(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】キャットフード粒及びキャットフード
(51)【国際特許分類】
A23K 50/42 20160101AFI20240612BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20240612BHJP
A23K 40/25 20160101ALI20240612BHJP
【FI】
A23K50/42
A23K10/30
A23K40/25
(21)【出願番号】P 2023194452
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2022184378
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320008155
【氏名又は名称】ペットライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥巣 至道
(72)【発明者】
【氏名】野村 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】宮田 俊輔
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-050541(JP,A)
【文献】国際公開第2013/129636(WO,A1)
【文献】特表2017-513466(JP,A)
【文献】特表2016-515808(JP,A)
【文献】特表2006-519608(JP,A)
【文献】松本圭代、金子政弘、船場正幸、入来常徳、朝見恭裕、阿部又信,ドライフードの嵩比重が成ネコの摂食量、見かけの消化率および水分出納に及ぼす影響,ペット栄養学会誌,日本,日本ペット栄養学会,2006年07月13日,Vol. 9, No. Supplement,pp. 17 - 18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 50/42
A23K 10/30
A23K 40/25
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵩比重が430g/L以下であり、
キャットフード粒は、これを平面視した円形度及び側面視した円形度がいずれも0.78以上0.96以下であり、
平均長が5.5mm以上9.0mm以下である、キャットフード粒。
【請求項2】
嵩比重が335g/L以上である、請求項
1に記載のキャットフード粒。
【請求項3】
硬度が1~10kgfの範囲内である、請求項1又は2に記載のキャットフード粒。
【請求項4】
穀類と繊維源材料とを、穀類100質量部に対し、繊維源材料が3質量部以上35質量部以下となる量で含有する、請求項1又は2に記載のキャットフード粒。
【請求項5】
繊維源材料として、サイリウム及び難消化性デキストリンから選ばれる少なくとも一種を含有する請求項1又は2に記載のキャットフード粒。
【請求項6】
油脂含量が24質量%以下である、請求項1又は2に記載のキャットフード粒。
【請求項7】
水溶性食物繊維を、キャットフード粒の乾物中、1~8質量%の量で含有し、不溶性食物繊維を、キャットフード粒の乾物中、4~20質量%の量で含有する、請求項1又は2に記載のキャットフード粒。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のキャットフード粒を含むキャットフード。
【請求項9】
請求項1に記載のキャットフード粒の製造方法であって、
キャットフード原料を混合するプレコンディショナーと、
プレコンディショナーにて混合されたキャットフード原料を加熱混練して混練物を排出するエクストルーダーと、前記エクストルーダーの排出口側に設けられ前記混練物を排出するダイプレートと、前記ダイプレートの排出口の近傍で、排出された前記混練物を切断する切断装置とを備える製造装置を用い、
前記ダイプレートは前記エクストルーダー側に形成された開口部と、前記切断装置側に形成された開口部とを連通する流路を備え、前記流路は、前記切断装置側からみて円形であり、
前記ダイプレートにおける前記流路の最小内径R1は、混練物のダイプレートの流路における最小内径部の長さR2との比率(R1/R2)が0.55~8.4であり、
前記ダイプレートにおける前記流路の最小内径R1が3.5~5.0mmであり、
前記混練物に対し、プレコンディショナー及び/又はエクストルーダー内にて水蒸気を4質量%以上となるように添加する工程を有し、水蒸気が添加された混練物をダイプレートから排出させて膨化させ、収縮する前に切断する、キャットフード粒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャットフード粒及びキャットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来種々のキャットフード粒が知られている。特許文献1では、嵩比重を所定範囲とすることで嗜好性と成形安定性の効果が得られる旨が記載されている。特許文献2には、所定の算術平均粗さを有し、塩酸浸漬後の硬さを所定以下とするキャットフード粒を食後の吐き戻し防止用に用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2013/129636号
【文献】特開2018-050541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術は、食道内での輸送性を考慮したものではないか、或いは吐き戻し防止効果が十分ではなかった。
【0005】
本発明者は鋭意検討した結果、所定形状及び所定の大きさとし、所定値以下の嵩比重とすることで、食道内の輸送性に優れ、優れた吐き戻し防止効果が得られることを知見して、本発明を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、嵩比重が430g/L以下であり、
キャットフード粒は、これを平面視した円形度及び側面視した円形度がいずれも0.78以上0.96以下であり、
平均長が5.5mm以上9.0mm以下である、キャットフード粒を提供するものである。
【0007】
また本発明は、キャットフード粒の製造方法であって、
キャットフード原料を混合するプレコンディショナーと、
プレコンディショナーにて混合されたキャットフード原料を加熱混練して混練物を排出するエクストルーダーと、前記エクストルーダーの排出口側に設けられ前記混練物を排出するダイプレートと、前記ダイプレートの排出口の近傍で、排出された前記混練物を切断する切断装置とを備える製造装置を用い、
前記ダイプレートは前記エクストルーダー側に形成された開口部と、前記切断装置側に形成された開口部とを連通する流路を備え、前記流路は、前記切断装置側からみて円形であり、
前記ダイプレートにおける前記流路の最小内径R1は、混練物のダイプレートの流路における最小内径部の長さR2との比率(R1/R2)が0.55~8.4であり、
前記ダイプレートにおける前記流路の最小内径R1が3.5~5.0mmであり、
前記混練物に対し、プレコンディショナー及び/又はエクストルーダー内にて水蒸気を4質量%以上となるように添加する工程を有し、水蒸気が添加された混練物をダイプレートから排出させて膨化させ、混練物を膨化収縮前に切断する、キャットフード粒の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、食道内の輸送性に優れ、吐き戻し防止効果に優れたキャットフード粒及びそれを用いたキャットフードを提供することができる。また本発明の製造方法は、食道内の輸送性に優れ、吐き戻し防止効果に優れたキャットフード粒を工業的に有利な方法にて首尾よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1はエクストルーダー及びダイプレートの一例を示す模式的な側断面図である。
【
図2】
図2は
図1における最小内径部を拡大して示す部分拡大図である。
【
図3】
図3は食道輸送試験2において撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
特許文献2は胃の中での塩酸浸漬による崩壊性に専ら着目しているが、本発明者は、猫では食道内の固形物の動きが悪いことに着目した。物を咀嚼しないことや食道が横向きであることなどから猫は人に比べて吐きやすいことが知られている。また猫は、犬に比べて食道の動きが悪く、これに起因して食道内にキャットフード粒が滞留しやすい。キャットフード粒が食道内で滞留すると、吐き戻しが起こりやすいほか、食道狭窄や食道閉塞、誤嚥等を発症しやすいなどの問題がある。本発明者が検討したところ、キャットフード粒を所定の形状及び大きさとすることで食道内での滞留性を優れて改善できることが判った。加えて、当該構成において、嵩比重を所定値以下とすると、吐き戻しを効果的に防止できることを知見した。
このように、本発明のキャットフード粒は、食道内の輸送性に優れ、食道狭窄や食道閉塞、誤嚥を効果的に抑制でき、且つ、吐き戻しを効果的に防止できるものとなる。
後述する実施例に示す通り、本開示のキャットフード粒は、飲み込んでから胃に到達するまでの時間(食道滞留時間)のみならず、胃に到達してからすべて胃に入りきる時間までもが短く、優れた食道輸送性を示すものである。
本明細書で吐き戻しとは、食べ物を吐き出す行為の中でも、キャットフード粒が食道内に停滞し、胃に入りきる前に吐き出す、または胃に入った直後に吐き出す行為を指す。
【0011】
<円形度>
本発明のキャットフード粒は、キャットフード粒を平面視及び側面視それぞれとした場合の円形度がいずれも0.78以上0.96以下である。本発明のキャットフード粒は、平面視及び側面視の各円形度が0.78以上であることで食道輸送性に優れている。この観点から、キャットフード粒は平面視及び側面視の各円形度が0.78以上であり、0.81以上であることが好ましく、平面視及び側面視の各円形度のうち少なくとも何れか一方が0.84以上であることが特に好ましい。また、本発明のキャットフード粒は、平面視及び側面視の各円形度が0.96以下であることで、本発明のキャットフードが摂食しやすい等の利点がある。この観点から、キャットフード粒は平面視及び側面視の各円形度が、いずれも0.95以下であることが好ましく、0.93以下が更に好ましく、0.90以下であることが特に好ましい。
なお、円形度は下記式にて求められる値である。
円形度=4πS/L2(ここで、Sは面積、Lは周長である。)
【0012】
本発明のキャットフード粒は完全な球状ではなく、平面視形状及び側面視形状が完全に同一でなくてもよい。円形度はキャットフード粒を最も安定となる状態で水平面に載置したときに該当すればよい。例えば、キャットフード粒が柱状の原料粒を膨化させたもの(以下、単に「膨化粒」ともいう。)である場合、通常、最も安定な状態とは、該柱状の原料粒の底面に相当する面を下向きとした場合である。従って、キャットフード粒が膨化粒である場合、平面視及び側面視の円形度とは、柱状の原料粒の底面に相当する面を下向きにして水平面上に静置させた場合(以下、「縦置き」ともいう。)における平面視及び側面視の円形度をそれぞれ測定したものとなることが好ましい。
膨化粒は、例えばキャットフード原料を所定形状の孔から押し出して膨化させたことにより得られ、押し出し方向が柱状の原料粒の中心軸方向と略平行となる。
【0013】
キャットフード粒が膨化粒の場合、食道における輸送性を一層向上させる点から、平面視の円形度を円形度A、側面視の円形度を円形度Bとすると、円形度Aと円形度Bとの比率A/Bが0.85以上であることが好ましく、0.90以上であることがより好ましく、1.00以上であることが特に好ましい。またキャットフード粒の食べやすさや製造容易性等の点から、A/Bは1.10以下であることが好ましい。
【0014】
円形度は、例えばデジタルカメラで撮影した画像について、image-Jを用いて測定することができ、80粒~120粒の平均値とする。デジタルカメラによる画像は解像度を1,000,000dpi以上とし、一画像中に一つの粒子の面積が1.0%以上占める画像を選択する。image-Jの設定条件は、Threshold設定をLower:0、Upper:80~250に設定し、AnalyzeParticlesにおけるSize設定を0.3-Infinityとし、Circularityを測定する。
【0015】
上記円形度を有するキャットフード粒を製造するには、後述する好適なキャットフード粒の製造方法において、流路長さとダイプレートの孔径との比率を調整するとともに、原料の組成を調整し、また原料においてエクストルーダー内で付与する水蒸気や水の量を調整する等することにより得ることができる。
【0016】
<平均長>
本発明のキャットフード粒は、平均長L、具体的には長径と短径の平均値が5.5mm以上9.0mm以下である。ここでいう、長径とは、キャットフード粒を平面視した像を横断する最大長さ方向の長さ(以下「長径」ともいう)である。また「短径」とは、キャットフード粒を平面視した像において、前記の最大長さ方向と直交する方向の長さ(以下、「短径」ともいう)である。キャットフード粒は平均長が5.5mm以上であることで食道での滞留時間を効果的に低減でき、より好適には、6.0mm以上であり、更に好適には6.5mm以上である。また、本発明のキャットフード粒は平均長9.0mm以下であることで猫の摂食が良好となり、体格の小さい個体において食道閉塞を回避する点で好ましく、より好適には8.5mm以下であり、8.0mm以下であることが特に好ましい。平均長は、長径及び短径の平均値を20個分平均した値とする。
【0017】
本発明のキャットフード粒の平均長Lは、最も安定な状態となるようにキャットフード粒を水平面に載置したときに該当すればよいが、キャットフード粒が膨化粒である場合、縦置きのキャットフード粒を平面視したときの平均長を測定する。平均長の測定には、デジタルノギスを用いる。デジタルノギスとしては、例えばDIGIPA、PC-15JN、株式会社ミツトヨが挙げられる。
【0018】
本発明のキャットフード粒は、厚さWの、上記平均長Lに対する比(W/L)が、80~113%の範囲内であることが好ましく、85~110%の範囲内であることがより好ましい。ここで厚さWは、キャットフード粒を、その平均長を測定する際に水平面に静置した際の高さに該当し、平均長と同様に、デジタルノギスにより測定できる。厚さの平均長に対する比(W/L)は、キャットフード粒20個それぞれについて求めたW/Lの20個分の平均値とする。
【0019】
<嵩比重>
本発明のキャットフード粒は、上記の形状と大きさを有しつつ、嵩比重が430g/L以下であることで、良好な吐き戻し抑制効果が得られる。この観点から、嵩比重は425g/L以下が好ましく、420g/L以下がより好ましく、415g/L以下がより好ましい。嵩比重は以下の測定方法にて測定できる。キャットフード粒は製造容易性の点や、一層良好な吐き戻し抑制効果を得やすい点から、嵩比重が、335g/L以上であることが好ましく、340g/L以上であることがより好ましく、350g/L以上であることが更に好ましく、360g/L以上であることが特に好ましい。
【0020】
(嵩比重の測定方法)
1Lの枡を中身が空の状態でその質量(W1)を測定しておく。この1L枡を用いてキャットフードを擦り切り1杯となるよう掬い取り、枡とキャットフードを合わせた質量(W2)を測定する。この質量から先に測定していた枡の質量を引いた値(W2-W1)を見かけ比重の値とする。以上の測定を5回行い、その測定値の平均値を、キャットフード粒の嵩比重(g/L)とする。
【0021】
上記嵩比重を有するキャットフード粒を製造するには、後述する好適なキャットフード粒の製造方法において、流路3における最小内径部分3Aの長さR2(
図2参照)とダイプレートの孔(流路3)の最小直径(最小内径)R1(
図2参照)との比率を調整するとともに、原料の組成を調整し、プレコンディショナー及び/又はエクストルーダー内で付与する水蒸気の量を調整すること等により得ることができる。
【0022】
<水分含量>
本発明のキャットフード粒は、水分含量が1~10質量%の範囲内であることが好ましく、2~8質量%の範囲内であることがより好ましく、2~7質量%の範囲内であることが特に好ましい。この範囲の水分含量であることで、細菌の繁殖しづらい環境とし、キャットフードの保存性を高める利点がある。水分含量は、近赤外分光法で得られる値である。具体的には近赤外分光分析計(ラボ用近赤外分光分析計 DS2500 Solid Analyzer、メトロームジャパン株式会社)を用いて測定する。具体的には、近赤外分光分析計の専用サンプル容器が規定する量を満たすように被測定物を入れる。これを近赤外分光分析計の測定にかけ、水分含有量を求める。水分含量は5回の測定の平均値である。
【0023】
<硬度>
本発明のキャットフード粒は、硬度が1~10kgfの範囲内であることが好ましく、1.2~8kgfの範囲内であることがより好ましく、1.5~8kgfの範囲内であることが特に好ましく、2.0~6.5kgfの範囲が更に好ましく、2.5~5.0kgfの範囲が最も好ましい。硬度が本範囲であることは食道の輸送性の点や嗜好性や咀嚼をした際の負担を軽減する点で好ましい。
【0024】
キャットフードを構成するフード粒の硬度(破断硬さ)は以下の測定方法で得られる値である。
万能引張圧縮試験機(MKS 精密力量測定器、型番:PL-100、株式会社丸菱科学機械製作所)を用い、一定の圧縮速度で圧縮したときの破断応力を下記の条件で測定する。
プランジャー:直径5.0mmの円柱状のプランジャー、プラットフォーム:平皿、圧縮速度:50mm/分、プランジャーの最下点2.0mm(平皿とプランジャーの間隙)。
具体的には、平皿の上に、測定対象のフード粒を1個置き、フード粒の真上から垂直にプランジャーを一定速度で押し付けながら応力を測定する。応力のピーク値(最大値)を破断応力の値として読み取る。
硬度は30個のキャットフード粒の測定値の平均値とする。
【0025】
上記硬度を有するキャットフード粒を製造するには、後述する好適なキャットフード粒の製造方法において、原料の組成を調整し、また原料においてエクストルーダー内で付与する水蒸気の量を調整する等により得ることができる。
【0026】
<組成>
本発明のキャットフード類としては、例えば、穀類、食肉加工品、油脂、繊維源材料等を含有することができる。
穀類としては、穀粉及び澱粉、豆粉及びその加工品、コーングルテンミール等が挙げられる。穀粉としては、トウモロコシ粉、小麦粉、小麦全粒粉、米粉、大麦粉、燕麦粉、ライ麦粉等が挙げられる。澱粉としては、小麦デンプン、トウモロコシデンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、甘藷デンプン、サゴデンプン及びそれらの加工澱粉が挙げられる。豆粉及び豆類の加工品としては、大豆粉、脱脂大豆粉等が挙げられる。
本発明のキャットフード粒において、穀粉及び澱粉及びコーングルテンミールの合計量P1と、豆粉及び豆類の加工品の量P2とは、質量比P1/P2が2.5~5.0であることが好ましく、2.5~4.0であることがより好ましく、3.0~4.0であることが特に好ましい。当該範囲とすることで、一定割合の澱粉質を有する構成として後述する好適な製造方法における膨化を適度なものとしやすいため、食道輸送性を向上させやすく、嵩比重を上記とし、且つ上記の形状及び大きさのキャットフード粒が製造しやすい点で好ましい。
【0027】
本発明では穀類の中でも穀粉又は澱粉を用いることが澱粉質に起因した膨化を得る点から好ましく、とりわけ、穀粉を含有することが好ましく、なかでも小麦全粒粉を含有することが一定割合の澱粉質を有しつつ繊維量が比較的多いことから後述する好適な製造方法における膨化を適度なものとしやすいため、食道輸送性を向上させやすく、嵩比重を上記とし、且つ上記の形状及び大きさのキャットフード粒が製造しやすい点や健康面に有利な点、嗜好性を向上させる点でも好ましい。これらの観点から、穀粉を用いる場合、キャットフード粒中、7~40質量%であることが好ましく、7~32質量%であることがより好ましく、12~28質量%であることが更に好ましく、15~25質量%であることが特に好ましい。
【0028】
穀類は、キャットフード粒中、53質量%未満であることが、後述する好適な製造方法において、澱粉質を一定量以下として膨化を適度なものとすることで、食道輸送性を向上させやすく、嵩比重が上記範囲であり、且つ上記の形状及び大きさのキャットフード粒が製造しやすい点で好ましい。この観点から、穀類は、キャットフード粒中、49質量%未満であることが更に好ましく、46質量%未満であることが更に一層好ましく、43質量%未満であることが最も好ましい。穀類は、嵩比重が上記範囲であり且つ上記の形状及び大きさのキャットフード粒を製造しやすい点や嗜好性が高い点から、キャットフード粒中、20質量%以上であることが好適であり、25質量%以上であることが更に好ましい。
【0029】
食肉加工品としては、魚肉、牛肉、鶏肉、豚肉の粉末等が挙げられる。食肉加工品は、本開示の好適な形態のキャットフード粒を製造しやすい点から、キャットフード粒中、15~40質量%が好適であり、20~32質量%がより好適である。
【0030】
油脂としては、牛脂や魚油等の動物性油脂や植物性油脂が挙げられる。油脂はコーティング油脂以外の油脂として、キャットフード粒中の含有量が、24質量%以下が好適であり、15質量%以下が特に好適である。また、コーティング油脂以外の油脂の量は、例えば0.5質量%以上が好ましく、0.8質量%以上が更に好ましく、1質量%以上が更に一層好ましく、3質量%以上が特に好ましい。
【0031】
繊維源原料としては、水溶性食物繊維又は不溶性食物繊維を多く含む、例えば60質量%以上含む原料が挙げられる。水溶性食物繊維として、ペクチン(水溶性)、アルギン酸ナトリウム、サイリウム、難消化性デキストリン、難消化性オリゴ糖、アガロース、イヌリン等が挙げられる。不溶性食物繊維とは、セルロース、ヘミセルロース、キチン、キトサンなどが挙げられる。水溶性食物繊維及び不溶性食物繊維を多く含む繊維源原料としてはビートパルプが挙げられる。また繊維源材料としては、難消化性オリゴ糖も挙げられるが、難消化性オリゴ糖の量は繊維源材料中、10質量%以下が好ましい。
【0032】
本発明のキャットフード粒は、特にビートパルプ以外の、水溶性食物繊維源を含むことが整腸作用と食道での輸送性を両立しやすい点から好ましく、とりわけ、サイリウム及び難消化性デキストリンから選ばれる少なくとも一種を用いることが便秘や下痢といった消化器症状を改善する点から好ましく、中でもサイリウム及び難消化性デキストリンを組み合せて用いることが好適である。
本発明のキャットフード粒中、サイリウム及び難消化性デキストリンの合計量が0.5~9質量%であることが好ましく、1~6質量%であることがより好適であり、1.5~5質量%であることが更に一層好適である。上記範囲内であることで、サイリウム及び難消化性デキストリンから選ばれる少なくとも一種を用いることによる効果が一層良好となるためである。
【0033】
本発明のキャットフード粒は、整腸機能や胃酸の浸透しやすさ等を考慮して、穀類100質量部に対し、繊維源材料を3質量部以上含有することが好ましく、10質量部以上含有することがより好ましい。中でも本発明のキャットフード粒は穀類100質量部に対し、繊維源材料を、16質量部以上含有することが後述する好適な製造方法を採用した場合に、上記嵩比重を満たしながら上記の形状及び大きさを得やすく食道での輸送性を向上しやすい点から更に一層好ましく、18質量部以上含有することが更に一層好ましく、20質量部以上含有することが特に好ましく、22質量部以上であってもよい。一方、本発明のキャットフード粒は、嗜好性の点から、穀類100質量部に対し、繊維源材料を35質量部以下含有することが好ましく、33質量部以下であることがより好ましい。
【0034】
また本発明では、上記嵩比重を満たしながら上記の形状及び大きさを得やすく食道輸送性と整腸性のバランスを一層良好にしやすい点から、水溶性食物繊維を、キャットフード粒の乾物中、1~8質量%の量で含有することが好ましく、2.5~6質量%の量で含有することがより好ましい。また本発明では上記嵩比重を満たしながら上記の形状及び大きさを得やすく食道輸送性と整腸作用のバランスを一層良好にしやすい点から、不溶性食物繊維をキャットフード粒の乾物中、4~20質量%の量で含有することが好ましく、6~17質量%の量で含有することが更に好ましく、6~14質量%の量で含有することが特に好ましい。更に乾物中の食物繊維の量は、2~25質量%であることが好ましく、8~20質量%であることがより好ましい。ここでいう乾物中の量とは、水分含量を0質量%とみなして換算した量をいう。食物繊維の量は、プロスキー法にて測定する。また、水溶性食物繊維の量はプロスキー変法により求める。不溶性食物繊維の量は、プロスキー変法により求める。
【0035】
更に、本発明のキャットフード粒では、ビタミン、ミネラル類及び調味料、アミノ酸等、従来キャットフードに用いられる成分について適宜使用できる。
【0036】
次いで、本発明のキャットフード粒の好適な製造方法について説明する。
図1を参照して説明すると、本製造方法は、キャットフード原料を混合するプレコンディショナー(不図示)と、プレコンディショナー工程を経たキャットフード原料を加熱混練し、混練物10を排出するエクストルーダー4と、エクストルーダー4の排出口側に設けられ混練物10を排出するダイプレート7と、ダイプレート7の排出口7Aの近傍で排出された混練物10を切断する切断装置とを備える製造装置1を用い、
ダイプレート7はエクストルーダー4側に形成された開口部と、切断装置側に形成された開口部とを連通する流路3を備え、前記流路は、前記切断装置側からみて円形であり、
前記ダイプレートにおける前記流路の最小内径R1が3.5~5.0mmであり、
前記ダイプレート7における孔(流路3)の最小内径(最小直径)R1は、混練物のダイプレートの流路3における最小内径部3Aの長さR2との比率(R1/R2)が0.55~8.4であり、
混練物10に対し、プレコンディショナー及び/又はエクストルーダー4内にて水蒸気を4質量%以上添加する工程を有し、水蒸気が添加された混練物10をダイプレート7から排出させて膨化させ、収縮前に切断する、ペットフード粒体の製造方法である。前記ダイプレートにおける前記流路の最小内径R1は4~5mmであることが好適である。R2は2mm~7mmが好ましく、とりわけ、2mm~4.5mmが好ましい。このような範囲とすることで、所定の円形度を有しながら所定の平均長さを有するキャットフード粒が得やすくなる。
また収縮する前に切断するとは、膨化が完全に完了して収縮し始めた後に切断する態様を排除する意図である。本方法では、膨化前又は膨化途中での切断が好ましい。膨化前又は膨化途中での切断はダイプレートから排出された直後に切断することで実現できる。このような膨化及び切断工程により、平面視した円形度及び側面視した円形度を好適な範囲内としやすくなる。
図1に示す通り、エクストルーダー4とダイプレート7とは、直接接続されていてもよいし、或いはエクストルーダー4内部とダイプレート7の流路3と連通する流路を有するアダプタ等を介して接続されていてもよい。
図示していないが最小内径部3Aの出口の近傍において混練物10を所定長さに切断するカッターが設けられている。
図1中の符号8は該カッターによる切断位置を示す。カッターとして、例えば回転刃が用いられる。
【0037】
ダイプレート7の孔(流路3)は、排出口7A側から見ると、円形をしている(不図示)。ダイプレート7の孔は
図1のような装置の側断面において、排出口7A(エクストルーダー側に形成された開口部)において最もその径が小さく形成されているとともに、排出口7A側においてその最小径の孔が一定長さ(押出方向長さ)で連続する部分を有しており、当該部分を最小内径部3Aと呼ぶ(
図2参照)。最小内径部3Aはダイプレート7の排出側の端面における円形孔の直径と同じ断面内径を有する円筒状部分である。ここでいう断面内径とはダイプレート7の押出方向と直交する断面における円形孔の直径をいう。
図1及び
図2のような装置の側断面の通り、流路3は最小内径部3Aよりもエクストルーダー4側においてエクストルーダー4側に向かうにつれて漸次的に孔径が広がるテーパー形状を有している。ダイプレートにおける押出方向に沿う断面(例えばエクストルーダー4の回転中心軸を含む断面)を押出方向を横向きにしてみたときに、テーパー形状部分3Bにおける上面と水平方向(最小内径部3Aを構成する円筒状部分の軸方向)とがなす角度θ(
図2参照)は20°以上が好適であり、30°以上であってもよい。
【0038】
本製造方法では、予め、粉体材料と液体材料を混合するプレコンディショナー工程及びプレコンディショナー工程において混合された混合物をダイプレート側に押し出すエクストルーダー工程を有する。
ここで液体材料としては水や液状油が挙げられ、粉体材料の組成については、上述したキャットフード粒の原料のうち、液体材料以外の物を適宜使用できる。プレコンディショナー工程に供するキャットフード原料としては、上記のキャットフード粒の好適な組成として挙げた組成と同様の組成が挙げられる。つまり、キャットフード原料中の穀類、食肉加工品、油脂(コーティング用油脂以外の油脂)、繊維源材料の好ましい量としては、上記のキャットフード中の粉体原料中の穀類、食肉加工品、油脂(コーティング用油脂以外の油脂)、繊維源材料の好ましい量と同様の量をそれぞれ使用できる。また、キャットフード粒の乾物中の水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、食物繊維の各量比についても、上記のキャットフード粒で好ましい量として挙げた量を同様に採用できる。
【0039】
プレコンディショナー工程及び/又はエクストルーダー工程において、混練物に対し、水蒸気を4質量%以上添加することが、所定の形状を得ながら所定値以下の嵩密度を得る点で好適である。ここでいう水蒸気量に関し、「混練物に対して」とは、プレコンディショナー工程において混合される混合物のうち水及び水蒸気以外の成分の合計を基準とすることを意味する。つまり、「前記混練物に対し、プレコンディショナー及び/又はエクストルーダー内にて水蒸気を4質量%以上となるように添加する」とは、具体的には、「プレコンディショナー工程において混合される混合物のうち水及び水蒸気以外の成分の合計に対し、プレコンディショナー及び/又はエクストルーダー内において、水蒸気を4質量%以上添加する」ことを意味する。
プレコンディショナー工程及び/又はエクストルーダー工程において添加する水蒸気の量は、両工程のうち一方のみの工程で水蒸気を添加した場合はその工程での添加量であり、両方の工程で水蒸気を添加した場合は両工程での添加量の合計量である。水蒸気の温度は例えば120~140℃が好適である。
【0040】
本製造方法では、プレコンディショナー工程において、水及び/又は水蒸気を加えて原料混合物とする水分添加工程を有する(以下、「第1の水分添加工程」ともいう。)ことが望ましい。この場合、水の温度は通常40~60℃である。所望の形状を一層首尾よく得るために、原料混合物の第1の水分添加前の量に対し上記温度の水及び水蒸気を合計で0~25質量%添加することが好適であり、10~25質量%添加することがより好適である。限定するものではないが、第1の水分添加工程において水及び水蒸気を両方添加する場合、水と水蒸気の質量比は、水:水蒸気が1~4:1であることが好適であり、2~3.5:1であることがより好適である。この段階で添加する水及び水蒸気の量は、エクストルーダー内で添加する水、水蒸気の量には含めない。
【0041】
次に、得られた原料混合物を上記装置のエクストルーダー4に供給し、加熱、加圧した後、出口から押し出す。エクストルーダー4では、原料混合物を混練しながら内容物を110~180℃に加熱することが好ましく、120~150℃に加熱することが好ましい。エクストルーダー4内において、原料混合物には、水及び/又は水蒸気を更に添加してもよい(第2の水分添加工程)。ここで添加する水及び水蒸気の合計量は、第2の水分添加前の原料混合物の量に対し、0~15質量%であると、ダイプレート7の排出口から混練物を排出したときに膨化が適度に起こり、所定粒径で所定嵩比重、所定形状の粒が容易に得られるため好ましい。また、第2の水分添加工程では、水と水蒸気のうち水蒸気を添加することが特に好ましい。
またエクストルーダー4に投入する前だけではなく、エクストルーダー4内でも水及び/又は水蒸気を添加することは、原料混合物の温度を高め、エクストルーダー内の原料充満率を上げることで、熱エネルギーと機械的摩擦エネルギーが加わり、上記の大きさ、形状及び嵩比重を一層得やすくする点で好ましい。
プレコンディショナー工程及び/又はエクストルーダー工程にて添加する水分は、添加する水蒸気の量が両工程の合計で上記の通り、プレコンディショナー工程において混合される混合物のうち添加水分(水及び水蒸気)以外の成分の合計に対し、4.0質量%以上が好適であり、4.0~15.0質量%であることが特に好ましい。また添加する水の量が、両工程の合計で0.0~30.0質量%の範囲内であることが好ましく、とりわけ両工程の合計で添加する水の量が5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、17質量%以上であることが特に好ましい。ここでいう水の温度は40~60℃を指すことが好適である。上述の通り水と水蒸気は併用可能である。
【0042】
本製造方法ではこのようにして、水蒸気を添加した混練物をダイプレート7から排出して切断することによりフード粒を成型する。切断は、排出された混練物に対して直ちに行い、混練物は切断後に一気に膨化して本発明の上記形状、上記嵩比重、上記大きさのキャットフード粒が得られる。本製造方法では、エクストルーダー4から排出された混練物はダイプレート7から排出されて切断されると同時に膨化して上記形状が得られる。本製造方法では、ダイプレート7における孔の最小直径R1と、混練物のダイプレートの流路3における最小内径部3Aの長さR2との比率(R1/R2)が0.55~8.4であることで、上記形状が得やすくなる。
エクストルーダーの押出圧力は1.5~3.0MPaであることで、一層本製造方法による嵩比重、大きさ、形状のキャットフード粒が容易に得やすくなる。
得られた膨化粒は適宜乾燥した後、適宜、油脂、調味料、嗜好成分等でコーティングすることが好ましい。乾燥温度は上述した水分含量が得られる温度が好適であり、例えば100~110℃が挙げられる。
【0043】
以下、本発明のキャットフード粒を含むキャットフードを説明する。本発明のキャットフードは本発明のキャットフード粒を50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことが更に好ましく、80質量%以上含むことが更に一層好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましく、本発明のキャットフード粒からなるものであってもよい。
本発明のキャットフードは、上記キャットフード粒による食道の輸送性の向上効果及び吐き戻し防止効果を生かして、優れて吐き戻し防止が良好なものとなり、また食道狭窄や逆流性食道炎、食道閉塞、誤嚥の防止などにも寄与する。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
図1に示す装置を用いた。ダイプレート7の円形の孔の直径(最小内径)R1は4.2mm、R1/R2の比率は2.1とした。エクストルーダー4を用いて膨化粒を製造した。まず、原料として、穀類40.6部、食肉加工品26.2部、繊維源材料12.3部、油脂3.5部、その他ビタミン・ミネラル等の成分6.6部を、グラインダーを用いて粉砕しつつ混合した。混合工程中に、第1の水分添加工程として、エクストルーダー4に供給する原料の合計量(第1の水分添加工程で添加する水及び水蒸気を除く量)に対し、17.8質量%の水(50℃)と、5.4質量%の水蒸気(130℃)を添加した。このようにして原料混合物を得た。得られた原料混合物を、エクストルーダー4に投入し、120~150℃にて加熱加圧する処理を行った後、ダイプレート7の排出口7Aから排出した。エクストルーダー4内において、混練物に対し、1.0質量%の水蒸気(130℃)を添加した。水及び水蒸気を添加した混練物をダイプレート7の排出口7Aから排出するとともに切断して膨化粒を得た。エクストルーダーの押出圧力は2.0MPaであった。
【0045】
得られた粒を100~110℃にて乾燥した後、油脂と調味料や風味成分のコートを行い、実施例1のキャットフード粒を得た。得られたキャットフード粒は、穀粉及び澱粉及びコーングルテンミールの合計量P1と、豆粉及び豆類の加工品の量の比率P2との質量比P1/P2が3.0~4.0であり、穀粉の量がキャットフード粒中15~25質量%であり、穀粉が全粒粉を含み、穀類がキャットフード粒中、25質量%以上43質量%未満であり、食肉加工品がキャットフード粒中、20~32質量%であり、コーティング油脂以外の油脂がキャットフード粒中、3~15質量%であり、サイリウム及び難消化性デキストリンを含有し、サイリウム及び難消化性デキストリンの合計量がキャットフード粒中1.5~5質量%であり、穀類100質量部に対し、繊維源材料の含量が22~33質量部であり、難消化性オリゴ糖の量は繊維源材料中、10質量%以下であり、キャットフードの乾物中、水溶性食物繊維が2.5質量%超~6質量%、不溶性食物繊維が6~14質量%、食物繊維が8~20質量%であった。
【0046】
〔比較例1〕
上記実施例1において、ダイプレートの円形の孔直径(最小内径)R1を5.8mmにした。R1/R2の比率は1.14とした。これらの点以外は、実施例1と同様にして、粒径が大きい比較例1のキャットフード粒を得た。
【0047】
〔比較例2〕
上記実施例1において、ダイプレートの孔の形状を十字状の孔とし、十文字の孔形状を横断する線分の最大長さを8.8mm(R’1)とした。R’1/R2の比率は0.57とした。その点以外は、実施例1と同様にして、比較例2のキャットフード粒を得た。
【0048】
〔比較例3〕
上記実施例1において、ダイプレートの円形の孔直径(最小内径R1)を5.0mmにした。R1/R2の比率は0.53とした。これらの点以外は、実施例1と同様にして、粒径が大きい比較例3のキャットフード粒を得た。
【0049】
〔比較例4〕
上記実施例1において、第1の水分添加工程での水及び水蒸気添加量を水(50℃)19.5質量%、水蒸気3.7質量%に変更し、第2の水分添加工程で水蒸気を添加しなかった。その点以外は、実施例1と同様にして、比較例4のキャットフード粒を得た。
【0050】
〔実施例2〕
上記実施例1において、ダイプレート7の円形の孔の直径(最小内径)R1は4.8mm、R1/R2の比率を0.96とした。その点以外は実施例1と同様にして、実施例2のキャットフード粒を得た。
【0051】
〔実施例3〕
上記実施例2において、原料組成を、穀類52.3部、食肉加工品15部、繊維源材料13.8部、油脂1.0部、その他ビタミン・ミネラル等の成分6.6部に変更した。また、第1の水分添加工程での水及び水蒸気添加量を水(50℃)16.0質量%、水蒸気4.9質量%に変更した。それらの点以外は実施例2と同様にして、実施例3のキャットフード粒を得た。
得られたキャットフード粒は、穀粉及び澱粉及びコーングルテンミールの合計量P1と、豆粉及び豆類の加工品の量の比率P2との質量比P1/P2が2.5以上3.0未満であり、穀粉の量がキャットフード粒中32~40質量%であり、穀粉が全粒粉を含まず、穀類がキャットフード粒中、49~53質量%であり、食肉加工品がキャットフード粒中、15~20質量%であり、コーティング油脂以外の油脂がキャットフード粒中、0.8~3質量%であり、サイリウム及び難消化性デキストリンを含有し、サイリウム及び難消化性デキストリンの合計量がキャットフード粒中0.5~1.5質量%であり、穀類100質量部に対し、繊維源材料の含量が22~33質量%であり、難消化性オリゴ糖の量は繊維源材料中、10質量%以下であり、キャットフードの乾物中、水溶性食物繊維が2.5~6質量%、不溶性食物繊維が14~17質量%、食物繊維が8~20質量%であった。
【0052】
〔実施例4〕
実施例3において、R1/R2を2.4とした。それらの点以外は実施例3と同様にして、実施例4のキャットフード粒を得た。
【0053】
実施例、比較例のキャットフード粒について、円形度、長さ、嵩比重を測定し、下記表1に示す。
なお、円形度は、最も安定な状態、具体的には柱状の原料粒の上面又は底面に相当する面を下向きにして静置させたときの平面視の円形度及び側面視の円形度を測定した。
【0054】
【0055】
<食道輸送性試験1(飲み込んでから胃に到達するまでの時間)>
被験動物として、各試験区とも、猫3頭を用いた。
【0056】
実施例1~4、比較例1~3のキャットフード粒に、100ml中に200gの硫酸バリウムを含有する硫酸バリウム溶液(カイゲンファーマ株式会社製)を塗布した。
得られたバリウム塗布キャットフード粒に油脂と嗜好性剤を塗布した後、個体に与えた。個体ごとに喫食時の様子をX線透視撮影装置を用いて撮影し、キャットフード粒を飲み込んでから少なくとも一粒が胃に到達するまでの時間を測定した。3頭の平均値の結果を表2に示す。なお、比較例1のキャットフード粒をネコ3頭とも摂食しなかったため、測定できなかった。摂食しなかった理由としては粒の平均長が大きかったため、猫が嚥下できなかったことが一因と考えられる。
【0057】
【0058】
表2の通り、所定の形状及び大きさとすることで、食道滞留時間を低減できることが判る。食道滞留時間を低減できることは吐き戻し防止の効果につながる。
【0059】
<食道輸送性試験2(胃に到達してから、全てが胃に入りきるまでの時間)>
被験動物として、各試験区とも、猫5頭を用いた。
被験個体は、12時間絶食後に被験を行った。
実施例1~4、比較例2及び3のキャットフード粒5gに、100ml中に200gの硫酸バリウムを含有する硫酸バリウム水溶液(カイゲンフォーマ社製)を塗布した。
得られたバリウム塗布キャットフード粒に油脂と嗜好性剤を塗布した後、個体に与えた。個体ごとに喫食時の様子をX線透視診断装置を用いて撮影しに一回キャットフード粒を飲み込んで最初の一粒が胃に入った後、当該一回で飲み込んだ全ての粒が胃に入りきるまでの時間を測定した。一回に飲み込む粒数の平均は5~6粒だった。また、本試験にて撮影した、キャットフード粒を(A)嚥下した状態、(B)一回の嚥下分のうち最初の一粒が胃に到達した状態及び(C)一回の嚥下分が胃に入りきった状態を示すX線透視診断装置で撮影した画像を
図3に示す。上記の通り各試験区に5頭使用したが、食べない個体やレントゲンで食道がうまく見えなかった個体は排除したため、評価に用いた試験頭数は3~5頭であった。2回の試験での平均値の結果を表3に示す。
【0060】
【0061】
表2及び表3に示す通り、所定の粒度、形状、所定値以下の嵩比重に設定することで、飲み込んでから胃に到達するまでの時間(食道滞留時間)のみならず、胃に到達してからすべて胃に入りきる時間までもが短く、優れた食道輸送性が得られることが判る。
【0062】
<吐き戻し軽減試験1>
被験動物として、各試験区ごとに猫(1~13歳)を42頭ずつ用いた。訓化期間として、猫は日常の飼育環境と同様に個体ごとに割り振られた飼育個室での環境にて飼育した。給餌方法は猫が自由なタイミングで採食できるよう餌皿から餌を切らさない不断給餌とし、採食時間は午前11:00~翌日午前9:00とした。各試験食あたり2日給与を行った。具体的には、全供試猫の給与開始時点から翌日午前12:00までの吐いた回数の計測とその内容物の記録を2回行い、吐いた回数の2回分の合計を求めた。その際、吐物の状態を確認し、キャットフード形状を残しているものを「吐き戻し」について回数を評価した。結果は表4の通りとなる。なお、形状を残していない嘔吐を含めると吐いた回数の合計は実施例1が2回、比較例4が6回だった。
【0063】
【0064】
<吐き戻し軽減試験2>
各試験区ごとに猫(2~15歳)を24頭ずつ用いた。その点以外は、<吐き戻し軽減試験1>と同様にして、吐き戻し軽減を評価した。結果を表5に示す。
【0065】
【0066】
表4及び表5に示す通り、同じ所定の粒度、形状であって所定値以下の嵩比重に設定することで、実際の吐き戻し防止に繋がることが判る。
【符号の説明】
【0067】
1 製造装置
3 流路
3A 最小内径部
4 エクストルーダー
7 ダイプレート