(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】前方および後方の両方を視認するように構成された眼鏡レンズ要素
(51)【国際特許分類】
G02C 7/14 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
G02C7/14
(21)【出願番号】P 2023118805
(22)【出願日】2023-07-21
(62)【分割の表示】P 2020512834の分割
【原出願日】2018-08-29
【審査請求日】2023-07-21
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】520067840
【氏名又は名称】トライアイ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】フォンゲン,カルステン
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4651357(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0075145(US,A1)
【文献】米国特許第5537160(US,A)
【文献】米国特許第5416536(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0162801(US,A1)
【文献】米国特許第5917667(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
G02B 7/182
A42B 3/04
A61F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者による前方および後方の両方の視認のために構成された眼鏡レンズ要素(10)であって、
前記使用者の両目の前、上、間および下ならびに前記使用者の両目の側部から横に前記使用者の頭の概略側部までの距離に延在する少なくとも一つの曲線状の透明部分(13)と、
前記眼鏡レンズ要素(10)の下方部分(12)における端縁部に配置され、前記曲線状の透明部分の凸面側から外に突き出た収納部(11)を含み、前記収納部は開放された1つの側を備え、且つ、前記曲線状の透明部分に対応する部分は切り取られており、前記使用者の視線を直接内部に向けることができるように構成され、
前記曲線状の透明部分から外側にずれた位置において前記収納部に配置されたミラー(15)及び
前記収納部に配置され、前記ミラー(15)を前記収納部(11)に調整可能に接続する角度調節機構(16)
を含む眼鏡レンズ要素
(10)。
【請求項2】
前記収納部は、前記
眼鏡レンズ要素
(10)の表面に対して前記ミラーを1cmまでずらして配置することを許容する距離だけ突出し、後方視認のために必要な視界の深さを許容する、請求項1による眼鏡レンズ要素(10)。
【請求項3】
前記曲線状の透明部分の横に延在した部分の一つまたは両方の側端に配置された一つまたは二つの収納部を有する、請求項1による眼鏡レンズ要素(10)。
【請求項4】
前記曲線状の透明部分は回転楕円面状にカーブしている、請求項1による眼鏡レンズ要素(10)。
【請求項5】
前記曲線状の透明部分と前記収納部とは一つの一体化したユニットである、請求項1による眼鏡レンズ要素(10)。
【請求項6】
前記ミラーは前記曲線状の透明部分の湾曲面に対してある角度をもって前記収納部に配置される、請求項1による眼鏡レンズ要素(10)。
【請求項7】
前記曲線状の透明部分は対称軸を有し、前記ミラーは前記対称軸に対して垂直になるように前記収納部に配置される、請求項6による眼鏡レンズ要素(10)。
【請求項8】
前記収納部(11)は前記
眼鏡レンズ要素(10)の外部端と同一面を構成する部分を有している、請求項1による眼鏡レンズ要素
(10)。
【請求項9】
前記眼鏡レンズ要素
(10)は頭部に保持する手段に適合しており前記使用者の両目の前に所定の空間距離をおいて中央に配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ要素
(10)を含む眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
自転車走行や他の多くのスポーツ、特に高速度のスポーツにおいて、アスリート達は「後方視認」という問題を経験する。特に自転車で走行する際に認識される、長きにわたって必要とされてきている事項は、乗り手が、身体をぐるりと回して見るということをせずに、後方から接近してくる交通車両を見ることである。このやり方で後ろを見ることは、乗り手が片側に寄ってしまい接近してくる走行車両の走行経路にふらふらと入り込んでしまうという結果をしばしば招くことになるので、非常に危険である。この結果を招く理由は、過剰な頭部の動きであり、乗り手が自分の見ている方向に向かい自然に身体を傾ける傾向があるという単純な事実である。従って、「後方視認」しつつバランスを良好に保つためには、乗り手が自分の頭を動かさないようにしている必要がある。交通走行中に自転車を追い越すときのモーター付車両に対して要求される最低安全距離といったものは通常は存在しない。自転車の乗り手は背後からやってくる交通車両に対する耳に聞える手がかりに全面的に依存することは出来ない。乗り手はしばしば車線を変更したり方向転換をしたりしなければならないが、このような操作は空間的な位置が良好であることおよび信頼出来る情報を必要とする。交通条件に関する間違った推測または不確かさは、あまりにもしばしば悲惨な結果を招くことになる。
【0003】
この問題のために後方を見るためのミラー装置を開発することによって、「後方視認」という自転車走行者にとっての問題を解決するための努力がなされてきた。それらは幾つかの類型に広くは分けられる:ハンドルに取り付けたミラー、ヘルメットに取り付けたミラーおよび眼鏡に取り付けたミラーである。ハンドルに取りつけたミラーは、多大な路面の衝撃を、前輪のフォークおよび自転車のフレームから直接受ける。従ってミラーは非常に振動しやすく、その結果視界がぼやけたり、たびたび再調整しなければならない。ヘルメットに取り付けるタイプのものは同様に、美しさに欠け、空気力学的性質が乏しく、乗り手の顔面の前に前方から突き出る物体がある場合に頭部が先に衝突することから生じる安全性の危険要素が認められることから、最小限に甘受されているに過ぎない。眼鏡に取り付けたミラーは空気力学的性質が乏しいことや前方の見え方がある程度犠牲になることを含め、多くの同様な欠点がある。使用者の面前にいつまでも釣り下がっている定着物があるという鬱陶しさは、大部分の乗り手に一般的に拒絶される、歓迎されない順応を必要とする。
【0004】
特許文献1は、中央の内部透明部を横に延びた外部ミラー部と一体的に結合した空気力学的眼鏡レンズ要素を開示している。これにより前方の物体だけでなく背後の物体をも前方に向かっている使用者が見ることが出来る。
【0005】
特許文献2は、スポーツ用眼鏡のレンズや、自動二輪車のヘルメットの覆い、および特に自転車走行用眼鏡のレンズの外面に取り付けた、取り外し可能の後方視認用ミラーに関している。ミラーは、背後および側方の領域を装着者が見るための補助として使われており、回転によって調整することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5416536号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/075145号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらのおよび他の先行技術によるミラー装置の問題点は、装着者の視野の相当部分を遮る事、充分なまたは必要とされる見え方を提供出来ないこと、および/または使用が不便であることである。
【0008】
本発明の目的は、上に述べた問題を解決する、前方および後方の両方を視認するように構成された眼鏡レンズ要素および眼鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は特許請求項に記載された特徴によって達成される。
【0010】
一実施例においては、前方および後方の両方を視認するように構成された眼鏡レンズ要素は、使用者の両目の前、上、間および下に延在し、かつ前記使用者の両目の側部から横に使用者の頭の概略側部までの空間距離に延在する、少なくとも一つの曲線状の透明部分を含む。
【0011】
曲線状の透明部分は、実質的に回転楕円面状にカーブしていてもよく、あるいはいかなる他の適切な形状を有していてもよい。大部分のスポーツ用眼鏡においては、邪魔加減を最小にし、日除けおよび風除けを最大限にするように、レンズ要素は使用者の顔面の輪郭に実質的に沿うようになっていることを目指している。焦点を合わせることができるように後方視認用のミラーを両目から適切な位置に持ってくるために、本発明はこれらのタイプの眼鏡に特に有用である。レンズ要素は、しばしばただ一つの連続した曲線状透明部分を含むが、横に並べて配置され、使用時に使用者の両目の各々の前に実質的に配置されるような、二つの分離した曲線状透明部分をレンズ要素が含むといった、いくつかの応用例もある。
【0012】
収納部は、レンズ要素の端縁部分にレンズ要素から突出して配置される。収納部は、レンズ要素の外端と同一面に配置されてもよく、あるいは端部に対してある距離をおいて、すなわち収納部がレンズ要素の部分によって取り囲まれているように、配置されてもよい。一実施例においては、収納部はレンズ要素の下方部分に配置されるが、例えば曲線状透明部分の寸法に応じて、あるいは所望の視界に応じて、いかなる好都合な高さに配置することもできる。曲線状透明部分が大きい場合、最良の視界を提供するように、また使用者が最善の後方視野を得ようと彼の/彼女の頭を実質的に動かす必要を無くするように、収納部は、曲線状透明部分がより小さい場合よりも上方に配置してよい。
【0013】
収納部は、任意の適切な材料から作られていてもよい。一実施例において収納部は形状が三角柱として形成されるが、他の多面体の形状を有していてもよい。他の実施例では、収納部は、四つの側壁部とすべての側壁部に接続した一つの端壁部とを有する開放立方体の形状として実質的に形成される。収納部は、他の形状、例えば円柱状、または楕円状のような形状を有していてもよい。大部分の実施例において収納部は、曲線状透明部分の正面部分、すなわち使用者の両目の間の領域をカバーするのに適合した部分における曲線状透明部分の表面に対して実質的に平行となる端壁部を有することになる。
【0014】
収納部は、外側に突き出ている、すなわち、曲線状透明部分の凸面側から外に突き出ていて、曲線状透明部分と突き出た収納部の最も遠い部分との間に垂直の距離を設けている。これが、使用者による使用時に曲線状透明部分よりも使用者の顔面からより遠くの距離に端壁部を置くことになる。収納部の一つの側は開放されていて、使用者に内部への視線が直接届くようにしている。曲線状透明部分と収納部とは一つの一体化したユニットであってよい。例えば、レンズ要素のうち収納部が配置される部分は切り取られるかあるいは最初から空いているものとし、代わりにそこに収納部が置かれ、すなわち収納部はレンズ要素の一部として配置される。収納部と曲線状透明部分とは一つのユニットとして一緒に製造されてもよい。この一体化した設計は、確実に視野の妨害を最小にし、より強靭な構造をもたらし、また光がいくつかの層を通過することで生ずる像の歪みを避けるものである。
【0015】
収納部内にはミラーが配置される。ミラーは、一実施例においては曲線状透明部分の湾曲すなわち突き出た湾曲に関してある角度をもって収納部内に配置される。これは、収納部の形状によって、収納部内のミラーの固定取り付けによって、あるいはミラーを収納部に可動的に接続する角度調節機構を使用することによって達成されうる。これは、装着者の背後からの光がミラーの表面で反射して装着者の目の方に向かうような位置にミラーを配置する。ミラーの角度は、最適の後方視界を提供するために曲線状透明部分の異なる湾曲度に応じて異なったものとなりうる。
【0016】
角度調節機構は、レンズ要素に関するミラーの角度が所望の後方視認を得るように調節されうるようなやり方で、ミラーを調節可能に収納部に接続しうる。一実施例において角度調節機構は収納部の端部壁に接続される。
【0017】
曲線状透明部分(単数または複数)は実質的に左右対称になっており、対称軸を有する。一実施例において、ミラーは、対称軸に対して実質的に垂直になるように収納部に配置されており、これはすなわちミラーが、この眼鏡レンズ要素を有する眼鏡を装着した使用者の動きの方向に対して実質的に垂直であることになる。
【0018】
収納部の主たる目的は、曲線状透明部分に対してミラーをずらして配置することであり、その結果、後方視認に対して必要な視界の深さを提供するために装着者の目から十分な距離を設けることである。一実施例においてミラーはレンズ要素の表面に対して0-1cmずらされており(即ち、オフセットされており)、後方視認に対して必要な視界の深さを許容している。即ち 、収納部は曲線状透明分の表面から0-1cm外に延びており、角度調節機構または他の接続装置の寸法に足しあわせた収納部の突出距離がレンズ要素の外側表面に対してミラーを0-1cmずらして(オフセットして)配置することになる。
【0019】
収納部はただ一つでも良いしあるいは曲線状透明部分の横方向に延在した部分の側端部の両方に収納部を配置しても良い。
【0020】
角度調節機構は、レンズ要素を使用者の各々に適合させるために提供されるもので、使用者は、彼/彼女がより最適の後方視認を得られるような角度にミラーを調節することができることになる。使用者の頭は寸法および形状がそれぞれ異なるから、この調節はレンズ要素を一般向け使用に供するために有用である。
【0021】
角度調節機構は、ボールとソケットとの組み合わせ構成の回転機能によってミラーの角度調節を提供するのに適合したボールおよびソケットを含んでよい。このような機構では、角度調節が三次元で許容される。すなわち、回転と、レンズ要素に対する平行垂直軸の周りを0度と45度との間で縦に上げるまたは下げる動きと、レンズ要素に対する左または右の水平軸の周りを0度および45度だけ偏動させる動きである。他の種類の調節機構も使用してもよい。
【0022】
レンズ要素は、通常は、完全な眼鏡を形成するように使用者の両目の前に所定の空間距離をおいて中央に配置しかつ頭部に保持する手段とともに使用されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
次に本発明を、実施例によってかつ付随する図面を参照して、より詳細に説明する。
【
図1】使用者によって装着された本発明による眼鏡レンズ要素の実施例を備えた眼鏡を図示している。
【
図2】違った角度から見た、
図1と同じ実施例を示す。
【
図4】後方から見た、使用者によって装着された眼鏡を示す。
【
図5】まっすぐ上から見た、本発明によるレンズ要素を備えた眼鏡を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、使用者による前方および後方の両方の視認のために構成された眼鏡レンズ要素10を図示している。レンズ要素10は、一対の眼鏡の一部であり、使用者の頭部に設置するための保持手段14に接続されている。保持手段14は、使用者の両目の前の中央に所定の距離でレンズ要素10を配置するのに適合したものとなっている。レンズ要素10は、使用者の両目の前、上、間および下、ならびに前記使用者の両目の側部から横に使用者の頭部の概略側部までの空間距離に延在する少なくとも一つの曲線状透明部分13を含み、使用者の視界は当該透明部によって実質的に覆われることになる。レンズ要素10はさらに、レンズ要素10の下方部分12における端縁部に配置された収納部11を含み、当該収容部11はレンズ要素から外に突き出ている、すなわち使用者の顔面から離れるように突き出ている。本例において、収納部はレンズ要素の下方の最も遠い端部に設置されるが、他の実施例では収納部はレンズ要素の他の場所に、下端、側端、またはその両方のいずれかに対して少なくともある程度の距離をおいて設置されうる。
【0025】
収納部11には、後方視認のために、内部にミラー15が、その反射面が使用者を向くように配置されている。
【0026】
図2および4は、使用者に彼/彼女の背後で何が進んでいるかを見させることが出来るようにミラー15によって光がどのように反射されるかをより明確に図示している。
図4の例に見られるようにミラー15は使用者の頭の側部を通過した入射光を反射して目に送る。図面から理解することが出来るように、収納部11はレンズ要素10/曲線状透明部分13の表面に置かれてはおらず、レンズ要素の一部を形成しており、レンズ要素の一部分に置き換わったものになっており、その結果、光がいくつかの層を通過することが無いようにしている。
【0027】
図3は、ミラー15が収納部11に関してどのように傾けられるかをより詳細に示している。ミラーは、本実施例においては角度調節機構16に取り付けられており、一方角度調節機構は収納部11に接続されている。角度調節機構はミラー15を収納部11に対して調節可能な状態で接続している。この調節可能な接続は、ミラーが使用者によって調節され使用者の視界の中に反射されてきて使用者の背後の視認のために正しい角度を提供することを確実にするものである。角度調節機構は全方向に動かすことが出来、ミラーの傾斜角度を変更することが出来るようにしている。傾斜は、単にミラーに触れてミラーの面を、使用者が後方視認を得られるような所望の位置に動かすことによって変更することが出来る。他の実施例においては、ミラーは固定位置に設置されその結果角度も固定される。特に
図2および4から理解することが出来るように、曲線状透明部分および収納部は一つの一体化したユニットとして作られている。
【0028】
図5は真上から見た眼鏡レンズ要素50を概略的に図示している。収納部51は曲線状透明部分53の左端に配置されている。収納部は本実施例ではその形状が三角柱として形成されており、その一方の隅の端は透明部分53と同一面をなし、他方は透明部分の端部から距離Aを有している。ミラーは、収納部の外壁の内側に配置されており、その結果曲線状透明部分53の湾曲面に対して角度φを形成している。この図で角度φは、本発明の多くの実施例におけると同様に、使用者の進行方向、ここでは矢印で図示されている、に対して実質的に垂直である。