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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】車両を固定する方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
B60T7/12 B
B60T7/12 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023509725
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2021070080
(87)【国際公開番号】W WO2022037867
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102020121831.1
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】523046350
【氏名又は名称】ツェットエフ・シーヴィー・システムズ・グローバル・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クロスターマン・ティーロ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー・リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】ロータース・ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンドラント・アレクサンダー
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-113803(JP,A)
【文献】特開2015-047948(JP,A)
【文献】特開2013-133072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急ブレーキ状況(NB)において車両(200)、好ましくは商用車両(202)を固定する方法(100)であって、車両(200)が車両バスシステム(204)及びブレーキシステム(220)を備えており、方法が、以下のステップ:
-車両バスシステム(204)における信号(S)を監視するステップと、
-車両バスシステム(204)において運転者アシストシステム(206)により提供される緊急ブレーキ信号(SNB)を検出するステップと、
-車両(200)が停止状態(H)にあるかどうかを検出(E)するステップと、
-車両(200)の停止状態(H)が検出される場合に、ブレーキシステム(220)のブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)へもたらすステップと
を有し、
方法(100)が、車両(200)の停止状態(H)を検出しない場合について、
-手動のユーザ設定(NM)が提供されるかどうかを検出することと、
-手動のユーザ設定(NM)が検出されない場合に、ブレーキシステム(220)のブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)へもたらすことと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
車両(200)が停止状態(H)にあるかどうかを検出(E)するステップが、
-車両バスシステム(204)において車輪回転数センサ(230)又は中央モジュール(208)によって提供される車輪回転数信号(SR)を検出することと、
-車輪回転数信号(SR)を評価することと、
-回転数(D)の大きさ(B)が、好ましくは所定の期間(Z)の間、所定の回転数限界値(GW)を下回る場合に、車両(200)の停止状態(H)を検出することと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
-緊急ブレーキ信号(SNB)の不存在(A)を検出することと、
-車両(200)の緊急ブレーキ(BN)を終了するために運転者アシストシステム(206)により提供される緊急ブレーキ終了信号(SNA)に応答して緊急ブレーキ信号(SNB)の不存在(A)が生じているかどうかを検出することと
を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
-緊急ブレーキ終了信号(SNA)への応答によらずに緊急ブレーキ信号(SNB)の不存在が生じる場合について、緊急ブレーキ信号(SNB)の検出と緊急ブレーキ信号(SNB)の不存在(A)の特定との間の期間(Δt)を検出することと、
-該期間(Δt)を所定の時間限界値(GWZ)と比較することと、
-期間(Δt)が所定の時間限界値(GWZ)を上回る場合に、少なくとも1つの後続操作(F)を実行することと
を更に有することを特徴とする請求項に記載の方法(100)。
【請求項5】
後続操作(F)が、
-車両(200)の停止状態(H)が検出されない場合に、車両(200)を停止状態(H)まで制動するために、ブレーキシステム(220)のブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)へもたらすことと、
-停止状態(H)までの車両(200)の制動(B)につづき、ブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)に保持する(HA)ことと
を含むことを特徴とする請求項に記載の方法(100)。
【請求項6】
後続操作(F)が、
-車両(200)の停止状態(H)の検出(E)が不可能である場合に、ブレーキシステム(200)のブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)へもたらすこと
を含むことを特徴とする請求項又はに記載の方法(100)。
【請求項7】
-ブレーキシステム(220)のブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)へもたらすことにつづいて、走行信号(SF)を検出することと、
-走行信号(SF)の検出に応答してブレーキシステム(220)のブレーキ装置(222)を走行位置(FS)へもたらすことと
を更に有する請求項1~のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項8】
車両バスシステム(204)がCANバスシステム(205)であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項9】
運転者アシストシステム(206)が車両(200)の自動的な緊急ブレーキシステム(207)であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項10】
ブレーキ装置(222)がブレーキシステム(220)のパーキングブレーキ(224)又はフットブレーキ(226)であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法(100)のステップを実行するのに適した手段を備えた、車両(200)用の制御ユニット(210)。
【請求項12】
コンピュータプログラム(C)が演算ユニット(214)において実行されるときに、請求項11に記載の制御ユニット(210)に請求項1~10のいずれか1項に記載の方法(100)を実行させるコマンド(CO)を含むコンピュータプログラム(C)。
【請求項13】
請求項11に記載の制御ユニット(210)を備えた、車両(200)用、特に商用車両(202)用のブレーキシステム(220)。
【請求項14】
請求項13に記載のブレーキシステム(220)を備えた、車両(200)、好ましくは商用車両(202)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急ブレーキ状況において車両、好ましくは商用車両を固定する方法に関するものであり、車両は、車両バスシステム及びブレーキシステムを備えている。
【背景技術】
【0002】
車両、特に商用車両の乗員を保護するために、車両を自動化して制動することがしばしば望まれている。特に、事故直後には、例えば更なる衝突時に車両が移動することを防止し、又は事故の犠牲者の救助を容易にするために、車両を制動することが有用であり得る。しばしば、事故時の救助隊員にとって、救助隊員の追加的な危険を排除するために、人の救助の開始前に事故車両を固定する必要があるという問題がある。車両の積載状態及び事故の場所によっては、このために時間及び多くの救助人が必要となることがあり、これにより、事故の犠牲者の救助が遅れてしまう。当該問題は、複数の車両の事故において特に顕著である。
【0003】
特に、例えばトラックのような商用車両が事故の発生において関与する場合には、商用車両の運転者を変形した運転席から救助する必要があるという問題がよく生じる。このとき、しばしば、油圧式の救助シリンダの使用は十分ではなく、その結果、商用車両の運転席を分解する必要があり、車両の事前の固定が必要不可欠である。更なる問題は、横転したトレーラ又は車両の救助時に、車両を起こすときに車両の車輪が解放され、起こした後に車両が動き始めてしまう場合に生じ得る。特に、トレーラ又は車両を起こすために、例えばクレーン又はケーブルウィンチのような、車両によって運搬されることが可能な更なる補助手段を用いる場合に、救助隊員が危険にさらされることがある。
【0004】
また、とりわけ往来の多い道路においては、停止している車両が別の車両によって衝突され、第三者車両が押され、車両乗員が挟まれることがあるというおそれがある。
【0005】
現代の車両は、危険状況を認識し、場合によっては車両の緊急ブレーキを作動させるように形成された緊急ブレーキシステムをしばしば備えている。そして、車両は、緊急ブレーキ中に停止状態まで制動され、ブレーキは、停止状態の到達後に解除される。車両を停止状態においても制動するために、車両のパーキングブレーキをブレーキ位置へもたらす方法が知られている。すなわち、特許文献1には、 緊急ブレーキが実行されたかどうかを検出し、実行された場合には、原動機付き車両の走行方向において原動機付き車両の前方に先行車両があるかどうかを検出し、先行車両がある場合には、原動機付き車両が停止しているかどうかを検出し、停止している場合には、パーキングブレーキをブレーキ位置へもたらすというステップを有する原動機付き車両を動作させる方法が開示されている。ここでの欠点は、先行車両が検出される場合にのみパーキングブレーキがブレーキ位置へもたらされることである。また、先行車両のための検出装置が存在し、機能しなければならない。しかし、前方衝突時には、当該検出装置が損傷し、したがって、停止状態において先行車両を検出することができないこととなることがよくある。
【0006】
特許文献2から、原動機付き車両の現在又は将来の移動状態を検出する少なくとも1つの動作データセンサを特徴付ける動作データと、所定の動作データが存在する場合に原動機付き車両の自動的な緊急ブレーキを作動させる電気的な制御部とを備えた、原動機付き車両用の運転者アシストシステムが知られている。また、緊急ブレーキの直前、緊急ブレーキ中又は緊急ブレーキ後に車両のパーキングブレーキを、電流障害によりパーキングブレーキがパッシブにブレーキ位置へもたらされる起動位置へもたらすために、電気的な制御部が設けられるようになっている。ここでも、制御部は動作データセンサに直接接続されているため、運転者アシストシステムが事故時に損傷した場合に機能が保証され得ない。緊急ブレーキも、また停止状態における制動も電気的な制御部のコマンドに基づくものであるため、制御部の障害は機能全体の障害を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第2214140号明細書
【文献】独国特許出願公開第102007052439号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、従来技術に比して改善された機能性及び安全性を好ましくはよりわずかなコストで可能とする、車両を固定する方法を提供することにある。特に、特に高い障害安全性が達成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の態様において、以下のステップ:車両バスシステムにおける信号を監視するステップと、車両バスシステムにおいて運転者アシストシステムにより提供される緊急ブレーキ信号を検出するステップと、車両が停止状態にあるかどうかを検出するステップと、車両の停止状態が検出される場合に、ブレーキシステムのブレーキ装置をブレーキ位置へもたらすステップとを有する冒頭に挙げた方法において課題を解決するものである。
【0010】
本発明は、車両バスシステムにおいて提供される信号が、車両バスシステムに接続された複数の装置又は車両のモジュールによって検出されることが可能であるという認識を基礎とするものである。車両バスシステムは、複数の関連部の間のデータ及び/又は信号の伝達が共通の伝達経路を介して行われることを特徴としている。この場合、複数のシステムも、バスシステムにおいて運転者アシストシステムによって提供される信号を受信する。運転者アシストシステムが緊急ブレーキ信号を車両バスシステムにおいて提供すると、当該緊急ブレーキ信号は、車両バスシステムを監視する1つ又は複数のシステム又は要素によって検出されることが可能である。これにより、有利には、冗長性を得ることが可能である。例えば、運転者アシストシステムが損傷している場合には、ブレーキシステムのブレーキ装置は、他のシステム及び/又はモジュールを用いてブレーキ位置にももたらされることが可能である。また、車両が停止しており、運転者アシストシステムが、車両の停止状態においてブレーキ装置をブレーキ位置へもたらすように形成されていない場合には、ブレーキシステムのブレーキ装置をブレーキ位置へもたらすことが可能である。したがって、本発明による方法は、特に追加導入されたシステム及び/又はモジュールを用いた実行のためにも適している。しかし、方法が現存のシステム及び/又は車両の現存の構成要素、特にブレーキシステムを用いて実行されるように構成することも可能である。
【0011】
車両バスシステムの信号の監視は、好ましくは車両バスシステムにおいて提供される信号の受信を含む。また、監視は、好ましくは車両バスシステムにおいて提供されう信号の識別を含む。したがって、例えば、車両バスシステムにおいて提供される信号が緊急ブレーキ信号又は例えばエアバッグ信号のような他の信号であるかどうかを検出することが可能である。特に好ましくは、車両バスシステムにおける信号の監視は、車両バスシステムにおいて提供される信号を識別するチェックサム及び/又はカウンタの検出を含む。そして、好ましくは、運転者アシストシステムによって車両バスシステムにおいて提供される緊急ブレーキ信号の検出は、検出されたチェックサム及び/又は検出されたカウンタを所定の安全性チェックサム及び/又は所定の安全性カウンタと比較することを含み、信号の検出されたチェックサムが所定の安全性チェックサムと一致するとき、及び/又は信号の検出されたカウンタが安全性カウンタと一致するときに、緊急ブレーキ信号が検出される。好ましくは、車両バスシステムにおける信号の監視と、ブレーキシステムのブレーキ制御ユニットによる緊急ブレーキ信号の検出とが行われる。しかし、車両バスシステムにおける信号の監視及び緊急ブレーキ信号の検出が、代替的に、又は冗長的に、ハンドブレーキ制御ユニット、特に好ましくは電気-空圧式のハンドブレーキのハンドブレーキ制御ユニットによって行われるように構成されることも可能である。好ましくは、ハンドブレーキ制御ユニット及びブレーキ制御ユニットは、監視及び/又は検出のためにも協働することが可能である。場合によってはあり得る、車両の緊急ブレーキとのネガティブな相互作用は、車両の停止状態が検出されると初めてブレーキシステムのブレーキ装置がブレーキ位置へもたらされることで回避されることが可能である。
【0012】
第1の好ましい実施形態では、方法は、車両の停止状態を検出しない場合について、手動のユーザ設定が提供されるかどうかを検出することと、手動のユーザ設定が検出されない場合に、ブレーキシステムのブレーキ装置をブレーキ位置へもたらすことと含む。車両の停止状態が検出されない場合は、複数のあり得る原因を有し得る。例えば、緊急ブレーキ信号を提供する基礎となる緊急ブレーキ状態は、車両のフルブレーキングを必要としないことがあり得る。これは、例えば、先行車両が一時的に減速し、その後走行を継続し、その結果、後続車両がフルブレーキングされる必要がない場合である。緊急ブレーキ信号の提供につづいて走行が継続されれば、車両バスシステムにおいてユーザ設定が提供され、当該ユーザ設定は、例えば、車両バスシステムにおいてアクセルペダルの操作によって提供される走行信号であり得る。走行信号が存在しなければ、これは、緊急状況を示唆しているため、車両の停止状態が検出されない場合に、ブレーキ装置をブレーキ位置へもたらすことが有意義であり得る。好ましくは、所定の期間の間手動のユーザ設定が存在しない場合に、ブレーキシステムのブレーキ装置をブレーキ位置へもたらすことが行われる。好ましくは、期間は、緊急ブレーキ信号の算出から測定される。
【0013】
好ましい一実施形態では、ステップは、車両バスシステムにおいて車輪回転数センサ及び/又は中央モジュールによって提供される車輪回転数信号を検出することと、車輪回転数信号を評価することと、回転数の大きさが、好ましくは所定の期間の間、所定の回転数限界値を下回る場合に、車両の停止状態を検出することとを含む。好ましくは、車両が停止状態にあるかどうか検出するステップは、車両バスシステムにおいて加速度センサによって提供される車輪回転数信号を検出することと、加速度信号を評価することと、加速度値が、好ましくは所定の期間の間、車両の停止状態を表す場合に、車両の停止状態を検出することとを有することが可能である。例えば、正及び/負の加速度値の不存在は、車両の停止状態を表すことができる。
【0014】
好ましくは、車両バスシステムも監視するモジュールによって車輪回転数信号の評価が行われる。しかし、車輪回転数センサが、車輪回転数信号を評価し、車両が停止状態にあるかどうかを検出するように構成することも可能である。そして、場合によっては、車輪回転数センサは、車両バスシステムにおける停止状態信号を提供するように形成されている。好ましくは、車輪回転数信号が提供されない場合のために、方法は、車輪回転数信号の最後の提供からの期間が所定の回転数時間限界値を超過する場合にブレーキシステムのブレーキ装置をブレーキ位置へもたらすことを有している。好ましくは、回転数の大きさが、所定の回転数限界値を下回り、好ましくは所定の期間の間下回り、車輪回転数信号の検出前の所定の期間において、検出された加速度値が所定の加速度値を超過する場合に車両の停止状態の検出が行われることができる。したがって、例えば、車両の強い減速の後に車輪の停止状態となることが車両の事故について典型的である。好ましくは、車両が停止状態にあるかどうかを検出することは、代替的に、又は補足的に、タコ信号が所定のタコ限界値を超過するときにタコ信号の検出、タコ信号の評価及び車両の停止状態の検出を用いても行われることができる。
【0015】
好ましくは、方法は、緊急ブレーキ信号の不存在を検出することと、車両の緊急ブレーキを終了するために運転者アシストシステムにより提供される緊急ブレーキ終了信号に応答して緊急ブレーキ信号の不存在が生じたかどうかを検出することとを更に有する。
【0016】
緊急ブレーキ終了信号は個別の信号である必要はないことが理解されるべきである。同様に、緊急ブレーキ終了信号は、緊急ブレーキ信号の一部であってもよい。好ましくは、緊急ブレーキ信号は緊急ブレーキ終了信号を有しており、緊急ブレーキ終了信号は、緊急ブレーキ信号の正確な終了を識別する。好ましくは、緊急ブレーキ終了信号は、緊急ブレーキ信号の所定の終了ビット及び/又は所定の終了ビット列である。例えば、緊急ブレーキ終了信号は、7つの連続したレセッシブビットから成る終了ビット列であってよい。このとき、緊急ブレーキ終了信号は、緊急ブレーキが終了されるべきであるように緊急ブレーキ信号を特徴付ける。このことは、例えば、緊急ブレーキがもはや不要である場合か、又は車両が停止状態である場合であり得る。緊急ブレーキがもはや存在せず、緊急ブレーキ終了信号が存在しない場合には、これは、運転者アシストシステムの損傷を示唆している。したがって、例えば、運転者アシストシステムが損傷又は破壊されていることがあり、当該運転者アシストシステムは、車両バスシステムにおいてもはや緊急ブレーキ信号も提供しない。特に、運転者アシストシステムはしばしば車両前部に配置されているため、車両が障害物に衝突すると当該運転者アシストシステムはしばしば破壊されてしまう。しかし、運転者アシストシステムの破壊後にも車両のブレーキは必要であることがあり、このために、好ましくは、緊急ブレーキ終了信号に応答して緊急ブレーキ信号の不存在が生じるかどうかが検出される。
【0017】
好ましくは、方法は、緊急ブレーキ終了信号への応答によらずに緊急ブレーキ信号の不存在が生じる場合について、緊急ブレーキ信号の検出と緊急ブレーキ信号の不存在の特定との間の期間を検出することと、該期間を所定の時間限界値と比較することと、期間が所定の時間限界値を上回る場合に、少なくとも1つの後続操作を実行することとを更に有する。車両が事故に巻き込まれると、緊急ブレーキ信号の第1の検出と実際の衝突により生じる緊急ブレーキ信号の不存在との間に、時間限界値によって表される所定の最小時間インターバルが経過する。緊急ブレーキ信号の検出と緊急ブレーキ信号の不存在の間に経過する期間が当該時間限界値よりも短い場合には、緊急ブレーキの不存在は、高い確率で車両の事故が原因ではない。したがって、期間を時間限界値と比較することで、後続操作の早期の、又は不要な実行を回避することが可能である。例えば、別の運転者アシストシステムは、緊急ブレーキシステムが損傷したとしても、事故中に車両が停止状態まで制動されるように形成されることが可能である。後続操作は、このいわゆる「クラッシュ時(in crash)」ブレーキが終了された時に初めて行われることとなり、このために、通常は、時間限界値を規定する既知の最小時間インターバルが必要である。また、時間限界値が別のパラメータを用いて規定されるように構成することも可能である。
【0018】
好ましい一発展形態では、後続操作が、車両の停止状態が検出されない場合に、停止状態まで車両を制動するために、ブレーキシステムのブレーキ装置をブレーキ位置へもたらすことと、停止状態までの車両の制動につづき、ブレーキ装置をブレーキ位置に保持することとを含む。事故時に運転者アシストシステムが損傷又は破壊されると、車両バスシステムにおいてもはや緊急ブレーキ信号は提供されない。このとき、車両は常に移動することがあり得るため、更なる衝突を回避するために、車両の制動が引き続き望まれ得る。そのため、好ましくは、後続操作は、停止状態までの車両の制動を含む。これにより、有利には、運転者アシストシステムの冗長性を得ることが可能である。したがって、運転者アシストシステムが破壊され、緊急ブレーキ信号がもはや提供されない場合であっても、車両の制動が可能である。また、停止状態までの制動につづいて車両は引き続き制動されるため、車両の固定及び/又は事故の犠牲者の救助が容易となる。
【0019】
好ましくは、後続操作は、車両の停止状態の検出が不可能である場合に、ブレーキシステムのブレーキ装置をブレーキ位置へもたらすことを含む。例えば、1つあるいは複数の車輪回転数センサが損傷している場合、及び/又は車両バスシステムが遮断されている場合には、車両の停止状態の検出が不可能であり得る。このような場合にも、好ましくは車両の制動が可能であるべきである。
【0020】
好ましい一実施形態によれば、方法は、ブレーキシステムのブレーキ装置をブレーキ位置へもたらすことにつづいて、走行信号を検出することと、走行信号の検出に応答してブレーキシステムのブレーキ装置を走行位置へもたらすこととを更に有する。事故の犠牲者の救助に際して、事故車両を移動させることがしばしば必要となり得る。例えば、商用車両の運転者が運転席において挟まれていれば、運転者を救助することができるように、互いに引っかかった2つの車両を分離することが必要となることがある。ブレーキ位置へもたらされたブレーキシステムのブレーキ装置を解除し、車両の移動を可能とするために、好ましくは、ブレーキシステムのブレーキ装置を走行位置へもたらすことが設定されている。このことは、本発明により、走行信号を検出することで行われ、走行信号は、好ましくは車両のアクセルペダルによって提供される。また、車両が事故に巻き込まれることなく、ブレーキシステムのブレーキ装置をブレーキ位置へもたらすことも可能である。例えば、車両の緊急ブレーキによる事故を防止することが可能である。車両の走行が継続されるべき場合には、車両の運転者は走行信号を提供し、ブレーキ装置が走行位置へもたらされ、車両が新たに移動することが可能である。好ましくは、走行信号は、車両に設けられた外部の解除装置を用いて、及び/又は車両の中央制御ユニットによって提供されることも可能である。
【0021】
好ましくは、車両バスシステムはCANバスシステムである。CANバスシステムは、全ての一般的な車両タイプに対して大きく普及しているため、方法を好ましくは特に多くの車両に適用することが可能である。更に好ましくは、車両バスシステムは、CAN FDバスシステム、LINバスシステム、SAE J1939バスシステム、FlexRayバスシステム、MOSTバスシステム又はK-Lineバスシステムであってもよい。
【0022】
方法の好ましい一実施形態では、運転者アシストシステムは、車両の自動的な緊急ブレーキシステムである。このような自動的な緊急ブレーキシステムは、好ましくは少なくとも1つのレーダユニットを備えており、当該レーダユニットは、走行方向において車両の前方にある走行経路を検出するように形成されている。車両の事故時には、このようなレーダシステムがしばしば損傷されるため、運転者アシストシステムが車両の自動的な緊急ブレーキシステムであれば、方法により特に良好な冗長性が可能となる。
【0023】
好ましくは、ブレーキ装置は、ブレーキシステムのパーキングブレーキ又はフットブレーキである。例えばブレーキ信号が提供されなくとも、通常はパーキングブレーキが車両を継続的に制動するために形成されていることが特に有利である。したがって、商用車両は、いわゆるスプリング式ブレーキをしばしば備えており、油圧又は空圧によるブレーキ圧力及び/又はブレーキ信号が提供されなくとも、付勢されたスプリングが車両を制動する。しかし、ブレーキ装置が電子式のハンドブレーキ及び/又は磁気ブレーキであるようにも構成することが可能である。
【0024】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による方法のステップを実行するのに適した手段を備えた、車両用の制御ユニットによって、冒頭に挙げた課題を解決する。好ましくは、制御ユニットは、車両のブレーキシステムのメイン制御ユニットである。しかし、制御ユニットが、本発明の第1の態様による方法を実行するためだけに設けられた個別の制御ユニットであるように構成することも可能である。このことは、特に高い冗長性を得るべき場合に特に望ましい。
【0025】
第3の態様によれば、本発明は、コンピュータプログラムが演算ユニットにおいて実行されるときに、本発明の第2の態様による制御ユニットに本発明の第1の態様による方法を実行させるコマンドを含むコンピュータプログラムによって、冒頭に挙げた課題を解決する。好ましくは、演算ユニットは、本発明の第2の態様による制御ユニットの演算ユニットである。
【0026】
第4の態様によれば、本発明は、本発明の第2の態様による制御ユニットを備えた車両用、特に商用車両用のブレーキシステムによって、冒頭に挙げた課題を解決する。好ましくは、ブレーキシステムは、車両のトレーラ用のトレーラブレーキ回路を備えており、ブレーキ装置は、特に好ましくはトレーラブレーキ回路のブレーキ装置を含んでいる。
【0027】
第5の態様によれば、冒頭に挙げた課題は、本発明の第4の態様によるブレーキシステムを備えた車両、好ましくは商用車両によって解決される。
【0028】
本発明の第1の態様による方法、本発明の第2の態様による制御ユニット、本発明の第3の態様によるコンピュータプログラム、本発明の第4の態様によるブレーキシステム及び本発明の第5の態様による車両は、特に従属請求項に記載されているように、同一及び類似の下位態様を備えることが理解されるべきである。この点では、制御ユニット、コンピュータプログラム、ブレーキシステム及び車両の更なる構成並びにその利点については、本発明の第1の態様についての上記説明が包括的に参照される。
【0029】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。当該図面は実施形態を必ずしも縮尺どおりに図示するものではなく、むしろ、図面は、説明のために有用であれば、概略的な、及び/又はややゆがめた形態で表されている。図面から間接的に認識可能な示唆の補足については、関連する従来技術を参照されたい。この場合、本発明の全般的な着想を逸脱しない限り、実施形態の形態及び詳細についての多彩な修正及び変更を行うことが可能であることが考慮されるべきである。明細書、図面及び特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、個々にも、また適宜の組合せにおいても、本発明の発展形成にとって本質的であり得る。加えて、本発明の範囲には、明細書、図面及び/又は特許請求の範囲において開示された特徴のうち少なくとも2つから成る全ての組合せが含まれる。本発明の全般的な着想は、以下に示し、説明する好ましい実施形態の具体的な形態又は詳細に限定されず、又は特許請求の範囲において請求される対象に比して制限される対象に限定されるものではない。記載された寸法範囲において、挙げた限界値内の値も、限界値として開示され、適宜用いることが可能であり、特許請求可能であるべきである。簡易化のために、以下では、同一若しくは類似の部材又は同一若しくは類似の機能を有する部材には同一の符号を付している。本発明の別の利点、特徴及び詳細は、好ましい実施例の以下の説明及び図面に基づき明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ブレーキシステム及び運転者アシストシステムを有する、第1の実施例による車両を示す図である。
図2】本発明による方法の第1の実施例のステップを表す概略的な図である。
図3】車両が停止状態にあるかどうかの検出を更に図示する概略的な図である。
図4】本発明による方法の第2の実施例のステップを表す概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、ここでは商用車両202である車両200が示されている。車両200はブレーキシステム200を備えており、当該ブレーキシステムは、車両200の前車軸VAのための前車軸ブレーキ回路232と、後車軸HAのための後車軸ブレーキ回路234とを備えている。後車軸HAについては、更にパーキングブレーキ回路236が設けられている。前車軸ブレーキ回路232は、第1の圧縮エア供給部238から供給を受け、後車軸ブレーキ回路234は第2の圧縮エア供給部240から供給を受け、パーキングブレーキ回路236は第3の圧縮エア供給部242から供給を受ける。第1の圧縮エア供給部238も、また第2の圧縮エア供給部240及び第3の圧縮エア供給部242も、供給圧力pVを提供する。これに代えて、パーキングブレーキ回路236は、第1の圧縮エア供給部238及び/又は第2の圧縮エア供給部240によって供給を受けるように構成することも可能である。ブレーキシステム220は、複数のブレーキ装置222を備えている。ここで、ブレーキ装置222は、前車軸VAにおける第1及び第2の前車軸ブレーキアクチュエータ244a,244bと、後車軸HAにおける2つの後車軸ブレーキアクチュエータ246c,246dとを含んでいる。後車軸ブレーキアクチュエータ246c,246dは、いわゆるTristopブレーキシリンダとして形成されているとともに、スプリング式ブレーキシリンダを備えることで、フットブレーキ226としても、またパーキングブレーキ224としても動作することが可能である。
【0032】
ブレーキシステム220はブレーキエンコーダ248を備えており、当該ブレーキエンコーダは、第1の圧縮エア供給部238にも、また第2の圧縮エア供給部240にも接続されている。ブレーキエンコーダ248は、いわゆる1P2Eブレーキエンコーダとして形成されているとともに、空圧式の出力部のほかに2つの電気的な出力部も備えている。操作時には、ブレーキエンコーダ248は、空圧式の出力部において第1の前車軸ブレーキ制御圧力pVBS1を提供し、第1の電気的な出力部において第1の後車軸ブレーキ要求信号SHBA1を提供する。そして、第1の前車軸ブレーキ制御圧力pVBS1は、前車軸モジュレータ250において提供され、当該前車軸モジュレータは、第1の前車軸ブレーキ制御圧力を体積増強し、これに基づき、第1及び第2の前車軸ブレーキアクチュエータ244a,244bのための前車軸ブレーキ圧力pBVAを調節する。車輪に応じた制動を達成するために、前車軸モジュレータ250と第1あるいは第2の前車軸ブレーキアクチュエータ244a,244bの間には第1及び第2の前車軸ABSバルブ252a,252bが設けられており、当該第1及び第2の前車軸ABSバルブは、中央モジュール208によって切り換えられるように、当該中央モジュールと電気的に接続されている。中央モジュール208は、公知の態様で更に車輪回転数センサ230a,230b,230c,230dに接続されている。
【0033】
後車軸ブレーキ回路234は、ここでは、中央モジュール208を用いて電気的に制御され、当該中央モジュールは、ブレーキエンコーダ248から提供される後車軸ブレーキ要求信号SHBA1を受信し、対応する後車軸ブレーキ信号SBHを後車軸モジュレータ254に提供する。そして、後車軸モジュレータ254は、後車軸ブレーキ信号SBHに基づき、後車軸ブレーキアクチュエータ246c,246dの各フットブレーキ226における対応する後車軸ブレーキ圧力pBHAを調節する。また、中央モジュール208は、前車軸モジュレータ250における前車軸ブレーキ信号SBVも提供することができ、前車軸モジュレータ250は、前車軸ブレーキ信号SBVに対応する前車軸ブレーキ圧力pBVAを調節するように形成されている。
【0034】
パーキングブレーキ回路236のパーキングブレーキモジュール256は、ブレーキエンコーダ248にも、またパーキングブレーキエンコーダ258にも接続されている。また、パーキングブレーキモジュール256は、中央モジュール208にも接続されている。ここでは例えばパーキングブレーキエンコーダ258のような、パーキングブレーキモジュール256に接続された要素のうち1つが対応するパーキングブレーキ信号SBFを提供する場合には、パーキングブレーキモジュール256は、パーキングブレーキ圧力pBFBを調節する。加えて、パーキングブレーキモジュール256は、パーキングブレーキ224のスプリング蓄勢部を抜気し、したがってパーキングブレーキ224をブレーキ位置BSへ変位させるように形成されている。パーキングブレーキモジュール256は、抜気のためにパーキングブレーキ224のスプリング蓄勢部を圧力シンク、好ましくは周囲に接続し、これにより抜気圧力p0を提供する。
【0035】
さらに、車両200は、運転者アシストシステム206を備えている。運転者アシストシステム206は、ここでは車両前部218に配置された緊急ブレーキシステム207である。車両前部218の前方に位置する車両200の車両範囲を検出するために、緊急ブレーキシステム207は、更に図示されたレーダシステムを備えている。緊急ブレーキシステム207は、車両200が減速する必要がある緊急ブレーキ状況NBが存在するかどうかを検出し、場合によっては緊急ブレーキ信号SNBを提供するように形成されている。例えば、緊急ブレーキシステム207が車両200の前方に現れる障害物(不図示)を検出し、車両200の回避がもはや不可能である場合には、このことを緊急ブレーキシステム207によって検出し、当該緊急ブレーキシステムは、緊急ブレーキ信号SNBを提供する。
【0036】
運転者アシストシステム206は、ここではCANバスシステム205である車両バスシステム204を用いて中央モジュール208及びパーキングブレーキモジュール256に接続されている。車両バスシステム204は、車両バスシステム204に接続された複数のユニット間でデータ及び/又は信号を伝達するシステムであり、共通の伝達経路が用いられる。したがって、緊急ブレーキシステム207によって提供される緊急ブレーキ信号SNBは、ここでは、中央モジュール208及びパーキングブレーキモジュール256によって検出されることが可能である。さらに、パーキングブレーキモジュール256と中央モジュール208の間にも車両バスシステム204の接続が存在する。車両200、特にブレーキシステム220の別のユニットも車両バスシステム204に接続されることが可能であることが理解されるべきである。例えば、不図示の操舵角センサ又は電子的な操舵部を車両バスシステム204に接続することが可能である。本実施例では、中央モジュール208を用いて、車両バスシステム204における車輪回転数信号SRの提供が更に行われる。
【0037】
運転者アシストシステム206が車両バスシステム204において緊急ブレーキ信号SNBを提供すると、このことは、中央モジュール208によって認識される。その後、中央モジュール208は、前車軸モジュレータ250において前車軸ブレーキ信号SBVを提供し、後車軸モジュレータ254において後車軸ブレーキ信号SBHを提供する。これに応答して、モジュレータ250,254によってブレーキ圧力pBVA,pBHAが調節され、車両200が制動される。車両200の緊急ブレーキがもはや不要となると、例えば、車両が停止状態Hにあるか、又は障害物がもはや存在しない場合には、運転者アシストシステム206は、車両バスシステム204において緊急ブレーキ終了信号SNAを提供する。その後、車両200の制動が終了する。このような緊急ブレーキBNを実行するために形成されている運転者アシストシステム206は十分に知られている。ただし、このとき、車両200の制動が停止状態Hまでのみ行われ、ブレーキ装置222はその後解除されることが致命的である。また、運転者アシストシステム206は露出された車両前部218に配置されており、これにより、車両200の事故の際に損傷及び/又は破壊されることがあり得る。緊急ブレーキシステム207が事故時に損傷すると、緊急ブレーキ信号SNBも提供されることができず、車両200の緊急ブレーキBNがもはや不可能である。
【0038】
図2には、車両200を固定するための本発明による方法100の第1の実施例のステップが図示されている。第1のステップS1では、信号Sが車両バスシステム204において監視される。ここでは、信号Sの当該監視は、ここでは本発明による制御ユニット210であるか、当該制御ユニットを含む中央モジュール208によって行われる。しかし、信号Sの監視が個別の制御ユニット210及び/又はモジュレータ250,256のうち1つによって行われるようにすることも可能である。中央モジュールは演算ユニット214を備えており、当該演算ユニットは、コンピュータプログラムCのコマンドCOを実行するように形成されている。コンピュータプログラムCが演算ユニット214において実行されると、制御ユニット210の手段212が本発明による方法100のステップを実行する。
【0039】
緊急ブレーキ状況NBが存在すると、運転者アシストシステム206は、緊急ブレーキ信号SNBを車両バスシステム204において提供する。そして、緊急ブレーキ信号SNBは、第2のステップS2で車両バスシステム204において検出されることが可能である。緊急ブレーキ信号SNBの検出に応答して、制御ユニット210は、第3のステップS3において、車両200が停止状態Hにあるかどうかを検出する。車両200の停止状態Hの検出Eについては後述する。車両200が停止状態Hにあることが検出されると、つづく第4のステップS4において、ブレーキシステム200のブレーキ装置222がブレーキ位置BSへもたらされる。本実施例では、このために、中央モジュール208によって、抜気信号S0が後車軸モジュレータ254において提供される。その後、後車軸モジュレータは、スプリング蓄勢部を周囲圧力p0へ抜気し、これにより、パーキングブレーキ224がブレーキ位置BSへもたらされる。スプリング式ブレーキが無圧状態でブレーキ位置BSへ移行されるため、特に高い信頼性を得ることが可能である。
【0040】
車両の停止状態Hが存在しないという検出Eが生じると、第5のステップS5において、手動のユーザ設定NMが提供されるかどうかが検出される。このような手動のユーザ設定NMは、例えば、車両バスシステム204におけるアクセルペダル260によって、又は他のライン(不図示)を用いて提供されることが可能である。また、手動のユーザ設定NMは、ブレーキエンコーダ248を用いて提供されることも可能である。車両200の運転者から手動のユーザ設定NMが提供されると、運転者は負傷しておらず、緊急ブレーキ状況NBが処理されたと推定することができる。そして、ブレーキシステム200のブレーキ装置222をブレーキ位置BSへもたらすことは不要であり、車両200の走行を継続することができる。
【0041】
これに対して、緊急ブレーキ信号SNBの検出Eの後、及び車両200の停止状態Hが存在しないときに手動のユーザ設定NMが検出されないと、このことは、緊急ブレーキNBの存在についての強い兆候である。そのため、第6のステップS6では、車両200の停止状態Hが検出されない場合に、ブレーキ装置222もブレーキ位置BSへもたらされることが可能である。
【0042】
図3には、車両200が停止状態Hにあるかどうかの検出Eが更に図示されている。車両バスシステム204における信号Sの監視(ステップS1)及び緊急ブレーキ信号の検出(ステップS2)の後、第1の部分ステップS3.1では、車輪回転数信号SRが検出される。ここで、車輪回転数センサ230が中央モジュール208において信号値を提供し、当該中央モジュールもまた車輪回転数信号SRを提供する。しかし、同様に、車輪回転数信号SRは、個別の制御ユニット210及び/又は車輪回転数センサ230により提供されることも可能である。
【0043】
検出Eの第2の部分ステップS3.2では、車輪回転数信号SRが評価される。評価時には、回転数Dの大きさ(絶対値)Bが検出される。このとき、回転数の大きさBは、ある期間にわたって考察されることも可能である。つづいて、回転数Dの検出された大きさBは、第3の部分ステップS3.3において、所定の回転数限界値GWDと比較される。そのため、車両200が回転数の負の値をもって後進することがあり得るため、回転数Dの大きさBを考察することが特に有意義である。好ましくは、回転数信号SRに基づく評価時に車両200の速度が算出される。しかし、このとき、車輪回転数信号SRは、既に対応する速度情報を含むことも可能である。
【0044】
回転数Dの大きさBが所定の回転数限界値GWDを下回る場合には、車両200の停止状態Hが検出される。好ましくは、回転数限界値GWDは、ゼロの値を有している。しかし、回転数限界値がゼロより大きいように設定されることも可能である。すなわち、車両200があまり大きくない速度(例えば≦3km/h)のみをもって移動し、したがって制動による車両200のスリップについてのおそれがないか、又はそのようなおそれが小さい場合には、ブレーキシステム220のブレーキ装置222がブレーキ位置BSへもたらされることも可能である。
【0045】
好ましくは、回転数限界値GWDが所定の期間Zの間下回るときにのみ停止状態Hが検出される。これにより、車両200の1つ又は複数の車輪の短期的なロックが誤って車両200の停止状態Hと解釈されることを防止することができる。
【0046】
検出Eの結果に依存して、つづいてステップS5又はS6を実行することができる(図3では、停止状態Hの肯定的な検出の場合のみが図示されている。)。検出Eが好ましくは継続的に、及び/又は方法100の他のステップと並行して実行され得ることが理解されるべきである。
【0047】
図4には、第2の実施例による本発明による方法のステップが図示されている。まず、第2の実施例においても、信号Sは車両バスシステム204において監視される(ステップS1)。第1の実施例(図2)と同様に緊急ブレーキ状況NBが存在し、緊急ブレーキ信号SNBが車両バスシステム204において提供されると、当該緊急ブレーキ信号SNBは、第2のステップS2において検出される。ここでの緊急ブレーキ信号SNBに基づき、車両200は緊急ブレーキBNを実行する。第7のステップS7では、緊急ブレーキ信号SNBの不存在Aが検出される。このような不存在Aは、複数の考えられる原因を有し得る。例えば、緊急ブレーキ状況NBが処理されていることがあり得るため、運転者アシストシステム206が緊急ブレーキ信号SNBをもはや提供しない。しかしながら、車両バスシステム204における緊急ブレーキ信号SNBの提供がもはや不可能であることも考えられる。これは、例えば、車両前部218に配置された運転者アシストシステム206が損傷する前方衝突に車両200が巻き込まれた場合である。
【0048】
したがって、第8のステップS8では、車両200の緊急ブレーキBNを終了するために運転者アシストシステム206により提供される緊急ブレーキ終了信号SNAに応答して緊急ブレーキ信号SNBの不存在Aが生じたかどうかが検出される。緊急ブレーキBNが通常どおりに終了されるべき場合には、運転者アシストシステム206は、緊急ブレーキ終了信号SNAを提供し、場合によっては車両200の走行が継続される。このとき、緊急ブレーキ終了信号SNAは、緊急ブレーキ信号SNBの構成要素であってもよい。
【0049】
方法100の第2の実施例においても、車両200が停止状態Hにあるかどうかの検出Eが行われる。図4に図示されているように、このことは、好ましくは、緊急ブレーキ信号SNBの不存在Aにつづいて実行される。しかし、検出Eを継続的に、又は定期的な時間インターバルで実行するようにすることも可能である。
【0050】
緊急ブレーキ終了信号SNAへの応答によらずに緊急ブレーキ信号SNBの不存在AをステップS8が生成する場合には、第9のステップS9において、緊急ブレーキ信号SNBの検出と緊急ブレーキ信号SNBの不存在の検出の間の期間Δtが算出される。当該期間Δtは、好ましくは中央モジュール208によって算出される。つづく第10のステップS10では、期間Δtが所定の時間限界値GWZと比較される。期間Δtが時間限界値GWZよりも短い場合には、本実施例により、更なるステップは行われない。
【0051】
期間Δtが時間限界値GWZを超える場合には、後続操作Fが実行される。時間限界値GWZとの期間Δtの比較により、緊急ブレーキ信号SNBが不意に提供されたか、又は緊急ブレーキ状況NBが非常に迅速に処理された場合に、後続操作Fが実行されることを回避することが可能である。緊急ブレーキ信号SNBの不意の提供は、例えば、運転者アシストシステム206における接触不良によって、又は車両バスシステム204のける外乱信号によって引き起こされ得る。また、時間限界値GWZは、まず車両200の別のシステムが操作を実行することができるように選択されることも可能である。図4には、後続操作Fの2つの可能なバリエーションが図示されている。第1のバリエーションは、好ましくは、車両200の停止状態Hが検出されるときに実行される。そして、当該第1のバリエーションでは、後続操作Fは、ブレーキ装置222がブレーキ位置BSへもたらされること(ステップS11.1)にある。
【0052】
検出Eが車両200の停止状態Hを生じさせない場合には、後続操作Fは、第11のステップS11.2及び第12のステップS12を有している。第11のステップS11.2では、車両200が停止状態Hにないにもかかわらず、ブレーキ装置222がブレーキ位置BSへもたらされる。このとき、車両200は制動され、同時に回転数Dの大きさBが監視される。このとき、車両200の制動は、車両200が停止状態Hとなるまで行われる。つづいて、第12のステップS12において、ブレーキ装置222はブレーキ位置BSに保持される。さらに、後続操作Fは、更に別のステップも有し得る。例えば、第13のステップS13では、ブレーキ装置222がブレーキ位置BSへもたらされた後、走行信号SFが提供されるかどうかを検出することが可能である。このような走行信号SFは、例えば、アクセルペダル260を用いて救助者又は車両200の運転者によって提供されることが可能である。そして、走行信号SFの検出に応答して、ブレーキ装置222は、好ましくは走行位置FSへ変位されることが可能である(ステップS14)。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.緊急ブレーキ状況(NB)において車両(200)、好ましくは商用車両(202)を固定する方法(100)であって、車両(200)が車両バスシステム(204)及びブレーキシステム(220)を備えており、方法が、以下のステップ:
-車両バスシステム(204)における信号(S)を監視するステップと、
-車両バスシステム(204)において運転者アシストシステム(206)により提供される緊急ブレーキ信号(SNB)を検出するステップと、
-車両(200)が停止状態(H)にあるかどうかを検出(E)するステップと、
-車両(200)の停止状態(H)が検出される場合に、ブレーキシステム(220)のブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)へもたらすステップと
を有することを特徴とする方法。
2.方法(100)が、車両(200)の停止状態(H)を検出しない場合について、
-手動のユーザ設定(NM)が提供されるかどうかを検出することと、
-手動のユーザ設定(NM)が検出されない場合に、ブレーキシステム(220)のブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)へもたらすことと
を含むことを特徴とする上記1.に記載の方法(100)。
3.車両(200)が停止状態(H)にあるかどうかを検出(E)するステップが、
-車両バスシステム(204)において車輪回転数センサ(230)又は中央モジュール(208)によって提供される車輪回転数信号(SR)を検出することと、
-車輪回転数信号(SR)を評価することと、
-回転数(D)の大きさ(B)が、好ましくは所定の期間(Z)の間、所定の回転数限界値(GWZ)を下回る場合に、車両(200)の停止状態(H)を検出することと
を含むことを特徴とする上記1.又は2.に記載の方法(100)。
4.-緊急ブレーキ信号(SNB)の不存在(A)を検出することと、
-車両(200)の緊急ブレーキ(BN)を終了するために運転者アシストシステム(206)により提供される緊急ブレーキ終了信号(SNA)に応答して緊急ブレーキ信号(SNB)の不存在(A)が生じているかどうかを検出することと
を更に有することを特徴とする上記1.~3.のいずれか1つに記載の方法(100)。
5.-緊急ブレーキ終了信号(SNA)への応答によらずに緊急ブレーキ信号(SNB)の不存在が生じる場合について、緊急ブレーキ信号(SNB)の検出と緊急ブレーキ信号(SNB)の不存在(A)の特定との間の期間(Δt)を検出することと、
-該期間(Δt)を所定の時間限界値(GWZ)と比較することと、
-期間(Δt)が所定の時間限界値(GWZ)を上回る場合に、少なくとも1つの後続操作(F)を実行することと
を更に有することを特徴とする上記4.に記載の方法(100)。
6.後続操作(F)が、
-車両(200)の停止状態(H)が検出されない場合に、車両(200)を停止状態(H)まで制動するために、ブレーキシステム(220)のブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)へもたらすことと、
-停止状態(H)までの車両(200)の制動(B)につづき、ブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)に保持する(HA)ことと
を含むことを特徴とする上記5.に記載の方法(100)。
7.後続操作(F)が、
-車両(200)の停止状態(H)の検出(E)が不可能である場合に、ブレーキシステム(200)のブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)へもたらすこと
を含むことを特徴とする上記5.又は6.に記載の方法(100)。
8.-ブレーキシステム(220)のブレーキ装置(222)をブレーキ位置(BS)へもたらすことにつづいて、走行信号(SF)を検出することと、
-走行信号(SF)の検出に応答してブレーキシステム(220)のブレーキ装置(222)を走行位置(FS)へもたらすことと
を更に有する上記1.~7.のいずれか1つに記載の方法(100)。
9.車両バスシステム(204)がCANバスシステム(205)であることを特徴とする上記1.~8.のいずれか1つに記載の方法(100)。
10.運転者アシストシステム(206)が車両(200)の自動的な緊急ブレーキシステム(207)であることを特徴とする上記1.~9.のいずれか1つに記載の方法(100)。
11.ブレーキ装置(222)がブレーキシステム(220)のパーキングブレーキ(224)又はフットブレーキ(226)であることを特徴とする上記1.~10.のいずれか1つに記載の方法(100)。
12.上記1.~11.のいずれか1つに記載の方法(100)のステップを実行するのに適した手段を備えた、車両(200)用の制御ユニット(210)。
13.コンピュータプログラム(C)が演算ユニット(214)において実行されるときに、上記12.に記載の制御ユニット(210)に上記1.~11.のいずれか1つに記載の方法(100)を実行させるコマンド(CO)を含むコンピュータプログラム(C)。
14.上記12.に記載の制御ユニット(210)を備えた、車両(200)用、特に商用車両(202)用のブレーキシステム(220)。
15.上記14.に記載のブレーキシステム(220)を備えた、車両(200)、好ましくは商用車両(202)。
【符号の説明】
【0053】
100 方法
200 車両
202 商用車両
204 車両バスシステム
205 CANバスシステム
206 運転者アシストシステム
207 緊急ブレーキシステム
208 中央モジュール
210 制御ユニット
212 方法を実行する手段
214 演算ユニット
220 ブレーキシステム
222 ブレーキ装置
224 パーキングブレーキ
226 フットブレーキ
230,230a,230b,230c,230d 車輪回転数センサ
232 前車軸ブレーキ回路
234 後車軸ブレーキ回路
236 パーキングブレーキ回路
238 第1の圧縮エア供給部
240 第2の圧縮エア供給部
242 第3の圧縮エア供給部
244a,244b 前車軸ブレーキアクチュエータ
246c,246d 後車軸ブレーキアクチュエータ
248 ブレーキエンコーダ
250 前車軸モジュレータ
252a,252b 前車軸ABSバルブ
254 後車軸モジュレータ
256 パーキングブレーキモジュール
258 パーキングブレーキエンコーダ
260 アクセルペダル
A 不存在
HA 後車軸
Va 前車軸
B 大きさ
BN 緊急ブレーキ
BS ブレーキ位置
C コンピュータプログラム
CO コマンド
D 回転数
E 検出
F 後続操作
FS 走行位置
GWD 回転数限界値
GWZ 時間限界値
H 停止状態
NB 緊急ブレーキ状況
NM ユーザ設定
pBFB パーキングブレーキ圧力
pBHA 後車軸ブレーキ圧力
pBVA 前車軸ブレーキ圧力
pV 供給圧力
pVBS1 前車軸ブレーキ制御圧力
p0 抜気圧力
S 信号
SBF パーキングブレーキ信号
SBH 後車軸ブレーキ信号
SBV 前車軸ブレーキ信号
SF 走行信号
SHBA1 後車軸ブレーキ要求信号
SNA 緊急ブレーキ終了信号
SNB 緊急ブレーキ信号
SR 車輪回転数信号
S0 抜気信号
S1,S2,S3.1,S3.2,S3.3,S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,S11.1,S11.2,S12,S13,S14 ステップ
Δt 期間
Z 期間
図1
図2
図3
図4