(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20240612BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240612BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20240612BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20240612BHJP
E04B 5/48 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
E04B1/76 200A
F24F5/00 K
F24F7/08 101Z
F24F7/10 A
E04B5/48 D
(21)【出願番号】P 2023147849
(22)【出願日】2023-09-12
【審査請求日】2024-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】321002651
【氏名又は名称】ファーストウッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】兼井 雅史
(72)【発明者】
【氏名】渡部 歩
(72)【発明者】
【氏名】朝桐 大介
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰輔
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-109786(JP,A)
【文献】登録実用新案第3180823(JP,U)
【文献】特開2009-250442(JP,A)
【文献】登録実用新案第3164069(JP,U)
【文献】特開2016-80311(JP,A)
【文献】特開平11-44011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76
E04B 1/70
F24F 5/00
F24F 7/08
F24F 7/10
F24F 13/02
E04B 5/48
E04F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数階建ての住宅内部全体の冷暖房を行うことができる空調システムであって、
各階あるいは屋根裏又は床下に空調機が設置されるとともに、各部屋にはドアの周囲及び/又は床上又は天井に前記空調機から供給される空気の給排気口が設けられ、
上層階の前記床上の給排気口は階間空間に連通することで、前記住宅内部に空気を循環させており、
前記階間空間は、組み立て木製床梁により構成され、
前記組み立て木製床梁は、
間隔をあけて一列に配置される複数のウエブ部材と、
前記複数のウエブ部材の上辺側を挟み込んだ状態で前記複数のウエブ部材を連結固定する一対の板状部材からなる上部フランジ部材と、
前記複数のウエブ部材の下辺側を挟み込んだ状態で前記複数のウエブ部材を連結固定する一対の板状部材からなる下部フランジ部材
からなり、
前記空気は、前記間隔をあけて一列に配置される複数のウエブ部材の間を通って住宅内部を循環することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記ドアの上部、天井又は床面のいずれかの給排気口には送風ファンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
さらに、外気と室内空気との間で熱交換を行い、該熱交換された外気を前記住宅内部に供給する熱交換型換気装置を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記組み立て木製床梁は、複数の単板積層材により形成されていることを特徴とする請求項3に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数階建ての住宅内部全体の冷暖房を行うことができる空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅などの建物内全体に空調機から空気を送って、空調を行う空調システムについては、従来、様々な構造、機能を有するものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、空気調和機と、空気調和機で空調された空気を複数の居室に搬送するための複数のダクトと、空気調和機で空調された空気を、複数のダクトを介して複数の居室に圧送するための少なくとも一つのファンと、ファンの運転を制御するための制御部を備える全館空調システムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、建物内部を縦に貫く縦空間と、隙間、開口、またはダクトによって通じている室の空調を行なう方法であって、還気ファンによって室の還気の一部を、外気導入口から導入した外気と混合し、熱交換器によって熱交換して温度調整した後に、空調空気として室に供給し、還気の残りの一部は排気口から排気する空調方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような、複数のダクトを用いて各部屋まで空気を運ぶ方式では、ダクトの施工性に課題があり、コストも高い。また、室温と吹き出し温度の差が大きくなるため省エネ性が低いという課題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載されているような、例えば、パイプシャフトのような縦空間を介した空調方法の場合には、ファンの数が多くなり、また、全館連続運転が前提となるため部屋別の温度調整が難しいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2023-33681号公報
【文献】特開2013-113452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、省エネ性、快適性、室温調整、メンテナンス性など総合的な面から優れた空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、複数階建ての住宅内部全体の冷暖房を行うことができる空調システムであって、各階あるいは屋根裏又は床下に空調機が設置されるとともに、各部屋にはドアの周囲及び/又は床上又は天井に空調機による空気の給排気口が設けられ、上層階の床上の給排気口は階間空間に連通することで、住宅内部に空気を循環させており、階間空間は、組み立て木製床梁により構成され、組み立て木製床梁は、間隔をあけて一列に配置される複数のウエブ部材と、複数のウエブ部材の上辺側を挟み込んだ状態で複数のウエブ部材を連結固定する一対の板状部材からなる上部フランジ部材と、複数のウエブ部材の下辺側を挟み込んだ状態で複数のウエブ部材を連結固定する一対の板状部材からなる下部フランジ部材からなり、空気は、間隔をあけて一列に配置される複数のウエブ部材の間を通って住宅内部を循環することを特徴とする。
【0010】
このとき、本発明の一態様では、ドアの上部、天井又は床面のいずれかの給排気口には送風ファンが設けられているとしてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様では、さらに、外気と室内空気との間で熱交換を行い、熱交換された外気を住宅内部に供給する熱交換型換気装置を備えるとしてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様では、組み立て木製床梁は、複数の単板積層材により形成されているとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、省エネ性、快適性、室温調整、メンテナンス性など総合的な面から優れた空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る空調システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る空調システムに関して、ドアの上部の給排気口を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の他の実施形態に係る空調システムの構成を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に関する組み立て木製床梁を示す斜視図である。
【
図5】
図5(A)は、本発明の一実施形態に関する組み立て木製床梁の正面図であり、
図5(B)は、平面図であり、
図5(C)は、側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に関する組み立て木製床梁により構成された階間空間を示す概略図である。
【
図7】
図7(A)は、本発明の一実施形態に係る空調システムを適用した際の暖房時の室内の各高さの温度分布を示した図であり、
図7(B)は、本発明の一実施形態に係る空調システムを適用した際の冷房時の室内の各高さの温度分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る空調システムの構成を示す概略図である。本発明の一態様は、複数階建ての住宅内部全体の冷暖房を行うことができる空調システム100であって、各階(
図1では1階及び2階)に空調機(例えばエアコン)10(11,12)が設置されるとともに、各部屋にはドアの周囲及び/又は床上又は天井に空調機から供給される空気Aの給排気口20(21,22,23,・・・)が設けられ、上層階の床上の給排気口22,23は階間空間30に連通することで、
図1中の矢印に示すように部屋の上部又は下部、及び階間空間30を介して住宅内部に空気Aを循環させている。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係る空調システムに関して、ドアの上部の給排気口を示す概略図である。本発明の一態様では、ドアDの上部の給排気口20には送風ファン35が設けられていることが好ましい。このように、送風ファン35を設けてON/OFFや風量変更を可能にすることで、部屋ごとの室温調整も可能となる。また、送風ファン35をドアの上部に設けることで、気流が直接人に当たるのを防止するとともに、送風ファン35がサーキュレーターとなって室内の空気をかき混ぜることで温度ムラが生じないようになる。例えば、
図1の2階居室に示されているように、ドアの上部の給排気口21に設けられた送風ファン35から冷たい空気が取り込まれ、床上の給排気口22から階間空間30を通って、部屋外へと排出、循環される。送風ファン35は後述するように天井又は床面に設置されていても良い。
【0018】
図1を例として挙げると、空調機(エアコン)12が2階ホールに設置され、空調機12で暖冷房された空気を、空調対象室である2階居室の壁面(ドアの上部)にある送風ファン35が設置された給排気口21から、送風ファン35の動力により空調対象室(2階居室)へと吹き出す。給排気口21から出た空気は空調対象室の天井面に沿って給排気口21と対角方向へと流れる。そして、吹き出された空調空気はおよそ給排気口21と対角に位置する床面の吸い込み口(給排気口22)から、階間空間30を通って給排気口23から2階ホールへと戻って循環を繰り返す。
【0019】
また、本発明の一態様では、空調システム100は、さらに外気と室内空気との間で熱交換を行い、熱交換された外気を住宅内部に供給する熱交換型換気装置40を備えることが好ましい。熱交換型換気装置40を設置することで、例えば、冬場に外気を取り込んで換気を行う際にも、室内の暖められた空気からは熱を吸収して外部に排出するとともに、外から取り込んだ冷たい空気には熱を与えて暖かい空気として室内に取り込むことができるため、省エネ性や快適性を向上させることができる。熱交換型換気装置40にはフィルターを設置して、花粉やPM2.5などの汚染粒子を除去することが望ましい。熱交換型換気装置40に関しては、ダクト等を介して各部屋から空気が排出されるとともに、床下、階間空間等に外からの空気が供給される。
【0020】
図3は、本発明の他の実施形態に係る空調システムの構成を示す概略図である。本発明の他の実施形態では、
図3に示すように、空調システム200において屋根裏及び床下に空調機10(15,16)を設置してもよい。このようにすると、気流が直接人に当たることが少なくなり、また暖房の場合には床下から温めることが可能になる。
図3における場合には、天井や床(例えば、給排気口25,26の箇所)に送風ファン35が設けられて、天井や床下からの冷暖房された空気が室内へと供給される。なお、熱交換型換気装置40は
図1に示すように、階間空間に設置してもよいし、
図3に示すように床下に設置してもよい。
【0021】
図3の例の場合、空調機(エアコン)15が小屋裏空間(屋根裏)に設置され、空調機15で暖冷房された空気を、天井面に設置された給排気口25から空調対象室である2階居室へと吹き出す。この時、例えば、給排気口25に設けた吹き出しグリルのガイドにより風向きを2階居室の天井面に沿って吹き出す方式とすることができる。給排気口25から出た空気は空調対象室の天井面に沿って給排気口25と対角方向へと流れ、吹き出された空調空気は床面の吸い込み口(給排気口27)から、階間空間30を通って給排気口28から2階ホールへと戻り、さらに給排気口29から天井裏に戻って循環を繰り返す。
【0022】
本発明では、階間空間30を組み立て木製床梁により構成することで、階間空間30に空気を通すことができるように構成していることに特徴を有する。次に、本発明の一態様における組み立て木製床梁の構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に関する組み立て木製床梁を示す斜視図であり、
図5(A)は、本発明の一実施形態に関する組み立て木製床梁の正面図であり、
図5(B)は、平面図であり、
図5(C)は、側面図である。
【0023】
本発明の一態様における組み立て木製床梁50は、
図4に示すように、間隔をあけて一列に配置される複数のウエブ部材70(71~75)と、複数のウエブ部材70(71~75)の上辺側を挟み込んだ状態で複数のウエブ部材70(71~75)を連結固定する一対の板状部材からなる上部フランジ部材60U(61,62)と、複数のウエブ部材70の下辺側を挟み込んだ状態で複数のウエブ部材70を連結固定する一対の板状部材からなる下部フランジ部材60L(63,64)とからなる。以下においては、説明の便宜上、フランジ部材60U,60Lが延びる方向をX方向と規定し、フランジ部材60U,60Lの板厚方向をY方向と規定し、X方向及びY方向の双方に直交する方向をZ方向と規定する。なお、以下の説明では、各フランジ部材61~64を区別しない場合には、単にフランジ部材60(60U,60L)として説明し、各ウエブ部材71~75を区別しない場合には、単にウエブ部材70として説明する。
【0024】
本発明の一態様における組み立て木製床梁50において、各フランジ部材61、62、63、64は、
図4、
図5に示すように、正面視において直線状に形成された、X方向に延びる長尺状の板状部材である。フランジ部材61、62は、複数のウエブ部材70(71~75)の上辺側を挟み込んだ状態で複数のウエブ部材70(71~75)を連結固定する上部フランジ部材60Uであり、フランジ部材63、64は、複数のウエブ部材70(71~75)の下辺側を挟み込んだ状態で複数のウエブ部材70(71~75)を連結固定する下部フランジ部材60Lである。各フランジ部材61、62、63、64は、同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。上側に配置されたフランジ部材61、62と、下側に配置されたフランジ部材63、64は、ウエブ部材70を介して、上下に離間した状態で互いに平行に配置されている。フランジ部材70同士の間隔(Z方向における離間距離)は、特に限定されるものではない。
【0025】
組み立て木製床梁50における各フランジ部材60は、一対の板状部材から構成されている。例えば、
図5(B)に示すように、フランジ部材61は板状部材61a、61bから構成され、フランジ部材62は板状部材62a、62bから構成されている。一対の板状部材は、それぞれ同形状に形成され、ウエブ部材70を挟んで互いに対向配置されている。なお、フランジ部材60は、長さの異なる板状部材61a、61b、62a、62b・・・が、前後あるいは上下において互い違いに配置されていればよい。また、板状部材61a、62a・・・及び板状部材61b、62b、・・・は、同じ木材から形成されてもよい。
【0026】
このような組み立て木製床梁50は、
図5(A)に示すように、ウエブ部材70の高さ(Z方向における長さ)を変更することにより、組み立て木製床梁50の梁せいh(Z方向における寸法)を変更することができる。フランジ部材60の全長は、配置される場所に応じて決定される。上部フランジ部材60U(61、62)の長さは、下部フランジ部材60L(63、64)の長さよりも長く形成されている。このため、組み立て木製床梁50の両側における下方側にスペースが形成される。このスペースには、組み立て木製床梁50を下方側から支持する梁や柱等の部材等が配置される。
【0027】
フランジ部材60を構成する各板状部材61a、61b、・・・は、木材により形成され、例えばLVL(Laminated Veneer Lumber: 単板積層材)により形成されているが、これに限定されるものではなく、製材等の木材や鋼材により形成されていてもよい。LVLとは、単板が複数積層された層構造を有するものであり、例えば単板同士を熱圧接着することにより得られる。単板が複数積層されていることにより、フランジ部材60の強度を向上させ、長さ方向における反りや曲がりが発生することを抑制することができる。
【0028】
板状部材61a、61b、・・・(フランジ部材60)の素材は特に限定されるものではないが、フランジ部材60が杉等の比較的柔らかい木材等であってもよい。但し、杉等の木材に限られず、曲げヤング係数の値が、JAS規格の曲げヤング係数区分の60Eに規定される範囲にある素材であればいかなるも木材であってもよい。
【0029】
ウエブ部材70は、正面視四角形状に形成された板状の部材である。ウエブ部材70は、上下のフランジ部材60(上弦材と下弦材との間)に挟まれるように配置され、複数のフランジ部材60同士を連結する。具体的には、ウエブ部材70は、
図4、
図5に示すように、第1ウエブ部材71、第2ウエブ部材72、第3ウエブ部材73、第4ウエブ部材74、第5ウエブ部材75により構成され、例えばこの順(第1~第5の順)でフランジ部材61及びフランジ部材62と、フランジ部材63及びフランジ部材64との間に挟まれた状態でX方向に沿って等間隔に配置され、フランジ部材60同士を連結する。なお、ウエブ部材70同士の間隔は、等間隔に限定されない。また、ウエブ部材70の個数は、5個に限られず特に限定されるものではない。
【0030】
図5(B)に示すように、各ウエブ部材70は、Y方向において一対の板状部材61a、61b、・・・に挟まれた状態で、X方向において一定の間隔を隔てて配置されている。なお、各ウエブ部材70は同じ大きさに形成されているが、一部のウエブ部材70の寸法が異なっていてもよい。例えば、組み立て木製床梁50の長手方向における両側に位置する第1ウエブ部材71及び第5ウエブ部材75のみが、第2ウエブ部材72、第3ウエブ部材73、第4ウエブ部材74よりも幅が狭く形成されてもよい。
【0031】
ウエブ部材70の厚みは、フランジ部材60と同程度であればよく、組み立て木製床梁50に要求される強度に応じて、適宜変更すればよい。ウエブ部材70の高さ(Z方向における寸法)は、例えば20~40センチメートル程度であるが、組み立て木製床梁50が配置される場所を考慮して、適宜変更可能である。ウエブ部材70の高さが変わることに応じて、組み立て木製床梁50の梁せいhも変更される。ウエブ部材70は木材により形成され、フランジ部材60と同じ素材により形成されていてもよく、異なる素材により形成されていてもよい。
【0032】
ウエブ部材70の四隅には、フランジ部材60をウエブ部材70に対して固定する固定部材5が配置されている。具体的には、ビス等の固定部材5は、ウエブ部材70の四隅近傍の位置で、板状部材61a側からウエブ部材70を貫通し、板状部材61bに至るまで差し込まれて固定される。なお、固定部材5は、板状部材61b側からウエブ部材70を貫通し、板状部材61aに至るまで差し込まれて固定されてもよい。
【0033】
このように、フランジ部材60がウエブ部材70の四隅に対して固定されることで、組み立て木製床梁50の強度を高めることができる。なお、固定部材5が配置される箇所はウエブ部材70の四隅に限られず、フランジ部材60がウエブ部材70に対して固定されるのであれば、いかなる場所であってもよい。また、固定部材5は、ビスに限られず、例えば留め付け可能な構造用ビス、ボルトとナットの組合せ、釘、リベット等フランジ部材60とウエブ部材70とを固定する機能を有するのであればいかなる構成のものであってもよい。
【0034】
組み立て木製床梁50には、複数のフランジ部材60と複数のウエブ部材70とにより複数の開口80が形成されている。具体的には
図4乃至
図5に示すように、組み立て木製床梁50のX方向に沿って、貫通した複数の開口80が一列に形成されている。各開口80は、平面視四角形状に形成され、それぞれがほぼ同じ大きさに形成されている。
図4及び
図5(A)に示すように、開口80の幅は、ウエブ部材70の幅とほぼ同じ長さに形成されている。これは、ウエブ部材70が、X方向においてウエブ部材70の幅方向の寸法を隔てて等間隔に配置されているためである。なお、ウエブ部材70は、等間隔に配置されている必要はなく、開口80が形成される程度の間隔を隔てて配置されていればよい。
【0035】
このように、組み立て木製床梁50には、横方向に延びる複数のフランジ部材60と上下方向に延びる複数のウエブ部材70との組合せにより複数の開口80が形成される。即ち、組み立て木製床梁50が、縦方向及び横方向に板状の部材を組合せるとともに、板状の部材間に隙間が形成されたフィーレンディール(Vierendeel)梁状に形成されている。このため、隙間の分だけ材料の使用量を減らすことができ、組み立て木製床梁50の軽量化を図ることができる。
【0036】
図6は、本発明の一実施形態に関する組み立て木製床梁により構成された階間空間を示す概略図である。階間空間30は、一例として
図6に示すように、所定の間隔をあけて設置された横架材90の間をX方向に沿って複数の組み立て木製床梁50が間隔を隔てて平行に配置され、これらの組み立て木製床梁50の両側の端部が横架材90により支持されている。このようにして形成された階間空間30では、組み立て木製床梁50に隙間(開口80)が複数形成されていることにより、隙間(開口80)の間を空調された空気が自由に通過することができ、住宅内を自由に循環させることが可能となる。また、空気を循環させるためのダクトの設置が不要となる。なお、
図6では、2本の横架材90の間に複数の組み立て木製床梁50が配置されているが、階間空間30の広さに応じて、例えば、両端と真ん中の計3本の横架材90を配置して、各端部と真ん中の横架材のそれぞれの間に組み立て木製床梁50を配置してもよい。
【0037】
また、熱交換型換気装置40の設置に際してダクトを通す必要が生じた場合であっても、組み立て木製床梁50内の隙間(開口80)に配管やパイプ等を通すことができ施工性が向上する。更に、ウエブ部材70が、一対の板状部材61a、61b、・・・に挟まれた状態で固定されるため、組み立て木製床梁50の素材が木材であっても、十分な強度を確保することができる。
【0038】
このように、本発明によれば、各階に少なくとも1台の空調機(エアコン)が設置されていれば住宅全体を冷暖房できるため経済的であり、空調機(エアコン)の運転効率がよく省エネを達成できる。また、階間空間を本発明に関する組み立て木製床梁で構成することにより、階間空間や床下空間を通して住宅全体に新鮮な空気を行き渡らせることが可能となる。また、部屋に設けた送風ファンのON/OFFや出力を調整することで、部屋ごとに好みの温度に調整することも可能であり、使わない部屋の送風ファンをOFFにすることで省エネを実現することもできる。また、例えば、部屋のドアの上部から空気を取り込み、対角の位置にある床上の吸排気口から階間空間を通して排出することで、人に気流が当たらずに温度ムラをなくすことができ、いわゆるコアンダ効果と組み立て木製床梁で形成された階間空間による相乗効果を得ることができる。
【実施例】
【0039】
図7(A)は、本発明の一実施形態に係る空調システムを適用した際の暖房時の室内の各高さの温度分布を示した図であり、
図7(B)は、本発明の一実施形態に係る空調システムを適用した際の冷房時の室内の各高さの温度分布を示した図である。
【0040】
従来例では、例えば暖房の場合、温風を天井付近で水平に吹き出すと天井付近が高温、床付近は低温となり上下温度差がつき、不快な環境となる。一方で、本発明に係る空調システムを適用した場合、空調空気が天井に沿って部屋の対角側へ効率的に流れ床から吸い込まれる。部屋の床付近にある低温な空気は床の吸い込み口から吸い込まれていくため、上下温度差も軽減され、部屋全体が均一な温度になる。
図7(A)、(B)に示すように、本発明に係る空調システムを適用することで、冬季(外気温約0℃)及び夏季(外気温約30℃)の過酷な外気条件でも部屋の下部から上部までの温度差が1℃以内であり、部屋全体の温度が均一になっていることが実証された。
【0041】
このように、本発明では、空調の吹き出し口の風向きを変更・制御するような複雑な機構や、室内に別途空気を撹拌して上下温度差を緩和する等の仕組みも不要としながら、空調された室内の上下温度差を軽減させることができる。また、空調の吹き出し空気が天井に沿って流れ、対角位置の床ガラリから吸い込まれていくため住まい手に直接空調空気を当てずに空調を行うことが可能となる。また、足元が冷える現象を緩和し、吹き出し空気の気流感による住まい手の不快感がない空調システムとすることが可能となる。
【0042】
なお、上記のように本発明の一実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0043】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、空調システムの構成も本発明の一実施形態及び実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0044】
5 固定部材、10,11,12,15,16 空調機、20,21,22,23,25,26,27,28,29 給排気口、30 階間空間、35 送風ファン、40 熱交換型換気装置、50 組み立て木製床梁、60,61,62,63,64 フランジ部材、60U 上部フランジ部材、60L 下部フランジ部材、61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64b 板状部材、70,71,72,73,74 ウエブ部材、80 開口、90 横架材、100,200 空調システム
【要約】
【課題】省エネ性、快適性、室温調整、メンテナンス性など総合的な面から優れた空調システムを提供する。
【解決手段】複数階建ての住宅内部全体の冷暖房を行うことができる空調システムであって、各階あるいは屋根裏又は床下に空調機が設置されるとともに、各部屋にはドアの周囲及び/又は床上又は天井に空調機による空気の給排気口が設けられ、上層階の床上の給排気口は階間空間に連通することで、住宅内部に空気を循環させており、階間空間は、組み立て木製床梁により構成され、組み立て木製床梁は、間隔をあけて一列に配置される複数のウエブ部材と、複数のウエブ部材の上辺側を挟み込んだ状態で複数のウエブ部材を連結固定する一対の板状部材からなる上部フランジ部材と、複数のウエブ部材の下辺側を挟み込んだ状態で複数のウエブ部材を連結固定する一対の板状部材からなる下部フランジ部材からなり、空気は、間隔をあけて一列に配置される複数のウエブ部材の間を通って住宅内部を循環することを特徴とする。
【選択図】
図1