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特許7503214グルホシネート又はその類似体を調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】グルホシネート又はその類似体を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/30 20060101AFI20240612BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
C07F9/30
C07B61/00 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023536481
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 CN2022106399
(87)【国際公開番号】W WO2023001132
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202110817871.2
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522225099
【氏名又は名称】リアー ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LIER CHEMICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シュー, ミン
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ヨンジアン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, レイ
(72)【発明者】
【氏名】ゼン, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ケ
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】Helvetica Chimica Acta,1972年01月31日,Vol.55,No.1,p224-239,doi:10.1002/hlca.19720550126
【文献】Inorganic Chemistry,1974年10月01日,Vol.13,No.10,p2346-2350,doi:10.1021/ic50140a010
【文献】Angewandte Chemie International Edition,1981年,Vol.20,No.3,p223-233,doi:10.1002/anie.198102231
【文献】KLAUS WEISSERMEL; ET AL,ADVANCES IN ORGANOPHOSPHORUS CHEMISTRY BASED ON DICHLORO(METHYL)PHOSPHANE,ANGEWANDTE CHEMIE INTERNATIONAL EDITION,1981年12月31日,VOL:20,PAGE(S):223-233,https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.198102231
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその全ての鏡像異性体若しくは塩を調製するための方法であって、
【化1】

前記方法は、
a)式(II)の化合物及び式(V)の化合物を第1の反応器セットに供給し、式(II)の化合物と式(V)の化合物との反応後、第1の反応器セットの生成物流を得る工程と、
【化2】

b)第1の反応器セットの生成物流を第2の反応器セットに供給し、第1の反応器セットの生成物流を50℃~200℃の範囲の温度で反応させて、第2の反応器セットの生成物流を得る工程と
c)第2の反応器セットの生成物流を酸性加水分解又は塩基性加水分解に供して、式(I)の化合物又はその全ての鏡像異性体若しくは塩を得る工程と
を含み、
ここで、Xは-OR 表し、
メチルを表し、
はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はイソブチルを表し、
はエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はイソブチルを表し、
al及びHalは、塩素であり;
PGは水素又はアミノ保護基であり、PGがアミノ保護基である場合、前記アミノ保護基を除去する工程をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程a)において、式(V)の化合物と式(II)の化合物とのモル比が、1:(0.8~10)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)の化合物又はその全ての鏡像異性体若しくは塩を調製するための方法であって、
【化3】

前記方法は、
)式(III)の化合物及び式(IV)の化合物をA反応器セットに供給し、式(III)の化合物と式(IV)の化合物との反応後、A反応器セットの生成物流を得る工程と、
【化4】

a)A反応器セットの生成物流及び式(V)の化合物を第1の反応器セットに供給し、 反応器セットの生成物流と式(V)の化合物との反応後、第1の反応器セットの生成物流を得る工程と、
【化5】

b)第1の反応器セットの生成物流を第2の反応器セットに供給し、第1の反応器セットの生成物流を50℃~200℃の範囲の温度で第2の反応器セット中で反応させて、第2の反応器セットの生成物流を得る工程と、
c)第2の反応器セットの生成物流を酸性加水分解又は塩基性加水分解に供して、式(I)の化合物又はその全ての鏡像異性体若しくは塩を得る工程と
を含み、
ここで、R 及び はメチルを表し
Xは-OR 表し、
はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はイソブチルを表し、
及びR 、それぞれ独立して、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はイソブチルを表し
al及びHalは、塩素であり;
PGは水素又はアミノ保護基であり、PGがアミノ保護基である場合、前記アミノ保護基を除去する工程をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項4】
工程a)において、式(III)の化合物と式(IV)の化合物とのモル比が、1.5:1~1:1.5であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)の反応温度が-50℃~100℃の範囲であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
b)第1の反応器セットの生成物流を第2の反応器セットに供給し、第2の反応器セット中で、第1の反応器セットの生成物流を80℃~130℃の範囲の温度で反応させて、第2の反応器セットの生成物流を得ることを特徴とする、請求項1又はに記載の方法。
【請求項7】
工程a)の反応温度が、-50℃~200℃の範囲であることを特徴とする、請求項1又はに記載の方法。
【請求項8】
工程b)の反応時間が、1時間~30時間の範囲であることを特徴とする、請求項1又はに記載の方法。
【請求項9】
反応器セットが、1つ又は複数のマイクロチャンネル反応器からなることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
第1の反応器セットが、1つ若しくは複数のマイクロチャンネル反応器からなり、及び/又は第2の反応器セットが、1つ若しくは複数のマイクロチャンネル反応器又は1つ若しくは複数の撹拌タンク型反応器からなることを特徴とする、請求項1又はに記載の方法。
【請求項11】
工程a)において、式(V)の化合物と、A反応器セットの生成物流中のPに換算したP含有化合物の総モル量とのモル比が、1:(0.8~10)であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項12】
塩基が、工程a)の反応の開始時、反応中及び/又は反応後に添加されることを特徴とする、請求項1又はに記載の方法。
【請求項13】
工程a)、b)及びc)がそれぞれ独立して溶媒なしで又は不活性溶媒中で実施されることを特徴とする、請求項1又はに記載の方法。
【請求項14】
工程a)が、溶媒なしで又は不活性溶媒中で実施されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項15】
工程a)及び/又は工程b)における供給が、連続供給であることを特徴とする、請求項1又はに記載の方法。
【請求項16】
工程a)の第1の反応器セットがマイクロチャンネル反応器からなる場合、反応時間が1~300秒の範囲であることを特徴とする、請求項1又はに記載の方法。
【請求項17】
工程a)のA反応器セットがマイクロチャンネル反応器からなる場合、反応時間が1~300秒の範囲であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項18】
工程a)における供給が、連続供給であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、グルホシネート又はその類似体を調製するための方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
グルホシネートは重要な除草剤である。
【0003】
[発明の概要]
本発明は、グルホシネート又はその類似体を調製するための方法、特に、式(I)のグルホシネート又はその類似体を連続方式で調製するための方法を提供する。本発明の連続調製方法は、中間体を分離せずに製造を簡略化でき、製造効率を向上させることができ、且つ製造コストを削減することができる。本発明の方法は、連続方式で実施され、低コストでL-グルホシネートを調製することに特に適している。
【0004】
第1の態様では、本発明は、式(I)のグルホシネート又はその類似体を調製するための方法であって、
【化1】

当該方法は、
a)式(II)の化合物及び式(V)の化合物を第1の反応器セットに供給し、反応後、第1の反応器セットの生成物流を得る工程と、
【化2】

b)第1の反応器セットの生成物流を第2の反応器セットに供給し、50℃~200℃、好ましくは80℃~130℃の範囲の温度で反応させて、第2の反応器セットの生成物流を得る工程と
c)第2の反応器セットの生成物流を酸性加水分解又は塩基性加水分解に供して、式(I)のグルホシネート又はその類似体を得る工程と
を含み、
ここで、Xは-OR又は-NRR’を表し、
、R及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換ヒドロカルビル基、例えば置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アリール基、置換又は非置換シクロアルキル基、置換又は非置換アルカリール(alkaryl)基、及び置換又は非置換アラルキル基から選択され;
例えば、R、R及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換C~Cアルキル基、置換又は非置換C~C12アリール基、置換又は非置換C~C10シクロアルキル基、置換又は非置換C~C12アルカリール基、及び置換又は非置換C~C12アラルキル基から選択され;
例えば、R、R及びRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルプロピル、メチルフェニル、エチルフェニル、及びプロピルフェニルから選択され;
例えば、Rはメチル及びエチルから選択され、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル及びイソブチルから選択され;
R’は水素であり、又はRと同じ定義であり;
Hal及びHalは、それぞれ独立して、ハロゲン、好ましくは塩素であり;
PGは水素又はアミノ保護基であり、PGがアミノ保護基である場合、当該アミノ保護基を除去する工程をさらに含むことを特徴とする、方法を提供する。
【0005】
第2の態様では、本発明は、式(I)のグルホシネート又はその類似体を調製するための方法であって、
【化3】

当該方法は、
)式(III)の化合物及び式(IV)の化合物をA反応器セットに供給し、反応後、A反応器セットの生成物流を得る工程と、
【化4】

a)A反応器セットの生成物流及び式(V)の化合物を第1の反応器セットに供給し、反応後、第1の反応器セットの生成物流を得る工程と、
【化5】

b)第1の反応器セットの生成物流を第2の反応器セットに供給し、50℃~200℃、好ましくは80℃~130℃の範囲の温度で第2の反応器セット中で反応させて、第2の反応器セットの生成物流を得る工程と、
c)第2の反応器セットの生成物流を酸性加水分解又は塩基性加水分解に供して、式(I)のグルホシネート又はその類似体を得る工程と
を含み、
ここで、RはR又はRであり;Xは-OR又は-NRR’を表し、
、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換ヒドロカルビル基、例えば、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アリール基、置換又は非置換シクロアルキル基、置換又は非置換アルカリール基、及び置換又は非置換アラルキル基から選択され;
例えば、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換C~Cアルキル基、置換又は非置換C~C12アリール基、置換又は非置換C~C10シクロアルキル基、置換又は非置換C~C12アルカリール基、及び置換又は非置換C~C12アラルキル基から選択され;
例えば、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルプロピル、メチルフェニル、エチルフェニル、及びプロピルフェニルから選択され;
例えば、Rはメチル及びエチルから選択され、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル及びイソブチルから選択され;
R’は水素であり、又はRと同じ定義であり;
Hal及びHalは、それぞれ独立して、ハロゲン、好ましくは塩素であり;
PGは水素又はアミノ保護基であり、PGがアミノ保護基である場合、当該アミノ保護基を除去する工程をさらに含むことを特徴とする、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に基づいたいくつかの例示的なフローシートの概略図である。
図2】本発明の実施形態に基づいたいくつかの例示的なフローシートの概略図である。
図3】本発明の実施形態に基づいたいくつかの例示的なフローシートの概略図である。
図4】本発明の実施形態に基づいたいくつかの例示的なフローシートの概略図である。
図5】本発明の実施形態に基づいたいくつかの例示的なフローシートの概略図である。
【0007】
[発明の詳細な説明]
特に規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が関連する当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。矛盾する場合には、本発明の説明における定義によって規制される。
【0008】
量、濃度、又は他の値若しくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい値若しくは例示的な値の形で表される場合、任意の上限値若しくは下限値又は好ましい値若しくは例示的な値を組み合わせて得られる任意の範囲も同等に具体的に開示されることが理解されるべきである。本明細書で列挙された数値の範囲は、特に指示がない限り、範囲の端点、並びにそれらの範囲内の全ての整数及び分数も含むように意図されている。
【0009】
用語「約」を、値又は範囲の端点を説明するのに使用する場合、特定の値又は関連する端点の±5%、好ましくは±3%、より好ましくは±1%が含まれることが理解されるべきである。本発明で言及された数値は、特に記載がない限り、「約」によって修飾されるものと考慮されるべきである。
【0010】
定義
本明細書では、用語「反応器セット」は、1つ又は複数の反応器からなり、当該反応器は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、直列接続でも並列接続でもよい。1つの反応器とは、反応物が反応できる1つの容器ユニットを指す。マイクロチャンネル反応器の場合には、1つの反応器は、1つのマイクロチャンネル反応モジュールを指すこともある。
【0011】
本明細書では、用語「マイクロチャンネル反応器」は、反応チャンネルの等価直径がミリメートルスケール以下の連続流反応器を指す。
【0012】
本明細書では、用語「管型反応器」は、反応チャンネルが充填剤で充填されておらず、等価直径が上記の「マイクロチャンネル反応器」のものよりも大きい連続流反応器を指す。本明細書では、「管型反応器」には、直管型反応器及びコイル管型反応器などの種々の曲管型反応器が含まれる。
【0013】
本明細書では、用語「管状充填反応器」は、反応チャンネルが充填剤で充填され、等価直径が上記の「マイクロチャンネル反応器」のものよりも大きい連続流反応器を指す。本明細書では、「管状充填反応器」には、直管状充填反応器及びコイル管状充填反応器などの種々の曲管状充填反応器が含まれる。
【0014】
連続流反応器の場合には、本明細書では、用語「滞留時間」は、反応器内で反応に関与する種々の反応物の混合及び反応から開始して反応後に反応器から出るまでの期間を指す。滞留時間は以下の方法によって計算することができる。
【0015】
滞留時間Tは、以下のように計算される。
【数1】

式中、T-滞留時間、秒(複数可);
V-反応器の全容量、mL;
Q-反応材料の総容量流速、mL/分;
-各反応材料の質量流速、g/分;
ρ-各反応材料の密度、g/mL。
【0016】
本明細書では、用語「アミノ保護基」は、アミノ基中の窒素原子に結合してアミノ基を反応に関与することから保護することができ、その後の反応において容易に除去することができる基を指す。適切なアミノ保護基としては、以下の保護基が挙げられるが、これらに限定されない:式-C(O)O-R(式中、Rは、例えば、メチル、エチル、tert-ブチル、ベンジル、フェニルエチル、CH=CH-CH-などである)の基;式-C(O)-R’(式中、R’は、例えば、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメチルなどである)の基;式-SO-R’’(式中、R’’は、例えば、トリル、フェニル、トリフルオロメチル、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-イル-、2,3,6-トリメチル-4-メトキシベンゼンなどである)の基;式-CR’’’H-C(O)O-R(式中、R’’’は、例えば、-CHCHCl、-CHCl、-CHCHCHClなどである)の基。
【0017】
本明細書で使用されている用語「式(I)のグルホシネート又はその類似体」には、式(I)で表される構造の全てのキラル形態及び式(I)で表される構造の全ての塩形態が含まれる。
【0018】
本出願では、連続供給の場合には、化合物間のモル比、例えば式(II)の化合物と式(V)の化合物とのモル比、及び式(III)の化合物と式(IV)の化合物とのモル比は、添加材料のモル流速比、すなわち、単位時間当たりの2つの物質のモル流速の比を計算することによって得られる。モル流速比は、各物質の濃度(モル単位)とその流速を掛け算し、次に得られた2つの値の比を決定することによって、当業者によって計算することができる。例えば、式(II)の化合物が1mmol/mLの濃度で溶液中に存在し、1mL/分の流量で供給され、且つ式(V)の化合物が2mmol/mLの濃度で溶液中に存在し、2mL/分の流量で供給される場合、式(II)の化合物と式(V)の化合物とのモル比は1:4である。
【0019】
本出願では、モル比が塩基に関連する場合、塩基のモルは、塩基性当量のモルと考えられる。例えば、塩基がBa(OH)であり、1mmol/mLの濃度で溶液中に存在し、1mL/分の流量で供給され、且つ式(II)の化合物が1mmol/mLの濃度で溶液中に存在し、1mL/分の流量で供給される場合、塩基と式(II)の化合物とのモル比は2:1である。
【0020】
第1の態様の方法
第1の態様の方法の工程a)
第1の態様の方法の工程a)では、式(II)の化合物及び式(V)の化合物は、第1の反応器セットに供給され、反応後、第1の反応器セットの生成物流が得られ、ここで、供給は好ましくは連続供給である。
【化6】
【0021】
工程a)では、式(V)の化合物と式(II)の化合物とのモル比は、1:(0.8~10)、例えば、1:(1~3)、例えば1:0.9、1:1.0、1:1.2、1:1.5、1:1.7、1:2.0、1:2.2、1:2.5、1:2.7、1:3.0、1:3.2、1:3.5、1:3.7、1:4.0、1:4.2、1:4.5、1:4.7、1:5.0、1:5.2、1:5.5、1:5.7、1:6.0、1:6.2、1:6.5、1:6.7、1:7.0、1:7.2、1:7.5、1:7.7、1:8.0、1:8.2、1:8.5、1:8.7、1:9.0、1:9.2、1:9.5、1:9.7であってもよい。
【0022】
連続供給する場合、第1の反応器セット内の2つの反応が完了した後、第1の反応器セットから継続的に流出する限り、式(II)の化合物及び式(V)の化合物は、同時に第1の反応器セットに供給してもよく、又は式(II)の化合物及び/若しくは式(V)の化合物は、それぞれ異なる時点及び/若しくは異なる供給部位で少しずつ第1の反応器セットに供給してもよい。
【0023】
工程a)の反応は、広い温度範囲、例えば、-50℃~200℃、例えば、-20℃~20℃の範囲、例えば-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、-5℃、0℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、195℃で実施することができる。
【0024】
式(II)及び(V)の化合物は、任意選択で予冷又は予熱してから第1の反応器セットに入れてもよく、それによって式(II)及び(V)の化合物の流れが工程a)の反応温度に近い又は等しい温度に冷却又は加熱される。予冷又は予熱デバイスとして当技術分野で公知のどんな冷却又は加熱デバイスを使用してもよい。
【0025】
工程a)の反応時間は、広い範囲、例えば、1秒~5時間の範囲、例えば1秒、2秒、5秒、7秒、8秒、9秒、10秒、13秒、15秒、18秒、20秒、23秒、25秒、28秒、30秒、33秒、35秒、38秒、40秒、43秒、45秒、48秒、50秒、53秒、55秒、58秒、1分、1.3分、1.5分、1.8分、2.0分、2.3分、2.5分、2.8分、3.0分、3.3分、3.5分、3.8分、4分、4.5分、5分、5.5分、6.0分、6.5分、7.0分、7.5分、8.0分、8.5分、9.0分、9.5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、4.5時間に調整することができる。
【0026】
マイクロチャンネル反応器、管型反応器又は管状充填反応器などの連続流反応器の場合、反応時間は滞留時間になることがある。
【0027】
特に、工程a)の第1の反応器セットがマイクロチャンネル反応器からなる場合、反応時間は、1~300秒、例えば、1~30秒の範囲、例えば1秒、2秒、5秒、7秒、8秒、9秒、10秒、13秒、15秒、18秒、20秒、23秒、25秒、28秒、30秒、33秒、35秒、38秒、40秒、43秒、45秒、48秒、50秒、53秒、55秒、58秒、60秒、65秒、70秒、75秒、80秒、85秒、90秒、95秒、100秒、110秒、120秒、150秒、170秒、190秒、200秒、210秒、220秒、250秒、270秒、290秒、295秒に調整することができる。
【0028】
工程a)は、溶媒なしで実施してもよく、また不活性溶媒中で実施してもよく、例えば、反応物をそれぞれ不活性溶媒に溶解させる。不活性溶媒は、工程a)の進行に悪影響を与えない限り特に限定されない。例えば、工程a)で使用できる不活性溶媒は、1種又は複数のベンゼン溶媒、アミド溶媒、炭化水素溶媒、ハロ炭化水素溶媒、スルホン又はスルホキシド溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒から選択でき;好ましくは、不活性溶媒は、1種又は複数のクロロベンゼン、トリメチルベンゼン、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、石油エーテル、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、及び酢酸ブチルから選択される。
【0029】
塩基は、工程a)の反応の開始時、反応中及び/又は反応後に添加して、生成した酸性物質を中和することができる。塩基を添加するタイミングは、生成した酸性物質を中和することができ、プロセスの進行に悪影響を与えない限り、特に限定されない。例えば、塩基は、種々の反応物と同時に第1の反応器セットに添加してもよく、また反応中に第1の反応器セットに添加してもよく、或いは工程a)の反応完了後に第1グループの反応器内又は別の容器若しくは反応器内での中和のために使用してもよい。塩基は、連続的又は断続的な方法で添加してもよく、例えば、アンモニアガスは連続的に添加される。
【0030】
工程a)で使用される塩基は、ハロゲン化水素を吸収するために有機塩基又はアンモニア(アンモニアガス)であってもよい。有機塩基は、好ましくは有機アミン、例えばトリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ピリジン、又は複素環の1個又は複数の炭素原子と結合した1~3個の置換基を有するピリジン誘導体、ピペリジン、又は複素環の1個又は複数の炭素原子と結合した1~3個の置換基を有するピペリジン誘導体から選択される。
【0031】
工程a)で使用されている塩基と式(II)の化合物とのモル比は、生成したハロゲン化水素を中和するために、(0.8~10):1、例えば、1より大きい:1、例として(1~2):1であってもよく、例えば0.9:1、1:1、1.5:1、2.0:1、2.5:1、3.0:1、3.5:1、4.0:1、4.5:1、5.0:1、5.5:1、6.0:1、6.5:1、7.0:1、7.5:1、8.0:1、8.5:1、9.0:1、9.5:1であってもよい。
【0032】
工程a)では、式(II)及び(V)の化合物中のHal及びHal基は、それぞれ独立してハロゲン、例えばF、Cl、Br、Iである。
【0033】
例えば、式(II)の化合物の具体例は:
CH-P(Cl)-OCHCH
CH-P(Br)-OCHCH
CH-P(F)-OCHCH
CHCH-P(Cl)-OCHCH
CHCH-P(Br)-OCHCH
CHCH-P(F)-OCHCH
CH-P(Cl)-OCHCHCH
CH-P(Br)-OCHCHCH
CH-P(F)-OCHCHCH
CH-P(Cl)-OCHCHCHCH
CH-P(Br)-OCHCHCHCH
CH-P(F)-OCHCHCHCH
CH-P(Cl)-OCH(CH)CH
CH-P(Br)-OCH(CH)CH、又は
CH-P(F)-OCH(CH)CH
であってもよいが、これらに限定されない。
【0034】
例えば、式(V)の化合物の具体例は:
【化7】

であってもよいが、これらに限定されない。
【0035】
工程a)の第1の反応器セットは、1つ又は複数の反応器からなっていてもよく、例えば1つの反応器からなっていてもよく、又は2つ、3つ、4つ、5つ以上の反応器からなっていてもよい。本明細書における反応器のタイプは、生成が連続方式で実施できる限り、特に限定されない。例えば、本明細書で使用される反応器は、マイクロチャンネル反応器、撹拌タンク型反応器、管型反応器及び管状充填反応器から選択することができる。例えば、第1の反応器セットは、1つ又は複数のマイクロチャンネル反応器からなる。
【0036】
第1の反応器セットがただ1つの反応器からなる場合、反応器セットは、1つのマイクロチャンネル反応モジュール(本明細書で1つのマイクロチャンネル反応器とも呼ばれる)、1つの撹拌タンク型反応器、1つの管型反応器又は1つの管状充填反応器であってもよい。
【0037】
第1の反応器セットが2つ以上の反応器からなる場合、反応器セットは、並列又は直列に接続された1つのタイプの反応器、例えば、並列又は直列に接続された2つ、3つ、4つ、5つ以上のマイクロチャンネル反応モジュール(又はマイクロチャンネル反応器)、並列又は直列に接続された2つ、3つ、4つ、5つ以上の撹拌タンク型反応器、管型反応器又は管状充填反応器によって形成され得;反応器セットはまた、並列又は直列に接続された異なるタイプの反応器、例えば、並列又は直列に接続されたマイクロチャンネル反応モジュール及び管型反応器によって形成され得る。プロセス操作の利便性の観点から、並列若しくは直列に接続された1つのタイプの反応器、例えば、並列若しくは直列に接続された2つ、3つ、4つ、5つ以上のマイクロチャンネル反応モジュール、又は並列若しくは直列に接続された2つ、3つ、4つ、5つ以上の管型反応器を選択することができる。種々の反応器の反応条件は、本明細書に記載された反応条件内に収まる限り、同じでも異なっていてもよい。
【0038】
第1の反応器セットが直列の2つ以上の反応器からなる場合、工程a)の反応時間は、直列の全ての反応器を通過するのにかかる時間として計算される。例えば、直列の2つ以上の連続流反応器を使用する場合、工程a)の反応時間(すなわち、滞留時間)は、直列の全ての連続流反応器を通過するのにかかる時間として計算される。
【0039】
第1の反応器セットが並列の2つ以上の反応器からなる場合、各平行線の反応時間(又は滞留時間)がそれぞれ計算され、各平行線の反応時間(又は滞留時間)は上記範囲を満たす。
【0040】
工程a)では、「第1の反応器セットの生成物流」は、反応生成物(複数可)、未反応の反応物(複数可)、任意選択の溶媒(複数可)、任意選択の塩基(複数可)、中和反応によって生成された任意選択の塩(複数可)などを含む、第1の反応器セットから流出する流れ全体を指す。
【0041】
工程a)で得られた第1の反応器セットの生成物流は、式(VI)の化合物を含有していてもいなくてもよい:
【化8】

式(VI)の化合物の具体例は、例えば:Hal=Cl、X=エトキシ、R=メチル、及びR=エチル;又はHal=Cl、X=プロポキシ、R=メチル、及びR=エチル;又はHal=Cl、X=イソプロポキシ、R=メチル、及びR=エチル;又はHal=Cl、X=イソプロポキシ、R=メチル、及びR=プロピル
であり得るが、これらに限定されない。
【0042】
第1の態様の方法の工程b)
第1の態様の方法の工程b)では、第1の反応器セットの生成物流は、第2の反応器セットに供給され、50℃~200℃の範囲の温度で反応して、第2の反応器セットの生成物流が得られ、ここで、供給は好ましくは連続供給である。
【0043】
工程b)の目的は、第1の反応器セットの生成物流を比較的高温で一定期間維持することである。発明者らは、第1の反応器セットの生成物流中の化合物がこの工程で転位し、所望の生成物が得られると推測している。
【0044】
第1の反応器セットの生成物流は、工程b)の前に予冷又は予熱してもよく、それによってその生成物流が工程b)の反応温度に近い又は等しい温度に冷却又は加熱される。予冷又は予熱デバイスとして当技術分野で公知のどんな冷却又は加熱デバイスを使用してもよい。
【0045】
工程b)に入る第1の反応器セットの生成物流は、好ましくは第1の反応器セットから流出する流れと同じである。しかしながら、工程a)とb)の間で少量の溶媒を除去すること又は追加の溶媒を添加することも本発明の範囲に含まれる。
【0046】
工程b)は、溶媒なしで実施することができ、また不活性溶媒中で実施することもできる。工程a)で不活性溶媒が使用されない場合、不活性溶媒は工程b)で添加してもよく、上記の工程a)における不活性溶媒の説明は、工程b)の不活性溶媒の定義及び選択に適用される。不活性溶媒が工程a)で使用される場合、工程a)の不活性溶媒は、工程b)で使用が継続され、好ましくは工程b)では追加の不活性溶媒は添加されない。
【0047】
上記の工程a)における第1の反応器セットの説明は、工程b)の第2の反応器セットの定義及び選択範囲に適用される。しかしながら、工程a)の第1の反応器セットと工程b)の第2の反応器セットは、同じでも異なっていてもよい。例えば、第2の反応器セットは、1つ若しくは複数のマイクロチャンネル反応器又は1つ若しくは複数の撹拌タンク型反応器からなり得る。
【0048】
工程b)の温度は、50~200℃の範囲、例えば55℃、65℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、195℃であってもよい。
【0049】
工程b)の反応時間は、生成効果の観点から反応が実質的に完了する限り、特に限定されない。例えば、工程b)の反応時間は、1時間~30時間の範囲、例えば1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間であってもよい。マイクロチャンネル反応器、管型反応器又は管状充填反応器などの連続流反応器の場合、反応時間は滞留時間になることがある。
【0050】
反応温度及び時間は、使用する反応器のタイプに基づいて上記範囲内で状況に応じて調整してもよい。
【0051】
工程b)では、「第2の反応器セットの生成物流」は、反応生成物(複数可)、未反応の反応物(複数可)、任意選択の溶媒(複数可)、任意選択の塩基(複数可)、中和反応によって生成された任意選択の塩(複数可)などを含む、第2の反応器セットから流出する流れ全体を指す。
【0052】
工程b)で得られた第2の反応器セットの生成物流は、式(VII)の化合物を含有していてもいなくてもよい:
【化9】

式(VII)の化合物の具体例は、例えば:R=メチル及びX=エトキシ、又はR=メチル及びX=プロポキシ;又はR=メチル及びX=イソプロポキシ
であり得るが、これらに限定されない。
【0053】
第1の態様の方法の工程c)
第1の態様の方法の工程c)では、第2の反応器セットの生成物流を酸性加水分解又は塩基性加水分解に供する。
【0054】
工程c)に入る第2の反応器セットの生成物流は、好ましくは第2の反応器セットから流出する流れと同じである。しかしながら、工程b)とc)の間で少量の溶媒を除去すること又は追加の溶媒を添加することも本発明の範囲に含まれる。
【0055】
工程c)の反応器は特に限定されておらず、工程c)は、第2の反応器セットで実施することができ、また新しい追加の1つ又は複数の反応器で実施してもよい。当技術分野で酸性加水分解又は塩基性加水分解に使用されている従来の反応器は、本発明で使用することができる。
【0056】
第2の反応器セットの生成物流は、工程c)の前に予冷又は予熱してもよく、それによってその生成物流が工程c)の反応温度に近い又は等しい温度に冷却又は加熱される。予冷又は予熱デバイスとして当技術分野で公知のどんな冷却又は加熱デバイスを使用してもよい。
【0057】
工程c)の酸性加水分解は、無機又は有機酸、例えば、塩酸又は硫酸を使用して実施することができる。工程c)の塩基性加水分解は、無機又は有機塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ土類金属重炭酸塩、例えばNaOH、KOH又はBa(OH)を使用して実施することができる。
【0058】
工程c)の反応温度は、20~150℃の範囲、例えば25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃であってもよい。
【0059】
工程c)の反応時間は、生成効果の観点から加水分解が実質的に完了する限り、特に限定されない。例えば、工程c)の加水分解時間は、2~24時間の範囲、例えば3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間であってもよい。マイクロチャンネル反応器、管型反応器又は管状充填反応器などの連続流反応器の場合、反応時間は滞留時間になることがある。
【0060】
式(V)の化合物中のPGがアミノ保護基である場合、当該アミノ保護基を除去する工程をさらに含む。当技術分野でアミノ保護基を除去するために一般的に使用される方法は、本発明で使用することができる。
【0061】
第2の態様の方法
第2の態様の方法の工程a
第2の態様の方法の工程a)では、式(III)及び式(IV)の化合物は、A反応器セットに供給され、反応後、A反応器セットの生成物流が得られ、ここで、供給は好ましくは連続供給である。
【化10】
【0062】
工程a)では、反応が以下のように実施されることが理論的に想定される:
【化11】

工程a)では、式(III)の化合物と式(IV)の化合物とのモル比は、1.5:1~1:1.5、例えば1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4である。
【0063】
工程a)は、広い温度範囲、例えば、-50℃~100℃、例えば、-20℃~20℃の範囲、例えば-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、-5℃、0℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃で実施することができる。
【0064】
式(III)及び(IV)の化合物は、任意選択で予冷又は予熱してからA反応器セットに入れてもよく、それによって式(III)及び(IV)の化合物の流れが工程a)の反応温度に近い又は等しい温度に冷却又は加熱される。予冷又は予熱デバイスとして当技術分野で公知のどんな冷却又は加熱デバイスを使用してもよい。
【0065】
工程a)の反応時間は、広い範囲、例えば、1秒~10時間の範囲、例えば3秒、4秒、5秒、7秒、8秒、10秒、13秒、15秒、18秒、20秒、23秒、25秒、28秒、30秒、33秒、35秒、38秒、40秒、43秒、45秒、48秒、50秒、53秒、55秒、58秒、1分、1.3分、1.5分、1.8分、2.0分、2.3分、2.5分、2.8分、3.0分、3.3分、3.5分、3.8分、4分、4.5分、5分、5.5分、6.0分、6.5分、7.0分、7.5分、8.0分、8.5分、9.0分、9.5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、4.5時間、5.0時間、5.5時間、6.0時間、6.5時間、7.0時間、7.5時間、8.0時間、8.5時間、9.0時間、9.5時間に調整することができる。
【0066】
特に、工程a)のA反応器セットがマイクロチャンネル反応器からなる場合、反応時間は、1~300秒、例えば、1~30秒、例えば1秒、2秒、5秒、7秒、8秒、9秒、10秒、13秒、15秒、18秒、20秒、23秒、25秒、28秒、30秒、33秒、35秒、38秒、40秒、43秒、45秒、48秒、50秒、53秒、55秒、58秒、60秒、65秒、70秒、75秒、80秒、85秒、90秒、95秒、100秒、110秒、120秒、150秒、170秒、190秒、200秒、210秒、220秒、250秒、270秒、290秒、295秒に調整することができる。
【0067】
マイクロチャンネル反応器、管型反応器又は管状充填反応器などの連続流反応器の場合、反応時間は滞留時間になることがある。
【0068】
工程a)は、溶媒なしで実施することができ、また不活性溶媒中で実施することもできる。第1の態様の方法の工程a)における不活性溶媒の説明は、工程a)の不活性溶媒の定義及び選択に適用される。
【0069】
第1の態様の方法の工程a)における第1の反応器セットの説明は、工程a)のA反応器セットの定義及び選択範囲に適用される。A反応器セットは、好ましくは直列又は並列の1つ又は複数の連続流反応器、例えばマイクロチャンネル反応器、管型反応器又は管状充填反応器からなる。
【0070】
工程a)では、式(III)の化合物中のHal基は、ハロゲン、例えばF、Cl、Br、Iである。
【0071】
式(III)及び(IV)の化合物では、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換ヒドロカルビル基、例えば置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アリール基、置換又は非置換シクロアルキル基、置換又は非置換アルカリール基、及び置換又は非置換アラルキル基から選択され;例えば、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換C~Cアルキル基、置換又は非置換C~C12アリール基、置換又は非置換C~C10シクロアルキル基、置換又は非置換C~C12アルカリール基、及び置換又は非置換C~C12アラルキル基から選択され;例えば、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルプロピル、メチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニルから選択される。好ましくは、R=Rである。好ましくは、R=Rである。
【0072】
例えば、式(III)の化合物の具体例は、CH-PCl、CH-PBr、CH-PF、CHCH-PCl、CHCH-PBr、CHCH-PFであってもよいが、これらに限定されない。
【0073】
例えば、式(IV)の化合物の具体例は:
CHCHO-P(CH)-OCHCH
CHCHCHO-P(CH)-OCHCHCH
CHCHCHCHO-P(CH)-OCHCHCHCH
CH(CH)CHO-P(CH)-OCH(CH)CH
CH(CH)CHCHO-P(CH)-OCHCH(CH)CH
CHCHO-P(CHCH)-OCHCH
CHCHCHO-P(CHCH)-OCHCHCH
CHCHCHCHO-P(CHCH)-OCHCHCHCH
CH(CH)CHO-P(CHCH)-OCH(CH)CH、又は
CH(CH)CHCHO-P(CHCH)-OCHCH(CH)CH
であってもよいが、これらに限定されない。
【0074】
工程a)では、「A反応器セットの生成物流」は、反応生成物(複数可)、未反応の反応物(複数可)、任意選択の溶媒(複数可)などを含む、A反応器セットから流出する流れ全体を指す。
【0075】
第2の態様の方法の工程a)
第2の態様の方法の工程a)では、A反応器セットの生成物流及び式(V)の化合物は、第1の反応器セットに供給され、反応後、第1の反応器セットの生成物流が得られ、ここで、供給は好ましくは連続供給である。
【化12】
【0076】
工程a)に入るA反応器セットの生成物流は、好ましくはA反応器セットから流出する流れと同じである。しかしながら、工程a)とa)の間で少量の溶媒を除去すること又は追加の溶媒を添加することも本発明の範囲に含まれる。
【0077】
第2の態様の方法の工程a)では、式(V)の化合物と、A反応器セットの生成物流中のPに換算したP含有化合物の総モル量とのモル比は、1:(0.8~10)、例えば1:(1~3)であり、例えば1:0.9、1:1.0、1:1.2、1:1.5、1:1.7、1:2.0、1:2.2、1:2.5、1:2.7、1:3.0、1:3.2、1:3.5、1:3.7、1:4.0、1:4.2、1:4.5、1:4.7、1:5.0、1:5.2、1:5.5、1:5.7、1:6.0、1:6.2、1:6.5、1:6.7、1:7.0、1:7.2、1:7.5、1:7.7、1:8.0、1:8.2、1:8.5、1:8.7、1:9.0、1:9.2、1:9.5、1:9.7である。
【0078】
連続供給する場合、第1の反応器セット内の2つの反応が完了した後、第1の反応器セットから継続的に流出する限り、A反応器セットの生成物流及び式(V)の化合物は、同時に第1の反応器セットに供給してもよく、またA反応器セットの生成物流及び/又は式(V)の化合物は、それぞれ異なる時点及び/又は異なる供給部位で少しずつ第1の反応器セットに供給してもよい。
【0079】
反応器セットの生成物流及び式(V)の化合物は、任意選択で予冷又は予熱してから第1の反応器セットに入れてもよく、それによってA反応器セットの生成物流及び式(V)の化合物の流れが工程a)の反応温度に近い又は等しい温度に冷却又は加熱される。予冷又は予熱デバイスとして当技術分野で公知のどんな冷却又は加熱デバイスを使用してもよい。
【0080】
工程a)で使用されている塩基と、A反応器セットの生成物流中のPに換算したP含有化合物の総モル量とのモル比は、生成したハロゲン化水素を中和するために、(0.8~10):1、例えば、1より大きい:1、例として(1~2):1、例えば0.9:1、1:1、1.5:1、2.0:1、2.5:1、3.0:1、3.5:1、4.0:1、4.5:1、5.0:1、5.5:1、6.0:1、6.5:1、7.0:1、7.5:1、8.0:1、8.5:1、9.0:1、9.5:1であってもよい。
【0081】
第2の態様の方法の工程a)は第1の態様の方法の工程a)に相当し、第1の態様の方法の工程a)の他の全ての説明は、第2の態様の方法の工程a)におけるA反応器セットの生成物流が第1の態様の方法の工程a)における式(II)の化合物と表現が異なることを除いて、第2の態様の方法の工程a)に適用可能である。
【0082】
第2の態様の方法の工程b)及びc)
第1の態様の方法の工程b)及びc)の全ての説明は、第2の態様の方法の工程b)及びc)に適用可能である。
【0083】
本発明の方法では、式(I)のグルホシネート又はその類似体は、L配置若しくはD配置又はL配置とD配置の混合物であってもよい。
【0084】
[実施例]
本発明の技術的解決手段は、具体例と併せて下記にさらに説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。実施例で使用される条件は、特定の要件に従ってさらに調整することができ、示されていない実施条件は従来の実験条件である。
【0085】
実施例A1:
【化13】

濃度25wt.%のメチルジクロロホスフィン(以下MDPと呼ぶ、密度:約1.2g/ml)のクロロベンゼン溶液及び濃度25wt.%のメチルジエトキシホスフィン(以下MDEPと呼ぶ、密度:約1.012g/ml)のクロロベンゼン溶液をそれぞれ調製した。
【0086】
反応プロセスの概略図を図1に示す。上記のMDP及びMDEP溶液を、それぞれ20g/分及び25.6g/分(モル比MDP:MDEP=1:1)の供給速度で並列の2つのマイクロチャンネル反応器(容量約8.5mL)に通過させ、10℃まで冷却した。次いでMDP及びMDEP溶液を別のマイクロチャンネル反応器(容量約8.5mL)に同時に供給し、10℃で反応させ、滞留時間は12秒であり、反応生成物であるクロロメチルエトキシホスフィン(以下MCPと呼ぶ)の生成を、核磁気を用いて検出した。
【0087】
1H NMR(D2O外部標準, 43 MHz) δ:3.92 - 2.96 (m, 2H), 1.31 (d, J = 12.8 Hz, 3H), 0.84 (t, J = 7.0 Hz, 3H).
【0088】
実施例B1~B11:L-グルホシネート塩酸塩の調製
濃度10wt.%のMDPのクロロベンゼン溶液、濃度10wt.%のMDEPのクロロベンゼン溶液、及び濃度10wt.%のHのクロロベンゼン溶液をそれぞれ調製した。
【化14】
【0089】
反応プロセスの概略図を図2に示す。上記のMDP及びMDEP溶液を、下記表2にそれぞれ示した速度で並列の2つのマイクロチャンネル反応器に通過させ、10℃まで冷却した。次いでMDP及びMDEP溶液を別のマイクロチャンネル反応器に同時に供給し、10℃で反応させたが、反応条件は下記表2に示しており、滞留時間はt1であった。次に、得られたMCP生成物流及び上記のH溶液を、下記表2に列挙した流速で直列の2つのマイクロチャンネル反応器の別のグループに供給したが、反応条件は下記表2に示しており、反応温度はTであり、滞留時間はt2であった。続いて、マイクロチャンネル反応器から流出した反応溶液をトリエチルアミン(TEA)で中和した。次に、得られた反応溶液を8時間の間90℃まで温め、次に100℃で塩酸を用いて加水分解して、L-グルホシネート塩酸塩を得た。
【0090】
反応溶液の絶対収率=液相外部標準法によって測定した反応液中の生成物の絶対質量/理論出力。
【0091】
分離収率=後処理結晶化によって得られた生成物の質量/理論出力。
【表1】
【0092】
実施例B1~B11で得られたL-グルホシネート塩酸塩の質量分析及び核磁気データは、以下の通りであった:
MS (ESI): m/z [M+H]+ C5H13NO4Pの計算値: 182.05; 実測値: 182.1.
1H NMR(D2O, 400 MHz) δ: 4.08 (t, J = 6.2 Hz, 1H),2.11 (dddd, J = 14.6, 11.0, 8.7, 6.0 Hz, 2H), 1.99 - 1.73 (m, 2H), 1.44 (d, J =14.2 Hz, 3H).
13C NMR(D2O, 100 MHz) δ: 171.0, 52.8, 52.6, 25.5,24.6, 22.6, 22.5, 13.9, 13.0.
31P NMR(D2O, 160 MHz) δ: 53.8.
【0093】
実施例C1:L-グルホシネート塩酸塩の調製
濃度20wt.%のMDPのクロロベンゼン溶液、濃度20wt.%のMDEPのクロロベンゼン溶液、並びに濃度20wt.%のHのクロロベンゼン及びトリエチルアミン溶液をそれぞれ調製した。
【0094】
反応プロセスの概略図を図3に示す。上記のMDP及びMDEP溶液を、下記表3にそれぞれ示した速度で並列の2つのマイクロチャンネル反応器に通過させ、10℃まで冷却した。次いでMDP及びMDEP溶液を別のマイクロチャンネル反応器に同時に供給し、10℃で反応させたが、反応条件は下記表3に示しており、滞留時間はt1であった。次に、得られたMCP生成物流及び上記のH溶液を、下記表3に列挙した流速で管型反応器に供給したが、反応条件は下記表3に示しており、反応温度は0℃であり、滞留時間はt2であった。続いて、管型反応器から流出した反応溶液を8時間の間90℃まで温め、次に100℃で塩酸を用いて加水分解して、L-グルホシネート塩酸塩を得た。
【0095】
【表2】
【0096】
実施例D1~D6:L-グルホシネート塩酸塩の調製
濃度10wt.%のMDPのジクロロエタン溶液、濃度10wt.%のMDEPのジクロロエタン溶液、及び濃度10wt.%のHのジクロロエタン溶液をそれぞれ調製した。
【0097】
反応プロセスの概略図を図4に示す。MDP及びMDEP溶液を、下記表4にそれぞれ示した速度で並列の2つのマイクロチャンネル反応器に通過させ、10℃まで冷却した。次いでMDP及びMDEP溶液を別のマイクロチャンネル反応器に同時に供給し、10℃で反応させたが、反応条件は下記表4に示しており、滞留時間はt1であった。次いで得られたMCP生成物流及び上記のH溶液を、下記表4に列挙した流速で直列の2つのマイクロチャンネル反応器の別のグループの第1のマイクロチャンネル反応器に供給した(反応温度はT1であった)。第1のマイクロチャンネル反応器から流出した流れを、アンモニアガスと一緒に第2のマイクロチャンネル反応器に供給し(反応温度はT2であった)、反応条件は下記表4に示している。続いて、マイクロチャンネル反応器から流出した反応溶液を8時間の間90℃まで温め、次に100℃で塩酸を用いて加水分解して、L-グルホシネート塩酸塩を得た。
【0098】
【表3】
【0099】
実施例E1~E10:L-グルホシネート塩酸塩の調製
方法は、溶媒としてジクロロエタンをクロロベンゼンと置き換えたことを除いて、実施例D1~D6のものと同じであった。
【0100】
【表4】
【0101】
実施例E801~E808
方法は、第2のマイクロチャンネル反応器後、マイクロチャンネル反応器から流出した反応溶液を、表5-1に示す時間、表5-1に示す温度に温め、次に100℃で塩酸を用いて加水分解して、L-グルホシネート塩酸塩を得たことを除いて、表5の実施例8のものと同じであった。
【0102】
【表5】
【0103】
実施例F1~F2:L-グルホシネート塩酸塩の調製
方法は、Hを:
【化15】

と置き換えたことを除いて、実施例E8と同じであった。
【0104】
実施例F1及びF2の生成物の分離収率は、それぞれ52%及び66%であった。
【0105】
実施例G1~G2:L-グルホシネート塩酸塩の調製
濃度10wt.%のMCPのクロロベンゼン溶液及び濃度10wt.%のHのクロロベンゼン溶液を調製した。
【0106】
反応プロセスの概略図を図5に示す。上記のMCP溶液及び上記のH溶液の一部分を、下記表6に列挙した流速でマイクロチャンネル反応器に供給し、反応させたが、反応条件は下記表6に示しており、反応温度はTであり、滞留時間はt1であった。続いて、得られた反応溶液及びH溶液の他の部分を、直列の1つのマイクロチャンネル反応器の次のグループに供給し、下記表6に示した条件下で反応させ、滞留時間はt2であった。次に得られた反応溶液を、中和のためにアンモニアガスと一緒に直列の1つのマイクロチャンネル反応器の次のグループに供給した。次に、マイクロチャンネル反応器から流出した反応溶液を8時間の間90℃まで温め、次に100℃で塩酸を用いて加水分解して、L-グルホシネート塩酸塩を得た。
【0107】
【表6】

図1
図2
図3
図4
図5