媒に至らせた。スパージャーを使用すると、炭化水素供給原料は、反応器内に一定量の蒸気を含めた。このことは、以下の関連する表に示されている。
8. システムにHeガスを流した。
9. He中に10vol%のO2を含むガス又は空気をTrxnで再び触媒を通過させ、反応器内の温度をTrxnからTregenに変えた。
【0070】
特定の例では、触媒還元工程を行わず、下記工程を行った。
1. He中に10vol%のO2を含むガス又は空気をTregenでtregenにわたって触媒を通過させた。
2. ガスの流れを変えずに、反応器内の温度をTregenからTrxnに変えた。
3. システムに不活性ガス(例えばHe)を流した。
4. Ar又はKr又はHe中に90vol%のC3H8を含む炭化水素含有供給原料を温度TrxnにてtrxnにわたってFrxnの流量で触媒を通過させた。一部の例では、炭化水素含有供給原料を、T1の温度で維持した脱イオン水に含浸させたスパージャーを通過させてから、慎重に制御したT2の温度で還流させた後、反応器に導入し、触媒に至らせた。
5. システムに不活性ガス(例えばHe)を流した。
6. He中に10vol%のO2を含むガス又は空気をTrxnで再び触媒を通過させ、反応器内の温度をTrxnからTregenに変えた。
【0071】
AGILENT(登録商標)マイクロGC 490を用いて、1分~1.5分毎に反応器流出物の組成を測定した。次に反応器流出物中の各成分の濃度を用いてC3H6の収率及び選択性を計算した。trxnの最初及びtrxnの最後のC3H6の収率及び選択性をそれぞれYini、Yend、Sini、及びSendで示し、以下のデータ表に百分率として報告する。いくつかの実験では、触媒の安定性を知るために反復サイクルを行った。これらの実施例で報告したC3H6の収率は、炭素のみに基づいている。
各例において、一定量の触媒Mcatを適量の石英/SiC希釈剤と混合し、石英反応器にロードした。希釈剤の量は、触媒床(触媒+希釈剤)が操作中にほとんど等温であるように決められる。反応器の死容積は石英チップ/ロッドで満たした。
反応温度(Trxn)が>620℃になると、プロパン/プロピレンの熱分解が顕著になった。プロパン/プロピレンの熱分解は、C1及びC2炭化水素に対してずっと高い選択性を有するので、C3H6に対する全体的な選択性は低減する。反応器内の熱分解の量は、どれだけの石英/SiC希釈剤を反応器に添加したか及び反応器内の死容積を充填材でどれだけうまく減らしたかに関係する。従って、異なる実験でどのように反応器を充填させるかによって、性能が異なる。従って、異なる表に示す実験結果は、必ずしも互いに比較できない。
【0072】
実施例1~23、触媒1
触媒1:実施例1~23(Ex. 1~23)で用いた触媒は、粉砕して20~40メッシュの粒子サイズのふるいにかけた、Mg/Al混合酸化物担体に担持されたPt系のSn含有触媒だった。元素分析は、金属元素の総質量に基づいて、触媒が0.48wt%のPt、1.25wt%のSn、67.93wt%のMg、及び29.23wt%のAlを含有し、MgとAlのモル比は約2.58であることを示した。
表1は、実施例1~3の実験結果を示す。Ex. 1とEx. 3の間の比較は、酸化的再生後の分子水素の存在下での触媒の還元がプロピレン収率を改善することを示す。Ex. 1びEx. 3は、これらの実施例で用いた実験条件下での還元工程の持続時間(1分対5分)に触媒はあまり敏感でないことをも示す。しかしながら、他の条件では、行われる還元工程に最適の持続時間がある可能性がある。
図8は、実施例1で用いた同一条件下で行った35サイクル(再生、還元、及び脱水素)を経た後の実施例1~3で用いた触媒の触媒安定性結果を示す。表2は、実施例4及び5の実験結果を示す。表2の結果は、還元工程を異なる温度(670℃対760℃)で行うことができることを示す。
【0073】
【0074】
【0075】
表3は、実施例6~10の実験結果を示す。実施例6~10は、反応器の排気孔にパーシャルプラグ(partial plug)を導入することによって、炭化水素含有供給原料が室温、例えば、25℃で反応器を通過しながら、反応器の上流の圧力計が1.43baraを示すように行った。実験中、反応器内のガスの体積流量は、蒸気の添加、より高いT及びプロパンの脱水素に起因する流れの体積膨張のために増加すると予想された。従って、反応器内の圧力は、1.43baraより顕著に高かったはずである。残念ながら、反応中の圧力は、機器の限界のためモニターできなかった。実験8~10は、異なる温度及び持続時間で再生を行うことの影響を示す。
【0076】
【0077】
表4は、実施例11~14の実験結果を示す。表4の結果は、空間速度が触媒の性能に与えた影響を示す。表5は、実施例15及び16の実験結果を示す。表5は、それぞれ、蒸気の存在下での還元の効果を示す。表6は、実施例17及び18の実験結果を示す。表6は、再生持続時間の影響を示す。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
表7は、実施例19~22の結果を示す。表7は、炭化水素含有供給原料中の蒸気の量が収率及び選択性に与える影響を示す。Ex. 23では、触媒は約11vol%の蒸気の存在下で全部で49サイクルを受けた。Ex. 23の結果を表8に示す。
図9は、蒸気の存在下で49サイクル(再生、還元、及び脱水素)を経た後の実施例23で用いた触媒の触媒安定性結果を示す。
【0082】
【0083】
【0084】
実施例24、触媒2
この触媒は、CeO2上に担持された、CeO2の質量に基づいて1wt%のPt及び3wt%のSnを含んだ。硝酸セリウム(III)六水和物(Sigma-Aldrich 202991)をか焼することによってCeO2担体を作製した。水中8wt%のクロロ白金酸(Sigma Aldrich, 262587)0.788g及び塩化すず(IV)五水和物(Acros Organics 22369)0.266gを用いた3gのCeO2の初期湿潤含浸後の乾燥及び800℃で12時間のか焼によって触媒を作製した。表9のデータは、42サイクルにわたって触媒が安定していたことを示す。
【0085】
実施例25及び26、触媒3
この触媒は、セリア-ジルコニア上に担持された、セリア-ジルコニアの質量に基づいて1wt%のPt及び2.7wt%のSnを含んだ。適量の脱イオン水に溶かした六水和クロロ白金(BioXtra, P7082)0.44g及び五水和塩化すず(IV)(Acros Organics 22369)1.33gを用いた16.5gのセリア-ジルコニア(Sigma Aldrich 634174)の初期湿潤含浸後の乾燥及び800℃で12時間のか焼によって触媒を作製した。結果を表10に示す。
【0086】
【0087】
【0088】
実施例27~29、触媒4
この触媒は、Y2O3上に担持された、Y2O3の質量に基づいて1wt%のPt及び2.7wt%のSnを含んだ。適量の脱イオン水に溶かした六水和クロロ白金酸(BioXtra, P7082)0.106g及び五水和塩化すず(IV)(Acros Organics 22369)0.322gを用いた4gのY2O3(US nano 3553)の初期湿潤含浸後の乾燥及び800℃で12時間のか焼によって触媒を作製した。表11のデータは、触媒の性能が20サイクルにわたって安定していたことを示す。
【0089】
実施例30~34、触媒5
この触媒は、CeO2とAl2O3の担体に担持された1wt%のPt及び2.7wt%のSnを含んだ。適量の脱イオン水に溶かした六水和硝酸セシウム(III)(Sigma Aldrich 202991)5.67gを用いた8.25gのアルミナ(Sigma Aldrich 199443)の初期湿潤含浸後の乾燥及び800℃で12時間のか焼によってCeO2とAl2O3の担体を作製した。適量の脱イオン水に溶かした六水和クロロ白金酸(BioXtra, P7082)0.22g及び五水和塩化すず(IV)(Acros Organics 22369)0.67gを用いたCeO2とAl2O3の担体の初期湿潤含浸後の乾燥及び800℃で12時間のか焼によって触媒を作製した。表12のデータは、蒸気の同時添加と触媒の前還元の両方が収率及び選択性の上昇を助けたことを示す。
【0090】
【0091】
【0092】
実施例35~38、触媒6
触媒は、Alfa Aesarから得た高表面積ZrO2上の0.2wt%のPt、0.2wt%のSn、及び0.67wt%のKだった。表13のデータは、触媒が24サイクルにわたって安定性があり、かつ蒸気の添加が顕著に収率を向上させたことを示す。
【0093】
【0094】
本開示は、さらに下記非限定実施形態/態様を含むことができる。
E1. 炭化水素のアップグレードプロセスであって、
(I)炭化水素含有供給原料を、変換ゾーン内で、担体上に配置された第8~10族元素を含む流動触媒粒子と接触させて炭化水素含有供給原料の少なくとも一部の脱水素、脱水素芳香族化、及び脱水素環化の1つ以上を引き起こして、コークス化触媒粒子と、1種以上のアップグレードされた炭化水素と、分子水素とを含む変換流出物を生成する工程、ここで:
炭化水素含有供給原料は、1種以上のC2-C16直鎖若しくは分岐アルカン、1種以上のC4-C16環式アルカン、1種以上のC8-C16アルキル芳香族炭化水素、又はその混合物を含み;
炭化水素含有供給原料と触媒粒子は、300℃~900℃の範囲内の温度で、0.1秒~2分の範囲内の時間にわたって、少なくとも20kPa絶対圧の炭化水素分圧下で接触され、この炭化水素分圧は、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総分圧であり;
触媒粒子は、担体の質量に基づいて0.05wt%~6wt%の第8~10族元素を含み;かつ
担体は、担体の質量に基づいて、wwt%の第2族元素、xwt%の第4族元素、ywt%の第12族元素、及びzwt%の、21、39、又は57~71の原子数を有する元素の少なくとも1つを含み、w、x、y、及びzは、独立に0~100の範囲内であり、ここで:
いずれの第2族元素も担体の質量に基づいてwt% mと関連し、
いずれの第4族元素も担体の質量に基づいてwt% nと関連し、
いずれの第12族元素も担体の質量に基づいてwt% pと関連し、及び
21、39、又は57~71の原子数を有するいずれの元素も担体の質量に基づいてwt% qと関連し、
m、n、p、及びqは、独立に1~100の範囲内の数であり、かつ
w/m+x/n+y/p+z/pの合計は、担体の質量に基づいて≧1であり;
1種以上のアップグレードされた炭化水素は、脱水素炭化水素、脱水素芳香族化炭化水素、及び脱水素環化炭化水素、又はその混合物を含む;
(II)変換流出物から、1種以上のアップグレードされた炭化水素と分子水素に富む第1のガス流及びコークス化触媒粒子に富む第1の粒子流を得る工程;
(III)第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の少なくとも一部を燃焼ゾーン内で酸化剤と接触させてコークスの少なくとも一部の燃焼を引き起こして、コークスが少ない再生触媒粒子と、燃焼ガスとを含む燃焼流出物を生成する工程;
(IV)燃焼流出物から、燃焼ガスに富む第2のガス流及び再生触媒粒子に富む第2の粒子流を得る工程;及び
(V)追加量の炭化水素含有供給原料を流動再生触媒粒子と接触させて、再コークス化触媒粒子と、追加の1種以上のアップグレードされた炭化水素と、追加の分子水素とを含む追加の変換流出物を生成する工程
を含むプロセス。
【0095】
E2. 工程(IV)の後かつ工程(V)の前に、さらに下記工程:
(IVa)再生触媒粒子の少なくとも一部を還元性ガスと接触させて再生還元触媒粒子を生成する工程を含み、工程(V)において、追加量の炭化水素含有供給原料が流動再生還元触媒粒子と接触される、E1のプロセス。
E3. 再生触媒粒子中の第8~10族元素の少なくとも一部が、炭化水素含有供給原料と接触した触媒粒子中の第8~10族元素に比べて高い酸化状態であり、かつ再生還元触媒粒子中の第8~10族元素の少なくとも一部が、再生触媒粒子中の第8~10族元素に比べて低い酸化状態に還元される、E2のプロセス。
E4. 工程(IVa)において、再生触媒粒子と還元性ガスが、450℃~900℃、好ましくは600℃~900℃、さらに好ましくは620℃~900℃、さらに好ましくは650℃~850℃、又はさらに好ましくは670℃~800℃の範囲内の温度で接触される、E2又はE3のプロセス。
E5. 工程(IVa)において、再生触媒粒子と還元性ガスが、20kPa絶対圧~1,000kPa絶対圧、好ましくは50kPa絶対圧~500kPa絶対圧、又はさらに好ましくは70kPa絶対圧~300kPa絶対圧の範囲内の還元性ガス分圧下で接触される、E2~E4のいずれかのプロセス。
E6. 再生還元触媒粒子中の第8~10族元素の少なくとも一部が、元素状態である、E2~E5のいずれかのプロセス。
E7. 還元性ガスが、分子水素、一酸化炭素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、蒸気、分子窒素、アルゴン、二酸化炭素、又はその混合物を含む、E2~E6のいずれかのプロセス。
E8. 工程(I)の炭化水素含有供給原料と触媒粒子の接触から工程(V)の追加量の炭化水素含有供給原料と流動再生還元触媒粒子の接触までのサイクル時間が、≦70分、好ましくは1分~70分、又はさらに好ましくは5分~45分である、E2~E7のいずれかのプロセス。
E9. 工程(I)の炭化水素含有供給原料と触媒粒子の接触から工程(V)の追加量の炭化水素含有供給原料と再生触媒粒子の接触までのサイクル時間が、≦70分、好ましくは1分~70分、又はさらに好ましくは5分~45分である、E1のプロセス。
【0096】
E10. 工程(I)において、炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、0.1vol%~50vol%、好ましくは0.5vol%~30vol%、又はさらに好ましくは1vol%~15vol%の範囲内の量の蒸気の存在下で互いに接触される、E1~E9のいずれかのプロセス。
E11. 担体が、第2族元素を含み、かつ工程(I)において、炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、0.1vol%~50vol%、好ましくは0.5vol%~30vol%、又はさらに好ましくは1vol%~15vol%の範囲内の量の蒸気の存在下で互いに接触される、E1~E9のいずれかのプロセス。
E12. 担体が、第4族元素を含み、かつ工程(I)において、炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、0.1vol%~50vol%、好ましくは0.5vol%~30vol%、又はさらに好ましくは1vol%~15vol%の範囲内の量の蒸気の存在下で互いに接触される、E1~E9のいずれかのプロセス。
E13. 担体が第12族元素を含み、かつ工程(I)において、炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、0.1vol%~50vol%、好ましくは0.5vol%~30vol%、又はさらに好ましくは1vol%~15vol%の範囲内の量の蒸気の存在下で互いに接触される、E1~E9のいずれかのプロセス。
E14. 担体が、21、39、又は57~71の原子数を有する元素を含み、かつ工程(I)において、炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて、0.1vol%~50vol%、好ましくは0.5vol%~30vol%、又はさらに好ましくは1vol%~15vol%の範囲内の量の蒸気の存在下で互いに接触される、E1~E9のいずれかのプロセス。
E15. 炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、いずれもの蒸気の非存在下又は炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16アルキル芳香族炭化水素の総体積に基づいて0.1vol%未満の蒸気の存在下で互いに接触される、E1~E9のいずれかのプロセス。
【0097】
E16. コークス化触媒粒子が、担体上に配置された第8~10族元素の集塊を含み、担体上に配置された凝集した第8~10族元素の少なくとも一部が、工程(III)の燃焼中に担体周りに再分散される、E1~E15のいずれかのプロセス。
E17. 炭化水素含有供給原料がプロパンを含み、アップグレードされた炭化水素がプロピレンを含み、かつ工程(I)の炭化水素含有供給原料と触媒粒子の接触が、≧75%、≧80%、≧85%、≧90%、又は≧95%のプロピレン選択性で少なくとも52%、又は少なくとも62%、又は少なくとも72%のプロピレン収率を有する、E1~E16のいずれかのプロセス。
E18. 炭化水素含有供給原料が、炭化水素含有供給原料の総体積に基づいて≧70vol%のプロパンを含み、炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、少なくとも40kPa絶対圧のプロパン分圧下で接触され、かつ工程(I)の炭化水素含有供給原料と触媒粒子の接触が、≧75%、≧80%、≧85%、≧90%、又は≧95%のプロピレン選択性で少なくとも52%、又は少なくとも62%、又は少なくとも72%のプロピレン収率を有する、E1~E17のいずれかのプロセス。
E19. 工程(I)~(V)が少なくとも15サイクルにわたって繰り返され、触媒粒子が、炭化水素含有供給原料と最初に接触したときに第1の収率をもたらし、かつ再生触媒粒子が、15回目のサイクルの完了時に、第1の収率の少なくとも98%である第2の収率をもたらす、E1又はE9~E18のいずれかのプロセス。
E20. 工程(I)~(V)が、少なくとも15サイクルにわたって繰り返され、触媒粒子が、炭化水素含有供給原料と最初に接触したときに第1の収率をもたらし、かつ再生還元触媒粒子が、15回目のサイクルの完了時に、第1の収率の少なくとも98%である第2の収率をもたらす、E2~E18のいずれかのプロセス。
【0098】
E21. 炭化水素含有供給原料が、アルゴン、ネオン、ヘリウム、分子窒素、メタン、又はその混合物を含む不活性ガスをさらに含む、E1~E20のいずれかのプロセス。
E22. 工程(I)において、炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、600℃~900℃、好ましくは600℃~800℃、さらに好ましくは650℃~750℃、又はさらに好ましくは670℃~720℃の範囲内の温度で接触される、E1~E21のいずれかのプロセス。
E23. 工程(I)において、炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、20kPa絶対圧~1,000kPa絶対圧、好ましくは50kPa絶対圧~500kPa絶対圧、又はさらに好ましくは70kPa絶対圧~300kPa絶対圧の範囲内の炭化水素分圧下で接触される、E1~E22のいずれかのプロセス。
E24. 工程(III)において、コークス化触媒粒子と酸化剤が、600℃~1,100℃、好ましくは650℃~1,000℃、さらに好ましくは700℃~900℃、又はさらに好ましくは750℃~850℃の範囲内の温度で接触される、E1~E23のいずれかのプロセス。
E25. 工程(III)において、コークス化触媒粒子と酸化剤が、20kPa絶対圧~1,000kPa絶対圧、好ましくは50kPa絶対圧~500kPa絶対圧、又はさらに好ましくは100kPa絶対圧~300kPa絶対圧の範囲内の酸化剤分圧下で接触される、E1~E24のいずれかのプロセス。
【0099】
E26. 触媒粒子が、さらにプロモーターを含む、E1~E25のいずれかのプロセス。
E27. プロモーターが、Sn、Ga、Zn、Ge、In、Re、Ag、Au、Cu、その組み合わせ、又はその混合物を含む、E26のプロセス。
E28. プロモーターが、担体上に配置される、E26又はE27のプロセス。
E29. プロモーターが第8~10族元素と関連する、E26~E28のいずれかのプロセス。
E30. プロモーターと第8~10族元素が、担体上に配置される第8~10族元素-プロモータークラスターを形成する、E26~E29のいずれかのプロセス。
E31. 触媒粒子が、担体の総質量に基づいて10wt%までのプロモーターを含む、E26~E30のいずれかのプロセス。
E32. 触媒粒子が、担体上に配置されたアルカリ金属元素をさらに含む、E1~E31のいずれかのプロセス。
E33. アルカリ金属元素が、Li、Na、K、Rb、Cs、その組み合わせ、又はその混合物を含む、E32のプロセス。
E34. 触媒粒子が、担体の総質量に基づいて5wt%までのアルカリ金属元素を含む、E32又はE33のプロセス。
【0100】
E35. m、n、p、及びqが、それぞれ1、15、若しくは30に等しいか、又はm=1、n=15、p=15、及びq=1である、E1~E34のいずれかのプロセス。
E36. あらゆる第2族元素、あらゆる第4族元素、あらゆる第12族元素、及び21、39、又は57~71の原子数を有するあらゆる元素の合計量と第8~10族元素のモル比が、少なくとも0.18、少なくとも0.19、少なくとも0.24、又は少なくとも0.29である、E1~E35のいずれかのプロセス。
E37. 担体が、第5族、第6族、第7族、第11族、第13族、第14族、第15族、及び第16族から選択される少なくとも1種の金属元素又は半金属元素を含む少なくとも1種の化合物をさらに含む、E1~E36のいずれかのプロセス。
E38. 担体に存在するあらゆる第2族元素の少なくとも一部、あらゆる第4族元素の少なくとも一部、あらゆる第12族元素の少なくとも一部、及び21、39、又は57~71の原子数を有するあらゆる元素の少なくとも一部が、酸化物、リン酸塩、ハロゲン化物、ハラート、硫酸塩、硫化物、ホウ酸塩、窒化物、炭化物、アルミン酸塩、アルミノケイ酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、メタリン酸塩、セレン化物、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、亜クロム酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、又はケイ化物である、E1~E37のいずれか1つのプロセス。
E39. 担体が、下記:MguZn1-uO(uは正数である);ZnvAl2O3+v(vは正数である);MgwAl2O3+w(wは正数である);CaxAl2O3+x(xは正数である);SryAl2O3+y(yは正数である);BazAl2O3+z(zは正数である);BeO;MgO;CaO;BaO;SrO;BeCO3;MgCO3;CaCO3;SrCO3、BaCO3;ZrO2;ZrC;ZrN;ZrSiO4;CaZrO3;Ca7ZrAl6O18;TiO2;TiC;TiN;TiSiO4;CaTiO3;Ca7Al6O18;HfO2;HfC;HfN;HfSiO4;HfZrO3;Ca7HfAl6O18;ZnO;Zn3(PO4)2;Zn(ClO3)2;ZnSO4;B2O6Zn3;Zn3N2;ZnCO3;CeO2;Y2O3;La2O3;Sc2O3;Pr6O11;CePO4;CeZrO4;CeAlO3;BaCeO3;CePO4;イットリア安定化ZrO2;その組み合わせ、及びその混合物の1つ以上を含む、E1~E38のいずれかのプロセス。
E40. 担体が、さらに下記:B2O3;Al2O3;SiO2;SiC;Si3N4;アルミノケイ酸塩;VO;V2O3;VO2;V2O5;Ga2O3;In2O3;Mn2O3;Mn3O4;MnO;ゼオライト;その組み合わせ;及びその混合物の1つ以上を含む、E1~E39のいずれかのプロセス。
E41. 担体が、その上に配置された第8~10族元素を含む複数の一次粒子の形態である、E1~E40のいずれかのプロセス。
【0101】
E42. 触媒粒子が、透過型電子顕微鏡で測定して、0.2nm~500μm、好ましくは0.5nm~300μm、さらに好ましくは1nm~200μm、さらに好ましくは5nm~100μm、もっとさらに好ましくは2nm~100nmの範囲内の平均断面長を有する一次粒子を含む、E1~E41のいずれかのプロセス。
E43. 第8~10族元素が、工程(I)の脱水素、脱水素芳香族化、及び脱水素環化の1つ以上を引き起こす触媒粒子の活性成分になるように担体上に第8~10族元素が配置される、E1~E42のいずれかのプロセス。
E44. 担体が、0.1m2/g~1,500m2/g、好ましくは1m2/g~1,000m2/g、さらに好ましくは10m2/g~800m2/g、又はさらに好ましくは100m2/g~500m2/gの範囲内の表面積を有する、E1~E43のいずれかのプロセス。
E45. 工程(I)において、炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、0.1秒~1.5分、好ましくは0.5秒~1分、又はさらに好ましくは1秒~30秒の範囲内の時間にわたって接触される、E1~E44のいずれかのプロセス。
E46. 触媒粒子の、あらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16芳香族炭化水素の合計量に対する質量比が、1~150、好ましくは5~100、又はさらに好ましくは10~80の範囲内である、E1~E45のいずれかのプロセス。
E47. 工程(I)において、炭化水素含有供給原料が、炭化水素含有供給原料中のあらゆるC2-C16アルカン及びあらゆるC8-C16芳香族炭化水素の質量に基づいて、0.1時間-1~100時間-1、好ましくは0.2時間-1~64時間-1、又はさらに好ましくは0.4時間-1~32時間-1の範囲内の質量毎時空間速度で触媒と接触する、E1~E46のいずれかのプロセス。
【0102】
E48. 炭化水素含有供給原料が、エタン、プロパン、イソブタン、ブタン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、メチルエチルベンゼン、又はその混合物を含む、E1~E47のいずれかのプロセス。
E49. 工程(III)において、燃焼ゾーン内で補助燃料を酸化剤と接触させて補助燃料の少なくとも一部の燃焼を引き起こして、熱及び追加量の燃焼ガスを生成することをさらに含む、E1~E48のいずれかのプロセス。
E50. 補助燃料が、分子水素、メタン、エタン、プロパン、又はその混合物を含む、E49のプロセス。
E51. 触媒粒子が、炭化水素含有供給原料との接触時に高密度の乱流流動床の形態である、E1~E50のいずれかのプロセス。
E52. 変換ゾーンが、ライザー反応器内に配置される、E1~E50のいずれかのプロセス。
E53. 変換ゾーンが、ダウナー反応器内に配置される、E1~E50のいずれかのプロセス。
E54. 炭化水素含有供給原料と触媒粒子が、互いに接触されるとき、並流、向流、又はその組み合わせである、E1~E53のいずれかのプロセス。
【0103】
E55. コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の第1の部分が、工程(II)において燃料ゾーン内で酸化剤と接触され、かつコークス化触媒粒子に富む第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の第2の部分が、工程(V)で追加量の炭化水素含有供給原料と接触される、E1~E54のいずれかのプロセス。
E56. コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の第1の部分が、工程(II)において燃焼ゾーン内で酸化剤と接触され、かつコークス化触媒粒子に富む第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の第2の部分が、工程(IVa)で還元性ガスと接触される、E2~E54のいずれかのプロセス。
E57. コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の第1の部分が、工程(II)において燃焼ゾーン内で酸化剤と接触され、コークス化触媒粒子に富む第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の第2の部分が、工程(IVa)で還元性ガスと接触され、かつコークス化触媒粒子に富む第1の粒子流中のコークス化触媒粒子の第3の部分が、工程(V)で追加量の炭化水素含有供給原料と接触される、E2~E54のいずれかのプロセス。
【0104】
E58. さらに:
工程(I)の間に、炭化水素含有供給原料と流動触媒粒子の接触中に変換ゾーンから触媒粒子の一部を除去する工程;
変換ゾーンから除去された触媒粒子の部分を加熱して、加熱触媒粒子を生成する工程;及び
この加熱触媒粒子を変換ゾーンに供給して炭化水素含有供給原料と接触させる工程
を含む、E1~E57のいずれかのプロセス。
E59. 変換ゾーン内で触媒粒子と炭化水素含有供給原料の接触中に触媒粒子に熱を供給する工程をさらに含む、E1~E58のいずれかのプロセス。
E60. 触媒粒子が、0.5g/cm3~3g/cm3、0.7g/cm3~2g/cm3又は0.8g/cm3~1.4g/cm3の範囲内の粒子密度を有する、E1~E59のいずれかのプロセス。
E61. 触媒粒子がGeldart A定義と一致するサイズ及び粒子密度を有する、E1~E60のいずれかのプロセス。
【0105】
種々の用語を上に定義した。請求項に用いられる用語が上に定義されていない限りは、その用語には、少なくとも1つの刊行物又は交付済み特許に反映されたとおりに当業者が当該用語に与えた最も広い定義を与えるべきである。さらに、本願で引用した全ての特許、試験手順、及び他の文書は、参照することにより該開示が本願と矛盾しない程度まで完全に、かつ組み込みが許容される全ての管轄権のために組み込まれる。
前述のものは、本発明の実施形態に関するものであるが、本発明の基本範囲を逸脱することなく本発明の他のさらなる実施形態を考案することができ、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決められる。