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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】消火栓設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
A62C35/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023098212
(22)【出願日】2023-06-15
(62)【分割の表示】P 2022036789の分割
【原出願日】2016-08-23
(65)【公開番号】P2023116703
(43)【公開日】2023-08-22
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓史
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-038183(JP,A)
【文献】特開平11-137711(JP,A)
【文献】特開2003-190315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を有するトンネル内の監視員通路に設けられた消火栓埋込部を備える消火栓設備であって、
消火栓装置が前記消火栓埋込部に上面が前記監視員通路の路面側に露出し前面が前記道路側に露出するように埋込設置され、
前記消火栓装置は、
内部に消火用のホースが収納され
前面上側の一部分を開口した前面開口に、開閉自在に配置された前扉を備え、
前記ホースは、前記消火栓装置の内部下側に、前記消火栓装置の底面側から上面側に向けて積み上がるように巻き回して収納され、
前記収納されたホースの積み上げ最上部は、前記前面開口よりも下方に位置し、
前記ホースの先端に設けられたノズル部は、前記前扉を開放したときに前記前面開口を介して視認可能であることを特徴とする消火栓設備
【請求項2】
請求項1記載の消火栓設備であって、
前記前面開口には、前記ホースが前記前面開口から前記消火栓装置の外部前方へ引き出される際に、前記ホースを下方でガイドするホースガイドが設けられたことを特徴とする消火栓設備
【請求項3】
請求項1又は2記載の消火栓設備であって、
更に、前記消火栓装置の上面を開口した上面開口に、開閉自在に配置された上扉を備え、
前記上面開口には、前記ホースが前記上面開口から前記消火栓装置の外部側方へ引き出される際に、前記ホースを側方でガイドする第2ホースガイドが設けられたことを特徴とする消火栓設備
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に消火用のホースが収納された消火栓装置トンネル内の監視員通路の路面下に埋込設置された消火栓設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内に設置するトンネル非常用設備として消火栓装置が設けられており、消火栓装置は開放自在な消火栓扉を備え、先端にノズルを装着したホースと消火栓弁を含むバルブ類を収納している。
【0003】
消火栓装置は、一般的に、トンネル側壁に沿って例えば50メートル間隔でトンネル壁面に埋込み設置されている。火災を伴う車両事故が発生した場合には、監視員通路のあるトンネルでは、事故車両の運転者等の道路利用者は監視員通路の側面に設置されたステップ等により監視員通路に登り、トンネル壁面に設置された消火栓装置の消火栓扉を前方に開放してノズル付きのホースを取出して消火作業を行うようにしている。
【0004】
監視員通路は路面に対し高くした側壁通路として設けられ、トンネル内の車両通行を妨げることなく且つ安全にトンネル内に設置している消火栓装置を含む各種の機器の点検を行うことを可能としている。
【0005】
また、監視員通路のないトンネルにあっては、事故車両の運転者等の利用者は、トンネル壁面に設置された消火栓装置に近づき、同様に、消火栓扉を前方に開放してノズル付きのホースを取出して消火作業を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-181057号公報
【文献】特開2008-055024号公報
【文献】特開2009-285126号公報
【文献】特開2001-009053号公報
【文献】実開昭64-027379号
【文献】実開平4-050068号
【文献】特開2012-75610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シールド工法等により作られた都市型トンネルにあっては、トンネル壁面に消火栓装置を埋込み設置できない構造であり、監視員通路側面(壁面)に消火栓装置を埋込み設置する必要がある。
【0008】
しかしながら、従来の消火栓のように扉を前開きする消火栓装置を監視員通路に設置した場合には、消火栓扉が開くと建築限界を超えて道路側に飛び出す問題がある。
【0009】
一方、この問題を解決できたとしても、消火栓装置をトンネル内の道路に面した監視員通路壁面に沿って埋込設置した場合、車両火災が発生して消火栓扉の前に車両が停止すると、停止車両が邪魔になって、消火栓扉を開いてホースを引き出すことができない場合がある。更に、仮に監視員通路上から操作できる場合でも、監視員通路から消火栓扉を開くには、体をかがめて手を伸ばす必要があり、消火栓装置の操作に手間取ってしまう場合もある。
【0010】
本発明は、道路側及び監視員通路側から消火栓装置を簡単且つ容易に取り扱うことを可能とする消火栓設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(消火栓装置)
本発明は、内部に消火用のホースが収納された消火栓装置であって、
消火栓装置の前面上側の一部分を開口した前面開口に、開閉自在に配置された前扉を備え、
ホースは、消火栓装置の内部下側に、消火栓装置の底面側から上面側に向けて積み上がるように巻き回して収納され、
収納されたホースの積み上げ最上部は、前面開口よりも下方に位置し、
ホースの先端に設けられたノズル部は、前扉を開放したときに前面開口を介して視認可能であることを特徴とする。
【0012】
(前面開口のホースガイド)
前面開口には、ホースが前面開口から消火栓装置の外部前方へ引き出される際に、ホースを下方でガイドするホースガイドが設けられる。
【0013】
(上面開口と上扉)
更に、消火栓装置の上面を開口した上面開口に、開閉自在に配置された上扉を備え、
上面開口には、ホースが上面開口から消火栓装置の外部側方へ引き出される際に、ホースを側方でガイドする第2ホースガイドが設けられる。
【0014】
(消火栓設備)
道路を有するトンネル内の監視員通路に設けられた消火栓埋込部を備える消火栓設備であって、
前述した消火栓装置が、消火栓埋込部に上面が監視員通路の路面側に露出し前面が道路側に露出するように埋込設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
(基本的な効果)
本発明は、内部に消火用のホースが収納された消火栓装置であって、消火栓装置の前面上側の一部分を開口した前面開口に、開閉自在に配置された前扉を備え、ホースは、消火栓装置の内部下側に、消火栓装置の底面側から上面側に向けて積み上がるように巻き回して収納され、収納されたホースの積み上げ最上部は、前面開口よりも下方に位置し、ホースの先端に設けられたノズル部は、前扉を開放したときに前面開口を介して視認可能であるため、開放された前面開口から容易にノズル部にアクセスすることを可能とし、ホースを容易に引き出すことができる。
【0016】
(前面開口のホースガイドの効果)
前面開口には、ホースが前面開口から消火栓装置の外部前方へ引き出される際に、ホースを下方でガイドするホースガイドが設けられるため、ホースはホースガイドによる規制を受けつつ引き出され、ホースが崩れ落ちることを防止することができる。
【0017】
(上面開口と上扉の効果)
更に、消火栓装置の上面を開口した上面開口に、開閉自在に配置された上扉を備え、
上面開口には、ホースが上面開口から消火栓装置の外部側方へ引き出される際に、ホースを側方でガイドする第2ホースガイドが設けられるため、消火栓装置の上方からホースを引き起す際も同様にホースの引き出しを容易に行うことができる。
【0018】
本発明の消火栓設備による効果は、前述した消火栓装置の場合と同じになることから、その説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】シールドトンネル内に設置した消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図
図2】消火栓収納箱の外観を正面、平面及び側面から示した説明図
図3】消火栓収納箱の内部構造を正面、平面及び側面から示した説明図
図4】前扉及び上扉を閉鎖した消火栓収納箱を正面及び平面から示した説明図
図5】消火栓収納箱の前扉側を内部から見て示した説明図
図6】上扉との係止を解除して前扉をスライド開放させる第1扉開閉機構の機能構成を示した説明図
図7】上扉を前開きして前扉をスライド開放させる第1扉開閉機構と上扉を後開きさせる第3扉開閉機構を横断面で示した説明図
図8】上扉を閉鎖位置に係止すると共に上扉を前開きさせる第2扉開閉機構を横断面で示した説明図
図9】上扉を前開きして前扉をスライド落下して開放させた消火栓収納箱を正面から示した説明図
図10】上扉を前開きした消火栓収納箱の第1扉開閉機構と第2扉開閉機構の部分を平面及び横断面で示した説明図
図11】上扉を前開きした消火栓収納箱の第2扉開閉機構の部分を横断面で示した説明図
図12】上扉を後開きした消火栓収納箱を正面及び平面で示した説明図
図13】上扉を後開きした消火栓収納箱の第1扉開閉機構と第3扉開閉機構の部分を断面で示した説明図
図14】上扉を後開きした消火栓収納箱の第2扉開閉機構の部分を断面で示した説明図
図15】放水制御機構を監視員通路側の消火栓収納箱と共に路面側から見た断面で示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[トンネル非常用設備の概要]
図1は自動車専用道路のトンネル内に設置された消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図である。図1に示すように、シールド工法により構築されたトンネル10内は円筒形のトンネル壁面12により覆われ、床版18により仕切られることで道路15が設けられており、この例にあっては、道路15は1方向2車線としている。
【0021】
床版18で仕切られた道路15の左側のトンネル壁面12に沿って監視員通路14が設けられ、監視員通路14の下側の内部空間はダクト22として利用され、電線管等が敷設される。監視員通路14は例えば高さが90センチメートル、横幅が70センチメートルといった大きさをもつ。
【0022】
道路15が形成された床版18の下側はトンネル横方向に複数の区画に仕切られており、例えば、監視員通路14の下に位置する区画は、管理用通路20として使用され、また、管理用通路20はトンネル内での火災発生時には、緊急避難通路として使用される。管理用通路20には給水本管24が敷設されている。
【0023】
トンネル10の長手方向の50メートルおきには、消火栓設備16が設置され、消火栓設備16の消火栓装置はホースが収納された消火栓収納箱30と放水制御機構収納部120に分離して設置されている。
【0024】
消火栓収納箱30は、監視員通路14の路面及び道路15側の壁面にかけて箱形に刳り貫かれた消火栓埋込部に配置されている。放水制御機構収納部120は、消火栓収納箱30の下側となる管理用通路20に配置され、給水本管24から分岐した分岐配管24aが引き込まれ、また、消火栓収納箱30に消火用水を供給する給水配管25が立ち上げられている。
【0025】
[消火栓設備]
図2は消火栓収納箱の外観を正面、平面及び側面から示した説明図、図3は消火栓収納箱の内部構造を正面、平面及び側面から示した説明図である。
【0026】
(消火栓収納箱の外観構造)
図2に示すように、消火栓設備16の消火栓収納箱30は、監視員通路14の路面下の内部空間に埋込み設置されている。消火栓収納箱30は、図2(A)に示すように、筐体31の前面中央の下側に固定扉33が配置されると共に、固定扉33の上側に前扉32が上下方向にスライド自在に配置されている。
【0027】
また、図2(B)に示すように、消火栓収納箱30の監視員通路14の路面側となる上面中央には、前扉32と同じ横幅の上扉36が配置されている。上扉36は、図2(C)に示すように、上扉36aで示す前開きと、上扉36bで示す後開きができる。
【0028】
ここで、上扉36aで示す前開きとは、上扉36の奥行側の後縁部を軸として上向き回りに開閉されることを意味し、また、上扉36bで示す後開きとは、上扉36の手前の前縁部を軸として上向き回りに開閉されることを意味する。
【0029】
前扉32と上扉36は閉鎖状態で係止されており、利用者が道路15側から操作する場合には、前開きハンドル34を開操作すると、上扉36に対する前扉32の係止が解除され、前扉32は自重により固定扉33の裏側に落下して消火栓収納箱30の前面上部を開口させ、また、上扉36を前開きすることで、消火栓収納箱30の上面を開口させる。
【0030】
また、利用者が監視員通路14側から操作する場合には、後開きハンドル38を開操作すると、筐体31に対する上扉36の係止が解除され、上扉36を後開きすることで、消火栓収納箱30の上面を開口させる。
【0031】
消火栓収納箱30の前面左上部には通報装置パネル42が設けられる。通報装置パネル42には、赤色表示灯44、発信機45、電話ジャック46及び応答ランプ48が設けられている。赤色表示灯44は常時点灯し、消火栓設備の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、発信機45を押して押し釦スイッチをオンすると、発信信号が監視室の火災受信機に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が火災受信機から送られて、応答ランプ48が点灯され、更に、赤色表示灯44が点滅される。
【0032】
(消火栓収納箱の内部構造)
図3に示すように、消火栓収納箱30の内部下側はホース収納部50となっており、保形構造のホース60を水平回りに内巻きしている。ここで、消火栓収納箱30の横幅は約1.4メートル程度、奥行きは約0.35メートル程度であることから、ホース収納部50に内巻きされたホース60の1ターンの長さは概ね3.5メートル程度となり、ホース長さは30メートル以上必要とすることから、ホース60は9ターン以上内巻きすればよい。
【0033】
消火栓収納箱30の中央にはホースガイド52が配置されている。ホースガイド52は金属パイプを使用しており、上面から前面にL型の屈曲した2本のガイドパイプ56を、図2に示した前扉32と上扉36の開口の内側に配置し、前面の略中央で横向きにガイドパイプ54を配置して両端をガイドパイプ56に固定しており、前扉32及び上扉36の開放状態で、上部前面及びこれに続く上部開口をガイドパイプ54,56で仕切ることで、ホース60の取出し空間が形成されている。
【0034】
なお、横方向に配置されたガイドパイプ54は、図4(B)に示すように、前扉32の裏面に固定した軸受部材78の扉下降に伴う当接を回避するため内側にオフセットして配置されている。
【0035】
また、ガイドパイプ56は、その上部を閉鎖している上扉36の下面に位置させ、上扉36を閉鎖状態でガイドパイプ56の上に載置して支える上扉支持構造としている。ここで、上扉36は監視員通路14に沿って例えば1メートルを超える長さを持つが、扉開口の2か所にガイドパイプ56が前後方向に位置して上扉36を支えており、閉鎖している上扉36に人が乗ったとしても、ガイドパイプ56により支えていることで、十分な支持強度が得られている。
【0036】
また、上扉36の両端内側には、筐体31側に固定された板部材による段付受け部57が形成され、段付受け部57に上扉36の両端が乗ることで、ガイドパイプ56による支持と合わせて、十分な支持強度が得られている。
【0037】
上扉36の裏面にはノズルホルダー64が配置され、ノズルホルダー64にホース60の先端に設けられた泡ノズル62が着脱自在に係止されている。このため上扉36を前開き又は後開きすると、扉裏面に保持されている泡ノズル62が消火栓収納箱30の上部に現れることになる。
【0038】
上扉36の前開きで扉裏面に保持されている泡ノズル62が現れる位置は、道路15から概ね0.9~1.3メートルの範囲のいずれかとなり、これは道路15に立った利用者の腰から肩までの範囲に相当し、目の前に泡ノズル62が出現することから、泡ノズル62の取出しが容易にできる。
【0039】
また、上扉36の後開きで扉裏面に保持されている泡ノズル62が現れる位置は、監視員通路14の路面から概ね0.2~0.4メートルの範囲のいずれかとなり、監視員通路14に体をかがめて後開きハンドル38を操作している利用者の目の前に泡ノズル62が出現し、利用者は監視員通路14側から泡ノズル62を容易に取り出すことができる。
【0040】
消火栓収納箱30内の右側に配置されたガイドパイプ56の上側部には操作箱66が配置され、操作箱66には消火栓弁開閉レバー68が設けられ、操作箱66の内部に設けられている手動パイロット弁を開閉操作させるようにしている。消火栓弁開閉レバー68を開操作すると、手動パイロット弁が開放され、分離配置された消火栓弁を遠隔的に開放させることができる。
【0041】
操作箱66内に設けられた手動パイロット弁に対しては下側からパイロット配管136a,136bが接続されている。パイロット配管136a,136bはガイドパイプ56の右側に配置された配管ダクト65の中を下側から通して操作箱66内の手動パイロット弁に接続されている。
【0042】
ホース収納部50に内巻きされたホース60は、図3(B)の平面に示すように、ガイドパイプ56及び配管ダクト65の部分で内側にわずかに湾曲した状態で巻かれている。
【0043】
[前扉及び上扉の開閉機構]
図4は前扉及び上扉を閉鎖した消火栓収納箱を正面及び平面から示した説明図、図5は消火栓収納箱の前扉側を内部から見て示した説明図、図6は上扉との係止を解除して前扉をスライド開放させる第1扉開閉機構の機能構成を示した説明図、図7は上扉を前開きして前扉をスライド開放させる第1扉開閉機構と上扉を後開きさせる第3扉開閉機構を横断面で示した説明図、図8は上扉を閉鎖位置に係止すると共に上扉を前開きさせる第2扉開閉機構を横断面で示した説明図である。
【0044】
(前開き機構と後ろ開き機構)
図4乃至図8に示すように、消火栓収納箱30の上面に配置された上扉36は、前開きハンドル34により操作される前開き機構と、後開きハンドル38により操作される後開き機構を備える。
【0045】
上扉36の前開き機構は、上扉36が図示の閉鎖位置にある場合に、前扉32の上部を第1扉開閉機構70により係止して閉鎖位置に保持しており、上扉36の前縁に下向きに配置されている前開きハンドル34をリフトアップ(開操作)した場合に、上扉36に対する前扉32の係止解除により両側のガイド部100に沿ってスライド落下させて前面を開口させる。
【0046】
また、上扉36を奥行方向に開く前開き操作に対し、第2扉開閉機構72による筐体31側との係止を解除し、上扉36の奥行側に配置された第3扉開閉機構74の軸中心線85を回転軸として上扉36を前開きすることで、上面を開口させる。
【0047】
上扉36の後開き機構は、上扉36が閉鎖位置にある場合に、第3扉開閉機構74により上扉36を筐体31側に係止して閉鎖位置に保持しており、上扉36の後縁側に設けられた後開きハンドル38を操作した場合に、筐体31側との係止が解除され、上扉36の前縁側に配置された第1扉開閉機構70及び第2扉開閉機構72の軸中心線75を回転軸として、上扉36の後開きすることで、上面を開口させる。
【0048】
(第1扉開閉機構)
図4乃至図7に示すように、前扉32の上部中央と上扉36の前縁中央に配置された第1扉開閉機構70は、前開きハンドル34の裏側のハンドル本体34aから両側に軸部材(第1軸部材)76を突出させており、軸部材76の先端は、前扉32の裏面に固定された軸受部材78の軸穴に挿入されており、これによる上扉36に前扉32を係止させて閉鎖位置に保持させている。
【0049】
軸部材76は前開きハンドル34をリフトアップすると、内側に引き込まれ、軸受部材78の軸穴から抜けることで、前扉32の係止が解除され、前扉32は自重により両側のガイド部100に沿ってスライドしながら落下して前面上部を開口させる。
【0050】
第1扉開閉機構70の詳細は、図6(A)に示すように、ハンドル本体34a内に、一対の屈曲したリンク88の一端が移動支点90で連結され、リンク88の屈曲位置が回動支点92としてハンドル本体34a側に固定され、リンク88の他端はスライド支点94として、軸部材76の軸端の支点96に連結されており、更に、移動支点90はスプリング98により図示で上方向に付勢されている。
【0051】
前開きハンドル34を操作していない場合、スプリング98の力を受けて、リンク88は外側に回動することで、軸部材76を軸受部材78の軸穴に嵌め入れ、上扉36に前扉32を係止させている。
【0052】
前開きハンドル34をリフトアップすると、図6(B)に示すように、図示しないリンク機構を介して移動支点90がスプリング98に抗して下側に移動し、これによりリンク88は内側に回動し、軸部材76を内側に引き込むことで、軸受部材78の軸穴から軸部材76の先端を引き外し、前扉32の係止が解除され、前扉32は自重によりスライドしながら落下して前面上部を開口させる。
【0053】
なお、第1扉開閉機構70は図6のリンク機構に限定されず、前開きハンドル34をリフトアップにより軸部材76を内側に引き込んで軸受部材78の軸穴から引き外す適宜のリンク機構が含まれる。
【0054】
(第2扉開閉機構)
図4乃至図5及び図8に示すように、上扉36の前縁両端に配置された第2扉開閉機構72は、上扉36の内側に固定された支持部材81により軸部材(第2軸部材)80を扉裏面から浮かせた状態で片持ち支持させており、筐体31側に固定された軸受部材82に対し、上方から着脱自在に配置されている。
【0055】
第2扉開閉機構72は第1扉開閉機構70と同じ軸中心線75に配置されており、軸中心線75は上扉36を後開きする場合の回転中心となる。
【0056】
第2扉開閉機構72の詳細は、図8(B)に取り出して示すように、上扉36の内側に片持ち支持された軸部材80は、筐体31側に固定された軸受部材82に回転自在に嵌め込まれている。
【0057】
軸受部材82は、上向きに開いた半円筒形の開口軸受部材104に軸部材80を受けて回転自在に支持しており、開口軸受部材104の上側には、ゴム等の弾性材料で作られた一対のボールキャッチ106が配置され、開口軸受部材104に対し軸部材80を上方から着脱自在に支持させるボールキャッチ機構を構成させている。
【0058】
また、前扉32の上端にはスリット108が形成され、上扉36を後開きさせる場合に、軸部材80を支持している支持部材81の回動を可能とする隙間が形成されている。
【0059】
なお、軸受部材82には、ボールキャッチ106を設けずに、上向きに開いた半円筒形の開口軸受部材104を設け、開口軸受部材104により軸部材80を上方から着脱自在に受けて、回転自在に軸支するようにしても良い。
【0060】
(第3扉開閉機構)
図4(B)及び図7に示すように、上扉36の後縁中央に配置された第3扉開閉機構74は、後開きハンドル38の裏側のハンドル本体38aから両側に軸部材(第3軸部材)84を突出させており、軸部材84の先端は、筐体31の背面内面に固定された軸受部材86の軸穴に挿入されており、上扉36の後縁側を筐体31側に係止させて閉鎖位置に保持させている。
【0061】
軸部材84は後開きハンドル38をリフトアップ(開操作)すると、内側に引き込まれ、軸受部材86の軸穴から抜けることで、上扉36の後縁側の係止が解除され、上扉36の前縁側に配置された第1扉開閉機構70と第2扉開閉機構72による軸中心線75を中心に、後開きすることができ、これにより上部を開口させる。
【0062】
後開きハンドル38のリフトアップにより上扉36の係止を解除させる第3扉開閉機構74の機構構造は、図6に示した、第1扉開閉機構70と同じ機構構造となる。
【0063】
[道路側から上扉及び前扉を開放させる操作]
図9は上扉を前開きして前扉をスライド落下して開放させた消火栓収納箱を正面から示した説明図、図10は上扉を前開きした消火栓収納箱の第1扉開閉機構と第2扉開閉機構の部分を平面及び横断面で示した説明図であり、図9(B)の上扉をX-X断面とした平面を示している。図11は上扉を前開きした消火栓収納箱の第2扉開閉機構の部分を横断面で示した説明図である。
【0064】
図9乃至図11に示すように、利用者が道路側から消火栓収納箱30を操作する場合には、図9(A)に示すように、前開きハンドル34をリフトアップすると、前扉32の係止が解除され、前扉32は自重により両側のガイド部100に沿ってスライド落下し、前部開口110が形成される。
【0065】
続いて、利用者が上扉36を奥行方向に開く前開き操作を行うと、図11(A)(B)に示すように、上扉36の前縁両側に配置されている軸部材80が軸受部材82から抜き出され、筐体31側に対する前縁側の係止が解除され、奥行側に配置された第3扉開閉機構74による軸中心線85を中心に、上扉36は前開きされ、上部開口112が形成される。
【0066】
このとき図10(B)に示すように、上扉36の裏側に配置されているノズルホルダー64は、道路にいる利用者の目の前に位置し、ノズルホルダー64には図3(A)に示したように、泡ノズル62が係止されていることから、泡ノズル62が目の前に出現し、容易に泡ノズル62を取り出してホース60を引き出すことができる。
【0067】
[監視員通路側から上扉を開放させる操作]
図12は上扉を後開きした消火栓収納箱を正面及び平面で示した説明図であり、図12(A)は正面を示し、図12(B)は図12(A)の上扉をX-X断面とした平面を示す。図13は上扉を後開きした消火栓収納箱の第1扉開閉機構と第3扉開閉機構の部分を断面で示した説明図、図14は上扉を後開きした消火栓収納箱の第2扉開閉機構の部分を断面で示した説明図である。
【0068】
図12乃至図14に示すように、利用者が監視員通路側から消火栓収納箱30を操作する場合には、利用者が監視員通路から体をかがめて後開きハンドル38をリフトアップすると、図12(A)に示すように、上扉36の後縁側の筐体31側に対する係止が解除され、前縁側に配置された第1扉開閉機構70及び第2扉開閉機構72による共通の軸中心線75を中心に、上扉36は後開きされ、上部開口112が形成される。
【0069】
このとき図14(B)に示すように、上扉36の裏面に軸部材80を浮動状態に片持ち支持させている支持部材81が外側に回動し、前扉32に形成されたスリット108を通ることで、前扉36の外側に回転させることを可能としている。
【0070】
また、図13に示すように、上扉36の裏側に配置されているノズルホルダー64は、監視員通路で体をかがめている利用者の目の前に位置し、ノズルホルダー64には図3(A)に示したように、泡ノズル62が係止されていることから、泡ノズル62が目の前に出現し、容易に泡ノズル62を取り出してホース60を引き出すことができる。
【0071】
[放水制御機構の構成]
図15は放水制御機構を監視員通路側の消火栓収納箱と共に路面側から見た断面で示した説明図である。
【0072】
(放水制御機構の構成)
図15に示すように、消火栓収納箱30が配置された監視員通路14の内部空間の下側となる管理用通路20には放水制御機構収納部120が配置されている。
【0073】
放水制御機構収納部120には、放水制御機構を構成するバルブ類として、加圧開放型の消火栓弁122、自動調圧弁124、泡混合器126が設けられる。
【0074】
給水本管24から分岐された分岐配管24aは消火栓弁122の1次側に接続され、消火栓弁122に続いて自動調圧弁124と泡混合器126が接続される。泡混合器126には泡原液タンク128からの配管が接続され、泡混合器126を流れる消火用水に泡原液を所定割合で混合させた泡消火用水を給水配管25を介して消火栓収納箱30のホース60に供給させるようにしている。
【0075】
消火栓弁122は加圧開放を行うための弁開閉機構として、シリンダ室130にピストン132が摺動自在に設けられ、ピストン132には弁体135がピストンロッドにより連結され、シリンダ室130の反対側にはスプリング134が組み込まれている。
【0076】
消火栓弁122は通常状態では閉鎖している。消火栓弁122の閉鎖は、シリンダ室130から消火用水を排出してパイロット圧を減圧してゼロとし、ピストン132をスプリング134により閉鎖方向に押し、弁体135を弁座に当接させることにより1次側と2次側の流路を閉じて閉鎖状態としている。
【0077】
消火栓弁122を開放させるには、シリンダ室130に消火用水を供給してパイロット圧を加圧させることで、スプリング134に抗してピストン132を外側にストロークさせ、弁体135を弁座から離して1次側と2次側を連通させることで開放状態とする。
【0078】
消火栓弁122を遠隔操作により開放させるため、消火栓収納箱30の操作箱66には、消火栓弁開閉レバー68により開閉される手動パイロット弁140が設けられている。
【0079】
手動パイロット弁140の1次側には分岐配管24aから引き出されたパイロット配管136aが接続され、手動パイロット弁140の2次側は、パイロット配管136bにより消火栓弁122のシリンダ室130に接続されている。
【0080】
なお、本実施形態にあっては、消火栓弁開閉レバー68により手動パイロット弁140を直接開閉するようにしているが、手動パイロット弁140を消火栓収納箱30内の別の場所に配置し、ワイヤリンクなどにより遠隔開閉させても良い。
【0081】
(消火栓設備の動作)
トンネル10内で火災を伴う車両事故が発生した場合には、利用者は火災発生場所に近い消火栓設備16に出向き、図2に示した通報装置パネル42の発信機45を押して監視センターの防災受信盤に火災通報信号を送信し、防災受信盤から確認応答信号を受信して応答ランプ48が点灯されると共に赤色表示灯44が点滅され、監視センター側への通報完了を確認する。
【0082】
続いて、道路15側から消火作業を行うため、消火栓収納箱30の前開きハンドル34を操作して係止を解除すると、前扉32がスライド落下して開放され、また、上扉36を前開きすると、前開きした上扉36の裏面に係止された泡ノズル62が上部に露出される。
【0083】
利用者はノズルホルダー64から泡ノズル62を取り外してホース60を引き出すが、このとき引き出されるホース60はガイドパイプ54、56に摺接しながら、滑らかに引き出される。
【0084】
なお、消火栓収納箱30の前に車両が停止していて前面側から操作できない場合には、利用者は監視員通路14から操作することになる。
【0085】
続いて、消火栓収納箱30の開口空間の右側に配置されている操作箱66に設けられた消火栓弁開閉レバー68を開方向に操作すると、手動パイロット弁140が開放され、分岐配管24aからの消火用水がパイロット配管136a、手動パイロット弁140及びパイロット配管136bを介して消火栓弁122のシリンダ室130に供給されてパイロット圧が加圧され、スプリング134に抗してピストン132を外側にストロークさせ、弁体135を弁座から離すことで消火栓弁122が開放される。
【0086】
消火栓弁122が開放されると給水本管24からの消火用水が消火栓弁122、自動調圧弁124、泡混合器126を介して給水配管25から消火栓収納箱30のホース60に向かって流れ、泡混合器126で泡原液が所定割合で混合され、消火栓収納箱30から引き出されたホース60の泡ノズル62から泡消火用水が放出される場合に、空気を巻き込むことで形成される消火泡が放出される。
【0087】
また、消火栓弁122が開放された場合に、ポンプ起動信号を消火ポンプ設備に送信して起動させる必要があることから、水圧を検知してオンする圧力スイッチ145を消火栓弁122の2次側に設けている。なお、圧力スイッチ145に代えて、消火栓弁開閉レバー68の開操作でオンしてポンプ起動信号を送信する消火栓弁開検出スイッチを操作箱66に設けても良い。
【0088】
火災が鎮火して消火作業が終了した場合には、消火栓弁開閉レバー68を閉位置に戻し、手動パイロット弁140を閉鎖させる。続いて、オリフィス146を介してシリンダ室130の水がゆっくりと排水され、パイロット圧がゼロに減圧され、スプリング134によりピストン132が押し戻されて弁座に当接させ、これにより消火栓弁122が閉鎖して消火泡の放出が停止される。
【0089】
また、放水制御機構を点検する場合には、担当者が管理用通路20に配置された放水制御機構収納部120に出向き、手動開放弁142を開くと、シリンダ室130に消火用水が供給されてパイロット圧が加圧され、消火栓弁122を開放させて所定の放水試験を行わせることを可能とする。この場合、消火栓弁122を閉鎖させるために、手動排水弁144を開くようにしても良い。
【0090】
[本発明の変形例]
(第1乃至第3扉開閉機構)
上記の実施形態に示した第1乃至第3扉開閉機構は一例であり、上扉の前開きに伴い前扉の係止を解除してスライド開放させ、また、前扉を閉鎖位置に保持したまま上扉を後ろ開きさせる機能であれば、適宜の機構が含まれる。
【0091】
(泡消火栓設備)
上記の実施形態は、消火泡を放出させる泡消火栓設備を例にとっているが、これに限定されず、消火用水を放水させる消火栓設備としても良い。
【0092】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0093】
10:トンネル
12:トンネル壁面
14:監視員通路
15:道路
16:消火栓設備
18:床版
20:管理用通路
22:ダクト
24:給水本管
24a:分岐配管
25:給水配管
30:消火栓収納箱
31:筐体
32:前扉
33:固定扉
34:前開きハンドル
34a,38a:ハンドル本体
36:上扉
38:後開きハンドル
42:通報装置パネル
52:ホースガイド
54,56:ガイドパイプ
57:段付受け部
60:ホース
62:泡ノズル
64:ノズルホルダ-
66:操作箱
68:消火栓弁開閉レバー
70:第1扉開閉機構
72:第2扉開閉機構
74:第3扉開閉機構
75,85:軸中心線
76,80,84:軸部材
78,82,86:軸受部材
81:支持部材
100:ガイド部
104:開口軸受部材
106:ボールキャッチ
108:スリット
110:前部開口
112:上部開口
120:放水制御機構収納部
122:消火栓弁
124:自動調圧弁
126:泡混合器
128:泡原液タンク
130:シリンダ室
132:ピストン
134:スプリング
135:弁体
136a,136b:パイロット配管
140:手動パイロット弁
142:手動開放弁
144:手動排水弁
145:圧力スイッチ
146:オリフィス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15