(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】スピネル陰極を備えた改良型電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20240612BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240612BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240612BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240612BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240612BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240612BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240612BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/0567
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M10/0569
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2023521762
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 CA2021051436
(87)【国際公開番号】W WO2022077105
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-11
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515256187
【氏名又は名称】ナノ ワン マテリアルズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,スティーブン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジュリック,ペリー
(72)【発明者】
【氏名】ネスヴァデラニ,ファルハン
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-505724(JP,A)
【文献】特表2021-519502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/052
H01M 10/0567
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/36
H01M 10/0569
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む電池〔バッテリともいう〕を形成する方法:
以下を含むコーティングされたリチウムイオンカソード物質を形成する工程:
ワンポットで;
第1の金属の消化可能な原料を含む第1の溶液を形成する工程;
前記消化可能な原料を消化して、溶液中で第1の金属塩を形成する工程、ここで前記第1の金属塩が脱プロトン化されたマルチカルボン酸の塩として沈殿し、それによって、前記第1の金属塩がリチウム及びMn、Ni、Co、Al又はFeの少なくとも1つを含む酸化物前駆体を形成する、工程;
前記消化の後にコーティング金属前駆体塩を添加する工程;及び
前記酸化物前駆体を加熱して、前記リチウムイオンカソード物質上のコーティングとして、前記コーティング金属前駆体塩の酸化物を有する、前記リチウムイオンカソード物質を形成する工程;及び
アノード及び電解物を提供する工程であって、ここで、前記電解物は、
1重量%以下の添加剤を有する、工程;
前記アノード及び前記カソードを、前記アノード及び前記カソードが前記電解物によって分離された、バッテリ〔電池ともいう〕に形成する工程。
【請求項2】
前記電解物が、0.5重量%以下の前記
添加剤を有する、請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項3】
前記電解物が、前記
添加剤を含まない、請求項2に記載の電池を形成する方法。
【請求項4】
前記
添加剤が、
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド;
リチウムヘキサフルオロフォスファート;
リチウムパークロレート〔リチウム過塩素酸塩ともいう〕;
テトラフルオロボレートリチウム;
トリフルオロメタンスルホン酸リチウム;
テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート;
ビフェニル;
プロパンスルトン;
ビニレンカーボネート;
メチルエチレンカーボネート;
ビス(オキサレート)ホウ酸リチウム;
ジフルオロオキサレートホウ酸リチウム;
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;
フルオロエチレンカーボネート;
ジフルオロエチレンカーボネート;
無水コハク及びエチレンサルファート(エチレン硫酸エステル)
からなる群より選択される請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項5】
前記電解物が、溶媒を含み、該溶媒がアルキルカーボネートである請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項6】
前記電解物が、
エチレンカーボネート;
ジメチルカーボネート;
ジエチルカーボネート;
エチルメチルカーボネート;
1,2-ジメトキシエタン;
1,3-ジオキソラン;
アセトニトリル;
酢酸エチル;
フルオロエチレンカーボネート;
プロピレンカーボネート及びテトラヒドロフラン
からなる群から選択される溶媒を含む、請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項7】
前記溶媒が、エチレンカーボネート;ジメチルカーボネート;ジエチルカーボネート;エチルメチルカーボネート及びそれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の電池を形成する方法。
【請求項8】
前記溶媒が、エチレンカーボネートを含む、請求項7に記載の電池を形成する方法。
【請求項9】
前記溶媒が、エチレンカーボネートと、共溶媒としてのジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はエチルメチルカーボネートのうちの少なくとも1つとを含む、請求項8に記載の電池を形成する方法。
【請求項10】
前記溶媒が、少なくとも20重量%のエチレンカーボネート~80重量%以下のエチレンカーボネートを含み、残りが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はそれらの組み合わせである、請求項8に記載の電池を形成する方法。
【請求項11】
前記溶媒が、少なくとも30重量%のエチレンカーボネート~70重量%以下のエチレンカーボネートを含み、残りが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はそれらの組み合わせである、請求項10に記載の電池を形成する方法。
【請求項12】
前記コーティング金属前駆体塩が、ニオブ(niobium)を含む、請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項13】
前記コーティング金属前駆体塩の前記酸化物が、ニオブ酸リチウム(lithium niobate)である、請求項12に記載の電池を形成する方法。
【請求項14】
前記コーティング金属前駆体塩が、多炭酸塩(multi-carbonate salt)を含む、請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項15】
前記多炭酸塩が、シュウ酸塩(oxalate)である、請求項14に記載の電池を形成する方法。
【請求項16】
前記コーティングが、少なくとも95重量%のコーティング金属を含む、請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項17】
前記コーティングが、5重量%以下のリチウムイオンカソード物質(Lithium ion cathode material)を含む、請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項18】
前記消化可能な原料が、前記第1の金属の炭酸塩、水酸化物、又は酢酸塩であり、前記第1の金属が、Li、Mn、及びNiからなる群から選択される、請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項19】
前記消化可能な原料が、炭酸リチウム、炭酸マンガン及び炭酸ニッケルの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の電池を形成する方法。
【請求項20】
前記消化可能な原料が、炭酸リチウム、炭酸マンガン及び炭酸ニッケルを含む、請求項19に記載の電池を形成する方法。
【請求項21】
前記消化可能な原料が、炭酸コバルト又は水酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項22】
前記マルチカルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、クエン酸、乳酸、オキサロ酢酸、フマル酸及びマレイン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項23】
前記マルチカルボン酸が、シュウ酸である、請求項22に記載の電池を形成する方法。
【請求項24】
前記カソード物質が、式Iによって定義される、請求項1に記載の電池を形成する方法:
LiNi
xMn
yCo
zE
eO
4 式I
式中、
Eはドーパントである;
x + y + z + e = 2; 及び0 ≦ e ≦ 0.2である。
【請求項25】
前記式Iが、スピネル結晶形態である、請求項24に記載の電池を形成する方法。
【請求項26】
xもyもゼロでない、請求項24に記載の電池を形成する方法。
【請求項27】
前記リチウムイオンカソード物質が、LiNi
0.5Mn
1.5O
4である、請求項26に記載の電池を形成する方法。
【請求項28】
前記カソード物質が、式LiNi
xMn
yO
4によって定義され、式中、0.5 ≦ x ≦ 0.6及び1.4≦ y ≦ 1.5である、請求項24に記載の電池を形成する方法。
【請求項29】
前記0.5 ≦ x ≦ 0.55及び1.45 ≦ y ≦ 1.5である、請求項28に記載の電池を形成する方法.
【請求項30】
前記カソード物質が、Niに対するMnのモル比が3以下である、請求項24に記載の電池を形成する方法。
【請求項31】
前記カソード物質が、Niに対するMnのモル比が少なくとも2.33~3未満である、請求項30に記載の電池を形成する方法。
【請求項32】
前記カソード物質が、Niに対するMnのモル比が少なくとも2.64~3未満である、請求項31に記載の電池を形成する方法。
【請求項33】
前記ドーパントが、Al、Gd、Ti、Zr、Mg、Ca、Sr、Ba、Mg、Cr、Fe、Cu、Zn、V、Bi、Nb及びBからなる群から選択される、請求項24に記載の電池を形成する方法。
【請求項34】
前記ドーパントが、Al及びGdからなる群から選択される、請求項33に記載の電池を形成する方法。
【請求項35】
前記カソード物質が、式IIによって定義される、請求項1に記載の電池を形成する方法:
LiNi
aMn
bX
cG
dO
2 式II
式中、
Gは、ドーパントである;
Xは、Co又はAlである;
式中、a + b + c + d = 1であり; 及び 0 ≦ d ≦ 0.1である。
【請求項36】
0.5 ≦ a ≦ 0.9である、請求項
35に記載の電池を形成する方法。
【請求項37】
0.58 ≦ a ≦ 0.62又は0.78 ≦ a ≦ 0.82である、請求項36に記載の電池を形成する方法。
【請求項38】
a = b = cである、請求項35に記載の電池を形成する方法。
【請求項39】
前記加熱が、空気中で行われる、請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項40】
前記
酸化物前駆体が、コアを形成する、請求項1に記載の電池を形成する方法。
【請求項41】
前記加熱の前に、
第2の金属の第2の消化可能な原料を形成する工程と、 及び
前記第2の消化可能な原料を消化して第2の金属塩を形成する工程であって、前記第2の金属塩が前記コア上にシェルとして沈殿し、前記第2の金属が、Ni、Mn、Co、Al、Gd、Ti、Zr、Mg、Ca、Sr、Ba、Mg、Cr、Fe、Cu、Zn、V、Bi、Nb及びBからなる群から選択される工程と、
を含む、請求項40に記載の電池を形成する方法。
【請求項42】
前記第2の金属が、前記第1の金属及び前記第2の金属の総モルの10モル%以下を表す、請求項41に記載の電池を形成する方法。
【請求項43】
前記第2の金属が、前記総モルの5モル%以下を表す、請求項42に記載の電池を形成する方法。
【請求項44】
前記第2の金属が、前記総モルの1モル%以下を表す、請求項43に記載の電池を形成する方法。
【請求項45】
前記第2の原料が、Alを含む、請求項41に記載の電池を形成する方法。
【請求項46】
前記第1の消化可能な原料が、第1のモル比でNi及びMnを含み、前記第2の消化可能な原料が、第2のモル比でNi及びMnを含む、請求項41に記載の電池を形成する方法。
【請求項47】
前記第1のモル比と前記第2のモル比とが異なる、請求項46に記載の電池を形成する方法。
【請求項48】
前記第1のモル比が、前記第2のモル比よりも、高いNi対Mnのモル比を有する、請求項47に記載の電池を形成する方法。
【請求項49】
以下の工程を含む電池を形成する方法:
コーティングされたリチウムイオンカソード物質の形成の工程:
ワンポットで;
炭酸リチウム、炭酸マンガン及び炭酸ニッケルを、シュウ酸と反応させ、CO
2(g)及びH
2O
(l)を遊離させて、シュウ酸リチウム、シュウ酸マンガン及びシュウ酸ニッケルを含む沈殿物を形成し、酸化物前駆体を形成する工程;
コーティング金属前駆体塩を、前記酸化物前駆体に添加する工程;及び
前記酸化物前駆体を加熱して、前記コーティングされたリチウムイオンカソード物質を形成する工程;及び
アノード及び電解物を提供する工程、ここで前記電解物は、1重量%以下の
添加剤を有する、工程;
前記アノード及び前記カソードを、前記電解物によって分離された前記アノード及び前記カソードで、パッケージに組み合わせる工程。
【請求項50】
前記電解物が、0.5重量%以下の前記
添加剤を有する、請求項49に記載の電池を形成する方法。
【請求項51】
前記電解物が、前記
添加剤を有さない、請求項50に記載の電池を形成する方法。
【請求項52】
上記
添加剤が、
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド;
リチウムヘキサフルオロフォスファート;
リチウムパークロレート〔リチウム過塩素酸塩もいう〕;
リチウムテトラフルオロボレート;
リチウムトリフルオロメタンスルホネート;
テトラエチル-アンモニウムテトラフルオロボレート;
ビフェニル;
プロパンスルトン;
ビニレンカルボネート;
メチルエチレンカーボネート;
リチウムビス(シュウ酸)ボレート;
リチウムジフルオロシュウ酸ボレート;
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;
フルオロエチレンカーボネート;
ジフルオロエチレンカーボネート;
無水コハク酸及びエチレンサルファート(エチレン硫酸塩)
からなるグループから選択される請求項49に記載の電池の形成方法。
【請求項53】
前記電解物が、溶媒を含み、該溶媒がアルキルカーボネートである、請求項49に記載の電池を形成する方法。
【請求項54】
前記電解物が、
エチレンカーボネート;
ジメチルカーボネート;
ジエチルカーボネート;
エチルメチルカーボネート;
1,2-ジメトキシエタン;
1,3-ジオキソラン;
アセトニトリル;
酢酸エチル;
フルオロエチレンカーボネート;
プロピレンカーボネート及びテトラヒドロフラン
からなる群から選択される溶媒を含む、請求項49に記載の電池を形成する方法。
【請求項55】
前記溶媒が、エチレンカーボネート;ジメチルカーボネート;ジエチルカーボネート;エチルメチルカーボネート及びそれらの組み合わせから選択される、請求項54に記載の電池を形成する方法。
【請求項56】
前記溶媒が、エチレンカーボネートを含む、請求項55に記載の電池を形成する方法。
【請求項57】
前記溶媒が、エチレンカーボネートと、共溶媒としてのジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はエチルメチルカーボネートのうちの少なくとも1つとを含む、請求項56に記載の電池を形成する方法。
【請求項58】
前記溶媒が、少なくとも20重量%のエチレンカーボネート~80重量%以下のエチレンカーボネートを含み、残りが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はそれらの組み合わせである、請求項56に記載の電池を形成する方法。
【請求項59】
前記溶媒が、少なくとも30重量%のエチレンカーボネート~70重量%以下のエチレンカーボネートを含み、残りが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はそれらの組み合わせである、請求項56に記載の電池を形成する方法。
【請求項60】
前記コーティング金属が、ニオブである、請求項49に記載の電池を形成する方法。
【請求項61】
前記コーティング金属の酸化物が、ニオブ酸リチウムである、請求項60に記載の電池を形成する方法。
【請求項62】
前記コーティング金属前駆体塩が、多炭酸塩を含む、請求項49に記載の電池を形成する方法。
【請求項63】
前記多炭酸塩が、シュウ酸塩である、請求項62に記載の電池を形成する方法。
【請求項64】
前記コーティングが、少なくとも95重量%の前記コーティング金属を含む、請求項49に記載の電池を形成する方法。
【請求項65】
前記コーティングが、5重量%以下の前記リチウムイオンカソード物質を含む、請求項49に記載の電池を形成する方法。
【請求項66】
前記炭酸マンガン及び前記炭酸ニッケルが、第1のモル比であり、前記酸化物前駆体がコアを形成する、請求項49に記載の電池を形成する方法。
【請求項67】
以下の工程を含む請求項66に記載の電池を形成する方法:
炭酸リチウム、炭酸マンガン及び炭酸ニッケルを、第2の比率で含む第2のスラリーを形成する工程;及び
前記コア上に、シュウ酸マンガン及びシュウ酸ニッケルのシェルを沈殿させる工程、ここで、前記シェル中の前記シュウ酸マンガン及び前記シュウ酸ニッケルが前記第2の比率である。
【請求項68】
前記第2の溶液が、ドーパントをさらに含む、請求項67に記載の電池を形成する方法。
【請求項69】
前記ドーパントが、Al、Gd、Ti、Zr、Mg、Ca、Sr、Ba、Mg、Cr、Fe、Zn、Cu、V、Bi、Nb及びBから選択される、請求項68に記載の電池を形成する方法。
【請求項70】
前記第2のスラリーが、Alを含む、請求項69に記載の電池を形成する方法。
【請求項71】
前記シェル中のシュウ酸マンガンとシュウ酸ニッケルの合計が、前記酸化物前駆体中の、全シュウ酸マンガン金属とシュウ酸ニッケルの合計の10モル%未満である、請求項67に記載の電池を形成する方法。
【請求項72】
前記カソード物質が、式Iによって定義される、請求項49に記載の電池を形成する方法:
LiNi
xMn
yCo
zE
eO
4 式I
式中、
Eは、ドーパントである;
x + y + z + e = 2 ; 及び
0 ≦ e ≦ 0.1。
【請求項73】
前記式Iが、スピネル結晶形態である、請求項72に記載の電池を形成する方法。
【請求項74】
xもyもゼロではない、請求項72に記載の電池を形成する方法。
【請求項75】
前記カソード物質が、LiNi
0.5Mn
1.5O
4である、請求項72に記載の電池を形成する方法。
【請求項76】
前記カソード物質が、式LiNi
xMn
yO
4によって定義され、式中、0.5 ≦ x ≦ 0.6及び1.4 ≦ y ≦ 1.5である、請求項72に記載の電池を形成する方法。
【請求項77】
0.5 ≦ x ≦ 0.55及び1.45 ≦ y ≦ 1.5である、請求項76に記載の電池を形成する方法。
【請求項78】
前記カソード物質が、Niに対するMnのモル比が3以下である、請求項72に記載の電池を形成する方法。
【請求項79】
前記カソード物質が、Niに対するMnのモル比が、少なくとも2.33~3未満である、請求項78に記載の電池を形成する方法。
【請求項80】
前記カソード物質が、Niに対するMnのモル比が少なくとも2.64~3未満である、請求項79に記載の電池を形成する方法。
【請求項81】
前記ドーパントが、Al、Gd、Ti、Zr、Mg、Ca、Sr、Ba、Mg、Cr、Fe、Zn、Cu、V、Bi、Nb及びBからなる群から選択される、請求項72に記載の電池を形成する方法。
【請求項82】
前記ドーパントがAl及びGdからなる群から選択される、請求項81に記載の電池を形成する方法。
【請求項83】
前記カソード物質が、化学式II によって定義される、請求項49に記載の電池を形成する方法:
LiNi
aMn
bX
cG
dO
2 式II
式中、
Gは、ドーパントである;
Xは、Co又はAlである;
ここで、a + b + c + d = 1;及び
0 ≦ d ≦ 0.1。
【請求項84】
0.5 ≦ a ≦ 0.9である、請求項83に記載の電池を形成する方法。
【請求項85】
0.58 ≦ a ≦ 0.62又は0.78 ≦ a ≦ 0.82である、請求項84に記載の電池を形成する方法。
【請求項86】
a = b = cである、請求項83に記載の電池を形成する方法。
【請求項87】
前記加熱が、空気、酸素又はそれらの混合物中で行われる、請求項49に記載の電池を形成する方法。
【請求項88】
以下を含む改良されたリチウムイオン電池:
以下の式によって定義される酸化物を含む粒子を含むカソード:
LiNi
aMn
bX
cG
dO
2
式中、Gは、任意のドーパントである;
Xは、Co又はAlである;
a ≧ 0.5;
b + c + d ≦ 0.5;及び
d ≦0.1であり;及び
各粒子は、粒子の表面を被覆するコーティングを含み、コーティングはバナジウム、タンタル及びニオブからなる群から選択される金属の酸化物の塩を含む;及び
粒子を含む凝集体であって、凝集体が格子間界面を含み、格子間界面が粒子に隣接するコーティングを含む、凝集体;
アノード;及び
電解物であって、前記電解物が1重量%以下の
添加剤を有する、電解物。
【請求項89】
前記電解物が、0.5重量%以下の前記
添加剤を有する、請求項88に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項90】
前記電解物が、前記
添加剤を有さない、請求項89に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項91】
前記
添加剤は、
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド;
ヘキサフルオロリン酸リチウム〔リチウムヘキサフルオロフォスフェートともいう〕;
過塩素酸リチウム〔リチウムパークロレートともいう〕;
テトラフルオロホウ酸リチウム〔リチウムテトラフルオロボレートともいう〕;
トリフルオロメタンスルホン酸リチウム〔リチウムトリフルオロメタンスルホネートともいう〕;
テトラエチル-アンモニウムテトラフルオロホウ酸〔テトラエチル-アンモニウムテトラフルオロボレートともいう〕;
ビフェニル;
プロパンスルトン;
ビニレンカーボネート;
メチルエチレンカーボネート;
リチウムビス(オキサレート)ボレート;
リチウムジフルオロオキサレートボレート;
リチウムビス(フルオロスルフォニル)イミド;
フルオロエチレンカーボネート;
ジフルオロエチレンカーボネート;
無水コハク酸及びエチレン硫酸塩
からなる群より選択される、請求項88に記載の改良されたリチウムイオン電池。
【請求項92】
前記電解物が、溶媒を含み、該溶媒がアルキルカーボネートである、請求項88に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項93】
前記電解物が、
エチレンカーボネート;
ジメチルカーボネート;
ジエチルカーボネート;
エチルメチルカーボネート;
1,2-ジメトキシエタン;
1,3-ジオキソラン;
アセトニトリル;
酢酸エチル;
フルオロエチレンカーボネート;
プロピレンカーボネート及びテトラヒドロフラン
からなる群から選択される溶媒を含む、請求項88に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項94】
前記溶媒が、エチレンカーボネート;ジメチルカーボネート;ジエチルカーボネート;エチルメチルカーボネート、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項93に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項95】
前記溶媒が、エチレンカーボネートを含む、請求項94に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項96】
前記溶媒が、エチレンカーボネートと、共溶媒としてのジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はエチルメチルカーボネートのうちの少なくとも1つとを含む、請求項95に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項97】
前記溶媒が、少なくとも20重量%のエチレンカーボネート~80重量%以下のエチレンカーボネートを含み、残りが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はそれらの組み合わせである、請求項95に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項98】
前記溶媒が、少なくとも30重量%のエチレンカーボネート~70重量%以下のエチレンカーボネートを含み、残りが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はそれらの組み合わせである、請求項95に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項99】
前記凝集体が、格子間表面をさらに含み、該格子間表面が、前記粒子の各前記粒子上の前記コーティングを含む、請求項88に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項100】
各々の前記コーティングが、5~10ナノメートルの厚さを有する、請求項88に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項101】
各々の前記コーティングが、ニオブを含む、請求項88に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項102】
各々の前記コーティングが、LiNbO
3を含む、請求項101に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項103】
前記下付き文字aが、式0.5 ≦ a ≦ 0.9によって定義される、請求項88に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項104】
前記下付き文字aが、式0.58 ≦ a ≦ 0.62によって、又は、式0.78 ≦ a ≦ 0.82によって定義される、請求項103に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項105】
前記下付き文字dが、0である、請求項88に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項106】
前記Xが、Coである、請求項88に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項107】
前記Gが、Al、Gd、Ti、Zr、Mg、Ca、Sr、Ba、Mg、Cr、Cu、Fe、Zn、V、Bi、Nb及びBからなる群から選択される、請求項88に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【請求項108】
前記Gが、Al及びGdからなる群から選択される、請求項88に記載の改善されたリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、係属中の米国仮出願No.63/090,980(2020年10月13日出願)に基づく優先権を主張し、参照によりこの内容は本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願の発明は、電池用のリチウムイオンカソードの微細及び超微細粉末及びナノ粉末を形成するための改良方法、並びにそれを用いて形成された改良された電池に関する。より具体的には、本発明は、チウムイオン電池カソード及び多くの放電/再充電サイクルに耐えることができ、従って劣化することなく長い電池寿命を提供する電池を提供する相乗的作用を引き起こす電解物及びチウムイオン電池カソードに関するが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0003】
バッテリ〔電池ともいう〕の改良に対する需要は絶えず存在している。バッテリには、2つの主要な用途があり、一方は固定用途であり、他方は移動用途である。固定用途及び移動用途の両方において、貯蔵容量の増加、電池寿命の延長、フル充電に達する能力の迅速化及び低コスト化が望まれている。リチウム金属酸化物カソードを含むリチウムイオン電池は、ほとんどの用途に適した電池として非常に有利であり、広い用途の範囲にわたって有利であることが分かっている。そして、さらに、特にリチウムイオン電池の貯蔵能力、再充電時間、コスト及び貯蔵安定性の改善が望まれている。本発明は主に、スピネル結晶形態又は岩塩結晶形態のリチウムイオン電池、その製造プロセスの改善、及び相乗作用を引き起こす電解物に焦点を当てている。
【0004】
岩塩結晶形態の、リチウム及び遷移金属系のカソードを含むリチウムイオン電池の調製は、米国特許No. 9,136,534; 9,159,999及び9,478,807並びに米国特許出願公開No.2014/0271413; 2014/0272568及び2014/0272580に記述され、参照により、本発明に組み込まれる。
岩塩結晶形態を有するカソード物質は次の一般式をもつ:
LiNiaMnbXcO2
式中、Xは好ましくはCo又はAlであり、a + b + c = 1である。Xがコバルトである場合、カソード物質は、便宜上、NMCと呼ばれ、Xがアルミニウムである場合、カソード物質は、便宜上、NCAと呼ばれる。岩塩結晶形態の調製において、遷移金属は、化学量論的当量の炭酸リチウムを添加して、カソード物質前駆体を形成することによって、炭酸塩として沈殿させることができる。次いで、カソード物質前駆体を焼結してカソード物質を形成する。
【0005】
スピネル結晶構造を有するカソード物質は、次の一般式をもつ:
LiNixMnyCozO4(式中、x + y + z = 2)。
スピネルにおいて、リチウム化学量論は遷移金属化学量論の半分である。従って、炭酸リチウムから入手可能な炭酸塩は、カソード物質前駆体を合成する場合、遷移金属を沈殿させるには不十分である。過剰の炭酸塩の添加は、炭酸ナトリウムが使用される場合、ナトリウム等の望ましくない対イオン(counterions)の導入によってのみ達成することができ、又はpHコントロールを複雑にし、そして、炭酸アンモニウムが添加される場合等、不十分な沈殿をもたらし得る。2倍の化学量論的過剰の炭酸リチウムを原則として使用し、水性上清のデカンテーションによって除去することができるが、これはリチウム化学量論の変動に伴うセル(cell)性能の感度のために望ましくない。
【0006】
LiNi0.5Mn1.5O4等のスピネルカソード物質は、多くの場合、液体系の電解物(electrolyte)攻撃によって引き起こされる表面劣化を被る。電解物攻撃の結果は、Mn3+の不均衡化(disproportionation)である。セルにおいて、Mn3+は、グラファイトアノードを汚染し、急速なセル故障をもたらしうる、可溶性Mn2+スピーシーズ(species)に対し、不均衡にする(disproportionate)ことができる。この影響は、高温で増強され、Cレート(C-rate)(1時間放電)において100サイクル未満でセル故障を観察することができる。LiNi0.5Mn1.5O4のようなスピネルカソードも、又、固体電解物と共に使用するための良好な候補であるが、カソードと電解物との間のLi+拡散速度の差により、境界面に空間電荷が形成される。空間電荷は、望ましくない電解物/電極界面内のLi輸送抵抗を増加させる。
【0007】
理論に限定されるものではないが、高ニッケルNMCの形成中に粒子が凝集すると仮定される。この凝集は、ニオブ酸リチウムコーティング(lithium niobate coating)の形成前に起こるので、凝集体は、
図1に概略的に示すようにコーティングされる。
図1において、粒子10の凝集体8は、凝集体の表面上に形成されたコーティング12を有する。凝集粒子の内部領域には、粒子間の格子間界面14及び格子間表面15に、ニオブ酸リチウムでコーティングされていない、粒子のコーティングされていない領域がある。凝集体が乱されない(unperturbed:摂動されない)場合、内部のコーティングされていない領域は、何の影響結果も生じない。残念ながら、カソードを形成する工程中に、粒子は、
図2に示されるように、コーティングされていない表面を有する粒子11をもたらし、少なくとも部分的に脱凝集し得、ここで、コーティングされていない表面というのは、コーティングされていない間質界面又は間質表面に由来し得る。さらに別の摂動(perturbation)は、粒子のコーティングされていない領域を効果的に露出させるために、粒子境界における、いくらかの脱凝集、又は少なくとも十分な分離、をも引き起こすと仮定される、帯電サイクルである、と考えられる。コーティングされていない領域は、特に、液体系電解物と共に利用される場合、高ニッケルNMCの分解源であると考えられる。
【0008】
リチウムイオンカソード、特にスピネル及び岩塩結晶構造のリチウム/マンガン/ニッケル系カソードを製造する改良された方法が望まれている。スピネル中にリチウム/マンガン/ニッケル系カソードを提供することが特に望まれており、これは、劣化、特に、液体系電解物で一般的に生じる劣化を抑制する表面コーティングを含む。本発明は、そのような方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、リチウムイオンカソード及び相乗作用を引き起こす電解物を含む電池を調製する改善された方法を提供することである。
【0010】
別の格別な特徴は、カソード物質の表面上に安定化コーティングを組み込むことであり、コーティングは、劣化、特に、液体系の電解物攻撃によって生じる劣化を抑制する。
【0011】
本発明の別の特徴は、カソードと電解物とが当技術分野で予想外の安定性を提供することに相乗的である、好ましくはスピネル系カソードと、スピネル系カソードと共に使用するための電解物との、相乗作用を引き起こす組み合わせにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施態様は、電池を形成する方法であって、以下の工程を含む:
以下を含むコーティングされたリチウムイオンカソード物質を形成すること:
ワンポットで;
カソード酸化物前駆体の形成に適した第1の金属の消化可能な原料(digestible feedstock)及びマルチカルボン酸を含む第1の溶液を形成すること;
消化可能な原料を消化(digesting)して、溶液中で第一の金属塩を形成することであって、そこでは、第一の金属塩が脱プロトン化されたマルチカルボン酸の塩として沈殿し、それにより、第一の金属塩がリチウム及びMn、Ni、Co、Al又はFeの少なくとも1つを含む酸化物前駆体を形成すること;
消化後にコーティング金属前駆体塩を添加すること;及び
前記酸化物前駆体を加熱して、リチウムイオンカソード物質上のコーティングとしてのコーティング金属前駆体塩の酸化物を有する、リチウムイオンカソード物質を形成すること;及び
アノード及び電解物を供給すること、ここで、前記電解物は、1重量%以下の追加の塩及び添加剤を有する;及び
アノード及びカソードを、電解物によって分離されたアノード及びカソードをもつ、電池にすること。
【0013】
さらに別の実施態様は、電池を形成する方法を提供し、以下の工程を含む:
コーティングされたリチウムイオンカソード物質を形成すること:
ワンポットで;
炭酸リチウム、炭酸マンガン及び炭酸ニッケルを、シュウ酸と反応させ、CO2(g)及びH2O(l)を遊離させて、シュウ酸リチウム、シュウ酸マンガン及びシュウ酸ニッケルを含む沈殿物を形成し、酸化物前駆体を形成すること;
コーティング金属前駆体塩を、該酸化物前駆体に添加すること;及び
該酸化物前駆体を加熱して、コーティングされたリチウムイオンカソード物質を形成すること;及び
アノード及び電解物を提供すること、ここで、前記電解物は、1重量%以下の追加の塩及び添加剤を有する;
アノード及びカソードを、電解物によって分離されたアノード及びカソードをもつ、電池にすること。
【0014】
さらに別の実施態様は、改善されたリチウムイオン電池において提供され、以下を含む:
以下の式によって定義される酸化物を含む粒子を含むカソード:
LiNiaMnbXcGdO2
式中、Gは、任意のドーパントである;
Xは、Co又はAlである;
a ≧ 0.5;
b + c + d ≦ 0.5;及び
d ≦ 0.1であり;及び
各粒子は、粒子の表面を被覆するコーティングを含み、コーティングはバナジウム、タンタル及びニオブからなる群から選択される金属の酸化物の塩を含む;及び
粒子を含む凝集体であって、凝集体が格子間界面を含み、格子間界面が粒子に隣接するコーティングを含む、凝集体;
アノード;及び
電解物であって、前記電解物が1重量%以下の追加の塩及び添加剤を有する、電解物。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【
図4】
図4は、コーティングを含む単離された粒子の概略図である。
【0019】
【
図5】
図5は遷移金属酢酸塩(上)及び炭酸塩(下)原料を使用する場合に、900℃で15時間か焼した(calcined)LiNi
0.5Mn
1.5O
4材料及びシュウ酸塩噴霧乾燥前駆体のSEM顕微鏡写真を提供する。
【0020】
【
図6】
図6は、水中の炭酸マンガンとシュウ酸の反応から沈殿したシュウ酸マンガン水和物のX線回折(XRD)パターンを異なる状態で示す。
【0021】
【
図7】
図7は、改善されたプロセスによって形成されたスピネル材料の電圧の関数としての比容量の改善を示す。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【
図37】
図37は、本発明の実施態様のSEM顕微鏡写真である。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明は、リチウムイオン電池、特にリチウムイオン電池のカソードを調製するための改良された方法に特徴をもつ。より詳細には、本発明は、カソードがスピネル結晶形態又は岩塩形態であり、好ましい岩塩形態がNMC及びNCA材料で相乗作用を引き起こす電解物を有するリチウムイオン電池で使用するためのカソードを形成するための改善された方法に特徴をもつ。さらにより具体的には、本発明は、相乗作用を引き起こす電解物を有するリチウムイオン電池を用いたカソードの形成に特徴をもち、この方法は表面における空間電荷領域の形成を阻害するコーティングを含むカソードを形成し、より好ましくは共通のポットにおけるカソード物質の形成と協調してコーティングを形成することができる。
【0079】
本発明の特徴とする利点は、典型的な塩及び電解物に典型的に利用される添加剤を含まない電解物を利用することである。従来の予想とは異なり、安定剤等として電解物に使用される典型的な塩及び添加剤は、本発明のカソード、特に、スピネルに有害である。特に好ましい電解物は、溶媒中にLiPF6を含み、溶媒は、好ましくはエチレンカーボネート(EC);ジメチルカーボネート(DMC);ジエチルカーボネート(DEC);エチルメチルカーボネート(EMC);1,2-ジメトキシエタン;1,3-ジオキソラン;アセトニトリル;酢酸エチル;フルオロエチレンカーボネート;プロピレンカーボネート及びテトラヒドロフランと、エチレンカーボネート(EC)の組み合わせ;ジメチルカーボネート(DMC);さらに最適には、ジエチルカーボネート(DEC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)、から選択されるアルキルカーボネートである。
【0080】
LiPF6は、0. 1M以上10 M以下であることが好ましい。約0.1M未満では、導電率は十分に機能するには不十分である。約10 Mを超えると溶解度が問題となり、塩が溶液から沈殿する可能性がある。最も好ましくは、電解物は、約0.8~1.2M のLiPF6含み、約1.0Mが最適である。
【0081】
電解物のための溶媒は、好ましくは共溶媒としてDMC、DEC又はEMCの少なくとも1つと、ECを含む。溶媒は、少なくとも20wt%~80wt%以下のECを含み、残りはDMC、DEC、EMC又はそれらの組み合わせであることが好ましい。より好ましくは、溶媒が少なくとも30wt%~70wt%以下のECを含み、残りはDMC、DEC、EMC、又はそれらの組み合わせである。EC及び、DMC、DEC、EMC若しくはそれらの組み合わせのほぼ等しい重量%が特に適している。
【0082】
電解物は、1重量%以下の追加の塩及び添加剤を含有することが好ましい。より好ましくは、電解物は、0. 5重量%以下の追加の塩及び添加剤を含み、好適には、検出可能な量の追加の塩及び添加剤を含まない。好ましくは、回避される塩及び添加剤には、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド;リチウムヘキサフルオロフォスファート;リチウム過塩素酸塩;テトラフルオロボレートリチウム;トリフルオロメタンスルホン酸リチウム;テトラエチル-アンモニウムテトラフルオロボレート;ビフェニル;プロパンスルトン;ビニレンカーボネート;メチルエチレンカーボネート;ビス(オキサレート)ホウ酸リチウム;ジフルオロオキサレートホウ酸リチウム;リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;フルオロエチレンカーボネート;ジフルオロエチレンカーボネート;無水コハク及びエチレンサルファートがある。
【0083】
カソード物質の粒子は、ニオブ、バナジウム又はタンタルの金属酸化物でコーティングされ、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)が最も好ましい。コーティングは、特に、エチレンカーボネート(EC):ジエチレンカーボネート(DEC)1 :1等の液体系電解物を使用する場合に劣化を防止し、固体電解物を使用する場合に空間電荷抵抗を減少させるパッシベーション層(passivation layer)を提供する。
【0084】
本発明の実施態様を、本発明の一体的な非限定的成分を形成する
図3を参照して説明する。
図3では、凝集体16が断面図で概略的に示されている。凝集体は粒子10を含み、粒子の全表面は、保護コーティング12でコーティングされる。表面全体がコーティングされる結果、格子間界面14はコーティングを含む界面であり、格子間表面15はコーティングを含む表面であるという利点がある。いずれかの摂動が凝集体を乱す場合、各粒子は
図4に概略的に示されるように完全にコーティングされた表面を有し、完全に解離した粒子は、完全な表面コーティングを有することが示される。粒子の完全な解離は、摂動のほとんどが、粒子の表面を露出させること、又は本発明では必ずしも粒子の完全な解離を伴わずに、粒子上のコーティングを露出させることを理解しながら、議論の目的のために、
図4に例示される。説明及び議論の目的のために、隣接する粒子のコーティングは、別個の区別可能なものとして示されている。実際のサンプルでは、コーティングが隣接する粒子のコーティング間の画定された障壁を必然的に区別する機能なしに、隣接する粒子間に均質な層を形成することができる。言い換えれば、コーティングは、別個のコーティングであるとして、視覚的及び分光学的技術によって区別可能であり得るか、又は、コーティングは、コーティング材料の連続体として現れ得る。
【0085】
本開示の目的のために、凝集体の格子間界面は、隣接粒子の接触点、隣接粒子のコーティングの接触点、又は粒子と隣接粒子のコーティングとの接触点として定義される。本開示の目的のために、凝集体の格子間表面は、粒子の表面、又は隣接する粒子若しくは隣接する粒子のコーティングと接触していない粒子のコーティングの表面として定義される。
【0086】
コーティングは、粒子全体にわたって5~10ナノメートルの好ましい厚さを有する。
【0087】
好ましい実施態様において、本発明のリチウム金属化合物は、
式Iによって定義されるスピネル結晶構造中にリチウム金属化合物を含む:
LiNixMnyCozEwO4 式I
式中、Eは任意のドーパントであり、x + y + z + w = 2であり、w ≦ 0.2である、
又は、
式IIによって定義される岩塩結晶構造中にリチウム金属化合物を含む;
LiNiaMnbXcGdO2 式II
式中、Gは任意のドーパントである;
Xは、Co若しくはAlである;ここで、a + b + c + d = 1であり、d ≦ 0.1である。
【0088】
好ましい実施態様において、式Iのスピネル結晶構造は、0.5 ≦ x ≦ 0.6; 1.4 ≦ y≦ 1.5、及びz ≦ 0.9を有する。より好ましくは、0.5 ≦ x ≦ 0.55、1.45 ≦ y ≦ 1.5及びz ≦ 0.05である。好ましい実施態様では、xもyもゼロではない。式Iにおいて、Mn/Ni比は、3以下、好ましくは少なくとも2.33~3未満、最も好ましくは少なくとも2. 6~3未満であることが好ましい。
【0089】
好ましい実施態様において、式IIの岩塩結晶構造は、高ニッケルNMCであり、NMC622によって表されるように0.5≦ a ≦0.9、より好ましくは0.58≦ a ≦0.62、又はNMC811によって表されるように0.78≦ a ≦0.82である。好ましい実施態様では、NMC 111によって表されるように、a=b=cである。
【0090】
本明細書の式において、リチウムは、リチウムがアノードとカソードとの間で移動可能であるという理解をもって、化学量論的に電荷のバランスをとるように定義される。従って、任意の所与の時点で、カソードは、比較的リチウムリッチであってもよく、又は比較的リチウム枯渇であってもよい。リチウムが枯渇したカソードでは、リチウムが化学量論的バランスを下回り、充電時に、リチウムは化学量論的バランスを上回り得る。同様に、本明細書を通して列挙される配合物において、金属は実際には完全にバランスのとれた化学量論を配合することができないために、元素分析によって決定されるように、金属がわずかに豊富であってもわずかに枯渇していてもよいという理解と共に、電荷バランスで表される。本明細書を通して、式I及び式IIによって表されるもの等の具体的に列挙される製剤、又はその特定の実施態様は、10%以内の金属のモル比を表すことが意図される。例えば、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2については、各金属は化学量論の10%以内に記載され、従ってNi0.5は、Ni0.45~Ni0.55を表す。
【0091】
ドーパントを添加して、電子伝導性及び安定性等の酸化物の特性を向上させることができる。ドーパントは、好ましくは、第一義的に、ニッケル、マンガン、及び任意に、コバルト又はアルミニウム、と協働して添加される、代替え可能なドーパントである。ドーパントは、好ましくは酸化物の10モル%以下、好ましくは5モル%以下を占める。好ましいドーパントとしては、Al、Gd、Ti、Zr、Mg、Ca、Sr、Ba、Mg、Cr、Cu、Fe、Zn、V、Bi、Nb及びBが挙げられ、Al及びGdが特に好ましい。
【0092】
カソードは、本明細書でより完全に説明されるように、Li、Ni、Mn、Co、Al又はFeの塩を含む酸化物前駆体から形成される。酸化物前駆体は、か焼(calcination or calcining)され、リチウム金属酸化物としてカソード物質を形成する。
【0093】
スピネルカソード物質、特にLiNi0.5Mn1.5O4は、好ましくは金属酸化物、最も好ましくはニオブ酸リチウム(LiNbO3)で、本明細書でワンポット合成と呼ばれるスピネル形成のように同じポットにて、コーティングされる。このプロセスは、エチレンカーボネート(EC):ジエチレンカーボネート(DEC)1 :1等の液体系電解物を使用する場合には、Mn2+の溶解を防止するLiNbO3の後の不動態化(passivation later)をもたらし、固体電解物を使用する場合には、空間電荷抵抗を減少させる、。ワンポット合成を通して、ニオブは、ニオブが5+酸化状態にあり、他の遷移金属よりも高い分子量を有するため、スピネル構造内にドープされるよりもむしろ表面偏析(surface segregate)を好むと仮定される。
【0094】
酸化物前駆体は、比較的不溶性の塩を形成する対イオンの存在下での塩の反応によって形成される。比較的不溶性の塩が、Ostwald熟成が最終的に規則化格子として沈殿すると考えられる、懸濁結晶を形成すると考えられる。本発明の目的のために、好ましくは、マンガン及びニッケル、及び場合によりコバルト若しくはアルミニウムの塩を、結晶成長を可能にするのに十分な速度で、マンガン、ニッケル及びコバルト若しくはアルミニウムを沈殿させる対イオンを含む溶液中で組み合わせる。マンガン、ニッケル、コバルト又はアルミニウムの可溶性対イオンは、酢酸塩、硝酸塩又は炭酸水素塩を含む20℃で溶媒100グラム当たり少なくとも0.1gの塩の溶解度を有するものである。金属は、炭酸塩及びシュウ酸塩を含む20℃において、溶媒100g当たり塩0.05g未満の溶解度を有する不溶性塩として沈殿する。
【0095】
全体的な反応は、2つの二次反応を、順に含み、第1の反応は、反応Aによって表されるような過剰のマルチカルボン酸の存在下での炭酸塩供給原料の消化である:
【化1-1】
(式中、Xは、好ましくはLi
2、Mn、Ni、Co又はAlから選択されるカソード物質での使用に適した金属を表す。)
反応Aにおいて、酸は、単純化のために反応Aにおいて他に(otherwise)示されていない、マルチカルボン酸によって遊離される。反応Aの結果は、溶液中の金属塩であり、塩は、反応Bによって表される脱プロトン化されたマルチカルボン酸によってキレート化される:
【化1-2】
(式中、R
1は、マルチカルボンを含むアルキル鎖を表す)。
X(OOCR
1COO)によって表される塩は、本明細書の他の箇所で説明されるように、規則化された格子として沈殿する。
【0096】
反応Aの金属炭酸塩は、水溶液又は固体の材料として添加することができるLi(O2CCH3)、Ni(O2CCH3)2又はMn(O2CCH3)2等の金属酢酸塩で代替えすることができる。
【0097】
pHは、単純化及びpHを正確に制御するための改善された能力のために、所望であれば、水酸化アンモニウムで調整され得る。先行技術の方法では、水酸化アンモニウムの使用が反応によって表されるように、水溶液中でNH
3がニッケルと錯体を形成する傾向に起因して困難性を生じた:
【化1-3】
この結果は、ニッケルの不完全な析出であり、最終酸化物前駆体の化学量論の測定及び管理を複雑にする。マルチカルボン酸、特にシュウ酸は、NH4
+よりもニッケルを優先的に配位し、それによって、析出速度を増加させ、規則化酸化物前駆体中へのニッケルの取り込みを増加させる。マルチカルボン酸による優先的な沈殿は、ニッケル沈殿に向けて反応を駆動し、水酸化アンモニウムの使用を回避する。
【0098】
特に好ましい実施態様は、好ましくは水溶性の反応によって表される、酸化物前駆体からのLiNi
0.5Mn
1.5O
4の形成によって示される:
【化2】
ここで、NiC
2O
4、及びMnC
2O
4は、水を除去すると、その上にLi
2C
2O
4が沈殿した酸化物前駆体として規則化格子状に沈殿する。総組成(Li
2C
2O
4)
0.5(NiC
2O
4)
0.5(MnC
2O
4)
1.5をもつ該酸化物前駆体は、次式の反応を達成するように、か焼(calcination or calcining)させる:
【化3】
【0099】
多カルボン酸の存在下での炭酸塩消化プロセスは、好ましくは、水の存在下で、金属炭酸塩及びシュウ酸を反応器中に混合し、続いて撹拌することを含む。次いで、スラリーを乾燥し、好ましくは噴霧乾燥し、続いて、か焼(calcination or calcining)する。か焼(calcination or calcining)温度は400~1000℃で変化して、異なる構造特性、例えば、スピネルLiNi0.5Mn1.5O4における異なる程度のMn/Niカチオン規則化を有する材料を形成することができる。
【0100】
炭酸塩消化プロセスの特別な特徴は、所望であれば、これらの工程を行うことができるにもかかわらず、前駆体粉末を、粉砕又はブレンドする、スラリーを濾過する、又は上清をデカントする、というような処理の必要がないことである。
【0101】
シュウ酸塩を例とすると、炭酸塩消化プロセス又は消化(加水分解)-沈殿反応は、好ましくは、水の存在下で起こる以下の式によって記載することができる:
【化4】
(X =遷移金属、Li
2)
【0102】
理論に限定されるものではないが、シュウ酸は、炭酸塩を加水分解してCO2(g)、H2O(l)、及び金属イオンを形成すると仮定される。次いで、遷移金属イオンを金属シュウ酸塩として沈殿させる。シュウ酸リチウムは、含水量に応じて、沈殿するか、又は水に可溶性のままであり得る。可溶性シュウ酸リチウムは、噴霧乾燥中に遷移金属シュウ酸塩粒子上にコーティングされると予想される。水は、単に金属炭酸塩を消化し、制御された様式で金属シュウ酸塩を沈殿させ、それによって核形成及び結晶成長を可能にするための媒体であるので、金属炭酸塩又はシュウ酸の完全な溶解を達成する必要はない。消化(加水分解)-沈殿反応の速度は、供給原料の温度、含水量、pH、ガス導入、結晶構造及び形態に依存する。
【0103】
反応は、好適な一実施態様では、消化反応速度の増加のため、水還流温度で、10~100℃の温度範囲で完了することができる。
【0104】
1gのシュウ酸のそれぞれについて、水含有量は約1~約400mlの間で変化することができ、反応速度の増加により、水含有量が減少することが好ましく、その後、より少ない水を除去することとなる。
【0105】
溶液のpHは、0~12で変動し得る。炭酸塩消化プロセスの特別な利点は、追加のpHコントロールなしに反応を行うことができ、それによってプロセスを単純化し、追加のプロセスコントロール若しくは添加の必要性を排除することである。
【0106】
反応は、未処理の大気下で行うことができるが、CO2、N2、Ar、他の不活性ガス又はO2等の他のガスをいくつかの実施態様で使用することができる。いくつかの実施態様では、溶液中へのN2及びCO2のバブリングが、沈殿した金属シュウ酸塩の結晶化度をわずかに増加させ得るので、好ましい。
【0107】
非晶質(amorphous) vs. 結晶性炭酸塩原料のような、前駆体の結晶化度及び形態は、溶解度及び粒径の差異及び粒径の範囲に起因して、消化速度に影響を及ぼし得る。
【0108】
炭酸塩消化プロセスは、固体炭酸塩原料から固体シュウ酸塩前駆体材料へのカスケード平衡を介して進行する。本方法は、それに限定されることなく、議論の目的のために、以下の反応ごとにいくつかの別個の方法によって定義することができる:
【化5】
【0109】
この反応を用いて高電圧LiNi
0.5Mn
1.5O
4材料を作製する場合、以下の反応が起こり、必ずではないが、好ましくは、H
2Oの存在下で反応は進行する:
【化6】
【0110】
議論及び説明の目的のために、反応は、操作反応条件下で反応が同時に起こり得ることを理解して段階的に記述される。水含有量/イオン強度、過剰シュウ酸含有量、バッチサイズ、温度、雰囲気、反応混合物の還流、pHコントロール等の異なる反応パラメータを変化させることによって、各工程の速度を調整することができ、固体含有量等の他の望ましいパラメータを最適化することができる。
【0111】
炭酸塩消化プロセスは、上記の反応4におけるように、溶液からのCO2(g)の発生、及び上記の反応5におけるように、高度に不溶性の金属シュウ酸塩の沈殿として、カスケード平衡で進行すると記載することができる。CO2の発生と沈殿の両方が、反応を完了させる。
【0112】
炭酸塩加水分解の速度は、金属炭酸塩のKSPと相関し、便宜上、以下を提供する:
炭酸リチウム、Li2CO3、8.15x10-4 非常に高速(秒から分);
炭酸ニッケル(ll)、NiCO3、1.42x10-7 高速(分);
炭酸マンガン(ll)、MnCO3、2.24x10-11 低速(数時間から数日);及び
水酸化アルミニウム Al(OH)3, 3x10-34 非常に遅い
【0113】
共沈(co-precipitation)の均一性は、炭酸塩加水分解の速度に依存し得る。例えば、炭酸マンガン(ll)より前に、炭酸ニッケル(ll)が、完全に加水分解される場合、それは、その後、NiC2O4及びMnC2O4として別々に沈殿し得る。
【0114】
温度は、シュウ酸の溶解速度、炭酸塩の加水分解、及び金属シュウ酸塩の沈殿に影響を及ぼすので、コントロール(制御)することができる。具体的には、水還流温度で反応を実施することが有用であろう。CO2(g)は、この反応で生成され、温度を上昇させるとCO2(g)の除去率が増加し、従って、高温でのより低い水性CO2(g)の溶解性のために、温度を上昇させると、炭酸塩加水分解率が増加し得る。
【0115】
ガスバブリングは、又、CO2発生率を変化させることによって反応率を制御する有効な方法であり得る。N2(g)、O2(g)、CO2(g)、及び/又は大気のバブリングは、ガスが溶解したCO2(g)を置換するか、又は反応物の混合を改善するように、機能し得るので、有益であり得る。
【0116】
炭酸塩は、それらが最初に準安定重炭酸の形態である場合、より速く消化することができる。例えば、Li
2CO
3に対して以下の反応が起こる:
【化7】
【0117】
準安定炭酸水素リチウムは、Li
2CO
3よりもはるかに可溶性であり、その後の加水分解は、以下に示すように単一のプロトンで化学量論的に進行することができる:
【化8】
(上記の反応4として進行するのとは対照的である)。
【0118】
NiC2O4、MnC2O4、CoC2O4、ZnC2O4等の二価の金属シュウ酸塩は、非常に不溶性であるが、Li2C2O4等の一価の金属シュウ酸塩は、水中25℃で8g/100mLの溶解度でいくらか可溶性である。シュウ酸リチウムを溶液中に有し、混合金属シュウ酸塩沈殿物を、全体に均一に分散させる必要がある場合、水量をシュウ酸リチウムの溶解限度を超えて維持することが有利であり得る。
【0119】
炭酸塩加水分解の率、金属シュウ酸塩沈殿、及び金属シュウ酸塩沈殿物の結晶構造及び粒径は、pH及び含水量又はイオン強度によって影響される。いくつかの実施態様では、シュウ酸のプロトン活性、及び金属シュウ酸塩の沈殿速度を増加させるので、より高いイオン強度、又はより低い含水量で反応させることが有益であり得る。含水量は、約0.05~約20の範囲であるLの水の体積に対する、炭酸塩のモルの好ましい比が、炭酸塩原料含有量について標準化することができる。「炭酸塩の1 .25モルあたり約1.64Lの含水量」は、1.79の、Lの水体積への炭酸塩のモル数の比、を提供し、本発明の実証に適している。
【0120】
対炭酸塩へのシュウ酸塩の化学量論量(stoichiometric amount)は、完全な沈殿を達成するのに十分である。しかしながら、過剰のシュウ酸を添加することは、シュウ酸上の第2のプロトンがはるかに酸性ではなく、加水分解に関与するので、反応速度を増加させることができる。炭酸塩に対して約5モル%過剰のシュウ酸は、炭酸塩加水分解の完了を確実にするのに十分である。ICP統計解析は、10%過剰のシュウ酸が反応の完了までに、0%の化学量論的過剰と同様の数の溶液中のMn/Niイオンを残すことを示している。少量の化学量論的過剰量のシュウ酸は、完全な沈殿を達成するのに有効であるはずであるが、低い化学量論的過剰量は、炭酸塩加水分解の速度に影響を与え得る。
【0121】
炭酸塩消化プロセスの格別の利点は、完了するまで単一の反応器中で反応全体を行う能力である。リチウム源は、噴霧乾燥及びか焼(calcination)工程の前に溶液中にあることが理想的であるので、遷移金属を別々に沈殿させ、共沈後に、シュウ酸塩等のリチウム塩水溶液としてリチウム源を添加することが有用及び/又は可能であり得る。
【0122】
金属が格子に組み込まれないコーティング金属前駆体塩は、消化後に(after digestion)添加され、最終的に金属酸化物コーティングを形成することができる。特に好ましい金属は、ニオブであり、コーティング金属前駆体塩として特に好ましいニオブ前駆体は、ジカルボン酸塩であり、シュウ酸塩が最も好ましい。好ましいシュウ酸ニオブは、炭酸ニオブから、その場で形成することができ、別々に調製し、カソード金属前駆体に添加することができる。コーティングは、主に、コーティング材料をリチウム塩、好ましくはニオブ酸リチウムとして含むことが好ましく、ここで、コーティングの少なくとも95モルパーセントは、コーティング金属酸化物のリチウム塩であるか、又はコーティング中の金属イオンの5モルパーセント未満は、式I又は式IIで定義されるような活カソード物質(active cathode material)のリチウム塩である。特に好ましい実施態様では、コーティング中の金属が、少なくとも95モルパーセントのニオブ酸リチウムである。
【0123】
本発明は、遷移金属酢酸塩及び混合炭酸塩供給原料と共に使用するのに適しており、それによって、金属錯体の溶解度をより密接に一致させることができる。LiNi0.5Mn1.5O4材料を製造するために、Ni0.25Mn0.75CO3 + Li2CO3等の混合炭酸塩原料が考えられる。原料不純物は、最終材料の性能にとって重要であり得る。特に、MnCO3の試料は、還流中に加水分解されない少量の未知の不純物を有し得る。
【0124】
マルチカルボン酸は、少なくとも2つのカルボキシル基を含む。特に好ましいマルチカルボン酸は、部分的には、か焼(calcination or calcining)中に除去されなければならない炭素の最小化に起因して、シュウ酸である。マロン酸、コハク酸、グルタル酸及びアジピン酸等の他の低分子量ジカルボン酸を使用することができる。より高い分子量のジカルボン酸は、特に、より高い溶解度を有する偶数の炭素と共に使用することができるが、追加の炭素を除去し、溶解度を低下させる必要性はそれらをあまり望ましくないものにする。クエン酸、乳酸、オキサロ酢酸、フマル酸、マレイン酸及び他のポリカルボン酸等の他の酸を利用することができるが、但し、それらは少なくとも少量の化学量論的過剰を達成し、十分なキレート化特性を有するのに十分な溶解度を有することが条件である。水酸基を有する酸は、吸湿性が高いため、使用しないことが好ましい。
【0125】
出発塩の酸化物前駆体溶液を形成する反応を達成するために、出発塩を調製する。
好ましくはニッケル、マンガン及びコバルト又はアルミニウム溶液を、集合的に、別々に、又はいくつかの組み合わせで含む添加溶液、及び、好ましくはリチウムを含むバルク溶液、を調製することが好ましい。次いで、本明細書の他の箇所に記載されるように、添加された溶液をバルク溶液に添加する。溶液は逆にすることができるが、遷移金属を意図した化学量論で添加することが好ましく、従って、全ての遷移金属を含む単一の溶液として、リチウム含有バルク溶液に、添加することが有利である。
【0126】
各溶液は選択された溶媒、好ましくは水等の極性溶媒に固体を溶解することによって調製されるが、これらに限定されない。溶媒の選択は、溶媒中の固体反応物の溶解度及び溶解温度によって決定される。可溶化がエネルギー集約的(energy intensive)でないように、周囲温度で溶解し、速い速度で溶解することが好ましい。溶解は、わずかに高い温度で行うことができるが、好ましくは100℃未満で行うことができる。他の溶解助剤は、酸又は塩基の添加であってもよい。
【0127】
混合中、バルク溶液中にガスをバブリングすることが好ましい。議論の目的のために、ガスは化学反応に寄与しない不活性として定義されるか、又は、ガスはpHを調整するか、又は化学反応に寄与する反応性として定義される。好ましいガスとしては、空気、CO2、NH3、SF6、HF、HCI、N2、ヘリウム、アルゴン、メタン、エタン、プロパン又はそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいガスは、反応物溶液が空気感受性でない限り、周囲空気を含む。二酸化炭素は、還元雰囲気が必要とされる場合に特に好ましく、それは溶解剤として、pH調整剤として、又は炭酸塩が形成される場合には反応剤として使用することもできる。アンモニアは、又、pH調整のためのガスとして導入されてもよい。アンモニアは、遷移金属とアンモニア錯体を形成することができ、そのような固体の溶解を助けることができる。一例として、アルゴン中の10% O2等のガスの混合物を使用することができる。
【0128】
酸化物前駆体の形成のために、pHは、好ましくは、それに限定されないが、少なくとも約1~約9.6以下である。アンモニア又は水酸化アンモニウムは、pHを上昇させるのに適しており、必要に応じて調整するのにLiOHとの何らかの可能性塩が好ましい。酸、特にギ酸は、必要に応じてpHを下げるのに適している。一実施態様では、リチウムは、乾燥前に、適切な固体含有量、典型的には約20~30重量%を達成するために、酢酸リチウムの添加等によって、添加することができる。
【0129】
本発明の格別の利点は、酸化物の本体全体にわたって遷移金属濃度の勾配を形成する能力であり、ここで、領域、例えば、中心(centor)は、遷移金属の1つの比を有することができ、その比は、酸化物の本体を通して連続的様式又は段階的様式のいずれかで変化することができる。これに限定されない議論及び明確化の目的のために、NMCを考慮すると、Ni、Mn及びCoの濃度は、コアから粒子の表面に向かって半径方向に変化することができる。明確さのために提供される例示的な実施態様では、Ni含有量が勾配的に存在し、それによって、酸化物粒子の表面上又は表面付近の比較的低いニッケル濃度、及び酸化物粒子のコアでの比較的高いニッケル濃度を可能にする。遷移金属に対するLiの比は、酸化物粒子全体にわたって、中性化学量論に基づいて一定のままである。実施例を明確にするために、Ni:Mn:Coの全体的な組成物は、NMC622及びNMC811について、それぞれ6:2:2及び8:1:1であり得、コアは1つの遷移金属が比較的豊富であり、シェル(shell)は同じ遷移金属が比較的乏しい。さらにより具体的には、コアは、1つの遷移金属、例えばニッケルが豊富であってもよく、その遷移金属は、他と比較して、半径方向に減少する比をもつ(with a radially decreasing ration in that transition metal relative to the others)。NMC 8:1:1コアは、非限定的な段階的な例として、外部にNMC 1:1:1シェルを有し、その外部にNMC 6:2:2シェルを有し得る(NMC 8:1:1 core may have exterior thereto an NMC 6:2:2 shell with an NMC 1:1:1 shell on the exterior as non-limiting step-wise example)。これらの反応は、遷移金属のポンプ速度を変えることによって、段階的な添加で、又は連続的な勾配で行うことができる。各添加における遷移金属の比及び添加の数は、所望の勾配分布を得るために変更することができる。
【0130】
本発明の格別の特徴は、ドーパント及び他の材料を、優先的に、酸化物の内部に、又は表面に向かって、若しくは表面においてさえ、組み込む能力である。従来技術では、ドーパントが、例えば、酸化物内に均一に分散される。さらに、アルミニウム等の任意の表面処理は、必ずしも酸化物格子に組み込まれた原子としてではなく、表面反応物として形成された酸化物上にある。本発明は、ドーパントが、放射状バンドに初期遷移金属スラリー中に組み込まれた場合のように、ドーパントがその後の遷移金属スラリー中に組み込まれた場合のように、又は、外部シェル(outer shell)において、ドーパントが最終遷移金属スラリー中に組み込まれた場合のように、コアにおいて整然と(systematically)ドーパントを分散させることを可能にする。
【0131】
本発明の目的のために、酸化物粒子の各放射状部分(radial portion)は、その部分を形成するために使用される遷移金属の割合に基づいて定義される。例として、初期スラリーが第1の比の遷移金属を有し、初期スラリーが酸化物を形成するために使用される全遷移金属の10モル%を含む場合、コアは酸化物の容量の10%であると見なされ、コアの組成は第1の比の遷移金属と同じ比を有すると定義される。
同様に、コアを囲む各シェルは、そこにおける遷移金属(transitional metal therein)の割合によって定義される。非限定的な例として、3つのスラリーで形成された酸化物への前駆体(それぞれ等モルの遷移金属を有し、第1のスラリーは8:1:1のNi:Mn:Co比を有し、第2のスラリーは6:2:2のNi:Mn:Co比を有し、第3のスラリーは1:1:1のNi:Mn:Co比を有する)は、(1)8:1:1の比の遷移金属を有するコアである酸化物粒子の容量の1/3を表す酸化物、(2)6:2:2の比の遷移金属を有する酸化物粒子の容量の1/3を表すコア上の第1のシェル、(3)1 :1 :1の比の遷移金属を有する酸化物粒子の容量の1/3を表す第1のシェル上の外側シェル、を、酸化物への前駆体の焼結中に生じ得る遷移金属の移動の考慮なしにおいて、形成すると考えられる。
【0132】
特に好ましい実施態様では、ドーパントが外側シェルに組み込まれ、特定のドーパントがアルミニウムである。より好ましくは、ドーパントを含む外側シェルが酸化物粒子の容量の10%未満、さらにより好ましくは酸化物粒子の容量の5%未満、最も好ましくは酸化物粒子の容量の1%以下を表す。本発明の目的のために、ドーパントは、Ni、Mn、Co、Al及びFeから選択される少なくとも1つの遷移金属と協働して、酸化物への前駆体の形成中に沈殿する材料として定義される。より好ましくは、酸化物への前駆体は、Ni及びMn、並びに任意選択的にCo又はAlのいずれかを含む。少なくとも1種の遷移金属の沈殿の完了後に添加される材料は、本明細書において、ニオブ、特に好ましくは、ニオブ酸リチウムによる表面処理として定義される。
【0133】
酸化物前駆体を形成するための反応が完了すると、得られたスラリー混合物を乾燥させて溶媒を除去し、乾燥した前駆体粉末を得る。好ましい最終生成物に応じて選択される、噴霧乾燥機、トレイ乾燥機、凍結乾燥機等を含む任意の種類の乾燥方法及び装置を使用することができる。乾燥温度は利用される装置によって規定され、制限され、そのような乾燥は、好ましくは350℃未満、より好ましくは200~325℃である。乾燥は、スラリー混合物が、トレイ内に配置され、温度が上昇することにつれて溶媒が放出されるように、蒸発器を使用して行うことができる。工業的に使用される任意の蒸発器を使用することができる。特に好ましい乾燥方法は、流動ノズルを備えた噴霧乾燥機又は回転噴霧器である。これらのノズルは、好ましくはスラリー混合物中の酸化物前駆体のサイズに適した最小サイズの直径である。乾燥媒体は、コストを考慮して空気であることが好ましい。
【0134】
酸化物前駆体の粒径は、ナノサイズの一次粒子及び二次粒子であり、50ミクロン未満の凝集体に及ぶ小ミクロンサイズまでの二次粒子であり、非常に容易に破砕されてより小さなサイズになる。最終粉末の組成は、形態にも影響を及ぼすことを認識するべきである。酸化物前駆体は、約1~5μmの好ましい粒径を有する。得られた混合物は、噴霧乾燥機、凍結乾燥機等が使用される場合、噴霧乾燥機ヘッドにポンプで送り込まれるときに連続的に撹拌される。トレイ乾燥機の場合、液体は溶液の表面から蒸発する。
【0135】
乾燥された粉末は、バッチ式で、又はコンベヤーベルトの手段によって、か焼(calcination or calcining)系に移される。大規模生産では、この移送は連続的であってもバッチ式であってもよい。か焼(calcination or calcining)システムは、容器としてセラミックトレイ又はサガーを利用する箱型炉、回転か焼機、並流又は向流であってもよい流動床、回転管炉、及びこれらに限定されない他の同様の機器であってもよい。
【0136】
か焼(calcination or calcining)中の加熱速度及び冷却速度は、所望の最終生成物のタイプに依存する。一般に、毎分約5℃の加熱速度が好ましいが、通常の工業的加熱速度も適用可能である。
【0137】
か焼(calcination or calcining)工程後に得られる最終粉末は、微細、超微細、又はナノサイズの粉末であり、従来の処理において現在行われているような追加の破砕(crushing)、グラインディング(grinding)、又はミリング(milling)を必要としない。粒子は比較的柔らかく、従来の処理のように焼結されない。
【0138】
最終的な、か焼(calcination or calcining)酸化物粉末は、好ましくは、表面積、電子顕微鏡法による粒径、多孔度、元素の化学分析、及び好ましい特殊用途によって必要とされる性能試験によって特徴付けられる。
【0139】
噴霧乾燥された酸化物前駆体は、好適には、非常に微細でナノサイズである。
【0140】
噴霧粉末が、か焼器に移送されるときに出口弁が開閉するような噴霧乾燥器コレクターの変更を適用することができる。バッチ式では、コレクター中の噴霧乾燥粉末が、トレイ又はセーガー中に移され、か焼器中に移動され得る。本発明を実証するために、回転か焼器又は流動床か焼器を使用することができる。か焼(calcination or calcining)温度は、粉末の組成及び所望の最終相純度によって決定される。ほとんどの酸化物タイプの粉末では、か焼(calcination or calcining)温度は、400℃という低い温度から1000℃よりわずかに高い温度までの範囲である。か焼(calcination or calcining)後、粉末は柔らかく、焼結されないので、ふるいにかけられる。か焼(calcination or calcining)された酸化物は、狭い粒径分布を得るために長い粉砕時間も仕分けも必要としない。
【0141】
LiM2O4スピネル酸化物は、1~5μmの好ましい結晶子サイズを有する。LiMO2岩塩酸化物は、約50~250nm、より好ましくは約150~200nmの好ましい結晶子サイズを有する。
【0142】
本発明の格別の利点は、酢酸塩とは対照的に、多カルボン酸の金属キレートの形成である。酢酸塩は酸化物前駆体のその後のか焼(calcination or calcining)中に燃焼燃料として機能し、適切な燃焼のために追加の酸素が必要とされる。より低分子量のマルチカルボン酸、特に低分子量のジカルボン酸、より特にシュウ酸は、追加の酸素を導入することなく、より低温で分解する。シュウ酸塩は、例えば、約300℃で、追加の酸素なしに分解し、それによって、か焼(calcination or calcining)温度のより正確な制御を可能にする。これは、か焼(calcination or calcining)温度の低下を可能にし得、それによって、か焼により高温で見られるような最小限の不純物相の出現でもって、無秩序な
【化9】
スピネル結晶構造の形成を、最小限にし得る。
【0143】
酸化物前駆体を形成するためのこの方法は、本明細書では、特殊用途のための性能仕様を満たすために必須で規定された、独特の化学的及び物理的特性を必要とする、高性能の微細、超微細及びナノサイズの粉末の大規模工業生産に適した、絡合前駆体形成(CPF: complexometric precursor formulation)法と呼ばれる。CPF法は、金属が、塩として規則化された格子に沈殿する酸化物前駆体を提供する。次いで、酸化物前駆体を、か焼(calcination or calcining)して酸化物を形成する。理論に限定されないが、無定形固体とは対照的に、規則化格子の形成は、か焼(calcination or calcining)中の酸化物形成を促進すると仮定される。
【0144】
CPF法は、特殊な微細構造又はナノ構造の制御された形成、及び粒子サイズ、表面積、多孔度、相純度(phase purity)、化学的純度、及び性能仕様を満たすように調整された他の必須特性を有する最終生成物を提供する。CPF法によって製造された粉末は、現在使用されている技術と比較して少ない処理工程数で得られ、現在利用可能な産業機器を利用することができる。
【0145】
CPF法は、求電子又は求核配位子を有する任意の無機粉末及び有機金属粉末に適用可能である。CPF法は、低コストの原料を出発原料として使用することができ、必要に応じて、さらなる精製又は分離をその場で行うことができる。粉末合成に必要な不活性又は酸化雰囲気条件は、この方法のための装置を用いて容易に達成される。反応の温度は、周囲温度又はわずかに暖かいものでありえ、好ましくは100℃以下である。
【0146】
CPF法は、結晶化、溶解度、遷移錯体形成、相化学、酸性度及び塩基性度、水性化学、熱力学及び表面化学の化学原理を統合することにより、前駆体酸化物の微細、超微細及びナノサイズの粉末を簡単な効率的な方法で生成する。
【0147】
結晶化が始まる時間、特に核形成ステップが始まる時間は、ナノサイズ粉末の形成の最も重要な段階である。CPF法によって提供される格別の利点は、この核形成ステップの開始時にナノサイズ粒子を調製する能力である。出発反応物からの溶質分子は、所与の溶媒中に分散され、溶液中にある。この場合、クラスターは、適切な温度、過飽和、及び他の条件下で、ナノメートルスケールで形成し始めると考えられる。クラスターは、核を構成し、原子は、後に結晶微細構造を画定する(define)、画定された(defined)そして周期的な様式で、それ自体を配列し始める。結晶サイズ及び結晶形状は、内部結晶格子構造から生じる結晶の巨視的特性である。
【0148】
核形成が始まった後、結晶成長も始まり、過飽和が存在する限り、核形成及び結晶成長の両方が同時に起こり得る。核形成及び成長の速度は、溶液中に存在する過飽和によって決定され、核形成又は成長のいずれかが、過飽和状態に応じて他方の上で(over the other)起こる。結晶のサイズ及び形状を調整するために、それに応じて必要とされる反応物の濃度を定義することが重要である。核形成が成長よりも支配的である場合、より微細な結晶サイズが得られる。核形成工程は、非常に重要な工程であり、この初期工程における反応の状態は、得られる結晶を規定する。定義によれば、核形成は、液晶溶液から形成される結晶等の小さな領域における初期相変化である。これは、準安定平衡状態にある均一相における分子スケールでの急速な局所的ゆらぎの結果である。全核形成は、一次及び二次の2つのカテゴリーの核形成の総数効果である。一次核形成では、開始剤として結晶が存在しない場所で結晶が形成される。二次核形成は、結晶が核形成プロセスを開始するために存在するときに起こる。CPF法の基礎を形成するのは、初期核形成ステップの重要性のこの考えに基づく。
【0149】
CPF法では、反応物を、好ましくは周囲温度で、又は必要に応じて、わずかに高い温度、好ましくは100℃以下で、溶液に溶解する。安価な原材料及び適切な溶媒の選択は、本発明の重要な態様である。出発物質の純度も重要であるが、これはその性能仕様に必要とされる特定の純度レベルを必要とし得る最終生成物の純度に影響を及ぼすからである。従って、処理コストを著しく増加させることなく調製プロセス中に精製することができる低コストの出発物質を考慮しなければならない。
【0150】
CPF法は反応物を緊密に混合するために従来の装置を使用し、好ましくは、特に反応ガスが有利である場合、好ましくはガスのバブリングを伴う高度に撹拌された混合物を含む。
【0151】
ガスは、導入方法に限定されることなく、溶液中に直接導入されることが好ましい。該ガスは、反応器の側面に配置された管等のいくつかのガスディフューザを有することによって反応器内の溶液に導入することができ、管は、ガスの出口のための孔を有する。別の構成は、該ガスが反応器の内壁を通過するように二重壁反応器を有することである。反応器の底部は、又、ガスのための入口ポートを有することができる。該ガスは、又、攪拌機シャフトを通って導入され、流出時に気泡を生成することができる。いくつかの他の構成が可能であり、本明細書で与えられるこれらの構成の説明はこれらに限定されない。
【0152】
一実施態様では、エアレータをガスディフューザとして使用することができる。ガス拡散エアレータを反応器に組み込むことができる。チューブ又はドーム形状のいずれかであるセラミック拡散エアレータは、本発明の実証に特に適している。セラミックバブルディフューザの細孔構造は、供給されるガスの1立方フィート/分(cfm)当たりの極めて高いガス/液体界面をもたらす比較的微細な小さなバブルを生成することができる。微細気泡の速度が遅いことに起因する接触時間の増加と相まって、対液体界面に対して高いガスの比 (ration of high gas to liquid interface)は、より高い移動速度を提供することができる。セラミックの多孔性は気泡の形成における重要な因子であり、核形成プロセスに著しく寄与する。これに限定されないが、ほとんどの構成では毎分溶液1リットル当たり少なくとも1リットルのガスのガス流量が本発明の適用に適している。
【0153】
反応器壁の側面上のセラミック管ガスディフューザは、本発明の適用に特に適している。これらの管のいくつかは、反応器全体にガスをより均一に分配するために、異なる位置、好ましくは互いに等距離に配置されてもよい。ガスは、好ましくは管のチャンバをわずかに加圧するヘッダアセンブリに接続された継手を通して、反応器内のディフューザに導入される。ガスがセラミックディフューザ本体を透過することにつれて、材料の多孔質構造及びセラミック管の外側上の液体の表面張力によって、微細な気泡が形成され始め得る。表面張力が克服されると、微小な気泡が形成される。次いで、この小さな気泡は液体を通って上昇し、液体レベルの表面に到達する前に、気体と液体との間の移動のための界面を形成する。
【0154】
ドーム形ディフューザは、反応器の底部又は反応器の側面に配置することができる。ドーム形ディフューザでは、典型的には気泡のプルーム(plume)が生成され、この気泡は底から表面まで絶えず上昇し、大きな反応性表面を提供する。
【0155】
ガス流が表面張力を克服するのに十分でないときに閉じる、膜ディフューザは、本発明の適用に適している。これは、あらゆる製品粉末が、ディフューザ内に失われるのを防止するのに有用である。
【0156】
より高いガス効率及び利用率を有するために、ガス流及び圧力を低減し、より少ないポンプエネルギーを消費することが好ましい。ディフューザは、同じ体積のガスに対して、より大きな気泡がより少なく形成される場合よりも、より小さな気泡がより大きな表面積で形成されるように構成することができる。表面積が大きいほど、気体が液体中により速く溶解することを示す。これは、ガスが、溶液中でのその溶解度を増加させることによって反応物を可溶化するためにも、使用されるような溶液において有利である。
【0157】
ノズル、好ましくは一方向ノズルを使用して、ガスを溶液反応器に導入することができる。ガスはポンプを使用して送達することができ、流量は、所望の気泡及び気泡速度が達成されるように制御されるべきである。ジェットノズルディフューザー(好ましくは反応器の側部又は底部の少なくとも1つにある)は、本発明の実施に適している。
【0158】
ガス導入の速度は、好ましくは、攪拌器の影響を除いて、溶液の体積を少なくとも5%増加させるのに十分な態様である。ほとんどの状況において、毎分溶液1リットル当たり少なくとも約1リットルのガスが、本発明を適用するのに十分である。ガスを再循環させて反応器に戻すことが好ましい。
【0159】
添加された溶液のバルク溶液への移送は、好ましくは、移送される溶液を反応器に接続するポンプに取り付けられたチューブを用いて行われる。反応器内への管は、好ましくは、直径サイズが所与の速度で添加された溶液の流れを送達できるように、選択された所定の内径の単一のオリフィス又はいくつかのオリフィスを有する管である。微細ノズルを有するアトマイザーは、添加された溶液を反応器に送達するのに適している。この移送管の先端は、シャワーヘッドを備えることができ、それによって、添加された溶液のいくつかの流れを同時に提供する。大規模生産では、移動速度は時間係数であり、従って、移動速度は所望の適切なサイズを生成するのに十分に迅速であるべきである。
【0160】
撹拌機は、異なる構成のいくつかのプロペラを備えることができ、各プロペラセットは、互いに又は同じ平面上にある角度で配置された1つ又は複数のプロペラを備える。さらに、ミキサーは、これらのプロペラの1つ以上のセットを有する可能性がある。目的は、十分な溶液ターンオーバーのために十分な乱流を作り出すことである。ストレイトパドル又はアングルパドルが適している。これらのパドルの寸法及び設計は、溶液の流れのタイプ及び流れの方向を決定する。少なくとも約100回転/分(rpm)の速度が、本発明の実施に適している。
【0161】
添加溶液のバルク溶液への移動速度は、核形成速度に速度論的効果を及ぼす。好ましい方法は、結晶成長の速度よりも核形成及び核形成の速度に影響を及ぼす反応物の局所濃度を制御するための微細な移動流を有することである。より小さいサイズの粉末の場合、より遅い移動速度は、より微細な粉末をもたらす。競合する核形成及び成長の適切な条件は、所望の最終粉末特性によって決定されなければならない。反応温度は、好ましくは周囲温度又は必要に応じて穏やかな温度である。
【0162】
最終生成物にもたらされる特別なナノ構造体が予備形成され(preformed)、それにより、所望の用途における材料の性能が向上する。本発明の目的のために、ナノ構造は、100~300nmの一次粒子の平均サイズを有する構造として定義される。
【0163】
界面活性剤も乳化剤も必要ではない。実際、界面活性剤及び乳化剤は、乾燥を阻害し得るので、使用しないことが好ましい。
【0164】
サイズ制御は、溶液の濃度、ガスの流量、又はバルク溶液への添加溶液の移動速度によって行うことができる。
【0165】
反復的で扱いにくい粉砕及び仕分け工程は使用されない。
【0166】
か焼(calcination or calcining)時間の短縮を達成することができ、典型的には、繰り返し-か焼(calcination or calcining)は、必要とされない。
【0167】
反応温度は周囲温度である。可溶化が必要な場合は、温度を上げるが、好ましくは100℃以下にする。
【0168】
表面積、多孔度、タップ密度、及び粒径等の粉末の調整された物理的特性は、反応条件及び出発材料を選択することによって注意深く制御することができる。
【0169】
このプロセスは、現在利用可能な装置及び/又は本産業装置の革新を使用する大規模製造のために容易に拡張可能である。
【実施例】
【0170】
電極調製:
複合電極(composite electrodes)が、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)溶媒に溶解された、導電性添加剤としての10wt%導電性カーボンブラック、結合剤としての5wt%ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と活物質を、混合することによって調製された。スラリーをグラファイトコーティングアルミニウム箔上にキャストし、真空下にて60℃で一晩乾燥させた。面積1.54 cm2の電極ディスクを、4mg・cm-2の典型的な装填量で電極シートから切断した。
【0171】
コイン型電池アセンブリ(Coin cell assembly):
コイン型電池を、アルゴン充填グローブボックス中で組み立てた。リチウム箔(340μm)を、ハーフセル(half-cells)における対(counter)及び基準(reference)電極として使用し、市販のLi4Ti5O12(LTO)複合電極を、フルセル(full-cell)における対及び基準電極として使用した。7:3(体積%)エチレンカーボネート(EC):ジエチレンカーボネート(DEC)中の1M LiPF6を電解物として使用した。電極は、ハーフセル中のCelgard(登録商標)膜の厚さ25μmのシート1枚又は2枚によって、及びCelgard膜フルセルのシート1枚によって分離された。
【0172】
サイクリングプロトコル(Cycling protocol):
スピネルカソードセル(spinel cathode cells)を、Arbin Instrumentバッテリーテスター(モデル番号BT 2000)を用いて、3.5V~4.9Vの電圧範囲で、様々なCレート(146 mAg-1に相当する1Cレート)で、25℃で定電流サイクルした。4. 9Vで10分間の定電圧充電ステップを、1C以上の率の定電流充電ステップの末端でセルに印加した。岩塩NMCセルは、25℃で種々のCレート(rate)( 200 mAg-1に相当する1Cレート)で2.7V~4.35 Vの電圧範囲で定電流サイクルした。1C以上の率の定電流充電ステップの末端時に、4.35 Vの定電圧充電ステップを10分間セルに印加した。
【0173】
実施例1:
LiNi
0.5Mn
1.5O
4カソード物質の製造物からのか焼処理(calcined)物質と噴霧乾燥混合シュウ酸塩前駆体のSEM分析は、両方とも結晶性であり、遷移金属酢酸塩及び炭酸塩原料の使用は、
図5に示されるような同様の材料形態を提供する。
【0174】
実施例2:
図6は、大気中室温(a)、窒素バブリングで室温(b)、二酸化炭素バブリングで室温(c)、大気中水還流温度(d)、及び、実験(a-d)の10倍含水量にて大気中室温(e)で、炭酸マンガンとシュウ酸(モルで5%過剰:5% excess by mole)を水中6時間反応させたとき得られた、沈殿シュウ酸マンガン水和物のXRDパターンを示す。実験(a~c)で沈殿した材料のXRDパターンは、空間群C2/cを有するシュウ酸マンガン二水和物のものと一致する。N
2及びCO
2ガスバブリングは、材料の結晶化度にわずかに影響した。水還流温度(b)での反応は、2つの異なるシュウ酸マンガン二水和物相を生成した;C2/c空間群での一とP2
12
12
1空間群での一。実験(a-d)の1/10thまでの反応物の濃度の減少は、空間群Pccaを有する一次元鎖構造を有する、カテナ-ポリ[[[ジアクアマンガン(ll)]-μ-オキサラト]一水和物]の形成をもたらした。これらの実験は、水中の炭酸マンガンとシュウ酸との反応の沈殿生成物に対する、温度、濃度、及び雰囲気等の反応条件の有意な効果を実証した。
【0175】
実施例3:
LiNi
0.5Mn
1.5O
4スピネルの特別の問題は、
図7に示すように、放電終了時に電圧が4.7Vから4.0Vに低下する4Vプラトー(4 volt plateau)と呼ばれる現象である。プラトーは、空気中での焼成中の酸素損失によりMn
3+が形成された結果であると考えられる。
図7に示される従来技術の方法による結果では、酸化物への規則化された前駆体(an ordered precursor to the oxide)が、化学量論的酢酸リチウムを持つ、炭酸ニッケル及び炭酸マンガンを含む沈殿物として形成され、酸化物への前駆体が、か焼(calcination or calcining)され、LiNi
0.43Mn
1.57O
4のスピネルが得られ、ここで、Mn:Ni比は3.70であった。電圧の関数としての充電容量を測定した結果、
図7に示される有意な4Vプラトーが得られた。
【0176】
発明Aでは、
図7に示すように、シュウ酸塩は、遷移金属酢酸塩から形成され、その結果、4Vプラトーが著しく減少した。発明Aにおいて、酸化物への規則化された前駆体(an ordered precursor to the oxide)は、
図7に参照される工程において、シュウ酸消化を伴う炭酸リチウム、酢酸ニッケル及び酢酸マンガンから形成された。次いで、酸化物への前駆体(the precursor to the oxide)を、か焼(calcination or calcining)して、LiNi
0.48Mn
1.52O
4のスピネルを得、ここで、Mn:Ni比は3.13であった。電圧の関数としての放電容量を測定した結果、
図7に示すように、4Vプラトーが有意に減少した。
【0177】
発明のBでは、金属炭酸塩が原料として使用され、炭酸塩のシュウ酸塩消化により、4Vプラトーが、特に、わずかに過剰のニッケルを使用して、実質的に排除され、ここで、Niに対するMnの比は3以下、好ましくは少なくとも2.33~3未満、最も好ましくは2.64~3未満である。酸化物への規則化された前駆体(ordered precursor to the oxide)が、最適化されたプロセスとして、
図7に参照されるプロセスにおいてシュウ酸消化を伴う炭酸リチウム、炭酸ニッケル及び炭酸マンガンから形成された。酸化物への前駆体(precursor to the oxide)を、か焼(calcination or calcining)して、Mn:Ni比が2.90であるLiNi
0.51Mn
1.49O
4のスピネルを得た。電圧の関数としての放電容量を測定した結果、
図7に示すように、4Vプラトーがほぼ完全に消失した。
【0178】
実施例4:
LiNi
0.5Mn
1.5O
4の式を有する高電圧スピネルの前駆体を、炭酸リチウム、炭酸ニッケル、炭酸マンガン及びシュウ酸を用いて合成した。820.0gのH
2C
2O
4・2H
2Oを、約40℃の温度の化学反応容器中の2.0Lの水に添加した。第2の容器において、Li
2CO
3(96.1g)、NiCO
3(148.4g)、MnCO
3(431.1g)を、1. 2Lの脱イオン水中に含む炭酸塩混合物スラリーを調製した。炭酸塩混合物スラリーを、約0.2~0.3L/hの速度で該化学反応容器にポンプ注入した。反応容器内の混合物を、周囲雰囲気中40℃で激しく混合し、スラリーを形成した。スラリーを、噴霧乾燥機を用いて乾燥し、高電圧スピネル前駆体材料を生成した。X線回折(XRD)パターンを
図8に示し、乾燥粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を
図9に示す。XRD回折は、高度に規則化された結晶格子を示し、SEMは、ナノ構造化結晶材料であることを実証する。
【0179】
実施例5:
式LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有する高電圧スピネルを、実施例4の前駆体から調製した。実施例4の前駆体をアルミナるつぼに入れ、ボックス炉中、空気中、900℃で15時間、周囲雰囲気中で焼成(fire)した。得られた粉末を粉末X線回折分析により分析し、
図10に提供される回折パターンを得た。
図11に提供されるSEMは、前駆体のナノ構造が大部分維持されたことを示す。スピネル構造の格子定数は、8.174(1)Åと計算された。合成した材料の電気化学的性能を、リチウム金属アノードに対する半電池(ハーフセル)及びLi
4Ti
5O
12(LTO)アノードに対する全電池(フルセル)のカソードとして評価した。
図12に、0.1Cにおける半電池の放電容量の関数としての電圧を示す。
図13に、25℃における1Cレートでのサイクルの関数としての半電池の比容量を示す。
図14に、半電池の25℃における各種放電率における比容量を示す。LTOアノードを備えた全電池における25℃にて1Cでの比容量を
図15に示す。
【0180】
実施例6
式LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有する高電圧スピネルを、実施例4の前駆体から調製した。前駆体材料をアルミナボートに入れ、50cm
3/分の酸素流下で、チューブ炉中にて焼成した(fired)。
図16に示される焼成手順(firing procedure)は、350℃での予備焼成工程(pre-firing step)、900℃での焼成(firing)、650℃での徐冷(slow cooling)及び焼鈍(annealing)を含んでいた。低速冷却に加えて、酸素中での焼成(firing)は、酸素欠乏を緩和し、これらの材料において一般に観察される4Vプラトーの減少をもたらす。得られた粉末のX線回折を
図17に示し、それに基づいて、スピネル構造の格子定数を8.168(1)Åと計算した。 合成された材料の電気化学的性能を、リチウム金属アノードに対する半電池のカソードとして評価した。
図18に、半電池の25℃における放電率0.1Cにおける電圧プロファイルを示す。格別の特徴は、これらの材料において一般的に観察される4Vプラトーがないことである。
図19に、半電池で25℃での1Cサイクルレートで得られた比容量を示す。
図20に、半電池の25℃における各種放電率で得られた比容量を示す。
【0181】
実施例7
実施例4の前駆体材料をアルミナるつぼに入れ、
図16に示す焼成手順(firing procedure)を用いて、ボックス炉内で、周囲雰囲気中にて焼成した(fired)。得られた粉末のX線回折パターンを
図21に示し、スピネル構造の格子パラメータを8.169(1)Åと計算した。 合成した材料の電気化学的性能を、リチウム金属アノードに対する半電池のカソードとして評価した。
図22に、25℃での半電池の放電率0.1Cにおける放電容量の関数としての電圧を示す。
図23に、半電池の25℃での1Cの放電率で得られた比容量を示す。
【0182】
実施例8
式LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有する高電圧スピネルへの前駆体が、出発物質として、1.92gの炭酸リチウム、8.62gのMnCO
3(Alfa;粒径1-3μm)、2.97gのNiCO
3(Alfa;無水)を使い、合成された。16.4gのシュウ酸二水和物(H
2C
2O
4・2H
2O)をキレート剤として使用した。金属炭酸塩を、20mLのDl水と混合して、1つのビーカー中でスラリーを形成し、酸を別のビーカー中の40mLのDl水に添加した。次いで、シュウ酸スラリーを40℃に加熱し、炭酸塩スラリーを酸溶液に8.9mL/hrの速度で添加して前駆体を形成した。前駆体を、噴霧乾燥機を用いて乾燥させた。乾燥した前駆体を、アルミナるつぼ中で、900℃で15時間、周囲雰囲気中で焼成(fire)した。
図24に、25℃で0.1Cの放電率で測定した半電池の放電の機能としての電圧を示す。
【0183】
実施例9:
式LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有する高電圧スピネルへの前駆体を、より大きい粒径を有するMnCO
3を利用したことを除いて、実施例8と同様に合成した(Sigma;粒径:≦74μm)。前駆体を実施例8と同様に乾燥し、焼成(fire)した。
図25に、25℃で0.1Cの放電率で測定した半電池の放電の関数としての電圧を示す。
【0184】
実施例10:
8.62gのMnCO
3(Sigma;粒径:≦7m)、2.97gのNiCO
3(Alfa;無水)、及び1.92gの炭酸リチウムを、出発材料として用いて、高電圧スピネル LiNi
0.5Mn
1.5O
4への前駆体を合成した。16.4gのシュウ酸二水和物(H
2C
2O
4・2H
2O)をキレート剤として使用した。金属炭酸塩を80mLのDl水と混合して、1つのビーカー中でスラリーを形成し、酸を別のビーカー中で120mLのDl水に溶解した。炭酸塩スラリーを、約25℃の周囲温度で16mL/hrの速度でシュウ酸溶液に添加して、前駆体を形成した。次いで、前駆体を、噴霧乾燥機を用いて乾燥させた。乾燥した前駆体を、アルミナるつぼ中で、900℃で15時間、周囲雰囲気中で焼成(fire)した。
図26に、25℃で0.1Cの放電率で測定した半電池の放電の機能としての電圧を示す。
【0185】
実施例11:
式LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有する高電圧スピネルへの前駆体を、より少ない水を反応に使用したことを除いて、実施例10と同様に合成した:同量の金属炭酸塩を12mLのDI水と混合し、同量のシュウ酸を28mLの水に添加した。炭酸塩スラリーを、シュウ酸スラリーに3mL/hrの速度で添加した。次いで、前駆体を実施例7と同様に乾燥し、焼成した(fired)。
図27に、25℃で0.1Cの放電率で測定した半電池の放電の関数としての電圧を示す。実施例11は、非常に少量の添加水で前駆体を形成する能力を実証し、いくつかの実施態様では、水は消化によって提供され、出発物質の水和水の水は、反応を開始し、完了するのに十分であり得るため、添加されない。
【0186】
実施例12:
式LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有する高電圧スピネルへの前駆体を、塩基性炭酸ニッケル(Sigma;NiCO
3・2Ni(OH)
2・ xH
2O)ソース(source:原料)が使用されたのを除いて、実施例11と同様に合成した。次いで、前駆体を、実施例11と同様に乾燥し、焼成した(fired)。
図28に、25℃で0.1Cの放電率で測定した半電池の放電の関数としての電圧を示す。
【0187】
実施例13:
8.62gのMnCO
3(Sigma;粒径:≦74μm)、2.97gのNiCO
3(Alfa;無水)、及び1.92gの炭酸リチウムを出発材料として用いて、式LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有する高電圧スピネルへの前駆体を合成した。16.4gのシュウ酸二水和物(H
2C
2O
4・2H
2O)をキレート剤として使用した。金属炭酸塩を、80mLのDl4水と混合して、1つのビーカー中でスラリーを形成し、酸を、別のビーカー中で160mLのDI水に溶解した。次いで、溶解したシュウ酸を含むビーカーを氷浴内に入れて、約5℃の温度を維持した。炭酸塩スラリーを23mL/hrの速度でシュウ酸溶液に添加した。乾燥した前駆体のXRDパターンを
図29に示す。
【0188】
実施例14:
式LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有する高電圧スピネルへの前駆体を、合成を水の沸点(100℃)で行ったことを除いて、実施例13と同様に合成した。還流冷却器を用いて反応の水位を維持した。乾燥した前駆体のXRDパターンを
図30に示す。
【0189】
実施例15:
式LiMn
2O
4を有するスピネルへの前駆体を、炭酸リチウム、炭酸マンガン、及びシュウ酸を、出発材料として用いて合成した。16.39gのH
2C
2O
4・2H
2Oをビーカー中の40mlの水に加えた。第2のビーカーにおいて、Li
2CO
3(1.85g)及びMnCO
3(11.49g)を24mlの脱イオン水中で混合した。炭酸塩混合物スラリーを、0.01 L/Hrの速度でシュウ酸スラリーにポンプ注入した。反応器内の混合物を周囲温度で混合した。得られたスラリーを蒸発させることによって乾燥させ、LiMn
2O
4への前駆体を生成した。XRDパターンを
図31に示す。
【0190】
前駆体材料を、ボックス炉内で、空気中、350℃で1時間、次いで850℃で5時間焼成した(fired)。焼成材料のX線回折パターン及び走査電子顕微鏡像を、それぞれ
図32及び33に示す。
【0191】
実施例16:
式LiMn1.9M0.1O4(M: Mn、Al、Ni)のスピネルへの前駆体を、金属炭酸塩及びシュウ酸を用いて、表1に示す量で合成した。
【0192】
各組成物の出発物質を、32mlの脱イオン水中で6時間、周囲温度で混合した。得られたスラリーを蒸発により乾燥させた。
図34に示すX線回折パターンは、LiMn
2O
4への前駆体であるシュウ酸マンガン二水和物(試料A)と、LiMn
1.9Al
0.1O
4への前駆体(試料B)が、斜方晶系空間群(P2
12
12
1)に結晶化したことを示している。LiMn
1.9Ni
0.1O
4(試料C)は、単斜晶系空間群(C2/C)で結晶化した。
【表1】
【0193】
実施例17:
式LiNi
0.333Mn
0.333Co
0.333O
2を有するNMC 111への前駆体を、240mLの脱イオン水中に分散した、3.88gのLi
2CO
3、3.79gのNiCO
3、3.92gのMnCO
3、3.93gのCoCO
3、及び19.23gのH
2C
2O
4・2H
2Oから、丸底フラスコ中で、調製した。混合物を還流下で6.5時間加熱し、冷却した。最終混合物は、約13%の固形分を有した。粉末を、噴霧乾燥により得て、式LiNi
0.333Mn
0.333Co
0.333(C
2O
4)
1.5を有する前駆体を得た。前駆体を、110℃で1時間加熱し、ボックス炉内で、空気中で800℃にて7.5時間か焼(calcined)してNMC111を得た。前駆体のSEMを
図36に示す。か焼(calcined)粉末のXRDパターンは、
図35に提供され、か焼(calcined)粉末のSEMは、
図37に提供され、前駆体のナノ構造が大きく維持されていることが示されている。サイクルの関数としての放電容量を
図38に示す。
【0194】
実施例18:
式LiNi
0.6Mn
0.2Co
0.2O
2を有するNMC622への前駆体を、ビーカー中の200mLの脱イオン水中に分散された39gのLi
2CO
3、71gのNiCO
3、23gのMnCO
3、及び24gのCoCO
3から調製した。炭酸塩の混合物を、400mLの脱イオン水中の201gのH
2C
2O
4・2H
2Oを含有する別のビーカーに、1時間当たり0.38モル炭酸塩の速度で、ポンプで入れた。次いで、反応混合物を1時間撹拌した。約20%の固形分を有する最終混合物を噴霧乾燥して、式LiNi
0.6Mn
0.2Co
0.2(C
2O
4)
1.5を有する前駆体を得た。前駆体のXRDパターンを
図39に示し、SEMを
図41に示す。前駆体を、110℃で1時間加熱し、ボックス炉内にて空気中で800℃にて7.5時間か焼(calcined)して、
図40に示すXRDパターン及び
図42のSEMを有するNMC622を得た。SEMは、前駆体の規則化されたナノ構造格子が、か焼(calcined)粉末中で実質的に維持されることを実証する。25℃、1Cにおける半電池の放電容量をサイクル数の関数として
図43に示す。
図44は、0.1Cにおける容量の関数としての初期充放電電圧プロファイルを示す。
【0195】
実施例19:
式LiNi
0.8Mn
0.1Co
0.1O
2を有するNMC811への前駆体を、200mLの脱イオン水中に分散した39gのLi
2CO
3、95gのNiCO
3、12gのMnCO
3、及び12gのCoCO
3からビーカー中で調製した。混合物を、400mLの脱イオン水中の201gのH
2C
2O
4・2H
2Oを含有する別のビーカーに、1時間当たり0.38モル炭酸塩の速度で、ポンプで入れた。次いで、反応混合物を1時間撹拌した。約20%の固形分を有する最終混合物を噴霧乾燥して、式LiNi
0.8Mn
0.1Co
0.1(C
20
4)
1.5を有する前駆体を得た。前駆体をボックス炉中で、空気中にて600℃で5時間加熱し、酸素流下にて125℃で1時間加熱し、チューブ炉中で、酸素流下にて830℃で15時間か焼(calcined)してNMC811を得た。NMC811酸化物のXRDパターンを
図45に示す。サイクルの関数としての放電容量を、
図46に示し、容量の関数としての電圧プロファイルを、
図47に示す。NMC811を、125℃で1時間加熱し、チューブ炉中酸素流下にて830℃で15時間か焼(calcined)して、精製NMC811を形成した。リファイアされた(refired:再焼成した)XRDのXRDパターンを
図48に示し、SEMを
図49に示す。放電容量は
図50に示されており、実線の曲線は平均容量を表し、エラーバー(error bars)は、一連のサンプルの最大容量及び最小容量を表している。
【0196】
実施例20:
式LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2を有するNCAの前駆体を、8gのLi
2CO
3、19gのNiCO
3、2gのAl(OH)(CH
3COO)
2及び4gのCoCO
3をビーカー中の40mLの脱イオン水中に分散させて調製した。混合物を、80mLの脱イオン水中の40gのH
2C
2O
4・2H
2Oを含有する別のビーカーに、1時間当たり0.08モルの炭酸塩の速度で、ポンプにて入れた。
次いで、反応混合物を1時間撹拌した。約20%の固形分を有する最終混合物を噴霧乾燥して、式LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2を有する前駆体を得た。前駆体を、125℃で1時間加熱した後、チューブ炉中酸素流下にて830℃で15時間か焼(calcined)してNCAを得た。XRDパターンが、
図51に提供され、SEMが、
図52に提供され、前駆体に由来する層状ナノ構造が容易に観察可能である。
【0197】
実施例21:
全体的な(overall)式LiNi
0.6Mn
0.2Co
0.2O
2を有するNMC622を、中央部分又はコアから外部への遷移金属の段階的濃度勾配を用いて調製した。前駆体は、ビーカー中の脱イオン水10mL中に分散した3.9gのLi
2CO
3、9.5gのNiCO
3、1.2 g のMnCO
3、及び1.2gのCoCO
3から調製した。混合物を、80mLの脱イオン水中の40.4gのH
2C
2O
4・2H
2Oを含有する別のビーカーにポンプで入れて、コア前駆体を形成する。続いて、5mLの脱イオン水中に分散された1.0gのLi
2CO
3、 1.8gのNiCO
3、0. 6gのMnCO
3、及び0. 6gのCoCO
3を含む混合物を、反応混合物中にポンプで注入して、コアの周りに前駆体の第1のシェルを形成した。2. 9gのLi
2CO
3、3. 0gのNiCO
3、2. 9gのMnCO
3、及び3. 0gのCoCO
3を含む追加の混合物を、10mLの脱イオン水中に分散させ、反応混合物中にポンプで注入して、第1のシェルの周りの第2のシェル中に第3の比率(third ratio)を形成した。各溶液について、添加速度を15mL/時間で一定に保った。次いで、反応混合物を1時間撹拌し、噴霧乾燥して、全体の式LiNi
0.6Mn
0.2Co
0.2(C
20
4)
1.5を有する前駆体を得た。次いで、前駆体を110℃で1時間加熱し、ボックス炉内で空気下にて800℃で7.5時間か焼(calcined)して、LiNi
0.8Mn
0.1Co
0.1O
2の式を有するニッケルリッチコアNMC811コア(nickel rich core NMC811 core)、容量の大半(bulk)を表すLiNi
0.6Mn
0.2Co
0.2O
2の式を有するNMC622の第一シェル、及びLiNi
0.333Mn
0.333Co
0.333O
2の式を有する外側NMC 111シェルを含む、勾配(gradient)NMC622を得た。これにより、本発明は、表面特性が該大半(bulk)と異なることを可能にする。段階的(step-wise)NMCのXRDパターンを
図53に示し、SEMを
図54に示す。サイクルの関数としての放電容量を
図55に示す。NMC622(実施例15)、NMC811(実施例16)、NMC811を2回焼成(fired)したもの(実施例16)、NCA(実施例17)及びNMC勾配(実施例18)の放電容量の比較例を、
図56に示し、
図57で正規化する。
【0198】
実施例22:コーティングされたスピネルの調製
表面に、ニオブ酸塩コーティングを有するコーティングされたスピネルが形成された。16.39gのH2C2O4・2H2Oを40mLの水にビーカー中で添加することによって前駆体を調製した。第2のビーカーにおいて、Li2CO3(1.92g)、NiCO3(2.97g)、MnCO3(8.62g)を24mLの脱イオン水中で混合した。炭酸塩混合物スラリーをシュウ酸スラリービーカーにゆっくり加え(20分毎に3mL)、混合した。スラリーを室温にて、周囲雰囲気中で一晩混合した。LiNbO3の原料、0.816gのNb(HC2O4)5・xH2O(TGAから推定したx=6.35)及び0.046gのLi2CO3を、翌日(the next day)スラリーに添加した。3時間混合した後、スラリーを噴霧乾燥機によって乾燥させた。前駆体を5h焼成(fired)し、続いて750℃で24hのアニーリングステップを行った。
【0199】
焼成材料のXRDパターン(
図58)は、主相としてのスピネルLNMOのピークと、第2相としてのLiNbO
3のピークを示す。
図58では、ニオブ酸リチウムコーティングされたLNMOのXRDパターンが示されており、第2のパネルは、リチウムニオブ酸塩のピークが拡張した状態を示している。
【0200】
図59の材料のSEM画像は、500nm~2μmの範囲の粒径を示し、これは、おそらく合成温度がより低いために、他のスピネル材料よりも小さい。画像は、粒子の表面上にいくつかのスペックル(speckles:小さな斑点)を示す。これらのスペックルは、おそらく、SEMによって同じ日に分析された元のスピネル試料が同様の特徴を示したので、LiNbO
3とは関連しない。SEM画像は、別々の(separate)LiNbO
3粒子の明確な証拠を示さず、スピネル粒子上のコーティングを示唆する。
【0201】
走査透過型電子顕微鏡(STEM)分析を、炭素含浸ホルムバール支持体を有する200メッシュCu透過型電子顕微鏡(TEM)グリッド上に、焼成(fired)材料のプロピルアルコール(PrOH)懸濁液を滴下キャスト(drop-casting)することによってサンプリングした、個々の二次凝集体について行った。1つの凝集体のMn及びNbの高角度環状暗視野(HAADF)画像及びエネルギー分散X線(EDX)マップは、明瞭に見えるLiNbO3の別々の(separate)一次結晶子を示した。別々の(separated)LiNbO3結晶の結晶化度は、高-分解能TEM(HRTEM)によって確認されたが、粒子の大きなサイズが、なんらかのLiNbO3コーティング状態(present)の、存在(presence)、結晶化度(crystallinity)及び厚さ(thickness)、を確認することを困難にした。
【0202】
さらに、2つの別々の(separate)凝集体中の領域について、高倍率で定量化を行った。EDXマップは、一次粒子の周りのNbの明確な輪郭を示し、粒子のバルク上のNbの分布は、より低い強度であっても、それを伴っていた。これは、LiNbO3コーティングであっても、非常に薄いことを示す。試料バルク中のNb分布が、表面Nbのみに対応するか、又は、バルク全体にわたるNbのドーピングに対応するかを決定することは不可能であるが、境界上のピーク濃度はNbの大部分が表面上に存在し、表面中の金属が少なくとも95重量%のニオブであることを示唆する。全体として、2つの別々の凝集体上の5つの領域をサンプリングし、同様の結果を得た。
【0203】
LiNbO
3コーティングLNMO材料が、Liをアノードとして、及び7:3(体積%)エチレンカーボネート(EC):ジエチレンカーボネート(DEC)中の1M LiPF
6を電解物として有する、3つの半電池の、カソード物質として評価された。0.1Cで1サイクル、次の1Cで55℃にて、3.5~4.9Vの電圧範囲内でセルを循環させ、100サイクルにわたる平均比容量を確認した。この材料は、ベースライン材料よりも、55℃で容量保持率が改善されている(
図60)。これは通常、1Cの速度(rate)で50 サイクルを超えると失敗する。この改善された性能は、おそらく、コーティング層による高温での電解物との反応からのLNMO粒子の保護によるものである。
【0204】
比較例C1
式LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2を有するNMC811の前駆体を、200mLの脱イオン水中に分散した、39gのLi2CO3、95gのNiCO3、12gのMnCO3及び12gのCoCO3から、ビーカー中で調製した。混合物を、400mLの脱イオン水中の201gのH2C2O4・2H2Oを含有する別のビーカーに、1時間当たり0.38モルの炭酸塩の速度にてポンプで入れた。次いで、反応混合物を1時間撹拌した。約20%の固形分を有する最終混合物を、噴霧乾燥して、式LiNi0.8Mn0.1Co0.1(C2O4)1.5を有する前駆体を得た。前駆体をボックス炉中にて、空気中600℃で5時間加熱し、酸素流下において125℃で1時間加熱し、チューブ炉中で酸素流下において830℃で15時間か焼(calcined)してNMC811を得た。NMC811を、125℃で1時間加熱し、チューブ炉内で酸素流下において、830℃で15時間か焼(calcined)し、本願で「プリスチンNMC811」と称する精製NMC811を形成した。
【0205】
本発明の実施例C1:
0.267モルのニッケル(ll)炭酸塩水和物(Alfa Aesar、99.5%金属基準)、0.1モルの炭酸コバルト(ll)(Alfa Aesar、99%金属基準)及び0.1モルの炭酸マンガン(ll)(Sigma Aldrich≧99.9%金属基準)及び0.525モルの炭酸リチウム(Alfa Aesar、99%)を、200mLの脱イオン水に30分間撹拌しながら添加して炭酸塩スラリーを調製することによって、式LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2を有するNMC811への前駆体を調製した。別のビーカーにおいて、1 .617モルのシュウ酸二水和物を、30分間撹拌しながら400mLの脱イオン水に添加した。炭酸塩スラリーを、シュウ酸二水和物混合物に5時間かけて滴下し、さらに18時間撹拌して、シュウ酸塩スラリーを調製した。
【0206】
一晩撹拌しながら、0.005モルのシュウ酸ニオブ(V)水和物(Alfa Aesar)を添加することによって、コーティング溶液を調製した。コーティング溶液をシュウ酸塩スラリーに添加し、続いて噴霧乾燥の前にさらに2時間撹拌した。得られた粉末を、チューブ炉中、酸素流下、830℃で15時間焼成(fired)した。粉末を≦45μmの篩サイズに粉砕し、アルミニウムバッグ中で真空密封した。得られた粉末を、本願では1ポットコーティングNMC811(1-pot coated NMC811)と呼ぶ。
【0207】
本発明の実施例C1及び比較例C1は、電気的特性について特徴付けられる。本発明の実施例C1は、代表的な
図61にグラフで示されるように、反復サイクル後の改善された放電容量を示し、予想される正規化された放電容量は、代表的な
図62にグラフで示される。本発明の実施例のレート能力(rate capability)における期待される改善を、代表的な
図63に示す。
【0208】
比較例C2
式LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2を有するNMC622の前駆体を、ビーカー中の200mLの脱イオン水中に分散された、39gのLi2CO3、71gのNiCO3、23gのMnCO3、及び24gのCoCO3から調製した。炭酸塩の混合物を、400mLの脱イオン水中の201gのH2C2O4・2H2Oを含有する別のビーカーに、1時間当たり0.38モルの炭酸塩の速度にてポンプで入れた。次いで、反応混合物を1時間撹拌した。約20%の固形分を有する最終混合物を噴霧乾燥して、式LiNi0.6Mn0.2Co0.2(C2O4)1.5を有する前駆体を得た。前駆体を、110℃で1時間加熱し、ボックス炉内にて空気中で、800℃で7.5時間か焼(calcined)してNMC622を得た。
【0209】
本発明の実施例C2:
式LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2を有するNMC622の前駆体は、ビーカー中の200mLの脱イオン水中に分散された39gのLi2CO3、71gのNiCO3、23gのMnCO3、及び24gのCoCO3から調製される。炭酸塩の混合物を、400mLの脱イオン水中の201gのH2C2O4・2H2Oを含有する別のビーカーに、1時間当たり0.38モルの炭酸塩の速度にて、ポンプで入れる。次いで、反応混合物を1時間撹拌する。
【0210】
コーティングは、3.2gのシュウ酸ニオブ(V)水和物を反応混合物に添加し、さらに2時間撹拌し続けることによって調製される。約20%の固形分を有する最終混合物を噴霧乾燥して前駆体を得る。前駆体を110℃で1時間加熱し、ボックス炉内にて空気中で、800℃で7.5時間か焼(calcined))して、ワンポットコーティングNMC622を得る。
【0211】
比較例C3:
式LiNi0.8Co0.15Al0.05O2を有するNCAの前駆体を、ビーカー中において200mlの脱イオン水に分散させた、39gのLi2CO3、95gのNiCO3、8gのAl(OH)(CH3COO)2及び18gのCoCO3から調製した。この混合物を、400mlの脱イオン水中に201gのシュウ酸水和物を含有する別のビーカーに、1時間当たり0.38モルの炭酸塩の速度にて、ポンプで入れた。反応混合物を1時間撹拌した。前駆体を125℃で1時間加熱した後、チューブ炉中酸素流下で、830℃で15時間か焼(calcined)してNCAを得た。
【0212】
本発明の実施例C3:
式LiNi0.8Co0.15Al0.05O2を有するNCAの前駆体を、ビーカー中の200mlの脱イオン水に分散させた、39gのLi2CO3、 95gのNiCO3、8gの Al(OH)(CH3COO)2及び18gのCoCO3から調製した。この混合物を、400mlの脱イオン水中に201gのシュウ酸水和物を含有する別のビーカーに、1時間あたり炭酸塩0.38モルの速度にて、ポンプで注入し、次いで1時間撹拌した。
【0213】
コーティングは、3.2gのシュウ酸ニオブ(V)水和物を反応混合物に添加し、さらに2時間撹拌し続けることによって調製される。約20%の固形分を有する最終混合物を噴霧乾燥して前駆体を得る。前駆体を125℃で1時間加熱し、次いで、チューブ炉中酸素流下で、830℃で15時間か焼(calcined)し、ワンポットコーティングNCAを得る。
【0214】
本発明は好ましい実施態様を参照して説明されたが、それらに限定されない。
【符号の説明】
【0215】
8:凝集体
10:粒子
12:コーティング
14:粒子間の格子間界面
15:格子間表面
16:凝集体