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特許7503157通信装置、通信装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】通信装置、通信装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/121 20230101AFI20240612BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20240612BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20240612BHJP
   H04W 72/1268 20230101ALI20240612BHJP
   H04W 28/18 20090101ALI20240612BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240612BHJP
【FI】
H04W72/121
H04W72/0453
H04W72/0446
H04W72/1268
H04W28/18 110
H04W84/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023000696
(22)【出願日】2023-01-05
(62)【分割の表示】P 2018203251の分割
【原出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2023026634
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪膝 裕彦
【審査官】▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/178417(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/124725(WO,A1)
【文献】特表2018-521533(JP,A)
【文献】特表2018-519742(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084034(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/047610(WO,A1)
【文献】Robert Stacey,Spec Framework, IEEE 802.11-15/0132r17 ,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/15/11-15-0132-17-00ax-spec-framework.docx>,2016年05月25日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式を用いてIEEE802.11シリーズ規格に準拠した通信を行う通信装置であって、
周波数チャネルを分割した複数のリソースユニット(resource unit)を複数の他の通信装置に割り当てる割り当て手段と、
前記割り当て手段によるリソースユニットの割り当て情報を含むUser Infoフィールドを有するトリガーフレームを送信する送信手段と、
前記複数の他の通信装置のそれぞれから、前記複数の他の通信装置それぞれの送信予定のデータ量を取得する取得手段と、
前記複数の他の通信装置それぞれに適用すべき符号化変調方式を決定する決定手段と、
を有し、
前記割り当て手段は、前記取得手段により取得された前記データ量と、前記決定手段により決定された前記符号化変調方式と、に基づいて前記複数の他の通信装置に含まれる第一通信装置に複数のリソースユニットを割り当てることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記User Infoフィールドは他の通信装置の識別情報であるAID(Association Identifier)を含む第一フィールドの後に前記割り当て手段によるリソースユニットの割り当て情報を含む第二フィールドを有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記トリガーフレームはMCS(Modulation and Coding Scheme)に関する情報を含む第三フィールドを有することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記トリガーフレームは、前記複数の他の通信装置に共通のフィールドであるCommon Infoフィールドを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記Common Infoフィールドには前記複数の他の通信装置に共通の通信時間を示すLengthフィールドが含まれることを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記複数の他の通信装置のうち送信データ量がより多い通信装置に対してより多くのリソースユニットが割り当てられることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信装置は、撮像処理を行う撮像手段を備えるカメラ、または、印刷処理を行う印刷手段を備えるプリンタであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記User Infoフィールドは、前記複数の他の通信装置それぞれに個別のフィールドであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記周波数チャネルは20MHz幅であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項10】
OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式を用いてIEEE802.11シリーズ規格に準拠した通信を行う通信装置が実行する制御方法であって、
周波数チャネルを分割した複数のリソースユニット(resource unit)を複数の他の通信装置に割り当てる割り当て工程と、
前記割り当て工程によるリソースユニットの割り当て情報を含むUser Infoフィールドを有するトリガーフレームを送信する送信工程と、
前記複数の他の通信装置のそれぞれから、前記複数の他の通信装置それぞれの送信予定のデータ量を取得する取得工程と、
前記複数の他の通信装置それぞれに適用すべき符号化変調方式を決定する決定工程と、
を有し、
前記割り当て工程において、前記取得工程により取得された前記データ量と、前記決定工程により決定された前記符号化変調方式と、に基づいて前記複数の他の通信装置に含まれる第一通信装置に複数のリソースユニット(resource unit)を割り当てることを特徴とする制御方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項1から9のいずれか1項に記載の通信装置として動作させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UL-OFDMAのためのリソース割り当て技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE(米国電気電子技術者協会)では、高効率(HE:High Efficiency)な次世代の無線LAN規格としてIEEE802.11axが検討されている。IEEE802.11axでは、周波数利用効率を向上させるため、従来は20MHzの周波数帯域幅を単位として用いていた周波数チャネルの構造を、より狭い周波数帯域幅を単位として複数の端末に割り当て可能としたOFDMAの採用が提案されている。なお、OFDMAは、Orthogonal Frequency Division Multiple Access(直交周波数分割多元接続)の頭字語であり、複数のユーザの信号を多重するマルチユーザ(MU:Multi User)通信方式である。
【0003】
IEEE802.11axでは、OFDMAにより、20MHz幅の周波数帯域の少なくとも一部が、最大9つの端末局(Station:以下STA)に割り当てられる。例えば、STAの数が1の場合は20MHz幅の周波数帯域のすべてがそのSTAに割り当てられてもよく、一方で、STAの数が2以上の場合は、各STAに対して20MHz幅の周波数帯域で無線周波数リソースユニットであるRU(Resource Unit、複数のサブキャリアをまとめた単位)が割り当てられる。
【0004】
アクセスポイント(Access Point:以下AP)がUL(Up Link:STAからAPへのデータ通信)-OFDMAのためのRUを割り当てる際には、Triggerフレームを用いる(特許文献1)。例えば、APは各STAから送信バッファ量に関する情報を取得して各STAの送信時間を導出し、当該各STAの送信時間のうち最も長い送信時間を全STA共通のデータ通信時間に設定する。そして、APは、当該全STA共通のデータ通信時間の情報をTriggerフレームに格納して、各STAへ通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2017/0086212号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
APからTriggerフレームを受信した各STAは、当該フレームに含まれる情報に基づいて、全STA共通の通信時間で自身のデータを送信する。ここで、STAは、自身のデータ送信時間が全STA共通の通信時間より短い場合は、パディング(Padding)データを付加して全STA共通の通信時間分の送信を行うこととなる。
【0007】
一方、1つのAPに接続しているSTAの数が、1回のUL-OFDMAで許容される最大アクセス数を超える場合、APは、複数回に渡って、UL-OFDMAに対するRUを割り当てる必要がある。このような状況において、APが各STAの送信バッファ量を考慮せずにRUの割り当てを行うと、STAのパディング処理(パディングデータを付加するための処理)により通信帯域に無駄が生じる。例えば、APが送信バッファ量に極端な差異があるSTA同士を同じUL-OFDMAフレームに割り当てた場合に、データ量の少ないSTAのパディングデータが増加し、周波数利用効率が低減する。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、無線通信における周波数利用効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による通信装置は以下の構成を有する。すなわち、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式を用いてIEEE802.11シリーズ規格に準拠した通信を行う通信装置であって、周波数チャネルを分割した複数のリソースユニット(resource unit)を複数の他の通信装置に割り当てる割り当て手段と、前記割り当て手段によるリソースユニットの割り当て情報を含むUser Infoフィールドを有するトリガーフレームを送信する送信手段と、前記複数の他の通信装置のそれぞれから、前記複数の他の通信装置それぞれの送信予定のデータ量を取得する取得手段と、前記複数の他の通信装置それぞれに適用すべき符号化変調方式を決定する決定手段と、を有し、前記割り当て手段は、前記取得手段により取得された前記データ量と、前記決定手段により決定された前記符号化変調方式と、に基づいて前記複数の他の通信装置に含まれる第一通信装置に複数のリソースユニットを割り当てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無線通信における周波数利用効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ネットワーク構成例を示す図。
図2】APのハードウェア構成例を示す図。
図3】APの機能ブロック構成例を示す図。
図4】BSRフレームの構成例を示す図。
図5】Triggerフレームの例を示す図。
図6】20MHzにおけるtoneの数とRUとの関係を示す図。
図7】APにより管理される、各STAの送信バッファ量・MCS・通信時間情報の第1の例を示す図。
図8】AID順にRU割り当てを行った場合の通信フレーム構成を示す図。
図9】(A)はAPの全体処理を示すフローチャート、(B)は実施形態1におけるUL-OFDMAに対するRU割り当て処理を示すフローチャートである。
図10】実施形態1において通信されるフレームの流れを説明するための図。
図11】実施形態1におけるUL-OFDMAに対するRU割り当て処理を示すフローチャート。
図12】実施形態2において通信されるフレームの流れを説明するための図。
図13】APにより管理される、各STAの送信バッファ量・MCS・通信時間情報の第1の例を示す図。
図14】実施形態3におけるUL-OFDMAに対するRU割り当て処理を示すフローチャート。
図15】実施形態3において通信されるフレームの流れを説明するための図。
図16】実施形態4におけるUL-OFDMAに対するRU割り当て処理を示すフローチャート。
図17】実施形態4において通信されるフレームの流れを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその実施形態の一例に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0013】
[実施形態1]
図1に、実施形態1によるネットワークの構成例を示す。図1は、IEEE802.11axに対応した17台のSTA101~117と、1つのAP100を含んだ構成を示している。AP100が送信した信号は、STA101~117において受信可能である。STA101~117とAP100との間ではそれぞれ認証が終わっており、お互いにデータの送受信が可能な状態であるものとする。ただし、これは一例であり、例えば広範な領域に多数のSTAを含むネットワークに対して、また、様々なSTAの位置関係に対して、以下の議論を適用可能である。
【0014】
図1の例において、STA101~117は、AP100との間でOFDMAによるMU通信(マルチユーザ通信)を行う。AP100からSTA101~117方向はDL(ダウンリンク)-OFDMAにより、STA101~117からAP100方向はUL-OFDMAにより通信が行われる。本実施形態では、各STA101~117は送信予定のデータを保持しており、当該送信予定のデータ量の情報であるバッファ量の情報をAPへ通知する。AP100は、通知された送信バッファ量の情報に基づいて、UL-OFDMAに対するRU割り当てを行う。
【0015】
(APの構成)
続いて、図2図3を参照して、AP100の構成について説明する。まず、AP100のハードウェア構成について説明する。図2は、AP100のハードウェア構成の一例を示す図である。AP100は、そのハードウェア構成の一例として、記憶部201、制御部202、機能部203、入力部204、出力部205、通信部206、およびアンテナ207を有する。
【0016】
記憶部201は、ROMやRAM等のメモリにより構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。なお、記憶部201として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体を用いてもよい。また、記憶部201が複数のメモリ等を備えていてもよい。
【0017】
制御部202は、1つ以上のCPUやMPU等のプロセッサにより構成され、記憶部201に記憶されたプログラムを実行することにより、AP100を制御する。なお、制御部202は、記憶部201に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働により、AP100を制御するようにしてもよい。また、制御部202がマルチコア等の複数のプロセッサから成り、AP100を制御するようにしてもよい。また、制御部202は、機能部203を制御して、AP機能、撮像や印刷、投影等の所定の処理を実行してもよい。機能部203は、AP100が所定の処理を実行するためのハードウェアである。
【0018】
入力部204は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部205は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部205による出力とは、画面上への表示や、スピーカによる音声出力、振動出力等の少なくともひとつを含む。なお、タッチパネルのように入力部204と出力部205の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。通信部206は、IEEE 802.11axやWi-Fiに準拠した無線通信の制御や、IP(Internet Protocol)通信の制御を行う。さらに、通信部206はアンテナ207を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。
【0019】
次に、AP100の機能構成について説明する。図3は、AP100の機能構成の一例を示す図である。AP100は、その機能構成の一例として、送信部301、受信部302、MCS決定部303、通信時間計算部304、グループ化部305、RU割当部306、通信時間設定部307および送信順序制御部308を有する。
【0020】
送信部301は、通信部206を介して、他の装置に対して信号を送信する。受信部302は、他の装置から送信される信号を、通信部206を介して受信する。MCS決定部303は、STAに適用可能なMCS(Modulation and Coding Scheme:符号化変調方式)をMCSインデックスとして決定する。MCS決定部303が各STAに対して決定したMCSインデックスの例については、図7、13を用いて後述する。通信時間計算部304は、受信部302により受信されたBSRフレームに含まれる各STAの送信バッファ量の情報と、MCS決定部により決定されたMCSとに基づいて、各STAのデータ通信時間を計算する。なお、通信時間計算部304は、この他の方法により、各STAのデータ通信時間を導出(取得)してもよい。グループ化部305は、複数のSTA(STAのデータ)を複数のグループにグループ化する。RU割当部306は、各STAに対してRUを割り当てる。通信時間設定部307は、グループ化部305によりグループ化された各グループに属する全STA共通のデータ通信時間を設定する。また、通信時間設定部307は、RU割当部306のRUの割り当てに応じて、データ通信時間を更新し得る。送信順序制御部308は、送信部301により送信される信号の順序を制御する。
【0021】
(フレーム構成)
次に、本実施形態において通信されるフレームの構成について図4図5を参照して説明する、図4は、各STA101~117が、自身の送信バッファ量をAP100へ通知する際に用いるBuffer status report(BSR)フレームの構成例を示す。送信バッファ量は、QoS Controlフィールド401に含まれるQueue sizeサブフィールド403により、あるいは、HT Controlフィールド402のControl Informationサブフィールド404内のScaling Factorサブフィールド405、Queue Size Highサブフィールド406、Queue Size Allサブフィールド407により示され得る。
【0022】
AP100は、各STA101~117から図4に示すような構成を有するBSRフレームを受信すると、当該フレームに含まれる送信バッファ量の情報に基づいて、UL-OFDMAに対するRUの割り当ておよび全STA共通の通信時間を決定する。その後、AP100は、RUと全STA共通のデータ通信時間に関する情報(以下、RU/通信時間情報)を含めたTriggerフレームを送信する。
【0023】
図5は、Triggerフレームの構成例を示す。Common Infoフィールド501には、全STA共通の情報が含まれる。Common Infoフィールド501におけるLengthサブフィールド504には、全STA共通のデータ通信時間が設定される。Common Infoフィールド501のTrigger Typeサブフィールド503が0の場合、User Infoフィールド502が追加される。User Infoフィールド502には、各STAに対して、STAを特定するためのAID(Association ID)サブフィールド505、および、割り当てるRU(複数のサブキャリアをまとめた単位)およびtoneの数(サブキャリア数)を特定するためのRU Allocationサブフィールド506が含まれる。MCSサブフィールド507にはMCSが指定される。
【0024】
図6に20MHzにおけるtoneの数(サブキャリア数)とRU(複数のサブキャリアをまとめた単位)との関係の一例を示す。ヌルサブキャリアは干渉を緩和するために挿入されるものである。図6から分かるように、tone数が26の場合は、9個のRUの割り当てが可能となる。なお、40MHz、80MHzにおいても、20MHzと同様にRUを割り当てることができる。
【0025】
(一般的なRU割り当て手順)
続いて、一般的なRU割り当て手順について図7図8を参照して説明する。図7は、AP100により管理される、各STA101~117の送信バッファ量・MCS・通信時間の情報の第1の例を示す図である。AID701は図5のAIDサブフィールド505の値に対応し、AP100と通信可能な状態にあるSTAを識別するためのAssociation ID(Identification)である。本実施形態では、図1に示すように、AP100はSTA101~117と通信可能であり、AID1~17はそれぞれSTA101~117に対応する。Queue size702は、AP100が各STA101~117から受信したBSRフレームに含まれる送信バッファ量を示す。MCSインデックス703は、各STA101~117の通信品質に基づいて適用する符号化変調方式の識別子を示している。例えばAP100のMCS決定部303は、受信部302により受信されたBSRフレームに基づいて、各STA101~117の通信品質を測定し、当該測定した値に基づいて、MCSインデックスを決定することができる。通信品質は、例えばSINR(信号対雑音干渉比)等である。
【0026】
IEEE802.11axでは、MCSインデックスが0の場合、BPSK・符号化率1/2を示し、MCSインデックスが1の場合、QPSK・符号化率1/2を示し、MCSインデックスが3の場合、16QAM・符号化率1/2を示す。すなわち、MCSインデックスが低くなるほど、エラー耐性が強くなる(高くなる)。Queue sizeとMCSインデックスが決まれば、AP100の通信時間計算部304は、データ通信時間である通信時間704を算出することができる。例えばQueue size=1のデータをMCSインデックス=0に対応する符号化変調方式を用いて送信する場合に8msの時間を要する場合は以下のようになる。すなわち、同じQueue size(=1)のデータをMCSインデックス=1に対応する符号化変調方式を用いて送信する場合には8msの半分の4msの時間を要する。また、同じQueue size(=1)のデータをMCSインデックス=3に対応する符号化変調方式を用いて送信する場合には8msの4分の1の2msの時間を要する。また、同じMCSインデックスに対応する符号化変調方式を用いて、倍の長さのQueue sizeのデータを送信する場合には倍の時間を要する。
【0027】
図8は、図7の情報に基づいてAP100がAIDの昇順にSTAにUL-OFDMAに対するRU割り当てを行った場合に通信されるフレームの流れを示す。図8の例では、まず、AP100は、各STA101~STA117(AID1~17に対応)から受信したBSRフレーム(不図示)に含まれる情報に基づいて、各STA101~109(AID1~9に対応)に割り当てるRUを決定する。その後、AP100は、各STA101~109に対するRU割当情報をTriggerフレーム801に含める。また、STA101~109のうち、最も長いデータ通信時間はSTA102、STA106、STA108(AID2、AID6、AID8)の16msである。そのため、AP100は、16msを全STA共通のデータ通信時間としてTriggerフレーム801のLengthサブフィールド504(図5)に設定する。各STA101~109は、AP100から受信したTriggerフレーム801に含まれるRU/通信時間情報に基づいてデータを割り当て、UL-OFDMフレーム802を送信する。ここで、各STA101~109は、自身のデータ送信時間がTriggerフレーム801のLengthサブフィールド504で指定される時間(全STA共通のデータ通信時間)よりも短い場合には、パディングデータ(Pad)を付加する。これにより、各STA101~109は、Lengthサブフィールド504で指定される時間分のデータの送信を行うこととなる。AP100はUL-OFDMフレーム802を受信後、応答として、マルチユーザBlock ACK803を各STA101~109へ送信する。
【0028】
次に、各STA101~STA117(AID1~17に対応)から受信したBSRフレーム(不図示)に含まれる情報に基づいて、各STA110~117(AID10~17に対応)に割り当てるRUを決定する。その後、AP100は、各STA110~117に対するRU割当情報をTriggerフレーム804に含める。また、STA110~STA117のうち、最も長いデータ通信時間はSTA110、STA112、STA115(AID10、AID12、AID15)の16msである。そのため、AP100は、16msを全STA共通のデータ通信時間としてTriggerフレーム804のLengthサブフィールド504に設定する。UL-OFDMフレーム802と同様に、各STA110~117は、AP100から受信したTriggerフレーム804に含まれるRU/通信時間情報に基づいて自身のデータを割り当て、必要に応じてパディングデータを追加し、UL-OFDMフレーム805を送信する。このように、図8の例では、STA101~STA117はUL-OFDMAによるデータ送信のために、合計32ms(16ms+16ms)を要していることがわかる。
【0029】
(処理の流れ)
続いて、本実施形態におけるAP100の処理について図9を参照して説明する。図9(A)は、本実施形態におけるAP100の全体処理を示すフローチャートであり、図9(B)は、本実施形態におけるUL-OFDMAに対するRU割り当て処理を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、AP100の制御部202が記憶部201に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算および加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現されうる。
【0030】
以下の説明では、データ送信を希望しているSTAの数が、1回のUL-OFDMAで許容される最大アクセス数を超える場合を想定する。図9(A)において、まず、S901でAP100は、UL-OFDMAに対するRU割り当て処理を行う。具体的には、AP100は、STA(STAのデータ)を複数のグループに分け、グループ毎にそれぞれのSTAに対して、AP100に対して多元接続するために、RUを割り当て、データ通信時間を設定する。S901の処理については、S911~S922を参照して後述する。また、ここでは、M個のグループにグループ化されたものとする(全グループ数M)。また、以下の説明では、グループ化部305は、複数のSTAを、各STAのデータ通信時間によってグループ化するものとするが、各STAの送信予定のデータ量そのもの(データ量の情報)を用いてグループ化してもよい。
【0031】
S902では送信順序制御部308は、グループインデックスmを0に設定する。次にS903では、送信順序制御部308は、グループインデックスmがS901でグループ化した全グループ数Mに達しているか否かを判定する。グループインデックスmが全グループ数Mに達していない場合には(S903でYES)、処理はS904へ進み、達している場合には(S903でNO)、処理を終了する。S904では、送信順序制御部308は、グループインデックスmのグループに含まれる複数のSTAに対して、RU/通信間情情報を含むTriggerフレームを送信する。Triggerフレームを受信した各STAは、当該フレームに含まれるRU/通信時間情報に基づいて自身のデータを割り当て、UL-OFDMフレームを送信する。それに応じて、S905で受信部302は、当該UL-OFDMフレームを受信する。次にS906で送信部301は、S905におけるUL-OFDMフレームの受信結果に基づき、受信状態をマルチユーザBlock ACKに格納して、S904のTriggerフレームの送信先と同じ複数のSTAへ送信する。次にS907では、送信順序制御部308は、グループインデックスmインクリメントし、処理はS903へ戻る。グループインデックスmが全グループ数Mに達していない間、S904~S907の処理が繰り返される。なお、AP100は、S901~S907の全体処理を定期的に実行するようにしてもよいし、データ送信を希望しているSTAの数が一定数に達した場合に実行するようにしてもよい。
【0032】
次に、S901のUL-OFDMAのRU割り当て処理の詳細について図9(B)を参照して説明する。S911で受信部302は、データ送信を希望している複数のSTAのそれぞれからBSRフレームを受信する。次にS912でMCS決定部303は、各STAの通信品質に基づき、適用可能なMCSを決定する。続いて、S913では通信時間計算部304は、決定した各STAのMCSと、受信したBSRフレームに含まれる送信バッファ量の情報(送信予定のデータ量の情報)から、各STAのデータ通信時間を算出する。S914ではグループ化部305は、グループインデックスmを0に設定し、RU割当部306は、RUを構成するtone数を最小の26に設定する。次にS915で、グループ化部305は、全STA(全STAのデータ)のグループ分けが完了したかどうかを判定する。完了していない場合は(S915でNO)、処理はS916へ進み、完了した場合には(S915でYES)、処理を終了する。
【0033】
S916では、グループ化部305は、UL-OFDMAのグループインデックスmをインクリメントし、RU割当部306は、RUインデックスを1に設定する。次にS917では、RU割当部306は、まだRUを割り当てていないSTAのうち、データ通信時間の長いSTAを選択してRUインデックスに割り当てる。次にS918では、MCS決定部303は、選択されたSTAのMCSを決定し(S912と同様)、TriggerフレームのUser Infoフィールド502のMCSサブフィールド507へ設定する。S919ではRU割当部306は、RUインデックスをインクリメントする。次にS920で、RU割当部306は、RUを割り当てていないSTAが存在するかどうかを判定する。RUを割り当てていないSTAが存在する場合には(S920でYES)、処理はS921へ進み、存在しない場合には(S920でNO)、処理はS922へ進む。
【0034】
S921では、グループ化部305は、RUインデックスが1つのグループに対して割り当て可能なRUの最大数(最大RU数)であるN未満かどうかを判定する。すなわち、グループ化部305は、1つのグループに属するSTA(STAのデータ)の数がN未満かどうかを判定する。本例では、tone数26の場合であるので、割り当て可能な最大RU数は9となる。よって、グループ化部305は、RUインデックスが9未満かどうかを判定する。RUインデックスが最大RU数未満でない(最大RU数に達している)場合は(S921でNO)、処理はS922へ進む。RUインデックスが最大RU数未満である(最大RU数に達していない)場合は(S921でYES)、処理はS917へ戻り、RU割当部306は、RUが割り当てられていないSTAに対するRU割り当てを行う。S922では、1回のUL-OFDMAに対するRUの割り当てが完了していることから、通信時間設定部307は、TriggerフレームのCommon Infoフィールド501のLengthサブフィールド504に、グループ内で最もデータ通信時間の長いSTAのデータ通信時間を設定する。S922の後、処理はS915へ戻る。S915でYESの場合のグループインデックスmが全グループ数Mとなる。
【0035】
図10は、図9に示す処理に基づいてAP100がUL-OFDMAに対するRU割り当てを行った場合に通信されるフレームの流れを示す。なお、図8と異なる点について説明する。AP100は、データ通信時間の長いSTAから順にRUを割り当て、データ通信時間がより長い複数のSTA(STAのデータ)が1つのグループにグループ化され、UL-OFDMフレーム1001を送信する。そして、通信時間がより短い複数のSTA(STAのデータ)が1つのグループにグループ化され、UL-OFDMフレーム1002を送信する。UL-OFDMフレーム1002では、最も長いデータ通信時間は、STA107(AID17)によるデータ通信時間の12msとなる。図10の例では、UL-OFDMAのデータ送信に合計28ms(16ms+12ms)を要していることから、図8の場合と比べて周波数利用効率が向上する。またSTAのパディングデータの送信時間が減ることにより、STAの消費電力を抑えるという効果も得られる。
【0036】
[実施形態2]
実施形態2におけるUL-OFDMAに対するRU割り当て処理について、実施形態1と異なる点を説明する。図11は、本実施形態におけるUL-OFDMAに対するRU割り当て処理を示すフローチャートである。S1101~S1112の処理は、実施形態1において説明した図9のS911~922の処理と同内容のため、説明を省略する。
【0037】
S1105では、全STA(全STAのデータ)のグループ分けが完了した場合に(S1105でYES)、処理はS1115へ進む。図7の情報に基づくと、この時点で想定されるUL-OFDMフレームの構成は、図10に示すUL-OFDMフレーム1001、1002のようになる。S1105では、グループ化部305は、RUインデックスが最大RU数N未満かどうかを判定する。RUインデックスが最大RU数未満である場合は(S1115でYES)、処理はS1116へ進み、最大RU数未満でない場合は(S1115でNO)、処理は終了する。S1116では、RU割当部306は、UL-OFDMAのグループ内の少なくとも1台のSTA(本実施形態では最もデータ通信時間の長いSTA)に割り当てるRU数を増やす。すなわち、tone数を増やす。例えば、RU割当部306は、図10のUL-OFDMフレーム1002において、最も通信時間の長いSTA117(AID17)の割り当てRU数(tone数)を増やす。これに応じて、通信時間設定部307は、RU数を増やしたSTAのデータ通信時間を更新する。ここで、データ通信時間は、元のデータ通信時間を、増やしたRU数で割った時間に更新され得る。次にS1117では、通信時間設定部307は、更新されたデータ通信時間に合わせて、TriggerフレームのCommon Infoフィールド501のLengthサブフィールド504を更新する。すなわち、通信時間設定部307は、Lengthサブフィールド504を、グループ内で最もデータ通信時間の長いSTAのデータ通信時間に更新する。
【0038】
図12は、図11に示す処理に基づいてAP100がUL-OFDMAに対するRU割り当てを行った場合に通信されるフレームの流れを示す。なお、図10と異なる点について説明する。図10と比較して、1番目のUL-OFDMフレーム1201はUL-OFDMフレーム1001と同様であるが、2番目のUL-OFDMフレーム1202はUL-OFDMフレーム1002と異なる。すなわち、2番目のグループおいて、最も通信時間の長いSTAは、STA117(AID17)からSTA101、104、111(AID1、AID4、AID11)に変更され、データ通信時間(Lengthサブフィールド)は8msに更新される。その結果、UL-OFDMAのデータ送信に合計24ms(16ms+8ms)を要し、図10の場合と比べて更に周波数利用効率が更に向上する。
【0039】
[実施形態3]
実施形態3におけるUL-OFDMAに対するRU割り当て処理について、実施形態1、2と異なる点を説明する。図13は、AP100により管理される、各STA101~117の送信バッファ量・MCS・通信時間の情報の第2の例を示す図である。図13では、図7と比較して、AID2に対応するSTA(STA102)のQueue sizeが増え(=10)、20msの通信時間が必要となっている(下線部)。
【0040】
図14は、本実施形態におけるUL-OFDMAに対するRU割り当て処理を示すフローチャートである。図15(A)と図15(B)は、本実施形態を説明するための通信フレームの流れを示す。図15(A)と図15(B)に関しては、図10と異なる点について説明する。
【0041】
図14において、S1401~S1412の処理は、実施形態1において説明した図9のS911~922の処理と同内容のため、説明を省略する。S1405では、全STA(全STAのデータ)のグループ分けが完了した場合に(S1405でYES)、処理はS1415へ進む。図13の情報に基づくと、この時点で想定されるUL-OFDMフレームの構成は、図15(A)に示すUL-OFDMフレーム1501、1502のようになる。S1415では、グループ化部305は、RUインデックスが最大RU数N未満かどうかを判定する。RUインデックスが最大RU数未満である場合は(S1415でYES)、処理はS1416へ進み、最大RU数未満でない場合は(S1415でNO)、処理は終了する。
【0042】
S1416では、グループ化部305は、1番目のグループ内で最もデータ通信時間の長いSTAのデータを分割し、1番目のグループとm番目のグループに割り当てる。そして、RU割当部306は、m番目のグループに割り当てられた当該分割データに、現RUインデックスに割り当てる。すなわち、グループ化部305は、1番目のグループ内で最もデータ通信時間の長いSTAのデータを分割し、当該分割した複数のデータが複数のグループに属するように、グループ化する。なお、ここでは、1番目のグループ内で最もデータ通信時間が長いSTAのデータを分割する例を説明したが、分割するデータの対象を、全てのSTAのデータのうち、所定値より長いデータ通信時間を有するデータとしてもよい。また、分割する際に、データのどの位置で分割するかは、任意に決定され得る。
【0043】
例えば、S1415の時点で想定される想定されるUL-OFDMフレームの構成が、図15(A)に示すUL-OFDMフレーム1501、1502の場合、グループ化部305は、1番目のUL-OFDMAグループのAID2に対応するSTA(STA102)のデータを分割し、第2のUL-OFDMAグループに割り当て、RU割当部306は当該データを空きRUに割り当てる。次に、S1417では、通信時間設定部307は、更新されたデータ通信時間に合わせて、TriggerフレームのCommon Infoフィールド501のLengthサブフィールド504を更新する。その後、S1418ではRU割当部306は、RUインデックスをインクリメントする。図15(B)のUL-OFDMフレーム1504では、1番目のUL-OFDMAグループで最も長い通信時間は16msに変更になるので、Lengthサブフィールド504は16msに更新される。その結果、図15のUL-OFDMフレーム1503、1504ではUL-OFDMAのデータ送信に合計28ms(16ms+12ms)を要していることから、データ分割前と比べて周波数利用効率が向上する。
【0044】
(実施形態4)
実施形態4におけるUL-OFDMAに対するRU割り当て処理について、実施形態1~3と異なる点を説明する。本実施形態は、STAの送信データのエラー耐性を高めることに関する。
【0045】
図16は、本実施形態におけるUL-OFDMAに対するRU割り当て処理を示すフローチャートである。S1601~S1612の処理は、実施形態1において説明した図9のS911~922の処理と同内容のため、説明を省略する。S1605では、全STA(全STAのデータ)のグループ分けが完了した場合に(S1605でYES)、処理はS1615へ進む。図7の情報に基づくと、この時点で想定されるUL-OFDMフレームの構成は、図10に示すUL-OFDMフレーム1001、1002のようになる。S1615では、グループ化部305は、グループインデックスmを1に設定する。次に、S1616では、グループ化部305は、グループインデックスmが全グループ数M以下かどうかを判定する。グループインデックスmが全グループ数以下である場合には(S1616でYES)、処理はS1617へ進み、それ以外の場合は(S1616でNO)、処理は終了する。
【0046】
S1617では、MCS決定部303は、グループインデックスmのグループ内で最も通信時間が長いSTA以外のSTAを選択する。例えば図10を参照すると、1番目のグループからはAID5、AID7、AID14に対応するSTAが選択される。次にS1618では、MCS決定部303は、これらの選択されたSTAに対して既に決定したMCSインデックスを、エラー耐性の強いものに下げた場合にグループ内のCommon Infoフィールド501のLength504に示す値を超えない範囲で、MCSインデックスを下げる。図7に基づけば、AID5、AID7、AID14に対応するMCSインデックスは1であり、MCSインデックスを0に下げると16ms以内に収まらなくなるため、MCS決定部303MCSインデックスを変更しない。次にS1619で、MCS決定部303は、グループインデックスmをインクリメントし、次のグループについて同様の処理を繰り返す。2番目のグループの場合、S1617ではAID1、AID4、AID11、AID3、AID9、AID13,AID16に対応するSTAが選択される。このうち、図10を参照すると、MCSインデックスを下げても12msを超えないのはAID3、AID9、AID13、AID16に対応するSTAである。よって、MCS決定部303は、AID3、AID9、AID13に対応するSTAのMCSインデックスを1から0に下げ、AID16に対応するSTAのMCSインデックスを3から2に下げることが可能になる。
【0047】
図17は、図16に示す処理に基づいてAP100がUL-OFDMAに対するRU割り当てを行った場合に通信されるフレームの流れを示す。なお、図10と異なる点について説明する。図10と比較して、1番目のUL-OFDMフレーム1701はUL-OFDMフレーム1001と同様であるが、2番目のUL-OFDMフレーム1702はUL-OFDMフレーム1002と異なる。すなわち、UL-OFDMフレーム1702はUL-OFDMフレーム1002とデータ通信時間は同じであるが、AID3、9、13、16に対応するSTAのデータについて、データ通信時間が長くなり、エラー耐性が強まる。このように、本実施形態によれば、周波数利用効率を高めつつ、一部のSTAの送信データのエラー耐性を高めることが可能となる。
【0048】
[実施形態5]
実施形態5として、RU割当部306が、STAのDevice Classに基づいて、複数のSTAをグループ分けする処理について説明する。まず、Device Classを考慮する背景について説明する。Device Classとは、STAの送信電力の精度と品質測定の精度とよって、STAを分類するクラスである。具体的には、STAの絶対送信電力(Absolute Transmit power)の精度とRSSI(Receive Signal Strength Indicator)測定の精度とによって、Class AとBの二種類に分類される。さらに具体的には、Class A STAとは、絶対送信電力の精度とRSSI測定の精度がともに±3dB以内となる能力を備えたSTAである。一方、Class B STAとは、送信電力の精度が±9dB、RSSI測定の精度が±5dB、相対(Relative)送信電力の精度が±3dBとなる能力を備えたSTAである。なお、IEEE802.11axでは、STAは、自身のDevice ClassをProbeリクエストやAssociationリクエストなどのマネジメントフレーム内のHE PHY Capabilities 情報要素によって、APに通知することが可能である。
【0049】
このようなSTAが混在する環境において、Class Bのような送信電力の精度が悪いSTAの信号をOFDMA方式によって多重させた場合、その多重通信を受けたAPでは、各STAからの受信電力に大きな差が発生する可能性がある。この受信電力差は、OFDMAの直交性を崩し、キャリア間干渉の影響を大きくし得る。特に、受信電力が小さいときの影響は大きく、APの受信性能が劣化する。よって、APは、複数のSTAをグループ化する際に、Class A STAとClass B STAを区別した対応が必要となる。この対応には、たとえば、以下の三つの方式がある。
・Class A STAとB STAとを同じグループとして選択しない。
・Class B STAの多重数(宛先数)をClass A STAのそれより小さくする。
・Class BのMCSを耐性の強い(ロバスト性のある)ものとする。
【0050】
以上が、Device Classに関する背景であるが、このような背景を考慮した上でのグループ化方法としては、一例として、以下の2つが考えられる。
(1)図9のS1407のようにデータ通信時間が多いSTAを選択する際に、Device Classが同じSTAを優先的に選択する方法。
(2)初めにDevice Classを考慮する方法。例えば、Class A STA群とB STA群とを完全に分離した上で、Class A STA群とB STA群のそれぞれに対して、図9に示すようなUL-OFDMAに対するRU割り当てを行う。
【0051】
このように、以上に説明した実施形態によれば、APが各STAの送信バッファ量に基づき、STAをグループ分けしてUL-OFDMAのRU割り当てを行うことで、周波数利用効率を向上させることができる。
【0052】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17