(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】改良された銅腐食を有する極圧添加剤
(51)【国際特許分類】
C07C 321/14 20060101AFI20240612BHJP
C07C 319/14 20060101ALI20240612BHJP
C08G 75/02 20160101ALI20240612BHJP
C10M 135/04 20060101ALI20240612BHJP
C10M 151/04 20060101ALI20240612BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240612BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20240612BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20240612BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
C07C321/14
C07C319/14
C08G75/02
C10M135/04
C10M151/04
C10N30:06
C10N30:12
C10N40:02
C10N40:04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023150742
(22)【出願日】2023-09-19
【審査請求日】2023-11-01
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ホッブス、リアナ
(72)【発明者】
【氏名】マコウスカ、マグダレナ
(72)【発明者】
【氏名】ジャコビー、ジョン
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00737674(EP,A2)
【文献】米国特許第03697499(US,A)
【文献】米国特許第04563302(US,A)
【文献】米国特許第05062976(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C10M
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化ポリオレフィンオリゴマーであって、以下の工程:
(a)C2~C18オレフィンをハロゲン化硫黄と反応させて、中間体硫化オレフィン反応生成物を形成する工程と、
(b)前記中間体硫化オレフィン反応生成物を、水溶液中で、アルカリ金属水硫化物、アルカリ金属水酸化物、及び硫黄と反応させて、硫化ポリオレフィン反応生成物を形成する工程と、
(c)前記硫化ポリオレフィン反応生成物を、前記硫化ポリオレフィンオリゴマーを形成するのに有効な時間及び温度で、
アルカリ性水溶液で処理する工程であって、前記
アルカリ性水溶液が、40重量パーセント~60重量パーセント
のアルカリ金属水酸化物
を含み、かつアルコール又はケトンを含まない、工程と、
を含むプロセスによって作製される、硫化ポリオレフィンオリゴマー。
【請求項2】
ASTM D130に従って121℃で180分間、前記硫化ポリオレフィンオリゴマーに浸漬された銅クーポンが、15mg以下の銅重量損失を示し、前記硫化ポリオレフィンオリゴマーの2重量パーセント~5重量パーセントが、APIグループIII基油及びAPIグループIV基油の両方に可溶である、請求項1に記載の硫化ポリオレフィンオリゴマー。
【請求項3】
前記硫化ポリオレフィンオリゴマーが、式I:
R-S
x-R-[S
x-R-S
x]
n-R (式I)
(式中、各Rは独立して、C2~C6直鎖又は分岐鎖の炭素鎖であり、xは、1~5の整数であり、nは、前記硫化ポリオレフィンオリゴマーが300
~800の重量平均分子量を有するような整数である)
の構造を有する、請求項1に記載の硫化ポリオレフィンオリゴマー。
【請求項4】
前記硫化ポリオレフィンオリゴマーが、30重量パーセント~50重量パーセントの硫黄を有する、請求項3に記載の硫化ポリオレフィンオリゴマー。
【請求項5】
前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、n-ペンチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、ヘキセン、オクテン、スチレン、αω-ジオレフィン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、分岐鎖アルファ-オレフィン、メチル-ペンテン、メチル-ヘプテン、又はこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の硫化ポリオレフィンオリゴマー。
【請求項6】
前記ハロゲン化硫黄が、一塩化硫黄、二塩化硫黄、二臭化二硫黄、二臭化硫黄、又はそれらの混合物から選択される、請求項5に記載の硫化ポリオレフィンオリゴマー。
【請求項7】
前記
アルカリ性水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はそれらの組み合わせから選択されるアルカリ金属水酸化物を含む、請求項6に記載の硫化ポリオレフィンオリゴマー。
【請求項8】
APIグループI基油からAPIグループV基油までから選択される主要量の基油と、少量の硫化ポリオレフィンオリゴマーとを含む潤滑組成物であって、前記硫化ポリオレフィンオリゴマーが、以下の工程:
(a)C2~C18オレフィンをハロゲン化硫黄と反応させて、中間体硫化オレフィン反応生成物を形成する工程と、
(b)前記中間体硫化オレフィン反応生成物を、水溶液中で、アルカリ金属水硫化物、アルカリ金属水酸化物、及び硫黄と反応させて、硫化ポリオレフィン反応生成物を形成する工程と、
(c)前記硫化ポリオレフィン反応生成物を、前記硫化ポリオレフィンオリゴマーを形成するのに有効な時間及び温度で、
アルカリ性水溶液で処理する工程であって、前記
アルカリ性水溶液が、40重量パーセント~60重量パーセント
のアルカリ金属水酸化物
を含み、かつアルコール、ケトン又は他のアルカノールを含まない、工程と、
を含むプロセスによって作製される、潤滑組成物。
【請求項9】
ASTM D130に従って121℃で180分間、前記硫化ポリオレフィンオリゴマーに浸漬された銅クーポンが、15mg未満の銅重量損失を示し、前記硫化ポリオレフィンオリゴマーの2重量パーセント~5重量パーセントが、APIグループIII基油及びAPIグループIV基油の両方に可溶である、請求項8に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
前記硫化ポリオレフィンオリゴマーが、式I:
R-S
x-R-[S
x-R-S
x]
n-R (式I)
(式中、各Rは独立して、C2~C6直鎖又は分岐鎖の炭素鎖であり、xは、1~5の整数であり、nは、前記硫化ポリオレフィンオリゴマーが300
~800の重量平均分子量を有するような整数である)
の構造を有する、請求項8に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
前記硫化ポリオレフィンオリゴマーが、30重量パーセント~50重量パーセントの硫黄を有する、請求項10に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、n-ペンチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、ヘキセン、オクテン、スチレン、αω-ジオレフィン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、分岐鎖アルファ-オレフィン、メチル-ペンテン、メチル-ヘプテン、又はこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
前記ハロゲン化硫黄が、一塩化硫黄、二塩化硫黄、二臭化二硫黄、二臭化硫黄、又はそれらの混合物から選択さ
れ、請求項12に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
前記処理することが、100℃~150℃の温度で1時間~5時間であり
、
前記潤滑組成物において、前記アルカリ性水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はそれらの組み合わせから選択されるアルカリ金属水酸化物を含む、
請求項7に記載の硫化ポリオレフィンオリゴマー又は請求項13に記載の潤滑組成物。
【請求項15】
(i)工程(a)の前記中間体硫化オレフィン反応生成物が、0.3モル~0.8モルの前記ハロゲン化硫黄当た
り0.4モル
~2モルの前記C2~C18オレフィンを反応させることによって得られ、
工程(b)の前記硫化ポリオレフィン反応生成物が、前記中間体硫化オレフィン反応生成物1モル当たり0.2モル~0.5モルの硫黄、前記中間体硫化オレフィン反応生成物1モル当たり0.7モル~1.1モルの前記アルカリ金属水酸化物を、0.01:1~0.25:1の硫黄対前記アルカリ金属水硫化
物の重量比で反応させることによって得られ、
工程(c)の前記硫化ポリオレフィンオリゴマーが、前記硫化ポリオレフィン反応生成物を、
前記硫化ポリオレフィン反応生成物および前記アルカリ性水溶液の総量に基づき10重量パーセント~50重量パーセントの
量の前記アルカリ性水溶液であって、40重量パーセント~60重量パーセントのアルカリ金属水酸化物を有する前記
アルカリ性水溶液で処理することによって得られるか、
又は
(ii)前記中間体硫化オレフィン反応生成物が、一塩化硫黄、二塩化硫黄、若しくはその組み合わせを、C2~C4オレフィンと反応させることによって得られ、前記硫化ポリオレフィン反応生成物が、前記中間体硫化オレフィン反応生成物を水硫化ナトリウム、水酸化ナトリウム、及び元素硫黄と反応させることによって得られ、
工程(c)の前記アルカリ性水溶液が水酸化ナトリウム水溶液であり、前記硫化ポリオレフィン反応生成物が、
前記硫化ポリオレフィン反応生成物および前記水酸化ナトリウム水溶液の総量に基づき12重量パーセント~40重量パーセントの
量の前記水酸化ナトリウム水溶液で処理されて、前記硫化ポリオレフィンオリゴマーを形成する、
請求項1に記載の硫化ポリオレフィンオリゴマー又は請求項8に記載の潤滑組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極圧添加剤、並びに極圧、摩擦、及び/又は銅腐食に対して改善された特性を有する、ギア油、ドライブライン用途、車軸流体、及び/又は動力伝達流体に好適なそのような添加剤を含む潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ギア、トランスミッション、及び/又は車軸は、一般に、所望の用途に適した特定の摩擦特性を提供する潤滑剤を必要とする。典型的には、このような用途は、流体が、他の性能要件の中でも、適切な極圧性能、適切な摩擦特性、及び適切な銅腐食性能を有することを必要とする。所望の性能を達成するために、多くの添加剤が潤滑剤に含まれ得る。例えば、そのような潤滑剤は、ギア及び他の構成要素を摩耗及びスコーリングから保護するために硫化添加剤を含むことが多く、硫化イソブチレンオリゴマー又はポリマーは、そのような用途のための1つの例示的な極圧添加剤である。しかしながら、硫化イソブチレンオリゴマー又はポリマーは、良好な極圧及び/又は摩耗性能を提供し得るが、そのような硫化添加剤は、銅及び銅合金に有害である傾向があり、許容できない銅腐食をもたらす。更に、いくつかの硫化イソブチレンオリゴマー又はポリマーは、場合によっては、ポリアルファオレフィン(PAO)基油などのAPIグループIV基油に不溶性であるという望ましくない欠点も有し、これは、いくつかの用途におけるそのような添加剤の使用を制限し得る。
【発明の概要】
【0003】
1つのアプローチ又は実施形態において、3工程プロセスによって作製される硫化ポリオレフィンオリゴマーが本明細書に記載される。アプローチでは、生成物は、(a)C2~C18オレフィンをハロゲン化硫黄と反応させて、中間体硫化オレフィン反応生成物を形成する工程と、(b)中間体硫化オレフィン反応生成物を、水溶液中で、アルカリ金属水硫化物、アルカリ金属水酸化物、及び硫黄と反応させて、硫化ポリオレフィン反応生成物を形成する工程と、(c)硫化ポリオレフィン反応生成物を、改善された硫化ポリオレフィンオリゴマーを形成するのに有効な時間及び温度で、アルカリ水溶液で処理する工程とを含む、プロセスによって作製される。
【0004】
他のアプローチ又は実施形態では、前段落に記載される生成物は、任意の組み合わせで、任意選択の特性又は実施形態を含み得る。これらの任意選択の特徴又は実施形態は、以下の1つ以上を含むことができる:ASTM D130に従って約121℃で約180分間、硫化ポリオレフィンオリゴマーに浸漬された銅クーポンが、約15mg以下の銅重量損失を示し、硫化ポリオレフィンオリゴマーの約2重量パーセント~約5重量パーセントが、APIグループIII基油及びAPIグループIV基油の両方に可溶であり;並びに/又は硫化ポリオレフィンオリゴマーが、式I:R-Sx-R-[Sx-R-Sx]n-R(式I)[式中、各Rは独立して、C2~C6直鎖若しくは分岐鎖の炭素鎖であり、xは1~5の整数であり、nは硫化ポリオレフィンオリゴマーが約300~約800の重量平均分子量を有するような整数である]の構造を有し;並びに/又は硫化ポリオレフィンオリゴマーが、約30重量パーセント~約50重量パーセントの硫黄を有し;並びに/又はオレフィンが、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、n-ペンチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、ヘキサン、オクタン、スチレン、αω-ジオレフィン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、分岐鎖アルファ-オレフィン、メチル-ペンテン、メチル-ヘプテン、若しくはこれらの混合物からなる群から選択され;並びに/又はハロゲン化硫黄が、一塩化硫黄、二塩化硫黄、二臭化二硫黄、二臭化硫黄、若しくはこれらの混合物からなる群から選択され;並びに/又はアルカリ水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム若しくはそれらの組み合わせから選択されるアルカリ金属水酸化物を含み;並びに/又は処理することが、約100℃~約150℃の温度で約1時間~約5時間であり;並びに/又は処理することが、約10重量パーセント~約50重量パーセントのアルカリ水溶液を含み;並びに/又はアルカリ水溶液が、約40重量パーセント~約60重量パーセントのアルカリ金属水酸化物であり、かつアルコール若しくはケトンを含まず;並びに/又は工程(a)の中間体硫化オレフィン反応生成物が、約0.3モル~約0.8モルのハロゲン化硫黄当たり約0.4モル~約2モルのC2~C18オレフィンを反応させることによって得られ;並びに/又は工程(b)の硫化ポリオレフィン反応生成物が、中間体硫化オレフィン反応生成物1モル当たり約0.2モル~約0.5モルの硫黄、中間体硫化オレフィン反応生成物1モル当たり約0.7モル~約1.1モルのアルカリ金属水酸化物を、0.01:1~約0.25:1の硫黄対アルカリ金属水硫化ナトリウムの重量比で反応させることによって得られ;並びに/又は工程(c)の硫化ポリオレフィンオリゴマーが、硫化ポリオレフィン反応生成物を、約10重量パーセント~50重量パーセントの、約40重量パーセント~約60重量パーセントのアルカリ金属水酸化物を有するアルカリ水溶液で処理することによって得られ;並びに/又は中間体硫化オレフィン反応生成物が、一塩化硫黄、二塩化硫黄、若しくはその組み合わせを、C2~C4オレフィンと反応させることによって得られ、硫化ポリオレフィン反応生成物が、中間体硫化オレフィン反応生成物を水硫化ナトリウム、水酸化ナトリウム、及び元素硫黄と反応させることによって得られ、硫化ポリオレフィン反応生成物が、約12重量パーセント~約40重量パーセントの水酸化ナトリウム水溶液で処理されて、硫化ポリオレフィンオリゴマーを形成する。
【0005】
他のアプローチ又は実施形態において、APIグループI基油からAPIグループV基油までから選択される主要量の基油と、少量の硫化ポリオレフィンオリゴマーとを含む潤滑組成物が本明細書に記載される。ある態様では、硫化ポリオレフィンオリゴマーは、(a)C2~C18オレフィンをハロゲン化硫黄と反応させて、中間体硫化オレフィン反応生成物を形成する工程と、(b)中間体硫化オレフィン反応生成物を、水溶液中で、アルカリ金属水硫化物、アルカリ金属水酸化物、及び硫黄と反応させて、硫化ポリオレフィン反応生成物を形成する工程と、(c)硫化ポリオレフィン反応生成物を、硫化ポリオレフィンオリゴマーを形成するのに有効な時間及び温度で、アルカリ水溶液で処理する工程とを含む、プロセスによって作製される。
【0006】
前段落で記載された潤滑組成物は、任意の組み合わせで、1つ以上の任意選択的な特徴又は実施形態と組み合わされ得る。そのような特徴又は実施形態は、以下の1つ以上を含むことができる:ASTM D130に従って約121℃で約180分間、硫化ポリオレフィンオリゴマーに浸漬された銅クーポンが、約15mg未満の銅重量損失を示し、硫化ポリオレフィンオリゴマーの約2重量パーセント~約5重量パーセントが、APIグループIII基油及びAPIグループIV基油の両方に可溶であり;並びに/又は硫化ポリオレフィンオリゴマーが、式I:R-Sx-R-[Sx-R-Sx]n-R(式I)[式中、各Rは独立して、C2~C6直鎖若しくは分岐鎖の炭素鎖であり、xは1~5の整数であり、nは硫化ポリオレフィンオリゴマーが約300~約800の重量平均分子量を有するような整数である]の構造を有し;並びに/又は硫化ポリオレフィンオリゴマーが、約30重量パーセント~約50重量パーセントの硫黄を有し;並びに/又はオレフィンが、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、n-ペンチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、ヘキサン、オクタン、スチレン、αω-ジオレフィン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、分岐鎖アルファ-オレフィン、メチル-ペンテン、メチル-ヘプテン、若しくはこれらの混合物からなる群から選択され;並びに/又はハロゲン化硫黄が、一塩化硫黄、二塩化硫黄、二臭化二硫黄、二臭化硫黄、若しくはこれらの混合物からなる群から選択され;並びに/又はアルカリ水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、若しくはそれらの組み合わせから選択されるアルカリ金属水酸化物を含み;並びに/又は処理することが、約100℃~約150℃の温度で約1時間~約5時間であり;並びに/又は処理することが、約10重量パーセント~約50重量パーセントのアルカリ水溶液を含み;並びに/又はアルカリ水溶液が、約40重量パーセント~約60重量パーセントのアルカリ金属水酸化物であり、かつアルコール、ケトン若しくは他のアルカノールを含まず;並びに/又は工程(a)の中間体硫化オレフィン反応生成物が、約0.3モル~約0.8モルのハロゲン化硫黄当たり約0.4モル~約2モルのC2~C18オレフィンを反応させることによって得られ;並びに/又は工程(b)の硫化ポリオレフィン反応生成物が、中間体硫化オレフィン反応生成物1モル当たり約0.2モル~約0.5モルの硫黄、中間体硫化オレフィン反応生成物1モル当たり約0.7モル~約1.1モルのアルカリ金属水酸化物を、0.01:1~約0.25:1の硫黄対アルカリ金属水硫化ナトリウムの重量比で反応させることによって得られ;並びに/又は工程(c)の硫化ポリオレフィンオリゴマーが、硫化ポリオレフィン反応生成物を、約10重量パーセント~50重量パーセントの、約40重量パーセント~約60重量パーセントのアルカリ金属水酸化物を有するアルカリ水溶液で処理することによって得られ;並びに/又は中間体硫化オレフィン反応生成物が、一塩化硫黄、二塩化硫黄、若しくはその組み合わせを、C2~C4オレフィンと反応させることによって得られ、硫化ポリオレフィン反応生成物が、中間体硫化オレフィン反応生成物を水硫化ナトリウム、水酸化ナトリウム、及び元素硫黄と反応させることによって得られ、硫化ポリオレフィン反応生成物が、約12重量パーセント~約40重量パーセントの水酸化ナトリウム水溶液で処理されて、硫化ポリオレフィンオリゴマーを形成する。
【0007】
更に他の実施形態では、硫化ポリオレフィン反応生成物を処理するための、本概要の任意の実施形態に記載されるような苛性洗浄又は処理の使用は、硫化ポリオレフィンオリゴマーを形成するために開示され、ここで、ASTM D130に従って約121℃で約180分間、硫化ポリオレフィンオリゴマーに浸漬された銅クーポンは、約15mg未満の銅重量損失を示し、硫化ポリオレフィンオリゴマーの約2重量パーセント~約5重量パーセントが、APIグループIII基油及びAPIグループIV基油の両方に可溶である。
【0008】
本開示の他の実施形態は、本明細書に開示した発明の明細書及び発明の実施を考慮すれば、当業者には明らかであろう。以下の用語の定義は、本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために提供する。
【0009】
「ギア油」、「ギア流体」、「ギア潤滑剤」、「基ギア潤滑剤」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑剤」、及び「潤滑流体」という用語は、本明細書で考察されるような、主要量の基油と、少量の添加剤組成物と、を含む、最終潤滑生成物を指す。このようなギア流体は、例えば、変速機及び/又はリミテッド・スリップ・ディファレンシャルでは、金属と金属との接触状態を有する変速機及びギア駆動構成要素などの極圧状態において使用するものである。
【0010】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、その通常の意味で使用され、当業者には既知である。具体的には、それは、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基と、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素のうちの1つ以上を含有する置換炭化水素置換基と、から独立して選択され、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個ごとに存在する。
【0011】
本明細書で使用する場合、「重量パーセント」又は「重量%」という用語は、別段の断りがない限り、列挙した成分の組成物全体の重量に対して表す百分率を意味している。本明細書の全てのパーセント数は、別段の指定がない限り、重量パーセントである。
【0012】
本明細書で使用される用語「可溶性」、「油溶性」、又は「分散性」は、化合物又は添加剤が可溶性、溶解性、混和性、又は油中にあらゆる割合で懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が用いられる環境においてそれらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで油中に可溶性、懸濁性、溶解性、又は安定して分散性であることを意味している。更に、所望ならば、他の添加剤を更に組み込むと、より高いレベルの特有な添加剤を組み込むことも可能になり得る。
【0013】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、約1個~約200個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指している。本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、約3個~約30個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換不飽和鎖部分を指している。本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、及び/又はヘテロ原子、例えば、限定するものではないが窒素及び酸素を含み得る単環及び多環芳香族化合物を指している。
【0014】
本明細書で使用される場合、分子量は、市販のポリスチレン標準(較正基準として約180~約18,000のMnを有する)を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって測定される。本明細書の任意の実施形態の分子量(Mn)は、Watersから入手されるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器又は類似の機器、及びWaters Empower Software又は類似のソフトウェアで処理されたデータを用いて決定され得る。GPC機器には、Waters分離モジュール及びWaters屈折率検出器(又は同様の任意選択の機器)を設けることができる。GPC操作条件は、ガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、×粒子サイズ5μ、及び細孔サイズの範囲100Å~10000Å)、約40℃のカラム温度を含み得る。非安定化HPLCグレードのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)は、1.0mL/分の流量で溶媒として使用され得る。GPC機器は、500g/モル~380,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリスチレン(polystyrene、PS)標準で較正され得る。較正曲線は、500g/モル未満の質量を有する試料について外挿することができる。試料及びPS標準は、THFに溶解し、0.1重量パーセント~0.5重量パーセントの濃度で調製することができ、濾過せずに使用することができる。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,223号にも記載されている。GPC法は、更に分子量分布情報を提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるW. W. Yau, J. J. Kirkland and D. D. Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons, New York, 1979も参照されたい。
【0015】
本明細書で使用される場合、任意の報告された硫黄部分分布又は比(すなわち、-Sx-)は、5mmのBBO Prodigyプローブ(又は同等物)を備えたBruker Avance-3 HD 500MHz機器によるCNMRを使用して決定された。試料をクロロホルム-dに溶解し、1H NMR一次元(1D)及び二次元(2D)同種核実験については約3%(wt/wt)、13C 1D及び2D異種核実験については約30%(wt/wt)とした。クロロホルム-dを化学シフト基準として使用し、それぞれdH=7.27及びdC=77.0ppmであった。実験は周囲温度で行った。直接観測1D1H及び13C-1Hデカップリング実験は、90度パルス幅、5×T1遅延及び13C NMR実験のためのゲート1Hデカップリングを使用して、定量的条件下で実施した。加えて、135度パルスオプションを使用した偏光移動による歪みのない増強(DEPT)実験も得られた。構造帰属を補助するために使用した2D実験は、同種核相関分光法(COSY)、異種核1量子コヒーレンス法(HSQC)及び異種核多結合相関分光法(HMBC)であった。全てのNMRデータは、Bruker Inc(Billerica MA)製のBruker Topspin 3.62ソフトウェアを使用して取得し、Advanced Chemistry Development,Inc.製のACD/Spectrus Processor 2021.1.3ソフトウェアを使用して、標準パラメータ(又は同等の機器/ソフトウェア)を使用して処理した。
【0016】
本開示全体を通して、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」などは、オープンエンドであると考えられ、明示的に列挙されていない任意の要素、工程、又は配合成分を含むことを理解すべきである。「から本質的になる」という句は、任意の明示的に列挙された要素、工程、又は配合成分、及び本発明の基本的及び新規の態様に実質的に影響を及ぼさない任意の追加の要素、工程、又は配合成分を含むことを意味している。本開示はまた、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」を使用して記載される任意の組成物は、具体的に列挙されたその成分「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」同じ組成物の開示を含むものとして解釈されるべきであることも企図している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】1つの比較例及び本開示の2つの本発明の硫化イソブチレンオリゴマーを含むグループIII基油中の3つの潤滑油添加剤の画像であり、各容器中の透明な溶液を考慮すると、全てのオリゴマーがグループIII油に可溶であることを示す。
【
図2】1つの比較例及び本開示の2つの本発明の硫化イソブチレンオリゴマーを含むグループIV基油中の3つの潤滑油添加剤の画像であり、比較例の硫化イソブチレンオリゴマーがグループIV油に可溶でなかったこと(左の容器)、及び2つの本発明の硫化イソブチレンオリゴマーが透明な溶液を考慮してグループIV油に可溶であったこと(中央及び右の容器)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示のアプローチ又は実施形態において、硫化ポリオレフィンオリゴマー又はポリマー極圧剤、並びにドライブライン、ギア流体、動力伝達流体、及び/若しくは車軸用途に好適なそのような極圧剤を含む潤滑組成物が提供される。本明細書の硫化ポリオレフィンオリゴマー又はポリマー極圧添加剤は、低レベルの銅腐食、APIグループIII及びグループIV基油への溶解度、及び/又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上と組み合わせて、良好な極圧性能を提供する。
【0019】
一態様では、本開示の硫化ポリオレフィンオリゴマー又はポリマー極圧剤は、少なくとも以下の工程:(a)オレフィン(C2~C18オレフィンなど)をハロゲン化硫黄と反応させて、付加物又は中間体硫化オレフィン反応生成物を形成する工程と、(b)付加物又は中間体硫化オレフィン反応生成物を、水溶液中で、アルカリ金属水硫化物、アルカリ金属水酸化物、及び硫黄源と反応させて、硫化ポリオレフィン反応生成物を形成する工程と、(c)硫化ポリオレフィン反応生成物を、本開示の硫化ポリオレフィンオリゴマー極圧剤を形成するのに有効な時間及び温度で、アルカリ水溶液で洗浄又は処理する工程と、を含む3工程プロセスによって作製される。得られた硫化ポリオレフィンオリゴマー又はポリマーは、極圧添加剤として使用することができ、アプローチ又は実施形態において、APIグループIII基油とAPIグループIV基油の両方における改善された銅腐食及び/又は改善された溶解性を提供する。例えば、ASTM D130に従って約121℃で約180分間、(本願の3工程プロセスによって作製された)硫化ポリオレフィンオリゴマーに浸漬された銅クーポンは、約15mg以下の銅重量損失(好ましくは、約10mg以下の銅重量損失又は約5mg以下の銅重量損失)を示し、硫化ポリオレフィンオリゴマーの約2重量パーセント~約5重量パーセント(好ましくは、2重量パーセント~4重量パーセント)は、APIグループIII基油及びAPIグループIV基油の両方に可溶である。
【0020】
他のアプローチ又は実施形態では、硫化ポリオレフィンオリゴマー又はポリマーは、上記の3工程プロセスによって調製される場合、別個のポリスルフィド分子とは異なり、式Iの構造を有するポリマー又はオリゴマーであり:
R-Sx-R-[Sx-R-Sx]n-R(式I)
式中、各Rは独立して、オレフィン(好ましくは、C2~C6直鎖又は分岐鎖の炭素鎖若しくはヒドロカルビル基又は以下に記載されるような他のオレフィン)に由来し、xは少なくとも1の整数であり、好ましくは1~5の整数(又は2~4の整数又は2~3の整数)であり、nは硫化ポリオレフィンオリゴマー又はポリマーが約300~約800、好ましくは約500~約750、又はより好ましくは約600~約750の重量平均分子量を有するような整数である。アプローチにおいて、硫化ポリオレフィンオリゴマーは、約30重量パーセント~約50重量パーセントの全硫黄、好ましくは約40重量パーセント~約50重量パーセントの全硫黄、より好ましくは約40重量パーセント~約45重量パーセントの全硫黄を有する。以下で更に説明するように、本明細書の硫化ポリオレフィンオリゴマーは、3工程プロセスによって作製される。
【0021】
このプロセスの第1の工程は、オレフィンとハロゲン化硫黄とを反応させて付加物又は中間体硫化オレフィン反応生成物を形成することである。この第1の反応工程に好適なオレフィンは、任意の不飽和脂肪族炭化水素であってもよく、いくつかのアプローチでは、2個~18個の炭素原子、他のアプローチでは、2個~12個の炭素、又は更なるアプローチでは、2個~6個の炭素を有するオレフィンである。好適なオレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテン、2-メチル-2-ペンテン、2-エチル-2-ブテン、ネオペンチレン、ヘキサン、オクタン、スチレン、αω-ジオレフィン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、分岐鎖アルファ-オレフィン、メチル-ペンテン、メチル-ヘプテンなどのオレフィン、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適なオレフィンとしては、イソブテン、2-メチル-1-ブテン、1-メチル-2-ブテン、2-メチル-2-ペンテンなど、並びにそれらの混合物などの分岐オレフィンも挙げることができる。好ましくは、オレフィンはイソブチレンである。
【0022】
第1の反応工程の付加物又は中間体硫化オレフィン反応生成物を調製するために好適なハロゲン化硫黄反応物は、一塩化硫黄、二塩化硫黄、二臭化二硫黄、二臭化硫黄、又はそれらの混合物から選択され得る。好ましくは、ハロゲン化硫黄は一塩化硫黄であり、当業者にはS2Cl2であることが理解される。
【0023】
アプローチにおいて、選択されたオレフィンは、本明細書の極圧添加剤を形成するための第1の工程として、気体又は液体としてハロゲン化硫黄に添加されて、付加物又は中間体硫化オレフィン反応生成物を形成してもよい。好ましくは、オレフィンはハロゲン化硫黄の表面下に気体として添加される。実際には、ハロゲン化硫黄との反応が発熱損失によって示されるように停止するまで、選択されたオレフィンが添加される。アプローチでは、ハロゲン化硫黄(一塩化硫黄など)0.3モル~0.8モル当たり約0.4モル~約2モルのオレフィンが、本明細書の方法の第1の反応工程のために好適である。
【0024】
アプローチでは、オレフィンとハロゲン化硫黄との付加物(すなわち、中間体硫化オレフィン反応生成物)は、第1のプロセス工程において、アルカノール促進剤、ケトン、又は他のアルコール媒体を含まずに、又はそれらを利用せずに形成される。好ましくは、反応は、より高い反応温度を可能にする水性媒体中で行われる。本明細書中で使用される場合、アルカノール促進剤は、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどの、1個~4個の炭素原子を有する任意の低級アルコールである。本明細書で使用される場合、アルコール、ケトン、又はアルカノール促進剤なしで、又はそれらを含まないとは、そのようなプロセス工程が、約1パーセント以下のアルコール、ケトン、若しくはアルカノール促進剤を有する、約0.5重量パーセント以下、約0.25重量パーセント以下、約0.1重量パーセント以下のアルコール、ケトン、若しくはアルカノール促進剤を有するか、又はアルコール、ケトン、若しくはアルカノール促進剤を有さないことを意味する。
【0025】
付加物形成工程は、反応を進行させるのに十分に高い任意の温度で行うことができる。アプローチ又は実施形態では、付加物又は中間体硫化オレフィン反応生成物は、約0℃~約100℃で、他のアプローチでは約0℃~約75℃で、更に他のアプローチでは約0℃~約40℃で、更に別のアプローチでは約5℃~約40℃で、又は約20℃~約40℃の温度で進行する。
【0026】
付加物形成工程は、ハロゲン化硫黄とオレフィンとの間の反応を完了させるのに十分な時間行われるべきである。これは、通常、熱除去によって制限され、アプローチにおいて、オレフィン供給速度は、反応温度を所望の範囲内に保持するように制御され得る。ハロゲン化硫黄が消費されると、温度は低下する。必要であれば、反応を更に継続するために外部から熱を加えてもよい。
【0027】
次に、形成された付加物又は形成された中間体硫化オレフィン反応生成物は、第2の工程において、アルカリ性水性媒体中で更なる硫黄源と処理又は反応されて、硫化ポリオレフィン反応生成物を形成する。更なる硫黄源は、元素硫黄及び/又は金属硫化物、例えば、水硫化ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化ビスマス、硫化銅、硫化水素、硫化マンガン、硫化スズ、及び同様の硫黄源、又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。好ましくは、硫黄源は、元素硫黄又はアルカリ金属硫化物若しくは水硫化物によって提供され、最も好ましくは、元素硫黄と水硫化ナトリウムとの組み合わせによって提供される。アプローチでは、このセクションの反応工程のアルカリ性水性媒体は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど、又はそれらの組み合わせなどのアルカリ金属水酸化物(40重量パーセント~60重量パーセント水溶液など)を含む。好ましくは、この第2の反応工程のアルカリ性水性媒体は、水酸化ナトリウム、より好ましくは50パーセントの水酸化ナトリウム水溶液を含む。第2の反応工程中にプロパノールなどの任意のアルカノールを使用してもよい。
【0028】
アプローチにおいて、この第2の反応工程のアルカリ性水性媒体は、0.2:1~約0.5:1のこの第2の工程中に投入される硫黄原子対第1の工程からの付加物のモル比を含んでもよく、他のアプローチでは、約0.22:1~約0.4:1、又は更なるアプローチでは、約0.25:1~約0.3:1のモル比を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書の方法の第2の反応工程はまた、約0.01:1~約0.25:1の元素硫黄対金属硫化物(NaSHなど)の重量比を有してもよく、いくつかのアプローチでは、約0.04:1~約0.2:1、及び他のアプローチでは、約0.08:1~約0.1:1の元素硫黄対金属硫化物(NaSHなど)の重量比を有してもよい。
【0029】
金属硫化物及び元素硫黄が第2の反応工程において更なる硫黄源として使用される場合、水性媒体は、塩基性溶液、典型的には上記のような金属水酸化物又はアルカリ金属水酸化物の水溶液を更に含む。1つのアプローチでは、アルカリ性水性媒体は好ましくは水酸化ナトリウムを含み、付加物1モル当たり約0.7モルを超える水酸化ナトリウム、好ましくは付加物1モル当たり約0.8モルを超える水酸化ナトリウム、最も好ましくは付加物1モル当たり約0.8モル~約1.1モルの範囲の水酸化ナトリウムを含んでもよい。
【0030】
第2の反応工程の1つのアプローチにおいて、アルカリ性水溶液は、付加物又は中間体硫化オレフィン反応生成物を添加する前に、最初に加熱される。実施形態では、アルカリ溶液は、約50℃以上に、約60℃以上に、又は約70℃以上に、好ましくは約45℃~約65℃又は約50℃~約65℃に加熱される。次いで、付加物又は中間体を、最大約10時間、好ましくは約2時間~約4時間撹拌しながら添加する。次いで、混合物を、硫化ポリオレフィン反応生成物を含有する有機相を形成するのに十分な時間、高温に維持する。
【0031】
上記の2つの反応工程から形成された硫化ポリオレフィン反応生成物は、極圧添加剤として使用され得るが、銅に対して腐食性が高く、状況によっては、実施例で以下に例示されるAPIグループIV基油に溶解しないという欠点を有する傾向がある。したがって、本明細書における方法は、第3の方法工程において、改善された銅腐食性及びグループIV基油溶解度を有する本開示の硫化ポリオレフィンオリゴマーを形成するために有効な時間及び温度で、苛性溶液又はアルカリ性水溶液による洗浄又は処理工程を使用して、形成された硫化ポリオレフィン反応生成物を更に処理又は洗浄する。
【0032】
あるアプローチでは、本開示の第3の方法工程は、第2のプロセス工程からの形成された硫化ポリオレフィン反応生成物を、苛性溶液又はアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ性水溶液で洗浄又は処理する。アプローチ又は実施形態では、苛性アルカリ溶液又はアルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はそれらの組み合わせを含む。好ましくは、この最終処理又は洗浄工程は、水酸化ナトリウムの苛性溶液を使用する。洗浄又は処理工程は、約100℃以上の温度、例えば、約100℃~約150℃(他のアプローチでは、約100℃~約130℃、又は更に他のアプローチでは、約105℃~約115℃)の温度で、約1時間~約5時間(他のアプローチでは、約2時間~約4時間、又は他のアプローチでは、約2時間~約3時間)であり得る。
【0033】
いくつかのアプローチでは、洗浄又は処理工程は、洗浄工程における硫化ポリオレフィン反応生成物及び苛性アルカリ溶液の総量に基づき、約10重量パーセント~約50重量パーセントの苛性アルカリ/水性アルカリ溶液、又は他のアプローチでは、約10重量パーセント~約20重量パーセント若しくは約30重量パーセント~約50重量パーセントの苛性アルカリ/水性アルカリ溶液を含む。好ましくは、洗浄工程で使用されるアルカリ性水溶液は、約40重量パーセント~約60重量パーセントのアルカリ金属水酸化物(好ましくは、苛性アルカリ又は水酸化ナトリウムの50%溶液)を含み、上述のアルコール、ケトン、及び/又はアルカノール促進剤を含まない水溶液である。例えば、洗浄又は最終処理工程は、アルコール、ケトン、又はアルカノール促進剤を含まず、そのような文脈では、最終洗浄又は処理工程において、約1パーセント以下のアルコール、ケトン、若しくはアルカノール促進剤を有する、約0.5重量パーセント以下、約0.25重量パーセント以下、約0.1重量パーセント以下のアルコール、ケトン、若しくはアルカノール促進剤を有するか、又はアルコール、ケトン、若しくはアルカノール促進剤を有さない。
【0034】
1つの好ましいアプローチでは、付加物又は中間体硫化オレフィン反応生成物は、プロセスの第1の工程において、一塩化硫黄、二塩化硫黄、又はそれらの組み合わせ(及び好ましくは、一塩化硫黄)をC2~C4オレフィン(及び好ましくは、イソブチレン)と反応させることによって得られる。次に、硫化ポリオレフィン反応生成物は、本方法の第2の工程において、付加物又は中間体硫化オレフィン反応生成物を、水硫化ナトリウム、水酸化ナトリウム、及び元素硫黄と反応させることによって得られる。最後に、硫化ポリオレフィン反応生成物は、改善された銅腐食及び改善されたAPIグループIV基油溶解度を有する本開示の最終硫化ポリオレフィンオリゴマー又はポリマーを形成するための時間及び温度で、プロセスの第3又は最終工程において、約15重量パーセント~約40重量パーセントの苛性アルカリ又は水性水酸化ナトリウムで処理又は洗浄される。
【0035】
以下の実施例に示されるように、硫化ポリオレフィンオリゴマー又はポリマーを形成するための本明細書中の3工程プロセスは、低い銅腐食及びAPIグループIV基油(例えば、ポリアルファオレフィン)中の溶解度も示す極圧添加剤を形成する。更に、高レベルの硫黄は、典型的には銅腐食に有害であるが、本明細書の潤滑組成物が本明細書の方法によって作製された硫化ポリオレフィンオリゴマー又はポリマーを含む場合、組成物は、驚くべきことに、従来の硫化オリゴマー又はポリオレフィンを含む比較流体よりも良好な銅腐食性能を達成しながら、同等及び/又はより高いレベルの全硫黄を含むことができる。
【0036】
1つのアプローチでは、上記に記載されるような硫化ポリオレフィンオリゴマー又はポリマーは、好適な基油における極圧添加剤として使用され、例えば、約6cSt~約18cSt、又はいくつかのアプローチでは、約12cSt~約18cSt、又は他のアプローチでは、約6cSt~約12cStのKV100(ASTM 445)を有するドライブライン、トランスミッション、ギアオイル、又は車軸潤滑剤用途のための1つ以上の他の添加剤と任意に組み合わせてもよい。
【0037】
基油
本明細書の潤滑組成物又はギア流体に使用するための好適な基油としては、鉱油、合成油が挙げられ、全ての一般的な鉱油ベースストックが挙げられる。鉱油は、ナフテン系又はパラフィン系であり得る。鉱油は、酸、アルカリ、及び粘土又は塩化アルミニウムなどの他の薬剤を使用する従来の方法によって精製され得るか、又は、例えば、フェノール、二酸化硫黄、フルフラール、若しくはジクロロジエチルエーテルなどの溶媒を用いる溶媒抽出によって生成された抽出油であり得る。鉱油は、水素化処理若しくは水素化精製、冷却若しくは接触脱蝋プロセスによる脱蝋、又は水素化分解され得る(SK Innovation Co., Ltd.(Seoul、Korea)からの水素化分解基油のYubase(登録商標)ファミリーなど)。鉱油は、天然原油源から生成され得るか、又は異性化ワックス材料若しくは他の精製プロセスの残留物から構成され得る。
【0038】
基油、又は本明細書の組成物中で使用される潤滑粘度の基油は、ドライブライン又はギア油用途に好適な任意の基油から選択され得る。例として、米国石油協会(American Petroleum Institute(API))Base Oil Interchangeability Guidelinesに指定される、グループI~Vの基油が挙げられる。これらの3つの基油のグループは、以下の通りである。
【0039】
【0040】
グループI、II、及びIIIは、鉱油プロセスストックであり、本出願のドライブライン又はギア流体に好ましい場合がある。グループIIIの基油は、鉱油から誘導されたものであるが、これらの流体が受ける厳密な処理により、それらの物理的特性は、PAOなどのいくつかの真の合成油に非常に類似するものとなることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は、当該産業において合成流体と称され得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製油、精製油、及び再精製油、並びにそれらの混合物から誘導され得る。いくつかのアプローチでは、基油は、グループIとグループII油とのブレンドであり得、このブレンドは、約0%~約100%のグループI油、約0%~約100%のグループII油、約0%~約100%のグループIII油、又はグループIとII、グループIとIII、若しくはグループIIとIII油とのブレンドの様々なブレンドであり得る。
【0041】
未精製油は、更なる精製処理を伴わない又はほとんど伴わない、天然、鉱物、又は合成の供給源に由来するものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて未精製油と同様である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸透などである。食用に適する品質まで精製された油は、有用であり得る、又は有用であり得ない。食用油は、ホワイト油とも呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又はホワイト油を含まない。
【0042】
再精製油はまた、再生油又は再処理油としても知られている。これらの油は、同じ又は類似のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を対象とする技術によって更に処理される。
【0043】
鉱油は、掘削によって、又は植物及び動物から、若しくはそれらの任意の混合物から得られる油を含み得る。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、及び亜麻仁油、並びに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくは混合されたパラフィン系-ナフテン系タイプの溶媒処理又は酸処理された鉱物系潤滑油が挙げられ得るが、それらに限定されない。そのような油は、所望であれば、部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導される油もまた、有用であり得る。
【0044】
本明細書のギア流体中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改良剤の提供に起因する基油以外のものである。別の実施形態では、潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改良剤の提供に起因する基油以外のものである。
【0045】
基油はまた、合成基油のうちのいずれかであり得る。有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合化、オリゴマー化、又はインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマー若しくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと呼ばれる)、及びそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体、又はそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された材料である。
【0046】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成され得、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュ気液合成手順、並びに他の気液油によって調製することができる。
【0047】
本明細書の組成物中の潤滑粘度の基油の量は、性能添加剤の量の合計を100重量%から差し引いた後に残る残部であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、「主要量」、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、約90重量%超、又は95重量%超であり得る。
【0048】
いくつかのアプローチでは、好ましい基油又は潤滑粘度の基油は、約25ppm未満の硫黄、約120ppmを超える粘度指数、及び約100℃で約2cSt~約8cStの動粘度を有する。他のアプローチでは、潤滑粘度の基油は、約25ppm未満の硫黄、120を超える粘度指数、及び100℃で約4cStの動粘度を有する。基油は、40%超、45%超、50%超、55%超、又は90%超のCP(パラフィン系炭素含有量)を有し得る。基油は、5%未満、3%未満、又は1%未満のCA(芳香族炭素含有量)を有し得る。基油は、60%未満、55%未満、50%未満、又は50%未満、及び30%超のCN(ナフテン系炭素含有量)を有し得る。基油は、2未満又は1.5未満又は1未満の、1環ナフテン対2環ナフテン~6環ナフテンの割合を有し得る。
【0049】
本明細書の好適なドライブライン又はギア潤滑剤組成物は、以下の表2に列挙された範囲の添加剤成分を含み得る。
【0050】
【0051】
上記の各成分のパーセンテージは、最終的な添加剤又は潤滑油組成物の総重量に基づく、各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残部は、1つ以上の基油又は溶媒からなる。本明細書に記載される組成物の配合に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分組み合わせで基油又は溶媒にブレンドされ得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。
【0052】
本明細書に記載される潤滑組成物は、様々な用途のための潤滑、向上した摩擦性能特性、及び改善された銅腐食を提供するように配合され得る。本明細書の潤滑組成物は、ギアなどの機械部品を潤滑するために使用され得る。本開示による潤滑流体は、工業用ギア用途、自動車用ギア用途、車軸、及び固定ギアボックスなどのギア用途において使用され得る。ギアタイプとしては、スパー、スパイラル、ウォーム、ラックアンドピニオン、インボリュート、ベベル、ヘリカル、プラネタリ、及びハイポイドギア、並びに限定スリップ用途、及びディファレンシャルが挙げられ得るが、これらに限定されない。本明細書に開示されるドライブライン潤滑組成物はまた、ステップ自動変速機、無段変速機、半自動変速機、自動手動変速機、トロイダル変速機、及びデュアルクラッチ変速機を含む、自動又は手動変速機にも好適である。本明細書のドライブライン潤滑組成物は、車軸、トランスファーケース、差動装置、例えば、直線差動装置、回転差動装置、制限スリップ差動装置、クラッチ型差動装置、及びロッキング差動装置などにおける使用に特に適している。
【0053】
任意選択的な添加剤
他のアプローチでは、上記のこのような添加剤を含む潤滑剤はまた、このような成分及びその量が上記の段落に記載されるような性能特性に影響を及ぼさない限り、1つ以上の任意選択的な成分も含み得る。これらの任意選択的な成分は、以下の段落において記載される。
【0054】
リン含有化合物
本明細書の潤滑剤組成物は、流体に耐摩耗性の利点を付与し得る1つ以上のリン含有化合物を含み得る。1つ以上のリン含有化合物は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%の範囲の量で、潤滑油組成物中に存在し得る。リン含有化合物は、最大5000ppmのリン、又は約50ppm~約5000ppmのリン、又は約300ppm~約1500ppmのリン、又は最大600ppmのリン、又は最大900ppmのリンを潤滑剤組成物に提供し得る。
【0055】
1つ以上のリン含有化合物は、無灰リン含有化合物を含み得る。好適なリン含有化合物の例としては、チオホスフェート、ジチオホスフェート、ホスフェート、リン酸エステル、ホスフェートエステル、ホスファイト、ホスホネート、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、又はそれらのアミド塩、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第0612839号により完全に記載されている。
【0056】
ホスホネート及びホスファイトという用語は、潤滑剤業界ではしばしば互換的に使用されることに注意すべきである。例えば、ジブチル水素ホスホネートは、ジブチル水素ホスファイトと称されることがある。本発明の潤滑剤組成物が、ホスファイト又はホスホネートのいずれかと称されることがあるリン含有化合物を含むことは、本発明の範囲内である。
【0057】
上記のリン含有化合物のいずれかにおいて、化合物は、約5重量パーセン~約20重量パーセントのリン、又は約5重量パーセン~約15重量パーセントのリン、又は約8重量パーセン~約16重量パーセントのリン、又は約6重量パーセン~約9重量パーセントのリンを有し得る。
【0058】
上記の分散剤と組み合わせてリン含有化合物を潤滑剤組成物に含めると、予想外に、低い摩擦係数などの正の摩擦特性が潤滑剤組成物に付与される。本発明の効果は、リン含有化合物が単独で流体に負の摩擦特性を付与するいくつかの場合においてより更に顕著である。これらの摩擦低減が比較的不良なリン含有化合物を本明細書に記載のオレフィンコポリマー分散剤と組み合わせられると、潤滑剤組成物は、改善された、すなわち、より低い摩擦係数を有する。すなわち、本明細書の分散剤は、比較的不良な摩擦係数を有するリン含有化合物を含有する流体を、改善された摩擦特性を有する流体に変換する傾向がある。
【0059】
リン含有化合物と、本明細書に記載のオレフィンコポリマー分散剤と、を含む潤滑組成物の摩擦特性のこの改善は、驚くべきことである。なぜならば、流体の摩擦特性が、リン含有化合物と、上記のコポリマーの指定の特性を有していない、ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤及びオレフィンコポリマースクシンイミド分散剤を含む他のタイプの分散剤と、の組み合わせよりも改善されているからである。
【0060】
本明細書のオレフィンコポリマー分散剤と組み合わせたときに、改善された摩擦特性を潤滑組成物に対して付与する別のタイプのリン含有化合物は、無灰(金属を含まない)リン含有化合物である。
【0061】
いくつかの実施形態では、無灰リン含有化合物は、ジアルキルジチオホスフェートエステル、アミル酸ホスフェート、ジアミル酸ホスフェート、ジブチル水素ホスフェート、ジメチルオクタデシルホスフェート、それらの塩、及びそれらの混合物であり得る。
【0062】
無灰リン含有化合物は、式:
【0063】
【化1】
を有し得、
式中、R1は、S又はOであり、R2は、-OR、-OH、又は-R”であり、R3は、-OR”、-OH、又はSR”’C(O)OHであり、R4は、-OR”であり、R”’は、C1~C3分岐又は直鎖アルキル鎖であり、R”は、C1~C18ヒドロカルビル鎖である。リン含有化合物が式XIVに示した構造を有するとき、化合物は、約8重量パーセント~約16重量パーセントのリンを有し得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Sであり、R2は、-OR”であり、R3は、SR”’COOHであり、R4は、-OR”であり、R”’は、C3分岐アルキル鎖であり、R”は、C4であり、リン含有化合物は、80ppm~900ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0065】
別の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、-OHであり、R3は、-OR”又は-OHであり、R4は、-OR”であり、R”は、C5であり、リン含有化合物は、80ppm~1500ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0066】
なお別の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、OR”であり、R3は、Hであり、R4は、-OR”であり、R”は、C4であり、1つ以上のリン含有化合物は、80ppm~1550ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0067】
他の実施形態では、潤滑剤組成物は、式XIVのリン含有化合物を含み、式中、R1は、Oであり、R2は、-R”であり、R3は、-OCH3又は-OHであり、R4は、-OCH3であり、R”は、C18であり、1つ以上のリン含有化合物は、80ppm~850ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0068】
いくつかの実施形態では、リン含有化合物は、式XIVに示した構造を有し、約80ppm~約4500ppmのリンを潤滑剤組成物に供給する。他の実施形態では、リン含有化合物は、約150ppm~約1500ppmのリン、又は約300ppm~約900ppmのリン、又は約800ppm~1600ppmのリン、又は約900ppm~約1800ppmのリンを、潤滑剤組成物に供給する量で存在する。
【0069】
耐摩耗剤
潤滑剤組成物はまた、リン不含化合物である他の耐摩耗剤も含み得る。かかる耐摩耗剤の例としては、ホウ酸エステル、ホウ酸エポキシド、チオカルバメート化合物(例えば、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、及びそれらの混合物)、硫化オレフィン、アジピン酸トリデシル、チタン化合物、及びヒドロキシルカルボン酸の長鎖誘導体、例えば、タルトレート誘導体、タルトラミド、タルトリミド、シトレート、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なチオカルバメート化合物は、モリブデンジチオカルバメートである。好適なタルトレート誘導体又はタルトリミドは、アルキル基上の炭素原子の合計が少なくとも8個であり得る、アルキル-エステル基を含有し得る。タルトレート誘導体又はタルトリミドは、アルキル基上の炭素原子の合計が少なくとも8個であり得る、アルキル-エステル基を含有し得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトレートを含み得る。追加の耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を含む範囲において存在し得る。
【0070】
他の極圧剤
本開示の潤滑剤組成物はまた、本明細書の潤滑組成物が本明細書に記載される記載の量及びプロファイルを含む限り、他の極圧剤(複数可)を含有し得る。任意選択の極圧剤は、硫黄を含有し得、少なくとも12重量パーセントの硫黄を含有し得る。いくつかの実施形態では、潤滑油に添加される極圧剤は、潤滑剤組成物に対して、少なくとも350ppmの硫黄、500ppmの硫黄、760ppmの硫黄、約350ppm~約2,000ppmの硫黄、約2,000ppm~約30,000ppmの硫黄、又は約2,000ppm~約4,800ppmの硫黄、若しくは約4,000ppm~約25,000ppmの硫黄を提供するために十分である。
【0071】
多種多様な硫黄含有極圧剤が好適であり、硫化動物性又は植物性脂肪又は油、硫化動物性又は植物性脂肪酸エステル、リンの三価又は五価酸の完全又は部分エステル化エステル、硫化オレフィン(例えば、米国特許第2,995,569号、同第3,673,090号、同第3,703,504号、同第3,703,505号、同第3,796,661号、同第3,873,454号、同第4,119,549号、同第4,119,550号、同第4,147,640号、同第4,191,659号、同第4,240,958号、同第4,344,854号、同第4,472,306号、及び同第4,711,736号を参照されたい)、ジヒドロカルビルポリスルフィド(例えば、米国特許第2,237,625号、同第2,237,627号、同第2,527,948号、同第2,695,316号、同第3,022,351号、同第3,308,166号、同第3,392,201号、同第4,564,709号、及び英国特許第1,162,334号を参照されたい)、官能基置換ジヒドロカルビルポリスルフィド(例えば、米国特許第4,218,332号を参照されたい)、及びポリスルフィドオレフィン生成物(例えば、米国特許第4,795,576号を参照されたい)が挙げられる。他の好適な例としては、硫化オレフィン、硫黄含有アミノ複素環化合物、5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、大部分のS3及びS4スルフィドを有するポリスルフィド、硫化脂肪酸、硫化分岐オレフィン、有機ポリスルフィド、及びそれらの混合物から選択される有機硫黄化合物が挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、極圧剤は、潤滑組成物において、最大約3.0重量%又は最大約5.0重量%の量で存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%~約0.5重量%存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約3.0重量%存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.6重量%~約1重量%の量で存在する。なお他の実施形態では、洗浄剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約1.0重量%の量で存在する。
【0073】
極圧剤の1つの好適なクラスは、式:Ra-Sx-Rbによって表される1つ以上の別個の化合物から構成されるポリスルフィドであり、式中、Ra及びRbは、ヒドロカルビル基であり、その各々は、1個~18個、他のアプローチでは、3個~18個の炭素原子を含有し得、xは、2~8の範囲、典型的には2~5の範囲、特に3であり得る。いくつかのアプローチでは、xは、3~5の整数であり、xの約30~約60パーセントは、3又は4の整数である。ヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、又はアラルキルなどの多種多様なタイプであり得る。ジ-tert-ブチルトリスルフィドなどの三級アルキルポリスルフィド、及びジ-tert-ブチルトリスルフィドを含む混合物(例えば、主に又は完全にトリ-、テトラ-、及びペンタスルフィドから構成された混合物)を使用することができる。他の有用なジヒドロカルビルポリスルフィドの例としては、ジアミルポリスルフィド、ジノニルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、及びジベンジルポリスルフィドが挙げられる。
【0074】
極圧剤の別の好適なクラスは、イソブテンなどのオレフィンを硫黄と反応させることによって作製された硫化イソブテンである。硫化イソブテン(SIB)、特に硫化されたポリイソブチレンは、典型的には、約10重量%~約55重量%、望ましくは約30重量%~約50重量%の硫黄含有量を有する。多種多様な他のオレフィン又は不飽和炭化水素、例えばイソブテンダイマー又はトライマーを使用して、硫化オレフィン極圧剤を形成することができる。硫化オレフィンを調製するための様々な方法が先行技術において開示されてきた。例えば、Myersの米国特許第3,471,404号、Papayらの米国特許第4,204,969号、Zaweskiらの米国特許第4,954,274号、DeGoniaらの米国特許第4,966,720号、及びHorodyskyらの米国特許第3,703,504号を参照されたい、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
前述の特許に開示されている方法を含む硫化オレフィンの調製するための方法は、「付加物」と典型的には称される材料の形成を含み、オレフィンをハロゲン化硫黄と、例えば一塩化硫黄と、反応させる。次いで、その付加物を硫黄源と反応させて、硫化オレフィンを提供する。硫化オレフィンの品質は、一般に、例えば、粘度、硫黄含有量、ハロゲン含有量、銅腐食試験重量損失などの様々な物理的特性によって測定される。米国特許第4,966,720号は、潤滑油における極圧添加剤として有用な硫化オレフィンと、それらの調製のための2段階反応と、に関する。
【0076】
酸化防止剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の酸化防止剤を含有し得る。酸化防止剤化合物は既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、又はそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独で、又は組み合わせて使用され得る。
【0077】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基及び/又は三級ブチル基を含有し得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基で更に置換され得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール又は4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又は4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、例えばBASFから入手可能なIrganox(登録商標)L-135又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及びアルキルアクリレートから誘導される付加生成物を含み得、アルキル基は、約1個~約18個、又は約2個~約12個、又は約2個~約8個、又は約2個~約6個、又は約4個の炭素原子を含有し得る。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(登録商標)4716を含み得る。
【0078】
有用な酸化防止剤としては、ジアリールアミン及びフェノールが挙げられ得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンとフェノールとの混合物を含有し得、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。一実施形態では、酸化防止剤は、潤滑剤組成物に基づいて、約0.3重量%~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4重量%~約2.5重量%のフェノールとの混合物であり得る。
【0079】
硫化されて硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物、並びにそれらの二量体、三量体、及び四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。
【0080】
別の分類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸及びそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油又は動物油から得られ、典型的には約4個~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合され得る。
【0081】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%の範囲で存在し得る。
【0082】
分散剤
潤滑剤組成物中に含有される分散剤としては、分散させる粒子と会合することができる官能基を有する油溶性ポリマー炭化水素主鎖が挙げられ得るが、これに限定されない。典型的には、分散剤は、多くの場合架橋基を介してポリマー主鎖に結合しているアミン、アルコール、アミド、又はエステル極性部分を含む。分散剤は、米国特許第3,634,515号、同第3,697,574号、及び同第3,736,357号に記載されているようなマンニッヒ分散剤、米国特許第4,234,435号及び同第4,636,322号に記載されているような無灰スクシンイミド分散剤、米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号、及び同第5,633,326号に記載されているようなアミン分散剤、米国特許第5,936,041号、同第5,643,859号、及び同第5,627,259号に記載されているようなコッホ分散剤、並びに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号、及び同第5,792,729号に記載されているようなポリアルキレンスクシンイミド分散剤から選択され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、追加の分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導され得る。一例として、追加の分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載され得る。別の実施形態では、追加の分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフトされる無水物から誘導され得る。別の追加の分散剤は、高分子量エステル又は半エステルアミドであり得る。
【0084】
存在する場合、追加の分散剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約10重量%を提供するのに十分な量で使用することができる。使用することができる分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約3重量%~約8重量%、又は約1重量%~約6重量%であり得る。
【0085】
粘度指数改良剤
本明細書の潤滑剤組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の粘度指数改良剤も含有し得る。好適な粘度指数改良剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数改良剤は、星型ポリマーを含み得、好適な例は、米国特許出願公開第20120101017(A1)号に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択で、粘度指数改良剤に加えて、又は粘度指数改良剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改良剤も含有し得る。好適な粘度指数改良剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0087】
粘度指数改良剤及び/又は分散剤粘度指数改良剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、又は約0.5重量%~約10重量%、約3重量%~約20重量%、約3重量%~約15重量%、約5重量%~約15重量%、又は約5重量%~約10重量%であり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、粘度指数改良剤は、約10,000~約500,000、約50,000~約200,000、又は約50,000~約150,000の数平均分子量を有するポリオレフィン又はオレフィンコポリマーである。いくつかの実施形態では、粘度指数改良剤は、約40,000~約500,000、約50,000~約200,000、又は約50,000~約150,000の数平均分子量を有する水素化スチレン/ブタジエンコポリマーである。いくつかの実施形態では、粘度指数改良剤は、約10,000~約500,000、約50,000~約200,000、又は約50,000~約150,000の数平均分子量を有するポリメタクリレートである。
【0089】
他の任意選択的な添加剤
他の添加剤は、潤滑剤組成物に要求される1つ以上の機能を実行するように選択することができる。更に、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多官能性であり得、本明細書で記述される機能に追加して機能を提供し得るか、又はそれ以外の機能を提供し得る。他の添加剤は、本開示に指定される添加剤に加えられ得、かつ/又は金属不活性化剤、粘度指数改良剤、無灰TBNブースタ、耐摩耗剤、腐食抑制剤、錆抑制剤、分散剤、分散剤粘度指数改良剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含み得る。典型的には、完全に配合された潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有する。
【0090】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾール;アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルと任意選択で酢酸ビニルとのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はポリアクリルアミドのエステルを含む流動点降下剤が挙げられ得る。
【0091】
好適な泡抑制剤としては、シロキサンなどのケイ素ベースの化合物が挙げられる。
【0092】
好適な流動点降下剤としては、ポリメチルメタクリレート又はそれらの混合物が挙げられ得る。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0093】
好適な錆抑制剤は、鉄金属表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、又は化合物の混合物であり得る。本明細書で有用な錆抑制剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、及びセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、並びにトール油脂肪酸、オレイン酸、及びリノール酸から生成されたものなどの二量体及び三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食抑制剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、及びテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、及びヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。別の有用な種類の酸性腐食抑制剤は、アルケニル基中に約8個~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドもまた、有用である。有用な錆抑制剤は、高分子量の有機酸である。いくつかの実施形態では、エンジン油は、錆抑制剤を含まない。
【0094】
錆抑制剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な任意選択的な量で使用され得る。
【0095】
潤滑剤組成物は、腐食抑制剤も含み得る(他の言及した成分のいくつかは銅腐食抑制特性も有し得ることに留意すべきである)。好適な銅腐食抑制剤としては、エーテルアミン、ポリエトキシル化化合物、例えば、エトキシル化アミン及びエトキシル化アルコール、イミダゾリン、モノアルキル、並びにジアルキルチアジアゾールなどが挙げられる。
【0096】
チアゾール、トリアゾール、及びチアジアゾールも、潤滑剤に使用され得る。例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、及び2-メルカプト-5-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。一実施形態では、潤滑剤組成物は、1,3,4-チアジアゾール、例えば、2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-ジチアジアゾールを含む。
【0097】
発泡防止剤/界面活性剤もまた、本発明による流体に含まれ得る。そのような用途のための様々な薬剤が知られている。エチルアクリレートとヘキシルエチルアクリレートとのコポリマー、例えば、Solutiaから入手可能なPC-1244を使用することができる。他の実施形態では、4%DCFなどのシリコーン流体が含まれ得る。発泡防止剤の混合物もまた、潤滑剤組成物に存在し得る。
【実施例】
【0098】
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を例解するものである。これらの実施例並びに本出願の他の箇所において、全ての比率、部、及び百分率は、別段の指示がない限り重量基準である。これらの実施例は、例解のみを目的として提示されており、本明細書で開示される発明の範囲を限定するは意図されないということが意図される。
【0099】
比較例1
比較の硫化ポリオレフィンオリゴマーを以下のように調製した:第1の反応工程において、液体一塩化硫黄(約73.6グラム)を、撹拌機、温度計、凝縮器、冷却器システム、及び表面下ガススパージャーを備えた反応器に投入した。ガス状イソブチレン(約57.5グラム)を、撹拌しながら、一塩化硫黄液体の表面下で反応器中にバブリングした。温度を25℃又はその付近に維持した。
【0100】
次に、反応器に約4.7グラムの元素硫黄、約1.8グラムのn-プロパノール、約29.0グラムの50パーセント水酸化ナトリウム水溶液、約42.3グラムの38重量パーセント水硫化ナトリウム水溶液、及び約0.007グラムの消泡剤を投入した。混合物を撹拌し、窒素下で約55℃に加熱し、この時点で、反応塊を還流(約80℃~約94℃)に維持しながら、上記の第1の反応からのイソブチレン-一塩化硫黄付加物を4時間かけて添加した。加熱を2時間続けた後、約94℃まで加熱することによってアルコールを除去した。大気圧ストリッピング後、フラスコを約70℃に冷却しながら圧力を150mmHgに低下させて、アルコール及び大部分の水の除去を完了した。得られた生成物に洗浄水を加え、約10分間撹拌した後、約5分間沈降させた。下側の水性ブライン層を分離し、有機層を約100℃で真空ストリッピング(<100mmHg)した。ストリッピングした有機層を珪藻土の床を通して濾過した後、硫化イソブチレンオリゴマーを含む透明な黄色油が得られた。形成された生成物は、100℃で約7.0cSt~約9.0cStの範囲の粘度及び約45.5重量パーセント~約48.5重量パーセントの全硫黄含量を有していた。
【0101】
実施例1
比較例1の硫化イソブチレンオリゴマーを、以下のようにアルカリ水溶液で更に処理した:比較例1の硫化イソブチレン反応生成物の約1250グラムを、分液漏斗、凝縮液受け器を備えた水冷凝縮器、及び真空ポンプを備えた2リットルの反応器に添加した。約464グラムの50パーセント水酸化ナトリウム溶液を、700rpmの撹拌速度で添加した。混合物を約110℃で約3時間反応させて、苛性処理された硫化イソブチレンオリゴマーを形成した。形成された苛性処理硫化イソブチレンオリゴマーは、1.1076の比重、約0.1重量パーセントの水、及び約43.0重量パーセントの全硫黄を有していた。
【0102】
実施例2
別の実施例では、比較例1の硫化イソブチレンオリゴマーを、以下のようにアルカリ水溶液で更に処理した:比較例1の硫化イソブチレン反応生成物の約1250グラムを、分液漏斗、凝縮液受け器を備えた水冷凝縮器、及び真空ポンプを備えた2リットルの反応器に添加した。約209グラムの50パーセント水酸化ナトリウム溶液を、700rpmの撹拌速度で添加した。混合物を約110℃で約3時間反応させて、苛性処理された硫化イソブチレンオリゴマーを形成した。形成された苛性処理硫化イソブチレンオリゴマーは、約1.1155の比重、約0.12重量パーセントの水、及び約43.8重量パーセントの全硫黄を有していた。
【0103】
実施例3
比較例1の硫化イソブチレンオリゴマー並びに実施例1及び2の2つの本発明の苛性処理された硫化イソブチレンオリゴマーを、以下のように銅腐食について評価した:銅SAE CA 110アニール2.75”×0.6”×16ゲージの研磨クーポン(Metaspec,San Antonio,Texasから入手可能)を、約35グラムの各本発明及び比較の硫化イソブチレン(ニート流体として)に浸漬し、121℃で約180分間、ASTM D130のエージング手順に供した。銅試験ストリップの質量を、エージング前及びそれぞれのニート溶液中への180分間の浸漬後に測定した。試験後の銅試験ストリップを秤量する前に、それをヘプタンで洗浄し、ヘプタンで湿らせたタオルで激しくこすり、遊離した黒色鱗片状物質を除去した。銅試験ストリップをアセトンで最終洗浄し、秤量前に完全に乾燥させた。銅腐食重量損失(CCT)を以下のように試験から報告した:CCT=試験前質量-試験後質量(mg単位)。結果を以下の表3に示す。
【0104】
【0105】
実施例4
比較例1の硫化イソブチレン並びに実施例1及び2の2つの本発明の苛性処理された硫化イソブチレンオリゴマーを、FVA情報シート#243(S-A-10/16.6R/90又は120として示される)に記載されるようなFZGスプリング試験を使用して極圧性能について評価した。FZGスプリング試験は、FZG研究所、Southwest Research Institute、又は他の適切な試験施設などの任意の数の試験施設で実施してもよい。合格極圧性能は、90℃での基準潤滑剤と比較して、10以上の負荷段階で約115mm2以下の摩耗傷である。
【0106】
極圧評価のために、比較例1並びに本発明の実施例1及び2の硫化イソブチレンオリゴマーの各々を、オリゴマーによって提供される約1.4重量パーセントの硫黄の処理率で潤滑剤中にブレンドした。潤滑組成物はまた、同じ流動点降下剤、耐摩耗添加剤、及び消泡剤を含む同じ量の添加剤パッケージを含んでいた。組成物はまた、約6cSt~約18cSt、好ましくは13cSt~18cStの目標KV100を達成するのに必要な基油及び/又はプロセス油の残部を含んでいた。(ASTM D445。)
【0107】
【0108】
表4は、本発明の潤滑剤が、対照と比較して匹敵する極圧性能を提供したことを示し、本発明の硫化イソブチレンオリゴマーが、非苛性処理イソブチレンオリゴマーと一致する極圧性能を提供することを示している。実施例2からの硫化イソブチレンを有する本発明の潤滑剤Cは、最良の極圧性能を提供した。
【0109】
実施例4:
実施例3の潤滑剤A、B及びCを、APIグループIII基油(Yubase 4)及びAPIグループIV PAO基油(Spectrasyn)中の溶解度について評価した。この評価の潤滑剤は、各流体が同量のチアジアゾール添加剤を更に含んでいたことを除いて、実施例3に記載したのと同じ組成を有していた。この評価のために、約3.25重量パーセントの各潤滑剤を室温(25℃)で基油にブレンドし、溶解度を観察した。結果を以下の表5に提供し、
図1及び2の画像に示す。
【0110】
【0111】
図2は、非苛性処理硫化イソブチレンオリゴマーを有する比較潤滑剤Aは、混濁した混合物(左容器)を考慮すると、PAOに可溶でなかったが、本発明の苛性処理硫化イソブチレンオリゴマーを有する本発明の潤滑剤B及びCは、グループIII基油(
図1)及びグループIV基油(
図2)の両方に可溶であったことを示している。
【0112】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換又は追加され得る他の類似の項目を排除するものではないように、非限定的であることを意図する。
【0113】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、又は割合、及び他の数値を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0114】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0115】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値だけでなく、そのような値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0116】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまた更に理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0117】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の箇所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲の任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。
【0118】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人ら若しくは他の当業者にとって現在予想されていない、又は現在予想することができない代替、修正、変形、改善、及び実質的な同等物が現れ得る。したがって、出願された添付の特許請求の範囲、及び修正され得る添付の特許請求の範囲は、そのような全ての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。