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  • 特許-通信端末用の押しボタンスイッチ構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】通信端末用の押しボタンスイッチ構造
(51)【国際特許分類】
   H01H 21/00 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
H01H21/00 330B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020166006
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057641
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】皆川 博昭
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-076626(JP,A)
【文献】実開平01-129737(JP,U)
【文献】特開2004-179121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 19/00 - 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末用の押しボタンスイッチ構造にあって、
通信端末の筐体と、
前記通信端末のスイッチを押圧操作するためのボタンと、
前記ボタンを軸支する弾性部材と、
前記通信端末のスイッチ及び電子部品が搭載された基板と、を備え、
前記ボタンに設けたヒンジ部を前記筐体と前記弾性部材とで挟み込んで支持し、
前記弾性部材は、前記ボタンのヒンジ部を支持する軸受部を有し、前記軸受部の上面は半円弧状に形成されており、
前記ヒンジ部が片持ちシーソーとなって前記ボタンが前記弾性部材を介して前記スイッチを押すようにしたことを特徴とする通信端末用の押しボタンスイッチ構造。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記ボタンの裏面側を弾性付勢する支柱と、を有し、
前記筐体は、前記ボタンのヒンジ部を挿通する開口と、前記支柱を挿通する支柱孔と、前記ボタンのスイッチ押し部を挿通するスイッチ押し孔と、を有し、
前記弾性部材は、前記筐体と前記基板との間に挟み込み固定されていることを特徴とする請求項1記載の通信端末用の押しボタンスイッチ構造。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記基板に当接される面と、前記基板に搭載された電子部品との干渉を避けるための部品逃げ凹部とを有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の通信端末用の押しボタンスイッチ構造。
【請求項4】
通信端末用の押しボタンスイッチ構造にあって、
通信端末の筐体と、
前記通信端末のスイッチを押圧操作するためのボタンと、
前記ボタンを軸支する弾性部材と、
前記通信端末のスイッチ及び電子部品が搭載された基板と、を備え、
前記ボタンに設けたヒンジ部を前記筐体と前記弾性部材とで挟み込んで支持し、
前記ヒンジ部が片持ちシーソーとなって前記ボタンが前記弾性部材を介して前記スイッチを押し、
前記弾性部材は、前記ボタンのヒンジ部を支持する軸受部と、前記ボタンの裏面側を弾性付勢する支柱と、を有し、
前記筐体は、前記ボタンのヒンジ部を挿通する開口と、前記支柱を挿通する支柱孔と、前記ボタンのスイッチ押し部を挿通するスイッチ押し孔と、を有し、
前記弾性部材は、前記筐体と前記基板との間に挟み込み固定されていることを特徴とする通信端末用の押しボタンスイッチ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末用のPTT(Push to Talk)ボタン等に用いられる押しボタンスイッチ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の押しボタンスイッチ構造において、PTTボタンをトップケースにネジで固定する製品や、ボタンの軸をケースにヒンジ構造にしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4443950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記前者の製品にあっては、ネジ固定部の腕部が必要で寸法的な制約が大きいし、PTTボタンのネジ固定側を押すと固定部にストレスがかかり折れやすいし、ストロークを確保しにくい。後者のヒンジ構造にあっても、ネジ固定と同様にストロークの確保が難しく、押圧が高いと、ヒンジを破損する恐れが有る。また、スピーカを備えている通信端末にあって高音量時に樹脂製のPTTボタンが振動し、樹脂ケースとの間でビビリを発生する懸念があり、ビビリを抑えるためにケースとの嵌合寸法を詰めたとしても、樹脂と樹脂が触れ合いビビリが生じ易い。また、一般にPTTボタンは幅広なサイズであるため、ボタンの操作性(どこを押しても動作しなければならない)が要請される。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであり、固定部にストレスがかかり難いものとし、ガタツキやビビリも抑制でき、ボタンの操作性が良く、ストロークも確保できる通信端末用の押しボタンスイッチ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、通信端末用の押しボタンスイッチ構造にあって、
通信端末の筐体と、
前記通信端末のスイッチを押圧操作するためのボタンと、
前記ボタンを軸支する弾性部材と、
前記通信端末のスイッチ及び電子部品が搭載された基板と、を備え、
前記ボタンに設けたヒンジ部を前記筐体と前記弾性部材とで挟み込んで支持し、
前記弾性部材は、前記ボタンのヒンジ部を支持する軸受部を有し、前記軸受部の上面は半円弧状に形成されており、
前記ヒンジ部が片持ちシーソーとなって前記ボタンが前記弾性部材を介して前記スイッチを押すようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
上記において、前記弾性部材は、前記ボタンのヒンジ部を支持する軸受部と、前記ボタンの裏面側を弾性付勢する支柱と、を有し、
前記筐体は、前記ボタンのヒンジ部を挿通する開口と、前記支柱を挿通する支柱孔と、前記ボタンのスイッチ押し部を挿通するスイッチ押し孔と、を有し、
前記弾性部材は、前記筐体と前記基板との間に挟み込み固定されていてもよい。
【0008】
上記において、前記弾性部材は、前記基板に当接される面と、前記基板に搭載された電子部品との干渉を避けるための部品逃げ凹部とを有していてもよい。
【0009】
本発明は、通信端末用の押しボタンスイッチ構造にあって、
通信端末の筐体と、
前記通信端末のスイッチを押圧操作するためのボタンと、
前記ボタンを軸支する弾性部材と、
前記通信端末のスイッチ及び電子部品が搭載された基板と、を備え、
前記ボタンに設けたヒンジ部を前記筐体と前記弾性部材とで挟み込んで支持し、
前記ヒンジ部が片持ちシーソーとなって前記ボタンが前記弾性部材を介して前記スイッチを押し、
前記弾性部材は、前記ボタンのヒンジ部を支持する軸受部と、前記ボタンの裏面側を弾性付勢する支柱と、を有し、
前記筐体は、前記ボタンのヒンジ部を挿通する開口と、前記支柱を挿通する支柱孔と、前記ボタンのスイッチ押し部を挿通するスイッチ押し孔と、を有し、
前記弾性部材は、前記筐体と前記基板との間に挟み込み固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボタンを筐体と弾性部材で挟み込むことにより、ボタンをガタツキなく支持でき、ヒンジ部へのストレスの影響を受け難くなるとともにビビリを抑制でき、ボタンの操作性が向上し、また、比較的大きなストロークをも確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る押しボタンスイッチ構造を有した通信端末の斜視図。
図2】同通信端末を分解した状態の押しボタンスイッチ構造を示す斜視図。
図3】同押しボタンスイッチ構造を裏面側から見た斜視図。
図4】同押しボタンスイッチ構造においてボタンを筐体に組み込む様子を示す斜視図。
図5】(a)は同押しボタンスイッチ構造における弾性部材の上面斜視図、(b)はその背面斜視図。
図6】同押しボタンスイッチ構造の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る通信端末用の押しボタンスイッチ構造について図面を参照して説明する。図1は、一実施形態に係る押しボタンスイッチ構造を備えた通信端末1を示す。本明細書に記述した前後(前が手前側)、左右、及び上下の各方向は、矢印で図示した通りである。押しボタンスイッチ構造は、通信端末1の筐体2と、筐体2に内装された通信端末1のスイッチを押圧操作するためのボタン3と、筐体2内にあってボタン3を軸支する弾性部材4(図2他参照)と、スイッチや電子部品が搭載された基板5(図2他参照)と、を備える。
【0013】
ボタン3は、図示の後端側に回動支点となるヒンジ部があり、手前側が押し込まれて回動する片持ちシーソー構造となっている。ボタン3は、筐体2の上面に形成したボタン収納部21に配置されている。筐体2の上面には、通信端末1の状態を表示する表示灯11、内装のスピーカ14(図3参照)に対面したスピーカ孔12、内装のマイクに対面したマイク孔13等が設けられている。
【0014】
図2は押しボタンスイッチ構造を分解した状態を示し、図3図2の分解状態を裏面側から見た状態を示し、図4はボタン3を筐体2のボタン収納部21に組み込む様子を示す。これらの図において、ボタン3、弾性部材4、及び基板5は、各々矢印で示すように筐体2に対して挿入組み込まれる。筐体2の裏蓋は図示を省いている。筐体2やボタン3は主として樹脂成形品が用いられ、弾性部材4はゴム等の一体成型品が用いられる。ボタン3は、そのヒンジ部31を、ボタン収納部21の後方にある開口22を通して筐体2内に臨ませる。そのとき、ヒンジ部31は、筐体2の係止用爪23を乗り越えて抜け止めされる。
【0015】
そして、筐体2の内面には弾性部材4が固定されていて、ボタン3のヒンジ部31は、弾性部材4に設けられた軸受部41に軸支されることになる。図3に示した状態の筐体2の内面に弾性部材4が固定された状態において、基板5が弾性部材4を覆うように筐体2に固定される。これにより、弾性部材4は、筐体2と基板5との間に挟み込まれ、組付けされる。このような組付けにより、ボタン3は、そのヒンジ部31が筐体2と弾性部材4とで挟み込んで支持され、片持ちシーソーとなる。そして、ボタン3の裏面にあるスイッチ押し部32は、弾性部材4の凸状部42を介して基板5上のスイッチ51を押すことができる配置となる。
【0016】
このように、ボタン3のヒンジ部31を筐体2と弾性部材4で挟み込むようにしているので、ボタン3をガタツキなく支持でき、ヒンジ部31がストレスを受け難くなり、ビビリを抑制でき、ボタン3の操作性が向上し、また、従来に比し比較的大きなストロークを確保できる。
【0017】
次に各部材の詳細構成を説明する。筐体2は、ボタン収納部21に、ボタン3のヒンジ部31を挿通する開口22と、弾性部材4の支柱44を挿通する支柱孔27と、ボタン3のスイッチ押し部32を挿通するスイッチ押し孔26と、を有する。弾性部材4(その詳細は図5を用いて後述)は、ボタン3のヒンジ部31を支持する軸受部41のほかに、ボタン3の裏面側を弾性付勢する支柱44と、スイッチ51を覆うスイッチ凹部空間43を形成した凸状部42と、を有する。基板5は、その取付け用ネジ孔53と筐体2の基板固定ネジ穴28とを用いて筐体2にネジ固定される。
【0018】
かくして、弾性部材4は、筐体2と基板5との間に挟み込み固定される。この構成にあって、弾性部材4のヒンジ部31(軸受部)や支柱44の高さ寸法、硬度を調整することにより、ボタン3を適宜のテンションを付けて固定でき、ボタン3の押圧感の調整が容易にできるようになる。
【0019】
また、ボタン3のヒンジ部31は、左右方向に延びる円柱状部材で成り、弾性部材4の軸受部41は、左右方向に延びる立壁の上面が左右方向側面から見て樋(半円弧)状に形成されていて、柱状部材で成るヒンジ部31を軸支する。このようなヒンジ構成により、ボタン3が前後又は左右方向に傾いたとしても、それを柔軟に吸収可能となる。また、ボタン3の裏面の左右端部及び手前側左右位置に爪33を有し、筐体2のボタン収納部21に前記爪33の各々に対応したスリット24が設けられている。これら爪33がスリット24に嵌まり込むことでもって、ボタン3の抜け止めが成されている。
【0020】
また、筐体2の係止用爪23は、その根元部に形成した細溝でもって弾性を付与され、ボタン収納部21の平面から開口22に臨んで後端が膨出されている。この構成により、ボタン3のヒンジ部31が開口22内に挿入され係止用爪23を乗り越えると、ボタン3が筐体2から容易に外れないようにしている。
【0021】
図5(a)(b)は、本実施形態の弾性部材4の構成を示す。弾性部材4は、その裏面に、基板5に当接される基板当接面46と、基板5に搭載された電子部品52(複数が搭載されるが、図では代表して1つのみ示している)との干渉を避けるための部品逃げ凹部47とを有している。この構成により、弾性部材4を筐体2と基板5との間に挟み込み固定しながらも、省スペースで基板5を有効利用できる。
【0022】
さらに、弾性部材4は、筐体2の内面に対向する上面の周縁に周縁立壁45を有する。一方、図3に示したように、筐体2は、その内面に、筐体2の開口22、支柱孔27、スイッチ押し孔26、及びスリット24を内包する外周に周溝25を有している。この筐体2の周溝25に弾性部材4の周縁立壁45を嵌め込むことにより、弾性部材4は筐体2に固定されると同時に、止水部48(図6参照)を成して筐体2内を防沫構成としている。
【0023】
図6は、押しボタンスイッチ構造の要部断面を示す。上述したように、ボタン3のヒンジ部31は、筐体2と弾性部材4とで挟み込んで支持され、片持ちシーソー構成とされている。ボタン3が上方から押されると、支柱44の付勢力に抗してシーソー回動して、スイッチ押し部32が弾性部材4の凸状部42を介して基板5上のスイッチ51を押す。かくして、ヒンジ部31は、ストレスの影響を受け難くなり、ビビリを抑制できる。また、筐体2の周溝25に弾性部材4の周縁立壁45が嵌め込まれることにより、止水部48を構成しているので、ボタン3の防沫構成を実現できる。
【0024】
本実施形態においては、無造作にまた押しやすいようにボタン3が左右幅広に構成されていても動作に支障がないものとなり、また、弾性部材4としてシリコーンゴム等を用いてその弾性力でボタン3の脱落防止を図ることが容易となり、ボタン3のヒンジ部31(支持軸)が左右方向にも倒れることが可能となる。このため、大型のPTTボタンを有する製品や、インターホンのような卓上用通信端末製品に好適なものとなる。また、ボタン3が樹脂製であっても、その軸支のために弾性部材4を採用しているので、スピーカ内蔵機にあって高音量を出力しても、ボタン3の樹脂のビビリも抑止できる。
【0025】
本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、非防沫仕様の製品にも利用できる。また、ボタン3が大きい形態の場合には、スイッチ51(タクトスイッチ等)を複数個、分散配置したものであっても構わない。
【符号の説明】
【0026】
1 通信端末
11 表示灯
12 スピーカ孔
13 マイク孔
14 内装スピーカ
2 筐体
21 ボタン収納部
22 開口
23 係止用爪
24 スリット
25 周溝
26 スイッチ押し孔
27 支柱孔
28 基板固定ネジ穴
3 ボタン
31 ヒンジ部
32 スイッチ押し部
33 爪
4 弾性部材
41 軸受部
42 凸状部
43 スイッチ凹部空間
44 支柱
45 周縁立壁
46 基板当接面
47 部品逃げ凹部
48 止水部
5 基板
51 スイッチ
52 電子部品
53 取付け用ネジ孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6