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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】給油装置
(51)【国際特許分類】
   B67D 7/32 20100101AFI20240613BHJP
   B67D 7/54 20100101ALI20240613BHJP
【FI】
B67D7/32 C
B67D7/54
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022149723
(22)【出願日】2022-09-21
(65)【公開番号】P2024044289
(43)【公開日】2024-04-02
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚彦
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-116000(JP,A)
【文献】特開2012-076741(JP,A)
【文献】特開2002-128200(JP,A)
【文献】特開2000-079997(JP,A)
【文献】特開2000-103499(JP,A)
【文献】特開平10-024997(JP,A)
【文献】特開平04-352700(JP,A)
【文献】特開2000-083422(JP,A)
【文献】特公平06-069835(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 7/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンク内に挿入される吐出パイプと、該吐出パイプが接続され、該吐出パイプへの燃料油が流れる流路を有するノズル本体と、該流路を流れる燃料油の流量を制御する弁体とを備え、該弁体を付勢手段に抗して開くノズルレバーが前記ノズル本体の握り部に設けられる給油ノズル
前記ノズル本体における前記吐出パイプ接続する設けられるベーパ捕集手段と、
該ベーパ捕集手段に設けられる油種検出手段
該油種検出手段からの出力に基づいて油種を判別する油種判別手段を備え
前記ベーパ捕集手段は、前記吐出パイプ側に開口する固定部と、該固定部から前記ノズル本体までの間に位置する可動部とで構成され、前記固定部に油種検出手段が配設されていることを特徴とする給油装置。
【請求項2】
前記可動部は蛇腹状に形成され、該可動部における前記ノズル本体に対向する鍔部にベーパ排出口が穿設されることを特徴とする請求項1に記載の給油装置。
【請求項3】
前記ベーパ排出口を開閉する弁体を備え、該弁体は給油時に前記ベーパ排出口を開き、油種検出時に前記ベーパ排出口を閉じることを特徴とする請求項に記載の給油装置。
【請求項4】
前記油種検出手段を構成する油種センサは、前記ベーパ捕集手段の前記固定部に連通するベーパ吸入口を備えたセンサケース内に配設され、前記油種センサと前記吸入口との間にはフィルターが設けられることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の給油装置。
【請求項5】
前記センサケースの前面にスリットが形成されることを特徴とする請求項に記載の給油装置。
【請求項6】
前記ノズルレバーを保護するレバーガード内に前記油種判別手段を備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の給油装置。
【請求項7】
前記油種判別手段からの判別結果を報知する報知器を備えること特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の給油装置。
【請求項8】
前記油種検出手段、前記油種判別手段及び前記報知器を一体に備えること特徴とする請求項に記載の給油装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油種判別機能を有する給油ノズルを備えた給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料油には軽油とガソリンとがあり、使用すべき燃料油の種類を誤ると自動車のエンジンに重大な支障を来すことになる。このため、給油に先立って給油ノズルや給油装置本体に設けたエアポンプによって自動車の燃料タンク内の燃料油ベーパ(以下「ベーパ」という。)を油種センサまで吸引し、油種が一致した場合にのみ給油を許可する給油装置が実用化されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-352700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の給油ノズルは、自動車の燃料タンク内のベーパを油種センサに導くためのサンプリング機構を設けることで機器が大型化したり、次回の給油に備えて前記サンプリング機構内を掃気する管路切換え機構を設けることで構造が複雑化したりするおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、油種判別機能を有する給油ノズルを備えた給油装置において、油種判別機構の小型化及び単純化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は給油装置であって、車両の燃料タンク内に挿入される吐出パイプと、該吐出パイプが接続され、該吐出パイプへの燃料油が流れる流路を有するノズル本体と、該流路を流れる燃料油の流量を制御する弁体とを備え、該弁体を付勢手段に抗して開くノズルレバーが前記ノズル本体の握り部に設けられる給油ノズルと、前記ノズル本体における前記吐出パイプ接続する設けられるベーパ捕集手段と、該ベーパ捕集手段に設けられる油種検出手段、該油種検出手段からの出力に基づいて油種を判別する油種判別手段を備え、前記ベーパ捕集手段は、前記吐出パイプ側に開口する固定部と、該固定部から前記ノズル本体までの間に位置する可動部とで構成され、前記固定部に油種検出手段が配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ベーパ捕集手段によって自動車の燃料タンクからのベーパを捕集することで、燃料タンク内に滞留するベーパ濃度に基づいて確実に燃料油の種類を判別することができる。また、車両の給油口の直近に油種検出手段が設けられているため、検出速度が速く、油種判定に要する時間を短縮することができる。
【0009】
前記可動部を蛇腹状に形成し、該可動部における前記ノズル本体に対向する鍔部にベーパ排出口を穿設することで、給油時に燃料タンク内のベーパを排出することができる。
【0010】
上記給油装置は、前記ベーパ排出口を開閉する弁体を備え、該弁体は給油時に前記ベーパ排出口を開き、油種検出時に前記ベーパ排出口を閉じるように構成することで、車両の燃料タンク内の上部にあるベーパを効率よく排出して燃料油の供給を行うことができる。また、油種検出時は弁体が閉じているので、希薄なベーパ濃度でも正確に油種判定を行うことができる。
【0011】
前記油種検出手段を構成する油種センサを前記ベーパ捕集手段の前記固定部に連通するベーパ吸入口を備えたセンサケース内に配設し、前記油種センサと前記吸入口との間にフィルターを設けることで、ベーパはフィルターを通るが水は通らないため、油種検出手段を保護して誤検出を防止できる。
【0012】
前記センサケースの前面にスリットを形成することで、給油口から排出されるベーパが希釈されてしまうことがなく、正確にベーパ濃度を検出することができる。
【0013】
前記ノズルレバーを保護するレバーガード内に前記油種判別手段を備えることで、既存の給油装置の構造をそのまま利用できるので利便性を損なうことがない。
【0014】
また、前記油種判別手段からの判別結果を報知する報知器を備えることで、車両に給油するためにノズル掛けから外した給油ノズルが適切か否かが判る。
【0015】
さらに、前記油種検出手段、前記油種判別手段及び前記報知器を一体に設けることで、給油ノズルのレイアウトの自由化を図ることができると共に、保守時の取付け・取外しが容易となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、油種判別機能を有する給油ノズルを備えた給油装置において油種判別機構の小型化及び単純化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る給油装置の第1の実施形態における給油ノズルを示す全体斜視図である。
図2図1の給油ノズルの一部破断正面図である。
図3図1の給油ノズルのベーパ捕集手段を示す斜視図であって、(a)は非給油時、(b)は給油時を示す。
図4図1の給油ノズルのベーパ捕集手段及びその近傍を示す一部破断斜視図である。
図5】本発明に係る給油装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図6】本発明に係る給油装置の第2の実施形態における給油ノズルを示す一部破断全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る給油装置の第1の実施形態における給油ノズルを示し、この給油ノズル1は、車両の燃料タンク内に挿入される吐出パイプ2と、吐出パイプ2への燃料油が流れる流路(不図示)を有するノズル本体3と、ノズル本体3の内部の流路を流れる燃料油の流量を制御する弁体(不図示)と、ノズル本体3の握り部3aに設けられ、給油動作を行うため前記弁体を付勢手段(不図示)に抗して開くノズルレバー4と、ノズル本体3の吐出パイプ2を接続する部分に設けられるベーパ捕集手段5と、ベーパ捕集手段5の上部に設けられる油種検出手段6と、レバーガード7に設けられる油種判別手段8を備える。
【0020】
図2に示すように、吐出パイプ2は、ノズル本体3の左端に接続され、この接続部には、ベーパ捕集手段5の可動部(伸縮部)5bの右端部が固定される。
【0021】
ベーパ捕集手段5は、ゴム等の可撓性を有する材料からなり、吐出パイプ2側に開口する固定部5aと、この固定部5aからノズル本体3までの間に位置する蛇腹状の可動部5bとで構成され、可動部5bのノズル本体3に対向する鍔部5eにベーパ排出口5cが穿設される。ベーパ捕集手段5の内部を吐出パイプ2が挿通し、可動部5bは吐出パイプ2の延設方向に伸縮可能である。
【0022】
図3に示すように、ベーパ捕集手段5の可動部5bには、蛇腹を構成する各々の鍔部5eの周縁部から複数の弁体5dが突出し、図3(b)の給油時には弁体5dによってベーパ排出口5cが開き、図3(a)の非給油時には弁体5dによってベーパ排出口5cが閉じる。
【0023】
図1図2及び図4に示すように、ベーパ捕集手段5の固定部5aに油種検出手段6が配設されている。油種検出手段6は、ベーパ吸入口9aを有するセンサケース9の中に、フィルター10と、ガソリンを検出する油種センサ12と、油種センサ12が実装された基板13を備え、油種センサ12の出力は、基板13、通信線14を介して油種判別手段8に送信される。
【0024】
ベーパ吸引口9aが位置するセンサケース9にスリットが形成されている。このスリット(フロントスリット)11と油種センサ12との間にはベーパを通すが水を通さないフィルター10が設けられている。そのため、ベーパが希釈されることなく油種センサ12まで届くため正確にベーパ濃度を検出することができ、油種センサ12を水から保護して誤検出を防止することができる。
【0025】
油種判別手段8は、油種センサ12の出力に基づいて油種を判別する。油種センサ12はガソリン検出用のものであり、油種センサ12が所定濃度以上のガソリンを検出した場合には油種はガソリンであると判断し、それ以外の場合には油種は軽油であると判断する。油種判別手段8の出力は、給油装置(不図示)に配設された報知器に送られる。
【0026】
次に、上記構成を有する給油ノズル1を備えた給油装置の動作について、図5を中心に参照しながら説明する。
【0027】
ステップS1において、顧客がノズル掛けから給油ノズル1を外してノズルSW(スイッチ)がオンになると(ステップS1;Yes)、ステップS2でベーパを検出する。この際、給油対象の車両の燃料タンクに通じる給油口の蓋を取外して吐出パイプ2を挿入し、ベーパ捕集手段5の固定部5aを給油口に押し付けると、ベーパ捕集手段5の可動部5bが縮む。弁体5dがベーパ排出口5cを塞いでいるため、給油口とベーパ捕集手段5が密閉状態となる。これにより、燃料タンク内の上部にあるベーパが油種検出手段6に到達し、油種判別手段8で油種判別を行う。
【0028】
ステップS2においてベーパが検出されて油種が判別し、ステップS3においてオンになったノズルSWに対応する給油ノズル1の油種が一致するか否かを判定し、一致する場合には(ステップS3;Yes)、表示器(不図示)にリセット信号を送信することで前回なされた給油に関する情報の帰零(リセット)を行い、給油ポンプを駆動する(ステップS4)。
【0029】
給油ポンプがオンになることで給油ノズル1より燃料油が吐出され、これにより流量パルス信号が表示器に出力され(ステップS5;Yes)、表示器において給油量の表示(計数表示)がなされる(ステップS6)。尚、流量パルス信号が出力されない場合には(ステップS5;No)、ノズルSWがオフでない限り(ステップS7;No)、すなわち給油が中止又は終了するまで流量パルス信号の出力を待つ。尚、給油時には、給油によって燃料タンク内の圧力が上昇するため弁体5dが外側に動き、ベーパ排出口5cを開く。これにより、車両の燃料タンク内の上部にあるベーパを効率よく排出して燃料油の供給を行うことができる。
【0030】
給油が終了すると、顧客が給油ノズル1を振ることで、給油時に燃料タンクから排出されたベーパ捕集手段5内のベーパが排出され、油種センサ12に付着したベーパの掃気が行われ、吐出パイプ2に付着した燃料油が振り落とされる。これによって、次回の誤判別を防止することができる。
【0031】
ステップS7において、顧客が給油ノズル1をノズル掛けに戻すことでノズルSWがオフになると(ステップS7;Yes)、給油ポンプを停止し(ステップS8)、動作を終了する。
【0032】
一方、ステップS3においてオンになったノズルSWに対応する給油ノズル1の油種が一致しない場合には(ステップS3;No)、報知器から油種違いを報知し(ステップS9)、動作を終了する。
【0033】
さらに、ステップS2においてベーパが検出されず(ステップS2;No)、ノズルスイッチがオンになってから所定時間(例えば、30秒から1分)経過した場合には(ステップS10;Yes)、検出不定であることを報知し(ステップS11)、動作を終了する。この場合、セルフ給油所では係員を呼んで対応することとなり、フルサービス給油所では給油ノズル及び車両の油種を確認した後に、油種検出機能を解除して給油を行う。
【0034】
図6は、本発明に係る給油装置の第2の実施形態における給油ノズルを示し、この給油ノズル18は、センサケース19の中に、上記給油ノズル1の油種検出手段6、油種判別手段8及び報知器(不図示)を収容したものであって、他の構成は給油ノズル1と同じである。油種検出手段6、油種判別手段8及び報知器の一体化により、給油ノズル18のレイアウトの自由化を図ることができ、保守時の取付け・取外しが容易となる。
【0035】
尚、上記実施の形態では、ガソリン検出用の油種センサ12を用いたが、センサの種類を変更することで新燃料(バイオ軽油、合成燃料等)に対応することができる。
【0036】
また、図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0037】
1、18 給油ノズル
2 吐出パイプ
3 ノズル本体
4 ノズルレバー
5 ベーパ捕集手段
6 油種検出手段
7 レバーガード
8 油種判別手段
9、19 センサケース
10 フィルター
11 スリット
12 油種センサ
13 基板
14 通信線
図1
図2
図3
図4
図5
図6