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特許7503146浮力誘導伸長流によるCNTフィラメント形成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】浮力誘導伸長流によるCNTフィラメント形成
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/16 20170101AFI20240612BHJP
   D01F 9/127 20060101ALI20240612BHJP
   D01F 9/10 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C01B32/16
D01F9/127
D01F9/10 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022561149
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 US2021025931
(87)【国際公開番号】W WO2021207170
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】63/006,602
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521257466
【氏名又は名称】ナノコンプ テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガイラス,デービッド
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533760(JP,A)
【文献】特表2015-505802(JP,A)
【文献】特表2019-521943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
D01F 9/127、9/133
D01F 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い非交絡ナノチューブフィラメントを製造するための方法であって:
(i)予熱された高密度ガスで少なくとも部分的に満たされた、垂直に配向された反応器の下部に流体混合物を導入することであって、前記垂直配向反応器の下半分が、高密度ガスで実質的に満たされ、かつ流体混合物が、(a)金属触媒前駆体、(b)調整化合物、及び(c)炭素源を含む、導入することと;
(ii)垂直配向反応器を通して流体混合物を上方に推進することと;
(iii)金属触媒前駆体の金属触媒粒子への分解及び炭素源の炭素原子への分解を開始させることと;
(iv)炭素原子を金属触媒粒子上に堆積させて、細長い非交絡ナノチューブフィラメントを形成することと;
(v)細長い非交絡ナノチューブフィラメントを垂直配向反応器の上部から排出することと、
を含む、方法。
【請求項2】
高密度ガスが、アルゴン、六フッ化硫黄(SF)、一酸化炭素、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
垂直配向反応器内の高密度ガスの濃度が、少なくとも10モルパーセントである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属触媒前駆体がフェロセンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
調整化合物が、チオフェン、HS、他の硫黄含有化合物、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物
【請求項6】
流体混合物が、1~5標準リットル/分の体積流量で導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
細長いナノチューブフィラメントを製造するための垂直に配向された上向流浮遊触媒化学蒸着システムであって、(i)下端部、上端部、及び高密度ガスを含む内部空洞を有する垂直配向反応器であって、下半分が高密度ガスで実質的に満たされる垂直配向反応器と、(ii)流体混合物を垂直配向反応器内へと上方に推進するように構成された、垂直配向反応器の下端部に配置されたインジェクタであって、流体混合物が、a)金属触媒前駆体、(b)調整化合物、及び(c)炭素源を含む、インジェクタと、(iii)垂直配向反応器を包囲する炉と、(iv)垂直配向反応器内で生成された細長いナノチューブフィラメントを収集するように構成された、垂直配向反応器の上端部に配置された収集ユニットと、を含む、システム。
【請求項8】
高密度ガスが、アルゴン、六フッ化硫黄(SF)、一酸化炭素、又はそれらの組み合わせを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
垂直配向反応器内の高密度ガスの濃度が、少なくとも10モルパーセントである、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年4月7日に出願された米国仮出願第63/006,602号の利益及び優先権を主張する。
【0002】
連邦政府が後援する研究又は開発に関する声明
本発明は、DOE、Office of ARPA-Eにより与えられたDE-AR0001017の下で政府の支援を受けて為された。政府は、この発明に対して特定の権利を有する。
【0003】
本開示は、一般に、カーボンナノチューブフィラメントに関し、より詳細には、上向流浮遊化学蒸着システムにおいて細長い非交絡(non-entangled)カーボンナノチューブフィラメントを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
個々のカーボンナノチューブ(CNT)は、並外れた特性を有するが、大規模な用途で必要とされるCNTの長距離秩序を開発することは困難である。細長いCNTは、製造されるとすぐに凝集及び絡み合う傾向があり、これは、浮遊触媒化学蒸着(FCCVD)によって製造されるCNTにとって特に問題である。FCCVDプロセスで製造されるCNTを解凝集及び再組織化することができる二次操作の開発に多くの作業が費やされてきた。この作業の例は、液晶ドープを形成するための化学的又は電気化学的に支援された伸張又は溶解、それに続く超酸を用いた繊維紡糸を含む。凝集前にCNTを合成中に整列させることが理想的であるが、実際には困難であることが分かっている。FCCVDプロセスの初期相の間、CNTは、キャリアガス中で形成及び成長し、本質的に流体として挙動する。CNTが成長し、それらの濃度が増加するにつれて、それらはネットワーク化を開始することができ、そこで、機械的パーコレーションが開始して挙動を流体から圧縮性の低密度固体へと変化させる。これは、弾性特性が材料の粘性特性を圧倒し始めるゲル点に類似している。このゲル化が起こると、CNTは無秩序に固着し、このCNTをナノスケールで再組織化することは非常に困難であるので、このランダムな絡み合いは、最終的に最終CNT生成物の特性を制限する。
【0005】
CNTの幾分かの配向は、CNT対CNTの相互作用又は同伴された関連ガスを使用してCNTを流れ方向に再配向させ、緩く絡み合ったネットワークを伸張することによって得ることができる。しかしながら、ゲル化の前にある程度の整列を得ることができれば理想的であろう。これは、キャリアガスのせん断又は伸張流によって達成することが可能であり得るが、このアプローチには実際的な障害が存在する。伸長流を生成する作業は、固定形状反応器内での成長プロセス中における、熱膨張又は気相材料のモルの生成による加速を含む。別のアプローチは、CNT形成工程中に追加のガスを導入して、流れを加速することである。さらなるアプローチは、ガス流がゲル化プロセスの前及びその間に加速される、例えばテーパリングにより、反応容器自体を設計することである。この最後のアプローチは、CNTが反応器表面にくっつく傾向がない場合、単純であろう。テーパリングされた反応器又は空力レンズの配置も可能であるが、それらはファウリング及びCNT生成物欠陥の発生の機会を増加させ得る。本開示は、所望の伸長流を生成し、それによってファウリング問題を排除又は低減して、細長い非交絡CNTを生成する非接触方法を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、上向流FCCVDシステムにおいて細長い非交絡ナノチューブフィラメントを製造するための方法に関する。本方法は、一般に、(i)(a)ナノチューブフィラメントのその後の金属触媒粒子上での成長のために該粒子を生成することができる金属触媒前駆体と、(b)金属触媒前駆体から生成される金属触媒粒子の粒径分布を制御するための調整化合物と、(c)細長い非交絡ナノチューブフィラメントを成長させるために、炭素原子を金属触媒粒子上に堆積させるための炭素源とを含む流体混合物を、予熱された高密度ガスで満たされた、垂直に配向された反応器の下部に導入することと;(ii)反応器を通して流体混合物を上方に推進することと、(iii)金属触媒前駆体の金属触媒粒子への分解及び炭素源の炭素原子への分解を開始させて、炭素原子を金属触媒粒子上に堆積させて、細長い非交絡ナノチューブフィラメントを形成することと、(iv)細長い非交絡ナノチューブフィラメントを垂直配向反応器の上部から排出することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ナノ構造の製造のための水平浮遊触媒化学蒸着システムの概略図を示す;
図2】本開示の態様によるナノ構造の製造のための上向流垂直浮遊触媒化学蒸着システムの概略図である;
図2A図2Aに示したシステムに関連して使用されるインジェクタ装置の概略図である;
図2B】本開示の態様に関連してナノ構造の製造のためのプラズマ発生器を利用する、上向流垂直浮遊触媒化学蒸着システムの概略図を示す;
図2C図2Bのシステムに関連して使用するのに適したプラズマ発生器の概略図を示す;
図3】本開示の上向流垂直浮遊触媒化学蒸着システムの流れ関数の輪郭を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、垂直に配向された反応器を有する上向流浮遊触媒化学蒸着システムにおいて、細長い非交絡ナノチューブフィラメントを製造するための方法を提供する。本方法は、一般に、(i)垂直配向反応器の下部(例えば、底部端部、又は中央部の下方である垂直配向反応器の長さに沿ったいずれかの場所)に流体混合物を導入することであって、垂直配向反応器の下部が予熱された高密度ガスで満たされ、流体混合物が(a)ナノチューブフィラメントのその後の成長のために金属触媒粒子が生成され得る金属触媒前駆体と、(b)金属触媒前駆体から生成される金属触媒粒子の粒径分布を制御するための調整化合物と、(c)細長い非交絡ナノチューブフィラメントを成長させるために金属触媒粒子上に炭素原子を堆積させるための炭素源とを含む、導入することと、(ii)反応器を通して流体混合物を上方に推進することと、(iii)金属触媒前駆体の金属触媒粒子への分解及び炭素源の炭素原子への分解を開始させて、炭素原子を金属触媒粒子上に堆積させて、細長い非交絡ナノチューブフィラメントを形成することと、(iv)細長い非交絡ノチューブフィラメントを垂直配向反応器の上部(例えば、反応器の上端)から排出することと、を含む。
【0009】
以下の用語は、以下の意味を有するものとする:
【0010】
用語「含む」及びその派生語は、本明細書に開示されているか否かにかかわらず、いずれの追加の成分、工程又は手順の存在も除外することを意図するものではない。対照的に、用語「から本質的になる」は、本明細書に現れる場合、操作性に必須ではないものを除いて、いずれの後続の列挙の範囲からも、いずれの他の成分、工程又は手順も除外し、用語「からなる」は、使用される場合、具体的に描写又はリストされないいずれの成分、工程又は手順も除外する。用語「又は」は、特に明記しない限り、リストされた部材を個々に、及びいずれかの組み合わせで指す。
【0011】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つ又は2つ以上(即ち、少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0012】
「一態様において」、「一態様によれば」などの語句は、一般に、その語句に続く特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの局面に含まれ、本開示の2つ以上の局面に含まれる場合があることを意味する。重要なことに、このような語句は、必ずしも同じ局面を指すわけではない。
【0013】
本明細書が、成分又は特徴が含まれ又は特性を有する「場合がある」、「ことができる」、「し得る」、又は「可能性がある」と述べる場合、その特定の成分又は特徴は、含まれ又は特徴を有することを必要とされない。
【0014】
「カーボンナノチューブ」は、本明細書で使用される場合、約1nm~約20nm未満の直径及び1mm~5mmの長さを有する単層、二重及び/又は多層カーボンナノチューブを指すために使用される。
【0015】
「カーボンナノチューブフィラメント」は、本明細書で使用される場合、例えば、0.1~10ミクロンの範囲の直径及び約150mm~約500mmの長さを有する繊維構造を形成するように、実質的に同じ方向に相互接続された多数のカーボンナノチューブを含むステープル繊維を指す。
【0016】
炭素から合成された細長い非交絡ナノチューブフィラメントを本明細書で参照するが、本開示の方法で使用されるナノチューブフィラメントの合成に関連して、他の化合物を使用する場合があることに留意するべきである。例えば、細長い非交絡ナノチューブフィラメントは、例えばホウ素から、類似のシステム内であるが異なる化学前駆体を用いて合成される場合があることが理解される。
【0017】
さらに、本開示は、細長い非交絡ナノチューブフィラメントを生成するために浮遊触媒化学蒸着(「FCCVD」)プロセスを用いる。FCCVDプロセスのための成長温度は、例えば、約400℃~約1400℃の範囲の比較的低い温度であり得るので、カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)又はその両方が成長する場合がある。SWNT及びMWNTの両方が成長する場合があるが、特定の例では、より速い成長速度と、取扱い、安全性及び強度の利点を提供する場合があるロープを形成する傾向とに起因して、SWNTを選択的に成長させることが好ましい場合がある。
【0018】
ここで図1を参照すると、水平対称軸aを有する、本質的に水平なFCCVDシステム10を使用する最先端の現在の実践が示されている。初期FCCVDガスは、反応管12の端部122に位置する入口に水平に導入される。反応管12はハウジング11内で加熱され、典型的には絡み合っている得られたカーボンナノチューブ材料は、端部121に位置する出口から退出し、収集ユニット13内に収集される。典型的な制御装置、安全装置、計装、ポートなどは、簡略化のために図示も説明もされていない。
【0019】
図2は、本開示の一態様を表し、従来の水平システムが回転されて、水平対称軸aに少なくとも実質的に直交する垂直対称軸bを有する上向流化学蒸着システム20を提供し、ここで細長い非交絡カーボンナノチューブフィラメントが得られる場合がある。システム20は、対向する端部211及び212を有するハウジング21(即ち、炉)と、端部211と212との間に延びる通路213とを含む。内部で細長い非交絡カーボンナノチューブフィラメントが生成される場合がある上部及び下部を有する管22(即ち、垂直配向
反応器)は、ハウジング21の通路213内に位置する場合がある。管22は、アルゴン、六フッ化硫黄(SF)、一酸化炭素、又はそれらの混合物などであるがこれらに限定されない、予熱された高密度ガスで少なくとも部分的に満たされている。この高密度ガスは、少なくとも約100℃、又は少なくとも約200℃、又は少なくとも約300℃、又は少なくとも約400℃、又は少なくとも約500℃、又は少なくとも約600℃、又は少なくとも約700℃、又は少なくとも約800℃、又は少なくとも約900℃、又は少なくとも約1000℃、又は100~1000℃、又は200~1000℃、又は300~1000℃、又は400~900℃、又は500~800℃、又は600~800℃の範囲の温度に予熱されており、従って、端部222(又は管22の下端)において進入する流入注入CVDガス(即ち、流体混合物)よりも高密度である。管22内の高密度ガスの濃度は、少なくとも約10モル%、又は少なくとも約20モル%、又は少なくとも約30モル%、又は少なくとも約40モル%、又は少なくとも約50モル%、又は少なくとも約60モル%、又は少なくとも約70モル%、又は少なくとも約80モル%、又は少なくとも約90モル%、又は少なくとも約99.9モル%である場合がある。一態様では、管22の下半分のみが、予熱された高密度ガスで満たされる。別の態様では、管22の半分未満が予熱された高密度ガスで満たされ、予熱された高密度ガスは管22の下半分に局在する。流入流体混合物の注入時に、熱は、管22内の予熱された高密度ガスから伝導/対流によって軽質流入流体混合物原料に、及び管22の壁から放射によって伝達される。同時に、図3に示すように、浮力が流体混合物の流れを伸張し始め、それにより流体混合物が上方に推進され、細長いナノチューブフィラメントが生成される。図3は、流体混合物の垂直上向流の流れ関数の輪郭を示す。この場合、低い注入流量は、潜在的に混合及び熱伝達を促進することができる環状渦を確立する。集中した流れは不安定な場合があるが、そうであっても、そのような流れは、管22の回転を誘導することによって安定化する場合がある。
【0020】
再び図2を参照すると、管22の端部221及び222は、それぞれハウジング21の端部211及び212から延びるように配置される場合がある。ハウジング21は、管22内のカーボンナノチューブの成長に必要な約1000℃~約1500℃の範囲の温度を生成するために、加熱要素又は他の機構(スロット炉など)を含む場合がある。加熱要素又は他の機構は、細長い非交絡カーボンナノチューブフィラメントの合成中に、管22内の温度環境を特定の範囲内に維持しなければならないので、図示されないが、システム20は、管22内の温度環境を監視するために、管22の外側に熱電対を含む場合がある。例えば約1100℃~約1400℃での管22内の温度範囲の維持は、断熱構造223の使用によって最適化される場合がある。断熱構造223は、例えば、ジルコニアセラミック繊維(例えば、ジルコニア安定化窒化ホウ素)から作製される場合がある。他の断熱材料も使用される場合がある。
【0021】
一態様において、炭素源の炭素原子への分解を開始して、炭素原子を金属触媒粒子上に堆積させて細長い非交絡ナノチューブフィラメントを形成する工程は、炭素源を1000℃~1500℃、又はより具体的には1100℃~1400℃の範囲の温度に加熱することを含む。
【0022】
ハウジング21及び管22は、温度の変動及びガス反応性環境に耐えなければならないので、ハウジング21及び管22は、実質的に耐腐食性である強力で実質的にガス不透過性の材料から製造される場合がある。ハウジング21及び管22は、衝撃吸収を高めるために、例えば、Macor(登録商標)機械加工可能ガラスセラミックなどの石英又はセラミック材料から作製される場合がある。もちろん、ハウジング21及び管22がガスに対して不透過性のままであり、それらの非腐食性を維持することができる限り、他の材料も使用される場合がある。また、円筒形状として示されているが、ハウジング21及び管22は、いずれの幾何学的断面も備えてよい。
【0023】
システム20はまた、管22内で生成されたナノチューブフィラメントを収集するために、管22の端部221と流体連通する収集ユニット23を含む場合がある。管22の反対側の端部222において、システム20は、管22と流体連通するインジェクタ装置24(即ち、噴霧器)を含む場合がある。インジェクタ24は、管22内のナノチューブフィラメントの成長に必要な成分の流体混合物をリザーバ25から受容するように設計されている場合がある。インジェクタ24はまた、ナノ構造材料の生成及び成長のために、混合物を管22内に導く前に、混合物を気化又は流動化させる(即ち、小さな液滴を生成する)ように設計されている場合がある。いくつかの態様では、ゲル紡糸において一般的に使用される紡糸口金に類似するデバイスなどのインジェクタアレイ(図示せず)から多数のフィラメントを生成することができる。
【0024】
端部222に進入する流体混合物は、一態様では、とりわけ、(a)ナノチューブフィラメントのその後の金属触媒粒子上での成長のために該粒子を生成することができる金属触媒前駆体、(b)金属触媒前駆体から生成される金属触媒粒子の粒径分布、ひいてはナノチューブフィラメントの直径を制御するための調整化合物、及び(c)細長い非交絡ナノチューブフィラメントを成長させるために金属触媒粒子上に炭素原子を堆積させるための炭素源を含むことができる。
【0025】
金属触媒粒子が生成される場合がある金属触媒前駆体の例は、フェロセン、鉄若しくは鉄合金、ニッケル、コバルト、それらの酸化物、又はそれらの合金(又は他の金属若しくはセラミックとの化合物)を含む。代替的に、金属触媒粒子は、金属酸化物、例えばFe、Fe、又はFeO、コバルト若しくはニッケルの類似の酸化物、又はそれらの組み合わせから作製される場合がある。
【0026】
本発明の液体混合物に関連して使用される調整化合物の例は、チオフェン、HS、他の硫黄含有化合物、又はそれらの組み合わせを含む。
【0027】
炭素質ガスは、(i)処理又は未処理フレアガス、(ii)メタン、エタン、ブタン、及び/若しくはプロパンなどの炭化水素、(iii)天然ガス、並びに/又は(iv)キシレン、トルエン、及びベンゼンなどの他の炭化水素のうちの少なくとも1つを含む場合がある。市販等級の天然ガスは、主に、メタンと、幾分かのエタン、プロパン、及びブタンとを含む。市販等級の天然ガス中のメタンの量は、天然ガスの70重量%~90重量%超の範囲であり得る。
【0028】
本開示の流体混合物に関連して使用される炭素源の例は、処理又は未処理フレアガス、エタノール、ギ酸メチル、プロパノール、酢酸、ヘキサン、メタノール、又はメタノールとエタノールとのブレンドを含むが、これらに限定されない。C、CH、及びCHを含む他の液体炭素源も使用される場合がある。
【0029】
フレアガスは、石油若しくはガス生産現場、製油所、化学プラント、石炭プラント、又は埋立地から得られる場合がある。一態様では、カーボンナノチューブを製造するために使用されるシステムは、石油若しくはガス生産現場、製油所、化学プラント、石炭プラント、又は埋立地の現場にあり、それによりフレアガスを発生源から直接取得し、反応器に導入する前に処理することができる。
【0030】
フレアガスを処理する工程は、フレアガスを1つ以上のプロセスに供して、そこから過剰な硫化水素、二硫化水素、二酸化炭素、及び/又は一酸化炭素を除去することを含む。本明細書で使用される場合、「過剰」は、フレアガスが酸性ガスとみなされ、カーボンナノチューブを製造する能力に有害な影響を及ぼすのに十分な量を意味する。
【0031】
一態様において、流体混合物は、ファン、又は流体混合物若しくは別の不活性ガス(例えば、水素、ヘリウム、窒素、又はいずれかの他の不活性ガス)の、システム20の基部内への及び垂直配向反応器22を通る十分な流れを用いることによって、垂直配向反応器22を通って上方に推進される。特定の一態様では、流体混合物は、垂直配向反応器22を通って上方に流体混合物を推進するのに十分な1~5標準リットル/分(SLPM)の速度で、垂直配向反応器22内に導入される。
【0032】
一態様において、金属触媒前駆体の金属触媒粒子への分解を開始させる工程は、金属触媒前駆体を200℃超、又は300℃超、又は400℃超、又は500℃超の温度に加熱することを含む。特定の一態様では、金属触媒前駆体の金属触媒粒子への分解を開始させる工程は、金属触媒前駆体を200℃~約300℃の範囲の温度に加熱することを含む。
【0033】
いくつかの態様では、カーボンナノチューブフィラメントは、約25:1~5000:1、又は25:1~4000:1、又は25:1~3000:1、又は25:1~2000:1、又は25:1~1000:1、又は25:1~500:1、又は30:1~500:1、又は50:1~250:1の範囲のアスペクト比を有することができる。別の態様では、カーボンナノチューブフィラメントは、化学的(例えば、酸処理)及び/又は伸張などの有意な後処理工程を必要とすることなく、平行関係に配置することができる。
【0034】
ここで図2Aを参照すると、インジェクタ24の詳細な図が示されている。インジェクタ24は、経路242を画定する実質的に管状のチャンバ241を含み、該経路242に沿って気化流体混合物が生成され、反応管22内に導かれる場合がある。混合物を気化又は流動化させるために、インジェクタ24は、ベンチュリ効果を付与して、リザーバ25から導入される流体混合物から小さな液滴を生成するように設計された噴霧管26を含む場合がある。流体混合物の気化又は流動化は、流体が噴霧管26の先端261を通って退出するときに実質的に起こる場合があることを認識するべきである。生成される液滴は、サイズがナノスケールからマイクロスケールまでの範囲である場合がある。気化された流体混合物を噴霧管26に沿って反応管22内に導くために、H、He又はいずれかの他の不活性ガスなどの、ある体積のガスを使用して、気化流体を反応管22に向かって押すか又は推進する場合がある。
【0035】
実質的に管状として示されているが、インジェクタ24は、インジェクタが噴霧管26を収容することができ、気化流体混合物がそれに沿って反応管22内に導かれることができる経路を提供する限り、いずれの幾何学的設計も備えてよいことを認識するべきである。
【0036】
加えて、インジェクタ24は、流体混合物の一部として供給するのではなく、インジェクタ24への流体混合物の個々の成分の導入を可能にするように設計される場合があることに留意するべきである。そのような態様では、各成分は、管26と類似の噴霧管を通して個別に気化され、インジェクタ24内に導入される場合があり、そこでこれらは混合され、続いて、上述のものと類似の方法でインジェクタ24に沿って導かれる場合がある。
【0037】
インジェクタ24は反応管22及び炉21の一部分内に位置するので、管22及び炉21内で発生する熱は、インジェクタ24内の温度環境に悪影響を及ぼす場合がある。反応管22及び炉21内の熱からインジェクタ24を遮蔽するために、インジェクタ24の周りに断熱パッケージ27を設ける場合がある。特に、断熱パッケージ27は、インジェクタ24の長さに沿って温度環境を維持するように作用する場合がある。
【0038】
断熱パッケージ27の存在により、インジェクタ24内の温度環境は、カーボンナノ構
造材料の成長に必要な様々な反応に影響を及ぼし得る範囲まで下げられる場合がある。そのために、インジェクタ24は、金属触媒前駆体からの金属触媒粒子の形成を可能にするのに十分な温度範囲を提供するために、噴霧管26の下流に位置する加熱ゾーンAも含む場合がある。加熱ゾーンAは、噴霧管26の先端261の下流に位置する第1のヒータ28を含む場合がある。ヒータ28は、例えばTp1において、金属触媒前駆体をその構成原子に分解するのに必要な温度範囲に維持するように設けられる場合があり、その原子はその後、金属触媒粒子にクラスター化し、続いてその上でナノ構造が成長する場合がある。Tp1の温度範囲を金属触媒前駆体が分解するのに必要なレベルに維持するために、一態様では、ヒータ28はTp1のわずかに下流に位置する場合がある。フェロセンが前駆体として使用される態様では、実質的にナノスケールサイズのその構成原子(即ち、鉄粒子)は、Tp1の温度が約200℃~約300℃の範囲に維持され得るときに生成される場合がある。
【0039】
加熱ゾーンAは、第1のヒータ28の下流かつ炉21内に配置された第2のヒータ29をさらに含む場合がある。ヒータ29は、例えば温度Tp2において、調整化合物をその構成原子に分解するために必要な温度範囲を維持するように設けられる場合がある。これらの原子は、金属触媒粒子のクラスターの存在下で、クラスターと相互作用して、金属触媒粒子の粒径分布、ひいては生成されるナノ構造の直径を制御することができる。チオフェンが調整化合物として使用される態様では、チオフェンの分解時に硫黄が放出されて、金属触媒粒子のクラスターと相互作用する場合がある。ヒータ29は、一態様では、約700℃~約950℃のTp2の温度範囲を維持し、そのような範囲をヒータ29のわずかに下流の位置で維持するように設計される場合がある。
【0040】
一態様によれば、Tp2は、Tp1から所望の距離に位置する場合がある。様々なパラメーターが関与し得るため、Tp1からTp2までの距離は、金属触媒前駆体の分解が起こるTp1からTp2までの流体混合物の流れが、金属触媒微粒子の粒径分布を最適化するために、調整化合物の分解の量を最適化できるような距離であるべきである。
【0041】
第1のヒータ28及び第2のヒータ29によって生成されるインジェクタ24内の特定の温度ゾーンに加えて、噴霧管26の先端261における温度も、噴霧管26の先端261を通って退出するときの気化流体混合物の凝縮又は流体混合物の不均一な流れのいずれかを回避するために、インジェクタ24内の特定の範囲内に維持される必要がある場合があることを認識するべきである。一態様では、先端261における温度は、約100℃~約250℃に維持される必要がある場合がある。例えば、温度が示された範囲を下回る場合、インジェクタ26の壁面に沿って流体混合物の凝縮が起こる場合がある。その結果、インジェクタ26から反応管22内に導かれる流体混合物は、リザーバ25から導入される混合物のものと実質的に異なる場合がある。例えば、温度が示された範囲を上回る場合、流体混合物の沸騰が先端261で起こり、その結果、スパッタリング及びインジェクタ24内への流体の不均一な流れがもたらされる場合がある。
【0042】
噴霧管26の先端261の凝縮を最小限にすること、又は金属触媒前駆体の分解を可能にするためにTp1で必要な温度を維持すること、又は調整化合物の分解を可能にするためにTp2で必要な温度を維持にすることのいずれかのために、インジェクタ24はその長さに沿って温度勾配を維持する必要がある場合があるので、断熱材27は、反応管22及び炉21からの熱を遮蔽することに加えて、それぞれの重要な位置でインジェクタ24に沿って所望の温度勾配を維持するように作用することができる。
【0043】
一態様において、断熱パッケージ27は、石英若しくは同様の材料から、又はジルコニアセラミック繊維(例えば、ジルコニア安定化窒化ホウ素)などの多孔質セラミック材料から作製される場合がある。もちろん、他の断熱材料も使用される場合がある。
【0044】
引き続き図2Aを参照すると、システム20は、少なくとも1つの入口291を含む場合があり、そこを通してキャリアガスが反応管22内に導入される場合がある。管22内へのキャリアガスの導入は、流体混合物がインジェクタ24から退出した後に管22に沿って移動することを補助する場合がある。加えて、流体混合物がインジェクタ24を退出するときに流体混合物に関連する乱流又は渦流を最小限にすることが望ましい場合があるので、キャリアガスは、反応管22に沿って、かつインジェクタ24の外面に沿って流れることが可能な場合がある。一態様では、キャリアガスは、流体混合物が実質的に層状の流れを維持することを可能にするために、流体混合物がインジェクタ24を退出するときに流体混合物の速度と実質的に同様の速度で流れることが可能である場合がある。実質的に層状の流れを維持することによって、生成されるナノチューブフィラメントの成長及び強度が最適化される場合がある。一態様では、キャリアガスは、H、He又はいずれかの他の不活性ガスである場合がある。
【0045】
流体混合物がインジェクタ24を退出するときの乱流又は渦流をさらに最小限にするために、断熱パッケージ27は、インジェクタ24の先端の周りに実質的に先細の設計を備える場合がある。代替的に、又は追加的に、流体混合物がインジェクタの先端を退出するときに、インジェクタ24の中心から実質的に径方向に離れるように流体混合物の流れを拡張するために、インジェクタ24の先端の周りに延長部(図示せず)を配置する場合がある。そのような延長部の存在は、流体混合物の流速を遅くし、流れパターンが実質的に層状のままであることを可能にすることができる。
【0046】
インジェクタ24は、流体混合物がインジェクタ24に沿って移動するときに、Tp1で金属触媒前駆体を分解し、Tp2で調整化合物を分解するように設計される場合があることを認識するべきである。しかしながら、ナノ構造成長に必要な炭素源は、流体混合物がインジェクタ24に沿って移動するときに分解されず、実質的に化学的に不変のままである場合がある。
【0047】
しかしながら、インジェクタ24の先端は、図2図2Aに見られるように、炉21内に突出しているため、炉21(ひいては反応管22)内の実質的により高い温度範囲に対するその近接さは、炭素源が、その後のナノチューブフィラメント成長のために、インジェクタ24の先端を通って退出した後、炭素源を分解するのに必要な温度範囲に炭素源を直ちに曝露し得る。一態様では、インジェクタの先端と炉21との間の界面242における温度範囲は、約1000℃~約1250℃である場合がある。
【0048】
図2B及び図2Cを参照すると、インジェクタ24の先端の周りにプラズマ発生器230が配置される場合がある。この方法で、流体混合物は、反応管22に進入する前に、プラズマ発生器230のプラズマ火炎232を通過する場合がある。一態様では、プラズマ発生器230とインジェクタ24との間の接合部の周り、及びプラズマ発生器230と反応管22との間に、気密シール又は液密シールを設けて、流体混合物中のガス及び粒子がシステム20から逃れることを防止する場合がある。一態様では、プラズマ発生器230は、インジェクタ24と軸方向又は直線的に位置合わせされて、インジェクタ24からプラズマ発生器230を通る流体混合物のための効率的な流路を提供する場合がある。一態様では、インジェクタ24とのプラズマ発生器230の位置合わせは、流体混合物がプラズマ発生器230の実質的に中央を通過することを可能にするようなものである。いくつかの態様では、これは、プラズマ火炎230の外側領域よりも均一な温度プロファイルを有する場合がある、プラズマ火炎232の中央領域を通過する流体混合物をもたらす場合がある。プラズマ発生器230はまた、反応管22と軸方向又は直線的に位置合わせされる場合がある。
【0049】
一態様において、プラズマ発生器230は、プラズマ火炎232の形態の集中エネルギーを提供して、流体混合物の温度をインジェクタ24内の温度範囲よりも高い温度に上昇させる場合がある。一態様では、プラズマ発生器230は、ナノ構造成長の活性化のために、炭素源をその構成原子に分解するのに十分なレベルまで、流体混合物の温度を上昇させることができる。一態様では、プラズマ発生器230は、約1200℃~約1700℃で動作する場合がある。プラズマ火炎232の温度はインジェクタ24内の温度よりも実質的に高いので、プラズマ火炎232によって生成される熱は、インジェクタ24内の温度環境に悪影響を及ぼす場合がある。そのために、プラズマ発生器は、プラズマ火炎232が生成されるプラズマ発生器230の領域とインジェクタ24との間に位置する熱シールド260を備えて、インジェクタ24の長さに沿った温度環境を保つ場合がある。一態様では、熱シールド260は、ジルコニアセラミック繊維(例えば、ジルコニア安定化窒化ホウ素)などの多孔質セラミック材料から作製される場合がある。もちろん、他の断熱材料も使用される場合がある。
【0050】
プラズマ発生器230は、流体混合物に集中エネルギーを提供することによって炭素源のより迅速な分解を開始させる場合があるので、一態様では、より短い反応管22、炉21、又はその両方が使用され、依然として十分な長さのナノチューブを生成する場合がある。もちろん、所望の程度まで、反応管22、炉21、又はその両方は、プラズマ発生器を有さないシステムにおけるものと同様の、又はより長い長さを備える場合がある。一態様では、プロセスにおいてプラズマ発生器230を利用することにより、より長いカーボンナノチューブの生成が可能となる場合がある。
【0051】
いくつかの態様では、インジェクタ24及びプラズマ発生器230は、反応管22内の最小限の熱で、又は追加の熱なしで利用される場合があることにも留意するべきである。システム20において複数のプラズマ発生器が利用されて、流体混合物の移動距離にわたって所望の温度勾配を提供する場合があることにも留意するべきである。
【0052】
図2Cは、プラズマ発生器230の一態様を示す。一態様において、プラズマ発生器230は、直流(DC)発電機である場合がある。プラズマ発生器230は、アノード252及びカソード254を含む場合があり、これらは、電極252、254から熱を移動させるためのヒートシンクとして作用する場合がある水又は別の冷却流体、又は別の材料によって冷却することができる。一態様では、電極252、254は、典型的には、銅又は銀で作製されるような高拡散率金属電極である場合がある。プラズマガスは、アノード252及びカソード254の周りを流れる場合があり、アノード252とカソード254との間で開始される電気アーク256によってイオン化されて、プラズマ火炎を生成する場合がある。適切なプラズマガスは、反応性又は非反応性のいずれであってもよく、アルゴン酸素、窒素、ヘリウム、水素又は別のガスを含む場合があるが、これらに限定されない。一態様では、プラズマ発生器230は、アーク256を回転させるための磁場を生成する1つ以上のヘルムホルツコイル258又は別のデバイスを含む場合がある。そのような態様では、アノード252及びカソード254は、アーク256の回転を促進するために環状形状を備える場合がある。図2Cは、プラズマ発生器の適切な一態様を示すが、プラズマ発生器の他の設計及びタイプ(即ち、高周波、交流及び他の放電プラズマ発生器)が実装される場合がある。
【0053】
一態様において、ヘルムホルツコイル258を使用して、反応管内のプラズマ発生器230の下流のナノチューブのインサイチュ整列のための電磁場又は静電場を生成することができる。追加的又は代替的に、プラズマ発生器230によって生成される電磁場は、カーボンナノチューブ上にトルクを生成することによってカーボンナノチューブを反応管22の軸に向かってそらせ、カーボンナノチューブをそのような軸に向かって詰め込むように作用することができる。一態様では、プラズマ発生器230は、カーボンナノチューブ
の雲が反応管22を通って進むにつれて、カーボンナノチューブの雲をより小さい径方向体積に押し込む又は集束させるようにも設計することができる。一態様では、粒子が静電力に応答できるように、カーボンナノチューブが成長する粒子を、粒子帯電器によって帯電させることができる。
【0054】
2つ以上のプラズマ発生器230が使用される程度まで、プラズマ発生器の電界強度及び位置を最適化してカーボンナノチューブを整列させることができる。追加的又は代替的に、発電機は、互いに直線的に位置合わせされる場合があり、連続する各下流プラズマ発生器は、より強い静電場を生成するように構成される場合があり、それにより、流れているカーボンナノチューブの雲をより小さい径方向体積に向かって強制又は凝縮させる一方で、カーボンナノチューブを反応管22と実質的に軸方向に整列させて移動させる。いくつかの態様では、連続するプラズマ発生器を使用して、流れの加速又は減速を制御することもでき、ナノチューブがフィラメント状の形状に向かって径方向に凝縮することを可能にする。カーボンナノチューブの流れの凝縮に向かったそのようなアプローチは、カーボンナノチューブを互いにより近接させて、隣接するナノチューブ間の接触を強化することができる。隣接するカーボンナノチューブ間の接触は、ロンドン分散力又はファンデルワールス力などのカーボンナノチューブ間の非共有相互作用を介してさらに強化することができる。
【0055】
図2Aに戻ると、動作中、システム20の噴霧管26と主炉21との間の領域において、いくつかのプロセスが起こる場合がある。例えば、最初に、金属触媒前駆体、調整化合物、及び炭素源の流体混合物が、噴霧管26によってリザーバ25からインジェクタ24内に導入される場合がある。噴霧管26に沿って流体混合物を導くことを補助するために、H又はHeなどの不活性ガスが使用される場合がある。流体混合物が噴霧管26に沿って移動し、噴霧管26から退出するとき、管26はベンチュリ効果を付与して流体混合物を気化させる(即ち、流体混合物から液滴を生成する)ことができる。流体混合物が噴霧管26を退出するときの凝縮又は沸騰の発生を最小限にするために、インジェクタ24内のそのような領域を、約100℃~約250℃の範囲の温度レベルに維持する場合がある。
【0056】
一態様において、成長条件を最適化し、また生成されるカーボンナノチューブから作製されるカーボンナノチューブ材料の強度を高めるために、炭素源のための添加剤を流体混合物に含める場合がある。添加剤の例は、C60、C70、C72、C84、及びC100を含むが、これらに限定されない。
【0057】
気化した流体混合物は、次いで、インジェクタ24に沿って第1のヒータ28に向かって進む場合があり、ここで、温度はTp1において約200℃~約300℃の範囲のレベル維持される場合があり、流体混合物内の金属触媒前駆体は分解され、その構成原子を放出する場合がある。一態様では、金属触媒前駆体の分解温度は、キャリアガス(例えば、H又はHe)に依存することができ、また他の種の存在に依存する場合がある。構成原子は、続いて、特徴的なサイズ分布の金属触媒粒子にクラスター化する場合がある。金属触媒粒子のこのサイズ分布は、一般に、インジェクタ24を通って炉21内に移動する間に発生することができる。
【0058】
次に、流体混合物は、インジェクタ24に沿って第2のヒータ29に向かってさらに下流に進む場合がある。第2のヒータ29は、一態様では、Tp2の温度を約700℃~約950℃の範囲のレベルに維持する場合があり、ここで、調整化合物はその構成原子に分解する場合がある。次いで、調整化合物の構成原子は、金属触媒粒子のクラスターと反応して、金属触媒粒子のクラスターの粒径分布を達成する場合がある。特に、調整化合物の構成原子は、金属触媒粒子の成長を停止し、かつ/又は蒸発を阻害するように作用するこ
とができる。一態様では、調整化合物の構成原子は、インジェクタ24内のHと共に金属触媒粒子のクラスターと相互作用して、金属触媒粒子の粒径分布に影響を及ぼす場合がある。
【0059】
流体混合物内の炭素源は、流体混合物がインジェクタ24の全長に沿って移動するときに、インジェクタ24内で化学的に不変のままであるか、又はさもなければ分解されない場合があることを認識するべきである。
【0060】
調整された金属触媒粒子は、第2のヒータ29を越えて移動すると、その後、インジェクタ24から炉21内に出て、予熱された高密度ガスで満たされた反応管22の主要部分に進入する場合がある。インジェクタ24を退出した後、調整された金属触媒粒子は、炭素源と共に、H又はHeなどのキャリアガスの存在下で実質的に層状の流れを維持する場合がある。キャリアガスの存在下で、調整された金属触媒粒子は、ある体積のキャリアガスよって希釈される場合がある。
【0061】
加えて、反応管22内の温度範囲が炭素源をその構成炭素原子に分解するのに十分なレベルに維持される場合がある、反応管22の主要部分に進入すると、炭素原子の存在は、ナノチューブフィラメント成長を活性化し得る。一態様では、温度範囲は、約1000℃~約1250℃である場合がある。一般に、成長は、炭素原子がそれ自体を金属触媒粒子上に実質的に連続的に付着させて、カーボンナノチューブフィラメントなどのナノチューブフィラメントを形成するときに起こる。
【0062】
一態様において、インジェクタ24からの流体混合物は、反応管22に進入する前にプラズマ発生器230を通過する場合がある。
【0063】
上述したように、反応管22の主要部分に進入した後、熱が伝導/対流によって高密度ガスから軽質流体混合物に伝達され、放射によって反応管22の壁から伝達される。同時に、浮力が流体混合物の流れを伸張し始め、それにより細長い非交絡ナノチューブフィラメントが生成される。加えて、反応管22の主要部分内の流体混合物の流れは、最小限のナノチューブフィラメントが反応管22の壁に接触するか、又はナノチューブフィラメントは反応管22の壁に実質的に接触しないようなものである。
【0064】
ナノチューブフィラメントの成長は、金属触媒粒子が不活性になったとき、又は金属触媒粒子付近の構成炭素原子の濃度が比較的低い値に低下したとき、又は混合物が、温度範囲が成長のために十分なレベルに維持される反応管22内の領域を越えて移動するにつれて温度が低下したときに終了する場合がある。
【0065】
別の態様によれば、細長いナノチューブフィラメントを製造するための垂直配向上向流FCCVDシステムが提供され、該システムは、(i)下端部、上端部、及び高密度ガスを保持するように構成された内部空洞を有する反応器と、(ii)流体混合物を反応器内に推進するように構成された、反応器の下端部に配置されたインジェクタであって、流体混合物が、a)ナノチューブフィラメントのその後の金属触媒粒子上での成長のために該粒子を生成することができる金属触媒前駆体と、(b)金属触媒前駆体から生成される金属触媒粒子の粒径分布を制御するための調整化合物と、(c)細長い非交絡ナノチューブフィラメントを成長させるために、金属触媒粒子上に炭素原子を堆積させるための炭素源と、を含む、インジェクタと、(iii)金属触媒前駆体から金属触媒粒子及び炭素源から炭素原子を生成するのに十分な温度まで反応器を加熱するように構成された、反応器を包囲する炉と、(iv)反応器内で生成され細長いナノチューブフィラメントを収集するように構成された、反応器の上端部に配置された収集ユニットと、を含む。
【0066】
本発明の様々な態様の作製及び使用を上記に詳細に記載したが、本発明は、非常に様々な特定の状況に具現化できる、多くの適用可能な発明の概念を提供することを認識するべきである。本明細書に論じた特定の態様は、本発明の作製及び使用の特定の方法の単なる例示であり、本発明の範囲を定めるものではない。
図1
図2
図2A
図2B
図2C
図3